JP6031701B2 - 被覆蓄熱マイクロカプセルの製造方法、蓄熱材の製造方法、蓄熱機能付吸着材 - Google Patents
被覆蓄熱マイクロカプセルの製造方法、蓄熱材の製造方法、蓄熱機能付吸着材 Download PDFInfo
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Description
このような発熱・吸熱を抑制するために、温度変化に応じて潜熱の吸収及び放出を生じる相変化物質を外殻の内部に封入してなる蓄熱マイクロカプセルを含む蓄熱材と、吸着材とを当接させて使用する蓄熱機能付吸着材が開示されている(特許文献1〜5参照)。
前記蓄熱マイクロカプセルを含む分散液と親水性高分子化合物とを混合して前記蓄熱マイクロカプセルの外殻の表面に前記親水性高分子化合物の被膜が形成された被膜蓄熱マイクロカプセルを生成する第1被覆工程と、
前記被膜蓄熱マイクロカプセルを含む分散液とフェノール樹脂とを混合して混合分散液を生成し、前記混合分散液を噴霧乾燥して、前記被膜蓄熱マイクロカプセルの被膜の表面の少なくとも一部に前記フェノール樹脂が付着してなる被覆部が形成された被覆蓄熱マイクロカプセル粉体を製造する第2被覆工程と、を備える点にある。
次に、第2被覆工程では、第1被覆工程において生成された被膜蓄熱マイクロカプセルを含む分散液とフェノール樹脂とを混合して混合分散液を生成し、混合分散液を噴霧乾燥して、被膜蓄熱マイクロカプセルの被膜の表面の少なくとも一部にフェノール樹脂が付着してなる被覆部が形成された被覆蓄熱マイクロカプセル粉体を製造する。これにより、被膜蓄熱マイクロカプセルの被膜の表面の少なくとも一部に、優れた耐溶剤性及び耐水性を備えたフェノール樹脂を付着させた被覆蓄熱マイクロカプセル粉体を得ることができる。
即ち、蓄熱マイクロカプセルの外殻の表面に親水性高分子化合物の被膜が形成され、且つ、当該被膜の表面の少なくとも一部にフェノール樹脂が付着形成された被覆部を備えた被覆蓄熱マイクロカプセル粉体を得ることができる。
その後、例えば、図2に示すように、第2被覆工程において、カプセル分散液3bとフェノール樹脂6の水溶液とを混合して混合分散液3cとし、当該混合分散液3cを噴霧乾燥することにより、外殻2の表面に当該外殻2の表面の略全面を覆う親水性高分子化合物5からなる被膜及び当該被膜の表面の少なくとも一部にフェノール樹脂6が付着されてなる被覆部7を備えた複数の被覆蓄熱マイクロカプセル3Bからなる被覆蓄熱マイクロカプセル粉体4を得ることができる。この被覆蓄熱マイクロカプセル粉体4は、噴霧乾燥の際、当該被覆蓄熱マイクロカプセル3Bの被覆部7のフェノール樹脂6がバインダーとして機能することにより、複数の被覆蓄熱マイクロカプセル3B同士が凝集した集合体となり粉末状となっている。そして、この集合体の表面の全体或いは一部分には、親水性高分子化合物5及びフェノール樹脂6からなる被覆部7が存在する。即ち、複数の集合体同士の隣接間に被覆部7が存在することとなり、当該被覆部7によって集合体同士の隣接間に生じる隙間や空間が低減されている。
よって、被覆蓄熱マイクロカプセル粉体の表面に形成された被覆部により、優れた柔軟性、成膜性、ガスバリア性、耐溶剤性及び耐水性を兼ね備えることができ、特に、潜熱の吸収及び放出に伴う膨張・収縮に耐えることができる強度を備え、更には、有機溶剤が存在する条件下でも外殻の表面に有機溶剤が直接接触することを良好に防止でき相変化物質の漏出を良好に防止できる被覆蓄熱マイクロカプセルを安定的に製造することができる。
なお、当該比率が、15.0質量%を超えると、親水性高分子化合物が蓄熱マイクロカプセルの外殻の表面を厚く覆ってしまい、熱伝導率の低下や外殻の表面の過剰な硬化を招く虞があり、また、被覆蓄熱マイクロカプセル粉体の単位質量当たりの蓄熱量が減少する虞があり、一方で、0.5質量%未満となると、蓄熱マイクロカプセルの外殻の表面に十分な被膜を形成することが困難となり耐溶剤性及び耐水性が低下する虞がある。
また、フェノール樹脂水溶液の粘度は、比較的粘度の低い1mPa・s以上2000mPa・s以下の範囲内にあるので、その作用については不明であるが、後述する[テトラヒドロフラン(THF)浸漬試験]にて説明するように、フェノール樹脂を被膜蓄熱マイクロカプセルの被膜の表面に均一に被覆或いは分散させて付着させ易くなり、被覆蓄熱マイクロカプセル粉体のテトラヒドロフラン耐性(耐溶剤性)が向上するものと考えられる。
なお、粘度が2000mPa・sを超えると、第2被覆工程において、被膜蓄熱マイクロカプセルの被膜の表面に付着するフェノール樹脂の偏在が大きくなり過ぎる虞があり、また、噴霧ノズル(図示せず)の噴霧孔が閉塞される虞が高くなるため好ましくなく、同様の理由から、粘度が1200mPa・sを超えない方がより好ましく、1000mPa・sを超えない方が更に好ましい。
なお、当該混合比率が、3.0質量%を超えると、フェノール樹脂が被膜蓄熱マイクロカプセルの被膜の表面を厚く覆ってしまい、熱伝導率の低下や被膜の表面の過剰な硬化を招く虞があり、また、被覆蓄熱マイクロカプセル粉体の単位質量当たりの蓄熱量が減少する虞があり、一方で、0.1質量%未満となると、蓄熱マイクロカプセルの外殻の表面に十分な親水性高分子化合物及びフェノール樹脂からなる被覆部を形成することが困難となり耐溶剤性が低下する虞がある。
従って、被覆蓄熱マイクロカプセル粉体とフェノール樹脂を含む成型用バインダーとを混合する際の混合状態をスムーズ且つ良好なものとすることができる。
よって、被覆蓄熱マイクロカプセル粉体とフェノール樹脂を含む成型用バインダーとの混合を迅速且つ確実に行ってスムーズ且つ良好な混合状態を実現でき、また、造粒蓄熱材の成型・造粒を確実に行うことができる。
また、加熱温度を140℃以上とするのは、コート用バインダーの更なる重合反応を十分に進め未硬化部分を無くすためであり、一方、185℃以下とするのは、被覆蓄熱マイクロカプセルに封入された相変化物質が膨張し内圧が上昇して外殻が破壊されることによる、当該被覆蓄熱マイクロカプセルの熱分解を抑制するためである。同様の理由から、加熱温度を150℃以上180℃以下とすることがより好ましい。
より詳細には、蓄熱マイクロカプセル3を含むカプセル分散液3a(分散液の一例)と、親水性高分子化合物5とを混合し数時間から数日間静置して、蓄熱マイクロカプセル3の外殻2の表面に親水性高分子化合物5の被膜が形成された被膜蓄熱マイクロカプセル3Aを生成する第1被覆工程を備え、その後、親水性高分子化合物5の被膜が形成された被膜蓄熱マイクロカプセル3Aを含むカプセル分散液3bにフェノール樹脂6を混合して混合分散液3cを生成し、当該混合分散液3cを噴霧乾燥して、被膜蓄熱マイクロカプセル3Aの被膜の表面の少なくとも一部にフェノール樹脂6が付着してなる被覆部7が形成された被覆蓄熱マイクロカプセル粉体4を製造する第2被覆工程を備える被覆蓄熱マイクロカプセル粉体4の製造方法である。
まず、蓄熱マイクロカプセル3を含む被覆蓄熱マイクロカプセル粉体4の製造方法について説明する。
蓄熱マイクロカプセル3は、図1に示すように、温度変化に応じて潜熱の吸収および放出を生じる相変化物質1を高分子化合物からなる外殻2の内部に封入してなるマイクロカプセルにより構成される。
上記相変化物質1としては、相変化に伴って潜熱の吸収および放出を生じる化合物であれば、特に制限されないが、蓄熱機能付吸着材14の用途に対応して相変化を生じる温度(例えば融点、凝固点など)に応じて化合物を選択することができ、例えば、融点が−150℃〜100℃程度、キャニスター(図示せず)用として好ましくは、0℃〜60℃程度の有機化合物および無機化合物からなる。具体的に例示すると、テトラデカン、ペンタデカン、ヘキサデカン、ヘプタデカン、オクタデカン、ノナデカン、エイコサン、ヘンイコサン、ドコサンなどの直鎖の脂肪族炭化水素、天然ワックス、石油ワックス、LiNO3・3H2O、Na2SO4・10H2O、Na2HPO4・12H2Oなどの無機化合物の水和物、カプリン酸、ラウリン酸等の脂肪酸、炭素数が12〜15の高級アルコール、パルミチン酸メチル等のエステル化合物などを用いることができる。なお、相変化としては、固体−液体間等の相変化を例示することができる。
上記相変化物質1は、上記から選ばれる2種以上の化合物を併用してもよい。2種以上の相変化物質1を併用する場合、各相変化物質1の相変化を生じる温度の差が、0℃〜100℃程度、キャニスター用として好ましくは、0℃〜15℃となるような組み合わせが好ましい。
また、相変化物質1の過冷却現象を防止するために、必要に応じて相変化物質1の融点より高融点の化合物を添加して用いてもよい。
蓄熱マイクロカプセル3の外殻と相変化物質1との重量比(外殻:相変化物質)は、特に制限されないが、通常40:60〜5:95程度、好ましくは30:70〜10:90程度である。
蓄熱マイクロカプセル3の平均粒子径は、必要な蓄熱量、カプセル強度から適宜選択することができるが、所望の蓄熱性能を確保しつつ、蓄熱マイクロカプセル3の破壊を防止することができる、数μm〜数十μm程度の平均粒子径が好ましい。
また、フェノール樹脂6としては、フェノール樹脂6の水溶液を用いることが好ましく、この場合、フェノール樹脂6を、被膜蓄熱マイクロカプセル3Aの被膜の表面に均一に被覆或いは分散させて付着させることができ、また、被膜蓄熱マイクロカプセル3Aを含む分散液3bとの混合を容易にすることができる。フェノール樹脂6の水溶液としては、公知のフェノール樹脂水溶液を用いることができる。フェノール樹脂6の水溶液を用いる場合、その粘度は、1mPa・s以上2000mPa・s以下の範囲内、より好ましくは1mPa・s以上1200mPa・s以下、更に好ましくは1mPa・s以上1000mPa・s以下、更に好ましくは、1mPa・s以上10mPa・s以下の範囲内とする。粘度が2000mPa・sを超えると、後述する第2被覆工程において、被膜蓄熱マイクロカプセル3Aの被膜の表面に付着するフェノール樹脂6の偏在が大きくなり過ぎる虞があり、また、噴霧ノズル(図示せず)の噴霧孔が閉塞される虞が高くなるため好ましくなく、同様の理由から、粘度が1200mPa・sを超えない方がより好ましく、1000mPa・sを超えない方が更に好ましい。
この被覆蓄熱マイクロカプセル粉体4は、噴霧乾燥の際、当該被覆蓄熱マイクロカプセル3Bの被覆部7のフェノール樹脂6がバインダーとして機能することにより、複数の被覆蓄熱マイクロカプセル3B同士が凝集した集合体となり粉末状となっている。そして、この集合体の表面の全体或いは一部分には、親水性高分子化合物5及びフェノール樹脂6からなる被覆部7が存在する。即ち、複数の集合体同士の隣接間に被覆部7が存在することとなり、当該被覆部7によって集合体同士の隣接間に生じる隙間や空間が低減されている。
具体的には、図2に示すように、被覆蓄熱マイクロカプセル粉体4は、被覆部7を構成する親水性高分子化合物5及びフェノール樹脂6により全体或いは一部が被覆され、しかも、当該被覆部7のフェノール樹脂6により、隣接する被覆蓄熱マイクロカプセル3B同士が結合されて集合体を形成しているため、これら集合体同士の隣接間の隙間や空間は低減され比較的密に結合しており、仮に有機溶剤等が侵入しても被覆部7により阻まれて外殻2の表面に直接接触することは困難となっている。
よって、被覆蓄熱マイクロカプセル粉体4の表面に形成された被覆部7により、優れた柔軟性、成膜性、ガスバリア性、耐溶剤性及び耐水性を兼ね備えることができ、特に、潜熱の吸収及び放出に伴う膨張・収縮に耐えることができる強度を備え、更には、有機溶剤が存在する条件下でも外殻2の表面に有機溶剤が直接接触することを良好に防止でき相変化物質の漏出を良好に防止できる被覆蓄熱マイクロカプセル粉体4を安定的に製造することができる。
次に、被覆蓄熱マイクロカプセル粉体4とフェノール樹脂を含む成型用バインダー8とをさらに混合し、粒状に成型して、造粒蓄熱材9を生成する蓄熱材造粒工程と、フェノール樹脂を含むコート用バインダー10により造粒蓄熱材9の外周表面部位をコーティングして、コーティング層11が形成されたコーティング造粒蓄熱材12を生成するコーティング工程と、コーティング造粒蓄熱材12を加熱する加熱工程とを備えた造粒蓄熱材の製造方法について説明する。
蓄熱材造粒工程では、図3に示すように、被覆蓄熱マイクロカプセル粉体4に、比較的少量である所定量の成型用バインダー8としてのフェノール樹脂(必要に応じて、水等の溶媒も加え)を添加して、混合、混錬し、公知の押し出し成型機により、成型、成粒、乾燥(例えば、90℃程度)されて、粒状の造粒蓄熱材9が生成される。
ここで、詳細は後述するが、被覆部7を備えた被覆蓄熱マイクロカプセル粉体4とフェノール樹脂を含む成型用バインダー8とを混合する際、本発明では、被覆蓄熱マイクロカプセル3Aには、外殻2の表面の略全面に形成された親水性高分子化合物5からなる被膜に加えて、当該被膜の表面の少なくとも一部にフェノール樹脂6が付着されてなる被覆部7が既に形成されているので、被覆蓄熱マイクロカプセル粉体4と成型用バインダー8としてのフェノール樹脂との混合をスムーズ且つ良好に行うことができる。
このように、成型用バインダー8の添加量が比較的少量の造粒蓄熱材9は、図3の拡大図に示すように、複数の被覆蓄熱マイクロカプセル3B間の当接部位周りが成型用バインダー8により結合され、粒状に成型されている。
成型用バインダー8としては、第2被覆工程において混合されるフェノール樹脂6と同種類のフェノール樹脂であれば、バインダーとして機能する公知のフェノール樹脂を用いることができ、特に、フェノール樹脂水溶液が好ましい。なお、バインダーとして機能するその他の樹脂を更に添加することもできる。
なお、造粒蓄熱材9の形状は、特に制限されないが、ペレット(円柱状、球状)、ディスク、ブロック、ハニカム等の任意の形状に成型することができる。また、平均粒子径は、特に制限されないが、通常、0.1mm〜4mm程度、好ましくは0.3mm〜3.5mm程度、より好ましくは0.5mm〜3.0mm程度から選択することができる。
コーティング工程では、図4に示すように、公知のコーティング装置を用いて、粒状の造粒蓄熱材9の外周表面部位に比較的少ない量である所定量のコート用バインダー10としてのフェノール樹脂(必要に応じて、水等の溶媒も加え)をスプレーしてコーティングし、コーティング層11が形成されたコーティング造粒蓄熱材12が生成される。したがって、一旦、成型用バインダー8により造粒蓄熱材9の外形を形成しておき、この外形が確実に形成されてから、造粒蓄熱材9の外周表面部位にコーティング層11を形成することができ、当該外周表面部位を完全に覆うようにコーティング層11を形成したとしても、コート用バインダー10の量を比較的少なくすることができ、また、比較的簡便にコーティングすることができる。
上記比較的少ない量である所定量としては、造粒蓄熱材9に対し1〜10質量%のコート用バインダー10を混合することができ、1質量%よりも少ないと耐アルコール性、耐ガソリン性が低下し好ましくなく、10質量%よりも多いと成型用バインダー8及びコート用バインダー10に対する蓄熱マイクロカプセル量が相対的に低下して蓄熱量が低下し好ましくない。なお、この所定量は、同様の理由から、好ましくは1〜8質量%、より好ましくは2〜6質量%とするとよい。また、上記のように形成されたコーティング層11の膜厚は、0.5〜15μm程度であり、0.5μm未満になると耐アルコール等の耐溶剤性が低下し、15μmを超えると蓄熱量の低下が起こり好ましくない。同様の理由から、好ましくは1〜10μm、より好ましくは1〜8μm程度とするとよい。
コート用バインダー10としては、上記成型用バインダー8と同様に、第2被覆工程において混合されるフェノール樹脂6と同種類のフェノール樹脂であれば、バインダーとして機能する公知のフェノール樹脂を用いることができ、特に、フェノール樹脂水溶液が好ましい。なお、バインダーとして機能するその他の樹脂を更に添加することもできる。
加熱処理は、140℃以上185℃以下の温度範囲で行なうことができ、より好ましくは150℃以上180℃以下である。なお、この温度範囲は、蓄熱材造粒工程における温度(例えば、90℃〜120℃程度)よりも高い温度範囲である。ここで、加熱温度を140℃以上とするのは、コート用バインダー10の重合反応をさらに進め未硬化部分を無くすためであり、一方、185℃以下とするのは、被覆蓄熱マイクロカプセル粉体4を構成する被覆蓄熱マイクロカプセル3Bに封入された相変化物質1が膨張し内圧が上昇して外殻2が破壊されることによる、当該被覆蓄熱マイクロカプセル3Bの熱分解を抑制するためである。同様の理由から、加熱温度を150℃以上180℃以下とすることがより好ましい。
これにより、コーティング層11を構成するコート用バインダー10の重合度が低い場合などであっても、少なくとも当該コート用バインダー10の重合反応を促進し、コーティング層11に存在する微小な孔を塞いで、より緻密なコーティング層10を形成することができる。緻密なコーティング層11は、機械的強度が高いとともに、有機溶剤、特に、高い耐浸漬性を発揮し、被覆蓄熱マイクロカプセル粉体4を構成する被覆蓄熱マイクロカプセル3Bの外殻2の破壊を防止することができる。なお、この加熱処理では、コート用バインダー10の重合反応を促進するだけでなく、同時に成型用バインダー8、被覆部7を構成するフェノール樹脂6、更には、蓄熱マイクロカプセル3の外殻2を構成する高分子材料2の重合反応をも促進することができ、それぞれ、より緻密な構造とすることができる。
コーティング造粒蓄熱材12と吸着材13とを混合してなる蓄熱機能付吸着材14の製造方法について説明する。
吸着材13は、ガス等を吸着することができる公知の吸着材、キャニスターの場合にはガソリンなどの蒸散燃料を吸着することができる公知の吸着材を用いることができるが、例えば、活性炭、ゼオライト、シリカゲル、アルミナ、チタニア、有機金属錯体(フマル酸銅、テレフタル酸銅、シクロヘキサンジカルボン酸銅など)など、またはこれらの混合物を用いることができる。
吸着材13が吸着対象とするガス等としては、メタン、メタンを主成分とするガス(天然ガス、消化ガスなど)、エタン、プロパン、ジメチルエーテル、CO2、硫化水素、酸素、窒素、NOX、SOX、CO、アセチレン、エチレン、アンモニア、メタノール、エタノール、水、クロロホルム、アルデヒドなどが例示されるが、吸着材13がキャニスターのケース内に充填される場合には、蒸散燃料であるガソリン、特に、アルコール(エタノールなど)とガソリンとの混合物となる。
吸着材13は、活性炭等を破砕したものを用いてもよいし、破砕したものをバインダーと混合して粒状に成型した粒状の吸着材13として用いてもよい。このバインダーは、造粒蓄熱材9の場合と同様に成型用バインダー8を用いることができる。なお、粒状の吸着材13の大きさは、上記造粒蓄熱材9と同様の大きさ、形状に形成することができる。
蓄熱機能付吸着材14は、コーティング造粒蓄熱材12と吸着材13とを混合して構成されるが、混合の方法は特に制限されず、例えば、コーティング造粒蓄熱材12と粒状の吸着材13とを均一に混ぜ合わせるだけでもよい。また、図4に示すように、コーティング造粒蓄熱材12と粒状の吸着材13とを混ぜ合わせた上、バインダー15により一体化して成型した蓄熱機能付吸着材14としてもよい。このバインダー15は、公知のバインダーを用いることができるが、上記成型用バインダー8と同種類のバインダー(例えば、フェノール樹脂水溶液)を用いることが好ましい。この成型された蓄熱機能付吸着材14は、その形状に特に制限はなく、例えば、ペレット(円柱状、球状)、ディスク、ブロック、ハニカム等の任意の形状に成型することができる。平均粒子径は、特に制限されないが、通常、キャニスターに用いる場合には、0.5mm〜4mm程度、好ましくは0.5mm〜3.6mm程度、より好ましくは1mm〜3mm程度である。
(実施例1)
メラミン粉末5gに37%ホルムアルデヒド水溶液6.5gと水10gを加え、pHを8に調整した後、約70℃まで加熱しメラミン−ホルムアルデヒド初期縮合物水溶液を得た。pHを4.5に調整したスチレン無水マレイン酸共重合体のナトリウム塩水溶液100g中に、相変化物質1としてヘキサデカン80gを溶解した混合液を、上記メラミン−ホルムアルデヒド初期縮合物水溶液に激しく攪拌しながら添加して乳化を行ったのち、pHを9に調整しカプセル化を行った。この段階で、メラミン樹脂からなる外殻2の内部に相変化物質1としてのヘキサデカンが封入された蓄熱マイクロカプセル3を含むカプセル分散液3aを得た。
このカプセル分散液3aに、まず、親水性高分子化合物5としてのポリビニルアルコールを固形分比率1質量%の割合(カプセル分散液3aの固形分である蓄熱マイクロカプセル3に対するポリビニルアルコールの固形分の質量比)で添加し混合して3日間静置し、蓄熱マイクロカプセル3の外殻2の表面の略全面に亘ってポリビニルアルコールの被膜が形成された被膜蓄熱マイクロカプセル3Aを含むカプセル分散液3bを得た(第1被覆工程)。
その後、カプセル分散液3bに、粘度10mPa・s(25℃における固形分:約40質量%)のフェノール樹脂6(フェノール樹脂水溶液)を固形分比率0.5質量%の割合(カプセル分散液3bの固形分である被膜蓄熱マイクロカプセル3Aに対するフェノール樹脂水溶液中のフェノール樹脂の固形分の質量比)で添加し混合して、混合分散液3cを得た(第2被覆工程)。
この混合分散液3cを吸気温度250℃、排気温度105℃の条件で噴霧乾燥して、メラミン樹脂からなる外殻2の表面に当該外殻2の表面の略全面を覆うポリビニルアルコールからなる被膜及び当該被膜の表面の少なくとも一部にフェノール樹脂6が付着されてなる被覆部7を備えた複数の被覆蓄熱マイクロカプセル3Bからなる被覆蓄熱マイクロカプセル粉体4を得た(第2被覆工程)。なお、この被覆蓄熱マイクロカプセル粉体4は、被覆蓄熱マイクロカプセル3Bの被覆部7のフェノール樹脂6がバインダーとして機能することにより、複数の被覆蓄熱マイクロカプセル3B同士が凝集した凝集体となっている。
第2被覆工程において、被膜蓄熱マイクロカプセル3Aを含むカプセル分散液3bに添加するフェノール樹脂6の粘度を、1200mPa・s(25℃における固形分:約70質量%)とした以外は、実施例1と同様にして、被覆部7が形成された被覆蓄熱マイクロカプセル3Bを複数含む被覆蓄熱マイクロカプセル粉体4を得た。
第1被覆工程において得られた蓄熱マイクロカプセル3の外殻2の表面の略全面に亘ってポリビニルアルコールの被膜が形成された被膜蓄熱マイクロカプセル3Aを含むカプセル分散液3bに、フェノール樹脂6を添加せず、当該カプセル分散液3bを噴霧乾燥した以外は、実施例1と同様にして、メラミン樹脂からなる外殻2の表面にポリビニルアルコールの被膜が形成された蓄熱マイクロカプセル粉体を得た。
比較例1の蓄熱マイクロカプセル粉体についても同様にして、造粒蓄熱材を得、コーティング造粒蓄熱材を得て、加熱処理を行った。
上記の手法により得られた実施例1、2に係る被覆蓄熱マイクロカプセル粉体4、比較例1に係る蓄熱マイクロカプセル粉体を、所定量のテトラヒドロフランに12時間以上浸漬し、濾液を分離した。濾液の一部を抽出し、相変化物質であるノルマルヘキサデカン含有量をガスクロマトグラフ質量分析計(株式会社島津製作所:型番GC2010/GCMS−QP2010A)にて測定した。以下の表1にその結果を記載する。
なお、表1におけるノルマルヘキサデカン含有量(漏出量)は、蓄熱マイクロカプセル粉体の重量に対するノルマルヘキサデカンの漏出重量の比であり、表1における数値は、比較例1の漏出量を100とした場合における実施例1及び2それぞれの漏出量の比を示している。
従って、本発明に係る実施例1、2の被覆蓄熱マイクロカプセル粉体4では、耐溶剤性が向上していることが確認できた。
また、実施例1と実施例2との被覆蓄熱マイクロカプセル粉体4を比較すると、添加したフェノール樹脂6の粘度が低い実施例1の方が、粘度の高い実施例2よりもノルマルヘキサデカンの漏出量が明らかに少ないことが確認できる。これは、低粘度のフェノール樹脂が、蓄熱マイクロカプセル3の外殻2の表面の略全面に被膜形成されたポリビニルアルコールに対して均一に被覆或いは付着されやすくなり、被覆部7が均一に被覆或いは付着形成されていることによると考えられる。
従って、粘度の低いフェノール樹脂6を添加することで、耐溶剤性がより一層向上していることが確認できた。
実施例1及び2の被覆蓄熱マイクロカプセル粉体4、比較例1の蓄熱マイクロカプセル粉体それぞれに対し、10質量%の成型用バインダー8としてのフェノール樹脂(フェノール樹脂水溶液)を添加し、添加後の混合状態(混合物の粒度)を観察した。以下の表2にその結果を記載する。なお、既定時間とは、通常、粉体の混合が完了する時間であり、今回は、10分に設定した。
即ち、実施例1、2では、被覆部7と成型用バインダー8とは共にフェノール樹脂を含んで構成されているので、被覆蓄熱マイクロカプセル粉体4と成型用バインダー8とが良く馴染んだ状態で混合でき、迅速且つ均一な混合状態での良好な混合を実現することができる。これに対して、比較例1では、蓄熱マイクロカプセルの外殻の表面にフェノール樹脂が存在せずポリビニルアルコールのみが存在する状態で、成型用バインダーとしてフェノール樹脂を用いて混合しているので、蓄熱マイクロカプセル粉体とフェノール樹脂とは、比較的大きな団子状(いわゆる「ダマ状」)となり、その後の混合が困難或いは不能となっている。
従って、本発明に係る実施例1、2の被覆蓄熱マイクロカプセル粉体4に成型用バインダー8としてのフェノール樹脂を添加し造粒蓄熱材9を生成する際には、被覆蓄熱マイクロカプセル粉体4にフェノール樹脂6を含む被覆部7が存在することにより、確実且つ良好に混合できることが確認できた。
実施例1及び2の被覆蓄熱マイクロカプセル粉体4、比較例1の蓄熱マイクロカプセル粉体それぞれに対し、10質量%の成型用バインダー8としてのフェノール樹脂(フェノール樹脂水溶液)を添加した混合物を、押し出し成型機により既定速度で成型・造粒を行った。押し出し成型機の成型口から吐出される当該混合物の吐出速度、及び、当該混合物の自重による切断されやすさについて観察した。以下の表3にその結果を記載する。
比較例1では、実施例1と比較して、成型口からの吐出速度が減少し、混合物が成型口から吐出されたところで切断されてしまう状態がたびたびあった。
実施例2では、比較例1と比較して、滑らかに成型口から吐出された。成型物の自重による切断は少なかった。
即ち、実施例1、2では、被覆部7と成型用バインダー8とは共にフェノール樹脂を含んで構成されているので、被覆蓄熱マイクロカプセル粉体4と成型用バインダー8とが良く馴染んだ状態でスムーズ且つ良好に成型・造粒を行うことができる。これに対して、比較例1では、蓄熱マイクロカプセルの外殻の表面にフェノール樹脂が存在せずポリビニルアルコールのみが存在する状態で、成型用バインダーとしてフェノール樹脂を用いて成型・造粒しようとすると、蓄熱マイクロカプセル粉体と成型用バインダーとの混合物を押し出し成型した際に、押し出された混合物が自重により切断され易く、成型・造粒が困難或いは不能となるのである。
実施例1、2における加熱処理を行ったコーティング造粒蓄熱材12、及び、比較例1における加熱処理を行ったコーティング造粒蓄熱材に、相変化温度をまたぐように繰り返し熱履歴をかけ、液相と固相との相変化を所定回数起こす処理を施し、処理後の重量保持率(=処理後の質量/処理前の質量)にて評価した。以下の表4にその結果を記載する。
これは、蓄熱マイクロカプセル3の外殻2の表面にフェノール樹脂6を含む被覆部7を形成することで、蓄熱材造粒工程における被覆蓄熱マイクロカプセル粉体4と成型用バインダー8としてのフェノール樹脂との混合性が向上し、コーティング造粒蓄熱材12(造粒蓄熱材9)中の空隙が低減し、熱履歴による蓄熱マイクロカプセル3の膨張・収縮による応力変化を効果的に抑制できたためと考えられる。
従って、実施例1、2のコーティング造粒蓄熱材12は、比較例1のコーティング造粒蓄熱材よりも、耐水性、耐溶剤性、耐久性が向上しているもの考えられる。
(1)上記実施形態では、第1被覆工程において、蓄熱マイクロカプセル3の外殻2の表面に親水性高分子化合物5の被膜を形成するのに、蓄熱マイクロカプセル3を含むカプセル分散液3aと親水性高分子化合物5とを混合したカプセル分散液3bを、噴霧乾燥により蓄熱マイクロカプセル3に被膜が形成された被膜蓄熱マイクロカプセル3Aの粉体を生成する構成としてもよく、その場合、第2被覆工程においては、被膜蓄熱マイクロカプセル3Aの粉体と分散媒とを混合して、被膜蓄熱マイクロカプセル3Aを再分散させてフェノール樹脂6と混合することにより混合分散液3cを生成することができる。
ここで、キャニスターとは、一般に、車両等の内燃機関に供給されるガソリンなどの蒸散燃料(有機溶剤)が外部(大気中など)に放出されるのを防止するために、車両の停車時等には余剰の蒸散燃料をケース内の吸着材に吸着し、走行時等にはケース内に大気をパージガスとして導入して、吸着された蒸散燃料を脱着し、改めて内燃機関等に供給するものである。
キャニスターにおいては、当該キャニスターのケース内に充填された蓄熱機能付吸着材が、ガソリン等の蒸散燃料に接触するとともに大気などに含まれる水分に接触することから、当該蒸散燃料に対する耐溶剤性、耐水性が要求される。
2 外殻(高分子化合物)
3 蓄熱マイクロカプセル
3A 被膜蓄熱マイクロカプセル(蓄熱マイクロカプセル)
3B 被覆蓄熱マイクロカプセル(蓄熱マイクロカプセル)
3a カプセル分散液(分散液)
3b カプセル分散液(分散液)
3c 混合分散液
4 被覆蓄熱マイクロカプセル粉体
5 親水性高分子化合物(被膜)
6 フェノール樹脂
7 被覆部
8 成型用バインダー
9 造粒蓄熱材(蓄熱材)
10 コート用バインダー
11 コーティング層
12 コーティング造粒蓄熱材(造粒蓄熱材)
13 吸着材
14 蓄熱機能付吸着材
15 バインダー
Claims (9)
- 温度変化に応じて潜熱の吸収および放出を生じる相変化物質を高分子化合物からなる外殻の内部に封入してなる蓄熱マイクロカプセルに被覆部を形成した被覆蓄熱マイクロカプセルの製造方法であって、
前記蓄熱マイクロカプセルを含む分散液と親水性高分子化合物とを混合して前記蓄熱マイクロカプセルの外殻の表面に前記親水性高分子化合物の被膜が形成された被膜蓄熱マイクロカプセルを生成する第1被覆工程と、
前記被膜蓄熱マイクロカプセルを含む分散液とフェノール樹脂とを混合して混合分散液を生成し、前記混合分散液を噴霧乾燥して、前記被膜蓄熱マイクロカプセルの被膜の表面の少なくとも一部に前記フェノール樹脂が付着してなる被覆部が形成された被覆蓄熱マイクロカプセル粉体を製造する第2被覆工程と、を備える被覆蓄熱マイクロカプセルの製造方法。 - 前記親水性高分子化合物がポリビニルアルコールである請求項1に記載の被覆蓄熱マイクロカプセルの製造方法。
- 前記第1被覆工程において、前記蓄熱マイクロカプセルに対して、0.5質量%以上15.0質量%以下の比率で前記親水性高分子化合物を混合する請求項1又は2に記載の被覆蓄熱マイクロカプセルの製造方法。
- 前記フェノール樹脂がフェノール樹脂水溶液であり、前記フェノール樹脂水溶液の粘度は、1mPa・s以上2000mPa・s以下の範囲内にある請求項1〜3の何れか一項に記載の被覆蓄熱マイクロカプセルの製造方法。
- 前記第2被覆工程における前記混合分散液の生成に際し、前記被膜蓄熱マイクロカプセルに対して、0.1質量%以上3.0質量%以下の比率で前記フェノール樹脂を混合する請求項1〜4の何れか一項に記載の被覆蓄熱マイクロカプセルの製造方法。
- 請求項1〜5の何れか一項に記載の被覆蓄熱マイクロカプセルの製造方法により製造された前記被覆蓄熱マイクロカプセル粉体とフェノール樹脂を含む成型用バインダーとを混合し、粒状に成型して、造粒蓄熱材を生成する蓄熱材造粒工程を備えた蓄熱材の製造方法。
- フェノール樹脂を含むコート用バインダーにより前記造粒蓄熱材の外周表面部位をコーティングして、コーティング層が形成されたコーティング造粒蓄熱材を生成するコーティング工程を備えた請求項6に記載の蓄熱材の製造方法。
- 前記コーティング造粒蓄熱材を、前記蓄熱材造粒工程における温度よりも高い温度で加熱する加熱工程を備えた請求項7に記載の蓄熱材の製造方法。
- 請求項6〜8の何れか一項に記載の蓄熱材の製造方法により製造された前記造粒蓄熱材と、吸着材とを混合してなる蓄熱機能付吸着材。
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