以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
[第1実施形態の説明]
図1は、本発明の第1実施形態に係る燃料電池システムの構成を示すブロック図である。図1に示すように、該燃料電池システム100は、カソード11a、及びアノード11bを備えた燃料電池スタック11(以下、「スタック11」と略す)と、カソード11aに空気(酸化ガス)を供給する空気ブロワ(ブロワ)12と、該空気ブロワ12より送出される空気を加熱する熱交換器13と、スタック11のアノード11bに炭化水素燃料等の燃料(改質ガス)を供給する第1燃料ポンプ14と、を備えている。なお、アノード11bの入口側には、蒸発器や燃料改質器が搭載されるが、図1では記載を省略している。また、本実施形態では酸化ガスとして空気を用いる例について説明するが、本発明はこれに限定されるものではなく、酸素を含むガスを用いることができる。
カソード11aの上流側には、スタック11の起動時にカソード11aを昇温するための燃焼ガスを生成する起動用燃焼器(燃焼器)21が設けられており、該起動用燃焼器21には、空気ブロワ12より送出される空気の一部がバルブ22で分岐されて供給され、更に、第2燃料ポンプ23より燃料が供給される。そして、起動用燃焼器21では燃料と空気により燃焼が行われ、燃焼ガスをカソード11aに供給して、スタック11の起動時にカソード11aを加熱する。
ここで、起動用燃焼器21、空気ブロワ12、バルブ22、及び第2燃料ポンプ23により、酸化剤供給手段が構成される。即ち、酸化剤供給手段は、カソード11aの上流側に設けられ、空気(酸化ガス)を出力する空気ブロワ12、及びスタック11の起動時には空気ブロワ12より送出される空気を加熱する起動用燃焼器21を含み、カソード11aに空気を供給する機能を有している。
スタック11のカソード11a入口側(空気が導入される側)には、入口温度センサ(第1温度検出手段)41aが設けられ、出口側(空気を排出する側)には、出口温度センサ(第2温度検出手段)41bが設けられている。更に、スタック11には、出力電流I、及び出力電圧Vを検出するための電流・電圧センサ(電流検出手段)42が設けられている。なお、本実施形態では、第1温度検出手段として入口温度センサ41aを用いる例について説明するが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば、スタック11内の最も熱容量の小さい部分に温度センサを設け、これを第1温度検出手段とすることも可能である。
更に、空気ブロワ12、第2燃料ポンプ23、バルブ22、入口温度センサ41a、出口温度センサ41b、及び電流・電圧センサ42は、それぞれ制御部(制御手段)31に接続されている。そして、該制御部31は、入口温度センサ41aで検出される入口温度Ti(第1検出温度)と、出口温度センサ41bで検出される出口温度To(第2検出温度)、及び電流・電圧センサ42で検出される出力電流I、出力電圧Vに基づいて、空気ブロワ12より送出する空気流量、第2燃料ポンプ23より出力する燃料量、及びバルブ22の開度を制御し、スタック11を起動する際の、自己発熱ステップにおいて、該スタック11全体の温度が均一となるように制御する。なお、制御部31は、例えば、中央演算ユニット(CPU)や、RAM、ROM、ハードディスク等の記憶手段からなる一体型のコンピュータとして構成することができる。
次に、第1実施形態に係る燃料電池システム100の、スタック11による発電開始時における処理動作を、図2に示すフローチャートを参照して説明する。本実施形態では、スタック11を起動させる際に、スタック11の温度を、後述する運転モード開始判断温度Tdまで昇温させるための起動モードを実行し、スタック11の温度がこの温度Tdに到達した後に、負荷に電力を供給するためのモードである運転モードに切り替える。また、起動モードは、起動用燃焼器21によりスタック11を昇温する加熱昇温ステップと、スタック11にて発電することにより該スタック11を昇温する自己発熱ステップに区分している。そして、図2に示すフローチャートは、起動モード時において、加熱昇温ステップから自己発熱ステップに移行し、その後、運転モードへ達するまでの処理について示している。
以下、詳細に説明する。初めに、図2のステップS11において、制御部31は、起動モードから運転モードへ移行する際の条件となる運転モード開始判断温度Tdと、このときのスタック11の出力電流、即ち運転モード開始判断電流Id(目標電流)と、このときの空気流量、即ち運転モード開始判断流量Fd、及び酸素利用率の上限値ηcuを設定する。なお、空気流量Fdは、電流Idと酸素利用率の上限値ηcuから求めることができる。この処理は、上位システムからの出力要求に基づいて取得されるか、或いは操作入力により設定される。ここで、酸素利用率とは、カソードに供給される空気中に含まれる酸素のうち、発電に用いられる酸素量の割合である。
次いで、ステップS12において、制御部31は、スタック11の上限温度Tuと、自己発熱ステップの開始温度Thと、スタック11の入口温度変化率の上限値−Z(負の値)を設定する。これらの各数値は、操作者による設定入力、或いは上位システムより取得することができる。なお、本実施形態ではスタック11の上限温度Tuを一定値としているが、空気流量Fや空気流量増加量Fs、空気流量ステップの最大出力電流値、或いは起動用燃焼器21の運転状態等に連動させて上限温度Tuを変化させるように構成することも可能である。
ステップS13において、制御部31は、自己発熱ステップの初期空気流量F0(初期酸化ガス流量)と、このときの電流I0(但し、I0<Id)、1ステップの空気流量増加量Fs、1ステップの電流変化量Is、電流の増減を判断する時間間隔tiを設定する。これらの各数値は、操作者による設定入力、或いは上位システムより取得することができる。なお、本実施形態では空気流量増加量Fsを一定値とする例について説明するが、この空気流量増加量Fsを空気流量Fや、最大出力電流等に連動して変化させることも可能である。例えば、前回のステップの流量における最大出力電流に比例して、今回のステップの空気流量増加量Fsが小さくなるように設定することも可能である。
ステップS14において、制御部31は、スタック11の入口温度Ti(第1検出温度)と、ステップS12の処理で設定した自己発熱ステップ開始温度Thを比較する。即ち「Ti>Th」であるか否かを判断する。そして、「Ti>Th」でないと判断された場合には(ステップS14でNO)、ステップS25において、加熱昇温ステップを継続する。即ち、入口温度Tiが自己発熱ステップ開始温度Thに達していない場合には、自己発熱ステップに移行させることができないので、加熱昇温モードを継続させてスタック11を加熱する処理を継続する。
一方、「Ti>Th」であると判断された場合には(ステップS14でYES)、ステップS15において、制御部31は、カソード11aに供給する燃焼ガスを空気に切り替えて、空気流量Fが上述の初期空気流量F0となるように制御し、且つ、スタック11の出力電流をI0に設定する。この処理は、図1に示すバルブ22の開度を調整することにより行うことができる。即ち、スタック11の入口温度Tiが、ステップS12の処理で設定した自己発熱ステップ開始温度Thに達した場合には、スタック11は発電可能な温度に達しているので、空気ブロワ12より送出され熱交換器13で加熱された空気をカソード11aに導入して発電を開始する。なお、この発電は、発熱によりスタック11を昇温するために行うものであり、外部負荷に電力を供給しない。
ステップS16において、制御部31は、スタック11の入口温度TiとステップS12の処理で設定した上限温度Tuとを対比し、「Ti<Tu」であるか否かを判断する。そして、「Ti<Tu」でないと判断された場合には(ステップS16でNO)、ステップS17において、制御部31は、スタック11の出力電流Iを減少させる。この処理では、スタック11の入口温度Tiが上限温度Tuを上回る場合には、入口温度Tiを上限温度Tuよりも低くする必要があるので、出力電流Iを減少させることにより、入口温度Tiの温度上昇を抑制する。なお、実際の処理では、スタック11の出力電流Iを前述した1ステップ毎の変化量であるIsずつ減少させることにより、出力電流Iが減少するように制御する。ステップS17の処理が終了すると、ステップS22に処理を進める。
一方、「Ti<Tu」であると判断された場合には(ステップS16でYES)、ステップS18において、制御部31は、入口温度Tiの変化率(時間微分値)「dTi/dt」を算出し、この変化率「dTi/dt」が、ステップS12の処理で設定した変化率の上限値「−Z」(負の値)よりも大きいか否かを判断する。そして、小さいと判断された場合には(ステップS18でNO)、ステップS19に処理を進め、大きいと判断された場合には(ステップS18でYES)、ステップS20に処理を進める。即ち、時間経過に伴って入口温度Tiが増加傾向、或いは緩やかな減少傾向である場合には、ステップS18の処理でYES判定となってステップS20に進み、急激な減少傾向である場合(入口温度の減少速度が大きい場合)には、NO判定となってステップS19に進む。
例えば、カソード11aに導入する流体を、燃焼ガスから空気に切り替えた直後は、入口温度Tiは急激に低下するので(入口温度Tiの減少速度が大きくなるので)、ステップS18でNO判定となり、ステップS19の処理で出力電流Iを増加させることによりスタック11の発熱量を増大させ、入口温度Tiの急激な低下を防止する。その後、ステップS22に処理を進める。
ステップS20において、制御部31は、空気流量FがステップS11の処理で設定した運転モード開始判断流量Fdに達しているか否かを判断し、且つ、電流IがステップS11の処理で設定した運転モード開始判断電流Idに達しているか否かを判断し、更に、入口温度TiがステップS11の処理で設定した運転モード開始判断温度Tdに達しているか否かを判断する。そして、これらの判断結果のうちの少なくとも一つが成立しない場合には(ステップS20でNO)、ステップS21において、制御部31は、出力電流Iを増加させる。その後、ステップS22に処理を進める。
一方、ステップS20に示した条件が全て成立した場合、即ち、F≧Fd、I≧Id、Ti≧Tdが成立した場合には(ステップS20でYES)、本処理を終了して運転モードへ移行する。
ステップS22において、制御部31は、スタック11の出力電流Iを検出し、酸素利用率ηcを求める。ここで、酸素利用率ηcとは、カソードに供給される空気中に含まれる酸素のうち、発電に用いられる酸素量の割合であり、全体の酸素量は、空気ブロワ12より送出される空気流量から求めることができ、発電に用いられる酸素量は出力電流Iから求めることができるので、これらに基づいて酸素利用率ηcを算出できる。また、カソード11aに供給される流体が空気或いは空気と燃焼ガスの混合ガスの場合には、起動用燃焼器21の燃焼状態や流量に基づいて、ガス中の酸素分圧を推算し、これに基づいて空気流量Fを補正することができる。また、利用率上限値ηcuをカソード11aに供給される空気流量に連動して設定することも可能である。
ステップS23において、制御部31は、ステップS22の処理で求めた酸素利用率ηcが、ステップS11の処理で設定した利用率上限値ηcuよりも大きいか否かを判断し、「ηc>ηcu」でなければ(ステップS23でNO)、ステップS16に処理を戻し、「ηc>ηcu」であれば(ステップS23でYES)、ステップS24に処理を進める。
即ち、酸素利用率ηcが利用率上限値ηcuに達していないということは(ステップS23でNOと判断される場合)、この時点での空気流量F(初期的にはF0)でより大きな出力電流Iを得ることができる(最大出力電流に達していない)ということであるので、ステップS16に処理を戻す。
一方、酸素利用率ηcが利用率上限値ηcuに達しているということは(ステップS23でYESと判断される場合)、この時点での空気流量Fで得られる出力電流Iが最大出力電流に達しているということであり、これ以上出力電流Iを増加させることができないので、ステップS24において、制御部31は、カソード11aに供給する空気流量Fを、ステップS13の処理で設定した1ステップ分の空気流量増加量Fsだけ増加させ、ステップS16に処理を戻す。その結果、カソード11aに供給される空気流量Fは「F+Fs」となって、再度ステップS16からの処理が繰り返される。
つまり、空気流量Fを設定し、上記のステップS16〜S21の処理を繰り返すことにより、スタック11の出力電流Iがこの空気流量Fにおける最大出力電流となるように制御し、出力電流Iが最大出力電流に達した場合には、空気流量FをFsだけ増加させる。即ち、F=F+Fsとする。そして、新たな空気流量Fに対して、上記と同様の処理を実行することにより、出力電流Iが新たな空気流量Fについての最大出力電流となるように制御される。
そして、この制御を繰り返すことにより、やがてはスタック11の出力電流Iが運転モード開始判断電流Idに到達し、空気流量FがFdに到達し、温度TiがTdに到達するので、運転モード開始条件を満たすことができる。即ち、ステップS20でYESと判定される。その後、本処理を終了し運転モードへと移行する。
図2に示した処理をまとめると、起動モードが開始され、最初に実行される加熱昇温ステップにより、入口温度Tiが自己発熱ステップ開始温度Thに達した際に、起動用燃焼器21を停止させて自己発熱ステップによる昇温に移行する。この際、スタック11に供給する空気流量Fを、運転モード開始時における流量よりも低いF0に設定して発電を開始し、この空気流量F0についての最大電流が得られるように、スタック11の出力電流Iを制御する。
具体的には、ステップS16の処理では、入口温度Tiが上限温度Tuを上回る場合には電流Iを減少させるように制御し、ステップS18の処理では、入口温度Tiが急激に低下した場合には電流Iを増加するように制御し、更に、ステップS20の処理では、空気流量F、出力電流I、及び入口温度Tiが、運転モード移行時の空気流量Fd、出力電流Id、及び入口温度Tdに達するように、出力電流Iを制御する。そして、これらの条件が満たされた場合には、運転モードへの移行条件が満足するので、自己発熱ステップを終了し、起動モードから運転モードに切り替える。
このような処理を実行することにより、スタック11の入口温度Tiを安定させた状態で、カソード11aに供給する空気流量F、及びスタック11の出力電流Iを安定的に上昇させることができ、空気流量F、入口温度Ti、及び出力電流IがそれぞれFd、Td、Idに到達した時点で、本実施形態の処理を終了して、運転モードに移行させることができる。従って、スタック11の起動時において、スタック11内の温度のばらつきを抑制でき、更に、短時間で所望の出力を得ることができることとなる。
次に、図3に示すタイミングチャートを参照して、図2のフローチャートに示した処理を実行することによる、空気流量、出力電流、及び各温度の変化について説明する。図3は、スタック11を起動させた後に行われる起動モード時における空気流量、出力電流、及び各温度の変化を示す特性図であり、カソード11aに供給される空気流量F(燃焼ガス及び熱交換器13で加熱された空気)、カソード11aに供給される空気温度Tg、スタック11の入口温度Ti、スタック11の出口温度Toの変化を示している。
図3に示す時刻t0においてスタック11が起動されると、初めに加熱昇温ステップが開始されてスタック11を加熱する。具体的には、図1に示す空気ブロワ12より起動用燃焼器21に空気を供給し、第2燃料ポンプ23より起動用燃焼器21に燃料を供給し、且つバルブ22を制御することにより、起動用燃焼器21を燃焼させ、該起動用燃焼器21より出力される燃焼ガスをスタック11のカソード11aに供給する。
すると、空気温度Tg、入口温度Ti、及び出口温度Toが徐々に上昇する。この際、空気温度Tgが最も高く、次いで、入口温度Ti、出口温度Toの順に低くなる。そして、時刻th0にて入口温度Tiが、自己発熱ステップ開始温度Thに達すると、加熱昇温ステップから自己発熱ステップに切り替えられる。
そして、自己発熱ステップが開始されると、起動用燃焼器21による燃焼ガスの供給が停止する。なお、第1実施形態では起動用燃焼器21を停止させる例について示すが、起動用燃焼器21を完全に停止させず、燃焼ガスの供給量を低減するようにしても良い。従って、図3に示すように、スタック11に供給される空気流量Fは、時刻th0にて急激に低下する。このときの空気流量Fは、運転モード開始時における流量Fdよりも小さい流量となるように設定される。具体的には、上述した自己発熱ステップの初期空気流量F0(F0<Fd)に設定される。
また、燃焼ガスの供給停止に伴って、スタック11に供給される空気温度Tgは、急激に低下し、且つ、スタック11の入口温度Tiは若干低下する。そして、上述した図2の処理を行うことにより、入口温度Tiがほぼ一定の温度を維持するように、空気流量Fを徐々に増加させ、該空気流量Fが運転モード開始判断流量Fdに達し、且つ、出力電流Iが運転モード開始判断電流Idに達した時刻tdにて、自己発熱ステップを終了し、運転モードに移行する。
図4は、自己発熱ステップにおける入口温度Ti、空気温度Tg、空気流量F、及び出力電流Iの変化を詳細に示す特性図である。図4に示す時刻th0、及びtdが、それぞれ図3に示した時刻th0、及びtdに対応している。
図4に示す時刻th0において、入口温度Tiが自己発熱ステップ開始温度Thに達すると、空気流量FをF0とし、出力電流IがI0となるように設定する。この際、スタック11に供給される空気(酸化ガス)は、起動用燃焼器21より出力される燃焼ガスから、熱交換器13で加熱された空気に切り替えられる。
また、図4に示す時刻th0の後において、入口温度Tiの減少速度「−dTi/dt」が、入口温度変化率上限値(−Z)よりも大きくなるので(図2のステップS18参照)、時刻th1において、電流Iを1ステップ分の変化量Isだけ増加させる。
時刻th2において、電流Iが流量F0にて決定される最大電流値Imax(F0)に達したので、空気流量Fを1ステップ分の増加量Fsだけ増加させる(図2のステップS21参照)。
時刻th3において、入口温度Tiが予め設定した上限温度Tuを上回ったので、電流Iを1ステップ分の変化量Isだけ減少させる(図2のステップS17参照)。
時刻th4において、入口温度Tiが上限温度Tuを下回り、且つ電流IがIdに達していないので、電流Iを1ステップ分の変化量Isだけ増加させる。
そして、時刻tdにおいて、空気流量Fが運転モード開始判断流量Fdに達し、電流Iが運転モード開始判断電流Idに達し、且つ、入口温度Tiが運転モード開始判断温度Tdに達したので、起動モードを終了し、運転モードへ移行する(図2のステップS20参照)。
そして、図4に示す入口温度Ti、空気流量F、及び出力電流Iの特性曲線から理解されるように、自己発熱ステップが実行されている際には、カソード11aに供給する空気流量Fが段階的(増加量Fsずつ)に上昇し、これに伴って出力電流Iが上下に変動しながら全体的には段階的にIsずつ上昇している(一時的には下降する場合もある)。また、入口温度Tiは大きく変動することがなく、ほぼ一定値を維持している。また、図3のth0〜td間に示すように、出口温度Toは大きな変動を伴うこと無く、徐々に上昇している。従って、自己発熱ステップが実行されてから運転モードに達するまでの間において、スタック11全体の温度に大きなばらつきが生じることがなく、ほぼ均一な温度となっていることが判る。つまり、スタック11の起動時において、スタック11内の温度のばらつきが抑制されながら、運転モードに達するように制御されている。
このようにして、本実施形態に係る燃料電池システム100では、スタック11を起動する起動モードにおいて、加熱昇温ステップが終了した際には、カソード11aに供給する空気流量Fを初期空気流量F0に設定し、スタック11の温度に基づいて、この初期空気流量F0についての最大電流値が出力されるように制御し、最大電流値が得られた場合には、空気流量Fを増加させ、再度出力電流を増加させて最大電流値が出力されるように制御する。従って、スタック11内の温度ばらつきを抑制して安定的にスタック温度を上昇させながら、目標出力(運転モード開始判断電流Id)に到達させて運転モードへ移行させることができる。
特に、急速起動を行うために、スタック加熱用の燃焼ガス流量が運転モード開始判断時の空気流量に対して大きい場合には、カソード11a内に供給される燃焼ガスの上流から下流への温度ばらつきを抑制しながら、素早く出力電流を増加させて起動モードへと移行させることができる。
また、平板型セルを積層するタイプのスタック構成では、スタックの体積当たりのセル集積密度を高くすることができるという利点がある一方で、積層する1枚のセル内の発電電圧を一定として運転する場合は、空気の流れに依存するセル面内の温度ばらつきに依存して発電電流密度のばらつきが発生し、この電流密度のばらつきが更にセル面内の温度ばらつきを大きくしやすいという欠点がある。本実施形態では、高出力密度の平板積層型スタックにおいても、セル内の温度ばらつきを抑制しながら、起動させることができる。
更に、燃料電池を車載する場合等、スタック11の起動・停止を頻繁に行う場合には、前回の停止時からの経過時間により、セル内の温度分布が一定ではない場合(大きなばらつきを有する場合)があるが、本発明によれば、セル内温度のばらつきを拡大させたり、不安定にさせることはなく、スタック11を迅速に運転モードへ移行させることができる。
その結果、スタック11に生じる温度のばらつきによりスタック11が損傷、劣化するという問題を回避でき、且つ、短時間で目標出力に到達させることができる。
また、図2のステップS23の処理では、スタック11の出力電流I、及びカソード11aに供給される空気流量Fに基づいて酸素利用率ηcを算出し、この酸素利用率ηcが予め設定した利用率上限値ηcuを上回った場合に、スタック11の出力電流Iが最大出力電流に到達したと判断するので、最大出力電流に到達したことを高精度に検出することができ、カソード11aに供給する空気流量を増加するタイミングを正確に設定することができる。また、カソード11a内の空気流下流側での酸素分圧不足に伴うカソード極材質の変質や性能劣化や剥離を抑制しながら、急速な起動を行うことが可能となる。
更に、図2のステップS16の処理では、カソード11aの入口温度Tiが上限温度Tuを上回った場合に、出力電流Iを減少させるので、入口温度Tiの異常な上昇を抑制することができ、ひいてはスタック11全体の温度ばらつきを低減することができる。更に、高出力密度が期待できる平板積層型のスタック構成においても、セル温度分布を安定化させることができる。
また、図2のステップS18の処理では、カソード11aの入口温度Tiの減少速度が入口温度変化率上限値(−Z)よりも大きい場合に、スタック11の出力電流Iを増加させるので、例えば、カソード11a内に供給する空気を起動用燃焼器21より出力される燃焼ガスから、ブロワより出力される空気に切り替えるシステム構成とした場合の切り替え直後のように、入口温度Tiが急激に低下する場合には、この温度低下を抑制することができ、ひいてはスタック11全体の温度ばらつきを低減することができる。これにより、燃焼ガスと空気を混合してカソード11aへ導入する制御を行わないシーケンスを構築することができるため、スタック11における空気の流路構造を小型化でき、且つ、空気流量の制御を簡素化することができる。
また、カソード11aに供給する空気流量を1ステップ毎に増加量(Fs)ずつ増加させながら電流を制御するので、発電中に空気流量Fが大きく変化することを抑制でき、安定的にカソード11aに供給する空気流量Fを増大させ、且つ、出力電流Iを運転モード開始判断電流Idまで増加させることができる。このため、空気流によるセルの加熱冷却性能とセルの発熱バランスで決まるセル温度分布の安定化を図ることができる。
なお、本実施形態の説明では、出口温度センサ41bで検出される出口温度Toを用いたが、この値を制御に用いていないので、この測定は必須ではない。
[第2実施形態の説明]
次に、本発明の第2実施形態について説明する。システムの構成は、図1に示したものと同様である。第2実施形態に係る燃料電池システムでは、スタック11の入口温度Tiを測定すると共に、出口温度Toを測定し、これらの温度差の時間変化率(時間微分値)を算出し、この変化率が予め設定した閾値(後述する「温度差変化率の上限値Y」)よりも大きい場合には、スタック11の出力電流Iを減少するように制御する。
また、加熱昇温ステップから自己発熱ステップに移行した際には、起動用燃焼器21を停止させるのではなく、バルブ22の開度を調整することにより、該起動用燃焼器21より送出される燃焼ガスと、熱交換器13を経由して送出される空気を混合した空気をカソード11aに供給し、所定時間が経過した後(後述する図6の時刻th2)に起動用燃焼器21を停止させる。
このような制御を行うことにより、スタック11の下流側の温度が上昇していないときに、上流温度が急激に上昇して温度分布が大きく変化することや、下流側が遅れて昇温されることにより熱暴走することを防止する。
以下、第2実施形態に係る燃料電池システム100の、スタック11の発電開始時における処理動作を、図5に示すフローチャートを参照して説明する。
初めに、ステップS51において、制御部31は、起動モードから運転モードへ移行する際の条件となる運転モード開始判断温度Tdと、このときの出力電流Id、空気の流量Fd、及び酸素利用率の上限値ηcuを設定する。空気の流量Fdは、前述した第1実施形態と同様に、電流Idと酸素利用率の上限値ηcuから求めることができる。この処理は、上位システムからの出力要求に基づいて取得されるか、或いは操作入力により設定される。
次いで、ステップS52において、制御部31は、スタック11の上限温度となる第1上限温度Tu1及び第2上限温度Tu2と、自己発熱ステップ開始温度Thと、スタック11の入口温度変化率の上限値−Z(負の値)、及び、温度差変化率の上限値Yを設定する。温度差変化率とは、入口温度センサ41aで測定される入口温度Tiと、出口温度センサ41bで測定される出口温度Toとの差分の時間変化率である。これらの各数値は、操作者による設定入力、或いは上位システムより取得することができる。
ステップS53において、制御部31は、自己発熱ステップの初期空気流量F0と、このときの出力電流I0、1ステップの空気流量増加量Fs、1ステップの電流変化量Is、電流の増減を判断する時間間隔tiを設定する。これらの各数値は、操作者による設定入力、或いは上位システムより取得することができる。時間間隔tiは、本フローチャートの演算周期に対応して設定される。
ステップS54において、制御部31は、スタック11の入口温度Ti(第1検出温度)と出口温度Toとの平均温度Tavを演算し、更に、この平均温度TavとステップS52の処理で設定した自己発熱ステップ開始温度Thとを比較する。即ち「Tav>Th」であるか否かを判断する。そして、「Tav>Th」でないと判断された場合には(ステップS54でNO)、ステップS67において、加熱昇温モードを継続する。即ち、平均温度Tavが自己発熱ステップ開始温度Thに達していない場合には、自己発熱ステップに移行させることができないので、加熱昇温モードを継続させてスタック11を加熱する処理を継続する。
一方、「Tav>Th」であると判断された場合には(ステップS54でYES)、ステップS55において、制御部31は、カソード11aに供給する流体を、起動用燃焼器21より送出される燃焼ガスと空気を混合したガスに切り替える。この際、燃焼ガス流量をF0bとし、空気流量をF0aとする。なお、F0a+F0b=F0である。更に、出力電流をI0に設定する。ここで、燃焼ガス流量F0bは、図1に示す起動用燃焼器21より出力される燃焼ガスの流量であり、空気流量F0aは、図1に示す熱交換器13にて加熱された後カソード11aに供給される空気流量である。また、出力電流I0は、スタック11より出力される電流である。この処理は、図1に示すバルブ22の開度を調整することにより行うことができる。
即ち、スタック11の平均温度Tavが、ステップS52の処理で設定した自己発熱ステップ開始温度Thに達した場合には、スタック11は発電可能な温度に達しているので、空気ブロワ12より送出される空気の一部を起動用燃焼器21で加熱し、残りを熱交換器13にて加熱された空気としてカソード11aに導入し、発電を開始する。
ステップS56において、制御部31は、スタック11の入口温度TiとステップS52の処理で設定した上限温度Tu(Tu1、Tu2のいずれかを示す)とを対比し、「Ti<Tu」であるか否かを判断する。そして、「Ti<Tu」でないと判断された場合には(ステップS56でNO)、ステップS57において、制御部31は、スタック11の出力電流Iを減少させる。この処理では、スタック11の入口温度Tiが上限温度Tuを上回る場合には、入口温度Tiを上限温度Tuよりも低くする必要があるので、出力電流Iを減少させることにより、入口温度Tiの温度上昇を抑制する。なお、実際の処理では、スタック11の出力電流Iを前述した1ステップ毎の変化量であるIsずつ減少させることにより、出力電流Iが減少するように制御する。ステップS57の処理が終了すると、ステップS64に処理を進める。
ここで、上述したように上限温度Tuは、自己発熱ステップが開始された後の経過時間により変化するように設定されている。具体的には、自己発熱ステップが開始されてから所定時間τ1以内においては、上限温度Tuは第1の上限温度Tu1に設定され、所定時間τ1が経過した後においては、上限温度Tuは第2の上限温度Tu2(但し、Tu2>Tu1)に設定される(図6参照)。所定時間τ1は、起動用燃焼器21による燃焼ガスの供給を停止するまでの時間であり、操作者入力等により予め設定する。
一方、ステップS56の処理にて「Ti<Tu」であると判断された場合には(ステップS56でYES)、ステップS58において、制御部31は、入口温度Tiの変化率(時間微分値)「dTi/dt」を算出し、この変化率「dTi/dt」が、ステップS52の処理で設定した変化率の上限値「−Z」(負の値)よりも大きいか否かを判断する。そして、小さいと判断された場合には(ステップS58でNO)、ステップS59に処理を進め、大きいと判断された場合には(ステップS58でYES)、ステップS60に処理を進める。即ち、時間経過に伴って入口温度Tiが増加傾向、或いは緩やかな減少傾向である場合には、ステップS58の処理でYES判定となってステップS60に進み、急激な減少傾向である場合(入口温度の減少速度が大きい場合)には、NO判定となってステップS59に進む。
例えば、カソード11aに導入する空気を、燃焼ガスから、燃焼ガスと空気の混合に切り替えた直後は、入口温度Tiは急激に低下するので(入口温度Tiの減少速度が大きくなるので)、ステップS58でNO判定となり、ステップS59の処理で出力電流Iを増加させることによりスタック11の発熱量を増大させ、入口温度Tiの急激な低下を防止する。その後、ステップS64に処理を進める。
ステップS60において、制御部31は、入口温度Tiと出口温度Toとの温度差ΔTの時間変化率「dΔT/dt」を算出し、ステップS52の処理で設定した温度差変化率の上限値Yと比較する。即ち、「dΔT/dt<Y」であるか否かを判定する。そして、「dΔT/dt<Y」でないと判定された場合には(ステップS60でNO)、ステップS61に処理を進め、「dΔT/dt<Y」であると判定された場合には(ステップS60でYES)、ステップS62に処理を進める。
ステップS61において、制御部31は、出力電流Iを減少させることによりスタック11の発熱量を減少させ、スタック11内の温度差を低減させる。即ち、「dΔT/dt<Y」でないということは、スタック11の入口温度Tiと出口温度Toの差が大きくなりつつあるということなので、スタック11内の温度ばらつきを抑制するために、出力電流を減少させる。その後、ステップS64に処理を進める。
ステップS62において、制御部31は、空気流量Fが、ステップS51の処理で設定した運転モード開始判断流量Fdに達しているか否かを判断し、電流Iが、ステップS51の処理で設定した運転モード開始判断電流Idに達しているか否かを判断し、更に、入口温度Tiが、ステップS51の処理で設定した運転モード開始判断温度Tdに達しているか否かを判断する。そして、これらの判断結果のうちの少なくとも一つが成立しない場合には(ステップS62でNO)、ステップS63において、制御部31は、出力電流Iを増加させる。その後、ステップS64に処理を進める。
一方、ステップS62に示した条件が全て成立した場合、即ち、F≧Fd、I≧Id、Tav≧Tdが成立した場合には(ステップS62でYES)、本処理を終了する。
ステップS64において、制御部31は、スタック11の出力電流Iを検出し、酸素利用率ηcを求める。ここで、酸素利用率ηcとは、カソードに供給される空気中に含まれる酸素のうち、発電に用いられる酸素量の割合であり、全体の酸素量は、空気ブロワ12より送出される空気流量から求めることができ、発電に用いられる酸素量は出力電流Iから求めることができるので、これらに基づいて酸素利用率ηcを算出できる。
ステップS65において、制御部31は、ステップS64の処理で求めた酸素利用率ηcが、ステップS51の処理で設定した利用率上限値ηcuよりも大きいか否かを判断し、「ηc>ηcu」でなければ(ステップS65でNO)、ステップS56に処理を戻し、「ηc>ηcu」であれば(ステップS65でYES)、ステップS66に処理を進める。
即ち、酸素利用率ηcが利用率上限値ηcuに達していないということは(ステップS65でNOと判断される場合)、この時点での空気流量F(初期的にはF0)でより多くの出力電流Iを得ることができる(最大出力電流に達していない)ということであるので、ステップS56に処理を戻す。
一方、酸素利用率ηcが利用率上限値ηcuに達しているということは(ステップS65でYESと判断される場合)、この時点での空気流量Fで得られる出力電流Iが最大出力電流に達しているということであり、これ以上出力電流Iを増加させることができないので、ステップS66において、制御部31は、カソード11aに供給する空気流量Fを、ステップS53の処理で設定した1ステップ分の空気流量増加量Fsだけ増加させ、ステップS56に処理を戻す。その結果、カソード11aに供給される空気流量Fは「F+Fs」となって、再度ステップS56からの処理が繰り返される。
つまり、空気流量Fを設定し、上記のステップS56〜S63の処理を繰り返すことにより、スタック11の出力電流Iがこの空気流量Fにおける最大出力電流となるように制御し、出力電流Iが最大出力電流に達した場合には、空気流量FをFsだけ増加させる。即ち、F=F+Fsとする。そして、新たな空気流量Fに対して、上記と同様の処理を実行することにより、出力電流Iが新たな空気流量Fについての最大出力電流となるように制御される。
そして、この制御を繰り返すことにより、やがてはスタック11の出力電流Iが運転モード開始判断電流Idに到達し、空気流量Fが運転モード開始判断流量Fdに到達し、温度Tavが運転モード開始判断温度Tdに到達するので、運転モード開始条件を満たすことができる。即ち、ステップS62でYESと判定される。その後、本処理を終了し、運転モードへと移行する。
図5のフローチャートに示した処理では、起動モードが開始され、最初に実行される加熱昇温ステップにより、平均温度Tavが自己発熱ステップ開始温度Thに達した際に、自己発熱ステップによる昇温に移行する。そして、起動用燃焼器21を停止させず、該起動用燃焼器21より送出される燃焼ガスと空気を混合し、この混合した空気をカソード11aに供給する。
この際、カソード11aに供給する空気流量Fを、運転モード開始時における流量よりも低いF0(=F0a+F0b)に設定して発電を開始し、この空気流量F0についての最大電流が得られるように、スタック11の出力電流Iを制御する。
具体的には、ステップS56の処理では、入口温度Tiが上限温度Tuを上回る場合には電流Iを減少させるように制御し、ステップS58の処理では、入口温度Tiが急激に低下した場合には電流Iを増加するように制御し、ステップS60の処理では、入口と出口の温度差の変化率が大きい場合には電流Iを減少するように制御し、更に、ステップS62の処理では、空気流量F、出力電流I、及び平均温度Tavが、運転開始時の空気流量Fd、出力電流Id、及び平均温度Tdに達するように、電流Iを制御する。そして、これらの条件が満たされた場合には、運転モードへの開始条件が満足するので、自己発熱ステップを終了し、起動モードから運転モードに切り替える。
このような処理を実行することにより、スタック11の入口温度Tiをほぼ一定の温度に保持した状態で、カソード11aに供給する空気流量F、及びスタック11の出力電流Iを安定的に上昇させることができる。従って、スタック11の起動時において、スタック11内の温度のばらつきを抑制でき、更に、短時間で所望の出力を得ることができることとなる。
次に、図6を参照して、加熱昇温ステップから自己発熱ステップへ移行した後の、各温度、空気流量、及び出力電流の変化について説明する。図6は、自己発熱ステップにおけるスタック11の入口温度Ti、出口温度To、入口温度Tiと出口温度Toの平均温度Tav、空気温度Tg、空気流量F(燃焼ガスを含む)、及び出力電流I、の変化を詳細に示す特性図である。図6に示す時刻th0は、加熱昇温ステップから自己発熱ステップに移行する時刻を示し、時刻tdは、起動モードから運転モードに移行する時刻を示す。即ち、前述の第1実施形態にて示した図3の時刻th0、及びtdにそれぞれ対応している。
時刻th0において、スタック11内の平均温度Tavが自己発熱ステップ開始温度Thに達すると、加熱昇温ステップから自己発熱ステップに移行し、空気流量FがF0(=F0a+F0b)となり、且つ出力電流IがI0となるように調整して発電を開始する。なお、この発電は負荷に電力を供給するものではなく、スタック11を昇温するための発電である。
また、第2実施形態では、図6に示す時刻th2にて起動用燃焼器21を停止させ、燃焼ガスの供給を停止し、熱交換器13で加熱された空気のみをカソード11aに供給する。この際、スタック11の上限温度Tuは、第1の上限温度Tu1から第2の上限温度Tu2(但し、Tu2>Tu1)に変更する。
図6に示す時刻th1において、入口温度Tiが第1上限温度Tu1を上回ったので、電流Iを1ステップ分の変化量Isだけ減少させる。時刻th2において、燃焼ガスの供給を停止すると共に、上限温度を第1上限温度Tu1から第2上限温度Tu2に変更する。
時刻th3において、温度差の変化率「dΔT/dt」が温度差変化率の上限値Yを上回ったので(図5のステップS60参照)、出力電流Iを1ステップ分の変化量Isだけ減少させる。
そして、時刻tdにおいて、空気流量Fが運転モード開始判断流量Fdに達し、出力電流Iが運転モード開始判断電流Idに達し、且つ、入口温度Tiが運転モード開始判断温度Tdに達したので、起動モードを終了し、運転モードへ移行する。
そして、図6に示す入口温度Ti、出口温度To、平均温度Tav、空気流量F、及び電流Iの特性曲線から理解されるように、自己発熱ステップが実行されている際には、カソード11aに供給する空気流量Fが段階的(増加量Fsずつ)に上昇し、これに伴って出力電流Iが上下に変動しながら全体的には段階的にIsずつ上昇している(一時的には下降している)。また、入口温度Ti、及び出口温度Toは大きく変化することなく、更に、これらの差分も大きくならずに推移している。従って、自己発熱ステップが実行されてから運転モードに達するまでの間において、スタック11全体の温度に大きなばらつきが生じることがなく、ほぼ均一な温度となっていることが判る。つまり、スタック11の起動時において、スタック11内の温度のばらつきが抑制されながら、運転モードに達するように制御されている。
このようにして、第2実施形態に係る燃料電池システム100では、スタック11の入口温度Tiと出口温度Toを測定している。そして、これらの温度差ΔTを求め、更に、この温度差ΔTの変化率を求め、この変化率が大きい場合(温度差変化率の上限値Yを上回る場合)には、スタック11の出力電流Iを減少させる。従って、スタック11内の温度のばらつきが大きくなった場合に、これを抑制することができる。その結果、スタック11全体の温度ばらつきを低減させることができる。また、高出力密度が期待できる平板積層型のスタック構成においても、空気流の上流から下流へのセル内部温度分布状態を把握しやすく、局所的な電流密度に伴う局所的な温度上昇を抑制しつつ、スタック11を迅速に起動させることができる。
また、起動モード中の加熱昇温ステップでは、カソード11aの上流側から燃焼ガスが供給されるため、カソード11aは上流側の方が下流側よりも高い温度となる。一方、運転モードでは、カソード11aの上流側から温度の低い空気が供給されるため、カソード11aの下流側の方が上流側よりも高い温度となる。そこで、入口温度Tiと出口温度Toの温度差ΔTをモニタすることにより、セル内の温度分布をより正確に把握し、異常な局所発熱を抑制して、より短時間で電流を増加させることが可能となる。
更に、第2実施形態では、スタック11に生じる温度差を、カソード11aの入口温度Tiと出口温度Toの温度差としているので、スタック11全体の温度ばらつきに基づいた電流制御が可能となる。
以上、本発明の燃料電池システムを図示の実施形態に基づいて説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、各部の構成は、同様の機能を有する任意の構成のものに置き換えることができる。
例えば、上述した実施形態では、第1温度検出手段としてカソード11aの入口に設けた入口温度センサ41aを用い、第2温度検出手段としてカソード11aの出口に設けた出口温度センサ41bを用いる例について説明したが、第1,第2温度検出手段の設置位置はこれに限定されず、第1温度検出手段の下流側に第2温度検出手段が設けられていればよい。
更に、上述した実施形態では、入口温度センサ41a、及び出口温度センサ41bを設ける例について説明したが、図5のステップS60の処理を採用しなければ、入口温度センサ41aのみを設ければ良く、出口温度センサ41bは不要となる。