JP6036526B2 - 新規微細藻類及びその利用 - Google Patents

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Description

本明細書は、新規微細藻類及びその利用に関する。
近年、食糧と競合しない微細藻類を用いたバイオ燃料が注目されている。例えば、炭素数17〜20の飽和又は不飽和脂肪族炭化水素生産能を有する微細藻類(シュードコリシスティス エリプソイディア)が開示されている(特許文献1)。また、培養を窒素欠乏条件下で行う前記炭化水素の製造方法も開示されている(特許文献1)。
国際公開第2006/109588号明細書
特許文献1に開示される微細藻類は、光合成に要する窒素量が多く、また、夜間培養時での呼吸活性が高い。すなわち、光合成のために多くの窒素源を要し、増殖のために栄養源を消耗する傾向がある。このため、この微細藻類については、油脂や炭化水素等の生産性の一層の改善が望まれていた。
本明細書は、より効率的な光合成特性及び呼吸特性を有し、増殖性や代謝物の生産性に優れた微細藻類及びその利用を提供する。
本発明者らは、新規な微細藻類の探索及び収集を行った結果、ある微細藻類が、従来の微細藻類と比較して呼吸活性が低く、炭水化物等の生産性が良好な微細藻類であるという知見を得た。本明細書によれば以下の手段が提供される。
(1) コッコミクサ(Coccomyxa)属に属するSTT株(受領番号FERM AP−22250)である微細藻類。
(2) グリセリド生産能を有する、(1)に記載の微細藻類。
(3) 炭化水素生産能を有する、(1)又は(2)に記載の微細藻類。
(4) エチレングリコール重合体生産能を有する、(1)〜(3)のいずれかに記載の微細藻類。
(5)(1)〜(4)のいずれかに記載の微細藻類を培養する工程を備える、グリセリドの生産方法。
(6)(1)〜(4)のいずれかに記載の微細藻類を培養する工程を備える、炭化水素の生産方法。
(7)(1)〜(4)のいずれかに記載の微細藻類を培養する工程を備える、エチレングリコール重合体の生産方法。
(8)(1)〜(4)のいずれかに記載の微細藻類を、20℃以上40℃以下、pHが3以上7以下で培養する、微細藻類の培養方法。
STT株を2週間培養した時の藻体濃度を示す図である。 STT株を2週間培養した時の油脂蓄積量を示す図である。 STT株の窒素欠乏条件以降における油脂生産速度を示す図である。 STT株の乾燥重量あたりの光合成速度を示す図である。 STT株の乾燥重量あたりの呼吸速度を示す図である。 STT株の窒素十分条件及び窒素欠乏条件下での生成物を示す図(GC−MS)である。 STT株の温度による増殖特性を示す図である。
本明細書の開示は、コッコミクサ(Coccomyxa)属に属する新規微細藻類及びその利用に関する。
(微細藻類)
本明細書に開示される新規微細藻類は、本発明者らが湖から分離したコッコミクサ・スピーシーズ(Coccomyxa sp.)に属するSTT株が挙げられる。
本微細藻類株は、日本国内の各地から温泉水、河川及び湖水に生息する藻類を採取し、その一部を下記表1に示す組成を有するAF−6培地(pH3)を添加し、蛍光灯の光照射下、約25℃で静置培養したサンプルをナイルレッドで染色して蛍光顕微鏡下で観察することによって選出した。STT株の藻類学的性質は以下のとおりである。
A.形態的性質
(1)栄養型細胞は、楕円形又はやや曲がった腎臓形で両端は丸い。短径1〜2μm、長径3〜4μmである。鞭毛を持たず運動性を示さない。アルカリ性では細胞は凝集する。
(2)栄養型細胞は外囲を細胞壁に囲まれ、内部に核、葉緑体が一個存在し、その他、ミトコンドリア、ゴルジ体、液胞、油滴等が認められる。葉緑体内にピレノイドは認められない。
B.生殖様式
(1)内生胞子は栄養細胞内に四個形成され、細胞内に均等に分布する。内生胞子はその細胞内に核、葉緑体を一個有する。
(2)二分裂による増殖も行う。
C.生理学・生化学性状
(1)培養液:淡水を素にした培養液中で生育できる。
(2)光合成能:光合成による光独立栄養生育ができる。
(3)含有色素:クロロフィルa、クロロフィルb、及び他のカロチノイド類。
(4)同化貯蔵物質:澱粉。
(5)生育温度域:15℃〜35℃(至適温度25℃)。
(6)生育pH域:pH3.0〜11.0(至適pHは7.0)。
(7)細胞内に存在する油滴はNile redによる蛍光染色でオレンジ色の蛍光を示す。はNile red染色しSTT株の典型的な中性脂質の蛍光パターンを示す。
以上のとおり、STT株は楕円形又はやや曲がった腎臓形の形状を有し、主要光合成色素として、クロロフィルa、クロロフィルbを含有している。また、遊走細胞のステージを持たず、二分裂又は四分胞子の形成によって生殖を行う。さらに、ピレノイドを欠く葉緑体を有する。
以上の点から、STT株は形態学的には既知のトレボウクシア藻綱の緑藻であるコッコミクサ属によく一致し、コッコミクサ属に属すると推察された。また、18Sr DNA遺伝子を指標とした分子系統解析を行った。結果を表2に示す。表2に示すように、STT株の18Sr DNAは、既知のコッコミクサ属と高い類縁関係を示し、なかでも、コッコミクサ・スピーシーズと高い類縁関係を示し、分子系統解析上も、コッコミクサ・スピーシーズに属すると推察された。STT株の18Sr DNA遺伝子の塩基配列を配列表の配列番号1に示す。
さらに、STT株は、グリセリド生産能、炭化水素生産能、及びエチレングリコール重合体生産能を有し、既知の微細藻類株(特許文献1記載のMBIC11204株及びMBIC11220株)に比較して低い呼吸活性(呼吸速度200μmolO2/g/h以下、好ましくは150μmolO2/g/h以下、さらに好ましくは140μmolO2/g/h以下、25℃)であった。グリセリド生産能は、好適には窒素欠乏条件での培養で発揮され、炭化水素生産能は、好適には窒素十分条件での培養で発揮され、エチレングリコール重合体生産能は、好適には窒素欠乏条件での培養で発揮される。なお、窒素欠乏条件及び窒素十分条件については後段で詳述する。
以上のことから、本発明者らは、STT株をCoccomyxa属に属する新種の微細藻類株と判断し、Coccomyxa sp.に属する STT株と命名した。
STT株は、2013年4月30日付で独立行政法人製品評価技術基盤機構特許生物寄託センター(NITE)(〒292−0818 千葉県木更津市かずさ鎌足2−5−8 120号室)に受領番号FERM AP−22250として寄託されている。
(微細藻類を用いるグリセリドの生産方法)
本明細書に開示される、グリセリドの生産方法は、STT株を培養する工程を備える、グリセリドの生産方法が提供される。本明細書において「グリセリド」とは、グリセリンの脂肪酸とのエステルを意味しており、脂肪酸のエステル結合数は特に限定しないし、脂肪酸の種類も特に限定しない。なお、STT株の藻体内に見出される油滴を分析したところ、グリセリドの脂肪酸は、炭素数が16以上18以下の飽和又は不飽和脂肪族酸であった。なお、本グリセリドの生産方法で生産されるグリセリドには、炭素数10〜25の飽和若しくは不飽和脂肪酸をエステルとして有するグリセリドが含まれうる。
STT株を培養することで、STT株は、グリセリドを生産し藻体内に蓄積することができる。培養条件は特に限定しないが、窒素欠乏条件であると、酸素発生速度(光合成速度)も低下する傾向があるが、STT株は、厳しい窒素欠乏条件、すなわち、藻体の乾燥重量(DW)あたりの窒素含量(N)、すなわち、N/DWが0.075以下の条件であっても、特許文献1記載のMBIC11204株及びMBIC11220株よりも、光合成速度が高く油脂を蓄積することができる。すなわち、より少ない窒素源でグリセリドを生産することができる。さらに好ましくは、0.05以下であり、一層好ましくは、0.03以下であり、より一層好ましくは0.02以下である。また、N/DWは0.015以上である。なお、こうした窒素欠乏条件は、通常の窒素含有量の培地でSTT株の培養を開始し、STT株が増殖してくることで、結果として窒素欠乏条件が成立する培養状態となることでも取得できる。あるいは、当初は、通常の窒素含有量の培地でSTT株を培養した後、窒素欠乏条件となる培地で培地交換することで取得してもよい。窒素欠乏条件が成立する培地としては、例えば、既述のAF−6培地から窒素成分を全て除去した培地が挙げられる。
STT株を培養するための培地としては、微細藻類の培養に通常使用されているものでよく、例えば、各種栄養塩、微量金属塩、ビタミン等を含む公知の淡水産微細藻類用の培地、海産微細藻類用の培地のいずれも使用可能である。栄養塩としては、例えば、NaNO、KNO、NHCl、尿素などの窒素源;KHPO、KHPO、グリセロリン酸ナトリウムなどのリン源が挙げられる。また、微量金属としては、鉄、マグネシウム、マンガン、カルシウム、亜鉛等が挙げられ、ビタミンとしてはビタミンB、ビタミンB12等が挙げられる。培養方法は、通気条件で二酸化炭素の供給とともに攪拌を行えばよい。その際、蛍光灯で12時間の光照射、12時間の暗条件などの明暗サイクルをつけた光照射、又は、連続光照射して培養する。また培養条件も微細藻類の増殖に悪影響を与えない範囲内であれば特に制限はされない。
培養液のpHについては、3以上11以下(好ましくは3.0以上11.0以下)とすることができる。例えば、培養温度が10℃以上20℃未満程度の場合には、pHは6以上8以下(好ましくは6.0以上8.0以下)であることが好ましく、同20℃以上30℃未満程度の場合には、pHは3以上7以下(好ましくはpH3.0以上7.0以下)であることが好ましく、同30℃以上40℃以下程度の場合には、pHは4以上6以下(好ましくは4.0以上6.0以下)が好ましい。STT株は、35℃程度の高い培養温度でも、炭酸ガスをバブリング等して培養液に導入する場合、培地の酸性化にもかかわらず高い増殖性を示すことができる。以上のことから、STT株を20℃以上40℃以下で培養する際、炭酸ガスの導入を伴ってあるいは伴わないでもpHが3以上7以下(好ましくは3.0以上7.0以下)で培養することが好ましい。本明細書の開示によれば、以上の培養条件でのSTT株の培養方法も提供される。なお、STT株は、pHが3以上4以下(3.0以上4.0以下)という低いpHでも生育できることが有利である。すなわち、開放系培養であっても、他の微生物による汚染を防ぐことができるからである。
また、10℃以上50℃以下程度とすることができる。好ましくは20℃以上40℃以下である。
以上のような条件で培養すると、培養開始から6〜8日程度で、グリセリドが藻体内に生産され蓄積される。
培地としては、より具体的には、培養液には、独立行政法人国立環境研究所 微生物系統保存施設の培地リストのサイト(http://mcc.nies.go.jp/02medium.html)において開示されるAF−6培地(表3参照)(Kato, S. 1982 Laboratory culture and morphology of Colacium vesiculosum Ehrb. ( Euglenophyceae ). Jpn. J. Phycol., 30, 63-67 ( in Japanese with English summary ).をpH3〜11程度(好ましくは3〜7程度)に調整したものを用いることができる。この培養液に、STT株を殖菌し、25℃、蛍光灯の光照射下(連続照明下又は明暗周期下)で静置又は振盪又は空気通気を行うことによって培養できる。また、空気中へ二酸化炭素を1〜5%程度付加すると、増殖が促進され、好ましい。また、既知の淡水産微細藻類用の培地も用いることが可能である。さらに、既知の淡水産微細藻類用の培地をベースに作成した寒天平板培地も利用可能である。
藻体内に蓄積されたグリセリドは、培養藻体を回収することにより得ることができる。培養藻体からのグリセリドの抽出方法は特に限定されないで、公知の手法を採用できる。例えば、回収した培養藻体をフレンチプレスやホモジナイザーなどの一般的な方法により細胞を破砕してからn−ヘキサンなどの有機溶媒によって抽出してもよいし、細胞をガラス繊維等のフィルター上に回収し、乾燥させてから、有機溶媒などによって抽出してもよい。さらに、細胞を遠心分離で回収し、凍結乾燥して粉末化し、その粉末から有機溶媒で抽出してもよい。することも可能である。さらに、抽出後の溶媒を、減圧又は常圧下で、また加温又は常温で揮散させることにより目的のグリセリドを得ることができる。なお、グリセリドからは、一般的な加水分解等によりエステルを解裂させて飽和又は不飽和脂肪酸を得ることができる。
以上のことから、本明細書に開示されるグリセリドの生産方法は、STT株が生産するグリセリドに由来する飽和又は不飽和脂肪酸の生産方法としても実施できる。
(微細藻類を用いる炭化水素の生産方法)
本明細書に開示される炭化水素の生産方法は、STT株を培養する工程を備えることができる。こうすることで、飽和若しくは不飽和脂肪酸又は脂肪族炭化水素を生産させ、取得することができる。例えば、炭素数が17の飽和若しくは不飽和の脂肪族炭化水素を生産させることができる。また、こうした脂肪族炭化水素を他の脂肪族炭化水素等よりも優位に生産させ、取得することもできる。例えば、C17脂肪族炭化水素であるn−ヘプタデカン若しくはn−ヘプタデセンを効率的に生産できる。なお、脂肪族炭化水素は、遊離の炭化水素として藻類内に生産される。
後述するように、窒素含有量によっては、STT株はエチレングリコール重合体を生産する傾向がある。こうした炭化水素の生産を意図する場合には、窒素十分条件を培養条件として採用することが好ましい。ここで、窒素十分条件とは、培地中、N/DWが0.075超であることが好ましい。より好ましくは、N/DWが0.1以上である。より具体的には、例えば、既述のAF−6培地中の窒素濃度が挙げられる。適切な窒素濃度を得るには、藻類の培地等に用いられる公知の窒素成分を特に限定しないで、1又は2以上適宜組み合わせて用いることができる。また、好ましいN/DWは、培地中の藻体量と窒素量とを適宜調節しながら、藻体から得られる炭化水素を定量することで、取得することができる。
なお、本生産方法において、STT株の培養条件は、窒素濃度以外については、既に説明したグリセリドの生産方法における各種態様を適用できる。また、炭化水素等の回収方法も既に説明した各種態様を適用できる。
(微細藻類を用いるエチレングリコール重合体の生産方法)
本明細書に開示されるエチレングリコール重合体の生産方法は、STT株を培養する工程を備えることができる。STT株は、グリセリド、炭化水素のほか、エチレングリコール重合体も生産できる。エチレングリコール重合体を優位に生産するには、窒素欠乏条件でSTT株を培養することが好ましい。窒素欠乏条件でSTT株を培養すると、STT株は、C17脂肪族炭化水素であるn−ヘプタデカンやn−ヘプタデセンよりも優位にエチレングリコール重合体を生産する。エチレングリコール重合体は、医薬品や工業製品の原料となりうること等により、好ましい代謝産物である。なお、窒素欠乏条件では、グリセリドも生産されうる。
ここで、窒素欠乏条件とは、N/DWが0.075以下であることが好ましい。さらに好ましくは、0.05以下であり、一層好ましくは、0.03以下であり、より一層好ましくは0.02以下である。また、N/DWは、0.015以上である。培地としては、例えば、既述のAF−6培地から窒素成分を全て除去した培地を用いることができる。なお、こうした窒素欠乏条件は、通常の窒素含有量の培地でSTT株の培養を開始し、STT株が増殖してくることで、結果として窒素欠乏条件が成立する培養状態となることでも取得できる。あるいは、当初は、通常の窒素含有量の培地でSTT株を培養した後、窒素欠乏条件となる培地で培地交換することで取得してもよい。窒素欠乏条件が成立する培地としては、例えば、既述のAF−6培地から窒素成分を全て除去した培地が挙げられる。
エチレングリコール重合体は、水溶性であり、同時に生産されるグリセリドとは異なる極性及び分配特性を有しているため、ヘキサンと水との二相分離系を用いることでこれらを容易に分離することができる点においても好ましい。
なお、本生産方法において、STT株の培養条件は、窒素濃度以外については、既に説明したグリセリドの生産方法における各種態様を適用できる。エチレングリコール重合体の回収方法は、培養藻体を回収以降、ヘキサンなどの非極性溶媒と水などの極性溶媒との二相分離系を用い、極性溶媒相を回収するようにすることで、エチレングリコール重合体を抽出できる。
以上のことから、本明細書によれば、STT株の培養工程におけるN/DWを調節することで、グリセリド、炭化水素及びエチレングリコール重合体からなる群から選択される少なくとも1種又は2種を優位に生産する、STT株の培養方法も提供される。
以下、実施例によって本発明を更に具体的に説明するが、これらの実施例は本発明を限定するものでない。
(レースウェイ・ポンドを用いた油脂生産)
室内に設置したレースウェイ・ポンド(面積3.785m2)に、490Lの培養液(硫安8.3ppm、リン1ppm、カリウム1ppm、マグネシウム0.3ppm)を入れ、水温は25℃前後、有効放射光量子密度は平均して300μmol/m2/sに設定した。光については、12h/12hの明暗サイクルに設定し、屋外での昼夜を再現するようにした。微細藻類の攪拌にはパドルを使い、100%CO2を150ml/minで通気することで、培養水中のCO2濃度が1%前後になるように調整した。
STT株、シュードコリシスチス エリプソイディア MBIC11204株(本株は2005年2月15日付けで独立行政法人産業技術研究所特許生物寄託センター(IPOD)に受託番号FERM P−20401として寄託され、2006年1月18日付けでブタペスト条約の規定下で受託番号FERM BP−10484として国際寄託されている。以下、Obi株)、及びシュードコリシスチス エリプソイディア MBIC11220株(本株は2006年1月18日付けで独立行政法人産業技術研究所特許生物寄託センター(IPOD)にブタペスト条約の規定下で受託番号FERM BP−10485として国際寄託されている。以下、N1株)をそれぞれ10Lスケールで前培養し、窒素欠乏になっていない2〜3g/L濃度の前培養液をそれぞれレースウェイ・ポンドに投入して培養を行った。
所定の時間で一定容量の微細藻類をサンプリングし、乾燥重量を測定することで藻体濃度を測定した。油脂蓄積量については、藻体サンプルを乾燥させた後、以下に示すパルスNMR分析条件で油脂蓄積量を測定した。油脂生産速度については、藻体が窒素欠乏状態になり、油脂が合成され始めてからの油脂蓄積速度を算出した。
(パルスNMR分析条件)
装置 :MQC23−27(オックスフォード社)
観測核 :1H
磁石 :熱的安定永久磁石0.55 T
検波方式 :デュアルチャンネル位相検知検出器
データ取得レート:10MHzまで、12ビット
RFパルス幅:2.17μs(90度パルス幅)
パルス間隔:10μs
スキャン回数:64
共鳴周波数:23.4MHz
2週間培養した時の藻体濃度を図1に、油脂蓄積量を図2に示す。図1及び図2に示すように、2週間後のSTT株の藻体濃度はObi株(従来株)よりも約10%高く、STT株の油脂蓄積量はObi株(従来株)よりも約40%高いことがわかった。
窒素欠乏状態になってからの油脂生産速度の結果を図3に示す。図3に示すように、STT株の油脂生産速度は、Obi株(従来株)よりも18%高いことがわかる。
(光合成速度及び呼吸速度の測定)
光合成活性についてはクラーク型の酸素電極装置を用いて測定した。実施例1で培養中の微細藻類をサンプリングし、O.D.720nmが1.0になるように培養液を調整し、調整した培養液4mをキュベットに入れた。光源の有効放射光量子密度を300μmol/m2/sに設定し、炭素源として500mM炭酸水素ナトリウムを10μL添加してスターラー攪拌下で発生した酸素濃度を白金電極上での酸素の酸化反応を電流値として測定した。キュベット内の酸素濃度の増加速度を求めることで光合成速度を計算した。
呼吸速度についてもクラーク型酸素電極装置で測定した。溶存酸素量が飽和した後に、藻体の入ったキュベットを暗幕で覆い、スターラー攪拌下で発生した酸素濃度を白金電極上での酸素の酸化反応を電流値として測定した。キュベット内の酸素濃度の減少速度を求めることで呼吸速度を計算した。なお、培養経過途中でサンプリングした際には藻体濃度を測定し、培地に添加した窒素肥料の窒素濃度に対する乾燥藻体重量をN/DWとして示した。
乾燥重量当たりの光合成速度を図4に、呼吸速度を図5に示す。図4に示すように、窒素が欠乏するのはN/DWが0.075以下になる時であり、N/DWが低下すると、酸素発生速度(光合成速度)も低下する傾向が観察された。
また、図4に示すように、STT株と従来株(Obi株、N1株)のN/DWに対する酸素発生速度(光合成速度)を比較すると、STT株は、従来株(Obi株、N1株)よりも少ない窒素量で光合成できることがわかった。また、図5に示すように、STT株は、従来株(Obi株、N1株)よりも夜間での呼吸速度が低く、25℃では、140μmolO2/g/h以下であることがわかった。
以上の結果より、従来株(Obi株、N1株)に比べてSTT株は、より少ない窒素源(窒素肥料)でも光合成活性があり、より低い呼吸活性でも油脂を生産することができるため、エネルギー利用効率に優れた微細藻類であることがわかる。
(18S rDNAの塩基配列決定)
STT株を30mlのAF−6培地(pH3)で2週間培養(25℃)し、遠心分離(2300rpm,15min)して細胞ペレットを得た。ペレットを−80℃のフリーザーに入れて15分間静置後、室温に15分間静置する操作(凍結融解)を3回繰り返した。凍結融解後、ニッポン・ジーン社製DNA抽出キット「ISOPLANT」を用いてDNAを抽出した。
前記DNAを用いて、18S rDNA遺伝子の増幅を行った。18SrDNA遺伝子を増幅するためのプライマーは、以下の表4に示したプライマーを用い、94℃で2分間加熱後、94℃で30秒間、58℃で1分間、72℃で2分間を1サイクルとして、これを30回繰り返し、72℃で7分間加熱後、4℃で保冷することにより、PCR反応を行った。反応後、アガロース電気泳動で確認したところ、1750bp付近に18SrDNA遺伝子断片が確認された。
得られたPCR産物をGEヘルスケア・ジャパン社製Exo−SAPITを用いて精製し、ダイレクトシークエンス用のサンプルを調製し、Applied BioSystems社製BigDye(R) Terminator v3.1 CycleSequencing Kitを用いてダイレクトシーケンス反応を行った。
ダイレクトシーケンス反応終了後、余分なBigDyeなどを除去するため、セファデックスを用いて精製し、滅菌水を50μl加えた後、AppliedBioSystem社製3730xl DNAAnalyzerを用いて塩基配列を解析した。得られた配列より、表5に示すプライマーを設計し、同様の手法でダイレクトシーケンスを全長配列取得まで繰り返し行った。18SrDNA の塩基配列を配列番号1に示す。配列番号1を用いてNCIBI/BLAST/blastnでホモロジー検索を行った結果、コッコミクサ属(Coccomyxa属)と相同性が高いことがわかった。検索結果を表6に示す。
(藻体中の炭化水素とエチレングリコール重合体の分析)
STT株を、pH3に調整したAF−6培地20mlで2週間培養(22〜28℃)した後、培養液を二等分し、遠心して2つの細胞ペレットを得た。1つの細胞ペレットには、前記と同様のAF−6培地(pH3)10ml(窒素濃度0.0162%)を加え、もう一つの細胞ペレットには、窒素源が含まれないAF−6培地(pH3)を加えて25℃で2週間培養した。培養後、細胞ペレット50mg(ウエット)をヘッドスペース分析用のバイアル瓶に入れ、ヘッドスペース−ガスクロマトグラフィー/質量分析(HGC/MS)装置[アジレント社]を用いて細胞内の成分分析を行った。HGC/MS分析条件を以下に示す。
サンプル加熱温度:150℃
カラム :DB−WAX (60m×250μm×0.18μm)
カラム温度 :50℃(1min)−50℃/min→250℃(15min)
注入口温度 :250℃
トランスファーライン温度:250℃
ガス :ヘリウム
カラム内流量 :1ml/min
スプリット比 :5:1
イオン化法 :電子イオン化法(EI)
質量範囲 :50〜650(2scan/sec.)
窒素充分条件で培養した藻体と窒素欠乏条件で培養した藻体のGC/MSクロマトグラムを図6に示す。図6に示すように、窒素充分条件で培養した藻体は窒素欠乏条件で培養した藻体よりもヘプタデセンの量が多いことがわかった。一方、窒素欠乏条件で培養した藻体には、エチレングリコール重合体が多いことがわかった。
本実施例より、STT株を窒素充分条件で培養することにより、C17炭化水素を採取することができ、窒素欠乏条件で培養することにより、エチレングリコール重合体を採取することができることがわかった。なお、窒素欠乏条件で培養すると、エチレングリコール重合体の他に多量の油脂も蓄積された。
(pHと温度の培養特性)
STT株をAF−6培地(pH3)で2週間培養した後、遠心して細胞のペレットを得た。得られたペレットにOD720が0.05となるように、各pH(pH3〜11)のAF−6培地を加えて細胞懸濁液を調製し、96穴プレートの1ウエルに細胞懸濁液200μlを入れ、10日間培養を行った。培養の温度は15〜35℃、光量は30μmol/m2/sで行った。培養後、吸光度測定器(日本モレキュラーデバイス製SPECTRA max PLUS)を用いてA720の吸光度を測定し、比増殖速度(μ)で増殖特性を評価した。
15℃、25℃、及び35℃で培養した場合のpH増殖特性を図7に示す。25℃で培養した場合、pH3〜7の幅広いpHで増殖するのに対し、15℃の低温ではpH7、35℃の高温ではpH5で高い増殖性を示すことがわかった。CO2ガスでバブリングさせながら藻類を培養した場合、培地のpHは酸性側に傾くが、STT株は35℃の高温でもCO2ガスをバブリングさせながら培養が可能な微細藻類であることがわかった。
配列番号2〜9:プライマー

Claims (8)

  1. コッコミクサ・スピーシーズ(Coccomyxa sp.)に属するSTT株(受領番号FERM AP−22250)である微細藻類。
  2. グリセリド生産能を有する、請求項1に記載の微細藻類。
  3. 炭化水素生産能を有する、請求項1又は2に記載の微細藻類。
  4. エチレングリコール重合体生産能を有する、請求項1〜3のいずれかに記載の微細藻類。
  5. 請求項1〜4のいずれかに記載の微細藻類を培養する工程を備える、グリセリドの生産方法。
  6. 請求項1〜4のいずれかに記載の微細藻類を培養する工程を備える、炭化水素の生産方法。
  7. 請求項1〜4のいずれかに記載の微細藻類を培養する工程を備える、エチレングリコール重合体の生産方法。
  8. 請求項1〜4のいずれかに記載の微細藻類を、20℃以上40℃以下、pHが3以上7以下で培養する、微細藻類の培養方法。
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