JP6020581B2 - タンパク質の分泌生産法 - Google Patents

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Description

本発明は、異種タンパク質を効率よく分泌生産するコリネ型細菌および異種タンパク質の分泌生産方法に関するものである。
微生物による異種タンパク質の分泌生産としては、これまでに、バチルス属細菌(非特許文献1)、メタノール資化性酵母Pichia pastoris(非特許文献2)、およびAspergillus属糸状菌(非特許文献3、4)等による異種タンパク質の分泌生産が報告されている。
また、コリネ型細菌により異種タンパク質を分泌生産する試みもなされている。コリネ型細菌による異種タンパク質の分泌生産については、コリネバクテリウム・グルタミカム(Corynebacterium glutamicum)(以後、C. glutamicumと略すことがある)によるヌクレアーゼ(nuclease)やリパーゼ(lipase)の分泌(特許文献1、非特許文献5)、サチライシン等のプロテアーゼの分泌(非特許文献6)、コリネ型細菌の細胞表層タンパク質PS1やPS2(CspBともいう)のシグナルペプチドを利用したタンパク質の分泌(特許文献2)、PS2(CspB)のシグナルペプチドを利用したフィブロネクチン結合タンパク質の分泌(非特許文献7)、コリネ型細菌の細胞表層タンパク質PS2(CspB)やSlpA(CspAともいう)のシグナルペプチドを利用したプロトランスグルタミナーゼの分泌(特許文献3)、変異型分泌装置を利用したタンパク質の分泌(特許文献4)、変異株によるプロトランスグルタミナーゼの分泌(特許文献5)、Tat系依存シグナルペプチドを利用したタンパク質の分泌(特許文献6)等の報告がある。
分泌生産されるタンパク質としては種々のものが想定されるが、コリネ型細菌による異種タンパク質の分泌生産において、複数のサブユニットからなる多量体タンパク質、例えば抗体関連分子の分泌生産については報告がない。
ペニシリン結合タンパク質(Penicillin-binding proteins;PBPs)とは、βラクタム系抗生物質と結合するタンパク質であって、その酵素機能がβラクタム系抗生物質との結合により阻害されるタンパク質の総称である。一般に、PBPsは、膜結合タンパク質で、真正細菌の細胞壁合成に必須であると考えられている。PBPsは、その分子量により、高分子量型(HMW-PBPs)と低分子量型(LMW-PBPs)とに分類される。このうち、HMW-PBPsについては、細胞壁を構成するペプチドグリカン部分への架橋を行うペプチド転移活性を有するtranspeptidase活性ドメインと二糖類から多糖鎖を形成する糖転移活性を有するtransglycosylase活性ドメインの両方を持つ高分子量のPBPsクラスA (class A HMW-PBPs)、およびtranspeptidase活性ドメインのみを持つ高分子量のPBPsクラスB (class B HMW-PBPs)に分類される。
C. glutamicumのPBPsに関する知見は、非特許文献8、9等に詳しい。C. glutamicumにおいては、これまで少なくとも9つのPBPsホモログが見いだされている。うち5つはHMW-PBPsで、その内訳は2つのclass A HMW-PBPs (PBP1a, PBP1b)と、3つのclass B HMW-PBPs (FtsI, PBP2a, PBP2b)である。C. glutamicumのclass A HMW-PBPsは細胞伸張に関わる因子、classB HMW-PBPsは細胞分裂の際の隔壁のペプチドグリカンの形成に関わる因子である事が知られている。
細胞表層タンパク質は、細菌や古細菌の細胞表層(S層)を構成するタンパク質である。コリネ型細菌の細胞表層タンパク質としては、C. glutamicumのPS1およびPS2(CspB)(非特許文献10)、ならびにC. stationisのSlpA(CspA)(特許文献2)等が知られて
いる。PS2(CspB)については、例えば、28株のC. glutamicumのCspBホモログのアミノ酸配列が報告されている(非特許文献11)。コリネ型細菌の細胞表層タンパク質のシグナルペプチドは、上述の通り、タンパク質の分泌生産に利用されている(特許文献2、3等)。
しかしながら、ペニシリン結合タンパク質の活性低下および/または細胞表層タンパク質の活性低下と、異種タンパク質の分泌生産との関係は知られていない。
米国特許4965197 特表平6-502548 特許第4320769号 特開平11-169182 特許第4362651号 特許第4730302号
Microbiol. rev., 57, 109-137(1993) Biotechnol., 11, 905-910(1993) Biotechnol., 6, 1419-1422(1988) Biotechnol., 9, 976-981(1991) J. Bacteriol., 174, 1854-1861(1992) Appl. Environ. Microbiol., 61, 1610-1613(1995) Appl. Environ. Microbiol., 63, 4392-4400(1997) Mol. Microbiol., 66, 643-57(2007) Antonie Van Leeuwenhoek, 94, 99-109(2008) Mol. Microbiol., 9, 97-109(1993) J Biotechnol., 112, 177-193(2004)
本発明は、コリネ型細菌の異種タンパク質分泌生産能を向上させる新規な技術を開発し、異種タンパク質を分泌生産するコリネ型細菌、および同細菌による異種タンパク質の分泌生産法を提供することを課題とする。
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究を行った結果、コリネ型細菌を発現ホスト(expression host)として利用する異種タンパク質の生産法において、コリネ型細菌のペニシリン結合タンパク質PBP1aをコードする遺伝子および細胞表層タンパク質CspBをコードする遺伝子を欠損させることによって異種タンパク質の分泌生産能が向上することを見出し、本発明を完成させた。
すなわち、本発明は以下のとおりである。
[1]
異種タンパク質を分泌生産する能力を有するコリネ型細菌であって、
ペニシリン結合タンパク質の活性が低下するように改変され、且つ、細胞表層タンパク質の活性が低下しており、
前記ペニシリン結合タンパク質は、コリネ型細菌で活性を低下させたときに異種タンパク質の分泌生産量を非改変株と比べて上昇させる性質を有するタンパク質である、コリネ
型細菌。
[2]
ペニシリン結合タンパク質をコードする遺伝子の発現が弱化されることにより、または該遺伝子が破壊されることにより、ペニシリン結合タンパク質の活性が低下するように改変された、前記コリネ型細菌。
[3]
前記ペニシリン結合タンパク質がPBP1aである、前記コリネ型細菌。
[4]
前記ペニシリン結合タンパク質が、下記(A)または(B)に示すタンパク質である、前記コリネ型細菌。
(A)配列番号82に示すアミノ酸配列を有するタンパク質、
(B)配列番号82に示すアミノ酸配列において、1〜10個のアミノ酸の置換、欠失、挿入、または付加を含むアミノ酸配列を有し、かつ、コリネ型細菌で活性を低下させたときに異種タンパク質の分泌生産量を非改変株と比べて上昇させる性質を有するタンパク質。
[5]
細胞表層タンパク質をコードする遺伝子の発現が弱化されることにより、または該遺伝子が破壊されることにより、細胞表層タンパク質の活性が低下するように改変された、前記コリネ型細菌。
[6]
前記細胞表層タンパク質がCspBである、前記コリネ型細菌。
[7]
前記細胞表層タンパク質が、下記(A)または(B)に示すタンパク質である、前記コリネ型細菌。
(A)配列番号98に示すアミノ酸配列を有するタンパク質、
(B)配列番号98に示すアミノ酸配列において、1〜10個のアミノ酸の置換、欠失、挿入、または付加を含むアミノ酸配列を有し、かつ、コリネ型細菌で活性を低下させたときに異種タンパク質の分泌生産量を非改変株と比べて上昇させる性質を有するタンパク質。
[8]
前記コリネ型細菌が、コリネバクテリウム属またはブレビバクテリウム属に属する細菌である、 前記コリネ型細菌。
[9]
前記コリネ型細菌が、コリネバクテリウム・グルタミカムである、前記コリネ型細菌。[10]
前記コリネ型細菌が異種タンパク質の分泌発現用の遺伝子構築物を有し、
前記遺伝子構築物が、コリネ型細菌で機能するプロモーター配列、該プロモーター配列の下流に接続されたコリネ型細菌で機能するシグナルペプチドをコードする核酸配列、および該シグナルペプチドをコードする核酸配列の下流に接続された前記異種タンパク質をコードする核酸配列を含む、前記コリネ型細菌。
[11]
前記異種タンパク質が抗体関連分子である、前記コリネ型細菌。
[12]
前記抗体関連分子が、Fab、F(ab’)、Fc融合タンパク質、およびscFvから選ばれる1またはそれ以上のタンパク質である、前記コリネ型細菌。
[13]
前記コリネ型細菌を培養し、分泌生産された異種タンパク質を回収することを含む、異種タンパク質の製造方法。
図1は、YDK010株(親株)およびYDK010ΔPBP1a株でトラスツズマブのFab断片のH鎖領域を発現させた際の還元SDS-PAGEの結果を示す写真である。 図2は、YDK010株(親株)、YDK010ΔPBP1a株、およびYDK010ΔPBP1b株でトラスツズマブのFab断片のH鎖領域を発現させた際の還元SDS-PAGEの結果を示す写真である。 図3は、YDK010株(親株)およびYDK010ΔPBP1a株でトラスツズマブのFab断片のH鎖領域を発現させた際の還元SDS-PAGEの結果を示す写真である。 図4は、YDK010株(親株)およびYDK010ΔPBP1a株でトラスツズマブのFab断片のL鎖領域を発現させた際の還元SDS-PAGEの結果を示す写真である。 図5は、YDK010株(親株)およびYDK010ΔPBP1a株でトラスツズマブのFab断片のH鎖領域とL鎖領域を共発現させた際の非還元SDS-PAGEの結果を示す写真である。 図6は、YDK010株(親株)およびYDK010ΔPBP1a株でトラスツズマブのF(ab’)断片を発現させた際のウェスタンブロッティングの結果を示す写真である。 図7は、YDK010株(親株)およびYDK010ΔPBP1a株でトラスツズマブのFc断片を発現させた際のウェスタンブロッティングの結果を示す写真である。 図8は、YDK010株(親株)およびYDK010ΔPBP1a株でプロトランスグルタミナーゼを発現させた際のプロトランスグルタミナーゼ発現量を示すグラフである。 図9は、YDK010株(親株)およびYDK010ΔPBP1a株で抗ジゴキシン単鎖抗体を発現させた際の還元SDS-PAGEの結果を示す写真である。 図10は、YDK010株(親株)およびYDK010ΔPBP1a株でアダリムマブのFab(H&L)断片を発現させた際の非還元SDS-PAGEの結果を示す写真である。 図11は、ATCC13869株(親株)、ATCC13869ΔCspB株、ATCC13869ΔPBP1a株、およびATCC13869ΔCspBΔPBP1a株でトラスツズマブのFab(H&L)断片を発現させた際の非還元SDS-PAGEの結果を示す写真である。
<1>本発明のコリネ型細菌
本発明は、異種タンパク質を分泌生産する能力を有するコリネ型細菌であって、ペニシリン結合タンパク質の活性が低下するように改変され、且つ、細胞表層タンパク質の活性が低下している、コリネ型細菌(以下、「本発明の細菌」または「本発明のコリネ型細菌」ともいう)を提供する。
本発明において、タンパク質が「分泌」されるとは、タンパク質が細菌菌体外(細胞外)に移送されることをいう。タンパク質が「分泌」されることには、最終的にそのタンパク質の全分子が培地中に完全に遊離状態におかれる場合はもちろん、そのタンパク質の全分子が菌体表層に存在している場合や、そのタンパク質の一部の分子が培地中に存在し、残りの分子が菌体表層に存在している場合も含まれる。
すなわち、本発明において、「異種タンパク質を分泌生産する能力」とは、本発明の細菌を培地中で培養したときに、培地中または菌体表層に異種タンパク質を分泌し、培地中または菌体表層から回収できる程度に蓄積する能力をいう。蓄積量は、例えば、培地中での蓄積量として、好ましくは10 μg/L以上、より好ましくは1 mg/L以上、特に好ましくは100 mg/L以上、さらに好ましくは1 g/L以上であってよい。また、蓄積量は、例えば、菌体表層での蓄積量として、菌体表層の異種タンパク質を回収し培地と同量の液体に懸濁した場合に懸濁液中での異種タンパク質濃度が好ましくは10 μg/L以上、より好ましくは1 mg/L以上、特に好ましくは100 mg/L以上となるような量であってよい。なお、本発明において分泌生産される「タンパク質」とは、ペプチドあるいはポリペプチドと呼ばれる態様をも含む概念である。
本発明において、「異種タンパク質」(heterologous protein)とは、同タンパク質を発現および分泌させるコリネ型細菌にとって外来性(exogenous)であるタンパク質をい
う。異種タンパク質は、例えば、微生物由来のタンパク質であってもよく、植物由来のタンパク質であってもよく、動物由来のタンパク質であってもよく、ウィルス由来のタンパク質であってもよく、さらには人工的にアミノ酸配列をデザインしたタンパク質であってもよい。異種タンパク質は、単量体タンパク質であってもよく、多量体(multimer)タンパク質であってもよい。多量体タンパク質とは、2またはそれ以上のサブユニットからなる多量体として存在しうるタンパク質をいう。多量体において、各サブユニットは、ジスルフィド結合等の共有結合で連結されていてもよく、水素結合や疎水性相互作用等の非共有結合で連結されていてもよく、それらの組み合わせにより連結されていてもよい。多量体においては、1またはそれ以上の分子間ジスルフィド結合が含まれるのが好ましい。多量体は、単一の種類のサブユニットからなるホモ多量体であってもよく、2またはそれ以上の種類のサブユニットからなるヘテロ多量体であってもよい。なお、多量体タンパク質がヘテロ多量体である場合には、多量体を構成するサブユニットの内、少なくとも1つのサブユニットが異種タンパク質であればよい。すなわち、全てのサブユニットが異種由来であってもよく、一部のサブユニットのみが異種由来であってもよい。異種タンパク質は、天然で分泌性であるタンパク質であってもよく、天然では非分泌性であるタンパク質であってもよいが、天然で分泌性であるタンパク質であるのが好ましい。「異種タンパク質」の具体例は後述する。
生産される異種タンパク質は、1種類のみであってもよく、2またはそれ以上の種類であってもよい。また、異種タンパク質がヘテロ多量体である場合には、1種類のサブユニットのみが生産されてもよく、2またはそれ以上の種類のサブユニットが生産されてもよい。すなわち、「異種タンパク質を分泌生産する」ことには、目的の異種タンパク質を構成するサブユニットの内、全てのサブユニットを分泌生産する場合に加えて、一部のサブユニットのみを分泌生産する場合も含まれる。
本発明において、コリネ型細菌とは好気性のグラム陽性かん菌であり、コリネ型細菌としては、コリネバクテリウム属細菌、ブレビバクテリウム属細菌、およびミクロバクテリウム属細菌等が挙げられる。なお、コリネ型細菌には、従来ブレビバクテリウム属に分類されていたが、現在コリネバクテリウム属に統合された細菌(Int. J. Syst. Bacteriol.,
41, 255(1991))も含まれる。また、コリネ型細菌には、従来コリネバクテリウム・アンモニアゲネス(Corynebacterium ammoniagenes)に分類されていたが、16S rRNAの塩基配列解析等によりコリネバクテリウム・スタティオニス(Corynebacterium stationis)に再分類されたものも含まれる(Int. J. Syst. Evol. Microbiol., 60, 874-879(2010))。コリネ型細菌を使用することの利点としては、従来異種タンパク質の分泌生産に利用されている糸状菌、酵母、Bacillus属細菌等と比べ、もともと菌体外に分泌されるタンパク質が極めて少なく、異種タンパク質を分泌生産した場合の精製過程の簡略化や省略化が期待できること、また、糖、アンモニア、および無機塩等を含有するシンプルな培地で良く生育し、培地代や培養方法、培養生産性で優れていること、等が挙げられる。
コリネ型細菌としては、具体的には、下記のような種が挙げられる。
コリネバクテリウム・アセトアシドフィラム(Corynebacterium acetoacidophilum)
コリネバクテリウム・アセトグルタミカム(Corynebacterium acetoglutamicum)
コリネバクテリウム・アルカノリティカム(Corynebacterium alkanolyticum)
コリネバクテリウム・カルナエ(Corynebacterium callunae)
コリネバクテリウム・グルタミカム(Corynebacterium glutamicum)
コリネバクテリウム・リリウム(Corynebacterium lilium)
コリネバクテリウム・メラセコーラ(Corynebacterium melassecola)
コリネバクテリウム・サーモアミノゲネス(コリネバクテリウム・エフィシエンス)(Corynebacterium thermoaminogenes (Corynebacterium efficiens))
コリネバクテリウム・ハーキュリス(Corynebacterium herculis)
ブレビバクテリウム・ディバリカタム(Brevibacterium divaricatum)
ブレビバクテリウム・フラバム(Brevibacterium flavum)
ブレビバクテリウム・イマリオフィラム(Brevibacterium immariophilum)
ブレビバクテリウム・ラクトファーメンタム(コリネバクテリウム・グルタミカム)(Brevibacterium lactofermentum (Corynebacterium glutamicum))
ブレビバクテリウム・ロゼウム(Brevibacterium roseum)
ブレビバクテリウム・サッカロリティカム(Brevibacterium saccharolyticum)
ブレビバクテリウム・チオゲニタリス(Brevibacterium thiogenitalis)
コリネバクテリウム・アンモニアゲネス(コリネバクテリウム・スタティオニス)(Corynebacterium ammoniagenes(Corynebacterium stationis))
ブレビバクテリウム・アルバム(Brevibacterium album)
ブレビバクテリウム・セリナム(Brevibacterium cerinum)
ミクロバクテリウム・アンモニアフィラム(Microbacterium ammoniaphilum)
コリネ型細菌としては、具体的には、下記のような菌株が挙げられる。
Corynebacterium acetoacidophilum ATCC 13870
Corynebacterium acetoglutamicum ATCC 15806
Corynebacterium alkanolyticum ATCC 21511
Corynebacterium callunae ATCC 15991
Corynebacterium glutamicum ATCC 13020, ATCC 13032, ATCC 13060,ATCC 13869,FERM BP-734
Corynebacterium lilium ATCC 15990
Corynebacterium melassecola ATCC 17965
Corynebacterium thermoaminogenes AJ12340 (FERM BP-1539)
Corynebacterium herculis ATCC 13868
Brevibacterium divaricatum ATCC 14020
Brevibacterium flavum ATCC 13826, ATCC 14067, AJ12418(FERM BP-2205)
Brevibacterium immariophilum ATCC 14068
Brevibacterium lactofermentum ATCC 13869
Brevibacterium roseum ATCC 13825
Brevibacterium saccharolyticum ATCC 14066
Brevibacterium thiogenitalis ATCC 19240
Corynebacterium ammoniagenes (Corynebacterium stationis) ATCC 6871, ATCC 6872
Brevibacterium album ATCC 15111
Brevibacterium cerinum ATCC 15112
Microbacterium ammoniaphilum ATCC 15354
これらの菌株は、例えばアメリカン・タイプ・カルチャー・コレクション(住所12301 Parklawn Drive, Rockville, Maryland 20852 P.O. Box 1549, Manassas, VA 20108, United States of America)より分譲を受けることができる。すなわち各菌株に対応する登録番号が付与されており、この登録番号を利用して分譲を受けることができる(http://www.atcc.org/参照)。各菌株に対応する登録番号は、アメリカン・タイプ・カルチャー・コレクションのカタログに記載されている。
とりわけ、野生株コリネバクテリウム・グルタミカム(C. glutamicum)ATCC13869よりストレプトマイシン(Sm)耐性変異株として分離したコリネバクテリウム・グルタミカムAJ12036(FERM BP-734)は、その親株(野生株)に比べ、タンパク質の分泌に関わる機能遺伝子に変異が存在することが予測され、異種タンパク質の分泌生産能が至適培養条件下での蓄積量としておよそ2〜3倍と極めて高く、宿主菌として好適である。AJ12036は、昭和59年3月26日に工業技術院 生命工学工業技術研究所(現、独立行政法人 製品評価技術基
盤機構 AIST特許生物寄託センター、日本国茨城県つくば市東1−1−1 中央第6、郵便番号305-8566)に国際寄託として原寄託され、受託番号FERM BP-734が付与されている。
また、上述したようなコリネ型細菌を親株として、突然変異法や遺伝子組換え法を利用してタンパク質の分泌生産能が高まった株を選抜し、宿主として利用してもよい。例えば、紫外線照射またはN-メチル-N’-ニトロソグアニジン等の化学変異剤による処理を行なった後、タンパク質の分泌生産能が高まった株を選抜することができる。
さらに、このような菌株から細胞表層タンパク質を生産しないように改変した菌株を宿主として使用すれば、培地中に分泌された異種タンパク質の精製が容易となり、特に好ましい。そのような改変は、突然変異法または遺伝子組換え法により染色体上の細胞表層タンパク質のコード領域またはその発現調節領域に変異を導入することにより行うことができる。細胞表層タンパク質を生産しないように改変されたコリネ型細菌としては、C. glutamicum AJ12036(FERM BP-734)の細胞表層タンパク質PS2の欠損株であるC. glutamicum YDK010株(WO2004/029254)が挙げられる。
異種タンパク質を分泌生産する能力を有するコリネ型細菌は、上述したようなコリネ型細菌に、異種タンパク質の分泌発現用の遺伝子構築物(genetic construct)を導入し保持させることにより得ることができる。すなわち、本発明の細菌は、異種タンパク質の分泌発現用の遺伝子構築物を有する。「異種タンパク質の分泌発現用の遺伝子構築物」やその導入法については後述する。
本発明の細菌は、異種タンパク質を分泌生産する能力を有するコリネ型細菌を、ペニシリン結合タンパク質の活性および細胞表層タンパク質の活性が低下するように改変することによって得ることができる。また、本発明の細菌は、ペニシリン結合タンパク質の活性および細胞表層タンパク質の活性が低下するようにコリネ型細菌を改変した後に、異種タンパク質を分泌生産する能力を付与することによっても得ることができる。また、本発明の細菌は、もともと細胞表層タンパク質の活性が低下しているコリネ型細菌を、異種タンパク質を分泌生産する能力を有し、ペニシリン結合タンパク質の活性が低下するように改変することによっても得ることができる。本発明において、本発明の細菌を構築するための改変は、任意の順番で行うことができる。なお、本発明の細菌は、ペニシリン結合タンパク質の活性および/または細胞表層タンパク質の活性が低下するように改変される前から異種タンパク質を分泌生産できた株から得られたものであってよい。また、本発明の細菌は、ペニシリン結合タンパク質の活性および/または細胞表層タンパク質の活性が低下するように改変される前には異種タンパク質の分泌発現用の遺伝子構築物を有していても異種タンパク質を分泌生産することができなかった株から得られたものであって、ペニシリン結合タンパク質の活性および/または細胞表層タンパク質の活性が低下するように改変されることにより異種タンパク質を分泌生産できるようになったものであってもよい。また、本発明の細菌は、さらに、メタロペプチダーゼをコードする遺伝子またはメタロペプチダーゼが有するモチーフと相同な領域を含むタンパク質をコードする遺伝子の発現が上昇するように改変されていてもよい。
以下に、ペニシリン結合タンパク質およびそれをコードする遺伝子について説明する。
ペニシリン結合タンパク質(Penicillin-binding proteins;PBPs)とは、一般的に、βラクタム系抗生物質と結合するタンパク質であって、その酵素機能がβラクタム系抗生物質との結合により阻害されるものをいう。ペニシリン結合タンパク質としては、高分子量のPBPs(HMW-PBPs)や低分子量のPBPs(LMW-PBPs)が挙げられる。高分子量のPBPsとしては、クラスAの高分子量PBPs(class A HMW-PBPs)やクラスBの高分子量PBPs(class B HM
W-PBPs)が挙げられる。class A HMW-PBPsは、細胞壁を構成するペプチドグリカン部分への架橋を行うペプチド転移活性を有するtranspeptidase活性ドメインと二糖類から多糖鎖を形成する糖転移活性を有するtransglycosylase活性ドメインの両方を有する。class B HMW-PBPsは、transpeptidase活性ドメインを有する。例えば、C. glutamicumにおいては、class A HMW-PBPsとしては、PBP1aやPBP1bが挙げられる。C. glutamicumにおいては、class B HMW-PBPsとしては、FtsI、PBP2a、およびPBP2bが挙げられる。
本発明においては、ペニシリン結合タンパク質であって、コリネ型細菌で活性を低下させたときに異種タンパク質の分泌生産量を非改変株と比べて上昇させる性質を有するタンパク質の活性を低下させる。そのようなペニシリン結合タンパク質としては、例えば、PBP1a、class B HMW-PBPs、およびLMW-PBPsから選択されるものが好ましく、PBP1aおよびclass B HMW-PBPsから選択されるものがより好ましく、PBP1aが特に好ましい。
「コリネ型細菌で活性を低下させたときに異種タンパク質の分泌生産量を非改変株と比べて上昇させる性質」とは、コリネ型細菌で活性を低下させたときに非改変株、例えば野生株または親株よりも多い量の異種タンパク質を分泌生産する能力をコリネ型細菌に付与する性質をいう。非改変株よりも多い量の異種タンパク質を分泌生産するとは、異種タンパク質の分泌生産量が非改変株と比較して増大する限り特に制限されないが、例えば、培地中および/または菌体表層での蓄積量として、非改変株と比較して好ましくは10 %以上、より好ましくは20 %以上、特に好ましくは30 %以上、さらに好ましくは100 %以上多い量の異種タンパク質を分泌生産することであってよい。また、非改変株よりも多い量の異種タンパク質を分泌生産するとは、濃縮していない非改変株の培養上清をSDS−PAGEに供しCBBで染色した際には異種タンパク質を検出できないが、濃縮していない改変株の培養上清をSDS−PAGEに供しCBBで染色した際には異種タンパク質を検出できることであってもよい。
なお、ペニシリン結合タンパク質における「コリネ型細菌で活性を低下させたときに異種タンパク質の分泌生産量を非改変株と比べて上昇させる性質」には、細胞表層タンパク質の活性が低下していない株において活性を低下させた場合には同株の異種タンパク質の分泌生産能を増大させないが、細胞表層タンパク質の活性が低下した株において活性を低下させた場合には同株の異種タンパク質の分泌生産能を増大させる性質が含まれる。
コリネ型細菌で活性を低下させたときに異種タンパク質の分泌生産量を非改変株と比べて上昇させる性質を有するかどうかは、コリネ型細菌に属する菌株を基にそのタンパク質の活性が低下するよう改変された株を作製し、該改変株を培地で培養した際に分泌生産される異種タンパク質の量を定量し、改変前の株(非改変株)を培地で培養した際に分泌生産される異種タンパク質の量と比較することで確認することができる。
C.glutamicum ATCC 13032のPBP1aタンパク質をコードするCgl0278遺伝子は、NCBIデータベースにGenBank accession BA000036 (VERSION BA000036.3 GI:42602314)として登録されているゲノム配列中、294001〜296388位の配列の相補配列に相当する。また、C.glutamicum ATCC 13032のPBP1aタンパク質は、GenBank accession NP_599531 (versionNP_599531.1 GI:19551529、locus_tag=”NCgl0274”)として登録されている。C.glutamicum
ATCC 13032のCgl0278遺伝子の塩基配列および同遺伝子がコードするPBP1aタンパク質のアミノ酸配列をそれぞれ配列番号81および82に示す。
コリネ型細菌が属する種又は菌株によって、ペニシリン結合タンパク質をコードする遺伝子の塩基配列に差異が存在することがあるため、ペニシリン結合タンパク質をコードする遺伝子は、コリネ型細菌で活性を低下させたときに異種タンパク質の分泌生産量を非改変株と比べて上昇させる性質を有するタンパク質をコードする限り、上記塩基配列のバリ
アントであってもよい。なお、Cgl0278遺伝子のバリアントには、同遺伝子のホモログが含まれる。Cgl0278遺伝子のホモログは、上記のC.glutamicumの野生型Cgl0278遺伝子を問い合わせ配列として用いたBLAST検索やFASTA検索によって公開データベースから容易に取得することができ、また、コリネ型細菌の染色体を鋳型にして、これら公知の遺伝子配列に基づいて作製したオリゴヌクレオチドをプライマーとして用いたPCRにより取得することができる。
ペニシリン結合タンパク質をコードする遺伝子は、コリネ型細菌で活性を低下させたときに異種タンパク質の分泌生産量を非改変株と比べて上昇させる性質を有するタンパク質をコードする限りにおいて、上記アミノ酸配列において、1若しくは数個の位置での1又は数個のアミノ酸が置換、欠失、挿入又は付加されたアミノ酸配列を有するタンパク質をコードする遺伝子であっても良い。この場合、コリネ型細菌で活性を低下させたときに異種タンパク質の分泌生産量を非改変株と比べて上昇させる性質は、1又は数個の置換、欠失、挿入又は付加される前のタンパク質に対して、通常70%以上、好ましくは80%以上、より好ましくは90%以上が維持される。なお上記「1又は数個」とは、アミノ酸残基のタンパク質の立体構造における位置やアミノ酸残基の種類によっても異なるが、具体的には好ましくは1〜20個、より好ましくは1〜10個、さらに好ましくは1〜5個を意味する。
上記の1若しくは数個のアミノ酸の置換、欠失、挿入、または付加は、タンパク質の機能が正常に維持される保存的変異である。保存的変異の代表的なものは、保存的置換である。保存的置換とは、置換部位が芳香族アミノ酸である場合には、Phe、Trp、Tyr間で、置換部位が疎水性アミノ酸である場合には、Leu、Ile、Val間で、極性アミノ酸である場合には、Gln、Asn間で、塩基性アミノ酸である場合には、Lys、Arg、His間で、酸性アミノ酸である場合には、Asp、Glu間で、ヒドロキシル基を持つアミノ酸である場合には、Ser、Thr間でお互いに置換する変異である。保存的置換とみなされる置換としては、具体的には、AlaからSer又はThrへの置換、ArgからGln、His又はLysへの置換、AsnからGlu、Gln、Lys、His又はAspへの置換、AspからAsn、Glu又はGlnへの置換、CysからSer又はAlaへの置換、GlnからAsn、Glu、Lys、His、Asp又はArgへの置換、GluからGly、Asn、Gln、Lys又はAspへの置換、GlyからProへの置換、HisからAsn、Lys、Gln、Arg又はTyrへの置換、IleからLeu、Met、Val又はPheへの置換、LeuからIle、Met、Val又はPheへの置換、LysからAsn、Glu、Gln、His又はArgへの置換、MetからIle、Leu、Val又はPheへの置換、PheからTrp、Tyr、Met、Ile又はLeuへの置換、SerからThr又はAlaへの置換、ThrからSer又はAlaへの置換、TrpからPhe又はTyrへの置換、TyrからHis、Phe又はTrpへの置換、及び、ValからMet、Ile又はLeuへの置換が挙げられる。また、上記のようなアミノ酸の置換、欠失、挿入、付加、または逆位等には、遺伝子が由来する細菌の個体差、種の違いに基づく場合などの天然に生じる変異(mutant又はvariant)によって生じるものも含まれる。
さらに、上記のような保存的変異を有する遺伝子は、コードされるアミノ酸配列全体に対して、80%以上、好ましくは90%以上、より好ましくは95%以上、さらに好ましくは97%以上、特に好ましくは99%以上の相同性を有し、かつ、コリネ型細菌で活性を低下させたときに異種タンパク質の分泌生産量を非改変株と比べて上昇させる性質を有するタンパク質をコードする遺伝子であってもよい。尚、本明細書において、「相同性」(homology)は、「同一性」(identity)を指すことがある。
また、ペニシリン結合タンパク質をコードする遺伝子は、公知の遺伝子配列から調製され得るプローブ、例えば上記塩基配列の全体または一部に対する相補配列とストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、コリネ型細菌で活性を低下させたときに異種タンパク質の分泌生産量を非改変株と比べて上昇させる性質を有するタンパク質をコードするDNAであってもよい。「ストリンジェントな条件」とは、いわゆる特異的なハイブリッドが
形成され、非特異的なハイブリッドが形成されない条件をいう。一例を示せば、相同性が高いDNA同士、例えば80%以上、好ましくは90%以上、より好ましくは95%以上、より好ましくは97%以上、特に好ましくは99%以上の相同性を有するDNA同士がハイブリダイズし、それより相同性が低いDNA同士がハイブリダイズしない条件、あるいは通常のサザンハイブリダイゼーションの洗いの条件である60℃、1×SSC、0.1% SDS、好ましくは60℃、0.1×SSC、0.1% SDS、より好ましくは、68℃、0.1×SSC、0.1% SDSに相当する塩濃度および温度で、1回、好ましくは2〜3回洗浄する条件を挙げることができる。
上述の通り、上記ハイブリダイゼーションに用いるプローブは、遺伝子の相補配列の一部であってもよい。そのようなプローブは、公知の遺伝子配列に基づいて作製したオリゴヌクレオチドをプライマーとし、これらの塩基配列を含むDNA断片を鋳型とするPCRによって作製することができる。例えば、プローブとして、300 bp程度の長さのDNA断片を用いる場合には、ハイブリダイゼーションの洗いの条件としては、50℃、2×SSC、0.1% SDSが挙げられる。
なお、上記の遺伝子やタンパク質のバリアントに関する記載は、細胞表層タンパク質や本発明において分泌生産される異種タンパク質等の任意のタンパク質、およびそれらをコードする遺伝子にも準用できる。
以下に、細胞表層タンパク質およびそれをコードする遺伝子について説明する。
細胞表層タンパク質は、細菌や古細菌の細胞表層(S層)を構成するタンパク質である。コリネ型細菌の細胞表層タンパク質としては、C. glutamicumのPS1およびPS2(CspBともいう)、ならびにC. stationisのSlpA(CspAともいう)が挙げられる。これらの中では、PS2タンパク質の活性を低下させるのが好ましい。
C. glutamicum ATCC13869のcspB遺伝子の塩基配列および同遺伝子がコードするPS2タンパク質のアミノ酸配列をそれぞれ配列番号97および98に示す。
また、例えば、28株のC. glutamicumについて、CspBホモログのアミノ酸配列が報告されている(J Biotechnol., 112, 177-193(2004))。これら28株のC. glutamicumとcspB遺伝子ホモログのNCBIデータベースのGenBank accessionナンバーを以下に例示する(カッコ内がGenBank accessionナンバーを示す)。
C. glutamicum ATCC13058(AY524990)
C. glutamicum ATCC13744(AY524991)
C. glutamicum ATCC13745(AY524992)
C. glutamicum ATCC14017(AY524993)
C. glutamicum ATCC14020(AY525009)
C. glutamicum ATCC14067(AY524994)
C. glutamicum ATCC14068(AY525010)
C. glutamicum ATCC14747(AY525011)
C. glutamicum ATCC14751(AY524995)
C. glutamicum ATCC14752(AY524996)
C. glutamicum ATCC14915(AY524997)
C. glutamicum ATCC15243(AY524998)
C. glutamicum ATCC15354(AY524999)
C. glutamicum ATCC17965(AY525000)
C. glutamicum ATCC17966(AY525001)
C. glutamicum ATCC19223(AY525002)
C. glutamicum ATCC19240(AY525012)
C. glutamicum ATCC21341(AY525003)
C. glutamicum ATCC21645(AY525004)
C. glutamicum ATCC31808(AY525013)
C. glutamicum ATCC31830(AY525007)
C. glutamicum ATCC31832(AY525008)
C. glutamicum LP-6(AY525014)
C. glutamicum DSM20137(AY525015)
C. glutamicum DSM20598(AY525016)
C. glutamicum DSM46307(AY525017)
C. glutamicum 22220(AY525005)
C. glutamicum 22243(AY525006)
コリネ型細菌が属する種又は菌株によって、細胞表層タンパク質をコードする遺伝子の塩基配列に差異が存在することがあるため、細胞表層タンパク質をコードする遺伝子は、コリネ型細菌で活性を低下させたときに異種タンパク質の分泌生産量を非改変株と比べて上昇させる性質を有するタンパク質をコードする限り、上記塩基配列のバリアントであってもよい。例えば、細胞表層タンパク質をコードする遺伝子は、コリネ型細菌で活性を低下させたときに異種タンパク質の分泌生産量を非改変株と比べて上昇させる性質を有するタンパク質をコードする限りにおいて、上記アミノ酸配列において、1若しくは数個の位置での1又は数個のアミノ酸が置換、欠失、挿入又は付加されたアミノ酸配列を有するタンパク質をコードする遺伝子であっても良い。細胞表層タンパク質およびそれをコードする遺伝子のバリアントについては、上記ペニシリン結合タンパク質およびそれをコードする遺伝子のバリアントに関する記載を準用できる。
なお、細胞表層タンパク質における「コリネ型細菌で活性を低下させたときに異種タンパク質の分泌生産量を非改変株と比べて上昇させる性質」には、ペニシリン結合タンパク質の活性が低下していない株において活性を低下させた場合には同株の異種タンパク質の分泌生産能を増大させないが、ペニシリン結合タンパク質の活性が低下した株において活性を低下させた場合には同株の異種タンパク質の分泌生産能を増大させる性質が含まれる。
本発明において、「細胞表層タンパク質の活性が低下している」ことには、細胞表層タンパク質の活性が低下するようにコリネ型細菌が改変された場合、および、コリネ型細菌においてもともと細胞表層タンパク質の活性が低下している場合が含まれる。「コリネ型細菌においてもともと細胞表層タンパク質の活性が低下している場合」には、コリネ型細菌がもともと細胞表層タンパク質を有さない場合が含まれる。すなわち、細胞表層タンパク質の活性が低下しているコリネ型細菌としては、例えば、もともと細胞表層タンパク質を有さないコリネ型細菌が挙げられる。「コリネ型細菌がもともと細胞表層タンパク質を有さない場合」としては、例えば、コリネ型細菌がもともと細胞表層タンパク質をコードする遺伝子を有さない場合が挙げられる。なお、「コリネ型細菌がもともと細胞表層タンパク質を有さない」とは、コリネ型細菌が、当該コリネ型細菌が属する種の他の株に見出される細胞表層タンパク質から選択される1またはそれ以上のタンパク質をもともと有さないことであってよい。例えば、「C. glutamicumがもともと細胞表層タンパク質を有さない」とは、C. glutamicum株が、他のC. glutamicum株に見出される細胞表層タンパク質から選択される1またはそれ以上のタンパク質、すなわち、例えばPS1および/またはPS2(CspB)、をもともと有さないことであってよい。もともと細胞表層タンパク質を有さないコリネ型細菌としては、例えば、もともとcspB遺伝子を有さないC. glutamicum ATCC 13032が挙げられる。
以下に、タンパク質の活性を低下させる手法について説明する。
「タンパク質の活性が低下する」とは、標的のタンパク質の活性が野性株や親株等の非改変株と比較して減少していることを意味し、活性が完全に消失している場合を含む。「タンパク質の活性が低下する」とは、具体的には、非改変株と比較して、同タンパク質の細胞当たりの分子数が低下していること、および/または、同タンパク質の分子当たりの機能が低下していることをいう。すなわち、「タンパク質の活性が低下する」という場合の「活性」とは、タンパク質の触媒活性に限られず、タンパク質をコードする遺伝子の転写量(mRNA量)またはタンパク質の量を意味してもよい。なお、「タンパク質の細胞当たりの分子数が低下している」ことには、同タンパク質が全く存在していない場合が含まれる。また、「タンパク質の分子当たりの機能が低下している」ことには、同タンパク質の分子当たりの機能が完全に消失している場合が含まれる。
タンパク質の活性が低下するような改変は、例えば、同タンパク質をコードする遺伝子の発現を低下させることにより達成される。なお、「遺伝子の発現が低下する」ことを、「遺伝子の発現が弱化される」ともいう。遺伝子の発現の低下は、例えば、転写効率の低下によるものであってもよく、翻訳効率の低下によるものであってもよく、それらの組み合わせによるものであってもよい。遺伝子の発現の低下は、例えば、遺伝子のプロモーターやシャインダルガノ(SD)配列等の発現調節配列を改変することにより達成できる。発現調節配列を改変する場合には、発現調節配列は、好ましくは1塩基以上、より好ましくは2塩基以上、特に好ましくは3塩基以上が改変される。また、発現調節配列の一部または全部を欠失させてもよい。また、遺伝子の発現の低下は、例えば、発現制御に関わる因子を操作することによっても達成できる。発現制御に関わる因子としては、転写や翻訳制御に関わる低分子(誘導物質、阻害物質など)、タンパク質(転写因子など)、核酸(siRNAなど)等が挙げられる。
また、タンパク質の活性が低下するような改変は、例えば、同タンパク質をコードする遺伝子を破壊することにより達成できる。遺伝子の破壊は、例えば、染色体上の遺伝子のコード領域の一部又は全部を欠損させることにより達成できる。さらには、染色体上の遺伝子の前後の配列を含めて、遺伝子全体を欠失させてもよい。タンパク質の活性の低下が達成できる限り、欠失させる領域は、N末端領域、内部領域、C末端領域等のいずれの領域であってもよい。通常、欠失させる領域は長い方が確実に遺伝子を不活化することができる。また、欠失させる領域の前後の配列は、リーディングフレームが一致しないことが好ましい。
また、遺伝子の破壊は、例えば、染色体上の遺伝子のコード領域にアミノ酸置換(ミスセンス変異)を導入すること、終止コドンを導入すること(ナンセンス変異)、あるいは1〜2塩基を付加または欠失するフレームシフト変異を導入すること等によっても達成できる(Journal of Biological Chemistry 272:8611-8617(1997) Proceedings of the National Academy of Sciences, USA 95 5511-5515(1998), Journal of Biological Chemistry 26 116, 20833-20839(1991))。
また、遺伝子の破壊は、例えば、染色体上の遺伝子のコード領域に他の配列を挿入することによっても達成できる。挿入部位は遺伝子のいずれの領域であってもよいが、挿入する配列は長い方が確実に遺伝子を不活化することができる。また、挿入部位の前後の配列は、リーディングフレームが一致しないことが好ましい。他の配列としては、コードされるタンパク質の活性を低下又は消失させるものであれば特に制限されないが、例えば、抗生物質耐性遺伝子等のマーカー遺伝子や異種タンパク質生産に有用な遺伝子が挙げられる。
染色体上の遺伝子を上記のように改変することは、例えば、遺伝子の部分配列を欠失し、正常に機能するタンパク質を産生しないように改変した欠失型遺伝子を作製し、該欠失型遺伝子を含む組換えDNAで細菌を形質転換して、欠失型遺伝子と染色体上の遺伝子とで相同組換えを起こさせることにより、染色体上の遺伝子を欠失型遺伝子に置換することによって達成できる。その際、組換えDNAには、宿主の栄養要求性等の形質にしたがって、マーカー遺伝子を含ませておくと操作がしやすい。欠失型遺伝子によってコードされるタンパク質は、生成したとしても、野生型タンパク質とは異なる立体構造を有し、機能が低下又は消失する。このような相同組換えを利用した遺伝子置換による遺伝子破壊は既に確立しており、「Redドリブンインテグレーション(Red-driven integration)」と呼ばれる方法(Datsenko, K. A, and Wanner, B. L. Proc. Natl. Acad. Sci. U S A. 97:6640-6645 (2000))、Redドリブンインテグレーション法とλファージ由来の切り出しシステム(Cho, E. H., Gumport, R. I., Gardner, J. F. J. Bacteriol. 184: 5200-5203 (2002))とを組み合わせた方法(WO2005/010175号参照)等の直鎖状DNAを用いる方法や、温度感受性複製起点を含むプラスミドを用いる方法、接合伝達可能なプラスミドを用いる方法、宿主内で機能する複製起点を持たないスイサイドベクターを用いる方法などがある(米国特許第6303383号、特開平05-007491号)。
また、タンパク質の活性が低下するような改変は、例えば、突然変異処理により行ってもよい。突然変異処理としては、X線もしくは紫外線の照射、またはN−メチル−N'−ニトロ−N−ニトロソグアニジン(MNNG)、エチルメタンスルフォネート(EMS)、メチルメタンスルフォネート(MMS)等の変異剤による通常の変異処理が挙げられる。
標的のタンパク質の活性が低下したことは、同タンパク質の活性を測定することで確認できる。ペニシリン結合タンパク質の場合は、例えば、同タンパク質が属するクラスに応じて、transpeptidase活性および/またはtransglycosylase活性を測定することにより、同タンパク質の活性が低下したかどうかを確認できる。transpeptidase活性および/またはtransglycosylase活性は、例えば、当業者に良く知られた方法で測定することができる。具体的には、例えば、PBP1aのtranspeptidaseおよびtransglycosylase活性は、lipid IIを多糖鎖(glycan strand)に重合しペプチド架橋を生成する反応を測定することにより測定することができる(Born P, et al., J Biol Chem. 2006 Sep 15; 281(37): 26985-93.)。タンパク質の活性は、具体的には、例えば、非改変株と比較して、50%以下、好ましくは20%以下、より好ましくは10%以下、さらに好ましくは5%以下、特に好ましくは0%に低下する。
標的の遺伝子の発現が低下したことは、同遺伝子の転写量が低下したことを確認することや、同遺伝子から発現する標的のタンパク質の量が低下したことを確認することにより確認できる。
標的の遺伝子の転写量が低下したことの確認は、同遺伝子から転写されるmRNAの量を非改変株と比較することによって行うことが出来る。mRNAの量を評価する方法としては、ノーザンハイブリダイゼーション、RT−PCR等が挙げられる(Molecular cloning(Cold spring Harbor Laboratory Press, Cold spring Harbor (USA), 2001))。mRNAの量は、非改変株と比較して、例えば、50%以下、20%以下、10%以下、5%以下、または0%に低下しているのが好ましい。
標的のタンパク質の量が低下したことの確認は、抗体を用いてウェスタンブロットによって行うことが出来る(Molecular cloning(Cold spring Harbor Laboratory Press, Cold spring Harbor (USA), 2001))。タンパク質の量は、非改変株と比較して、例えば、50%以下、20%以下、10%以下、5%以下、または0%に低下しているのが好まし
い。
標的の遺伝子が破壊されたことは、破壊に用いた手段に応じて、同遺伝子の一部または全部の塩基配列、制限酵素地図、または全長等を決定することで確認できる。
なお、上記のようなタンパク質の活性を低下させる手法は、ペニシリン結合タンパク質および細胞表層タンパク質の活性低下に加えて、任意のタンパク質、およびそれらをコードする遺伝子にも準用できる。
以下に、「異種タンパク質の分泌発現用の遺伝子構築物」やその導入法について説明する。なお、同遺伝子構築物を「本発明に用いられる遺伝子構築物」ともいう。
分泌性タンパク質(secretory protein)は、一般に、プレタンパク質(プレペプチドともいう)またはプレプロタンパク質(プレプロペプチドともいう)として翻訳され、その後、プロセッシングにより成熟タンパク質(mature protein)になることが知られている。具体的には、分泌性タンパク質は、一般に、プレタンパク質またはプレプロタンパク質として翻訳された後、プレ部分であるシグナルペプチドがプロテアーゼ(一般にシグナルペプチダーゼと呼ばれる)によって切断されて成熟タンパク質またはプロタンパク質に変換され、プロタンパク質はプロテアーゼによってさらにプロ部分が切断されて成熟タンパク質になる。よって、本発明の方法においては、異種タンパク質の分泌生産にシグナルペプチドを利用するのが好ましい。なお、本発明において、分泌型タンパク質のプレタンパク質およびプレプロタンパク質を総称して「分泌型タンパク質前駆体」という場合がある。本発明において、「シグナルペプチド」(「シグナル配列」ともいう)とは、分泌性タンパク質前駆体のN末端に存在し、かつ、通常、天然の成熟タンパク質には存在しないアミノ酸配列をいう。
本発明に用いられる遺伝子構築物は、異種タンパク質の分泌発現が達成できる限り特に制限されないが、好ましくは、コリネ型細菌で機能するプロモーター配列、同プロモーター配列の下流に接続されたコリネ型細菌で機能するシグナルペプチドをコードする核酸配列、および同シグナルペプチドをコードする核酸配列の下流に接続された異種タンパク質をコードする核酸配列を含む。シグナルペプチドをコードする核酸配列は、プロモーター配列の下流に、同プロモーターによる制御を受けてシグナルペプチドが発現するよう連結されていればよい。異種タンパク質をコードする核酸配列は、シグナルペプチドをコードする核酸配列の下流に、同シグナルペプチドとの融合タンパク質として異種タンパク質が発現するよう連結されていればよい。また、本発明に用いられる遺伝子構築物は、コリネ型細菌で異種タンパク質遺伝子を発現させるために有効な制御配列(オペレーターやターミネーター等)を、それらが機能し得るように適切な位置に有していてもよい。
本発明で使用されるプロモーターは、コリネ型細菌で機能するプロモーターである限り特に限定されず、コリネ型細菌由来のプロモーターであってもよく、異種由来のプロモーターであってもよい。「コリネ型細菌で機能するプロモーター」とは、コリネ型細菌においてプロモーター活性を有するプロモーターをいう。異種由来のプロモーターとして、具体的には、例えば、tacプロモーター、lacプロモーター、trpプロモーター、およびaraBADプロモーター等のE.coli由来のプロモーターが挙げられる。その中で、tacプロモーター等の強力なプロモーターが好ましく、araBADプロモーター等の誘導型のプロモーターも好ましい。
コリネ型細菌由来のプロモーターとしては、例えば、細胞表層タンパク質のPS1、PS2(CspBともいう)、SlpA(CspAともいう)をコードする各遺伝子のプロモーター、各種アミノ酸生合成系遺伝子のプロモーターが挙げられる。各種アミノ酸生合成系遺伝子のプロモ
ーターとして、具体的には、例えば、グルタミン酸生合成系のグルタミン酸脱水素酵素遺伝子、グルタミン合成系のグルタミン合成酵素遺伝子、リジン生合成系のアスパルトキナーゼ遺伝子、スレオニン生合成系のホモセリン脱水素酵素遺伝子、イソロイシンおよびバリン生合成系のアセトヒドロキシ酸合成酵素遺伝子、ロイシン生合成系の2-イソプロピルリンゴ酸合成酵素遺伝子、プロリンおよびアルギニン生合成系のグルタミン酸キナーゼ遺伝子、ヒスチジン生合成系のホスホリボシル-ATPピロホスホリラーゼ遺伝子、トリプトファン、チロシンおよびフェニルアラニン等の芳香族アミノ酸生合成系のデオキシアラビノヘプツロン酸リン酸(DAHP)合成酵素遺伝子、イノシン酸およびグアニル酸のような核酸生合成系におけるホスホリボシルピロホスフェート(PRPP)アミドトランスフェラーゼ遺伝子、イノシン酸脱水素酵素遺伝子、およびグアニル酸合成酵素遺伝子のプロモーターが挙げられる。
プロモーターとしては、各種レポーター遺伝子を用いることにより、在来のプロモーターの高活性型のものを取得し利用してもよい。例えば、プロモーター領域内の−35、−10領域をコンセンサス配列に近づけることにより、プロモーターの活性を高めることができる(国際公開第00/18935号)。プロモーターの強度の評価法および強力なプロモーターの例は、Goldsteinらの論文(Prokaryotic promoters in biotechnology. Biotechnol. Annu. Rev., 1, 105-128 (1995))等に記載されている。さらに、リボソーム結合部位(RBS)と開始コドンとの間のスペーサー領域、特に開始コドンのすぐ上流の配列(5’-UTR)における数個のヌクレオチドの置換、あるいは挿入、あるいは欠失がmRNAの安定性および翻訳効率に非常に影響を及ぼすことが知られており、これらを改変することも可能である。
本発明で使用されるシグナルペプチドは、コリネ型細菌で機能するシグナルペプチドである限り特に限定されず、コリネ型細菌由来のシグナルペプチドであってもよく、異種由来のシグナルペプチドであってもよい。「コリネ型細菌で機能するシグナルペプチド」とは、目的のタンパク質のN末端に連結した際に、コリネ型細菌が当該タンパク質を分泌することができるペプチドをいう。シグナルペプチドは、宿主であるコリネ型細菌の分泌性タンパク質のシグナルペプチドであるのが好ましく、コリネ型細菌の細胞表層タンパク質のシグナルペプチドであるのがより好ましい。コリネ型細菌の細胞表層タンパク質としては、C. glutamicumに由来するPS1及びPS2(特表平6−502548)、及びC. ammoniagenes (C. stationis)に由来するSlpA(特開平10−108675)が挙げられる。PS1のシグナルペプチドのアミノ酸配列を配列番号83に、PS2のシグナルペプチドのアミノ酸配列を配列番号84に、SlpAのシグナルペプチドのアミノ酸配列を配列番号85に示す。また、米国特許4965197によれば、コリネ型細菌由来のDNaseにもシグナルペプチドがあると言われており、そのようなシグナルペプチドも本発明に利用することができる。
シグナルペプチドは生物種を越えて一定の共通した配列上の特徴を有するが、ある生物種で分泌機能を示すシグナルペプチドが他の生物種においても必ずしも分泌機能を発揮するわけではない。よって、異種由来のシグナルペプチドを利用する場合には、適宜、コリネ型細菌で機能するものを選択すればよい。あるシグナルペプチドがコリネ型細菌で機能するかどうかは、例えば、目的のタンパク質を当該シグナルペプチドと融合させて発現させ、当該タンパク質が分泌されるかを確認することで確認できる。
シグナルペプチドには、それが由来する分泌性タンパク質のN末端アミノ酸配列の一部が付加されていてもよい。シグナル配列は、一般に、翻訳産物が菌体外に分泌される際にシグナルペプチダーゼによって切断される。なお、シグナルペプチドをコードする遺伝子は、天然型のままでも使用できるが、使用する宿主のコドン使用頻度に応じて最適なコドンを有するように改変してもよい。
本発明の方法により分泌生産される異種タンパク質としては、例えば、生理活性タンパク質、レセプタータンパク質、ワクチンとして使用される抗原タンパク質、酵素が挙げられる。酵素としては、例えば、トランスグルタミナーゼ、プロテアーゼ、エンドペプチダーゼ、エキソペプチダーゼ、アミノペプチダーゼ、カルボキシペプチダーゼ、コラゲナーゼ、およびキチナーゼ等が挙げられる。
生理活性タンパク質としては、例えば、成長因子(増殖因子)、ホルモン、サイトカイン、抗体関連分子が挙げられる。
成長因子(増殖因子)として、具体的には、例えば、上皮成長因子(Epidermal growth
factor;EGF)、インスリン様成長因子(Insulin-like growth factor;IGF)、トランスフォーミング成長因子(Transforming growth factor;TGF)、神経成長因子(Nerve growth factor;NGF)、脳由来神経栄養因子(Brain-derived neurotrophic factor;BDNF)、血管内皮細胞増殖因子(Vesicular endothelial growth factor;VEGF)、顆粒球コロニー刺激因子(Granulocyte-colony stimulating factor;G-CSF)、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(Granulocyte-macrophage-colony stimulating factor;GM-CSF)、血小板由来成長因子(Platelet-derived growth factor;PDGF)、エリスロポエチン(Erythropoietin;EPO)、トロンボポエチン(Thrombopoietin;TPO)、酸性線維芽細胞増殖因子(acidic fibroblast growth factor;aFGFまたはFGF1)、塩基性線維芽細胞増殖因子(basic fibroblast growth factor;bFGFまたはFGF2)、角質細胞増殖因子(keratinocyto growth factor;KGF-1またはFGF7, KGF-2またはFGF10)、肝細胞増殖因子(Hepatocyte growth factor;HGF)が挙げられる。
ホルモンとして、具体的には、例えば、インスリン、グルカゴン、ソマトスタチン(somatostatin)、ヒト成長ホルモン(human growth hormone;hGH)、副甲状腺ホルモン(parathyroid hormone;PTH)、カルシトニン(calcitonin)が挙げられる。
サイトカインとして、具体的には、例えば、インターロイキン、インターフェロン、腫瘍壊死因子(Tumor Necrosis Factor;TNF)が挙げられる。
なお、成長因子(増殖因子)、ホルモン、およびサイトカインは互いに厳密に区別されなくともよい。例えば、生理活性タンパク質は、成長因子(増殖因子)、ホルモン、およびサイトカインから選択されるいずれか1つのグループに属するものであってもよく、それらから選択される複数のグループに属するものであってもよい。
また、生理活性タンパク質は、タンパク質全体であってもよく、その一部であってもよい。タンパク質の一部としては、例えば、生理活性を有する部分が挙げられる。生理活性を有する部分として、具体的には、例えば、副甲状腺ホルモン(parathyroid hormone;PTH)の成熟体のN末端34アミノ酸残基からなる生理活性ペプチドTeriparatideが挙げられる。
抗体関連分子とは、完全抗体を構成するドメインから選択される単一のドメインもしくは2またはそれ以上のドメインの組合せからなる分子種を含むタンパク質をいう。完全抗体を構成するドメインとしては、重鎖のドメインであるVH、CH1、CH2、およびCH3、ならびに軽鎖のドメインであるVLおよびCLが挙げられる。抗体関連分子は、上述の分子種を含む限り、単量体タンパク質であってもよく、多量体タンパク質であってもよい。なお、抗体関連分子が多量体タンパク質である場合には、単一の種類のサブユニットからなるホモ多量体であってもよく、2またはそれ以上の種類のサブユニットからなるヘテロ多量体であってもよい。抗体関連分子として、具体的には、例えば、完全抗体、Fab、F(ab’)、F(ab’)、Fc、重鎖(H鎖)と軽鎖(L鎖)からなる二量
体、Fc融合タンパク質、重鎖(H鎖)、軽鎖(L鎖)、単鎖Fv(scFv)、sc(Fv)、ジスルフィド結合Fv(sdFv)、Diabodyが挙げられる。
レセプタータンパク質は、特に制限されず、例えば、生理活性タンパク質やその他の生理活性物質に対するレセプタータンパク質であってよい。その他の生理活性物質としては、例えば、ドーパミン等の神経伝達物質が挙げられる。また、レセプタータンパク質は、対応するリガンドが知られていないオーファン受容体であってもよい。
ワクチンとして使用される抗原タンパク質は、免疫応答を惹起できるものであれば特に制限されず、想定する免疫応答の対象に応じて適宜選択すればよい。
単量体タンパク質として、具体的には、例えば、トランスグルタミナーゼやインスリン様成長因子1(Insulin-like growth factor 1;IGF−1)が挙げられる。トランスグルタミナーゼ遺伝子としては放線菌、例えばStreptoverticillium mobaraense IFO 13819、Streptoverticillium cinnamoneum IFO 12852、Streptoverticillium griseocarneum IFO 12776、Streptomyces lydicus[WO9606931]等やOomycetes[WO9622366]等の糸状菌などの分泌型のトランスグルタミナーゼの遺伝子が挙げられる。また、単量体タンパク質として、具体的には、さらに、抗体関連分子である単量体タンパク質、例えば、重鎖(H鎖)、軽鎖(L鎖)、scFv、sdFvが挙げられる。
また、多量体タンパク質として、具体的には、例えば、血管内皮細胞増殖因子(vascular endothelial growth factor;VEGF)、インスリン、インターロイキン-5、インターフェロン-γ、腫瘍壊死因子(Tumor Necrosis Factor;TNF)が挙げられる。また、多量体タンパク質として、具体的には、さらに、抗体関連分子である多量体タンパク質、例えば、完全抗体、Fab、F(ab’)、F(ab’)、Fc、重鎖(H鎖)と軽鎖(L鎖)からなる二量体、Fc融合タンパク質、sc(Fv)、Diabodyが挙げられる。これらの中では、Fab、F(ab’)、およびFc融合タンパク質が好ましい。
Fab(fragment, antigen binding)とは、完全抗体からH鎖のFc領域を除いた部分であり、抗原結合領域のみの抗体断片である。Fabは、1分子のH鎖のFab部分と1分子のL鎖からなる二量体であり、C末端のジスルフィド結合により会合している。完全抗体がH2L2の四量体であり分子量は約150kDaと巨大であるのに対し、Fabは分子量約50kDaと小さく、そのためFabは目的組織への透過性に優れると考えられている。FabはFc領域を持たないため、補体活性や結晶化能などは持たないが、抗原への結合能は保持しているため主に抗原の中和の目的で用いられる。抗体医薬の中でも、近年はFabが着目されている。
F(ab’)とは、完全抗体からH鎖のFc’領域を除いた部分である。F(ab’)は、1分子のH鎖のF(ab’)部分と1分子のL鎖からなる二量体であり、C末端のジスルフィド結合により会合している。F(ab’)におけるH鎖の残存部分はFabにおけるH鎖の残存部分よりも長く、H鎖同士をつなぐジスルフィド結合部分が残存している。そのため、2分子のF(ab’)はジスルフィド結合によりF(ab’)を形成できる。F(ab’)やF(ab’)も、Fab断片と同様に抗体医薬として利用できる。
Fc(fragment, crystallizable)は、補体活性や結晶化能に関与するFc領域のみの抗体断片である。H鎖のFc領域と他の機能性タンパク質を融合させたタンパク質をFc融合タンパク質という。
これらのタンパク質をコードする遺伝子は、使用する宿主に応じて、および望みの活性
を得るために改変することができる。例えば、これらのタンパク質をコードする遺伝子は、これらのタンパク質に1又は数個のアミノ酸の付加、欠失、置換などが含まれるよう改変されてもよい。上述のペニシリン結合タンパク質およびそれをコードする遺伝子のバリアントに関する記載は、本発明の方法により分泌生産される異種タンパク質およびそれをコードする遺伝子にも準用できる。また、これらのタンパク質をコードする遺伝子は、任意のコドンをそれと等価のコドンに置換したものであってもよい。例えば、これらのタンパク質をコードする遺伝子は、必要により宿主のコドン使用頻度に応じて最適なコドンに変換してもよい。
本発明の方法により最終的に得られる異種タンパク質のN末端領域は、天然のタンパク質と同一であってもよく、天然のタンパク質と同一でなくてもよい。例えば、最終的に得られる異種タンパク質のN末端領域は、天然のタンパク質と比較して、1又は数個のアミノ酸を余分に付加された、あるいは欠失したものであってもよい。なお上記「1又は数個」とは、目的の異種タンパク質の全長や構造等によっても異なるが、具体的には好ましくは1〜20個、より好ましくは1〜10個、さらに好ましくは1〜5個を意味する。
また、分泌生産される異種タンパク質は、プロ構造部が付加したタンパク質(プロタンパク質)であってもよい。分泌生産される異種タンパク質がプロタンパク質である場合、最終的に得られる異種タンパク質はプロタンパク質であってもよく、そうでなくてもよい。すなわち、プロタンパク質はプロ構造部を切断されて成熟タンパク質になってもよい。切断は、例えば、プロテアーゼにより行うことができる。プロテアーゼを使用する場合は、最終的に得られるタンパク質の活性という観点から、プロタンパク質は一般には天然のタンパク質とほぼ同じ位置で切断されることが好ましく、天然のタンパク質と完全に同じ位置で切断され天然のものと同一の成熟タンパク質が得られるのがより好ましい。従って、一般には、天然に生じる成熟タンパク質と同一のタンパク質を生じる位置でプロタンパク質を切断する特異的プロテアーゼが最も好ましい。しかしながら、上述の通り、最終的に得られる異種タンパク質のN末端領域は、天然のタンパク質と同一でなくてもよい。例えば、生産される異種タンパク質の種類や使用目的等によっては、天然のタンパク質に比較してN末端がアミノ酸1〜数個分長いあるいは短いタンパク質がより適切な活性を有することがある。本発明において使用できるプロテアーゼには、Dispase(ベーリンガーマンハイム社製)のような商業的に入手できるものの他、微生物の培養液、例えば放線菌の培養液等から得られるものが含まれる。そのようなプロテアーゼは未精製状態で使用することもでき、必要に応じて適当な純度まで精製した後に使用してもよい。
本発明に用いられる遺伝子構築物をコリネ型細菌に導入する手法は特に制限されない。本発明の細菌において、本発明に用いられる遺伝子構築物は、プラスミドのように染色体外で自律増殖するベクター上に存在していてもよく、染色体上に組み込まれていてもよい。なお、上述の通り、本発明の細菌を構築するに当たり、本発明に用いられる遺伝的構築物の導入、タンパク質の分泌生産能の付与または増強、ペニシリン結合タンパク質の活性の低下、細胞表層タンパク質の活性の低下等の改変は、任意の順番で行うことができる。
本発明に用いられる遺伝子構築物は、例えば、同遺伝子構築物を含むベクターを用いて宿主に導入できる。ベクターは、コリネ型細菌で自律複製可能なものであれば特に制限されず、例えば、細菌プラスミド由来のベクター、酵母プラスミド由来のベクター、バクテリオファージ由来のベクター、コスミド、またはファージミド等であってよい。ベクターとしては、例えば、コリネ型細菌由来のプラスミドが好ましい。コリネ型細菌で自律複製可能なベクターとして、具体的には、pHM1519(Agric, Biol. Chem., 48, 2901-2903(1984));pAM330(Agric. Biol. Chem., 48, 2901-2903(1984));これらを改良した薬剤耐性遺伝子を有するプラスミド;特開平3-210184号公報に記載のプラスミドpCRY30;特開平2-72876号公報及び米国特許5,185,262号明細書公報に記載のプラスミドpCRY21、pCRY2KE、p
CRY2KX、pCRY31、pCRY3KE及びpCRY3KX;特開平1-191686号公報に記載のプラスミドpCRY2およびpCRY3;特開昭58-192900号公報に記載のpAJ655、pAJ611及びpAJ1844;特開昭57-134500号公報に記載のpCG1;特開昭58-35197号公報に記載のpCG2;特開昭57-183799号公報に記載のpCG4およびpCG11;特開平10-215883号公報に記載のpVK7、特開平9-070291号公報に記載のpVC7等が挙げられる。
また、人工トランスポゾン等も利用することができる。トランスポゾンが使用される場合は相同組換えまたはそれ自身の転移能によって異種タンパク質遺伝子が染色体上に導入される。その他、相同組換えを利用する導入法としては、例えば、直鎖状DNA、温度感受性複製起点を含むプラスミド、接合伝達可能なプラスミド、または宿主内で機能する複製起点を持たないスイサイドベクター等を用いる方法が挙げられる。なお、異種タンパク質遺伝子が染色体上に導入される場合には、本発明に用いられる遺伝子構築物が染色体上に構成される限り、同遺伝子構築物に含まれるプロモーター配列およびシグナルペプチドをコードする核酸配列のいずれかまたは両方は宿主の染色体上にもともと存在するものであってもよい。具体的には、例えば、宿主の染色体上にもともと存在するプロモーター配列と同プロモーター配列の下流に接続されたシグナルペプチドをコードする核酸配列をそのまま利用し、同シグナルペプチドをコードする核酸配列の下流に接続された遺伝子のみを目的の異種タンパク質遺伝子に置換することによっても、染色体上に本発明に用いられる遺伝子構築物が構成され、本発明の細菌を構築できる。
なお、2またはそれ以上の種類のタンパク質を発現する場合、各タンパク質の分泌発現用の遺伝子構築物は、目的の異種タンパク質の分泌発現が達成できるように本発明の細菌に保持されていればよい。具体的には、例えば、各タンパク質の分泌発現用の遺伝子構築物は、全てが単一の発現ベクター上に保持されていてもよく、全てが染色体上に保持されていてもよい。また、各タンパク質の分泌発現用の遺伝子構築物は、複数の発現ベクター上に別々に保持されていてもよく、単一または複数の発現ベクター上と染色体上とに別々に保持されていてもよい。「2またはそれ以上の種類のタンパク質を発現する場合」とは、例えば、2またはそれ以上の種類の異種タンパク質が分泌生産される場合や、ヘテロ多量体タンパク質が分泌生産される場合をいう。
本発明に用いられる遺伝子構築物のコリネ型細菌への導入方法は特に限定されず、一般に使用される方法、例えば、プロトプラスト法(Gene, 39, 281-286(1985))、エレクトロポレーション法(Bio/Technology, 7, 1067-1070)(1989))等を使用することができる。
<2>本発明の異種タンパク質の製造方法
本発明は、本発明の細菌を培養し、分泌生産された異種タンパク質を回収することを含む、異種タンパク質の製造方法(以下、「本発明の方法」または「本発明の異種タンパク質の製造方法」ともいう)を提供する。すなわち、上記のようにして得られる本発明の細菌を培養し、異種タンパク質を発現させることにより、菌体外に分泌された多量の異種タンパク質が得られる。
本発明の細菌は通常用いられる方法および条件に従って培養することができる。例えば、本発明の細菌は炭素源、窒素源、無機イオンを含有する通常の培地で培養することができる。さらに高い増殖を得るために、ビタミン、アミノ酸等の有機微量栄養素を必要に応じて添加することもできる。
炭素源としてはグルコースおよびシュークロースのような炭水化物、酢酸のような有機酸、アルコール類、その他を使用することができる。窒素源としては、アンモニアガス、アンモニア水、アンモニウム塩、その他が使用できる。無機イオンとしては、カルシウムイオン、マグネシウムイオン、リン酸イオン、カリウムイオン、鉄イオン等を必要に応じ
て適宜使用する。培養はpH5.0〜8.5、15℃〜37℃の適切な範囲にて好気的条件下で行い、1〜7日間程度培養する。また、コリネ型細菌のL−アミノ酸生産における培養条件や、その他Sec系、Tat系のシグナルペプチドを用いたタンパク質の製造法に記載の条件を用いることが出来る(WO01/23591、WO2005/103278参照)。また、異種タンパク質の発現のために誘導型プロモーターを用いた場合は、培地にプロモーター誘導剤を添加して培養を行うこともできる。このような条件下で本発明の細菌を培養することにより、目的タンパク質は菌体内で多量に生産され効率よく菌体外に分泌される。なお、本発明の方法によれば、生産された異種タンパク質は菌体外に分泌されるため、例えばトランスグルタミナーゼ等の微生物の菌体内で多量に蓄積すると一般に致死的であるタンパク質も、致死的影響を受けることなく連続的に生産できる。
本発明の方法によって培地中に分泌されたタンパク質は、当業者によく知られた方法に従って培養後の培地から分離精製することができる。例えば、菌体を遠心分離等により除去した後、塩析、エタノール沈殿、限外濾過、ゲル濾過クロマトグラフィー、イオン交換カラムクロマトグラフィー、アフィニーティークロマトグラフィー、中高圧液体クロマトグラフィー、逆相クロマトグラフィー、疎水クロマトグラフィー等の既知の適切な方法、またはこれらを組み合わせることにより分離精製することができる。また、ある場合には、培養物や培養上清をそのまま使用してもよい。本発明の方法によって菌体表層に分泌されたタンパク質も当業者によく知られた方法、例えば塩濃度の上昇、界面活性剤の使用等によって可溶化した後に、培地中に分泌された場合と同様にして分離精製することができる。また、ある場合には、菌体表層に分泌されたタンパク質を可溶化せずに、例えば固定化酵素として使用しても良い。
目的の異種タンパク質が分泌生産されたことは、培養上清および/または菌体表層を含む画分を試料として、SDS-PAGEを行い、分離されたタンパク質バンドの分子量を確認することにより確認することができる。また、培養上清および/または菌体表層を含む画分を試料として、抗体を用いたウェスタンブロットによって確認できる(Molecular cloning(Cold spring Harbor Laboratory Press, Cold spring Harbor (USA), 2001))。また、プロテインシークエンサーを用いて目的タンパク質のN末端アミノ酸配列を決定することによって確認出来る。また、質量分析計を用いて、目的タンパク質の質量を決定することによって確認出来る。また、目的の異種タンパク質が酵素や何らかの測定可能な生理活性を有するものである場合には、培養上清および/または菌体表層を含む画分を試料として、目的の異種タンパク質の酵素活性または生理活性を測定することにより目的の異種タンパク質が分泌生産されたことを確認できる。
本発明は以下の実施例によって、更に具体的に説明されるが、これらはいかなる意味でも本発明を限定するものと解してはならない。
実施例1:ペニシリン結合タンパク質PBP1aおよびPBP1bをそれぞれ欠損させたCorynebacterium glutamicumの構築
(1)PBP1aをコードするCgl0278遺伝子欠損用ベクターpBSΔCgl0278の構築
C. glutamicum ATCC13032株のゲノム配列および、ペニシリン結合タンパク質PBP1aをコードするCgl0278遺伝子の塩基配列は既に決定されている(Genbank Accession No. BA000036, NCBI gene entry NCgl0274)。この配列を参考にして<配列番号01>、<配列番号02>、<配列番号03>、および<配列番号04>に記載のプライマーを合成した。常法に従って(斉藤、三浦の方法[Biochim. Biophys. Acta, 72, 619(1963)])調製したC. glutamicum ATCC13869株の染色体DNAを鋳型として、<配列番号01>と<配列番号02>のプライマーを用いてPBP1aをコードするCgl0278の5’側上流約1kbpを、<配列番号03>と<配列番号04>のプライマーを用いて3’側下流約1kbpの領域を、それぞれPCR法によって増幅した。次に、増幅
した両DNA断片を鋳型に、<配列番号01>と<配列番号04>に示すDNAをプライマーとして用いたPCR法により両DNA断片が融合した約2kbpのDNA断片を得た。<配列番号01>と<配列番号04>のプライマーにはそれぞれ制限酵素Bam HIとXba Iの認識配列がデザインしてある。PCRにはPyrobest DNA polymerase(タカラバイオ社製)を用い、反応条件は業者の推奨するプロトコルに従った。このDNA断片を制限酵素Bam HIおよびXba Iで処理し、WO2005/113744に記載のpBS4のBam HI-Xba I部位に挿入することによって、Cgl0278遺伝子欠損用のベクターpBSΔCgl0278を得た。ライゲーション反応にはDNA Ligation Kit Ver.2.1(タカラバイオ社製)を用い、反応条件は業者の推奨するプロトコルに従った。
(2)PBP1bをコードするCgl2986遺伝子欠損用ベクターpBSΔCgl2986の構築
C. glutamicum ATCC13032株のゲノム配列および、ペニシリン結合タンパク質PBP1bをコードするCgl2986遺伝子の塩基配列は既に決定されている(Genbank Accession No. BA000036, NCBI gene entry NCgl2884)。Cgl0278の場合と同様に、この配列を参考にして<配列番号05>、<配列番号06>、<配列番号07>、および<配列番号08>に記載のプライマーを合成した。調製したC. glutamicum ATCC13869株の染色体DNAを鋳型として、<配列番号05>と<配列番号06>のプライマーを用いてPBP1bをコードするCgl2986の5’側上流約1.3kbpを、<配列番号07>と<配列番号08>のプライマーを用いて3’側下流約1.1kbpの領域を、それぞれPCR法によって増幅した。次に、増幅した両DNA断片を鋳型に、<配列番号05>と<配列番号08>に示すDNAをプライマーとして用いたPCR法により両DNA断片が融合した約2.4kbpのDNA断片を得た。得られた約2.4kbpのDNA断片中には制限酵素Pst IおよびSal Iの認識配列がそれぞれ一箇所ずつ含まれている。PCRにはPyrobest DNA polymerase(タカラバイオ社製)を用い、反応条件は業者の推奨するプロトコルに従った。このDNA断片を制限酵素Pst
IおよびSal Iで処理して得られた約2.2kbpの断片を、WO2006/057450に記載のpBS5TのPst
I-Sal I部位に挿入することによって、Cgl2986遺伝子欠損用のベクターpBSΔCgl2986を得た。
(3)PBP1a欠損株およびPBP1b欠損株の構築
次に、構築したpBSΔCgl0278およびpBSΔCgl2986でWO2004/029254に記載のC. glutamicum YDK010株をそれぞれ形質転換した。なお、C. glutamicum YDK010株は、C. glutamicum
AJ12036(FERM BP-734)の細胞表層タンパク質PS2の欠損株である(WO2004/029254)。得られた形質転換体からWO2005/113744およびWO2006/057450記載の方法に従って菌株の選択を行い、Cgl0278遺伝子が欠損したYDK010ΔPBP1a株およびCgl2986遺伝子が欠損したYDK010ΔPBP1b株を得た。
実施例2:ペニシリン結合タンパク質PBP1a及びPBP1bをそれぞれ欠損させたCorynebacterium glutamicumを用いた抗体トラスツズマブのFab断片のH鎖領域の分泌発現
(1)抗体トラスツズマブのFab断片のH鎖領域の分泌発現プラスミドの構築
乳癌細胞特異的な抗体トラスツズマブのH鎖の可変領域の遺伝子配列は既に決定されている(Genbank Accession No.AY513484)。この配列と一般的な抗体H鎖の不可変領域の配列を参考にし、C. glutamicumのコドン使用頻度を考慮して<配列番号09>〜<配列番号42>に示したDNAを合成した。これらのDNAを鋳型とし、別途合成した<配列番号43>と<配列番号44>に示したDNAをプライマーとして用いて、トラスツズマブの完全長H鎖領域をPCR法によって増幅し、約1.4kbpの<配列番号45>に示したDNA断片を得た。<配列番号45>に示したDNAにコードされる抗体トラスツズマブのH鎖のアミノ酸配列を<配列番号86>に示した。
次にWO01/23591に記載のpPKSPTG1(pPKSPTG1は、プロトランスグルタミナーゼ(プロ構造部付きトランスグルタミナーゼ)の分泌発現用ベクターであって、C. glutamicum ATCC13869株のPS2遺伝子由来のプロモーター、同プロモーターの下流に発現可能に連結されたC. ammoniagenes (C. stationis) ATCC6872株のSlpA由来のシグナルペプチドをコードするDNA、および同シグナルペプチドとの融合タンパク質として発現するよう連結されたS.m
obaraense由来のプロトランスグルタミナーゼ遺伝子を有する)を鋳型に、<配列番号46>と<配列番号47>に示したプライマーを用いて、上記プロモーター領域と上記シグナルペプチド領域とを含む領域をPCR法にて増幅し、約0.7kbpのDNA断片を得た。
次に、増幅した両DNA断片(トラスツズマブの完全長H鎖領域を含む断片と、プロモーター領域及びシグナルペプチド領域を含む断片)を鋳型に、<配列番号44>と<配列番号46>に記載のDNAをプライマーとして用いたPCR法により、両DNA断片が融合した約2.0kbpのDNA断片を得た。
次にこの融合DNA断片を鋳型とし、<配列番号46>と<配列番号48>、<配列番号46>と<配列番号49>、<配列番号46>と<配列番号50>、<配列番号46>と<配列番号51>、<配列番号46>と<配列番号52>、<配列番号46>と<配列番号53>、<配列番号46>と<配列番号54>に記載のDNAをそれぞれプライマーとして用いたPCR法により、それぞれ約1.4kbpのDNA断片を得た。<配列番号46>のプライマーには制限酵素Kpn Iの認識配列がデザインしてあり、<配列番号48>、<配列番号49>、<配列番号50>、<配列番号51>、<配列番号52>、<配列番号53>、<配列番号54>のプライマーにはそれぞれストップコドンと制限酵素Kpn Iの認識配列がデザインしてある。PCRにはPyrobest DNA polymerase(タカラバイオ社製)を用い、反応条件は業者の推奨するプロトコルに従った。これらのDNA断片を制限酵素Kpn Iで処理し、特開平9-322774に記載のpPK4のKpn I部位に挿入することによって、トラスツズマブのFab部分のH鎖領域を分泌発現させるプラスミドpPKStrast-FabH(1-223C)、pPKStrast-FabH(1-228T)、pPKStrast-FabH(1-229C)、pPKStrast-FabH(1-230P)、pPKStrast-FabH(1-231P)、pPKStrast-FabH(1-232C)、pPKStrast-FabH(1-233P)を得た。具体的には、これらのプラスミドにより、プラスミド名に含まれる数字に従って、トラスツズマブのH鎖の1番目のアミノ酸残基から、223、228、229、230、231、232、233番目のいずれかのアミノ酸残基までを発現させることができる。それぞれの挿入断片の塩基配列決定の結果、予想通りの遺伝子が構築されていることを確認した。尚、塩基配列の決定はBigDye(R) Terminator v3.1 Cycle Sequencing Kit(アプライドバイオシステムズ社製)と3130 ジェネティックアナライザ(アプライドバイオシステムズ社製)を用いて行った。
(2)ペニシリン結合タンパク質PBP1a欠損株及びPBP1b欠損株を用いた抗体トラスツズマブのFab断片のH鎖領域の分泌発現
実施例2(1)で構築した抗体トラスツズマブのFab断片のH鎖領域の分泌発現プラスミドであるpPKStrast-FabH(1-229C)を用いて、YDK010株、YDK010ΔPBP1a株、およびYDK010ΔPBP1b株のそれぞれを形質転換した。得られた各形質転換体を、25 mg/lのカナマイシンを含むMM液体培地(グルコース 120 g、硫酸マグネシウム七水和物 3 g、硫酸アンモニウム 30 g、リン酸二水素カリウム 1.5 g、硫酸鉄七水和物 0.03 g、硫酸マンガン五水和物
0.03 g、チアミン塩酸塩 450 μg、ビオチン 450 μg、DL−メチオニン0.15 g、炭酸カルシウム 50 gを水で1LにしてpH7.0に調整)でそれぞれ30 ℃、72時間培養した。培養終了後、各培養液を遠心分離して得られた培養上清を還元SDS-PAGEに供してからSYPRO Orange(インビトロジェン社製)にて染色を行った。その結果、親株のYDK010株およびYDK010ΔPBP1b株では目的のタンパク質バンドが検出されなかったが、YDK010ΔPBP1a株でのみ、目的の抗体トラスツズマブのFab断片のH鎖と同じ分子量のタンパク質バンドが検出された(図1、図2)。このタンパク質バンドのN末端配列をプロテインシークエンサーPPSQ-21A(島津製作所製)を用いて決定したところ、目的の抗体トラスツズマブのFab断片のH鎖のN末端配列と一致した事から、培養上清中に抗体トラスツズマブのFab断片のH鎖が分泌発現している事が確認できた。
次に、実施例2(1)で構築した抗体トラスツズマブのFab断片のH鎖領域の分泌発現プラスミドであるpPKStrast-FabH(1-223C)、pPKStrast-FabH(1-228T)、pPKStrast-FabH(1-229C)、pPKStrast-FabH(1-230P)、 pPKStrast-FabH(1-231P)、pPKStrast-FabH(1-232C)、p
PKStrast-FabH(1-233P) を用いて、YDK010株およびYDK010ΔPBP1a株のそれぞれを形質転換した。得られた各形質転換体を、25 mg/lのカナマイシンを含むMM液体培地(グルコース 120 g、硫酸マグネシウム七水和物 3 g、硫酸アンモニウム 30 g、リン酸二水素カリウム 1.5 g、硫酸鉄七水和物 0.03 g、硫酸マンガン五水和物 0.03 g、チアミン塩酸塩 450 μg、ビオチン 450 μg、DL−メチオニン0.15 g、炭酸カルシウム 50 g、水で1LにしてpH7.0に調整)でそれぞれ30 ℃、72時間培養した。培養終了後、各培養液を遠心分離して得られた培養上清を還元SDS-PAGEに供してからSYPRO Orange(インビトロジェン社製)にて染色を行った。その結果、いずれの分泌発現プラスミドを用いた場合にも、親株のYDK010株では目的のタンパク質バンドが検出されなかったが、YDK010ΔPBP1a株でのみ、目的の抗体トラスツズマブのFab断片のH鎖と同じ分子量のタンパク質バンドが検出された(図3)。
実施例3:ペニシリン結合タンパク質PBP1aを欠損させたCorynebacterium glutamicumを用いた抗体トラスツズマブのFab断片のL鎖領域の分泌発現
(1)抗体トラスツズマブのFab断片のL鎖領域の分泌発現プラスミドの構築
乳癌細胞特異的な抗体トラスツズマブのL鎖の可変領域の遺伝子配列は既に決定されている(Genbank Accession No. AY513485)。この配列と一般的な抗体L鎖の不可変領域の配列を参考にし、C. glutamicumのコドン使用頻度を考慮して<配列番号55>〜<配列番号70>に示したDNAを合成した。これらのDNAを鋳型とし、別途合成した<配列番号71>と<配列番号72>に示したDNAをプライマーとして用いて、トラスツズマブの完全長L鎖領域をPCR法によって増幅し、約0.6kbpの<配列番号73>に示したDNA断片を得た。<配列番号73>に示したDNAにコードされる抗体トラスツズマブのL鎖のアミノ酸配列を<配列番号87>に示した。次にWO01/23591記載のpPKSPTG1(C. glutamicum ATCC13869株由来のプロモーター領域とC. ammoniagenes (C. stationis)ATCC6872株由来のシグナルペプチド領域を含む)を鋳型に、<配列番号74>と<配列番号75>に示したプライマーを用いて、上記プロモーター領域と上記シグナルペプチド領域とを含む領域をPCR法にて増幅し、約0.7kbpのDNA断片を得た。次に増幅した両DNA断片(トラスツズマブのL鎖領域を含む断片と、プロモーター領域及びシグナルペプチド領域を含む断片)を鋳型に、<配列番号74>と<配列番号76>に記載のDNAをプライマーとして用いたPCR法により、両DNA断片が融合した約1.3kbpのDNA断片を得た。<配列番号74>と<配列番号76>のプライマーにはそれぞれ制限酵素BamH Iの認識配列がデザインしてある。PCRにはPyrobest DNA polymerase(タカラバイオ社製)を用い、反応条件は業者の推奨するプロトコルに従った。この融合DNA断片を制限酵素BamH I処理し、特開平9-322774記載のpPK4のBamH I部位に挿入することによって、トラスツズマブのFab部分のL鎖領域を分泌発現させるプラスミドpPKStrast-FabLを得た。挿入断片の塩基配列決定の結果、予想通りの遺伝子が構築されていることを確認した。尚、塩基配列の決定はBigDye(R) Terminator v3.1 Cycle Sequencing Kit(アプライドバイオシステムズ社製)と3130 ジェネティックアナライザ(アプライドバイオシステムズ社製)を用いて行った。
(2)ペニシリン結合タンパク質PBP1a欠損株を用いた抗体トラスツズマブのFab断片のL鎖領域の分泌発現
実施例3(1)で構築した抗体トラスツズマブのFab断片のL鎖領域の分泌発現プラスミドpPKStrast-FabLを用いて、YDK010株およびYDK010ΔPBP1a株のそれぞれを形質転換した。得られた各形質転換体を、25 mg/lのカナマイシンを含むMM液体培地(グルコース 120 g、硫酸マグネシウム七水和物 3 g、硫酸アンモニウム 30 g、リン酸二水素カリウム 1.5
g、硫酸鉄七水和物 0.03 g、硫酸マンガン五水和物 0.03 g、チアミン塩酸塩 450 μg、ビオチン 450 μg、DL−メチオニン0.15 g、炭酸カルシウム 50 gを水で1LにしてpH7.0に調整)でそれぞれ30 ℃、72時間培養した。培養終了後、各培養液を遠心分離して得られた培養上清を還元SDS-PAGEに供してからCBB R250(バイオラッド社製)にて染色を行った。その結果、YDK010ΔPBP1a株においては、親株のYDK010株と比較して少なくとも2倍以上のバンド強度で、目的の抗体トラスツズマブのFab断片のL鎖と同じ分子量のタンパク質バ
ンドが検出された(図4)。このタンパク質バンドのN末端配列をプロテインシークエンサーPPSQ-21A(島津製作所製)を用いて決定したところ、目的の抗体トラスツズマブのFab断片のL鎖のN末端配列と一致した事から、培養上清中に抗体トラスツズマブのFab断片のL鎖が分泌発現している事が確認できた。
実施例4:ペニシリン結合タンパク質PBP1aを欠損させたCorynebacterium glutamicumを用いた抗体トラスツズマブのFab(H&L)断片の分泌発現
(1)抗体トラスツズマブのFab(H&L)断片の分泌発現プラスミドの構築
実施例2(1)で構築した抗体トラスツズマブのFab断片のH鎖領域の各発現プラスミドを制限酵素Kpn Iで消化することにより得られたそれぞれ約1.4kbのDNA断片を、実施例3(1)で構築した抗体トラスツズマブのFab断片のL鎖領域の発現プラスミドであるpPKStrast-FabLのKpn I部位に挿入することによって、トラスツズマブのFab断片のH鎖領域とL鎖領域を共発現させるプラスミドpPKStrast-FabH(1-223C)+L、pPKStrast-FabH(1-228T)+L、pPKStrast-FabH(1-229C)+L、pPKStrast-FabH(1-230P)+L、 pPKStrast-FabH(1-231P)+L、pPKStrast-FabH(1-232C)+L、pPKStrast-FabH(1-233P)+Lを得た。
(2)ペニシリン結合タンパク質PBP1a欠損株を用いた抗体トラスツズマブのFab(H&L)断片の分泌発現
実施例4(1)で構築した抗体トラスツズマブのFab(H&L)断片の分泌発現プラスミドpPKStrast-FabH(1-223C)+L、pPKStrast-FabH(1-228T)+L、pPKStrast-FabH(1-229C)+L、pPKStrast-FabH(1-230P)+L、 pPKStrast-FabH(1-231P)+L、pPKStrast-FabH(1-232C)+L、pPKStrast-FabH(1-233P)+Lを用いて、YDK010株およびYDK010ΔPBP1a株のそれぞれを形質転換した。得られた各形質転換体を、25 mg/lのカナマイシンを含むMM液体培地(グルコース 120 g、硫酸マグネシウム七水和物 3 g、硫酸アンモニウム 30 g、リン酸二水素カリウム 1.5 g、硫酸鉄七水和物 0.03 g、硫酸マンガン五水和物 0.03 g、チアミン塩酸塩 450 μg、ビオチン 450 μg、DL-メチオニン0.15 g、炭酸カルシウム 50 gを水で1LにしてpH7.0に調整)でそれぞれ30 ℃、96時間培養した。培養終了後、各培養液を遠心分離して得られた培養上清を非還元SDS-PAGEに供してからSYPRO Orange(インビトロジェン社製)にて染色を行い、抗体トラスツズマブのFab(H&L)断片の分泌量の比較を行った。その結果、いずれの分泌発現プラスミドを用いた場合でも、親株のYDK010株と比較してYDK010ΔPBP1a株では、有意に抗体トラスツズマブのFab(H&L)断片の分泌量が向上していた(図5)。YDK010ΔPBP1a株におけるpPKStrast-FabH(1-229C)+Lを用いた形質転換株のFab(H&L)タンパク質バンドのN末端配列をプロテインシークエンサーPPSQ-21A(島津製作所製)を用いて決定したところ、目的の抗体トラスツズマブのFab断片のH鎖のN末端配列とL鎖のN末端配列の両方の配列が含まれていた事から、培養上清中に抗体トラスツズマブのFab(H&L)断片が分泌発現して会合体を形成している事が確認できた。
(3)ペニシリン結合タンパク質PBP1a欠損株を用いた抗体トラスツズマブのF(ab’)の分泌発現
実施例4(2)で得られた各培養上清を非還元SDS-PAGEに供してからiBlot(R) Gel Transfer Stacks PVDF, Mini(インビトロジェン社製)とiBlotTMゲルトランスファーシステム(インビトロジェン社製)を用いてPVDF膜に転写した。このPVDF膜に対してアルカリフォスファターゼ標識抗ヒトIgG[H&L]抗体(ROCKLAND社製)とAlkaline Phosphatase Conjugate Substrate Kit(バイオラッド社製)を用いたウェスタンブロッティングを行い、抗体トラスツズマブのF(ab’)の検出を行った。その結果、H鎖同士をつなぐジスルフィド結合を形成するシステイン残基が含まれているH鎖遺伝子とL鎖遺伝子を共発現するプラスミドであるpPKStrast-FabH(1-229C)+L、pPKStrast-FabH(1-230P)+L、 pPKStrast-FabH(1-231P)+L、pPKStrast-FabH(1-232C)+L、pPKStrast-FabH(1-233P)+Lを有する形質転換体の培養上清において、抗体トラスツズマブのF(ab’)の分子量のタンパク質バンドが検出された。さらに、これらいずれの分泌発現プラスミドを用いた場合にも、親株
のYDK010株と比較してYDK010ΔPBP1a株では、有意に抗体トラスツズマブのF(ab’)の分子量のタンパク質バンドが増加していた(図6)。
実施例5:ペニシリン結合タンパク質PBP1aを欠損させたCorynebacterium glutamicumを用いた抗体トラスツズマブのFc断片の分泌発現
(1)抗体トラスツズマブのFc断片の分泌発現プラスミドの構築
実施例2(1)で合成したトラスツズマブの完全長H鎖領域を含む<配列番号45>に示したDNAを鋳型とし、別途合成した<配列番号77>と<配列番号78>、<配列番号77>と<配列番号79>に示したDNAをプライマーとして用いて、トラスツズマブのH鎖のFc領域をPCR法によって増幅し、それぞれ約0.7kbpのDNA断片を得た。次にWO01/23591記載のpPKSPTG1(C. glutamicum ATCC13869株由来のプロモーター領域とC. ammoniagenes (C. stationis) ATCC6872株由来のシグナルペプチド領域を含む)を鋳型に、<配列番号46>と<配列番号80>に示したプライマーを用いて、上記プロモーター領域と上記シグナルペプチド領域とを含む領域をPCR法にて増幅し、約0.7kbpのDNA断片を得た。次に、増幅した両DNA断片(トラスツズマブのH鎖のFc領域を含む断片のそれぞれと、プロモーター領域及びシグナルペプチド領域を含む断片)を鋳型に、<配列番号46>と<配列番号77>に記載のDNAをプライマーとして用いたPCR法により、両DNA断片が融合したそれぞれ約1.4kbpのDNA断片を得た。<配列番号46>と<配列番号77>のプライマーにはそれぞれ制限酵素Kpn Iの認識配列がデザインしてある。PCRにはPyrobest DNA polymerase(タカラバイオ社製)を用い、反応条件は業者の推奨するプロトコルに従った。これらのDNA断片を制限酵素Kpn I処理後に、特開平9-322774記載のpPK4のKpn I部位に挿入することによって、トラスツズマブのH鎖のFc領域を分泌発現させるプラスミドpPKStrast-Fc(H224D-450)、pPKStrast-Fc(H231P-450)を得た。具体的には、これらのプラスミドにより、プラスミド名に含まれる数字に従って、トラスツズマブのH鎖の224または231番目のアミノ酸残基から、450番目のアミノ酸残基までを発現させることができる。挿入断片の塩基配列決定の結果、予想通りの遺伝子が構築されていることを確認した。尚、塩基配列の決定はBigDye(R) Terminator v3.1 Cycle Sequencing Kit(アプライドバイオシステムズ社製)と3130 ジェネティックアナライザ(アプライドバイオシステムズ社製)を用いて行った。
(2)ペニシリン結合タンパク質PBP1a欠損株を用いた抗体トラスツズマブの断片Fc領域の分泌発現
実施例5(1)で構築した抗体トラスツズマブのFc断片の分泌発現プラスミドであるpPKStrast-Fc(H224D-450)、pPKStrast-Fc(H231P-450)を用いて、YDK010株およびYDK010ΔPBP1a株のそれぞれを形質転換した。得られた各形質転換体を、25 mg/lのカナマイシンを含むMM液体培地(グルコース 120 g、硫酸マグネシウム七水和物 3 g、硫酸アンモニウム 30 g、リン酸二水素カリウム 1.5 g、硫酸鉄七水和物 0.03 g、硫酸マンガン五水和物 0.03 g、チアミン塩酸塩 450 μg、ビオチン 450 μg、DL−メチオニン 0.15 g、炭酸カルシウム 50 gを水で1LにしてpH7.0に調整)でそれぞれ30 ℃、72時間培養した。培養終了後、各培養液を遠心分離して得られた培養上清を還元SDS-PAGEに供してからiBlot(R) Gel Transfer Stacks PVDF, Mini(インビトロジェン社製)とiBlotTMゲルトランスファーシステム(インビトロジェン社製)を用いてPVDF膜に転写した。このPVDF膜に対してアルカリフォスファターゼ標識抗ヒトIgG[H&L]抗体(ROCKLAND社製)とAlkaline Phosphatase Conjugate Substrate Kit(バイオラッド社製)を用いたウェスタンブロッティングを行い、抗体トラスツズマブのFc断片の分泌量の比較を行った。その結果、いずれの分泌発現プラスミドを用いた場合でも、親株のYDK010株と比較してYDK010ΔPBP1a株では、有意に抗体トラスツズマブのFc断片の分泌量が向上していた(図7)。
実施例6:ペニシリン結合タンパク質PBP1aを欠損させたCorynebacterium glutamicumを用いたプロトランスグルタミナーゼの分泌発現
(1)ペニシリン結合タンパク質PBP1a欠損株を用いたプロトランスグルタミナーゼの分
泌発現
C. glutamicumを用いたプロトランスグルタミナーゼの分泌発現系は既に報告されている(WO01/23591)。そこでWO01/23591記載のプロトランスグルタミナーゼ分泌発現用プラスミドベクターpPKSPTG1を用いて、YDK010株およびYDK010ΔPBP1a株のそれぞれを形質転換した。得られた各形質転換体を、25 mg/lのカナマイシンを含むMM液体培地(グルコース 120 g、硫酸マグネシウム七水和物 3 g、硫酸アンモニウム 30 g、リン酸二水素カリウム 1.5 g、硫酸鉄七水和物 0.03 g、硫酸マンガン五水和物 0.03 g、チアミン塩酸塩 450 μg、ビオチン 450 μg、DL-メチオニン0.15 g、炭酸カルシウム 50 gを水で1LにしてpH7.0に調整)でそれぞれ30 ℃、72時間培養した。培養終了後、各培養液を遠心分離して得られた培養上清を還元SDS-PAGEに供してからCBB R250(バイオラッド社製)にて染色を行い、プロトランスグルタミナーゼの分泌量を既報([Protein Expr Purif 26:329-335])に従って比較定量を行った。その結果、親株のYDK010株と比較してYDK010ΔPBP1a株では、有意にプロトランスグルタミナーゼの分泌量が向上していた(図8)。
実施例7:ペニシリン結合タンパク質PBP1aを欠損させたCorynebacterium glutamicumを用いた抗ジゴキシン単鎖抗体(scFv)の分泌発現
(1)抗ジゴキシン単鎖抗体(scFv)の分泌発現プラスミドの構築
抗ジゴキシン単鎖抗体の遺伝子配列は既に決定されており、Bacillus subtilisを用いた発現検討が実施されている(Biotechnology (N Y)., 11(1): 71-76(1993))。この配列を参考にし、C. glutamicum ATCC13869株のPS2遺伝子由来のプロモーター、同プロモーターの下流に発現可能に連結されたC. ammoniagenes (C. stationis) ATCC6872株のSlpA由来のシグナルペプチドをコードするDNA、および同シグナルペプチドとの融合タンパク質として発現するよう連結された抗ジゴキシン単鎖抗体をコードするDNAを含む、<配列番号88>に示すDNA断片を全合成した。<配列番号88>の合成DNAには5’末端と3’末端に制限酵素Xba Iの認識配列が含まれている。なお、合成DNA中の抗ジゴキシン単鎖抗体をコードするDNAは、C. glutamicumのコドン使用頻度を考慮して設計した。合成DNA中の抗ジゴキシン単鎖抗体をコードするDNAの塩基配列を<配列番号89>、抗ジゴキシン単鎖抗体のアミノ酸配列を<配列番号90>に示した。全合成したDNA断片を制限酵素Xba Iで消化し、特開平9-322774に記載のpPK4のXba I部位に挿入することによって、抗ジゴキシン単鎖抗体を発現させるプラスミドpPKSSCA1を得た。
(2)ペニシリン結合タンパク質PBP1a欠損株を用いた抗ジゴキシン単鎖抗体(scFv)の分泌発現
実施例7(1)で構築したscFvの分泌発現プラスミドであるpPKSSCA1を用いて、YDK010株およびYDK010ΔPBP1a株のそれぞれを形質転換した。得られた各形質転換体を、25 mg/lのカナマイシンを含むMM液体培地(グルコース 120 g、硫酸マグネシウム七水和物 3 g、硫酸アンモニウム 30 g、リン酸二水素カリウム 1.5 g、硫酸鉄七水和物 0.03 g、硫酸マンガン五水和物 0.03 g、チアミン塩酸塩 450 μg、ビオチン 450 μg、DL−メチオニン0.15 g、炭酸カルシウム 50 gを水で1LにしてpH7.0に調整)でそれぞれ30 ℃、72時間培養した。培養終了後、各培養液を遠心分離して得られた培養上清を還元SDS-PAGEに供してからSYPRO Orange(インビトロジェン社製)にて染色を行った。その結果、YDK010ΔPBP1a株においては、親株のYDK010株と比較して少なくとも2倍以上のバンド強度で、目的の抗ジゴキシンscFvと同じ分子量のタンパク質バンドが検出された(図9)。このタンパク質バンドのN末端配列をプロテインシークエンサーPPSQ-21A(島津製作所製)を用いて決定したところ、目的の抗ジゴキシン単鎖抗体のN末端配列と一致した事から、培養上清中に抗ジゴキシンscFvが分泌発現している事が確認できた。
実施例8: ペニシリン結合タンパク質PBP1aを欠損させたCorynebacterium glutamicumを用いた抗体アダリムマブのFab(H&L)断片の分泌発現
(1)抗体アダリムマブのFab(H&L)断片の分泌発現プラスミドの構築
腫瘍壊死因子α(tumor necrosis factor-α;TNF-α)特異的な抗体アダリムマブのアミノ酸配列は既に決定されている(独立行政法人医薬品医療機器総合機構審査報告書(平成20年2月14日))。この配列を参考にし、C. glutamicum ATCC13869株のPS2遺伝子由来のプロモーター、同プロモーターの下流に発現可能に連結されたC. ammoniagenes (C. stationis) ATCC6872株のSlpA由来のシグナルペプチドをコードするDNA、および同シグナルペプチドとの融合タンパク質として発現するよう連結されたアダリムマブのH鎖の1番目から230番目のシステイン残基までのアミノ酸配列をコードするDNA、その下流にさらにC. glutamicum ATCC13869株のPS2遺伝子由来のプロモーター、同プロモーターの下流に発現可能に連結されたC. ammoniagenes (C. stationis)ATCC6872株のSlpA由来のシグナルペプチドをコードするDNA、および同シグナルペプチドとの融合タンパク質として発現するよう連結されたアダリムマブのL鎖をコードするDNAを含む、<配列番号91>に示すDNA断片を全合成した。同様に、C. glutamicum ATCC13869株のPS2遺伝子由来のプロモーター、同プロモーターの下流に発現可能に連結されたC. ammoniagenes (C. stationis)ATCC6872株のSlpA由来のシグナルペプチドをコードするDNA、および同シグナルペプチドとの融合タンパク質として発現するよう連結されたアダリムマブのL鎖をコードするDNA、その下流にさらにC. glutamicum ATCC13869株のPS2遺伝子由来のプロモーター、同プロモーターの下流に発現可能に連結されたC. ammoniagenes (C. stationis) ATCC6872株のSlpA由来のシグナルペプチドをコードするDNA、および同シグナルペプチドとの融合タンパク質として発現するよう連結されたアダリムマブのH鎖の1番目から230番目のシステイン残基までのアミノ酸配列をコードするDNAを含む、<配列番号92>に示すDNA断片を全合成した。<配列番号91>、<配列番号92>の合成DNAにはそれぞれ5’末端に制限酵素BamH I、3’末端に制限酵素Xba
Iの認識配列が含まれている。なお、合成DNA中のアダリムマブのH鎖およびL鎖をコードするDNAは、C. glutamicumのコドン使用頻度を考慮して設計した。合成DNA中のアダリムマブのH鎖の1番目から230番目のアミノ酸配列をコードするDNA配列を<配列番号93>、同アミノ酸配列を<配列番号94>に示した。また、合成DNA中のアダリムマブのL鎖をコードするDNA配列を<配列番号95>、アダリムマブのL鎖のアミノ酸配列を<配列番号96>に示した。全合成したそれぞれ約2.7kbpのDNA断片を制限酵素BamH IおよびXba Iで消化し、特開平9-322774に記載のpPK4のBamH I-Xba I部位に挿入することによって、抗体アダリムマブのFab断片のH鎖(1-230C)とL鎖を共発現させるプラスミドpPKSada-FabHLおよびpPKSada-FabLHを得た。それぞれのプラスミド名中の「FabHL」および「FabLH」は、発現プラスミド中のアダリムマブのH鎖遺伝子およびL鎖遺伝子の搭載順序を示している。
(2)ペニシリン結合タンパク質PBP1a欠損株を用いた抗体アダリムマブのFab(H&L)断片の分泌発現
実施例8(1)で構築した抗体アダリムマブのFab(H&L)断片の分泌発現プラスミドpPKSada-FabHLおよびpPKSada-FabLHを用いて、YDK010株およびYDK010ΔPBP1a株のそれぞれを形質転換した。得られた各形質転換体を、25 mg/lのカナマイシンを含むMM液体培地(グルコース 120 g、硫酸マグネシウム七水和物 3 g、硫酸アンモニウム 30 g、リン酸二水素カリウム 1.5 g、硫酸鉄七水和物 0.03 g、硫酸マンガン五水和物 0.03 g、チアミン塩酸塩 450 μg、ビオチン 450 μg、DL-メチオニン0.15 g、炭酸カルシウム 50 gを水で1LにしてpH7.0に調整)でそれぞれ30 ℃、96時間培養した。培養終了後、各培養液を遠心分離して得られた培養上清を非還元SDS-PAGEに供してからSYPRO Orange(インビトロジェン社製)にて染色を行い、抗体アダリムマブのFab(H&L)断片の分泌量の比較を行った。その結果、いずれの分泌発現プラスミドを用いた場合でも、親株のYDK010株と比較してYDK010ΔPBP1a株では、有意に抗体アダリムマブのFab(H&L)断片の分泌量が向上していた(図10)。YDK010ΔPBP1a株におけるpPKSada-FabHLを用いた形質転換株のFab(H&L)タンパク質バンドのN末端配列をプロテインシークエンサーPPSQ-21A(島津製作所製)を用いて決定したところ、目的の抗体アダリムマブのFab断片のH鎖のN末端配列とL鎖のN末端配列の両方の配列が含まれていた事から、培養上清中に抗体アダリムマブのFab(H&L)断片が分泌発現して会合体を形成している事が確認できた。このことから、トラスツズマブのFab(H&L)
断片を発現させた場合に限られず、アダリムマブのFab(H&L)断片を発現させた場合でも、ペニシリン結合タンパク質PBP1a欠損株を発現宿主として用いることで抗体Fab(H&L)断片の分泌量が向上することが明らかとなった。
実施例9:Corynebacterium glutamicum ATCC13869株におけるペニシリン結合タンパク質PBP1a欠損株の構築と抗体トラスツズマブのFab(H&L)断片の分泌発現
(1)C. glutamicum ATCC13869ΔPBP1a株の構築
実施例1(1)で構築したペニシリン結合タンパク質PBP1aの遺伝子欠損用ベクターであるpBSΔCgl0278を用いて、C. glutamicum ATCC13869株を形質転換した。得られた形質転換体からWO2005/113744記載の方法に従って菌株の選択を行い、Cgl0278遺伝子が欠損したATCC13869ΔPBP1a株を得た。
(2)C. glutamicum ATCC13869ΔPBP1a株における抗体トラスツズマブのFab(H&L)断片の分泌発現
実施例4(1)で構築した抗体トラスツズマブのFab(H&L)断片の分泌発現プラスミドpPKStrast-FabH(1-229C)+Lを用いて、ATCC13869株およびATCC13869ΔPBP1a株のそれぞれを形質転換した。得られた各形質転換体を、25 mg/lのカナマイシンを含むMM液体培地(グルコース 120 g、硫酸マグネシウム七水和物 3 g、硫酸アンモニウム 30 g、リン酸二水素カリウム 1.5 g、硫酸鉄七水和物 0.03 g、硫酸マンガン五水和物 0.03 g、チアミン塩酸塩 450 μg、ビオチン 450 μg、DL-メチオニン0.15 g、炭酸カルシウム 50 gを水で1LにしてpH7.0に調整)でそれぞれ30 ℃、96時間培養した。培養終了後、各培養液を遠心分離して得られた培養上清を非還元SDS-PAGEに供してからSYPRO Orange(インビトロジェン社製)にて染色を行い、抗体トラスツズマブのFab(H&L)断片の分泌量の比較を行った。その結果、YDK010株を発現宿主として用いた場合とは異なり、ATCC13869株を発現宿主として用いた場合は、ペニシリン結合タンパク質PBP1a欠損株を用いても抗体トラスツズマブのFab(H&L)断片の分泌量は向上しなかった(図11、レーン3および5)。
実施例10:Corynebacterium glutamicum ATCC13869株における細胞表層タンパク質CspBおよびペニシリン結合タンパク質PBP1aの二重欠損株の構築と抗体トラスツズマブのFab(H&L)断片の分泌発現
ペニシリン結合タンパク質PBP1aの欠損によってタンパク質分泌量が向上したC. glutamicum YDK010株は、C. glutamicum AJ12036(FERM BP-734)の細胞表層タンパク質PS2(CspB)の欠損株である(WO2004/029254)。そこで、ATCC13869株におけるCspB欠損株と、CspBおよびPBP1aの二重欠損株を構築して、抗体トラスツズマブのFab(H&L)断片の分泌発現を行った。ATCC13869株のCspBをコードする遺伝子の塩基配列を<配列番号97>、ATCC13869株のCspBのアミノ酸配列を<配列番号98>に示した。
(1)C. glutamicum ATCC13869ΔCspB株およびATCC13869ΔCspBΔPBP1a株の構築
<配列番号99>および<配列番号100>に記載のDNAをプライマーとして用い、常法に従って(斉藤、三浦の方法[Biochim. Biophys. Acta, 72, 619(1963)])調製したC. glutamicum
YDK010株の染色体DNAを鋳型として、CspBをコードする遺伝子が欠損化された領域を含む約2.0kbpのDNA断片をPCR法によって増幅した。PCRにはPyrobest DNA polymerase(タカラバイオ社製)を用い、反応条件は業者の推奨するプロトコルに従った。このDNA断片を、WO2006/057450に記載のpBS5TのSma I部位に挿入することによって、cspB遺伝子欠損用のベクターpBS5T-ΔcspBを得た。
次に、構築したpBS5T-ΔcspBを用いて、C. glutamicum ATCC13869株を形質転換した。得られた形質転換体からWO2006/057450記載の方法に従って菌株の選択を行い、cspB遺伝子が欠損したATCC13869ΔCspB株を得た。
次に、実施例1(1)で構築したペニシリン結合タンパク質PBP1aの遺伝子欠損用ベクターであるpBSΔCgl0278を用いて、ATCC13869ΔCspB株を形質転換した。得られた形質転換体からWO2005/113744記載の方法に従って菌株の選択を行い、cspB遺伝子とCgl0278遺伝子の両遺伝子を欠損したATCC13869ΔCspBΔPBP1a株を得た。
(2)ATCC13869ΔCspB株およびATCC13869ΔCspBΔPBP1a株による抗体トラスツズマブのFab(H&L)断片の分泌発現
実施例4(1)で構築した抗体トラスツズマブのFab(H&L)断片の分泌発現プラスミドpPKStrast-FabH(1-229C)+Lを用いて、ATCC13869ΔCspB株およびATCC13869ΔCspBΔPBP1a株のそれぞれを形質転換した。得られた各形質転換体を、25 mg/lのカナマイシンを含むMM液体培地(グルコース 120 g、硫酸マグネシウム七水和物 3 g、硫酸アンモニウム 30 g、リン酸二水素カリウム 1.5 g、硫酸鉄七水和物 0.03 g、硫酸マンガン五水和物 0.03 g、チアミン塩酸塩 450 μg、ビオチン 450 μg、DL-メチオニン0.15 g、炭酸カルシウム 50 gを水で1LにしてpH7.0に調整)でそれぞれ30 ℃、96時間培養した。培養終了後、各培養液を遠心分離して得られた培養上清を非還元SDS-PAGEに供してからSYPRO Orange(インビトロジェン社製)にて染色を行い、抗体トラスツズマブのFab(H&L)断片の分泌量の比較を行った。その結果、CspBもしくはPBP1aそれぞれの単独欠損株であるATCC13869ΔCspB株およびATCC13869ΔPBP1a株では、親株であるATCC13869株と比較して、抗体トラスツズマブのFab(H&L)断片の分泌量が向上しなかったが、二重欠損株であるATCC13869ΔCspBΔPBP1a株では有意に抗体トラスツズマブのFab(H&L)断片の分泌量が向上していた(図11)。このことから、細胞表層タンパク質CspBおよびペニシリン結合タンパク質PBP1aの二重欠損株を発現宿主として用いることによって、抗体Fab(H&L)断片の分泌量が向上することが明らかとなった。
本発明により、異種タンパク質を効率よく分泌生産できるコリネ型細菌を提供できる。また、本発明により提供されるコリネ型細菌を発現ホストとして用いることにより、異種タンパク質、例えば産業上有用なタンパク質、を効率よく分泌生産することができる。
[配列表の説明]
配列番号1〜8:プライマー
配列番号9〜42:トラスツズマブのH鎖全合成用DNAの塩基配列
配列番号43、44:プライマー
配列番号45:トラスツズマブのH鎖遺伝子の塩基配列
配列番号46〜54:プライマー
配列番号55〜70:トラスツズマブのL鎖全合成用DNAの塩基配列
配列番号71、72:プライマー
配列番号73:トラスツズマブのL鎖遺伝子の塩基配列
配列番号74〜80:プライマー
配列番号81:C. glutamicum ATCC13032のCgl0278遺伝子の塩基配列
配列番号82:C. glutamicum ATCC13032のCgl0278遺伝子がコードするタンパク質のアミノ酸配列
配列番号83:C. glutamicum由来PS1のシグナルペプチドのアミノ酸配列
配列番号84:C. glutamicum由来PS2(CspB)のシグナルペプチドのアミノ酸配列
配列番号85:C. ammoniagenes (C. stationis)由来SlpA(CspA)のシグナルペプチドのアミノ酸配列
配列番号86:トラスツズマブのH鎖のアミノ酸配列
配列番号87:トラスツズマブのL鎖のアミノ酸配列
配列番号88:抗ジゴキシン単鎖抗体発現用全合成DNAの塩基配列
配列番号89:抗ジゴキシン単鎖抗体遺伝子の塩基配列
配列番号90:抗ジゴキシン単鎖抗体のアミノ酸配列
配列番号91、92:アダリムマブのFab(H&L)断片発現用全合成DNAの塩基配列
配列番号93:アダリムマブのH鎖遺伝子(1-230Cコード領域)の塩基配列
配列番号94:アダリムマブのH鎖(1-230C)のアミノ酸配列
配列番号95:アダリムマブのL鎖遺伝子の塩基配列
配列番号96:アダリムマブのL鎖のアミノ酸配列
配列番号97:C. glutamicum ATCC13869のcspB遺伝子の塩基配列
配列番号98:C. glutamicum ATCC13869のcspB遺伝子がコードするタンパク質のアミノ酸配列
配列番号99、100:プライマー

Claims (8)

  1. 異種タンパク質を分泌生産する能力を有するコリネ型細菌であって、
    ペニシリン結合タンパク質をコードする遺伝子が破壊されることにより該ペニシリン結合タンパク質の活性が低下するように改変され、
    細胞表層タンパク質をコードする遺伝子が破壊されることにより該細胞表層タンパク質の活性が低下するように改変されているか、あるいは、もともと前記細胞表層タンパク質を有しておらず
    前記ペニシリン結合タンパク質がPBP1aであり、
    前記細胞表層タンパク質がCspBであり、且つ、
    コリネバクテリウム属に属する細菌である、コリネ型細菌。
  2. 前記ペニシリン結合タンパク質が、下記(A)または(B)に示すタンパク質である、請求項に記載のコリネ型細菌。
    (A)配列番号82に示すアミノ酸配列を有するタンパク質、
    (B)配列番号82に示すアミノ酸配列において、1〜10個のアミノ酸の置換、欠失、挿入、または付加を含むアミノ酸配列を有し、かつ、コリネ型細菌で活性を低下させたときに異種タンパク質の分泌生産量を非改変株と比べて上昇させる性質を有するタンパク質。
  3. 前記細胞表層タンパク質が、下記(A)または(B)に示すタンパク質である、請求項1または2に記載のコリネ型細菌。
    (A)配列番号98に示すアミノ酸配列を有するタンパク質、
    (B)配列番号98に示すアミノ酸配列において、1〜10個のアミノ酸の置換、欠失、挿入、または付加を含むアミノ酸配列を有し、かつ、コリネ型細菌で活性を低下させたときに異種タンパク質の分泌生産量を非改変株と比べて上昇させる性質を有するタンパク質。
  4. 前記コリネ型細菌が、コリネバクテリウム・グルタミカムである、請求項1〜のいずれか1項に記載のコリネ型細菌。
  5. 前記コリネ型細菌が異種タンパク質の分泌発現用の遺伝子構築物を有し、
    前記遺伝子構築物が、コリネ型細菌で機能するプロモーター配列、該プロモーター配列の下流に接続されたコリネ型細菌で機能するシグナルペプチドをコードする核酸配列、および該シグナルペプチドをコードする核酸配列の下流に接続された前記異種タンパク質をコードする核酸配列を含む、請求項1〜のいずれか1項に記載のコリネ型細菌。
  6. 前記異種タンパク質が抗体関連分子である、請求項1〜のいずれか1項に記載のコリネ型細菌。
  7. 前記抗体関連分子が、Fab、F(ab’)、Fc融合タンパク質、およびscFvから選ばれる1またはそれ以上のタンパク質である、請求項に記載のコリネ型細菌。
  8. 請求項1〜のいずれか1項に記載のコリネ型細菌を培養し、分泌生産された異種タンパク質を回収することを含む、異種タンパク質の製造方法。
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