JP2005342624A - 貝殻からなる底質浄化材の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】閉鎖性水域の底質を浄化可能で、敷設初期に水質汚濁の原因となることのない、貝殻からなる底質浄化材を製造する。
【解決手段】原料貝殻aを、粒径が75μm〜20mmのものを重量比80%以上含有するように粉砕することによって貝殻粉砕物bとし、その主な化学組成及び構造的性状が不変の状態を維持可能な500〜650℃で加熱処理することによって、水質汚濁の原因となる有機物を除去した底質浄化材cを得る。
【選択図】図1
【解決手段】原料貝殻aを、粒径が75μm〜20mmのものを重量比80%以上含有するように粉砕することによって貝殻粉砕物bとし、その主な化学組成及び構造的性状が不変の状態を維持可能な500〜650℃で加熱処理することによって、水質汚濁の原因となる有機物を除去した底質浄化材cを得る。
【選択図】図1
Description
本発明は、湖沼や内湾等、閉鎖性水域の汚濁した底泥からの有害物質の発生を抑制し、湖沼等の水質や水生生物の生息環境を改善するための底質浄化材を、貝殻を用いて製造する方法に関する。
近年、湖沼や池、内湾等の閉鎖性水域の底質が、ヘドロの堆積により悪化し、底質からの汚濁原因物質の溶出や発生、その真上にある水の貧酸素化等が問題となっている。そして、その対策としては、従来から、汚濁した底泥を浚渫して環境に影響を及ぼす汚濁物質(栄養塩類、有機物、硫化物、重金属類等)を除去する方法(浚渫法)や、底泥の表層を、汚濁物質を含有しない海砂、川砂又は山砂で底泥を覆砂して、元々あった底泥からの汚濁物質(栄養塩類等)の溶出を抑制したり底泥の酸素消費速度を低減する方法(覆砂法)がある。また、後者の覆砂法としては、下記の特許文献に記載された方法が知られている。
特開2001−029951
特開2000−078938
しかし、上記従来の技術において、浚渫法の場合は、浚渫した底泥の処分場所の確保が困難であり、底泥の運搬・処理方法(脱水、薬品固化等)に高度な技術と膨大な処理費用が必要になる問題がある。また、浚渫跡に窪地ができるため、汚濁物質が堆積しやすくなったり水の交換が行われにくくなって、底層の溶存酸素濃度が低くなりやすく、生物の生息が困難になったり、堆積した汚濁物質から栄養塩類が溶出しやすくなる問題も指摘される。
覆砂法の場合は、浚渫または山の掘削によって覆砂材を採取する必要があるため、採取先の環境に悪影響を及ぼすおそれがあり、かつ採取や運搬に膨大なコストがかかる問題がある。しかも、例えば海砂を使用する場合は、採取場所に生息した生物の侵入による種の撹乱や生態系に影響する場合があり、山砂を使用する場合は、土質が沿岸の底質と異なることから生物の定着が良くない場合がある。また、特許文献1又は2に記載された方法は、石炭灰や鉄鋼スラグなどの廃棄物を覆砂として利用するため、低コストではあるが、天然のものではないため、生態系への悪影響が懸念される。
一方、貝殻の粉砕物が、硫化物イオンや、水質汚濁原因物質である栄養塩類や、有害物質である重金属等に対する吸着機能を有することが知られており、このため本願の発明者らは、牡蠣やホタテ等の貝類養殖場で大量に発生する漁業廃棄物としての貝殻を利用して、上述した湖沼等の閉鎖性水域の底質改善を行う方法を研究して来た。そして、農林水産省による平成14年度の漁業・養殖業生産統計によれば、牡蠣養殖だけでも貝殻廃棄物の発生が年間約20万トンにもなっている。これら貝殻は、ごく一部が肥料などとして利用されているだけであり、大部分が処理の問題を抱えていることから、これを閉鎖性水域の底質浄化材として有効利用すれば、社会的意義も大きく、しかも貝殻は自然のものであり、海や汽水域等から採取したものであるため環境に悪影響を与えることはなく、更には長期間のうちにゆっくり減耗(溶出)して、カルシウムやミネラルを水中に還元することから、底質浄化材として最適である。
ところが、貝類養殖場から大量に発生する貝殻廃棄物には、剥き身された後の有機物が付着している。更に、野積みされた貝殻の中には、小さな貝や養殖対象以外の貝類も含まれており、それらは、剥き身もされずに、中身が入った状態で廃棄される。したがって、これをそのまま粉砕して水底に敷設した場合は、有機物由来の窒素やリンが溶出し、しかも有機物が水中の微生物によって分解される際に水中の溶存酸素を消費するので、敷設初期には、逆に水質汚濁の原因となってしまうおそれがある。
本発明は、以上のような問題に鑑みてなされたものであって、その技術的課題は、閉鎖性水域の底質を浄化可能で、敷設初期に水質汚濁の原因となることのない、貝殻からなる底質浄化材を製造することにある。
上述の技術的課題を有効に解決するための手段として、請求項1の発明に係る貝殻からなる底質浄化材の製造方法は、貝殻を、その主な化学組成及び構造的性状が不変の状態を維持可能であると共に有機物を分解除去可能な温度で加熱処理するものである。ここでいう貝殻の主な化学組成が不変の状態とは、貝殻の主組成である炭酸カルシウムが、熱によって酸化カルシウムに変質しないことである。また、貝殻の構造的性状とは、例えば貝殻の粒径や形状のことである。
貝殻から有機物を取り除く方法としては、加熱処理による方法のほかには、水洗や、薬品による処理が考えられる。しかし、水洗処理は、多量の汚泥と汚水が発生するので、その処理が必要となり、薬品による方法も、処理水の中和などの処理が必要となり、いずれも現実的ではない。これに対し、加熱処理による方法では、汚泥や汚水が発生せず、灰などの後処理が容易である。
請求項2の発明に係る貝殻からなる底質浄化材の製造方法は、請求項1に記載の方法において、貝殻を、粒径が75μm〜20mmのものを重量比80%以上含有する粉砕物とするものである。
粒径が75μm未満の小さい粒子は、湖底に敷設しても潮流や水流等で簡単に流失してしまうので、底質を被覆する効果が得られにくく、逆に、粒径が20mmを超える大きな粒子は、透水性が高すぎて、やはり底質を被覆する効果が得られにくくなる。したがって、底質を被覆する効果を得るには、粒径が75μm〜20mmの貝殻粉砕物が好適であり、しかも、粒径が大きくなるほど、体積に対する表面積(硫化物イオンや栄養塩類などの吸着面積)は小さくなるため、粒径が20mmを超えるような大きな粒子は好ましくない。
粒径が75μm〜20mmの貝殻粉砕物の含有比率を、重量比80%以上としたのは、80%未満では、覆砂材としての機能や浄化効果が小さくなるからである。また、粒径の大きい貝殻粉砕物は、粒径の小さい貝殻粉砕物の流失を押さえる作用を有するが、粒径が75μm〜20mmの貝殻粉砕物の含有率が重量比80%未満になると、前記作用が小さくなって、粒径が75μm未満の小さい粒子が流失しやすくなる。
請求項3の発明に係る貝殻からなる底質浄化材の製造方法は、請求項1に記載の方法において、加熱処理の温度を500〜650℃とするものである。
加熱処理の温度を500℃以上としたのは、500℃未満では、貝殻からの有機炭素、窒素、リン等の除去を充分に行うことができないからである。また、加熱処理の温度を650℃以下としたのは、650℃超では貝殻が脆くなり、700℃で粉末状となって使用不可能になり、更に高温になると貝殻の主成分である炭酸カルシウムが酸化カルシウム(生石灰)に変化してしまうからである。
請求項1の発明に係る貝殻からなる底質浄化材の製造方法によれば、貝殻に付着した有機物を、加熱処理によって分解し、除去するため、この方法により得られた底質浄化材を閉鎖性水域の水底へ敷設した初期に、有機炭素や窒素の溶出によって逆に水質汚濁を引き起こしてしまうことがなく、しかも硫化物吸着効果の高い底質浄化材を得ることができる。
請求項2の発明に係る貝殻からなる底質浄化材の製造方法によれば、粒径が75μm〜20mmのものを重量比80%以上含有する貝殻粉砕物とすることによって、底質に対する所要の被覆効果を有する底質浄化材を得ることができる。
請求項3の発明に係る貝殻からなる底質浄化材の製造方法によれば、加熱処理の温度を500〜650℃とすることによって、貝殻の主な化学組成及び構造的性状を変化させることなく有機物を分解除去して、硫化物吸着効果の高い底質浄化材を得ることができる。
以下、本発明に係る貝殻からなる底質浄化材の製造方法の、好ましい実施の形態及び具体的な実施例について、図面を参照しながら説明する。まず図1は、貝殻からなる底質浄化材の製造方法の好ましい実施の形態を示す説明図である。
図1において、参照符号1は原料貝殻aが投入されるホッパである。原料貝殻aとしては、漁業廃棄物であるマガキやホタテ等の貝殻が好適であるが、これら以外にも、炭酸カルシウムを主組成とする貝殻であれば、勿論使用可能である。
原料貝殻aはホッパ1から適量ずつ放出され、コンベア2によって破砕機3へ供給される。破砕機3は、供給された原料貝殻aを破砕することによって貝殻粉砕物bとするものであり、好ましくは、粒径が75μm以上20mm以下のものが重量比で80%以上となるようにする。これは、80%未満では、覆砂材としての機能や浄化効果が小さくなってしまうからである。なお、粒径が20mmを超えるような大きな破砕片は、透水性が高すぎて、底質を被覆する効果が得られにくく、しかも、体積に対する表面積の比率が小さくなって吸着効率が低くなるため、例えば20mmのメッシュによる篩を粉砕機3に取り付けることによって除去するが、粒径が75μm以下の小さい粒子は、潮流により流出しても環境には悪影響を与えないので、特にこれを除去する必要はない。したがって、破砕機3による破砕工程では、粒径が75μm以上20mm以下のものが重量比で80%以上、粒径が75μm以下のものが20%未満となるようにする。
破砕機3で得られた貝殻粉砕物bは、コンベア4によってロータリーキルン5へ供給される。ロータリーキルン5は、円筒状の加熱炉51をゆっくり回転させながら加熱する連続式の焼成炉で、その内室に供給される貝殻粉砕物bを連続的に加熱処理して、底質浄化材cを得るものである。貝殻粉砕物bの加熱処理には、電気炉など他の加熱装置を用いても良いが、多量に生産するには、連続焼成可能なロータリーキルンが好ましい。
ここで、加熱処理の温度が500℃未満では、貝殻粉砕物bからの有機炭素、窒素、リン等の熱による分解を充分に行うことができず、このような底質浄化材cを水中に投入すると、分解されなかった有機炭素や窒素、リン等が溶出してしまう。また、加熱処理の温度が650℃超では、貝殻粉砕物bが脆くなり、700℃では粉末状になってしまう。
更に、貝殻の化学組成は、その90%以上が炭酸カルシウムCaCO3であり、一般に、900℃以上の高温で加熱した場合は脱炭酸反応(CaCO3→CaO+CO2)によって生石灰すなわち酸化カルシウムCaOに変化してしまう。生石灰は、貝殻の主組成である炭酸カルシウムとは性質が異なるため、底質浄化材としての効果を得ることができないものと予想される。しかも生石灰は、水と混合すると発熱反応を伴いながら、消石灰すなわち水酸化カルシウムCa(OH)2となり、強いアルカリ性を示してしまう(CaO+H2O→Ca(OH)2)。したがって、ロータリーキルン5による加熱処理の温度は、温度センサを用いて500〜650℃に温度制御をすることが好ましい。この場合、加熱温度を575℃付近に設定すれば、前記温度範囲に対して±75℃の余裕を持てることになる。
図2は、このようにして得られた底質浄化材cを用いて湖沼の底質浄化を行った状態を示す説明図である。この図2において、参照符号11は湖沼の底部地盤、12は底部地盤11上に堆積した底泥、Wは海水又は湖水(以下、単に水という)である。底泥12は、富栄養化によって窒素、リン等の栄養塩や、硫化物を多量に含んでおり、その表層には有機物や栄養塩をより多く含有し、含水比の大きい浮泥が堆積されている。このため、水Wのうち、湖沼の底部付近の水WLには、底泥12から溶出した上記栄養塩の濃度が高く、溶存酸素の減少や硫化物イオンによって、生態系に悪影響を及ぼす。特に、シルト・粘土の含有率が高い底泥12は、嫌気化しやすく、底生動物の生息に悪影響がある。
上述の工程により製造された底質浄化材cは、台船13に積載して水W上を所定の地点まで運搬し、パイプを用いて底泥12上へ投入して敷設するか、もしくは船底を開閉できる台船13を使用して運搬し、所定の地点で船底を開くことによって散布し、敷設する。そのほかにも、例えば陸上または船上で底質浄化材cをタンク内で水と混合してスラリー状にし、これを陸上または船上のポンプで配管内を圧送し、この配管を介して、所望の地点から湖底へ敷設する方法も採用可能である。
貝殻の焼成物からなる底質浄化材cは、底泥12やその真上の水(底層水WL)に含まれる栄養塩(リン、アンモニア態窒素)や、硫化物イオン、重金属等による汚濁物質を吸着して、底泥12の表層に集積させ、固定する作用を有する。しかも、この底質浄化材cは、経年的に溶解して減耗し、すなわち貝類等の生物によって水中からいったん貝殻として取り込まれたカルシウムを徐々に溶出するので、湖沼や内湾などの閉鎖性水域での貝類等の繁殖に必要なカルシウムを還元することができる。
また、この底質浄化材cは、粒径が75μm以上20mm以下のものを重量比で80%以上とし、粒径が75μm以下のものを20%未満としたため、潮流や水流等によって流失するおそれが少なく、かつ透水性が低く抑えられている。したがって、適当な層厚(例えば5〜50cm)で敷設することによって、汚濁物質を含む底泥12と、水Wとの間を遮蔽する効果を奏する。
特に、カキ殻の粉砕物を焼成した底質浄化材cによる効果の大きなものとしては、硫化物イオンの吸着作用がある。硫化物イオン(硫化水素等)は、閉鎖性水域の底層の貧酸素化が進むと、海水等に含まれる硫酸イオンが硫酸還元菌に還元されることによって発生する。硫化物イオンを多量に含む水は卵の腐ったような臭い(腐卵臭)を放ち、このような環境では、殆どの生物が生息できない。また、このような底層水が季節風などの影響で表層や浅瀬に上昇すると、いわゆる青潮となり、多くの魚介類を斃死させる原因となる。そして底質浄化材cは、硫化物イオンの吸着作用によって、水中の生物の生息環境を有効に改善することができるのである。
次に、敷設された底質浄化材cに汚濁物質が十分に吸着されるのに必要な期間が経過したら、海砂、山砂等からなる覆砂材14を、底質浄化材cの散布と同様の方法で敷設する。この覆砂材14は、汚濁物質を吸着した底質浄化材cの層と水Wとの間を遮蔽するものである。
図3は、貝殻粉砕物を加熱処理するのに最適な温度を確認するため、温度上昇による炭酸カルシウムの熱重量変化を示差熱重量同時測定装置により測定した結果を示す説明図である。この試験結果、加熱温度が700℃程度から脱炭酸により重量が低下し始め、850℃を超えると生石灰に変わっていることが確認された。
図4は、貝殻粉砕物を加熱処理するのに最適な温度を確認するため、温度上昇による貝殻粉砕物のpH測定した結果を示す説明図である。この試験においては、カキ殻を平均粒径0.5mmに粉砕したものを、電気炉で100℃、200℃、300℃、400℃、500℃、600℃、650℃、700℃、800℃、900℃で2時間加熱処理した。次に、加熱処理したカキ殻粉砕物3mgをビーカーに取り、100mlの蒸留水を加えて25℃で5分間撹拌し、pHの変化を測定した。また、同様の方法で、炭酸カルシウムCaCO3及び酸化カルシウムCaOのpHも測定した。そしてこの試験結果、図4に示されるように、カキ殻粉砕物のpHは、650℃付近から大きく上昇し、800℃では酸化カルシウムCaOとなって強アルカリ性を示すことが確認された。
なお、この試験において、加熱温度によるカキ殻粉砕物の構造的性状を観察したところ、100〜600℃では、加熱前の形状(粒径)を保っていたが、650℃では若干脆くなり、700℃超では、底質浄化材として利用できない粉末状になってしまうことがわかった。
そして、これら図3及び図4に示される試験結果から、貝殻粉砕物の加熱処理温度を700℃以下とする必要があることがわかった。
図5は、100〜600℃で加熱処理したカキ殻粉砕物からなる底質浄化材の有機炭素、窒素及びリンの溶出量を測定した結果を示す説明図、図6は、含有量を測定した結果を示す説明図である。溶出試験は、加熱処理したカキ殻粉砕物からなる底質浄化材を6mgずつ、300mlのフラスコに入れ、200mlの蒸留水を加えて4時間撹拌した後、濾過し、蒸留水に溶出した全有機炭素、全窒素及び全リンを、JIS K 0102に基づいて分析した。全有機炭素は、無機炭素を酸分解によって除去した後、CHN分析器で測定し、全窒素はそのままCHN分析器で測定した。全リンについては、カキ殻(カキ養殖産業廃棄物)の利用に関する文献抄録集(荒川ら,広水試研報 第8号,1977)によれば、カキ殻の化学組成中に0.48〜1.21%含まれているため、600℃の処理温度では含有量自体は大きく変化しないものと考え、100℃と600℃の2検体だけについて、確認のために硝酸−過塩素酸分解し、モリブデン青法で分析した。
これらの試験結果、有機炭素及び窒素の溶出量は、図5に示されるように、加熱処理温度300℃までは、温度と共に増加し、加熱処理温度を400〜600℃としたものは低い値を示すことがわかった。また、リンの溶出量は、400℃までは高いが、500℃及び600℃では著しく低くなることが確認された。また、図6に示されるように、含有量についても、有機炭素及び窒素は、加熱処理温度を500℃及び600℃としたものにおいて大きく削減され、リンの含有量は、加熱処理温度100℃のものに比較して600℃のものが若干増加しているが、これは有機物が減少したことによる見かけの含有量が増加したためであり、リンは上述のように、加熱処理温度を500℃及び600℃とすることによって溶出が非常に少なくなるので、問題ないと考えられる。
なお、カキ殻粉砕物を700℃で加熱処理したものについても溶出試験を実施したところ、有機炭素、窒素及びリンの溶出量はいずれも、600℃で加熱処理した場合とほぼ同じ測定結果が得られた。
そして、これら図5及び図6に示される試験結果と、先に説明した図3及び図4に示される試験結果から、貝殻粉砕物の加熱処理温度は500〜650℃とすることが最適であることがわかった。
また、カキ殻粉砕物をきれいに水洗したものと、600℃で加熱処理したものについて、硫化物イオンの吸着効果を比較する試験を実施した。試験は、1mgS2−/lのNa2S溶液300mlに、水洗又は加熱処理したカキ殻粉砕物を9g加え、25℃で5日間静置後、濾過し、このカキ殻粉砕物をイオン交換水で洗浄して試験体とした。カキ殻粉砕物に吸着された硫化物の含有量は、検知管法(底質の調査・試験マニュアル:底質浄化協会)により測定した。その結果、水洗したカキ殻粉砕物では、1gあたりの吸着量が0.014mgSであったのに対し、加熱処理したカキ殻粉砕物では、1gあたりの吸着量が0.052mgSと、高い値を示した。
以下は、浜名湖において実施した底質浄化効果の実証試験について説明する。この実証試験は、浜名湖の中で底質の悪化した松見ヶ浦の水深3.5〜4.0mの湖底に、きれいに水洗したカキ殻粉砕物からなる底質浄化材と、600℃で加熱処理したカキ殻粉砕物からなる底質浄化材を、それぞれ4m×4m、約20cmの厚さで敷設することにより行われ、2003年7月18日に試験を開始した。底質浄化材を敷設していない湖底を対照区とし、加熱処理したカキ殻粉砕物からなる底質浄化材を敷設した区域を実験区A、水洗したカキ殻粉砕物からなる底質浄化材を敷設した区域を実験区Bとした。
真夏には、湖の底層が貧酸素化するので、2003年8月26日に、溶存酸素計を用いて、湖底から30cm上の湖底直上水の溶存酸素濃度を測定した。その結果、底質浄化材を敷設していない対照区では、湖底直上水の溶存酸素濃度が0.11mgであったのに対し、加熱処理したカキ殻粉砕物からなる底質浄化材を敷設した実験区Aでは0.40mg、水洗したカキ殻粉砕物からなる底質浄化材を敷設した実験区Bでは0.32mgであり、カキ殻粉砕物の敷設によって貧酸素化を抑制する効果が得られることが確認された。
図7は、対照区及び実験区A,Bの湖底直上水の硫化物イオン濃度を分析した結果を示す説明図である。この試験では、2003年8月26日、27日及び29日に、対照区及び実験区A,Bの湖底直上水を採取して、ジアミン法,湖沼調査法により硫化物イオン濃度(mgS2−/l)を調査した。その結果、図7に示されるように、対照区に対して、実験区A,Bにおける湖底直上水の硫化物イオン濃度が著しく低くなっており、カキ殻粉砕物からなる底質浄化材による優れた硫化物イオン吸着効果が確認された。
図8は、対照区及び実験区A,Bにおける湖底からの窒素、リンの溶出及び硫化物イオンの発生を測定した結果を示す説明図、図9は、その時の測定方法を示す説明図である。
この測定試験は、2003年10月1日〜3日に行われたもので、図9に示されるように、対照区、実験区A及び実験区Bの湖底(図2における底泥12又は底質浄化材c)を、それぞれステンレス製のチャンバ15で囲い、試験開始の24時間後及び48時間後に、それぞれチャンバ15内の水を採取し、分析を行った。チャンバ15は、平面形状が一辺400mmの正方形で、湖底からの高さHが200mm、底泥12又は底質浄化材c内への埋没深さDが100mmの側壁を有する箱状をなし、不図示の船舶から延びる採水チューブと接続される採水管16と、採水に伴い外側の水Wをチャンバ15内へ補給するための通水管17を有する。また、チャンバ15の天板には開口部が開設されていて、蓋18で開閉できるようになっており、19は、チャンバ15を湖底に設置したり取り外したりするための取っ手である。
チャンバ15内から採取した水の分析結果、図8に示されるように、実験区A及び実験区Bでの硫化物イオンの発生が、対照区に比較して著しく少ないことが確認された。したがって、カキ殻粉砕物からなる底質浄化材は、硫化物イオンの吸着効果が高く、水中生物の生息環境を有効に改善可能であることがわかった。特に、加熱処理したカキ殻粉砕物の方が水洗したカキ殻粉砕物よりも硫化物イオンの発生抑制効果は大きいことがわかった。また、窒素及びリンの溶出については、試験開始24時間後の採水分析では対照区との顕著な差がみられないが、48時間後の採水分析では、対照区に比較して実験区A,Bでの溶出量が確実に少なくなっており、ある程度の溶出抑制効果がみられた。
更に、同年11月に実験区の湖底からカキ殻粉砕物を回収し、硫化物含有量を測定した。その結果、実験区Aでは硫化物含有量が0.020mgS/g、実験区Bでは0.013mgS/gで、カキ殻粉砕物による硫化物吸着効果が実証された。また、上述した各実証試験の結果、水洗したカキ殻粉砕物と加熱処理したカキ殻粉砕物で、底質浄化効果に大きな差はないが、硫化物の吸着量は、加熱処理したカキ殻粉砕物のほうが多いことがわかった。
1 ホッパ
3 破砕機
5 ロータリーキルン
a 原料貝殻
b 貝殻粉砕物
c 底質浄化材
3 破砕機
5 ロータリーキルン
a 原料貝殻
b 貝殻粉砕物
c 底質浄化材
Claims (3)
- 貝殻を、その主な化学組成及び構造的性状が不変の状態を維持可能であると共に有機物を分解除去可能な温度で加熱処理することを特徴とする貝殻からなる底質浄化材の製造方法。
- 貝殻を、粒径が75μm〜20mmのものを重量比80%以上含有する粉砕物とすることを特徴とする請求項1に記載の貝殻からなる底質浄化材の製造方法。
- 加熱処理の温度を500〜650℃とすることを特徴とする請求項1に記載の貝殻からなる底質浄化材の製造方法。
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