本発明の一実施形態の太陽電池パネル施工方法について、以下に説明を行う。本実施形態の太陽電池パネル施工方法は、既設の太陽電池パネル支持構造に変更を加える施工方法である。
まず、第1実施形態について説明する。
図1は、第1実施形態にかかる太陽電池パネル施工方法におけるレール設置工程を示す側面図である。図1(a)には、レール取付け前の側面図が示されており、図1(b)には、レール取付け後の側面図が示されている。図2は、レール設置工程を、図1中のV11矢視で示す図である。図2(a)には、図1(a)中のV11矢視が示されており、図2(b)には、図1(b)中のV11矢視が示されている。
既設の太陽電池パネル支持構造100は、既設架台110で太陽電池パネル120を2枚並べて支持した太陽電池アレイであり、この既設の太陽電池パネル支持構造100が設置場所A11の大地G11に更に複数台配列されて発電設備10が構成されている。
既設架台110は、太陽電池パネル120を傾斜支持する架台であり、設置場所A11の大地G11に立設された支持脚111と、この支持脚111の上端に固定されて太陽電池パネル120の非受光面である裏面を支持する裏面支持構造112と、を備えている。支持脚111は、2枚の太陽電池パネル120それぞれの四角近傍から1本ずつ、合計で8本が大地G11へと延びている。
設置場所A11の大地G11には、複数本の布基礎130が互いに並行設置されている。布基礎130は、1つの既設の太陽電池パネル支持構造100について一対ずつ、傾斜方向についての支持脚111の間隔に対応した間隔を開けて設けられている。布基礎130の上面には、各支持脚111の下端に隣接する位置に、アンカーボルト131が設けられている。各支持脚111の下端が、基礎用L字金具132を介して各アンカーボルト131に固定される。本実施形態では、各支持脚111は、それぞれの下端に対して図2中左側にアンカーボルト131が位置するように設けられており、各支持脚111の下端の図2中左側に基礎用L字金具132を配して固定されている。このようにして、既設架台110が複数の布基礎130に固定設置されている。
また、1つの既設の太陽電池パネル支持構造100に対応する一対の布基礎130と、傾斜方向について隣に位置する他の既設の太陽電池パネル支持構造100に対応する一対の布基礎130とは、次のような間隔を開けて設けられている。即ち、傾斜方向の前方側に位置する既設の太陽電池パネル支持構造100の影が、傾斜方向の後方側に位置する既設の太陽電池パネル支持構造100の受光面に落ちないだけの十分な間隔が開けられて布基礎130が設けられている。
ここで、発電設備10の発電容量を増やすために、新たな太陽電池パネル支持構造を増設するに当たって、設置場所A11の空きスペースの広さに十分な余裕がある場合には、その空きスペースに上記と同様の間隔で布基礎130が設置される。他方、空きスペースの広さに余裕がない場合には、既設の太陽電池パネル支持構造100の相互間隔を、図1中の移動方向D11に詰めて、その移動方向D11の後方側に増設用のスペースが作られる。既設の太陽電池パネル支持構造100の相互間隔を詰めた場合、受光面の一部に影が落ちる可能性があるが、その影による発電量の低下を加味しても、新たな太陽電池パネル支持構造の増設により大幅な発電量の増加を見込むことができる。
本実施形態の太陽電池パネル施工方法は、このような増設のために、既設の太陽電池パネル支持構造100を、図1中の移動方向D11に移動させ、その移動先で再設置する施工方法である。
この施工方法では、まず、以下に説明するレール設置工程が行われる。
レール設置工程は、移動対象である図1中右側で図2中左側の既設の太陽電池パネル支持構造100における既設架台110の近傍から、太陽電池パネル120の傾斜方向に沿った移動方向D11へと延びるレール140を設置する工程である。
本実施形態では、レール140としてC鋼が用いられる。このレール140は、その断面のC字における上下一対の腕のうちの一方に相当する帯板部140aが上方となるように設置される。また、レール140は、既設架台110の8本の支持脚111のうち、図2中の左右両端に位置する支持脚111を相互間に挟んで並行するように一対が設置される。各レール140は、図1(b)に示されているように、複数の布基礎130と交差して架け渡されるように設置される。
ここで、一対のレール140のうち図2中左側のレール140は、図2中左側の支持脚111の左方に隣接して配置され、図2中右側のレール140は、図2中右側の支持脚111の右方に隣接して配置される。このとき、図2中左側の支持脚111の左方に隣接するレール140は、そのままでは、この支持脚111の下端を固定しているアンカーボルト131及び基礎用L字金具132と干渉してしまう。このため、移動対象の既設の太陽電池パネル支持構造100については、レール設置工程において、このレール140と干渉する基礎用L字金具132が除去されるとともに、アンカーボルト131において布基礎130から突出している部分がカットされる。
また、レール140は、移動対象ではない図1中左側の既設の太陽電池パネル支持構造100の既設架台110の近傍まで、即ち、その既設架台110の設置用の布基礎130の上方まで延びるように設置される。この非移動対象となる図1中左側の既設の太陽電池パネル支持構造100については、その固定状態を維持する必要があるため、アンカーボルト131や基礎用L字金具132が全て残される。その代わりに、レール140が部分的にカットされて干渉が回避される。
上記のように布基礎130に架け渡されて設置された一対のレール140は、図示は省略するが、次のようなケミカルアンカーを用いて各布基礎130に固定される。まず、布基礎130上のレール140の下側の帯板部140bから布基礎130へと連通するように孔が穿たれる。布基礎130の孔に接着剤が充填され、レール140の下側の帯板部140bを貫通するアンカーボルトが挿入固定される。このアンカーボルトの上部にナットが締結されてレール140が固定される。このような固定が、各布基礎130について行なわれてレール140の固定が行われる。
次に、移動対象の既設の太陽電池パネル支持構造100に対して、後述の保持装置の取付け工程、及び既設架台110の移動固定工程と、が行われる。
図3は、第1実施形態にかかる太陽電池パネル施工方法における保持装置の取付け工程と既設架台の移動固定工程とを示す側面図である。図3(a)には、保持装置150が取り付けられて移動の準備が整った既設の太陽電池パネル支持構造100の側面図が示されている。図3(b)には、移動後にレール140に固定された既設の太陽電池パネル支持構造100の側面図が示されている。図4は、保持装置の取付け工程と既設架台の移動固定工程とを、図3中のV11矢視で示す図である。図4(a)には、図3(a)中のV11矢視が示されており、図4(b)には、図3(b)中のV11矢視が示されている。
取付け工程では、既設架台110の布基礎130からの取外しも行われるが、まず、この取外しに先立って保持装置150の取付けが行われる。この保持装置150は、布基礎130からの取外し後の既設架台110を、昇降可能かつレール140に沿って移動可能に保持する装置である。保持装置150は、図3(a)における左右、図4(a)における左右、に位置する4本の支持脚111それぞれに1台ずつ取り付けられる。
図5は、図3及び図4に示されている保持装置の拡大図である。図5(a)には図3(a)中の保持装置150の拡大図が示されており、図5(b)には図3(b)中の保持装置150の拡大図が示されている。
保持装置150は、ジャッキフレーム151と、車輪152(回転体)と、を備えている。ジャッキフレーム151は、支持脚111にボルト固定されるジャッキ用L字金具151aと、このジャッキ用L字金具151aをハンドル操作により昇降させるジャッキ部151bと、を備えている。ジャッキ部151bは、作業者によって操作されるレバー151b−1と、本体部151b−2と、を備えており、本体部151b−2の昇降突起151b−2aの先端がジャッキ用L字金具151aの下面に固定されている。レバー151b−1に対する操作に応じて、昇降突起151b−2aとともにジャッキ用L字金具151aが昇降する。
また、ジャッキ部151bからは、相互間に本体部151b−2を挟んで一対の車輪保持枠151b−3がレール140に向かって突出して設けられている。各車輪保持枠151b−3に車輪152が回転可能に取り付けられている。また、各車輪152には、レール140の縁に係止するフランジ部152aが設けられている。
保持装置150の支持脚111への取付けは、ジャッキ用L字金具151aの支持脚111へのボルト固定により行われる。このとき、図5(b)に示されているように、各車輪152のフランジ部152aがレール140の縁に係止するように保持装置150が取り付けられる。
また、このときには、図5に示されているように、レール用L字金具160が、一対の車輪152の間を下壁161が通るように支持脚111にボルト固定される。尚、この取付けの段階では、図5とは異なり、レール用L字金具160は、下壁161の下面が、レール140の上側の帯板部140aの上面に接している。
更に、取付け工程では、図4に示されているように、既設架台110に、横梁部171が取り付けられる。横梁部171は、移動方向D11の前方側(即ち、傾斜方向下側)における4本の支持脚111と、移動方向D11の後方側(即ち、傾斜方向上側)における4本の支持脚111と、のそれぞれと交差するように2本が配置される。各横梁部171は、各支持脚111にボルト固定される。
そして、取付け工程では、保持装置150と横梁部171との支持脚111への固定に続いて、既設架台110の全ての支持脚111について、基礎用L字金具132の取外しと、アンカーボルト131の突出部のカットが行われる。
取付け工程が終了すると、既設の太陽電池パネル支持構造100の移動と、移動先でのレール140への固定と、を行う移動固定工程が行われる。
移動固定工程では、まず、布基礎130から取り外された既設架台110が、太陽電池パネル120と一緒に、4台の保持装置150を介して持ち上げられる。この持上げは、各保持装置150においてジャッキ部151bのレバー151b−1の操作により、図5に示されているように昇降突起151b−2aとともにジャッキ用L字金具151aを上昇させることで行われる。その結果、ジャッキ用L字金具151aが固定されている支持脚111、つまりは既設架台110が布基礎130やレール140に対して上昇する。この上昇により、図5に示されているように支持脚111の下端と布基礎130の上面との間に間隙が開く。また、レール用L字金具160の下壁161の下面と、レール140の上側の帯板部140aの上面との間にも間隙が開く。
この状態では、保持装置150が取り付けられた支持脚111の間に位置する中間の支持脚111は、図4(a)に示されるように宙に浮いた状態となるが、この中間の支持脚111は横梁部171によって支持される。
このようにして移動の準備が整うと、既設架台110が、支持した太陽電池パネル120と一緒に、レール140に沿って任意の移動先まで、移動方向D11に動かされる。
移動先では、ジャッキ部151bのレバー151b−1の操作により既設架台110が降ろされる。既設架台110の降下は、レール用L字金具160の下壁161の下面と、レール140の上側の帯板部140aの上面とが接するまで行われる。既設架台110の降下が完了すると、各支持脚111から保持装置150が取り外される。その後、各支持脚111のレール用L字金具160の下壁161がレール140の上側の帯板部140aにボルト止め固定されることで、図3(b)及び図4(b)に示されているように、既設架台110がレール140に固定される。
図6は、既設架台とレールとの固定部の拡大図である。図6(a)には、図3(b)に対応した拡大図が示され、図6(b)には、図4(b)に対応した拡大図が示されている。
図6に示されているように、移動対象の既設架台110の移動先は、布基礎130から外れた位置となる。この移動先において、各支持脚111のレール用L字金具160の下壁161と、レール140の上側の帯板部140aと、を連通する孔の加工が行われる。そして、その孔にボルト162が通され、ナット163が締結される。このボルト止め固定により、既設架台110がレール140に固定される。このときレール140に固定されていない中間の支持脚111は、この固定状態でも横梁部171によって支持される。各支持脚111のレール用L字金具160の下壁161と、レール140の上側の帯板部140aと、の固定によって移動固定工程が終了し、これを以て本実施形態の太陽電池パネル施工方法が完了する。
尚、レール140に固定されない中間の支持脚111の支持については、本実施形態のように横梁部171による支持に限るものではない。例えば中間の支持脚111の下端と大地G11との間にスペーサを配置して支持する手法等であってもよく、その具体的な支持手法を問うものではない。あるいは、後述する第3及び第4実施形態のように、全ての支持脚をレールに固定してもよい。
以上に説明した第1実施形態の太陽電池パネル施工方法によれば、既設の太陽電池パネル支持構造100を移動させることができるので、元々の設置場所の中に、増設のために使用可能なスペースを作り出すことが可能となる。このため、元々の設置場所の外に増設スペースを全て確保することに比べれば、施工コストを抑えることができる。そして、本実施形態の太陽電池パネル施工方法では、このような既設の太陽電池パネル支持構造100の移動が、太陽電池パネル120ごと既設架台110をレール140に沿って移動させて移動先でレール140に固定することで行われる。これにより、例えば既設の太陽電池パネル支持構造100を一旦分解して移動先で再構築する等といった手法と比べて、既設の太陽電池パネル支持構造100の移動を低コストで行うことができる。従って、本実施形態の太陽電池パネル施工方法によれば、施工コストを抑えて増設スペースを確保することができる。
また、本実施形態の太陽電池パネル施工方法によれば、ジャッキフレーム151と車輪152とを備えた保持装置150を介して既設架台110(即ち、既設の太陽電池パネル支持構造100)の昇降と移動を良好な作業性の下で行うことができる。
また、本実施形態の太陽電池パネル施工方法では、レール140として比較的安価なC鋼が用いられる。これにより、施工コストの一層の低減が図られている。
また、本実施形態の太陽電池パネル施工方法では、移動先において保持装置150が既設架台110から外される。これにより、例えばある太陽電池パネル支持構造100の移動に使用した保持装置150を他の太陽電池パネル支持構造100の移動に再使用すること等が可能となるので、施工コストを一層抑えることができる。
また、本実施形態の太陽電池パネル施工方法では、レール140としてC鋼という金属レールが用いられ、複数の布基礎130の上面に架け渡されることで大地G11に対して非接触状態でレール140が設置される。このように金属レールを用いて強度の向上を図りつつ、大地G11に対して非接触状態で設置することで、大地G11に直に触れることによる腐食等を回避することができる。
また、本実施形態の太陽電池パネル施工方法では、左右両端の一対の支持脚111を相互間に挟んで並行するように、レール140が一対設置される。そして、これら一対のレール140の帯板部140aの上面を回転移動する車輪152のフランジ部152aが、各帯板部140aの縁に外側から係止する。これにより、既設の太陽電池パネル支持構造100の移動中の横ブレを抑えることができる。
また、本実施形態の太陽電池パネル施工方法では、既設架台110は、大地に互いに並行設置された複数の布基礎130に設置されている。そして、レール設置工程では、複数の布基礎130と交差して架け渡すようにレール140が設置される。これにより、図3(b)に示されているように、移動後に、布基礎130から外れた位置についても、既設の太陽電池パネル支持構造100を再設置することができる。
次に、第2実施形態について説明する。
第2実施形態は、基礎として布基礎ではなく独立基礎が用いられている点が、上述した第1実施形態と異なっている。以下、第2実施形態について、この第1実施形態との相違点に注目して説明を行う。
図7は、第2実施形態にかかる太陽電池パネル施工方法において移動対象となる既設の太陽電池パネル支持構造を、レールが設置されて保持装置が取り付けられて移動の準備が整った状態で示す図である。図7(a)には側面図が示され、図7(b)には図7(a)中のV11矢視図が示されている。尚、図7では、図1〜図6に示されている第1実施形態における構成要素と同等な構成要素についてはこれらの図における符号と同じ符号が付されており、以下では、これら同等な構成要素について重複説明を省略する。
本実施形態では、発電設備20をなす既設の太陽電池パネル支持構造200における既設架台110の各支持脚111毎に、四角柱状の独立基礎210が設けられている。レール設置工程では、移動対象の既設の太陽電池パネル支持構造200の移動方向D11に沿って並ぶ複数の独立基礎210に架け渡されてレール140が設置される。そのレール140の設置の仕方、その後に続く保持装置150の取付け工程、及び移動固定工程については上述した第1実施形態と同じである。
この第2実施形態の太陽電池パネル施工方法によっても、第1実施形態と同様に、施工コストを抑えて増設スペースを確保することができることは言うまでもない。
次に、第3実施形態について説明する。
第3実施形態は、既設架台の支持脚が、基礎を用いずに設置場所の大地に下部が埋設された単管杭となっており、レール設置工程、保持装置の取付け工程、移動固定工程が、このような既設架台に対して行われる点が、上述した第1実施形態と異なっている。
図8は、第3実施形態にかかる太陽電池パネル施工方法におけるレール設置工程を示す側面図である。図8(a)には、レール取付け前の側面図が示されており、図8(b)には、レール取付け後の側面図が示されている。図9は、レール設置工程を、図8中のV31矢視で示す図である。図9(a)には、図8(a)中のV31矢視が示されており、図9(b)には、図8(b)中のV31矢視が示されている。尚、図8の側面図は、設置されたレール340が支持脚311に遮られずに見える様に、図9(b)中のV32矢視の側面図となっている。
本実施形態における既設の太陽電池パネル支持構造300は、支持脚311として単管杭を備えた既設架台310で太陽電池パネル320を2枚並べて支持した太陽電池アレイである。この既設の太陽電池パネル支持構造300が設置場所A31の大地G31に更に複数台配列されて発電設備30が構成されている。
支持脚311は、円管状の杭であり、太陽電池パネル320の傾斜に沿って高さの異なる複数本が、設置場所A31の大地G31に下部が埋設された状態で設置されている。これら複数本の支持脚311の上端に裏面支持構造312が設けられて、太陽電池パネル320の非受光面である裏面を支持している。
また、1つの既設の太陽電池パネル支持構造300と、太陽電池パネル320の傾斜方向について隣に位置する他の既設の太陽電池パネル支持構造300とは、次のような間隔を開けて設けられている。即ち、傾斜方向の前方側に位置する既設の太陽電池パネル支持構造300の影が、傾斜方向の後方側に位置する既設の太陽電池パネル支持構造300の受光面に落ちないだけの十分な間隔が開けられて設けられている。
本実施形態の太陽電池パネル施工方法も、上述した第1実施形態と同様に、新たな太陽電池パネル支持構造の増設のために、既設の太陽電池パネル支持構造300を、図8中の移動方向D31に移動させ、その移動先で再設置する施工方法である。
本実施形態におけるレール設置工程でもレール340としてC鋼が用いられる。レール340は、図9(b)に示されているように1つの既設架台310において3列に並ぶ支持脚311の各列に沿って並行するように3本が設置される。3本のレール340のうち図9中左側のレール340は、図9中左側の支持脚311の右方に隣接して配置される。また、図9の中間のレール340は、図9の中間の支持脚311の左方に隣接して配置され、図9中右側のレール340は、図9中右側の支持脚311の左方に隣接して配置される。即ち、本実施形態では、左右両端の支持脚311の間に挟まれるようにレール340が一対並行配置され、中間の支持脚311には、一方のレール340と向きを合せて1本のレール340が隣接して配置される。
また、レール340は、移動対象ではない図1中左側の既設の太陽電池パネル支持構造300の既設架台110の近傍まで、即ち、その既設架台110の3列の支持脚311に隣接する位置まで延びるように設置される。
そして、本実施形態では、レール340の設置に当たっては、移動方向D31に沿って複数のコンクリート製のスペーサ350が並べられて配置され、これら複数のスペーサ350の上に各レール340が載置される。これにより、各レール340が、大地G31に対して非接触状態で設置される。
このように設置された3本のレール340は、以下に説明するように、支持脚に311に固定される。
図10は、図8及び図9に示されているレールの支持脚への固定箇所を示す拡大図である。図10(a)には、図9(b)の中間の支持脚311への固定箇所が代表例として示され、図10(b)には、図10(a)中のV33−V33線断面が示されている。
この図10に示されているように、スペーサ350上に載置されたレール340は、2本のU字ボルト341によって円管状の単管杭である支持脚311に固定される。各U字ボルト341は、支持脚311の外周を抱き込んだ状態で両端部がレール340を貫通し、各端部にナット342が締結される。このナット342の締結によりレール340が支持脚311に固定される。このような固定が、移動対象の既設架台310及び、移動方向D31の前方側に位置する隣の既設架台310における、各レール340が隣接する全ての支持脚311に対して行われる。
次に、移動対象の既設の太陽電池パネル支持構造300に対して、保持装置の取付け工程、及び既設架台310の移動固定工程と、が行われる。
図11は、第3実施形態にかかる太陽電池パネル施工方法における保持装置の取付け工程と既設架台の移動固定工程とを示す側面図である。図11(a)には、保持装置360が取り付けられて移動の準備が整った既設の太陽電池パネル支持構造300の側面図が示されている。図11(b)には、移動後にレール340に固定された既設の太陽電池パネル支持構造300の側面図が示されている。図12は、保持装置の取付け工程と既設架台の移動固定工程とを、図11中のV31矢視で示す図である。図12(a)には、図11(a)中のV31矢視が示されており、図12(b)には、図11(b)中のV31矢視が示されている。尚、図11(a)の側面図は、取り付けられた保持装置360が支持脚311に遮られずに見える様に、図12(a)中のV32矢視の側面図となっている。同様に、図11(b)の側面図は、レール340への移動後の支持脚311の固定箇所が支持脚311に遮られずに見える様に、図12(b)中のV32矢視の側面図となっている。
取付け工程では、後述するように支持脚311の切断による既設架台310の設置場所A31からの取外しが行なわれるが、それに先立って、保持装置360の支持脚311への取付けが行われる。保持装置360は、図11(a)における左右、図12(a)における左右及び中間、に位置する6本の支持脚311それぞれに1台ずつ取り付けられる。
図13は、図11及び図12に示されている保持装置の拡大図である。図13(a)には図11(a)中の保持装置360の拡大図が示されており、図13(b)には図12(b)中の保持装置360の拡大図が示されている。また、図13(c)には、後述するレール用L字金具370の支持脚311への固定箇所が、支持脚311と直交する方向の断面図で示されている。
保持装置360は、図5を参照して説明した第1実施形態の保持装置150と同じものであり、ジャッキフレーム361と、車輪362(回転体)と、を備えている。支持脚311にボルト固定されるジャッキ用L字金具361aの下面に、ジャッキ部361bにおける本体部361b−2の昇降突起361b−2aの先端が固定されている。レバー361b−1に対する操作に応じて、昇降突起361b−2aとともにジャッキ用L字金具361aが昇降する。また、一対の車輪保持枠361b−3それぞれに車輪362が取り付けられている。各車輪362のフランジ部362aがレール340の上側の帯板部340aの縁に係止する。
そして、取付け工程では、次のようなレール用L字金具370が、保持装置360とともに支持脚311に固定される。尚、レール用L字金具370は、図11(a)に示されているように、保持装置360が取り付けられる支持脚311だけでなく、レール340に隣接する全ての支持脚311に固定される。
レール用L字金具370は、支持脚311においてレール340の上側の帯板部340aよりも上側の部分に、その下壁371が帯板部340aの上面に接するように固定される。保持装置360と一緒に取り付けられる場合は、図13に示されているように、レール用L字金具370は、一対の車輪362の間を下壁371が通るように固定される。
レール用L字金具370は、図13に示されているように2本のU字ボルト372によって円管状の単管杭である支持脚311に固定される。各U字ボルト372は、支持脚311の外周を抱き込んだ状態で両端部がレール用L字金具370を貫通し、各端部にナット373が締結される。このナット373の締結によりレール用L字金具370が支持脚311に固定される。このような固定が、レール340が隣接する全ての支持脚311に対して行われる。
以上に説明した保持装置360の取付けとレール用L字金具370の固定とが終了すると、支持脚311の切断による既設架台310の設置場所A31からの取外しが行なわれる。各支持脚311における切断箇所は、図13に示されているように、設置場所A31の大地G31からの高さが、レール34の上側の帯板部340aの上面と一致する高さとなる箇所である。
取付け工程が終了すると、既設の太陽電池パネル支持構造300の移動と、移動先でのレール340への固定と、を行う移動固定工程が行われる。
移動固定工程では、まず、切断によって設置場所A31から取り外された既設架台310が、太陽電池パネル320と一緒に、6台の保持装置360を介して持ち上げられる。これにより、切断後においてジャッキ用L字金具361aが固定されている支持脚311の上部、つまりは設置場所A31から取り外された既設架台310が、大地G31側に残った下部に対して上昇する。この上昇により、図13に示されているように支持脚311の上部と下部との間に間隙が開く。また、レール用L字金具370の下壁371の下面と、レール340の上側の帯板部340aの上面との間にも間隙が開く。
このようにして移動の準備が整うと、既設架台310が、支持した太陽電池パネル320と一緒に、レール340に沿って任意の移動先まで、移動方向D31に動かされる。
この移動先において既設架台310が降ろされてレール340に固定される。
図14は、既設架台とレールとの固定部の拡大図である。図14(a)には、図11(b)に対応した拡大図が示され、図14(b)には、図12(b)に対応した拡大図が示されている。
図14に示されているように、移動先において、既設架台310は、レール用L字金具370の下壁371の下面と、レール340の上側の帯板部340aの上面とが接するまで降ろされる。この降下位置は、各支持脚311においてレール用L字金具370が固定された上部が大地G31側に残った下部に対してズレた位置となる。降下が終了すると保持装置360が各支持脚311から外される。そして、降下位置において、レール用L字金具370の下壁371と、レール340の上側の帯板部340aと、を連通する孔の加工が行われる。そして、その孔にボルト374が通され、ナット375が締結される。このボルト止め固定により、既設架台310がレール340に固定されて移動固定工程が終了し、これを以て本実施形態の太陽電池パネル施工方法が完了する。
以上に説明した第3実施形態の太陽電池パネル施工方法によっても、上述した第1実施形態と同様に、施工コストを抑えて増設スペースを確保することができることはいうまでもない。また、本実施形態では、移動対象であるか否かを問わず、支持脚311がレール340で連結されることにより既設架台310が補強される。一般に、単管杭等のように単独で打ち込んでいる杭は、打ち込んだ場所の状況等によっては不安定な状態となる場合がある。そして、そのような杭で構成された架台を有する太陽電池パネル支持構造は、一旦は施工を終了したものの強度不足と見做されて施工のやり直しが必要となることがある。これに対し、本実施形態では、レール340による支持脚311の連結による補強効果が、移動対象以外の既設架台310についても得られる。このため、仮に、レール340の設置前の既設架台310について補強不足と見做されたとしても、レール340による上述の補強効果が得られるので、コストの嵩む施工のやり直し等が不要であり、この点においても施工コストを抑えることができる。
また、本実施形態の太陽電池パネル施工方法でも、レール340としてC鋼という金属レールが用いられて強度の向上が図られている。そして、大地G31とレール340との間にスペーサ350が設けられることで、大地G31に対して非接触状態でレール340が設置される。第1実施形態や第2実施形態のような基礎がない場合であっても、本実施形態では、このようにスペーサ350を設けることで、レール340が大地G11に直に触れることによる腐食等を回避することができる。
また、本実施形態の太陽電池パネル施工方法では、少なくとも一対の支持脚311の間に挟まれるようにレール340が少なくとも一対設置される。これにより、既設の太陽電池パネル支持構造300の移動中の横ブレを抑えることができる。
次に、第4実施形態について説明する。
第4実施形態は、既設架台の支持脚が、基礎を用いずに設置場所の大地に下部が埋設されたスクリュー杭となっており、レール設置工程、保持装置の取付け工程、移動固定工程が、このような既設架台に対して行われる点が、上述した第1実施形態と異なっている。
図15は、第4実施形態にかかる太陽電池パネル施工方法におけるレール設置工程を示す側面図である。図15(a)には、レール取付け前の側面図が示されており、図15(b)には、レール取付け後の側面図が示されている。図16は、レール設置工程を、図15中のV41矢視で示す図である。図16(a)には、図15(a)中のV41矢視が示されており、図16(b)には、図15(b)中のV41矢視が示されている。
本実施形態における既設の太陽電池パネル支持構造400は、支持脚411としてスクリュー杭を備えた既設架台410で太陽電池パネル420を2枚並べて支持した太陽電池アレイである。この既設の太陽電池パネル支持構造400が設置場所A41の大地G41に更に複数台配列されて発電設備40が構成されている。
支持脚411は、太径で設置場所A41の大地G41に捩じ込み設置されるスクリュー部411aと、細径でスクリュー部411aに接続される円管部411bと、を備えている。スクリュー部411aの上端の継手フランジ411a−1と、円管部411bの下端の継手フランジ411b−1とがボルト接続されて支持脚411が構成される。
このような支持脚411として、太陽電池パネル420の傾斜に沿って円管部411bの高さの異なる複数本が、設置場所A41の大地G41にスクリュー部411aが埋設された状態で設置されている。これら複数本の支持脚411の上端に裏面支持構造412が設けられて、太陽電池パネル420の非受光面である裏面を支持している。
また、1つの既設の太陽電池パネル支持構造400は、隣に位置する既設の太陽電池パネル支持構造400の影が受光面に落ちないだけの十分な間隔が開けられて設けられて発電設備40が構築されている。
本実施形態の太陽電池パネル施工方法も、上述した第1実施形態と同様に、新たな太陽電池パネル支持構造の増設のために、既設の太陽電池パネル支持構造400を、図15中の移動方向D41に移動させ、その移動先で再設置する施工方法である。
本実施形態におけるレール設置工程でもレール440としてC鋼が用いられる。レール440は、図16(b)に示されているように1つの既設架台410において3列に並ぶ支持脚411の各列に沿って並行するように3本が設置される。3本のレール440のうち図16中左側のレール440は、図16中左側の支持脚411の左方に隣接して配置される。また、図16の中間のレール440は、図16の中間の支持脚411の左方に隣接して配置され、図16中右側のレール440は、図16中右側の支持脚411の右方に隣接して配置される。即ち、本実施形態では、左右両端の支持脚411を相互間に挟むようにレール440が一対並行配置され、中間の支持脚411には、一方のレール440と向きを合せて1本のレール440が隣接して配置される。
また、レール440は、移動対象ではない図1中左側の既設の太陽電池パネル支持構造400の既設架台410の近傍まで、即ち、その既設架台410の3列の支持脚411に隣接する位置まで延びるように設置される。
そして、本実施形態では、移動方向D41に沿って並べられた複数のコンクリート製のスペーサ450の上に各レール440が載置される。これにより、各レール440が、大地G41に対して非接触状態で設置される。
このように設置された3本のレール440は、以下に説明するように、隣接する支持脚411に固定される。
図17は、図15及び図16に示されているレールの支持脚への固定箇所を示す拡大図である。図17(a)には、図16(b)中左側の支持脚411への固定箇所が代表例として示され、図17(b)には、図17(a)中のV43−V43線断面が示されている。
この図17に示されているように、スペーサ450上に載置されたレール440は、支持脚411のスクリュー部411aの継手フランジ411a−1と大地G41との間に、スペーサ450の上に載った状態で固定される。この固定は、スクリュー部411aの外周面とレール440との間に介在部441を挟んだ状態で、2本のU字ボルト442を用いて行われる。介在部441の支持脚411側は、スクリュー部411aの外周面と合致するように半円状に窪んでおり、レール440側は平面となっている。介在部441の窪みにスクリュー部411aの外周面が嵌合し、反対側の平面にレール440が押し当てられる。そして、各U字ボルト442は、スクリュー部411aの外周を抱き込んだ状態で両端部が介在部441及びレール440を貫通し、各端部にナット443が締結される。このナット443の締結によりレール440が支持脚411のスクリュー部411aに固定される。このような固定が、移動対象の既設架台410及び、移動方向D41の前方に位置する隣の既設架台410における、各レール440が隣接する全ての支持脚411に対して行われる。
次に、移動対象の既設の太陽電池パネル支持構造400に対して、保持装置の取付け工程、及び既設架台の移動固定工程と、が行われる。
図18は、第4実施形態にかかる太陽電池パネル施工方法における保持装置の取付け工程と既設架台の移動固定工程とを示す側面図である。図18(a)には、保持装置460が取り付けられて移動の準備が整った既設の太陽電池パネル支持構造400の側面図が示されている。図18(b)には、移動後にレール440に固定された既設の太陽電池パネル支持構造400の側面図が示されている。図19は、保持装置の取付け工程と既設架台の移動固定工程とを、図18中のV41矢視で示す図である。図19(a)には、図18(a)中のV41矢視が示されており、図19(b)には、図18(b)中のV41矢視が示されている。
取付け工程では、後述するように支持脚411におけるスクリュー部411aと円管部411bとの分離による既設架台410の設置場所A41からの取外しが行なわれるが、それに先立って、保持装置460の支持脚411への取付けが行われる。保持装置460は、図18(a)における左右、図19(a)における左右及び中間、に位置する6本の支持脚411それぞれに1台ずつ取り付けられる。
図20は、図18及び図19に示されている保持装置の拡大図である。図20(a)には図18(a)中の保持装置460の拡大図が示されており、図20(b)には図19(b)中の保持装置460の拡大図が示されている。
保持装置460は、図5を参照して説明した第1実施形態の保持装置150と略同じものであり、ジャッキフレーム461と、車輪462(回転体)と、を備えている。支持脚411の円管部411bにボルト固定されるジャッキ用L字金具461aの下面に、ジャッキ部461bにおける本体部461b−2の昇降突起461b−2aの先端が固定されている。レバー461b−1に対する操作に応じて、昇降突起461b−2aとともにジャッキ用L字金具461aが昇降する。レバー461b−1に対する操作に応じて、昇降突起461b−2aとともにジャッキ用L字金具461aが昇降する。また、一対の車輪保持枠461b−3それぞれに車輪462が取り付けられている。各車輪462のフランジ部462aがレール440の上側の帯板部440aの縁に係止する。
以上に説明した保持装置460の取付けが終了すると、支持脚411におけるスクリュー部411aの継手フランジ411a−1と円管部411bの継手フランジ411b−1とを固定している不図示のボルトが外されて両者が分離される。この分離により、移動対象の既設架台410が設置場所A41から取り外される。
この分離を以て取付け工程が終了すると、既設の太陽電池パネル支持構造400の移動と、移動先でのレール440への固定と、を行う移動固定工程が行われる。
移動固定工程では、まず、設置場所A41から取り外された既設架台410が、太陽電池パネル420と一緒に、6台の保持装置460を介して持ち上げられる。これにより、分離後においてジャッキ用L字金具461aが固定されている支持脚411の円管部411a、つまりは設置場所A41から取り外された既設架台410が、大地G41側に残ったスクリュー部411bに対して上昇する。この上昇により、図20に示されているように円管部411bの継手フランジ411b−1と、スクリュー部411aの継手フランジ411a−1と、の間に間隙が開く。
このようにして移動の準備が整うと、既設架台410が、支持した太陽電池パネル420と一緒に、レール440に沿って任意の移動先まで、移動方向D41に動かされる。
この移動先において既設架台410が降ろされてレール440に固定される。
図21は、既設架台とレールとの固定部の拡大図である。図21(a)には、図18(b)に対応した拡大図が示され、図21(b)には、図19(b)に対応した拡大図が示されている。
本実施形態では、図21に示されているように、移動先において、既設架台410は、円管部411bの継手フランジ411b−1の下面の高さと、スクリュー部411aの継手フランジ411a−1の上面の高さと、が互いに一致するまで降ろされる。これにより、移動対象の既設の太陽電池パネル支持構造400における太陽電池パネル420の高さが、他の既設の太陽電池パネル支持構造400における太陽電池パネル420の高さと一致する。本実施形態では、このような既設架台410の降下が、以下のように行われる。
スクリュー部411aの継手フランジ411a−1の上面は、レール440の上側の帯板部440aの上面よりも高い位置にある。このため、移動先におけるレール440の上側の帯板部440aの上面に、まず、スペーサ470が固定される。スペーサ470は、レール440の上側の帯板部440aの上面に固定された時にその上面が、スクリュー部411aの継手フランジ411a−1の上面と一致する厚みに形成されている。スペーサ470は、ボルト471とナット472との締結によりレール440の上側の帯板部440aに固定される。
移動先における既設架台410の降下は、円管部411bの継手フランジ411b−1の下面が、スペーサ470の上面に接するまで行われる。降下が終了すると保持装置460が円管部411bから外される。そして、円管部411bの継手フランジ411b−1が、このスペーサ470にボルト473によって固定されて移動固定工程が終了し、これを以て本実施形態の太陽電池パネル施工方法が完了する。
以上に説明した第4実施形態の太陽電池パネル施工方法によっても、上述した第1実施形態と同様に、施工コストを抑えて増設スペースを確保することができることはいうまでもない。また、本実施形態でも、単独で打ち込む杭であるスクリュー杭としての支持脚411が移動対象であるか否かを問わずレール440で連結されるので、既設架台410について、上述した第3実施形態の場合と同様の補強効果が得られる。本実施形態によれば、この点においても施工コストを抑えることができる。
また、本実施形態の太陽電池パネル施工方法でも、大地G41とレール440との間にスペーサ450が設けられることで、大地G41に対して非接触状態でレール440が設置される。これにより、レール440が大地G41に直に触れることによる腐食等を回避することができる。
また、本実施形態の太陽電池パネル施工方法では、左右両端側の一対の支持脚411を相互間に挟んで並行するように、レール440が一対設置される。そして、これら一対のレール440の帯板部440aの上面を回転移動する車輪462のフランジ部462aが、各帯板部440aの縁に外側から係止する。これにより、既設の太陽電池パネル支持構造400の移動中の横ブレを抑えることができる。
尚、以上に説明した実施形態は本発明の代表的な形態を示したに過ぎず、本発明は、これらの実施形態に限定されるものではない。即ち、本発明の骨子を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。かかる変形によってもなお本発明の太陽電池パネル施工方法の構成を具備する限り、勿論、本発明の範疇に含まれるものである。
例えば、上述した4つの実施形態では、いずれも、本発明にいうレールの一例としてC鋼のレール140,340,440が例示され、本発明にいう保持装置の一例として、レバー操作で対象物の昇降を行う保持装置150,360,460が例示されている。しかしながら、本発明にいうレールや保持装置は、これらに限るものではなく、例えば以下に説明する別例であってもよい。
図22は、レール及び保持装置の別例を示す図である。この図22には、図5に示されている第1実施形態のレール140や保持装置150に対する別例が示されている。図22(a)には、図5(a)に対応した図が示されており、図22(b)には、図5(b)に対応した図が示されている。尚、図22では、図5に示されている構成要素と同等な構成要素については図5と同じ符号が付されている。
この別例では、H鋼のレール510と、操作レバーを持たない形態の保持装置520と、が用いられている。H鋼のレール510は、H字における一対の縦棒のうちの一方に相当する帯板部510aを上方に向けて布基礎130の上に載置される。
別例の保持装置520は、ジャッキフレーム521と、車輪522(回転体)と、を備えている。ジャッキフレーム521は、既設架台110の支持脚111にボルト固定される第1L字金具521aと、この第1L字金具521aに対して昇降可能に取り付けられる第2L字金具521bと、を備えている。第1L字金具521aの下壁521a−1からボルト軸521a−2が突出し、このボルト軸521a−2が第2L字金具521bの下壁521b−1を貫通している。そして、この第2L字金具521bの下壁521b−1を上下に挟んでジャッキ用ナット521a−3がボルト軸521a−2に締結されている。このジャッキ用ナット521a−3を回してボルト軸521a−2に沿って昇降させることで、第1L字金具521aに対して第2L字金具521bが昇降する。支持脚111における第1L字金具521aの下方の位置にはレール用L字金具160がボルト固定されている。
第2L字金具521bからはレール510に向かって一対の車輪アーム521cが延出しており、各先端に車輪522が取り付けられている。ジャッキ用ナット521a−3を回して第2L字金具521bを降下させると、レール510に対する第2L字金具521bの相対位置が車輪アーム521cの長さで決まっているので、第1L字金具521aの方が上昇することとなる。逆に、第2L字金具521bを上昇させると、第1L字金具521aの方が降下することとなる。これにより、第1L字金具521aがボルト固定されている支持脚111(即ち、既設架台110)が昇降される。
以上に説明した別例のレール510や保持装置520を用いても、上述した第1〜第4実施形態の太陽電池パネル施工方法と同様に、施工コストを抑えて増設スペースを確保することができることはいうまでもない。
次に、第5実施形態について説明する。
第5実施形態は、上述した第1実施形態と同様に布基礎が用いられている。他方、H鋼としてのレール、その設置位置、及びレール上を移動可能な保持装置の構成、が第1実施形態と異なっている。以下、第5実施形態について、第1実施形態との相違点に注目して説明を行う。
図23は、第5実施形態にかかる太陽電池パネル施工方法において、レールの設置、保持装置の取付け、既設架台の上昇と移動、及び移動後の降下が終了した状態を示す図である。図23(a)には、図23(b)中のV62矢視の側面図が示され、図23(b)には図23(a)中のV61矢視図が示されている。尚、図23では、図1〜図6に示されている第1実施形態における構成要素と同等な構成要素についてはこれらの図における符号と同じ符号が付されており、以下では、これら同等な構成要素について重複説明を省略する。
まず、レール設置工程が行われる。レール設置工程では、発電設備60における移動対象の既設の太陽電池パネル支持構造600の近傍から、太陽電池パネル120の傾斜方向に沿った移動方向D61へと、隣の既設の太陽電池パネル支持構造600の近傍まで延びるレール610が設置される。本実施形態では、互いに並行して延びる2本のH鋼のレール610が設置される。これら2本のレール610は、既設架台110の裏面支持構造112から延びる支持脚111のうち、図23(b)中の左側2列の支持脚111の略中央と、右側2列の支持脚111の略中央と、に設置される。各レール610は、第1実施形態のレール140と同様に、ケミカルアンカーを用いて、設置場所A11の大地G11に設けられた各布基礎130の上面に固定される。
続いて行なわれる保持装置630の取付け工程では、既設架台110の布基礎130からの取外しに先立って保持装置630の取付けが次のように行われる。
本実施形態では、まず、図23に示されているように、既設架台110に横梁部620が取り付けられる。横梁部620は、移動方向D61の前方側(即ち、傾斜方向下側)における4本の支持脚111と、移動方向D61の後方側(即ち、傾斜方向上側)における4本の支持脚111と、のそれぞれと交差するように2本が配置される。各横梁部620はL鋼であり、縦壁621が各支持脚111にボルト固定される。このとき、各横梁部620は、下壁622の下面が、2本のレール610それぞれの上側の帯板部610aの上面に接するように支持脚111にボルト固定される。
続いて、2本の横梁部620のそれぞれに保持装置630が取り付けられる。保持装置630は、各横梁部620において2本のレール610それぞれと交差する2箇所の縦壁621に取り付けられる。即ち、保持装置630は、各横梁部620に2台ずつ合計で4台が取り付けられる。
図24は、図23に示されている保持装置の拡大図である。図24(a)には図23(a)中の保持装置630の拡大図が示されており、図24(b)には図23(b)中の保持装置630の拡大図が示されている。
保持装置630は、ジャッキフレーム631と、車輪632(回転体)と、を備えている。ジャッキフレーム631は、横梁部620の縦壁621にボルト固定されるL字フレーム631aと、このL字フレーム631aをハンドル操作により昇降させるジャッキ部631bと、を備えている。ジャッキ部631bは、作業者によって操作されるレバー631b−1と、本体部631b−2と、を備えており、本体部631b−2の昇降突起631b−2aの先端がL字フレーム631aの内側下面631a−1に固定されている。レバー631b−1に対する操作に応じて、昇降突起631b−2aとともにL字フレーム631aが昇降する。
また、ジャッキ部631bからは、レール610側に開口したC字型の車輪保持枠631b−3がレール610に向かって突出して設けられている。車輪保持枠631b−3には、相互間にレール610の上側の帯板部610aを挟む一対の車輪632が回転可能に取り付けられている。また、各車輪632には、帯板部610aの対向一対の縁それぞれに外側から係止するフランジ部632aが設けられている。更に、この保持装置630では、一対の車輪632の相互間隔が、両者間に位置するレール610の幅に応じて調整可能となっている。
そして、取付け工程では、横梁部620と保持装置630の取付けが終了すると、移動対象の既設架台110の全ての支持脚111について、基礎用L字金具132の取外しが行われる。
取付け工程が終了すると、既設の太陽電池パネル支持構造600の移動と、移動先でのレール610への固定と、を行う移動固定工程が行われる。
移動固定工程では、まず、布基礎130から取り外された既設架台110が、太陽電池パネル120と一緒に、4台の保持装置630を介して持ち上げられる。
図25は、図24に示されている保持装置によって既設架台が持上げられた様子を示す図である。図25(a)には図24(a)に対応した拡大図が示されており、図25(b)には図24(b)に対応した拡大図が示されている。
既設架台110の持上げは、各保持装置630においてジャッキ部631bのレバー631b−1の操作により、昇降突起631b−2aとともにL字フレーム631aを上昇させることで行われる。その結果、L字フレーム631aが固定されている横梁部620が支持脚111と一緒に、つまりは既設架台110が、布基礎130やレール610に対して上昇する。この上昇により、支持脚111の下端と布基礎130の上面との間に間隙が開く。また、横梁部620の下壁622の下面と、レール610の上側の帯板部610aの上面との間にも間隙が開く。この状態では、既設架台110の各支持脚111は、横梁部620によって支持される。
このようにして移動の準備が整うと、既設架台110が、支持した太陽電池パネル120と一緒に、レール610に沿って任意の移動先まで、移動方向D61に動かされる。
移動先では、ジャッキ部631bのレバー631b−1の操作により既設架台110が降ろされる。既設架台110の降下は、横梁部620の下壁622の下面と、レール610の上側の帯板部610aの上面とが接するまで行われる。既設架台110の降下が完了すると、横梁部620から保持装置630が取り外される。その後、既設架台110がレール610に固定される。
図26は、既設架台のレールへの固定箇所を示す拡大図である。図26(a)には図24(a)に対応した拡大図が示されており、図26(b)には図24(b)に対応した拡大図が示されている。
本実施形態では、横梁部620の下壁622がレール610の上側の帯板部610aにボルト止め固定されることで、既設架台110が2本の横梁部620を介してレール610に固定される。図26に示されているように、移動先において、各横梁部620の下壁622と、レール610の上側の帯板部610aと、を連通する孔の加工が行われる。そして、その孔にボルト623が通され、ナット624が締結される。このボルト止め固定により、既設架台110の各支持脚111が横梁部620を介してレール610に固定され、その結果、既設架台110がレール610に固定される。各横梁部620の下壁622と、レール610の上側の帯板部610aと、の固定によって移動固定工程が終了し、これを以て本実施形態の太陽電池パネル施工方法が完了する。
以上に説明した第5実施形態の太陽電池パネル施工方法によっても、上述した第1実施形態と同様に、施工コストを抑えて増設スペースを確保することができることはいうまでもない。
また、本実施形態の太陽電池パネル施工方法では、レール610の上側の帯板部610aを、移動方向D61と交差する幅方向に挟む一対の車輪632を備えた保持装置630が採用されている。これにより、既設の太陽電池パネル支持構造600の移動中において、各保持装置630ごとにレール610からの脱輪や横ブレを抑えることができる。
また、本実施形態では、一対の車輪632の相互間隔が調整可能となっている。これにより、本実施形態の太陽電池パネル施工方法によれば、作業現場においてどのようなレールを採用するかの自由度が高く作業性の向上が図られている。
また、本実施形態では、レール610が、移動方向D61に並ぶ2列の支持脚111の略中央に設置される。このような位置への設置により、支持脚111を布基礎130に固定しているアンカーボルト131(図2)や基礎用L字金具132とレール610との干渉が無くなっている。その結果、第1実施形態のレール設置工程で行われる干渉部のカット等の処理が不要となり、この点においても作業性の向上が図られている。
また、上述した実施形態では、本発明にいう既設の太陽電池パネル支持構造の一例として、太陽電池パネル120,320,420を2枚備える太陽電池アレイとしての既設の太陽電池パネル支持構造100,200,300,400,600が例示されている。しかしながら、本発明にいう既設の太陽電池パネル支持構造は、これに限るものではなく、例えば、1枚の太陽電池パネルを支持したものであってもよく、あるいは、3枚以上の太陽電池パネルを支持したものであってもよい。本発明にいう既設の太陽電池パネル支持構造は、支持する太陽電池パネルの枚数等の具体的な構成を問うものではない。
また、上述した実施形態では、本発明にいう既設架台の一例として、8本の支持脚111が布基礎130に設置された既設架台110や、8本の支持脚111が独立基礎210に設置された既設架台110が例示されている。また、12本の単管杭としての支持脚311が大地G31に直に設置された既設架台310や、12本のスクリュー杭としての支持脚411が大地G41に直に設置された既設架台410も例示されている。しかしながら、本発明にいう既設架台は、これらに限るものではなく、支持脚の数や形状、その設置態様等といった具体的な構成を問うものではない。
また、上述した実施形態では、その別例も含めて、本発明にいうレールの一例として、C鋼としてのレール140,350,450や、H鋼としてのレール510,610が例示されている。しかしながら、本発明にいうレールは、これらに限るものではなく、例えば矩形管や溝付きレール等であってもよく、その具体的な形状等は問わない。
また、上述した実施形態では、その別例も含めて、本発明にいう保持装置の一例として、レバー操作で対象物を昇降させる保持装置150,360,460,630や、ボルト軸に沿ったナット移動で対象物を昇降させる保持装置520が例示されている。しかしながら、本発明にいう保持装置はこれらに限るものではなく、例えばモータ駆動等で対象物を昇降させるもの等であってもよく、その昇降機構等の具体的な構成を問うものではない。