JP2016096804A - エポキシ脂肪酸化合物を生産する微細藻類 - Google Patents

エポキシ脂肪酸化合物を生産する微細藻類 Download PDF

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Abstract

【課題】エポキシ脂肪酸化合物の生産能を有する微細藻類、及びエポキシ脂肪酸化合物の製造方法を提供する。【解決手段】受託番号FERM BP-22279で特定されるクロロサルシノプシス・バストロピエンシス(Chlorosarcinopsisbastropiensis)、及び前記クロロサルシノプシス・バストロピエンシスを培養し、生成されたエポキシ脂肪酸化合物を回収するエポキシ脂肪酸化合物の製造方法。【選択図】なし

Description

本発明は、エポキシ脂肪酸化合物を生産する微細藻類、及び当該微細藻類を用いたエポキシ脂肪酸化合物の製造方法に関する。
エポキシ脂肪酸化合物はインスリン抵抗性、糖尿病、肥満、高脂血症、動脈硬化及び冠動脈疾患の予防又は改善の効果などが知られており、医薬、健康食品としての利用が検討されている。また、エポキシ脂肪酸化合物は被膜、樹脂、接着剤、プラスチック、界面活性剤及び滑剤の原料としての用途も考えられている。
キク(Asteraceae)科ショウジョウハグマ(Vernonia)属に属するVernonia galanensisの種子にエポキシ脂肪酸化合物の一種であるエポキシオレイン酸が含まれていることが知られている(非特許文献1参照)。また、フタバガキ(Dipterocarpaceae)科サラノキ(Shorea)属に属するShorea roustaの種子にエポキシステアリン酸を構成脂肪酸とするトリグリセリドが含まれていることが知られている(特許文献1参照)。
一方で、近年、バイオ燃料生産に有用であるとして微細藻類が注目を集めている。微細藻類は、バイオディーゼル燃料として利用可能な脂質を光合成によって生産できる。しかも、微細藻類は食料と競合しないことから、次世代のバイオマス資源として注目されている。また、微細藻類は、他の植物に比べ、高い脂質生産・蓄積能力を有するとの報告もある(特許文献2参照)。
微細藻類の脂質合成メカニズムやそれを応用した生産技術については未解明な部分も多く、微細藻類によるエポキシ脂肪酸化合物の生産についての報告はこれまでにない。むしろ、エポキシステアリン酸が、淡水の微細藻類の1種であるセレナストラム・カプリコルニュータム(Selenastrum capricornutum)に対して急性毒性を示すことが知られている(非特許文献2参照)。
特開2010−235711号公報 国際公開第2007/025145号パンフレット
Perdue,R.E.Jr.et al.,Economic Botany,40(1),p.54-68(1986) Kamaya,Y.et al.,Environ Toxicol.,18(5),p.289-294(2003)
本発明は、エポキシ脂肪酸化合物の生産能を有する微細藻類の提供を課題とする。
また、本発明は、エポキシ脂肪酸化合物の製造方法の提供を課題とする。
本発明者らは、藻類の優れた脂質生産性に着目し、エポキシ脂肪酸化合物の生産能力を有する微細藻類について鋭意探索を行った。その結果、緑藻綱に属する微細藻類の特定の株が、エポキシ脂肪酸化合物を生産する能力を有することを見出した。さらに、当該微細藻類を培養し、生成されたエポキシ脂肪酸化合物を回収することで、エポキシ脂肪酸化合物を製造できることを見出した。本発明は、これらの知見に基づいて完成させるに至った。
すなわち本発明は、受託番号FERM BP-22279で特定される、クロロサルシノプシス・バストロピエンシス(Chlorosarcinopsis bastropiensis)に関する。
さらに本発明は、前記微細藻類を培養し、生成されたエポキシ脂肪酸化合物を回収する、エポキシ脂肪酸化合物の製造方法に関する。
本発明によれば、エポキシ脂肪酸化合物の生産能を有する微細藻類を提供できる。
さらに、本発明によれば、エポキシ脂肪酸化合物の製造方法を提供できる。
GC/MS(EI)分析より得られた、クロロサルシノプシス・バストロピエンシスKSM-WA152株(受託番号FERM BP-22279)が生産した脂質のフラグメントパターンを示す。 クロロサルシノプシス・バストロピエンシスKSM-WA152株の顕微鏡写真を示す。
本発明の微細藻類は、受託番号FERM BP-22279で特定されるクロロサルシノプシス・バストロピエンシスである。後述の実施例で示すように、本発明の微細藻類はエポキシ脂肪酸化合物を生産する能力を有する。したがって、本発明の微細藻類を培養し、生成されたエポキシ脂肪酸化合物を回収することで、エポキシ脂肪酸化合物を製造することができる。
本明細書において「エポキシ脂肪酸化合物」とは、エポキシ脂肪酸単体又はその塩、及び構成脂肪酸としてエポキシ脂肪酸を含有する化合物を含む概念である。
前記エポキシ脂肪酸単体とは3員環のエーテルであるオキサシクロプロパン(オキシラン)を構造式中に持つ脂肪酸である。その具体例としては、9,10-エポキシオクタデカン酸(9,10-epoxyoctadecane;C18H35O3)が挙げられる。
前記の、構成脂肪酸としてエポキシ脂肪酸を含有する化合物の具体例としては、例えばエポキシ脂肪酸と1価のアルコールとのエステル、エポキシ脂肪酸とグリセリンとのエステル(油脂)等が挙げられる。なお、前記「油脂」とは、エポキシ脂肪酸とグリセリンとの、モノグリセリド、ジグリセリド及びトリグリセリドのような中性脂質をいう。
本発明において前記エポキシ脂肪酸化合物は、9,10-エポキシオクタデカン酸、又は9,10-エポキシオクタデカン酸を構成脂肪酸として含むモノグリセリド、ジグリセリド若しくはトリグリセリドが好ましく、9,10-エポキシオクタデカン酸がより好ましい。
本発明の微細藻類はクロロサルシノプシス・バストロピエンシスKSM-WA152株と命名し、2014年10月2日付で、受託番号FERM BP-22279にて独立行政法人製品評価技術基盤機構特許微生物寄託センター(日本国千葉県木更津市かずさ鎌足2−5−8)に寄託されている。
本発明の微細藻類は、藻類学上の下記の(i)〜(v)の性質を有し、かつエポキシ脂肪酸化合物を生産する能力を有する。

(i)核の有無:有
(ii)鞭毛装置の有無:無
(iii)細胞サイズ:5μm〜10μm(図2参照)
(iv)細胞の色:緑色
(v)コロニーの色:濃緑色(寒天培地上)

さらに、本発明の微細藻類は、配列番号1に示す塩基配列の18S rDNAを有する。
本明細書において、「エポキシ脂肪酸化合物を生産する能力」とは、培養液及び藻体を合わせて、乾燥藻体1g当たり、遊離エポキシ脂肪酸に換算して200μg以上、好ましくは1mg以上、より好ましくは5mg以上のエポキシ脂肪酸化合物を生産できる能力をいう。
本発明の微細藻類の培養は、一般的な培養条件により行うことができる。例えば適当な淡水用の培地中で、光照射下、微細藻類の培養に用いられる一般的培養手段により、本発明の微細藻類の培養を行うことができる。
培地は適宜選択することができ、具体例としてはAF6培地、C培地、URO培地、VT培地及びWA培地が挙げられる。例えば、C培地をベースに、窒素源、リン源、金属塩、ビタミン類等を添加した培地を使用することができる。ここで、窒素源としては、NaNO3、CaNO3)2などが挙げられる。リン源としては、グリセロリン酸ナトリウムなどが挙げられる。金属塩としては、KCl、MgSO4、H3BO3、MnCl2、FeCl3、CoCl2などが挙げられる。ビタミン類としては、Biotin、Vitamin B12、Thiamine-HClなどが挙げられる。好ましい培地としては、後述の実施例に示すWA培地が挙げられる。
上記の培地は、適当な酸又は塩基を加えることによりpHを7.0〜8.0の範囲内に調整することが好ましい。また、オートクレーブ等により殺菌又は精密ろ過等により除菌して使用することが好ましい。
培地に接種する微細藻類の量は適宜設定することができる。例えば、培養培地当りの接種量は1.0〜10.0%(vol/vol)が好ましく、1.0〜5.0%(vol/vol)がより好ましい。
培養温度は、本発明の微細藻類の増殖に悪影響を与えない範囲で適宜設定することができる。例えば、一般的には10℃以上30℃以下で行うのが好ましく、15℃以上25℃以下がより好ましい。また、屋外施設において培養する場合は成り行きであってもよい。
本発明の微細藻類が光合成をできるように、光照射をしながら本発明の微細藻類を培養することが好ましい。この場合の光源としては、人工光又は太陽光の何れでもよい。また、光照度は、1,000ルクス以上5,000ルクス以下が好ましく、2,000ルクス以上4,000ルクス以下がより好ましい。
本発明の微細藻類の培養において、連続して光照射を行ってもよいし、明暗周期を設定して光照射を行ってもよい。明暗周期を設定して光照射を行う場合、光照射の間隔は適宜設定することができる。例えば、24時間のうち明暗周期を設定することが好ましい。具体的には、24時間のうち、明期は好ましくは8時間以上24時間未満、より好ましくは10時間以上18時間以下、さらに好ましくは12時間である。
培養時のpHは適宜設定することができ、一般的には6.5以上8.0以下であり、好ましくはpH7.0以上8.0以下である。
培養期間は適宜設定することができ、エポキシ脂肪酸化合物を高濃度に蓄積する藻体が高い濃度で増殖するよう適宜設定することが好ましい。例えば7日以上120日以下、好ましくは7日以上30日以下、通気攪拌培養、振とう培養又は静置培養すればよい。
本発明の微細藻類の培養装置は、屋内装置及び屋内施設のいずれであってもよい。また、回分培養、連続培養等のから任意の培養形式を選択することができる。そして、本発明の微細藻類が増殖可能な装置、施設及び培養形式を選択して、本発明の微細藻類を培養することができる。
培養終了後、遠心分離法や濾過などの常法により、藻体を分離し、分離藻体をそのままもしくは超音波やダイノミル等によって破砕した後、例えば、クロロホルム、ヘキサン、ブタノール、メタノール、酢酸エチル等の有機溶剤による溶剤抽出を行うことにより、エポキシ脂肪酸化合物を回収することができる。
なお、構成脂肪酸としてエポキシ脂肪酸を含有する化合物からエポキシ酸を分離するには、常法により混合脂肪酸あるいは脂肪酸エステルの状態とした後、尿素付加法、冷却分離法、高速液体クロマトグラフィー法あるいは超臨界クロマトグラフィー法などにより濃縮採取することにより行うことができる。
上述した実施形態に関し、本発明はさらに以下の微細藻類、及び製造方法を開示する。
<1>受託番号FERM BP-22279で特定される、クロロサルシノプシス・バストロピエンシス。
<2>下記の(i)〜(v)の性質を有する、前記<1>項に記載のクロロサルシノプシス・バストロピエンシス。
(i)核の有無:有
(ii)鞭毛装置の有無:無
(iii)細胞サイズ:5μm〜10μm
(iv)細胞の色:緑色
(v)コロニーの色:濃緑色(寒天培地上)
<3>配列番号1に示す塩基配列の18S rDNAを有する、前記<1>又は<2>項に記載のクロロサルシノプシス・バストロピエンシス。
<4>前記<1>〜<3>のいずれか1項に記載のクロロサルシノプシス・バストロピエンシスを培養し、生成されたエポキシ脂肪酸化合物を回収する、エポキシ脂肪酸化合物の製造方法。
<5>前記エポキシ脂肪酸化合物が9,10-エポキシオクタデカン酸、又は9,10-エポキシオクタデカン酸を構成脂肪酸として含むモノグリセリド、ジグリセリド若しくはトリグリセリド、好ましくは9,10-エポキシオクタデカン酸、である、前記<4>項に記載の製造方法。
<6>エポキシ脂肪酸化合物の生産量が、乾燥藻体1g当たり、遊離エポキシ脂肪酸に換算して200μg以上、好ましくは1mg以上、より好ましくは5mg以上、である、前記<4>又は<5>項に記載の製造方法。
<7>窒素源、リン源、金属塩及びビタミン類を含有する淡水用の培地中で、前記クロロサルシノプシス・バストロピエンシスを培養する、前記<4>〜<6>のいずれか1項に記載の製造方法。
<8>AF6培地、C培地、URO培地、VT培地及びWA培地からなる群より選ばれる少なくとも1種の培地を用いて前記クロロサルシノプシス・バストロピエンシスを培養する、前記<4>〜<7>のいずれか1項に記載の製造方法。
<9>連続して光照射を行いながら前記クロロサルシノプシス・バストロピエンシスを培養する、前記<4>〜<8>のいずれか1項に記載の製造方法。
<10>24時間のうち明暗周期を設定して光照射を行いながら前記クロロサルシノプシス・バストロピエンシスを培養するものであって、24時間のうち、明期を8時間以上24時間未満、好ましくは10時間以上18時間以下、より好ましくは12時間、とする、前記<4>〜<8>のいずれか1項に記載の製造方法。
<11>前記クロロサルシノプシス・バストロピエンシスの培養時の培地のpHが6.5以上8.0以下、好ましくはpH7.0以上8.0以下、である、前記<4>〜<10>のいずれか1項に記載の製造方法。
<12>前記クロロサルシノプシス・バストロピエンシスの培養時間が7日以上120日以下、好ましくは7日以上30日以下、である、前記<4>〜<11>のいずれか1項に記載の製造方法。
以下、本発明を実施例に基づきさらに詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
(1)エポキシ脂肪酸化合物を生産する能力を有する微細藻類のスクリーニング
下記表1記載の各成分を蒸留水に添加して調製したWA培地2mLと日本全国各地の土壌の小スパチュラ1杯分を24穴マイクロプレート(AGCテクノグラス社製)に投入し、25℃、湿度40%、照度3,000ルクスで、12時間明暗条件にて2週間培養を行い、微細藻類の存在確認を実施した。
微細藻類の存在が確認された培養液500μLを表1記載のWA培地10mLに接種し、試験管にて、同じ培養条件にて培養を行った。培養液10mLより、藻体を遠心分離により回収し、1.5mLのクロロホルム:メタノール(2:1)にて藻体より脂質を抽出した。
抽出した脂質を常法によりメチル化し、7-ペンタデカノン(Alfa Aesar社製)を内部標準として、GC/MS(カラム;DB-WAX(J&W scientific社製)、装置;7890GC/5975MSD(Agilent technology社製)、カラム温度;50℃ 2分→50〜200℃ 12.5℃/分 昇温→200〜230℃ 1.5℃/分 昇温、注入口温度;250℃、Aux温度;250℃、キャリアガス;He、流速0.7mL/分、サンプル注入量;1μL)により得られた脂質の分析を行った。なお、得られたMSスペクトルについて、AOCS(The American Oil Chemists’Society)のライブライリーを参考に解析を行った。
予備的な解析の結果エポキシ脂肪酸を生産している可能性が認められた株を単離し、KSM-WA152株とした。
(2)KSM-WA152株が生産する脂肪酸の確認
単離したKSM-WA152株の培養には、前述のWA培地を用いた。
培養容器に滅菌した100mL容三角フラスコ(PYREX(登録商標)製)と綿栓(アズワン製製、商品名:CS-28)を使用し、フィルターユニット(ナルジェヌンク製)を用いろ過滅菌した培地50mLを三角フラスコに分注した。pHはNaOHにて7.5に調整した。
予め同液体培地により継代培養していたKSM-WA152株の培養液1mLを新しい培地に接種し、20℃、蛍光灯下、照度3,000ルクス、12時間明暗条件下で静置培養した。なお、pHはNaOHにて7.5になるよう適宜調整した。
培養により得られた沈殿画分を80℃にて約3〜16時間乾燥させ、乾燥藻体とした。
得られた乾燥藻体の重量を測定後、内部標準として1mg/mLの7-ペンタデカノンを10μL添加後、クロロホルム1.0mL及びメタノール0.5mLを培養液に添加して激しく攪拌後15分間放置した。その後1.5%KCl 0.5mLを添加して攪拌後、3000rpm、15分遠心分離を行い、パスツールピペットにてクロロホルム層(下層)を回収した。
得られたクロロホルム層約50μLに窒素ガスを吹き付けて乾固し、テトラヒドロフラン(和光純薬社製)50μL及びナトリウムメトキシド(和光純薬社製)0.5mLを添加し、35℃で90分恒温した。続いてイソオクタン0.4mL及び飽和食塩水0.5mLを添加して攪拌後、3000rpm、10分遠心分離を行い、上層であるイソオクタン層を回収し、脂肪酸エステルを得た。
得られた脂肪酸エステルの同定を行った。脂肪酸エステルの同定は、ガスクロマトグラフ質量分析計(GC/MS)により、下記の条件で行った。また、脂肪酸エステルの同定は、National Institute of Standards and Technology(NIST)社及びThe American Oil Chemists’Society(AOCS)社のデータベースに記載の各種脂肪酸のマススペクトル情報を参考に行った。
装置:6890A(Agilent社製)
カラム:DB-WAX 20m×0.1mm×0.1μm(J&W scientific社製)
移動相:高純度ヘリウム(流速0.7mL/分)
昇温プログラム:50℃(2分)、200℃(12.5分)、230℃(1.5分)
注入口検出器温度:250℃
注入法:スプリットレスモード
サンプル注入量:1μL
キャリアガス:ヘリウム
GC/MS(EI)分析より得られたフラグメントパターン(図1)を上記データベースより検索した結果、試料に含まれる成分として9,10-エポキシオクタデカン酸が同定された。その結果、KSM-WA152株の培養中にエポキシ脂肪酸化合物の生産を確認することができた。なお、得られた9,10-エポキシオクタデカン酸の収量は、乾燥藻体1gあたり遊離エポキシ脂肪酸に換算して7mgであった。
以上の結果から、本発明の微細藻類はエポキシ脂肪酸化合物を生産することがわかる。
(3)KSM-WA152株の形態学的性質
藻類学における分類手法に基づき、取得したエポキシ脂肪酸生産能を有するクロロサルシノプシス・バストロピエンシスKSM-WA152株の同定を行った。その結果、下記に示した形態より緑色植物門に属する微細藻類であることが推定された。なお、クロロサルシノプシス・バストロピエンシスKSM-WA152株の顕微鏡写真を図2に示す。
(i)核の有無:有
(ii)鞭毛装置の有無:無
(iii)細胞サイズ:5μm〜10μm(培養期間が長くなると細胞のサイズも多少大きくなる
(iv)細胞の色:緑色
(v)コロニーの色:濃緑色(寒天培地上)
(4)KSM-WA152株の化学分類学的性質
さらに、取得したエポキシ脂肪酸生産能を有するクロロサルシノプシス・バストロピエンシスKSM-WA152株の18SrDNA遺伝子の塩基配列より、化学分類学的性質の検討を行った。
KSM-WA152株を単離培養した試験管から培養液500μLを回収し、NucleoSpin Soil(商品名、MACEREY-NAGEL社製)を用いてプロトコールに従いゲノムDNAを調製した。
Lim,E.L.et al.,Appl.Environ.Microbiol.,59(5),p.1647-1655(1993)、及びK,Romari.et al.,Limonol.Oceanogr.,49(3),p.784-798(2004)に記載の情報、並びにNBRC NITE Biological Resource Center社の18S rDNA情報を元に塩基配列のアライメントを行い、18S rDNA遺伝子増幅用のユニバーサルプライマーのデザインを行った。各ユニバーサルプライマーの塩基配列を表2に示す。
配列番号2及び3のプライマーを用い、KSM-WA152株のDNAをテンプレートとし、18SrDNAをKOD-Plus-Ver.2(商品名、TOYOBO社製)のプロトコールに従いPCRを行った。具体的には、94℃にて2分間保温した後、98℃にて10秒間、次いで55℃にて30秒間、更に68℃にて2分間保温処理する処理を30サイクル行った後、次操作に供するまで4℃にて保管した。
PCR product purification kit(商品名、Roche社製)を用いて得られたPCR産物の精製を行った。溶出には滅菌水100μLを用いた。
BigDye Terminator Cycle Sequencing Kit ver.3.1(商品名、Applied Biosystems社製)と3100xl DNA Sequencer(商品名、Applied Biosystems社製)を用いて、得られたPCR産物の塩基配列の確認を行った。上記で調製したPCR産物を鋳型として、配列番号3及び4のシークエンスプライマーを用いて反応を行った。精製にはMontage SEQ96 Sequencing Reaction Cleanup Kit(商品名、MILLIPORE社製)を用いた。塩基配列の解析はGENETYX WIN ver.9.0(商品名、ソフトウエア開発社製)を用いた。得られた塩基配列はBLAST(http://blast.ddbj.nig.ac.jp/top-j.html)を用いてホモロジー検索を行った。
得られた配列番号1に示す塩基配列の18S rDNA遺伝子を指標とした分子系統解析を行ったところ、既知のクロロサルシノプシス・バストロピエンシスUTEX1698株の18S rDNA遺伝子と100%一致した。その結果、微細藻類の分類上の特性より得られる同定結果と同じく、単離したKSM-WA152株はクロロサルシノプシス・バストロピエンシスであることが確かめられた。
なお、クロロサルシノプシス・バストロピエンシスKSM-WA152株は、2014年10月2日付で、受託番号FERM BP-22279にて独立行政法人製品評価技術基盤機構特許微生物寄託センター(日本国千葉県木更津市かずさ鎌足2−5−8)に寄託されている。
本発明の微細藻類は、エポキシ脂肪酸化合物生産能を有する。したがって、該微細藻類より生産されるエポキシ脂肪酸化合物は、各種工業用原料として、また医療・健康食品として利用できる。さらに、本発明の製造方法は緑藻を用いるため、二酸化炭素を排出せず、環境負荷のない炭化水素生産システムとして非常に有用である。

Claims (5)

  1. 受託番号FERM BP-22279で特定される、クロロサルシノプシス・バストロピエンシス(Chlorosarcinopsis bastropiensis)。
  2. 下記の(i)〜(v)の性質を有する、請求項1記載のクロロサルシノプシス・バストロピエンシス。
    (i)核の有無:有
    (ii)鞭毛装置の有無:無
    (iii)細胞サイズ:5μm〜10μm
    (iv)細胞の色:緑色
    (v)コロニーの色:濃緑色(寒天培地上)
  3. 配列番号1に示す塩基配列の18S rDNAを有する、請求項1又は2に記載のクロロサルシノプシス・バストロピエンシス。
  4. 請求項1〜3のいずれか1項に記載のクロロサルシノプシス・バストロピエンシス(Chlorosarcinopsis bastropiensis)を培養し、生成されたエポキシ脂肪酸化合物を回収する、エポキシ脂肪酸化合物の製造方法。
  5. 前記エポキシ脂肪酸化合物が9,10-エポキシオクタデカン酸である、請求項4に記載の製造方法。
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