<実施形態1>
実施形態1について図1から図11を参照しつつ説明する。
1.カラープリンタの全体構成
図1に示すように、電子写真方式のカラープリンタ1は、本体筐体10内に、用紙(本発明の「被記録媒体」の一例)Sを供給する給紙部20と、給紙された用紙Sに画像を形成する画像形成部30と、画像が形成された用紙Sを排出する排紙部90と、これらの各部の動作を制御するコントローラUとを備えている。尚、以下の説明において、方向は、カラープリンタ使用時のユーザを基準にした方向で説明する。すなわち、図1において、紙面に向かって左側を「前側」、紙面に向かって右側を「後側」とする。また、用紙Sの搬送方向に直交する方向を主走査方向(図1の紙面直交方向、プリンタの左右方向)とし、主走査方向に直交する方向、すなわち用紙Sの搬送方向を副走査方向(図1の左右方向、プリンタの前後方向)とする。
本体筐体10の上部には本体筐体10に対し相対的に開閉自在なアッパーカバー12が、後側に設けられたヒンジ12Aを支点として上下に回動自在に設けられている。アッパーカバー12の上面は、本体筐体10から排出された用紙Sを蓄積する排紙トレイ13となっており、下方には露光装置であるLEDユニット40が設けられている。
また、本体筐体10内には、各プロセスカートリッジ50を着脱自在に収容するカートリッジドロア15が設けられている。カートリッジドロア15は、左右に一対設けられた金属製のサイドプレート15A(片側のみ図示)と、一対のサイドプレート15Aを連結するクロスメンバー15Bが前後に一対設けられている。サイドプレート15Aは、LEDユニット40が有する露光ヘッドとしてのLEDアレイ41の左右方向の両側に配置され、感光体ドラム53を直接的または間接的に支持し、位置決めする部材である。LEDアレイ41の発光は、コントローラUにより制御される。尚、LEDアレイ41が本発明の発光アレイの一例である。
給紙部20は、本体筐体10内の下部に設けられ、本体筐体10に着脱自在に装着される給紙トレイ21と、給紙トレイ21から用紙Sを画像形成部30へ搬送する用紙供給機構22を主に備えている。用紙供給機構22は、給紙トレイ21の前側に設けられ、給紙ローラ23、分離ローラ24を主に備えている。
このように構成される給紙部20では、給紙トレイ21内の用紙Sが、一枚ずつ分離されて上方へ送られ、搬送経路28を通って後ろ向きに方向転換され、画像形成部30に供給される。
画像形成部30は4つのLEDユニット40と、4つのプロセスカートリッジ50と、転写ユニット70と、定着ユニット80とを備える。4つのLEDユニット40、4つのプロセスカートリッジ50はブラック、イエロー、マゼンタ、シアンの4色に対応する。
プロセスカートリッジ50は、アッパーカバー12と給紙部20との間で前後方向に並んで配置され、図2に示すように、ドラムユニット51と、ドラムユニット51に対して着脱自在に装着される現像ユニット61とを備えている。サイドプレート15Aは、プロセスカートリッジ50を支持しており、プロセスカートリッジ50は、感光体ドラム53を支持している。尚、各プロセスカートリッジ50は、現像ユニット61のトナー収容室66に収容されるトナーの色が相違するのみであり、構成は同一である。
ドラムユニット51は、ドラムフレーム52と、ドラムフレーム52に回転可能に支持される感光体の一例としての感光体ドラム53と、スコロトロン型帯電器54とを主に備えている。
現像ユニット61は、現像フレーム62と、現像フレーム62に回転可能に支持される現像ローラ63および供給ローラ64とを備え、トナーを収容するトナー収容室66を有している。プロセスカートリッジ50は、現像ユニット61がドラムユニット51に装着され、これにより、現像フレーム62とドラムフレーム52との間に上方から感光体ドラム53を臨める露光穴55が形成される。この露光穴55には下端にLEDアレイ41を保持したLEDユニット40が挿入される。LEDアレイ41の詳細については後述する。
転写ユニット70は、図1に示すように、給紙部20と各プロセスカートリッジ50との間に設けられ、駆動ローラ71、従動ローラ72、搬送ベルト73および転写ローラ74を主に備えている。
駆動ローラ71および従動ローラ72は、前後方向に離間して平行に配置され、その間に搬送ベルト73が張設されている。搬送ベルト73は、その外側の面が各感光体ドラム53に接している。また、搬送ベルト73の内側には、各感光体ドラム53との間で搬送ベルト73を挟持する転写ローラ74が、各感光体ドラム53に対向して4つ配置されている。この転写ローラ74には、転写時に定電流制御によって転写バイアスが印加される。
定着ユニット80は、各プロセスカートリッジ50および転写ユニット70の奥側に配置され、加熱ローラ81と、加熱ローラ81と対向配置され加熱ローラ81を押圧する加圧ローラ82とを備えている。
このように構成される画像形成部30では、まず、各感光体ドラム53の表面(感光面53A)が、スコロトロン型帯電器54により一様に帯電された後、各LEDアレイ41から照射されるLED光により露光される。これにより、露光された部分の電位が下がって、各感光体ドラム53上に画像データに基づく静電潜像が形成される(帯電プロセス、露光プロセス)。
また、トナー収容室66内のトナーが、供給ローラ64の回転により現像ローラ63に供給され担持される。現像ローラ63上に担持されたトナーは、現像ローラ63が感光体ドラム53に対向して接触するときに、感光体ドラム53上に形成された静電潜像に供給される。これにより、感光体ドラム53上でトナーが選択的に担持されて静電潜像が可視像化され、反転現像によりトナー像が形成される(現像プロセス)。
次に、搬送ベルト73上に供給された用紙Sが各感光体ドラム53と搬送ベルト73の内側に配置される各転写ローラ74との間を通過することで、各感光体ドラム53上に形成されたトナー像が用紙S上に転写される(転写プロセス)。そして、用紙Sが加熱ローラ81と加圧ローラ82との間を通過することで、用紙S上に転写されたトナー像が熱定着される(定着プロセス)。
排紙部90は、定着ユニット80の出口から上方に向かって延び、手前側に反転するように形成された排紙側搬送経路91と、用紙Sを搬送する複数対の搬送ローラ92を主に備えている。トナー像が転写され、熱定着された用紙Sは、搬送ローラ92によって排紙側搬送経路91を搬送され、本体筐体10の外部に排出されて排紙トレイ13に蓄積される。
2.LEDアレイの構成
LEDアレイ41は、印字データに基づいて感光体ドラム53を露光する機能を果たすものであり、用紙の送り方向(図3の上下方向)に直交する主走査方向(図3の左右方向)に複数の発光素子Pを配置した構成となっている。
LEDアレイ41は、複数のLEDアレイチップ(本発明の「発光チップ」の一例)CHから分割構成されている。各LEDアレイチップCHは半導体プロセスにより、半導体基板上に発光素子Pたる発光ダイオードを一列状に複数形成したものであり、この実施形態では、回路基板CB上に20個のLEDアレイチップCHを副走査方向(図3の上下方向)に位置をずらして千鳥状に配置している。このように、LEDアレイチップCHを千鳥配置しつつ各チップ端を主走査方向に重ねることで、チップ同士の継目における発光素子間の距離Dxを基準ピッチDpに一致させている。尚、図3はLEDアレイ41の模式図であり、各LEDアレイチップCHに形成された発光素子Pの個数を実際より少なく示してある。
また、各LEDアレイ41には不揮発性の記憶手段としてEEPROM43が設けられている。このEEPROM43には、LEDアレイ41の光量制御に必要なデータ、例えば、各LEDアレイチップCHの継目Jにおける発光素子P1、P1間の素子間距離Dxのデータや、素子間距離Dxの基準ピッチDpのデータなどが記憶されている。
3.コントローラUの説明
コントローラUは制御装置100と発光制御部110とを備える。制御装置100はカラープリンタ1の全体を制御するものであり、CPUなどから構成される演算制御部100Aと、ROM100BとRAM100CとからなるメモリMとを含む構成となっている。メモリMには、LEDアレイ41を発光制御するのに必要なデータ、具体的には、発光素子Pの目標光量のデータや、発光素子P1、P2を補正するための光量補正値X1、X2が予め記憶されている。
発光制御部110は、図4に示すようにASIC120を備え、制御装置100から指令によって、LEDアレイ41の各発光素子Pを発光制御(光量調整)するものである。発光制御部110には、4組のLEDアレイ41が共通接続されており、発光制御部110のASIC120が4組のLEDアレイ41を一括して発光制御する構成となっている。尚、コントローラUが本発明の「光量補正部」の一例である。
4.ディザ処理
ディザ処理(ディザ法)はハーフトーン処理の一種であり、画像の濃度をドットの有無の2値を用いて疑似的に表すものである。ディザ法では、ディザマトリクスDMと呼ばれる「N(主走査方向)」×「M(副走査方向)」個の閾値の行列を用いて、画像の各画素をドットに変換する処理が行われる。すなわち、ディザマトリクスDMを構成する各閾値は対応する画像の濃度と対応しており、例えば、画像の濃度が閾値より大きい場合には、そのマス目に対してドットの書き込みが行われ、画像の濃度が閾値より小さい場合には、そのマス目に対してドットの書き込みは行われない。このように、画像のうちマス目に対応する画素の濃度をマス目に割り当てられた閾値と比較して、各マス目のドットの有無を個々に割り当てることで、画像の濃度をドットの有無の2値により所定数の階調にて疑似的に表すことができる。
図5の例では、ディザマトリクスDMを「4」×「4」の行列から構成しており、各マス目に対して「0」〜「15」の16種類の閾値が割り振られている。従って、各マス目に対応する画像(元画像)の濃度を、各マス目に割り当てられた「0」〜「15」の各閾値を比較して各マス目におけるドットの有無を決定することにより、ディザパターン(画像の濃度を表すドットの繰り返しパターン)Zが得られる。
また、ディザマトリクスDMには、万線型(ラインスクリーン)、bayer型(拡散型)、ドット集中型(ドットスクリーン)がある。ドット集中型のディザマトリクスでは、画像の濃度が高くなる(すなわちドットが成長する)に連れて、書き込みが行われるドットが集中するように、各マス目に対して、閾値が割り振られている。図5は、ドット集中型のディザマトリクスDMを使用した場合の、階調25%のディザパターンZを示しており、ディザマトリクスDMのうち、閾値が「0」〜「3」の4つのマス目に対してドットが書き込まれたパターンとなる。
そして、図5の例ではディザマトリクスDMのマス目が「4」×「4」であることから、ディザパターンZは、ディザマトリクスDMのマス目の個数(主走査方向のマス目の個数)である4ドット(4マス)の周期でドットの有無が繰り返されるパターンとなる。また、図5の例では、ディザマトリクスDMのマス目を「4」×「4」としているが、ディザマトリクスDMのマス目が「5」×「4」の場合であれば、5ドット(5マス)の周期でドットの有無が繰り返されることになり、ディザマトリクスDMのマス目が「6」×「4」の場合であれば、6ドット(6マス)の周期でドットの有無が繰り返されることになる。尚、「周期」は、主走査方向の繰り返し周期を意図する。
尚、図5に示す「4」×「4」のディザマトリクスDMの場合、階調数は16階調しかないことから、実際には、ディザマトリクスDMを構成する各閾値を16倍したディザマトリクスDMをサブマトリクスとし、それを縦横4段の構成にすることで、全体のマス目の数が「256」となることから、256階調を表現することが出来る。
5.LEDアレイ41の発光制御
LEDアレイ41上の各発光素子Pは主走査方向において一定の基準ピッチDp、具体的には、画像の解像度が600dpiである場合は、42.3μmのピッチで並んでいる。そして、各LEDアレイチップCHの継目Jについても、発光素子間の素子間距離Dxが基準ピッチDpになるように、LEDアレイチップCHを配置している。
しかし、回路基板CB上に各LEDアレイチップCHをマウントする際に搭載位置が正規位置からずれることがあり、LEDアレイチップ同士の継目Jでは、発光素子間の素子間距離Dxが基準ピッチDpに対して増減する場合がある。発光素子間の素子間距離Dxが基準ピッチDpに対して増減すると、図5に示すように、ドット集中型のディザパターンZを使用して画像を印字したときに、画像に筋が発生し易くなる。すなわち、ドットの書き込みが行われた部分に対して、LEDアレイチップCHの継目Jが重なると、継目Jの両側に位置する2つの発光素子間の素子間距離Dxが基準ピッチDpより大きい場合には、継目部分の光の密度が下がる。そのため、LEDアレイチップCHの継目部分に白筋が発生し易くなる。
LEDアレイチップCHの継目Jに発生する白筋を抑えるには、継目Jの周囲に位置する発光素子Pの発光時間Tを発光制御部110にて調整して、発光素子Pの光量を目標光量より多く補正することによって、光量の不足を補えばよい。
しかしながら、例えば、LEDアレイチップCHに対する発光素子Pの実装個数Lと、ディザマトリクスDMの主走査方向のマス目数Nとが整数比でない場合は、継目Jに対するディザマトリクスDMの位置関係が、継目間で不規則になるため、ドット周期の先頭に位置するスタートドットD0と継目Jとの位置関係が、各継目Jでそれぞれ異なる。
例えば、図6中に示す1段目のラインに注目すると、左から1番目の継目J1では、継目J1から見て左側の1番目に位置する発光素子P1が、スタートドットD0に対応する関係となる。また、2番目の継目J2では、継目J2から見て左側の2番目に位置する発光素子P2が、スタートドットD0に対応する関係となる。3番目の継目J3では、継目J3から見て右側の2番目に位置する発光素子P2が、スタートドットD0に対応する関係となる。4番目の継目J4では、継目J4から見て右側の1番目に位置する発光素子P1が、スタートドットD0に対応する関係となる。
尚、スタートドットD0とは、ドット周期を構成するN個の画素のうち、「閾値」が小さく最初に書き込みが行われるドットであり、例えば、図5に示す1段目であれば、「閾値」がゼロである左角の画素(ドット)である。また、2段目であれば、「閾値」が「2」である左端の画素(ドット)である。
このように、ドット周期のスタートドットD0と継目Jとの位置関係が各継目Jで共通していない場合、継目Jを基準としたドットの配列が、各継目間で変わることになるから、継目部分の光の密度の下がり方が、スタートドットD0の位置の違いにより異なる結果となる。そのため、スタートドットD0の位置のパターンごとに、発光素子Pの光量補正値Xを個々に設定することが考えられる。しかし、光量補正値Xを多く持つことは、メモリを消費する結果となるし、光量補正処理自体も複雑になり、印刷速度を低下させてしまう。
そこで、本実施形態では、発光素子Pの光量補正値Xを、スタートドットD0と継目Jとの位置関係に拘わらず、共通化することを前提とした、光量の補正方法を提案する。具体的には、LEDアレイチップCHの継目Jから見て1番目に位置する左右の第1発光素子P1は、各継目共通して、第1光量補正値「X1」を適用して光量を補正し、LEDアレイチップCHの継目Jから見て2番目に位置する左右の第2発光素子P2は、各継目共通して、第2光量補正値「X2」を適用して光量を補正する。そして、第1発光素子P1の第1光量補正値「X1」と第2発光素子P2の第2光量補正値「X2」の大小関係を以下の(1)式の関係とする。
尚、図6にて第1発光素子P1、第2発光素子P2を黒く塗りつぶしてあるのは、発光素子Pが点灯している状態を示すものではなく、黒く塗りつぶされた発光素子Pが光量補正の対象であることを示している(図7、図9、図10も同様)。また、図6では、LEDアレイ41の構造を簡素化しており、各LEDアレイチップCHを主走査方向(図の左右方向)に一列状に配置した図(副走査方向の段差を省略した図)としてある(図7、図9、図10も同様)。
X1<X2・・・・・・・(1)式
第1発光素子P1の光量補正値X1、第2発光素子P2の光量補正値X2の大小関係を上記(1)式の関係とすることで、光量補正値X1、X2の大小関係を逆にする場合(X1>X2)に比べて、継目Jを中心とした光量の面積率(面積に対する光量の割合)Fの誤差(目標値に対する差分)Δを小さくすることが出来る。
以下は、ドット集中型のディザパターンZにおいて、継目Jを中心とした主走査方向の左右3マス、合計6マスを対象(破線枠Kで示す)として光量の面積率Fを、各継目J1〜J4について、シミュレーションした結果である。尚、光量を素子間距離Dx、光量補正値Xの条件及び、光量の面積率Fの計算例は次の通りである。
<素子間距離Dxの設定>
素子間距離Dxの基準ピッチDpを「42.3」μmとする。
LEDアレイチップCHの主走査方向の搭載位置のずれ量(正規搭載位置に対するずれ量)を「10」μmとする。
各継目Jの両側に位置する2つの発光素子P1、P1の素子間距離Dxを「52.3」μmとする。
<光量補正値Xの設定>
継目Jから見て1番目の発光素子P1の光量補正値である第1光量補正値「X1」を「0.04」とする。
継目Jから見て2番目の発光素子P2の光量補正値である第2光量補正値「X2」を「0.075」とする。
尚、光量補正値「X」は目標光量(光量の目標値)を「1」として、目標光量「1」に対する比率で表している。
<光量の面積率Fの計算例>
光量の面積率Fは、面積(この例では、継目Jを中心とした左右3マスの合計6マスの面積)に対する光量の割合である。例えば、図6に示す左側から1番目の継目J1では、左右3マス内にドットが2つある。そして、ドットを書き込む際の発光素子の光量の目標値(目標光量)を「1」としていることから、目標値で発光素子Pを点灯させる場合、全体の光量は「2」となる。また、1マス分の面積を「1」として計算をしていることから、素子間距離Dxに誤差がない場合、6マスの総面積は、1マス分の面積「1」を6倍して「6」となる。そのため、光量「2」を6マスの総面積「6」で除算することで、光量の面積率は「33.3」%になる。そして、光量を補正した場合には、光量補正値Xに応じて分子の数値を変え、素子間距離Dxが基準ピッチDpから外れている場合(位置ズレありの場合)は、誤差の大きさに応じて分母の数値を変えることで、光量の面積率Fを算出している。
本実施形態では、図6中の表に示すように、各継目J1〜J4ごとに、光量の面積率Fを下記の3パターン、シミュレーションした。
(a)位置ズレ無しの場合(Dx=42.3)の、光量の面積率Faである。
(b)補正なしの場合(Dx=52.3で、光量補正を行っていない場合)の、光量の面積率Fbである。
(c)補正ありの場合(Dx=52.3で、設定した光量補正値X1、X2で発光素子P1、P2の光量を補正した場合)の、光量の面積率Fcである。
尚、位置ズレ無しの場合の光量の面積率Faが、光量の面積率Fの目標値(理想値)である。
図6に示すように、補正なしの場合の光量の面積率Fbに比べて、補正ありの場合の光量の面積率Fcは、J1〜J4の全継目共通して、目標値Faに対する差が小さくなっており、補正を行うことで、補正後の光量の面積率Fcが目標値Faに近づいていることが理解できる。
また、差分Δ(Δ=Fa−Fc)は、光量の面積率の目標値「Fa」から、補正ありの場合の光量の面積率「Fc」を減算したものである。図6に示すように、差分Δの値は、J1〜J4の全継目共通して、目標値Faに対する誤差の許容値である「0.3」%以下に収まっている。
また、図7は、光量補正値Xの設定を変更(光量補正値Xの大小関係を「X1<X2」から「X1>X2」に変更)して、各継目J1〜J4について、同様のシミュレーションした結果である。尚、光量補正値Xの条件は、次の通りである。
<光量補正値の設定>
継目Jから見て1番目の発光素子P1の光量補正値である第1光量補正値「X1」を「0.06」とする。
継目Jから見て2番目の発光素子P2の光量補正値である第2光量補正値「X2」を「0.04」とする。
光量補正値Xの大小関係を「X1<X2」から「X1>X2」に変更した場合も、図7に示すように、補正なしの場合の光量の面積率Fbに比べて、補正ありの場合の光量の面積率Fcは、J1〜J4の全継目共通して、目標値Faに対する差が小さくなっており、補正を行うことで、補正後の光量の面積率Fcが、目標値Faに近づいていることが理解できる。
しかしながら、差分Δの値は、J2、J4の継目では「0.3」%以下に収まっているが、J1の継目では「−0.7」%、J3の継目では「1.2」%であり、目標値Faに対する誤差が許容値を超えてしまっている。すなわち、光量補正値Xの大小関係を「X1>X2」にした場合には、継目Jに対するディザマトリクスDMの位置関係によっては、継目J1、継目J3のように、十分な補正の効果が得られない。
このような結果となる理由の一つとして以下の点がある。通常、発光素子Pのビームの特性は図8に示すように、ガウシアン曲線となり、ビームの中心部ほどビーム強度が大きく、中心から離れる程、ビーム強度は小さくなる。尚、図8に示すEのラインは、現像工程にてトナーが付着するために必要な光量値(強度)を示している。
そして、ドットDの大きさに比べて、発光素子Pのビーム径の方が大きいことから、図8に示すように、隣接する2ドット間では、発光素子Pのビームが広い範囲で重なって、2つのビームが広い範囲で互いに強め合う結果となる。また、近接する2ドット(図8の例では、2ドット間に1ドット分の空白が存在する場合)では、ビームの裾野の部分が互いに強め合う結果となる。また、近接しない2ドット(図8の例では、2ドット間に2ドット分以上の空白が存在する場合)では、ビームの重なりがなく、強め合いが起きない。
従って、2ドットが隣接する場合や近接する場合は、強め合いが発生するため、2ドット間の距離がいくらか離れたとしても、強い光量補正は必要がなく、光量補正値Xを小さくしておいた方が、光量の過不足を効果的に補うことが出来る。例えば、継目J1のように、2ドットが隣接する場合に、第1発光素子P1の光量補正値「X1」を大きくしてしまうと、先に説明したようなビームの強め合いが一層強くなることから、光量が多くなり過ぎる結果となる。従って、継目J1のように継目部分で2ドットが隣接する場合には、第1発光素子P1の光量補正値「X1」を小さくしておいた方が、光量の過不足を効果的に補うことが出来る。
また、継目J3のように継目両側のマス目が空白で、2ドットが近接しない場合、ビーム同士の強め合いの効果はほとんど期待できないので、各ドットに対応する発光素子P2の光量を強く補正する必要があり、第2発光素子P2の光量補正値「X2」を大きくしておいた方が、光量の過不足を効果的に補うことが出来る。すなわち、第2発光素子P2に適用する第2光量補正値「X2」を第1発光素子P1に適用する第1光量補正値「X1」よりも大きな値としておけば、継目J1のケース、継目J3のケースとも、光量の過不足を効果的に補うことが出来るのである。
このように第2発光素子P2に適用する第2光量補正値「X2」を第1発光素子P1に適用する第1光量補正値「X1」よりも大きな値とすることで、光量補正値Xの大小関係を逆にする場合(X1>X2)に比べて、光量の面積率Fの目標値Faに対する誤差を、継目Jに対するスタートドットD0の位置に関係なく(継目Jを基準としたドットの配列に関係なく)小さくすることが出来る。
また、上記では階調を「25」%にした場合について光量の面積率Fをシミュレーションした例を示したが、図9や図10に示すように第1光量補正値「X1」を「0.04」とし、第2光量補正値「X2」を「0.075」として、階調を「6」%や、「56」%にした場合についても、光量の面積率Fのシミュレーションを行った。
結果は、階調が「6」%の場合(図9参照)、補正なしの場合の光量の面積率Fbに比べて、補正ありの場合の光量の面積率Fcは、J1〜J4の全継目共通して、目標値Faに対する差が小さくなっており、補正を行うことで、補正後の光量の面積率Fcが、目標値Faに近づいていることが理解できる。また、差分Δの値は、J1〜J4の全継目共通して、「0.3」%以下に収まっており、各継目Jについて、光量の過不足を効果的に補うことが出来ている。また、階調が「56」%の場合(図10参照)も同様に、差分Δの値は、J1〜J4の全継目共通して、「0.3」%以下に収まっており、継目Jに対するスタートドットの位置に関係なく(継目Jを基準としたドットの配列に関係なく)、光量の過不足を効果的に補うことが出来ている。
尚、光量補正値X1や光量補正値X2の設定は、(1)式の関係を守りつつ、X1、X2の数値の組み合わせを変更して、上記のシミュレーションを行い、各階調について継目Jを中心とした光量の面積率Fの目標値Faに対する誤差が小さくなる数値の組み合わせを、光量補正値X1、X2の組み合わせとして決定している。
また、上記では、継目Jの両側に位置する2つの発光素子P1、P1間の素子間距離Dxが基準ピッチDpより大きい場合を例にとって説明したが、継目Jの両側に位置する2つの発光素子P1、P1間の素子間距離Dxが基準ピッチDpより小さい場合には、継目部分の光の密度が上がって、LEDアレイチップCHの継目部分に色筋が発生し易くなる。そのため、素子間距離Dxが基準ピッチDpより大きい場合とは反対に、発光素子Pの光量を目標光量より少なく補正することによって、光量の過多を調整するとよい。
この場合も、素子間距離Dxが基準ピッチDpより大きい場合と同様に、第2発光素子P2に適用する第2光量補正値「X2」を第1発光素子P1に適用する第1光量補正値「X1」よりも大きな値とすることで、光量補正値Xの大小関係を逆にする場合に比べて、継目Jを中心とした光量の面積率Fの誤差を小さくすることが出来る。すなわち、素子間距離Dxが基準ピッチDpよりも小さい場合には、素子間距離Dxが基準ピッチDpより大きい場合に対して光量補正値「X1」、「X2」の符号がプラスからマイナスに変わるだけで、光量補正値Xの大きさ(絶対値)としては、第2発光素子P2側の光量補正値「X2」を第1発光素子P1側の光量補正値「X1」よりも大きな値とすることで、継目Jを中心とした光量の面積率Fの目標値Faに対する誤差を小さくすることが出来る。
次に、図11を参照して、コントローラUにより実行されるLEDアレイ41の発光制御シーケンスについて説明を行う。尚、以下の例では、階調印刷を行う場合、印刷ドライバ側で、画像のハーフトーン処理(ディザ処理)を行い、カラープリンタ1にはハーフトーン処理(ディザ処理)済みの印刷データが、PC等の情報端末から入力されるものとする。また、ディザ処理には、ドット集中型(4ドット周期以上)のディザパターンZが使用されるものとする。
PC等の情報端末から印刷データを受信すると、コントローラUを構成する制御装置100の演算制御部100Aは、印刷データ中にディザパターンZが含まれているか、どうか解析を行う。
印刷データにディザパターンZが含まれている場合(S20:YES)、演算制御部100Aは、光量補正対象の継目Jを検出する処理を行う(S30)。具体的には、LEDアレイ41のEEPROM43から各継目Jについて素子間距離Dxのデータを読み出す処理をまず行う。そして、演算制御部100Aは、各継目Jについて、読み出した素子間距離Dxのデータを基準ピッチDpと比較し、基準ピッチDpに対する誤差が許容値を超えている場合は、光量補正対象とし、許容値よりも小さい場合は、補正対象外とする。これにより、光量補正対象の継目Jを検出することが出来る。尚、光量補正対象の継目Jを検出する処理は、各LEDアレイ41についてそれぞれ行われる。
その後、演算制御部100Aは、発光制御部110に対して階調印刷用のデータを送る処理を行う(S40)。具体的には、印刷データと共に、各LEDアレイについて、次のデータが演算制御部100Aから発光制御部110に対して転送される。
(1)各継目Jについて光量補正を行うか否かを区別するデータ
(2)光量補正の対象となる各継目Jについて、白筋補正か色筋補正かを区別するデータ
(3)第1光量補正値「X1」と第2光量補正値「X2」のデータ(継目間で共通使用されるデータであって、(1)式の関係を満たすデータ)
そして、発光制御部110のASIC120は、階調印刷用のデータを受けると、各LEDアレイ41を構成する各発光素子Pを、印刷データに従って、点灯する。このとき、各LEDアレイ41のうち光量補正対象の継目Jでは、光量補正値Xを適用して発光素子Pが点灯制御される(S50)。例えば、継目Jで白筋が発生する場合であれば、継目Jから見て1番目の発光素子P1(ただし、印刷データに従ってドットの書き込みが行われる発光素子P1に限る)を、目標光量に対して第1光量補正値「X1」を加算した光量で点灯し、継目Jから見て2番目の発光素子(ただし、印刷データに従ってドットの書き込みが行われる発光素子P2に限る)P2を、目標光量に対して第2光量補正値「X2」を加算した光量で点灯させる。
また、ある継目Jにて色筋が発生する場合には、継目Jから見て1番目の発光素子P1(ただし、印刷データに従ってドットの書き込みが行われる発光素子P1に限る)P1を目標光量から第1光量補正値「X1」を差し引いた光量で点灯し、継目Jから見て2番目の発光素子P2(ただし、印刷データに従ってドットの書き込みが行われる発光素子P2に限る)を目標光量に対して第2光量補正値「X2」を指し引いた光量で点灯させる。
このようにすることで、継目部分における光量の面積率Fの目標値Faに対する誤差(差分Δ)を、継目Jに対するスタートドットD0の位置に関係なく(継目Jを基準としたドットの配列に関係なく)小さくすることが出来る。そのため、画像中に表れる白筋や、色筋を目立たなくすることが出来る。
一方、演算制御部100Aは、印刷データにディザパターンZが含まれていない場合(S20:NO)、発光制御部110に対して通常印刷用のデータを送る(S60)。通常印刷用のデータは、印刷データのみから構成されており、発光制御部110のASIC120は、通常印刷用のデータを受けると、各LEDアレイ41を構成する各発光素子Pを、印刷データに従って目標光量で点灯する(S70)。
6.効果説明
本プリンタ1によれば、第2発光素子P2に適用する第2光量補正値「X2」を第1発光素子P1に適用する第1光量補正値「X1」よりも大きな値とすることで、補正値Xの大小関係を逆にする場合に比べて、継目Jを中心とした光量の面積率Fの目標値Faに対する誤差(差分Δ)を小さくすることが出来る。そのため、画像中に表れる白筋や、色筋を目立たなくすることが出来る。しかも、光量補正値X1、X2をLEDアレイチップCHの各継目間で共通使用するので、メモリの消費を最小限に抑えることが出来る。また、光量補正処理自体も複雑化しないので、印刷速度の低下を抑制出来る。
<実施形態2>
次に、本発明の実施形態2を図12ないし図14によって説明する。実施形態1では、ディザマトリクスDMのマス目が「4」×「4」である場合、すなわちディザパターンZを構成するドットの繰り返し周期(ドット周期)が、4ドット周期のパターンの場合を例に挙げて、継目Jの両側に位置する発光素子P1、P2の光量補正方法を説明した。
実施形態2では、ディザマトリクスDMが「5」×「5」の場合である場合、すなわち、ディザパターンZを構成するドットの繰り返し周期(主走査方向の周期)が5ドット周期のパターンを例に挙げて、継目Jの両側に位置する発光素子Pの光量補正方法を説明する。
5ドット周期の場合には、LEDアレイチップCHの継目Jから見て1番目から3番目までの第1発光素子P1〜第3発光素子P3を光量補正の対象とする。そして、LEDアレイチップCHの継目Jから見て1番目に位置する左右の発光素子P1に対する第1光量補正値「X1」と、LEDアレイチップCHの継目Jから見て2番目に位置する左右の第2発光素子P2に対する第2光量補正値「X2」と、3番目に位置する左右の発光素子P3に対する第3光量補正値「X3」の大小関係を次のように設定する。
X1<X2<X3・・・・・(2)式
各発光素子P1〜P3の光量補正値X1〜X3の大小関係を上記(2)式の関係とすることで、光量補正値Xの大小関係を逆にする場合(X1>X2>X3)に比べて、継目Jを中心とした光量の面積率Fの目標値Faに対する誤差を小さくすることが出来る。
以下は、階調「16」%を例にとって、光量補正値Xを以下の条件として、継目を中心とした左右3マス、合計6マスを対象として光量の面積率Fを、各継目J1〜J5について、シミュレーションした結果である。
<光量補正値の設定>
継目Jから見て1番目の発光素子P1の光量補正値である第1光量補正値「X1」を「0.035」とする。
継目Jから見て2番目の発光素子P2の光量補正値である第2光量補正値「X2」を「0.04」とする。
継目Jから見て2番目の発光素子P2の光量補正値である第2光量補正値「X2」を「0.045」とする。
尚、光量補正値「X」は目標光量(光量の目標値)を「1」として、目標光量「1」に対する比率で表している。
図12に示すように、補正なしの場合の光量の面積率Fbに比べて、補正ありの場合の光量の面積率Fcは、J1〜J5の全継目共通して、目標値Faに対する差が小さくなっており、補正を行うことで、補正後の光量の面積率Fが、目標値Faに近づいていることが理解できる。また、差分Δの値は、J1〜J5の全継目共通して、誤差の許容値である「0.3」%以下に収まっており、共通の光量補正値Xを適用して、補正対象となる各継目Jについて光量の過不足を効果的に補うことが出来ている。
また、図13、図14には、光量補正値X1〜X3の設定は同一にして、階調を「4」%にした場合と、階調を「36%」にした場合について、光量の面積率Fをシミュレーションした例を示した。結果は、階調が「4」%の場合(図13参照)、補正なしの場合の光量の面積率Fbに比べて、補正ありの場合の光量の面積率Fcは、J1〜J5の全継目共通して、目標値Faに対する差が小さくなっており、補正を行うことで、補正後の光量の面積率Fcが、目標値Faに近づいていることが理解できる。また、差分Δの値は、J1〜J5の全継目共通して、「0.3」%以下に収まっており、継目Jに対するスタートドットD0の位置に関係なく(継目Jを基準としたドットの配列に関係なく)、光量の過不足を効果的に補うことが出来ている。また、階調が36%の場合(図14参照)も同様に、差分Δの値は、J1〜J5の全継目共通して、「0.3」%以下に収まっており、光量の過不足を効果的に補うことが出来ている。
このように、ディザパターンZを構成するドットの繰り返し周期が5ドット周期のパターンの場合には、継目Jの両側に位置する各発光素子P1〜P3の光量補正値の大小関係を上記(2)式の関係とすることで、補正値Xの大小関係を逆にする場合(X1>X2>X3)に比べて、継目Jを中心とした光量の面積率の誤差(目標値に対する差分)を小さくすることが出来る。
また、実施形態2では、継目Jから見て3番目に位置する発光素子P3の光量補正値X3を、2番目に位置する第2発光素子P2の光量補正値X2よりも大きくしている。このようにすれば、図13に示す継目J3のように、継目Jから3ドット離れてドットが孤立するドット配置になる場合に、そのドットに対応する発光素子P3の光量を強く補正することが出来るので、光量の過不足を効果的に補うことが出来ている。上記により、本発明の「前記光量補正部(この例では、コントローラU)は、前記発光チップ(この例では、LEDアレイチップCH)の継目から見てI+1番目(この例では3番目)に位置する発光素子を、I番目(この例では、2番目)に位置する発光素子Pの光量補正値よりも大きな光量補正値で補正する」が実現されている。
また、本実施形態の光量補正方法では、補正対象となる発光素子の個数とドットの繰り返し周期との間に関係性を見出しており、ドットの繰り返し周期Nが偶数の場合、LEDアレイチップCHの継目Jから両側とも、N/2個の発光素子Pを補正対象とし、ドットの繰り返し周期が奇数の場合、LEDアレイチップCHの継目Jから両側とも、(N+1)/2個の発光素子Pを対象として光量を補正する。すなわち、実施形態1のようにドット周期が4ドット周期の場合は、継目Jの両側2個ずつ合計4つの発光素子Pを補正対象とし、実施形態2のようにドット周期が5ドット周期の場合は、継目Jの両側3個ずつ合計6つの発光素子Pを補正対象とする。
このような関係とすることで、補正対象となる発光素子Pの素子数を必要最小限としつつ、ドット周期の先頭に位置するスタートドット(例えば、図12に示す1段目や6段目のラインであれば、ドットD0)を光量補正対象に含めることが可能となる。ドット周期の先頭に位置するスタートドットは、最初に書き込みが行われるドットであるため、これを補正範囲に含めておけば、階調が低い場合から高い場合まで広範囲に光量調整を行うことが出来る。
尚、図12〜図14にて第1発光素子P1、第2発光素子P2、第3発光素子P3を黒く塗りつぶしてあるのは、発光素子Pが点灯している状態を示すものではなく、黒く塗りつぶされた発光素子P1、P2、P3が光量補正の対象であることを示している。
<実施形態3>
次に、本発明の実施形態3を図15ないし図17によって説明する。実施形態1では、ディザマトリクスDMのマス目が「4」×「4」である場合、すなわちディザパターンZを構成するドットの繰り返し周期が4ドット周期のパターンの場合を例に挙げて、継目Jの両側に位置する発光素子Pの光量補正方法を説明した。
実施形態3では、ディザマトリクスDMが「6」×「6」の場合である場合、すなわち、ディザパターンZを構成するドットの繰り返し周期(主走査方向の周期)が6ドット周期のパターンを例に挙げて、継目Jの両側に位置する発光素子Pの光量を補正する方法を説明する。
ドット周期が6ドット周期の場合には、LEDアレイチップCHの継目Jから見て、1番目から3番目までの第1発光素子P1〜第3発光素子P3を光量補正の対象とする。そして、LEDアレイチップCHの継目Jから見て1番目に位置する左右の発光素子P1に対する第1光量補正値「X1」と、LEDアレイチップCHの継目Jから見て2番目に位置する左右の第2発光素子P2に対する第2光量補正値「X2」と、3番目に位置する左右の発光素子P3に対する第3光量補正値「X3」の大小関係を次のように設定する。
X1<X2<X3・・・・・(2)式
各発光素子P1〜P3の光量補正値X1〜X3の大小関係を上記(2)式の関係とすることで、補正値Xの大小関係を逆にする場合(X1>X2>X3)に比べて、継目Jを中心とした光量の面積率Fの目標値Faに対する誤差を小さくすることが出来る。
以下は、階調25%を例にとって、光量補正値Xを以下の条件として、継目を中心とした左右3マス、合計6マスを対象として光量の面積率Fを、各継目J1〜J5について、シミュレーションした結果である。
<光量補正値の設定>
継目Jから見て1番目の発光素子P1の光量の補正値である第1光量補正値「X1」を「0.035」とする。
継目Jから見て2番目の発光素子P2の光量の補正値である第2光量補正値「X2」を「0.04」とする。
継目Jから見て2番目の発光素子P2の光量の補正値である第2光量補正値「X2」を「0.045」とする。
尚、光量補正値「X」は目標光量(光量の目標値)を「1」として、目標光量「1」に対する比率で表している。
図15に示すように、補正なしの場合の光量の面積率Fbに比べて、補正ありの場合の光量の面積率Fcは、J1〜J6の全継目共通して、目標値Faに対する差が小さくなっており、補正を行うことで、補正後の光量の面積率Fが、目標値Faに近づいていることが理解できる。また、差分Δの値は、J1〜J5の全継目共通して、目標値に対する誤差の許容値である「0.3」%以下に収まっており、共通の光量補正値Xを適用して、補正対象となる各継目Jについて、光量の過不足を効果的に補うことが出来ている。
また、図16、図17には、光量補正値X1〜X3の設定は同一にして、階調を「3」%にした場合と、階調を「69%」にした場合について、光量の面積率Fをシミュレーションした例を示した。結果は、階調が「3」%の場合(図16参照)、補正なしの場合の光量の面積率Fbに比べて、補正ありの場合の光量の面積率Fcは、J1〜J6の全継目共通して、目標値Faに対する差が小さくなっており、補正を行うことで、補正後の光量の面積率Fcが、目標値Faに近づいていることが理解できる。また、差分Δの値は、J1〜J6の全継目共通して、「0.3」%以下に収まっており、継目Jに対するスタートドットの位置に関係なく(継目Jを基準としたドットの配列に関係なく)、光量の過不足を効果的に補うことが出来ている。また、階調が69%の場合(図17参照)も同様に、差分Δの値は、J1〜J6の全継目共通して、「0.3」%以下に収まっており、光量の過不足を効果的に補うことが出来ている。
このように、ディザパターンZを構成するドットの繰り返し周期が6ドット周期のパターンの場合には、継目Jの両側に位置する各発光素子P1〜P3の光量補正値の大小関係を上記(2)式の関係とすることで、補正値Xの大小関係を逆にする場合(X1>X2>X3)に比べて、継目Jを中心とした光量の面積率の誤差(目標値に対する差分)を小さくすることが出来る。
尚、図15〜図17にて第1発光素子P1、第2発光素子P2、第3発光素子P3を黒く塗りつぶしてあるのは、発光素子Pが点灯している状態を示すものではなく、黒く塗りつぶされた発光素子P1、P2、P3が光量補正の対象であることを示している。
<実施形態4>
次に、本発明の実施形態4を図18、図19によって説明する。実施形態1では、印刷データに含まれているディザパターンZが、ドット集中型のディザパターンZである場合の、光量補正方法を説明した。実施形態4では、印刷データに含まれているディザパターンZが、万線ディザパターンZである場合の、光量補正方法を説明する。尚、万線ディザパターンとは、平行な斜め線の繰り返しに見えるドットパターンである(図18参照)。
印刷データに含まれているディザパターンZが、万線ディザパターンである場合、LEDアレイチップCHの継目Jから見て1番目に位置する左右の第1発光素子P1は、第1光量補正値「X1」を適用して光量を補正し、LEDアレイチップCHの継目Jから見て2番目に位置する左右の第2発光素子P2は、第2光量補正値「X2」を適用して光量を補正する。そして、第1発光素子P1の第1光量補正値「X1」と第2発光素子P2の第2光量補正値「X2」の大小関係を以下の(3)式の関係とする。
X1>X2・・・・・・・(3)式
すなわち、ドット集中型のディザパターンの場合に対して、光量補正値Xの大小関係を逆にして、第1発光素子P1に適用する第1光量補正値「X1」を第2発光素子P2に適用する第2光量補正値「X2」よりも大きな値とする。
このようにすることで、光量補正値X1、X2の大小関係を逆にする場合に比べて、画像中に表れる白筋や、色筋を目立たなくすることが出来る。その理由は、図18に示すように、万線ディザパターンの場合、継目Jに生じる空白が副走査方向(図18中の上下方向)に長くなり、継目Jから見て1番目の位置にエンドドット(主走査方向に隣接するドット群のうち、終端に位置するドット)Dsが出来る。エンドドットDsでは、強め合いの効果がほとんど期待できないので、継目Jから1番目の発光素子P1の第1光量補正値X1を大きくした方が、光量を過不足なく補うことが出来る。
そして、継目Jから見て2番目の発光素子P2の第2光量補正値X2を、第1光量補正値X1よりも小さくして、継目Jから主走査方向に離れるに従って光量補正を弱くした方が、図18に示すように、ディザパターンZを構成する各ドットが規則的に繋がる状態により近くなって、ディザパターンZを構成する斜線が、違和感なく連続して見える。そのため、白筋や色筋を目立たなくなる。
そして、実施形態4では、実施形態1の発光制御シーケンスに対して、S25の判定処理を追加しており、印刷データにディザパターンが含まれている場合には、そのディザパターンZが、ドット集中型のディザパターンか、万線ディザパターンかを判定するようにしている。尚、ディザパターンがドット集中型か、万線であるかを判定するには、印刷ドライバからプリンタ1に送る印刷データにディザパターンZの種類に関する情報を付加し、それをプリンタ1側で読み取ってもいいし、或いはプリンタ1側でディザパターンZを解析してディザパターンの種類を判定するようにしてもよい。
そして、ディザパターンZがドット集中型のディザパターンである場合(S25:YES)には、実施形態1と同様にS30〜S50の各処理が順に実行され、S50にて、各LEDアレイ41を構成する各発光素子Pを印刷データに従って点灯する。このとき、各LEDアレイ41のうち光量補正対象の継目Jでは、(1)式を満たす第1光量補正値X1、第2光量補正値X2を適用して、発光素子P1、P2が点灯制御される。
一方、ディザパターンが万線ディザパターンである場合(S25:NO)には、S80の処理が実行される。S80はS30の同様の処理であり、演算制御部100Aは、光量補正対象の継目Jを検出する処理を行う。
その後、演算制御部100Aは、発光制御部110に対して階調印刷用のデータを送る処理を行う(S90)。具体的には、印刷データと共に、各LEDアレイについて、次のデータが演算制御部100Aから発光制御部110に対して転送される。
(1)各継目Jについて光量補正を行うか否かを区別するデータ
(2)光量補正の対象となる各継目Jについて、白筋補正か色筋補正かを区別するデータ
(3)第1光量補正値「X1」と第2光量補正値「X2」のデータ(継目間で共通使用されるデータであって、(3)式の関係を満たすデータ)
そして、発光制御部110のASIC120は、階調印刷用のデータを受けると、各LEDアレイ41を構成する各発光素子Pを印刷データに従って点灯する。このとき、各LEDアレイ41のうち光量補正対象の継目Jでは、(3)式を満たす第1光量補正値X1、第2光量補正値X2を適用して、発光素子P1、P2が点灯制御される。
このように実施形態4では、ディザパターンZがドット集中型のディザパターンか、万線ディザパターンであるかによって、第1光量補正値X1と第2光量補正値X2の大小関係の設定を使い分けていることから、ドット集中型のディザパターン、万線ディザパターンのどちらを使用する場合であっても、白筋や色筋の発生を抑制することが出来る。
また、ドット集中型のディザパターンと万線ディザパターンは、例えば、4色間で使用される場合(例えば、イエローは万線、それ以外はドット集中)や、モード別に使用される場合(例えば、通常画質モードは万線、高画質モードはドット集中など)が考えられるが、いずれの場合でも、ディザパターンZの種類により、第1光量補正値X1と第2光量補正値X2の大小関係の設定を使い分けてことで、画像に発生する白筋や色筋の発生を抑制することが出来る。
<他の実施形態>
本発明は上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような実施形態も本発明の技術的範囲に含まれる。
(1)実施形態1〜4では、発光アレイの一例として、発光素子Pに発光ダイオードを用いたLEDアレイを例示したが、発光素子Pに有機EL(エレクトロルミネセンス)素子を用いた有機ELアレイを用いることも可能である。
(2)実施形態1では、受信した印刷データを解析しディザパターンが含まれている場合に、第1光量補正値「X1」や第2光量補正値「X2」等の光量補正値Xを適用して対応する発光素子P1や、発光素子P2の光量を補正する制御を行った(図11のS50の処理)。第1光量補正値「X1」や第2光量補正値「X2」等の光量補正値Xを適用して対応する発光素子P1や発光素子P2の光量を補正する制御(図11に示すS50)は、ディザパターンが含まれているかどうかに拘わらず、印刷を行う場合には一律実行してもよい。この場合、例えば、電源投入時に、各LEDアレイ41のEEPROM43から必要なデータを読み出して、光量補正対象の継目Jの選定する処理と、選定した継目Jの周囲に位置する発光素子Pに適用する光量補正値Xを決定する処理を予め行い、補正対象となる発光素子Pや適用する光量補正値Xの設定は電源オフまで維持するようにする。そして、印刷データを受信した場合、演算制御部100Aから発光制御部110に対して印刷用のデータを送る時に、印刷データと共に電源投入時に決定した光量補正値Xのデータを送り、印刷データにディザパターンが含まれているかどうかに拘わらず、印刷時に、電源投入時に決定した光量補正値Xを適用して対応する発光素子P1や、発光素子P2の光量の補正する制御を行う。
(3)実施形態2、3では、第1発光素子P1から第3発光素子P3の光量補正値X1〜X3をX1、X2、X3の順番に大きくする例(X1<X2<X3)を示した。補正する発光素子Pが更に増える場合には、継目Jから見て外側の発光素子Pほど、光量補正値Xを大きくするとよい。例えば、第1発光素子P1から第4発光素子P4までを補正対象とする場合には、光量補正値X1〜X4をX1、X2、X3、X4の順番に大きくする(X1<X2<X3<X4)とよい。また、光量補正値Xは、1番目の発光素子P1に対する第1光量補正値「X1」よりも、継目Jから見て第1発光素子P1より外側に位置する第2発光素子P2や第3発光素子P3の光量補正値X2、X3の方が大きな値に設定されていればよく、例えば、第1発光素子P1から第3発光素子P3を補正対象とする場合、第2発光素子P2の光量補正値X2と第3発光素子P3の光量補正値X3は同じ補正値を適用してもよい(X1<X2=X3)。
(4)実施形態1では、4ドット周期のディザパターンZを例示し、実施形態2では、5ドット周期のディザパターンZを例示し、実施形態3では、6ドット周期のディザパターンZを例示した。本発明の適用範囲は、4ドット周期〜6ドット周期のディザパターンZに限定されるものではなく、4ドット周期以上のディザパターンZであれば適用することが可能である。例えば、7ドット周期や8ドット周期のディザパターンZなどに適用することが可能である。尚、3ドット周期では、図20に示す左側から1番目の継目J1のように、継目部分で2ドットが隣接する場合に、第1発光素子P1の光量補正値「X1」を大きくすると、4ドット周期の場合と同様(例えば、図7に示す左から1番目の継目J1)にビームの強め合いが起きる。しかし、3ドット周期(それ以下も同様)では、4ドット周期以上の場合に比べて、ドット周期が短いことから、主走査方向に関するドットの密度が相対的に高く、光量の面積率Fが大きい傾向になる。この場合、素子間距離Dxのずれ量が同じ(面積の拡張率が同じ)であれば、光量補正量Xを大きくしないと、光量の面積率Fを目標値Faに近づけることが出来ない。そのため、図20や図21に示すように、第1発光素子P1の第1光量補正値X1を第2発光素子P2の第2光量補正値X2より大きくした場合でも、補正により補う光量が目標とするレベルを超えることがなく、補正時の光量の面積率Fcが目標値Faに対する許容値の範囲に概ね収まることから、本発明の適用外としている。
(5)上記実施形態では、制御装置100の演算制御部100Aを、CPUにより構成する例を示したが、演算制御部100AをASIC等のハード回路により構成してもよく、またCPUとASIC等のハード回路を組み合わせた構成にしてもよい。
(6)上記実施形態では、印刷ドライバ側で画像のハーフトーン処理(ディザ処理)を行ったが、カラープリンタ1側でハーフトーン処理(ディザ処理)を行うようにしてもよい。