JP4687014B2 - 燃料電池システム - Google Patents

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Description

本発明は、燃料電池システムに関し、より詳しくは、暖機運転の際に燃料電池の出力電圧が急激に低下することを防止するための技術に係わる。
従来より、燃料電池の暖機が必要であると判断された場合、燃料電池に供給する水素や空気等のガスの流量や圧力を下げることにより、燃料電池の発電効率を悪化させ、燃料電池の発熱を促進する燃料電池システムが知られている(例えば、特許文献1を参照)。
特開2003−317765号公報
しかしながら、一般に、燃料電池に供給するガスの流量や圧力を下げた場合、燃料電池の電流電圧特性は高電流密度領域において電圧が急激に低下する特性を呈するようになるために、従来までの燃料電池システムによれば、暖機運転の際に燃料電池の出力電圧が急激に低下し、車両の運転を継続することが困難になることがある。
本発明は、上述の課題を解決するためになされたものであり、その目的は、暖機運転の際に燃料電池の出力電圧が急激に低下することを防止可能な燃料電池システムを提供することにある。
上述の課題を解決するために、本発明に係る燃料電池システムは、暖機運転の際、燃料電池に供給されているガスの流量又は圧力に基づいて、燃料電池の最大電流値と最大電流値より小さい応答変更電流値を設定し、燃料電池の実電流値、若しくは目標電流値が応答変更電流値以上であるか否かを判別し、燃料電池の実電流値、若しくは目標電流値が応答変更電流値以上である場合、燃料電池の出力電流の応答速度を低下させる。
本発明に係る燃料電池システムによれば、燃料電池の出力電流は、応答変更電流値を超えて以後、最大電流値に徐々に近づくようになるので、暖機運転の際に過渡的に生じやすい急激な電圧低下を防止できる。
以下、図面を参照して、本発明の実施形態となる燃料電池システムの構成と動作について説明する。
[燃料電池システムの構成]
本発明の第1の実施形態となる燃料電池システムは、図1に示すように、燃料ガスを貯留する燃料ガスタンク1と、燃料ガスタンク1から供給される燃料ガスの圧力を制御する圧力制御弁2と、圧力制御弁2によって圧力が制御された燃料ガスを燃料電池7に供給する流路3と、燃料電池7から排出された燃料ガスが循環する流路と流路3の合流部分に設けられたエゼクタ4と、コンプレッサ5から供給される空気を燃料電池7に供給する流路6と、燃料ガスと空気を利用して発電する燃料電池7と、燃料電池7が排出した空気を排出する排気管8と、排気管8から排出される空気の圧力を制御する圧力制御弁9とを備える。
一方、上記燃料電池システムの制御系は、流路6内を流れる空気の流量を検出する空気流量計10と、燃料電池7の出力電流を検出する電流計11と、燃料電池7の出力電圧を検出する電圧計12と、燃料電池7の出力電流を制御する出力制御器13と、燃料電池7の温度を検出する温度センサ14と、圧力制御弁2及びコンプレッサ5を制御することにより、燃料電池7に供給する燃料ガス及び空気の圧力や流量を制御するコントローラ15とを備える。
このような構成を有する燃料電池システムでは、燃料電池7の暖機が必要と判断されるのに応じて、コントローラ15が、燃料電池7に供給する燃料ガス及び空気の圧力や流量を下げることにより、燃料電池7の発電効率を悪化させ、燃料電池7の発熱を促進する(暖機運転)。また、この暖機運転の際、コントローラ15は、以下に示す応答制御処理を実行することにより、燃料電池7の出力電圧が急激に低下することを防止する。以下、図2に示すフローチャートを参照して、応答制御処理を実行する際のコントローラ15の動作について説明する。
〔応答制御処理〕
図2に示すフローチャートは、燃料電池システムが起動されるのに応じて開始となり、応答制御処理はステップS1の処理に進む。なお、この応答制御処理は所定の制御周期毎に繰り返し実行されるものとする。
ステップS1の処理では、コントローラ15が、現在の運転モードが暖機運転モードであるか否かを判別する。そして、判別の結果、運転モードが暖機運転モードでない場合、コントローラ15は応答制御処理をステップS7の処理に進める。一方、運転モードが暖機モードである場合には、コントローラ15は応答制御処理をステップS2の処理に進める。
ステップS2の処理では、コントローラ15が、圧力制御弁2の開度と空気流量計10及び温度センサ14の検出結果を利用して、また図示しない圧力検出手段の検出結果を利用して、燃料電池7に供給されている燃料ガスの圧力,燃料電池7の温度,及び燃料電池7に供給されている空気の流量(SR)を読み込む。これにより、このステップS2の処理は完了し、この応答制御処理はステップS2の処理からステップS3の処理に進む。
ステップS3の処理では、コントローラ15が、ステップS2の処理により読み込まれた燃料ガスの圧力,燃料電池7の温度,及び空気の流量における燃料電池7の最大電流値(図3参照)を演算する。これにより、このステップS3の処理は完了し、この応答制御処理はステップS3の処理からステップS4の処理に進む。
ステップS4の処理では、コントローラ15が、ステップS3の処理において算出された最大電流値より小さい応答変更電流値を演算する(図3参照)。ここで、この応答変更電流値は、燃料電池7の出力電圧が所定の傾き以上で低下する以前の電流値であり、最大電流値に所定の1以下の係数を乗算することにより算出される。なお、応答変更電流値は、図4に示すような最大電流値毎の係数(<1)を示すテーブルを予め用意し、このテーブルを参照して、現在の最大電流値に対応する係数を最大電流値に乗算することにより算出してもよい。これにより、このステップS4の処理は完了し、この応答制御処理はステップS4の処理からステップS5の処理に進む。
ステップS5の処理では、コントローラ15が、電流計11の検出結果を参照して、燃料電池7の実電流(出力電流)を読み込む。これにより、このステップS5の処理は完了し、この応答速度制御処理はステップS5の処理からステップS6の処理に進む。
ステップS6の処理では、コントローラ15が、燃料電池7の実電流がステップS4の処理により演算された応答変更電流値以上であるか否かを判別する。そして、判別の結果、燃料電池7の実電流が応答変更電流値以上である場合(図3に示す領域B)、コントローラ15は応答制御処理をステップS8の処理に進める。一方、燃料電池7の実電流が応答変更電流値以下である場合には(図3に示す領域A)、コントローラ15は応答制御処理をステップS7の処理に進める。
ステップS7の処理では、コントローラ15が、出力制御器13を制御することにより、燃料電池7の実電流が応答変更電流値以下の電流領域Aにおいては燃料電池7の電流応答が速くなるように、燃料電池7の出力電流の応答時定数を例えば1秒等の速い応答速度に設定する。これにより、このステップS7の処理は完了し、一連の応答制御処理は終了する。
ステップS8の処理では、コントローラ15が、出力制御器13を制御することにより、燃料電池7の実電流が応答変更電流値以上の電流領域Bにおいては燃料電池7の電流応答が遅くなるように、燃料電池7の出力電流の応答時定数のステップS7の処理により設定される応答時定数よりも遅い例えば2秒等の応答速度に設定する。これにより、このステップS8の処理は完了し、一連の応答制御処理は終了する。
以上の説明から明らかなように、本発明の実施形態となる燃料電池システムによれば、暖機運転の際、コントローラ15が、燃料電池7に供給されている燃料ガス及び空気の流量や圧力に基づいて、燃料電池7が出力可能な最大電流値とこの最大電流値より小さい応答変更電流値を設定する。そして、コントローラ15は、燃料電池7の実電流値が応答変更電流値以上になる電流領域Bにおいては、燃料電池7の出力電流の応答速度を低下させる。このような構成によれば、燃料ガス及び空気の流量や圧力に対応する最大電流値に実電流値が近づくのに応じて、実電流の時間当たりの変化量が小さくなり、実電流は徐々に最大電流値に近づくようになるので、過渡的に生じやすい急激な電圧の低下を防止することができる。
本発明の第2の実施形態となる燃料電池システムは、上記第1の実施形態となる燃料電池システムと同じ構成を有し、燃料電池7の出力電流の応答速度を低下させた際、コントローラ15が、以下に示す電圧制御処理を実行することにより、燃料電池7の出力電圧の低下を防止すると共に、その時の温度状態における最大出力電流が得られるように燃料電池7を制御する(電圧制御処理)。以下、図5に示すフローチャートを参照して、この電圧制御処理を実行する際のコントローラ15の動作について説明する。
〔電圧制御処理〕
図5に示すフローチャートは、燃料電池システムが起動されるのに応じて開始となり、電圧制御処理はステップS11の処理に進む。なお、この電圧制御処理は所定の制御周期毎に繰り返し実行されるものとする。
ステップS11の処理では、コントローラ15が、現在の運転モードが暖機運転モードであり、且つ、燃料電池7の出力電流の応答速度が低く設定されている状態にあるか否かを判別する。そして、判別の結果、運転モードが暖機運転モードであり、且つ、燃料電池7の出力電流の応答速度が低く設定されている状態にない場合、コントローラ15は電圧制御処理をステップS19の処理に進める。一方、運転モードが暖機運転モードであり、且つ、燃料電池7の出力電流の応答速度が低く設定されている状態にある場合には、コントローラ15は電圧制御処理をステップS12の処理に進める。
ステップS12の処理では、コントローラ15が、電圧計12の検出結果を参照して、現在の燃料電池7の出力電圧(現在値)、及び前回の処理において検出された出力電圧(前回値)を読み込む。これにより、このステップS12の処理は完了し、この電圧制御処理はステップS12の処理からステップS13の処理に進む。
ステップS13の処理では、コントローラ15が、前回値と現在値の差分値を演算し、演算された差分値が電圧低下判定値(>0)以上であるか否かを判別する。そして、判別の結果、差分値が電圧低下判定値以上である場合、コントローラ15は、燃料電池7の出力電圧が急激に低下していると判断し、この電圧制御処理をステップS14の処理に進める。一方、差分値が電圧低下判定値以上でない場合には、コントローラ15は、燃料電池7の出力電圧は急激に低下していないと判断し、この電圧制御処理をステップS15の処理に進める。
ステップS14の処理では、コントローラ15が、出力制御器13を制御することにより、燃料電池7の出力電流が現在の値以上にならないように電流上限値を燃料電池7の現在の出力電流値に設定し、燃料電池7の出力電圧の更なる低下を防止する。これにより、このステップS14の処理は完了し、この電圧制御処理はステップS14の処理からステップS18の処理に進む。
ステップS15の処理では、コントローラ15が、圧力制御弁2の開度と空気流量計10及び温度センサ14の検出結果を利用して、また図示しない圧力検出手段の検出結果を利用して、燃料電池7に供給されている燃料ガスの圧力,燃料電池7の温度,及び燃料電池7に供給されている空気の流量(SR)を読み込む。これにより、このステップS15の処理は完了し、この電圧制御処理はステップS15の処理からステップS16の処理に進む。
ステップS16の処理では、コントローラ15が、ステップS15の処理により読み込まれた燃料ガスの圧力,燃料電池7の温度,及び空気の流量における燃料電池7の電圧基準値を演算する。これにより、このステップS16の処理は完了し、この電圧制御処理はステップS16の処理からステップS17の処理に進む。
ステップS17の処理では、コントローラ15が、ステップS12の処理において読み込まれた現在値がステップS16の処理により演算された電圧基準値以下であるか否かを判別する。そして、判別の結果、現在値が電圧基準値以下である場合、コントローラ15は電圧制御処理をステップS18の処理に進める。一方、現在値が電圧基準値以上である場合には、コントローラ15は電圧制御処理をステップS19の処理に進める。
ステップS18の処理では、コントローラ15が、燃料電池7の出力電流を制限するための電流制限フラグをセットする。これにより、このステップS18の処理は完了し、この電圧制御処理はステップS18の処理からステップS21の処理に進む。
ステップS19の処理では、コントローラ15が、燃料電池7の出力電流を制限するための電流制限フラグをクリアする。これにより、このステップS19の処理は終了し、この電圧制限処理はステップS19の処理からステップS20の処理に進む。
ステップS20の処理では、コントローラ15が、燃料電池7の電流上限値をデフォルト値(定格値)に設定する。これにより、このステップS20の処理は完了し、この電圧制御処理はステップS20の処理からステップS21の処理に進む。
ステップS21の処理では、コントローラ15が、電流制限フラグがセットされているか否かを判別する。そして、判別の結果、電流制限フラグがセットされていない場合、コントローラ15は、一連の電圧制御処理を終了する。一方、電流制限フラグがセットされている場合には、コントローラ15は電圧制御処理をステップS22の処理に進める。
ステップS22の処理では、コントローラ15が、温度センサ14の検出結果を利用して燃料電池7の温度を読み込む。これにより、このステップS22の処理は完了し、この電圧制御処理はステップS22の処理からステップS23の処理に進む。
ステップS23の処理では、コントローラ15が、ステップS22の処理により読み込まれた燃料電池7の現在の温度に対応する燃料電池7の最大出力電流値を演算する。これにより、このステップS23の処理は完了し、この電圧制御処理はステップS23の処理からステップS24の処理に進む。
ステップS24の処理では、コントローラ15が、電流計11及び電圧計12の検出結果を参照して、燃料電池7の現在の出力電流値を演算する。これにより、このステップS24の処理は完了し、この電圧制御処理はステップS24の処理からステップS25の処理に進む。
ステップS25の処理では、コントローラ15が、ステップS22の処理により演算された最大出力電流値がステップS24の処理により演算された燃料電池7の現在の出力電流値以上であるか否かを判別する。そして、判別の結果、最大出力電流値が現在の出力電流値以上である場合、コントローラ15は、更なる電流出力が可能であると判断し、電圧制御処理をステップS26の処理に進める。一方、最大出力電流値が現在の出力電流値以上である場合には、コントローラ15は一連の電圧制御処理を終了する。
ステップS26の処理では、コントローラ15が、圧力制御弁2及びコンプレッサ5を制御することにより、燃料電池7に供給する燃料ガス及び空気の流量(SR)や圧力を上昇させ、燃料電池7の出力電流を増加させる。これにより、このステップS26の処理は完了し、一連の圧力制御処理は終了する。
以上の説明から明らかなように、本発明の第2の実施形態となる燃料電池システムによれば、コントローラ15が、燃料電池7の実電流が電圧低下判定値以上低下したか否かを判別し、電圧低下判定値以上低下した場合、燃料電池7の実電流の増加を停止するので、燃料電池7の出力電圧が更に低下することを防止できる。
また、本発明の第2の実施形態となる燃料電池システムによれば、コントローラ15が、燃料電池7の現在の温度に対応する燃料電池7の最大出力電流値を演算し、燃料電池7の実電流値が演算された最大出力電流値より低い場合、燃料電池7に供給する燃料ガス及び空気の流量や圧力を上昇させることにより、燃料電池7の出力電流値を増加させるので、現在の温度状態における燃料電池7の最大出力電流値を確保することができる。
以上、本発明者によってなされた発明を適用した実施の形態について説明したが、この実施の形態による本発明の開示の一部をなす論述及び図面により本発明は限定されることはない。例えば、上記実施形態では、コントローラ15は、燃料電池7の実電流値に従って各種制御を行ったが、燃料電池7の目標電流値に従って制御を行ってもよい。また、燃料電池7の出力電流の応答速度を下げた際には、二次電池等のエネルギーデバイスから出力電流の不足分を補い、燃料電池システム全体としては、応答速度が変化しないように制御することが望ましい。このように、上記実施の形態に基づいて当業者等によりなされる他の実施の形態、実施例及び運用技術等は全て本発明の範疇に含まれることは勿論であることを付け加えておく。
本発明の第1の実施形態となる燃料電池システムの構成を示すブロック図である。 本発明の実施形態となる応答制御処理の流れを示すフローチャート図である。 図2に示す応答制御処理を説明するための燃料電池の出力電流値の時間変化を示す図である。 応答変更電流値を演算する際に最大電流値に乗算する係数を示す図である。 本発明の実施形態となる電圧制御処理の流れを示すフローチャート図である。 本発明の実施形態となる電圧制御処理の流れを示すフローチャート図である。
符号の説明
1:燃料ガスタンク
2:圧力制御弁
3,6:流路
4:エゼクタ
5:コンプレッサ
6:制御コントローラ
7:燃料電池
8:排気管
9:圧力制御弁
10:流量計
11:電流計
12:電圧計
13:出力制御器
14:温度センサ
15:コントローラ

Claims (3)

  1. 燃料電池に供給するガスの流量又は圧力を制御することにより燃料電池の運転効率を低下し、燃料電池の暖機を行う燃料電池システムであって、
    暖機運転の際、燃料電池に供給されているガスの流量又は圧力に基づいて、燃料電池の最大電流値と当該最大電流値より小さい応答変更電流値を設定し、燃料電池の実電流値、若しくは目標電流値が応答変更電流値以上であるか否かを判別し、燃料電池の実電流値、若しくは目標電流値が応答変更電流値以上である場合、燃料電池の出力電流の応答速度を低下させる応答制御処理を実施するコントローラを備えること
    を特徴とする燃料電池システム。
  2. 請求項1に記載の燃料電池システムであって、
    前記コントローラは、前記応答制御処理を実施して燃料電池の出力電流の応答速度が低下している場合に、燃料電池の電圧変化量を検出し、検出された電圧変化量が電圧低下判定値以上であるか否かを判別し、電圧変化量が電圧低下判定値以上である場合、燃料電池の出力電流の増加を停止させること
    を特徴とする燃料電池システム。
  3. 請求項2に記載の燃料電池システムであって、
    前記コントローラは、燃料電池の電圧変化量が電圧低下判定値以上であると判定されて燃料電池の出力電流の増加を停止させると、燃料電池の温度を検出し、検出された温度に基づいて燃料電池の最大出力電流値を算出し、燃料電池の温度に基づいて算出された最大電流値が燃料電池の実電流、若しくは目標電流値以上であるか否かを判別し、燃料電池の温度に基づいて算出された最大電流値が燃料電池の実電流、若しくは目標電流値以上である場合、燃料電池に供給されているガスの流量及び圧力の少なくとも一方を増加させることにより、燃料電池の出力電流を増加させること
    を特徴とする燃料電池システム。
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