JP6025775B2 - 高熱膨張フィラー組成物およびその製造方法 - Google Patents

高熱膨張フィラー組成物およびその製造方法 Download PDF

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本発明は、フィラー組成物に関する。詳しくは、ガラス接合材にフィラー(充填剤)として添加されるアルカリレスの高熱膨張フィラー組成物に関する。
金属材料やセラミック材料は、各種の産業分野において様々なデバイス、機器、装置等に幅広く使用されている。かかる材料からなる部材間の接合(例えば、金属部材間の接合や金属部材とセラミック部材の接合)には、該部材の用途等に応じて様々な接合材が使い分けられている。例えば、高温域(例えば500℃以上の温度域)に曝され得る部位の接合では、(1) 熱膨張係数が被接合部材(金属部材やセラミック部材)と同程度かそれより若干低く、(2) 高温域(例えば500℃〜1000℃)において耐熱性や耐久性に優れる接合材が選択され、使用されている。
上記(1)に関する先行技術文献として、特許文献1,2および非特許文献1が挙げられる。これらの文献には、母材の熱膨張係数を調整するためにリューサイト結晶(KAlSiあるいは4SiO・Al・KO)を用いる技術が開示されている。上記リューサイト結晶は、熱膨張係数が20ppm/K〜30ppm/K程度と言われており、その熱膨張係数の高さで知られている。例えば特許文献1,2では、ガラスマトリックス中に高熱膨張性のリューサイト結晶を析出させることで被接合部材と同程度の熱膨張係数を実現し、上記(1),(2)の条件を兼ね備えるガラス接合材を実現している。
特開2009−195864号公報 特開2009−199970号公報
星川武、「審美修復歯冠用の低融性リューサイト質ガラスセラミックス」、高温学会誌、2007年11月、第33巻、第6号、p.293−299
ところで近年、産業界では、低コスト化等により安価な金属材料(例えば、ステンレス、銅、アルミニウム等)を被膜処理なしで使用する取組みが進められている。これに伴って、ガラス接合材に含まれるアルカリ金属成分(例えばリューサイト結晶に含まれるカリウム(K))が問題になることがあり得る。具体的には、上記安価な金属材料の接合にアルカリ金属成分を含むガラス接合材を使用した場合に、500℃以上の高温域において金属材料とアルカリ金属成分とが反応して、接合部の安定性低下(例えば接着性の低下や耐久性の低下)を引き起こすことがあり得る。このような事情から、アルカリ金属成分を含まない(アルカリレスの)高熱膨張性のフィラーが求められている。
本発明は、上記問題を鑑みてなされたものであり、その目的は、金属部材やセラミック部材を接合封止するためのガラス接合材に高熱膨張性フィラー(充填剤)として添加されるフィラー組成物であって、アルカリ金属成分を含有しないフィラー組成物を提供することにある。また、関連する他の目的は、かかるフィラー組成物を簡便に製造する方法を提供することにある。
本発明者は、種々のフィラーについて鋭意検討を重ねた結果、上記課題を解決し得る手段を見出し、本発明を完成させた。
ここに開示されるフィラー組成物は、ガラス接合材にフィラーとして添加される。かかるフィラー組成物は、次の一般式(1):AMSi(ここで、AはMg,Ca,SrおよびBaからなる群から選択される少なくとも1種の元素であり、MはFe,NiおよびCoからなる群から選択される少なくとも1種の元素である。);で示される化合物を含んでいる。そして、実質的にアルカリ金属成分を含まないことを特徴とする。
ここに開示されるフィラー組成物は、実質的にアルカリ金属成分(例えばLi、Na、K、Rb、Cs、Fr。特にはLi、Na、K。)を含まない。このため、例えば被膜処理されていない安価な金属材料(例えばステンレス)を接合するためのガラス接合材に該フィラー組成物を使用した場合であっても、上述のような不具合を未然に防止することができる。また、かかるフィラー組成物は、上記一般式(1)で示される化合物を含むことで、アルカリレス(アルカリフリー)であるにも拘らず高い熱膨張係数を実現することができる。このため、該フィラー組成物を含むガラス接合材では、例えば熱膨張係数の大きな金属部材やセラミック部材と概ね同程度の高い熱膨張係数を実現することができる。
なお、本明細書において「実質的にアルカリ金属成分を含まない」とは、少なくとも積極的にはアルカリ金属成分(元素)を添加しないことをいう。換言すれば、不可避的な不純物としてアルカリ金属成分(アルカリ金属元素や該元素を含む化合物)が混入することは許容され得る。具体的には、アルカリ金属成分がフィラー組成物全体の1質量%以下(好ましくは0.5質量%以下、より好ましくは0.1質量%以下)の割合で混入することは許容され得る。
ここに開示されるフィラー組成物の好適な一態様では、25℃から500℃の線熱膨張係数が20ppm/K〜30ppm/K(20×10−6/K〜30×10−6/K)である。これにより、該フィラー組成物を含むガラス接合材の線熱膨張係数を、熱膨張係数の大きな金属部材やセラミック部材と概ね同程度の10ppm/K〜20ppm/K程度に好適に調整することができる。
なお、本明細書において「線熱膨張係数」とは、25℃から500℃までの温度領域において、一般的な熱機械分析装置(Thermomechanical Analysis:TMA)を用いて測定した平均線膨張係数であり、試料の初期長さに対する試料長さの変化量を温度差で割った値をいう。線熱膨張係数の測定は、JIS R 3102(1995)に準じて行うことができる。
ここに開示されるフィラー組成物の好適な一態様では、上記一般式(1)で示される化合物が、上記フィラー組成物全体の80質量%以上(例えば80質量%〜100質量%)を占める。これにより、高い熱膨張係数を安定的に実現することができる。したがって、本願発明の効果をより高いレベルで発揮することができる。
ここに開示されるフィラー組成物の好適な一態様では、上記一般式(1)で示される化合物が結晶体として存在している。かかる結晶体(結晶性フィラー)を含むガラス接合材は、例えば高温域において一層優れた耐久性を発揮することができる。したがって、本願発明の効果をより高いレベルで発揮することができる。
ここに開示されるフィラー組成物の好適な一態様では、上記ガラス接合材が、一の金属部材と一の他部材とを封止接合するためのガラス接合材である。金属部材を構成する金属材料は、例えばステンレス(SUS)が凡そ10ppm/K〜15ppm/K、銅が凡そ17ppm/K、アルミニウムが凡そ23ppm/Kと、総じて熱膨張係数が大きい。このため、ここに開示されるフィラー組成物をガラス接合材に含ませることで、上記熱膨張係数の大きな金属部材と熱膨張係数の整合をとることができ、気密性に優れた接合部を好適に実現することができる。
本発明は、他の側面として、ガラス接合材にフィラーとして添加されるフィラー組成物の製造方法を提供する。かかる製造方法は、次の一般式(1):AMSi(ここで、AはMg,Ca,SrおよびBaからなる群から選択される少なくとも1種の元素であり、MはFe,NiおよびCoからなる群から選択される少なくとも1種である。);で示される化合物を作製することを含んでいる。そして、該作製は、以下のサブ工程:A元素供給源とM元素供給源とシリカとを所定の比率で混合して混合物を調製すること、ここで、上記混合物は実質的にアルカリ金属成分を含まない;および、上記アルカリ金属成分を含まない混合物を焼成すること;を包含する。かかる製造方法によれば、ここに開示されるアルカリレスのフィラー組成物を好適に製造することができる。
以下、本発明の好適な実施形態を説明する。なお、本明細書において特に言及している事項(例えば、フィラー組成物の組成や物性等の特徴)以外の事項であって本発明の実施に必要な事柄は、当該分野における従来技術に基づく当業者の設計事項として把握され得る。本発明は、本明細書に開示されている内容と当該分野における技術常識とに基づいて実施することができる。
≪フィラー組成物≫
ここに開示されるフィラー組成物は、典型的には熱膨張係数を向上させるために、フィラーとしてガラス接合材に添加される。かかるフィラー組成物は、次の一般式:AMSi(1);で示される化合物を含んでいる。
なお、上記一般式(1)において、Aは、第2族元素、すなわち、マグネシウム(Mg)、カルシウム(Ca)、ストロンチウム(Sr)、バリウム(Ba)のうちの少なくとも1種の元素である。また、Mは、いわゆる鉄族元素、すなわち、鉄(Fe)、ニッケル(Ni)、コバルト(Co)のうちの少なくとも1種の元素である。
上記一般式(1)で示される化合物は、アルカリ金属元素を含まずとも高い熱膨張係数を実現することができる。具体的には、A元素とM元素とを含むことで高い熱膨張係数を実現することができる。なかでも、M元素の選択は熱膨張係数に大きく影響を与え得る。本発明者の検討によれば、A元素が同じであれば、M元素にコバルトを含む場合に最も熱膨張係数が高くなり、次にニッケルを含む場合に熱膨張係数が高くなる。また、M元素に鉄を含む場合に相対的に最も熱膨張係数が低くなる。
また、ケイ素(Si)は上記一般式(1)の骨格を構成する元素である。ケイ素を含むことで、優れた高温耐久性や耐薬品性、耐熱衝撃性等を実現することができる。また、上記一般式(1)で示される化合物は、A元素を含むことで優れた物理的安定性や熱的安定性を実現し得る。また、上記一般式(1)で示される化合物はM元素を含むことで、高温域において高い耐熱性や耐久性を実現し得る。さらに、被接合部材(例えば金属部材)との物理化学的性状の整合をとることができる。
ここに開示されるフィラー組成物は、実質的にアルカリ金属成分を含まない。具体的には、アルカリ金属元素(典型的にはLi,Na,K,Rb,Cs,Fr、特にはLi,Na,K)および該元素を含む化合物を含まない。これにより、ガラス接合材の安定性低下を未然に防止することができる。
ここに開示されるフィラー組成物は、実質的に上記一般式(1)に示す化合物のみからなるものであってもよく、あるいは、上記化合物を主成分として、該化合物以外の副次的な成分(化合物)を50質量%未満(典型的には30質量%以下、例えば20質量%以下、好ましくは10質量%以下、より好ましくは5質量%以下)の割合で含むものであってもよい。また、不可避的な不純物等による微量な成分(化合物)の混入が許容されることは言うまでもない。
副次的な成分の例としては、酸化物の形態で、例えば、酸化マグネシウム(MgO)、酸化カルシウム(CaO)、酸化ストロンチウム(SrO)、酸化バリウム(BaO)、酸化鉄(FeO、Fe、Fe)、酸化ニッケル(NiO、Ni)、酸化コバルト(CoO、Co、Co)等が挙げられる。
好適な一態様では、上記一般式(1)で示される化合物が、フィラー組成物全体の80質量%以上(典型的には80質量%〜100質量%、好ましくは90質量%〜100質量%、より好ましくは95質量%〜100質量%)を占める。これにより、高い熱膨張係数を安定的に実現することができる。
あるいは、上記一般式(1)で示される化合物が、フィラー組成物全体の80質量%以上(例えば85質量%以上)であって、95質量%以下(例えば90質量%以下)を占めていてもよい。これにより、生産性や作業性を向上することができ、一層の低コスト化を実現することができる。
好適な一態様では、ここに開示されるフィラー組成物が、アルカリ金属成分に加えて、ホウ素(B)成分、ヒ素(As)成分、鉛(Pb)成分のうち1つ以上の成分をも実質的に含まない。例えば、ホウ素成分は、高温域(例えば700℃以上の温度域)で飛散が生じ易く、これによって熱膨張係数が変化したり、接合部の機械的強度が低下したりすることがあり得る。このため、かかる高温域での使用を考慮すべき場合には、長期耐久性(特には長期高温耐久性)を維持する観点から好ましくない。また、ヒ素成分や鉛成分は、人体や環境に対して悪影響となり得るため、環境性や作業性、安全性の観点から必要最小限の使用とすることが好ましい。
ここに開示されるフィラー組成物は、ほぼ全て(例えばフィラー組成物全体の90質量%以上)が結晶体(結晶性フィラー)として存在していてもよく、あるいは一部のみが結晶体として存在していてもよく、あるいはほぼ全てが非晶質(アモルファス、すなわち非結晶性フィラー)として存在していてもよい。
好適な一態様では、上記一般式(1)で示される組成物が結晶体として存在している。例えば、アルカリレスのアモルファスガラスマトリックス中に該結晶性フィラーを析出させることで、高熱膨張性であって、且つ、高温域における耐熱性や耐久性に一層優れるアルカリレスのガラス接合材を実現することができる。
上述の通り、ここに開示されるフィラー組成物は高熱膨張性である。すなわち、アルカリレス(アルカリフリー)で高い熱膨張係数を有する。好適な一態様では、25℃から500℃の線熱膨張係数が18ppm/K以上(典型的には20ppm/K以上、例えば22ppm/K以上、敢えて言えば23ppm/K以上)であって、40ppm/K以下(典型的には30ppm/K以下、例えば28ppm/K以下)である。これにより、熱膨張係数の大きな被接合部材(例えば金属部材)と高いレベルで熱膨張係数の整合をとることができ、気密で良好な接合を実現することができる。
なお、アルカリ金属成分(アルカリ金属元素)を含まず比較的高い熱膨張性や耐熱性を示し得るフィラーとしては、酸化マグネシウム(MgO)、ランタンストロンチウム鉄酸化物(LaSrFeO)、イットリウム系超伝導体(YBCO、YBaCu)等が既に知られている。しかしながら、これらのフィラーは熱膨張係数が最大でも15ppm/K程度とここに開示されるフィラー組成物に比べて低いため、高い熱膨張係数を実現するためにはガラス接合材中に大量に添加する必要がある。したがって、ガラス本来の機能性(例えば耐久性や化学的安定性)を低下させることがあり得る。
ここに開示されるフィラーの形状は特に限定されず、例えば、板状、小片状、粒子状(パウダー状、粉末状)、針状等であり得る。好適な一態様では、概ね球形、やや歪んだ球形等である。具体的には、該粒子の最も長い辺の長さと最も短い辺の長さ(典型的には厚み)の比(いわゆるアスペクト比)が、1以上であって、5以下(典型的には2以下、好ましくは1.5以下)であり得る。なお、「粒子形状」は、一般的な粒子画像分析装置、例えばフロー式の粒子像分析装置によって測定することができる。
フィラー粒子の平均粒径は特に限定されないが、通常0.1μm〜10μm(典型的には1μm〜5μm)程度であるとよい。これにより、ガラス接合材中に均質に分散させることができ、一層高気密で高品質な接合部を実現することができる。なお、本明細書において「平均粒径」とは、一般的なレーザー回折・光散乱法に基づく粒度分布測定により測定した体積基準の粒度分布において、微粒子側からの累積50%に相当する粒径(D50粒径、メジアン径ともいう。)をいう。
≪フィラー組成物の製造方法≫
このようなアルカリレスのフィラー組成物は、従来と同様の手法(例えば固相反応法)を用いて製造することができる。好適な一態様では、上記一般式(1)で示される化合物を作製することを含んでいる。そして、該作製には、以下のサブ工程:
(S10:混合物の調製)A元素供給源とM元素供給源とシリカとを所定の比率で混合すること、ここで、上記混合物は実質的にアルカリ金属元素を含まない;
(S20:混合物の焼成)上記アルカリ金属元素を含まない混合物を焼成すること;
が包含される。具体的には、下記の手順で行うことができる。
(S10:混合物の調製)
先ず、原料としてのA元素供給源とM元素供給源とシリカ(SiO)とを準備する。
A元素供給源としては、A元素を含む塩または錯体を好ましく使用し得る。A元素を含む塩としては、A元素の硫酸塩、炭酸塩、硝酸塩、酸化物、水酸化物、ハロゲン化物、硫化物等を用いることができる。また、A元素を含む錯体としては、A元素含有のアンミン錯体、ヒドロキシ錯体、シアノ錯体、ハロゲノ錯体等を用いることができる。
M元素供給源としては、M元素を含む塩を好ましく使用し得る。M元素を含む塩としては、M元素の硫酸塩、炭酸塩、硝酸塩、蓚酸塩、過塩素酸塩、酸化物、水酸化物、ハロゲン化物、硫化物等を用いることができる。好適な一態様では、水和物の形態のものを用いる。
次に、これらの原料を、A元素とM元素とSi元素との比が1:1:2となるように秤量、調合し、必要に応じて添加物等を加えて調製する。これを従来公知の撹拌・混合手段(例えばボールミル)によって均質に混合し、原料混合物を得る。
(S20:混合物の焼成)
そして、得られた原料混合物を乾燥した後、溶融炉等で適切な温度(例えば1400℃〜1600℃)にまで加熱した後、冷却する。これによって、上記一般式(1)で表される化合物(フィラー組成物)を得ることができる。なお、焼成は1回であってもよく、例えば冷却(降温)を挟んで2回以上繰り返し行うこともできる。
好適な一態様では、上記得られた組成物を粉砕や篩いがけ(分級)によって、カレット状またはパウダー状等の形態に調製する。これにより、一層高気密で高品質な接合部を実現することができる。
好適な他の一態様では、加熱後の焼成物を室温まで降温させた後、適当な粒径(典型的には1μm〜10μm)となるよう粉砕する。この粉砕品を、適切な温度(例えば1000℃〜1200℃)で再び加熱処理(結晶化処理)する。これによって、好適に結晶体(結晶性フィラー)を得ることができる。
≪ガラス接合材≫
上記のようにして製造されたフィラー組成物は、従来のフィラーと同様に使用することができる。例えば従来公知の各種アモルファスガラスに上記フィラー組成物を添加して調製し、ガラス接合材として用いることができる。
アモルファスガラスとしては、アルカリレスのものの中から適宜選択して使用することができる。具体例としては、各種の酸化物を主体として構成されるガラス粉末、例えば、RO−SiO−Al−TiO系ガラス(ここで、ROは第2族元素の酸化物を指す。以下同様。)、RO−SiO−Al−B系ガラス、RO−SiO−Al−Bi系ガラス、RO−SiO−Al−TiO−B系ガラス、RO−SiO−Al−ZnO−SnO系ガラス、RO−SiO−Al−PbO系ガラス、SnO−P−SiO−Al系ガラス、B−SiO−ZnO系ガラス、B−SiO−Bi系ガラス、Bi−B−ZnO系ガラス、PbO−SiO−B系ガラス、SiO−B−PbO−LiO系ガラス等が挙げられる。なかでも、アルカリ成分、ホウ素成分、砒素成分、鉛成分をいずれも含まないガラス(例えば、上記RO−SiO−Al−TiO系ガラスやSnO−P−SiO−Al系ガラス)を好適に用いることができる。
一好適例として上記RO−SiO−Al−TiO系ガラスを用いる場合には、酸化物換算の質量比で、以下に示す成分の合計がガラス全体の90質量%以上(例えば95質量%以上)になるよう調製するとよい。
MgO、CaO、BaOのうちの少なくとも1種 60〜80質量%(例えば70〜75質量%)
SiO 10〜25質量%(例えば15〜20質量%)
Al 1〜15質量%(例えば5〜10質量%)
TiO 1〜5質量%(例えば1〜3質量%)
上記RO−SiO−Al−TiO系ガラスは上記の主要構成成分から構成されていてもよく、あるいは、上記以外の任意の成分を含むものであってもよい。そのような添加成分としては、酸化物の形態で、例えば、ZnO、ZrO、V、Nb、FeO、Fe、Fe、CuO、CuO、SnO、SnO、P、La、CeO等が挙げられる。これら構成成分の割合は、酸化物換算の質量比で、ガラス粉末全体の凡そ5質量%以下(典型的には3質量%以下、例えば2質量%以下)とすることが好ましい。このことは、他の系のガラスについても同様である。
また、フィラー組成物の添加量は、例えばフィラー組成物とアモルファスガラスの合計質量全体に対して、5質量%〜30質量%(例えば5質量%〜15質量%)とするとよい。ここに開示されるフィラー組成物はアルカリレスでありながら高い熱膨張係数を有する。このため、少ない添加量でガラス接合材の熱膨張係数を向上させることができる。これにより、例えば10ppm/K〜20ppm/K(典型的には10ppm/K〜15ppm/K)程度の熱膨張係数を有するガラス接合材を好適に実現することができる。かかる性状のガラス接合材は、熱膨張係数の大きな被接合部材(例えば金属部材)を封止接合するために好ましく用いることができる。
好適な一態様では、フィラー組成物とアモルファスガラスとを所定の比率で混合した後、適切な温度で焼成し冷却することによって、アモルファスガラス中にフィラー組成物を結晶体として析出させる。これにより、高温域で長期間維持可能な接合部を好適に実現することができる。
≪被接合部材≫
被接合部材(接合対象)としては、上記ガラス接合材と熱膨張係数が比較的近いものを用いることができる。例えば、上記ガラス接合材と熱膨張係数が同程度か、それよりも若干高い金属材料やセラミック材料からなる部材を好適に用いることができる。かかる部材の熱膨張係数としては、おおよその目安として、25℃から500℃までの線熱膨張係数が10ppm/K〜25ppm/K程度であることが例示される。このような性状の金属材料としては、ステンレス(SUS)、銅(Cu)、アルミニウム(Al)等が挙げられる。また、セラミック材料としては、アルミナ(酸化アルミニウム:Al)を主体とするアルミナ系セラミックが挙げられる。
≪接合方法≫
かかるガラス接合材は、例えば一の金属部材と一の他部材との接合(例えば、金属部材同士の接合や金属部材とセラミック部材との接合)に広く使用することができる。あるいは、一のセラミック部材と一の他部材との接合(例えば、セラミック部材同士の接合やセラミック部材と金属部材との接合)に広く使用することができる。
被接合部材同士の接合は、例えば以下のように行うことができる。
先ず、上記フィラー組成物を含むガラス接合材を調製する。また、熱膨張係数の大きな被接合部材を用意する。次に、被接合部材同士(例えば金属部材とセラミック部材)が相互に接触・接続するよう配置し、接続部位に上記ガラス接合材を付与(配置または塗布)する。そして、この複合体を乾燥後、該ガラス接合材の軟化点以上の温度域(典型的には600℃以上、例えば1000℃〜1200℃)で焼成する。これによって、気密性に優れ且つ高温域においても耐熱性や耐久性に優れた接合部を、熱膨張係数の大きな被接合部材間に形成することができる。
以下、本発明に関する実施例を説明するが、本発明を以下の実施例に示すものに限定することを意図したものではない。
[フィラーの準備]
まず、下表1に示す計5種類のフィラー(S1〜S5)を作製した。具体的には、表1に示す原料を合成結晶の欄に示す組成となるよう混合し、それぞれ1500℃で溶融した後、冷却した。これを粉砕して、平均粒径が凡そ1μm〜5μmのフィラー(S1〜S5)を作製した。また、比較例として市販のフィラー(S6〜S8)を準備した。
Figure 0006025775
[線熱膨張係数の測定]
上記作製したフィラー(S1〜S5)および市販のフィラー(S6〜S8)を、それぞれ7mm×7mm×50mmの角柱状にプレス成形し、1000℃で仮焼きした。仮焼き後の焼成物を、ダイヤモンドカッターでΦ5mm×10〜20mm程度の円柱状に切り出して、測定用の試験片とした。そして、熱機械分析装置(株式会社リガク製、TMA8310)を用いてこの試験片の線膨張係数を評価した。具体的には、室温(25℃)から500℃まで10℃/分の一定速度で昇温し、試験片と標準試料の熱膨張量の差から線熱膨張係数を算出した。得られた線熱膨張係数を表1に示す。
表1に示すように、S7の酸化マグネシウムやS8のYSZでは、線熱膨張係数が14ppm/K以下と相対的に低い値を示した。これに対して、S1〜S6のフィラー組成物は、線熱膨張係数が20ppm/K〜30ppm/Kと相対的に高い値を示した。なかでもここに開示される発明に係るS1〜S5のフィラー組成物では、アルカリ金属成分を含まずに高い熱膨張性(例えば線熱膨張係数が23ppm/K〜28ppm/K)を実現することができた。
[ガラス接合材の準備]
本試験においては、上記フィラー(S1〜S8)を用いて、対応するガラス接合材(例1〜例8)を作製した。具体的には、先ず、アルカリレスのアモルファスガラスとして、酸化物換算で以下の組成:
BaO 75質量%
SiO 17質量%
Al 7質量%
TiO 3質量%
からなるガラス原料粉末(平均粒径:1μm〜3μm)を準備した。
次に、上記ガラス組成物とフィラーとが、それぞれ、質量比で90:10となるよう配合して、混合した。これを1500℃で溶融した後、冷却した。得られたガラス組成物を粉砕して、平均粒径が凡そ1μm〜5μmのガラス接合材(例1〜例8)を作製した。
[線熱膨張係数の測定]
上記作製したガラス接合材(例1〜例8)について、上記フィラーの場合と同様にして熱膨張係数を測定した。得られた線熱膨張係数を表2に示す。
表2に示すように、例7および例8のガラス接合材は、線熱膨張係数が7ppm/K〜9ppm/Kと相対的に低かった。
これに対して、例1〜例6のガラス接合材では、線熱膨張係数が10ppm/K〜20ppm/Kと相対的に高い値を示した。なかでもここに開示される発明に係る例1〜例5のガラス接合材では、アルカリ金属成分を含まずに(アルカリレスで)高い熱膨張性(例えば線熱膨張係数が11ppm/K〜12ppm/K)を実現することができた。
[ステンレス基板との接合性評価]
上記作製したガラス接合材(例1〜例8)を、それぞれΦ15mm×2.5mmの円盤状にプレス成形し、ペレット状のサンプルを作製した。これを、ステンレス(線熱膨張係数:10ppm/K〜15ppm/K)製の基板の上に載せ、大気中、1300℃で凡そ5分間焼成することで、ペレットと基板との接合を試みた。
その後、それぞれの積層体について、接合が実現されているか否か、接合が実現されている場合には気密な接合部となっているか否かを確認した。具体的には、先ず、ピンセットを用いてペレットが基板から剥がせるかどうかを確認し、機械的に接合されているか否かを評価した。接合が確認できた接合体については、さらに浸透探傷検査を行い、クラックの有無を確認した。
結果を、表2に示す。なお、表2において「○」は両者が機械的に接合され、且つ、クラックが確認されなかったことを、「×」は両者が機械的に接合されていなかったこと、または、浸透探傷検査において接合部にクラックが認められたことを表している。
Figure 0006025775
表2に示すように、フィラーとして酸化マグネシウムを添加した例7およびYSZを添加した例8では、ステンレス基板との接合部にクラックが認められた。これに対し、フィラーとして一般式:AMSi(AはMg,Ca,Sr,Baから選択される少なくとも1種の元素であり、MはFe,Ni,Coから選択される少なくとも1種の元素である。)を含むフィラー組成物を添加した例1〜例5、および、フィラーとしてリューサイト結晶を添加した例6では、接合部の気密性が高く、基板と良好な接合が実現されていた。
以上のことから、ここに開示されるフィラー組成物を用いることによって、アルカリ金属成分を含まずに、金属部材(ここではステンレス)と同程度の熱膨張係数を有し、且つ、金属部材との接合性に優れたガラス接合材を実現できるとわかった。
以上、本発明の具体例を詳細に説明したが、これらは例示にすぎず、請求の範囲を限定するものではない。請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。

Claims (6)

  1. ガラス接合材にフィラーとして添加されるフィラー組成物であって、
    以下の一般式(1):
    AMSi (1)
    (ここで、AはMg,Ca,SrおよびBaからなる群から選択される少なくとも1種の元素であり、MはFe,NiおよびCoからなる群から選択される少なくとも1種の元素である。);
    で示される化合物を含み、
    実質的にアルカリ金属成分を含まないことを特徴とする、フィラー組成物。
  2. 25℃から500℃の線熱膨張係数が20ppm/K〜30ppm/Kである、請求項1に記載のフィラー組成物。
  3. 前記一般式(1)で示される化合物が、前記フィラー組成物全体の80質量%以上を占める、請求項1または2に記載のフィラー組成物。
  4. 前記一般式(1)で示される化合物が結晶体として存在している、請求項1から3のいずれか1項に記載のフィラー組成物。
  5. 前記ガラス接合材が、一の金属部材と一の他部材とを封止接合するためのガラス接合材である、請求項1から4のいずれか1項に記載のフィラー組成物。
  6. ガラス接合材にフィラーとして添加されるフィラー組成物の製造方法であって、
    以下の一般式(1):
    AMSi (1)
    (ここで、AはMg,Ca,SrおよびBaからなる群から選択される少なくとも1種の元素であり、MはFe,NiおよびCoからなる群から選択される少なくとも1種である。);
    で示される化合物を作製することを含み、該作製は、以下のサブ工程:
    A元素供給源とM元素供給源とシリカとを所定の比率で混合して混合物を調製すること、ここで、前記混合物は実質的にアルカリ金属成分を含まない;および、
    前記アルカリ金属成分を含まない混合物を焼成すること;
    を包含するアルカリレスのフィラー組成物の製造方法。
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