JP6019827B2 - 水圏環境修復材料及び同材料を用いる水圏環境修復方法並びに同材料の評価方法 - Google Patents

水圏環境修復材料及び同材料を用いる水圏環境修復方法並びに同材料の評価方法 Download PDF

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Description

本発明は、鉄鋼スラグなどケイ酸系の無機酸化物を用いた、海洋や河川、湖沼などの水圏環境を改善する材料及び同材料を用いる水圏環境修復方法並びに同材料の評価方法に関する。
植物プランクトンのうち、代表的な藻類であるケイ藻類は、海洋や河川、湖沼などの水圏における主要な一次生産者である。その大きさは数μm〜数十μmほどであるが、例えば湖水1ml中にはおおよそ数百から数百万の藻類の細胞が含まれており、動物プランクトンや小型魚類のエサとして重要である。藻類の体はさまざまな元素から成り立っており、これらの元素の大部分を水中から無機態の形で取り込む。藻類が栄養分として多く要求する元素は、二酸化炭素、無機態窒素、リン酸であるが、ケイ藻類にはこれらに加えケイ酸も重要な栄養源である。
一般に、沿岸海域の海水中に含まれるケイ酸の多くは河川から供給されていると考えられるが、深層海水からの供給や、黄砂などの陸域に起因する大気中微粒子も寄与していると言われている。また、非特許文献1によれば、河川水中のケイ酸は、ほとんど岩石の化学的風化作用により供給されるとしている。水中のケイ酸は溶存態(イオン状、分子状、コロイド状)または懸濁態(鉱物粒子や生物体内に含まれた状態)で存在し、一般に地下水に多く、表流水として流下するに従って減少する傾向がある。また、海域の富栄養化に関しては、ケイ酸はケイ藻類の主成分であるため、その濃度は藻類の消長を推定する指標になるとされる。すなわち、水中のケイ酸が欠乏するとケイ藻類が減少し、結果として水圏生物全体に影響を及ぼす。
ケイ酸は、河川水中に200〜300μmol/Lの濃度で存在しているが、海水表面に供給されるときには10μmol/Lまで低下することが知られている。また、河川水中のケイ酸の溶存化学状態は、イオン状であるよりも、重合してポリマー状であることが多いとされている。そのため、Si(OH)構造やSi(OH) 構造のようにSiOとHOの組み合わせによって表現されるさまざまな分子の構造を考える必要がある。一方、近年の分析技術の進歩により、水中でのケイ酸の溶存化学形態を知ることができるようになった。その結果、海水でのケイ酸の減少は、単なる希釈だけではなく、河川におけるケイ酸の溶存化学状態と海水中のケイ酸の溶存化学状態が異なることが判ってきた(非特許文献2)。また、非特許文献2から、ケイ藻類の栄養源となるケイ酸化学種に選択性があり、ケイ藻類がその生育のために体内に取り込んで利用できるケイ酸の溶存化学形態は限られるものであることが判ってきた。より具体的には、直鎖状4量体ケイ酸(分子量329)や2量体ケイ酸(分子量173)がケイ藻類に有功に摂取される。対して、環状4量体ケイ酸(分子量311)やケイ酸化学種にアルカリ、アルカリ土類イオンが結合した場合には、ケイ藻類の栄養源にはなりにくいことが判っている。
ここで、セメント系及び又は石灰系と、水や生物系溶液の混合物や被覆物を、炭酸ガスの雰囲気下等で高圧養生したり、炭酸水を含浸させたりする等で炭酸化させ、藻場造成に活用する方法がある(特許文献1,2)。貧栄養海域に供給するための施肥材料として利用されるものであるが、水圏へのケイ酸の供給方法の最適化については何ら言及されていない。
また、特許文献3〜5,7,9には、水中にケイ酸塩イオン放出源として高炉水砕スラグを海域に沈設する方法が提案されているが、非特許文献3によれば、高炉水砕スラグのように急冷された無機酸化物材料中のケイ酸は鎖状に連結したネットワーク構造を有しており、これらがランダムに切断されて溶出しているであろうことを考慮すると、ケイ酸の溶出化学状態が制御できるとは考えにくい。一方、特許文献6,10にも同様にケイ酸塩イオン放出源として高炉水砕スラグを沈設する方法が記載されているが、粒子の表面に炭酸カルシウム皮膜を形成させることを特徴としているものの、これは、アルカリ分やイオウ分の過剰な溶出抑制のためのものであり、ケイ酸の選択的溶出のためではない。
特許文献8は、水圏への肥料溶出体として、リン、窒素、ケイ酸、鉄、フミン質等を極少量ずつ長期間にわたって供給するように、ケイ砂、消化汚泥、水産加工廃水汚泥、木くずなどの肥料を原料として作られたレンガ、もしくは粒状固形物を設置する方法に関するものである。ここで供給されるケイ酸はケイ砂や消化汚泥などからのケイ酸の供給を想定しているが、ケイ酸の化学状態に基づく生物利用性などは評価されていない。同様に、特許文献11は、人工ゼオライトなどの多孔質粉粒体からのケイ酸の供給を想定しているが、ケイ酸の化学状態は評価されていない。
特開2000−157094号公報 特開2000−157095号公報 特開2002−176877号公報 特開2002−238401号公報 特開2003−158946号公報 特開2004−000104号公報 特開2004−024204号公報 特開2004−159610号公報 特開2004−236545号公報 特開2004−236546号公報 特開2005−341887号公報
鹿園直建, Journal of Geography, 111 55-65 (2002). Miho Tanaka, Kazuya Takahashi, Tatsuya Urabe, Tomohiro Oikawa, Masao Nemoto and Hideki Nagashima, Rapid Communications in Mass Spectrometry, 23, 698-704 (2009). 金橋康二, 下田景士, 齋藤公児, 鉄と鋼, 95, 321-330 (2009).
本発明では、ケイ酸源となることを期待して水圏に投入される鉄鋼スラグなどケイ酸系の無機酸化物材料に関し、表面を炭酸化させるなどの処理を施すことにより、水圏適用時に炭酸イオンを共存させることで、従来のケイ酸源よりもより効率よく生物利用性の高いケイ酸を水圏に供給できる材料を提供することを目的とする。
本発明者らは、研究の結果、鉄鋼スラグなどケイ酸系の無機酸化物材料からの溶出ケイ酸が、どの様な化学状態で溶存しているかという情報を、溶出濃度だけでなく化学状態という切り口から明らかにすることにより、より適切な材料の提供方法を見出した。本発明では、溶出する栄養塩成分を分析するための分析方法として、従来の元素濃度分析に加え、高速原子衝撃質量分析法(Fast Atom Bombardment Mass Spectrometry:FAB−MS)を選択した。FAB−MS法は、分析対象とする物質をグリセリンのような粘性の大きいマトリクスに溶解させてターゲット上に塗布し、これに大きなエネルギーの一次粒子ビームを照射してイオン化する方法である。鉄鋼スラグなどケイ酸系の無機酸化物材料から溶出するケイ酸を分子レベルで解析し、その水圏における役割を評価することにより、その分子レベルのケイ酸の生物選択性と水圏において有用に利用するために炭酸イオンの共存が重要であることを、理論的かつ実験的に確かめた。以上の知見に基づき、本発明を完成した。
本発明は、以下に記載するとおりのものである。
)水圏で用いる材料において、生物が利用する直鎖状4量体ケイ酸を水中に溶出させ水圏に供給する水圏環境修復材料であって、高炉徐冷スラグ、製鋼スラグ、電気炉スラグのうちの1種以上と炭酸基を含む塩の混合物からなることを特徴とする水圏環境修復材料。
)前記直鎖状4量体ケイ酸の水中への溶出モル濃度は、環状4量体ケイ酸の水中への溶出モル濃度に比べて2倍以上であることを特徴とする(1)に記載の水圏環境修復材料。
)水圏において、藻礁または漁礁となることを特徴とする前記(1)〜(2)のいずれかに記載の水圏環境修復材料。
)前記(1)〜()のいずれかに記載の水圏環境修復材料を水圏に設置することを特徴とする水圏環境修復方法。
水圏で用いる材料において、生物が利用する直鎖状4量体ケイ酸を水中に溶出させ水圏に供給する水圏環境修復材料であって、表面に炭酸化層を有する高炉徐冷スラグ、製鋼スラグ、電気炉スラグのうちの1種以上からなる水圏環境修復材料または、高炉徐冷スラグ、製鋼スラグ、電気炉スラグのうちの1種以上と炭酸基を含む塩の混合物からなる水圏修復材料を設置した周辺の水をサンプリングし、高速原子衝撃質量分析法(FAB−MS)を用いて、直鎖状4量体ケイ酸および環状4量体ケイ酸の濃度を定量することを特徴とする水圏環境修復材料の評価方法。
本発明は、鉄鋼スラグなどケイ酸系の無機酸化物材料から溶出するケイ酸の化学種を明らかにし、ケイ藻類にとってより有用な化学状態のケイ酸を供給できる材料について検討した結果、鉄鋼スラグなどケイ酸系の無機酸化物材料に炭酸イオンを共存させることで溶出するケイ酸の化学状態を生物利用性の高いものに制御することを可能とした。従って、本発明をケイ酸欠乏により一次生産者ともいうべきケイ藻類が減少し生産性の低下した水圏に適用すれば、生産性の向上が期待できる。
また、本技術は、地球温暖化ガスである炭酸ガスを炭酸化して固定し、水圏で炭酸イオンとして供給するため、温暖化ガスの削減の途が拓かれることになり、さらに、水圏に供給された炭酸イオンは、光合成植物により生物固定され、バイオエタノールなどとして再生エネルギー化できることも期待できる。
本発明の実施形態である水圏環境修復材料の一例を示す図 炭酸イオンが共存しない水中のケイ酸の化学状態を示す質量スペクトル(分子量300−350) 炭酸イオンが共存した水中のケイ酸の化学状態を示す質量スペクトル(分子量300−350) 実施例の海水中のケイ酸の化学状態を示す質量スペクトル(分子量300−350) 比較例の海水中のケイ酸の化学状態を示す質量スペクトル(分子量300−350)
以下に本発明を詳細に説明する。本発明の目的、特徴、優秀性及びその有する観点は、以下の記載より当業者にとっては明白であろう。しかし、以下の記載及び具体的な実施例等の記載を含めた本件明細書の記載は本発明の好ましい態様を示すものであり、説明のためにのみ示されているものであることを理解されたい。本明細書に開示した本発明の意図及び範囲内で、種々の変化及び/又は改変(あるいは修飾)をなすことは、以下の記載及び本明細書のその他の部分からの知識により、当業者には容易に明らかであろう。本明細書で引用されている全ての特許文献及び参考文献は、説明の目的で引用されているもので、それらは本明細書の一部としてその内容はここに含めて解釈されるべきものである。
本発明は、生物利用性の高いケイ酸を効率的に海洋に溶出させ、供給する鉄鋼スラグなどケイ酸系の無機酸化物材料である水圏環境修復材料及び同材料を用いる水圏環境修復方法並びに同材料の評価方法を提供する。
本発明らは、鉄鋼スラグなどケイ酸系の無機酸化物材料の、海洋や河川、湖沼などの水圏環境の改善において、無機酸化物材料を炭酸化することにより炭酸イオンと共存させ、ケイ藻類が利用しやすい化学状態のケイ酸を溶出する材料の創出を検討した。まず、本発明者らは、炭酸イオンの共存が鉄鋼スラグなどケイ酸系の無機酸化物材料からのケイ酸の溶出特性にどのような影響を及ぼすかを確かめた。一例として、無機酸化物材料として、鉄鋼スラグのうち製鋼スラグを用いた。製鋼スラグに、湿雰囲気で24時間炭酸ガスを吹付け、表面を炭酸化させたものと、処理を施さない製鋼スラグとを用いて、炭酸イオンを共存させたものと共存させないものとにおけるケイ酸の溶出特性を検証した。
表面を炭酸化させた製鋼スラグは、全体で約4mass%、表面では、厚さ0〜2.5mmの部分に約20mass%の炭酸カルシウムが生成しており、粒子全体に炭酸基が分布しているものも見られる図1に示す構造であった。炭酸基の存在形態としては、炭酸カルシウムや、炭酸マグネシウムなどの炭酸基を含む塩である炭酸塩があり、水圏環境修復材料として用いるには、徐々に水圏に溶解して炭酸イオンを供給できるものである必要がある。炭酸塩のほかにも、炭酸水素ナトリウムなどの重炭酸塩、塩基性炭酸マグネシウムなどの塩基性炭酸塩など、炭酸基を含む塩を別途材料に添加しても良い。また、材料として製鋼スラグを用いたが、これに限定されるものではなく、高炉徐冷スラグ、製鋼スラグ、電気炉スラグなど、炭酸化した際に炭酸カルシウムや炭酸マグネシウムのような、炭酸基を表面に保持し、水圏で炭酸イオンを共存させるように、水圏に適用した際に徐々に炭酸イオンを放出する構造を形成する材料であれば、使用することができる。
検討に供した水は、比抵抗18.2MΩの純水を使用した。全ケイ酸の溶出量測定には、JIS K 0102に定められた方法を適用した。ガラス容器内にスラグを入れ、固液比1:10の割合で純水を添加し、密栓した上で200回/分の振とうを行い、所定時間における液相へのケイ酸溶出量(Si濃度換算)の測定とFAB−MS法によるケイ酸の化学状態の測定を行った。なお、上記の溶出実験では、実験途中では溶液が透明であったのに、数時間から数日で水中の溶存酸素と製鋼スラグに含有される鉄が化合して赤褐色の水酸化鉄が析出した。そこで、水酸化鉄を十分沈殿させた後に、上澄み液のpHおよびケイ酸濃度を測定した。結果を表1に示す。なお、ケイ酸は水酸化鉄と共に沈殿していないことを確認した。表1には、溶出条件(実験に供した無機酸化物材料の質量と添加した純水の容積、および振とう時間)と、その際の水溶液のpH、および水溶液中のケイ酸濃度(Si換算)が示されている。
Figure 0006019827
表面を炭酸化させた材料からのケイ酸の溶出量は、炭酸化させていない材料に比し約50〜100倍以上であった。一般的には、pHが高い方がケイ酸の溶解は促進され、炭酸化させていない材料を用いた方が溶液のpHが高い傾向にあったが、実際にはケイ酸の濃度は高くならなかった。すなわちスラグなどケイ酸系の無機酸化物材料からのケイ酸の溶出は、溶液のpHよりも水溶液中に炭酸イオンが共存しているかどうかの方が重要であることが判った。言い換えれば、材料の表面に炭酸化処理をすることで、ケイ酸の溶出を促進していることが判った。これは、炭酸イオンが溶液中に共存することによる効果であると考えられる。
CaCO→Ca2++CO 2− ・・・<式1>
CO 2−+HO→HCO 2−+OH ・・・<式2>
式1および式2は、海水や炭酸カルシウムが溶解した水溶液中のpHが8〜10のアルカリ環境下で生じる反応であり、材料中のケイ素の溶解にこのOHが使用されるので、水溶液中に溶存するケイ酸の濃度が高くなると推察できる。ケイ酸の溶解において、この反応については、硫酸イオンでも同様の効果が得られると推測されるが、水圏に多量の硫酸を供給することは環境管理上好ましくないため、炭酸イオンが適当であると考えられる。
次に、それぞれの材料から溶出したケイ酸の生物利用性について検討する。振とう時間は、24時間以上経つと、ケイ酸の溶出がほぼ飽和し、5日経ってもその溶出量に変化が認められなかった。したがって、24時間がこの実験条件におけるケイ酸の溶出に必要な時間と考え、この溶液中のケイ酸の化学状態の分析をFAB−MS法で行った。FAB−MS法は、定量分析を行なうことは難しいが、同一試料の質量スペクトルの強度比から、どのような化学状態のケイ酸が多く溶存しているかを知ることが出来る。FAB−MSには、JMS-700(日本電子株式会社製)を使用した。FAB−MSの測定条件として、マトリクスにはグリセリンを使用し、ビームはXeを1mAで発振させ、負イオンモードで測定した。
ケイ酸の場合は、環状4量体ケイ酸(分子量311)と直鎖状4量体ケイ酸(分子量329))では、直鎖状4量体ケイ酸の方はケイ藻類の栄養源となりやすい。そのため、表1に示した溶出条件のうち、24時間振とうした溶液について、炭酸イオンが共存していないものと炭酸イオンが共存したものの溶液をFAB−MS法を用いて分析した。炭酸イオンが共存しない水中のケイ酸の化学状態を示す質量スペクトルを図2に、炭酸イオンが共存した水中のケイ酸の化学状態を示す質量スペクトルを図3に示す。環状4量体ケイ酸(分子量311)と直鎖状4量体ケイ酸(分子量329)の相対強度比を評価するため、両者の相対強度比を確認した。環状4量体ケイ酸と直鎖状4量体ケイ酸について、両者の質量スペクトルの相対強度比と両者の存在比は比例する。炭酸イオンが共存しない無機酸化物材料で、直鎖状4量体ケイ酸/環状4量体ケイ酸=1.4であるのに対し、炭酸イオンが共存する無機酸化物材料で、直鎖状4量体ケイ酸/環状4量体ケイ酸=2.0であり、両者の比としてはわずかに炭酸イオンが共存する場合の方が生物利用性の高いケイ酸を水圏に供給できることが分かった。ただし、最終的に溶出して水圏に供給できるケイ酸の総量は炭酸イオンが共存する無機酸化物材料の方がはるかに多く、したがって、供給できる直鎖状4量体ケイ酸量も多いことが推定される。なお、2量体ケイ酸(分子量173)もケイ藻類の栄養源となることが判っているが、近傍に強度を比較できるピークが存在しないため評価の対象から外した。
以上のことから、材料の水圏への適用において、炭酸イオンの共存する状態で溶出したケイ酸は、炭酸イオンが共存しない場合よりも溶出量がはるかに高く、かつケイ藻類の栄養源となり易い水圏環境修復材料となることを実証した。
また、材料を水圏に設置するにあたっては、材料からケイ酸が水圏に供給できればどのような形でもよいが、藻礁や漁礁などとしての機能を有する形状とすれば、ケイ酸溶出源としてだけでなく水圏により良い効果を付加することができ、有用である。
以下に実施例を掲げ、本発明を具体的に説明するが、この実施例は単に本発明の説明のため、その具体的な態様の参考のために提供されているものである。これらの例示は本発明の特定の具体的な態様を説明するためのものであるが、本願で開示する発明の範囲を限定したり、あるいは制限したりすることを表すものではない。本発明では、本明細書の思想に基づく様々な実施形態が可能であることは理解されるべきである。全ての実施例は、他に詳細に記載するもの以外は、標準的な技術を用いて実施したもの、又は実施することのできるものであり、これは当業者にとり周知で慣用的なものである。
実施例として、有用藻類が生着、成長しない結果、水底が石灰藻で覆われる「磯焼け」現象が問題となった実海域で実験を行った。製鋼スラグを25mm以下に粉砕し、常温、湿潤雰囲気でCOガスを吹き込み、8時間回転撹拌処理を行うことで図1のように炭酸化したものをヤシガラ製の袋に1袋当たり約200kgずつ充填し、1実験区当たり39袋(3×13)、合計約8tを準備し、海岸の汀線部において、幅1m、長さ26m、深さ0.8mの側溝を掘り埋設した。埋設後、約3年が経過した時点で水質調査を実施した。埋設前は、石灰藻に覆われ海底一面が真っ白な磯焼け状態であったが、水質調査当時は、実施例海域全般に渡ってホソメコンブを主体とした海藻類の繁茂が広り、藻場が再生しつつある状況であった。
この海域から採取した海水中のケイ酸濃度を測定すると、ケイ素換算で62.7μmol/Lであった。また、ケイ酸の化学状態に関しFAB−MS法により分析したところ、生物利用性の低い環状4量体ケイ酸(分子量311)と生物利用性の高い直鎖状4量体ケイ酸(分子量329)の両方のピークが認められたが、直鎖状4量体ケイ酸(分子量329)の方がより高いピーク強度を示した(図4)。ピーク強度比は、直鎖状4量体ケイ酸/環状4量体ケイ酸=2.1であった。
〔比較例〕
実施例の海域から約100m程度離れており、水圏環境が良く似た海域を比較例として調査した。水質調査当時は、実施例海域よりも有意に海藻類の生育が低調な状況であった。
実施例と同様に海水を採取し、まず海水中のケイ酸濃度を測定すると、ケイ素換算で32.6μmol/Lと実施例に比較して低値を示した。これは、実施例と異なり、ケイ酸源となる炭酸化鉄鋼スラグが設置されていないためと想定された。また、ケイ酸の化学状態に関しFAB−MS法により分析したところ、生物利用性の高い直鎖状4量体ケイ酸(分子量329)のピークに比べ、生物利用性の低い環状4量体ケイ酸(分子量311)のピークの方が高かった(図5)。ピーク強度比は、直鎖状4量体ケイ酸/環状4量体ケイ酸=0.42であり、ピーク強度比が2.1であった実施例の方が、より高濃度かつ生物利用性の高いケイ酸を水圏に供給できていることが分かった。
本発明で、例えば貧栄養な水圏のための施肥材料として、生物利用効率の高いケイ酸をより選択的に供給でき、漁業などの生産性を向上させることが期待できる。また、材料に鉄鋼スラグを用い、鉄鋼製造プロセスにおいて発生する炭酸ガスを用いて炭酸化した場合、より安価に材料を供給できるため、工業的にも有用である。また、本発明は、前述の説明及び実施例に特に記載した以外も、実行できることは明らかである。上述の教示に鑑みて、本発明の多くの改変及び変形が可能であり、従ってそれらも本件添付の請求の範囲の範囲内のものである。

Claims (5)

  1. 水圏で用いる材料において、生物が利用する直鎖状4量体ケイ酸を水中に溶出させ水圏に供給する水圏環境修復材料であって、高炉徐冷スラグ、製鋼スラグ、電気炉スラグのうちの1種以上と炭酸基を含む塩の混合物からなることを特徴とする水圏環境修復材料。
  2. 前記直鎖状4量体ケイ酸の水中への溶出モル濃度は、環状4量体ケイ酸の水中への溶出モル濃度に比べて2倍以上であることを特徴とする請求項1に記載の水圏環境修復材料。
  3. 水圏において、藻礁または漁礁となることを特徴とする請求項1〜のいずれか1項に記載の水圏環境修復材料。
  4. 請求項1〜のいずれか1項に記載の水圏環境修復材料を水圏に設置することを特徴とする水圏環境修復方法。
  5. 水圏で用いる材料において、生物が利用する直鎖状4量体ケイ酸を水中に溶出させ水圏に供給する水圏環境修復材料であって、表面に炭酸化層を有する高炉徐冷スラグ、製鋼スラグ、電気炉スラグのうちの1種以上からなる水圏環境修復材料または、高炉徐冷スラグ、製鋼スラグ、電気炉スラグのうちの1種以上と炭酸基を含む塩の混合物からなる水圏修復材料を設置した周辺の水をサンプリングし、高速原子衝撃質量分析法(FAB−MS)を用いて、直鎖状4量体ケイ酸および環状4量体ケイ酸の濃度を定量することを特徴とする水圏環境修復材料の評価方法。
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