JP6033176B2 - シラン類の製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、シラン類の製造方法に関する。
近年、エレクトロニクス工業の発展に伴い、多結晶性シリコンの薄膜あるいはアモルファスシリコンの薄膜等の半導体製造用シリコン系薄膜の需要が急激に増大している。モノシラン(SiH4)、ジシラン(Si2H6)等のシラン類(SinH2n+2)は、半導体製造用シリコン系薄膜の製造用原料として最近その重要性を増しており、特にジシラン(Si2H6)は微細化が進んだ最先端の半導体製造用シリコン系薄膜の原料として、今後大幅な需要増加が期待されている。
従来シラン類の製造方法としては、以下に例示するようないくつかの方法が知られている。
(1)Mg2Si + 4HCl → 2MgCl2 + 1/n SinH2n+2 + (1-1/n)H2
(2)Mg2Si + 4NH4Cl → 2MgCl2 + 4NH3 + 1/n SinH2n+2 + (1-1/n)H2
(3)SiCl4 + LiAlH4 → LiCl + AlCl3 + SiH4
(4)Si + SiCl4 + 2H2 → SiHCl3 + SiH3Cl
2SiHCl3 → SiCl4 + SiH2Cl2
2SiH2Cl2 → SiHCl3 + SiH3Cl
2SiH3Cl → SiH4 + SiH2Cl2
これらのなかで、ケイ素を含む合金、特にケイ化マグネシウム合金と反応させる(1)および(2)の方法は、古くから最も実施容易な方法として知られている。これらの方法は、他の方法に比較して、高価な還元剤が不要、常温常圧付近で反応が可能などの利点がある。特にジシラン(Si2H6)を製造する場合には、例えば、(3)の方法により、高価なヘキサクロロジシラン(Si2Cl6)を金属水素化物で還元することによっても得られるが、(1)または(2)の方法により容易にジシラン(Si2H6)を得ることができる。
特許文献1には、ケイ素を含む合金を出発物質とする(2)の反応方法として、ハロゲン化アンモニウムのアンモニア溶液にケイ化マグネシウムを少量ずつ加えてモノシラン(SiH4)を発生させる方法や、ケイ化マグネシウムとハロゲン化アンモニウムの混合物に、液体アンモニアを滴下してモノシラン(SiH4)を製造する方法が開示されている。
特許文献2には、反応(1)または(2)の原料として、ケイ素粉体、マグネシウム粉体および鉛粉体を磁製坩堝で焼成し、得られたケイ化マグネシウムを含む合金粉体を80メッシュ以下に粉砕して用いることが開示されている。
特許文献3には、ケイ化マグネシウムを含む合金粉体でシラン類を製造する際に、ロータリーフィーダーを用いて、ケイ化マグネシウムと塩化アンモニウムとのモル比が1:2の混合物を反応器に連続供給することが開示されている。
ケイ化マグネシウムを含む合金粉体は、一般に、ケイ素粉体とマグネシウム粉体とを必要に応じて添加物と共に焼成することにより製造することができる。原料中のケイ素からケイ化マグネシウム合金となる割合(合金化率)は、最終生成物のシラン類の生成量に直結するため、ケイ化マグネシウムをより多く含む合金粉体をいかに効率よく製造するかが重要となる。しかしながら、ケイ化マグネシウムを含む合金粉体の工業的規模における製造方法については、まだ十分に確立されていない部分がある。ケイ化マグネシウムを含む合金粉体を用いた大規模で連続的なシラン類の製造におけるシラン類の収率、工業的規模での安定的かつ連続的に高収率でシラン類を得る方法など、上述した従来技術は、未だ産業発展に有益なプロセス達成の必要条件を保証するものではない。
一般的に、連続かつ安定的に金属粉体を焼成してケイ化マグネシウムを含む合金粉体を得るには、ロータリーキルン炉等の焼成炉における金属粉体の充填率(炉内容積に占める原料の体積割合)を約10〜20%に維持することが望ましい。例えば、特許文献4には、外熱式ロータリーキルン炉で被処理物を焼成する際に、被処理物の充填率を最大15%程度とすべきことと、これを超える充填率となる場合には、被処理物が炉芯管から受ける輻射熱や伝導熱が不十分となる上に、被処理物の攪拌効率が低下して均一な製品にならないことが記載されている。
確かに、このように適正な充填率で金属粉体の焼成を行えば、焼成炉内で金属粉体を連続的に移動させることができ、炉内の温度雰囲気を通して合金粉体の温度を均一に保つことができる。
焼成炉における金属粉体の充填率が小さ過ぎると、マグネシウム合金粉体の生産能力を十分確保できず、設備の運転費用が過大となり、大規模生産に過度の費用がかかる。逆に、金属粉体の充填率が大き過ぎると、金属粉体に加わる輻射熱や伝導熱が不十分となり焼成ムラが発生するなど十分な品質が確保できなくなり、安定かつ連続運転が困難となる。充填率が適正であれば、これらの問題が生じることはない。
ケイ化マグネシウムは、ケイ素とマグネシウムの原子比が1:2の金属間化合物であり、通常、この量論組成でしかケイ化マグネシウムの結晶構造を取らない。そのため、焼成時にケイ素粉体とマグネシウム粉体の供給が上記量論組成から外れると、余ったケイ素粉体あるいはマグネシウム粉体は、未反応のまま残存し、溶媒中での酸との反応によるシラン類の生成に寄与できず、シラン類の収率の低下につながることになる。すなわち、焼成時に供給されるケイ素粉体とマグネシウム粉体との原子比は、上記量論組成に近い比率であることがシラン類の収率を高める観点から好ましい。
特公昭42−12060号公報 特開昭62−56314号公報 特開昭62−292614号公報 特開2004−144459号公報
前述の通り、ケイ化マグネシウムを含む合金粉体からのシラン類(SinH2n+2)の製造過程は、主としてケイ化マグネシウムを含む合金粉体の製造、シラン類含有物の製造、及びシラン類の精製からなる。本発明は、例えば、図1の例に示すように、連続焼成が可能なロータリー炉等に原料を供給して焼成を行い、連続的に焼成炉から抜出されたケイ化マグネシウムを含む合金粉体を、溶媒中で酸と反応させることにより、シラン類含有物の製造を行うのが基本的なプロセスである。
しかしながら、金属粉体の充填率を適正範囲に制御しているにもかかわらず、発熱反応が過多となり、この発熱及び蓄熱によりケイ化マグネシウムを含む合金粉体等の溶融、融着、固結、塊状化が起こる場合がある。
また、ケイ化マグネシウムの連続的な生産が安定しているように見えても、製造されるケイ化マグネシウムの結晶性が安定しないと、その後のシラン類の生産において、溶媒中での酸との反応率が低下してシラン類の収率が低下する等、安定したシラン類の連続生産が困難となるだけでなく、溶媒中での反応でシラン類の発生が不規則になり、シラン類の生成量にバラツキが生じるためにその後の精製や捕集工程に支障をきたすおそれもある。
さらに、ケイ素粉体とマグネシウム粉体とが適正な比率(1:2)で焼成炉に供給されても、適切な焼成工程を経なければ、未反応のケイ素粉体あるいはマグネシウム粉体の割合が増加し、これら粉体がシラン類の生成に寄与できずに最終産物であるシラン類の収率が低下し、連続安定運転が困難な事態を招く原因となるのではないかと考えた。
そこで、本発明者らは、ケイ化マグネシウム合金の生成反応は発熱反応であり、焼成中の混合物の温度を精密に制御する必要があるであろう点に着目した。
焼成中の混合物の温度が望ましい温度範囲を下回った場合、ケイ化マグネシウムの結晶構造が高度に形成されず、また、未反応のケイ素粉体およびマグネシウム粉体が排出されて、最終産物であるシラン類の収率が低下する可能性がある。一方、生産効率を重視して焼成時の加熱を過剰に行い、焼成中の混合物の温度が望ましい温度範囲を上回った場合、急激な発熱と蓄熱により生成反応が暴走して、原料の金属粉体やケイ化マグネシウムを含む合金粉体自体の溶融、融着、固結または塊状化などの種々の問題により、安定した連続焼成が困難となり、最終産物であるシラン類の収率が低下する可能性がある。すなわち、原料混合物が焼成炉を通過する短い時間の中で、効率的にかつ安定的に結晶性の高いケイ化マグネシウム合金を生成させる必要があると考えるに至った。
本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであって、ケイ化マグネシウムを含む合金粉体を連続して安定的に工業的規模で製造することができる方法、及び、該合金粉体からのシラン類の製造を可能とする方法を提供することを目的とするものである。
本発明者らは鋭意検討を行った結果、以下の方法により上記課題の解決に至った。すなわち、本発明に係るシラン類の製造方法は、下記[1]で示され、任意に[2]〜[5]を含む。
[1] 不活性ガス雰囲気下、ケイ素粉体およびマグネシウム粉体を含む原料混合物を、連続的に焼成炉に供給して該原料混合物を連続的に昇温する工程(I−1)、次いで昇温した原料混合物の温度を特定の温度範囲に制御する工程(I−2)(なお、工程(I−1)と工程(I−2)とをあわせて第一焼成工程という)、及び、第一焼成工程を経て得られたケイ化マグネシウムを含む合金粉体と酸とを溶媒中にて反応させてシラン類を製造する工程(II)を含み、
前記工程(I−1)が、ケイ素粉体およびマグネシウム粉体を含む原料混合物の温度を、2.5〜50℃/分の昇温速度で480〜520℃の温度範囲にある第一焼成温度に到達させる工程であり、(但し、第一焼成温度とは、480〜520℃の温度範囲で昇温速度が2.5℃/分未満になった温度のことをいう)、
前記工程(I−2)が、昇温した原料混合物を480〜530℃の温度範囲で30分間以上維持させることを特徴とするシラン類の製造方法。
[2] 前記工程(I−2)に次いで、前記第一焼成工程を経て得られた第一焼成混合物の温度を、500〜900℃の範囲で維持する工程(第二焼成工程)を少なくとも含むことを特徴とする[1]記載のシラン類の製造方法。
[3] 原料混合物に含まれるケイ素粉体の平均粒径が5〜200μmであることを特徴とする、[1]または[2]に記載のシラン類の製造方法。
[4] 原料混合物として、さらに周期表第3〜16族から選ばれる少なくとも1種の金属元素(ただし、ケイ素を除く)が、ケイ素100原子%に対して、0.5〜30原子%含まれる混合物を用いることを特徴とする、[1]〜[3]のいずれかに記載のシラン類の製造方法。
[5] 前記工程(II)が、ケイ化マグネシウムを含む合金粉体と酸とをアンモニア中で反応させる、[1]〜[4]のいずれかに記載のシラン類の製造方法。
[6] 前記酸がハロゲン化アンモニウムである、[5]に記載のシラン類の製造方法。
図1は、本発明に係るケイ化マグネシウムの製造方法およびシラン類の製造に関する一形態を示す模式図である。 図2は、本発明の実施に関する一形態を示す模式図であって、外熱式ロータリーキルン炉の全体を模式的に示す図である。
以下、本発明に係る実施の形態ついて詳細に説明する。
本発明に係るシラン類の製造方法は、
不活性ガス雰囲気下、ケイ素粉体及びマグネシウム粉体を含む原料混合物を、連続的に焼成炉に供給して該原料混合物を連続的に昇温する工程(I−1)、次いで昇温した原料混合物を特定の温度範囲に制御する工程(I−2)(なお、工程(I−1)と工程(I−2)とをあわせて、第一焼成工程という)、及び、得られた粉体と酸とを溶媒中にて反応させてシラン類を製造する工程(II)を含み、
前記工程(I−1)が、ケイ素粉体及びマグネシウム粉体を含む原料混合物の温度を、2.5〜50℃/分の昇温速度で480〜520℃の温度範囲にある第一焼成温度に到達させる工程であり、(但し、第一焼成温度とは、480〜520℃の温度範囲で昇温速度が2.5℃/分未満になった温度のことをいう)、
前記工程(I−2)は、昇温した混合物を480〜530℃の温度範囲で30分間以上維持させる工程である。なお、以下、前記昇温速度(2.5〜50℃/分)を昇温速度(A)ということがある。
ケイ化マグネシウム合金の生成反応速度は、焼成中の混合物の温度が400℃以上、さらには500℃以上となる温度領域において急激に増大すると言われている。かかる温度を望ましい温度範囲(480〜530℃)に制御できなかった場合、例えば加熱不足により前記温度が望ましい温度範囲(480〜530℃)を下回った場合、ケイ化マグネシウムの結晶構造が高度に形成されず、また、未反応のケイ素粉体およびマグネシウム粉体が排出され、最終産物であるシラン類の収率を低下させることがある。
逆に、ケイ化マグネシウム合金等の生産効率を重視して焼成時の加熱を過剰に行い、焼成中の混合物の温度が望ましい温度範囲(480〜530℃)を上回った場合、急激な発熱と蓄熱によりケイ化マグネシウム合金の生成反応が暴走して、得られる混合物自体の溶融、融着、固結または塊状化などの種々の問題が発生し、混合物を粉体として取り扱うこと、また、ケイ素とマグネシウムが均一な環境で反応することが困難となり、いわゆる安定した連続焼成が困難となり、最終産物であるシラン類の収率が低下することがある。
<原料混合物>
本発明に用いる原料混合物は、ケイ素粉体およびマグネシウム粉体を含有する粉体と、任意に第3成分としての金属粉体(ケイ素およびマグネシウムを除く)とを含む粉体である。ケイ素粉体は、純度100%である必要性は無く、マグネシウムや後述する周期表3〜16族から選ばれる元素を含んでいても良い。また、ケイ素粉体は、本発明の効果を損なわない範囲で周期表1,2族の元素を含んでいても良い。マグネシウム粉体についても同様である。また、原料そのものとして、これら複数の粉体を含むものを用いてもよい。
(ケイ素粉体)
ケイ素粉体の平均粒径は、好ましくは200μm以下であり、より好ましくは5〜200μmであり、さらに好ましくは5〜100μmである。
前述のケイ化マグネシウム合金は、マグネシウム粒子とケイ素粒子とが混ざり合って粒子同士が接触した状態で固相反応により形成される。そのため、ケイ素粉体の平均粒径が200μmを上回ると、後述するマグネシウム粉体と十分に混合されない場合があり、また、第一焼成工程において、混合したマグネシウム粉体とケイ素粉体とを480〜530℃の温度範囲で30分間以上維持したとしても、マグネシウム粉体との反応が十分に進行しない場合がある。そのため、ケイ化マグネシウムの結晶性が上がらないおそれ、あるいは、その後に第二焼成工程を実施した場合に、未反応のケイ素粉体とマグネシウム粉体とが急激に反応を始めてケイ化マグネシウム合金自体の溶融、融着、固結、塊状化を招くおそれがある。ケイ素粉体の平均粒径が5μm未満の場合には、反応効率の点からは好ましいが、焼成炉の壁にこびりついたり、粉塵が舞う等、取り扱いが困難となる可能性がある。
ケイ素粉体のケイ素の純度は、特に限定されないが、好ましくは90〜99.999%、より好ましくは93〜99.999%、さらに好ましくは97〜99.999%である。
(マグネシウム粉体)
マグネシウム粉体は、ケイ素粉体との反応においては、特に形状に限定はなく粒状またはチップ状、リボン状等の形状を有するものであればいずれも好適に使用可能だが、その平均粒径または長径は、ケイ素粉体との反応を考慮すれば1mm以下であることがより好ましい。マグネシウム粉体のサイズが小さいことは、ケイ化マグネシウムの生成反応上は問題なく特に限定されないが、マグネシウム粉体が小さいと、その反応性が高くなるために、マグネシウム粉体を取り扱う上で粉塵爆発など安全上の問題が生じてくる。このため、マグネシウム粉体の平均粒径または長径は20μm以上であることが好ましい。この範囲の平均粒子径または長径を有するマグネシウム粉体であれば、ケイ素粉体との接触効率が低下することもなく、安全に所望のシラン類の収率が得られるため好ましい。
(Si:Mgの量論組成)
本来、ケイ化マグネシウムは、ケイ素:マグネシウム(Si:Mg)=1:2の量論組成の原子比で焼成して生成するが、前記の方法を用いても工業的には完全に反応させることは困難な場合があり、未反応のケイ素およびマグネシウムが残るため、これらをそのまま廃棄するとコスト増の原因となる。そこで、原料費の安価な元素を量論組成より多くし、高価な原料を可能な限り反応で消費することが好ましい。具体的には、ケイ素:マグネシウムの混合比は、好ましくは1:1.6〜2.8、より好ましくは1:1.8〜2.5、さらに好ましくは1:1.9〜2.2である。
(第3成分)
ケイ化マグネシウムの形成反応を阻害しない範囲であれば、反応系に添加物を加えてもよい。特に、ジシラン(Si26)の収率を高めたい場合には、周期表第3〜16族から選ばれる少なくとも1種の金属元素(ただし、ケイ素を除く)を添加することが好ましい。具体的には、Sc,Y,Ti,Zr,Hf,V,Nb,Ta,Cr,Mo,W,Mn,Re,Os,Co,Rh,Ir,Ni,Pd,Pt,Cu,Ag,Au,Zn,Cd,Hg,Al,Ga,In,Tl,Ge,Sn,Pb,P,As,Sb,Biであり、好ましくはTi,V,Mo,W,Mn,Pd,Pt,Cu,Zn,Al,Ga,Ge,Sn,Pb,Sb,Biである。この群から選択された1種または複数種の金属を、例えば平均粒径200μm以下の粒子として、原料混合物中のケイ素原子全て(100原子%)に対して、0.5〜30原子%含めることができる。
(不活性ガス)
本発明においては、酸素(O2)が存在しない不活性ガス雰囲気下でケイ素粉体とマグネシウム粉体とを含む原料混合物を焼成することが望ましい。この点は、原料混合物を焼成炉に移送する前も同様である。不活性ガスとしては、ヘリウム(He)、ネオン(Ne)、アルゴン(Ar)等を用いることができる。水素(H2)などの還元性ガスであってもかまわなく、一成分、あるいは二成分以上の混合ガスであってもかまわない。
一般に、酸素があるとケイ素やマグネシウムが酸化されて、ケイ化マグネシウム合金が十分に形成されないおそれがあるため、酸素を混入させないように雰囲気を不活性ガスで満たすことが好ましいが、焼成炉への不活性ガスの流通量は、焼成炉サイズによって適宜設定され、焼成炉内を十分に上記不活性ガスで満たした状態を維持できればよい。
(原料混合物の混合)
第一焼成工程の前に上記の各原料となる粉体を混合しておくことは、合金生成反応が十分に行われ、ケイ化マグネシウム合金の収率を高める上で好ましい方法である。これらの粉体を混合するための混合機は、原料となる粉体を混合できるものであればよく、V型ミキサー、パドルミキサー、リボンブレンダー及びナウターミキサー等を使用することができる。ケイ素粉体、マグネシウム粉体および適宜追加した元素を含む原料混合物は、定量的にかつ連続的に焼成炉に供給されることが好ましい。このときに、ケイ化マグネシウムの結晶性の変動を抑制する観点から、供給量にばらつきがないことがより好ましい。原料混合物の供給は、定量的に供給できれば特にその手段は限定されないが、原料混合物を一旦、ホッパーなどに貯蔵し、スクリューフィーダーやロータリーバルブなどを用いることが好ましい。
<第一焼成工程、工程(I−1)>
工程(I−1)は、原料混合物を所定温度に昇温する工程であり、次いで行われる工程(I−2)(後述)は所定の温度範囲に工程(I−1)を経た原料混合物を維持する工程である。これらの工程ではケイ素とマグネシウムとを加熱して焼成することにより、ケイ化マグネシウム合金を生成させる下記反応(1)が起こると考えられる。
2Mg + Si → Mg2Si ・・・(1)
工程(I−1)は、原料混合物の温度を480〜520℃の範囲にある第一焼成温度まで上昇させる工程である。なお、初期状態の原料混合物は、ケイ化マグネシウムの合金生成反応が収束しない480℃未満の温度であれば、特に制限はないが、通常、室温〜200℃の範囲、好ましくは室温〜150℃の範囲である。
原料混合物の温度を第一焼成温度(480〜520℃)に到達させるまでの昇温速度(A)は、2.5〜50℃/分、好ましくは2.5〜20℃/分、さらに好ましくは2.5〜10℃/分である。このときの昇温条件は焼成炉の規模等によって適宜設定されるが、昇温速度(A)が50℃/分を超えるとケイ化マグネシウム合金の生成反応速度が急激に増大し、反応熱が急激に発生する結果、発熱過多となり、混合物の温度を後述する工程(I−2)における温度範囲である480〜530℃に維持する制御が工業的に困難となり、焼成炉内で焼成中の混合物または形成されたケイ化マグネシウム合金が溶融固結して粉体の動きが止まり、連続焼成が中断するおそれがある。逆に、昇温速度(A)が2.5分/℃より低い場合、当然その後の発熱、蓄熱は緩やかとなるが、焼成炉の運転性、生産速度等の経済性を考慮すると効率的ではない。
原料混合物が工程(I−1)を経て到達する第一焼成温度は、480〜520℃の温度範囲の温度である。ケイ化マグネシウムの結晶構造を高度に形成させるためには、まず、原料混合物を前述した昇温速度(A)で昇温し、第一焼成工程における第一焼成温度にかかる480℃以上、好ましくは500℃以上にする必要がある。
第一焼成温度が480℃未満であると、さらに焼成を進めたとしても、ケイ化マグネシウムの結晶構造が高度に形成されにくい場合がある。また、後述する工程(I−2)での温度範囲のうち、520℃を超える温度まで原料混合物の温度を上昇させた場合には、例えば、ケイ化マグネシウム合金の生成反応が急激に加速して制御困難となる場合があり、著しい場合には、ケイ化マグネシウムを含む合金粉体自体の溶融、融着、固結、または、塊状化などの種々の問題が発生し得る。
また、第一焼成温度が520℃より大きいと、昇温速度(A)を十分に制御したとしても、ケイ化マグネシウム合金の主として粒子群の内部側での生成反応速度が急激に増大し、その反応熱が急激に発生する結果、発熱過多となり、焼成炉内で粒子が溶融固結して粉体の動きが止まり、連続焼成が中断するおそれがある。このような反応熱の急激な発生、発熱過多を抑制する観点から、第一焼成温度の好ましい上限値は510℃である。
(特定の温度に制御する工程(I−2))
工程(I−2)は、原料混合物の温度を第一焼成温度に到達させた後に、480〜530℃の範囲で30分間(0.5時間)以上維持する工程である。維持する温度が530℃より高いと、ケイ化マグネシウム合金の生成反応速度が急激に増大することによって、その反応熱が急激に発生する結果、発熱過多となり、焼成炉内で溶融固結して粉体の動きが止まり、連続焼成が中断するおそれがある。一方、維持する温度が、480℃未満であると、ケイ化マグネシウムの結晶構造が高度に形成されない場合があり、仮に30分以上加熱しても合金生成反応が進行しにくく、反応速度が著しく低下するため、未反応のケイ素粉体及びマグネシウム粉体が排出され、結果として、最終産物であるシラン類の収率が低下する可能性がある。
未反応のケイ素粉体およびマグネシウム粉体を極力少なくし、反応熱の急激な発生、発熱過多を抑制する観点から、維持する温度は、好ましくは500〜530℃、より好ましくは510〜530℃の温度範囲である。他の好ましい例は、前記の第一焼成温度から530℃までの範囲である。
第一焼成中において工程(I−1)を経た混合物を480〜530℃に維持する時間は、30分間以上とする必要がある。
維持する時間が30分未満であると、反応の進行が不十分で、相当量の未反応のケイ素粉体や未反応のマグネシウム粉体が排出されて、最終産物であるシラン類の収率が低下する可能性がある。
また、維持する時間が30分未満であると、第一焼成工程終了後の混合物(第一焼成混合物)の温度を500〜900℃まで加熱処理して、ケイ化マグネシウムを含む合金粉体を製造する第二焼成工程(後述)を行った際に、前記未反応のケイ素粉体や未反応のマグネシウム粉体が急激に反応して発熱過多となり、焼成炉内で溶融固結して粉体の動きが止まり、連続焼成が中断するおそれがある。
よって、工程(I−2)での混合物を480〜530℃で30分間以上維持していれば、急激な発熱反応はほぼ終了しているため、第二焼成工程において、連続焼成が中断するおそれは実質的に無くなり、発熱反応である合金生成反応(1)がほぼ進行し終わった状態の混合物(第一焼成混合物)として取り扱うことが可能となる。
工程(I−2)において混合物の温度を480〜520℃の温度範囲にある第一焼成温度から、第一焼成温度〜530℃までの領域になるように昇温速度(B)を制御するのが好ましい。
ここで、第一焼成温度に到達後の昇温速度(B)としては、工程(I−2)の温度を480℃〜530℃に制御した状態で30分間以上維持できれば特に制限はない。
この工程(I−2)での昇温速度(B)は、高度に結晶化したケイ化マグネシウム合金を得る観点から、2.5℃/分未満になるようにすることが好ましい。より好ましくは、−2.5℃/分以上、2.5℃/分未満、更に好ましくは0℃/分以上、2.5℃/分未満である。
工程(I−2)においては、一定速度で混合物を昇温してもかまわず、例えば混合物の温度を500℃から530℃まで30分以上かけて一定速度で昇温してもよい。この場合、昇温速度(B)は1℃/分以下となる。また、例えば、混合物の温度を480℃から500℃まで10分かけて昇温して、該温度(500℃)で残り時間20分を維持してもよい。この場合、昇温速度(B)は2℃/分となる。上記の態様としては、例えば第一焼成温度を480℃とし、ある一定時間維持した後、2.5℃/分未満の速度で480℃から530℃に昇温する方法でもよい。
(第二焼成工程)
本発明においては、第一焼成工程を経た混合物(第一焼成混合物)の温度を500〜900℃の温度(第二焼成温度)で焼成する少なくとも1つ以上の第二焼成工程を経ることが好ましい。この第二焼成工程で、第一焼成工程での未反応のケイ素粉体及びマグネシウム粉体をケイ化マグネシウム合金粉体の存在下に強制的に反応させてケイ化マグネシウム合金粉体を生成させることができる。ケイ化マグネシウムの結晶性を高めるために、第二焼成工程を、第一焼成工程を経た混合物を引き続き焼成する工程としてもよい。
第一焼成工程を経た第一焼成混合物は、ケイ化マグネシウム合金の生成反応(1)が進行してはいるものの、未反応のケイ素粉体およびマグネシウム粉体を含んでいる場合や、未だ、ケイ化マグネシウムの結晶構造が不安定なためにその結晶性が低い場合もある。そのため、好ましくは第一焼成工程より高い焼成温度で第一焼成工程を経た混合物を処理することで、前記混合物中に残存する未反応のケイ素粉体とマグネシウム粉体とを焼成させるだけでなく、ケイ化マグネシウム合金の結晶性を高め、結果として最終的なシラン類の収率を高めることができる場合がある。
第二焼成工程は、第一焼成工程後に適宜実施される工程であり、第一焼成工程としての処理を行った時点から第二焼成工程と便宜上区別するのであって、第一焼成工程と第二焼成工程の接続は特に制限されるものではない。そのため、第一焼成工程と第二焼成工程の間に他の工程(冷却工程など)が介在してもかまわない。
しかしながら、第二焼成工程は第一焼成工程に連続して行われることが加熱時のエネルギーコストを考慮すれば好ましく、また、所要時間も短くできるなど、製造速度の観点からは望ましい。この第二焼成工程を行うことにより、ケイ化マグネシウムを含む合金粉体、ひいては、最終産物のシラン類の収率を高めることができる。
第二焼成温度は、前記の目的を考慮すると、温度が高いほど好ましいが、温度を高めすぎると、製造に要するエネルギー的には不利となる傾向が有り、また得られる合金の変質を招くことがある。このため、第二焼成温度は500℃〜900℃とするのが好ましい。
第二焼成温度は、第一焼成工程の最終温度以上であることが好ましく、第一焼成温度のうち最も高い温度以上であることがより好ましい。このように設定することで、よりケイ化マグネシウム合金の結晶性を向上させることが可能となる。
第二焼成工程で混合物の温度を第一焼成工程の最終温度未満にすると、反応がほとんど進行せず、先に述べた効果は期待できないため、シラン類の製造に用いるケイ化マグネシウムを含む合金粉体中に未反応の原料が残存してしまいシラン類の収率が向上せず、また、結晶性に乏しいケイ化マグネシウム合金も残存して高い結晶性のケイ化マグネシウム合金に比べてシラン類の収率が低下する可能性がある。
第二焼成工程は第一焼成工程に特に影響を与えるものではないため、第二焼成工程を長時間行うことの制限は無い。ただし、工業化を考慮すれば、ケイ素粉体及びマグネシウム粉体を含む混合物の投入から第一焼成工程を経て最終温度に達するまでの時間が、30〜300分の間であることが好ましい。
(焼成装置)
本発明に係るシラン類の製造方法を実施するための焼成装置は、例えば、焼成炉3と加熱部2等とを有している装置を挙げる事が出来る。代表的な焼成装置の構成例3つを図2(A)〜(C)に示し、第一焼成工程および第二焼成工程を行う態様の例について説明する。
図2(A)に示す焼成装置は、焼成炉3と加熱部2をそれぞれ1つずつ有した焼成装置である。なお、原料フィード1は、原料混合物をフィードするホッパーなどの装置を例示することが出来る。この装置において、原料混合物は、原料フィード1より導入され、焼成炉3が有する移送手段(不図示)により順次下流側へ移送され、この移送の途中に焼成炉3内で例えば網掛け部分で工程(I−1)および工程(I−2)が行われる。なお、焼成炉3には、複数の温度検知装置が付され、加熱部2には温度制御手段が設けられており、温度検知装置が経時的に焼成炉3の温度を計測し、加熱部2の温度を制御する。これに加えて、前述の原料混合物の移送速度を制御することで、第一焼成工程および第二焼成工程を行うことが出来る。焼成炉3から排出された第一焼成工程および第二焼成工程を経た粉体は、次のシラン類を生成する反応工程を行うために移送される。
図2(B)に示す焼成装置は、連続する焼成炉3とそれに併設された複数の加熱部2A,2Bを有する焼成装置であり、原料混合物に対して、加熱部2Aにより第一焼成工程を行い(網掛け部分参照)、加熱部2Bにより第二焼成工程を行う。その他の構成は図2(A)と同一であるため、説明を省略する。
図2(C)に示す焼成装置は、別箇の焼成炉3A,3Bと、焼成炉3A,3Bに併設された加熱部2A,2B等とを有した焼成装置であり、原料混合物に対して、焼成炉3Aおよび加熱部2Aにより第一焼成工程を行い(網掛け部分参照)、得られた混合物を移送して焼成炉3Bおよび加熱部2Bにより第二焼成工程を行う。その他の構成は図2(A)と同一であるため、説明を省略する。
(焼成炉)
第一,二焼成工程に用いられる焼成炉は、前記の条件を実現出来る装置であれば、焼成炉の構造や焼成方式は特に制限されず、任意の焼成炉を用いることができる。これらの中でも原料を連続焼成できるものが好ましい。例えば、加熱炉の高温部に粉体を供給するベルト炉、ロータリー炉、台車炉などを用いることができる。
第二焼成工程を設ける場合、一つの焼成炉を任意に区分し、区分ごとに温度を制御した焼成工程を有する焼成炉(例えば、図2(A),(B)参照)であっても、個々の焼成炉を連続的に、あるいは間に他の設備を介して接続しても(例えば図2(C)参照)、個々の焼成炉を上記条件で温度制御した焼成炉であれば、制限されるものではない。さらには、焼成炉内には攪拌機、バッフルなど一般的に付帯しうるものが設けられていてもかまわない。
(混合物の温度計測)
本来、この焼成中の反応では焼成中の粉体状の混合物の表面温度が最も高くなると考えられるが、本発明のように、合金生成反応をゆっくりと時間をかけて行えば、雰囲気と焼成中の混合物の温度との差は小さいため、温度制御を行うための温度計測機器は、焼成中の混合物の内部、あるいは表面温度、もしくは炉外面のいずれの温度でも測定できればよく、ケイ化マグネシウムを含む焼成中の混合物の温度を直接的にまたは間接的に測定できればよい。
(シラン類の製造)
上記のように第一焼成工程、さらに必要に応じて第二焼成工程を経て得られた合金粉体を溶媒中で酸と接触させ、一般式(SinH2n+2)のシラン類が製造される。この工程では下記反応(2)が主たる反応として起こっていると考えられる。この反応は連続で行うことが工業的製法においては好ましく、ケイ化マグネシウムを含む合金粉体は定量的に反応系に連続供給することが好ましい。そのため、この粉体を一旦、ホッパーなどに貯蔵し、スクリューフィーダーやロータリーバルブなどの供給装置を適宜採用することが好ましい。
Mg2Si+4NH4Cl→(1-n)SiH4+(n/2)Si2H6+4NH3+2MgCl2+(n/2)H2・・・(2)
第一焼成工程(または任意に行われる第二焼成工程)を経て得られたケイ化マグネシウムを含む合金粉体は、ケイ素を含む二成分以上の金属を含む。この合金粉体は本願発明の目的を損なわない範囲で、他の成分を含んでいてもよい。
例えば、該合金粉体含まれていても良い他の成分としての合金の具体例としては、Mg2Si、CaSi、Ca3Si2、Li6Si2、Mg2SiN、Mg2SiAl、Mg2SiBa、CeMg2Si2、Mg6Si7Cu16、Mg3Si6Al8Fe等が挙げられる。これらの中ではマグネシウムを含むケイ素合金、特にケイ化マグネシウムMg2Siが最も好ましい。また、これらの二種以上のケイ素合金の混合物であってもよい。
ケイ化マグネシウムを含む合金粉体の粒度に特に制限は無いが、粉体であることでその後の反応や取り扱いにおいて好ましく、細かいほど好ましい傾向がある。しかし、経済上あるいは取り扱い上、その平均粒径が20〜300μmの範囲であることが望ましい。
本発明におけるケイ化マグネシウムを含む合金粉体と酸との反応は、例えば水、あるいはアンモニア、ヒドラジン、エチルアミン、ヘキシルアミン、エチレンジアミン、ピペリジン、アニリン、ピリジン等の含窒素化合物、あるいは、ジエチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン、アニソール等のエーテル化合物などの溶媒中もしくはその混合溶媒中にて行い得るが、これらの中では最終産物であるシラン類の収率の観点からアンモニアが好ましい。
酸としては、供給されたケイ化マグネシウムを含む合金粉体に、溶媒中にて酸として作用するものであればいかなるものでもよいが、アンモニアを溶媒とする場合には、塩化アンモニウム、臭化アンモニウム、ロダン酸アンモニウムなどのアンモニウム塩が好ましく、シラン類の収率の観点から塩化アンモニウム、臭化アンモニウムなどのハロゲン化アンモニウムが好ましい。また、ヒドラジンを溶媒とする場合には塩化ヒドラジルなどの化合物が酸として好適に用いられる。
シラン類を製造する反応様式については、上述の通り焼成して製造されたケイ化マグネシウムを含む合金粉体を溶媒中で酸と反応させることができれば、限定されるものではない。回分式、半回分式または連続式のいずれの反応様式でも可能であるが、連続式で行うことが工業的製法においては好ましい。
上述した各成分を反応系へ導入する方法についても種々の方式が採用できる。
例えば、ケイ化マグネシウムを含む合金粉体と酸とを予め混合して液体アンモニア中に連続投入してもよいし、別々に液体アンモニア中に連続投入してもよい。また、ケイ化マグネシウムを含む合金粉体と酸とを混合したものに液体アンモニアを連続供給する方式であってもよい。さらに別の方式として、ケイ化マグネシウムを含む合金粉体またはハロゲン化アンモニウムのいずれか一方を液体アンモニア中に投入後、他方を液体アンモニアに投入する方式でもよい。ハロゲン化アンモニウムの全部を予め液体アンモニア中に溶解させておいてもよいし、ハロゲン化アンモニウムの一部を液体アンモニア中に溶解し、残りをケイ化マグネシウムを含む合金粉体と混合して投入する方式でもよい。
上記反応によりシラン類を製造するための反応器についても、この反応が連続的にアンモニア等の溶媒中で進行させることができるものであれば、特に限定されるものではなく、撹拌機を付帯する反応槽やスクリュー式ニーダーなどを適宜採用することができる。
シラン類を製造する上記反応は、通常、常圧下または加圧下で行うが、減圧下でも行い得る。反応温度は−60℃から100℃、好ましくは−40℃から50℃である。さらには、シラン類の収率の面では低温ほど好ましいため、アンモニアが液化する温度以下であることが望ましい。アンモニアの沸騰下で反応を実施した場合には、生ずる反応熱を溶媒の気化熱として除去できるので、気化した溶媒を凝縮器で凝縮し還流させることにより反応温度の制御が容易となる。また、発生するアンモニアは、適宜、液化させて溶媒として再利用することもできる。反応時間は、十分にケイ化マグネシウムが反応すれば特に制限されるものではなく、従来公知の条件によって実施される。
ケイ化マグネシウムを含む合金粉体とハロゲン化アンモニウムとの使用割合は、本来、ケイ化マグネシウムとハロゲン化アンモニウムとのモル比が反応モル当量となるように設定した上でシラン類の生成反応を行うことが経済上好ましいが、実際の運転条件にあわせて適宜設定される。具体的には、ケイ化マグネシウム:ハロゲン化アンモニウムのモル比は、好ましくは1:3.0〜6.0、より好ましくは1:3.5〜5である。
生成したシラン類は、通常、不活性ガス中でアンモニア凝縮器にて、アンモニアを吸着除去、蒸留分離、酸中和による除去などにより分離後、蒸留することによって、モノシランとジシランを主成分とするシラン類の混合物を得て、該混合物を蒸留分離、吸着分離、再結晶法による分離などによって分離し、回収することができる。なお、分離したアンモニアは、溶媒として再利用することもできる。
上記の分離、回収方法によって生成したシラン類を容器に捕集し、その収量からシラン類の収率を算出することができる。ケイ化マグネシウムの生成は、焼成後の合金粉体の一部をサンプリングして、粉末X線回折測定装置により確認することもできる。あるいは、未反応のマグネシウム粉体の量から合金化率を計算することもできる。
以下、実施例および比較例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
[試験方法]
(1)シラン類の収率
捕集・精製(蒸留等)して得られたシラン類を容器に充填し、その重量から投入した原料ケイ素量に対する収率として算出した。
(2)合金化率
焼成後の混合物の一部から未反応のマグネシウム粉体をふるい分けしてその重量を測定し、その値からマグネシウムの転化量を求め、当該マグネシウムがMg2Siに転化したと仮定してケイ素転化量(WSi-a)を求めた。更に、原料ケイ素量(WSi-b)との比から、合金化率を算出した。
(合金化率/% = 100*((WSi-a)/(WSi-b))
なお、上記の原料ケイ素量は、使用したケイ素粉末の純度が100%と仮定して算出した。
[実施例1]
(原料混合物の作製および供給)
ケイ素粉体(元通社製、平均粒径20〜30μm、純度98.5wt%以上)200kg、マグネシウム粉体(日本サーモケミカル社製、純度99.90%、粒度20〜50メッシュ)350kgからなる金属粉体の原料混合物を混合機に入れて、窒素雰囲気中で十分に撹拌した。その後、この原料混合物をホッパーに移送し、アルゴン雰囲気下、ロータリーバルブを用いて供給速度を50kg/hに調節して連続的に焼成炉に供給した。そして、この混合物を以下の工程で焼成した。なお、焼成炉として、2工程に分割され個別に温度制御できる連続焼成炉を用いた。
(ケイ化マグネシウムを含む合金粉体の製造)
焼成炉にアルゴンガスを200NL/minで流通させつつ、該焼成炉をゆっくり回転させて焼成炉中の移動を制御しつつ、焼成炉の温度分布をも制御しながら前記金属粉体の原料混合物を撹拌しながら第一焼成工程を行った。
工程(I−1)における原料混合物の温度の昇温速度(A)を5℃/分に制御し、480℃付近に達した時点から焼成炉の加熱部を制御して昇温速度を徐々に低下させた。この混合物の温度が510℃(第一焼成温度)となった時点で、昇温速度が2.5℃/分未満となった。その後、510℃から530℃の範囲で昇温速度が2.5℃/分未満となるように保持して、更に30分焼成した(第一焼成工程)。その後、連続的に次の工程に搬送し、引き続き550℃で3時間焼成した(第二焼成工程)。
(シラン類の製造)
得られたケイ化マグネシウムを含む合金粉体を50℃以下まで冷却した後、ホッパーに移送して貯蔵した。容量700Lのブレンダー型の反応器を約−33℃に冷却しつつ35rpmで回転させた状態とし、該反応器に液体アンモニアを500kg/hの速度で供給した後、ホッパーに貯蔵しているケイ化マグネシウムを含む合金粉体を、不活性ガス雰囲気でロータリーバルブを用いて、50kg/hの速度で上記反応器に供給した。
一方で、不活性ガス雰囲気で貯蔵していた塩化アンモニウムを、反応容器中のケイ化マグネシウムを含む合金粉体中のケイ素のモル量に対して、4.5倍のモル量になるように反応容器に導入し、シラン類の生成反応を行なった。
生成したシラン類を含むガスは、蒸留によりモノシラン(SiH4)とジシラン(Si26)に分離して捕集した。捕集した重量からシラン類の生成量を定量し、投入したケイ素粉体に対する収率として算出した。また、未反応のマグネシウム粉体を回収し、合金化率を算出した。
[実施例2]
実施例1で、第二焼成工程を行わなかった以外は実施例1と同様にシラン類の製造等を行った。
[実施例3]
実施例1の工程(I−1)における昇温速度を2.5℃/分に変更し、520℃で昇温速度を低下させる、即ち、第一焼成温度を520℃にした以外は実施例1と同様にシラン類の製造等を行った。
[実施例4]
実施例1の工程(I−1)における昇温速度を30℃/分に変更したことと、第一焼成温度を510℃にしたこと以外は実施例1と同様にシラン類の製造等を行った。
[実施例5]
実施例1で、ケイ素粉体(元通社製、平均粒径20〜30μm、純度98.5wt%以上)200kg、マグネシウム粉体(日本サーモケミカル社製、純度99.90%、粒度20〜50メッシュ)350kg及び鉛粉体(和光純薬社製、粒度200メッシュ以下)30kgからなる金属粉体を原料混合物として用いた以外は実施例1と同様にシラン類の製造等を行った。
[実施例6]
実施例1で、ケイ素粉体(元通社製、平均粒径20〜30μm、純度98.5wt%以上)200kg、マグネシウム粉体(日本サーモケミカル社製、純度99.90%、粒度20〜50メッシュ)350kg及びスズ粉体(和光純薬社製、粒度200メッシュ以下)17kgからなる金属粉体を原料混合物として用いた以外は実施例1と同様にシラン類の製造等を行った。
[実施例7]
実施例1で、ケイ素粉体(元通社製、平均粒径20〜30μm、純度98.5wt%以上)200kg、マグネシウム粉体(日本サーモケミカル社製、純度99.90%、粒度20〜50メッシュ)350kg及びアルミニウム粉体(純正化学社製、粒度250メッシュ以下)4kgからなる金属粉体を原料混合物として用いた以外は実施例1と同様にシラン類の製造等を行った。
[実施例8]
実施例1で、ケイ素粉体(元通社製、平均粒径20〜30μm、純度98.5wt%以上)200kg、マグネシウム粉体(日本サーモケミカル社製、純度99.90%、粒度20〜50メッシュ)348kg及びビスマス粉体(添川理化学社製、粒度200メッシュ以下)30kgからなる金属粉体を原料混合物として用いた以外は実施例1と同様にシラン類の製造等を行った。
[実施例9]
実施例1で、ケイ素粉体(元通社製、平均粒径20〜30μm、純度98.5wt%以上)200kg、マグネシウム粉体(日本サーモケミカル社製、純度99.90%、粒度20〜50メッシュ)350kg及び銅粉体(純正化学社製、粒度200メッシュ以下)27kgからなる金属粉体を原料混合物として用いた以外は実施例1と同様にシラン類の製造等を行った。
[比較例1]
実施例1の工程(I−1)における昇温速度を60℃/分に変更し、第一焼成温度に相当する温度を510℃に設定した以外は実施例1と同様にケイ化マグネシウムを含む合金粉体製造のための焼成を行った。その結果、焼成温度は530℃以下で安定化せず、温度はオーバーシュートしてしまい、原料混合物は焼成炉内で溶融固結し、連続運転が不可能となった。
[比較例2]
実施例1における工程(I−1)における第一焼成温度に相当する温度を450℃に設定し、その後、450℃から470℃の範囲で30分焼成を行い(第一焼成工程に相当する工程)、第二焼成工程を行わなかった以外は実施例1と同様にケイ化マグネシウム合金粉体の製造、シラン類の製造等を行った。その結果、実施例1と比較して合金化率およびシランの収率は、ともに低下した。
[比較例3]
実施例1における工程(I−1)における第一焼成温度に相当する温度を450℃に設定し、その後、450℃から470℃の範囲で30分焼成(第一焼成工程に相当する工程)した以外は、実施例1と同様にケイ化マグネシウムを含む合金粉体製造のための焼成を行った。その結果、第二焼成工程の段階で焼成中の混合物が焼成炉内で溶融固結し、連続運転が不可能となった。
[比較例4]
実施例1における工程(I−1)の第一焼成温度に相当する温度として550℃に設定した以外は実施例1と同様にケイ化マグネシウム合金粉体製造のための焼成を行った。その結果、原料混合物は焼成炉内で溶融固結し、連続運転が不可能となった。
[比較例5]
実施例1で、第一焼成温度を510℃に設定し、その後510℃から530℃の範囲で6分焼成し(第一焼成工程に相当する工程)、第二焼成工程を行わなかった以外は実施例1と同様にケイ化マグネシウムを含む合金粉体の製造、シラン類の製造等を行った。その結果、実施例1と比較して合金化率、シラン類の収率は、ともに低下した。
上記実施例1〜9および比較例1〜5の結果等を下記表1に示す。
Figure 0006033176
以上、本発明を実施の形態、及び実施例に基いて説明してきたが、本発明はこれら実施例等に限定されず、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨を逸脱しない限り、設計変更等は許容される。

Claims (6)

  1. 不活性ガス雰囲気下、ケイ素粉体及びマグネシウム粉体を含む原料混合物を、連続的に焼成炉に供給して該原料混合物を連続的に昇温する工程(I−1)、次いで昇温した原料混合物を特定の温度範囲に制御する工程(I−2)(なお、工程(I−1)と工程(I−2)とをあわせて、第一焼成工程という)、及び、第一焼成工程を経た得られたケイ化マグネシウムを含む合金粉体と酸とを溶媒中にて反応させてシラン類を製造する工程(II)を含み、
    前記工程(I−1)が、ケイ素粉体およびマグネシウム粉体を含む原料混合物の温度を、2.5〜30℃/分の昇温速度で480〜520℃の温度範囲にある第一焼成温度に到達させる工程であり、(但し、第一焼成温度とは、480〜520℃の温度範囲で昇温速度が2.5℃/分未満になった温度のことをいう)、
    前記工程(I−2)が、昇温した原料混合物を2.5℃/分未満の昇温速度で480〜530℃の温度範囲とした後30分間以上維持させることを特徴とするシラン類の製造方法。
  2. 前記工程(I−2)に次いで、前記第一焼成工程を経て得られた第一焼成混合物の温度を、500〜900℃の範囲で維持する工程(第二焼成工程)を少なくとも含むことを特徴とする請求項1に記載のシラン類の製造方法。
  3. 原料混合物中に含まれるケイ素粉体の平均粒径が5〜200μmであることを特徴とする、請求項1又は2に記載のシラン類の製造方法。
  4. 原料混合物として、さらに周期表第3〜16族から選ばれる少なくとも1種の金属元素(ただし、ケイ素を除く)が、ケイ素100原子%に対して、0.5〜30原子%含む混合物を用いることを特徴とする、請求項1〜3いずれか一項に記載のシラン類の製造方法。
  5. 前記工程(II)が、ケイ化マグネシウムを含む合金粉体と酸とをアンモニア中で反応させることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のシラン類の製造方法。
  6. 前記酸がハロゲン化アンモニウム塩である、請求項5に記載のシラン類の製造方法。
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