ところで、上述した一般的なビールサーバシステムでは、ビール樽BTにビールが残っている間は通常どおりビールを注出できるが、ビールの注出作業中にビール樽BTが空になれば、加圧ガスだけが冷却注出装置CAから勢いよく放出され、それまでグラスに注いだビールが加圧ガスによって飛び散り、商品として提供できないばかりでなく、飛び散ったビールで周囲を汚してしまうという課題があった。
これとは別の課題として、その日の営業終了後には、必ずビール管BP及び冷却注出装置CAを洗浄しなければならないが、従来は、このときシステム内の残留ビールを廃棄していたのである。即ち、冷却注出装置CAは冷却機構として内部に蛇管状の熱交換器NKを備え、直前の注出作業によって当該熱交換器NK内は常にビールで満たされた状態にあり、次回注出までに急速に冷却される仕組みになっている。これに対して洗浄作業は、ビール樽BTに装着していたディスペンサヘッドDHをビール管BP及びガス管GPを接続したまま、洗浄液(通常は水)が入った洗浄樽に付け替え、適宜、ビール管BPに洗浄用スポンジを投入し、ビールの注出作業と同じ要領で、コックCを操作する。このとき、一般的な容量の冷却注出装置CAであれば、熱交換器NKにはちょうど大グラス一杯分の量(約300cc)のビールが残留している。しかし、従来は、その全てを洗浄液によって洗い流していた。このように冷却注出装置CAにはビールが残留していることが分かっているのだから、これをラストオーダで提供できればビールを廃棄することがなくなるが、従来のシステムでは、この残留ビールだけを注出することはできなかったのである。
本発明は上述した課題を解決するためになされたもので、その目的とするところは、ビール樽が空になれば、冷却注出装置から加圧ガスが噴出しないよう飲料流路を即座に遮断し、また、システムの洗浄作業前に、ラストオーダとして冷却注出装置に残留しているビールを注出することで、ビールを無駄なく商品として提供することができるビール注出制御装置を提供することである。なお、適用する飲料はビールに限らない。
上述した目的を達成するために本発明では、図8にて説明した飲料樽の液面にガスボンベから所定圧の加圧ガスを印加し、もって前記飲料樽内の飲料を冷却注出装置に圧送する飲料サーバシステムに付加することを前提として、前記飲料樽と冷却注出装置間の飲料流路には、遮断弁と、飲料の有無を検知する液体センサとを設ける一方、前記ガスボンベと前記飲料樽間のガス流路には、該ガス流路から分岐して、前記遮断弁の下流側に前記加圧ガスを減圧した減圧ガスを供給可能なバイパス流路を設けると共に、該バイパス流路中に常閉の電磁弁を設け、前記液体センサが飲料を検知しなかったとき、前記遮断弁を閉弁して、飲料流路を遮断するという手段を用いる。また、これと同時に、または遅延して、前記電磁弁を開弁することにより、前記遮断弁の下流側に残留する飲料を前記減圧ガスにより注出可能とした。
当該手段において飲料流路には、液体センサと遮断弁とが設置されるが、現在標準となっている営業終了後のスポンジ洗浄を可能とするため、本発明では、次のような構成を採用する。
即ち、液体センサは、飲料流路内を流れる飲料に応じて、その有無を検知できるものであって、該流路内を流れる飲料と非接触の状態で飲料の有無を検知できるものであることが好ましい。このような非接触式の液体センサとしては、飲料流路の管壁に作用する温度の変化を静電容量の計測により飲料(液体)の有無を検知する静電容量形近接センサが代表的であるが、この他、音や電磁波によって飲料の有無を検知することも可能であり、さらに、当該センサを取り付ける飲料流路の全部または一部が透明または半透明素材からなる場合は光学センサを使用することもできる。この光学センサには、検知信号を所定の制御回路に発するだけでなく、この検知信号よって、遮断弁に直接閉弁指令(後述するソレノイドの通電指令)を発する、いわゆる光電スイッチも含まれる。
また、本発明の遮断弁は、液体センサと電気的に接続されて開閉動作を行う一種の電磁弁でなければならない。しかし、一般的な電磁弁は、ソレノイドの内部を弁体(プランジャ)が移動する構造であるため、飲料の通過はできても、洗浄用スポンジはここを通過することができない。そこで、洗浄用スポンジの通過を担保するため、本発明では、磁石からなる弁体と、前記飲料流路と連通して飲料が通過する内部流路の一部に該流路に沿って前記弁体が着座する弁座を設けた本体と、該本体の前記弁座よりも上流側を下方に分岐して、前記弁座から離座した弁体が両端の磁極を維持して前記内部流路が前記飲料流路と連通する位置に収容される落とし込み凹部と、前記液体センサが飲料を検知しなかったときに通電され、その磁力により該落とし込み凹部に収容された弁体を前記弁座に着座自在に吸引するソレノイドとで遮断弁を構成した。当該構成の遮断弁は従来存在しなかった、それ自体新規なものであり、通常は、弁体が自重により落とし込み凹部に停留し、飲料及び洗浄スポンジの通過を許容している。なお、本発明において「ソレノイド」とは、ソレノイドコイルのことである。
ここまでの全体的構成によれば、飲料樽に飲料が存在している間は、飲料流路は飲料で満たされているから、液体センサは反応せず、遮断弁のソレノイドは未通電の無励磁状態として、弁体が自重により落とし込み凹部に停留し、遮断弁が開弁する。このとき、バイパス流路は常閉の電磁弁によって機能しない。したがって、システム本来の飲料流路およびガス流路が確保され、通常どおり、飲料樽から飲料を注出することができる。
一方、飲料樽が空になって、飲料流路が加圧ガスやビール泡で満たされたときは、液体センサは飲料を検知しなくなる。そして、飲料を検知しなくなったときに液体センサは遮断弁の閉弁指令、即ちソレノイドの通電指令を行う。なお、本発明では便宜上、飲料無しとして検知するという言い方をする場合がある。このような飲料の未検知信号(飲料無しの検知信号と同義)をトリガとして、ソレノイドを通電し、当該通電によりソレノイドはその内部に巻き方向や巻数に応じた磁界を生成し、当該磁力によって磁石である弁体を吸引する。この吸引によって弁体は落とし込み凹部から弁座に引き寄せられ、そのまま、あるいは遮断弁の上流側に作用する加圧ガスに付勢されて着座する。特に、ソレノイドが、電磁力を高めるために、鉄心を有する場合は、磁石である弁体は当該鉄心に磁着して着座動作がより確実となる。
このように、弁体を着座可能な位置まで吸引できれば、その後は、ソレノイドへの通電を停止することができる。むしろ、通電を継続すると、発熱等の問題が発生するため、ソレノイドへの通電は瞬間的なものであることが好ましい。そこで、本発明では、液体センサが飲料を検知しなかったとき、少なくともソレノイドを通電するオートモードスイッチを備え、該スイッチによるソレノイドの通電時間は、弁体が落とし込み凹部から弁座側に移動し、加圧ガスの付勢により着座を維持するまでとする手段を選択的に用いる。
このオートモードスイッチによれば、営業開始時に、これをオンしておくことによって、飲料樽が空になったときには自動的に遮断弁が閉弁して、加圧ガスが冷却注出装置から放射されることが防止される。また、このオートモードスイッチによって電磁弁の開弁も自動で行うようにしておけば、作業者は樽や流路の状況を把握することなく、そのまま通常どおりに注出作業を行うことで、遮断弁より下流側の残留飲料を注出することができる。
このように遮断弁を閉弁することでその上流側を閉鎖し、電磁弁を開弁することでバイパス流路を開放することによって、遮断弁の下流側にある残留飲料の注出に移行する。そして、当該移行後、残留飲料はバイパス流路中で減圧された低圧のガスによって注出されることになる。残留飲料を本来の加圧ガスではなく、減圧した低圧の減圧ガスで注出するようにしたのは、残留飲料を注出しきった後、減圧ガスが放出されても、当該減圧ガスであればグラス等に注いだ飲料が飛び散ることがないからである。
その反面、減圧ガスによる残留ビールの注出時は、通常の注出よりも、飲料の注出速度が遅くなる。作業者がこのことを予め知っていれば問題ないが、知らない場合、通常の飲料注出と連続して残留ビールの注出に移行すると、作業者は故障等の不具合を疑う可能性がある。つまり、本発明では、飲料樽が空になったとき、遮断弁の閉弁と、電磁弁の開弁とを自動的に行うように設定することも可能であるが、そうすると、システムの取扱いを熟知していない作業者(例えばアルバイト)に不要な疑義を与える可能性がある。
そこで、本発明では、オートモードスイッチはソレノイドの通電のみを行うものとして、作業者に残留飲料の注出は別作業であることを認知させる手段として、オートモードスイッチとは別に、任意にバイパス流路の電磁弁を開弁する残留飲料注出用スイッチを採用する。
ところで、残留ビールを注出した後は、本来の加圧ガスにより洗浄作業及び通常の飲料注出作業が行えるように、遮断弁の開弁復帰と、電磁弁の常閉復帰とが必要になる。ここで、残留ビールの注出直後は、遮断弁の上流側には本来の加圧ガスが作用している一方、遮断弁の下流側には減圧ガスが作用して差圧が生じており、減圧ガスよりも高圧な加圧ガスによって遮断弁の弁体は着座方向に付勢された状態にある。このため、ソレノイドの通電を停止して、未励磁状態とするのみでは、弁体が落とし込み凹部に自然落下しにくいことが想定される。この状態で、電磁弁の常閉復帰を行うと、ますます差圧解消の機会がなくなり、遮断弁の開弁復帰がより困難となる。
そこで、本発明では、さらに、ソレノイドに対して弁体の吸引時とは逆向きの電流を通電して弁体を磁気反発により離座させると共に、電磁弁を常閉に復帰させるリセットスイッチを備えるという手段を採用する。当該リセット手段によれば、加圧ガスの付勢または/およびソレノイドへの磁着により、ソレノイドの未励磁時に弁体の着座が保持されるような場合であっても、逆向き電流によってソレノイドの磁極が反転して、その磁気反発力によって弁体を弁座から離座させることができる。弁体が離座すれば、遮断弁の内部流路が開通するため、時間の多少はあるが、遮断弁の上流側と下流側が等圧となり、弁体が落とし込み凹部に移動しやすくなる。
特に、ソレノイドに対する逆向き電流の通電後、遮断弁の上流側と下流側の飲料流路が等圧となる時間だけ遅延して、電磁弁を常閉に復帰させることで、バイパス流路から減圧ガスが遮断弁の下流側に供給され、その間、減圧ガスが弁体を離座させる方向に作用するため、ソレノイドへの逆向き電流の通電と同時に遮断弁を常閉復帰させるよりも、結果的に、短時間、且つ、確実に、遮断弁を開弁復帰させることができる。
このリセット補助手段とは別に、本発明では、ガス流路またはバイパス流路の減圧弁よりも上流側から分岐して、バイパス流路の電磁弁の下流側と接続する差圧解消用ガス流路を設けると共に、該差圧解消用ガス流路中にバイパス流路の電磁弁とは別の電磁弁を設け、リセットスイッチは、ソレノイドに対する逆向き電流の通電と、バイパス流路における電磁弁の常閉復帰と、差圧解消用ガス流路における前記別の電磁弁の開弁を同時に行うというリセット補助手段を採用することもある。この別の手段によれば、リセットスイッチのオン操作により、バイパス流路に設けた電磁弁の常閉復帰と、差圧解消用ガス流路に設けた別の電磁弁の開弁が同時に行われ、遮断弁の下流側が本来の加圧ガスに相当する圧力となって、その上流側と即座に等圧となるから、遮断弁の弁体が速やかに落とし込み凹部に移動し、遮断弁の開弁復帰が迅速に行われることになる。
さらに、本発明では、液体センサによる飲料の有無の検知とは別に、任意にソレノイドの通電及び電磁弁の開弁を強制的に行う流路切替スイッチをさらに備えることもある。この流路切替スイッチは、飲料樽に飲料が残っていて(言い換えれば、オートモードスイッチをオンしていた場合に、液体センサが飲料なしを検知せず、残留飲料の注出に移行しなかった場合に)、その日の最後の飲料を提供する場合に用いる。即ち、流路切替スイッチをオンすることによって、液体センサによる液無し検知時と同じバイパス流路が実現されるため、飲料樽に飲料が残っていて、これを翌営業日に持ち越すような場合であっても、システム内の残留飲料だけをラストオーダとして提供することができる。この注出作業によっても、システム内の残留飲料を完全に注出することができるから、その後の洗浄作業時に飲料を廃棄することがなくなる。
なお、遮断弁と液体センサの位置関係については、何れが上流側であってもよいが、遮断弁を液体センサの上流側(一次側)に設けることが好ましい。遮断弁を飲料流路中、液体センサの下流側(二次側)に設けると、液体センサが飲料を検知しなかったとき、遮断弁に飲料が残留している可能性があり、遮断弁はバイパス流路よりも上流側に位置するため、加圧ガスの流路をバイパス流路に切り替えたとしても、遮断弁の残留飲料を排出できず、遮断弁を開弁復帰するときに、この残留飲料が弁体の落下を阻害する可能性があるからである。また、液体センサをより下流側に位置させることで、その分、飲料流路の残飲料を少なくすることができるからである。
また、遮断弁は、開弁時に飲料が通過する内部流路(本体の飲料流路)と、弁体の落とし込み凹部とを必要とするが、弁体の自重による落とし込み凹部への落とし込みを確実にするには、内部流路を水平とするよりも、鉛直方向に設けることが好ましい。さらに、落とし込み凹部は、下端部に弁体が出し入れ自在な開口を設けると共に、該開口に着脱自在なキャップを装着してなることで、このキャップを取り外せば、遮断弁を飲料流路に接続したままの状態で、前記開口を通じて内部の清掃及びメンテナンスが可能となる。
なお、適用する飲料は、その注出圧が比較的高圧である炭酸飲料、特にビールであることが好ましい。
他方、バイパス流路中、電磁弁の上流側に加圧ガスを減圧して減圧ガスを生成する減圧弁を設けると共に、電磁弁の下流側に逆止弁を設けることが好ましい。減圧弁は、バイパス流路に分流した加圧ガスを冷却注出装置内の残留飲料を注出するのに適した圧力まで減圧するものであり、弁口の開度を調整する流量調整弁などが該当する。また、その下流に設ける電磁弁は、通常は閉弁してバイパス流路を閉止しており、所定条件となったときに開弁するものである。電磁弁の主流はプランジャ式であるが、液体センサや遮断弁と同じ電気回路で制御できる電気駆動式の開閉弁であれば他の構造のものも採用することができる。減圧弁と電磁弁の位置関係については、より確実に加圧ガスを減圧できるという理由から、減圧弁を電磁弁の上流側に設けている。これと同時に、電磁弁は減圧後の加圧ガスに対応するもので済むため、小型の電磁弁を採用できるという利点もある。さらに、電磁弁の下流に位置する逆止弁は、バイパス流路への飲料の逆流を防止することで、その上流に設けた各弁を保護する。
本発明の飲料注出制御装置によれば、飲料樽が空になれば飲料流路を遮断するため、加圧ガスが放出するのを防止して、既にグラスに注いでいた飲料を吹き飛ばすことがなく、しかも、飲料樽が空になったときはもちろん、飲料樽に残量があるときでも、任意に、ガス流路をビール樽に印加するよりも低圧の加圧ガスを供給するバイパス流路に切り替えることができるため、洗浄時に冷却注出装置に残留する飲料を無駄に洗い流すことがなく、飲料樽の飲料を使い切ることができる。
また、本装置は、新規に飲料サーバシステムを構築する際に当初から組み付けることができることはもちろん、既存の飲料サーバシステムに対しても簡単な分岐作業によって後付けすることもできる。これに加えて、飲料流路に設ける遮断弁および液体センサは、洗浄用スポンジの通過を何ら阻害するものではないため、当該システムを標準の洗浄作業によって常に衛生的に保持するという実用的効果がある。
以下、本発明の好ましい実施の形態を添付した図面に従って説明する。図1は、本発明の一実施形態として、図8に示したビールサーバシステムに付加するビール注出制御装置の概要を示した図であって、図中、1は図7のビール管BP中に設けた液体センサ、2は前記ビール管BP中、液体センサ1の上流側に設けた遮断弁、3は図7のガス管GPから分岐して、端部を前記ビール管BPの遮断弁2と液体センサ1間、即ち遮断弁2の下流側に接続した加圧ガスのバイパス管、4はバイパス管3中に設けた減圧弁、5はバイパス管3中、減圧弁4の下流側に設けた電磁弁、6はバイパス管3中、さらに電磁弁5の下流側に設けた逆止弁である。
本装置における各要素の配列は上述のとおりであり、次に、各要素について詳述する。まず液体センサ1は、ビール管BP内のビール(液体)の有無を検知するもので、本発明ではビールが無いとき、即ちビール管BP内が気相となったときに検知信号を発するものを採用する。ここで気相とは、加圧ガスあるいはビールの泡である。液体センサとしては、直に液体と接触する接触式と、ビール管BPの外側から液体を間接的に検知する非接触式が考えられるが、接触式の場合はその接触子がビール管BPの流路を妨げ、ここを通過する際、ビールが発泡したり、また洗浄用スポンジは通過できなくなる。よって、この実施形態では、液体センサ1として、ビール管BPの外側から当該内部のビールを検知する非接触式のセンサを採用することが好ましい。そして、この実施形態では、光の照射部と受光部が一対となって、照度(透明度)や屈折率の変化を検知する光学センサを採用している。なお、このような光学センサを液体センサ1として採用するにあって、その設置箇所に係るビール管BPを透明または半透明の管で構成している。
次に、同じくビール管BP中に設けられる遮断弁2は、この実施形態の場合、液体センサ1の上流側に設けている。そして、その構造は、鉛直方向に直管状の内部流路2aの下流側(図面上、上側)に弁座2bを有し、前記内部流路2aの弁座2bよりも上流側を下方斜めに分岐して落とし込み凹部2cを一体に形成した本体2dと、この本体2dに前記落とし込み凹部2cに出入自在に収容される弁体2eと、前記本体2dの弁座2bよりも下流側の外周に設けたソレノイド2fを備える。
遮断弁2の本体2dは、上述のように内部流路2aの途中から落とし込み凹部2cを二股に分岐してなり、弁体2eが自重により落とし込み凹部2cに位置するとき、内部流路2aが開放され、ビールが上流から下流(図面上、下から上)に流れるようにしている。なお、この実施形態の場合、落とし込み凹部2cの分岐部分2hで内部流路2aの径を弁体2eよりも小径にしており、弁体2eが誤って当該分岐部分2hを閉止しないようにしている。
ところで、営業終了後に行う洗浄作業では、洗浄液(水等)による洗浄(水洗浄)の他、スポンジによる洗浄を行うことが標準である。スポンジ洗浄は、ディスペンスヘッド側を始点として、ビール管に、その内壁に接する大きさの球状または円柱状等のスポンジを入れ、これを圧送することで、ビールの全流路をスポンジにより洗浄するものである。本発明の場合、その中途に遮断弁2が位置するが、図1に示すように、内部流路2aはスポンジSが通過可能な内径(図面上、ビール管BPと同径)を有するため、弁体2eが落とし込み凹部2cに位置する開弁状態のとき、スポンジSが遮断弁2を通過し、ビール流路をスポンジ洗浄することができる。液体センサ1も非接触式のものを採用することで、スポンジ洗浄に対応する。
さらに、この実施形態では、内部流路2aの下端に、図2に示すように、開口2iを設け、この開口2iをキャップ2jで閉塞している。キャップ2jは開口2iに対して、ネジ結合などにより着脱自在に装着される。よって、本体2dを流路に取り付けたままでも、キャップ2jを外せば、弁体2eを取り出して、洗浄等のメンテナンスをすることができる。特に、この実施形態では、落とし込み凹部2cを流路に対して斜めに設けているため、キャップ2jを外したとき、下端開口2iから弁座2bの様子を容易に目視することができ、また、開口2iからブラシなどの清掃用具も容易に挿入することができる。さらに、下端開口2iから弁体2eを投入した後、キャップ2jを装着することで、弁体2eを本体2dに収容することができる。
弁体2eは、この実施形態において磁石である。また、形状は一定長さの円柱状であり、基端を弁座2bへの着座面として、その先端は流線形をなしている。弁体2eが磁石である理由は、単なる磁性体と比べて、ソレノイドの通電時に吸引力が高まって、より確実に遮断弁2を閉弁することができ、しかも、後述するリセット操作時に、ソレノイドに逆向きの電流を流すことによって、弁体2eを自重だけではなく、磁気反発により、弁座2bから離座させることができるからである。また、弁体2eが円柱状である理由は、遮断弁2の開閉に際して、弁体2eが弁座2bと落とし込み凹部2c間を移動するとき、上下反転によりS極とN極が逆になることを防止し、もって、当初の磁極を維持して、ソレノイドと磁気吸引・磁気反発の関係を保持するためである。そのため、弁体2eが球形であることは好ましくない。さらに、弁体2eの先端を流線形としたのは、弁座2bから離座して、落とし込み凹部2cに戻る際、弁体2eを円滑に落とし込み凹部2cに案内するためであり、また、流体抵抗を小さくするためである。その意味から、先端は球形または円錐形であってよい。ただし、切りっぱなしの平坦形状も排除するものではない。
一方、弁座2bは、弁体2eの着座時のシール性を高め、また、着座時の衝撃を緩和等として耐久性を得るために、テフロン(登録商標)などの樹脂コーティングを施したものが好ましい。
そして、ソレノイド2fは、液体センサ1による液体無しの検知信号を受けて、図示しない電気制御回路によって通電が開始され、励磁するものである。ソレノイド2fは、上述のように本体2dの下流側外周に巻回して設けられるため、その内部に巻き方向や巻数に見合った磁界を生成する。そして、その磁力によって、落とし込み凹部2cに停留する弁体2eを弁座2bへの着座位置まで吸引する作用を行う。もちろん、ソレノイド2fの通電を継続していれば、その磁力のみによって弁体2eを着座状態に維持することができるのであるが、このような通電継続は、発熱等の問題があり、ビールに悪影響であり、また、ビール管BPを熱により変形等させるおそれも想定される。この点に関しては、遮断弁2の下流側には常に加圧ガスが作用しているため、ソレノイド2fにより弁体2eを着座位置まで吸引できれば、その後、当該加圧ガスの付勢によって弁体2eの着座状態を維持することができる。したがって、ソレノイド2fへの通電は、弁体が落とし込み凹部から弁座側に移動し、加圧ガスの付勢により着座を維持するまでの瞬間的なもので十分である。なお、ソレノイド2fの電磁石としての磁力は、弁体2eの磁性や重さに合うように設計する。この点、ソレノイド2fは本体2dに直に電線を巻き付けて構成することも可能であるが、ソレノイド2fと本体2dの間に、円筒状の鉄心2gを設けておくことで、磁力を高めることができる。この場合、弁体2eは磁石であることから、ソレノイド2fの通電を停止し、未励磁の状態としても、弁体2eは鉄心2gに磁着して着座状態を維持する自己保持型の遮断弁とすることができる。
このように、上記実施形態の遮断弁2によれば、通常は、弁体2eが落とし込み凹部2cに停留して内部流路2aが開通することで、ビールを通過させる一方、ビール切れが生じれば、液体センサ1から発せられるビール無し信号に基づいて、ソレノイド2fが励磁して弁体2eを弁座2bに着座させ、その位置でビール管BPを遮断する。
一方、加圧ガスのバイパス管3に設けた減圧弁4は、ここを通る間に、加圧ガスを減圧し、当該減圧した加圧ガス(減圧ガスともいう)をビール管BPの遮断弁2の下流に供給するものである。また、電磁弁5は、通常は閉弁してバイパス管3を閉止しており、所定条件下でのみ開弁してバイパス管3を開通する。さらに、逆止弁6は、ビール管BPからビールや本来のガス圧の加圧ガス等がバイパス管3に逆流する(流れ込む)のを防止しており、これによって当該逆止弁の上流側にある減圧弁4および電磁弁5を保護している。
上記構成のビール注出制御装置は、図8のビールサーバシステムに対し、図3に示すように、ガスボンベGBと冷却注出装置CA間にビール樽BTを迂回するように付加することで、ガスボンベGB・ビール樽BT間に別ルートのガス流路(バイパス管3)を構築する。
図4から図6は、図3のビール注出制御装置の運転態様を示したもので、図4は通常のビール注出態様、図5はビール樽BTが空になったときのビール管BPの遮断態様、図6は冷却注出装置CAに残留するビールのみを注出する態様をそれぞれ示したものである。
まず、図4の通常の注出態様では、ビール樽BTにビールの残量があり、液体センサ1を設けたビール管BPにビールが流れているため、液体センサ1は反応せず、バイパス管3は常閉の電磁弁5により閉鎖されている。したがって、ビール管BPにビールが流れている場合は、遮断弁2のソレノイド2fへの通電指令が発せられないため、通常どおり、ビール樽BTのビールがビールBPを通じて冷却注出装置CAに圧送され、冷却注出装置CAから冷却したビールをグラスに注出することができる。これは図8の従来システムと全く同じ動作である。
そして、図4の注出作業中、ビール樽BTが空(完全な残量ゼロだけを意味するものではなく、ビール樽内でディスペンサヘッドのビール導出パイプが全露出して注出不能な液面レベルをも含む)になると、ビール管BPにガスボンベGBからレギュレタRTによって調整された本来の加圧ガスが流入する。これを液体センサ1がビール無しとして検知し、この検知信号をトリガとしてソレノイド2fを通電する。この通電によってソレノイド2fが励磁し、その磁力によって遮断弁2の弁体2eが吸引され、弁座2bに着座することで遮断弁2が閉弁する。遮断弁2が閉弁すると、図5に示すように、加圧ガスは遮断弁2で停止し、それよりも下流に送出されず、もって、システム全体の流路が停止する。なお、液体センサ1がビール無しを検知し、遮断弁2が閉弁するまでの時間は極めて短く、よって、通常は遮断弁2が閉弁する前に加圧ガスが冷却注出装置CAから放出することを回避することができるが、例えば遮断弁2と冷却注出装置CA間のビール管BPの長さを大きくしておけば、より確実に、遮断弁2が閉弁するまでの当該不用意な放出を回避することができる。
この図5の状態では、まだ電磁弁5は常閉を維持しており、バイパス管3は未開通であるが、液体センサ1によるビール無し検知時に、ソレノイド2fの通電指令と同時、または、その後、別途に電磁弁5の開弁指令を行うことによって、バイパス管3が開通する。
このようにしてバイパス管3が開通すると、ガスボンベGBからの加圧ガスがバイパス管3へと流入する。そして、流入した加圧ガスは減圧弁4で減圧され、図6に示すように、減圧された加圧ガスがビール管BPの遮断弁2よりも下流側に流入し、該下流側のビール管BPと冷却注出装置CAとに残留するビールを押し出すことによって、当該残留ビールを注出することができる。
以上のとおり、図4から図6の動作によって、通常の注出作業中、仮にビール樽BTが空になっても、遮断弁2によってビール樽BT間のビール管BPを閉止することで、加圧ガスがそのままの圧力で冷却注出装置CAから放出されることを防止し、さらに、電磁弁5を開弁することで、本来の加圧ガスよりも低圧の減圧ガスによって冷却注出装置CAの残留ビールのみを注出することができる。したがって、この間、無駄にビールが廃棄されることなく、ビール樽BTのビールをほぼ全量、商品として提供することができる。
なお、図5のビール管BPの遮断と、図6のバイパス管3の開通は、時系列として図5を先、図6をその後とすることもできるが、そうすると作業者は図5の全システム停止の状態から図6のバイパス機能を得るために、電磁弁5の開弁操作を行わなくてはならない。しかし、図5の状態となれば、必ず図6の状態に移行しなければならないのであるから、作業者の負担を軽減するには、液体センサ1によるビール無し検知時には、ソレノイド2fの通電指令と電磁弁5の開弁指令を同時に行うようなスイッチ構成を採用することができる。
これは本発明のオートモードスイッチの一例であって、作業者は営業開始時に当該オートモードスイッチをオンしておけば、ビール樽BTが空になったとき、自動的に図6の状態が実現され、作業者は図4と同様、コックCを開閉するだけの通常の操作でビール樽BTを含めシステム全部のビールを注出することができる。
一方、通常のビール注出と、残留ビールの注出とでは、飲料流路を流れる加圧ガスと、バイパス流路を流れる減圧ガスとの圧力の違いによって、後者のほうが前者よりも注出速度が遅くなる。したがって、通常のビール注出作業と連続して残留ビールの注出作業に移ると、残留ビールの注出に移行した途端、ビールの出方が弱まる。この仕組みを知っている作業者(サーバ利用者)であれば問題はないが、アルバイト店員など、当該仕組みを熟知していな作業者の場合、これが正常な動作であるにも拘わらず、機器の故障と誤解する可能性がある。そこで、オートモードスイッチの他の例では、これをオン操作したときは、遮断弁2のソレノイドの通電のみを行うようにし、電磁弁5の開弁指令は、これとは別の残留飲料注出用スイッチによって行うようにすれば、上記問題に対処することができる。
そして、何れのオートモードスイッチの例においても、冷却注出装置CAの残留ビールを注出し終えれば、オートモードスイッチを解除して、元の状態、即ち図4の状態に復帰させる必要がある。具体的には、遮断弁2を閉弁状態から開弁状態に復帰させると共に、開弁状態にある電磁弁5を常閉の状態に復帰させる必要がある。
まず、遮断弁2の復帰については、上述のように、ソレノイド2fへの通電はビール無し検知時の単発的なもので、既に未励磁の状態にあり、弁体2eは加圧ガスの付勢やソレノイド鉄心2gへの磁着のみによって、着座を維持している。そこで、この着座状態を解消するには、ソレノイド2fの磁気反発を利用することができる。即ち、ソレノイド2fに吸引時とは逆向きの電流を流して、弁体2eに反対の磁極を作用させることで、当該弁体2eを離座方向に反発させることができる。このようにソレノイド2fに対して逆向き電流の通電指令を行うのが、本発明のリセットスイッチである。
しかし、図6の状態において、ビール管BPには遮断弁2を境に、その上流側(ビール樽BT側)には本来の加圧ガスが作用し、一方、下流側(冷却注出装置CA)にはその減圧ガスが作用するというように、遮断弁2の上流側と下流側とで差圧が生じている。つまり、図6の状態では、遮断弁2の上流側でガス圧が高くなっており、弁体2eを着座側に付勢するため、遮断弁2を閉弁するときは好都合であるが、遮断弁2を開弁するときは、この差圧を解消しなければ、弁体2eが自重では落とし込み凹部2cに移動しにくい。
そこで、リセットスイッチの操作時には、ソレノイド2fに対して逆向き電流の通電を行うと共に、その一定時間経過後に、電磁弁5の常閉復帰を遅延して行うことが好ましい。遅延時間中、上記磁気反発により弁体2eが弁座2bから離間することによって遮断弁2が開通し、その間に、差圧が解消され、弁体2eが落とし込み凹部2cに自重により移動可能となる。なお、どの程度の遅延時間とするかは、特に限定されないが、本発明者の試作によれば、3から7秒のタイムラグを持たせることで、遮断弁2を確実に開弁復帰させることができた。
なお、ここまでは、液体センサがビールを検知しなかったとき、自動的に遮断弁2を閉弁し、残留ビールの注出に移行することを説明したが、液体センサによる飲料の有無の検知とは別に、任意にソレノイドの通電及び電磁弁の開弁を強制的に行う流路切替スイッチをさらに備えることも可能である。これは、営業終了後に行うビール流路及び冷却注出装置の洗浄の前に、冷却注出装置CAに残留するビールを商品として注出するため、その日のラストオーダで使用するスイッチである。この点、オードモードスイッチも、冷却注出装置CAの残留ビールを注出する機能はあるが、その前提としてビール樽BTが空であることが条件となる。しかし、営業終了時に、ビール樽BTがぴったり空になっていることなど希であるから、上記流路切替スイッチを独立して設けるのである。
図7は、本発明の第二の実施形態に係るビール注出制御装置の概要図であり、残留ビールの注出後、通常の注出状態に復帰させる際、遮断弁2の上流・下流間の差圧を速やかに解消し、より迅速な遮断弁2の開弁復帰を可能としたものである。図1から6に示した実施形態と同一構成については、同一符号を付し、当該第二実施形態の特徴を説明する。
まず構成上の特徴として、この第二実施形態では、新たに差圧解消用のガス流路7を設けている。差圧解消用ガス流路7は、バイパス流路3の減圧弁4よりも下流側を分岐始端部として、もう一端(終端部)をバイパス流路3の電磁弁5と逆止弁6間に接続している。これによって、遮断弁2の下流側にレギュレタRTによって調圧された加圧ガスを減圧等することなく、そのまま供給するようにしている。なお、該差圧解消用ガス流路7の分岐点(始端部)は、バイパス流路3中ではなく、ガス流路GP中であってもよい(図7中の一点鎖線部分)。
このような差圧解消用ガス流路7には、バイパス流路3の電磁弁5とは別の電磁弁8を設けている。この別の電磁弁8は常閉であり、リセットスイッチをオン操作したときに開弁する。
そして、この第二実施形態では、リセットスイッチをオン操作したとき、遮断弁2におけるソレノイドへの通電を停止すると共に、これと実質的に遅延することなく、バイパス流路3における電磁弁5を閉弁する。さらに、上述のように、差圧解消用ガス流路7における電磁弁8をも開弁するように回路設計している。
この第二実施形態によれば、残留ビールの注出後、リセットスイッチをオン操作することで、遮断弁2の開弁復帰と、バイパス流路3の閉鎖を同時に行うが、これと同時に、電磁弁8が開弁して差圧解消用ガス流路7が開通し、遮断弁2の下流側に本来の加圧ガスが流入することで、その上流側と瞬時に等圧となる。したがって、遮断弁2の弁体2eが速やかに落とし込み凹部2cに移動することで、遮断弁2の開弁復帰が迅速に行われ、素早くシステムを通常のビール注出状態に復元することができる。ここで、リセットスイッチを離す等して、差圧解消用ガス流路7の電磁弁8を常閉に復帰させ、システム全体を通常のビール注出可能状態に復元することはもちろんである。