JP6045068B2 - 高鮮鋭性加飾シート - Google Patents

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Description

本発明は、加飾シートに関する。更に詳しくは、深み感があり、かつ鮮鋭性の高いポリ塩化ビニル系又はポリオレフィン系の加飾シートに関する。
従来から、飾り棚、収納箪笥、食器戸棚、机などの家具;冷蔵庫、洗濯機、エアコン、モバイルフォン、パソコンなどの家電製品;あるいは床、壁、浴室などの建築部材として、木材、合板、集成材、パーチクルボード、ハードボードなどの木質系材料からなる基材の表面に;あるいは鉄、アルミニウムなどの金属系材料からなる基材の表面に樹脂製の加飾シートを貼合して加飾化粧されたものが使用されている。
ポリ塩化ビニル系樹脂フィルムは着色性、ラミネート加工性、エンボス加工性、基材表面への貼合加工性に優れているため、このような加飾シートに多用されている。またポリオレフィン系樹脂フィルムは可塑剤を使用せずに製造されるため、揮発性有機化合物(VOC)低減などの目的で、このような加飾シートに多用されている。ところがポリ塩化ビニル系樹脂フィルムやポリオレフィン系樹脂フィルムには、これを装飾層の上に透明樹脂層として積層し、意匠シートに深み感を付与しようとしても、鮮鋭性の低いものしか得られないという意匠性の問題があった。
そこで「反射率が低く、かつ反射率の波長依存性が少ないラミネート用フィルム」を得る技術として、「表面に微細凹凸構造を有するラミネート用フィルムであって、前記微細凹凸構造が、複数の凸部を有し、該凸部間の平均間隔が400nm以下である、ラミネート用フィルム。」が提案されている(特許文献1)。
しかし、装飾層の上の透明樹脂層としてポリ塩化ビニル系樹脂フィルム又はポリオレフィン系樹脂フィルムを用いる場合には、加飾シートのハードコート表面に全く同じ形状の微細エンボスを施したとしても、鮮鋭性向上効果を得ることができるときと、できないときがあるところ、特許文献1にはその点について何の記載も示唆もない。
特開2009−269237号公報
本発明の課題は、深み感があり、鮮鋭性にも優れるポリ塩化ビニル系又はポリオレフィン系の加飾シートを提供することにある。
本発明者は、鋭意研究した結果、透明ハードコートの表面に特定形状の微細エンボスを施すとともに、透明樹脂層としてのポリ塩化ビニル系樹脂フィルム又はポリオレフィン系樹脂フィルムの表面グロスと透明ハードコートの微細エンボス表面のグロスとが特定の関係にある場合に、上記課題を達成できることを見出した。
すなわち、本発明は、
表層側から順に透明ハードコート(A)、透明樹脂層(B)、装飾層(C)を有する加飾シートであって、
(1)透明ハードコート(A)と透明樹脂層(B)とは、直接又は透明アンカーコート(D)を介して積層されていること;
(2)透明樹脂層(B)と装飾層(C)とは、直接又は透明接着剤(E)を介して積層されていること;
(3)透明ハードコート(A)が最表層であること;
(4)透明ハードコート(A)の表面に微細エンボスが施されていること;
(5)上記微細エンボスの形状は、複数の凸部を有し、上記凸部間の平均間隔が100〜500nmであり、上記凸部の高さが80〜500nmであること;
(6)透明樹脂層(B)は、透明ポリ塩化ビニル系樹脂層(B1)又は透明ポリオレフィン系樹脂層(B2)であること;
(7)透明ハードコート(A)の微細エンボス表面の60°グロス(Ga)と透明樹脂層(B)のハードコート積層面側の60°グロス(Gb)とが下記式(α)を満たすこと;
を特徴とする加飾シート。
Gb−Ga≧0 ・・・(α)
である。
本発明の加飾シートは、深み感があり、鮮鋭性にも優れる。そのため物品の加飾化粧に、特に冷蔵庫の扉やキッチンの扉などの物品の加飾化粧に好適に用いることができる。
本発明の加飾シートは、表層側から順に透明ハードコート(A)、透明樹脂層(B)、装飾層(C)を有する加飾シートであって、(1)透明ハードコート(A)と透明樹脂層(B)とは、直接又は透明アンカーコート(D)を介して積層されており、(2)透明樹脂層(B)と装飾層(C)とは、直接又は透明接着剤(E)を介して積層されている。このような層構成にすることにより、加飾シートの意匠に深み感が付与される。
上記の透明ハードコート(A)は、加飾シートの最表層に位置し、その表面には微細エンボスが施されている。また上記微細エンボスの形状は、高鮮鋭性を得るために、複数の凸部を有し、上記凸部間の平均間隔は100〜500nm、好ましくは150〜450nm、より好ましくは200〜400nm以下であり、上記凸部の高さは80nm以上、好ましくは120nm以上、より好ましくは150nm以上である。また微細エンボスの成形性の観点から、上記凸部の高さは500nm以下であり、好ましくは400nm以下、より好ましくは300nm以下である。
上記凸部の構造としては、例えば、略円錐形状、略角錐形状などの突起が複数並んだ、いわゆるモスアイ構造;略円柱形状、略角柱形状などの突起が複数並んだ、いわゆるピラー構造が好ましい。
上記の形状の微細エンボスを表面に有する透明ハードコート(A)は、その微細エンボス表面の60°グロス(Ga)が通常70%以下、好ましくは50%以下、より好ましくは40%以下となり、ギラツキ感が抑制されている。
なお本明細書において、凸部間の平均間隔は、原子間力顕微鏡を使用し、凸部の中心から隣接する凸部の中心までの距離を、5視野で各5点測定し、計25点の値を平均して求めた。凸部の高さは、原子間力顕微鏡を使用し、凸部の最高点と隣接する凹部の最低点との高低差を、5視野で各5点測定し、計25点の値を平均して求めた。
透明ハードコート(A)の厚みは、その表面に微細エンボスを施し、高鮮鋭性を得る要請から、0.5μm以上であることが好ましい。透明ハードコート(A)の厚みの上限は、特にない。しかし、不必要に厚いハードコートはコストアップ要因になるばかりであるから、厚くてもせいぜい60μmである。
上記の表面に微細エンボスが施された透明ハードコート(A)を製造する方法は制限されず、任意の方法で製造することができる。例えば、活性エネルギー線硬化性樹脂組成物などの任意の硬化性樹脂材料の未硬化塗膜を、表面に微細エンボス構造を有するモールドにより押圧する方法;表面に微細エンボス構造を有するモールドに、活性エネルギー線硬化性樹脂組成物などの任意の硬化性樹脂材料を流し込み、硬化させた後、これを転写箔として転写する方法;などにより得ることができる。
上記活性エネルギー線硬化性樹脂組成物は、紫外線や電子線等の活性エネルギー線により重合・硬化して、ハードコートを形成することが可能なものであり、活性エネルギー線硬化性樹脂を、1分子中に2以上のイソシアネート基(−N=C=O)を有する化合物及び/又は光重合開始剤と共に含む組成物をあげることができる。
上記活性エネルギー線硬化性樹脂としては、例えば、ポリウレタン(メタ)アクリレート、ポリエステル(メタ)アクリレート、ポリアクリル(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート、ポリアルキレングリコールポリ(メタ)アクリレート、及び、ポリエーテル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリロイル基含有プレポリマー又はオリゴマー;メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、イソボニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニロキシエチル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、フェニルセロソルブ(メタ)アクリレート、2−メトキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−アクリロイルオキシエチルハイドロゲンフタレート、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、トリフルオロエチル(メタ)アクリレート、及び、トリメチルシロキシエチルメタクリレート等の(メタ)アクリロイル基含有単官能反応性モノマー;N−ビニルピロリドン、スチレン等の単官能反応性モノマー;ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、2,2‘−ビス(4−(メタ)アクリロイルオキシポリエチレンオキシフェニル)プロパン、及び、2,2’−ビス(4−(メタ)アクリロイルオキシポリプロピレンオキシフェニル)プロパン等の(メタ)アクリロイル基含有2官能反応性モノマー;トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタントリ(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリロイル基含有3官能反応性モノマー;ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリロイル基含有4官能反応性モノマー;及び、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート等の(メタ)アクリロイル基含有6官能反応性モノマーなどから選択される1種以上を、あるいは上記1種以上を構成モノマーとする樹脂をあげることができる。
なお本明細書において、(メタ)アクリレートとは、アクリレート又はメタクリレートの意味である。
上記1分子中に2以上のイソシアネート基を有する化合物としては、例えば、メチレンビス−4−シクロヘキシルイソシアネート;トリレンジイソシアネートのトリメチロールプロパンアダクト体、ヘキサメチレンジイソシアネートのトリメチロールプロパンアダクト体、イソホロンジイソシアネートのトリメチロールプロパンアダクト体、トリレンジイソシアネートのイソシアヌレート体、ヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアヌレート体、イソホロンジイソシアネートのイソシアヌレート体、ヘキサメチレンジイソシアネートのビウレット体等のポリイソシアネート;及び、上記ポリイソシアネートのブロック型イソシアネート等のウレタン架橋剤などをあげることができる。これらをそれぞれ単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。また、架橋の際には、必要に応じてジブチルスズジラウレート、ジブチルスズジエチルヘキソエートなどの触媒を添加してもよい。
上記光重合開始剤としては、例えば、ベンゾフェノン、メチル−o−ベンゾイルベンゾエート、4−メチルベンゾフェノン、4、4’−ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン、o−ベンゾイル安息香酸メチル、4−フェニルベンゾフェノン、4−ベンゾイル−4′−メチルジフェニルサルファイド、3,3’,4,4’−テトラ(tert−ブチルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン、2,4,6−トリメチルベンゾフェノン等のベンゾフェノン系化合物;ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンジルメチルケタール等のベンゾイン系化合物;アセトフェノン、2、2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン等のアセトフェノン系化合物;メチルアントラキノン、2−エチルアントラキノン、2−アミルアントラキノン等のアントラキノン系化合物;チオキサントン、2、4−ジエチルチオキサントン、2、4−ジイソプロピルチオキサントン等のチオキサントン系化合物;アセトフェノンジメチルケタール等のアルキルフェノン系化合物;トリアジン系化合物;ビイミダゾール化合物;アシルフォスフィンオキサイド系化合物;チタノセン系化合物;オキシムエステル系化合物;オキシムフェニル酢酸エステル系化合物;ヒドロキシケトン系化合物;及び、アミノベンゾエート系化合物などをあげることができる。これらをそれぞれ単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
また上記活性エネルギー線硬化性樹脂組成物は、必要に応じて、帯電防止剤、界面活性剤、レベリング剤、チクソ性付与剤、汚染防止剤、印刷性改良剤、酸化防止剤、耐候性安定剤、耐光性安定剤、紫外線吸収剤、熱安定剤、着色剤、フィラーなどの添加剤を1種、又は2種以上含んでいてもよい。
また上記活性エネルギー線硬化性樹脂組成物は、塗工し易い濃度に希釈するため、必要に応じて溶剤を含んでいてもよい。溶剤は硬化性樹脂組成物の成分、及び、その他の任意成分と反応したり、これらの成分の自己反応(劣化反応を含む)を触媒(促進)したりしないものであれば、特に制限されない。例えば、1−メトキシ−2−プロパノール、酢酸エチル、酢酸nブチル、トルエン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、ダイアセトンアルコール、アセトンなどをあげることができる。
活性エネルギー線硬化性樹脂組成物は、これらの成分を混合、攪拌することにより得られる。
活性エネルギー線硬化性樹脂組成物などの塗料を塗布する方法は特に制限されず、公知のウェブ塗布方法を使用することができる。具体的には、ロールコート、グラビアコート、リバースコート、ロールブラッシュ、スプレーコート、エアナイフコート及びダイコートなどの方法をあげることができる。
上記の表面に微細エンボス構造を有するモールドは、透明ハードコート(A)の表面に上記の形状の微細エンボスを施すことのできるものであれば制限されず、任意のモールドを使用することができる。このようなモールドは市販品されており、綜研化学株式会社のフィルフィーレ(商品名)などをあげることができる。またNTTアドバンステクノロジ株式会社、大日本印刷株式会社、キヤノンマーケティングジャパン株式会社などもモールドを市販している。
上記透明樹脂層(B)は、透明なポリ塩化ビニル系樹脂の層(B1)又は透明なポリオレフィン系樹脂の層(B2)であり、通常は、透明ポリ塩化ビニル系樹脂フィルム又は透明ポリオレフィン系樹脂フィルムからなる。(B)層は、加飾シートに深み感を与えるため、好ましくは50μm以上、より好ましくは75μm以上の厚みを有する。また公知のウェブ塗布方法・装置が適用できるように、厚みは1000μm以下が好ましい。
上記ポリ塩化ビニル系樹脂としては、例えば、ポリ塩化ビニル、塩化ビニル・酢酸ビニル共重合体、塩化ビニル・(メタ)アクリル酸共重合体、塩化ビニル・(メタ)アクリル酸メチル共重合体、塩化ビニル・(メタ)アクリル酸エチル共重合体、塩化ビニル・マレイン酸エステル共重合体、塩化ビニル・エチレン共重合体、塩化ビニル・プロピレン共重合体、塩化ビニル・スチレン共重合体、塩化ビニル・イソブチレン共重合体、塩化ビニル・塩化ビニリデン共重合体、塩化ビニル・スチレン・無水マレイン酸三元共重合体、塩化ビニル・スチレン・アクリロニトリル三元共重合体、塩化ビニル・ブタジエン共重合体、塩化ビニル・イソプレン共重合体、塩化ビニル・塩素化プロピレン共重合体、塩化ビニル・塩化ビニリデン・酢酸ビニル三元共重合体、塩化ビニル・アクリロニトリル共重合体、塩化ビニル・各種ビニルエーテル共重合体等の塩化ビニルと塩化ビニルと共重合可能な他のモノマーとの共重合体;などの1種又は2種以上の混合物を用いることができる。
また上記ポリ塩化ビニル系樹脂には、ポリ塩化ビニル系樹脂に通常使用される可塑剤を含ませることができる。上記可塑剤としては、例えば、ジブチルフタレート、ブチルヘキシルフタレート、ジヘプチルフタレート、ジオクチルフタレート、ジイソノニルフタレート、ジイソデシルフタレート、ジラウリルフタレート、ジシクロヘキシルフタレート、ジオクチルテレフタレートなどのフタレート系可塑剤;ジオクチルアジペート、ジイソノニルアジペート、ジイソデシルアジペート、ジ(ブチルジグリコール)アジペートなどのアジペート系可塑剤;トリフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート、トリキシレニルホスフェート、トリ(イソプロピルフェニル)ホスフェート、トリエチルホスフェート、トリブチルホスフェート、トリオクチルホスフェート、トリ(ブトキシエチル)ホスフェート、オクチルジフェニルホスフェートなどのホスフェート可塑剤系;多価アルコールとして、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ヘキサンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコールなどと二塩基酸としてシュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバチン酸、フタール酸、イソフタール酸、テレフタール酸などを用い、必要により一価アルコール、モノカルボン酸をストッパーに使用したポリエステル系可塑剤;その他、テトラヒドロフタール酸系可塑剤、アゼライン酸系可塑剤、セバチン酸系可塑剤、ステアリン酸系可塑剤、クエン酸系可塑剤、トリメリット酸系可塑剤、ピロメリット酸系可塑剤、ビフェニルテトラカルボン酸エステル系可塑剤、塩素系可塑剤などをあげることができる。
また上記ポリ塩化ビニル系樹脂には、本発明の目的に反しない限度において、ポリ塩化ビニル系樹脂に通常使用される添加剤を更に含ませることができる。上記添加剤としては、例えば、ハイドロタルサイト化合物、ゼオライト化合物、金属石鹸などの塩素捕捉剤;リン系、フェノール系、硫黄系などの酸化防止剤;ヒンダードアミン系などの光安定剤;エポキシ化大豆油などのエポキシ化合物;β−ジケトン化合物;過塩素酸塩類;多価アルコール;紫外線吸収剤;顔料;充填剤;滑剤;架橋剤;帯電防止剤;防曇剤;プレートアウト防止剤;表面処理剤;難燃剤;蛍光剤;防黴剤;殺菌剤;金属不活性剤;離型剤;加工助剤等をあげることができる。
上記ポリオレフィン系樹脂としては、例えば、プロピレン単独重合体、プロピレンと少量のコモノマー(例えば、エチレン、1-ブテン等)とのランダム共重合体、プロピレン系ブロック重合体(例えば、プロピレン−エチレンブロック共重合体、プロピレン−エチレン−1−ブテンブロック共重合体、プロピレン‐1−ブテンブロック共重合体等)などのポリプロピレン;高密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、超低密度ポリエチレン、エチレンとα−オレフィン(例えば、1−ブテン、1−ヘキセン、1−オクテン等)とのコポリマーなどのポリエチレン;エチレンと酢酸ビニル、メチルアクリレート、エチルアクリレート、不飽和カルボン酸(例えば、マレイン酸、イタコン酸、フマル酸等)、不飽和カルボン酸誘導体(例えば、無水マレイン酸、マレイン酸モノエステル、マレイン酸ジエステル等)などのコモノマーとのエチレン系共重合体;ポリブテン−1;ポリ4−メチルペンテン−1;塩素化ポリエチレン;などをあげることができる。
これらの中で、透明性の観点から、プロピレン単独重合体、プロピレンと少量のコモノマー(例えば、エチレン、1-ブテン等)とのランダム共重合体、ポリ4−メチルペンテン−1が好ましい。
また上記ポリオレフィン系樹脂には、本発明の目的に反しない限度において、ポリオレフィン系樹脂に通常使用される添加剤を更に含ませることができる。上記添加剤としては、例えば、ハイドロタルサイト化合物、ゼオライト化合物、金属石鹸などの塩素捕捉剤;リン系、フェノール系、硫黄系などの酸化防止剤;エルカ酸アミド、ベヘニン酸アミド、脂肪酸などの滑剤;グリセリン酸モノエステルなどの帯電防止剤;ヒンダードアミン系などの光安定剤;紫外線吸収剤;耐候性安定剤;防曇剤;プレートアウト防止剤;表面処理剤;顔料;充填剤;難燃剤;蛍光剤;防黴剤;殺菌剤;金属不活性剤;離型剤;加工助剤等をあげることができる。これらの任意成分の配合量は、通常、ポリオレフィンを100質量部としたとき、0.01〜2質量部程度である。
なお本明細書において、ポリ塩化ビニル系樹脂の用語は、ポリ塩化ビニルの1種又は2種以上の混合物のみならず、ポリ塩化ビニル以外の任意成分との樹脂組成物をも含む用語として使用している。同様に、ポリオレフィン系樹脂の用語は、ポリオレフィンの1種又は2種以上の混合物のみならず、ポリオレフィン以外の任意成分との樹脂組成物をも含む用語として使用している。
上記ポリ塩化ビニル系樹脂フィルムを上記ポリ塩化ビニル系樹脂から得る方法は、制限されず、任意の方法で製膜することができる。同様に上記ポリオレフィン系樹脂フィルムを上記ポリオレフィン系樹脂から得る方法は、制限されず、任意の方法で製膜して得ることができる。製膜の方法としては、例えば、カレンダー加工機を使用する方法、押出機とTダイを使用する方法などをあげることができる。カレンダー加工機は任意のものを使用することができ、例えば直立型3本ロール、直立型4本ロール、L型4本ロール、逆L型4本ロール、及び、Z型ロールなどをあげることができる。押出機は任意のものを使用することができ、例えば単軸押出機、同方向回転二軸押出機、及び、異方向回転二軸押出機などをあげることができる。Tダイは任意のものを使用することができ、例えばマニホールドダイ、フィッシュテールダイ、及び、コートハンガーダイなどをあげることができる。また得られたフィルムを、更に一軸延伸又は二軸延伸してもよい。
更に、透明樹脂層(B)のハードコート積層面に、ハードコート(A)を形成する前に、予め透明アンカーコート(D)を形成しておくことができる。透明アンカーコート(D)を形成することにより、透明ハードコート(A)と透明樹脂層(B)との層間強度を向上させることができる。
アンカーコート剤としてはポリエステル、アクリル、ポリウレタン、アクリルウレタン、ポリエステルウレタン等の公知のものを使用することができる。
透明樹脂層(B)のハードコート積層面に、アンカーコート剤を塗工する方法は特に制限されず、公知のウェブ塗布方法を使用することができる。具体的には、ロールコート、グラビアコート、リバースコート、ロールブラッシュ、スプレーコート、エアナイフコートおよびダイコートなどの方法をあげることができる。
透明アンカーコート(D)の厚みは、通常0.1〜5μm程度、好ましくは0.5〜2μmである。
本発明の加飾シートは、透明ハードコート(A)の微細エンボス表面の60°グロス(Ga)と透明樹脂層(B)のハードコート積層面側の60°グロス(Gb)とが下記式(α)を満たす。
Gb−Ga≧0 ・・・(α)
好ましくは下記式(α2)を満たす。
Gb−Ga≧10 ・・・(α2)
ここでGaは、透明ハードコート(A)の微細エンボス表面を、JIS−K7105 −1981に従い測定して得られた値である。Gbは、透明樹脂層(B)のハードコート積層面を、JIS−K7105
−1981に従い測定して得られた値である。
加飾シートの鮮鋭性にGaだけでなく、Gbが関係することは驚くべきことであり、そのメカニズムは不明であるが、人間の目は単純に光の表面反射を見ているだけでなく、深く潜り込んだ光の反射も見て鮮鋭性を感じているなどの仮説が有り得ると思われる。
一方、透明樹脂層(B)と装飾層(C)とが、透明接着剤(E)を介して積層する実施態様では、透明樹脂層(B)の装飾層(C)側表面の60°グロスは低い値であっても、例えば、マット調であっても、鮮鋭性には何の影響も及ばない。これも驚くことべきことであるが、透明接着剤(E)が表面の凹凸を、完全に埋めているためと考えられる。
透明ハードコート(A)と透明樹脂層(B)とを直接又は透明アンカーコート(D)を介して積層する方法は制限されず、任意の方法で積層することができる。例えば、ハードコート形成塗料を透明樹脂層(B)又は予めアンカーコートを設けた透明樹脂層(B)に直接塗布し形成する方法;モールドにハードコート形成塗料を流し込み形成したハードコートを、透明樹脂層(B)又は予めアンカーコートを設けた透明樹脂層(B)に転写する方法;などにより得ることができる。
上記装飾層(C)は、加飾シートに意匠性を付与するものであり、例えば、任意の模様を任意のインキと任意の印刷機を使用して印刷することにより形成することができる。印刷は、装飾層(C)の下に更に熱可塑性樹脂層(F)を設け、前記(F)の上に施してもよいし、透明樹脂層(B)に施してもよい。
模様としては、木目模様、大理石等の岩石の表面を模した石目模様、布目や布状の模様を模した布地模様、タイル貼模様、煉瓦積模様、寄木模様、パッチワークなどをあげることができる。
印刷インキとしては、バインダーに顔料、溶剤、安定剤、可塑剤、触媒、硬化剤等を適宜混合したものを使用することができる。上記バインダーとしては、例えば、ポリウレタン系樹脂、塩化ビニル・酢酸ビニル系共重合体樹脂、塩化ビニル・酢酸ビニル・アクリル系共重合体樹脂、塩素化ポリプロピレン系樹脂、アクリル系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ブチラール系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ニトロセルロース系樹脂、酢酸セルロース系樹脂などの樹脂、及びこれらの樹脂組成物を使用することができる。
装飾層(C)の他の実施態様としては、着色樹脂組成物のフィルムを上記熱可塑性樹脂層(F)と装飾層(C)の兼用として用いる態様をあげることができる。
上記熱可塑性樹脂層(F)に用い得るフィルムとしては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン−1、ポリ4−メチルペンテン−1、塩素化ポリエチレン、エチレン・α−オレフィン共重合体、エチレン・酢酸ビニル共重合体、エチレン・アクリル酸エステル共重合体などのポリオレフィン系樹脂;ポリ塩化ビニル、塩化ビニル・酢酸ビニル共重合体などのポリ塩化ビニル系樹脂;非結晶性、低結晶性又は結晶性のポリエステル系樹脂;アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン共重合体(ABS樹脂);スチレン・共役ジエン共重合体の水素添加物などの水添スチレン系エラストマー;ナイロン6、ナイロン66、ナイロン12などのポリアミド系樹脂;ポリカーボネート系樹脂;ポリウレタン系樹脂;アクリル系樹脂;などの1種又は2種以上の混合物のフィルムをあげることができる。これらのフィルムは、無延伸フィルム、一軸延伸フィルムおよび二軸延伸フィルムを包含する。
熱可塑性樹脂層(F)に用い得るフィルムの厚さは特に制限されないが、公知のウェブ塗布方法・装置が適用できるように、10〜1000μmのものが好ましい。
熱可塑性樹脂層(F)に印刷して装飾層(C)を設ける場合;あるいは着色樹脂組成物のフィルムを熱可塑性樹脂層(F)と装飾層(C)の兼用として用いる場合には、透明樹脂層(B)との積層は、通常、透明接着剤(E)を介して行われる。
透明接着剤(E)としては、透明であり、かつ、十分な接着強度を得られるものであれば、特に制限はなく、例えば、アクリル系、エチレン酢酸ビニル系、酢酸ビニル系、ポリエステル系、ポリウレタン系、エポキシ樹脂系、クロロプレンゴム系、スチレンブタジエンゴム系などの慣用の接着剤が使用可能である。
透明接着剤(E)の層を設ける方法は特に制限されず、公知のウェブ塗布方法を使用することができる。具体的には、ロールコート、グラビアコート、リバースコート、ロールブラッシュ、スプレーコート、エアナイフコートおよびダイコートなどの方法があげられる。このとき、必要に応じて任意の希釈溶剤、例えば1−メトキシ−2−プロパノール、酢酸nブチル、トルエン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、酢酸エチル、アセトンを使用することができる。
以下、本発明を実施例により説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
測定方法
(イ)鮮鋭性
基準サンプルとして下記(F−1)、及び、透明ハードコートを形成しなかったこと以外は、全て実施例10と同様にして得られた加飾シート(H)を用い、加飾シートの装飾の見え方(鮮鋭性)を、以下の基準で目視評価した。
◎:(F−1)と略同等以上の鮮鋭性である。
○:鮮鋭性は加飾シート(H)よりも高いが、(F−1)よりは劣る。
△:加飾シート(H)の鮮鋭性と略同等の鮮鋭性である。
×:加飾シート(H)よりも鮮鋭性に劣る。
使用した原材料、資材
透明ハードコート(A)の形成用塗料
(A−1)東洋合成工業株式会社のアクリル系紫外線硬化型樹脂系塗料「PAK−02(商品名)」
透明樹脂層(B)として用いたフィルム
(B1−1)重合度800のポリ塩化ビニル樹脂(信越化学株式会社製)100質量部、フタル酸系可塑剤(新日本理化株式会社製)8質量部、Ba-Zn系安定剤(株式会社ADEKA製)3質量部の樹脂組成物を用い、逆L型4本カレンダー製膜装置を使用し、第一ロール/第二ロール/第三ロール/第四ロールの順に175℃/175℃/180℃/175℃の条件で厚み100μmの透明な樹脂フィルムを得た。ハードコート積層面(アンカーコートは不使用)の60°グロスは65%であった。
(B1−2)厚みを200μmに変更したこと以外は、全て上記(B1−1)と同様にして透明な樹脂フィルムを得た。ハードコート積層面(アンカーコートは不使用)の60°グロスは68%であった。
(B1−3)第一ロール/第二ロール/第三ロール/第四ロールの順に180℃/180℃/185℃/180℃の条件に変更したこと以外は、全て上記(B1−1)と同様にして透明な樹脂フィルムを得た。ハードコート積層面(アンカーコートは不使用)の60°グロスは62%であった。
(B1−4)第一ロール/第二ロール/第三ロール/第四ロールの順に170℃/170℃/175℃/170℃の条件に変更したこと以外は、全て上記(B1−1)と同様にして透明な樹脂フィルムを得た。ハードコート積層面(アンカーコートは不使用)の60°グロスは50%であった。
(B2−1)株式会社プライムポリマーのポリプロピレン「プライムポリプロF−730NV(商品名)」を用い、Tダイ、及び鏡面金属ロールとゴムロールとのニップ方式の引巻取り装置を備えた押出製膜装置を使用し、Tダイ出口樹脂温度230℃、鏡面金属ロール温度30℃の条件で、厚み100μmの透明な樹脂フィルムを得た。ハードコート積層面(アンカーコートは不使用)の60°グロスは72%であった。また装飾層(C)側の表面はマット調(60°グロスは6%)である。
(B2−2)厚みを200μmに変更したこと以外は、全て上記(B2−1)と同様にして透明な樹脂フィルムを得た。ハードコート積層面(アンカーコートは不使用)の60°グロスは67%であった。また装飾層(C)側の表面はマット調(60°グロスは7%)である。
(B2−3)Tダイ出口樹脂温度を210℃に変更したこと以外は、全て上記(B2−1)と同様にして透明な樹脂フィルムを得た。ハードコート積層面(アンカーコートは不使用)の60°グロスは60%であった。また装飾層(C)側の表面はマット調(60°グロスは6%)である。
(B2−4)Tダイ出口樹脂温度を210℃、鏡面金属ロール温度を45℃に変更したこと以外は、全て上記(B2−1)と同様にして透明な樹脂フィルムを得た。ハードコート積層面(アンカーコートは不使用)の60°グロスは51%であった。また装飾層(C)側の表面はマット調(60°グロスは8%)である。
透明接着剤(E)
(E−1)大日精化工業株式会社のエステル樹脂溶液系接着剤「セイカボンドE−295(商品名)」100質量部、同社のセイカボンドC−75N(商品名)」10質量部、及び希釈溶剤のメチルエチルケトン100質量部を混合、攪拌することにより得た。
装飾層(C)を設けた熱可塑性樹脂フィルム(F)
(F−1)リケンテクノス株式会社の片面に木目柄の装飾を印刷されたポリ塩化ビニル系樹脂フィルム「S2338 FC92255 印刷型番1463(日本デコール株式会社のToyosina(印刷型番))」、厚み80μ。
モールド
(M−1)綜研化学株式会社のフィルムモールド「フィルフィーレARP250(商品名)」、周期250nm、高さ170nmのモスアイパターン。
(M−2)綜研化学株式会社のフィルムモールド「フィルフィーレARP350(商品名)」、周期350nm、高さ250nmのモスアイパターン。
(M−3)綜研化学株式会社のフィルムモールド「フィルフィーレHOP140(商品名)」、周期250nm、高さ200nm、凹部の直径145nmのホールーパターン。これを塗布膜に押圧するとハードコートにピラーパターンが形成される。
(M−4)綜研化学株式会社のフィルムモールド「フィルフィーレHOP1700(商品名)」、周期3000nm、高さ1700nm、凹部の直径1700nmのホールーパターン。これを塗布膜に押圧するとハードコートにピラーパターンが形成される。
実施例1
上記塗料(A−1)を、上記透明樹脂フィルム(B1−1)のハードコート積層面に、安田精機株式会社製のベーカー式アプリケーターを使用して塗布し、直ちに上記モールド(M−1)を圧力0.25MPa、時間20秒の条件で押圧した後、モールド側から365nmUV−LED光源の照射装置を使用し、2.52mmJ/cm、時間15分の条件で塗料(A−1)を硬化させた。続いて、上記接着剤(E−1)を、上記で得られた積層体の(B1−1)側の面に、安田精機株式会社製のベーカー式アプリケーターを使用して塗布し、予備乾燥後、トクデン株式会社の誘電発熱式ラミネーターJD−DWを使用し、圧力0.3MPa、温度120℃の条件で上記(F−1)の装飾面と貼合した。更に温度120℃、24時間の条件で完全に接着剤(E−1)を硬化させ、加飾シートを得た。結果を表1に示す。
実施例2〜18、比較例1〜4
使用するモールド又は/及び透明樹脂フィルムを表1〜3の何れか1つに示すものに変更したこと以外は、全て実施例1と同様に行った。結果を表1〜3の何れか1つに示す。
本発明の加飾シートは、良好な鮮鋭性を発現している。一方、比較例1及び3は実施例1、4、7、10、13、16と同様の形状の微細エンボスが透明ハードコートに施されているにも係らず、式(α)を満足しない構成であるため、鮮鋭性に劣る。また比較例2及び4は透明ハードコートに施された微細エンボスの形状が不適切であるため、鮮鋭性に劣る。
実施例10の加飾シートの透明ハードコート(A)表面に施した微細エンボスの走査電子顕微鏡写真である。

Claims (2)

  1. 表層側から順に透明ハードコート(A)、透明樹脂層(B)、装飾層(C)を有する加飾シートであって、
    (1)透明ハードコート(A)と透明樹脂層(B)とは、直接又は透明アンカーコート(D)を介して積層されていること;
    (2)透明樹脂層(B)と装飾層(C)とは、直接又は透明接着剤(E)を介して積層されていること;
    (3)透明ハードコート(A)が最表層であること;
    (4)透明ハードコート(A)の表面に微細エンボスが施されていること;
    (5)上記微細エンボスの形状は、複数の凸部を有し、上記凸部間の平均間隔が100〜500nmであり、上記凸部の高さが80〜500nmであること;
    (6)透明樹脂層(B)は、透明ポリ塩化ビニル系樹脂層(B1)又は透明ポリオレフィン系樹脂層(B2)であること;
    (7)透明ハードコート(A)の微細エンボス表面の60°グロス(Ga)と透明樹脂層(B)のハードコート積層面側の60°グロス(Gb)とが下記式(α)を満たすこと;
    を特徴とする加飾シート。
    Gb−Ga≧0 ・・・(α)
  2. 上記微細エンボスの形状が、モスアイパターン、ピラーパターンからなる群から選択される少なくとも何れか1つであることを特徴とする請求項1に記載の加飾シート。
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