JP6017996B2 - 補正方法及び補正回路 - Google Patents

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Description

本発明は、鉄道車両の車輪、車軸又は輪軸の回転に応じて信号を出力するセンサーの検出信号を補正する方法等に関する。
鉄道車両の代表例として電気車(動力車)について説明する。電気車は車輪・レール間の接線力(粘着力ともいう。)によって加減速がなされる。電気車において電動機の発生トルクにより生じる駆動力が、車輪とレールとに働く粘着力以下であれば粘着走行がなされるが、粘着力を超えた場合には空転又は滑走(以下、「空転滑走」という。)が生じる。空転滑走が生じた場合には、電動機の発生トルクを引き下げて粘着走行に復帰させる制御、すなわち再粘着制御が行われる。
この再粘着制御において、監視対象としている速度や加速度を検出するために、動輪の車輪、車軸又は輪軸の回転を検出するセンサーを利用するのが一般的である。例えば、動輪輪軸の軸端や車軸付近に設けられて動輪の回転を検出する速度発電機や、歯車の山谷を検出するパルスジェネレータ等のセンサーが知られているが、何れにしても、動輪の回転を直接或いは間接に検出している。そのため、センサーの検出信号には、電動機による動輪の周方向の回転に係る主信号成分以外にノイズ成分が含まれている。例えば、台車や車体等の振動の影響による高周波成分や、センサーの偏心に起因する脈動成分がそれである。そこで、センサーの出力に含まれる脈動成分を除去するための技術が考案されている(例えば、特許文献1)。
特開2002−369585号公報
特許文献1には、フィルタによってパルスジェネレータの出力信号から脈動の周波数成分を抽出し、これを逆位相に変換して元の出力信号に乗算することで、出力信号に重畳されている脈動成分を除去する技術が記載されている。しかし、フィルタによって脈動を抽出する際や逆位相に変換する際に時間遅れ(位相の遅れ)が発生する。時間遅れが生じた信号を元の出力信号に乗算したとしても、脈動成分が適切に除去されるとは限らない。
また、詳細は後述するが、センサーの検出信号を検証したところ、脈動成分以外に、パルス成分が含まれる場合があることが分かった。このようなパルス成分は特許文献1の技術では除去できない。
上述の問題は、動軸のみならず、従軸にセンサーを取り付けた場合にも同様に生じ得る。
本発明は、上述した課題に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、鉄道車両の車輪、車軸又は輪軸の回転に応じた信号を出力するセンサーの検出信号を適切に補正するための新しい手法を提案することにある。
以上の課題を解決するための第1の発明は、
鉄道車両の車輪、車軸又は輪軸(以下包括して「車軸」という)の回転に応じた信号を出力するセンサー(例えば、図3のセンサー10)の検出信号(例えば、図3の原速度信号V0)を補正する補正方法であって、
前記検出信号が示す速度の変化率が、1)前記検出信号が前記鉄道車両の営業走行に係る粘着走行時の回転速度成分のみの場合の変化率の変動範囲を少なくとも含む所与の変化率範囲内の場合には補正を施さず、2)当該変化率範囲を超える場合に当該変化率範囲の限界変化率となる速度を示す信号に補正する補正ステップ、
を含む補正方法である。
また、他の発明として、
鉄道車両の車軸の回転に応じた信号を出力するセンサー(例えば、図3のセンサー10)の検出信号(例えば、図3の原速度信号V0)を補正する補正回路であって、
前記検出信号が示す速度の変化率が、1)前記検出信号が前記鉄道車両の営業走行に係る粘着走行時の回転速度成分のみの場合の変化率の変動範囲を少なくとも含む所与の変化率範囲内の場合には補正を施さず、2)当該変化率範囲を超える場合に当該変化率範囲の限界変化率となる速度を示す信号に補正する補正手段(例えば、図3の速度変化率リミッタ21)、
を備えた補正回路(例えば、図3の補正回路20)を構成することとしてもよい。
第1の発明等によれば、センサーの検出信号が示す速度の変化率が、所与の変化率範囲を超える場合には、当該変化率範囲の限界変化率となる速度を示す信号に補正する。変化率範囲は、信号が鉄道車両の営業走行に係る粘着走行時の車軸の回転速度成分のみの場合の当該信号の変化率の変動範囲を少なくとも含む範囲として定められる。このため、センサーの検出信号が示す速度の変化率が当該変化率範囲を超える場合には脈動成分やパルス成分といったノイズ成分の影響が現れていると判断できる。そこで、当該変化率範囲を超える場合には当該変化率範囲の限界変化率となる速度を示す信号に補正することで、センサーの検出信号に含まれるノイズ成分を低減させることができる。
また、第2の発明として、第1の発明の補正方法において、
前記変化率範囲を設定する範囲設定ステップ(例えば、図3のリミット値切替器23)を更に含む、
補正方法を構成することとしてもよい。
この場合、第3の発明として、第2の発明の補正方法において、
前記範囲設定ステップは、ゼロを中心として正負の方向に非対称の数値範囲として前記変化率範囲を設定するステップを含むこととしてもよい。
また、第4の発明として、第2又は第3の発明の補正方法において、
前記範囲設定ステップは、少なくとも前記鉄道車両の走行状態が力行状態か、ブレーキ状態かに応じて前記変化率範囲を設定するステップである(例えば、図4の切替用テーブル231、図3のリミット値切替器23)、
補正方法を構成するようにすると好適である。
第2の発明によれば、変化率範囲を固定的にするのではなく、可変にすることができる。その範囲も、第3の発明のように、ゼロを中心として正負の方向に非対称の数値範囲として設定すると、例えば、鉄道車両の走行状態が力行状態かブレーキ状態かに応じた好適な範囲とすることができる。また、第4の発明のように、少なくとも鉄道車両の走行状態が力行状態か、ブレーキ状態かに応じて変化率範囲を設定することで、鉄道車両の走行状態に応じて変化率範囲を適正化することができる。
また、第5の発明として、第2〜第4の何れかの発明の補正方法において、
前記検出信号が示す速度の変化率が前記変化率範囲の限界変化率に近づいたことを検出するための限界接近条件を満たしたことを検出する限界接近検出ステップを更に含み(例えば、図3の限界接近判定回路232、図6)、
前記範囲設定ステップは、前記限界接近検出ステップでの検出に応じて前記変化率範囲を設定変更するステップを含む(例えば、図3のリミット値切替器23、図6)、
補正方法を構成することとしてもよい。
この第5の発明によれば、例えば、検出信号が示す速度が、変化率範囲の限界変化率を超えた状態が継続する場合の問題を解消することができる。
また、第6の発明として、第5の発明の補正方法において、
前記限界接近検出ステップは、前記補正ステップによる処理後の信号(例えば、図3の補正速度信号V2、加速度信号A1,A2)に基づいて前記限界接近条件を満たしたことを検出するステップである、
補正方法を構成することとしてもよい。
この第6の発明によれば、補正ステップによる処理後の信号に基づいて限界接近条件を満たしたことを検出するため、速度変化率が変化率範囲の限界変化率に近づいたことを適確に検出することができる。
また、第7の発明として、第5又は第6の発明の補正方法において、
前記限界接近条件を満たした後に、前記検出信号が示す速度の変化率が当該限界変化率から遠ざかったことを検出するための限界離隔条件を満たしたことを検出する限界離隔検出ステップを更に含み(例えば、図3の限界離隔判定回路233、図6)、
前記範囲設定ステップは、前記限界接近検出ステップでの検出に応じた前記変化率範囲の設定変更後の前記限界離隔検出ステップでの検出に応じて前記変化率範囲を元の範囲に戻すステップを含む(例えば、図3のリミット値切替器23、図6)、
補正方法を構成することとしてもよい。
この第7の発明によれば、限界接近条件の検出に応じて変化率範囲を設定変更した後、検出信号が示す速度の変化率が当該限界変化率から遠ざかった場合には、限界接近条件の成立前の状態に戻すことができる。
また、第8の発明として、第2〜第7の何れかの発明の補正方法において、
前記範囲設定ステップは、前記変化率範囲を設定変更する際に上限変化率及び下限変化率を同方向に設定変更するステップである(例えば、図3のリミット値切替器23、図6)、
補正方法を構成することとしてもよい。
この第8の発明によれば、変化率範囲を設定変更する際に上限変化率及び下限変化率を同方向に設定変更する。これにより、検出信号が示す速度の変化率に追従するように変化率範囲を変更することが可能となる。
再粘着制御の一例を説明するための図。 回転検出器の出力に基づく速度変化の一例を示す図。 補正回路の構成を説明するための図。 リミット値切替器によるリミット値の切替方法を説明するための図。 速度変化率リミッタの動作を説明するための図。 変化率範囲の変更を説明するための図。 シミュレーションした信号波形の一例を示す図。 シミュレーションした信号波形の一例を示す図。 第2の補正回路の回路構成の一例を示す図。 第3の補正回路の回路構成の一例を示す図。
以下、図面を参照して、本発明を適用した好適な実施形態の一例について説明する。本発明の考え方の基礎となる問題点を先に説明した後に、具体的な実施例について詳細に説明する。また、以下では説明の簡明化のために適宜「電動機トルク」を増減させるとして説明するが、より正確には「トルク分電流」、ひいては「トルク分電流指令」を増減させる意味である。
1.問題点
まず、本発明の理解を助ける意味で、本発明によって補正されるセンサー(以下適宜「回転検出器」と言う。)の検出信号の使用用途について説明する。使用用途の一例として、再粘着制御を取り上げる。
図1は、鉄道車両における再粘着制御の一例を説明するための図であり、空転滑走が発生していない一定加速中の状態から空転滑走が発生し、再粘着制御を行って再粘着するまでの一連の各信号波形を示している。横軸を時間tとして、上から順に、制御対象の動軸の軸速度V及び基準速度Vmを示すグラフ、制御対象軸の加速度Aを示すグラフ、電動機トルクτを示すグラフを示す。ここで軸速度とは、軸の回転方向の速度であり、加速度は軸速度の加速度である。
なお、「再粘着制御」と言った場合、空転滑走の発生検知が前提であるため、空転滑走の発生検知を含む意味といえる(広義)。しかし、空転滑走の発生検知後の制御に着目して説明する場合にも、説明の簡明化のため、適宜「再粘着制御」と述べる(狭義)。
空転滑走が発生していない状態では、軸速度Vは基準速度Vmにほぼ一致し、電動機トルクτはほぼ一定に保たれている。空転滑走が発生すると、軸速度Vが上昇し始め、基準速度Vmとの差分である速度差Vdが増加する。そして、時刻t1において、速度差Vdが予め定められた空転滑走検知閾値Vsに達すると、空転滑走の発生が検知される。ここで、基準速度Vmは鉄道車両の走行速度であり、例えば運転台から得られる速度としてもよいし、T車の従輪の軸速度としてもよい。また、車両内の各軸の軸速度のうち、力行時であれば最小値、ブレーキ時であれば最大値等として決定してもよい。
空転滑走の発生が検知されると、再粘着制御が発動されて、電動機トルクτの引き下げ(より正確にはトルク分電流の引き下げである。)が開始される。電動機トルクτの引き下げは、予め定められた引き下げ速度で継続的に行われる。即ち、トルクτの引き下げ量を増加させていく。電動機トルクτが引き下げられると、加速度Aの増加が次第に抑えられ、減少に転ずる。この間、軸速度Vは上がり続けるが、加速度Aがゼロとなる時刻t2では、軸速度Vの増加もゼロとなる。この加速度Aがゼロとなったことを、空転滑走からもとの粘着走行への回復開始として検知する(回復検知)。
なお、回復検知とする加速度Aをゼロとして説明したが、説明の簡明化のためにゼロとしたものであって、所定の回復検知閾値(例えばゼロではなく、“+1”や“−1”)以下に達した場合に回復開始として検知することとしてよい。
回復検知がなされると、電動機トルクτの引き下げを停止して、引き下げ量を保持する。すると、マイナスとなっていた加速度Aの減少が次第に抑えられ、やがて増加に転じる。また、基準速度Vmからの乖離幅が大きくなっていた軸速度Vが低下し始める。そして、速度差Vdが予め定められた再粘着検知閾値Vr以下になると、再粘着したとして検知(再粘着検知)し、復帰動作用の制御が開始される。すなわち、保持していた電動機トルクτの引き下げ量を減少させてトルクを復帰させる制御が開始される。そして、電動機トルクτが所定の目標トルク値(例えば、再粘着制御の開始時点(時刻t1)における値)まで復帰した時刻t4において、再粘着制御の終了となる。この再粘着検知後の電動機トルクτは、予め定められた復帰時間をかけて復帰するように制御される。
なお、ここでは、空転滑走検知及び再粘着検知の監視対象を軸速度V(ひいては速度差Vd)としたが加速度Aも監視対象に加えて併用することとしてもよいし、加速度Aを単体で用いて空転滑走検知及び再粘着検知を行うこととしてもよい。また、回復検知の監視対象を加速度Aとしたが、軸速度V(ひいては速度差Vd)も監視対象に加えて併用し、加速度Aがゼロとなる、或いは、速度差Vdが空転滑走検知閾値Vs以下の所定の閾値以下となったことを回復開始とみなして検知することとしてもよい。
以上の再粘着制御は、軸速度Vや加速度Aに基づいて行われることになる。軸速度Vや加速度Aは、鉄道車両の車輪、車軸又は輪軸の回転を検出するセンサー(回転検出器)の出力に基づいて演算される。回転検出器としては、例えばパルスジェネレータや速度発電機等を利用することができる。
これらの回転検出器の検出信号から軸速度を求める方式には種々有り、一定時間の間に計数されたパルス数と車輪径とを用いて速度を算出する一定時間パルス数計数方式や、ある一定時間の時間幅の前後のパルスとその一定時間内のパルスとから求まるパルス列全体の検出時間幅とそのパルス列のパルス数と車輪径とを用いて速度を算出する平均パルス幅計数方式などが知られている。また、これらのフィルタ処理や演算を行う速度信号変換器を有し、速度信号に換算して検出信号として出力する回転検出器も知られている。
ところで、回転検出器の検出信号にノイズが重畳している場合には、正確な軸速度や加速度を算出できず、上述した再粘着制御が正しく機能しない可能性がある。脈動成分が重畳し得ることは、上述の特許文献1に記載されている通りである。そこで、回転検出器の検出信号を検証したところ、種々の問題があることが分かった。
図2は、鉄道車両に設置されたピンドライブ式回転検出器の出力信号によって示された速度の変化の一例を示す図である。横軸は時間(数値は秒を示す)を示し、縦軸は速度を示す。約100km/h程度での走行中にブレーキをかけて停止するまでの様子を示している。
図2によれば、周期的なパルス成分が重畳されており、パルス成分は速度に応じた大きさであり、ところにより速度の±5%程度の大きさに達していることが分かる。ピンドライブ式の回転検出器は、車軸あるいは車軸を駆動する駆動軸の軸端面の偏心位置にピンを取り付け、このピンの回転運動を機械的に往復運動に変換し、この往復運動を電気信号に変換して出力する方式である。図2をよく見ると、ほぼ一定の周期でパルス成分が現れていることが分かる。調査したところ、このパルス成分の現れる周期は、ピンが取り付けられた軸の回転に相当する周期であることが分かった。
なお、回転検出器の別の例として、パルスジェネレータからの出力信号(速度信号)の波形を確認したが、この場合も、パルス成分が周期的に重畳していた。
ここで、[背景技術]欄や[発明が解決しようとする課題]欄で説明した通り、従来、回転検出器を使用する場合には、回転検出器の出力信号をそのまま使用せずに、フィルタ(移動平均フィルタ)を介して使用するのが一般的であったことを付言しておく。移動平均フィルタによって、上述したパルス成分を含むノイズが除去される。しかし、移動平均フィルタによって、信号変化に対する制御(例えば空転滑走の検知や、再粘着制御など)が遅れてしまうという問題があった。本実施形態によれば、この遅れを低減できるという作用効果がある。この作用効果については詳細に後述する。
回転検出器は、検出方式が電気的・磁気的・光学的・機械接触式の何れであるかに関わらず、車輪、車軸又は輪軸の回転を検出する機械である。そのため、回転検出器は、構成部品の精度や組み立て精度、取り付け精度等による誤差の関係で必ずしも完全完璧で理想的な回転検出ができるわけではない。また、車輪が必ずしも完全完璧な真円であるとは限らず、輪軸の左右の車輪が完全完璧な対称形状であるとも限らない。これらの誤差要因から、例えば車輪が1回転する毎に何らかのノイズ成分が現れたと考えられる。
回転検出器の信号の使用用途から考察すると次のことが言える。すなわち、パルス成分が重畳しているパルス部分の速度に基づいて空転滑走の発生検知を行うと、誤った検知となる可能性が高い。パルス部分の加速度は急激に増加するため、加速度に基づいて空転滑走の発生検知を行う場合も同様である。また、回復検知や再粘着検知においても、パルス部分の速度及び/又は加速度を用いると誤判定が生じる可能性が高い。
そこで、本実施形態では、回転検出器の検出信号が示す速度の変化率が、1)検出信号が鉄道車両の営業走行に係る粘着走行時の動軸の回転速度成分のみの場合の変化率の変動範囲を少なくとも含む所与の変化率範囲内の場合には補正を施さず、2)当該変化率範囲を超える場合に当該変化率範囲の限界変化率となる速度を示す信号に補正する。このような補正を行うことで、前述した速度信号に含まれる脈動成分やパルス成分等のノイズを効果的に低減できる。また、レール継ぎ目を通過する際のノイズを低減することもできる。
2.構成
図3は、補正回路20の構成を説明するための図である。
センサー10は、鉄道車両の車輪、車軸又は輪軸の回転に応じた信号を出力するセンサーであり、パルスジェネレータや速度発電機、ピンドライブ式回転検出器等の回転検出器で構成される。補正回路20の出力信号が再粘着制御装置30で利用される場合には、センサー10は、動軸を計測対象として鉄道車両に取り付けられる。また、センサー10は、車輪、車軸又は輪軸の回転を検出した信号を速度信号に変換する速度信号変換器11を有し、速度信号変換器11によって変換された速度信号を原速度信号V0として出力する。速度信号への変換方式としては、一定時間パルス数計数方式や平均パルス幅計数方式等の従来公知の方式を適用することができる。
なお、速度信号変換器11を有しないセンサー10を適用する場合には、補正回路20の入力段に速度信号変換器11を設け、センサー10からは車輪、車軸又は輪軸の回転を検出した信号を入力することとしてもよい。何れにせよ、センサー10からは、車輪、車軸又は輪軸の回転に応じた信号が出力される。
補正回路20は、センサー10から出力される原速度信号V0を補正する回路であり、例えば、速度変化率リミッタ21と、リミット値切替器23と、速度フィルタ部25と、微分器27と、加速度フィルタ部29とを有して構成される。補正回路20は、アナログ回路として構成してもよいし、デジタル回路として構成してもよい。デジタル回路として構成する場合は、例えば補正回路20の前段にA/D(Analog/Digital)変換器を設け、このA/D変換器によってセンサー10の検出信号をデジタル化して入力するように回路構成すればよい。
速度変化率リミッタ21は、リミット値切替器23から出力されるリミット値に基づき、センサー10から出力される原速度信号V0を補正する変化率リミッタである。速度変化率リミッタ21を通過した信号は補正速度信号V1として速度フィルタ部25に出力される。
リミット値切替器23は、鉄道車両の走行状態や加速度信号A1に基づいてリミット値を切り替えて設定する切替回路である。勿論、加速度信号A1が示す加速度の変化率である加加速度(ジャーク)や、補正速度信号V2等に基づいて切り替えることとしてもよい。走行状態は、力行/惰行/ブレーキの何れの状態かを示す信号であればよく、ノッチ操作指令等の信号を入力すればよい。リミット値切替器23は、リミット値の切替用のテーブルである切替用テーブル231と、限界接近判定回路232と、限界離隔判定回路233とを有する。リミット値切替器23によるリミット値の切替方法については詳細に後述する。
補正速度信号V1には、台車や車体の振動等の影響による高周波のノイズ成分が重畳している可能性がある。速度フィルタ部25は、この高周波のノイズ成分を除去するために、補正速度信号V1を平滑化するフィルタ回路であり、例えばローパスフィルタを有して構成される。補正回路20をデジタル回路で構成する場合には、例えばFIRフィルタ等のデジタルフィルタで構成できる。平滑化の程度は、平滑化時間幅(時定数)に依るため、平滑化時間幅を可変とし、速度に応じて変更することとしてもよい。また、平滑化後の信号は補正速度信号V2として微分器27に出力されるとともに、補正回路20からの出力信号とされる。なお、速度フィルタ部25による高周波のノイズ成分の除去を必要としない場合には、補正速度信号V1を微分器27に出力するとともに、補正回路20からの出力信号としてもよい。
微分器27は、速度フィルタ部25から出力される補正速度信号V2に対する微分演算を行って加速度を演算する。微分器27の演算結果は、加速度信号A1として加速度フィルタ部29に出力される。
加速度フィルタ部29は、速度フィルタ部25と同様、信号に重畳し得る高周波のノイズ成分を除去するために、微分器27から出力される加速度信号A1を平滑化するフィルタ回路であり、例えばローパスフィルタを有して構成される。補正回路20をデジタル回路で構成する場合には、例えばFIRフィルタ等のデジタルフィルタで構成できる。速度フィルタ部25と同様、平滑化の程度は、平滑化時間幅(時定数)に依るため、速度に応じて平滑化時間幅を変更する等としてもよい。平滑化後の信号は加速度信号A2として出力される。なお、加速度フィルタ部29を不要とする場合には、加速度信号A1を出力信号とする。
再粘着制御装置30は、補正回路20からの出力信号を利用する制御装置の一例であり、補正速度信号V2や加速度信号A2に基づいて、空転滑走の検知や回復検知、再粘着検知を行い、空転滑走した動輪を再粘着させる制御を行う。補正回路20の出力信号を利用する装置は再粘着制御装置30に限らない。例えば、電動機のトルク制御を行う電動機制御装置で利用することもできる。
なお、補正回路20をセンサー10とは別体として図示・説明したが、補正回路20をセンサー10内に組み込み、一体とする構成としてもよい。また、補正回路20を再粘着制御装置30に内蔵させる構成としてもよい。
3.リミット値の切替方法
3−1.走行状態に応じたリミット値の切替設定
図4は、リミット値切替器23によるリミット値の切替設定方法を説明するための図であり、切替用テーブル231を示している。切替用テーブル231には、鉄道車両の走行状態231Aと、リミット値231Bとが対応付けて定められている。
走行状態231Aには、力行と、惰行と、ブレーキとの3種類が定められている、リミット値231Bには、上限リミット値と、下限リミット値との2種類が定められている。上限リミット値は、増加方向に対する速度変化率の制限値であり、下限リミット値は、減少方向に対する速度変化率の制限値である。上限リミット値及び下限リミット値によって、速度変化率の変動を許容する変化率範囲が定められる。
力行状態の上限リミット値「Lu1」と、惰行状態の上限リミット値「Lu2」と、ブレーキ状態の上限リミット値「Lu3」は、「0≦Lu3<Lu2<Lu1」の関係が成立するよう定められる。また、力行状態の下限リミット値「Ll1」と、惰行状態の下限リミット値「Ll2」と、ブレーキ状態の下限リミット値「Ll3」は、「Ll3<Ll2<Ll1≦0」の関係が成立するように定められる。すなわち、許容される速度変化率の変化率範囲は、力行状態、惰行状態、ブレーキ状態の順でマイナス方向にシフトするように切替設定されることとなる。
また、変化率範囲の幅は、力行、惰行、ブレーキそれぞれで異なることとしてもよいし、同一(Lu1−Ll1=Lu2−Ll2=Lu3−Ll3)としてもよい。
上記のリミット値の具体的な数値は、センサー10の検出信号が鉄道車両の営業走行に係る粘着走行時の回転速度成分のみの場合の変化率の変動範囲を少なくとも含む変化率範囲となるように定められる。すなわち、ノイズ成分を除いた粘着走行時の信号成分のみの理想的な信号を基準に定められる。鉄道車両の営業走行に係る粘着走行時の加速度は、力行時で2〜3[km/h/s]程度、ブレーキ時で−4〜−7[km/h/s]程度である。このため、これらの数値範囲を少なくとも含む変化率範囲となるように上限リミット値及び下限リミット値を定める。
具体的な数値の例を挙げると、力行時は2〜3[km/h/s]の数値範囲を含む変化率範囲となるように、例えば「Lu1=+8,Ll1=−5」とする。つまり、−5〜+8[km/h/s]の数値範囲を力行時における速度の変化率に対する変化率範囲とする。ゼロを中心として正負の方向に非対称の数値範囲とし、上限リミット値の絶対値が下限リミット値の絶対値よりも大きくなるように数値を定めているのは、力行時は加速度がプラスの方向に大きくなると考えられるためである。
ブレーキ時は、−4〜−7[km/h/s]の数値範囲を含む変化率範囲となるように、例えば「Lu3=+5,Ll3=−8」とする。つまり、−8〜+5[km/h/s]の数値範囲をブレーキ時における速度の変化率に対する変化率範囲とする。ゼロを中心として正負の方向に非対称の数値範囲とし、下限リミット値の絶対値が上限リミット値の絶対値よりも大きくなるように数値を定めているのは、ブレーキ時は加速度がマイナスの方向に大きくなると考えられるためである。
また、惰行時については、例えば「Lu3=−5,Ll3=+5」とする。つまり、−5〜+5[km/h/s]の数値範囲を惰行時における速度の変化率に対する変化率範囲とする。惰行時は加速度がゼロであるため、ゼロを中心として正負の方向に対称となるように数値範囲を定めている。
なお、ここで示した数値範囲はあくまでも一例に過ぎず、適宜設定変更可能であることは勿論である。また、図4の切替用テーブル231には、走行状態231Aとして力行と惰行とブレーキとを定めているが、少なくとも鉄道車両の走行状態が力行状態か、ブレーキ状態かに応じて変化率範囲を設定すること、すなわち、力行とブレーキとの2種類の走行状態についてリミット値を設定することとしてもよい。惰行の場合には直前の変化率範囲を維持することとすればよい。走行状態が力行状態か、ブレーキ状態かに応じて変化率範囲を設定する場合には、変化率範囲は原則としてゼロを中心として正負の方向に非対称の数値範囲として設定される。
図5は、速度変化率リミッタ21の動作を説明するための図であり、図2に示したパルス成分1つ分の概略波形を示している。但し、説明の簡便化のために、加速中の波形とした。
図5(1)は、速度変化率リミッタ21を通過させる前の原速度信号と、原速度信号を微分することで得られる加速度信号とを示す。パルス部分で速度が瞬間的に大きく変化することから、加速度も瞬間的に大きく変化する。図5(1)の原速度信号や加速度信号に基づいて空転滑走の発生を検知する場合、閾値判定によって空転滑走の発生を誤検知する可能性が高い。
一方、図5(2)は、速度変化率リミッタ21を通過させた後の補正速度信号と、その加速度信号とを示す。原速度信号の速度変化率は、パルス部分で変化率範囲を超えていたため、速度変化率リミッタ21によって、変化率範囲の限界変化率に制限される。従って、補正速度信号では、パルス部分の変化の大きさが最大で限界変化率の大きさに補正されている。これに伴い、加速度信号の大きさも小さくなっている。従って、補正回路20の出力信号に基づいて空転滑走の発生を検知する場合には、パルス成分による誤検知が生じることが無い。
3−2.限界接近又は限界離隔によるリミット値の切替
速度変化率リミッタ21によって、原速度信号に重畳されるパルス成分を低減する効果が得られるが、反対に問題点も生じ得る。
速度変化率リミッタ21の動作を詳細に説明すると、速度変化率リミッタ21は、参照速度を記憶しておき、原速度信号V0をこの参照速度と比較することで、原速度信号V0の速度変化率が、変化率範囲を超えるか否かを判定している。そして、変化率範囲を超えない場合には、原速度信号V0をそのまま補正速度信号V1として出力し、変化率範囲を超える場合には超えた側の当該変化率範囲の限界変化率となる速度に補正して補正速度信号V1として出力する。次いで、出力した補正速度信号V1で参照速度を更新する。これを繰り返す。
従って、原速度信号V0の速度変化率が変化率範囲を超える状態が継続する場合には、図7(1)に示すように、補正速度信号V1は、原速度信号V0の変化に遅れる格好となる。より正確には、変化率範囲の限界変化率で追従する格好となる。これが問題となる。
詳細は後述するが、図7は、限界接近判定回路232及び限界離隔判定回路233を動作させなかった場合の補正回路20の動作をシミュレーションした結果である。原速度信号V0は、速度0[km/h]から20[km/h]まで加速した時の粘着走行による理想的な信号波形に、10[Hz]の脈動成分と1[Hz]のパルス成分とをノイズとして重畳させた信号である。図7(1)は、原速度信号V0と補正速度信号V1,V2との信号波形を示し、図7(2)は、原速度信号V0から加速度を求めた原加速度信号と加速度信号A2との信号波形を示している。
例えば、図1に示す再粘着制御において、軸速度Vの変化率がゼロ近傍となったこと、或いは、加速度Aがゼロ以下となったことを回復とみなして検知する場合、図7(1)の補正速度信号V1,V2や加速度信号A2を用いると、回復の検知が遅れることとなる。また、再粘着の検知についても同じことが言える。回復や再粘着の検知の遅れは、トルクの低減状態が長引くことを意味し、鉄道車両の引張力が低減するという問題がある。
また、図7の時刻t20〜t30の期間では、速度変化率が一定に制限されているため、この期間においては、空転滑走の発生を正確に検知できない可能性がある。
これらの問題を解決するために、本実施形態では、限界接近判定回路232が、原速度信号V0の速度変化率が変化率範囲の限界変化率に近づいたことを検出する。そして、限界接近判定回路232の検出に応じて変化率範囲を設定変更する。
図6は、この場合における変化率範囲の設定変更を説明するための図である。速度変化率の増加方向に対する限界接近条件を「速度変化率≧Lu−3」とし、速度変化率の減少方向に対する限界接近条件を「速度変化率≦Ll+3」とする。「Lu−3」及び「Ll+3」は、限界接近条件を定めるための閾値と言える。以下、上限(増加方向)側の閾値を「上限接近閾値」と呼び、下限(減少方向)側の閾値を「下限接近閾値」と呼ぶ。限界接近判定回路232は、原速度信号V0が上限接近閾値以上、或いは、下限接近閾値以下となったことをもって限界接近条件が成立したと検出する。
上限(増加方向)側の限界接近条件が成立した場合は、リミット値切替器23は、リミット値を、上限リミット値については「Lu+10」に変更し、下限リミット値については「Ll+10」に変更する。また、下限(減少方向)側の限界接近条件が成立した場合は、リミット値を、上限リミット値については「Lu−10」に変更し、下限リミット値については「Ll−10」に変更する。つまり、限界接近条件が成立した場合は、上限リミット値及び下限リミット値を増減の同じ方向に同量だけ変更する。これは、変化率範囲を設定変更する際に上限変化率及び下限変化率を同方向に設定変更することに相当する。
なお、リミット値の変更量は、上限リミット値と下限リミット値とで必ずしも同じ量としなければならないわけではなく、上限リミット値と下限リミット値とで変更量を異ならせてもよい。例えば、上限(増加方向)側の限界接近条件が成立した場合の上限リミット値の変更量を「+10」とし、下限リミット値の変更量を「+5」としてもよい。逆に、下限(減少方向)側の限界接近条件が成立した場合の上限リミット値の変更量を「−5」とし、下限リミット値の変更量を「−10」としてもよい。
また、本実施形態では、上記の限界接近条件を満たした後に、限界離隔判定回路233が、原速度信号V0の速度変化率が当該限界変化率から遠ざかったことを検出する。そして、限界離隔判定回路233の検出に応じて変化率範囲を元の範囲に戻す。
再び図6を参照すると、速度変化率の増加方向に対する限界離隔条件を「速度変化率<Lu−3」とし、速度変化率の減少方向に対する限界離隔条件を「速度変化率>Ll+3」とする。「Lu−3」及び「Ll+3」は、限界離隔条件を定めるための閾値と言える。以下、上限(増加方向)側の閾値を「上限離隔閾値」と呼び、下限(減少方向)側の閾値を「下限離隔閾値」と呼ぶ。限界離隔判定回路233は、原速度信号V0が上限側の限界接近条件を満たした後、上限離隔閾値未満となった場合に、限界離隔条件を満たしたと検出する。また、下限側の限界接近条件を満たした後、下限離隔閾値超となった場合に、限界離隔条件を満たしたと検出する。限界離隔条件が成立した場合は、リミット値の変更値を元の設定値である「Lu」、「Ll」に戻す。
4.シミュレーション結果
図7及び図8は、シミュレーションを行った結果の一例を示す図である。図7は、上述した通り限界接近判定回路232及び限界離隔判定回路233を動作させなかった場合を、図8は、限界接近判定回路232及び限界離隔判定回路233を動作させた場合を示す。
このシミュレーションでは、原速度信号V0は、速度を0[km/h]から20[km/h]まで加速した時の粘着走行時の理想的な信号波形に、10[Hz]の正弦波状の脈動成分と、1[Hz]のパルス成分とをノイズとして重畳させた信号とした。加速時の加速度は、速度変化率の変化率範囲を超える大きさ一定とした。また、上限リミット値を10[km/h/s]とし、下限リミット値を−10[km/h/s]とした。図7(1)は、原速度信号V0と、補正速度信号V1,V2とを示し、図7(2)は、原速度信号V0から直接求めた原加速度信号と、補正加速度信号A2とを示す。
図7(1)の時刻t20〜t30の期間では鉄道車両は定加速状態であるため、原速度信号V0も全体的に一定の傾きで増加している。図7(2)を見ると、時刻t20〜t30の期間では、加速度は、理想的には一定となるはずであるが、速度信号に脈動成分及びパルス成分が含まれることに起因して、原加速度信号が脈動している。
図7(1)において着目すべきは、加速時の補正速度信号V1,V2の波形である。加速時の原速度信号V0の速度変化率は、変化率範囲を超えている。このため、補正速度信号V1,V2は、当該変化率範囲の限界変化率となる速度を示す信号となり、上限リミット値である10[km/h/s]の傾きの速度となっている。そのため、上述した問題点の通り、補正速度信号V1,V2が、限界変化率でもって原速度信号V0に追従する格好となり、本来であれば時刻t30において等速状態の信号となるはずが、時刻t40にずれこんでしまっている。
なお、速度フィルタ部25は、高周波のノイズ成分を除去するフィルタであるため、補正速度信号V1に対する補正速度信号V2の信号遅延は微小であることが分かる。
また、図7(2)の加速度信号A2を見ると、時刻t20〜t40の期間は、上限リミット値で頭打ちになっている。補正速度信号V1の原速度信号V0に対する追従遅れによって、加速度信号A2が低減し始める時期も、本来の時刻t30から時刻t40にずれていることが分かる。
次に図8について説明する。図8は、限界接近判定回路232及び限界離隔判定回路233を動作させた場合の信号波形の一例であり、図の見方は図7と同じである。このシミュレーションでは、速度変化率が上限接近閾値7[km/h/s]以上となった場合に限界接近条件が成立したと判定し、上限リミット値を10[km/h/s]から20[km/h/s]に設定変更した。
図8(1)を見ると、図7(1)とは明らかに異なる結果が得られている。補正速度信号V1,V2は、原速度信号V0に併走するように変化している。限界接近条件の検出に応じて上限リミット値を変更したことで、上限リミット値が鉄道車両の加速度より大きくなった。このため、補正速度信号V1,V2は、原速度信号V0に遅れて追従するような信号波形とはならず、原速度信号V0に重なるように、原速度信号V0から脈動成分やパルス成分を低減させた波形となっている。
図8(2)の加速度を見ると、時刻t20〜t30の期間において、上限リミット値が20[km/h/s]に変更されたことで、図7(2)のような加速度信号の頭打ちが発生することなく、本来の加速度(原加速度信号)の波形に重なるようにして、且つ、脈動が小さい波形が、加速度信号A2として得られていることがわかる。
5.作用効果
本実施形態によれば、鉄道車両の車輪、車軸又は輪軸の回転に応じた信号を出力するセンサー10の検出信号が示す速度の変化率が、1)検出信号が鉄道車両の営業走行に係る粘着走行時の回転速度成分のみの場合の変化率の変動範囲を少なくとも含む所与の変化率範囲内の場合には補正を施さず、2)当該変化率範囲を超える場合に当該変化率範囲の限界変化率となる速度を示す信号に補正される。
補正回路20において、速度変化率リミッタ21は、リミット値切替器23から出力されるリミット値に基づいて、センサー10からの原速度信号V0に含まれる脈動成分やパルス成分を減衰させ、補正速度信号V1として速度フィルタ部25に出力する。速度フィルタ部25は、速度変化率リミッタ21から出力される補正速度信号V1を所定の平滑化時間幅に従って平滑化し、補正速度信号V2として再粘着制御装置30及び微分器27に出力する。また、微分器27は、速度フィルタ部25によって平滑化された速度を微分することで加速度を演算し、その演算結果を加速度信号V1として加速度フィルタ部29に出力する。そして、加速度フィルタ部29は、微分器27から出力される加速度を平滑化し、加速度信号A2として再粘着制御装置30に出力する。
速度の変化率が、リミット値(上限リミット値及び下限リミット値)により定まる変化率範囲を超える場合に当該変化率範囲の限界変化率となる速度を示す信号に補正することで、センサー10の検出信号に含まれる脈動成分やパルス成分等のノイズ成分を効果的に低減させることができる。変化率範囲は、鉄道車両の営業走行に係る粘着走行時の回転速度成分のみの場合の速度の変化率に基づき定められる。このため、実際の鉄道車両の走行を考慮してセンサー10の検出信号を適切に補正することが可能となる。
変化率範囲は、少なくとも鉄道車両の走行状態が力行状態か、ブレーキ状態かに応じて変更される。力行状態であれば、鉄道車両は加速状態にあるため、プラス方向に対する速度変化の許容量がマイナス方向に対する許容量よりも大きくなるように変化率範囲を定める。逆に、ブレーキ状態であれば、鉄道車両は減速状態にあるため、マイナス方向に対する速度変化の許容量がプラス方向に対する許容量よりも大きくなるように変化率範囲を定める。これにより、鉄道車両の走行状態に応じて変化率範囲を適正化することができる。
また、リミット値切替器23は、検出信号が示す速度の変化率が変化率範囲の限界変化率に近づいたことを検出する。そして、その検出に応じて変化率範囲を設定変更する。具体的には、速度の変化率が所定の上限接近閾値に達した場合は、上限リミット値及び下限リミット値を同方向に引き上げ、速度の変化率が所定の下限接近閾値未満となった場合は、上限リミット値及び下限リミット値を同方向に引き下げる。これにより、力行状態やブレーキ状態において急激な加減速が継続的に生じた場合であっても、変化率範囲を適正化して、センサー10の検出信号を適切に補正することが可能となる。
また、リミット値切替器23は、限界接近条件を満たした後に、センサー10の検出信号が示す速度の変化率が当該限界変化率から遠ざかったことを検出した場合に、変更した変化率範囲を元の範囲に戻す。これにより、例えば、リミット値を加減速前の状態に復帰させ、センサーの検出信号を適切に補正することが可能となる。
6.変形例
本発明を適用可能な実施例は、上記の実施例に限定されることなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能であることは勿論である。以下、変形例について説明する。なお、上記実施形態と同一の構成については同一の符号を付して再度の説明を省略する。
6−1.リミット値の切替設定に利用する加速度信号
図9は、第2の補正回路20Bの回路構成の一例を示す図である。第2の補正回路20Bでは、原速度信号V0から速度を求める微分器22をリミット値切替器23の前段に設けた構成である。微分器22によって演算された加速度がリミット値切替器23に出力される。リミット値切替器23の限界接近判定回路232及び限界離隔判定回路233は、微分器22から出力される加速度に基づいて判定を行い、この判定結果に基づいてリミット値(変化率範囲)を切り替える。このように構成してもよい。
6−2.リミット値の設定を切り替える条件
また、限界接近条件が成立した場合にリミット値を切り替えるのではなく、次のような第3の補正回路20Cを構成してもよい。
図10は、第3の補正回路20Cの回路構成の一例を示す図である。第3の補正回路20Cでは、カウンタ24を設ける。速度変化率リミッタ21は、傾き補正の有無をカウンタ24に随時出力する。そして、カウンタ24は、所定のサンプリング間隔で、速度変化率リミッタ21によって原速度信号V0の変化率が速度変化率リミッタ21の傾きに補正された場合には回数をカウントアップし、補正されなかった場合にはカウンタをリセットすることで、継続的に補正された回数をカウントする。カウンタ値は、リミット値切替器23に出力される。そして、リミット値切替器23は、カウンタ値が所定回数(例えば5回)に達した場合に、リミッタの傾きを大きくするようにリミット値を設定変更する。例えば、限界接近条件を満たした場合と同じようにリミット値を変更してもよい。なお、カウンタ24によるカウント値は、継続時間とも言えるため、連続して補正された時間が所定時間に達した場合に、リミット値を設定変更しているとも言える。
6−3.限界接近条件及び限界離隔条件
上記の実施形態では、限界接近判定回路232及び限界離隔判定回路233が、微分器27から出力される加速度信号A1に基づいて限界接近や限界離隔の検出を行うこととして説明したが、加速度フィルタ部29から出力される加速度信号A2に基づいて検出を行ってもよい。要は、速度変化率リミッタ21による補正後の信号に基づいて限界接近や限界離隔を検出すればよい。
また、上記の実施形態では、速度変化率が所定の閾値以上となることを限界接近条件とし、限界接近条件が成立した後(限界接近を検出した後)、速度変化率が所定の閾値未満となることを限界離隔条件として説明した。これらの条件として多段階の条件を定めることとしてもよい。つまり、速度変化率が第1閾値以上となることを第1限界接近条件とし、第1閾値よりも大きい第2閾値以上となることを第2限界接近条件として、それぞれの限界接近条件の成立に応じてリミット値(変化率範囲)を設定変更することとしてもよい。
6−4.限界接近の検出に基づくリミット値の切替
上記の実施形態では、限界接近が検出された場合にリミット値を切り替えることとして説明したが、設計上不要と思われる場合には、限界接近に伴うリミット値の切り替えを不用としてもよい。
10 センサー
20 補正回路
21 速度変化率リミッタ
22 微分器
23 リミット値切替器
24 カウンタ
25 速度フィルタ部
27 微分器
29 加速度フィルタ部
30 再粘着制御装置
31 空転滑走検知装置
231 切替用テーブル
232 限界接近判定回路
233 限界離隔判定回路
V0 原速度信号
V1,V2 補正速度信号
A1,A2 加速度信号

Claims (7)

  1. 鉄道車両の車輪、車軸又は輪軸(以下包括して「車軸」という)の回転に応じた信号を出力するセンサーの検出信号を補正する補正方法であって、
    前記検出信号が示す速度の変化率が、1)前記検出信号が前記鉄道車両の営業走行に係る粘着走行時の回転速度成分のみの場合の変化率の変動範囲を少なくとも含む所与の変化率範囲内の場合には補正を施さず、2)当該変化率範囲を超える場合に当該変化率範囲の限界変化率となる速度を示す信号に補正する補正ステップ
    前記検出信号が示す速度の変化率が前記変化率範囲の限界変化率に近づいたことを検出するための限界接近条件を満たしたことを検出する限界接近検出ステップと、
    前記限界接近検出ステップでの検出に応じて前記変化率範囲を変更するように設定する範囲設定ステップと、
    を含む補正方法。
  2. 前記範囲設定ステップは、ゼロを中心として正負の方向に非対称の数値範囲として前記変化率範囲を設定するステップを含む、
    請求項に記載の補正方法。
  3. 前記範囲設定ステップは、少なくとも前記鉄道車両の走行状態が力行状態か、ブレーキ状態かに応じて前記変化率範囲を設定するステップである、
    請求項又はに記載の補正方法。
  4. 前記限界接近検出ステップは、前記補正ステップによる処理後の信号に基づいて前記限界接近条件を満たしたことを検出するステップである、
    請求項1〜3の何れか一項に記載の補正方法。
  5. 前記限界接近条件を満たした後に、前記検出信号が示す速度の変化率が当該限界変化率から遠ざかったことを検出するための限界離隔条件を満たしたことを検出する限界離隔検出ステップを更に含み、
    前記範囲設定ステップは、前記限界接近検出ステップでの検出に応じた前記変化率範囲の設定変更後の前記限界離隔検出ステップでの検出に応じて前記変化率範囲を元の範囲に戻すステップを含む、
    請求項1〜4の何れか一項に記載の補正方法。
  6. 前記範囲設定ステップは、前記変化率範囲を設定変更する際に上限変化率及び下限変化率を同方向に設定変更するステップである、
    請求項の何れか一項に記載の補正方法。
  7. 鉄道車両の車軸の回転に応じた信号を出力するセンサーの検出信号を補正する補正回路であって、
    前記検出信号が示す速度の変化率が、1)前記検出信号が前記鉄道車両の営業走行に係る粘着走行時の回転速度成分のみの場合の変化率の変動範囲を少なくとも含む所与の変化率範囲内の場合には補正を施さず、2)当該変化率範囲を超える場合に当該変化率範囲の限界変化率となる速度を示す信号に補正する補正手段と、
    前記検出信号が示す速度の変化率が前記変化率範囲の限界変化率に近づいたことを検出するための限界接近条件を満たしたことを検出する限界接近検出手段と、
    前記限界接近検出手段の検出に応じて前記変化率範囲を変更するように設定する範囲設定手段と、
    を備えた補正回路。
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