JP6018896B2 - 導電性高分子の積層体 - Google Patents
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Description
基材層と一般的な導電性高分子層を備える積層体において、一般的な導電性高分子層(ポリアニリン)は大気安定性が低い。具体的には、大気中では、時間の経過に伴って導電性が低下し、表面抵抗が大きくなる。
これに対し、特許文献1にはナフタレンジオール等を添加することにより大気安定性を付与することが開示されている。しかしながら、さらなる大気安定性が求められていた。
本発明によれば、以下の積層体等が提供される。
1.基材と、導電性高分子を含む第一の層と、アクリル酸エステル重合体、メタクリル酸エステル重合体、又は、主鎖にエステル結合とウレタン結合を繰り返し単位として有するポリエステルウレタン樹脂を含む第二の層と、を、この順に積層して有する積層体。
2.前記第一の層の導電性高分子が、置換又は無置換のポリアニリン複合体である、1に記載の積層体。
3.前記ポリアニリン複合体のポリアニリンが、無置換のポリアニリンである、2に記載の積層体。
4.前記ポリアニリン複合体がドーパントとしてジ−2−エチルヘキシルスルホコハク酸イオンを含む、2又は3に記載の積層体。
5.前記基材の厚さが2μm以上である、1〜4のいずれかに記載の積層体。
6.前記基材がポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムである、1〜5のいずれかに記載の積層体。
7.前記第二の層の厚さが10μm以下である、1〜6のいずれかに記載の積層体。
8.前記アクリル酸エステル重合体、又はメタクリル酸エステル重合体が下記式(A1)で表される重合体である、1〜7のいずれかに記載の積層体。
R’は、置換もしくは無置換の直鎖状脂肪族炭化水素基、置換もしくは無置換の分岐状脂肪族炭化水素基、置換もしくは無置換の環状脂肪族炭化水素基、又は置換もしくは無置換の芳香族炭化水素基である。nは重合度である。)
9.前記ポリエステルウレタン樹脂が芳香族ポリエステルポリウレタン樹脂である、1〜8のいずれかに記載の積層体。
10.前記第一の層が、前記導電性高分子を溶媒に溶解した塗工液から形成された層である、1〜9のいずれかに記載の積層体。
11.基材に、導電性高分子を溶媒に溶解した塗工液を塗布して導電性高分子を含む第一の層を形成する工程と、アクリル酸エステル重合体、メタクリル酸エステル重合体、又は、主鎖にエステル結合とウレタン結合を繰り返し単位として有するポリエステルウレタン樹脂を溶媒に溶解した塗工液を塗布して、アクリル酸エステル重合体、メタクリル酸エステル重合体、又は、主鎖にエステル結合とウレタン結合を繰り返し単位として有するポリエステルウレタン樹脂を含む第二の層を形成する工程と、を含む積層体の製造方法。
第一の層である導電性高分子を含む層上に、オーバーコート層として所定のアクリル樹脂層又はポリエステルウレタン樹脂層を形成することにより、積層体の表面抵抗値の大気安定性が向上する。
以下、本発明の構成部材について説明する。
基材は特に限定されず、金属、無機素材(セラミックス、ガラス等)、又は樹脂であってもよい。また、金属を樹脂で完全に覆った基材や、無機系素材と樹脂との複合材(例えば、FRP、ガラスエポキシ複合材)等であってもよい。樹脂の種類としては、ポリカーボネート系、アクリル系、ナイロン系、ポリイミド系、ポリエステル系、スチレン系、フェノール系等が挙げられる。また、耐熱性が要求される場合には、シンジオタクチックポリスチレン(SPS)、ポリイミド(PI)、ポリエチレンナフタレート(PEN)等が挙げられる。
基材として、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムが好ましい。
基材の可撓性、印刷時の寸法安定性、及びフィルムの入手性の観点から、基材の厚さは2μm以上であることが好ましい。例えば、10μm以上、20μm以上、50μm以上である。上限は特に限定されないが、例えば100mm以下、10mm以下、1mm以下である。
第一の層が含む導電性高分子(ポリマー)としては、π共役ポリマーがドーパントによってドープされているπ共役ポリマー複合体が好ましい。具体的には、置換又は無置換のポリアニリンがドーパントによってドープされているポリアニリン複合体、置換又は無置換のポリピロールがドーパントによってドープされているポリピロール複合体、及び、置換又は無置換のポリチオフェンがドーパントによってドープされているポリチオフェン複合体が挙げられる。なかでも、置換又は無置換のポリアニリンがドーパントによってドープされているポリアニリン複合体が好ましい。
分子量と分子量分布は、ゲルパーミェションクロマトグラフィ(GPC)によりポリスチレン換算で測定する。
ポリアニリンは、汎用性及び経済性の観点から無置換のポリアニリンが好ましい。
塩素原子を含まない酸の存在下で得られたポリアニリンは、ポリアニリン複合体の塩素含有量をより低くすることができる。
ポリアニリン複合体の塩素含有量が0.6重量%超の場合、ポリアニリン複合体と接触する金属部分が腐食するおそれがある。
上記塩素含有量は、燃焼−イオンクロマト法によって測定する。
尚、本発明において、ドーパントが特定の酸であると表現する場合、及びドーパントが特定の塩であると表現する場合は、いずれも特定の酸又は特定の塩から生じる特定の酸イオンが、上述したπ共役ポリマーにドープするものとする。
式(I)のMは、水素原子、有機遊離基又は無機遊離基である。
上記有機遊離基としては、例えば、ピリジニウム基、イミダゾリウム基、アニリニウム基が挙げられる。また、上記無機遊離基としては、例えば、リチウム、ナトリウム、カリウム、セシウム、アンモニウム、カルシウム、マグネシウム、鉄が挙げられる。
式(I)のXは、アニオン基であり、例えば−SO3 −基、−PO3 2−基、−PO4(OH)−基、−OPO3 2−基、−OPO2(OH)−基、−COO−基が挙げられ、好ましくは−SO3 −基である。
上記炭化水素基は、鎖状若しくは環状の飽和脂肪族炭化水素基、鎖状若しくは環状の不飽和脂肪族炭化水素基、又は芳香族炭化水素基である。
環状の飽和脂肪族炭化水素基としては、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基等のシクロアルキル基が挙げられる。環状の飽和脂肪族炭化水素基は、複数の環状の飽和脂肪族炭化水素基が縮合していてもよい。例えば、ノルボルニル基、アダマンチル基、縮合したアダマンチル基が挙げられる。
式(I)のnは1以上の整数であり、式(I)のmは、Mの価数/Xの価数である。
上記エステル結合を2以上含有する化合物は、スルホフタール酸エステル、又は下記式(II)で表される化合物がより好ましい。
R4、R5及びR6が炭化水素基である場合の炭化水素基としては、炭素数1〜24の直鎖若しくは分岐状のアルキル基、芳香環を含むアリール基、アルキルアリール基等が挙げられる。
R9の炭化水素基としては、R4、R5及びR6の場合と同様である。
R13及びR14において、R15が炭化水素基である場合の炭化水素基としては、上記R10と同様である。また、R13及びR14において、R16及びR17が炭化水素基である場合の炭化水素基としては、上記R4、R5及びR6と同様である。
rは、1〜10であることが好ましい。
R13及びR14の炭化水素基としては、R7及びR8と同様であり、ブチル基、ヘキシル基、2−エチルヘキシル基、デシル基が好ましい。
尚、ドープ率は(ポリアニリンにドープしているドーパントのモル数)/(ポリアニリンのモノマーユニットのモル数)で定義される。例えば無置換ポリアニリンとドーパントを含むポリアニリン複合体のドープ率が0.5であることは、ポリアニリンのモノマーユニット分子2個に対し、ドーパントが1個ドープしていることを意味する。
0.42≦S5/N5≦0.60 (5)
(式中、S5はポリアニリン複合体に含まれる硫黄原子のモル数の合計であり、N5はポリアニリン複合体に含まれる窒素原子のモル数の合計である。
尚、上記窒素原子及び硫黄原子のモル数は、例えば有機元素分析法により測定した値である。)
ポリアニリン複合体がリンを含む場合、リンの含有量は例えば10重量ppm以上5000重量ppm以下である。またリンの含有量は、例えば2000重量ppm以下、500重量ppm以下、250重量ppm以下である。
上記リンの含有量は、ICP発光分光分析法で測定することができる。
また、ポリアニリン複合体は、不純物として第12族元素(例えば亜鉛)を含まないことが好ましい。
また、「2つの液相を有する溶液」は、片方の液相が連続相であり、他方の液相が分散相である状態も含む。例えば「高極性溶媒の相」が連続相であり「低極性溶媒の相」が分散相である状態、及び「低極性溶媒の相」が連続相であり「高極性溶媒の相」が分散相である状態が含まれる。
上記ポリアニリン複合体の製造方法に用いる高極性溶媒としては、水が好ましく、低極性溶媒としては、例えばトルエン、キシレン等の芳香族炭化水素が好ましい。
プロトン供与体の使用量が当該範囲より多い場合、重合終了後に例えば「高極性溶剤の相」と「低極性溶剤の相」を分離することができないおそれがある。
これら酸化剤は単独で使用しても、2種以上を併用してもよい。
重合温度は通常−5〜60℃で、好ましくは−5〜40℃である。また、重合温度は重合反応の途中に変えてもよい。重合温度が当該範囲であることで、副反応を回避することができる。
プロトン供与体及び乳化剤をトルエンに溶解した溶液を、窒素等の不活性雰囲気の気流下においたセパラブルフラスコに入れ、さらにこの溶液に、置換又は無置換のアニリンを加える。その後、不純物として塩素を含まないリン酸を溶液に添加し、溶液温度を冷却する。
得られた複合体溶液に含まれる若干の不溶物を除去し、ポリアニリン複合体のトルエン溶液を回収する。この溶液をエバポレーターに移し、加温及び減圧することにより、揮発分を蒸発留去し、ポリアニリン複合体が得られる。
フェノール性化合物は、フェノール性水酸基を有する化合物であれば特に限定されない。フェノール性水酸基を有する化合物とは、フェノール性水酸基を1つ有する化合物、フェノール性水酸基を複数有する化合物、及びフェノール性水酸基を1つ又は複数有する繰り返し単位から構成される高分子化合物である。
Rは、炭素数1〜20のアルキル基、アルケニル基、シクロアルキル基、アリール基、アルキルアリール基又はアリールアルキル基である。)
Rは、それぞれ炭素数1〜20のアルキル基、アルケニル基、アルキルチオ基、炭素数3〜10のシクロアルキル基、炭素数6〜20のアリール基、アルキルアリール基又はアリールアルキル基である。)
式(B)で表わされるフェノール性化合物の具体例としては、ヒドロキシナフタレンが挙げられる。
Rは、それぞれ炭素数1〜20のアルキル基、アルケニル基、アルキルチオ基、炭素数3〜10のシクロアルキル基、炭素数6〜20のアリール基、アルキルアリール基又はアリールアルキル基である。)
式(C)で表わされる化合物の具体例としては、o−,m−若しくはp−クレゾール、o−,m−若しくはp−エチルフェノール、o−,m−若しくはp−プロピルフェノール(例えば4−イソプロピルフェノール)、o−,m−若しくはp−ブチルフェノール、o−,m−若しくはp−ペンチルフェノール(例えば、4−tert−ペンチルフェノール)が挙げられる。
アルケニル基としては、上述したアルキル基の分子内に不飽和結合を有する基が挙げられる。
シクロアルキル基としては、シクロペンタン、シクロヘキサン等が挙げられる。
アリール基としては、フェニル、ナフチル等が挙げられる。
アルキルアリール基、及びアリールアルキル基としては、上述したアルキル基とアリール基を組み合わせて得られる基等が挙げられる。
また、式(D)で表されるフェノール性化合物の具体例としては、1,6ナフタレンジオール、2,6ナフタレンジオール、2,7ナフタレンジオールが挙げられる。
フェノール性化合物の含有量が少なすぎる場合、電気伝導率の改善効果が得られないおそれがある。一方、フェノール性化合物の含有量が多すぎる場合、膜質が悪くなるおそれがある。また、揮発除去する際に多大な熱や時間等の労力を必要としコスト増となる。
代表的なものとしては、例えば、ポリスチレンスルホン酸、パラトルエンスルホン酸、メタンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、アントラキノンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、ナフタレンスルホン酸、スルホサリチル酸、ドデシルベンゼンスルホン酸、アリルスルホン酸等のスルホン酸類、過塩素酸、塩素、臭素等のハロゲン類、ルイス酸、プロトン酸等がある。これらは、酸形態であってよいし、塩形態にあることもできる。モノマーに対する溶解性の観点から好ましいものは、過塩素酸テトラブチルアンモニウム、過塩素酸テトラエチルアンモニウム、テトラフルオロホウ酸テトラブチルアンモニウム、トリフルオロメタンスルホン酸テトラブチルアンモニウム、トリフルオロスルホンイミドテトラブチルアンモニウム、ドデシルベンゼンスルホン酸、パラトルエンスルホン酸等である。
また、有機溶剤は、水溶性有機溶剤でも、実質的に水に混和しない有機溶剤(水不混和性有機溶剤)でもよい。
上記混合有機溶剤の水不混和性有機溶剤としては、低極性有機溶剤が使用でき、当該低極性有機溶剤は、トルエンやクロロホルムが好ましい。また、混合有機溶剤の水溶性有機溶剤としては、高極性有機溶剤が使用でき、例えば、メタノール,エタノール,イソプロピルアルコール,2−メトキシエタノール,2−エトキシエタノール,アセトン,メチルエチルケトン,メチルイソブチルケトン,テトラヒドロフラン又はジエチルエーテルが好ましい。
複合体の含有量が多すぎると、溶液状態が保持できなくなり、層を形成する際の取り扱いが困難になり、層の均一性が損なわれ、ひいては電気特性や機械的強度、透明性の低下を生じるおそれがある。一方、複合体の含有量が少なすぎると、後述する方法により成膜したとき、非常に薄い膜しか製造できず、均一な導電性膜の製造が難しくなるおそれがある。
上記耐熱安定化剤とは、酸性物質又は酸性物質の塩であり、酸性物質は有機酸(有機化合物の酸)、無機酸(無機化合物の酸)のいずれでもよい。また、導電性ポリマー層は、複数の耐熱安定化剤を含んでいてもよい。
上記アルキルスルホン酸としては、例えば、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、ジ−2−エチルヘキシルスルホコハク酸が挙げられる。ここでのアルキル基は、好ましくは炭素数が1〜18の直鎖又は分岐のアルキル基である。
上記芳香族スルホン酸としては、例えば、ベンゼン環を有するスルホン酸、ナフタレン骨格を有するスルホン酸、アントラセン骨格を有するスルホン酸、置換又は無置換のベンゼンスルホン酸、置換又は無置換のナフタレンスルホン酸及び置換又は無置換のアントラセンスルホン酸が挙げられ、好ましくはナフタレンスルホン酸である。具体例としては、ナフタレンスルホン酸、ドデシルベンゼンスルホン酸、アントラキノンスルホン酸が挙げられる。
ここで置換基は、例えば、アルキル基、アルコキシ基、ヒドロキシ基、ニトロ基、カルボキシ基、アシル基からなる群から選択される置換基であり、1以上置換していてもよい。
上記ポリスルホン酸は、高分子鎖の主鎖又は側鎖に複数のスルホン酸基が置換したスルホン酸である。例えば、ポリスチレンスルホン酸が挙げられる。
上記アルキルカルボン酸としては、例えばウンデシレン酸、シクロヘキサンカルボン酸、2−エチルヘキサン酸が挙げられる。ここでアルキル基は好ましくは炭素数が1〜18の直鎖又は分岐のアルキル基である。
上記置換若しくは無置換の芳香族カルボン酸としては、例えば、置換又は無置換のベンゼンカルボン酸及びナフタレンカルボン酸が挙げられる。ここで置換基は、例えば、スルホン酸基、アルキル基、アルコキシ基、ヒドロキシ基、ニトロ基、アシル基からなる群から選択される置換基であり、1以上置換していてもよい。具体例としては、サリチル酸、安息香酸、ナフトエ酸、トリメシン酸が挙げられる。
上記アルキルリン酸又はアルキルホスホン酸としては、例え、ドデシルリン酸、リン酸水素ビス(2−エチルヘキシル)が挙げられる。ここでアルキル基は好ましくは炭素数が1〜18の直鎖又は分岐のアルキル基である。
上記芳香族リン酸及び芳香族ホスホン酸としては、置換又は無置換のベンゼンスルホン酸又はホスホン酸、及びナフタレンスルホン酸又はホスホン酸等が挙げられる。ここで置換基は、例えば、アルキル基、アルコキシ基、ヒドロキシ基、ニトロ基、カルボキシ基、アシル基からなる群から選択される置換基であり、1以上置換していてもよい。例えば、フェニルホスホン酸が挙げられる。
塗工液は、耐熱安定化剤である酸性物質及び/又は酸性物質の塩を2つ以上含んでもよい。具体的には、塗工液は、異なる複数の酸性物質及び/又は異なる複数の酸性物質の塩を含んでいてもよい。
塗工液が耐熱安定化剤として酸性物質及び前記酸性物質の塩を含む場合には、酸性物質及び酸性物質の塩のうち少なくとも1つがプロトン供与体と同一又は異なるスルホン酸又はスルホン酸の塩であることが好ましい。
0.01≦S2/N2≦0.5 (12)
0.01≦S3/N3≦0.5 (13)
0.01≦S4/N4≦0.5 (14)
(ここで、S2は塗工液に含まれている全ての酸性物質の硫黄原子のモル数の合計であり、N2は塗工液に含まれている全てのポリアニリン複合体の窒素原子のモル数の合計を意味し、S3は塗工液に含まれている全ての酸性物質の塩の硫黄原子のモル数の合計であり、N3は塗工液に含まれている全てのポリアニリン複合体の窒素原子のモル数の合計を意味し、S4は塗工液に含まれている全ての酸性物質及び酸性物質の塩の硫黄原子のモル数の合計であり、N4は塗工液に含まれている全てのポリアニリン複合体の窒素原子のモル数の合計を意味する。)
0.36≦S1/N1≦1.15 (11)
(ここで、S1は塗工液に含まれる硫黄原子のモル数であり、N1は塗工液に含まれる窒素原子のモル数を意味する。)
塗工液が酸性物質の塩のみを含む場合、当該酸性物質の塩の酸性度が5.0以下であることが好ましい。酸性度の下限については、上記酸性物質と同様である。
塗工液が酸性物質及び酸性物質の塩の両方を含む場合、当該酸性物質の酸性度が5.0以下及び酸性度が5.0以下の酸性物質の塩のうち、少なくとも1つを満たすことが好ましい。酸性度の下限については、上記と同様である。
具体的には、「TURBOMOLE Version 6.1」(COSMO logic社製)を用いて、基底関数にTZVPを用いて構造を最適化し、この構造を用いてCOSMO−RS法計算を「COSMO therm Version C2.1 Release 01.10」(COSMO logic社製)により行う。
ここで、「COSMO therm Version C2.1 Release 01.10」に25℃の水溶媒中との条件と、分子の化学式と、脱プロトンした分子の化学式と、を入力することで、pKaを算出することができる。
他の樹脂は、例えば、バインダー基材、可塑剤、マトリックス基材として添加される。
無機材料の具体例としては、例えば、シリカ(二酸化ケイ素)、チタニア(二酸化チタン)、アルミナ(酸化アルミニウム)、Sn含有In2O3(ITO)、Zn含有In2O3、In2O3の共置換化合物(4価元素及び2価元素が3価のInに置換した酸化物)、Sb含有SnO2(ATO)、ZnO、Al含有ZnO(AZO)、Ga含有ZnO(GZO)等が挙げられる。
可塑剤の具体例としては、例えば、フタル酸エステル類やリン酸エステル類が挙げられる。有機導電材料としては、カーボンブラック、カーボンナノチューブのような炭素材料、あるいは、本発明で得られるポリアニリン以外の、導電性ポリマー等が挙げられる。
第一の層は、通常、塗工液を塗布した後、乾燥して成膜する。
第一の層の厚さは、0.3〜5μmが好ましい。
第二の層は、アクリル酸エステル重合体、メタクリル酸エステル重合体、又は、主鎖にエステル結合とウレタン結合を繰り返し単位として有するポリエステルウレタン樹脂を含む。第二の層として、これらの樹脂層を形成することで、時間の経過に伴う導電性の低下を大幅に防ぐことができる。また、わずかに導電性を向上させることもできる。これは、第二の層に使用したアクリル樹脂又はポリエステルウレタン樹脂が第一の層の導電性高分子の結晶性を向上させる効果があるためと考えられる。
R’は、置換もしくは無置換の直鎖状脂肪族炭化水素基、置換もしくは無置換の分岐状脂肪族炭化水素基、置換もしくは無置換の環状脂肪族炭化水素基、又は置換もしくは無置換の芳香族炭化水素基である。
置換又は無置換の直鎖状脂肪族炭化水素基としては、炭素数1〜40のアルキル基が好ましく、具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、オクチル基、デシル基、ドデシル基、ステアリル基、メトキシエチル基、エトキシエチル基、フェノキシエチル基が好ましい。
分岐状脂肪族炭化水素基としては、炭素数3〜40が好ましく、具体的には、イソプロピル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、2−エチルヘキシル基、3,7−ジメチルオクチル基が好ましい。
環状脂肪族炭化水素基としては、炭素数3〜40が好ましく、具体的には、シクロプロピル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基が好ましい。
芳香族炭化水素基としては、炭素数6〜40が好ましく、具体的には、フェニル基、ナフチル基、ピレニル基、フェナントリル基、ビフェニル基が好ましい。
アクリル酸エステル重合体の具体例としては、アクリル酸メチル、メタクリル酸メチルが挙げられる。市販品としては、M2000(綜研化学株式会社製)、アルマテックスL1044(三井化学株式会社製)、アロンS−1017(東亜合成化学株式会社製)が好ましい。
製造出発物質である多塩基酸としては、1分子中に2個以上のカルボキシル基を有する多価カルボン酸が挙げられる。多価カルボン酸としては、例えば、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカンジカルボン酸等の脂肪族二塩基酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、トリメリット酸、ピロメリット酸等の芳香族多塩基酸、及び、ブタントリカルボン酸、トリカルバリル酸、クエン酸等の脂肪族多塩基酸が挙げられる。本発明においては、多塩基酸として脂肪族二塩基酸のみが用いられてもよいが、脂肪族二塩基酸を主成分とし、これに小割合の芳香族多塩基酸あるいは脂肪族多塩基酸を配合したものが用いられてもよい。またこれら二塩基酸あるいは多塩基酸は、1種単独で用いられてもよいし、2種以上が併用されてもよい。
R1〜R3が示す二価の基としては、置換もしくは無置換の炭素数1〜40のアルキレン、置換もしくは無置換の炭素数3〜40のシクロアルキレン、置換もしくは無置換の炭素数5〜40の芳香環基が挙げられる。
アルキレンとしては、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ペンテン基、ヘキシレン基、オクチレン基、デシレン基、ドデシレン基が好ましい。
シクロアルキレンとしては、シクロプロピレン基、シクロペンテン基、シクロヘキシレン基が好ましい。
芳香環基としては、ベンゼン環、ナフタレン環、ピレン環、フェナントレン環が好ましい。
市販品の芳香族ポリエステルウレタン樹脂としては、バイロンUR1400、バイロンUR1700、バイロンUR4800、バイロンUR8200(いずれも、東洋紡績(株)社製)が好ましい。
第二の層の厚さは10μm以下であることが好ましく、5μm以下であることがより好ましく、2μm以下であることがさらに好ましい。例えば、1μm以下である。これにより、曲げが容易となる。下限は特に無いが、例えば0.01μm以上である。
尚、本発明の積層体は、第二の層上に、必要に応じて、粘着層等の層を形成してもよい。
[ポリアニリン複合体の製造]
エーロゾルOT(ジ−2−エチルヘキシルスルホコハク酸ナトリウム)37.8gをトルエン600mLに溶解した溶液を、窒素気流下においた6Lのセパラブルフラスコに入れ、さらにこの溶液に、22.2gのアニリンを加えた。その後、1Mリン酸1800mLを溶液に添加し、トルエンと水の2つの液相を有する溶液の温度を5℃に冷却した。
得られたポリアニリン複合体0.25gを、トルエン4.75g、イソプロピルアルコール0.25gに溶解し、その溶液に1M水酸化ナトリウム水溶液を10mL加えて15分間攪拌を行った。その後、全量をNo.4のろ紙にて吸引ろ過し、残渣をトルエン10mLで3回、イオン交換水10mLで3回、メタノール10mLで3回洗浄を行った。得られた固形分を減圧乾燥することで、分子量測定用ポリアニリンを作製した。
GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)の測定は下記装置を用い、注入量を100μL、UV検出波長を270nmとした。また、ポリスチレン換算で行った。ポリアニリンの重量平均分子量は57000(PS換算分子量)であった。
カラム:Shodex KF−806M(2本)、KF−803(1本)
溶媒:N−メチル−2−ピロリドン/0.01M LiBr
カラム温度:60℃
流速:0.4ml/分
試料濃度:0.02質量/体積%
製造例1で得られたポリアニリン複合体0.40gをトルエン6.57gとメチルイソブチルケトン(MIBK)1.39gの混合溶媒に溶解させた溶液を調整した。ここに4−メトキシフェノール1.60gとナフタレンスルホン酸0.04gを添加し、30℃で30分間、撹拌混合した。
図1に示すように、並列する4本の帯状にパターニングされたITO電極2を有するガラス基板1上に、製造例1で作製した塗液を使用してスピンコート(2000rpm)した後、80℃のホットプレート上で5分間乾燥させることにより、第一の層である導電性高分子層を形成した。
次いで、アクリル樹脂(綜研化学社製、M2000)をトルエンに溶解させ、樹脂固形分を10wt%とした塗液を、上記第一の層上にスピンコート(300rpm)し、80℃のホットプレート上で5分間乾燥させることにより第二の層を形成し、積層体を作製した。
尚、第二の層の層厚は1μmであった。
積層体において、第一の層及び第二の層を窒素雰囲気下で削り取り、図2に示すようにITO電極2に直交する帯状(第一の層及び第二の層の積層体3)とした。積層体を室温空気中に保管し、表面に露出したITO電極の端子を用いて、ロレスターGP(三菱化学社製;四端子法による抵抗率計)を用いて4端子法で膜の抵抗を測定し、初期からの抵抗値の経時変化を評価した。
その結果、初期の抵抗値(R0)は1718Ω、7日後の抵抗値(R7)は1574Ω、14日後の抵抗値(R14)は1606Ωであった。
第二の層の使用樹脂、及び第一の層の抵抗値の7日変化率[(R7)/(R0)]及び14日変化率[(R14)/(R0)]を表1に示す。
第二の層の樹脂として、表1に記載のものを使用した他は、実施例1と同様にして積層体を作製し、評価した。結果を表1に示す。
・アクリル系樹脂
M2000(Mw=45万〜70万)、綜研化学(株)社製
ACRIT 0404EA−P、大成ファインケミカル(株)社製
アルマテックスL1044、三井化学(株)社製
アロンS−1017、東亜合成化学(株)社製
・芳香族ポリエステルウレタン樹脂
バイロンUR1400(Mn=40000)、東洋紡績(株)社製
バイロンUR1700(Mn=16000)、東洋紡績(株)社製
バイロンUR4800(Mn=25000)、東洋紡績(株)社製
バイロンUR8200(Mn=25000)、東洋紡績(株)社製
・スチレン−アクリル共重合体
ACRIT 7QX−095、大成ファインケミカル(株)社製
・ポリウレタン
KL−422、荒川化学工業(株)社製
・ポリウレタンシリカハイブリット
ユリアーノU301、荒川化学工業(株)社製
・ポリビニルブチラール
BL−1(計算分子量=19000)、積水化学工業(株)社製
BL−S(計算分子量=27000)、積水化学工業(株)社製
・ポリビニルアセトアセタール
KS−10(計算分子量=17000)、積水化学工業(株)社製
製造例1で作製した塗液をバーコーター#10を用いて厚み100μmのポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(東洋紡績株式会社製、コスモシャインA4300)基材上に塗布し、80℃のホットプレート上で10分間乾燥させることにより、第一層である導電性高分子層を形成した(膜厚は約1μmであった)。
次いで、アクリル樹脂(綜研化学社製、M2000)をトルエンに溶解させ、樹脂固形分10wt%とした塗液を、上記第一の層上にバーコーター#10を用いて塗布し、80℃のホットプレート上で10分間乾燥させることにより第二の層を形成し、積層体を作製した。第二の層の膜厚は約1μmであった。
得られた積層体は、容易に曲げることが可能であった。
第二の層の樹脂として、実施例9のアクリル樹脂(綜研化学社製、M2000)に替えて、実施例2のものを使用した他は、実施例9と同様にして積層体を作製した。第二の層の膜厚は約1μmであった。得られた積層体は、容易に曲げることが可能であった。
第二の層の樹脂として、実施例9のアクリル樹脂(綜研化学社製、M2000)に替えて、実施例3のものを使用した他は、実施例9と同様にして積層体を作製した。第二の層の膜厚は約1μmであった。得られた積層体は、容易に曲げることが可能であった。
第二の層の樹脂として、実施例9のアクリル樹脂(綜研化学社製、M2000)に替えて、実施例4のものを使用した他は、実施例9と同様にして積層体を作製した。第二の層の膜厚は約1μmであった。得られた積層体は、容易に曲げることが可能であった。
第二の層の樹脂として、実施例9のアクリル樹脂(綜研化学社製、M2000)に替えて、実施例5のものを使用した他は、実施例9と同様にして積層体を作製した。第二の層の膜厚は約1μmであった。得られた積層体は、容易に曲げることが可能であった。
第二の層の樹脂として、実施例9のアクリル樹脂(綜研化学社製、M2000)に替えて、実施例6のものを使用した他は、実施例9と同様にして積層体を作製した。第二の層の膜厚は約1μmであった。得られた積層体は、容易に曲げることが可能であった。
第二の層の樹脂として、実施例9のアクリル樹脂(綜研化学社製、M2000)に替えて、実施例7のものを使用した他は、実施例9と同様にして積層体を作製した。第二の層の膜厚は約1μmであった。得られた積層体は、容易に曲げることが可能であった。
第二の層の樹脂として、実施例9のアクリル樹脂(綜研化学社製、M2000)に替えて、実施例8のものを使用した他は、実施例9と同様にして積層体を作製した。第二の層の膜厚は約1μmであった。得られた積層体は、容易に曲げることが可能であった。
2 ITO電極
3 第一の層と第二の層の積層体
Claims (9)
- 基材と、
ジ−2−エチルヘキシルスルホコハク酸イオンによってドープされている置換又は無置換のポリアニリン複合体である導電性高分子を含む第一の層と、
アクリル酸エステル重合体、メタクリル酸エステル重合体、又は、主鎖にエステル結合とウレタン結合を繰り返し単位として有するポリエステルウレタン樹脂を含む第二の層と、を、この順に積層して有する積層体(但し、透明基材上に、樹脂、近赤外線吸収色素を含有する組成物からなる近赤外線吸収層を積層してなる近赤外線吸収フィルムにおいて、前記透明基材と近赤外線吸収層積層の間に、π電子共役系導電性高分子を含有する導電層を有することを特徴とする近赤外線吸収フィルムは除く)。 - 前記ポリアニリン複合体のポリアニリンが、無置換のポリアニリンである、請求項1に記載の積層体。
- 前記基材の厚さが2μm以上である、請求項1又は2に記載の積層体。
- 前記基材がポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムである、請求項1〜3のいずれかに記載の積層体。
- 前記第二の層の厚さが10μm以下である、請求項1〜4のいずれかに記載の積層体。
- 前記ポリエステルウレタン樹脂が芳香族ポリエステルポリウレタン樹脂である、請求項1〜6のいずれかに記載の積層体。
- 前記第一の層が、前記導電性高分子を溶媒に溶解した塗工液から形成された層である、請求項1〜7のいずれかに記載の積層体。
- 基材に、ジ−2−エチルヘキシルスルホコハク酸イオンによってドープされている置換又は無置換のポリアニリン複合体である導電性高分子を溶媒に溶解した塗工液を塗布して導電性高分子を含む第一の層を形成する工程と、
アクリル酸エステル重合体、メタクリル酸エステル重合体、又は、主鎖にエステル結合とウレタン結合を繰り返し単位として有するポリエステルウレタン樹脂を溶媒に溶解した塗工液を塗布して、アクリル酸エステル重合体、メタクリル酸エステル重合体、又は、主鎖にエステル結合とウレタン結合を繰り返し単位として有するポリエステルウレタン樹脂を含む第二の層を形成する工程と、を含む請求項1に記載の積層体の製造方法。
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