JP4434130B2 - 燃料電池装置 - Google Patents
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Description
他方、燃料電池の運転停止時に水供給装置の水へ凍結防止剤を混入させてこれを不凍化し、起動後には当該凍結防止剤を回収する装置が提案されている(特許文献1参照)。この方法を用いれば、氷点下の環境においても水の凍結を防止することができる。
また、水に凍結防止剤を混入する方法においても、凍結防止剤を適切に混入しまたこれを回収するために新たな装置が必要となり、装置が大型化する。また、水に対する凍結防止剤の濃度管理も必要となるので、システムとしても複雑なものとなる。
更には、いわゆる直噴タイプの燃料電池装置においては水供給装置内の水が解凍するまでの間、当該不凍液を燃料電池の空気極へ直接噴霧することにより、燃料電池の冷却を行うことができる。これにより、寒冷地での燃料電池装置の始動特性が向上する。
燃料電池の空気供給系へ水を供給する水供給装置が備えられる燃料電池装置において、
疎水性の不凍液を前記空気供給系へ供給する不凍液供給装置が更に備えられ、
前記空気供給系へ前記水と前記不凍液とが選択的に供給される、ことを特徴とする燃料電池装置。
かかる直噴型の燃料電池装置では大量の水が燃料電池の空気極へ送り込まれるので、疎水性の不凍液によりこの多量の水を迅速かつ確実に置換することができる。
前記不凍液供給装置は前記不凍液の貯蔵部、前記空気供給系へ前記不凍液を導入する不凍液導入部、前記燃料電池の空気排出系から前記不凍液を回収する不凍液回収部を備え、
前記空気供給装置の水導入部と前記不凍液供給装置の不凍液導入部とが共通化されている。
このように構成された燃料電池装置によれば、空気供給装置と不凍液供給装置との共通化が図られているため、部品点数ひいては装置の小型化が達成される。特に水導入部と不凍液導入部とを共通化することにより、燃料電池装置の運転停止時に当該水導入部の水を不凍液に置換できる。よって、当該水導入部内での水の凍結が防止されるので、水導入部に付設されるヒータが不要となるか若しくはヒータに要求される発熱量が小さくなる。
このように水と不凍液の貯蔵部を共通化することにより、燃料電池にとっての補機の部品点数が削減され、もって装置の小型化が達成される。更には、同じ貯蔵部に水と不凍液とを共存させることにより両者の熱交換が可能となる。例えば、燃料電池を通過して加温された不凍液を水貯蔵部(内部の水は凍結している)へ回収することにより、貯蔵部内の氷を不凍液の熱で直接解凍することができる。よって、燃料電池の生成したエネルギーで効率よく水供給装置の氷を解凍可能となる。
既述の第4の局面の燃料電池装置において、不凍液の比重が前記水の比重と異なり、共通した貯蔵部において水と不凍液とが上下方向に分離される。
このように構成された燃料電池装置によれば、その貯蔵部から、同じく共通した導入部を介して空気供給系へ水又は不凍液を送り込む際に、その選択が容易になる。よって、装置構成を簡素化し安価な装置の提供が可能となる。
既述の第1〜第5の燃料電池装置において、燃料電池装置の運転停止時に、不凍液供給系を動作させて水導入部及び燃料電池内の水を不凍液で置換する。
このように構成された燃料電池装置によれば、燃料電池内の水を確実に除去できるとともに、不凍液が燃料電池内に留まるので、燃料電池装置が厳寒下におかれても凍結による不測のストレスを受けることがない。よって、燃料電池装置の寿命が伸びる。
第2の局面のいわゆる直噴タイプの燃料電池装置において、水供給装置内の水が凍結しているときには、不凍液を空気極へ噴霧して前記燃料電池を冷却する。
これにより、水供給装置内の水が解凍するまでの間、当該不凍液を燃料電池の空気極へ直接噴霧することにより、燃料電池の冷却を行うことができる。これにより、燃料電池装置の始動特性が向上する。即ち、氷点下の環境においても初期段階から高い出力で燃料電池装置を運転させることができる。
既述の第7の局面の燃料電池装置において、燃料電池へ噴霧された不凍液を回収して該不凍液と前記凍結した水との熱交換を行う。
これにより、燃料電池により加温された不凍液で凍結した水を解凍することができる。ここに、不凍液と凍結水とで直接熱交換を行うことにより、燃料電池で生成されたエネルギーで効率的に凍結水を解凍することができる。
上記第1〜第8の局面のいずれかの燃料電池装置において、不凍液を燃料電池装置の水素ガス供給系へ供給する第2の不等液供給系が更に備えられ、水素ガス供給系へ水素ガスと前記不凍液とが選択的に供給される。
これにより、不凍液を水素ガス供給系へ供給することが可能となる。
上記弟9の局面の燃料電池装置において、運転停止時に水素ガス供給系を空気で置換し、その後、弟2の不凍液供給系を動作させて水素ガス供給系の空気を不凍液で置換し、その後、不凍液を回収する。
これにより、運転停止時に水素ガス供給系に残留している水を不凍液で置換することができる。従って、水素ガス供給系に残留した水の凍結を防止することができるため、配管を閉塞させたり、バルブやポンプを固着させることもない。
燃料電池の水素極へ水素ガスを供給する水素ガス供給系が更に備えられる燃料電池装置において、疎水性の不凍液を水素ガス供給系へ供給する不凍液供給装置が備えられ、水素ガス供給系へ水素ガスと不凍液とが選択的に供給される。
これにより、不凍液供給装置から不凍液を水素ガス供給系へ供給することができる。そのため、水素ガス供給系に残留している水を不凍液で置換することができる。従って、水素ガス供給系に残留した水の凍結を防止することができるため、配管を閉塞させたり、バルブやポンプを固着させることもない。
(燃料電池装置)
燃料電池装置は燃料電池を中心として、燃料電池の空気極へ空気を供給する空気供給系、その水素極へ水素を供給する水素ガス供給系を備えている。その外、燃料電池の温度を調整するための冷却装置、生成した電力を蓄積する二次電池やキャパシタ等の補機が任意に備えられる。
この発明の水供給装置は燃料電池装置の空気供給系へ水を供給する。供給の態様は特に限定されない。いわゆる水直噴タイプのように燃料電池の空気極へ水を直接噴霧することにより、燃料電池の湿潤状態維持と燃料電池の加熱防止を企図するものの他、水を加熱して水蒸気の状態で空気供給系へ導入するタイプや、超音波震動により水を霧化して空気供給系へ導入するタイプもある。
水供給装置の基本的構成要素として、水貯蔵部、空気供給系へ水を導入する水導入部、水を回収する水回収部を備える。回収した水を再利用するため、水供給装置は閉じられた系とすることが好ましい。なお、回収される水には燃料電池の生成水が含まれることとなることはいうまでもない。
この発明の燃料電池装置は寒冷地仕様であるため、水供給装置の必要な部分にヒータが付設され、凍結した水を解凍する。
この発明の不凍液供給装置は不凍液貯蔵部、空気供給系へ不凍液を導入する不凍液導入部、不凍液を回収する不凍液回収部を基本的構成要素として備える。回収した不凍液を再利用するため、不凍液供給装置は閉じられた系とすることが好ましい。
不凍液は疎水性のものとする。これにより燃料電池内の水を確実に置換できる。また、かかる不凍液は水と異なる比重を持つものとすることが好ましい。比重が異なることにより、不凍液と水との分離が容易になる。
かかる不凍液として、フッ素系不活性液体(住友3M社、商品名;フロリナート)を挙げることができる。
燃料電池へ供給して加温された不凍液で凍結した水を効率よく解凍するためには、水貯蔵部と不凍液貯蔵部とを共通化することが好ましい。
図1は実施例の燃料電池装置1の概略構成を示す。図1に示すように、この燃料電池装置1は燃料電池本体部としての燃料電池スタック10、水供給系20及び不凍液供給系200、水素ガス供給系40、空気供給系70、並びに出力系80から概略構成される。
燃料電池スタック10の上方には空気マニホールド11が形成されている。空気マニホールド11にはノズル29が取り付けられており、このノズル29から水が噴出される。ノズル29から直接噴射された水は燃料電池単位セルの空気流路の全面へ供給され、電解質膜の加湿と燃料電池本体部の冷却に利用される。
ヒータ13は燃料電池スタック10の両端に付設されている。ヒータ13の制御系は図2を参照されたい。
タンク22には水温度センサ24、タンク水位センサ25及びヒータ23が設けられている。
符号203は供給切替弁であり、タンク22内の水21と不凍液201とを選択的に配管部30へ導入可能とする。符号37はフィルタであり、このフィルタの目的は外部からの異物(塵埃、虫など)の混入を防止する。
ノズル29は空気流路入口へ向けて直接水を噴射することが好ましい。これにより空気供給量の如何に拘わらず、所望の量の水を空気流路に供給することができる。即ち、空気の供給量と水の供給量とを独立して制御可能となる。空気供給量の変更と水供給量の変更とは常に同時に要求されるわけではなく、独立してそれらの変更が必要となる場合がある。
上記においてタンク22が水貯蔵部を構成し、配管部30及びそれに付設される供給切替弁203、フィルタ26、直噴水ポンプ27、直噴水供給電磁弁28及びノズル29が水導入部を構成し、凝縮器36及び凝縮水回収ポンプ38が水回収部を構成する。
この実施例では、不凍液201としてフッ素系不活性液体(住友3M社、商品名;フロリナート)を採用した。このフッ素系不活性液体は疎水性(水に不溶)であり、その比重が1.63〜1.93g/cm3であって水より大きい。従って、タンク22内に当該不凍液201と水21とを共存させると、図に示すように、水21と不凍液201とは完全に分離する。従って、水21と不凍液201との取出し口をタンク22において高さを変えて設けることにより、供給切替弁203にて水21と不凍液201とを選択的に取出すことができる。
なお、水21と不凍液201との粘性が異なる場合は、ポンプ27の出力、直噴水供給電磁弁28の開閉度を適宜調整することはいうまでもない。また、ノズル29の開口度も調整することが好ましい。
水素貯蔵タンク41の水素ガスは水素ガス配管43を介して燃料電池スタック10へ供給される。水素ガス配管43に水素1次圧センサ46、水素調圧弁47、水素供給電磁弁48、水素2次圧センサ49が付設されて燃料電池スタック10への供給量が制御される。水素貯蔵タンク41へは水素充填口45を介して外部から水素が補充される。
外気導入電磁弁63は燃料電池スタック10の停止後に開かれて、水素ガス供給系から水素ガスを外気によりパージする。なお、符号61は外気からの異物侵入を防止するフィルタである。
低温環境で使用される燃料電池装置においては、導入する空気を加熱して燃料電池スタック10を構成する各燃料電池単位セルの空気流路へ導入することが好ましい。これにより、燃料電池スタック10が加熱されて生成水の凍結が防止され、低温状態にあった燃料電池スタック10において発電が可能となる。
燃料電池スタック10で生成された電力は車輌の電源系へ出力されて、駆動モータ81及びその他車輌の機能部品へ供給されるとともに、燃料電池装置1自体にも供給される。制御構成図を図2に示す。
図2において、燃料電池スタック10からの電力は電力配分装置91を介して燃料電池装置駆動系制御部93、燃料電池装置加熱系制御部95及び車輌電源系制御部97へ供給される。これら各制御部93、95及び97は中央制御部90により統一的に制御される。なお、外部加熱モードにおいて中央制御部90は電力配分装置91を補助電源92側に切り替える。この補助電源92として汎用的なキャパシタや二次電池を用いることができる。中央制御部90には汎用的なコンピュータ装置を用いることができる。中央制御部90にはセンサ制御部100を介して各センサの出力が入力される。中央制御部90は当該センサ出力に基づき、予めインストールされた制御プログラムに従って燃料電池装置駆動系制御部93、燃料電池装置加熱系制御部95及び車輌電源系制御部97を制御する。
燃料電池装置加熱系制御部95は燃料電池スタック10のヒータ13、水供給系20のタンクヒータ23及び配管部ヒータ33、並びに空気ヒータ75を制御する。
車輌用電源系制御部97は駆動モータ81等へ電力を供給するとともに、補助電源92をチャージする。
なお、参考のため、図2の右端に記載した各種モードにおいて駆動する要素は図面上においてそのモードと同じ水平位置に記載してある。
図3は燃料電池装置1の燃料電池スタック10の温度と運転モードとの関係を示す。図4は燃料電池装置1の基本動作を示すフローチャートである。
ステップ2では外気温度とタンク22内の温度(以下、水温ということがある)がそれぞれ氷点(この実施例では0℃と設定)と比較される。外気温度と水温がともに氷点を超えている場合は、後述する定常運転モード(ステップ10)が実行され、燃料電池装置は通常の方法で起動され、かつ運転される。
先ず、補助電源92の電力容量(SOC)が下限値(閾値)を下回らないことを確認する(ステップ51)。当該補助電源92のSOCが下限値を下回っているときはシステムを停止させる。補助電源92のSOCが下限値以上のときは電力配分装置91により補助電源92を選択する。そして、当該補助電源92の電力を燃料電池装置加熱系制御部95へ送ってスタックヒータ13及び空気ヒータ75をONにする(ステップ54)。
それとともに補助電源92の電力を燃料電池装置駆動系制御部93へ印加して空気供給系70をONとする。このとき空気ファン73による空気の流量(空気供給量)はステップ55で測定する外気温度に基づいて制御される。制御の一態様を図6に示した。図6に示す関係は制御装置90のメモリ内に保存されている。制御装置90は外気温度センサ76及びセンサ制御部100を介して得られた外気温度を図6の関係に照らし合わせて空気流量を決定し、当該空気流量が達成されるように燃料電池装置駆動系制御部93を介して空気ファン73を制御する(ステップ56)。このとき、燃料電池スタック10をより速く加熱するためにスタックヒータ13をオンとすることができる。
この実施例では外部加熱モードと自己発熱モードとの閾値温度を−25℃としたが、燃料電池の設計においては−25℃以上の温度でも生成水が瞬間的に凍結する場合がある。その場合は、当該閾値温度を高くするよう変更することとなる。
この外部加熱モードにおいては水供給系20、不凍液供給系200、燃料供給系40は停止の状態であり、燃料電池スタック10の発電はない。
まず、空気ヒータ75をオフにして(ステップ71)、電力配分装置91により燃料電池スタック10からも出力を行う(ステップ72)。そして水素ガス供給系40をONにして燃料電池スタックを起動させる。このときの空気供給量(即ち空気ファン75)は燃料電池スタックの空気出口温度(Tfc)と燃料電池スタック10の出力(Ifc)に基づいて制御される。即ち、これらの関係(図8)が制御装置90のメモリに保存されており、空気出口センサ39の検出結果と出力センサ113との検出結果に基づき、制御装置90は空気ファン73の空気流量を決定する(ステップ74)。これにより、燃料電池スタック10の温度が低い場合には空気流量を小さくして発電効率を低下し、燃料電池スタック10の自己発熱量を定常運転時よりも大きくしてその暖機を促進する。そして、燃料電池スタック10の温度が上がってきたら相対的に空気流量を増大させて生成水の排出を促進してフラッテングを防止する。
燃料電池スタック10で発電された電力と補助電源92からの電力とが電力配分装置91において合わされて、燃料電池装置駆動系制御部93へ送られて各種装置を駆動させるとともに、燃料電池装置加熱系制御部95へ送られてスタックヒータ13、タンクヒータ23及び配管部ヒータ33を発熱させる。スタックヒータ13を加熱することにより燃料電池スタック10の昇温が加速される。また、空気ヒータ75をオンにすることもできる。
この自己発熱モードにおいて、燃料電池スタック10による発電のみでは各種装置を作動することが困難な場合が多い、従って、既述のように燃料電池スタック10の電力と補助電源92の電力とを電力配分装置91において適切な配分で併用して(いわゆるハイブリッド的に)出力する。
もちろん、燃料電池スタック10による発電で充分な場合は補助電源の電力を併用する必要はない。
また、この自己発熱モードにおいて、必要に応じて、車輌の電源系へ電力を供給することができる。
図9Bに配管部ヒータ33の制御用フローチャートを示す。配管部ヒータ33は外気温度が氷点(この実施例では0℃)以下のときに常にON状態になる。即ち、ステップ785で外気温度を測定し、その温度が0℃以下のときは配管部ヒータ33をオンとし(ステップ787)、外気温度が0℃を超えているときには配管部ヒータ33をオフとする(ステップ788)。これにより、水供給系20が動作可能となる。
上記図9A及び図9Bのフローチャートはモードの如何に拘わらず実行することができる。
そして燃料電池スタック10の温度が5℃を超えた時点で温度制御モードへ移行する(ステップ82、83)。
このモードでは燃料電池スタック10の電力が車輌電源系へも出力可能とされる(ステップ92)。このときの空気供給量(即ち空気ファン73)は燃料電池スタックの空気出口温度(Tfc)と燃料電池スタック10の出力(Ifc)に基づいて制御される。即ち、これらの関係(図11)が制御装置90のメモリに保存されており、空気出口センサ39の検出結果と出力センサ113との検出結果に基づき、制御装置90は空気ファン73の空気流量を決定する(ステップ93)。当該温度制御モードにおける空気流量は自己発熱モードにおける空気流量よりも大きい。これは、低下させた発電効率を元に戻すためと、燃料電池スタック10の温度が高くなっているためであり、また十分な空気流量を確保して燃料電池スタック10を冷却してオーバーヒートを回避する必要もある。
ステップ97では空気出口温度センサ39により燃料電池スタック10の温度を測定する。この温度が所定の下限値(この例では5℃)を超えている場合、燃料電池スタック10の過熱を防止するため、不凍液供給系200を動作させて不凍液201を燃料電池スタック10へ吹き出す。他方、この不凍液201は燃料電池スタック10で熱交換して昇温され、さらに不凍液回収部で回収されタンク22へ戻される。タンク22へ戻された不凍液201は凍結した水21と熱交換する。これにより、凍結した水21の解凍が促進される。
同様に、図14には、不凍液の比重が水の比重より小さい場合の例を示す。
ステップ102において、タンク22の水温が解氷完了温度(この例では、5℃)を超えたとき、定常運転モードへ移行する。
この温度調整モードにおいても、燃料電池スタック10による発電のみでは各種装置を作動することが困難な場合がある。その場合には、燃料電池スタック10の電力と補助電源92の電力を電力配分装置91において適切な配分で併用して(いわゆるハイブリッド的に)出力することができる。もちろん、燃料電池スタック10による発電で充分な場合は補助電源の電力を併用する必要はない。
図3において、温度制御モードにある程度の時間を要しているのは、水供給系の解凍を完全に行う必要があるからである。
図10のステップ99において不凍液201を供給していた場合、この定常運転モードにおいて水21を供給すると、当該水により不凍液201が押し流されてタンク22へ戻される。疎水性でかつ比重の大きい不凍液201はタンク22において底部に沈殿し、水21と完全に分離している。
従来では、燃料電池スタック10及び水供給系20の水を除去するため、それぞれを空気で掃気していた。そのために約10分程度を要しており、この実施例によれば、燃料電池装置の停止がスムーズに行えるようになる。
上記において、外部加熱モードと自己発電モードとの閾値温度は燃料電池スタックを動作させたときの生成水が凍結するか否かにより任意に定めることができる。また、自己発電モードと温度制御モードとの閾値温度は車輌を駆動するのに十分な電力を発電できるか否かにより任意に定めることができる。温度制御モードと通常運転モードとの閾値温度は燃料電池スタックの冷却及び/又は加湿に対して直噴水が有効に作用するか否かに基づいて任意に定めることができる。
更には、不凍液で水を置換することにより、始動特性及び停止特性が向上する。
この実施例では、水21を貯蔵するタンク302と不凍液201を貯蔵するタンク402とを別体にした。これにより、水21及び不凍液201の管理が容易になる。更には、従来品に不凍液タンク402及び切替弁303,203を取付けることにより実施例の構成を得ることができるので、製造が容易になる。
また、図16にその模式図を示すとおり、不凍液の回収ラインを水タンク302内において蛇行させて、不凍液と水との熱交換を行い、解氷を促進することが好ましい。なお、図16において、図15と同一の要素には同一の符号を付してその説明を省略する。
図15の装置において、不凍液タンク402から空気マニホールド11まで独自に供給ラインを設けることもできる。
なお、図1と同一の要素には同一の符号を付してその説明を省略する。
この実施例の水供給系500は空気供給系の空気を加湿する。符号501は加湿器であって、超音波式や加熱式など汎用的なものが用いられる。
いわゆる直噴タイプ以外の燃料電池装置においても、燃料電池スタック及び水供給系内の水を不凍液で置換することにより、寒冷地での始動特性及び停止特性が向上する。
なお、冷却水についても、これを疎水性の不凍液で置換することができる。
直噴タイプ以外の水供給系及び不凍液供給系においても、図14、15、16に示したそれらの構成を採用可能である。
図18は他の実施例の燃料電池装置の一部である水素ガス供給系40、循環系50、不凍液供給系700、排出系800、燃料電池スタック10、タンク22の構成図である。図1と同一の要素には同一の符号を付してその説明を省略する。
この実施例の水素ガス供給系40では、切換バルブ55がトラップ54と循環ポンプ51との間に設けられている。切換バルブ55はトラップ54から循環ポンプ51への流路、又はタンク22から循環ポンプ51への流路の切換が可能である。この切換バルブ55とタンク22とを配管で接続することで不凍液供給系700を形成し、タンク22に収容された不凍液201を水素ガス供給系40へ供給することが可能となる。
図19は運転停止時に水を除去する動作を示すフローチャートである。
図20は運転停止後に水素ガス供給系40、循環系50内に残留している水素ガスを排出する過程を示す図である。
燃料電池装置に対して停止命令が入力されたとき(ステップ111)、水素供給電磁弁48が閉じられ(ステップ112)、燃料電池スタック10への水素ガスの供給が停止される。また、循環電磁弁53も閉じられる(ステップ113)。
次に、減圧電磁弁65を開放することにより水素ガス供給系40及び循環系50に閉じ込められた水素ガスを、水素ガス供給系40、トラップ54、循環ポンプ51、減圧電磁弁65、凝縮器36、フィルタ37を通じて外部へ排出する(ステップ114)。これを水素ガスの圧力が図示しない圧力センサにより所定圧力、例えば、0.01MPa以下となるか、所定時間、例えば、40秒経過まで行われる。この場合、所定圧力は相当の負圧であるので、流路内には実質的に水素ガスが残留していない(ステップ115)。
図21は水素ガス排出後に空気を導入する過程を示す図である。
水素ガス供給系40及び循環系50内の圧力が所定圧力まで下がるか、所定時間経過したとき(ステップ115:Y)、外気導入電磁弁63を開放し(ステップ116)、水素ガス供給系40内を空気に置換する。これを空気の置換が完了するまで行う(ステップ117)。
図22は空気導入後に不凍液201を導入する過程を示す図である。
水の凍結の可能性があると判断されたとき(ステップ118:N)、水素ガス供給系40、循環系50に不凍液201を導入するために、外気導入電磁弁63、減圧電磁弁65を閉じ(ステップ119、120)、循環電磁弁53を開放する(ステップ121)。
次に、切換バルブ55をタンク22側へ切り換えることにより(ステップ122)、これにより、水素ガス供給系40及び循環系50内に不凍液201を導入することが可能となる。また、導入した不凍液201を再びタンク22に戻すために排気電磁弁67を開放する(ステップ123)。水素ガス供給系40、循環系50内が不凍液201に置換されるまで行う(ステップ124)。
図23は不凍液導入後に空気を導入する過程を示す図である。
水素ガス供給系40、循環系50内が不凍液201で置換されると(ステップ124:Y)、排気電磁弁67は閉じられ(ステップ125)、切換バルブ55はトラップ側に切り換えられる(ステップ126)。
次に、始動時に水素タンク22から水素ガスの供給を速やかに行うため、水素ガス供給系40、循環系50に空気を導入し、不凍液201を除去する必要がある。そこで、循環電磁弁53を閉じ(ステップ127)、減圧電磁弁65を開く(ステップ128)。続いて、外気導入電磁弁63を開放し(ステップ129)、水素ガス供給系40、循環系50に空気を導入し、不凍液201を除去する。水素ガス供給系40、循環系50内が空気で置換されるまで行う(ステップ130)。
なお、本実施例では、タンク22に収容された不凍液201を不凍液供給系700を通じて取り入れたが、別途、不凍液供給装置を設け、そこから水素ガス供給系40、循環系50に不凍液を導入してもよい。
10 燃料電池スタック
13 スタックヒータ
20、300、500 水供給系
23 水タンクヒータ
40 水素供給系
70 空気供給系
200、400、600 700 不凍液供給系
Claims (10)
- 燃料電池スタックの空気供給系へ水を供給する水供給装置と、疎水性の不凍液を前記空気供給系へ供給する不凍液供給装置とが備えられ、前記空気供給系へ前記水と前記不凍液とが選択的に供給される燃料電池装置において、
前記水供給装置と前記不凍液供給装置とはノズルを共有し、該ノズルを前記燃料電池スタックの空気流路入口へ向けて直接前記水又は前記不凍液を噴射する、
ことを特徴とする燃料電池装置。 - 前記燃料電池スタックの上方に空気マニホールドが形成され、該空気マニホールドに前記ノズルが取り付けられる、ことを特徴とする請求項1に記載の燃料電池装置。
- 前記水供給装置は水を貯蔵する水貯蔵部、前記水貯蔵部から前記ノズルへ前記水を導入する水導入部及び前記燃料電池の空気排出系から前記水を回収する水回収部を備え、
前記不凍液供給装置は前記不凍液の貯蔵部、前記不凍液の貯蔵部から前記ノズルへ前記不凍液を導入する不凍液導入部、前記燃料電池の空気排出系から前記不凍液を回収する不凍液回収部を備え、
前記空気供給装置の水導入部と前記不凍液供給装置の不凍液導入部とが共通化されている、ことを特徴とする請求項1又は2に記載の燃料電池装置。 - 前記水供給装置と前記不凍液供給装置において、更にその水貯蔵部と不凍液の貯蔵部とが共通化されている、ことを特徴とする請求項3に記載の燃料電池装置。
- 前記不凍液の比重が前記水の比重と異なり、前記共通した貯蔵部において前記水と前記不凍液とが上下方向に分離される、ことを特徴とする請求項4に記載の燃料電池装置。
- 前記燃料電池装置の運転停止時に、前記不凍液供給装置を動作させて前記燃料電池内の水を前記不凍液で置換する、ことを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の燃料電池装置。
- 前記水供給装置内の水が凍結しているときには、前記不凍液を前記空気極へ噴霧して前記燃料電池を冷却する、ことを特徴とする請求項2に記載の燃料電池装置。
- 前記燃料電池へ噴霧された前記不凍液を回収して該不凍液と前記凍結した水との熱交換を行う、ことを特徴とする請求項7に記載の燃料電池装置。
- 前記不凍液を前記燃料電池装置の水素ガス供給系へ供給する第2の不凍液供給系が更に備えられ、
前記水素ガス供給系へ水素ガスと前記不凍液とが選択的に供給される、ことを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載の燃料電池装置。 - 前記燃料電池装置の運転停止時に、前記水素ガス供給系を空気で置換し、その後、前記第2の不凍液供給系を動作させて前記水素ガス供給系の空気を前記不凍液で置換し、その後、前記不凍液を回収する、ことを特徴とする請求項9に記載の燃料電池装置。
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