JP6022240B2 - 繊維強化プラスチック製ハニカムコアの製造方法 - Google Patents

繊維強化プラスチック製ハニカムコアの製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、繊維強化プラスチック製ハニカムコアの製造方法に関する。すなわち、繊維基材に熱硬化性樹脂を付着,含浸させた、繊維強化プラスチック(FRP)製ハニカムコアの製造方法に関するものである。
《技術的背景》
ハニカムコアは、セル壁にて区画形成された中空柱状の多数のセルの平面的集合体よりなり、重量比強度,平面精度(特に、ハニカムサンドイッチパネルとして使用した場合),その他に優れる、という特性を備えている。
そして、繊維強化プラスチック製のハニカムコアは、軽量性や耐食性に一段と優れるという特性を、備えている。繊維強化プラスチック製のハニカムコアにおいて、セル壁は、繊維基材に熱硬化性樹脂を付着,含浸させたものが代表的であり、セルは、断面形状が正六角形をなすものが代表的である。
又、繊維強化プラスチック製のハニカムコアは、他の一般的なハニカムコアと同様、いわゆるコルゲート方式や展張方式にて製造される。そして本発明は、コルゲート方式の製造方法に関する。
《従来技術》
コルゲート方式では、繊維強化プラスチック製の波板を、重積,接着することにより、ハニカムコアを製造する。
このような従来のコルゲート方式の製造方法について、図5,図6を参照して説明する。まず、図5の(1)図に示したように、繊維基材1に熱硬化性樹脂2を付着,含浸させたプリプレグ3が、粘性状態Aで準備される。
そしてプリプレグ3は、例えばギアやラックを使用したコルゲート成形装置に供給されて、加圧成形された後、ホットプレスやオーブン等に供給されて、加熱,加圧される。
これらにより、図5の(2)図に示したように、熱硬化性樹脂2が粘性状態Aから完全硬化した、完全硬化状態Cのコルゲート板4が得られる。
それから、完全硬化状態Cのコルゲート板4は、図5の(3)図に示したように、プリントロール5間に供給される。もって、プリントロール5間を通されることにより、波形の頂部表面や底部裏面に接着剤6が塗布される。図中7は、熱硬化型の接着剤6のトレー、5’は、回転駆動されるピックアップロールである。
このように、接着剤6が塗布されたコルゲート板4は、オーブン等に供給されて加熱,乾燥され、接着剤6中の余分な溶剤が蒸発,除去される(図示せず)。
それから、複数枚のコルゲート板4が、波形が半ピッチ分ずれ、頂部と底部とが対応する位置関係で、重積される(次の図6も参照)。
そして、オーブン等に供給され、加熱,加圧されることにより、塗布されていた接着剤6が溶融,硬化し、もって完全硬化状態Cとなった接着剤6にて、重積されていたコルゲート板4間が接着される。
従来のコルゲート方式では、このような工程を辿ることにより、図6の(1)図,(2)図に示したように、コルゲート板4をセル壁9とし、セル10の断面形状が正六角形よりなる、繊維強化プラスチック製のハニカムコア8を製造していた。
このような従来のコルゲート方式に係る繊維強化プラスチック製のハニカムコア8の製造方法としては、例えば、次の特許文献1,2中に示されたものが挙げられる。
特開平11−300860号公報 特開2000−127271号公報
ところで、このような従来のコルゲート方式に係る繊維強化プラスチック製のハニカムコア8の製造方法については、次の課題が指摘されていた。
《第1の問題点》
第1に、製造された繊維強化プラスチック製のハニカムコア8について、重量が嵩むという問題が指摘されていた。
すなわち、従来の製造方法で製造されたハニカムコア8は、セル壁9を形成するコルゲート板4間が、接着剤6を使用して接着されていた。そこで、接着剤6の分だけ重量が増加する、という問題があった。
もって、繊維強化プラスチック製のハニカムコア8の特性である軽量性が損なわれる、という指摘があった。
《第2の問題点》
第2に、製造された繊維強化プラスチック製のハニカムコア8について、熱歪が発生し易い、という問題が指摘されていた。
すなわち、従来の製造方法で製造されたハニカムコア8は、繊維強化プラスチック製のセル壁9つまりコルゲート板4部分と、接着剤6部分とで、熱変形量,熱伸縮量が異なっている。ハニカムコア8が部分的に異なる材料で構成されていたので、熱歪が発生し易かった。
もって、ハニカムコア8の特性である平面精度が損なわれる虞がある、という問題があった。例えば、高度な観測精度が要求される人工衛星のパネルとして使用した場合、その精度が保てなくなる虞がある、という指摘があった。
《第3の問題点》
第3に、材料コストや製造コストが嵩む、という問題も指摘されていた。すなわち、まず従来の製造方法は、接着剤6を使用するので、その分だけ材料コストが嵩んでいた。
又、従来の製造方法は、接着剤6の塗布工程、塗布した接着剤6の乾燥工程、そして接着剤6の加熱,硬化工程、等の各工程が必須的となっていた。もって、このような各工程の分だけ、手間がかかり製造コストの上昇を招く、という指摘があった。
《本発明について》
本発明の繊維強化プラスチック製ハニカムコアの製造方法は、このような実情に鑑み、上記従来技術の課題を解決すべくなされたものである。
そして本発明は、第1に、ハニカムコアの重量が軽減され、第2に、熱歪も発生せず、第3に、コスト面に優れ、第4に、接合強度にも優れた、繊維強化プラスチック製ハニカムコアの製造方法を提案することを、目的とする。
《請求項について》
このような課題を解決する本発明の技術的手段は、特許請求の範囲に記載したように、次のとおりである。
本発明の繊維強化プラスチック製のハニカムコアの製造方法では、繊維基材に熱硬化性樹脂を付着,含浸させた、繊維強化プラスチックのプリプレグを、粘性状態Aで準備する。粘性状態Aとは、該熱硬化性樹脂がタック性・ベトツキ性を備え柔軟性・屈曲性を備えた状態よりなる。
そして、粘性状態Aでシート状の該プリプレグを、まずコルゲート成形装置に供給して、挟み込んで加圧することにより、波形の凹凸が連続的に折曲形成された波形状に、粘性状態Aでコルゲート加工し、形状を確定させる。
それから次に、得られた波形状の該プリプレグを、粘性状態Aのまま形状保持しつつ加熱加圧装置に供給して、該熱硬化性樹脂について半硬化状態Bが得られる温度つまりその熱硬化温度よりは遥かに低い温度で、低温加熱,加圧する。もって、粘性状態Aの該熱硬化性樹脂を半硬化状態Bとすることにより、波形の凹凸が連続的に折曲形成されたコルゲート板を、半硬化状態Bで成形する。
半硬化状態Bとは、粘性状態Aからは硬化されるが、完全硬化状態Cには未だ至らない状態よりなると共に、次の工程である重積そして加熱,加圧に際し、該熱硬化性樹脂により、該コルゲート板としての形状を崩すことなく自立的に単独で形状保持できる程度の状態よりなる。
それから、成形された半硬化状態Bの複数枚の該コルゲート板を、波形が半ピッチ分ずつ順次ずれ頂部と底部とが対応する位置関係で重積する。
次に、重積された各該コルゲート板間に形成された各空間に、該空間の断面形状に見合った断面形状のコマ部材を、それぞれ密に挿入して各該コルゲート板をサポートせしめ、もって次の加熱,加圧に際し、接合に必要十分な圧力を加えることができるようになる。
そして、重積した該コルゲート板を加熱加圧装置に供給し、該熱硬化性樹脂の硬化温度で高温加熱,加圧して、半硬化状態Bの該熱硬化性樹脂そして該コルゲート板を、完全硬化状態Cへと固化させると共に、完全硬化により各該コルゲート板の対応する頂部と底部間を接合する。
もって、各該コルゲート板をセル壁とし、該セル壁にて区画形成された中空柱状の多数のセルの平面的集合体である、繊維強化プラスチック製のハニカムコアを得ること、を特徴とする。
《作用等について》
本発明は、このような手段よりなるので、次のようになる。
(1)本発明の製造方法は、準備,コルゲート,半硬化,重積,完全硬化等の各工程を、順次辿ることにより、繊維強化プラスチック製のハニカムコアを製造する。
(2)すなわち、まず繊維強化プラスチックのプリプレグを、シート状の粘性状態で準備し、波板状にコルゲート加工した後、加熱,加圧する。もってコルゲート板が、半硬化状態で成形される。
(3)それから、半硬化状態で成形されたコルゲート板を、重積して加熱,加圧することにより、コルゲート板が完全硬化すると共に、コルゲート板間が接合される。
(4)このような工程を辿ることにより、セル壁にて区画形成された繊維強化プラスチック製のハニカムコアが製造される。
(5)後処理として、セル壁に補強用樹脂が、付着,含浸せしめられることもある。
(6)本発明の製造方法は、このようになっているので、次のようになる。まず、半硬化状態から完全硬化させることを利用して、コルゲート板間を接合する。接着剤を使用しないで接合を実現するので、その分、ハニカムコアの重量が軽減する。
(7)接着剤を使用しないので、このハニカムコアは、繊維強化プラスチックの単一材料製よりなる。もって、部分的に熱変形量が異なることもない。
(8)又、この製造方法は、接着剤を使用しないので、その分、工程が簡単である。すなわち、接着剤使用に伴う塗布,乾燥,加熱硬化等、手間がかかる諸工程の追加実施が、不要化される。
(9)更に、セル壁を形成するコルゲート板間を、完全硬化させてから接着するのではなく、完全硬化を利用して接合するので、高い接合強度が得られる。
(10)さてそこで、本発明の製造方法は、次の効果を発揮する。
《第1の効果》
第1に、ハニカムコアの重量が、軽減される。すなわち、本発明の繊維強化プラスチック製ハニカムコアの製造方法では、セル壁を形成するコルゲート板を、まず半硬化状態で成形した後、半硬化状態から完全硬化させることにより、接合する。
前述したこの種従来技術、すなわちコルゲート板を完全硬化状態で成形してから接着剤で接着していた従来技術のように、接着剤を使用しないので、その分、製造されたハニカムコアの重量が軽減される。
このように重量が軽減されるので、繊維強化プラスチック製のハニカムコアの特性である軽量性が、損われることなく維持される。
《第2の効果》
第2に、ハニカムコアについて、熱歪は発生しない。すなわち、本発明の繊維強化プラスチック製ハニカムコアの製造方法では、繊維強化プラスチックのプリプレグのみを用いて、ハニカムコアを製造する。
製造されたハニカムコアは、前述したこの種従来技術のように、接着剤が使用されておらず、全てが同一材料で構成されているので、部分的に熱変形量が異なるようなことはない。
もって、熱歪は発生せず、ハニカムコアの特性である平面精度も、損われることなく維持される。特に、両開口端面に表面板が接合されたハニカムサンドイッチパネルとして使用される場合、例えば人工衛星のパネルに使用される場合でも、高精度を保つことができる。
《第3の効果》
第3に、コスト面にも優れている。すなわち、本発明の繊維強化プラスチック製ハニカムコアの製造方法では、上述した点が、簡単な工程により容易に実現され、コスト面にも優れている。
まず、前述したこの種従来技術のように、接着剤を使用しないので、その分、材料コストが低減される。又、接着剤使用に伴う諸工程の追加実施が不要となり、もってその分、製造コストが低減される。
《第4の効果》
第4に、更に接合強度にも、優れている。すなわち、本発明の繊維強化プラスチック製ハニカムコアの製造方法では、セル壁を形成するコルゲート板間が、自体の完全硬化を利用して接合される。
そこで、前述したこの種従来技術のように、コルゲート板を完全硬化させた後、接着剤を用いて接着していたのに比し、セル壁間がより安定的に接合される。なお、重積された各コルゲート板間の完全硬化,接合に際し、コマ部材を挿入して加熱,加圧するので加圧が可能となる。
これらにより、製造されたハニカムコアは、セル壁間の接合強度が一段と向上し、もって圧縮強度や剪断強度に優れており、セル壁の剥れ,破断,折損等が、防止されるようになる。
このように、この種従来例に存した課題がすべて解決される等、本発明の発揮する効果は、顕著にして大なるものがある。
本発明に係る繊維強化プラスチック製ハニカムコアの製造方法について、発明を実施するための形態の説明に供する。そして(1)図は、準備工程の斜視図、(2)図は、コルゲート工程の斜視図、(3)図は、コルゲートされたプリプレグ、およびラック等の斜視図である。 同発明を実施するための形態の説明に供する。そして(1)図は、半硬化工程の斜視図、(2)図は、得られた半硬化状態のコルゲート板の斜視図、(3)図は、重積工程や完全硬化工程の正面図である。 同発明を実施するための形態の説明に供する。そして(1)図は、製造されたハニカムコアの正面図、(2)図は、同斜視図である。 同発明を実施するための形態の説明に供する。そして(1)図は、浸漬工程の斜視図、(2)図は、コマ部材工程の斜視図、(3)図は、コマ部材の斜視図である。 従来技術に係る繊維強化プラスチック製ハニカムコアの製造方法の説明に供する。そして(1)図は、準備工程の斜視図、(2)図は、完全硬化状態のコルゲート板の斜視図、(3)図は、接着剤塗布工程の正面図である。 従来技術に係る繊維強化プラスチック製ハニカムコアの製造方法の説明に供する。そして(1)図は、製造されたハニカムコアの正面図、(2)図は、その要部拡大図である。
《各工程について》
以下、本発明を実施するための形態について、詳細に説明する。
本発明の製造方法は、準備工程,コルゲート工程,半硬化工程,重積工程,完全硬化工程等を順次辿ることにより、繊維強化プラスチック製のハニカムコア11を、製造する。
以下、これらの各工程等について、説明する。
《準備工程について》
まず、準備工程について、図1の(1)図を参照して説明する。この製造方法では、準備工程において、繊維基材1に熱硬化性樹脂2を付着,含浸させた、シート状をなす繊維強化プラスチックのプリプレグ3が、粘性状態Aで準備される。
このような準備工程について、更に詳述する。繊維基材1としては、カーボン繊維,ガラス繊維,ケプラー繊維,セラミック繊維,金属繊維,樹脂繊維,その他各種の織・不織や有機・無機の繊維が使用可能であり、これらの高強度,高剛性の繊維中から、適宜選択使用される。勿論、一方向繊維やノンクリンプ織等も、使用可能である。
熱硬化性樹脂2としては、シアネート系の樹脂,エポキシ系の樹脂,ポリイミド系の樹脂,フェノール系の樹脂,その他の熱硬化性の樹脂が、選択使用される。
そして、このような繊維基材1に、粘性状態Aの熱硬化性樹脂2を、付着,含浸,混入等により組み合わせて複合した、シート状をなすプリプレグ3が、粘性状態Aで準備される。
プリプレグ3は、極薄で平坦なフィルムシート状をなすと共に、熱硬化性樹脂2がタック性・ベトツキ性を備え柔軟性・屈曲性を備えた粘性状態Aにて、いわゆるAステージからBステージ程度となった状態で、準備される。
準備工程については、以上のとおり。
《コルゲート工程について》
次に、コルゲート工程について、図1の(2)図を参照して説明する。この製造方法では、上述した準備工程で準備されたシート状のプリプレグ3が、コルゲート成形装置12に供給される。
このようなコルゲート工程について、更に詳述する。まず、コルゲート成形装置12は、図示例では、上下一対のコルゲートギア13とコルゲートラック14とからなるが、その他、上下一対のラックを用いたものや、プレス装置,ベルト式金型等を用いたものも可能である。又、ラックと複数のコマとを組み合わせたコルゲート成形装置12も、可能である。
そして、熱硬化性樹脂2が粘性状態Aでシート状をなすプリプレグ3は、このようなコルゲート成形装置12に挿入され、表裏両側から挟み込まれて加圧されることにより、波形状のプリプレグ3’にコルゲート加工される。波形の凹凸が、短手方向に直線的に平行、かつ長手方向に繰り返し連続的に、所定ピッチと高さで折曲形成された波形状のプリプレグ3’が、粘性状態Aで加工される。
これらについて、図1の(2)図に示した図示例により説明する。まず、前述した準備工程で準備されたプリプレグ3が、コルゲート成形装置12のコルゲートラック14上に、載せられる。その際、これまでプリプレグ3の下面を被覆していたビニールシート等の離型シート(図示せず)は、取り除かれる。
それから、コルゲートギア13が、コルゲートラック14と噛み合うように、プリプレグ3を介し上側から押し当てられ、加圧力を加えつつ回動される。もって、コルゲートラック14上に、波形状にコルゲート加工されたプリプレグ3’、図示例では台形状の波形にコルゲート加工されたプリプレグ3’が、粘性状態Aで張り付けられる。
コルゲート工程については、以上のとおり。
《半硬化工程について》
次に、半硬化工程について、図1の(3)図,図2の(1)図,(2)図等を参照して、説明する。
この製造方法では、上述したコルゲート工程の後、半硬化工程において、波形状のプリプレグ3’を加熱,加圧し、もって、粘性状態Aだった熱硬化性樹脂2を半硬化状態Bとすることにより、波形状のコルゲート板15を成形する。波形の凹凸が連続的に折曲形成されたコルゲート板15を、半硬化状態Bで成形する。
このような半硬化工程について、更に詳述する。コルゲート工程で得られた波形状のプリプレグ3’は、粘性状態Aのまま形状保持されつつ、ホットプレスやオーブン等の加熱加圧装置HPに供給される。そして、加熱,加圧されることによりプリプレグ3’が半硬化され、もって半硬化状態Bのコルゲート板15が成形される。
半硬化状態Bとは、前述した粘性状態Aからは若干硬化が進むが、後述する完全硬化状態Cには未だ至らない状態よりなる。
これと共に、本明細書において半硬化状態Bとは、次に述べる重積工程そして完全硬化工程での加熱,加圧に際し、熱硬化性樹脂2により、コルゲート板15としての形状を崩すことなく、自立的に単独で形状保持可能な程度の状態よりなること、を意味する。いわば、Bステージ終盤の状態もしくはBステージとCステージの中間状態を意味する。
これらについて、図示例により説明する。まず、図1の(3)図に示したように、前述したコルゲート工程で得られたプリプレグ3’を、粘性状態Aのまま、そしてコルゲートラック14上に張り付き載せられたままとすることにより、コルゲート加工された波形状を保持させる。
これと共に、別途ラック16が準備される。又、これまでプリプレグ3そしてプリプレグ3’の上面を被覆していたビニールシート等の離型シート(図示せず)が、取り除かれる。
そして、図2の(1)図に示したように、上位のラック16と下位のコルゲートラック14とを、波形の凹凸が噛み合うように合わせると共に、両者間にプリプレグ3’を挟持して形状保持しつつ、ホットプレスやオーブン等の加熱加圧装置HPに供給する。
もって加熱加圧装置HPで、熱硬化性樹脂2について上述した半硬化状態Bが得られる温度(つまり、その熱硬化温度よりは遥かに低い温度)で低温加熱しつつ、加圧することにより、熱硬化性樹脂2そしてプリプレグ3’は、それまでの粘性状態Aから半硬化状態Bへと、セミキュアされる。
このようにして、図2の(2)図に示したように、半硬化状態Bのコルゲート板15が成形される。
半硬化工程については、以上のとおり。
《重積工程について》
次に、重積工程について、図2の(3)図を参照して説明する。この製造方法では、上述した半硬化工程の後、成形された半硬化状態Bの複数枚のコルゲート板15が、重積工程において、波形が半ピッチ分ずつずれ、頂部と底部とが対応する位置関係で、重積される。
すなわち、複数枚のコルゲート板15は、上下間で波形の半ピッチ分ずつ左右に順次ずらされ、もって上下相互間で頂部(山部)と底部(谷部)とを合わせる位置関係のもと、全体的に空間17が存した積層ブロック状に積み重ねられる。
なお、重積されたコルゲート板15について、相互位置関係が事後ずれない様に、次の方法がとられることもある。すなわち、コルゲート板15の重ね合わせた部分をクリップ止めする方法や、端部ずれ防止のため針金等の治具にて固定したりする方法が、実施されることもある。
重積工程については、以上のとおり。
《完全硬化工程について》
次に、完全硬化工程について、図2の(3)図,図3の(1)図,(2)図等を参照して、説明する。
この製造方法では、上述した重積工程で重積したコルゲート板15を加熱,加圧して、半硬化状態Bの各コルゲート板15を完全硬化させると共に、この完全硬化により、各コルゲート板15の対応する頂部と底部間を接合する。
もって、完全硬化状態Cの各コルゲート板15をセル壁18とし、セル壁18にて区画形成されたセル19の平面的集合体である、繊維強化プラスチック製のハニカムコア11が得られる。
このような完全硬化工程について、更に詳述する。重積工程で重積された半硬化状態Bのコルゲート板15は、図2の(3)図に示したように、オーブンその他の加熱加圧装置HP’に供給される。もって、ある程度の圧力をかけながら(例えば、0.1MPaつまり1.02kgf/cm程度の加圧荷重)、熱硬化性樹脂2の硬化温度で高温加熱される。
これにより、半硬化状態Bで供給された熱硬化性樹脂2そしてコルゲート板15が、図3の(1)図,(2)図に示したように、いわゆるCステージの完全硬化状態Cへと、完全キュアされ固化される。
そして、このような完全硬化に際し、熱硬化性樹脂2の溶融硬化を利用して、コルゲート板15間について、対応して重なり合っていた頂部と底部間が、確りと接合される。重積されたコルゲート板15間が接合されて、セル壁18となる。
完全硬化工程については、以上のとおり。
《繊維強化プラスチック製のハニカムコア11について》
このような各工程を辿ることにより、図3の(1)図,(2)図に示した、繊維強化プラスチック製のハニカムコア11が製造される。
そして、この繊維強化プラスチック製のハニカムコア11は、重積,接合された繊維強化プラスチック製のコルゲート板15をセル壁18とし、各々独立空間に区画形成された、中空柱状の多数のセル19の平面的集合体よりなる。
なお、セル壁18そしてセル19の断面形状は、図示の正六角形のものが代表的であるが、これによらず、略三角形,略四角形,その他各種形状のものも可能である。
そして、この繊維強化プラスチック製のハニカムコア11は、一般のハニカムコアと同様、重量比強度(セル軸方向の圧縮強度)に優れ、軽量であると共に高い強度や剛性を備えている。
又、平面精度(特に、両開口端面に表面板が接合されたハニカムサンドイッチパネルとして使用した場合),整流効果,保温性等にも優れ、単位容積当りの表面積が大である、等々の特性が知られている。更に、耐食性にも優れている。もって、広く各種の構造材として使用される。
繊維強化プラスチック製のハニカムコア11については、以上のとおり。
《後処理による補強》
後処理によるハニカムコア11の補強について、図4の(1)図を参照して、説明しておく。
上述により製造された繊維強化プラスチック製のハニカムコア11について、更なる強度が要求される場合は、後処理として、セル壁18に補強用樹脂20が、付着,含浸せしめられる。
このような後処理について、更に詳述する。補強用樹脂20としては、シアネート系の樹脂,エポキシ系の樹脂,ポリイミド系の樹脂等、前述した熱硬化性樹脂2に準じた樹脂が、使用される。
そして、このような補強用樹脂20が貯溜された浴槽21中に、上述により製造されたハニカムコア11が、浸漬される。もって、取り出されて乾燥された後、付着,含浸された補強用樹脂20が、オーブン等で加熱硬化される。
これにより、繊維強化プラスチック製のハニカムコア11について、そのセル壁18の外表面に、補強用樹脂20が追加的に付着,含浸せしめられる。ハニカムコア11は、セル19密度が高められ強度や剛性が向上せしめられて、補強される。
後処理による補強については、以上のとおり。
《コマ部材22の使用について》
ここで、コマ部材22の使用について、図4の(2)図,(3)図を参照して、説明しておく。
上述した製造方法により製造される繊維強化プラスチック製のハニカムコア11については、製造工程途中で、コマ部材22が使用される。
このようなコマ部材22の使用について、更に詳述する。まず、前述した製造工程中の重積工程(図2の(3)図を参照)の後、図4の(2)図に示したように、重積された各コルゲート板15間に形成された各空間17に、空間17の断面形状に見合った断面形状のコマ部材20を、それぞれ密に挿入する。
すなわち、積層ブロック状に積み重ねられた各コルゲート板15間の空間17(事後にセル19となる)に対し、コマ部材22が密に挿入される。コマ部材22は、(図示例では断面正六角形をなす)空間17の断面形状に見合った断面形状の、角筒状や角柱状をなす。
このように、空間17にコマ部材22が挿入されたことにより、各コルゲート板15は、強力にサポートされる。つまり、重積された各コルゲート板15は、高圧力での加圧に耐え得るようになる。
そこで、次に実施される完全硬化工程において、重積されたコルゲート板15を加熱,加圧する際、より高い圧力での加圧が可能となる。
すなわち、コマ部材22がスペーサーとなって、各コルゲート板15がサポートされているので、接合に必要十分な圧力を加えることができるようになる(例えば、0.2MPaつまり2.04kgf/cm程度の加圧荷重)。
従って、重積されたコルゲート板15間について、対応して重なり合った頂部と底部間が、加熱による熱硬化性樹脂2の溶融硬化に伴い、強力に接合されるようになる。つまり、製造される繊維強化プラスチック製のハニカムコア11について、セル壁18の接合部分が、一段と高強度で接合されるようになり、その接合強度が大幅に向上する。
コマ部材22の使用については、以上のとおり。
《作用等》
本発明の製造方法は、以上説明したように構成されている。そこで以下のようになる。
(1)本発明の製造方法は、準備工程,コルゲート工程,半硬化工程,重積工程,完全硬化工程等を、順次辿ることにより、繊維強化プラスチック製のハニカムコア11を、製造する。
(2)すなわち、まず準備工程では、繊維基材1に熱硬化性樹脂2を付着,含浸させた繊維強化プラスチックのプリプレグ3が、シート状の粘性状態Aで準備される(図1の(1)図を参照)。
そしてプリプレグ3は、次のコルゲート工程において、波板状のプリプレグ3’にコルゲート加工された後(図1の(2)図を参照)、半硬化工程において、加熱,加圧される(図1の(3)図,図2の(1)図を参照)。
もってコルゲート板15が、半硬化状態Bで成形される(図2の(2)図を参照)。
(3)それから重積工程へと進み、複数枚のコルゲート板15が、頂部と底部とが対応する位置関係で、重積される(図2の(3)図を参照)。
そして完全硬化工程において、加熱,加圧により各コルゲート板15を、半硬化状態Bから完全硬化状態Cとすると共に、完全硬化に伴い各コルゲート板15が、頂部と底部間にてそれぞれ接合される(図2の(3)図を参照)。
(4)このような各工程を辿ることにより、セル壁18にて区画形成されたセル19の集合体である繊維強化プラスチック製のハニカムコア11が、製造される(図3の(1)図,(2)図を参照)。
(5)なお製造工程途中で、コマ部材22が使用される。すなわち、重積された各コルゲート板15間の空間17にコマ部材22を挿入してから、完全硬化工程において加熱,加圧を行い、セル壁18の接合部分が接合されるようになる。
(6)本発明の繊維強化プラスチックのハニカムコア11の製造方法は、このようになっているので、以下のようになる。
まず、この製造方法では、半硬化状態Bで供給されたコルゲート板15を、完全硬化させることにより、セル壁18を形成するコルゲート板15間を、接合する。
自体の完全硬化状態C化を利用して、重積されたコルゲート板15の対応する頂部と底部間の接合を、実現する。接着剤6を使用して、接着する訳ではない(図3の本発明のハニカムコア11と、図6の従来技術のハニカムコア8とを、比較対照)。
もって、本発明の製造方法で製造されたハニカムコア11は、接着剤6を使用しない分だけ、重量が軽減される。
(7)これと共に、このように接着剤6を使用しないので、製造されたハニカムコア11は、全体的に同一材料で構成されている。全てが繊維強化プラスチックの単一材料製よりなり、異材料となる接着剤6は使用されていない(図3の本発明のハニカムコア11と、図6の従来技術のハニカムコア8とを、比較対照)。
このように、本発明の製造方法で製造されたハニカムコア11は、セル壁18が単一材料よりなるので、部分的に熱変形量が異なるようなこともない。全体的に同一量で伸び縮みし、熱歪が発生するようなことはない。
(8)又、本発明の製造方法は、工程が簡単である。すなわち、準備工程,コルゲート工程,半硬化工程,重積工程,完全硬化工程等を、辿ることにより、ハニカムコア11が製造される。
すなわち、上述したように接着剤6を使用しないので、接着剤6の塗布工程(図5の(3)図を参照)、塗布した接着剤6の乾燥工程、乾燥させた接着剤6の加熱,硬化工程等、手間がかかる諸工程の追加実施,付加実施が、不要化される。
その分、本発明の製造方法は、工程が簡単であり、製造コストが低減される。又、接着剤6を使用しないので、材料コストも低減される。
(9)更に、本発明の製造方法では、上述したように、セル壁18を形成するコルゲート板15間が、自体の完全硬化を利用して接合される。
すなわち、まず前提として、粘性状態Aでシート状のプリプレグ3を、粘性状態Aで波板状のプリプレグ3’にコルゲート加工し、形状を確定させてから、半硬化状態Bのコルゲート板15とする(形状確定と半硬化とは、別工程とすることによって始めて、それぞれ正確に実施可能となる)。それから、重積し完全硬化状態Cとして、コルゲート板15間を接合する。
この種従来技術のように(図5を参照)、粘性状態Aのプリプレグ3を、完全硬化状態Cのコルゲート板4とした後に、接着剤6を用いて接着する訳ではない。本発明は、既に完全硬化・固化し外表面がフラット化した段階のもの同士ではなく、それ以前の段階で接合を行う。熱硬化性樹脂2が未だ若干タック性・柔軟性を備えている段階において、接合される。
そこで、本発明の製造方法では、コルゲート板15間そしてセル壁18間が、より高い接合強度で接合されるようになる。
そして特に、前述したようにコマ部材22を、完全硬化に際し使用すると、このようなセル壁18間の接合強度が、一段と向上するようになる。
作用等については、以上のとおり。
1 繊維基材
2 熱硬化性樹脂
3 プリプレグ(シート状)
3’プリプレグ(波板状)
4 コルゲート板(従来例)
5 プリントロール
5’ピックアップロール
6 接着剤
7 トレー
8 ハニカムコア(従来例)
9 セル壁(従来例)
10 セル(従来例)
11 ハニカムコア(本発明)
12 コルゲート成形装置
13 コルゲートギア
14 コルゲートラック
15 コルゲート板(本発明)
16 ラック
17 空間
18 セル壁(本発明)
19 セル(本発明)
20 補強用樹脂
21 浴槽
22 コマ部材
A 粘性状態
B 半硬化状態
C 完全硬化状態
HP 加熱加圧装置
HP’加熱加圧装置

Claims (1)

  1. 繊維基材に熱硬化性樹脂を付着,含浸させた、繊維強化プラスチックのプリプレグを、粘性状態Aで準備し、粘性状態Aとは、該熱硬化性樹脂がタック性・ベトツキ性を備え柔軟性・屈曲性を備えた状態よりなり、
    粘性状態Aでシート状の該プリプレグを、まずコルゲート成形装置に供給して、挟み込んで加圧することにより、波形の凹凸が連続的に折曲形成された波形状に、粘性状態Aでコルゲート加工し、形状を確定させてから、
    次に、得られた波形状の該プリプレグを、粘性状態Aのまま形状保持しつつ加熱加圧装置に供給して、該熱硬化性樹脂について半硬化状態Bが得られる温度つまりその熱硬化温度よりは遥かに低い温度で、低温加熱,加圧して、粘性状態Aの該熱硬化性樹脂を半硬化状態Bとすることにより、波形の凹凸が連続的に折曲形成されたコルゲート板を、半硬化状態Bで成形し、
    半硬化状態Bとは、粘性状態Aからは硬化されるが、完全硬化状態Cには未だ至らない状態よりなると共に、次の工程である重積そして加熱,加圧に際し、該熱硬化性樹脂により、該コルゲート板としての形状を崩すことなく自立的に単独で形状保持できる程度の状態よりなり、
    それから、成形された半硬化状態Bの複数枚の該コルゲート板を、波形が半ピッチ分ずつ順次ずれ頂部と底部とが対応する位置関係で重積し、
    次に、重積された各該コルゲート板間に形成された各空間に、該空間の断面形状に見合った断面形状のコマ部材を、それぞれ密に挿入して各該コルゲート板をサポートせしめ、もって次の加熱,加圧に際し、接合に必要十分な圧力を加えることができるようになり、
    そして、重積した該コルゲート板を加熱加圧装置に供給し、該熱硬化性樹脂の硬化温度で高温加熱,加圧して、半硬化状態Bの該熱硬化性樹脂そして該コルゲート板を、完全硬化状態Cへと固化させると共に、完全硬化により各該コルゲート板の対応する頂部と底部間を接合し、
    もって、各該コルゲート板をセル壁とし、該セル壁にて区画形成された中空柱状の多数のセルの平面的集合体である、繊維強化プラスチック製のハニカムコアを得ること、を特徴とする繊維強化プラスチック製ハニカムコアの製造方法。
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