JP6044303B2 - 環式ポリアリーレンスルフィドの回収方法 - Google Patents

環式ポリアリーレンスルフィドの回収方法 Download PDF

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Description

環式ポリアリーレンスルフィドの回収方法が提供でき、より詳しくは均一で取り扱い易い結晶を形成させて、製造プロセス面において高い濾過性などを有する回収方法を提供し、連続生産を可能とする方法に関する。
芳香族環式化合物はその環状であることから生じる特性に基づく高機能材料や機能材料への応用展開可能性、たとえば包接能を有する化合物としての特性や、開環重合による高分子量直鎖状高分子の合成のための有効なモノマーとしての活用など、その構造に由来する特異性で近年注目を集めている。環式ポリアリーレンスルフィド(以下、ポリアリーレンスルフィドをPASと略する場合もある)も芳香族環式化合物の範疇に属し、上記同様に注目に値する化合物である。
環式PASの混合物を製造する方法として、スルフィド化剤とジハロゲン化芳香族化合物とを有機極性溶媒中で接触させて環式PASを製造する方法であって、スルフィド化剤のイオウ原子1モルに対して有機極性溶媒を1.25リットル以上用いて、反応混合物を常圧における還流温度を超えて加熱することを特徴とする方法が開示されている(たとえば特許文献1参照)。この方法では、反応生成物から目的物である環式PASを単離する手法として次の方法が開示されている。即ち、反応により得られた混合物中に存在するPAS成分である環式PASと線状PASとを両方とも含む混合物としてPAS混合物を回収した後に、環式PASをクロロホルムで抽出し、次いでこの抽出液からクロロホルムを留去して固形分を得て、再びクロロホルムでスラリーを調製した後、このスラリーをメタノールに再沈する環式PASの回収方法が開示されている。また、特許文献1と同じ再沈という単位操作を用いた環式PASの単離に関する別の方法として、環式PASをクロロホルムで抽出し、必要に応じてクロロホルム除去して濃縮した後にメタノールに再沈する方法(たとえば特許文献2及び3参照)、ポリフェニレンスルフィド(以下、ポリフェニレンスルフィドをPPSと略する場合もある)を塩化メチレンで抽出して得られた抽出液の飽和溶液をメタノールに再沈殿することで沈殿物として環状フェニレンスルフィドオリゴマー混合物を得る方法(たとえば特許文献4参照)、4−ブロモチオフェノールの銅塩をキノリン中の超希釈条件下で加熱することで得られた環状PPSを含む反応液から溶媒を留去することで生成物の濃厚溶液を得た後、これを含水メタノールに滴下、次いで塩酸水溶液及び蒸留水で精製することで固形分を回収し、この固形分のクロロホルム可溶分をメタノールを用いて再沈殿回収し、さらに酢酸エチルでリニアーオリゴマーを溶解除去することで環状ポリフェニレンスルフィドオリゴマーを得る方法(たとえば特許文献5参照)が開示されている。これらの方法は用いる溶媒の種類や組み合わせは異なるものの、いずれもクロロホルムや塩化メチレンといった環境負荷の大きい塩素系溶媒を用いた抽出と、塩素系溶媒対比で大過剰のメタノールに再沈することを必須要件とした方法であり環式PASを回収するために多種多量の有機溶媒を用いることが必要であること、また、これら操作により大量の混合溶媒廃液が発生する、操作が煩雑であり多くの工程を含みプロセス性に劣る等、多くの課題を有する方法であった。
また、再沈操作以外の方法で環式PASを回収する方法として、架橋タイプのポリフェニレンスルフィド樹脂からクロロホルムを抽出溶媒としてソックスレー抽出を行い、この抽出液を室温まで冷却した際の白色析出物として純度99.9%のシクロヘキサ(p−フェニレンスルフィド)を得る方法が開示されている(例えば特許文献6参照)。この方法では再沈操作ではなく再結晶により環式PASの回収を行っており、再沈操作に必要なメタノール等の他の溶媒の使用を省略することができている。しかしながらこの方法で得られる環状PPSはシクロヘキサ(p−フェニレンスルフィド)のみであり、他の環員数を有する環状PPSについては回収することが困難であり、極めて生産性に劣る方法であった。特許文献7に記載する手法においては、PAS混合物にイオン交換水を添加する水晶析法により環状PASが回収でき、上記文献1〜6の手法と比較して生産性、経済性などに有利な手法であるが、生産設備の簡略化、設備コストの低減等の観点から、更に生産性優れた、より効率のよい環式PASを回収する方法が望まれていた。
特開2009−030012号公報 特開2007−231255号公報 国際公開第2007/034800号 特開平05−163349号公報 米国特許第5869599号公報 特開平10−077408号公報 特開2011−132498号公報
本発明は上記課題を解決し、均一で取り扱い易い結晶を持つ環式ポリアリーレンスルフィドを効率よく回収する方法を提供することを課題とする。
上記課題に対し本発明は、
少なくとも(a)環式ポリアリーレンスルフィド及び(b)有機溶媒を含み、環式ポリアリーレンスルフィド(a)が溶解している混合物から、(b)とは異なる溶媒(c)を、ザウター平均粒子径(D32)が10μm以上5000μm以下で、混合物表面に対して噴霧することで環式ポリアリーレンスルフィドを固形分として回収することを特徴とする環式ポリアリーレンスルフィドの回収方法、
環式ポリアリーレンスルフィド(a)が下記式(A)で表される化合物であって、式中Arはアリーレン基、mの値が4〜50であることを特徴とする請求項1に記載の環式ポリアリーレンスルフィドの回収方法、
Figure 0006044303
溶媒(c)を噴霧する混合物が、(a)環式ポリアリーレンスルフィドが(b)有機溶媒に対して過飽和状態で溶解していることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の環式ポリアリーレンスルフィドの回収方法、
過飽和状態で溶解している混合物を調整する際は、(a)環式ポリアリーレンスルフィドの含有率が(b)有機溶媒に対して0.5重量%以上8重量%未満である状態から、反応器内を3kPa以上20kPa以下へ減圧させた状態で、0.1℃/min以上20℃/min以下の加熱速度で、80℃以上170℃以下まで加熱し、溶媒(b)を回収しつつ(a)環式ポリアリーレンスルフィドの含有率が8重量%以上50重量%以下の濃縮混合物を得ることを特徴とする請求項3に記載の環式ポリアリーレンスルフィドの回収方法、
溶媒(c)を滴下する際は、(a)環式ポリアリーレンスルフィドが(b)有機溶媒に対して完全に溶解していることを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれかに記載の環式ポリアリーレンスルフィドの回収方法、
溶媒(c)を噴霧する際の速度は0.001g−溶媒(c)/g−溶媒(b)・min以上1.0g−溶媒(c)/g−溶媒(b)・min以下であり、溶媒(c)の液温が50℃以上100℃以下であることを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれかに記載の環式ポリアリーレンスルフィドの回収方法、
環式ポリアリーレンスルフィドを固形分として回収する際の分離温度は、0℃以上90℃以下であることを特徴とする請求項1乃至請求項6のいずれかに記載の環式ポリアリーレンスルフィドの回収方法、
とした。
本発明によれば、環式ポリアリーレンスルフィドの回収方法が提供でき、より詳しくは均一で取り扱い易い結晶を形成させて、製造プロセス面において高い濾過性などを有する回収方法を提供できる。
以下に、本発明実施の形態を説明する。
(1)環式ポリアリーレンスルフィド
本発明における環式ポリアリーレンスルフィドとは、式−(Ar−S)−の繰り返し単位を主要構成単位とする環式化合物であり、好ましくは当該繰り返し単位を80モル%以上含有する下記一般式(A)のごとき化合物である。
Figure 0006044303
ここでArとしては下記の式(B)〜式(M)などであらわされる単位を例示できるが、なかでも式(B)〜式(D)が好ましく、式(B)及び式(C)がより好ましく、式(B)が特に好ましい。
Figure 0006044303
(ただし、式中のR1,R2は水素、炭素数1から6のアルキル基、炭素数1から6のアルコキシ基、ハロゲン基から選ばれた置換基であり、R1とR2は同一でも異なっていてもよい。)
なお、環式ポリアリーレンスルフィドにおいては前記式(B)〜式(M)などの繰り返し単位をランダムに含んでも良いし、ブロックで含んでも良く、それらの混合物のいずれかであってもよい。これらの代表的なものとして、環式ポリフェニレンスルフィド、環式ポリフェニレンスルフィドスルホン、環式ポリフェニレンスルフィドケトン、これらが含まれる環式ランダム共重合体、環式ブロック共重合体及びそれらの混合物などが挙げられる。特に好ましい環式ポリアリーレンスルフィドとしては、主要構成単位としてp−フェニレンスルフィド単位
Figure 0006044303
を80モル%以上、特に90モル%以上含有する環式ポリフェニレンスルフィド(以下、環式PPSと略すこともある)が挙げられる。
環式ポリアリーレンスルフィドの前記(A)式中の繰り返し数mに特に制限はないが4〜50が好ましく、4〜25がより好ましく、4〜20が更に好ましい。mがこの様な範囲の環式PASは加熱した際に流動化する温度が低くなる傾向にあるため、環式PASを成形加工する際や、他の樹脂と溶融混練する際に加工温度を低くできるとの観点で有利となる。また、後述するように環式PASを含有するポリアリーレンスルフィドプレポリマーを高重合度体への転化する場合には、環式ポリアリーレンスルフィドが溶融解する温度以上に加熱して行うことが好ましいが、mが大きくなると環式ポリアリーレンスルフィドの溶融解温度が高くなる傾向にあるため、ポリアリーレンスルフィドプレポリマーの高重合度体への転化をより低い温度で行うことができるようになるとの観点でmを前記範囲にすることは有利となる。また、本発明の環式ポリアリーレンスルフィドは、単一の繰り返し数を有する単独化合物、異なる繰り返し数を有する環式ポリアリーレンスルフィドの混合物のいずれでも良いが、異なる繰り返し数を有する環式ポリアリーレンスルフィドの混合物の方が単一の繰り返し数を有する単独化合物よりも溶融解温度が低く、融解に要する熱量も小さくなる傾向があるため好ましい。
また、本発明の環式ポリアリーレンスルフィドは前記式(A)で表される環式ポリアリーレンスルフィドのみで構成されることが望ましい。即ち環式PAS以外の不純物を含まないことが望ましく、不純物含有量が少ないほど、言い換えれば純度が高いほど環式PASとしての特性が発現されることになる。一方で高純度の環式PASを得るためにはより多大な労力とエネルギーを要する傾向になる。従って通常は環式PASを90重量%以上含むことが好ましく、93%以上含むことがより好ましい。ここで環式PASを用いる用途によっては不純物を含んでいることが許容される場合もあるため、本発明においてはある程度の不純物を含む環式PASを用いることも可能であり、特に環式PASの純度に制限は無いが、環式PASを50重量%以上含むもの、好ましくは70重量%以上、より好ましくは80重量%以上含むものをもちいることも可能である。ここで本発明の環式PASの回収をより効率的に実施するとの観点においては、環式PASに含まれる環式ポリアリーレンスルフィド以外の化合物は線状ポリアリーレンスルフィドであることが特に好ましい。これは同じくアリーレンスルフィドを構成単位とする化合物である線状PASはその特性において環式PASと類似性を有するため、不純物として含まれていても本発明の主旨を害しない傾向にあるためである。
また、本発明の環式ポリアリーレンスルフィドに含まれる環式ポリアリーレンスルフィドの総量に対する前記式(A)のm=6の環式PASの含有量は50重量%未満であることが好ましく、40重量%未満がより好ましく、30重量%未満がさらに好ましい([m=6の環式PAS(重量)]/[環式PAS混合物(重量)]×100(%))。前述した特許文献6に開示されている方法、すなわち架橋タイプのPPSをソックスレー抽出し、これで得られた抽出液を冷却して固形分を得る方法、すなわち「再結晶」により環式PPSを得る方法においては純度99.9%のシクロヘキサ(p−フェニレンスルフィド)(m=6の環式PPS)を得る方法が開示されている。このm=6の環式PPSは348℃に融解ピーク温度を有するとされ、これはこのm=6の環式PPSが極めて安定な結晶構造を有し、且つ結晶化もし易いためと考えられる。従ってこのような環式PASを加工する際には極めて高い加工温度が必要となるため、後述の環式PAS製造方法における溶融加工温度をより低い温度にしうるとの観点から本発明の環式PAS混合物においては、特に前記式(A)のm=6の環式PASの含有量を先述の範囲とすることが好ましい。同様に後述の環式PAS製造方法における溶融加工温度をより低い温度にしうるとの観点から、本発明では環式PASとして異なる繰り返し数を有する環式ポリアリーレンスルフィドの混合物を用いることが好ましいことは前述したとおりであるが、環式PAS混合物に含まれる環式PASのうち前記式(A)のmが4〜12の環式PASの総量を100%とした場合に、mが5〜8の環式PASをそれぞれ5%以上含む環式PAS混合物を用いることが好ましく、mが5〜8の環式PASをそれぞれ7%以上含む環式PAS混合物を用いることがより好ましい。このような組成比の環式PAS混合物は特に融解ピーク温度が低くなり、且つ融解熱量も小さくなる傾向にあり溶融加工性の面で特に好ましい。なおここで、環式PAS混合物における環式ポリアリーレンスルフィドの総量に対する繰り返し数mの異なる環式PASの含有率は、環式PAS混合物をUV検出器を具備した高速液体クロマトグラフィーで成分分割した際に環式PASに帰属される全ピーク面積に対する、所望するm数を有する環式PAS単体に帰属されるピーク面積の割合として求めることができる。なお、この高速液体クロマトグラフィーで成分分割された各ピークの定性は、各ピークを分取液体クロマトグラフィーで分取し、赤外分光分析における吸収スペクトルや質量分析を行うことで可能である。
(2)有機溶媒(b)
本発明では混合物中に存在する環式PASのうち50重量%以上が溶解している混合物から環式PASを固形分として回収するが、この混合物を調製する際に有機溶媒(b)を用いる。ここで混合物中に存在する環式PASのうち50重量%以上が溶解している混合物から環式PASを固形分として回収することにより、回収操作による環式PASの純度向上や回収操作性に優れる形状として環式PAS固体が回収できるようになる。
ここで有機溶媒(b)は、混合物中に存在する環式PASの50重量%以上を溶解する溶解力を有する有機溶媒であれば特に制限は無い。ここで有機溶媒の溶解力は、環式PASの溶解を行う際の温度や圧力や使用量など様々な要因が影響するため前記条件に合致する有機溶媒であればその選択に特に制限は無いが、より効率よく且つ簡易な操作で環式PASの回収を実施するとの観点では、より少量の有機溶剤の使用量で多量の環式PASを溶解できることが望ましい。このような特性を有する溶剤としてはたとえばペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、シクロヘキサン、シクロペンタン、ベンゼン、トルエン、キシレン等の炭化水素系溶媒、クロロホルム、ブロモホルム、塩化メチレン、1,2−ジクロロエタン、1,1,1−トリクロロエタン、クロロベンゼン、2,6−ジクロロトルエン等のハロゲン系溶媒、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジイソプロピルエーテル等のエーテル系溶媒、N−メチル−2−ピロリドン、N−エチル−2−ピロリドン、N−シクロヘキシル−2−ピロリドンなどのN−アルキルピロリドン類、N−メチル−ε−カプロラクタム、ε−カプロラクタムなどのカプロラクタム類、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、ヘキサメチルリン酸トリアミドなどに代表される非プロトン性溶媒などの有機溶媒を例示できる。
また一般に有機溶剤の溶解力は溶解操作に処する温度の上昇に伴って上昇するが、より高温で溶解操作を実施することでより少量の有機溶剤の使用量で多量の環式PASを溶解できる傾向にある。一方で温度上昇により有機溶剤の蒸気圧は上昇する傾向にあるため、温度上昇によって有機溶剤の蒸気圧が常圧以上になったり、もしくは常圧に近い条件となり、有機溶剤の大気への揮散による影響が増大する傾向となる。このような条件下で溶解操作を行う際には有機溶剤の大気への揮散を防止可能な容器を用いる必要性が生じ、たとえば密閉条件下での溶解操作が可能な加圧条件に耐えうる容器を用いるなど、溶解操作の実施により高度で高コストな設備を用いる必要性が生じる。従って、より簡易な設備を用いて溶解操作を行うためには、有機溶剤の蒸気圧が低い条件で溶解操作を実施できることが望ましく、このような有機溶剤を選定する一つの指針が有機溶剤の沸点であり、沸点の高い有機溶剤が好ましい。この観点ではエーテル系溶媒や非プロトン性極性溶媒が好ましく、非プロトン性溶媒がより好ましいといえる。なお、ここで使用する有機溶媒(b)は後述する有機溶媒(b)以外の溶媒(c)、好ましくはプロトン性溶媒と混和することが望ましいが、エーテル系溶媒や非プロトン性溶媒は一般にプロトン性溶媒と混和しやすい特徴を有しているため、この観点でも望ましいといえる。
また、用いる溶剤としてはPAS成分の分解や架橋など好ましくない副反応を実質的に引き起こさないものが好ましい。
以上のごとき観点において、有機溶剤(b)として特に望ましいのはN−メチル−2−ピロリドン、N−エチル−2−ピロリドン、N−シクロヘキシル−2−ピロリドンなどのN−アルキルピロリドン類、N−メチル−ε−カプロラクタム、ε−カプロラクタムなどのカプロラクタム類、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、ヘキサメチルリン酸トリアミドなどに代表される非プロトン性溶媒であり、中でも安定性に優れや取り扱いが容易なアミド系溶媒であるN−メチル−2−ピロリドン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミドが好ましく、N−メチル−2−ピロリドンがよりいっそう好ましいものとして例示できる。
(3)溶媒(c)
本発明では環式PAS(a)及び有機溶媒(b)を含む混合物に(b)とは異なる溶媒(c)を加えることで環式PAS(a)を固形分として回収する。
ここで用いる溶媒(c)は、(a)環式PAS及び(b)有機溶媒を含む混合物に加えることで混合物中の環式PAS(a)の50重量%以上、好ましくは70%以上、より好ましくは90%以上、さらに好ましくは95%以上を固形分として回収できる特性を有するものであれば良い。従って溶媒(c)は有機溶媒(b)よりも環式PASに対する溶解性が低いものであることが必要である。また溶媒(c)を加えることで、より効率よく環状PASを固形分とするためには、溶媒(c)は有機溶媒(b)と混和することが望ましい。この様な特性を有する溶剤は一般に極性の高い溶剤があり、用いた有機溶媒(b)の種類により好ましい溶剤は異なるので限定はできないが、例えば水や、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、ヘキサノールに代表されるアルコール類、アセトン、メチルエチルケトンに代表されるケトン類、酢酸エチル、酢酸ブチルに代表される酢酸エステル類が例示できる。これらの中でもプロトン性溶媒である水やアルコール類は極性が特に高く環式PASの溶解性が低いため好適に利用でき、プロトン性溶媒の中でも入手性、経済性、取り扱い性の容易さの観点から水、メタノール、エタノールが好ましく、水が特に好ましい。
(4)環式ポリアリーレンスルフィドの回収方法
本発明では少なくとも(a)環式ポリアリーレンスルフィド及び(b)有機溶媒を含む混合物であって環式ポリアリーレンスルフィド(a)の50重量%以上が溶解している混合物に、(b)とは異なる溶媒(c)を加えることで環式ポリアリーレンスルフィド(a)を固形分として回収率50重量%以上で回収する。
本回収法においてはまず、少なくとも(a)環式PAS及び(b)有機溶媒からなる混合物を調製する。この混合物においては(a)環式PASと(b)有機溶剤以外は存在しないことが好ましいが、本発明の本質を損なわない範囲でその他の成分を含んでいても良い。なお、このような第3成分の量が増大すると、本回収方法により単離回収される環式PASの純度が低下する傾向にあるため、前述したような好ましい純度の環式PASを得るためには第3成分は少ないことが望まれる。この混合物における(a)の含有率(環式PAS(a)の重量と有機溶媒(b)の重量の総和に対する環式PAS(a)の重量分率)は高いほど好ましく、一般に含有率が高いほど回収操作後に得られる環式PASの収量が増大し、効率よく環式PASを回収できる。この観点から、混合物における(a)の含有率は8重量%以上が好ましく、9重量%以上がより好ましく、10重量%以上がよりいっそう好ましい。一方、混合物における(a)の含有率の上限は特に無いが、一般に環式PASは各種溶剤に対する溶解性が低い傾向にあるため、含有率が高すぎると不溶成分が生じる傾向となり、回収操作に不都合を生じることもある。この回収操作上の不都合としてはたとえば、混合物(固形分を含むスラリー状の場合もある)が不均一になり、局所的な組成が異なり回収物の品質が低下するなどである。またこのような不都合が生じる傾向は用いる有機溶剤(b)の特性や混合物調製時の条件などに大きく依存するため、混合物における(a)の含有率の上限を定めることはできないが、通常50重量%以下、好ましくは30重量%以下、より好ましくは20重量%以下の含有率が望ましい。
また、前記したごとき回収操作における不都合を回避して混合物における(a)の含有率をより高くするために、混合物を調製する際に加熱することも可能である。この温度は(2)項において述べたとおり用いる有機溶剤(b)特性に応じて異なるため一意的に決めることはできないが、50℃以上が好ましく、60℃以上がより好ましく、75℃以上がさらに好ましい。一方で上限温度としては使用する有機溶媒(b)の常圧における沸点以下であればよいが、高温で結晶を析出させると微細結晶が形成される傾向にあるため、固液分離を行う際に濾紙の目詰まりの要因となり、回収操作上の不都合となる傾向がある。この観点から、操作温度範囲の上限としては100℃以下が好ましく、90℃以下がより好ましく、85℃以下がさらに好ましい。なお、この混合物を調製するにあたり、撹拌や震蕩等の操作を施すことも可能であり、より均一な混合物の状態を保つとの観点でも望ましい操作といえる。なおここで、(a)環式PAS及び(b)有機溶媒からなる混合物においては、この混合物中に存在する環式PASのうち50重量%以上が溶解していることが必要であるが、完全に溶解していることが最も望ましい。これにより環式PASの回収におけるメリットが生じることは前記したとおりである。ここで、混合物に溶解している環式PAS量を定量する手法としてはたとえば、混合物を通常の固液分離操作に処して不溶成分を回収し、これの重量求めることで定量する方法が例示できる。
本発明で用いる環式PAS(a)と有機溶媒(b)の混合物は、上記の好ましい環式PAS(a)の含有率とするために、希薄な混合物を濃縮して得ることが好ましい。混合物を調整する際に初めから高濃度の混合物とすると、得られる回収環式PAS中に有機溶媒(b)が含まれることがあり、希薄な混合物を濃縮して好ましい環式PAS(a)の含有率の混合物を調整することで、得られる回収環式PASの純度を高くすることができる。さらに、希薄な混合物を濃縮することで溶媒(b)の総量を減ずることができるため、後述する溶媒(c)の添加において、溶媒(c)の添加量を低減することができる。これにより後段の工程の機器サイズを小さくできる上、溶媒回収などの工程を設ける際はエネルギーロスを抑えることができ、生産コストを抑えたプロセスが考案できる。希薄な混合物中では(a)の不溶成分が生じないことが望ましいため含有率の上限は8重量%未満が好ましい。一方で下限は(a)の回収効率等の観点から0.5重量%以上が好ましい。濃縮の手法としては窒素等の不活性ガス雰囲気下にて溶媒(b)の常圧における沸点以上の温度に加熱して溶媒(b)を飛散させる方法や減圧条件下にて溶媒(b)の沸点以上の温度に加熱して溶媒(b)を飛散させる方法などが例示できるが、減圧濃縮による濃縮方法の方が加熱温度を低下させることができ、生産設備の製造コストやエネルギーコスト等のメリットを生じ易いため、より好ましい。この好ましい濃縮方法において、圧力の上限としては、必要な加熱温度をできるだけ低下させることが望ましいため、20kPa以下が好ましく、15kPa以下がより好ましく、10kPa以下が更に好ましい。また、下限は特に指定しないが、突沸が発生しやすい条件は避けるべきであり、1kPa以上が好ましく、2kPa以上がより好ましく、3kPa以上が更に好ましい。また、減圧条件下では加熱による突沸が生じ易いためできるだけ加熱速度を抑えることが望ましく、加熱速度の上限は20℃/min以下が好ましく、15℃/min以下がより好ましく、10℃/min以下が更に好ましい。一方、下限は特に指定しないが生産設備等における作業時間などを考慮すると、一定以上の加熱速度を有していることが望ましく、0.1℃/min以上が好ましく、0.5℃/min以上がより好ましく、1℃/minが更に好ましい。また、減圧濃縮時の温度は、蒸気など比較的安全かつ安価な加熱源を使用できる範囲であることが望ましく、170℃が好ましく、160℃がより好ましく、150℃が更に好ましい。一方で温度が低いと溶媒(b)の飛散効率が低下し、作業時間が長くなることが考えられるため、効率的に作業が行える範囲であることが望ましく、80℃以上が好ましく、90℃以上がより好ましく、100℃以上が更に好ましい。
本回収法においては次に、上記のごとき混合物に、有機溶媒(b)とは異なる溶媒(c)を加えることで、溶媒(b)に溶解している環式ポリアリーレンスルフィドを固形分として析出させて回収する。このとき溶媒(c)を加えたことで粗大な固形分が生成するような添加方法は避けるべきであり、混合物を撹拌しながら溶媒(c)を噴霧する方法が好ましい。溶媒(c)を加える温度に制限は無いが、温度が低いほど溶媒(c)を加えた際に粗大な固形分が生成する傾向が高まるため、このような操作上の不都合を回避し混合物の均一性を保つとの観点で50℃以上が好ましく、60℃以上がより好ましく、75℃以上がさらに好ましい。一方で上限温度としては使用する有機溶媒(b)及び溶媒(c)の常圧における沸点以下が好ましいため、100℃以下が好ましく、90℃以下がより好ましく、80℃以下が更に好ましい。このような好ましい温度範囲で溶媒(c)を加える操作を行うことで、回収する際に固液分離の効率を向上させることができ、操作の観点及び設備の観点でより簡易な方法で回収操作を実施できる傾向にある。
また、溶媒(c)を添加する際は溶媒(b)に対して局所的に滴下すると、局所的な結晶生成が促進されるため、粗大粒子が形成されてしまう傾向がある。これを回避するために本発明では、溶媒(c)添加時の液滴径を微細な状態で噴霧する。このような添加方法を可能にする例として、スプレーノズルを使用する方法が提案できるが、ノズルは加圧液体を噴霧孔から吐出して錘状や円環状、扇状などに液滴を噴霧可能であればよく、ノズルの構造は特に制限されず、一流体ノズル又は二流体ノズルのいずれであってもよい。こういったスプレー等により噴霧された液滴径は、慣用の方法、例えば、レーザー光線を利用する方法、ストロボを利用する方法、顕微鏡写真を利用する方法などにより測定することができる。平均粒子径には、一般的に算術平均粒子径、ザウター平均粒子径などが知られている。本発明では、混合物の表面部においてスプレー噴霧された液滴のザウター平均粒子径(D32)を10μm以上5000μm以下とすることで、回収操作が容易な環式PASを固形分として析出させることができる。噴霧する液滴のザウター平均粒子径は5000μm以下であり、3000μm以下がより好ましく、1000μm以下がさらに好ましい。混合物へ落液し、混合物と十分混和する必要があるため浮遊しにくい大きさが必要であるため、10μm以上であり、50μm以上がより好ましく、100μm以上が更に好ましい。これにより析出する環式PASの粒子径は濾過性に優れ、かつ品質に影響しない範囲で大きく、均一となり、分離に好適な粒子を形成することができる。なお、前記ザウター平均粒子径(D32)は、試料中の液滴の体積の総和(dini)と表面積の総和(dini)との比であり、下記式(1)で表される。
ザウター平均粒子径(D32)=Σdini/Σdini
(ここでdiは粒子の直径を表し、niは特定の1つの粒子を表すものとする。)
また、本発明においては、混合物表面に噴霧される溶媒(c)の液滴のザウター平均粒子径を直接測定するのは困難であるので、あらかじめ噴霧を行うスプレーノズルなどを用いて、ガラス板などに溶媒(c)を噴霧した際の液滴のザウター平均粒子径を測定し、混合物表面での液滴のザウター平均粒子径とする。
さらに溶媒(c)を噴霧により添加する際は、添加速度に留意する必要があり、添加が速ければ結晶生成速度が上がり、結晶径が小さくなる傾向がある上、攪拌により系内が均一化される前に局所的な結晶形成が促進されるため、部分的には粗大な粒子が形成される傾向がある。この際できる微細粒子は後の固液分離の効率を低下させる上、粗大粒子は溶媒(b)や(c)などを不純物として結晶内へ内包し、環式ポリアリーレンスルフィドの純度の低下に繋がることが懸念される。このような操作上の不都合を回避するためには、溶媒(c)の添加速度が1.0g−溶媒(c)/g−溶媒(b)・min以下が好ましく、0.5g−溶媒(c)/g−溶媒(b)・min以下がより好ましく、0.1g−溶媒(c)/g−溶媒(b)・min以下が更に好ましい。また、添加速度の下限値としては特に指定しないが、作業時間の冗長化を避けるなどの観点からある程度の速度は必要であると考えられるため、0.001g−溶媒(c)/g−溶媒(b)・min以上が好ましく、0.003g−溶媒(c)/g−溶媒(b)・min以上がより好ましく、0.005g−溶媒(c)/g−溶媒(b)・min以上が更に好ましい。尚、この速度単位は溶媒(b)の単位量と単位時間に対しての溶媒(c)の添加量と定義する。このようにして混合物から環式PASを析出させ、固液分離することで環式PASを回収する。
また、本発明の環式PASの回収方法においては、環式PASの回収方法として従来採用されてきた再沈法と比べて少量の溶媒の使用でも効率よく環式PASを回収することが可能であるため、環式PAS(a)と有機溶媒(b)を含む混合物に加える溶剤(c)の重量を有機溶媒(b)の重量以下とすることも可能である。さらに前述したように、本発明において好ましい有機溶媒(b)と溶媒(c)の選択をすることで、環式PAS(a)と有機溶媒(b)を含む混合物に加える溶剤(c)の重量を有機溶媒(b)の重量の50重量%以下にすることも可能であり、より好ましい条件では40重量%以下、さらに好ましい条件では35重量%以下の条件を設定することも可能となる。一方で、溶剤(c)を加える重量の下限に特に制限はないが、より効率よく環式PASを固形分として回収するためには同じく10重量%以上が好ましく、15重量%以上がより好ましい。加える溶剤(c)の量を少なくすることで、回収操作を小スケールで行うことができ、操作性の向上が期待できる。本発明においては混合物中に含まれる環式PAS(a)の50重量%以上を固形分として回収することが可能であるが、前記のような好ましい溶剤(c)の使用量の範囲では環式PAS(a)の80重量%以上を固形分として回収できる傾向にあり、より好ましくは90重量%以上を、さらに好ましくは95%以上を、よりいっそう好ましくは98重量%以上を回収することも可能である。なお、環式PASの回収方法として従来採用されてきた再沈法においては、環式PASの少なくとも一部が溶解した溶液もしくはスラリーを環式PASの貧溶媒に滴下する方法で環式PASの回収がなされてきたが、一般にこの方法で用いられる貧溶媒の使用量は、環式PAS溶液またはスラリーに対して大過剰であるため回収操作において大量の廃液が発生する等の課題があった。またこの再沈法において貧溶媒の使用量を低減し、たとえば前述した本発明における好ましい溶媒使用量の例示範囲で再沈操作を実施した場合、粗大な固形分が発生する、反応容器に固形分が固着する、さらに得られる固形分中の環式PASの純度が低下するなど様々な不都合が生じる傾向にあった。これに対し本発明の環式PASの回収方法はこれら従来の再沈法の課題を大幅に改善できる傾向にある点でも、極めて優れた方法といえる。
上記までの操作の実施により得られた環式PAS(a)と有機溶媒(b)及び溶媒(c)の混合物中(以降混合物(d)と称する場合もある)には混合物中に存在する環式PAS(a)のうち50重量%以上が固形分として存在する。従って公知の固液分離法を用いて環式PASを回収することができ、固液分離法としては、例えば濾過による分離、遠心分離、デカンテーション等を例示できる。ここで環式PASの回収効率をより高くするためには、混合物(d)を90℃未満の状態にしてから固液分離を行うことが好ましく、より好ましくは85℃以下、さらに好ましくは80℃以下で行うことが好ましい。なお、混合物(d)の温度の下限は特に無いが、温度が低下することで混合物(d)の粘度が高くなりすぎるような条件や、固化するような条件は避けることが望ましく、一般的には0℃以上が好ましく、10℃以上がより好ましく、20℃以上が更に好ましい。
このような固液分離を行うことで混合物(d)中に存在する環式PASの50重量%以上を固形分として単離・回収することができる。このようにして分離した固形状の環式PASは混合物(d)中の液成分(母液)を含む場合には、固形状の環式PASを各種溶剤を用いて洗浄することで、母液を低減することも可能である。ここで固液状の環状PASの線状に用いる各種溶剤としては環式PASに対する溶解性が低い溶剤が望ましく、たとえば前記(3)項に示した溶媒(c)が好ましい溶媒として例示できる。このような溶剤を用いた洗浄を付加的に行うことで、固形状の環式PASが含有する母液量を低減できるのみならず、環式PASが含む溶剤に可溶な不純物を低減できるという効果もある。この洗浄方法としては固形分ケークが積層した分離フィルター上に溶剤を加えて固液分離する方法や固形分ケークに溶剤を加えて撹拌することでスラリー化した後に再度固液分離する方法などが例示できる。また、前述の母液を含有、もしくは洗浄操作による溶剤成分を含有する等、液成分を含む湿潤状態の環式PASをたとえば一般的な乾燥処理を施すことにより液成分を除去して乾燥状態の環式PASを得ることも可能である。
なお環式PASの回収操作を行う際の雰囲気は非酸化性雰囲気で行うことが好ましい。これにより環式PASを回収する際の環式PASの架橋反応や分解反応、酸化反応などの好ましくない副反応の発生を抑制できるのみならず、回収操作に用いる有機溶媒(b)や溶媒(c)の酸化劣化等、好ましくない副反応を抑制できる傾向にある。なお、非酸化性雰囲気とは回収操作に処する各種成分が接する気相における酸素濃度が5体積%以下、好ましくは2体積%以下、更に好ましくは酸素を実質的に含有しない雰囲気、即ち窒素、ヘリウム、アルゴン等の不活性ガス雰囲気であることを指し、この中でも特に経済性及び取扱いの容易さの面からは窒素雰囲気が好ましい。
(5)本発明で回収される環式PASの特性
かくして得られた環式PASは、通常、環式PASを50重量%以上、好ましくは70重量%以上、より好ましくは80重量%以上含む純度の高いものであり、一般的に得られる線状のPASとは異なる特性を有する工業的にも利用価値の高いものである。また、本発明の製造方法により得られる環式PASは前記式(A)におけるmが単一ではなく、m=4〜50の異なるmを有する前記式(A)が得られやすいという特徴を有する。ここで好ましいmの範囲は4〜25,より好ましくは4〜20である。mがこの範囲の場合、後述するように環式PASを高重合度体へ転化させる場合に重合反応が進行しやすく、高分子量体が得られやすくなる傾向にある。この理由は現時点判然とはしないが、この範囲の環式PASは分子が環式であるがために生じる結合のゆがみが大きく、重合時に開環反応が起こりやすいためと推測している。なお、mが単一の環式PASは単結晶として得られるため、極めて高い融解温度を有するが、本発明の環式PASは異なるmを有する混合物が得られやすく、これにより環式PASの融解温度が低いという特徴があり、このことはたとえば環式PASを溶融して用いる際の加熱温度を低くできるという優れた特徴を発現することになる。
以下に実施例を挙げて本発明を更に具体的に説明する。これら例は例示的なものであって限定的なものではない。
<環式ポリフェニレンスルフィドの組成測定>
環式ポリフェニレンスルフィドに含まれる異なる繰り返し単位数の環式ポリフェニレンスルフィドの比率は、HPLCを用いて定性定量分析を行なった。HPLCの測定条件を以下に示す。
装置:島津株式会社製 LC−10Avpシリーズ
カラム:Mightysil RP−18 GP150−4.6(5μm)
検出器:フォトダイオードアレイ検出器(UV=270nm)
また上記HPLC測定により成分分割した各ピークの定性は、成分分割した成分のマススペクトル分析、分取クロマトにより分割した各成分のMALDI−TOF−MSおよびGPCによる分子量情報より行い、環状4量体から12量体までの定性を行った。
<液滴径測定>
スプレー噴霧の液滴径は、ノズル先端から1m離れた位置に噴霧された液滴を、シリコンオイルを塗布したガラス板で受け、光学顕微鏡を用いて測定した。得られた約5000個の液滴径データの中から、ザウター平均法によりザウター平均粒子径を算出した。尚、液滴が真円でない場合は、長径をその粒子径として測定した。
<平均粒子径の測定>
環式PPSの平均粒径は日機装製レーザー回折・散乱方式粒度分布測定装置MT3300EXIIを用い、分散媒としてN−メチル−2−ピロリドンを用いて測定した。具体的にはマイクロトラック法によるレーザーの散乱光を解析して得られる微粒子の総体積を100%として累積カーブを求め、その累積カーブが50%となる点の粒径(メジアン径:d50)を微粒子の平均粒径とした。
<平均粒子径の変動係数の算出>
本発明における平均粒径の変動係数(CV)は、上記の日機装製レーザー回折・散乱方式粒度分布測定装置MT3300EXIIで求めた粒度分布の値を用いて式(1)〜式(3)により求めた。尚、各サンプルの粒径、およびそのデータ数は、MT3300EXIIに内蔵されているData Management System 2 ver10.4.0-225Aによって自動的に算出される値である。
Figure 0006044303
<濾過速度測定方法>
PAS混合物の固液分離時の濾過速度は通気度が0.3cm/cm・secのポリエステル製濾布を用いて、常温にて窒素で0.4MPaの圧力かけ、加圧濾過器(ADVANTEC製 TSU−90A)にて加圧濾過することで測定した。尚、この通気度とはJISL1096通気性A法(フランジール形法)で定義され、圧力差125Paとなったときその濾布を通過する気体流量を測定するものである。
[参考例1]
攪拌機を具備したステンレス製オートクレーブに、水硫化ナトリウムの48重量%水溶液を186.69kg(1.59kmol)、水酸化ナトリウム48重量%水溶液131.57kg(1.61kmol)、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)3199.49kg(3.39kmol)、及びp−ジクロロベンゼン(p−DCB)240.78kg(1.64kmol)を仕込んだ。反応容器内を十分に窒素置換した後、窒素ガス下に密封した。400rpmで撹拌しながら、室温から200℃まで約1時間かけて昇温した。この段階で、反応容器内の圧力はゲージ圧で0.35MPaであった。次いで200℃から270℃まで約30分かけて昇温した。この段階の反応容器内の圧力はゲージ圧で1.05MPaであった。270℃で1時間保持した後、室温近傍まで急冷してから内容物を回収した。
回収した内容物を、平均目開き20マイクロメートルの金網メッシュで濾過し、得られた濾液を高速液体クロマトグラフィーにより分析した結果、環式ポリフェニレンスルフィド(環式PPS)の含有率は1.14重量%であることがわかった。
(実施例1)
参考例1の手法で得られた、環式PPSを1.14重量%含む常温の環式PPS溶液を、体積500Lの反応器へ450L充填し、反応器内を約3kPa へ減圧した。その後2℃/minの平均昇温速度で120℃まで加熱して減圧濃縮し、385LのNMPを別容器へ回収して環式PPSを8.0重量%含む混合物を調製した。その後常圧の反応器へ混合物を送液し、80℃に冷却した。80℃に到達した段階では不溶部は認められず、この条件においては混合物が全量溶解していることを確認した。
ついでこの混合物を系内温度80℃にて撹拌したまま、80℃まで加熱した温水10.4kgを、オリフィス径0.36mmのホロコーン型スプレーノズルをもちいて、噴霧角度50°、0.005g−溶媒(c)/g−溶媒(b)・minの流量でゆっくりと噴射した(水の滴下終了後混合物におけるNMPと水の重量比率は85:15)。この際、温水はザウター平均粒子径950μmで、混合物の表面に噴射されていた。また、温水添加中は混合物中に徐々に固形分が生成し、水の噴霧が終了した段階では白濁したスラリー状となったが塊状の粗大な固形分の生成は認められなかった。
このスラリーを通気度が0.3cm/cm・secのポリエステル製濾布を用いて、常温にて窒素で0.4MPaの圧力をかけ、加圧分離した。このとき濾過性は良く単位時間・単位濾過面積当たりの濾液処理量が399L/m・minであることを確認した。また、この際得られた環式PPSケークの平均粒子径は58μmで、変動係数0.97であることが分かった。
(比較例1)
実施例1と同様の手法で作られた混合物を系内温度80℃にて撹拌したまま、80℃まで加熱した温水10.4kgを、0.005g−溶媒(c)/g−溶媒(b)・minの流量でゆっくりと滴下した(水の滴下終了後混合物におけるNMPと水の重量比率は85:15)。この際、滴下水はザウター平均粒子径約10000μmで、混合物の表面の一部分に滴下されていた。混合物中に徐々に固形分が生成し、水の滴下が終了した段階では白濁したスラリー状となったが塊状の粗大な固形分の生成は認められなかった。
このスラリーを通気度が0.3cm/cm・secのポリエステル製濾布を用いて、常温にて窒素で0.4MPaの圧力かけ、加圧分離した。このとき濾過性は、単位時間・単位濾過面積当たりの濾液処理量が244L/m・minであることも確認した。また、この際得られた環式PPSケークの平均粒子径は28μmで、変動係数3.31であることが分かった。
(比較例2)
実施例1と同様の手法で作られた混合物を系内温度80℃にて撹拌したまま、80℃まで加熱した温水10.4kgを、0.2g−溶媒(c)/g−溶媒(b)・minの流量で注水した(水の滴下終了後混合物におけるNMPと水の重量比率は85:15)。この際、滴下水は線状であり、混合物の表面の一部分に注水されていた。混合物中に徐々に固形分が生成し、水の注水が終了した段階では白濁したスラリー状となり1.0〜5.0mm径の塊状の粗大な固形分が多量に認められた。

Claims (7)

  1. 少なくとも(a)環式ポリアリーレンスルフィド及び(b)有機溶媒を含み、環式ポリアリーレンスルフィド(a)が溶解している混合物から、(b)とは異なる溶媒(c)を、ザウター平均粒子径(D32)が10μm以上5000μm以下で、混合物表面に対して噴霧することで環式ポリアリーレンスルフィドを固形分として回収することを特徴とする環式ポリアリーレンスルフィドの回収方法。
  2. 環式ポリアリーレンスルフィド(a)が下記式(1)で表される化合物であって、式中Arはアリーレン基、mの値が4〜50であることを特徴とする請求項1に記載の環式ポリアリーレンスルフィドの回収方法。
    Figure 0006044303
  3. 溶媒(c)を噴霧する混合物が、(a)環式ポリアリーレンスルフィドが(b)有機溶媒に対して過飽和状態で溶解していることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の環式ポリアリーレンスルフィドの回収方法。
  4. 過飽和状態で溶解している混合物を調整する際は、(a)環式ポリアリーレンスルフィドの含有率が(b)有機溶媒に対して0.5重量%以上8重量%未満である状態から、反応器内を3kPa以上20kPa以下へ減圧させた状態で、0.1℃/min以上20℃/min以下の加熱速度で、80℃以上170℃以下まで加熱し、溶媒(b)を回収しつつ(a)環式ポリアリーレンスルフィドの含有率が8重量%以上50重量%以下の濃縮混合物を得ることを特徴とする請求項3に記載の環式ポリアリーレンスルフィドの回収方法。
  5. 溶媒(c)を滴下する際は、(a)環式ポリアリーレンスルフィドが(b)有機溶媒に対して完全に溶解していることを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれかに記載の環式ポリアリーレンスルフィドの回収方法。
  6. 溶媒(c)を噴霧する際の速度は0.001g−溶媒(c)/g−溶媒(b)・min以上1.0g−溶媒(c)/g−溶媒(b)・min以下であり、溶媒(c)の液温が50℃以上100℃以下であることを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれかに記載の環式ポリアリーレンスルフィドの回収方法。
  7. 環式ポリアリーレンスルフィドを固形分として回収する際の分離温度は、0℃以上90℃以下であることを特徴とする請求項1乃至請求項6のいずれかに記載の環式ポリアリーレンスルフィドの回収方法。
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