以下、本発明を実施するための形態を、図面を参照しながら詳細に説明する。
[第1実施形態]
図1は、本発明の第1実施形態に係るロボットハンドに適用される力検出センサの概略構成を示す分解斜視図である。図2は、力検出センサの説明図であり、図2(a)は、力検出センサの斜視図、図2(b)は、図2(a)に示す平面Pに沿う力検出センサの断面図である。図1に示す接触力検出センサである力検出センサ1は、感圧素子2、フレーム6及び接触体7を備えてモジュール化されている。
フレーム6は、剛性のある材質、即ち剛体からなる。フレーム6は、一対のフレーム半体61,62からなり、各フレーム半体61,62は、図1中x方向から見て略コ字形状に形成されている。これらフレーム半体61,62を図2(a)に示すように互いに接合することで、z方向に長い長穴状の開口部(第1開口部)、本実施形態では、第1貫通孔6aが形成されたフレーム6となる。この第1貫通孔6aは、フレーム6の中心をx方向(貫通方向)に貫通するように直方体形状に形成され、接触体7が挿入される。第1貫通孔6aは内部の向かい合う壁面が平行になっている。なお、本実施形態では、フレーム6は、第1貫通孔6aを通る平面で2つに分割されてなる一対のフレーム半体61,62で構成されているが、削りだし等により一体形状で制作されていてもよい。
また、フレーム6には、図1に示すように、第1貫通孔6aと交差する第2開口部として、第1貫通孔6aと直交してy方向(x方向に直交する方向)に延びる第2貫通孔6bが形成されている。この第1貫通孔6aと第2貫通孔6bとは、互いに90度で交差している。第2貫通孔6bは、直方体形状の貫通孔である。
接触体7は、剛性のある材質、即ち剛体からなる。接触体7は、平板状、具体的には直方体形状に形成されており、x方向及びy方向に直交するz方向(長穴となる第1貫通孔6aの長手方向)に延びて形成されると共に、x方向(第1貫通孔6a貫通方向、即ち、接触体7の挿入方向)に延びて形成される。詳述すると、接触体7は、x方向には、接触体7の一部が第1貫通孔6aから突出する長さに、本実施形態では、図2(b)に示すように、接触体7の両端部7a,7bが第1貫通孔6aから突出する長さに形成されている。接触体7の突出量は、1mm程度であることが好ましい。
また、接触体7は、z方向及びy方向には、接触体7の外表面が第1貫通孔6aの壁面に接触する長さに形成されている。即ち、接触体7は、接触体7が第1貫通孔6aに沿ってx軸の正方向にも負方向にも移動可能なように、第1貫通孔6aよりもわずかに小さく作られている。これにより、接触体7は、第1貫通孔6aの壁面に案内されてx方向にスライドすることが可能となっている。
また、接触体7には、図1に示すように、その平板面を貫通するように第3貫通孔7cが形成されている。具体的には、第3貫通孔7cは、接触体7の平板面をy方向に貫通するように形成されている。第3貫通孔7cは、直方体形状の貫通孔である。
第2貫通孔6bと第3貫通孔7cとは互いに連通する位置に、同一の断面形状で同一面積に形成されており、第2及び第3貫通孔6b,7cには、感圧素子2が挿通される。第2貫通孔6bと第3貫通孔7cとのxz方向の長さは、同一の長さに設定されている。
感圧素子2は、直方体形状に形成されている。感圧素子2は、感圧体としての平板状の感圧導電性ゴム3と、感圧導電性ゴム3の両平面に接触して固定され、感圧導電性ゴム3を挟み込む一対の電極4,4と、電極4,4を挟み込むように電極4,4に固定された一対の保護部材5,5とを有している。なお、必ずしも感圧導電性ゴムを挟み込むように2つの電極を配置する必要はなく、感圧導電性ゴムの片面に2つの電極を設置してもよい。
感圧導電性ゴム3は、絶縁体であるゴム素材中に炭素や金属などの導電性粒子を均一に練りこんだものであり、圧縮変形によって導電性粒子の密度が上がることにより電気抵抗値が低下するものである。この電気抵抗値の変化を電圧信号として検出することで、接触体7の押圧力、即ち物体の接触力を検出することが可能である。
一対の電極4,4は、感圧導電性ゴム3の電気抵抗値の変化を検出するために設けられている。一対の保護部材5,5は、接触体7によって感圧導電性ゴム3に働くせん断力から感圧導電性ゴム3を保護するためである。なお、本実施形態では感圧体として感圧導電性ゴム3を用いたが、歪ゲージを装着した弾性部材を用いてもよい。
感圧素子2のxz方向の長さは、フレーム6の第2貫通孔6bおよび接触体7の第3貫通孔7cと同じであるか、接触体7のフレーム6からの突出量を超えない範囲で、それよりも小さくてよい。
感圧素子2は、第2貫通孔6b及び第3貫通孔7cに挿通されることで、接触体7の平板面を貫通し、第1貫通孔6aを横断することになる。そして、感圧素子2の両端部が第2貫通孔6bに固定されることで、フレーム6に支持されている。感圧素子2の中央部は、貫通孔7cで接触体7に接触する。なお、本実施形態では、第2貫通孔6bをフレーム6に形成したが、感圧素子2をフレーム6に支持させることができればよく、貫通孔6bの代わりに、第1貫通孔6aを横断する凹み穴であってもよい。また、フレーム6の内部に第1貫通孔6aを横断し、感圧素子2を収容可能な収容室を形成してもよい。
本実施形態では、接触体7はフレーム6に対して直接固定されていないため、第1貫通孔6aに沿ってx方向にスライド移動可能であるが、接触体7の貫通孔7cには感圧素子2が貫通するように配置されるために実際には接触体7の移動は制限される。つまり、接触体7は、感圧素子2の変形量、即ち感圧導電性ゴム3の圧縮量の分、x方向に移動できるようになっている。なお、接触体7は、第1貫通孔6aの壁面に接触することでyz方向の移動が規制されている。
接触体7は、そのx方向の端部が第1貫通孔6aから突出する突出部分7a,7bであるので、この突出部分7a,7bに物体が接触することにより接触力が作用し、この接触力でx方向に第1貫通孔6aに沿ってスライドするようになっている。
感圧素子2には、物体の接触によりスライドする接触体7により押圧されて押圧力が作用する。感圧素子2は、この押圧力を示す信号、本実施形態では電圧信号を、押圧力(即ち接触力)の検出結果として出力する。
なお、接触体7のz方向長さはフレーム6の強度が落ちない範囲で可能な限り大きくとることが望ましい。そのため、本実施形態では、第1貫通孔6aを長穴形状とし、接触体7を長穴の長手方向に延びるよう形成している。これにより、力検出センサ1の広い範囲で接触力検出が可能となる。
感圧素子2の向きは、図2(a)に示すように、感圧導電性ゴム3、電極4、保護部材5がx方向(接触体7のスライド方向、即ち接触体7の押圧力が作用する方向)に積層される向きとするのが好ましい。これは接触体7の押圧力に対する感圧導電性ゴム3の感度が最も良い方向のためである。
図3は、ロボットハンドを備えたロボット装置としての組立ロボットの説明図である。図3(a)は組立ロボットの模式図であり、図3(b)は組立ロボットのロボットハンドを側方から見た模式図であり、図3(c)はロボットハンドを下方から見た模式図である。
図3(a)に示すように、ロボット装置としての組立ロボット10は、多軸のロボットアーム11と、ロボットアーム11の先端に設けられたロボットハンド12と、を備えている。
ロボットハンド12は、図3(b)及び図3(c)に示すように、ハンド本体12Aと、複数のフィンガ、本実施形態では、3つのフィンガ20,20,20と、を備えている。ロボットハンド12、即ちハンド本体12Aがロボットアーム11の先端に取り付けられている。これら3つのフィンガ20,20,20のうち少なくとも1つのフィンガ、本実施形態では、全てのフィンガ20,20,20に、力検出センサ1が設けられている。ここで、本実施形態では、力検出センサ1のフレーム6がフィンガ本体と一体に形成されている。
3つのフィンガ20,20,20は、図3(c)に示すように、円周方向に間隔をあけて(本実施形態では等間隔に)ハンド本体12Aに配置されており、ハンド本体12Aの中心から半径方向に延びるフィンガ支持用シャフト21によってそれぞれ支持されている。各フィンガ20の力検出センサ1は、その接触体7の突出方向が半径方向と平行となるように配置されている。本実施形態では、一方の突出部分7aが内側、他方の突出部分7bが外側に向くように配置されている。そして、駆動モータ22の駆動によって3つのフィンガ20が同時にシャフト21に沿ってハンド本体12Aの半径方向に移動するように構成されている。駆動モータ22はモータドライバ23によって駆動される。力検出センサ1からの信号(電圧信号)は検出部24によって検出される。この検出部24にて検出された信号は、アナログ/デジタル変換され、制御部25に送られる。制御部25は、得られた信号を基にモータドライバ23を制御し、力検出センサ1の接触体7が物体から受ける接触力、つまり3つのフィンガ20により物体を把持する把持力を調整する。本実施形態では、これら力検出センサ1と検出部24とにより力検出装置30が構成されている。
検出部24について詳細に説明する。図4は、検出部24の概略構成を示す説明図である。検出部24は、直流電源31と、感圧素子2(より詳細には感圧導電性ゴム3)に直列接続された抵抗器32と、抵抗器32の端子間電圧を検出する不図示の電圧検出器33と、を有している。直流電源31は、感圧素子2と抵抗器32との直列回路に直流電圧を印加する。電圧検出器33は、感圧素子2の感圧導電性ゴム3の電気抵抗値の変化を、抵抗器32の端子間電圧の電圧信号として検出する。そして、電圧検出器33は、電圧信号をA/D変換して制御部25(図3(a)参照)に出力する。なお、抵抗器32の端子間電圧を検出する代わりに、感圧素子2の電極4,4間の電圧を検出するようにしてもよい。いずれにしても、感圧導電性ゴム3の電気抵抗値の変化を、電圧信号として取得することができる。また、検出部24の構成はこれに限らず、感圧導電性ゴム3の電気抵抗値の変化を信号として取得することができればいかなる構成であってもよい。
本実施形態では、ロボットアーム11の先端のロボットハンド12において、力検出センサ1をフィンガ20に一体的に組み込んだものとして用いているが、フィンガ20の一部に力検出センサ1を取り付けたものでもよい。また、ロボットハンド12のフィンガ20は3本としたが、2本以上であれば何本でも構わない。また、力検出センサ1を具備したフィンガ20は最低1本存在すればよい。さらに、各フィンガ20は各々独立して動作するようにしてもよい。
本実施形態では、物体としての把持対象物(以下、「ワーク」という)をフィンガ20,20,20の閉動作によってワークの外周にフィンガ20,20,20を接触させて把持する「外把持」を可能としている。また、ワークが環状のものであって、ワークの内側にフィンガ20,20,20を挿入し、開動作によってフィンガ20,20,20をワークの内周に接触させて把持する「内把持」を可能としている。したがって、本実施形態では、力検出センサ1の接触体7の両突出部分7a,7bを半径方向に平行となるように力検出センサ1を配置している。これにより、1つの力検出センサ1で、ワークの内把持及び外把持の際のワークの接触力、つまりワークの把持力を検出することが可能となる。したがって、内把持用と外把持用に別個にセンサを搭載する場合と比較して、センサ数を削減することが可能となり、コストダウンを図ることができると共に、キャリブレーションの時間を短縮することができる。
図5は、ワークW1の外周をフィンガ20の先端部で把持している場合の力検出センサ1の動作を説明するための図である。図5(a)はワークW1の外周をフィンガ20の先端部で把持している場合のロボットハンド12を側方から見た模式図である。フィンガ20の先端部でワークW1を把持すると、接触体7の突出部分7aに接触力が作用し、接触力により接触体7に感圧素子2を中心とした回転モーメントが発生する。しかし、フレーム6がそのモーメントを受け止めるため、実際には接触体7は回転せず、平行移動、即ちスライドするのみである。その結果、感圧素子2の感圧導電性ゴム3には、接触体7の第3貫通孔7cにより押圧されてワークW1の接触力と同等の押圧力が作用する。すなわち、接触体7が突出している突出部分7aであればどこでワークW1を把持しても、接触体7とフレーム6による作用で接触力と同等の力が感圧導電性ゴム3に加わる構造となっている。
図5(b)はワークW1の外周をフィンガ20の先端部で把持している場合のロボットハンド12を下方から見た模式図である。図5(c)は、図5(b)の点線部分を拡大した模式図である。ここで、フィンガ20から突出している接触体7の2つの突出部分7a,7bのうちロボットハンド12の中心方向(半径方向内側)を向いた突出部分7aにワークW1の外周が接触して接触力F1が加わると、接触体7がフレーム6に対してスライドする。その結果、感圧素子2の感圧導電性ゴム3には保護部材5を介して接触力F1が伝達され、フレーム6からは反力F2,F3が作用する。すなわち、接触体7とフレーム6および保護部材5によって感圧導電性ゴム3には圧縮力が働く。感圧導電性ゴム3が圧縮されると、感圧導電性ゴム3の電気抵抗値は減少するので、この電気抵抗値の減少により、検出結果として検出部24の電圧検出器33に出力される電圧信号が感圧導電性ゴム3の電気抵抗値に応じて変化する。つまり、力検出センサ1からは、ワークW1の接触力F1の検出結果である電圧信号が出力される。
図6は、ワークW2の内周をフィンガ20の根元部で把持している場合の力検出センサ1の動作を説明するための図である。図6(a)は、ワークW2の内周をフィンガ20の根元部で把持している場合のロボットハンド12を側方から見た模式図である。フィンガ20の根元部でワークW2を把持すると、先端での把持する時と同様に接触力により接触体7に感圧素子2を中心とした回転モーメントが発生する。しかし、フレーム6がそのモーメントを受けとめるため、実際には接触体7は回転せず、平行移動、即ちスライドするのみである。その結果、感圧素子2の感圧導電性ゴム3には、接触体7の第3貫通孔7cにより押圧されてワークW2の接触力と同等の押圧力が作用する。すなわち、接触体7が突出している突出部分7bであればどこでワークW2を把持しても、接触体7とフレーム6による作用で接触力と同等の力が感圧導電性ゴム3に加わる構造となっている。
図6(b)はワークW2の内周をフィンガ20の根元部で把持している場合のロボットハンド12を下方から見た模式図である。図6(c)は、図6(b)の点線部分を拡大した模式図である。ここで、フィンガ20から突出している接触体7の2つの突出部分7a,7bのうちロボットハンド12の半径方向外側を向いた突出部分7bにワークW2の内周が接触して接触力F4が加わると、接触体7がフレーム6に対してスライドする。その結果、感圧素子2の感圧導電性ゴム3には保護部材5を介して接触力F4が伝達され、フレーム6からは反力F5,F6が作用する。すなわち、接触体7とフレーム6および保護部材5によって感圧導電性ゴム3には圧縮力が働く。感圧導電性ゴム3が圧縮されると、感圧導電性ゴム3の電気抵抗値は減少するので、この電気抵抗値の減少により、検出結果として検出部24に出力される電圧信号が感圧導電性ゴム3の電気抵抗値に応じて変化する。つまり、力検出センサ1からは、ワークW2の接触力F4の検出結果である電圧信号が出力される。
以上、本実施形態によれば、接触体7の突出部分7a又は突出部分7bのいずれの箇所に物体が接触しても、接触体7は物体の接触力に対応する移動量で第1貫通孔6aに案内されて挿入方向、即ちロボットハンド12の半径方向にスライドする。したがって、接触体7の突出部分7a又は突出部分7bのいずれの箇所に物体が接触しても、感圧素子2が接触体7から受ける押圧力は、接触位置にかかわらずほとんど同じである。これにより、接触位置の違いに起因する、感圧素子2が受ける押圧力のばらつきは小さくなる。感圧素子2は、物体の接触力として接触体7の押圧力を検出しているので、物体の接触力を正確に検出することができる。そして、感圧素子2は、検出結果を電圧信号(アナログ信号)として検出部24(詳細には電圧検出器33)に出力する。検出部24の電圧検出器33は電圧信号(デジタル信号)を制御部25に送信するので、制御部25は、正確な物体の接触力(つまり、把持力)を把握することができる。
[第2実施形態]
次に、本発明の第2実施形態に係る力検出センサについて説明する。上記第1実施形態の構成にて内側、外側のどちら側からのワークの接触も検出可能であるが、本第2実施形態では、更に回転モーメントの影響を除した構成としたものである。図7は、本発明の第2実施形態に係る力検出センサの概略構成を示す分解斜視図である。なお、本第2実施形態の力検出センサ101は、上記第1実施形態と同様、ロボットアームの先端に設けられたロボットハンドのフィンガに設けられる。接触力検出センサである力検出センサ101は、感圧素子102、フレーム106及び接触体107を備えてモジュール化されている。
フレーム106は、剛性のある材質、即ち剛体からなる。フレーム106は、一対のフレーム半体161,162からなり、各フレーム半体161,162は、図4中x方向から見て略コ字形状に形成されている。これらフレーム半体161,162を互いに接合することで、z方向に長い長穴状の開口部(第1開口部)、本実施形態では、第1貫通孔106aが形成されたフレーム106となる。この第1貫通孔106aは、フレーム106の中心をx方向(貫通方向)に貫通するように直方体形状に形成され、接触体107が挿入される。第1貫通孔106aは内部の向かい合う壁面が平行になっている。なお、本実施形態では、フレーム106は、第1貫通孔106aを通る平面で2つに分割されてなる一対のフレーム半体161,162で構成されているが、削りだし等により一体形状で制作されていてもよい。
また、フレーム106には、第1貫通孔106aと交差する第2開口部として、第1貫通孔106aと直交してy方向に延びる第2貫通孔106bが形成されている。この第1貫通孔106aと第2貫通孔106bとは、互いに90度で交差している。
接触体107は、剛性のある材質、即ち剛体からなる。接触体107は、板状に形成されている。接触体107は、x方向には、接触体107の一部が第1貫通孔106aから突出する長さに、本実施形態では、接触体107の両端部107a,107bが第1貫通孔106aから突出する長さに形成されている。
また、接触体107には、その平板面を貫通するように第3貫通孔107cが形成されている。具体的には、第3貫通孔107cは、接触体107の平板面をy方向に貫通するように形成されている。第3貫通孔107cは、円柱形状の貫通孔である。
第2貫通孔106bと第3貫通孔107cとは互いに連通する位置に形成されており、第2及び第3貫通孔106b,107cには、感圧素子102が挿通される。
感圧素子102は、感圧体としての平板状の感圧導電性ゴム103と、感圧導電性ゴム103の両平面に接触して固定され、感圧導電性ゴム103を挟み込む一対の平板状の電極104,104と、を有している。更に、感圧素子102は、電極104,104を挟み込むように電極104,104に固定された一対の保護部材105,105を有している。保護部材105は、外周が断面円弧形状に形成されており、接触体107の第3貫通孔107cの壁面に面接触する。感圧導電性ゴム103及び電極104は、接触体107の第3貫通孔107cの壁面に非接触状態である。なお、必ずしも感圧導電性ゴムを挟み込むように2つの電極を配置する必要はなく、感圧導電性ゴムの片面に2つの電極を設置してもよい。
感圧導電性ゴム103は、絶縁体であるゴム素材中に炭素や金属などの導電性粒子を均一に練りこんだものであり、圧縮変形によって導電性粒子の密度が上がることにより電気抵抗値が低下するものである。この電気抵抗値の変化を電圧信号として検出することで、接触体7の押圧力、即ち物体の接触力を検出することが可能である。
一対の電極104,104は、感圧導電性ゴム103の電気抵抗値の変化を検出するために設けられている。一対の保護部材105,105は、接触体107によって感圧導電性ゴム103に働くせん断力から感圧導電性ゴム103を保護するためである。なお、本実施形態では感圧体として感圧導電性ゴム103を用いたが、歪ゲージを装着した弾性部材を用いてもよい。
感圧素子102は、第2貫通孔106b及び第3貫通孔107cに挿通されることで、接触体107の平板面を貫通し、第1貫通孔106aを横断することになる。そして、感圧素子102の両端部が第2貫通孔106bに固定されることで、フレーム106に支持されている。感圧素子102の中央部は、貫通孔107cで接触体107に接触する。なお、本実施形態では、第2貫通孔106bをフレーム106に形成したが、感圧素子102をフレーム106に支持させることができればよく、貫通孔106bの代わりに、第1貫通孔106aを横断する凹み穴であってもよい。また、フレーム106の内部に第1貫通孔106aを横断し、感圧素子102を収容可能な収容室を形成してもよい。
本実施形態では、接触体107はフレーム106に対して直接固定されておらず、感圧素子102に支持されている。このため、第1貫通孔106aに沿ってx方向にスライド移動可能であるが、接触体107の貫通孔107cには感圧素子102が貫通するように配置されるために実際には接触体107の移動は制限される。つまり、接触体107は、感圧素子102の変形量、即ち感圧導電性ゴム103の圧縮量の分、x方向に移動できるようになっている。なお、接触体107は、第1貫通孔106aの壁面に接触することでyz方向の移動が規制される。
接触体107は、そのx方向の端部が第1貫通孔106aから突出する突出部分107a,107bであるので、この突出部分107a,107bにおける端面であるワーク接触面107dに物体が接触することにより接触力が作用する。接触体107は、この接触力でx方向に第1貫通孔106aに沿ってスライドするようになっている。
感圧素子102には、物体の接触によりスライドする接触体107により押圧されて押圧力が作用する。感圧素子102は、この押圧力を示す信号、本実施形態では電圧信号を、押圧力(即ち接触力)の検出結果として出力する。
感圧素子102の向きは、感圧導電性ゴム103、電極104、保護部材105がx方向(接触体107のスライド方向、即ち接触体107の押圧力が作用する方向)に積層される向きとするのが好ましい。これは接触体107の押圧力に対する感圧導電性ゴム103の感度が最も良い方向のためである。
ここで、接触体107は、第1貫通孔106aの壁面に対して隙間をあけた状態で第1貫通孔106aに挿通されている。本第2実施形態では、接触体107の第3貫通孔107cを円柱形状(断面円形状)とし、保護部材105の断面形状の一部を円に沿った形状にすることにより、接触体107を感圧素子102のまわりに隙間の分、回転可能としている。これにより、ワークの接触による回転モーメント成分を逃がすようにして、接触力の検出精度を向上させることができる。
接触体107は、フレーム106の第1貫通孔106aの壁面に接触した時点で回転が規制され、接触力によって発生した回転モーメントは、フレーム106にて受けられる。よって、感圧素子102に回転モーメントは作用せず、上記第1実施形態と比較して接触力の検出精度が更に向上する。
接触体107のワーク接触面107dは、感圧素子102の直径よりも外側の部分において、接触体107が回転してフレーム106に接触すると、第1貫通孔106aの貫通方向(x方向)に垂直なzy平面に対し、平行となる部分を有する。つまり、接触体107は、フレーム106の第1貫通孔106aの壁面に接触して回転が規制されたときに、ワークが接触する部分が、挿入方向であるx方向に対して垂直な平面となるように形成されている。これは接触体107が回転した際のワーク把持の安定を考慮してのものである。接触体107は、第1貫通孔106aの壁面に接触して回転が規制された状態で、接触力によりx方向にスライドする。
ここで、接触体107は、回転した際にフレーム106の第1貫通孔106aの壁面に面接触可能に形成されている。具体的には、第1貫通孔106aの貫通方向(x方向)及び第2貫通孔106bの貫通方向(y方向)に対して直交するz方向に垂直な第1貫通孔106aの壁面に対向する側の接触体107の面107eが、接触体107が回転した際に面接触する。
接触体107が回転してフレーム106に接触する部分である面107eには潤滑部材が施されている。これは、摩擦力によるワーク接触力の誤差を小さくするためである。潤滑部材は、できるだけ摩擦係数の小さなものが望ましい。本実施形態では、例えばテフロン(登録商標)を用いている。
保護部材105の外周は、接触体107の開口部と同様の断面円形状をしており、接触体107が保護部材105の外周に沿って回転可能になっている。感圧素子102は、接触体107の回転によって方向が変わらないようにフレーム106に固定される。本実施形態では、貫通孔106bの断面形状を、感圧素子102の断面形状と同一形状、つまり円形から一部切り欠いた形状とすることにより感圧素子102の回転を防止している。
本実施形態の力検出センサ101の動作を図8に示す。図8(a)のように、センサ中央部での把持、もしくは接触体107のワーク接触面107dの長さよりも長い長円筒形状のワークW1を把持した場合は、接触体107は回転せず、ワークW1の接触力F11をそのまま感圧素子102に伝達する。
センサ中心部からxの距離で円環状のワークW1を内把持した場合を図8(b)に示す。センサ中心部からオフセットした位置でワークW1を把持した場合、接触体107にはワーク接触力F12によって回転モーメントが生じる。しかし接触体107は感圧素子102を中心としてy軸まわりに回転することでこのモーメント成分を受け流し、感圧素子102にそれを伝達しない。この時、感圧素子102で検出される力は、ワーク接触力F12から接触体107とフレーム106間に生じる摩擦力uNを引いたものとなる。この誤差分については後述する。
図8(c)は同様に円環状ワークW2をセンサ中心部からオフセットした位置で外把持した場合の動きを示す。接触体107が回転することでワーク接触力F15のモーメント成分を感圧素子102に伝達しないようになっている。
図9は、力検出センサ101における、ワーク接触力Fと、摩擦力uNの関係を示す図である。接触体107は、フレーム106によって回転が制限されると、ワークの接触力によってフレーム106の第1貫通孔106aに沿って押し込まれていく。
接触体107は、フレーム106に接触する部分がフレーム106の第1貫通孔106aと平行になるように角度がつけられている。これによって、接触体107の押し込みによる接触体回転角度θtの変化を防ぐ。
また、接触体107が回転しない程度の微小力の場合は、感圧素子102に接触力がそのまま印加される。
図9において、点tにおけるモーメントをMtとすると、
また、点tにおいてフレーム106を押す力をNとすると、
点tにおける摩擦力uNは、
フレーム106と接触体107との接触は、点t及び点sの2点なので、感圧素子2で検出される力Fsは、
で表される。この式から、摩擦力uNは、力検出センサ101の寸法a2,b2および接触体107上のセンサ中心位置からの距離x、接触力Fに依存する。センサ構造から、この接触は、点tと点sの2ヶ所で発生するので、実際の摩擦力はこの2倍となる。
図10は、力検出センサ101の寸法a2,b2およびセンサ中心位置からの距離xによって、合計摩擦力がどのように変化するかを示すグラフである。図11は、接触体107のセンサ中心位置からの距離(地点)xに対する合計摩擦力を示すグラフである。
図10のグラフから、合計摩擦力は潤滑部材にテフロン(登録商標)を使用した場合、a2=b2のとき、ワークの接触力に対し最大4%となる。b2を延長するほど摩擦力uNによる誤差は小さくなるが、同時にフレーム106の剛性に問題が出てくるため、力検出センサ101のb1,b2長さは、想定されるワークの長さに適し、かつ剛性が下がらない範囲でできる限り長く取ると良い。図11記載の寸法で作成した力検出センサ101の場合では、摩擦力uNによる誤差はグラフから元のワーク接触力Fに対して最大で0.8%となる。また、後述する接触力補正方法を用いることにより摩擦力による誤差は最大でワーク接触力の0.33%に抑えることが可能である。
次に接触力の補正について説明する。接触体107が回転せず、フレーム106に接触していない場合は、接触力がそのまま感圧素子102にて検出されていると判断し、補正処理を行わない。接触体107が回転し、フレーム106に接触した場合はモーメントによって摩擦力が発生していると判断し、補正処理を行う。すなわち、検出された接触力は、元の接触力から摩擦によって図11のオフセット分だけ減っているものとし、逆算にて元の接触力を求める。ここでオフセットは、xが感圧素子102の半径Rs以上かつ接触体107の長さb2以下である時に、その範囲で変化する摩擦力の中央値とする。xが感圧素子102の半径Rsより小さい場合は、接触体107は回転しないため、補正量は0となる。この補正方法では、ワークの接触位置xを検出する必要がない代わりにワーク接触力Fを高精度に補正することはできないが、補正しない場合と比較して誤差を低減できる。また、xが既知である場合はそれを基に図11から補正を行ってもよい。この補正処理においては、接触体107が回転してフレーム106に接触しているか否かを検出する必要があるため、接触体回転検出用センサ116をフレーム106に設置する必要がある。接触体回転検出用センサ116は、電気的接点を用いてもよいし、機械式のスイッチを用いてもよい。
なお、本発明は、以上説明した実施形態に限定されるものではなく、多くの変形が本発明の技術的思想内で当分野において通常の知識を有する者により可能である。
上記実施形態では、長穴状の開口部が貫通孔6a,106aである場合について説明したが、貫通していない凹み穴であってもよく、その場合には力検出センサは、「内把持」及び「外把持」のいずれか一方のみ、物体の接触力を検出することができる。