JP3631419B2 - 富栄養化された水域の浄化方法及び装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、富栄養化により水質汚濁を招いた水域を浄化するための浄化方法及び装置に関し、特に富栄養化が顕著で水底にヘドロが堆積し易いダムや湖沼などの閉鎖性水域及び流れの緩やかな河川の浄化に適した浄化方法及び装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
窒素やリンなどの栄養塩類の増加による富栄養化が進行した水域では、植物プランクトンが異常増殖して悪臭の発生や透明度の低下などの水質障害を招き、特にアオコの排出するミクロシスチンの毒性が強いことから水道原水として使用する場合に重大な問題を生じる。
【0003】
このような富栄養化により水質汚濁を招いた水域を浄化するには、従来、水面を浮遊するアオコを回収するアオコ回収船や、水域の自然の浄化機能を回復させるために嫌気状態にある深層部の溶存酸素濃度を高めて好気化させる曝気装置などが用いられている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
ところが、アオコの回収のみでは、抜本的な水質の改善がなされていないため、アオコの再増殖を招き、極めて非効率である。また、曝気による方法では、明瞭な効果が現れるまでに長期間を要し、早急な解決を要する水質障害に対応することができない。
【0005】
他方、これらの方法を併用すると共に、ポンプで汲み上げてろ過などの浄化処理を行って水質の改善を図れば、それ相当の効果が得られるが、各方法毎にポンプなどの動力費がかかるため、全体として莫大な浄化コストを要するものとなる。さらに植物プランクトンの増殖を左右する窒素やリンなどの栄養塩類の量を減らすための脱窒・脱リン処理を加えると、煩雑な処理操作を必要とすることから処理費用が益々増大する。
【0006】
本発明は、このような従来技術の問題点を解消するべく案出されたものであり、その主な目的は、富栄養化された水域を効率良くかつ低コストに浄化し得るように構成された浄化方法及び浄化装置を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
このような目的を果たすために、本発明においては、富栄養化された水域を浄化するにあたり、水域の表層の水から植物プランクトン及び有機物を除去するろ過過程と、酸素を含む気体との接触により水中の溶存酸素量を増大させる気液接触過程と、これにより得られた処理水を水域に放出する放水過程とを有し、ろ過過程では、凝集剤により植物プランクトンを凝集分離して回収すると共に、水中に浮遊可能なプラスチック発泡体からなる浮遊ろ材の好気性生物膜処理により有機物を除去し、放水過程では、溶存酸素に富む処理水を水底に放出し、嫌気状態にある水底堆積物を好気化させて水底堆積物からのリンの溶出を抑制するものとした。
【0008】
また、本発明においては、水域の浄化装置を、水域の表層の水を取り込む取水手段と、この取水手段からの原水に含まれる植物プランクトン及び有機物を除去するろ過手段と、取水手段からの原水の溶存酸素量を増大させる気液接触手段と、処理水を水域に放出する放水手段と、取水から放水に至るまでの水の流れを生起させるポンプとを有し、ろ過手段は、水中に浮遊可能なプラスチック発泡体からなる浮遊ろ材を多数充填してなるろ層を備え、凝集剤により植物プランクトンを沈殿分離して回収すると共に、ろ層内での好気性生物膜処理により有機物を除去し、放水手段は、嫌気状態にある水底堆積物を好気化させて水底堆積物からのリンの溶出を抑制するべく、出口を水底の近傍に開口させて溶存酸素に富む処理水を水底に放出するものとした。
【0009】
この浄化方法及び浄化装置によると、水域の表層の水を取水することにより表層に浮遊するアオコなどの植物プランクトンが回収され、ついで処理水を水底に放出することにより、植物プランクトンの餌となる水中の有機物濃度を低下させると同時に、嫌気状態にある水底堆積物(ヘドロ)を好気化させて水底堆積物からのリンの溶出を抑制して水中のリン濃度を低く抑え、これにより効果的に植物プランクトンの増殖を抑えることができる。そして植物プランクトンの回収及び有機物の除去と水底堆積物の好気化とを一連の処理工程内で同時に行うことで動力費を節減し、水域を効率良く浄化することができる。
【0010】
特に前記の取水手段、ろ過手段、気液接触手段、放水手段、及びポンプを浄化すべき水域を航行可能な船体に搭載した構成とすると、取水位置及び放水位置を適宜に移動させることができるため、水域全体の浄化を能率良く進めることができる。
【0011】
なお、溶存酸素量の増大には、酸素を含む気体と原水とを接触させる気液接触装置を用いれば良く、この気液接触装置は、有機物の除去過程で好気的生物処理を促進するための曝気装置と兼用することも可能であるが、これとは別にその後段に設けて、必要に応じて作動させて所要の溶存酸素量を得るようにすると安定した量の溶存酸素を水底に供給することができる。
【0012】
【発明の実施の形態】
以下に添付の図面を参照して本発明の構成を詳細に説明する。
【0013】
図1は、本発明に基づき構成された浄化装置を示している。この浄化装置は、浄化すべき水域Aを航行可能な船体1に、水域の表層の水を取り込む取水管(取水手段)2と、この取水管2からの原水に含まれる植物プランクトン及び有機物を除去するろ過器(ろ過手段)3と、このろ過器3からの水の溶存酸素量を増大させる空気混合器(気液接触手段)4と、これにより得られた処理水を水底に放出する放水管(放水手段)5と、取水から放水に至るまでの水の流れを生起させるポンプ6とを搭載してなっている。
【0014】
取水管2は、水域の表層水中に入口を開口させ、表層水を水面に浮遊する植物プランクトンと共に取り込む。この他、取水手段として、船体1の適所に表層水の取り入れ口を設けてこれを導入路を介してろ過器3に接続した構成も可能である。
【0015】
ろ過器3の上流では、取水管2から取り込まれた原水に硫酸アルミニウムやポリ塩化アルミニウムなどの無機系凝集剤(金属塩凝集剤)を注入する薬注処理が行われ、これによりアオコが凝集され、ろ過器3の底部に沈殿し、ドレン7から適宜に回収される。また、無機系凝集剤の注入により、水中のリン(オルトリン酸)が不溶性の化合物を作ってろ過器3内で捕捉され、これにより水中のリン濃度を低下させることができる。
【0016】
ろ過器3は、水中に浮遊可能なプラスチック発泡体からなる浮遊ろ材を多数充填してなるろ層8を内部に備え、このろ層8では、浮遊ろ材の表面に形成された微生物膜と原水との接触により水中のSSや溶解性成分が摂取・固定化され、水中の有機物量が低減される。ろ層8の下方には、ろ層8内の好気性生物膜処理を促進するための曝気装置9が設けられている。
【0017】
空気混合器4は、バイパス管10と並列に設けられ、リンの溶出を抑制可能な程度に水底堆積物を好気化させるのに要する溶存酸素量が得られるように必要に応じてろ過器3からのろ過水が導入される。ろ過器3内の曝気装置9で十分な溶存酸素量が得られる場合にはバイパス管10を介してそのまま放流され、動力費を節約する。
【0018】
この空気混合器4は、大型の装置では、図2に示すような気液接触装置が好適である。この気液接触装置は、圧力容器21内に水中に浮遊可能なプラスチック発泡体からなる不均一な粒径の充填材22が多数充填され、下部に水及び空気の入口23が、上部に水及び空気の出口24がそれぞれ設けられ、水と空気とを同時に流入させて大気圧よりも高い圧力で通過させると、水と空気とが充填材22が引き起こす乱流により激しく攪拌され、溶存酸素量が増大した水と微細気泡との混合物が排出され、この微細気泡が長時間持続することから、放水後にも水中への酸素の溶解が促進され、水底堆積物及び深層の水を好気化するのに都合が良い。
【0019】
また、小型の装置では、配管途中に介装可能な静止型混合器、例えば図3に示すように、長方形の板を180度ねじった形状のエレメント31をパイプ状のケーシング32に内装した構成のスタティックミキサ(ノリタケカンパニーリミテド社製)が好適である。
【0020】
放水管5は、出口を水底の近傍に開口させ、溶存酸素に富む処理水との接触によって水底堆積物Bを好気化させる。放水管5には、例えば可撓性のホースを用いれば良く、放水管5の先端が水底の近傍の所要の水深に到達するように放水管5を船体1から垂れ下げる。
【0021】
このように構成された浄化装置では、水域Aの汚濁状況に応じて船体1を航行させて適宜に取水位置及び放水位置を移動させながら浄化処理が行われ、閉鎖性水域内の総水量を30〜60日で一巡処理することの可能な処理能力を有する装置とすると、水域の全体的な浄化処理を効率良く行うことが可能となる。
【0022】
【実施例】
生物膜ろ過法によるろ過器と空気混合器とを備えた試験プラントを用いて、霞ヶ浦において採取した表層のアオコを含む湖水の浄化試験を行った。まず、原水をろ過器で処理したところ、アオコはその98%を除去することができ、COD、BOD、リンは共に約70%の除去率を達成した。そしてこのろ過水に空気を注入することで溶存酸素濃度を7mg/l以上に保持することができた。
【0023】
【発明の効果】
このように本発明によれば、すでに増殖した植物プランクトンの回収と、植物プランクトンの餌となる有機物の除去と、植物プランクトンの増殖を促進するリンの溶出を抑制するための水底堆積物の好気化とを一連の処理工程内で同時に行うことができ、これにより少ない動力費で効率良く水域を浄化することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明による浄化装置の模式図。
【図2】本発明における気液接触装置の一例を示す断面図。
【図3】同じく本発明における気液接触装置の一例を示す断面図。
【符号の説明】
1 船体
2 取水管
3 ろ過器
4 空気混合器
5 放水管
6 ポンプ
7 ドレン
8 ろ層
9 曝気装置
10 バイパス管
21 圧力容器
22 充填材
23 入口
24 出口
31 エレメント
32 ケーシング
A 水域
B 水底堆積物

Claims (3)

  1. 水域の表層の水から植物プランクトン及び有機物を除去するろ過過程と、酸素を含む気体との接触により水中の溶存酸素量を増大させる気液接触過程と、これにより得られた処理水を前記水域に放出する放水過程とを有し、
    前記ろ過過程では、凝集剤により植物プランクトンを凝集分離して回収すると共に、水中に浮遊可能なプラスチック発泡体からなる浮遊ろ材の好気性生物膜処理により有機物を除去し、
    前記放水過程では、溶存酸素に富む処理水を水底に放出し、嫌気状態にある水底堆積物を好気化させて水底堆積物からのリンの溶出を抑制することを特徴とする富栄養化された水域の浄化方法。
  2. 水域の表層の水を取り込む取水手段と、該取水手段からの原水に含まれる植物プランクトン及び有機物を除去するろ過手段と、前記取水手段からの原水の溶存酸素量を増大させる気液接触手段と、前記ろ過手段及び気液接触手段により処理された処理水を前記水域に放出する放水手段と、取水から放水に至るまでの水の流れを生起させるポンプとを有し、
    前記ろ過手段は、水中に浮遊可能なプラスチック発泡体からなる浮遊ろ材を多数充填してなるろ層を備え、凝集剤により植物プランクトンを沈殿分離して回収すると共に、前記ろ層内での好気性生物膜処理により有機物を除去し、
    前記放水手段は、嫌気状態にある水底堆積物を好気化させて水底堆積物からのリンの溶出を抑制するべく、出口を水底の近傍に開口させて溶存酸素に富む処理水を水底に放出することを特徴とする富栄養化された水域の浄化装置。
  3. 前記取水手段、前記ろ過手段、前記気液接触手段、前記放水手段、及び前記ポンプを、浄化すべき水域を航行可能な船体に搭載したことを特徴とする請求項2に記載の富栄養化された水域の浄化装置。
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