JP6017996B2 - 補正方法及び補正回路 - Google Patents
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Description
上述の問題は、動軸のみならず、従軸にセンサーを取り付けた場合にも同様に生じ得る。
鉄道車両の車輪、車軸又は輪軸(以下包括して「車軸」という)の回転に応じた信号を出力するセンサー(例えば、図3のセンサー10)の検出信号(例えば、図3の原速度信号V0)を補正する補正方法であって、
前記検出信号が示す速度の変化率が、1)前記検出信号が前記鉄道車両の営業走行に係る粘着走行時の回転速度成分のみの場合の変化率の変動範囲を少なくとも含む所与の変化率範囲内の場合には補正を施さず、2)当該変化率範囲を超える場合に当該変化率範囲の限界変化率となる速度を示す信号に補正する補正ステップ、
を含む補正方法である。
鉄道車両の車軸の回転に応じた信号を出力するセンサー(例えば、図3のセンサー10)の検出信号(例えば、図3の原速度信号V0)を補正する補正回路であって、
前記検出信号が示す速度の変化率が、1)前記検出信号が前記鉄道車両の営業走行に係る粘着走行時の回転速度成分のみの場合の変化率の変動範囲を少なくとも含む所与の変化率範囲内の場合には補正を施さず、2)当該変化率範囲を超える場合に当該変化率範囲の限界変化率となる速度を示す信号に補正する補正手段(例えば、図3の速度変化率リミッタ21)、
を備えた補正回路(例えば、図3の補正回路20)を構成することとしてもよい。
前記変化率範囲を設定する範囲設定ステップ(例えば、図3のリミット値切替器23)を更に含む、
補正方法を構成することとしてもよい。
前記範囲設定ステップは、ゼロを中心として正負の方向に非対称の数値範囲として前記変化率範囲を設定するステップを含むこととしてもよい。
前記範囲設定ステップは、少なくとも前記鉄道車両の走行状態が力行状態か、ブレーキ状態かに応じて前記変化率範囲を設定するステップである(例えば、図4の切替用テーブル231、図3のリミット値切替器23)、
補正方法を構成するようにすると好適である。
前記検出信号が示す速度の変化率が前記変化率範囲の限界変化率に近づいたことを検出するための限界接近条件を満たしたことを検出する限界接近検出ステップを更に含み(例えば、図3の限界接近判定回路232、図6)、
前記範囲設定ステップは、前記限界接近検出ステップでの検出に応じて前記変化率範囲を設定変更するステップを含む(例えば、図3のリミット値切替器23、図6)、
補正方法を構成することとしてもよい。
前記限界接近検出ステップは、前記補正ステップによる処理後の信号(例えば、図3の補正速度信号V2、加速度信号A1,A2)に基づいて前記限界接近条件を満たしたことを検出するステップである、
補正方法を構成することとしてもよい。
前記限界接近条件を満たした後に、前記検出信号が示す速度の変化率が当該限界変化率から遠ざかったことを検出するための限界離隔条件を満たしたことを検出する限界離隔検出ステップを更に含み(例えば、図3の限界離隔判定回路233、図6)、
前記範囲設定ステップは、前記限界接近検出ステップでの検出に応じた前記変化率範囲の設定変更後の前記限界離隔検出ステップでの検出に応じて前記変化率範囲を元の範囲に戻すステップを含む(例えば、図3のリミット値切替器23、図6)、
補正方法を構成することとしてもよい。
前記範囲設定ステップは、前記変化率範囲を設定変更する際に上限変化率及び下限変化率を同方向に設定変更するステップである(例えば、図3のリミット値切替器23、図6)、
補正方法を構成することとしてもよい。
まず、本発明の理解を助ける意味で、本発明によって補正されるセンサー(以下適宜「回転検出器」と言う。)の検出信号の使用用途について説明する。使用用途の一例として、再粘着制御を取り上げる。
図1は、鉄道車両における再粘着制御の一例を説明するための図であり、空転滑走が発生していない一定加速中の状態から空転滑走が発生し、再粘着制御を行って再粘着するまでの一連の各信号波形を示している。横軸を時間tとして、上から順に、制御対象の動軸の軸速度V及び基準速度Vmを示すグラフ、制御対象軸の加速度Aを示すグラフ、電動機トルクτを示すグラフを示す。ここで軸速度とは、軸の回転方向の速度であり、加速度は軸速度の加速度である。
なお、「再粘着制御」と言った場合、空転滑走の発生検知が前提であるため、空転滑走の発生検知を含む意味といえる(広義)。しかし、空転滑走の発生検知後の制御に着目して説明する場合にも、説明の簡明化のため、適宜「再粘着制御」と述べる(狭義)。
図2は、鉄道車両に設置されたピンドライブ式回転検出器の出力信号によって示された速度の変化の一例を示す図である。横軸は時間(数値は秒を示す)を示し、縦軸は速度を示す。約100km/h程度での走行中にブレーキをかけて停止するまでの様子を示している。
図3は、補正回路20の構成を説明するための図である。
センサー10は、鉄道車両の車輪、車軸又は輪軸の回転に応じた信号を出力するセンサーであり、パルスジェネレータや速度発電機、ピンドライブ式回転検出器等の回転検出器で構成される。補正回路20の出力信号が再粘着制御装置30で利用される場合には、センサー10は、動軸を計測対象として鉄道車両に取り付けられる。また、センサー10は、車輪、車軸又は輪軸の回転を検出した信号を速度信号に変換する速度信号変換器11を有し、速度信号変換器11によって変換された速度信号を原速度信号V0として出力する。速度信号への変換方式としては、一定時間パルス数計数方式や平均パルス幅計数方式等の従来公知の方式を適用することができる。
3−1.走行状態に応じたリミット値の切替設定
図4は、リミット値切替器23によるリミット値の切替設定方法を説明するための図であり、切替用テーブル231を示している。切替用テーブル231には、鉄道車両の走行状態231Aと、リミット値231Bとが対応付けて定められている。
また、変化率範囲の幅は、力行、惰行、ブレーキそれぞれで異なることとしてもよいし、同一(Lu1−Ll1=Lu2−Ll2=Lu3−Ll3)としてもよい。
図5(1)は、速度変化率リミッタ21を通過させる前の原速度信号と、原速度信号を微分することで得られる加速度信号とを示す。パルス部分で速度が瞬間的に大きく変化することから、加速度も瞬間的に大きく変化する。図5(1)の原速度信号や加速度信号に基づいて空転滑走の発生を検知する場合、閾値判定によって空転滑走の発生を誤検知する可能性が高い。
速度変化率リミッタ21によって、原速度信号に重畳されるパルス成分を低減する効果が得られるが、反対に問題点も生じ得る。
速度変化率リミッタ21の動作を詳細に説明すると、速度変化率リミッタ21は、参照速度を記憶しておき、原速度信号V0をこの参照速度と比較することで、原速度信号V0の速度変化率が、変化率範囲を超えるか否かを判定している。そして、変化率範囲を超えない場合には、原速度信号V0をそのまま補正速度信号V1として出力し、変化率範囲を超える場合には超えた側の当該変化率範囲の限界変化率となる速度に補正して補正速度信号V1として出力する。次いで、出力した補正速度信号V1で参照速度を更新する。これを繰り返す。
詳細は後述するが、図7は、限界接近判定回路232及び限界離隔判定回路233を動作させなかった場合の補正回路20の動作をシミュレーションした結果である。原速度信号V0は、速度0[km/h]から20[km/h]まで加速した時の粘着走行による理想的な信号波形に、10[Hz]の脈動成分と1[Hz]のパルス成分とをノイズとして重畳させた信号である。図7(1)は、原速度信号V0と補正速度信号V1,V2との信号波形を示し、図7(2)は、原速度信号V0から加速度を求めた原加速度信号と加速度信号A2との信号波形を示している。
図7及び図8は、シミュレーションを行った結果の一例を示す図である。図7は、上述した通り限界接近判定回路232及び限界離隔判定回路233を動作させなかった場合を、図8は、限界接近判定回路232及び限界離隔判定回路233を動作させた場合を示す。
なお、速度フィルタ部25は、高周波のノイズ成分を除去するフィルタであるため、補正速度信号V1に対する補正速度信号V2の信号遅延は微小であることが分かる。
本実施形態によれば、鉄道車両の車輪、車軸又は輪軸の回転に応じた信号を出力するセンサー10の検出信号が示す速度の変化率が、1)検出信号が鉄道車両の営業走行に係る粘着走行時の回転速度成分のみの場合の変化率の変動範囲を少なくとも含む所与の変化率範囲内の場合には補正を施さず、2)当該変化率範囲を超える場合に当該変化率範囲の限界変化率となる速度を示す信号に補正される。
本発明を適用可能な実施例は、上記の実施例に限定されることなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能であることは勿論である。以下、変形例について説明する。なお、上記実施形態と同一の構成については同一の符号を付して再度の説明を省略する。
図9は、第2の補正回路20Bの回路構成の一例を示す図である。第2の補正回路20Bでは、原速度信号V0から速度を求める微分器22をリミット値切替器23の前段に設けた構成である。微分器22によって演算された加速度がリミット値切替器23に出力される。リミット値切替器23の限界接近判定回路232及び限界離隔判定回路233は、微分器22から出力される加速度に基づいて判定を行い、この判定結果に基づいてリミット値(変化率範囲)を切り替える。このように構成してもよい。
また、限界接近条件が成立した場合にリミット値を切り替えるのではなく、次のような第3の補正回路20Cを構成してもよい。
図10は、第3の補正回路20Cの回路構成の一例を示す図である。第3の補正回路20Cでは、カウンタ24を設ける。速度変化率リミッタ21は、傾き補正の有無をカウンタ24に随時出力する。そして、カウンタ24は、所定のサンプリング間隔で、速度変化率リミッタ21によって原速度信号V0の変化率が速度変化率リミッタ21の傾きに補正された場合には回数をカウントアップし、補正されなかった場合にはカウンタをリセットすることで、継続的に補正された回数をカウントする。カウンタ値は、リミット値切替器23に出力される。そして、リミット値切替器23は、カウンタ値が所定回数(例えば5回)に達した場合に、リミッタの傾きを大きくするようにリミット値を設定変更する。例えば、限界接近条件を満たした場合と同じようにリミット値を変更してもよい。なお、カウンタ24によるカウント値は、継続時間とも言えるため、連続して補正された時間が所定時間に達した場合に、リミット値を設定変更しているとも言える。
上記の実施形態では、限界接近判定回路232及び限界離隔判定回路233が、微分器27から出力される加速度信号A1に基づいて限界接近や限界離隔の検出を行うこととして説明したが、加速度フィルタ部29から出力される加速度信号A2に基づいて検出を行ってもよい。要は、速度変化率リミッタ21による補正後の信号に基づいて限界接近や限界離隔を検出すればよい。
上記の実施形態では、限界接近が検出された場合にリミット値を切り替えることとして説明したが、設計上不要と思われる場合には、限界接近に伴うリミット値の切り替えを不用としてもよい。
20 補正回路
21 速度変化率リミッタ
22 微分器
23 リミット値切替器
24 カウンタ
25 速度フィルタ部
27 微分器
29 加速度フィルタ部
30 再粘着制御装置
31 空転滑走検知装置
231 切替用テーブル
232 限界接近判定回路
233 限界離隔判定回路
V0 原速度信号
V1,V2 補正速度信号
A1,A2 加速度信号
Claims (7)
- 鉄道車両の車輪、車軸又は輪軸(以下包括して「車軸」という)の回転に応じた信号を出力するセンサーの検出信号を補正する補正方法であって、
前記検出信号が示す速度の変化率が、1)前記検出信号が前記鉄道車両の営業走行に係る粘着走行時の回転速度成分のみの場合の変化率の変動範囲を少なくとも含む所与の変化率範囲内の場合には補正を施さず、2)当該変化率範囲を超える場合に当該変化率範囲の限界変化率となる速度を示す信号に補正する補正ステップと、
前記検出信号が示す速度の変化率が前記変化率範囲の限界変化率に近づいたことを検出するための限界接近条件を満たしたことを検出する限界接近検出ステップと、
前記限界接近検出ステップでの検出に応じて前記変化率範囲を変更するように設定する範囲設定ステップと、
を含む補正方法。 - 前記範囲設定ステップは、ゼロを中心として正負の方向に非対称の数値範囲として前記変化率範囲を設定するステップを含む、
請求項1に記載の補正方法。 - 前記範囲設定ステップは、少なくとも前記鉄道車両の走行状態が力行状態か、ブレーキ状態かに応じて前記変化率範囲を設定するステップである、
請求項1又は2に記載の補正方法。 - 前記限界接近検出ステップは、前記補正ステップによる処理後の信号に基づいて前記限界接近条件を満たしたことを検出するステップである、
請求項1〜3の何れか一項に記載の補正方法。 - 前記限界接近条件を満たした後に、前記検出信号が示す速度の変化率が当該限界変化率から遠ざかったことを検出するための限界離隔条件を満たしたことを検出する限界離隔検出ステップを更に含み、
前記範囲設定ステップは、前記限界接近検出ステップでの検出に応じた前記変化率範囲の設定変更後の前記限界離隔検出ステップでの検出に応じて前記変化率範囲を元の範囲に戻すステップを含む、
請求項1〜4の何れか一項に記載の補正方法。 - 前記範囲設定ステップは、前記変化率範囲を設定変更する際に上限変化率及び下限変化率を同方向に設定変更するステップである、
請求項1〜5の何れか一項に記載の補正方法。 - 鉄道車両の車軸の回転に応じた信号を出力するセンサーの検出信号を補正する補正回路であって、
前記検出信号が示す速度の変化率が、1)前記検出信号が前記鉄道車両の営業走行に係る粘着走行時の回転速度成分のみの場合の変化率の変動範囲を少なくとも含む所与の変化率範囲内の場合には補正を施さず、2)当該変化率範囲を超える場合に当該変化率範囲の限界変化率となる速度を示す信号に補正する補正手段と、
前記検出信号が示す速度の変化率が前記変化率範囲の限界変化率に近づいたことを検出するための限界接近条件を満たしたことを検出する限界接近検出手段と、
前記限界接近検出手段の検出に応じて前記変化率範囲を変更するように設定する範囲設定手段と、
を備えた補正回路。
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