以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。図1に示す部品実装システム1は、基板2上に設けられた電極3に部品4を装着するものであり、半田印刷機11及び複数の部品実装機12を含んで構成されている。半田印刷機11と複数の部品実装機12は上流工程側からこの順で配置されており、半田印刷機11は基板2の各電極3上に半田を印刷し、部品実装機12の各々は、半田印刷機11によって半田が印刷された基板2の各電極3上に部品4を装着する。
半田印刷機11及び複数の部品実装機12の各々は通信回線13を介してホストコンピュータ14と繋がっている。本実施の形態では、部品実装システム1における基板2の搬送方向(オペレータOPから見た左右方向)をX軸方向とし、X軸方向と直交する水平面内方向(オペレータOPから見た前後方向)をY軸方向とする。また、上下方向をZ軸方向とする。
図2において、各部品実装機12は基台20に水平姿勢で設けられ、半田印刷機11から受け取った基板2をX軸方向に搬送する一対の基板搬送コンベア21、基板搬送コンベア21の側方において基台20に結合されたフィーダベース22、フィーダベース22に着脱自在に取り付けられた部品供給手段としての複数のパーツフィーダ23、XYロボットから成るヘッド移動機構24、ヘッド移動機構24によって基板搬送コンベア21の上方を移動自在に設けられた装着ヘッド25、装着ヘッド25に取り付けられた基板カメラ26、基板搬送コンベア21とパーツフィーダ23との間に設けられた部品カメラ27及びこれら各部の作動制御を行う制御装置28(図1)を備えている。
各パーツフィーダ23は例えばテープフィーダから成り、装着ヘッド25によって基板2に装着される部品4を部品供給口23aに供給する(図2の拡大図)。パーツフィーダ23の下面には断面逆「T」字型のスロット挿入部23sがY軸方向に延びて設けられている。スロット挿入部23sがフィーダベース22の上面にY軸方向に延びて設けられたスロット22aに水平方向に挿入されることによってパーツフィーダ23がフィーダベース22に取り付けられる。
図3及び図4(a),(b)において、装着ヘッド25には下方に延びた中空の複数のシャフト部材保持部31が設けられており、各シャフト部材保持部31の内部にはZ軸方向に延びた吸着管路32aを備えた中空のシャフト部材32がシャフト部材保持部31に対して上下動自在及びZ軸回りに回転自在に設けられている。
図4(a),(b)において、各シャフト部材32の下端には摺動部材としてのノズルホルダ33がシャフト部材32に対して着脱自在に取り付けられている。ノズルホルダ33は内部に円筒状の内部空間33aを有しており、この内部空間33a内にシャフト部材32が上方から入り込んでいる。ノズルホルダ33の内部空間33aの内径はシャフト部材32の外径よりもわずかに大きく、このためノズルホルダ33はシャフト部材32の外周面に沿って上下方向に摺動自在になっている。
図3及び図4(a),(b)において、ノズルホルダ33の下端には下方に延びた吸着ノズル34が取り付けられている。すなわち本実施の形態において、装着ヘッド25は吸着ノズル34を着脱自在な構成となっている。
図4(a),(b)において、吸着ノズル34はノズルホルダ33の下端に外嵌される外嵌部34aの下部に円盤状の鍔部34bを有している。吸着ノズル34の内部には上下方向に延びたノズル内管路34cが設けられており、吸着ノズル34の外嵌部34aがノズルホルダ33の下端に外嵌された状態では、吸着ノズル34のノズル内管路34cはノズルホルダ33の内部空間33aを介してシャフト部材32の内部の吸着管路32aと連通する。このため、吸着ノズル34がノズルホルダ33に取り付けられた状態でシャフト部材32の吸着管路32a内に真空圧が供給されると、吸着ノズル34のノズル内管路34c内にも真空圧が供給され、この状態で吸着ノズル34の下端に部品4を接触(或いは近接)させると、部品4が吸着ノズル34の下端に吸着される。また、吸着ノズル34の下端に部品4が吸着されている状態でシャフト部材32の吸着管路32a内への真空圧の供給を停止して大気開放すると、部品4は吸着ノズル34の下端から離脱する。
図4(a),(b)において、シャフト部材32の外周面には下方に開口した筒状のばね収容部材35が取り付けられており、ばね収容部材35内には圧縮ばね36が収容されている。この圧縮ばね36はノズルホルダ33をシャフト部材32に対して下方に付勢する。
図4(a)に示すように、ノズルホルダ33には側方に延びた一対の突起部33bが設けられており、これら一対の突起部33bはばね収容部材35の側面の一部に上下方向に延びて設けられた突起部移動溝35a内で上下方向への移動ができるようになっている。このため、吸着ノズル34の下端に上方への押圧力が作用していない状態では、ノズルホルダ33は突起部33bの下端をばね収容部材35の突起部移動溝35aの下縁に上方から当接した状態となっているが、吸着ノズル34の下端に上方への押圧力が作用すると、図4(b)に示すように、その押圧力によってノズルホルダ33は圧縮ばね36の付勢力に抗して上動する。但し、ノズルホルダ33の上動の上限は、突起部33bが突起部移動溝35aの上縁に下方から当接するところで制限される。
図2において、基板カメラ26は撮像視野を下方に向けた状態で装着ヘッド25に取り付けられており、装着ヘッド25とともに移動することで、基板搬送コンベア21によって位置決めされた基板2上の一対の基板マーク2mを上方から撮像する。部品カメラ27は撮像視野を上方に向けた状態で基台20上に設けられており、装着ヘッド25の吸着ノズル34によって吸着された状態で上方を通過する部品4を下方から撮像する。
基板搬送コンベア21による基板2の搬送及び位置決め動作は、制御装置28が基板搬送コンベア21の作動制御を行うことによってなされる(図5)。フィーダベース22に取り付けられた複数のパーツフィーダ23の各々は制御装置28によって作動制御がなされ、それぞれ部品供給口23aに部品4を供給する。図5において、各パーツフィーダ23はフィーダ側コネクタ23bを有しており、パーツフィーダ23をフィーダベース22に取り付けるとフィーダ側コネクタ23bがフィーダベース22側に設けられたフィーダベース側コネクタ22bに嵌合してパーツフィーダ23と制御装置28の間の信号伝送が可能となる(図5)。
装着ヘッド25の移動動作は制御装置28が前述のヘッド移動機構24の作動制御を行うことによってなされ、各シャフト部材32の装着ヘッド25に対する昇降及び回転動作は、制御装置28がシャフト部材32ごとに設けられたノズル駆動機構37(図5)の作動制御を行うことによってなされる。また、装着ヘッド25による吸着ノズル34を介した部品4の吸着動作は、制御装置28がシャフト部材32ごとに設けられた吸着制御弁38(図5)の作動制御を行うことによってなされる。
図5において、基板カメラ26による撮像動作の制御と部品カメラ27による撮像動作の制御は制御装置28によってなされ、基板カメラ26の撮像動作によって得られた基板マーク2mの画像データと部品カメラ27の撮像動作によって得られた部品4の画像データは制御装置28に送信される。制御装置28は基板カメラ26の撮像によって得られた基板マーク2mの画像データに基づいて画像認識を行うことによって基板2の位置を把握し、部品カメラ27の撮像によって得られた部品4の画像データに基づく画像認識を行うことによって部品4の吸着ノズル34に対する姿勢等の把握を行う。
次に、各部品実装機12が基板2上の各電極3に部品4を装着する部品実装作業を実行するときの手順について説明する。部品実装機12が部品装着作業を行うときには、先ず、制御装置28が基板搬送コンベア21を作動させて部品実装機12の上流工程側の半田印刷機11から送られてきた基板2を搬入し、所定の作業位置に静止させて基板2の位置決めを行う。
制御装置28は、基板2の位置決めを行ったら、装着ヘッド25を移動させて基板カメラ26を基板2の上方に位置させ、基板カメラ26に基板2上の一対の基板マーク2mを撮像させて基板2の位置の把握を行う。そして、把握した基板2の位置と予め設定された基準の位置と比較することによって、基板2の基準の位置からの位置ずれを求める。
制御装置28は、基板2の基準の位置からの位置ずれを求めたら、パーツフィーダ23の各々の作動制御を行って部品4の供給を行うとともに、装着ヘッド25に取り付けられた吸着ノズル34をパーツフィーダ23の部品供給口23aの上方で上下動させることによって吸着ノズル34に部品4を吸着させる。
制御装置28は、吸着ノズル34に部品4を吸着させたら装着ヘッド25を移動させ、部品4が部品カメラ27の上方を通過するようにする。そして、部品カメラ27に部品4を撮像させて部品4の姿勢等の把握を行い、吸着ノズル34に対する部品4の位置ずれを算出する。制御装置28は、部品4の姿勢等の把握を行ったら装着ヘッド25を基板2の上方に位置させ、吸着ノズル34に吸着させた部品4を基板2上の電極3に装着する。このとき制御装置28は、算出した基板2の位置ずれと吸着ノズル34に対する部品4の位置ずれがキャンセルされるように吸着ノズル34の位置及び回転方向の補正を行う。
制御装置28は、上記手順を繰り返して基板2の電極3上に部品4を装着していく。そして、基板2に装着すべき全ての部品4の装着が終了したら、基板搬送コンベア21を作動させて基板2を部品実装機12から搬出する。
上述のような部品実装機12による部品実装作業において、吸着ノズル34に吸着させた部品4を基板2に装着させる際、制御装置28は装着ヘッド25に対してシャフト部材32を下降させ、吸着ノズル34に吸着させた部品4が基板2の電極3上に押し付けられるようにするが(図4(a)→図4(b))、このとき吸着ノズル34の下端には基板2からの反力が作用し、ノズルホルダ33は圧縮ばね36の付勢力に抗してシャフト部材32に対して上方に摺動する。このノズルホルダ33のシャフト部材32に対する摺動は、シャフト部材32とノズルホルダ33との間の緩衝機能を果たし、シャフト部材32から部品4に伝達される力が軽減されるので、部品4が過剰な力で基板2に押し付けられることが防止される。
ところが、図4(a),(b)に示すノズルホルダ33とシャフト部材32との間のわずかな隙間Sに微小な異物が入り込む場合があり、このような場合には、シャフト部材32に対するノズルホルダ33の滑らかな摺動が妨げられるようになる。そうすると、部品4の基板2への装着時にシャフト部材32から部品4に伝達される力が通常時よりも増大し、吸着ノズル34が部品4の中心からずれた位置を吸着していたときには部品4の押し付け時に部品4を横方向にずらす力が発生し、部品4が横方向に押し遣られて電極3に対する部品4の位置ずれが生じてしまう。また、摺動が妨げられることにより通常の高さで部品吸着及び実装できないことにより吸着不良や実装ズレが生じる。このため本実施の形態における部品実装機12では、定期的に、シャフト部材32とノズルホルダ33との間の異物を除去する等のメンテナンス作業が行われる。
図6は部品実装機12の装着ヘッド25のメンテナンスに用いられるヘッドメンテナンス装置40を示しており、図7はそのヘッドメンテナンス装置40を部品実装機12のフィーダベース22に取り付けた状態を示している。図6において、ヘッドメンテナンス装置40は、パーツフィーダ23の保持部であるフィーダベース22にパーツフィーダ23と交換可能に取り付けられるベース部41と、ベース部41に設けられ、装着ヘッド25に対してメンテナンスを実行するメンテナンス実行部42を備えている。メンテナンス実行部42は、ヘッド移動機構24によってメンテナンス実行部42の上方に移動された装着ヘッド25(詳細には各シャフト部材32)に対してメンテナンスを実行する(図7)。
図6において、ヘッドメンテナンス装置40のベース部41は、Y軸方向に延びた水平な平板形状を有し、その下面にはフィーダベース22のスロット22aに挿入可能な断面逆「T」字型のスロット挿入部41sがY軸方向に延びて設けられている。ここではベース部41の下面に4本のスロット挿入部41sがフィーダベース22上のスロット22aの間隔に応じた間隔でX軸方向に並んで設けられている。スロット挿入部41sはフィーダベース22上のスロット22aに挿入される。ここでは、フィーダベース22に取り付けた状態のヘッドメンテナンス装置40のY軸方向の両端部のうち、基板搬送コンベア21側を前方の端部とし、その反対の端部を後方の端部とする。
図6において、ヘッドメンテナンス装置40のメンテナンス実行部42は、ベース部41の前方の端部側の領域に設けられており、ロードセル51、ノズルホルダ着脱ブロック52、シャフトクリーナ53を備えている。また、ヘッドメンテナンス装置40は制御部54を備えており、ロードセル51とシャフトクリーナ53はそれぞれ制御部54と電気的に繋がっている。
図5において、ヘッドメンテナンス装置40はメンテナンス装置側コネクタ40aを有しており、ヘッドメンテナンス装置40をフィーダベース22に取り付けるとメンテナンス装置側コネクタ40aが前述のフィーダベース側コネクタ22bに嵌合してヘッドメンテナンス装置40と部品実装機12側の制御装置28との間の信号伝送が可能となる。
図6において、ロードセル51は、ベース部41の最前方部に立設された台座部41a上に設けられており、吸着ノズル34が取り外された状態のノズルホルダ33がシャフト部材32により上方から押し付けられる(図8)。ロードセル51はシャフト部材32による押し付け荷重を検出し、その検出した押し付け荷重を制御部54に送信する(図5)。
シャフト部材32に対するノズルホルダ33の摺動状態が良くないときほどロードセル51が検出する荷重の値は大きくなる。ヘッドメンテナンス装置40の制御部54には、荷重の閾値として選定された第1の基準荷重が記憶されており、制御部54は、ロードセル51から送信されてきた押し付け荷重が第1の基準荷重を上回っているか否かに基づいて(すなわち検出した押し付け荷重に基づいて)、第1の基準荷重のもとでの、シャフト部材32に対するノズルホルダ33の摺動状態の良否判断を行う。ここで、第1の基準荷重としては、ノズルホルダ33をシャフト部材32から正常に取り外すことができないことが予想される押し付け荷重が設定される。また、ヘッドメンテナンス装置40の制御部54には、シャフト部材32の使用が不適である荷重の閾値として選定された第2の基準荷重とが記憶されており、制御部54は、ロードセル51から送信されてきた押し付け荷重が第2の基準荷重を上回っているか否かに基づいて(すなわち検出した押し付け荷重に基づいて)、第2の基準荷重のもとでの、シャフト部材32に対するノズルホルダ33の摺動状態の良否判断を行う。第1の基準荷重と第2の基準荷重とは同じ値としても構わない。
なお、摺動状態の良否の判定として、ロードセル51に対してノズルホルダ33を押し付けた際の荷重を測定して判定する方法を上述したが、これに限らず、下記のような方法でも構わない。
シャフト部材32に対するノズルホルダ33の摺動状態によって、ロードセル51に押し付けたシャフト部材32を引き上げる際のノズルホルダ33の挙動が変化する。摺動状態が良好な場合には、シャフト部材32をロードセル51から引き上げるとノズルホルダ33はロードセル51上に残りつつシャフト部材32が引き上がってから追従するように引き上げられる。つまりシャフト部材32の上昇開始後も一定時間はロードセル51に対して荷重がかかった状態となる。一方、摺動状態が不良の場合には、ノズルホルダ33がシャフト部材32の上昇とともに引き上げられる。つまり、シャフト部材32の上昇開始後、摺動状態が良好な場合に比して短い時間でロードセル51に対して荷重がかからなくなる。よって、シャフト部材32をロードセル51に押し付けた後に上昇を開始してから所定時間後のロードセル51にかかる荷重を測定することで摺動状態の良否を判定することが可能である。この場合には、第3の基準荷重が記憶されており、シャフト部材32をロードセル51に押し付けた後に上昇してから所定時間後のロードセル51にかかる荷重を測定した値が、第3の基準荷重よりも大きいときは摺動状態が良好であると判断し、逆に第3の基準荷重よりも小さいときは摺動状態が不良であると判断するようにして摺動状態の良否を判定する。
すなわち本実施の形態において、メンテナンス実行部42は、吸着ノズル34が取り外された状態のノズルホルダ33がシャフト部材32によって押し付けられたとき、若しくは押し付けた後、上昇してから所定時間経過後の押し付け荷重を検出する押し付け荷重検出手段としてのロードセル51を備えており、このロードセル51は、検出した押し付け荷重を、その押し付け荷重に基づいてシャフト部材32に対するノズルホルダ33の摺動状態の判断を行う摺動状態判断手段としてのヘッドメンテナンス装置40の制御部54に送信するようになっている。
図6において、ノズルホルダ着脱ブロック52は、ベース部41に立設されたブロック部41bの上面に取り付けられたブロック状の部材から成り、ノズルホルダ着脱ブロック52にはノズルホルダ33の下端が挿入される複数のホルダ挿入孔52aが設けられている。ノズルホルダ33をシャフト部材32から取り外す場合には、取り外そうとするノズルホルダ33が取り付けられたシャフト部材32がホルダ挿入孔52aの上方に位置するようにしたうえで、シャフト部材32を下降させてノズルホルダ33をホルダ挿入孔52aに上方から挿入する(図9(a))。そして、シャフト部材32を上下軸(Z軸)回りに回転させると、ノズルホルダ33の外周面に設けられた図示しない突起がホルダ挿入孔52aの内部側面に形成された図示しない係止溝に嵌入するとともに、シャフト部材32とノズルホルダ33との係合が解除されるので、その状態からシャフト部材32を上昇させると、ノズルホルダ33がホルダ挿入孔52a内に取り残されてノズルホルダ33がシャフト部材32から取り外される(図9(b))。
このように本実施の形態において、ノズルホルダ着脱ブロック52は、シャフト部材32からノズルホルダ33を取り外す際にノズルホルダ33を保持する摺動部材保持手段となっている。
シャフトクリーナ53は、ベース部41に設けられた基部41cの上面にY軸方向に2つ並んで設けられている。各シャフトクリーナ53は上方に開口した筒状の構成をしており、その内部空間53a内には図示しない被摺擦部が形成されている。シャフト部材32をシャフトクリーナ53の内部空間53a内に挿入した状態でシャフト部材32を上下方向に繰り返し動作させ、更に正逆方向に繰り返しθ回転させることで(図10)、シャフト部材32の外周面及び底面(すなわちシャフト部材32のノズルホルダ33との間の摺動部)が被摺擦部に擦り付けられる。これによりシャフト部材32の外周面及び底面に付着したごみが除去される。ここで、被摺擦部としては、例えば、各種繊維材や樹脂材など種々のものを用いてよい。
このように本実施の形態において、シャフトクリーナ53は、ノズルホルダ33が取り外された状態のシャフト部材32のノズルホルダ33との間の摺動部の清掃を行うシャフト部材清掃手段となっている。
図11は、フィーダベース22に取り付けられたヘッドメンテナンス装置40を用いて行う装着ヘッド25のメンテナンス(ヘッドメンテナンス方法)の流れを示すフローチャートである。ヘッドメンテナンス装置40を用いた装着ヘッド25のメンテナンスは、装着ヘッド25が備える複数のシャフト部材32の各々から吸着ノズル34を取り外した状態で行う。なお、シャフト部材32からの吸着ノズル34の取り外しは、装着ヘッド25が基台20上に設けられたノズルチェエンジャNC(図2及び図7参照)にアクセスすることによって行われる。
装着ヘッド25のメンテナンスでは、初めにオペレータOPがヘッドメンテナンス装置40をフィーダベース22に取り付ける(図11のフローチャートに示すステップST1のヘッドメンテナンス装置取り付け工程)。オペレータOPは、ヘッドメンテナンス装置40をフィーダベース22に取り付けたら、ヘッドメンテナンス装置40の制御部54経由で部品実装機12の制御装置28に繋がる動作開始指令スイッチ54a(図6及び図5)を操作してメンテナンス実行部42の動作開始指令を行う(ステップST2の動作開始指令工程)。制御装置28は、動作開始指令スイッチ54aが操作されたことを検知したら、ヘッド移動機構24により装着ヘッド25をフィーダベース22に取り付けられたヘッドメンテナンス装置40の上方(詳細にはメンテナンス実行部42の上方)に移動させる(ステップST3の装着ヘッド移動工程)。なお、ステップST2の動作開始指令は部品実装機12の制御装置28側から行ってもよく、例えば、部品実装機12の図示しない操作部から行うようにしてもよい。
制御装置28は、装着ヘッド25をヘッドメンテナンス装置40の上方に移動させたら、現在メンテナンスの対象としているひとつのシャフト部材32をノズルホルダ33が付いたままロードセル51の上方に移動させ、シャフト部材32を下降させて、吸着ノズル34が取り外された状態のノズルホルダ33をシャフト部材32により押し付ける。ロードセル51はこのシャフト部材32の押し付け力に応じた荷重(シャフト部材32の押し付け荷重)を検出し(ステップST4の押し付け荷重検出工程)、その検出した押し付け荷重のデータをヘッドメンテナンス装置40の制御部54に送信する。
制御部54は、ロードセル51からシャフト部材32の押し付け荷重のデータが送られてきたら、その送られてきた(すなわちロードセル51により検出された)シャフト部材32の押し付け荷重に基づいて、シャフト部材32に対するノズルホルダ33の摺動状態の良否判断を行う(ステップST5の摺動状態判断工程)。具体的には、ロードセル51で検出された押し付け荷重が、前述の第1の基準荷重を上回っていたときにはそのシャフト部材32の摺動状態は不良であり、後述のステップST7のノズル取り外しが正常にできない可能性があると判断する。
制御部54は、上記ステップST5において、シャフト部材32に対するノズルホルダ33の摺動状態が第1の基準荷重のもとで不良であると判断した場合には、そのシャフト部材32の識別子を、摺動状態が不良である旨のフラグを付して部品実装機12の制御装置28に送信する。部品実装機12の制御装置28は、ヘッドメンテナンス装置40の制御部54から送信されてきたシャフト部材32の識別子に摺動状態が不良である旨のフラグが付されていた場合には、そのシャフト部材32について、部品実装機12に設けられた図示しない表示部に摺動状態が不良であった旨を表示させ、ヘッドメンテナンス動作を一旦待機状態にする。ここで、摺動状態が不良とされたシャフト部材32は、後述のステップST7における自動でノズルホルダ33を取り外す工程が正常に行われない可能性がある。そこで、オペレータOPは摺動状態が不良とされたシャフト部材32については手動でノズルホルダ33を取り外すようにする。また、必須ではないが、ここで摺動状態が不良とされたシャフト部材32を使用不適登録してもよい(ステップST6の使用不適登録工程)。このシャフト部材32の登録は制御装置28の登録制御部28aが制御装置28の記憶部28bにシャフト部材32の識別子を記憶させることによって行われる(図5)。
一方、制御部54は、上記ステップST5において、シャフト部材32に対するノズルホルダ33の摺動状態が不良でないと判断した場合には、現在メンテナンスの対象としているシャフト部材32の識別子を、摺動状態が良好である旨のフラグを付して部品実装機12の制御装置28に送信する。部品実装機12の制御装置28は、ヘッドメンテナンス装置40の制御部54から送信されてきたシャフト部材32の識別子に摺動状態が良好である旨のフラグが付されていた場合には、そのシャフト部材32をノズルホルダ着脱ブロック52の上方へ移動させ、前述の要領でそのシャフト部材32からノズルホルダ33を取り外す(ステップST7のノズルホルダ取り外し工程)。
部品実装機12の制御装置28は、ステップST7でノズルホルダ33を取り外したシャフト部材32及びステップST5で摺動状態不良と判断された後オペレータOPにより手作業でノズルホルダ33を取り外されたシャフト部材32について、各々順番に一方のシャフトクリーナ53(2つあるシャフトクリーナ53のうちどちらでもよい)の上方へ移動させた後、シャフト部材32を下降させてシャフトクリーナ53の内部空間53a内に挿入し、シャフト部材32を正逆方向に繰り返し回転させる。これによって、シャフト部材32のノズルホルダ33との間の摺動部の清掃を行う(ステップST8のシャフト部材清掃工程)。このシャフト部材32のノズルホルダ33との間の摺動部の清掃によってシャフト部材32の外周面に付着したごみが除去され、シャフト部材32に対するノズルホルダ33の摺動状態はより良い状態となる。
部品実装機12の制御装置28は、現在メンテナンスの対象としているシャフト部材32の清掃を行ったら、装着ヘッド25を部品カメラ27の上方に移動させ、ノズルホルダ33を取り外した状態のシャフト部材32を部品カメラ27に下方から撮像させる(ステップST9のシャフト部材撮像工程。図12)。
部品実装機12の制御装置28は、現在メンテナンスの対象としているシャフト部材32の撮像画像が得られたら、その画像に基づいて、シャフト部材32の曲り状態(曲がっているか否か)の検査を行う(ステップST10のシャフト部材曲り検査工程)。そして、その結果、シャフト部材32が許容範囲を超えて曲がっていたことを検知した場合には、そのシャフト部材32の識別子を、曲がっている旨のフラグを付して部品実装機12の制御装置28に送信する。制御装置28の登録制御部28aは、ヘッドメンテナンス装置40の制御部54から送信されてきたシャフト部材32の識別子にそのシャフト部材32が曲がっている旨のフラグが付されていた場合には、そのシャフト部材32の識別子を記憶部28bに記憶させて使用不適登録をする(ステップST11の使用不適登録工程)。
一方、部品実装機12の制御装置28は、ステップST10において、現在メンテナンスの対象としているシャフト部材32が許容範囲を超えて曲がっていなかったことを検知した場合には、そのシャフト部材32の識別子を、曲がっていない旨のフラグを付して部品実装機12の制御装置28に送信する。部品実装機12の制御装置28は、ヘッドメンテナンス装置40の制御部54から送信されてきたシャフト部材32の識別子にそのシャフト部材32が曲がっていない旨のフラグが付されていた場合には、そのシャフト部材32にノズルホルダ33を取り付ける(ステップST12のノズルホルダ取り付け工程)。
このシャフト部材32へのノズルホルダ33の取り付けは、ステップST7のノズルホルダ取り外し工程における手順と逆の手順によって行う。すなわち、制御装置28は、シャフト部材32をこれから取り付けようとするノズルホルダ33の上方に移動させ(図13(a))、シャフト部材32を下降させて、ノズルホルダ33のホルダ挿入孔52aに上方から挿入させたうえで(図13(b))、シャフト部材32を上下軸(Z軸)回りに回転させる。これによりノズルホルダ33の外周面に設けられた前述の図示しない突起部がホルダ挿入孔52aの内部側面に係止された係止溝から離脱する一方、シャフト部材32にノズルホルダ33が係合するので、この状態からシャフト部材32を上昇させると、シャフト部材32に取り付けられた状態のノズルホルダ33がホルダ挿入孔52aから上方に抜け出る。
部品実装機12の制御装置28は、現在メンテナンスの対象としているシャフト部材32にノズルホルダ33を取り付けたら、そのシャフト部材32をロードセル51の上方に移動させた後、シャフト部材32を下降させて、ノズルホルダ33をシャフト部材32によりロードセル51に押し付ける。ロードセル51はこのときシャフト部材32の押し付け荷重を検出し、その検出した押し付け荷重のデータをヘッドメンテナンス装置40の制御部54に送信する(ステップST13の押し付け荷重検出工程)。
制御装置28の使用適不適判断部28c(図5)は、ロードセル51からシャフト部材32の押し付け荷重のデータが送られてきたら、その押し付け荷重に基づいて、シャフト部材32の使用が適切であるか否かの判断を行う。具体的には、ロードセル51で検出された押し付け荷重が、シャフト部材32の使用が不適である荷重の閾値として選定された前述の第2の基準荷重を上回っていたときにはそのシャフト部材32の摺動状態は不良であって使用不適であると判断する(ステップST14の使用適不適判断工程)。
このように本実施の形態におけるヘッドメンテナンス装置40のロードセル51及び制御部54は、メンテナンス実行部42によりメンテナンスが実行された各シャフト部材32の検査を行う検査手段となっている。また、制御装置28の使用適不適判断部28cは、検査手段であるロードセル51及び制御部54によるステップST12〜ステップST14の検査の結果に基づいて、メンテナンスの実行後の装着ヘッド25(シャフト部材32)の使用が適切であるか否かの判断を行う使用適不適判断手段となっている。
制御部54は、上記ステップST14において、現在メンテナンスの対象としているシャフト部材32のメンテナンスの実行後の摺動状態が第2の基準荷重のもとで不良であって使用不適であると判断した場合には、そのシャフト部材32の識別子を、使用不適である旨のフラグを付して部品実装機12の制御装置28に送信する。部品実装機12の制御装置28の登録制御部28aは、ヘッドメンテナンス装置40の制御部54から送信されてきたシャフト部材32の識別子に使用不適である旨のフラグが付されていた場合には、そのシャフト部材32の識別子を記憶部28bに記憶させて使用不適登録をする(ステップST15の使用不適登録工程)。
このように本実施の形態において、制御装置28の登録制御部28a及び記憶部28bは、使用適不適判断手段である制御装置28の使用適不適判断部28cにより使用不適であると判断された装着ヘッド25(詳細にはシャフト部材32)を登録する登録手段となっている。
一方、制御部54は、上記ステップST14において、対象としているシャフト部材32が使用不適でないと判断した場合には、そのシャフト部材32の識別子を、使用不適でない旨のフラグを付して部品実装機12の制御装置28に送信する。部品実装機12の制御装置28は、ヘッドメンテナンス装置40の制御部54から送信されてきたシャフト部材32の識別子に使用不適でない旨のフラグが付されていた場合には、そのシャフト部材32についてのメンテナンスを終了し、装着ヘッド25が備える全てのシャフト部材32についてメンテナンスを行ったか否かの判断を行う(ステップST16の判断工程)。そして、全てのシャフト部材32についてメンテナンスを行っていなかった場合にはステップST4に戻り、まだメンテナンスを行っていないシャフト部材32についてステップST4〜ステップST16の処理(装着ヘッド25に対してヘッドメンテナンス装置40によりメンテナンスを実行するメンテナンス実行工程)を行う。一方、制御装置28は、ステップST16で全てのシャフト部材32についてメンテナンスを行っていた場合には、装着ヘッド25のメンテナンス作業を終了する。
部品実装機12の制御装置28は、装着ヘッド25のメンテナンス作業を終了した後、基板2に対する部品4の装着作業を行うが、記憶部28bに使用不適のシャフト部材32が登録(記憶)されている場合には、その使用不適として登録されたシャフト部材32を部品4の装着作業において使用しないようにする。すなわち部品実装機12は、登録手段(制御装置28の登録制御部28a及び記憶部28b)により登録されたシャフト部材32の使用(すなわち装着ヘッド25の使用)を制限するようになっている。
以上説明したように、本実施の形態における部品実装機12では、装着ヘッド25のメンテナンスを行うヘッドメンテナンス装置40が、フィーダベース22にパーツフィーダ23と交換可能に取り付けられ、ヘッド移動機構24によって上方に移動された装着ヘッド25に対してメンテナンスを実行するようになっているので、装着ヘッド25のメンテナンス時に装着ヘッド25をヘッド移動機構24から取り外す作業が不要であり、メンテナンスを容易かつ短時間で行うことができる。
また、本実施の形態におけるヘッドメンテナンス方法では、装着ヘッド25のメンテナンスを行うヘッドメンテナンス装置40が、フィーダベース22にパーツフィーダ23と交換可能に取り付けられ、ヘッド移動機構24によって上方に移動された装着ヘッド25に対してメンテナンスを実行するようになっているので、装着ヘッド25のメンテナンス時に装着ヘッドをヘッド移動機構24から取り外す作業が不要であり、メンテナンスを容易かつ短時間で行うことができる。
更に、本実施の形態における部品実装システム1では、部品実装機12が備える装着ヘッド25のメンテナンスがヘッドメンテナンス装置40により実行された後、装着ヘッド25の状態の検査(前述のヘッドメンテナンス作業におけるステップST12〜ステップST14)が行われ、その結果、使用不適であると判断された装着ヘッド25についてはこれが登録されて使用が制限されるようになっている(ステップST15)ので、部品実装機12の装着ヘッド25のメンテナンスが不十分であった場合であっても部品4の装着精度の低下を防止することができる。
これまで本発明の実施の形態について説明してきたが、本発明は上述の実施の形態に示したものに限定されない。例えば、上述の実施の形態では、使用不適と判断されたシャフト部材32が登録される先は部品実装機12が備える制御装置28の記憶部28bであったが、これは特に限定されず、ホストコンピュータ14の記憶部(図示せず)など、他の記憶手段であってもよい。
また、上述の実施の形態では、シャフト部材32のメンテナンスとはシャフト部材32のノズルホルダ33(摺動部材)との間の摺動状態の清掃やシャフト部材32の曲り状態の検査であったが、その他のもの、例えばシャフト部材32の内部の洗浄等とすることもできる。