本明細書において、(000−1)面等の表記における「−1」は、本来、数字の上に横線を付して表記するところを「−1」と表記したものである。
溶液法によりSiC単結晶の繰り返し成長を行う場合、成長させた結晶を種結晶として用いて、さらにSiC単結晶を成長させる。しかしながら、種結晶として用いる成長結晶には、多結晶部が含まれることがある。多結晶を含む成長結晶を基点として、さらに結晶成長させると、最終的に多量の多結晶が発生して単結晶SiCを得ることができないため、種結晶となる成長結晶の成長面を研磨して多結晶を除去することが方策としてあげられる。ところが、多結晶の発生を抑制するには、種結晶となる成長結晶の成長面を研磨するだけでは、不十分であることが分かった。
そして、本願発明者は、繰り返し成長を行う際に、成長結晶の成長方向に対する側面の多結晶部及び/または結晶性の低い単結晶部を除去することが、その後の結晶成長における多結晶発生の抑制に効果的であることを見いだした。
本発明は、溶液法によるSiC結晶の製造方法であって、(A)種結晶を起点としてSiC結晶を成長させる工程、(B)工程(A)または工程(C)で成長させたSiC結晶の成長方向に対する側面から多結晶部及び/または結晶性の低い単結晶部の少なくとも一部を除去する工程、並びに(C)工程(A)で成長させたSiC結晶または工程(B)で得られたSiC結晶を起点としてSiC結晶を成長させる工程、を含み、工程(B)及び工程(C)を1回以上行う、製造方法を対象とする。
溶液法とは、内部から表面に向けて温度低下する温度勾配を有するSi−C溶液に、SiC種結晶を接触させてSiC単結晶を成長させる、SiC単結晶の製造方法である。Si−C溶液の内部から溶液の表面に向けて温度低下する温度勾配を形成することによってSi−C溶液の表面領域を過飽和にして、Si−C溶液に接触させた種結晶を基点として、SiC単結晶を成長させることができる。
工程(A)において、SiC単結晶である種結晶を基点として、SiC結晶を成長させる。ただし、成長させるSiC結晶には結晶性の良い単結晶だけでなく多結晶部及び/または結晶性の低い単結晶部が含まれ得る。多結晶部及び結晶性の低い単結晶部は特に成長結晶の成長方向に対する側面に発生し得る。
工程(A)において成長させたSiC結晶に多結晶部及び/または結晶性の低い単結晶部が含まれる場合、工程(B)において、工程(A)において成長させたSiC結晶の成長方向に対する側面から多結晶部及び/または結晶性の低い単結晶部を除去することができる。
工程(C)においては、工程(B)において多結晶部及び/または結晶性の低い単結晶部が除去されたSiC結晶を基点として、さらにSiC結晶を成長させることができる。
このように、本発明に係る製造方法においては、工程(A)において、種結晶を起点としてSiC結晶を成長させ、次いで、工程(B)及び工程(C)を順に少なくとも一回ずつ行うことができる。
また、本発明に係る製造方法においては、工程(B)及び工程(C)を複数回行ってもよい。工程(C)において成長させたSiC結晶には多結晶部及び/または結晶性の低い単結晶部が含まれ得るが、この場合、再度、工程(B)において、SiC結晶の成長方向に対する側面から多結晶部及び/または結晶性の低い単結晶部を除去することができる。次いで、工程(C)でSiC結晶をさらに成長させることができる。このように、例えば工程(A)の後、工程(B)及び工程(C)を、複数回、順番に繰り返してもよい。
また、本発明に係る製造方法においては、工程(B)及び工程(C)を、複数回、それぞれ違う回数ずつ行ってもよい。例えば、工程(A)において、種結晶を基点として成長させたSiC結晶が多結晶部及び/または結晶性の低い単結晶部を含まないか、含まれる多結晶部及び/または結晶性の低い単結晶部が小さく、その後の結晶成長への影響が小さいと判断される場合は、工程(A)の後、工程(B)を経ずに、工程(C)に進んで、続けてSiC結晶を成長させてもよい。工程(C)において成長させたSiC結晶が多結晶部及び/または結晶性の低い単結晶部を含む場合、再度、工程(B)において、多結晶部及び/または結晶性の低い単結晶部を除去することができる。
また、工程(C)において成長させたSiC結晶に多結晶部及び/または結晶性の低い単結晶部が発生しないか、多結晶部及び/または結晶性の低い単結晶部が小さく、その後の結晶成長への影響が小さいと判断される場合は、許容範囲を超える多結晶部及び/または結晶性の低い単結晶部が発生するまで工程(C)を繰り返すことができる。
工程(C)において、SiC成長結晶に許容範囲を超える多結晶部及び/または結晶性の低い単結晶部が発生した場合、工程(B)において、SiC成長結晶の成長方向に対する側面から多結晶部及び/または結晶性の低い単結晶部を除去することができる。その後、再度、工程(C)でSiC結晶を成長させることができる。
上記許容範囲とは、工程(B)において所望の量以下に多結晶部及び/または結晶性の低い単結晶部を除去することができる範囲であれば、任意に決定し得る基準である。また、結晶性の低い単結晶部とは、その後の結晶成長に影響し得る多量の積層欠陥を含む単結晶部を意味する。
本発明に係る製造方法において、工程(B)及び工程(C)のいずれの工程で終了してもよい。
工程(B)においてSiC結晶の成長方向に対する側面から多結晶部及び/または結晶性の低い単結晶部を除去する方法は、任意の方法であることができ、例えば、切り出し及び/または研磨により多結晶部及び/または結晶性の低い単結晶部をSiC結晶から除去することができる。
図1に種結晶を基点として成長させたSiC結晶の断面模式図を示す。図1に示すように、種結晶基板14を基点してSiC結晶30を成長させることができるが、概してSiC結晶30は種結晶基板14の下面16よりも口径が拡大するように成長し得る。このように口径が拡大するように成長するとき、概して口径拡大部32の結晶性が低くなり、多結晶及び/または結晶性の低い単結晶が発生し得る。
多結晶及び/または結晶性の低い単結晶発生部34が、口径拡大部32と同じ領域か口径拡大部32より小さい領域であるとき、図1に示すように、口径拡大部32が除去されるように、除去位置36を決めて切り出し及び/または研磨することができる。すなわち、図1に示すように、種結晶基板14の下面16に対して垂直あるいは種結晶基板の側面に対して平行に、且つ種結晶基板14の下面16の端部と同じ位置から外側に拡大した部分を除去するように、切り出し及び/または研磨を行ってもよい。
また、図2に示すように、多結晶及び/または結晶性の低い単結晶発生部34が、口径拡大部32より小さい領域である場合、多結晶及び/または結晶性の低い単結晶発生部34を除去するように、種結晶基板14の下面16に対して斜めに除去位置36を決めて、切り出し及び/または研磨を行ってもよい。
概して、口径拡大部32の結晶品質は、成長結晶の中央部よりも低いため、口径拡大部32を除去するように切り出し及び/または研磨を行うことが好ましい。また、切り出し及び/または研磨の後に、鏡面研磨を行うことが好ましい。
また、多結晶部及び/または結晶性の低い単結晶部が口径拡大部32よりも内側に発生している場合や、口径拡大部32を有さずに結晶成長して、成長結晶の側面に多結晶及び/または結晶性の低い単結晶が発生した場合は、成長結晶の、より中央部の領域(種結晶基板の下面16の真下の領域)から多結晶部及び/または結晶性の低い単結晶部を除去してもよい。
工程(B)において、成長結晶の成長方向に対する側面の全ての多結晶部及び/または結晶性の低い単結晶部を除去してもよい。この場合、その後に行う結晶成長において、成長結晶に多結晶部及び/または結晶性の低い単結晶部が発生することをより抑制することができる。
工程(B)において、成長結晶の成長面の外周部の一部を荒れた状態にしてもよい。成長結晶の成長面の外周部の一部を荒れた状態にすることによって、結晶成長後にSi−C溶液から成長結晶を引き上げるときに、成長結晶に付着するSi−C溶液(融液)が、外周部の荒れた部分に引き寄せられ、Si−C溶液(融液)を成長面の外周部に集めて固化させることができる。これにより、結晶成長面の中央部でSi−C溶液(融液)が固化することが防止され、SiC結晶成長後の冷却の際に成長結晶に加わる応力が軽減され、SiC成長結晶の割れを防止することができる。
成長面において荒れた状態とする部分は、例えばm面成長の場合、SiC成長結晶に発生し得る筋状の積層欠陥に平行な側面と接する外周部の少なくとも一部であることが好ましい。筋状の積層欠陥に垂直な側面は、積層欠陥や多結晶発生の基点となりやすく、成長面において積層欠陥に垂直な側面と接する外周部が荒れた状態であると、結晶成長の際に、多結晶及び/または結晶性の低い単結晶が発生しやすくなることが分かった。
成長面の外周部の一部が荒れた状態とは、結晶成長後にSi−C溶液から成長結晶を引き上げるときに、Si−C溶液を成長面の外周部に引き寄せることができる成長面外周部の表面状態をいう。理論に束縛されるものではないが、Si−C溶液が、成長面外周部の荒れた部分に引き寄せられるのは、荒れた部分は凹凸が多く表面積が大きくなり、凝着力が大きくなるためと考えられる。
成長面の外周部の一部を荒れた状態にする方法は、任意の方法で行うことができる。例えば、上記多結晶部及び/または結晶性の低い単結晶部を除去する方法において、成長させたSiC結晶の成長方向に対する側面から多結晶部及び/または結晶性の低い単結晶部を全部除去せずに、多結晶部及び/または結晶性の低い単結晶部の一部を残すように除去すればよい。また、結晶成長面に多結晶部及び結晶性の低い単結晶部が存在しない場合は、意図的に成長面の外周部の一部に、粗い目の研磨紙やダイヤモンドペン等を用いて傷を付けてもよい。
図3に、一例として、m面成長を行ったときの成長方向に対する側面である(000−1)面と接する外周部の一部が荒れた状態部分44を有する、結晶成長面38の模式図を示す。
図3に示すように、成長面38において荒れた状態部分44の幅40は、好ましくは0.1〜3mm程度、より好ましくは0.2〜2mm程度、さらに好ましくは0.3〜1mm程度である。
また、図3に示すように、成長面において荒れた状態の長さ42は、好ましくは積層欠陥に平行に0.1〜10mm程度の長さ、より好ましくは0.5〜6mm程度の長さ、さらに好ましくは1〜3mm程度の長さを有する。
荒れた状態部分44の形は必ずしも図3に示すような帯状だけでなく様々な形状になり得、荒れた状態部分44は様々な形状であってよいが、荒れた状態部分44が平均して上記のような幅及び長さを概して有するときに、Si−C溶液を成長面の外周部により良好に集めることができる。上記数値範囲はおよそ縦10mm及び横10mmの種結晶基板を用いて結晶成長させるときの好ましい範囲であり、種結晶基板の寸法に合わせて、適宜調節することができる。
多結晶部及び/または結晶性の低い単結晶部の除去方法は、特に限定されるものではないが、例えば、ダイヤモンドコーティング刃でダイシングして、多結晶部及び/または結晶性の低い単結晶部を切り落とすことができる。
成長結晶側面の鏡面研磨は、一般的に行われる鏡面研磨と同様の方法により行うことができる。例えば、ダイヤモンドスラリー(スラリー粒径1μm)を用いたバフ研磨により、鏡面研磨を行うことができる。
工程(B)において成長結晶の成長方向に対する側面から多結晶部及び/または結晶性の低い単結晶部の少なくとも一部を除去する際に、成長結晶の成長面を研磨及び/または鏡面研磨してもよい。通常、結晶成長面には、固化したSi−C溶液が付着しているが、成長面に付着した固化したSi−C溶液の高さが大きい場合、再度、結晶成長を行う場合に、成長基点となる結晶下面がSi−C溶液に接する位置が変わってしまう。この場合、固化したSi−C溶液を除去するために、成長面を研磨及び/または鏡面研磨してもよい。また、積層欠陥の筋が多く発生すると、結晶成長の際にインクルージョンを巻き込み得るため、成長面を研磨及び/または鏡面研磨して積層欠陥の筋を無くしてもよい。なお成長面を研磨及び/または鏡面研磨する場合に、成長面の外周部の一部を荒れた状態にするために、成長面の外周部の一部を鏡面研磨しないようにするか、鏡面研磨後に、外周部の一部に、粗い目の研磨紙やダイヤモンドペン等を用いて傷を付けてもよい。
固化したSi−C溶液は、Si−C溶液(融液)に浸漬されると溶解するため、固化したSi−C溶液の付着量が小さい場合や、積層欠陥の筋の量が少ない場合は、成長面の鏡面研磨を行わなくてもよい。成長面の鏡面研磨は、側面の鏡面研磨と同様の方法で行うことができる。
結晶成長面について鏡面研磨を行う場合、鏡面研磨を行う前に所定の厚みをダイシングにより切り落としてもよいが、概して、成長結晶の側面に比べて成長面については、厚く切り落とす必要性が少なく、通常は、所望により研磨、及び鏡面研磨のみで足りる。
本発明に係る方法において、結晶成長面は(1−100)面(m面)であることができる。種結晶に貫通転位が含まれていても、m面成長を行う場合は、成長結晶には貫通転位が生じにくく貫通転位を含まない成長結晶を得ることができる。
したがって、本発明に係る方法によりm面成長を行う場合、多結晶及び結晶性の低い単結晶発生の抑制に加えて、貫通転位の発生も抑制することができ、多結晶、結晶性の低い単結晶、及び貫通転位を含まない高品質なSiC単結晶を得ることができる。
そして、本願発明に係る方法によりm面成長を行って得られた所定の厚みを有するSiC単結晶は、(000−1)面(C面)をだすようにm面成長させた面に垂直な面を切り出して、C面バルク成長の種結晶として用いることができる。
m面成長を行う場合、積層欠陥及び基底面転位が成長結晶に発生し得る。積層欠陥及び基底面転位は、概してC面に平行に発生するので、m面成長させた結晶からC面を切り出して必要に応じて鏡面研磨を行うと、積層欠陥や基底面転位がみられないC面を有するSiC単結晶を得ることができる。したがって、m面成長させた結晶からC面を切り出して種結晶として用いてC面成長させる場合、概して、積層欠陥及び基底面転位は、成長結晶に伝搬せず、積層欠陥及び基底面転位を実質的に含まないC面成長結晶を得ることができる。
したがって、本発明に係る方法によってm面成長させたSiC単結晶を、種結晶として用いてC面成長させると、貫通転位、積層欠陥、及び基底面転位を実質的に含まない高品質なSiC単結晶を得ることができる。
従来のSiC単結晶は貫通転位を含むため、C面成長させると成長結晶に貫通転位が伝搬し得るという課題があり、種結晶として用い得る貫通転位を含まないSiC単結晶が望まれていた。このような課題に対して、本願発明に係る方法によりm面成長を行うと、貫通転位を含まないSiC単結晶を得ることができる。
一方で、C面成長の種結晶として用いるためには、所定面積のC面を有するSiC単結晶が必要であり、そのためには所定厚みのm面成長結晶が必要である。所定厚み(長尺)のm面成長結晶を得るために、m面成長を長時間行ったり、m面成長を複数回繰り返して行うことが有効である。しかしながら、そのような長尺成長を行う際に、成長結晶のm面成長面には筋状の積層欠陥が発生し得る。積層欠陥が多量に発生した結晶性の低い単結晶部が多くなると、最終的に、成長結晶の成長面全面に多結晶が発生し得る。
m面成長を行う場合、成長面において、成長方向に対する側面のうち(11−20)面及び(−1−120)面と接する外周部がそれぞれ、積層欠陥発生の基点となる傾向があることが分かった。
したがって、m面成長を行う場合、少なくとも(11−20)面及び(−1−120)面の2面から多結晶部及び/または結晶性の低い単結晶部を除去することが好ましい。これにより次の結晶成長の際に、多結晶部及び/または結晶性の低い単結晶部の発生を抑制することができる。一方で、他の2面である(0001)面及び(000−1)面の両面については、多結晶部及び/または結晶性の低い単結晶部の除去を行わずに、荒れた状態にしていても次の結晶成長への影響が少ない。
m面成長を行う場合、成長結晶の成長方向に対する側面である(11−20)面及び(−1−120)面の2面、並びに(0001)面及び(000−1)面の2面の4面から多結晶部及び/または結晶性の低い単結晶部を除去してもよい。
m面成長を行う場合、(0001)面及び(000−1)面のうちのいずれか1面に接する成長面の外周部を荒れた状態にすることが好ましい。
(0001)面及び(000−1)面のうちのいずれか1面に接する成長面の外周部を荒れた状態にすることによって、多結晶及び/または結晶性の低い単結晶の発生を抑制しつつ、Si−C溶液が荒れた外周部に引き寄せられ、冷却時のSi−C溶液の付着による成長結晶の割れを抑制できる。
(0001)面及び(000−1)面のうちの1面に接する成長面の外周部が鏡面研磨された状態にし、もう一方の面に接する成長面の外周部を荒れた状態にすることによって、結晶成長後にSi−C溶液から成長結晶を引き上げるときに、Si−C溶液(融液)が、荒れた状態部分に引き寄せられて成長面の外周部に集まるため、Si−C溶液(融液)が中央に残ることが防止され、結晶成長後の冷却の際に成長結晶に加わる応力が軽減され、成長結晶の割れを抑制することができる。
(0001)面及び(000−1)面の両面を荒れた状態にしてもよい。この場合でも、結晶成長後にSi−C溶液から成長結晶を引き上げるときに、Si−C溶液(融液)が、(0001)面及び(000−1)面に接する成長面の外周部の荒れた状態部分のいずれかまたは両方に引き寄せられて成長面の端部に集まるため、Si−C溶液(融液)が中央に残ることが防止され、結晶成長後の冷却の際に成長結晶に加わる応力が軽減され、成長結晶の割れを抑制することができる。
m面成長の際、製造コストと成長結晶の品質のバランスの観点から、多結晶部及び/または結晶性の低い単結晶部の除去は、2〜4mmの結晶成長毎に行うことが好ましい。
また、m面成長を繰り返して行う場合、毎回または数度に一回、多結晶部及び/または結晶性の低い単結晶部を除去することができる。例えば一度のm面成長で1mm成長させて繰り返し成長を行う場合、多結晶部及び/または結晶性の低い単結晶部の除去は、2〜4回毎に行うことが好ましく、2mm成長させて繰り返し成長を行う場合、多結晶部及び/または結晶性の低い単結晶部の除去は、1〜2回毎に行うことが好ましい。
本発明に係る方法において、成長面は(000−1)面(C面)であることができる。C面成長を行う場合、多結晶及び/または結晶性の低い単結晶部の発生を抑制したC面バルク成長を行うことができる。
本発明に係る方法において、C面成長を行う場合、成長面に対する全ての側面において多結晶及び/または結晶性の低い単結晶部が発生しやすいため、成長させたSiC結晶の成長方向に対する側面から多結晶部及び/または結晶性の低い単結晶部を全て除去することが好ましい。これにより次の結晶成長の際に、多結晶部及び/または結晶性の低い単結晶部の発生を抑制することができる。
C面成長を行う場合、成長結晶の成長方向に対する側面から、円柱状になるように(成長面が円形になるように)、多結晶部及び/または結晶性の低い単結晶部を全て除去してもよい。
C面成長の際、製造コストと成長結晶の品質のバランスの観点から、多結晶部及び/または結晶性の低い単結晶部の除去は、3〜6mmの結晶成長毎に行うことが好ましい。
また、C面成長を繰り返して行う場合、毎回または数度に一回、多結晶部を除去することができる。例えば一度のC面成長で3mm成長させて繰り返し成長を行う場合、多結晶部の除去は、1〜2回毎に行うことが好ましく、さらには毎回行うことが好ましい。
本発明に係る方法においては、工程(A)で用いる種結晶として、SiC単結晶の製造に一般に用いられる品質のSiC単結晶を用いることができる。例えば昇華法で一般的に作成したSiC単結晶を種結晶として用いることができる。このような昇華法で一般的に作成したSiC単結晶には、概して貫通転位が多く含まれている。また、本方法に用いられ得る種結晶は、例えば板状、円盤状、円柱状、角柱状、円錐台状、または角錐台状等の任意の形状であることができる。
単結晶製造装置への種結晶の設置は、種結晶の上面を種結晶保持軸に保持させることによって行うことができる。
種結晶のSi−C溶液への接触は、種結晶を保持した種結晶保持軸をSi−C溶液面に向かって降下させ、種結晶の下面をSi−C溶液面に対して並行にしてSi−C溶液に接触させることによって行うことができる。そして、Si−C溶液面に対して種結晶を所定の位置に保持して、SiC単結晶を成長させることができる。
種結晶の保持位置は、種結晶の下面の位置が、Si−C溶液面に一致するか、Si−C溶液面に対して下側にあるか、またはSi−C溶液面に対して上側にあってもよい。種結晶の下面をSi−C溶液面に対して上方の位置に保持する場合は、一旦、種結晶をSi−C溶液に接触させて種結晶の下面にSi−C溶液を接触させてから、所定の位置に引き上げる。種結晶の下面の位置を、Si−C溶液面に一致するか、またはSi−C溶液面よりも下側にしてもよいが、多結晶の発生を防止するために、種結晶保持軸にSi−C溶液が接触しないようにすることが好ましい。これらの方法において、結晶成長中に種結晶の位置を調節してもよい。
種結晶保持軸はその端面に種結晶基板を保持する黒鉛の軸であることができる。種結晶保持軸は、円柱状、角柱状等の任意の形状であることができ、種結晶の上面の形状と同じ端面形状を有する黒鉛軸を用いてもよい。
本発明において、Si−C溶液とは、SiまたはSi/X(XはSi以外の1種以上の金属)の融液を溶媒とするCが溶解した溶液をいう。Xは一種類以上の金属であり、SiC(固相)と熱力学的に平衡状態となる液相(溶液)を形成できれば特に制限されない。適当な金属Xの例としては、Ti、Mn、Cr、Ni、Ce、Co、V、Fe等が挙げられる。
Si−C溶液はSi/Cr/X(XはSi及びCr以外の1種以上の金属)の融液を溶媒とするSi−C溶液が好ましい。さらに、原子組成百分率でSi/Cr/X=30〜80/20〜60/0〜10の融液を溶媒とするSi−C溶液が、Cの溶解量の変動が少なく好ましい。例えば、坩堝内にSiに加えて、Cr、Ni等を投入し、Si−Cr溶液、Si−Cr−Ni溶液等を形成することができる。
Si−C溶液は、その表面温度が、Si−C溶液へのCの溶解量の変動が少ない1800〜2200℃であることが好ましい。
Si−C溶液の温度測定は、熱電対、放射温度計等を用いて行うことができる。熱電対に関しては、高温測定及び不純物混入防止の観点から、ジルコニアやマグネシア硝子を被覆したタングステン−レニウム素線を黒鉛保護管の中に入れた熱電対が好ましい。
図4に、本発明の方法を実施するのに適したSiC単結晶製造装置の一例を示す。図示したSiC単結晶製造装置100は、SiまたはSi/Xの融液中にCが溶解してなるSi−C溶液24を収容した坩堝10を備え、Si−C溶液の内部から溶液の表面に向けて温度低下する温度勾配を形成し、昇降可能な黒鉛軸12の先端に保持された種結晶基板14をSi−C溶液24に接触させて、SiC単結晶を成長させることができる。坩堝10及び/または黒鉛軸12を回転させてもよい。
Si−C溶液24は、原料を坩堝に投入し、加熱融解させて調製したSiまたはSi/Xの融液にCを溶解させることによって調製される。坩堝10を、黒鉛坩堝などの炭素質坩堝またはSiC坩堝とすることによって、坩堝10の溶解によりCが融液中に溶解し、Si−C溶液が形成される。こうすると、Si−C溶液24中に未溶解のCが存在せず、未溶解のCへのSiC単結晶の析出によるSiCの浪費が防止できる。Cの供給は、例えば、炭化水素ガスの吹込み、または固体のC供給源を融液原料と一緒に投入するといった方法を利用してもよく、またはこれらの方法と坩堝の溶解とを組み合わせてもよい。
保温のために、坩堝10の外周は、断熱材18で覆われている。これらが一括して、石英管26内に収容されている。石英管26の外周には、加熱用の高周波コイル22が配置されている。高周波コイル22は、上段コイル22A及び下段コイル22Bから構成されてもよく、上段コイル22A及び下段コイル22Bはそれぞれ独立して制御可能である。
坩堝10、断熱材18、石英管26、及び高周波コイル22は、高温になるので、水冷チャンバーの内部に配置される。水冷チャンバーは、Ar、He、N2等を用いて装置内の雰囲気調整を可能にするために、ガス導入口とガス排気口とを備える。
Si−C溶液の温度は、通常、輻射等のためSi−C溶液の内部よりも表面の温度が低い温度分布となるが、さらに、高周波コイル22の巻数及び間隔、高周波コイル22と坩堝10との高さ方向の位置関係、並びに高周波コイルの出力を調整することによって、Si−C溶液24に、種結晶基板14が浸漬される溶液上部が低温、溶液下部が高温となるようにSi−C溶液24の表面に垂直方向の所定の温度勾配を形成することができる。例えば、下段コイル22Bの出力よりも上段コイル22Aの出力を小さくして、Si−C溶液24に溶液上部が低温、溶液下部が高温となる所定の温度勾配を形成することができる。温度勾配は、例えば、溶液表面からの深さがおよそ10mmまでの範囲で、1〜30℃/cmにすることができる。
Si−C溶液24中に溶解したCは、拡散及び対流により分散される。種結晶基板14の下面近傍は、コイル22の上段/下段の出力制御、Si−C溶液の表面からの放熱、及び黒鉛軸12を介した抜熱によって、Si−C溶液24の下部よりも低温となる温度勾配が形成される。高温で溶解度の大きい溶液下部に溶け込んだCが、低温で溶解度の低い種結晶基板下面付近に到達すると過飽和状態となり、この過飽和度を駆動力として種結晶基板14上にSiC単結晶を成長させることができる。
いくつかの態様において、SiC単結晶の成長前に、SiC種結晶基板の表面層をSi−C溶液中に溶解させて除去するメルトバックを行ってもよい。SiC単結晶を成長させる種結晶基板の表層には、転位等の加工変質層や自然酸化膜などが存在していることがあり、SiC単結晶を成長させる前にこれらを溶解して除去することが、高品質なSiC単結晶を成長させるために効果的である。溶解する厚みは、SiC種結晶基板の表面の加工状態にもよるが、加工変質層や自然酸化膜を十分に除去するために、およそ5〜50μmが好ましい。
メルトバックは、Si−C溶液の内部から溶液の表面に向けて温度が増加する温度勾配、すなわち、SiC単結晶成長とは逆方向の温度勾配をSi−C溶液に形成することにより行うことができる。高周波コイルの出力を制御することによって上記逆方向の温度勾配を形成することができる。
メルトバックは、Si−C溶液に温度勾配を形成せず、単に液相線温度より高温に加熱されたSi−C溶液に種結晶基板を浸漬することによっても行うことができる。この場合、Si−C溶液温度が高くなるほど溶解速度は高まるが溶解量の制御が難しくなり、温度が低いと溶解速度が遅くなることがある。
いくつかの態様において、あらかじめ種結晶基板を加熱しておいてから種結晶基板をSi−C溶液に接触させてもよい。低温の種結晶基板を高温のSi−C溶液に接触させると、種結晶に熱ショック転位が発生することがある。種結晶基板をSi−C溶液に接触させる前に、種結晶基板を加熱しておくことが、熱ショック転位を防止し、高品質なSiC単結晶を成長させるために効果的である。種結晶基板の加熱は黒鉛軸ごと加熱して行うことができる。この場合、種結晶基板をSi−C溶液に接触させた後、SiC単結晶を成長させる前に種結晶保持軸の加熱を止める。または、この方法に代えて、比較的低温のSi−C溶液に種結晶を接触させてから、結晶を成長させる温度にSi−C溶液を加熱してもよい。この場合も、熱ショック転位を防止し、高品質なSiC単結晶を成長させるために効果的である。
(例1)
縦10mm、横10mm、及び厚みが1mmの直方体状の4H−SiC単結晶であって、側面が(11−20)面、(−1−120)面、(0001)面、及び(000−1)面を有し、並びに下面が(1−100)面(m面)を有する昇華法により作製したSiC単結晶を用意して種結晶基板として用いた。種結晶基板の上面を、円柱形状の黒鉛軸の端面の略中央部に、黒鉛の接着剤を用いて接着した。
図4に示す単結晶製造装置を用い、Si−C溶液24を収容する黒鉛坩堝に、Si/Cr/Niを原子組成百分率で50:40:10の割合で融液原料として仕込んだ。単結晶製造装置の内部の空気をヘリウムで置換した。黒鉛坩堝10の周囲に配置された高周波コイル22に通電して加熱により黒鉛坩堝10内の原料を融解し、Si/Cr/Ni合金の融液を形成した。そしてSi/Cr/Ni合金の融液に黒鉛坩堝10から十分な量のCを溶解させて、Si−C溶液24を形成した。
上段コイル22A及び下段コイル22Bの出力を調節して黒鉛坩堝10を加熱し、Si−C溶液24の内部から溶液の表面に向けて温度低下する温度勾配を形成した。所定の温度勾配が形成されていることの確認は、昇降可能な、ジルコニア被覆タングステン−レニウム素線を黒鉛保護管の中に入れた熱電対を用いて、Si−C溶液24の温度を測定することによって行った。高周波コイル22A及び22Bの出力制御により、Si−C溶液24の表面における温度を2000℃にした。Si−C溶液の表面を低温側として、Si−C溶液の表面における温度と、Si−C溶液24の表面から溶液内部に向けて垂直方向の深さ10mmの位置における温度との温度差を10℃とした。
工程(1−A)
黒鉛軸に接着した種結晶の下面(m面)をSi−C溶液面に並行にしてSi−C溶液に浸漬し、黒鉛軸をSi−C溶液に濡らしてから、種結晶下面の位置がSi−C溶液の液面よりも1mm上方に位置するように、黒鉛軸を引き上げた。1mm引き上げた位置で10時間保持して、SiC結晶を成長させた。
結晶成長の終了後、黒鉛軸を上昇させて、種結晶及び種結晶を基点として成長したSiC結晶を、Si−C溶液及び黒鉛軸から切り離して回収した。得られた成長結晶は、種結晶の下面に対して口径が拡大するように成長しており、直径16mm、及び厚み1.1mm(昇華法により作製した種結晶厚みを除く。以下同様。)を有していた。成長結晶の直径は、成長面を囲む最小の円の直径であり、成長結晶の厚みは成長結晶の成長面中央部の厚みである。
工程(1−A)で得られた結晶の成長面から観察した顕微鏡写真を図5に示す。得られた結晶の成長面の中央部は平坦でありSiC単結晶が得られており、成長面の外周部(口径拡大部)には多結晶部が発生していることが分かった。また、固化したSi−C溶液は、成長結晶の外周部の多結晶部に引き寄せられており、成長させたSiC単結晶に割れはみられなかった。
工程(1−B)
工程(1−A)で得られた成長結晶について、成長結晶の成長方向に対する側面である(11−20)面、(−1−120)面、及び(000−1)面のそれぞれに平行に、口径拡大部を除去するように、ダイヤモンド刃を用いてダイシングして切り出して多結晶部を除去した。(0001)面については切り出しを行わずに多結晶部を残した。次いで、切断面である側面の3面を鏡面研磨した。
工程(1−C)
工程(1−B)で得られた結晶を種結晶として用いた。そして、黒鉛軸がSi−C溶液に濡れないように、種結晶下面(m面)の位置を、Si−C溶液の液面に一致する位置に配置して、Si−C溶液に種結晶の下面を接触させるシードタッチを行い、次いで、種結晶下面の位置がSi−C溶液の液面よりも1mm上方に位置するように、黒鉛軸を引き上げた。このように、工程(1−B)で得られた結晶を種結晶として用いて、Si−C溶液が黒鉛軸に濡れ上がらないようにし、成長時間を24時間にしたこと以外は、工程(1−A)と同様の条件でm面結晶成長を行った。
結晶成長の終了後、黒鉛軸を上昇させて、種結晶及び種結晶を基点として成長したSiC結晶を、Si−C溶液及び黒鉛軸から切り離して回収した。得られた成長結晶は、14mmの直径、及び2.7mmの合計厚みを有していた。
得られた結晶の成長面から観察した顕微鏡写真を図6に示す。得られた結晶の成長面の中央部は平坦でありSiC単結晶が得られており、貫通転位もみられなかった。工程(1−B)において多結晶部を残した位置に対応する成長面の外周部には多結晶部が発生しており、この多結晶部に固化したSi−C溶液が引き寄せられており、成長させたSiC単結晶に割れはみられなかった。
(例2)
工程(2−A)
例1の工程(1−A)と同様の昇華法により作製したSiC単結晶を用意して種結晶基板として用いた。そして、黒鉛軸がSi−C溶液に濡れないように、種結晶下面の位置を、Si−C溶液の液面に一致する位置に配置して、Si−C溶液に種結晶の下面を接触させるシードタッチを行い、次いで、種結晶下面の位置がSi−C溶液の液面よりも1mm上方に位置するように、黒鉛軸を引き上げた。このように、Si−C溶液が黒鉛軸に濡れ上がらないようにし、成長時間を15時間にしたこと以外は例1の工程(1−A)と同様の条件でm面結晶成長を行った。
結晶成長の終了後、黒鉛軸を上昇させて、種結晶及び種結晶を基点として成長したSiC結晶を、Si−C溶液及び黒鉛軸から切り離して回収した。得られた成長結晶は、直径12mm、厚み2.0mm(昇華法により作製した種結晶厚みを除く。以下同様。)を有していた。
工程(2−C)1回目
工程(2−A)で得られた成長結晶を種結晶として用い、工程(2−A)と同じ条件でm面結晶成長を行った。
結晶成長の終了後、黒鉛軸を上昇させて、種結晶及び種結晶を基点として成長したSiC結晶を、Si−C溶液及び黒鉛軸から切り離して回収した。得られた成長結晶は、直径14mm、厚み3.0mmを有していた。
工程(2−C)2回目
工程(2−C)1回目で得られた成長結晶を種結晶として用い、成長時間を24時間にしたこと以外は、工程(2−C)1回目と同じ条件でm面結晶成長を行った。
結晶成長の終了後、黒鉛軸を上昇させて、種結晶及び種結晶を基点として成長したSiC結晶を、Si−C溶液及び黒鉛軸から切り離して回収した。得られた成長結晶は、直径15mm、厚み5.0mmを有していた。
得られた結晶の成長面から観察した顕微鏡写真を図7に示す。得られた結晶の成長面の中央部はほぼ平坦でありSiC単結晶が得られていたが、積層欠陥の筋が若干みられた。
工程(2−C)3回目
工程(2−C)2回目で得られた成長結晶を種結晶として用い、工程(2−C)1回目と同じ条件でm面結晶成長を行った。
結晶成長の終了後、黒鉛軸を上昇させて、種結晶及び種結晶を基点として成長したSiC結晶を、Si−C溶液及び黒鉛軸から切り離して回収した。得られた成長結晶は、直径1.6mm、厚み6.1mmを有していた。
得られた結晶の成長面の中央部はほぼ平坦でありSiC単結晶が得られていたが、工程(2−C)2回目で成長させた結晶よりも、積層欠陥の筋が多くなっていた。
工程(2−C)4回目
工程(2−C)3回目で得られた成長結晶の成長面を鏡面研磨し、この成長結晶を種結晶として用い、成長時間を24時間にしたこと以外は、工程(2−C)1回目と同じ条件でm面結晶成長を行った。
結晶成長の終了後、黒鉛軸を上昇させて、種結晶及び種結晶を基点として成長したSiC結晶を、Si−C溶液及び黒鉛軸から切り離して回収した。得られた成長結晶は、直径19mm、厚み8.0mmを有していた。
得られた結晶を成長面から観察した顕微鏡写真を図8に、側面から観察した顕微鏡写真を図9に示す。得られた結晶の成長面は、全体が多結晶化していた。
工程(2−B)1回目
工程(2−C)4回目で得られた成長結晶について、(11−20)面、(−1−120)面、(0001)面、及び(000−1)面のそれぞれに平行に、口径拡大部を除去するように、ダイヤモンド刃を用いてダイシングにより切り出して多結晶部を除去して、ブロック状の結晶を得た。次いで、切断面である側面の4面及び成長面について鏡面研磨を行い、縦8.6mm、横8.6mm、及び厚み7.0mmのSiC単結晶を得た。
工程(2−C)5回目
工程(2−B)1回目で得られた成長結晶を種結晶として用い、成長時間を14時間にしたこと以外は、工程(2−C)1回目と同じ条件でm面結晶成長を行った。
結晶成長の終了後、黒鉛軸を上昇させて、種結晶及び種結晶を基点として成長したSiC結晶を、Si−C溶液及び黒鉛軸から切り離して回収した。得られた成長結晶は、直径9.5mm、厚み8.0mmを有していた。
得られた結晶を成長面から観察した顕微鏡写真を図10に示す。得られた結晶の成長面は、積層欠陥が若干みられるものの、良好な平坦性を有することが分かった。また、成長結晶について、側面から観察した写真を図11に示す。側面を切断したブロック状の種結晶を基点として結晶成長したことが分かる。
工程(2−B)2回目
工程(2−C)5回目で得られた成長結晶について、成長結晶の側面である(11−20)面、及び(−1−120)面のそれぞれに平行に、口径拡大部を除去するように、ダイヤモンド刃を用いてダイシングにより切り出して、多結晶部を除去した。次いで、切断面である側面の2面について鏡面研磨を行った。
工程(2−C)6回目
工程(2−B)2回目で得られた成長結晶を種結晶として用い、工程(2−C)1回目と同じ条件でm面結晶成長を行った。
結晶成長の終了後、黒鉛軸を上昇させて、種結晶及び種結晶を基点として成長したSiC結晶を、Si−C溶液及び黒鉛軸から切り離して回収した。得られた成長結晶は、直径11mm、厚み8.5mmを有していた。
得られた結晶の成長面は、積層欠陥が若干みられるものの、良好な平坦性を有することが分かった。
工程(2−C)7回目、工程(2−B)3回目、工程(2−C)8回目
工程(2−C)6回目で得られた成長結晶を種結晶として用い、工程(2−C)1回目と同じ条件でm面結晶成長を行った。得られた結晶の成長面は、積層欠陥が若干みられるものの、良好な平坦性を有していた。工程(2−B)2回目と同様に側面処理を行い、これを種結晶として用い、成長時間を24時間にしたこと以外は、工程(2−C)1回目と同じ条件で、さらにm面結晶成長を行った。
結晶成長の終了後、黒鉛軸を上昇させて、種結晶及び種結晶を基点として成長したSiC結晶を、Si−C溶液及び黒鉛軸から切り離して回収した。得られた成長結晶は、直径10mm、厚み9.0mmを有していた。
得られた結晶の成長面は、積層欠陥が若干みられるものの、良好な平坦性を有しており、貫通転位もみられなかった。