以下、本発明を図面に示す実施形態により説明する。
図1および図2は本発明に係る肉質改良システムの実施形態の全体構成の要部を示すものであり、図1は概略正面図、図2は図1の一部省略平面図である。なお、符号は一部にのみ付してある。
本実施形態の肉質改良システム1は、肉質の改良に供する肉質改良対象食材としての油脂含有量の少ない魚のフィレF(以下、単に、フィレと記す。)に対して、殺菌液による殺菌処理と、殺菌した後のフィレFに肉質を改良するための油脂などを主成分とする乳化液とされた肉質改良液を注入する注入処理、肉質改良液を注入した後のフィレFの洗浄液によるフィレFの洗浄処理とをこの順に行うものである。
また、本実施形態の肉質改良システム1に用いられるフィレFは、鮭の魚体から頭部を除去し3枚におろしたものである。このフィレFを形成する魚としては、鮭に限らず、鱒、鰹、鱸、鮪などの各種のものを用いることができる。さらに、肉質改良対象食材としては、鮪などのブロックや牛、豚、鶏などの食肉のブロックなどを挙げることができる。
なお、説明の便宜上、本実施形態の肉質改良システム1において、フィレFの搬送方向(以下、単に、搬送方向と記す。)に直交する方向であって搬送方向上流側から見て左右に示す方向を横方向とし、搬送方向および横方向の双方に直交する方向を上下方向(鉛直方向)とする。また、搬送方向における搬送方向上流側を「前」、搬送方向下流側を「後」、横方向における左側を「左」、右側を「右」、上下方向における上側を「上」、下側を「下」として以下に説明する。
図1および図2に示すように、本実施形態における肉質改良システム1は、フィレFを殺菌するための殺菌装置2と、殺菌されたフィレFに肉質改良液を注入するための注入装置3と、肉質改良液を注入されたフィレFを洗浄するための洗浄装置4とを有している。また、殺菌装置2、注入装置3および洗浄装置4は、全体として矢印にて示すフィレFの搬送方向Aに沿って直列に配置されている。そして、殺菌装置2の前上部に示す位置が肉質改良処理に供するフィレFを人手、ロボット、ベルトコンベヤ(共に図示せず)などにより供給する供給位置SPとされ、洗浄装置4の後上部に示す位置が肉質改良処理を施したフィレFを排出する排出位置OPとされている。
前記殺菌装置2について図1から図4によりさらに説明する。
図3は図1の殺菌装置の要部を示す一部省略拡大平面図、図4は図1の殺菌装置の要部を示す一部省略拡大左側面図である。なお、符号は一部にのみ付してある。
前記殺菌装置2は、図1から図4に示すように、フィレFを前方から後方に搬送して注入装置3に送り出すための殺菌用コンベヤとしての殺菌用ネットコンベヤ11と、この殺菌用ネットコンベヤ11によって搬送されるフィレFを搬送の途中で殺菌するための殺菌手段12と、殺菌した後のフィレFに空気(圧縮空気、以下同じ。)を噴射してフィレFに付着している殺菌液を強制的に除去するための殺菌液除去用ノズル13と、殺菌用フレーム14とを有している。また、殺菌用フレーム14の前側である搬送方向上流側に殺菌手段12が配置されており、殺菌用フレーム14の後側である搬送方向下流側に殺菌液除去用ノズル13が配置されている。また、本実施形態において、フィレFは、皮が下を向いた状態、すなわちフィレFの身が上を向いた状態で殺菌用ネットコンベヤ11に載置されるように供給される。ここで、身が上とは身の外部に露出している表面が上方を向いた状態をいう。なお、フィレFは、皮が上、身が下を向いた状態で殺菌用ネットコンベヤ11に載置してもよい。
前記殺菌用ネットコンベヤ11は、図3に示すように、無端環状に形成された搬送ネットとしての殺菌用搬送ネット16と、ギヤードモータなどからなる殺菌用駆動モータ17とを有している。また、殺菌用搬送ネット16は、従動用ローラ18の外周面に取り付けられた複数の従動用スプロケット19と、殺菌用駆動モータ17の駆動力によって回転駆動される駆動用ローラ20の外周面に取り付けられた複数の駆動用スプロケット21の外周との間に掛け回されている。そして、従動用ローラ18は、搬送方向上流側である殺菌用フレーム14の上部の前端部近傍に回転自在に配設されており、駆動用ローラ20は、搬送方向下流側である殺菌用フレーム14の上部の後端部近傍に配設されている。すなわち、従動用ローラ18および駆動用ローラ20は、それぞれの軸線を左右方向に向けて前後方向に間隔をおいて相互に平行に配置されている。そして、殺菌用駆動モータ17の駆動力によって駆動用ローラ20、ひいては殺菌用搬送ネット16を図1の時計方向に予め設定された間隔で間欠駆動させることができるようになっている。また、殺菌用搬送ネット16の内側には、殺菌用搬送ネット16の搬送面が水平面となるように案内するための複数の殺菌用ガイド板22が左右方向に並設されている。勿論、従動用ローラ18を搬送方向下流側に配置し、駆動用ローラ20を搬送方向上流側に配置する構成としてもよい。
なお、殺菌用ネットコンベヤ11のその他の構成は、従来のネットコンベヤと同様とされており、その詳しい説明については省略する。
前記殺菌手段12は、フィレFの搬送経路(以下、単に、搬送経路と記す。)を臨むように配置された殺菌液を噴射可能な殺菌用ノズル24を有している。本実施形態の殺菌用ノズル24は、殺菌用ネットコンベヤ11を間において上下に複数配置されている。
前記殺菌用ネットコンベヤ11の上方に示す上段の殺菌用ノズル24は、前後方向に2列、左右方向に3列に配置されており、各殺菌用ノズル24の基端部は、上段の殺菌用ノズル24の上方に前後方向に間隔をおいて相互に平行に配設された前後1対の殺菌用パイプ体25に接続されている。すなわち、左右方向に沿って延在する1つの殺菌用パイプ体25に対して左右方向に配置された3つの殺菌用ノズル24の基端部が接続されている。また、各殺菌用ノズル24は、その軸線方向を上下方向に向けて配置されており、その先端部は、搬送経路を上方から臨むように下方を向いて配置されている。
前記殺菌用ネットコンベヤ11の下方に示す下段の殺菌用ノズル24は、上段の殺菌用ノズル24と同様に、前後方向に2列、左右方向に3列に配置されており、各殺菌用ノズル24の基端部は、下段の殺菌用ノズル24の下方に前後方向に間隔をおいて相互に平行に配設された前後1対の殺菌用パイプ体25に接続されている。すなわち、左右方向に沿って延在する1つの殺菌用パイプ体25に対して3つの殺菌用ノズル24の基端部が接続されている。また、各殺菌用ノズル24は、その軸線方向を上下方向に向けて配置されており、その先端部は、搬送経路を下方から臨むように上方を向いて配置されている。
前記上段の殺菌用ノズル24の先端部と、下段の殺菌用ノズル24の先端部とは、相互に対向するように配置されている。また、上段の殺菌用パイプ体25と下段の殺菌用パイプ体25も相互に対向するように配置されている。すなわち、上段の殺菌用ノズル24および上段の殺菌用パイプ体25と、下段の殺菌用ノズル24および下段の殺菌用パイプ体25とは、殺菌用ネットコンベヤ11を間において対称に配置されている。
前記各殺菌用パイプ体25の内部には、殺菌液貯留タンクに貯留された殺菌液が殺菌液用ポンプ(共に図示せず)により供給されるようになっており、各殺菌用パイプ体25の内部に供給される殺菌液が各殺菌用ノズル24の先端から殺菌用ネットコンベヤ11、ひいては殺菌用ネットコンベヤ11により搬送されるフィレFの身の表面および皮の表面に向かって噴射することができるようになっている。
前記殺菌液除去用ノズル13は、搬送経路を上方から臨むように殺菌用ネットコンベヤ11の上方に配設されている。本実施形態の殺菌液除去用ノズル13は、左右方向に沿って3つ配置されている。これら各殺菌液除去用ノズル13は、それぞれの軸線方向を前後方向に沿うとともに上下方向に対して斜めに傾斜して配置されており、それぞれの先端部を前方斜め下方に向けて配置されている。そして、各殺菌液除去用ノズル13の基端部は、殺菌液除去用ノズル13の上方に左右方向に沿って延在する殺菌液除去用パイプ体27に接続されている。そして、殺菌液除去用パイプ体27の内部に供給される空気が各殺菌液除去用ノズル13の先端から殺菌用ネットコンベヤ11、ひいては殺菌用ネットコンベヤ11により搬送される殺菌した後のフィレFの身の表面に向かって噴射されることで、流下せずにフィレFの身の表面に付着している殺菌液を除去することができるようになっている。また、フィレFの身の表面から空気により除去された殺菌液は、殺菌用ネットコンベヤ11の網目を通過して下方に流下する。なお、殺菌用ネットコンベヤ11を間において上下に複数の殺菌液除去用ノズル13を対称に設けてもよい。
前記殺菌用フレーム14の内部における下段の殺菌用ノズル24の下方には、殺菌液受け部材29が配設されている。この殺菌液受け部材29は、フィレFの殺菌に供して上方から流下する殺菌液を受け止めるためのものであり、上部が開口のほぼ箱状に形成されている。そして、殺菌液受け部材29の前後方向の中央部に示す深さが最も深く形成された部位には、殺菌液排出ドレン30が配設されている。この殺菌液排出ドレン30には、図示しないホースまたはパイプなどの一端が接続されており、殺菌液受け部材29に流下した殺菌液を外部に送出することができるようになっている。なお、殺菌液受け部材29に流下した殺菌液を図示しない殺菌液貯留タンクに戻すことで、殺菌液を循環使用するようにしてもよい。
なお、殺菌手段12としては、殺菌用ネットコンベヤ11により搬送されるフィレFを、搬送の途中で搬送しつつ殺菌槽に入った殺菌液の液中を通過させる構成としてもよい。
前記注入装置3について図1、図2および図5から図19によりさらに説明する。
図5は図1の注入装置の要部を示す斜視図、図6は図5の要部の断面図、図7は図6の載置テーブルの要部を示す斜視図、図8は図6の送りユニットの要部を示す斜視図、図9は図8の拡大平面図、図10は図6の送り用移動手段近傍の要部を示す斜視図、図11は図10の正面図、図12は図10の側面図、図13は図11の平面図、図14は図6の針ユニットにおける注射針の配置を搬送方向下流側から見て示す配置図、図15は図14の平面図、図16は図14の右側面図、図17は図1の液供給部の要部を示す斜視図、図18は図10の針用移動手段の要部の構成を説明する構成図、図19は図18の一部省略右側面図である。なお、符号は一部にのみ付してある。
前記注入装置3は、図1、図2、図5および図6に示すように、注入用フレーム32を有している。この注入用フレーム32には、図2、図5および図6に示すように、殺菌装置2から身が上、皮が下を向いた状態で送り込まれるフィレFを受け取って、このフィレFを身が上、皮が下を向いた状態で前方から後方に間欠搬送して洗浄装置4に送り出す注入用搬送手段33と、図6に示すように、注入用搬送手段33により間欠搬送されるフィレFの身に搬送の途中で搬送が停止した際に肉質改良液を注入するための注入手段34と、肉質改良液を注入した後のフィレFの身の表面に空気を噴射してフィレFの身の表面に付着している肉質改良液を強制的に除去する改良液除去用ノズル35(図1)と、フィレFの身に注入されなかった肉質改良液を回収するための回収手段36(図6)とが配設されている。また、注入用フレーム32の前後方向中央部分に注入手段34が配置されており、注入用フレーム32の後側である搬送方向下流側に改良液除去用ノズル35が配置されている。なお、フィレFの身に注入されなかった肉質改良液とは、後述するように、肉質改良液をフィレFに注入する際に、フィレFに刺さらない注射針61から吐出された肉質改良液、およびフィレFの身の表面から空気により除去された肉質改良液などをいう。
前記注入用搬送手段33は、図6に示すように、載置テーブル38と、送りユニット39と、送り用移動手段40と、送り用駆動モータとしての直交軸(直行軸)ギヤードモータ41とを有している。
前記載置テーブル38は、殺菌装置2から送られてくるフィレFを載置するためのものであり、図6に示すように、注入用フレーム32の上部にその厚さ方向を上下方向に向けて水平に配置されている。また、載置テーブル38は、図7に示すように、後述する送りユニット39の複数の送り板43のそれぞれの上面が出没可能な前後方向に延在する複数の板出没孔38aを有している。これらの板出没孔38aは、左右方向に隣接して並設されている。また、載置テーブル38の上面の所定の位置には、載置テーブル38の上面に載置されたフィレFの位置がずれるのを防止するための複数のテーブル側突起38bが設けられている。
前記送りユニット39は、載置テーブル38に載置されたフィレFを間欠搬送するためのものであり、図6に示すように、載置テーブル38の下方に配置されている。この送りユニット39は、図8および図9に示すように、搬送方向Aに対して直交する左右方向に厚さ方向を向けて所定の間隔をおいて相互に平行に配設された複数の送り板43を具備している。また、複数の送り板43の上面の所定の位置には、図8に示すように、送りユニット39がフィレFを下方から支持して搬送する際に、フィレFの位置がずれるのを防止するための複数の送り側突起43bが設けられている。さらに、複数の送り板43は、左右方向に延在するようにねじ止めされた複数種の複数のシャフト44により一体に形成されているとともに、シャフト44の外周に装着された複数のカラー45により複数の送り板43の間隔が一定に保持されている。
前記送り用移動手段40は、送りユニット39をフィレFの搬送方向Aに対して直交する上下方向およびフィレFの搬送方向Aに沿った前後方向に円形の軌跡をもって運動させるためのものである。また、送り用移動手段40は、複数の送り板43の上面が常に水平を保持した状態とするものでもある。この送り用移動手段40は、図10に示すように、送りユニット39を下方から支持するように送りユニット39が取り付けられる送り支持部材としての左右1対の支持ステー47を有している。これら左右1対の支持ステー47は、その長手方向を前後方向にして配置されているとともに、左右方向に所定の間隔をおいて相互に対向するように平行に配置されている。なお、送り支持部材としては四角枠状のものであってもよい。
前記両支持ステー47の前側および後側には、図10から図13に示すように、送り用駆動ローラ48の左右方向の中心側に位置する先端部が軸受を介して回転自在に取り付けられている(図13)。これら総計4つの送り用駆動ローラ48は、その軸線方向を左右方向に向けて配置されている。また、送り用駆動ローラ48の基端部は、両支持ステー47の内側においてその軸線方向を左右方向に向けて配置された円盤49の回転軸線から離れた位置に軸受を介して回転自在に取り付けられている。すなわち、送り用駆動ローラ48の基端部は、円盤49に偏心して回転自在に取り付けられている。そして、円盤49の中心には、回転軸50の左右方向の中心側に位置する先端部が取り付けられている。また、回転軸50の左右方向の外側に位置する基端部には、従動スプロケット51が取り付けられている。この従動スプロケット51の回転軸線は、円盤49の回転軸線と同軸をなすように形成されている。
前記直交軸ギヤードモータ41は、その出力軸41aを左右方向に向けて配設されているとともに、出力軸41aの両端のそれぞれが外部に露出されている。この出力軸41aの左右両端部には、それぞれ駆動スプロケット54が取り付けられている。そして、出力軸41aの右端に取り付けられた駆動スプロケット54の外周と、右後側の回転軸50に取り付けられた従動スプロケット51の外周との間には、断面上向きコ字状のベルト55が掛け回されており、直交軸ギヤードモータ41の駆動力によって右後側の回転軸50を図10の反時計方向に回転させることができるようになっている。また、出力軸41aの左端に取り付けられた駆動スプロケット54の外周と、左後側の回転軸50に取り付けられた従動スプロケット51の外周との間にもベルト55が掛け回されており、直交軸ギヤードモータ41の駆動力によって左後側の回転軸50を、右後側の回転軸50と同一方向に同期させて回転させることができるようになっている。したがって、1対の支持ステー47は、同期して動作する。なお、ベルト55としては、Vベルト、歯付きベルトなどを用いることができる。また、前後の駆動スプロケット54を駆動させるようにしてもよい。さらに、直交軸ギヤードモータ41の出力軸41aと回転軸50とは、チェーン伝動により回転を伝動するようにしてもよい。さらにまた、符号56はベルトテンショナである。
勿論、送り用移動手段40は、複数の送り板43の上面が板出没孔38aから出没するように送りユニット39を上下動させるとともに、複数の送り板43の上面が板出没孔38aから出現したときに送りユニット39を後側に移動させて載置テーブル38に載置されたフィレFを後側に搬送できるように、回転軸50の回転軸線の位置、回転軸50の回転軸線と送り用駆動ローラ48の軸線との距離、回転軸50の回転軸線と載置テーブル38の上面との最短距離などが設定されている。
前記注入手段34は、図6に示すように、針ユニット57と、針用移動手段58と、針用駆動モータ59とを有している。
前記針ユニット57は、複数、本実施形態においては196本の注射針61を有している。これらの注射針61は、その先端がフィレFの搬送経路を上方から臨むように軸線方向を上下方向に向けて配置されている。また、各注射針61は、図14から図16に示すように、フィレFの搬送方向Aおよび搬送方向Aに対して直交する左右方向に整列配置されている。具体的には、相互間の間隔が等しくなるように配置されている前後方向に4列、左右方向に12列の総計48個の針ホルダ62の下面のそれぞれに4本の注射針61の上方に示す基端部が取り付けられている。すなわち、1つの針ホルダ62に対して4本の注射針61が取り付けられており、1つの針ホルダ62に対して4本の注射針61を取り付ける構成に比較して、1本の注射針61を設置するための平面スペースを少なくして、注射針61を高い密度で配置することができるようになっている。なお、本実施形態においては、相互に隣位する2つの針ホルダ62の間における各注射針61の中心間距離が6mm程度に設定されている。
前記各針ホルダ62の上端面には、注射針61の軸線方向が上下方向を向くように位置決めするための針ガイド棒63の下端が取り付けられている。そして、各針ホルダ62は、図6に示すように、搬送方向上流側から見て全体として左右方向に長い矩形枠状に形成された針支持部材64の下支持部64aに着脱自在に取り付けられており、針ガイド棒63の上端部は、針支持部材64の上支持部64bに着脱自在に取り付けられている。また、各注射針61の先端は、針支持部材64の下支持部64aより下方に配置されている。
前記各針ホルダ62の側面には、図14から図16に示すように、4本で1組とされた注射針61の内部に肉質改良液を供給するためのホースジョイント62aが取り付けられており、このホースジョイント62aには、図示しない肉質改良液供給ホースの一端が接続されている。また、肉質改良液供給ホースの他端は、図6に示す肉質改良液を分配して供給するための分配ヘッド65に接続されている。この分配ヘッド65には、肉質改良液供給配管66の一端が接続されている。
前記肉質改良液供給配管66の他端には、図1および図17に示すように、肉質改良液を貯留するための肉質改良液貯留タンク67と、この肉質改良液貯留タンク67に貯留された肉質改良液を送るための肉質改良液用ポンプ68とを具備する改良液供給ユニット69のうち肉質改良液用ポンプ68に接続する外部供給管70に接続されている。そして、肉質改良液用ポンプ68を駆動することにより、肉質改良液貯留タンク67に貯留された肉質改良液を各注射針61の内部に供給してフィレFに注入できるように形成されている。
なお、肉質改良液貯留タンク67および肉質改良液用ポンプ68を注入用フレーム32の内部の下方に配置し、肉質改良液用ポンプ68に肉質改良液供給配管66の他端を接続するようにしてもよい。
前記針用移動手段58は、針ユニット57、ひいては各注射針61の軸線方向が上下方向を保持した状態で上下動させるためのものであり、図10から図13に示すように、針ユニット57を下方から支持するように針ユニット57が上部に取り付けられる左右1対の駆動軸72を有している。これら左右1対の駆動軸72は、その軸線方向を上下方向にして配置されているとともに、左右方向に所定の間隔をおいて相互に対向するように平行に配置されている。
前記両駆動軸72は、それぞれ上下1対のガイド部材73によって上下方向に沿って移動可能に支持されている。このガイド部材73は、駆動軸72を前後方向から挟持する回転自在な前後1対のガイドローラ74を有している。これらのガイドローラ74は、図示しない支持フレームに回転自在、かつ着脱自在に取り付けられている。また、両駆動軸72の外周には、それぞれスライダ75が相互に対向するように取り付けられている。これらのスライダ75は、図10、図12、図18および図19に示すように、駆動軸72に取り付けられる取付基部75aと、この取付基部75aの左右方向中央部側に設けられた左右方向中央部側が開口の側面コ字状に形成された駆動力伝達部75bとを有している。そして、駆動力伝達部75bの内部には、片持ち式のクランク機構76の一部を構成するクランクピンとして機能する針用駆動ローラ77がその軸線方向を左右方向に向けて配置されている。この針用駆動ローラ77の基端部は、図18および図19に示すように、直交軸ギヤードモータ41の出力軸41aに取り付けられた駆動スプロケット54の左右方向外側の面において駆動スプロケット54の回転軸線から離れた位置に偏心して取り付けられている。なお、図18および図19は、出力軸41aの右端部近傍を示している。
したがって、本実施形態の駆動スプロケット54および針用駆動ローラ77は、円板クランクとして機能する。また、駆動スプロケット54が取り付けられた直交軸ギヤードモータ41の出力軸41aは、クランク機構76の他の一部を構成するクランク軸78としても機能する。すなわち、出力軸41aはクランク軸78を兼用するように形成されている。よって、直交軸ギヤードモータ41は、針用移動手段58を駆動するための針用駆動モータ59としても機能する。つまり、送り用駆動モータとしての直交軸ギヤードモータ41は、針用駆動モータ59を兼用するように形成されている。さらに、送り用駆動モータとしての直交軸ギヤードモータ41の駆動力により、送りユニット39および針ユニット57とが連動するように形成されている。また、回転軸50の回転により、針用駆動ローラ77は、その外周面が駆動力伝達部75bに設けられた上水平板75baの下面に常に当接した状態で出力軸41aの回転軸線を中心として回転する。これにより駆動軸72が図19の上下方向矢印にて示すように上下動するように形成されている。
前記送り用移動手段40および針用移動手段58は、針ユニット57が上昇したときに複数の送り板43の上面を板出没孔38aから出現させて送りユニット39を後側(洗浄装置4側)に移動させて載置テーブル38に載置されたフィレFを搬送させ、複数の送り板43の上面が板出没孔38aの下方に没したときに針ユニット57を下降させて注射針61の先端を下方に存在するフィレFに刺すように連動されている。
なお、注入装置3による肉質改良液の注入タイミングは、針ユニット57が上昇して注射針61がフィレFから抜けるときに、肉質改良液用ポンプ68を駆動して肉質改良液をフィレFに注入するように形成されている。また、注射針61がフィレFから抜けるときには、複数の送り板43の上面が板出没孔38aの下方に没した状態を保持しており、複数の送り板43の上面が板出没孔38aから出現したときには、注射針61がフィレFから抜けた後になるように、送りユニット39および針ユニット57の動作タイミングが設定されている。
勿論、注入装置3は、フィレFと注射針61とが干渉するのを防止できるように、針ユニット57が上昇端(上死点)に到達したときに送りユニットが上昇端に到達し、針ユニット57が下降端(下死点)に到達したときに送りユニットが下降端に到達するように形成されている。
前記改良液除去用ノズル35は、図1に示すように、殺菌液除去用ノズル13と同様に、搬送経路を上方から臨むように載置テーブル38の後端部上方に複数、本実施形態においては左右方向に沿って3つ配置されている(図1に、右側に配置されている1つのみ図示)。そして、各改良液除去用ノズル35は、それぞれの軸線方向を前後方向に沿うとともに上下方向に対して斜めに傾斜して配置されており、それぞれの先端部を前方斜め下方に向けて配置されている。この各改良液除去用ノズル35の基端部は、各改良液除去用ノズル35の上方に左右方向に沿って延在する改良液除去用パイプ体80に接続されている。そして、改良液除去用パイプ体80の内部に供給される空気が各改良液除去用ノズル35の先端から載置テーブル38、ひいては肉質改良液を注入された後に送りユニット39により搬送されるフィレFの身の表面に向かって噴射されることで、流下せずにフィレFの身の表面に付着している肉質改良液を除去することができるようになっている。また、フィレFの身の表面から空気により除去された肉質改良液は、載置テーブル38の左右の側面および複数の板出没孔38aを通過して下方に流下することになる。なお、載置テーブル38を間において上下に複数の改良液除去用ノズル35を対称に設けてもよい。
前記回収手段36は、図6に示すように、肉質改良液受け部材82を有している。この肉質改良液受け部材82は、載置テーブル38の下方で、さらに注入用フレーム32の内部における複数の送り板43の下方に配置されており、上部が開口のほぼ箱状に形成されている。そして、肉質改良液受け部材82の後側に示す深さが最も深く形成された部位には、肉質改良液排出ドレン83が配設されており、この肉質改良液排出ドレン83には、肉質改良液回収配管84の一端が接続されている。
前記肉質改良液回収配管84の他端には、図1に示すように、回収した肉質改良液を貯留するための肉質改良液回収タンク85を具備するタンクユニット86の肉質改良液回収タンク85に接続する外部回収管87に接続されている。
前記洗浄装置4について図1、図2、図20および図21によりさらに説明する。
図20は図1の洗浄装置の要部を示す一部省略拡大平面図、図21は図1の洗浄装置の要部を示す一部省略拡大右側面図である。なお、符号は一部にのみ付してある。
前記洗浄装置4は、図1、図2、図20および図21に示すように、注入装置3から身が上、皮が下を向いた状態で送り込まれるフィレFを受け取って、このフィレFを身が上、皮が下を向いた状態で前方から後方に搬送して排出位置OPから外部に送り出す洗浄用コンベヤとしての洗浄用ネットコンベヤ91と、この洗浄用ネットコンベヤ91によって搬送されるフィレFの表面を搬送の途中で洗浄するための洗浄手段92と、洗浄した後のフィレFに空気を噴射してフィレFに付着している洗浄液を強制的に除去するための洗浄液除去用ノズル93と、洗浄用フレーム94とを有している。また、洗浄用フレーム94の前側である搬送方向上流側に洗浄手段92が配置されており、洗浄用フレーム94の後側である搬送方向下流側に洗浄液除去用ノズル93が配置されている。
前記洗浄用ネットコンベヤ91は、無端環状に形成された搬送ネットとしての洗浄用搬送ネット96と、ギヤードモータなどからなる洗浄用駆動モータ97とを有している。また、洗浄用搬送ネット96は、搬送方向上流側である洗浄用フレーム94の上部の前端部近傍に回転自在に配設された第1従動用ロール98の外周面に取り付けられた複数の第1従動スプロケット99と、搬送方向下流側である洗浄用フレーム94の上部の後端部近傍に回転自在に配設された駆動用ロール100の外周面に取り付けられた複数の駆動スプロケット101と、洗浄用フレーム94の前後方向の中央部分の下方に配置された第2従動用ロール102の外周面に取り付けられた複数の従動スプロケット103との間に掛け回されている。すなわち、第1従動用ロール98、第2従動用ロール102および駆動用ロール100は、それぞれの軸線を左右方向に向けて配置されているとともに、上部が水平なほぼ逆三角形をなすように相互に平行に配置されている。そして、洗浄用駆動モータ97の駆動力によって駆動用ロール100、ひいては洗浄用搬送ネット96を図1の時計方向に間欠駆動させることができるようになっている。また、洗浄用搬送ネット96の内側には、洗浄用搬送ネット96の搬送面が水平面となるように案内するための複数の洗浄用ガイド板104が左右方向に並設されている。勿論、第1従動用ロール98を搬送方向下流側に配置し、駆動用ロール100を搬送方向上流側に配置する構成としてもよい。なお、洗浄用搬送ネット96としては、殺菌用ネットコンベヤ11より網目(隙間)が大きく形成されているもの(チョコネットコンベヤ)を用いることが、洗浄に供した洗浄液がより容易に流下しやすいという意味で好ましい。
なお、洗浄用ネットコンベヤ91のその他の構成は、従来のネットコンベヤと同様とされており、その詳しい説明については省略する。
前記洗浄手段92は、搬送経路を上方から臨むように配置された肉質改良液を希釈可能な洗浄液を噴射可能な洗浄用ノズル106を有している。本実施形態の洗浄用ノズル106は、殺菌用ネットコンベヤ11の上方に配置されている。
前記洗浄用ノズル106は、前後方向に2列、左右方向に3列に配置されており、各洗浄用ノズル106の基端部は、洗浄用ノズル106の上方に前後方向に間隔をおいて相互に平行に配設された前後1対の洗浄用パイプ体107に接続されている。すなわち、左右方向に沿って延在する1つの洗浄用パイプ体107に対して左右方向に配置された3つの洗浄用ノズル106の基端部が接続されている。また、各洗浄用ノズル106は、その軸線方向を上下方向に向けて配置されており、その先端部は、搬送経路を上方から臨むように下方を向いて配置されている。
前記両洗浄用パイプ体107の内部には、洗浄液貯留タンクに貯留された肉質改良液を希釈可能な洗浄液が洗浄液用ポンプ(共に図示せず)により供給されるようになっており、各洗浄用パイプ体107の内部に供給される洗浄液が各洗浄用ノズル106の先端から洗浄用ネットコンベヤ91、ひいては洗浄用ネットコンベヤ91により搬送されるフィレFの身の表面に向かって噴射することができるようになっている。
なお、洗浄手段92としては、前記殺菌手段12と同様に、洗浄用ネットコンベヤ91を間において上下に洗浄用ノズル106を対称に配置する構成としてもよい。
前記洗浄液除去用ノズル93は、殺菌液除去用ノズル13と同様に、搬送経路を上方から臨むように洗浄用ネットコンベヤ91の上方に配設されている。本実施形態の洗浄液除去用ノズル93は、左右方向に沿って3つ配置されている。これらの洗浄液除去用ノズル93は、それぞれの軸線方向を前後方向に沿うとともに上下方向に対して斜めに傾斜して配置されており、それぞれの先端部を前方斜め下方に向けて配置されている。そして、各洗浄液除去用ノズル93の基端部は、洗浄液除去用ノズル93の上方に左右方向に沿って延在する洗浄液除去用パイプ体109に接続されている。また、洗浄液除去用パイプ体109の内部に供給される空気が各洗浄液除去用ノズル93の先端から洗浄用ネットコンベヤ91、ひいては洗浄用ネットコンベヤ91により搬送されるフィレFの身の表面に向かって噴射されることで、洗浄用ネットコンベヤ91の網目を通過して流下せずにフィレFの身の表面に付着している洗浄液を除去することができるようになっている。そして、フィレFの身の表面から空気により除去された洗浄液は洗浄用ネットコンベヤ91の網目を通過して下方に流下する。なお、洗浄用ネットコンベヤ91を間において上下に複数の洗浄液除去用ノズル93を対称に設けてもよい。
前記洗浄用フレーム94の内部における第1従動用ロール98および駆動用ロール100の下方で、第2従動用ロール102の上方には、洗浄液受け部材111が配設されている。この洗浄液受け部材111は、フィレFの洗浄に供されて上方から流下する洗浄液を受け止めるためのものであり、上部が開口のほぼ箱状に形成されている。そして、洗浄液受け部材111の前後方向の中央部に示す深さが最も深く形成された部位には、洗浄液排出ドレン112が配設されており、この洗浄液排出ドレン112には、図示しないホースまたはパイプなどの一端が接続されており、洗浄液受け部材111に流下した洗浄液を外部に送出することができるようになっている。なお、洗浄液受け部材111に流下した洗浄液を図示しない洗浄液貯留タンクに戻すことで、洗浄液を循環使用するようにしてもよい。
なお、洗浄手段92としては、洗浄用ネットコンベヤ91により搬送されるフィレFを、搬送の途中で搬送しつつ洗浄槽に入った洗浄液の液中を通過させる構成としてもよい。
前記殺菌用駆動モータ17、直交軸ギヤードモータ41および針用駆動モータ59などは、図示しないCPU(MPUであってもよい。)およびメモリを有する制御手段に接続されており、制御手段から送出される制御指令により、殺菌用ネットコンベヤ11、注入用搬送手段33および洗浄用ネットコンベヤ91によるフィレFの搬送量、搬送タイミングなどが等しくなるように間欠搬送できるように制御されている。勿論、肉質改良液の注入タイミング、すなわち、供給ユニットの肉質改良液用ポンプ68の駆動タイミングも制御手段から送出される制御指令により、針ユニット57が上昇して注射針61がフィレFから抜けるときに肉質改良液をフィレFに注入するように制御されている。
なお、殺菌用ネットコンベヤ11および洗浄用ネットコンベヤ91を連続搬送する構成としてもよい。この場合、殺菌用ネットコンベヤ11の搬送方向下流側で載置テーブル38の注入手段34の配設位置より搬送方向上流側と、注入用搬送手段33の搬送方向下流側で洗浄用ネットコンベヤ91の洗浄手段92の配設位置より搬送方向上流側との両者に、フィレFとを一時保持することのできる底部に開閉可能なシャッタを具備する排出シュートのような受渡し装置を設けることにより、殺菌装置2から注入装置3へのフィレFの受け渡し、および注入装置3から洗浄装置4へのフィレFの受け渡しをフィレFに損傷を与えることなく円滑に行うことができるという意味で好ましい。
つぎに、前述した構成からなる本実施形態の作用について説明する。
本実施形態の肉質改良システム1によれば、殺菌装置2の前上部である供給位置SPで、殺菌用ネットコンベヤ11に身が上、皮が下を向いた状態で載置されたフィレFは、殺菌用ネットコンベヤ11により搬送方向Aに沿って搬送経路を間欠搬送される途中で、殺菌手段12の各殺菌用ノズル24から噴射される殺菌液により殺菌される。また、殺菌液により殺菌されたフィレFは、殺菌用ネットコンベヤ11により注入装置3に送り出される前に、搬送方向下流側に配置された殺菌液除去用ノズル13から噴射される空気により、流下せずにフィレFの身の表面に付着している殺菌液が除去される。したがって、殺菌液により殺菌されたフィレFは、殺菌に供した殺菌液を空気で除去した状態で注入装置3の一部を構成する注入用搬送手段33の載置テーブル38に送り出される。
ついで、注入用搬送手段33の載置テーブル38に送り込まれて移載されたフィレFは、注入用搬送手段33により搬送方向Aに沿って搬送経路を間欠搬送される途中で搬送が停止した際に、針ユニット57の各注射針61の先端がフィレFの身に刺さることにより肉質改良液が注入される。また、肉質改良液が注入されたフィレFは、注入用搬送手段33により洗浄装置4に送り出される前に、搬送方向下流側に配置された改良液除去用ノズル35から噴射される空気により、フィレFの身の表面に存在する肉質改良液が強制的に除去される。すなわち、肉質改良液が注入されたフィレFは、フィレFの身の表面に付着している肉質改良液を空気で除去した状態で洗浄装置4の一部を構成する洗浄用ネットコンベヤ91に送り出される。ここで、肉質改良液をフィレFに注入する際にフィレFに刺さらない注射針61から吐出された肉質改良液、およびフィレFの身の表面から空気により除去された肉質改良液などの注射針61から吐出された肉質改良液のうちフィレFの身に注入されない肉質改良液は、殺菌液受け部材29に流下した後、肉質改良液排出ドレン83、肉質改良液回収配管84および外部回収管87をこの順に介して肉質改良液回収タンク85に回収される。なお、肉質改良液がフィレFに刺さらずに注射針61から吐出するのは、フィレFの平面形状および左右方向のサイズが変化すること、複数の注射針61の左右方向の配列範囲がフィレFの左右方向のサイズより大きく設定されているからである。また、肉質改良液がフィレFの身の表面に付着するのは、注射針61をフィレFから抜いたあとに注射針61の刺さった孔から肉質改良液が溢れたりするからである。
ついで、洗浄用ネットコンベヤ91に送り込まれて移載されたフィレFは、洗浄用ネットコンベヤ91により搬送方向Aに沿って搬送経路を間欠搬送される途中で、洗浄手段92の各洗浄用ノズル106から噴射される洗浄液により洗浄される。このとき、改良液除去用ノズル35から噴射される空気により除去されずにフィレFの身の表面に付着している肉質改良液が洗浄液により洗浄されることになる。また、洗浄液により洗浄されたフィレFは、洗浄用ネットコンベヤ91により排出位置OPで外部に排出される前に、搬送方向下流側に配置された洗浄液除去用ノズル93から噴射される空気により、流下せずにフィレFの身の表面に付着している洗浄液が除去される。したがって、洗浄液により洗浄されたフィレFは、洗浄に供した洗浄液を空気で除去した状態で外部に排出される。ここで、肉質改良液を希釈可能な洗浄液でフィレF洗浄するのは、改良液除去用ノズル35から噴射される空気により除去しきれなかった肉質改良液(改良液除去用ノズル35による空気の噴射領域を通過した後に注射針61の刺さった孔から徐々に溢れる肉質改良液を含む)を確実に除去するためである。
このように本実施形態の肉質改良システム1によれば、肉質の改良に供する肉質改良対象食材としての魚から形成されたフィレFを前方から後方に搬送して送り出す殺菌用コンベヤとしての殺菌用ネットコンベヤ11、およびこの殺菌用ネットコンベヤ11によって搬送されるフィレFを搬送の途中で殺菌液により殺菌する殺菌手段12を具備する殺菌装置2と、殺菌装置2から送り込まれたフィレFを前方から後方に間欠搬送して送り出す注入用搬送手段33、およびこの注入用搬送手段33により間欠搬送されるフィレFに、搬送の途中で搬送が停止した際に肉質を改良するための肉質改良液を注射針61により注入する注入手段34を具備する注入装置3と、注入装置3から送り込まれたフィレFを前方から後方に搬送して外部に送り出す洗浄用コンベヤとしての洗浄用ネットコンベヤ91、およびこの洗浄用ネットコンベヤ91により搬送されるフィレFを搬送の途中で肉質改良液を希釈可能な洗浄液により洗浄する洗浄手段92を具備する洗浄装置4とを有しているから、フィレFに対して、殺菌液による殺菌、肉質改良液の注入、および洗浄液による洗浄をこの順に連続して行うことができるので、肉質改質処理を効率よく行うことができる。また、フィレFの肉質を容易かつ確実に改良することができる。
本実施形態の肉質改良システム1によれば、注入用搬送手段33は、送り用駆動モータとしての直交軸ギヤードモータ41を停止させることなくフィレFの間欠搬送を行うことができ、注入手段34は、針用駆動モータ59を停止させることなく注射針61の上下動を行うことができ、注入用搬送手段33および注入手段34は、フィレFの搬送が停止したときに注射針61を下降させて注射針61をフィレFに刺すことができるから、フィレFの間欠搬送と注射針61の上下動とが干渉するのを防止できる。
本実施形態の肉質改良システム1によれば、注入装置3は、注射針61がフィレFから抜けるときに肉質改良液を注入することができるから、注射針61がフィレFに刺さるときに肉質改良液を注入する場合に比較して、注射針61をフィレFから抜いたあとに注射針61の刺さった孔から肉質改良液が溢れる量を低減できる。
本実施形態の肉質改良システム1によれば、送り用移動手段40は、送り支持部材としての支持ステー47と送り用駆動モータとしての直交軸ギヤードモータ41の駆動力をもって回転駆動される複数の回転軸50と、各回転軸50に取り付けられる円盤49と、軸線方向を左右方向にして配置され基端部が円盤49の回転軸線から離れた位置に偏心して取り付けられ、先端部が支持ステー47に回転自在に取り付けられた送り用駆動ローラ48とを有しているから、送りユニット39をフィレFの搬送方向Aに対して直交する上下方向およびフィレFの搬送方向Aに沿った前後方向に円形の軌跡をもって容易かつ確実に運動させることができる。
本実施形態の肉質改良システム1によれば、針用移動手段58は、針ユニット57が上部に取り付けられる左右1対の駆動軸72と、駆動軸72を上下方向に沿って移動可能に支持する上下1対のガイド部材73と、駆動軸72に取り付けられたスライダ75と、針用駆動モータ59の駆動力をもって回転駆動されスライダ75を上下方向に移動させるためのクランク機構76とを有しているから、針ユニット57を載置テーブル38の上方で容易かつ確実に上下動させることができる。
本実施形態の肉質改良システム1によれば、送り用駆動モータとしての直交軸ギヤードモータ41が針用駆動モータ59を兼用するとともに、直交軸ギヤードモータ41の出力軸41aがクランク機構76のクランク軸78を兼用するように形成されており、直交軸ギヤードモータ41の駆動力により、送りユニット39および針ユニット57とが連動するように形成されているから、1つの送り用駆動モータとしての直交軸ギヤードモータ41の駆動力により送りユニット39および針ユニット57を連動、詳しくは、フィレFの搬送が停止したときに注射針61を下降させて注射針61をフィレFに刺し、フィレFに刺した注射針61を上昇させて注射針61がフィレFから抜けて離脱したときにフィレFを搬送することができるように送りユニット39の運動と、針ユニット57の運動とを容易かつ確実に連動させることができるので、部品点数の削減および装置の軽量化を図ることができる。
本実施形態の肉質改良システム1によれば、殺菌装置2は、殺菌用コンベヤとしての殺菌用ネットコンベヤ11で搬送される途中のフィレFに対して殺菌用ノズル24で殺菌液を噴射してフィレFの殺菌を行うから、殺菌液が殺菌用ネットコンベヤ11の網目を通過するので、殺菌した後のフィレFを注入装置3に送り込んだときに殺菌液が注入装置3に送られるのを防止することができるとともに、フィレFの殺菌を効率よく短時間で行うことができる。
本実施形態の肉質改良システム1によれば、洗浄装置4は、洗浄用コンベヤとしての洗浄用ネットコンベヤ91で搬送される途中のフィレFに対して洗浄用ノズル106で洗浄液を噴射してフィレFの洗浄を行うから、洗浄液が洗浄用ネットコンベヤ91の網の隙間を通過するので洗浄した後のフィレFを外部に排出したときに洗浄液が外部に送られるのを防止することができるとともに、フィレFの洗浄を効率よく短時間で行うことができる。
本実施形態の肉質改良システム1によれば、殺菌用コンベヤとしての殺菌用ネットコンベヤ11および洗浄用コンベヤとしての洗浄用ネットコンベヤ91は、フィレFを間欠搬送するように形成されているとともに、それぞれのフィレFの搬送量が注入用搬送手段33によるフィレFの搬送量と等しくされ、かつ殺菌用ネットコンベヤ11および洗浄用ネットコンベヤ91によるフィレFの搬送タイミングが、注入用搬送手段33によるフィレFの搬送タイミングと同期されているから、殺菌装置2から注入装置3へのフィレFの受け渡し、および、注入装置3から洗浄装置4へのフィレFの受け渡しを円滑に行うことができる。
本実施形態の肉質改良システム1によれば、殺菌液除去用ノズル13は、フィレFに付着した殺菌液を確実に除去することができるので、フィレFの表面に殺菌液が残留するのを防止することができる。
本実施形態の肉質改良システム1によれば、改良液除去用ノズル35は、肉質改良液を注入した後のフィレF身の表面に存在する肉質改良液を強制的に除去することができる。
本実施形態の肉質改良システム1の回収手段36によれば、回収手段36は、複数の注射針61から吐出された肉質改良液のうちフィレFに注入されない肉質改良液を回収することができる。その結果、肉質改良液の無駄な消費を抑えることができる。すなわち、肉質改良液のうち使用に供する効率(歩留まり)を向上することができる。
本実施形態の肉質改良システム1によれば、洗浄液除去用ノズル93は、フィレFに付着した洗浄液および洗浄液で希釈された肉質改良液を除去することができるので、フィレFの表面に洗浄液および肉質改良液が残留するのを防止することができる。
なお、本発明は、前述した実施形態に限定されるものではなく、必要に応じて種々の変更が可能である。