JP2009142783A - 閉鎖性水域または干潟における底泥改質方法、および底泥改質用資材 - Google Patents

閉鎖性水域または干潟における底泥改質方法、および底泥改質用資材 Download PDF

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Abstract

【課題】低コストで施工可能で、栄養塩類の溶出を防止する能力に優れた底泥改質方法および底泥改質用資材を提供すること。
【解決手段】本発明の底泥改質方法においては、浄水場から排出される浄水ケーキを粉砕してなる粒径7〜30mmの粒状浄水ケーキおよび粒径7mm以下の粉状浄水ケーキの内、いずれか一方または両方の混合物を主成分とする底泥改質資材を覆砂材として使用し、閉鎖性水域または干潟を対象域として、対象域の底泥表面を覆砂材で被覆する。あるいは、上記底泥改質資材を改質材として使用し、上記対象域の底泥と改質材とを混合することにより、対象域の底泥を改質する。
【選択図】図1

Description

本発明は、閉鎖性水域または干潟における底泥改質方法、および底泥改質用資材に関する。
河川、湖沼、および海域の閉鎖性水域における水質汚染要因の1つに、底泥からの有機物やリン、窒素などの栄養塩類の溶出がある。それらの溶出を除去・軽減するための代表的な方法としては、蓄積した底泥を取り除く浚渫法とその表面に汚染物質を含まない海砂や川砂などで覆う覆砂法がある。また、覆砂法において利用される資材として、産業廃棄物として排出されるものを利用することも、既に提案されている(例えば、下記特許文献1参照)。
特許第3755018号公報
しかしながら、浚渫法では、浚渫した底泥の処理や運搬に膨大な経費がかかり、しかも、その処分場の確保が困難な状況となっている。また、浚渫跡の窪地への酸素供給が不十分となることが原因で、底泥生物が生息しがたい環境となり、生態系への悪影響が危惧されている。
一方、覆砂法では上記のような欠点は生じにくく、かつ浚渫法に比べて低経費での施工が可能である。
しかし、覆砂材として海砂や川砂および山砂を利用した場合、その採取場所における地形改変や、採取場所に生息する動植物の生息環境を損なう、という問題があった。また、それら資材の採掘や運搬には多大なエネルギーと経費がかかる、という問題もあった。
また、上記のような天然素材以外に、産業廃棄物として排出される石炭灰や各種スラッグなども覆砂材として用いられているが、アルカリ性であったり、栄養分が乏しかったりするため、底泥生物の迅速な回復が期待できない、という問題があった。
本発明は、上記問題を解決するためになされたものであり、その目的は、低コストで施工可能で、栄養塩類の溶出を防止する能力に優れた底泥改質方法および底泥改質用資材を提供することにある。
以下、本発明において採用した構成について説明する。
請求項1に記載の閉鎖性水域または干潟における底泥改質方法は、閉鎖性水域または干潟を対象域として、前記対象域の底泥表面を覆砂材で被覆するか、前記対象域の底泥と改質材とを混合することにより、前記対象域の底泥を改質する底泥改質方法であって、浄水場から排出される浄水ケーキを粉砕してなる粒径7〜30mmの粒状浄水ケーキおよび粒径7mm以下の粉状浄水ケーキの内、いずれか一方または両方の混合物を主成分とする資材を、前記覆砂材または前記改質材として使用することを特徴とする。
請求項2に記載の閉鎖性水域または干潟における底泥改質方法は、請求項1に記載の閉鎖性水域または干潟における底泥改質方法において、75〜90重量%の前記粒状浄水ケーキと10〜25重量%の前記粉状浄水ケーキとの混合物を主成分とする資材を、前記覆砂材または前記改質材として使用することを特徴とする。
請求項3に記載の閉鎖性水域または干潟における底泥改質方法は、請求項1または請求項2に記載の閉鎖性水域または干潟における底泥改質方法において、前記主成分に加えて、産業廃棄物として排出される無機材料の粒状物ないし粉状物が配合された資材を、前記覆砂材または前記改質材として使用することを特徴とする。
請求項4に記載の閉鎖性水域または干潟における底泥改質方法は、請求項3に記載の閉鎖性水域または干潟における底泥改質方法において、前記産業廃棄物として排出される無機材料の粒状物ないし粉状物は、石炭灰または人工ゼオライトであることを特徴とする。
請求項5に記載の底泥改質用資材は、閉鎖性水域または干潟を対象域として、前記対象域の底泥表面を覆砂材で被覆するか、前記対象域の底泥と改質材とを混合することにより、前記対象域の底泥を改質する際に、前記覆砂材または前記改質材として使用される底泥改質用資材であって、浄水場から排出される浄水ケーキを粉砕してなる粒径7〜30mmの粒状浄水ケーキおよび粒径7mm以下の粉状浄水ケーキの内、いずれか一方または両方の混合物を主成分とすることを特徴とする。
以上のような底泥改質方法において、覆砂材または改質材としては、上記粒状浄水ケーキおよび上記粉状浄水ケーキの内、いずれか一方または両方の混合物を主成分とする底泥改質用資材が使用される。
浄水ケーキは、浄水場での水処理過程で発生する沈澱物を加圧・脱水、あるいは天日乾燥したもので、一般的には、産業廃棄物として処分されているものである。したがって、このような浄水ケーキを利用すれば、底泥改質用資材を低コストで製造することができる。
また、この浄水ケーキには、リンを吸着する能力があるため、上記粒状浄水ケーキや上記粉状浄水ケーキを覆砂材または改質材として使用すれば、栄養塩類、特に底泥から溶出するリンを吸着・除去することができる。
さらに、底泥付近の酸素濃度が低く維持している条件下では、浄水ケーキの隙間や細孔の内部に脱窒菌が定着し、この脱窒菌が生物的脱窒能を発揮して硝酸イオンを分解するので、窒素浄化機能も発現する。加えて、浄水ケーキは環境基準が設けられている砒素、フッ素およびホウ素などの吸着機能を有するために、それらの汚染原因物質の浄化も期待できる。
加えて、浄水ケーキは、浄水場において不純物を凝集・沈殿させたものなので、浄水ケーキ中には、凝集沈殿作用を有する成分が残存している。そのため、浮泥の多い水域においては、浮泥の沈降が促進される。
したがって、上記のような底泥改質用資材であれば低コストで製造でき、この底泥改質用資材を覆砂材または改質材として使用すれば、底泥から栄養塩類などの汚染原因物質が溶出するのを防止することができ、上層水の清澄化に寄与する。
ところで、本発明において、底泥改質用資材は、粒状浄水ケーキ、粉状浄水ケーキ、およびそれらの混合物、いずれであってもよい。これら粒状浄水ケーキおよび粉状浄水ケーキは、浄水ケーキを粉砕した後、粒径7〜30mmのものと粒径7mm以下のものとを篩い分けすることによって得ることができる。
このような篩い分けによって得られる粒状浄水ケーキおよび粉状浄水ケーキは、原料組成物にバインダー等を添加して造粒したものとは異なり、造粒工程が不要なので、造粒物よりも製造コストを抑制することができる。
また、上記のような底泥改質用資材は、対象域の底泥表面を被覆する覆砂材、対象域の底泥と混合される改質材、どちらとしても使用することができる。覆砂材として使用する場合は、底泥表面に5〜50cmの被覆層を形成すると好ましい。また、改質材として使用する場合は、底泥表層5〜50cmを混合層とすると好ましい。
ただし、これらの層厚は堆積底泥の厚み、底泥の性質、および被覆材の性能を考慮して適宜加減することができる。このような被覆層ないし混合層を形成すれば、底泥から溶出する栄養塩類を吸着除去することができ、水系の水質を浄化することができる。また、底泥表面を被覆層によって完全に被覆すれば、水流による底泥の巻き上げを防止することができるので、栄養塩類を吸着除去する性能を高めることができる。
また、上記浄水ケーキは、粒状浄水ケーキ、粉状浄水ケーキ、いずれを使用してもよいが、水流が速いところでは粒体の割合が高い浄水ケーキがよい。一方、水流が遅く、浮泥の多いところでは、粉体の割合が高い浄水ケーキが有効である。したがって、混合物を用いる場合は、底泥の厚さや性質、底泥部における水流および浮泥の状況などを考慮に入れて配合比を適宜調節するとよいが、通常は、粉体を10〜25重量%、粒体を75〜90重量%程度の比率で配合すると、底泥の巻き上げを十分に防止でき、かつ、汚染原因物質の吸着性能も十分に高くすることができる。
また、粒体の割合が高い場合は、粒体間の間隙が高まり、底泥上層部へ溶存酸素濃度の高い表層水が供給されるので、マクロベントスなど底泥生物にとって生息しやすい環境を提供できる。
さらに、浄水ケーキ粉粒体の比重は1.3〜1.8と、一般的な砂材(1.9〜2.6)に比べて低い比重となっている。比重の大きい砂材は、浮泥の厚い底泥ではめり込みが生じるため、効率が悪くなるが、浄水ケーキ粉粒体を被覆材とすれば、底泥表層にとどまる粉粒体が多くなるので、効率良く底泥を被覆することが可能である。また、浄水ケーキは、上述の通り、リンなどに対する高い吸着能を有するために、砂材と異なり物理的被覆効果に加えて化学的被覆効果も期待できる。
ただし、本発明の底泥改質用資材は、砂材等の公知の覆砂材と併用することも可能である。例えば、上述の通り、比重の大きい砂材は、浮泥の厚い底泥ではめり込みが生じやすいが、浮泥の薄い底泥であれば、砂材等と併用しても問題はない。
また、海砂、川砂、山砂といった天然の砂材以外にも、公知の覆砂材としては、石炭灰(フライアッシュ、クリンカーアッシュ)やスラグなどの人工粒状物が知られているが、これら無機系人工粒状物との混合物を使用してもよい。特に、石炭灰または人工ゼオライトなど、産業廃棄物として排出される無機材料の粒状物ないし粉状物を併用すれば、同じく産業廃棄物である浄水ケーキとともに、産業廃棄物の有効利用を図ることができる。
次に、本発明の実施形態について一例を挙げて説明する。
(1)施工例
図1は、浄水ケーキ粉粒体からなる底泥改質用資材を、覆砂材として底泥上に敷設した状態を示した説明図である。
このような底泥改質用資材で、底泥の表面を被覆すると、底泥改質用資材によって形成される浄水ケーキ層および底泥層の上層部は、酸素を多く含んだ水流の影響を受けて、底泥下層部に比べて酸素が多く含まれる好気的な状態となる。
そのため、底泥上層部からの還元溶出に伴うリンなどの放出が低減される。また、仮にいくらかリンが溶出したとしても、溶出したリンは浄水ケーキ層で吸着捕捉され、水系の富栄養化が緩和される。さらに、底泥の好気化に伴って底泥生物の生息・定着が促される。したがって、これらの相乗効果により、底泥の状態および周辺の水質が改善されることになる。
なお、図1においては、底泥改質用資材を、覆砂材として底泥上に敷設する例を示したが、底泥改質用資材を改質材として、この改質材を底泥層の上層部に混合することにより、底泥層の上層部を改質してもよい。あるいは、このような手法で底泥層の上層部を改質した上で、さらに底泥改質用資材を覆砂材として敷設することで、改質された底泥層上層部を覆砂材で被覆してもよい。
(2)性能試験[その1]
次に、浄水ケーキ粉粒体を底泥改質用資材として使用した場合の性能を検証するための試験例を、以下に示す。
[実施例1]
塩化ビニール製容器(25cm×13cm、深さ:18cm)に1kgの高リン酸含有畑土壌を敷きつめ(約3cm)、その上を浄水ケーキ粉粒体(約3cm)で覆った。浄水ケーキ粉粒体としては、浄水場から排出される浄水ケーキを風乾後、粉砕して、篩い分けすることにより、粒径7〜30mmの粒状浄水ケーキおよび粒径7mm以下の粉状浄水ケーキとし、これらの内、粉体を20重量%、粒体を80重量%程度の比率で配合したものを使用した。
その後、水道水を水深約15cmとなるように注ぎ、無加温ビニールハウス内に静置した。静置後、1,2,3,4および6週間目に水深中央部より少量の水を採取し、水質分析に供した。なお、採水や蒸発に伴う減少水分量は1週間おきに補充した。
[比較例1]
上記実施例1の浄水ケーキ粉粒体の代わりに、クリンカーアッシュ(石炭灰)を使用して、その他の点は実施例1と同様の条件とした。
[比較例2]
浄水ケーキ粉粒体で被覆しない点以外は、実施例1と同様とした。
[考察]
以上のような実施例1,比較例1,2について、静置後、1,2,3,4および6週間後における水中のリン酸濃度の変化を、図2に示す。
図2を見ると明らかなように、浄水ケーキ粉粒体で被覆した実施例1では、いずれの時期においてもリン酸は検出限界(0.01mg/L)以下であった。一方、比較例2の無被覆区では静置後、徐々にリン酸濃度が高まり、4週間後には最高の27.9mg/Lとなった。また、クリンカーアッシュで被覆した比較例1では、比較例2と同様にリン酸濃度は静置後に高まったが、その最高値は4週間後の17.9mg/Lであった。
これらの結果から、浄水ケーキやクリンカーアッシュは土壌から溶出するリン酸を吸着捕捉する機能を有することが明らかとなったが、その機能はクリンカーアッシュに比べて浄水ケーキの方が高いことが判明した。
次に、上記の実施例1、比較例1,2における水中の硝酸態窒素濃度を、下記表1に示す。
Figure 2009142783
表1を見ると明らかなように、浄水ケーキ粉粒体を被覆した実施例1の場合、1週間後には硝酸態窒素濃度が27.10mg/Lと顕著に高かったが、2週間後には硝酸態窒素濃度が0.22mg/Lと急激に低下した。それ以降、比較例1および2と異なり、検出限界(0.01mg/L)以下となった。
このことは、底泥土壌や浄水ケーキ粉粒体に含まれていた硝酸態窒素は、静置後、しばらくの間は存在するが、時間の経過とともに脱窒菌による脱窒作用によって除去されることを示唆している。一方、クリンカーアッシュで被覆した比較例1、無被覆の比較例2では、6週間後にも硝酸態窒素が検出されており、浄水ケーキ粉粒体に比べ、硝酸態窒素除去能が低いことが判明した。
(3)性能試験[その2]
[実施例2]
河川底部より採取した底泥脱水物500gをアクリル容器(12cm×12cm、深さ:15cm)に充填し、その上に実施例1と同様の浄水ケーキ粉粒体を1cm深となるように覆った。その後、水道水を水深10cmとなるように注ぎ、室内に静置した。その後、1,2,3,4および5週間目に水深中央部より採水し、水質成分および溶存酸素濃度を測定した。
[実施例3]
浄水ケーキ粉粒体を3cm深となるように覆い、その他の点は実施例2と同様とした。
[比較例3]
浄水ケーキ粉粒体で被覆しない点以外は、実施例2と同様とした。
[比較例4]
浄水ケーキ粉粒体で被覆しない点は比較例3と同様であるが、さらにエアレーション処理を施した。
[考察]
以上のような実施例2,実施例3,比較例3,および比較例4について、水中のリン酸濃度の推移を図3に示す。
図3を見ると明らかなように、実施例2,3の浄水ケーキ被覆区では水中のリン酸濃度は顕著に低く、その濃度は浄水ケーキの被覆厚の大きい実施例3(3cm区)の方が著しかった。これに対して、比較例3の無被覆区では水中のリン酸濃度は処理後、急激に高まり、3週間後には最高に達した。また、無被覆区でもエアレーションした比較例4のリン酸濃度は著しく低下した。ただし、その濃度は浄水ケーキ被覆区(実施例2,3)に比べて高かった。
次に、上記の各処理区の溶存酸素濃度を図4に示す。図4を見ると明らかなように、汚泥からのリン酸溶出は、溶存酸素濃度の低い条件下で生じている。ただし、溶存酸素濃度の低い条件下であっても、浄水ケーキでの被覆によって水中のリン酸濃度は顕著に低下する。このことから、被覆した浄水ケーキは、還元溶出したリン酸を吸着しているものと考えられ、これにより、水中のリン酸濃度が低下するものと考えられる。
(4)性能試験[その3]
[実施例4]
塩化ビニール製容器(25cm×13cm、深さ:18cm)の底に高リン酸含量の畑土壌を1cm深に充填した。その畑土壌の表面を実施例1と同様の浄水ケーキ粉粒体(3cm深)で覆った。その後、海水を模した3%塩水を水深15cmとなるように注ぎ、無加温ビニールハウス内に5週間静置した。静置後、1週間おきに水深中央部より採水し、水中成分を測定した。なお、採水および蒸発に伴う水分減少量は1週間おきに補充した。
[比較例5]
実施例4で使用した浄水ケーキに代えて、クリンカーアッシュで被覆(3cm深)し、その他の点は実施例4と同様とした。
[比較例6]
浄水ケーキ粉粒体で被覆しない点以外は、実施例4と同様とした。
[考察]
以上のような実施例4,比較例5,および比較例6について、塩水条件下での水中のリン酸濃度の推移を、図5に示す。
図5を見ると明らかなように、浄水ケーキで被覆した実施例4におけるリン酸濃度はいずれの時期においても0.01ml/L以下の低い濃度で推移した。一方、無被覆の比較例6のリン酸濃度は1週間後より急激に高まり、3週間後に最高の23.5mg/Lとなった。その後、5週間後には14.0mg/Lまで低下した。クリンカーアッシュを被覆した比較例5のリン酸濃度は無被覆の比較例6と良く似た推移を示し、3週間後までは比較例6よりやや低かった。しかし、5週間後は比較例6より高い値を示した。以上の結果からは、浄水ケーキ被覆は塩水条件下でも底泥土壌から溶出するリン酸を捕捉し、水中のリン酸濃度の低下に働くことが明らかになった。
次に、5週間後における実施例4,比較例5,および比較例6について、リン酸以外の水質成分を表2に示す。
Figure 2009142783
表2を見ると明らかなように、実施例4のアンモニア態窒素濃度は、比較例5,6のものに比べて高かったが、硝酸態窒素濃度は比較例5,6と同様に全く検出されなかった。このことから、いずれの処理区とも溶存酸素濃度が低い条件下では微生物による脱窒作用に伴う窒素消失が起こったものと推察される。したがって、浄水ケーキ被覆は、水中のリン酸濃度の低下以外に、硝酸態窒素濃度の低下にも有効に働くものと理解される。
(5)性能試験[その4]
[実施例5]
アクリル容器(12cm×12cm、深さ:15cm)に600gの河川底泥を充填し、その上を実施例1と同様の浄水ケーキ粉粒体で3cm深に覆った。その後、人工海水を10cm深となるように注いだ。同容器を室内に静置後、1および4週間目に水中成分を測定した。
[比較例7]
浄水ケーキ粉粒体で被覆しない点以外は、実施例5と同様とした。
[考察]
以上のような実施例5,および比較例7について、処理1週間後および4週間後の水質成分濃度等を、表3に示す。
Figure 2009142783
表3を見ると明らかなように、浄水ケーキを被覆した実施例5のリン酸濃度は無被覆の比較例7に比べて顕著に低く、4週間後には検出限界(0.01mg/L<)以下の値であった。また、実施例5における1週間後の硝酸態窒素濃度は12.43mg/Lと顕著に高かったが、4週間後には比較例7と同様に検出限界以下であった。
すなわち、硝酸態窒素を含む浄水ケーキで被覆した場合、被覆直後には同浄水ケーキに由来する硝酸態窒素が水中に溶け出すが、溶存酸素濃度の低下に伴って脱窒により水中から消失するものと理解できる。
したがって、閉鎖性水域の底泥被覆材(覆砂材)としての浄水ケーキ粉粒体の利用は富栄養化塩類である水中のリン酸および硝酸態窒素の低減資材として有効である。
(6)性能試験[その5]
[実施例6]
図6に示すように、大水槽1(大:43cm×28cm、深さ、28cm)と、小水槽3(小:30cm×18cm、深さ、18cm)とを組み合わせ、小水槽3の中に下穴5aを有するアクリル製パイプ5(内径:7.4cm、長さ:40cm)を立てた。そのアクリル製パイプ5の底に5cm層の高リン酸含有土壌7を詰め、その上に実施例1と同様の浄水ケーキ粉粒体9を3cm層に充填した。
また、大水槽1内に入れた12Lの水道水が水中ポンプ11で小水槽3に流入するようにした。小水槽3内の水道水はオーバーフローによって再び大水槽1に還流するとともに、小水槽3上部壁面に設置したサイフォン13により、定期的に完全に排水するようにした。
小水槽3における満水と脱水の状態は干満潮を模して6時間間隔となるように、タイムスイッチ15で水中ポンプ11を作動させた。上記の処理後、0(処理作動後1時間後)、4、10、14、21および28日後に水中のリン酸濃度および無機態窒素濃度を測定した。
[比較例8]
浄水ケーキ粉粒体で被覆しない点以外は、実施例6と同様とした。
[考察]
以上のような実施例6,および比較例8について、水中のリン酸濃度の推移を図7に示す。
図7を見ると明らかなように、実施例6のリン酸濃度は処理10日後までは0.065mg/Lの低い値であった。また、処理14日後においても0.424mg/Lと低かった。これに対して、無被覆の比較例8では処理4日後までは実施例6と同様に低く推移したが、それ以降、急激に高まり、14日後には1.174mg/L、21日後には1.402mg/L、28日後には1.597mg/Lと2倍以上の値を示した。この試験の結果は、干満の繰り返す干潟などにおいても、浄水ケーキ粉粒体の表面被覆が水系へのリン酸溶出を大きく抑制することを示唆する。
次に、上記実施例6,および比較例8について、処理後の無機態窒素濃度を、表4に示す。
Figure 2009142783
表4を見ると明らかなように、実施例6における硝酸態窒素濃度は処理10日後までは比較例8に比べて高く推移していたが、それ以降は比較例8とほぼ同様に低く推移した。上記実施例6における処理直後の硝酸態窒素濃度の上昇は、浄水ケーキに含有される硝酸態窒素の溶出によるものと考えられるが、それらは時間の経過に伴って脱窒によって消失するために比較例8と同水準まで低下するものとみなされる。
これらのことから、干満を繰り返す干潟のような環境下でも浄水ケーキの表面被覆はリン酸の溶出だけでなく、時間の経過に伴って窒素浄化に寄与する機能も有するものと理解できる。
(7)変形例等
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記の具体的な一実施形態に限定されず、この他にも種々の形態で実施することができる。
例えば、上記実施形態においては、底泥改質用資材として使用する浄水ケーキ粉粒体として、粒状浄水ケーキと粉状浄水ケーキを特定の比率で配合したものを例示したが、これらの配合比は適宜調節可能である。また、粒状浄水ケーキのみを単独で使用したり、粉状浄水ケーキのみを単独で使用したりしてもよい。
ただし、粉状浄水ケーキは、粒状浄水ケーキよりも水流に流されやすいので、水流が速い水域において、本発明の底泥改質用資材を覆砂材として使用する場合には、流体のみ、または、粒体の割合が高い浄水ケーキを利用するのが好ましい。一方、水流が遅く、浮泥の多いところでは、粉体の割合が高い浄水ケーキが有効である。
したがって、粉体または粒体のいずれを使用するか、あるいは、粉体と粒体の配合比をどの程度とするかは、底泥の厚さや性質、底泥部における水流および浮泥の状況などを考慮に入れて適宜調節するとよい。
ちなみに、代表的な環境において実験的に確認した結果によれば、粉体を10〜25重量%、粒体を75〜90重量%程度の比率で配合すると、底泥の巻き上げを十分に防止でき、かつ、汚染原因物質の吸着性能も十分に高くすることができた。したがって、この辺りの配合比を目安にして、配合比の最適化を図ると好ましいものと考えられる。
また、上記実施形態では、底泥改質用資材として浄水ケーキ粉粒体を単独で使用する例を示したが、浄水ケーキ粉粒体に加えて、公知の覆砂材や改質材を併用してもよい。特に、石炭灰または人工ゼオライトなど、産業廃棄物として排出される無機材料の粒状物ないし粉状物を併用すれば、同じく産業廃棄物である浄水ケーキとともに、産業廃棄物の有効利用を図ることができる点で好ましい。
この他、浄水ケーキ粉粒体に加えて、海砂、川砂、山砂といった天然の砂材を併用することも可能である。一般的な砂材の比重は1.9〜2.6と、浄水ケーキ粉粒体の比重1.3〜1.8よりも高い比重となっている。そのため、比重の大きい砂材を単独で用いると、浮泥の厚い底泥ではめり込みが生じるため効率が悪くなるが、浄水ケーキ粉粒体を被覆材とすれば、底泥表層にとどまる粉粒体が多くなるので、効率良く底泥を被覆することが可能である。
したがって、浮泥が厚い場合には、浄水ケーキ粉粒体を単独で用いるか浄水ケーキ粉粒体の配合比を大きくする一方、浮泥が薄い場合には、砂材等の配合比を大きくするなど、配合比を最適化しながら、公知の覆砂材や改質材を併用すると好ましい。
浄水ケーキ粉粒体からなる底泥改質用資材を、覆砂材として底泥上に敷設した状態を示した説明図。 性能試験[その1]における水中のリン酸濃度の変化を示すグラフ。 性能試験[その2]における水中のリン酸濃度の変化を示すグラフ。 性能試験[その2]における水中の溶存酸素濃度の変化を示すグラフ。 性能試験[その3]における水中のリン酸濃度の変化を示すグラフ。 性能試験[その5]で使用した実験装置の構造を示す説明図。 性能試験[その5]における水中のリン酸濃度の変化を示すグラフ。
符号の説明
1・・・大水槽、3・・・小水槽、5・・・アクリル製パイプ、5a・・・下穴、7・・・高リン酸含有土壌、9・・・浄水ケーキ粉粒体、11・・・水中ポンプ、13・・・サイフォン、15・・・タイムスイッチ。

Claims (5)

  1. 閉鎖性水域または干潟を対象域として、前記対象域の底泥表面を覆砂材で被覆するか、前記対象域の底泥と改質材とを混合することにより、前記対象域の底泥を改質する底泥改質方法であって、
    浄水場から排出される浄水ケーキを粉砕してなる粒径7〜30mmの粒状浄水ケーキおよび粒径7mm以下の粉状浄水ケーキの内、いずれか一方または両方の混合物を主成分とする資材を、前記覆砂材または前記改質材として使用する
    ことを特徴とする閉鎖性水域または干潟における底泥改質方法。
  2. 75〜90重量%の前記粒状浄水ケーキと10〜25重量%の前記粉状浄水ケーキとの混合物を主成分とする資材を、前記覆砂材または前記改質材として使用する
    ことを特徴とする請求項1に記載の閉鎖性水域または干潟における底泥改質方法。
  3. 前記主成分に加えて、産業廃棄物として排出される無機材料の粒状物ないし粉状物が配合された資材を、前記覆砂材または前記改質材として使用する
    ことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の閉鎖性水域または干潟における底泥改質方法。
  4. 前記産業廃棄物として排出される無機材料の粒状物ないし粉状物は、石炭灰または人工ゼオライトである
    ことを特徴とする請求項3に記載の閉鎖性水域または干潟における底泥改質方法。
  5. 閉鎖性水域または干潟を対象域として、前記対象域の底泥表面を覆砂材で被覆するか、前記対象域の底泥と改質材とを混合することにより、前記対象域の底泥を改質する際に、前記覆砂材または前記改質材として使用される底泥改質用資材であって、
    浄水場から排出される浄水ケーキを粉砕してなる粒径7〜30mmの粒状浄水ケーキおよび粒径7mm以下の粉状浄水ケーキの内、いずれか一方または両方の混合物を主成分とする
    ことを特徴とする底泥改質用資材。
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