以下、図面を参照しながら本発明の実施形態に係る電気化学セル用包装材料110について説明する。図1は一実施形態のリチウムイオン電池121の斜視図であり、図2は図1中のA−A線断面図である。
リチウムイオン電池121は包装体120内部に電解液を含むリチウムイオン電池本体122を収納して構成される。包装体120はリチウムイオン電池本体122を収納する収納部120aと収納部120aを覆うシート状の蓋部120bにより構成される。
包装体120は収納部120aと蓋部120bが重なる周縁の熱接着部120cが熱接着され、内部が封止されている。このとき、リチウムイオン電池本体122に連結される正極タブ123a及び負極タブ123bは熱接着部120においてタブフィルム(不図示)を介在させて収納部120aと蓋部120bにより挟持されながら外部に延出している。
リチウムイオン電池本体122は、正極活物質及び正極集電体から成る正極と、負極活物質及び負極集電体から成る負極と、正極及び負極間に充填される電解液とを含むセルにより構成される。セルは正極集電体が延出する正極板と負極集電体が延出する負極板を複数積層して構成される。正極板と負極板はセパレータを介して交互に複数積層される。積層された複数の正極集電体、負極集電体は重畳してそれぞれ一枚の正極タブ123a、負極タブ123bに連結している。
図3は収納部120aと蓋部120bを形成する包装材料110の層構成を示す概略断面図であり、包装材料110は保護層111と基材層112とバリア層114と熱接着層116とが順次積層して構成される。基材層112とバリア層114は接着層113を介して接着され、バリア層114と熱接着層116は酸変性ポリオレフィン層115を介して接着されている。バリア層114の両面には化成処理が施され、バリア層114と酸変性ポリオレフィン層115及びバリア層114と接着層113との層間接着強度が高められている。
図2に示すように、収納部120aは矩形状に断裁された包装材料110をプレス成形して作製される。その成形工程は、包装材料110の保護層111側を凹状のメス型成形金型に向けて載置した後、熱接着層116側からオス型の成形金型で所定の成形深さに冷間成形して収容部120aが形成される。そして、収納部120aと蓋部120bは対向する熱接着層116が熱接着している。
基材層112は樹脂フィルムからなり、包装体120に高い耐突き刺し(耐ピンホール)性、絶縁性、作業性等を付与するものであり、エンボス加工する際のプレスに耐え得る展延性を有する必要がある。
基材層112としてはポリエステル、ポリアミド、エポキシ、アクリル、フッ素樹脂、ポリウレタン、珪素樹脂、フェノール、及びこれらの混合物や共重合物等を使用することができる。ポリエステルとしては、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンナフタレート、共重合ポリエステル、ポリカーボネート等が挙げられる。また、ポリアミドとしては、ナイロン6、ナイロン6,6、ナイロン6とナイロン6,6との共重合体、ナイロン6,10、ポリメタキシリレンアジパミド(MXD6)等が挙げられる。延伸ポリアミドフィルムは延伸性に優れる。これにより、成形時の基材層112の樹脂割れによる白化の発生を防ぐことができる。また、延伸ポリエステルフィルムは耐電解液性に優れ、基材層112まで浸透した電解液に対して腐食し難い。これにより、基材層112の腐食を原因とする白化の発生がより防止される。
これらの中でも、好ましくはナイロン、ポリエステル、更に好ましくは2軸延伸ナイロン、2軸延伸ポリエステル、特に好ましくは2軸延伸ポリエステルが挙げられる。2軸延伸処理を行うことにより、樹脂フィルムが配向結晶化して基材層112の耐熱性を向上させることができる。
基材層112は耐ピンホール性および電池の包装体とした時の絶縁性を向上させるために、異なる材質のフィルムを積層化することも可能である。具体的には、ポリエステルとナイロンとを積層させた多層構造や2軸延伸ポリエステルと2軸延伸ナイロンとを積層させた多層構造が挙げられる。基材層112を多層構造にする場合、異なる材質のフィルムは接着剤を介して積層すればよく、使用される接着剤の種類や量等については、後述する接着層113と同様とすることができる。基材層112の厚さは、例えば、10〜50μm、好ましくは15〜30μmが挙げられる。
保護層111は最外層に配され電池用包装材料110の外面に電解液が付着して基材層112が腐食して白化するのを防止する。保護層111は主剤、硬化剤、架橋剤、マット剤を混合した樹脂により形成される。
主剤は保護層111を構成する樹脂の主成分となる樹脂であり、ポリエステル、ポリエーテル等のウレタン、ポリエステルウレタン、エポキシ、アクリル、フェノール、セルロース、ポリアミド、ポリアミドイミド、ポリイミドが使用される。また、これらの樹脂を複数混合してもよい。
硬化剤は主剤と反応して保護層111を構成する樹脂の硬化を開始、促進又は調整する樹脂であり、イソシアネート樹脂が用いられる。イソシアネート樹脂としてトリレンジイソシアネート(TDI)、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、ヘキサメチレンジイソシアナート(HDI)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)を用いることができる。また、これらの樹脂を複数混合してもよい。
架橋剤は保護層111を構成する樹脂のポリマー同士を連結し、保護層111を物理的又は化学的に変化させる樹脂であり、アミンが用いられる。アミンとしてはメラミン、ポリアミノアミド、スピロ環含有グアナミン、ベンゾグアナミン等が使用される。これらのアミンは保護層111を構成する樹脂との相溶性を上げる。なお、後術する製造方法で保護層111を形成する場合に可溶化するための溶剤との混合性を向上させるためにアミンを予めメチル化、ブチル化、メチル化とブチル化の混合物である混合エーテル化した状態で用いることが好ましい。これにより、安定した架橋物ができ保護層111としての性能が向上する。また、低温での反応を促進させるために反応促進剤や均一系触媒、不均一系触媒を添加することがより好ましい。反応促進剤は有機物や無機物からなり、均一系触媒は酸や塩基性触媒や金属錯体などからなり、不均一系触媒は白金やパラジウムや酸化鉄などからなる。
また、架橋剤としてアミンを用いることにより、保護層111の耐電解液性が向上する。これにより、電解液が保護層111を浸透して基材層112を腐食するのを防ぎ、基材層112の腐食を原因とする白化の発生を防止することができる。また、保護層111の耐電解性はプレス成形において基材層112が延伸した領域においても低下し難い。これにより、収納部120aのコーナー部に電解液が付着した場合においても基材層112の腐食による白化を防止することができる。なお、保護層111の耐電解液性とは電解液が保護層111に付着して約1時間室温で放置した後、電解液を拭き取った時に基材層112に白化が発生しない程度の耐電解液性が必要となる。
また、架橋剤としてアミンを含む樹脂により形成された保護層111は耐アルコール性及び耐熱性にも優れる。保護層111の耐アルコール性が向上することにより、エタノール等のアルコールを浸み込ませたウェスで保護層111の表面を拭いても保護層111が変色、変形し難くなる。また、保護層111の耐熱性が向上することにより、電気化学セル用包装材料110の積層工程にかかる熱履歴に対して保護層111が変形、変色し難くなる。なお、電気化学セル用包装材料110の積層工程にかかる熱履歴とは後述するドライラミネート用接着剤を介して基材層112とバリア層114を加圧加熱貼合した後に行う室温約60℃に5日間放置するエージング処理やバリア層114に酸変性ポリオレフィン層115と熱接着層116を積層した後に行う室温190℃に5秒間放置する後加熱処理等が挙げられる。
なお、架橋剤としてベンゾグアナミン又はメラミン又はベンゾグアナミンとメラミンの混合物を用いることにより、耐電解液性、耐アルコール性、耐熱性がより向上する。
マット剤は保護層111の表面に微細な凹凸を形成して電気化学セル用包装材料110の外観がマット調(艶消し調)に形成される。また、微細な凹凸により、保護層111表面の動摩擦係数が低下して滑り性が向上する。これにより、例えば、成形金型を使用して電気化学セル用包装材料110をプレス成形する際、バリア層114の変形に対して基材層112がバリア層114に追随しながら延伸する。したがって、成形時の基材層112にかかる負荷を抑えて樹脂割れによる白化の発生を防ぐことができる。
また、微細な凹凸にインクが入り込むため印刷適性が向上する。なお、保護層111表面に形成される微細な凹凸は保護層111の光沢度を評価するGU値により数値化することができる。つまり、GU値が高い場合、保護層111表面のマット度合い(艶消し度合い)が高く、保護層111表面の凹凸が粗くなる。このため、保護層111表面の滑り性及び印刷適性を考慮するとGU値を10以下にすることが好ましい。また、保護層111のGU値は保護層111を構成する樹脂に添加するマット剤の粒径及び添加量により調整することができる。
マット剤には粒径が0.5nm〜5μmの微粒子が用いられ、形状は球状、繊維状、板状、不定形、バルーン状等が挙げられる。また、これらの形状を組み合わせて添加してもよい。マット剤の材質として金属、金属酸化物、無機物、有機物等が挙げられる。
具体的には、一般名称ではタルク、シリカ、グラファイト、カオリン、モンモリロイド、モンモリロナイト、合成マイカ、ハイドロタルサイト、シリカゲル、ゼオライト、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、酸化亜鉛、酸化マグネシウム、酸化アルミニウム、酸化ネオジウム、酸化アンチモン、酸化チタン、酸化セリウム、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、炭酸カルシウム、ケイ酸カルシウム、炭酸リチウム、安息香酸カルシウム、シュウ酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、アルミナ、カーボンブラック、カーボンナノチューブ類、高融点ナイロン、架橋アクリル、架橋スチレン、架橋ポリエチレン、ベンゾグアナミン、金、アルミニウム、銅、ニッケル、スチレンやポリメタクリル酸メチルなどのアクリルの架橋物、ベンゾグアナミンやメラミンとホルムアルデヒド縮合物からなるアミノ樹脂、四フッ化エチレン樹脂などのフッ素樹脂等が挙げられる。
などが挙げられる。
なお、マット化剤の粒子表面に絶縁処理、高分散性処理等の各種表面処理を施してもよい。マット化剤として価格面や分散性が良好で安定しているため少量でマット化できるシリカ、硫酸バリウム、酸化チタンが特に好ましい。
マット剤の添加量は保護層111を構成する主剤と硬化剤と架橋剤の重量合計を100としたときの重量配合比を0.5〜30%とするのが好ましい。また、マット剤が添加された保護層111は架橋剤としてアミンを含有しているため、マット調に形成された保護層111に対しても耐電解液性、耐アルコール性、耐熱性を有する。これにより、保護層111は電解液の付着、アルコールによる拭き取り、電気化学セル用包装材料110の積層工程における熱履歴に対してマット調の外観が劣化し難く、滑り性の低下が抑えられる。したがって、保護層111表面に油性インクで印字した後、保護層111のマット調を劣化させることなくアルコールで印字を容易に拭き取ることができる。
スリップ剤は保護層111の表面の滑り性を向上させる。スリップ剤としては脂肪酸アマイド、金属石鹸、親水性シリコーン、シリコーンをグラフトしたアクリル、シリコーンをグラフトしたエポキシ、シリコーンをグラフトしたポリエーテル、シリコーンをグラフトしたポリエステル、ブロック型シリコーンアクリル共重合体、ポリグリセリン変性シリコーン、ポリグリセロール変性シリコーン、パラフィン、四フッ化エチレンなどのフッ素樹脂等を使用することができる。スリップ剤は保護層111を構成する樹脂に含有させてもいいし、保護層111の上面に塗布してスリップ膜(不図示)を形成してもよい。なお、上記スリップ剤は水性インク及び油性インクに対して印字適性を有する。また、インクの定着性も良く、印字後に空拭きしてもインクが拭き取れない。
また、保護層111の形成方法は保護層111を構成する樹脂をバーコー卜法、ロールコート法、グラビアコート法、浸漬法、ダイコート等の周知の塗布法を選択して成形すればよいが、ロールコート法が生産性に優れて最も好ましい。また、保護層111を基材層112にコートした後、40℃〜100℃の室温で3〜7日間エージングし、170℃〜250℃で約3秒間、後加熱を施すことが好ましい。これにより、耐電解液性を最大限に発現させるとともに長期間維持することができる。したがって、保護層111の形成には焼付け処理は必要なく、低温のエージングのみ又は低温エージングと後加熱により保護層111を硬化させて形成することができる。このため、保護層111の積層工程における熱履歴により、基材層112が収縮又は膨張したり、熱溶解するのを防ぐことができる。
バリア層114は金属箔からなり、電気化学セル用包装材料110の強度向上の他、電気化学セル内部に水蒸気、酸素、光等が侵入するのを防止する。バリア層114を形成する金属箔としては、具体的には、アルミニウム、ステンレス、チタン等が挙げられる。これらの中でも、アルミニウムが好適に使用される。
また、軟質アルミニウム、例えば、焼きなまし処理済みのアルミニウム(JIS A8021P−O)又は(JIS A8079P−O)等が特に好ましい。これらのアルミニウムは電気化学セル用包装材料110の製造時に発生するしわやピンホールをより防止することができる。また、金属箔の厚さについては、例えば、10〜200μm、好ましくは20〜100μmが用いられる。これにより、バリア層114単体のピンホール及び加工適性(パウチ化、エンボス成形性)を安定化し、かつ耐ピンホール性をもたせることができる。
また、バリア層114は接着の安定化溶解や腐食の防止等のために、少なくとも酸変性ポリオレフィン層115と接する面に化成処理されていることが好ましい。また、バリア層114の両面に化成処理されていることがより好ましい。化成処理とはバリア層114の表面に耐酸性皮膜を形成する処理である。化成処理は、例えば、クロム酸クロメート処理、リン酸クロメート処理、アミノ化フェノール重合体を用いたクロメート処理等が挙げられる。クロム酸クロメート処理には硝酸クロム、フッ化クロム、硫酸クロム、酢酸クロム、蓚酸クロム、重リン酸クロム、クロム酸アセチルアセテート、塩化クロム、硫酸カリウムクロム等のクロム酸化合物を用いる。また、リン酸クロメート処理にはリン酸ナトリウム、リン酸カリウム、リン酸アンモニウム、ポリリン酸等のリン酸化合物を用いる。
アミノ化フェノール重合体を用いたクロメート処理には下記一般式(1)〜(4)で表される繰り返し単位からなるアミノ化フェノール重合体を用いる。
式(1)〜(4)中、Xは水素原子、ヒドロキシル基、アルキル基、ヒドロキシアルキル基、アリル基又はベンジル基を示す。また、R1及びR2はヒドロキシル基、アルキル基、又はヒドロキシアルキル基を示す。R1とR2は同一でもよい。
式(1)〜(4)において、X、R1、R2で示されるアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基等の炭素数1〜4の直鎖又は分枝鎖状アルキル基が挙げられる。
また、X、R1、R2で示されるヒドロキシアルキル基としては、例えば、ヒドロキシメチル基、1−ヒドロキシエチル基、2−ヒドロキシエチル基、1−ヒドロキシプロピル基、2−ヒドロキシプロピル基、3−ヒドロキシプロピル基、1−ヒドロキシブチル基、2−ヒドロキシブチル基、3−ヒドロキシブチル基、4−ヒドロキシブチル基等のヒドロキシ基が1個置換された炭素数1〜4の直鎖又は分枝鎖状アルキル基が挙げられる。
化式(1)〜(4)で表される繰り返し単位からなるアミノ化フェノール重合体の数平均分子量は、例えば、約500〜約100万、好ましくは約1000〜約2万が挙げられる。
また、バリア層114に耐食性を付与する化成処理方法として、リン酸中に金属酸化物や硫酸バリウムの微粒子を分散させたものをコーティングし、150℃以上で焼付け処理を行ってバリア層114の表面に耐食処理層を形成する方法が挙げられる。このとき、金属酸化物には酸化アルミ、酸化チタン、酸化セリウム、酸化スズ等が挙げられる。
また、耐食処理層の上にはカチオン性ポリマーを架橋剤で架橋させた樹脂層を形成してもよい。カチオン性ポリマーとしては、例えば、ポリエチレンイミン、ポリエチレンイミンとカルボン酸を有するポリマーからなるイオン高分子錯体、アクリル主骨格に1級アミンをグラフトさせた1級アミングラフトアクリル樹脂、ポリアリルアミンまたはその誘導体、アミノフェノール等が挙げられる。
これらのカチオン性ポリマーは1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。また、架橋剤としては、例えば、イソシアネート基、グリシジル基、カルボキシル基、及びオキサゾリン基よりなる群から選ばれる少なくとも1種の官能基を有する化合物、シランカップリング剤等が挙げられる。これらの架橋剤は1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。
これらの化成処理は1種の化成処理を単独で行ってもよく、2種以上の化成処理を組み合わせて行ってもよい。更に、これらの化成処理は1種の化合物を単独で使用して行ってもよく、また2種以上の化合物を組み合わせて使用して行ってもよい。これらの中でも、クロム酸クロメート処理が好ましく、クロム酸化合物、リン酸化合物、及びアミノ化フェノール重合体を組み合わせたクロメート処理が更に好ましい。
化成処理においてバリア層114の表面に形成させる耐酸性皮膜の量については、特に制限されないが、例えばクロム酸化合物、リン酸化合物、及びアミノ化フェノール重合体を組み合わせてクロメート処理を行う場合であれば、金属層の表面1m2当たり、クロム酸化合物がクロム換算で約0.5〜約50mg、好ましくは約1.0〜約40mg、リン化合物がリン換算で約0.5〜約50mg、好ましくは約1.0〜約40mg、及びアミノ化フェノール重合体が約1〜約200mg、好ましくは約5.0〜150mgの割合で含有されていることが望ましい。
化成処理は、耐酸性皮膜の形成に使用する化合物を含む溶液を、バーコート法、ロールコート法、グラビアコート法、浸漬法等によって、金属層の表面に塗布した後に、バリア層114の温度が70〜200℃程度になるように加熱することにより行われる。また、バリア層114に化成処理を施す前に、予めバリア層114をアルカリ浸漬法、電解洗浄法、酸洗浄法、電解酸洗浄法等による脱脂処理を施してもよい。このように脱脂処理を行うことにより、バリア層114の表面の化成処理を一層効率的に行うことが可能になる。
熱接着層116は包装材料110の最内層に配され、熱によって溶融して対向する包装材料110を相互に融着する熱接着性樹脂からなる。また、熱接着層116と正極タブ123a又は負極タブ123bとの間にタブフィルムを介在させるか否かで樹脂種が異なる。タブフィルムを介在させる場合には、プロピレン系樹脂の単体ないし混合物などからなるフィルムを用いればよい。また、タブフィルムを介在させない場合、不飽和カルボン酸でグラフト変性した酸変性オレフィン樹脂からなるフィルムを用いればよい。
また、熱接着層116としてはポリプロピレンが好適に用いられるが、線状低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレンの単層または多層、または、線状低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレンのブレンド樹脂からなる単層または多層からなるフィルムとしても使用できる。
前記各タイプのポリプロピレン、すなわち、ランダムプロピレン、ホモプロピレン、ブロックプロピレンおよび、線状低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレンには、低結晶性のエチレンーブテン共重合体、低結晶性のプロピレンーブテン共重合体、エチレンとブテンとプロピレンの3成分共重合体からなるターポリマー、シリカ、ゼオライト、アクリル樹脂ビーズ等のアンチブロッキング剤(AB剤)、脂肪酸アマイド系のスリップ剤等を添加してもよい。
酸変性ポリオレフィン層115はバリア層114と熱接着層116とを安定して接着する樹脂層であり、酸変性ポリプロピレンが好適に用いられる。また、酸変性ポリオレフィン層115は熱接着層116に用いる樹脂種により適宜選択して用いる必要がある。このため、酸変性ポリプロピレン以外の酸変性ポリオレフィン樹脂を用いる場合、不飽和カルボン酸でグラフト変性したポリオレフィン樹脂、エチレンないしプロピレンとアクリル酸、または、メタクリル酸との共重合体、あるいは、金属架橋ポリオレフィン樹脂等があり、必要に応じてブテン成分、エチレン−プロピレン−ブテン共重合体、非晶質のエチレン−プロピレン共重合体、プロピレン−α−オレフィン共重合体等を5%以上添加してもよい。
また、酸変性ポリプロピレンを用いる場合、
(1)ビガット軟化点115℃以上、融点150℃以上のホモタイプ
(2)ビガット軟化点105℃以上、融点130℃以上のエチレンープロピレンとの共重合体(ランダム共重合タイプ)
(3)融点110℃以上である不飽和カルボン酸を用い酸変性重合した単体又はブレンド物等を用いることができる。
接着層113は、基材層112とバリア層114を強固に接着する樹脂層である。これらの層間接着はドライラミネート法、押出ラミネート法、共押出ラミネート法、熱ラミネート法等の方法を用いることができる。また、接着層113を設けずに、基材層112を構成する樹脂をバリア層114の上面に溶融押出しして基材層112を積層してもよい。
ドライラミネート法により貼り合わせを行う際には、ポリエステル系、ポリエチレンイミン系、ポリエーテル系、シアノアクリレート系、ウレタン系、有機チタン系、ポリエーテルウレタン系、エポキシ系、ポリエステルウレタン系、イミド系、イソシアネート系、ポリオレフィン系、シリコーン系の各種接着剤を用いることができる。
接着層113は、基材層112とバリア層114を強固に接着する樹脂層である。接着層113に用いられる接着機構は特に制限されず、化学反応型、溶剤揮発型、熱溶融型、熱圧型、UV硬化型、熱架橋型等のいずれであってもよい。
接着剤成分としてポリエステル系樹脂、ポリエーテル系接着剤、ポリウレタン系接着剤、エポキシ系樹脂、フェノール樹脂系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ポリ酢酸ビニル系樹脂、セルロース系接着剤、(メタ)アクリル系樹脂、ポリイミド系樹脂、アミノ樹脂、ゴム、シリコーン系樹脂が挙げられる。
ポリエステル系樹脂としてはポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンナフタレート、ポリエチレンイソフタレート、ポリカーボネート、共重合ポリエステル等が挙げられる。
ポリアミド系樹脂としてはナイロン6、ナイロン66、ナイロン12、共重合ポリアミド等が挙げられる。ポリオレフィン系樹脂としてはポリオレフィン、カルボン酸変性ポリオレフィン、金属変性ポリオレフィン等が挙げられる。アミノ樹脂としては尿素樹脂、メラミン樹脂等が挙げられる。ゴムとしてはクロロプレンゴム、ニトリルゴム、スチレン−ブタジエンゴム等が挙げられる。
これらの接着剤成分は1種単独で使用してもよい。また、2種以上を組み合わせて使用してもよい。2種以上の接着剤成分の組み合わせ態様は特に制限されないが、例えば、ポリアミドとカルボン酸変性ポリオレフィンとの混合樹脂、ポリアミドと金属変性ポリオレフィンとの混合樹脂、ポリアミドとポリエステル、ポリエステルとカルボン酸変性ポリオレフィンとの混合樹脂、ポリエステルと金属変性ポリオレフィンとの混合樹脂等が挙げられる。これらの中でもポリウレタン系2液硬化型接着剤が特に好ましい。また、ポリアミド、ポリエステル、又はこれらとカルボン酸変性ポリオレフィンとのブレンド樹脂も挙げられる。
接着層113の厚みは2〜50μmが好ましい。また、接着層113は、一般的な方法でグラビアコート法、ロールコート法、溶融押出し法等で形成できる。また積層方法としては一般的なドライラミネーション法、サーマルラミネーション法、共押出しラミネーション法、サンドラミネーション法及びこれらの組合せで積層できる。さらに更に、熱ロール接触式、熱風式、近又は遠赤外線式等の加熱処理に供してもよい。このような加熱処理の条件としては、例えば150〜210℃で1〜10秒が挙げられる。
本実施形態によると、基材層112の外表面に主剤と硬化剤とアミンを含む架橋剤とから成る樹脂で構成される保護層111を設けることにより、保護層111は耐電解液性が優れ、電解液の付着に対して電解液が保護層111を浸透して基材層112を腐食するのを防ぐ。これにより、基材層112の腐食を原因とする白化の発生が防止される。また、保護層111の耐電解性はプレス成形において基材層112が延伸した領域においても低下し難い。これにより、収納部120aのコーナー部に電解液が付着した場合においても基材層112の腐食による白化を防止することができる。また、架橋剤としてアミンを含む樹脂により形成された保護層111は耐アルコール性及び耐熱性にも優れる。耐アルコール性を有することにより、保護層111表面はアルコールによる拭き取りに対して保護層111表面の変形、変色が発生し難い。また、耐熱性を有することにより、電気化学セル用包装材料110の積層工程にかかる熱履歴に対して保護層111の変形、変色が発生し難い。
また、架橋剤に含まれるアミンをベンゾグアナミン又はメラミン又はベンゾグアナミンとメラミンの混合物とすることにより、保護層111の耐電解液性、耐アルコール性、耐熱性がより向上する。
また、保護層111にマット剤が含まれることにより、保護層111の表面に微細な凹凸が形成されて電気化学セル用包装材料110の外観がマット調(艶消し調)に形成される。また、微細な凹凸により、保護層111表面の動摩擦係数が低下して滑り性が向上する。これにより、例えば、成形金型を使用して電気化学セル用包装材料110をプレス成形する際、バリア層114の変形に対して基材層112がバリア層114に追随しながら延伸する。したがって、成形時の基材層112にかかる負荷を抑えて樹脂割れによる白化の発生を防ぐことができる。また、微細な凹凸にインクが入り込むため保護層111表面の印刷適性が向上する。これにより、例えば、保護層111の表面に水性インクで印字を行うことができる。
また、マット剤が添加された保護層111には架橋剤としてアミンが含まれており、マット調に形成された保護層111は耐電解液性、耐アルコール性、耐熱性を有する。これにより、保護層111は電解液の付着、アルコールによる拭き取り、電気化学セル用包装材料110の積層工程における熱履歴に対してマット調の外観が劣化し難く、滑り性の低下が抑えられる。したがって、保護層111表面に油性インクやアルコール性インクで印字した後、保護層111のマット調を劣化させることなくアルコールで印字を拭き取ることができる。
また、保護層111を構成する樹脂にスリップ剤が含有されることにより、保護層112表面の動摩擦係数がさらに低下して成形時の樹脂割れを原因とする白化をいっそう防止することができる。また、保護層111の上面にスリップ剤で形成されるスリップ膜を形成しても同様の効果が得られる。
また、基材層112を延伸ポリアミドフィルムで構成することにより、延伸ポリアミドフィルムは延伸性に優れるため、成形時の基材層112の樹脂割れによる白化の発生を防止することができる。また、基材層112を延伸ポリエステルフィルムで構成することにより、延伸ポリエチレンテルフィルムは耐電解液性に優れ、基材層112まで浸透した電解液に対して腐食し難い。これにより、基材層112の腐食を原因とする白化の発生がより防止される。
なお、本実施形態において、上記各層間に異なる層を介在させてもよい。また、リチウムイオン電池121について述べているが、リチウムイオン電池本体122以外の電気化学セル本体を包装材料110からなる包装体120で包装してリチウムイオン電池121以外の電気セルを作製してもよい。
例えば、電気化学セルとはリチウムイオン電池以外にニッケル水素電池、ニッケルカドミウム電池、リチウムメタル一次電池あるいは二次電池、リチウムポリマー電池等の化学電池及び電気二重層キャパシタ、キャパシタ、電解コンデンサが含まれる。ここで、電気化学セル本体とは包装材料封入前の正極活物質及び正極集電体から成る正極と、負極活物質及び負極集電体から成る負極と、正極及び負極間に充填される電解質とを含むセル(蓄電部)と、セル内の正極及び負極に連結される電極端子等、電気エネルギーを発生させる電気デバイス要素全てを含む。
次に本発明の作用及び効果について、実施例及び比較例を用いて具体的に説明する。この実験では、電気化学セル用包装材料110を構成する基材層112の上面に保護層111を形成し、光沢度、成形(延伸)時の樹脂割れ(微細なクラックによる白化)による外観不良の有無、電解液を滴下した際の基材層112の白化の有無、保護層111の滑り性、耐熱性、印刷適性、耐アルコール性について評価を行った。
[電気化学セル用包装材のサンプル作製]
実施例1に係る電気化学セル用包装材料110はバリア層114であるアルミニウム(厚さ40μm)の両面に化成処理を施し、一方の化成処理面に、基材層112である二軸延伸ナイロンフィルム(厚さ25μm)を接着層113となるポリエステル系の主剤とイソシア系硬化剤の2液型ウレタン接着剤(厚さ4μm)を介してドライラミネート法により加圧加熱貼合した後、60℃で24時間のエージング処理を施した。なお、延伸ナイロンフィルムの上面には主剤と硬化剤と架橋剤とを含む混合樹脂を塗布して保護層111が予め形成されている。
次に、他方の化成処理面にマレイン酸変性ポリプロピレン(厚さ25μm)とランダムポリプロピレン(厚さ25μm)を溶融共押出し法により積層して酸変性ポリオレフィン層115と熱接着層116を形成した後、190℃で5秒間の後加熱を行った。
なお、バリア層114であるアルミニウムの化成処理は基材層112及び熱接着層116を積層する前にフェノール樹脂、フッ化クロム化合物、リン酸からなる処理液をロールコート法により塗布し、皮膜温度が180℃以上となる条件において焼付けて処理した。なお、クロムの塗布量は10mg/m2(乾燥重量)とした。
また、保護層111を構成する混合樹脂に主剤としてアクリルを用い、架橋剤としてメチル化したベンゾグアナミン、硬化剤としてイソシアネート樹脂を用いた。なお、イソシアネート樹脂はトリレンジイソシアネート(以下、TDIと略す)、ヘキサメチレンジイソシアナート(以下、HDIと略す)で構成した。なお、実施例1に係る保護層111にマット剤及びスリップ剤は添加しなかった。また、保護層111を構成する混合樹脂の重量配合比を主剤が90、架橋剤が10、硬化剤が2.5とした。また、硬化剤の重量配合比をTDIが2、HDIが0.5とした。
また、保護層111は上記混合樹脂をアルミニウムに貼合する前の二軸延伸ナイロンフィルムの上面に厚み3μmとなるよう塗工した後、60℃で5日間エージング処理を行って硬化させて形成した。また、実施例1に係る電気化学セル用包装材料110は上記各層を全て積層した後、190℃で5秒間の後加熱処理を行い、バリア層114と熱接着層116の層間接着強度を向上させた。
実施例2に係る電気化学セル用包装材料110は実施例1に係る電気化学セル用包装材料110と保護層111を除いて同一の層構成をとる。実施例2に係る電気化学セル用包装材料110は保護層111を構成する混合樹脂に主剤としてアクリルを用い、架橋剤としてメチル化したベンゾグアナミン、硬化剤としてイソシアネート樹脂を用いた。なお、イソシアネート樹脂はTDIとイソホロンジイソシアネート(以下、IPDIと略す)構成した。また、保護層111を構成する混合樹脂にマット剤を添加し、スリップ剤は添加しなかった。マット剤には粒径が0.1μmのシリカを用いた。また、保護層111を構成する混合樹脂の重量配合比を主剤が80、架橋剤が20、硬化剤が2.5とした。また、主剤と架橋剤と硬化剤を100としたときマット剤の重量配合比を10とした。また、硬化剤の重量配合比をTDIが2、IPDIが0.5とした。
また、保護層111は上記混合樹脂をアルミニウムに貼合する前の二軸延伸ナイロンフィルムの上面に厚み3μmとなるよう塗工した後、60℃で5日間エージング処理を行って硬化させて形成した。また、実施例2に係る電気化学セル用包装材料110は積層後の後加熱処理を行わなかった。
実施例3に係る電気化学セル用包装材料110は実施例1に係る電気化学セル用包装材料110と保護層111を除いて同一の層構成をとる。実施例3に係る電気化学セル用包装材料110は保護層111を構成する混合樹脂に主剤としてアクリルを用い、架橋剤としてメチル化したベンゾグアナミン、硬化剤としてイソシアネート樹脂を用いた。なお、イソシアネート樹脂はTDI、HDI、IPDIで構成した。また、保護層111を構成する混合樹脂にマット剤は添加せず、スリップ剤を添加した。スリップ剤にはステアリン酸カルシウムを用いた。また、保護層111を構成する混合樹脂の重量配合比を主剤が85、架橋剤が15、硬化剤が3とした。また、主剤と架橋剤と硬化剤を100としたときスリップ剤の重量配合比を0.5とした。また、硬化剤の重量配合比をTDIが2、HDIが0.5、IPDIが0.5とした。
実施例4に係る電気化学セル用包装材料110は実施例1に係る電気化学セル用包装材料110と保護層111を除いて同一の層構成をとる。実施例4に係る電気化学セル用包装材料110は保護層111を構成する混合樹脂に主剤としてアクリルを用い、架橋剤としてメチル化したベンゾグアナミン、硬化剤としてイソシアネート樹脂を用いた。なお、イソシアネート樹脂はTDIとHDIとIPDIで構成した。また、保護層111を構成する混合樹脂にマット剤を添加し、スリップ剤は添加しなかった。なお、スリップ剤は保護層111の上面にコートしてスリップ膜を形成した。スリップ剤にはステアリン酸カルシウムを用いた。マット剤には粒径が0.1μmのシリカと粒径が1.0μmのシリカを用いた。このとき、粒径が0.1μmのシリカと粒径が1μmのシリカとの混合比は4:1とした。また、保護層111を構成する混合樹脂の重量配合比を主剤が90、架橋剤が10、硬化剤が3とした。また、主剤と架橋剤と硬化剤を100としたときマット剤の重量配合比を8とした。また、硬化剤の重量配合比をTDIが2、HDIが0.5、IPDIが0.5とした。
実施例5に係る電気化学セル用包装材料110は実施例1に係る電気化学セル用包装材料110と保護層111を除いて同一の層構成をとる。実施例5に係る電気化学セル用包装材料110は保護層111を構成する混合樹脂に主剤としてアクリルを用い、架橋剤としてメチル化したベンゾグナミン、硬化剤としてイソシアネート樹脂を用いた。なお、イソシアネート樹脂はTDIとHDIで構成した。また、保護層111を構成する混合樹脂にマット剤とスリップ剤を添加した。マット剤には粒径が0.1μmのシリカを用いた。スリップ剤には親水性シリコーングラフトアクリルを用いた。また、保護層111を構成する混合樹脂の重量配合比を主剤が90、架橋剤が10、硬化剤が2.5とした。また、主剤と架橋剤と硬化剤を100としたときマット剤の重量配合比を5とした。また、主剤と架橋剤と硬化剤とマット剤の合計重量を100としたときスリップ剤の重量配合比を0.5とした。また、硬化剤の重量配合比をTDIが2、HDIが0.5とした。
また、保護層111は上記混合樹脂をアルミニウムに貼合する前の二軸延伸ナイロンフィルムの上面に厚み3μmとなるよう塗工した後、60℃で5日間エージング処理を行って硬化させて形成した。また、実施例5に係る電気化学セル用包装材料110は上記各層を全て積層した後、190℃で5秒間の後加熱処理を行い、バリア層114と熱接着層116の層間接着強度を向上させた。
実施例6に係る電気化学セル用包装材料110は実施例1に係る電気化学セル用包装材料110と保護層111を除いて同一の層構成をとる。実施例6に係る電気化学セル用包装材料110は保護層111を構成する混合樹脂に主剤としてポリエステルウレタンとアクリルを用い、架橋剤として混合エーテル化したベンゾグナミン、硬化剤としてイソシアネート樹脂を用いた。なお、イソシアネート樹脂はTDIとHDIで構成した。また、保護層111を構成する混合樹脂にマット剤とスリップ剤を添加した。マット剤には粒径が0.1μmのシリカを用いた。スリップ剤にはビスオレイン酸アマイドを用いた。また、保護層111を構成する混合樹脂の重量配合比を主剤が95、架橋剤が5、硬化剤が2.5とした。また、主剤と架橋剤と硬化剤の合計重量を100としたときマット剤の重量配合比を10とした。また、主剤と架橋剤と硬化剤とマット剤の合計重量を100としたときスリップ剤の重量配合比を5とした。主剤の重量配合比をポリエステルウレタンが60、アクリルが35とした。また、硬化剤の重量配合比をTDIが2、HDIが0.5とした。
また、保護層111は上記混合樹脂をアルミニウムに貼合する前の二軸延伸ナイロンフィルムの上面に厚み3μmとなるよう塗工した後、60℃で5日間エージング処理を行って硬化させて形成した。また、実施例6に係る電気化学セル用包装材料110は上記各層を全て積層した後、190℃で5秒間の後加熱処理を行い、バリア層114と熱接着層116の層間接着強度を向上させた。
実施例7に係る電気化学セル用包装材料110は実施例1に係る電気化学セル用包装材料110と保護層111を除いて同一の層構成をとる。実施例7に係る電気化学セル用包装材料110は保護層111を構成する混合樹脂に主剤としてポリエステルウレタンとアクリルを用い、架橋剤としてメチル化したベンゾグアナミン、硬化剤としてイソシアネート樹脂を用いた。なお、イソシアネート樹脂はジフェニルメタンジイソシアネート(以下、MDIと略す)単独で構成した。また、保護層111を構成する混合樹脂にマット剤とスリップ剤を添加した。マット剤には粒径が1μmのシリカを用いた。スリップ剤には親水性シリコーングラフトエステルを用いた。また、保護層111を構成する混合樹脂の重量配合比を主剤が90、架橋剤が10、硬化剤が3とした。また、主剤と架橋剤と硬化剤の合計重量を100としたときマット剤の重量配合比を5とした。また、主剤と架橋剤と硬化剤とマット剤の合計重量を100としたときスリップ剤の重量配合比を2とした。主剤の重量配合比をポリエステルウレタンが40、アクリルが50とした。
また、実施例7に係る電気化学セル用包装材料110は上記各層を全て積層した後、二軸延伸ナイロンフィルムの上面に保護層111を構成する上記混合樹脂を厚み3μmとなるよう塗工した後、60℃で5日間エージング処理を行って硬化させて保護層111を形成した。その後、190℃で5秒間の後加熱処理を行い、バリア層114と熱接着層116の層間接着強度を向上させた。
実施例8に係る電気化学セル用包装材料110は実施例1に係る電気化学セル用包装材料110と保護層111を除いて同一の層構成をとる。実施例8に係る電気化学セル用包装材料110は保護層を構成する混合樹脂に主剤としてアクリルとエポキシを用い、架橋剤にはメチル化したベンゾグアナミン、硬化剤としてイソシアネート樹脂を用いた。なお、イソシアネート樹脂はIPDIとTDIで構成した。また、保護層111を構成する混合樹脂にマット剤とスリップ剤を添加した。マット剤には粒径が0.1μmのシリカと粒径が1.0μmのシリカを用いた。このとき、粒径が0.1μmのシリカと粒径が1μmのシリカとの混合比は4:1とした。スリップ剤にはステアリン酸カルシウムを用いた。また、保護層111を構成する混合樹脂の重量配合比を主剤が90、架橋剤が10、硬化剤が3とした。また、主剤と架橋剤と硬化剤の合計重量を100としたときマット剤の重量配合比を8とした。また、主剤と架橋剤と硬化剤とマット剤の合計重量を100としたときスリップ剤の重量配合比を2とした。主剤の重量配合比をアクリルが70、エポキシが20とした。また、硬化剤の重量配合比をIPDIが2、TDIが1とした。
また、保護層111は上記混合樹脂をアルミニウムに貼合する前の二軸延伸ナイロンフィルムの上面に厚み3μmとなるよう塗工した後、60℃で5日間エージング処理を行って硬化させて形成した。また、実施例8に係る電気化学セル用包装材料110は上記各層を全て積層した後、190℃で5秒間の後加熱処理を行い、バリア層114と熱接着層116の層間接着強度を向上させた。
実施例9に係る電気化学セル用包装材料110は実施例1に係る電気化学セル用包装材料110と保護層111を除いて同一の層構成をとる。実施例9に係る電気化学セル用包装材料110は保護層を構成する混合樹脂に主剤としてエポキシとポリエーテルポリウレタンを用い、架橋剤にはメチル化したメラミン、硬化剤としてイソシアネート樹脂を用いた。なお、イソシアネート樹脂はTDIを単独で構成した。また、保護層111を構成する混合樹脂にマット剤とスリップ剤を添加した。マット剤には粒径が0.02μmのシリカを用いた。スリップ剤にはパラフィンを用いた。また、保護層111を構成する混合樹脂の重量配合比を主剤が80、架橋剤が20、硬化剤が3とした。また、主剤と架橋剤と硬化剤の合計重量を100としたときマット剤の重量配合比を20とした。また、主剤と架橋剤と硬化剤とマット剤の合計重量を100としたときスリップ剤の重量配合比を5とした。主剤の重量配合比をエポキシが60、ポリエーテルポリウレタンが20とした。
また、保護層111は上記混合樹脂をアルミニウムに貼合する前の二軸延伸ナイロンフィルムの上面に厚み3μmとなるよう塗工した後、60℃で5日間エージング処理を行って硬化させて形成した。また、実施例9に係る電気化学セル用包装材料110は上記各層を全て積層した後、190℃で5秒間の後加熱処理を行い、バリア層114と熱接着層116の層間接着強度を向上させた。
実施例10に係る電気化学セル用包装材料110は実施例1に係る電気化学セル用包装材料110と保護層111を除いて同一の層構成をとる。実施例10に係る電気化学セル用包装材料110は保護層を構成する混合樹脂に主剤としてアクリルとポリエステルエーテルウレタンを用い、架橋剤にはアミノアミド、硬化剤としてイソシアネート樹脂を用いた。なお、イソシアネート樹脂はHDIを単独で構成した。また、保護層111を構成する混合樹脂にマット剤とスリップ剤を添加した。マット剤には粒径が0.1μmの硫酸バリウムを用いた。スリップ剤にはポリグリセロールシリコーンを用いた。また、保護層111を構成する混合樹脂の重量配合比を主剤が90、架橋剤が10、硬化剤が3とした。また、主剤と架橋剤と硬化剤の合計重量を100としたときマット剤の重量配合比を20とした。また、主剤と架橋剤と硬化剤とマット剤の合計重量を100としたときスリップ剤の重量配合比を5とした。主剤の重量配合比をアクリルが50、ポリエステルエーテルウレタンが40とした。
また、保護層111は上記混合樹脂をアルミニウムに貼合する前の二軸延伸ナイロンフィルムの上面に厚み3μmとなるよう塗工した後、60℃で5日間エージング処理を行って硬化させて形成した。また、実施例10に係る電気化学セル用包装材料110は上記各層を全て積層した後、190℃で5秒間の後加熱処理を行い、バリア層114と熱接着層116の層間接着強度を向上させた。
実施例11に係る電気化学セル用包装材料は実施例1に係る電気化学セル用包装材料110と保護層111を除いて同一の層構成をとる。実施例11に係る電気化学セル用包装材料は構成する保護層を構成する混合樹脂に主剤としてエポキシを用い、架橋剤としてベンゾグアナミンを用いた。なお、硬化剤は添加しなかった。た。また、保護層を構成する混合樹脂にマット剤とスリップ剤を添加した。マット剤には粒径が0.1μmのシリカを用いた。スリップ剤にはビスオレイン酸アマイドを用いた。また、保護層111を構成する混合樹脂の重量配合比を主剤が80、架橋剤が20とした。また、主剤と架橋剤の合計重量を100としたときマット剤の重量配合比を10とした。また、主剤と架橋剤とマット剤の合計重量を100としたときスリップ剤の重量配合比を5とした。
また、実施例11に係る電気化学セル用包装材料110は上記各層を全て積層した後、二軸延伸ナイロンフィルムの上面に保護層111を構成する上記混合樹脂を厚み3μmとなるよう塗工した後、200℃で30秒間の熱処理を行って硬化させて保護層111を形成した。
[比較例1]
実施例1に係る電気化学セル用包装材料において保護層111を設けないものを比較例1に係る電気化学セル用包装材料とした。
[比較例2]
比較例2に係る電気化学セル用包装材料は実施例1に係る電気化学セル用包装材料110と保護層111を除いて同一の層構成をとる。比較例2に係る電気化学セル用包装材料は構成する保護層を構成する混合樹脂に主剤としてポリエステルウレタンを用い、硬化剤としてTDIを用いた。なお、架橋剤は添加しなかった。また、保護層を構成する混合樹脂にマット剤とスリップ剤を添加した。マット剤には粒径が0.1μmのシリカを用いた。スリップ剤にはビスステアリン酸アマイドを用いた。また、保護層を構成する混合樹脂の重量配合比を主剤が100、硬化剤が3とした。また、主剤と硬化剤の合計重量を100としたときマット剤の重量配合比を10とした。また、主剤と硬化剤とマット剤の合計重量を100としたときスリップ剤の重量配合比を5とした。
また、保護層111は上記混合樹脂をアルミニウムに貼合する前の二軸延伸ナイロンフィルムの上面に厚み3μmとなるよう塗工した後、60℃で5日間エージング処理を行って硬化させて形成した。また、比較例2に係る電気化学セル用包装材料110は上記各層を全て積層した後、190℃で5秒間の後加熱処理を行い、バリア層114と熱接着層116の層間接着強度を向上させた。
[比較例3]
比較例3に係る電気化学セル用包装材料は実施例1に係る電気化学セル用包装材料110と保護層111を除いて同一の層構成をとる。比較例3に係る電気化学セル用包装材料は構成する保護層を構成する混合樹脂に主剤としてアクリルを用いた。なお、架橋剤及び硬化剤は添加しなかった。また、保護層を構成する混合樹脂にマット剤とスリップ剤を添加した。マット剤には粒径が0.1μmのシリカを用いた。スリップ剤にはシリコーンオイルを用いた。また、主剤を100としたときマット剤の重量配合比を10とした。また、主剤とマット剤の合計重量を100としたときスリップ剤の重量配合比を1とした。
また、保護層111は上記混合樹脂をアルミニウムに貼合する前の二軸延伸ナイロンフィルムの上面に厚み3μmとなるよう塗工した後、60℃で5日間エージング処理を行って硬化させて形成した。また、比較例3に係る電気化学セル用包装材料110は上記各層を全て積層した後、190℃で5秒間の後加熱処理を行い、バリア層114と熱接着層116の層間接着強度を向上させた。
[光沢度の評価]
光沢度の評価は実施例1〜11及び比較例1〜3に係る包装材料の基材層112側の表面の光沢(ツヤ)の度合い示すGU値を光沢計(コニカミノルタ株式会社製)により測定した。この結果を表1に示す。
[成形性の評価]
耐電解液性の評価は実施例1〜11及び比較例1〜3に係る包装材料を80mm×120mmに裁断した後、深さが6mmで35mm×50mmの口径を有する成型金型(メス型)とこれに対応した成型金型(オス型)にて、0.1MPaで6.0mmの深さに冷間成型した。次に、包装材料の基材層側の表面において成型された底面とコーナー部に成形時の樹脂割れを原因とする微細なクラックによる白化が発生しているか否かを目視により観察した。この結果を表1に示す。
[耐電解液性の評価]
耐電解液性の評価は実施例1〜11及び比較例1〜3に係る包装材料を80mm×120mmに裁断した後、深さが6mmで35mm×50mmの口径を有する成型金型(メス型)とこれに対応した成型金型(オス型)にて、0.1MPaで6.0mmの深さに冷間成型した。次に、包装材料の基材層側の表面において成型された底面とコーナー部に電解液(エチレンカーボネート、ジエチルカーボネート、ジメチルカーボネートを1:1:1の容積比で混合した混合液であって1MのLiPF6を含む)を0.1g滴下して室温25℃で1時間放置した後、ウェスで電解液を拭き取って包装材料の基材層に腐食による白化が発生しているか否かを目視により観察した。この結果を表1に示す。
表1に示すように、実施例2、4〜10に係る包装材料は光沢度が6.0以下であり保護層表面がマット調に形成された。実施例1〜11に係る包装材料はプレス成形時の樹脂割れを原因とする微細なクラックによる白化は観察されなかった(○)。また、電解液の滴下において基材層の腐食による白化は観察されなかった(○)。一方、比較例2、3に係る包装材料はプレス成形後にコーナー部において基材層表面に形成されたマット調が薄れた(×)。また、比較例1〜3に係る包装材料は電解液の滴下において底面及びコーナー部に基材層の腐食による白化が観察された(×)。
[滑り性の評価]
滑り性の評価は実施例1〜11及び比較例1〜3に係る包装材料表面の静摩擦係数を摩擦計(新東化学株式会社製)により荷重100g、面積60mm×60mm、引っ張り速度100mm/secで測定した。この結果を表2に示す。
[耐熱性の評価]
耐熱性の評価は実施例1〜11及び比較例1〜3に係る包装材料を3枚ずつそれぞれ準備して基材層と熱接着層が対向するように基材層を上に向けて3枚の包装材料を重ね、1kg/cm2の荷重を一番上に配される包装材料の基材層側に加えた状態で温度60℃の室温で5日間保管してエージング処理した。次に、重ねられた3枚の中の真ん中に位置する1枚を抜き取り、無負荷状態で1分間、190℃で後加熱処理を施した。このとき、エージング処理及び後加熱処理の後に、包装材料の基材層を目視により観察するとともに包装材料表面の静摩擦係数を摩擦計(新東化学株式会社製)により荷重100g、面積60mm×60mm、引っ張り速度100mm/secで測定した。この結果を表2に示す。
表2に示すように、実施例1〜10に係る包装材料は静摩擦係数が1.0以下であり、比較例1、2、3に係る包装材料と比較して低かった。また、比較例1と比較例3に係る包装材料は硬化剤、架橋剤が添加されていないためエージング処理中に保護層と熱接着層との間でブロッキングが発生した。このため、比較例1と比較例3に係る包装材料は保護層の外観が悪化するとともにスリップ性が悪化した(×)。また、比較例2に係る包装材料は硬化剤としてイソシアが添加されているためエージングによるブロッキングは発生しなかったが(○)、後加熱処理により外観がシワになりスリップ性が悪化した(×)。
実施例1〜11に係る包装材料はエージング処理及び後加熱処理により保護層表面のマット調が薄れることはなかった(○)。また、エージング処理及び後加熱処理の後の静摩擦係数の上昇はなかった。一方、比較例2、比較例3に係る包装材料はエージング処理後に表面のマット調が薄くなった(×)。さらに、静摩擦係数の上昇が観察された。
[印刷適性の評価]
印字性の評価は実施例1〜11及び比較例1〜3に係る包装材料の基材層側の面に市販のアルコール性マジック(ペン先の径が2mm)と油性マジック(ペン先の径が2mm)を用いて長さ5cmの直線を引いた直後にインクが基材層表面ではじかれているか否かを目視により観察した。次に5分間、室温(25℃)で放置した後にウェスでインクを1回擦って直線を目視により観察した。この結果を表3に示す。
[耐アルコール性の評価]
耐アルコール性の評価は実施例1〜11及び比較例1〜3に係る包装材料の基材層表面をエタノールを浸み込ませたウェスで擦った後、目視により観察した。なお、拭き取り作業は99.99%のエタノールを浸み込ませたウェスを用い、室温25℃で50mm×50mmの範囲を荷重200gで包装材料を10回擦って行った。この結果を表3に示す。
表3に示すように、実施例1〜11に係る包装材料はアルコール性インク及び油性インクははじかれていなかった(○)。一方。比較例3に係る包装材料はアルコール性インク及び油性インクをはじいた(×)。また、実施例1〜10に係る包装材料はエタノールを浸み込ませたウェスで擦った後も保護層表面の劣化は観察されなかった(○)。一方、比較例2に係る包装材料はウェスで擦った後、外観の一部において保護層表面のマット調が薄れた(×)。また、比較例3に係る包装材料の外観の一部は保護層層表面にべたつきが発生した(×)。