JP4904791B2 - 水棲動物着生・生育用又は養殖場底質浄化用の人工水底基盤 - Google Patents

水棲動物着生・生育用又は養殖場底質浄化用の人工水底基盤 Download PDF

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Description

本発明は、主に沿岸海域や内湾などの水底に造成される水棲動物着生・生育用又は養殖場底質浄化用の人工水底基盤に関する。
沿岸海域や内湾などには、ナマコ、ウニ、アワビ、サザエなどのような有用魚介類の漁場が数多く存在しているが、近年、底質・水質の汚染などによってこれらの漁場の衰退・消失が進んでおり、また、浅場の埋め立てなどによっても漁場が失われつつある。
このような問題に対して、例えば特許文献1には、スパイラル羽根を有するオーガによって水底の底泥よりも下層側の土を掘削し、これを底泥よりも上層に持ち上げ、底泥と下層の土とを置換することにより、貝類などの漁場の底質を改修する方法が示されている。
特開2002−306001号公報
また、近年、沿岸海域や内湾での魚介類の養殖漁業が盛んに行われているが、フグやハマチなどの魚類の養殖場では、魚に摂餌されなかった残餌と魚から排泄される糞が養殖生け簀下方の水底に沈積し、また、カキなどの貝類の養殖場では、残餌は発生しないものの(貝類は無給餌養殖)、貝類から排泄される糞や貝自体(カキの場合には落ちガキと呼ばれる)が養殖筏下方の水底に落下・沈積するという問題がある。
このように養殖場の水底に残餌や糞が沈積しても、潮通しが良好な場所では沈積物が潮流等で場外に流出するため、沈積物の堆積量は少なくて済む。しかし、多くの場合、養殖場は潮通しがあまり良くない内湾や入江などに設置されるため、短期間のうちに沈積物が厚く堆積してしまう。この堆積物(残餌、糞など)は殆どが有機物であるため、貧酸素海水や硫化水素の発生源となり、養殖魚介類の生産性に悪影響を与えるだけでなく、最悪の場合には養殖魚介類の大量へい死を招いてしまう。
養殖場の水底に堆積する糞などの処理対策として、例えば特許文献2には、養殖場の直下に小石状の軽量材料(例えば、発泡スチロール)を詰めた籠枠を配置し、この籠枠で糞を受けるようにした装置が示されており、この装置によれば、糞が小石状の軽量材料間にトラップされ、溶存酸素が豊富な水中で好気的に分解されるとしている。
特開2000−83508号公報
しかし、有用魚介類の漁場の改修に関しては、特許文献1の技術は既存の底質を利用するものであるため、その効果には自ずと限界があり、有用魚介類の生育性や生産性を短期間で顕著に向上させる手法とはなり得ない。また、改修や造成工事のためのコストがかかるという難点もある。
また、養殖場の底質の改善に関しては、特許文献2の装置は、養殖場全体をカバーできるような大きな構造体(籠枠)を設置する必要があり、多大なコストがかかる。
また、最近では、有用水産物(魚介類、海藻など)の生産場所となる浅場を造成する試みが各地で行われるようになりつつあり、この浅場造成では、水底に他の場所で採取した天然砂や自然石を投入する方法が採られている。しかし、このように造成用の資材として天然資源(天然砂、自然石)を用いることは、その採取場所での新たな自然破壊を伴うことになるため好ましくない。
したがって本発明の目的は、以上のような従来技術の課題を解決し、水底に棲息する動物、とりわけナマコ、ウニ、アワビ、サザエなどのような有用魚介類が着生・生育するのに好適な環境を実現することができ、ひいてはそれらの良好な漁場を形成することができる、水棲動物着生・生育用の人工水底基盤を提供することにある。
また、本発明の他の目的は、養殖筏や養殖生け簀などのような養殖場の水底に設置することにより、その底質を効果的に浄化することができる養殖場底質浄化用の人工水底基盤を提供することにある。
本発明者らは、水底に棲息する有用魚介類が着生・生育するのに好適な環境を提供することができる方策について、主に水底に敷設する敷設材料の面から検討を行い、その結果、特定の粒度分布を有する製鋼スラグによって水底基盤を形成することにより、特に好ましくは、そのような特定の粒度分布を有する製鋼スラグと貝殻との混合物によって水底基盤を形成することにより、上記のような所望の水底環境を形成できることを見出した。また、このような人工水底基盤を養殖場の水底に設置することにより、その底質を高度に浄化できることも判明した。
本発明は以上のような知見に基づきなされたもので、その特徴は以下の通りである。
[1]水底面に、人工的に敷設された底質層であって、粒径10mm以上の割合が85mass%以上である製鋼スラグと貝殻とからなり、且つ粒径10mm以上の割合が85mass%以上である製鋼スラグAと貝殻Bの質量比がA/B=90/10〜50/50である製鋼スラグ含有層を形成したことを特徴とする、水棲動物着生・生育用又は養殖場底質浄化用の人工水底基盤。
[2]水底面に、人工的に敷設された複層の底質層であって、最上層が粒径10mm以上の割合が85mass%以上である製鋼スラグと貝殻とからなり、且つ粒径10mm以上の割合が85mass%以上である製鋼スラグAと貝殻Bの質量比がA/B=90/10〜50/50である製鋼スラグ含有層からなる底質層を形成したことを特徴とする、水棲動物着生・生育用又は養殖場底質浄化用の人工水底基盤。
[3]上記[2]の人工水底基盤において、最上層以外の底質層が、製鋼スラグ(但し、粒径10mm以上の割合が85mass%以上である製鋼スラグを除く)、高炉水砕スラグ、浚渫砂、貝殻の中から選ばれる1種以上からなることを特徴とする、水棲動物着生・生育用又は養殖場底質浄化用の人工水底基盤。
[4]上記[3]の人工水底基盤において、最上層以外の底質層が、製鋼スラグ(但し、粒径10mm以上の割合が85mass%以上である製鋼スラグを除く)からなることを特徴とする、水棲動物着生・生育用又は養殖場底質浄化用の人工水底基盤。
[5]上記[1]〜[4]のいずれかの人工水底基盤において、養殖場の水底面及び/又はその周辺の水底面に設置されることを特徴とする、水棲動物着生・生育用又は養殖場底質浄化用の人工水底基盤。
[6]上記[5]の人工水底基盤において、養殖生け簀又は養殖筏の下方の水底面に設置されることを特徴とする、水棲動物着生・生育用又は養殖場底質浄化用の人工水底基盤。
[7]上記[1]〜[4]のいずれかの人工水底基盤において、水底に棲息する有用魚介類の養殖基盤として設置されることを特徴とする、水棲動物着生・生育用又は養殖場底質浄化用の人工水底基盤。
[8]上記[7]の人工水底基盤において、ナマコ、ウニ、アワビ、サザエの中から選ばれる1種以上の養殖基盤として設置されることを特徴とする、水棲動物着生・生育用又は養殖場底質浄化用の人工水底基盤。
[9]上記[1]〜[8]のいずれかの人工水底基盤において、人工支持体上に設置されることを特徴とする、水棲動物着生・生育用又は養殖場底質浄化用の人工水底基盤。
本発明の人工水底基盤によれば、水底に棲息する動物、とりわけナマコ、ウニ、アワビ、サザエなどのような有用魚介類が着生・生育するのに好適な環境を実現することができ、ひいてはそれらの良好な漁場を形成することができる。
また、養殖場の水底に設置することにより、その底質を効果的に浄化することができる。
本発明の水棲動物着生・生育用又は養殖場底質浄化用の人工水底基盤は、水底面に、人工的に敷設された底質層であって、粒径10mm以上の割合が85mass%以上である製鋼スラグを50mass%以上含む製鋼スラグ含有層(但し、製鋼スラグのみからなる場合を含む)を形成したものである。
製鋼スラグは鉄鋼製造プロセスで発生するスラグの一種であり、溶銑予備処理、転炉脱炭精錬、鋳造、電気炉精錬などの各工程で発生するスラグがある。具体的には、脱燐スラグ・脱硫スラグ・脱珪スラグなどの溶銑予備処理スラグ、脱炭スラグ、鋳造スラグ、電気炉スラグなどが挙げられ、これらの1種又は2種以上を用いることができる。これらのスラグ中でも、特に脱炭スラグ(転炉スラグ)、脱燐スラグが好適である。
製鋼スラグは、各種スラグのなかでも特に高い水質浄化作用を有している。すなわち、製鋼スラグは、(1)スラグに含まれるCaOによって水中の燐が吸着・固定され、水の富栄養化が抑制される、(2)同じくCaOが水中に溶出することによって水中のpHが高められ、硫化水素を発生させる硫酸還元菌の活動が抑制される、(3)スラグに含まれるCaO、Feによって水中の硫化水素が固定される、(4)上記(2),(3)の理由により、スラグ粒子間の間隙水は硫化水素が少なく溶存酸素の多い状態となるためスラグ間隙に生物が着生し、この生物による窒素や燐の固定、有機物の分解、酸素の供給等による水質浄化作用が得られる、などの作用が高度に得られる特徴がある。
本発明の人工水底基盤における製鋼スラグ含有層は、粒径10mm以上の割合が85mass%以上である製鋼スラグを50mass%以上含むことが必要である。粒径の大きい製鋼スラグは固結を生じにくく、且つスラグ粒子間の間隙が大きいため、生物が棲息しやすい空間(スラグ間隙)を提供できる。加えて、上記のように製鋼スラグのスラグ粒子間の間隙水は硫化水素が少なく溶存酸素の多い状態となりやすい。このためスラグ間隙には多数の生物が着生し、この生物により有機物が分解されるので、敷設層(製鋼スラグ含有層)が堆積物で埋まることを防ぐことができる。さらに、上記のような水質浄化作用は、粒径が比較的大きい製鋼スラグの方が長期間持続しやすい。また、粒度の大きい製鋼スラグによる製鋼スラグ含有層によって貧酸素の既存底質(ヘドロ層)の上に足場を設けることにより、生物を既存底質直上の貧酸素域から物理的に退避させることができる効果もある。以上のような作用を得るには、粒径10mm以上の割合が85mass%以上であるような粗粒の製鋼スラグを主体とする(すなわち、同製鋼スラグを50mass%以上含む)敷設層であることが必要である。
ここで、粒径10mm以上の割合とは、JIS
Z 8801に規定する呼び寸法が9.5mmの網ふるいを用いてふるい分けした際の“ふるい上”のスラグの割合を指す。
このような粒度の製鋼スラグを得る方法は任意であるが、粒度調整法としては、破砕、ふるい分け、磨鉱などが利用できる。例えば、溶融スラグを冷却固化後、重機などまたはクラッシングプラントにより適宜な大きさに破砕し、上記網ふるいを用いて整粒する。また、粒径の大きい製鋼スラグを得る方法としては、冷却固化させる時に、溶融スラグをヤードなどに流して、その厚みを厚くするなどの方法を採ることができる。
また、製鋼スラグは、水和処理、炭酸化処理、エージング処理、水和硬化、炭酸化硬化などを経たものを用いてもよい。
製鋼スラグ含有層を構成する他の材料としては、上述した粒径10mm以上の割合が85mass%以上である製鋼スラグ(以下、便宜上「粗粒製鋼スラグ」という)以外の製鋼スラグ、高炉水砕スラグ、浚渫砂、貝殻などが挙げられ、これらの1種以上を上述した粗粒製鋼スラグと混合して用いることができるが、これらのなかでも特に貝殻が好ましい。
粗粒製鋼スラグに対して貝殻を混合することにより、貝殻がスラグ粒子間に介在して製鋼スラグ含有層内の隙間(空間)を広げることにより、生物の棲息領域を拡げることができる。
使用する貝殻に特別な制限はなく、貝殻そのものや軽く破砕したものなどを用いることができる。但し、上記のような作用を得るために粉砕したものは好ましくない。また、貝殻は加熱処理(例えば、有機物除去を目的とした加熱処理)したものでもよい。貝殻としては、例えば、カキ、ホタテ、アサリ、シジミなどが挙げられるが、これらに限定されない。
製鋼スラグ含有層に粗粒製鋼スラグと貝殻の混合物を用いる場合、粗粒製鋼スラグの割合が多過ぎると貝殻を混合することによる上記作用が得られにくく、一方、貝殻の割合が多過ぎると底質改善効果が低下する。このため粗粒製鋼スラグAと貝殻Bの混合割合は、質量比でA/B=90/10〜50/50とすることが好ましい。また、このような粗粒製鋼スラグと貝殻の混合物を用いることによる作用効果を十分に得るためには、製鋼スラグ含有層中での粗粒製鋼スラグと貝殻の合計量が70mass%以上であることが好ましい。また、製鋼スラグ含有層が、上記質量比の粗粒製鋼スラグと貝殻とで構成されることがより好ましい。
製鋼スラグ含有層が水底面に直接設置される場合(すなわち、後述するような人工支持体を用いることなく水底に設置される場合)、その層厚は10cm以上とすることが好ましい。製鋼スラグ含有層の層厚が10cm未満では、底質浄化や生物の着生などの面で、本発明の効果が十分に得られない場合がある。
また、製鋼スラグ含有層の敷設形態は任意であり、一般的な平盤状の敷設形態のほか、凹凸状、山状、うつろ状など、適宜な形態とすることができる。
本発明の人工水底基盤は、複層の底質層で構成することができ、この場合には、最上層を上述した粗粒製鋼スラグを必須とする製鋼スラグ含有層とする。この製鋼スラグ含有層の条件は、さきに述べたとおりである。
最上層以外の底質層は、上記粗粒製鋼スラグ以外の製鋼スラグ、高炉水砕スラグ、浚渫砂、貝殻の中から選ばれる1種以上から構成することができる。
このように底質層を複層構造とすることにより、ある程度の層厚が必要な場合において、下層は安価または大量に入手しやすい材料を活用することができ、より経済的に人工水底基盤を形成できる。また、下層に比較的粒度の小さい材料を用いることで、下方の既存底質(ヘドロ層)からの硫化水素や栄養塩の溶出などを物理的に抑えることができる。特に、下層を粒度が小さい製鋼スラグ(上記粗粒製鋼スラグよりも粒度の小さい製鋼スラグ)で構成することにより、下層については水硬性を利用して製鋼スラグを固化させることで蓋の機能を持たせることができる。
本発明の人工水底基盤は、養殖場の水底面及び/又はその周辺の水底面に設置することにより、上述したような作用により底質浄化がなされる。ここで、養殖場とは魚類用の養殖生け簀、カキ筏のような養殖筏を含む。
魚類の養殖場では、魚に摂餌されなかった残餌と魚から排泄される糞が養殖生け簀下方の水底に沈積し、また、カキなどの貝類の養殖場では、残餌は発生しないものの(貝類は無給餌養殖)、貝類から排泄される糞や貝自体(カキの場合には落ちガキと呼ばれる)が養殖筏下方の水底に落下・沈積するという問題があるが、このような沈積物は、本発明の人工水底基盤上で分解され、且つ基盤に棲息する底生生物による摂餌などによって消費されるため、底質が速やかに浄化される。また、本発明の人工水底基盤によって硫酸還元菌の活性が抑えられることにより、硫化水素の発生も抑制される。
一般に、養殖場で魚介類の残餌や糞などの有機物が沈積する水底領域は、養殖生け簀や養殖筏の直下に限られるものではなく、ある程度の広がりをもち、特に潮流の流れの卓越方向に広がりをもつ。但し、有機物の水底での沈積量は養殖生け簀や養殖筏の直下の水底で最も多く、そこから遠ざかるに従って漸減する。したがって以上の点を考慮して、人工水底基盤は養殖場の水底だけでなくその周辺、すなわち、養殖生け簀や養殖筏の直下の水底を中心として、当該水底領域よりも広い領域に設置することが好ましくい。魚介類の種類にもよるが、一般に養殖生け簀や養殖筏の直径又は1辺の長さは10〜数十m程度であり、そこで養殖される魚介類の残餌や糞などの有機物は、養殖生け簀や養殖筏の直下に全沈積量の40〜70mass%、養殖生け簀や養殖筏の周囲約25〜30m以内に約90mass%程度沈積すると考えられているので、少なくとも養殖生け簀や養殖筏の直下とその周囲約25〜30m以上の領域をカバーするように人工水底基盤を設置することが好ましい。また特に、人工水底基盤の設置幅については、「潮流の流れの卓越方向と直交する方向」での幅に比べて「潮流の流れの卓越方向」での幅が大きくなるように設置することが好ましい。
また、本発明の人工水底基盤は、水底に棲息する有用魚介類、例えば、ナマコ、ウニ、アワビ、サザエの中から選ばれる1種以上の養殖基盤として設置することができる。このうちナマコは、堆積物を直接摂餌するため、製鋼スラグ含有層の堆積物の除去にも役立つ。また、製鋼スラグ含有層の間隙に棲息する生物や、表層に着生する付着珪藻、海藻類が上記有用魚介類のエサになる。また、特に、アワビ、サザエなどは製鋼スラグ含有層が付着基盤となる。
本発明の人工水底基盤は、既存の底質上に形成してもよいし、既存の底質を浚渫して除去した上で設置してもよい。
また、本発明の人工水底基盤は、人工支持体上に設置することもできる。この人工支持体としては、例えば、既存の水底上に構築された人工支持体、水中に吊設された人工支持体などが挙げられる。なお、このように人工支持体上に設置される人工水底基盤については層厚に特別な制限はなく、10cm未満の層厚であってもよい。
図1は、水底2上に棚状の人工支持体3aを構築し、この人工支持体3a上に本発明の人工水底基盤1を設置したものである。また、図2は、筏4(養殖筏でもよい)にワイヤロープなどの吊下げ手段5を介して棚状の人工支持体3bを吊設し、この人工支持体3b上に本発明の人工水底基盤1を設置したものである。
以上述べた人工水底基盤に用いる本発明の造成用資材は、粗粒製鋼スラグを50mass%以上含むものである。また、好ましくは、粗粒製鋼スラグAと貝殻BをA/B=90/10〜50/50の質量比で含み、且つ粗粒製鋼スラグと貝殻の合計量が70mass%以上からなるものである。さらに好ましくは、全量が、上記質量比の粗粒製鋼スラグと貝殻とからなるものである。
本発明の人工水底基盤の設置は、いわゆる浅場の造成や修復を兼ねて行うこともできる。一般に、浅場とは主に海岸に面した水深10〜15m以浅の周年冠水している浅海域のことである。浅場は、海草や海藻類の生育場、魚介類や底生生物の棲息場や餌場となる水域であり、また、それらの生物の活動を通じて海水や底質の浄化が行われる場所でもある。したがって、沿岸海域の環境保全や海藻・魚介類などの有用水産資源の確保という観点から、浅場の存在は非常に重要なものである。
また、本発明の人工水底基盤を設置する水底は、海水域だけでなく、河川、河口、湖沼などの淡水域、汽水域を含む。
上部が開放した20Lの容器に粒径10mm以上の割合が90mass%の製鋼スラグ(脱燐スラグ)を20kg入れ、本発明例の試験体とした。同じく、上部が開放した20Lの容器に粒径10mm以上の割合が90mass%の花崗岩を25kg入れ、比較例の試験体とした。図3(a)は、これら試験体を模式的に示したものである。また、図3(b)に示すような空容器の試験体も用意した。これらの試験体(各2個)を、図4に示すようにカキ養殖筏下の水深20mの水底に設置した。
試験体の設置から2ヶ月経過後、各試験体の一つを引き上げ、目視により観察した。いずれの試験体も堆積物の堆積が認められたが、とくに外観上の有意差は認められなかった。しかし、本発明例の試験体の直上にはカキの生存個体が認められた。一方、比較例の試験体ではカキ殻(死骸)が存在した。
試験体の設置から2ヶ月経過後及び4ヶ月経過後に、図3(a),(b)に示す各採水点から採取した水の硫化水素濃度を測定した。その結果を表1に示すが、本発明例の試験体は、比較例(花崗岩)の試験体に較べて硫化水素の発生が大幅に抑えられていることが判る。
Figure 0004904791
また、試験体の設置から2ヶ月経過後、水底に設置した試験体を回収して内部に棲息している生物の種類、個体数、湿重量を測定した。その結果を表2に示す。なお、容器の外壁に付着していた生物は測定の対象から除外した。
表2によれば、生物の種類、個体数、湿重量ともに本発明例の試験体が最も多いことが判る。
以上の結果から、本発明の人工水底基盤は、養殖場の水底の底質改善にも優れた効果を発揮することが確認できた。
Figure 0004904791
本発明において、人工支持体上に人工支持基盤を設ける場合の一実施形態を示す説明図 本発明において、人工支持体上に人工支持基盤を設ける場合の他の実施形態を示す説明図 実施例で用いた試験体を模式的に示す説明図 実施例における試験体の設置状況を模式的に示す説明図
符号の説明
1 人工水底基盤
2 水底
3a,3b 人工支持体
4 筏
5 吊下げ手段

Claims (9)

  1. 水底面に、人工的に敷設された底質層であって、粒径10mm以上の割合が85mass%以上である製鋼スラグと貝殻とからなり、且つ粒径10mm以上の割合が85mass%以上である製鋼スラグAと貝殻Bの質量比がA/B=90/10〜50/50である製鋼スラグ含有層を形成したことを特徴とする、水棲動物着生・生育用又は養殖場底質浄化用の人工水底基盤。
  2. 水底面に、人工的に敷設された複層の底質層であって、最上層が粒径10mm以上の割合が85mass%以上である製鋼スラグと貝殻とからなり、且つ粒径10mm以上の割合が85mass%以上である製鋼スラグAと貝殻Bの質量比がA/B=90/10〜50/50である製鋼スラグ含有層からなる底質層を形成したことを特徴とする、水棲動物着生・生育用又は養殖場底質浄化用の人工水底基盤。
  3. 最上層以外の底質層が、製鋼スラグ(但し、粒径10mm以上の割合が85mass%以上である製鋼スラグを除く)、高炉水砕スラグ、浚渫砂、貝殻の中から選ばれる1種以上からなることを特徴とする、請求項2に記載の水棲動物着生・生育用又は養殖場底質浄化用の人工水底基盤。
  4. 最上層以外の底質層が、製鋼スラグ(但し、粒径10mm以上の割合が85mass%以上である製鋼スラグを除く)からなることを特徴とする、請求項3に記載の水棲動物着生・生育用又は養殖場底質浄化用の人工水底基盤。
  5. 養殖場の水底面及び/又はその周辺の水底面に設置されることを特徴とする、請求項1〜のいずれかに記載の水棲動物着生・生育用又は養殖場底質浄化用の人工水底基盤。
  6. 養殖生け簀又は養殖筏の下方の水底面に設置されることを特徴とする、請求項5に記載の水棲動物着生・生育用又は養殖場底質浄化用の人工水底基盤。
  7. 水底に棲息する有用魚介類の養殖基盤として設置されることを特徴とする、請求項1〜のいずれかに記載の水棲動物着生・生育用又は養殖場底質浄化用の人工水底基盤。
  8. ナマコ、ウニ、アワビ、サザエの中から選ばれる1種以上の養殖基盤として設置されることを特徴とする、請求項7に記載の水棲動物着生・生育用又は養殖場底質浄化用の人工水底基盤。
  9. 人工支持体上に設置されることを特徴とする、請求項1〜8のいずれかに記載の水棲動物着生・生育用又は養殖場底質浄化用の人工水底基盤。
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