以下、本発明の好適な実施の形態について、図面を参照しつつ説明する。
先ず、図1を参照し、本発明に係る液体吐出装置の一実施形態としてのインクジェットプリンタ101の全体構成について説明する。
プリンタ101は、直方体形状の筐体101aを有する。筐体101aの天板上部には、排紙部31が設けられている。筐体101aの内部空間は、上から順に空間A,B,Cに区分できる。空間A,Bには、給紙部101cから排紙部31に至る用紙搬送経路が形成されており、図1に示す黒太矢印に沿って用紙Pが搬送される。空間Aでは、用紙Pへの画像記録と、用紙Pの排紙部31への搬送が行われる。空間Bでは、用紙Pの搬送経路への給紙が行われる。空間Cからは、空間Aのインクジェットヘッド1(以下、ヘッド1と称す)に対してインク及び水が供給される。
空間Aには、ヘッド1、搬送機構8、キャップ機構40、用紙センサ32、空気供給動作に用いられる空気供給機構50(図7参照)、及び、制御装置100等が配置されている。ヘッド1は、用紙Pに対してブラックインクを吐出する。また、ヘッド1は、ミスト状の水(以下、ミストと称する)を排出する。
ヘッド1は、主走査方向に長尺な略直方体形状を有し、記録指令に基づいて画像を記録する。ヘッド1は、ヘッドホルダ13を介して筐体101aに支持され、プラテン5と所定の間隙を介して対向する。ヘッド1は、ヘッド本体3(図2参照)に加えて、リザーバユニット12(図7参照)、フレキシブルプリント配線基板(不図示)、回路基板等が積層された積層体である。上流側流路部材としてのリザーバユニット12には、リザーバを含む上流側インク流路(ともに不図示)、及び、ミスト用の上流側水流路が形成されており、カートリッジ4a,4bからインク及び水が供給される。リザーバは、インクを一時的に貯留する。
下流側流路部材としての流路ユニット11は、アクチュエータユニット19と共にヘッド本体3を構成し、リザーバユニット12を介してインク及び水が供給される。流路ユニット11の下面は、複数の第1吐出口108と複数の第2吐出口109(図6参照)が形成された吐出面1aである。第1吐出口108からは、アクチュエータユニット19の駆動により、インク滴が吐出される。第2吐出口109からは、アクチュエータユニット19の駆動により、インク滴よりもサイズが小さい水滴が吐出される。すなわち、第2吐出口109からは、ミストが排出される。なお、ヘッド1は、後に詳述する。
回路基板は、制御装置100からの信号を調整する。出力信号は、フレキシブルプリント配線基板上のドライバIC33(図9参照)で駆動信号に変換され、さらにヘッド本体3のアクチュエータユニット19に出力される。アクチュエータユニット19は、駆動信号が供給されると、流路ユニット11内のインク及び水に圧力(吐出エネルギー)を加える。
ヘッドホルダ13には、ヘッド1に加えて、キャップ機構40を構成するキャップ41が取り付けられている。キャップ41は、ヘッド1に配設された環状部材であって、平面視でヘッド1を内包する。キャップ機構40の構成、動作、機能等は、後に詳述する。
搬送機構8は、用紙Pをガイドする2つのガイド部9a,9bと、プラテン5とを含んでいる。2つのガイド部9a,9bは、プラテン5を挟んで配置されている。搬送方向上流側のガイド部9aは、3つのガイド18aと3つの送りローラ対22〜24とを有し、給紙部101cとプラテン5とを繋ぐ。そして、ガイド部9aは、画像記録用の用紙Pをプラテン5に向けて搬送する。搬送方向下流側のガイド部9bは、3つのガイド18bと4つの送りローラ対25〜28とを有し、プラテン5と排紙部31とを繋ぐ。画像記録後の用紙Pが、排紙部31に向けて搬送される。なお、プラテン5は、板状部材であって吐出面1a及びキャップ41よりも一回り大きな平面サイズを有する。
用紙センサ32は、送りローラ対24の上流側に配置され、搬送される用紙Pの先端を検知する。このとき出力された検知信号は、同期したヘッド1及び搬送機構8の駆動に用いられ、所望の解像度と速度で画像が形成されることになる。
空気供給機構50は、吐出面1aに対向した吐出空間S1に空気及び加湿空気のいずれかを選択的に供給する。吐出空間S1に加湿空気が供給されることで、吐出空間S1に開口する第1吐出口108は、内部のインクに水分が補給されることになり、増粘や乾燥が抑制される。
空間Bには、給紙部101cが配置されている。給紙部101cは、給紙トレイ20及び給紙ローラ21を有する。このうち、給紙トレイ20が、筐体101aに対して着脱可能である。給紙トレイ20には、複数の用紙Pが収納可能である。給紙ローラ21は、給紙トレイ20内で最も上方の用紙Pを送り出す。
ここで、副走査方向とは、用紙Pが送りローラ対23〜25によって搬送される搬送方向D(図1中矢印D方向)と平行な方向であり、主走査方向とは、水平面に平行且つ副走査方向に直交する方向である。
空間Cには、ブラックインクを貯留するカートリッジ4aと、透明な液体である水を貯留するカートリッジ4bとが、筐体101aに対して着脱可能に配置されている。これら2つのカートリッジ4a,4bは、ヘッド1にチューブ(不図示)及びポンプ29a,29b(図9参照)を介して接続されている。なお、ポンプ29aは、ヘッド1にインクを強制的に送るとき(すなわち、パージ時や液体の初期導入時)に駆動される。ポンプ29bは、ヘッド1に水を初期導入するときに駆動される。ポンプ29a,29bは、これら以外は停止状態にあり、ヘッド1へのインク及び水の供給を妨げない。
次に、制御装置100について説明する。制御装置100は、プリンタ各部の動作を制御して、プリンタ101全体の動作を司る。制御装置100は、外部装置(プリンタ101と接続されたPC等)から供給された記録指令(画像データなど)に基づいて、画像記録動作を制御する。記録指令を受けると、制御装置100は、給紙ローラ21用の給紙モータ138(図9参照)、各送りローラ対22〜28用の送りモータ139(図9参照)を駆動する。このとき、制御装置100の制御により、複数の第2吐出口109からミストが排出される。給紙トレイ20から送り出された用紙Pは、上流側ガイド部9aによりガイドされ支持面5a上に送られる。用紙Pは、ヘッド1の真下を副走査方向(用紙搬送方向D)に通過する際に、制御装置100の制御により、複数の第1吐出口108からインクが吐出され(吐出動作)、所望の画像が形成される。なお、インクの吐出タイミングは、用紙センサ32からの検知信号に基づいて行われる。そして画像が形成された用紙Pは、下流側ガイド部9bによりガイドされて、筐体101aの上部から排紙部31に排出される。
また、制御装置100は、メンテナンス動作によって、ヘッド1のインク吐出特性の回復・維持を行う。メンテナンス動作には、例えば、パージ動作、ワイピングによる吐出面1aのクリーニング動作、キャッピング動作や加湿動作等が含まれる。
パージでは、ポンプ29aが駆動されて、すべての第1吐出口108からインクが強制的に排出される。これにより、ヘッド1内の異物や第1吐出口108近傍の増粘インクが排出される。ワイピングでは、吐出面1aがワイパ(板状弾性部材)によって払拭される。ワイピングは、パージ動作後に行われ、吐出面1a上の残留インクや異物が取り除かれる。第1吐出口108の吐出特性が回復され、吐出面1aが清浄化される。
キャッピング動作では、図7及び図8(b)に示すように、キャップ41により吐出空間(吐出面1aとプラテン5との間の隙間)S1が外部空間S2から隔離される。加湿動作には、図8(b)に示すように隔離された吐出空間S1へのミスト排出動作、空気供給動作及び加湿空気供給動作が含まれる。ミスト排出動作では、アクチュエータが駆動されて、第2吐出口109からミストが排出される。空気供給動作(第1供給動作)では、吐出空間S1へ空気が供給される。加湿空気供給動作(第2供給動作)では、空気供給動作に代わって、吐出空間S1へ加湿空気が供給される。キャッピングによりインクメニスカスの乾燥が抑制され、ミストや加湿空気により乾燥がさらに抑制される。
なお、パージ動作は、例えば、搬送経路内での紙ジャム(詰まり)時、所定時間以上継続した画像形成後や非吐出後等に行われる。キャッピング動作は、例えば、プリンタ101の停止時や休止時に行われる。
次に、図2〜図6を参照し、ヘッド本体3及びサイドカバー35の構成について説明する。なお、図3では、アクチュエータユニット19の下側にあって破線で示すべき圧力室110、アパーチャ112及び第1吐出口108を実線で示している。
ヘッド本体3は、図2に示すように、流路ユニット11の上面に8つのアクチュエータユニット19が固定された積層体である。上面には複数の圧力室110が開口し、アクチュエータユニット19が開口を封止している。アクチュエータユニット19には、圧力室110に対応して、複数のアクチュエータが形成されている。ドライバIC33から駆動信号が供給されると、アクチュエータが選択的に変形され、圧力室110内の液体(インク及び水)に吐出エネルギーが付与される。
本実施形態では、図3に示すように、流路ユニット11の上面において、複数の圧力室110が、台形状に広がる圧力室群を構成している。圧力室群は、互いに平行な16列の圧力室列からなり、各列には圧力室110が等間隔に並んでいる。各列は、主走査方向に延びている。1つの圧力室群の占有領域は、1つのアクチュエータユニット19のそれとほぼ等しい。
図2に示すように、流路ユニット11は、主走査方向に延在した直方体形状を有する。流路ユニット11は、図4に示すように、9枚のステンレス製プレート122〜130の積層体である。流路ユニット11の上面には、14個のインク供給口105bと4個の水供給口106bとが開口している。水供給口106bは、2つ1組で流路ユニット11の主走査方向の両端近傍に配置されている。14個のインク供給口105bは、主走査方向に関して、水供給口106bに挟まれて配置されている。流路ユニット11の内部には、下流側インク流路及び下流側水流路が形成されている。下流側インク流路は、上流側の共通インク流路と下流側の複数の個別インク流路132とから構成される。共通インク流路は、図3及び図6に示すように、マニホールド流路105及びこれから分岐し主走査方向に沿って延在する副マニホールド流路105aからなる。マニホールド流路105は、一端にインク供給口105bを持つ。個別インク流路(第1個別流路)132は、図4に示すように、副マニホールド流路105aの出口から、アパーチャ112及び圧力室110を経て、下面(吐出面1a)の第1吐出口108に至る。
下流側水流路は、上流側の共通水流路と下流側の複数の個別水流路133とから構成される。共通水流路は、図2及び図6に示すように、マニホールド流路106及びこれから分岐した副マニホールド流路106aからなる。マニホールド流路106は、一端に水供給口106bを持つ。個別水流路(第2個別流路)133は、副マニホールド流路106aの出口から、アパーチャ112及び圧力室110を経て、下面(吐出面1a)の第2吐出口109に至る。
流路ユニット11は、図6に示すように、2本の仮想直線L(副走査方向に延びた二点鎖線)により区画できる。2本の仮想直線Lの主走査方向外側は、水流路の形成領域であって、ミスト排出領域1cに相当する。2本の仮想直線Lの内側は、インク流路の形成領域であって、インク吐出領域1bに相当する。本実施の形態では、いずれの領域でも、吐出口108、109が主走査方向に600dpiに相当する間隔で配置されている。使用に際して、各吐出口108には、リザーバユニット12の上流側インク流路からインクが供給され、各吐出口109には上流側水流路から水が供給される。
ヘッド1は、樹脂製のサイドカバー35を有している。サイドカバー35は、図2に示すように、ヘッド本体3の全周を取り囲む。サイドカバー35は、図8に示すように、流路ユニット11及びリザーバユニット12の両側面に跨って取り付けられている。サイドカバー35は、主走査方向に沿う長尺部36と副走査方向に沿う短尺部37とで構成される。
各長尺部36には、図2及び図8に示すように、主走査方向に関する中央に上方に突出する突出部36aが形成されている。突出部36a及び長尺部36には、鉛直方向に貫通する貫通孔38が形成されている。貫通孔38の下側開口38aは、吐出空間S1に対する空気又は加湿空気の出口である。各短尺部37には、副走査査方向に関する中央に上方に突出する突出部37aが形成されている。突出部37a及び短尺部37には、鉛直方向に貫通する貫通孔39が形成されている。貫通孔39の下側開口39aは、吐出空間S1に対する空気又は加湿空気の入口である。
次に、アクチュエータユニット19について説明する。図2に示すように、アクチュエータユニット19は、台形の平面形状を有し、図5に示すように、2枚の圧電シート143、142、共通電極層134及び1枚の圧電シート141を含む。圧電シート141上には、個別電極135が形成されている。個別電極135の主要部分は、圧力室110の対向領域内にあり、この領域外でランド136に繋がる。ドライバIC33からの信号は、ランド136を介して、個別電極135に与えられる。アクチュエータユニット19は、圧力室110に対向する部分が、個別のアクチュエータとして働く。上述の流路構成に対応して、主走査方向両側のアクチュエータユニット19は、内側に個別インク流路用アクチュエータ(第1アクチュエータ)が、外側に個別水流路用アクチュエータ(第2アクチュエータ)が配置されている。
ここで、吐出口(第1吐出口108及び第2吐出口109)から液滴(インク滴及び水滴)を吐出させるためのアクチュエータユニット19の駆動方法について述べる。本実施の形態では、圧電シート141のみが、厚み方向に分極されている。両電極134、135間に分極方向の電界を印加すると、圧電シート141は面方向に収縮する。この時、他の圧電シート142、143との間で歪差が生じる。圧電シート141は圧力室110と反対側にあるので、アクチュエータは、圧力室110に向かって凸状にユニモルフ変形する。液滴の吐出には、この変形が利用される。具体的には、各アクチュエータは、予め凸状の変形状態にされている。吐出要求に対応して、アクチュエータは、変形を解放し、続くタイミングで再び変形状態に戻される。変形解放時に圧力室110へ液体が供給され、変形復帰時に1つの液滴が吐出されることになる。両タイミング間の時間間隔(パルス幅)は、AL(Acoustic Length)にほぼ等しく、各タイミングで生じる圧力波が吐出に好条件で重なる。
第2吐出口からミスト状の水滴を吐出する場合、ミスト信号が個別電極135に供給される。ミスト信号は、インクの吐出信号に比べて低い電圧のパルス、狭いパルス幅のパルス、あるいは逆に広いパルス幅のパルスで構成されている。このとき、インクと水との粘度差を考慮した調整がなされていてもよい。いずれの場合も、水メニスカスが微振動して、非常に小さな水滴(ミスト状水滴)が放散される。本実施の形態では、狭いパルス幅が採用され、圧力波は吐出に好条件から外れた状態で重なる。本実施形態では、ミスト信号として、パルス幅がALよりも基準値を超えて狭い電圧パルスを含むものが用いられる。
次に、図7及び図8を参照し、ヘッドホルダ13及びキャップ機構40の構成について説明する。
ヘッドホルダ13は、金属等からなる剛体の枠状フレームであり、ヘッド1の側面を全周に亘って支持している。ヘッドホルダ13には、キャップ機構40のキャップ41が取り付けられている。キャップ41は、空気供給機構50の構成部材でもあって、キャップ41が閉ざされた吐出空間S1を作ると、この空間内の空気が空気供給機構50からの空気又は加湿空気と置換可能となる。
ここで、ヘッドホルダ13とヘッド1との当接部は、全周に亘って封止剤で封止されている。ヘッドホルダ13とキャップ41との当接部も、全周に亘って接着剤で固定されている。ヘッドホルダ13には、4つの貫通孔13aが形成されており、突出部36a,37aが挿通されている。貫通孔13aは、突出部36a,37aより一回り大きく、隙間に封止剤が充填されている。これにより、キャップ41が吐出空間S1を閉ざしたとき、空間S1内の水分の発散経路が確実に遮断されることになる。
キャップ機構40は、キャップ41、キャップ41を昇降させるキャップ昇降機構48を含む。キャップ(区画部材)41は、ヘッド1とともにサイドカバー35及び吐出空間S1を内包可能で、主走査方向に長い。キャップ41は、図8に示すように、リップ部材42、及び、ダイアフラム44を含む。
リップ部材42は、ゴム等の環状弾性材料からなり、図8に示すように、基部42x、及び、基部42xの下方にある断面三角形の突出部42aを含む。基部42xの上面には、後述の可動体43が固定されている。
ダイアフラム44も、ゴム等の環状弾性材料からなる。ダイアフラム44は、可撓性を有した薄膜部材であって、外周端(一端)がリップ部材42に接続されている。ダイアフラム44の内周端は、密着部44aである。密着部44aは、内側側面がヘッド1の側面に密着し、上面がヘッドホルダ13の下面に密着し、下面がサイドカバー35の上端面に密着している。このうち、上面が、全長に亘って、ヘッドホルダ13と接着剤で固定されている。
キャップ昇降機構(リップ移動機構)48は、可動体43、複数のギア45、昇降モータ47(図9参照)を有している。可動体43は、環状の剛材料(例えば、ステンレス)からなり、ヘッド1をサイドカバー35の外側から取り囲んでいる。可動体43は、複数のギア45と接続されている。昇降モータ47が駆動されると、ギア45の回転にともない可動体43が昇降する。
リップ部材42は、可動体43の昇降に伴って、その先端(突出部42a)がプラテン5の支持面5aに当接する当接位置(図7及び図8(b)に示す位置)と、支持面5aから離隔した離隔位置(図8(a)に示す位置)とを選択的に取る。当接位置では、吐出空間S1が密閉された封止状態(区画状態)となる。このようにプラテン5は、キャップ機構40の一部を構成する。また、離隔位置では、吐出空間S1が外部空間S2に対して開放状態となる。
次に、図7に戻って、空気供給機構50の構成について説明する。
空気供給機構50は、図7に示すように、キャップ41及びサイドカバー35に加え、タンク54、チューブ55〜57、ポンプ58、及び、切換弁59などを含む。チューブ55(第1空気流路)の一端はタンク54に接続されている。チューブ55は、他端側が2本の分岐チューブ55a,55bに分岐され、分岐チューブ55aが図7中左側短尺部37の突出部37aに接続され、分岐チューブ55bが図7中右側短尺部37の突出部37bに接続されている。チューブ(第2空気流路)56の一端もタンク54に接続されている。チューブ56は、他端側が2本の分岐チューブ56a,56bに分岐され、分岐チューブ56aが図2中左側長尺部36の突出部36aに接続され、分岐チューブ56bが図2中右側長尺部36の突出部36bに接続されている。このように、チューブ55,56は、吐出空間S1とタンク54とを連通させている。また、チューブ(迂回空気流路)57は、2つのチューブ55,56に接続され、タンク54を迂回している。
タンク(生成部)54は、下部空間に加湿用の水を貯留し、上部空間には加湿空気を貯蔵している。チューブ56は、タンク54の下部空間(水中)と連通している。一方、チューブ55は、タンク54の上部空間と連通している。なお、チューブ56は、タンク54近傍に逆止弁(不図示)が取り付けられており、タンク54内の水がチューブ56側に流れ込まない。また、タンク54内の水が少なくなった場合には、図示しない水補給タンクより水がタンク54に補給される。
ポンプ58が、チューブ55の途中部位に設けられている。切換弁(切換部)59が、チューブ56の途中部位に設けられている。切換弁59は、制御装置100の制御により、吐出空間S1からの空気を直接ポンプ58に導く空気供給状態と、タンク54に導く加湿空気供給状態とを選択的に切り換える。
空気供給状態では、ポンプ58が駆動されると、図7中の白抜き矢印で示すように、空気がポンプ58と吐出空間S1との間で循環する。空気は、タンク54を迂回するので、加湿されない。加湿空気供給状態では、ポンプ58が駆動されると、図中黒太矢印で示すように、循環する。空気は、タンク54を通過するので、加湿される。
次に、図9を参照しつつ、制御装置100について説明する。制御装置100は、演算処理装置であるCPU(Central Processing Unit)と、CPUが実行するプログラム及びプログラムに使用されるデータが記憶されているROM(Read Only Memory)と、プログラム実行時にデータを一時記憶するためのRAM(Random Access Memory)とを含んでいる。制御装置100を構成する各機能部は、これらハードウェアとROM内のソフトウェアとが協働して構築されている。図9に示すように、制御装置100は、画像データ記憶部151、波形記憶部152、信号生成制御部153、搬送制御部154、メンテナンス制御部155、及び、時間計測部156を有している。なお、ここでは、各種動作の制御をCPUが処理するが、処理の形態はこれに限られない。各処理を複数のCPUで分担する形態、各処理をASICで行う形態、各処理を一または複数のCPUと一又は複数のASICの組み合わせで行う形態等のいずれかを採用してもよい。
画像データ記憶部151は、外部装置からの画像データ(記録指令)を記憶する。画像データは、各画素を形成する液量を示すドットデータの集合体であって、駆動データの形式を有している。記録制御部161は、画像データに基づいて、アクチュエータユニットを駆動する。具体的には、駆動データは、各記録周期において各第1吐出口から吐出されるインク量が、4段階(小量、中量、大量、なし)のいずれであるかを示している。ここで、「小量」は後述する吐出波形W1に対応し、「中量」は後述する吐出波形W2に対応し、「大量」は後述する吐出波形W3に対応し、「なし」は後述する非吐出波形W4(すべて図10参照)に対応する。
波形記憶部152は、五つの単位波形を記憶している。本実施形態においては、吐出波形W1,W2,W3と、非吐出波形W4と、ミスト波形Sとが用意されている(図10参照)。吐出波形W1〜W3は、信号生成用の単位波形であり、第1吐出口108からインクを吐出させる吐出信号が生成される。非吐出波形W4からは、インクを吐出させない非吐出信号が生成される。ミスト波形Sからは、同様にして、第2吐出口109からミストを排出させるミスト信号が生成される。これら五つの単位波形は、いずれも1記録周期分の時間的な長さを有している。なお、1記録周期とは、副走査方向の記録解像度に対応する単位距離(最小ドット間隔)だけ用紙が搬送されるのに要する時間に相当する。
吐出信号、非吐出信号及びミスト信号は、上述した五つの単位波形をドライバIC33の出力回路34で増幅したもので、ローレベルがグランド電位に、ハイレベルが正の第1所定電位(例えば24V)となっている。係る増幅は、記録周期毎に個別電極135毎に行われ、吐出選択信号及びミスト選択信号(後述)に基づいて、五つの単位波形から1個の増幅対象波形が選択される。
信号生成制御部153は、記録制御部161及びミスト制御部162を含んでいる。記録制御部161は、記憶された駆動データに基づいて、吐出選択信号を出力回路34に出力する。吐出選択信号は、記録周期毎に出力される。出力回路34からは、ハイレベルが第1所定電位の波形(W1〜W4)が、吐出選択信号により1つ選ばれて、吐出信号又は非吐出信号として個別電極135に出力される。
ミスト制御部162は、記録期間中(1つの用紙Pに対する記録の開始から終了までの期間)及びメンテナンス動作中に、ミスト選択信号を出力回路34に出力する。記録期間中では、ミスト選択信号は、記録周期毎に出力される。出力回路34からは、ハイレベルが第1所定電位のミスト波形(S)が、ミスト信号として個別電極135に出力される。出力は、期間中断続的でも連続的であってもよい。メンテナンス動作中にも、ミスト選択信号が、断続的に出力される。信号は、記録周期で出力され、空気供給動作(後述)中にミスト供給時間t1(例えば、数秒)だけ継続される。この信号出力は、第1所定時間T1(>t1)毎に繰り返される。メンテナンス動作中は、ミスト制御部162が、メンテナンス制御部155と協働して機能する。
搬送制御部154は、画像データ(記録指令)に基づいて、用紙Pが搬送方向に沿って所定速度で搬送されるように、給紙部101c、及び、ガイド部9a,9bの各動作を制御する。なお、所定速度は、1記録周期で搬送方向の記録解像度における単位距離だけ移動可能な速度である。例えば、50μsecで42μm(解像度600dpiに対応した単位距離)だけ進める。
メンテナンス制御部155は、メンテナンス動作において、キャップ昇降機構48、切換弁59、及び、ポンプ29a,29b,58を制御する。また、メンテナンス制御部155は、キャッピング動作後、ポンプ58を制御して空気供給動作を始め、続く第2所定時間後には、切換え弁59を制御して加湿空気供給動作を始める。また、メンテナンス制御部155は、加湿動作中において、新たな記録指令などを受信したり、加湿動作が開始されてからの実行時間が所定時間を超える場合に加湿動作を終了するように、ポンプ58を制御する。
時間計測部156は、吐出空間S1が封止状態のときに、キャッピング後の経過時間を計測する。計測結果からは、キャッピング直後から始まるミスト供給の継続時間(ミスト供給時間:t1、t2)及び空気供給の継続時間(第2所定時間:T2)、ミスト供給動作の繰返し周期(第1所定時間:T1)、加湿空気供給の継続時間(t3)等が、ミスト制御部162やメンテナンス制御部155によって読み取られる。
次に、図11を参照しつつ、制御装置が実行するキャッピング及び加湿動作の制御内容について説明する。
制御装置100は、図11に示すように、先ず、キャッピング指令の受信の有無を判定する(ステップG1)。キャッピング指令の受信前、キャップ41(リップ部材42)は離隔位置にある。
メンテナンス制御部155は、キャッピング指令を受信すると(G1:YES)、昇降モータ47を駆動し、リップ部材42の先端をプラテン5の支持面5aに当接(離隔位置から当接位置に移動)させる(ステップG2:キャッピング動作)。これにより、吐出空間S1が、吐出面1aと支持面5aとの間で、外部空間S2から区画した封止状態となる。
ステップG2の後、メンテナンス制御部155は、記録指令の有無を判定する(ステップG3)。記録指令があれば、このメンテナンスルーチンを抜けて、記録動作関連のルーチンに移る。記録指令がなければ(G3:N)、ステップG4に移って、メンテナンス動作を進める。
ステップG4で空気供給動作がはじめられ、ステップG5で第1ミスト供給動作がはじめられる。空気供給動作では、切換弁59がタンク54の迂回経路を形成し、ポンプ58が駆動される。第1ミスト供給動作では、主走査方向両端部の第2アクチュエータが駆動される。これにより、図8において、空気が白抜き矢印で示すように流れ、水ミストが黒矢印のように空気の流れに乗って移動する。いずれも、吐出面1aの中央部(2つの開口38a)に向かう。
ステップG6では、第1ミスト供給開始後の経過時間が計測され、所定の時間(第1ミスト供給時間:t1)が経過したか否かが判定される。時間t1は、数秒である。所定の時間:t1未満であれば、ステップG3に戻り、ミスト供給及び空気供給が継続される。所定時間が経過すると、ステップG7に移り、ミスト供給が停止される。この後、ステップG8に移る。
ステップG8では、第1所定時間(ミスト供給動作の繰返し周期:T1)又はその整数倍の時間が経過したか否かが判定される。所定時間が経過してなければ(G8:N)、ステップG3に戻る。時間T1は、約30秒である。第1ミスト供給時間:t1は経過しているので、空気供給だけが継続される。所定時間が経過すると(G8:Y)、次のステップG9に移る。このとき、ミスト供給に関する計測結果は、破棄される。
ステップG9では、第2所定時間(空気供給の継続時間:T2)が経過したか否かが判定される。本実施の形態では、第2所定時間は、第1所定時間の整数倍である。具体的には、時間T2は、約1分である。所定時間が経過してなければ(G9:N)、ステップG3に戻る。第2所定時間が経過するまで、ステップG3からステップG8までが繰り返される。第2所定時間が経過すると(G9:Y)、次のステップG10に移る。
ステップ10では、空気供給動作に代わって加湿空気供給動作が始められ、第2ミスト供給動作が始められる。加湿空気供給動作では、切換弁59がタンク54を通る循環経路を形成する。
ステップG11では、第2ミスト供給開始後の経過時間が計測され、所定の時間(第2ミスト供給時間:t2)が経過したか否かが判定される。時間t2は、時間t1の約1.5倍である。所定の時間:t2未満であれば(G11:N)、ステップG3に戻り、ミスト供給及び加湿空気供給が継続される。第2所定時間:T2が既に経過しているので、第1ミスト供給動作や空気供給動作は起こらない。所定時間:t2が経過すると(G11:Y)、ステップG12に移り、ミスト供給が停止される。加湿空気の供給は、継続される。このとき、ミスト供給に関する計測結果は破棄され、ステップG13に移る。
ステップG13では、加湿空気供給の継続時間:t3が経過したか否かが判定される。時間t3は、10数秒である。所定時間が経過してなければ(G13:N)、ステップG3に戻り、加湿空気供給だけが継続される。所定時間:t2が経過すると(G13:Y)、ステップG14に移り、加湿空気の供給が停止される。これにより、キャッピング及び加湿動作に係るフローが終了する。
続いて、制御装置100が実行する記録動作の制御内容について説明する。制御装置100は、画像データ(記録指令)を受信すると、搬送制御部154及び記録制御部161を制御して、用紙Pの搬送と、これに同期したインク吐出を始める。画像データ記憶部151の画像データに基づいて、用紙Pへの記録動作が行われる。このとき、ミスト制御部162は、記録期間の間、ミスト選択信号を出力回路34に出力する。ヘッド1の主走査方向両端部では、記録動作中でも乾燥が進みやすく、これを効果的に抑制できる。制御装置100は、当該画像データに係る記録が終了すると、次の記録指令の入力を待つ。この後の待機時間が所定時間に達すると、上述のようにキャッピング及び加湿動作が実行される。
以上、本実施形態によると、封止状態において、2つの開口39aから空気(又は加湿空気)が供給され、吐出空間S1の空気が2つの開口38aから排出されるため、主走査方向に関して吐出面1aの両端側から中央にかけて気流が生じる。このとき、水ミストが、第2吐出口109から排出される。第2吐出口109は第1吐出口108の気流方向上流側にあり、ミストは気流に乗って移動する。このため、主走査方向に関して吐出面1aの一端から他端へと流れるものと比して、ミストの移動距離が短くなる。この結果、複数の第1吐出口108のインク乾燥のばらつきを抑制することが可能となる。
また、封止状態におけるミスト排出動作は、第1所定時間が経過する度に実行される。このため、ミストが間欠的に排出されるので、水の消費量を抑制しつつ、複数の第1吐出口108のインク乾燥のばらつきを効果的に抑制することが可能となる。
空気供給機構50は、タンク54、3つのチューブ55〜57、及び、切換弁59を有している。これにより、空気及び加湿空気の供給の切換を簡単な構成で実現することが可能となる。キャップ機構40が、キャップ41、キャップ昇降機構48、及び、プラテン5から構成されている。これにより、キャップ機構40を比較的小さくすることが可能となり、装置全体の小型化を図ることが可能となる。
上述の実施形態においては、複数の第2吐出口109が吐出面1aの主走査方向の両端側にだけ形成されていたが、複数の第2吐出口109,209が複数の第1吐出口108の周囲を囲むように配置されていてもよい。この変形例におけるヘッド本体203は、図12及び図13を参照しつつ以下に説明する。なお、図12及び図13は、ヘッド本体を吐出面から見たときの平面図である。また、上述の実施形態と同様な構成については、同符号で示し説明を省略する。
ヘッド本体203の流路ユニット211には、上述の流路ユニット11の構成に加えて、複数の第2吐出口209が主走査方向に配列されている。第2吐出口209の列209aは、図13に示すように、2列1組で、台形状に広がる各吐出口群(吐出口108、109の集合)の長辺側に隣接している。平面視で、第2吐出口列209a及び第2吐出口109は、吐出口群(第1吐出口108の集合)を包囲している。なお、複数の第2吐出口209は、吐出口108、109と同じ配置関係で、吐出口108、109に対して配置されている。
流路ユニット211には、インク用の圧力室110に並んで、第2吐出口209に対応した圧力室110が形成されている。水用の圧力室110も、インク用の圧力室110と同じ配置関係で、インク用の圧力室110に対して配置されている。
また、流路ユニット211には、図12に示すように、第2吐出口209に対応した水流路が内部に形成されている。水流路は、2本の流路群から構成され、副走査方向にインクの流路を挟む。1つの流路群は、一端が水供給口106aに接続したマニホールド流路106、マニホールド流路106から主走査方向に延びた増設副マニホールド流路206a、及び副マニホールド流路206aの出口から第2吐出口209に至る複数の個別水流路を含む。副マニホールド流路206aは、他端で、別の水供給口106aに接続する。各個別水流路は、第2吐出口209に対応した1つの圧力室110を含む。副マニホールド流路206aに対する個別水流路の配置形態は、吐出口108、109の場合と同じである。
アクチュエータユニットには、増設した圧力室110に対向して、複数の個別電極が形成されている。アクチュエータユニットにも、台形状の長辺側に、2列のアクチュエータ列が、インク用のアクチュエータと同じ配置関係で、インク用のアクチュエータに対して配置されている。
上述の実施形態において、ヘッド本体3をヘッド本体203に変更し、複数の第2吐出口109からミストを排出する際に、複数の第2吐出口209からもミストを排出すると(上述の実施形態と同様なミスト排出動作を実行すると)、ミストが複数の第1吐出口108の周囲から排出される。このため、複数の第1吐出口108のインク乾燥のばらつきや、記録動作中のインク乾燥をより一層抑制することが可能となる。
以上、本発明の好適な実施の形態について説明したが、本発明は上述の実施の形態に限られるものではなく、特許請求の範囲に記載した限りにおいて様々な変更が可能なものである。例えば、ミスト排出動作を間欠的に実行せずに、吐出空間S1の封止状態において1回のミスト排出動作だけを行ってもよい。また、空気供給動作においても加湿空気を供給してもよい。これにより、複数の第1吐出口のインク乾燥のばらつきを抑制することが可能となる。この場合、空気供給機構は切換弁59や迂回流路となるチューブ57を有していなくてもよいため、構成が簡単になる。また、記録動作を行うときに、ミスト排出動作を行わなくてもよい。
空気供給動作を行わず、加湿空気の供給のみを行う場合、空気の循環し始めは湿度が飽和蒸気圧相当にないことがあるので、ミスト排出動作を循環開始直後に行うことは、気流中の水分量を確保しておく点で有効である。
第2ミスト供給時間t2は、第1ミスト供給時間t1の約1.5倍としたが、時間t1以上であればよい。これらの時間は、ヘッド1近傍の温度や湿度によって調整されてよい。この場合、温度が高いほど、また、湿度が低いほど、時間を長く設定する。さらに、第2所定時間は、第1所定時間の整数倍としたが、第1所定時間よりも長ければよい。環境条件によっては、水ミストの補給に係らず、インクの乾燥が進んでしまうことが心配される。その際、第2所定時間を、第2所定時間後に施す処置によって、確実に吐出特性を回復・維持できる時間とすればよい。
また、吐出空間S1を封止状態(区画状態)と開放状態とに取り得るキャップ機構として、吐出面1aと対向する底部及びこの底部の周縁に立設された環状部を有するキャップと、環状部の先端がサイドカバー35の周縁部と当接する位置及びサイドカバー35から離隔した位置にキャップを移動させる移動機構とを含んで構成されていてもよい。また、上述の実施形態及び変形例においては、第2吐出口109,209からミスト状の水を排出していたが、透明且つ水分を含んでおれば、どのような液体を排出してもよい。また、吐出空間S1の空気を排出するための排出口としての開口38aは、1つだけ設けられていてもよい。加えて、排出口としての開口は、主走査方向に関して、吐出面1aの中央と重なる位置に配置されておればよく、吐出面1a内に形成されていてもよい。また、上述の実施形態における空気及び加湿空気供給動作においては、開口38aから排出された吐出空間S1内の空気を循環させているが、開口38aが単に大気に連通していてもよい。これにおいて、封止状態の吐出空間S1には同様の気流が生じるため、同様の効果を得ることができる。
本発明は、ライン式・シリアル式のいずれにも適用可能であり、また、プリンタに限定されず、ファクシミリやコピー機等にも適用可能であり、さらに、インク以外の液体を吐出させることで記録を行う液体吐出装置にも適用可能である。記録媒体は、用紙Pに限定されず、記録可能な様々な媒体であってよい。さらに、本発明は、インクの吐出方式にかかわらず適用できる。例えば、本実施の形態では、圧電素子を用いたが、抵抗加熱方式でも、静電容量方式でもよい。