JP3797296B2 - 水底汚泥の浄化方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
この発明は、河川、湖沼、海洋など水域の水底汚泥の浄化方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
一般にヘドロ(水底汚泥)とは「流れの悪い水底などにたまった柔らかい有機物に富む汚泥、特に腐敗などで悪臭などを発する状態になったものを指す俗語である」と定義されている。また、閉鎖性の強い内湾における水底汚泥としては、特に次の3点を主な特徴としている。
1)漁場や海面養殖施設などに被害を与えるなど、水産サイドからみた黒色有機汚泥。
2)概ねシルト以下(76μm以下の粒子)が50%以上を占める、有機物含有量の極めて多い新生堆積物。
3)底生生物に直接影響を与えるほか、直上水を含む酸素消費や栄養塩などの溶出、硫化水素の発生、さらには底泥の巻き上げなどによる水域への悪影響を及ぼす。
この底泥の水底汚泥は、閉鎖性内湾や漁類養殖場の多くに見られる現象となっており、この水底汚泥は、自然の浄化力を越える有機物の流入、投入(養殖用飼料)、稚積、水域の富栄養化に伴う植物プランクトンの増殖、死滅、沈降の過程によって形成される。このような海底への有機物負荷増大は、海域における生物生産力の低下に大きな影響を与えている。
【0003】
水温が比較的低く、かつ、鉛直的に一様な時期である循環期には、水中の栄養塩類も混合され平均化している。また、水中の酸素も海底表面にまで輸送され、底泥表面は好気的な状態にある。水温の低いこともあり、沈降した易分解性有機物もゆっくりと分解し、窒素、リン等の栄養塩として水中に溶出していく。このような循環期の機構のもとでは、底泥表面にも底生生物が生存できる十分な酸素が供給されている場合が多い。
しかしながら、気温の上昇と共に表層水温が上昇し、地域によっては淡水の流入等により、夏季に向かって躍層が形成されると、上下間の物質輸送は妨げられ、海面から下層への酸素の輸送が減少する。水温の上昇と共に、底泥表面の易分解性有機物の分解が活発化し、直上の水中から溶存酸素を取り込み、水域の一部の底泥で貧酸素化が始まり、次第に広域化していく。底層での酸素消費には、底層に沈降し底層近くに浮遊している懸濁物が形成する底層高濁度層(ネフエロイド層)の役割が大きい。
【0004】
この間、上層では水温の上昇と共に植物プランクトンの増殖も活発化し、時には赤潮の発生に至る。植物プランクトン等の死骸もデトリタスとして海底への有機物負荷となる。また、有機物の分解によって海水中の酸素が消費され、無酸素水中で硫酸還元菌が硫酸イオンを還元して硫化水素を発生させる。
底泥表層では、好気的であった環境がこのように次第に嫌気的な環境に向かい、N、Pの溶出、特に硫化水素が発生するような環境では急激なリンの溶出が起こる。このようにして下層に蓄積された栄養塩類は、気象条件等による躍層の一時的な破壊や風による循環によって表層に浮上し、赤潮形成の要因ともなる。また、下層の貧酸素または無酸素水は青潮を引き起こすことにもなる。
【0005】
以上のような閉鎖性水域の汚濁機構の中で、これら水域への汚濁削減対策は水質対策(水中曝気、高酸素水発生など)、水底汚泥対策(浚渫、覆砂、耕耘、水底汚泥改良材散布など)として多く研究されており、現在実用化されているものもあれば、まだ研究段階のものもある。
特開2001−212600号公報、特開平10−230297号公報には、これらの具体的対策方法が開示されている。
【0006】
即ち、特開2001−212600号公報には、浚渫泥土を遠心分離によって分級処理し、該分級処理でオーバーフローした分を沈降分離し、沈降分離した濃縮泥を脱水処理する浚渫泥土の処理方法が開示されている。
しかしながら、この方法では、水域環境に悪影響を及ぼす有機物や硫化水素など還元性無機物は分解無害化されずに、固形物中に存在するので、これをそのまま、海底へ戻した場合には、海域の根本的な浄化になっていないし、また、固形物を陸上廃棄する場合には、廃棄場所の確保という問題が生じる。
【0007】
また、特開平10−230297号公報には、底泥を吸い上げオゾンを曝露して改質し、改質底泥を固液分離し、分離液を藻類培養層等の他工程に導くと共に分離残分を水域の底に導く底泥の処理方法および装置を開示している。
しかしながら、この処理は、オゾン処理のためのコストが高いこと、残留するオゾンによるオキシダント障害が生じることがあること、従って、脱オゾン装置を設置する必要があること、オゾンを取り扱う作業者への障害対策を施す必要があるなど、十分なものとは言えない。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
上述の如く、社会的に大きな影響をもたらす河川、湖沼、海洋など水域の水底汚泥の処理に関しては、多くの研究と実用化が図られているが、未だ満足すべきものは認められておらず、より地球に優しく、安定した、且つ低コストによる水底汚泥の処理方法が強く望まれている。
特に、水域環境に大きな影響を与える水底汚泥中の有機物と還元性無機物を無害化し、水底汚泥を処理することが重要である。すなわち、底泥中に存在する有機物は表層において過大に存在し、その一定量が易分解性有機物となっている。水質汚濁の原因となる大きな酸素消費や栄養塩類の溶出をもたらすのが、この易分解性有機物と還元性無機物であり、これを無害化する水底汚泥の処理方法が要望されている。
【0009】
上記に鑑み、本発明は、水底汚泥の基本的な解析調査結果を基として、水底汚泥の各構成要素に対する適切な処置を施すことにより、より地球に優しく、効率がよく安定した、且つ低コストな水底汚泥の処理方法を提供することを目的としている。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明の水底汚泥の浄化方法は次の構成よりなる。
1)浚渫した水底汚泥の処理方法において、浚渫した水底汚泥にキャビテーション処理をするキャビテーション処理工程と、前記水底汚泥を濃縮して濃縮泥と分離液に分離する濃縮工程と、濃縮分離後、前記濃縮泥に固化剤を混入混練して固化処理する固化工程と、前記固化された固化泥を水底に埋戻す、または埋立造成用土材として移送する後処理工程とを含むものである。
【0011】
2)浚渫した水底汚泥の処理方法において、浚渫した水底汚泥にキャビテーション処理をするキャビテーション処理工程と、、前記水底汚泥を固液分離して固形分と分離液に分離する固液分離工程と、前記固形分に固化剤を混入混練して固化処理する固化工程と、前記固化処理によって形成された固化泥を水底に埋戻す、または埋立造成用土材として移送する後処理工程とを含むものである。
【0012】
3)浚渫した水底汚泥の処理方法において、浚渫した水底汚泥にキャビテーション処理をするキャビテーション処理工程と、前記水底汚泥を濃縮して濃縮泥と分離液に分離する濃縮工程と、濃縮分離後、前記濃縮泥に固化剤を混入混練して固化処理する固化工程とを含むものである。
【0013】
4)浚渫した水底汚泥の処理方法において、浚渫した水底汚泥にキャビテーション処理をするキャビテーション処理工程と、、前記水底汚泥を固液分離して固形分と分離液に分離する固液分離工程と、前記固形分に固化剤を混入混練して固化処理する固化工程とを含むものである。
【0014】
5)上述の1)〜4)における、前記キャビテーション処理は、流路の一部を絞った構造のキャビテーション発生装置内に水底汚泥を通過させることによって、有機物と還元性無機物のうち少なくとも一つを分解させるものであり、
6)また、上述の1)〜5)におけるキャビテーション処理が、キャビテーション発生装置の上流側において水底汚泥に対して酸化剤を添加するものであり、
7)さらに、上述の1)〜6)におけるキャビテーション処理を施す前に、浚渫した水底汚泥から粗大粒子を除去するものであり、
8)上述の1)〜7)における前記水底汚泥の浄化方法のうち、キャビテーション処理工程と、濃縮工程または固液分離工程と、固化工程と、後処理工程のうち少なくとも一つの工程を浚渫した水域の水上で実施するものである。
【0015】
【発明の実施の形態】
[実施の形態1]
図1は、本発明の実施の形態1に係る水底汚泥の処理方法の処理工程流れ図である。図において、1は浚渫泥、2は粗大粒子除去工程、3はキャビテーション処理工程、4は改質汚泥、5は固液分離/濃縮工程、6は固形物/濃縮泥、7分離液、8は固化工程、9は固化(造粒)泥、10は後処理(埋戻し)工程、11は排水処理工程、12は処理水、13は放流工程である。
【0016】
浚渫船により水底から浚渫された浚渫泥を土運船などで運搬し浄化処理を施す。
本実施の形態における粗大粒子除去処理工程2は、下記要領による。
1)浄化効率を高めることと、キャビテーション発生装置やポンプの閉塞・磨耗を避けるため、粒径1mm以上の粗大粒子を除去する。
1段目を10mmメッシュ、2段目を1mmメッシュとした2段スクリーンの振動篩を用い、粗大粒子(貝殻、レキ、砂等)を除去する。
粒径10mm以上の粗大物(貝殻、レキ)は洗浄して海へ廃棄する。1〜10mmの大粒径物は後述する固化工程の固化物原料として用いる。
2)海洋水底汚泥の場合、1mm以上の粗大粒子の量は、重量分率で全固形物の数%から二十数%程度であるが、この粗大粒子に含有される有機物量と還元性無機物量は、ほとんど無視できる程度の量である。したがって、1mm以上の粗大粒子を取除いてキャビテーション処理をすれば、1mm未満の細粒子中の有機物(生物易分解性有機物)と還元性無機物を効率的に除去でき、最終的に充分に無害化された固化土が得られる。
【0017】
本実施の形態におけるキャビテーション処理工程3は下記要領による。
キャビテーション処理は、ベンチュリ管の絞り効果によるキャビテーション気泡の発生、崩壊作用を利用して、崩壊圧、OHラジカルの酸化分解作用によって水底汚泥中の有機物と還元性無機物を分解し、水底汚泥のSOD(好気懸濁状態における酸素摂取量)を低減するものである。また、これに酸化剤(過酸化水素、オゾン等)を添加することにより、その酸化反応によって有機物と還元性無機物の酸化分解が促進される。
本キャビテーション処理は前記粗大粒子除去処理により有機物と還元性無機物を多く含む細粒子物を処理するので、効率のよいSODの低減化を図ることができる。
【0018】
図3はキャビテーション処理におけるキャビテーション発生装置として使用されるベンチュリ管とキャビテーション気泡発生、崩壊の関係を模式的にあらわした説明図である。 図において、30はベンチュリ管、31はのど部、32はキャビテーション気泡、33はキャビテーション気泡発生部、34はキャビテーション気泡崩壊部である。
ベンチュリ管30ののど部31において、流体は高速、低圧となり、蒸気圧以下の部分でキャビテーション気泡32が発生する。また、キャビテーション気泡32によりOHラジカルが生成されることが知られており、キャビテーション気泡32内は高温高圧となっている。前記酸化分解作用はこのキャビテーション気泡32の発生崩壊の過程において生じる。
【0019】
本実施の形態における固液分離/濃縮工程5は下記要領による。
キャビテーション処理後の改質汚泥の固形物濃度は約20〜30%程度である。これを固化処理が可能な固形物濃度約35%以上に成るように濃縮、あるいは固液分離する。
濃縮工程では濃縮時に環境への影響がない無機系の凝集剤、例えば、ポリ塩化アルミニウムや塩化第2鉄などを使用することにより、濃縮速度を高め、強いては濃縮機を小形化することができる。濃縮機としては、a)フィルタープレス、b)ベルトプレス、c)遠心脱水機、d)スクリュープレスなどを使用できる。なお、上記濃縮方法では固形物濃度を40%以上にすることもできるため、必ずしも全量を濃縮する必要はなく、一部のみを濃縮して、これを未濃縮の改質汚泥と混合して、固形物濃度を35%以上に調整してもよい。
【0020】
固液分離処理としては、イ)自然沈降によるもの、ロ)凝集処理によるもの、がある。凝集処理によるものは、凝集剤を添加することにより小粒径粒子を凝集させ沈殿させるものである。
【0021】
本実施の形態における排水処理工程11は下記要領による。
上述の固液分離/濃縮工程5により生じた濃縮処理または固液分離後の分離液は、凝集沈殿法または濾過等により懸濁質成分を除去し、所定の排水基準まで処理する。排水処理された浄水は水域へ放流する。
排水基準としては、SS濃度:50mg/l以下、pH値:5.8〜8.6を目安とする。
【0022】
本実施の形態における固化工程8は下記要領による。
本工程で固化処理される対象は、前記固液分離/濃縮工程5で生じた固形物/濃縮泥5である。また、粗大粒子除去工程2で分級された大粒径物質(1〜10mm)、および排水処理工程11で発生する懸濁物/逆洗水を加えて固化処理してもよい。本工程における固化処理には適宜固化剤を添加し固化することができる。
【0023】
さらに、固化された水底汚泥を押出方式などの造粒装置により造粒処理する。なお、造粒処理された水底汚泥は、所定の硬さになるまで基本的に気中静置により固化養生処理を施すことができる。
前記造粒処理された造粒化水底汚泥は、所定量蓄積されたのち覆砂船などにより所定水底に埋め戻し、汚濁水底への覆砂、干潟造成、藻場造成に用いられたり、ブロック成型され魚礁ブロックに用いられたり、または埋立造成用土材として移送されるなどの後処理がされる。
【0024】
[実施例]
図2は、実施の形態1に基づく、実際の「水底汚泥処理プラント台船」のプラント概念図である。
図において、100は水底汚泥処理プラント台船、101は水底汚泥浚渫船、または土運船、102はスクリーン、103はサイクロン、104は水底汚泥貯蔵タンク、105は給水タンク、106A、106Bはスラリータンク(各1基)、107A、107Bは泥水タンク(各2基)、108A、108Bはキャビテーション処理装置(各1基)、109は処理スラリー貯蔵タンク、110は脱水装置、111は排水処理装置、112は固化装置、113は造粒装置、114は固化養生スペース、115は処理泥土貯蔵タンク、116は排水、117は処理泥土覆砂船、118は発電機その他ユーティリティ室(含む管理室)等の配置スペースである。
【0025】
水底汚泥浚渫船101により浚渫された水底汚泥(揚土量約60m3 /h)は、水底汚泥中のゴミをスクリーン102により、砂礫分はサイクロン103により分離除去され、スラリータンク106A、Bのバファタンクとしての水底汚泥貯蔵タンク104に一旦貯蔵される。水底汚泥貯蔵タンク104には沈殿防止用の攪拌機が設置されている。一旦貯蔵された水底汚泥は適宜給水されて、沈殿防止用攪拌機を備えた2基のスラリータンク106A、Bへ導入され、さらに時間切り替えされる各2基の泥水タンク107A、Bを介してキャビテーション処理装置108A、Bに送られ、前記キャビテーション処理を施行される。
【0026】
キャビテーション処理装置108A、Bには、圧送ポンプ、ベンチユリ管、薬液タンク、その他が装備されている。また、キャビテーション処理装置108A、Bは2組装備されており、1組のキャビテーション処理装置に2組の泥水タンク107A、Bを設けて、これを所定時間ごとに切り替え、安定したキャビテーション効果を図る。スラリ発生量は例えば約48m3 /hである。
【0027】
図4はキャビテーション処理装置の1実施例を示す説明図である。図において、40はキャビテーション処理装置、41は泥水タンク、42は送出管、43は流量計、44はポンプ、45は酸化剤供給部、46は圧力計、47はベンチュリ管、48戻り管である。
【0028】
一旦泥水タンク41に溜められた水底汚泥は送出管42より送りだされ、途中流量計43により流量計測される。この計測値によりポンプ44の駆動モータ(図示せず)のインバータ制御を行い流量を制御する。
酸化剤供給部45において適量の酸化剤(過酸化水素水など)が供給され、ベンチュリ管47においてキャビテーション処理を行う。処理された改質汚泥は戻り管48より泥水タンク41に戻され、適当回数循環流送される。なお、ベンチュリ管47入り口側における流量は、例えば約3〜4.5m/sec、圧力は、例えば約98kPa(G)である。
【0029】
キャビテーション処理をされ改質されたスラリー状の水底汚泥は、処理スラリ貯蔵タンク109に滞留され、固液を沈殿分離する。自然沈殿分離された上澄み液は排水処理設備111に移送され、また、沈殿した水底汚泥は脱水装置110に導入される。
【0030】
脱水装置110により水底汚泥は更に脱水による濃縮処理が行われる。脱水装置110にはフィルタープレス、ベルトプレス、遠心脱水機、スクリュープレスなどが使用される。
脱水処理された水底汚泥は固化装置112へ、また、脱水工程で発生した液は、前記排水処理設備111に移送される。
【0031】
固化装置112において、脱水処理された水底汚泥と粗大粒子除去工程で除去した1〜10mmの粗大粒子は固化剤を添加されて固化する。また造粒装置113により固化した水底汚泥は造粒処理される。
造粒装置113には押出方式造粒装置を使用する。
また、固化造粒材としては、例えば無機系固化材と粉末スラグを使用する。粉末スラグは高炉水砕スラグを微粉化したものである。
【0032】
固化造粒された水底汚泥は造粒強度を高めるために、固化養生スペース114において、気中静置して固化養生される。固化養生された水底汚泥は一時的に処理泥土貯蔵タンク115に保管され、タンクが一杯になると処理泥土覆砂船117により移送され、水中への埋戻し等がされる。また、水底汚泥処理後の残水は前記のごとく所定の排水基準まで処理され水域に排水される。
【0033】
水底汚泥処理プラント台船100には、台船上に装置駆動用の発電機、その他必要な機器を配置、作業を制御する管制室、作業員休憩室等の簡易居住区を配置する配置スペース118が設けられている。また、水底汚泥処理プラント台船100の4隅には係留装置が配備されている。
【0034】
上記実施例により水底汚泥(含水率75wt%、粒度組成:砂25%、シルト45%、粘土30%,COD30mg/g、強熱減量IL:15%、貝殻等が多数混在)を処理した結果、1)粗大粒径分(10mm以上)を洗浄後廃棄し、2)大粒径分(1〜10mm)を固化造粒して固化泥とし、3)粒径1mm以下の小粒径分の有機物を分解無害化し固化造粒泥とした。また、残水は所定の排水基準まで処理され水域に排水された。
図2は、「水底汚泥処理プラント台船」に配置した各装置の構成の一例を示したもので、これ以外の構成でもかまわないことは勿論である。また、上記の実施例ではキャビテーション処理工程と濃縮工程と固化工程と後処理工程を水底汚泥処理プラント台船上で行う例を示したが、前記の工程のうちいずれかを水域の水上でなく陸上で行ってもかまわない。
【0035】
[実施の形態2]
キャビテーション処理による効果を確認するため確認試験を行った。
海域から採取した水底汚泥をサンプルとして、キャビテーション処理をしたもの(試料A、B)、無処理のもの(試料C)を作成した。
各試料A、B、Cを同一条件にて遠心分離し泥分を採取した。
各泥分のSOD(好気懸濁状態における酸素摂取量)を測定し、有機物と還元性無機物に由来するSOD値を算出した。120時間目の測定値を表1に示す。
【0036】
【表1】
【0037】
結果、水質に悪影響を及ぼす易分解性有機物と還元性無機物の量は、キャビテーション処理により分解され、約1/4程度に削減された。
これにより、キャビテーション処理後、濃縮処理した濃縮泥、または固液分離処理した固形物中に含まれる易分解性有機物と還元性無機物は大幅に削減されている。
そのため、固化処理した固化物を水域に戻しても、有機物と還元性無機物の溶出がなく水域環境への影響が無いようにすることができる。
【0038】
【発明の効果】
本発明は、
1)浚渫した水底汚泥の処理方法において、浚渫した水底汚泥にキャビテーション処理をするキャビテーション処理工程と、前記水底汚泥を濃縮して濃縮泥と分離液に分離する濃縮工程と、濃縮分離後、前記濃縮泥に固化剤を混入混練して固化処理する固化工程と、前記固化された固化泥を水底に埋戻す、または埋立造成用土材として移送する後処理工程とを含むことにより、
2)浚渫した水底汚泥の処理方法において、浚渫した水底汚泥にキャビテーション処理をするキャビテーション処理工程と、、前記水底汚泥を固液分離して固形分と分離液に分離する固液分離工程と、前記固形分に固化剤を混入混練して固化処理する固化工程と、前記固化処理によって形成された固化泥を水底に埋戻す、または埋立造成用土材として移送する後処理工程とを含むことにより、より地球に優しく、安定した、且つ低コストによる水底汚泥の処理方法を提供することができる。
【0039】
3)前記キャビテーション処理を、流路の一部を絞った構造のキャビテーション発生装置内に水底汚泥を通過させることにより、
4)また、前記キャビテーション発生装置の上流側において水底汚泥に対して酸化剤を添加することにより、
5)さらに、前記キャビテーション処理を施す前に、浚渫した水底汚泥から粗大粒子を除去することにより、
6)前記水底汚泥の浄化方法のうち、キャビテーション処理工程と、濃縮工程または固液分離工程と、固化工程と、後処理工程のうち少なくとも一つの工程を浚渫した水域の水上で実施することにより、より確実で、安定した、且つ低コストによる水底汚泥の処理方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の実施の形態1における処理工程流れ図である。
【図2】 本発明の実施例の水底汚泥処理プラント台船のプラント概念図である。
【図3】 本発明のキャビテーション処理に使用するベンチュリ管とキャビテーション気泡発生、崩壊の関係を模式的にあらわした説明図である。
【図4】 本発明の実施の形態1に使用するキャビテーション処理装置の1実施例を示す説明図である。
【符号の説明】
1 浚渫泥、2 粗大粒子除去工程、3 キャビテーション処理工程、4 改質汚泥、5 固液分離/濃縮工程、6 固形物/濃縮泥、7 分離液、8 固化工程、9 固形(造粒)泥、10 後処理工程(水底覆砂、埋立用土材としての移送)、11 排水処理工程、12 処理水、13 放流工程、30 ベンチュリ管、31 のど部、32 キャビテーション気泡、33 キャビテーション気泡発生部、34 キャビテーション気泡崩壊部、40 キャビテーション処理装置、41 泥水タンク、42 送出管、43 流量計、44 ポンプ、45 酸化剤供給部、46 圧力計、47 ベンチュリ管、48 戻り管、100 水底汚泥処理プラント台船、101 水底汚泥浚渫船、102 スクリーン、103サイクロン、104 水底汚泥貯蔵タンク、105 給水タンク、106A、106B スラリータンク(各1基)、107A、107B 泥水タンク(各2基)、108A、108B キャビテーション処理装置(各1基)、109 処理スラリー貯蔵タンク、110 脱水装置、111 排水処理装置、112 固化装置、113 造粒装置、114 固化養生スペース、115 処理泥土貯蔵タンク、116 排水、117 処理泥土覆砂船、118 発電機その他ユーティリティ室(含む管理室)等の配置スペース。
Claims (8)
- 浚渫した水底汚泥の処理方法において、浚渫した水底汚泥にキャビテーション処理をするキャビテーション処理工程と、前記水底汚泥を濃縮して濃縮泥と分離液に分離する濃縮工程と、濃縮分離後、前記濃縮泥に固化剤を混入混練して固化処理する固化工程と、前記固化された固化泥を水底に埋戻す、または埋立造成用土材として移送する後処理工程とを含む水底汚泥の浄化方法。
- 浚渫した水底汚泥の処理方法において、浚渫した水底汚泥にキャビテーション処理をするキャビテーション処理工程と、前記水底汚泥を固液分離して固形分と分離液に分離する固液分離工程と、前記固形分に固化剤を混入混練して固化処理する固化工程と、前記固化処理によって形成された固化泥を水底に埋戻す、または埋立造成用土材として移送する後処理工程とを含む水底汚泥の浄化方法。
- 浚渫した水底汚泥の処理方法において、浚渫した水底汚泥にキャビテーション処理をするキャビテーション処理工程と、前記水底汚泥を濃縮して濃縮泥と分離液に分離する濃縮工程と、濃縮分離後、前記濃縮泥に固化剤を混入混練して固化処理する固化工程とを含む水底汚泥の浄化方法。
- 浚渫した水底汚泥の処理方法において、浚渫した水底汚泥にキャビテーション処理をするキャビテーション処理工程と、前記水底汚泥を固液分離して固形分と分離液に分離する固液分離工程と、前記固形分に固化剤を混入混練して固化処理する固化工程とを含む水底汚泥の浄化方法。
- 前記キャビテーション処理は、流路の一部を絞った構造のキャビテーション発生装置内に水底汚泥を通過させることによって、有機物と還元性無機物のうち少なくとも一つを分解させることを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の水底汚泥の浄化方法。
- 前記キャビテーション処理は、キャビテーション発生装置の上流側において水底汚泥に対して酸化剤を添加することを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載の水底汚泥の浄化方法。
- 前記キャビテーション処理を施す前に、浚渫した水底汚泥から粗大粒子を除去することを特徴とする請求項1から6のいずれかに記載の水底汚泥の浄化方法。
- 前記水底汚泥の浄化方法のうち、キャビテーション処理工程と、濃縮工程または固液分離工程と、固化工程と、後処理工程のうち少なくとも一つの工程を浚渫した水域の水上で実施することを特徴とする請求項1から7のいずれかに記載の水底汚泥の浄化方法。
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JP2002235377A JP3797296B2 (ja) | 2002-08-13 | 2002-08-13 | 水底汚泥の浄化方法 |
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