JP6015284B2 - 車両用制動制御装置 - Google Patents
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Description
そして、この従来技術では、液圧制動装置として、ブレーキペダルの操作により進退移動する入力部材と、この入力部材に相対移動可能に配置されたアシスト部材と、このアシスト部材を進退移動させる電動アクチュエータとを備えた電動倍力装置を用いている。この電動倍力装置は、ブレーキペダルによる入力部材の移動に応じて電動アクチュエータによりアシスト部材に付与されるアシスト推力によりマスタシリンダ内に倍力されたブレーキ液圧を発生させるようになっている。
ブレーキペダルの踏込を増していく制動時には、液圧制動装置では、ブレーキペダルに対して、マスタシリンダ圧反力とバネ反力とが作用している。
一方、回生協調制動時には、回生制動トルクを上昇させていったときに、液圧制動トルクを減少させる場合が生じる。このとき、ブレーキペダルに作用するマスタシリンダ圧反力が減少することにより、ペダル反力が変化し、ドライバに違和感を与え、ペダルフィールが悪化するおそれがあった。
回生制動装置とブレーキ装置との駆動を制御し、回生制動トルクと液圧制動トルクとにより目標制動トルクを発生させる回生協調制動制御を行う制動トルク制御部が、回生協調制御時に、前記目標制動トルクの増加に応じて前記回生制動トルクを増加させる際の増加勾配を設定する回生制動トルク増加勾配設定部を備え、
この回生制動トルク増加勾配設定部は、前記目標制動トルクの変化量に応じ、前記変化量が予め設定された変化量設定値未満の場合には、前記増加勾配を予め設定された設定増加勾配に設定し、前記変化量が前記変化量設定値以上の場合には、前記増加勾配を、前記変化量の変化率以下の可変増加勾配に設定することを特徴とする車両用制動制御装置とした。
このため、目標制動トルクの増加に伴って回生制動トルクを増加させた際に、液圧制動トルク(マスタシリンダ圧)が、低下しないようにすることができる。
よって、この状況で、液圧制動トルク(マスタシリンダ圧)が低下するものと比較して、ペダル反力変化を抑えることができ、ペダルフィールを改善できる。
一方、目標制動トルクの変化量が変化量設定値未満の場合は、増加勾配を予め設定された設定増加勾配に設定する。このため、変化量が設定値未満の場合も可変増加勾配として細かに回生制動トルクの増加勾配を制御すると、マスタシリンダ圧が細かに変化して違和感を与えるおそれがあるが、この違和感の発生を抑制し、良好なペダルフィールを確保できる。
(実施の形態1)
まず、実施の形態1の車両用制動制御装置の全体構成を、この車両用制動制御装置のシステム構成図である図1に基づいて説明する。
(液圧制動装置)
まず、液圧制動装置Aについて説明する。
この液圧制動装置Aは、ブレーキ装置10、VDCアクチュエータ30、を備えている。
ブレーキ装置10では、運転者が踏み込むブレーキペダルBPに対する踏力に応じた制動液圧がマスタシリンダMCで発生し、この制動液圧が、ブレーキ液圧回路(プライマリ回路11およびセカンダリ回路12)を介して各車輪WHに設けられたホイールシリンダWCへ供給されて制動力を発生する。
ブレーキ装置10は、車輪WHを制動するホイールシリンダWCと、ホイールシリンダWCに作動油を供給するマスタシリンダMCと、作動油を貯留するリザーバタンクRESと、ブレーキペダルBPの操作により進退移動するインプットシャフト13とを備える。なお、電動倍力装置20は、インプットシャフト13に付与された推進力を倍力する。また、ブレーキコントロールユニット2は、インプットシャフト13の変位量を検出するストロークセンサ14が検出した変位量に応じて電動倍力装置20を制御する。
以下、マスタシリンダMCの軸方向をx軸方向とし、図において左方向であるマスタシリンダMCの底部側をx軸正方向とし、ブレーキペダルBP側をx軸負方向とする。
シリンダ16では、プライマリピストン15のx軸正方向側の端面と、セカンダリピストン17のx軸負方向側の端面とによりプライマリ液圧室16aが形成される。プライマリ液圧室16aは、プライマリ回路11と連通可能に接続されている。
セカンダリ液圧室16bの容積は、セカンダリピストン17がシリンダ16内をストロークすることにより変化する。セカンダリ液圧室16bには、セカンダリピストン17をx軸負方向側に付勢する戻しバネ17bが設置されている。
また、インプットシャフト13には、フランジ部13fの外径よりも小径かつ、プライマリピストン15の隔壁15aの内周よりも大径の大径部13aが形成されている。ブレーキ操作が行われていないブレーキ非作動時には、大径部13aのx軸正方向側の端面と隔壁15aのx軸負方向側の端面との間にギャップL1が設けられる。このギャップL1により、プライマリピストン15がインプットシャフト13に対してx軸負方向に相対移動することが可能となる。これにより、統合制御装置5から回生協調制御指令を受けたときに、ブレーキコントロールユニット2が回生制動トルク分だけ摩擦制動トルクを減じることができる。
プライマリ液圧室16aの圧力により、セカンダリピストン17がx軸正方向側へ移動する。これによってセカンダリ液圧室16bの作動液が加圧され、加圧された作動液がセカンダリ回路12に供給される。
電動倍力装置20は、ブレーキコントロールユニット2からの制御指令に従ってプライマリピストン15の変位量、すなわちマスタシリンダ圧Pmcを調整するものである。電動倍力装置20は、インプットシャフト13の変位量に応じた回転力を発生させる駆動モータ21と、駆動モータ21の回転力を増大させる減速装置22と、減速装置22の回転力をマスタシリンダMCに伝達する回転−並進変換装置23と、を有する。
減速装置22は、駆動側プーリ22aと従動側プーリ22bの半径比により定まる減速比に応じて駆動モータ21の回転トルクを増幅し、増幅されたトルクを回転−並進変換装置23に伝達する。
ここで、圧力平衡の式(1)における各要素は、以下のようになっている。
Pb:マスタシリンダMC内の圧力室(プライマリ液圧室16a)内の液圧
Fi: 入力推力
Fb: ブースタ推力
Ai:インプットシャフト13の受圧面積
Ab:プライマリピストン15の受圧面積
K:バネ19a、19bのバネ定数
ΔX:インプットシャフト13とプライマリピストン15との相対変位量
Pb=(Fi−K×△X)/Ai=(Fb+K×△X)/Ab ・・・(1)
Bα=Pb× (Ab+Ai)/Fi … (2)
Bα=(1−K×ΔX/Fi)×(Ab/Ai+1) … (3)。
なお、VDCアクチュエータ30の駆動は、VDCコントロールユニット3により制御される。
次に、回生制動装置Bについて説明する。
回生制動装置Bは、図1に示す駆動輪(車輪WH)に減速機及びディファレンシャル6を介して駆動結合されたモータ(モータ/ジェネレータ)1により車輪回転エネルギを電力に変換する。すなわち、モータ1は、モータコントロールユニット4からの3相PWM信号によりインバータ41での交流・直流変換を介して制御される。そして、駆動輪(図1に示す車輪WH)の駆動が必要なEV走行モードでは、強電バッテリ42からの電力でモータ1をモータとして駆動させて駆動輪(図1に示す車輪WH)を回転させる。一方、制動が必要な制動モードでは、回生制動トルク制御を行なって、モータ1をジェネレータとして駆動させて車両運動エネルギを電力に変換して強電バッテリ42に回収する。
これによりモータコントロールユニット4は、統合制御装置5からの回生制動トルク指令値に基づいてモータ1による回生制動トルクを制御する。
また、VDCコントロールユニット3は、統合制御装置5およびブレーキコントロールユニット2からの指令値に基づいてホイールシリンダWCにおける液圧制動トルクを制御する。
また、VDCコントロールユニット3は、入力された車輪速度Vw、マスタシリンダ圧Pmcおよびホイールシリンダ圧Pwcを統合制御装置5へ送信する。
統合制御装置5は、運転手が制動操作を行った際に、各種入力情報に基づいて、ドライバ要求総制動トルクTreqを求める。そして、このドライバ要求総制動トルクTreqを目標制動トルクとして、ブレーキコントロールユニット2およびモータコントロールユニット4の制御に基づいて、回生制動トルクおよび液圧制動トルクにより目標制動トルクを発生させる制動トルク制御を実行する。
ステップS102にてYESと判定すると、ステップS103にて回生協調制御の目標変位量算出特性データなどを用いて目標変位量C1を算出し、ステップS105に進む。すなわち、ステップS103では、目標制動トルクから回生制動トルクを差し引いた制動力を、液圧制動力により発生させるべく、プライマリピストン15の目標変位量C1を算出する。
ステップS102にてNOと判定すると、ステップS104に進み、可変倍力制御の目標変位量算出特性データを用いて目標変位量C2を算出し、ステップS105に進む。すなわち、回生制動トルクが発生していない場合には、ブレーキペダルBPの踏込量(ペダルストローク量)に応じて予め設定された倍力比Bαが得られるように、プライマリピストン15の目標変位量C2を算出する。
モータコントロールユニット4あるいは統合制御装置5から、回生制動指令値を読み込み、この回生制動指令値に応じたマスタシリンダ圧Pmcの減圧量ΔPを演算し、ステップS202に進む。
ステップS203では、予め設定されているペダルストローク量に対応する相対変位量およびマスタシリンダ圧特性に基づいて、ペダルストローク量SAに応じたマスタシリンダ圧P1を算出する。
続くステップS205では、相対変位量(−X2)を、目標変位量C1に設定し、リターンに進む。
ステップS301では、ペダルストローク量SAに応じた目標制動トルクを算出した後、ステップS302に進む。ここで、目標制動トルクは、図5のステップS301内に示したストローク量−目標制動トルク特性に基づいて、ストロークセンサ14の検出値に応じて設定する。
ステップS401では、ドライバ要求総制動トルクTreqを演算し、次のステップS402に進む。本実施の形態1では、ストロークセンサ14により検出されるドライバのブレーキペダルBPの動作に基づいて、そのストロークで発生し得る液圧制動トルクを演算し、これをドライバ要求総制動トルクTreqとしている。また、クルーズコントロールのような自動減速制御手段を有している場合は、上記液圧制動トルクとのセレクトハイ値を最終的なドライバ要求総制動トルクTreqとしてもよい。
なお、この回生制動指令値は、最終目標回生制動トルクに基づいて形成される。
また、最終目標回生制動トルクは、回生最大制限値および基本目標回生制動トルクに基づいて演算される。回生最大制限値は、モータ1の最大出力や電流値、回生協調を行う液圧制動装置Aの仕様などから設定され、その時点で、発生することが可能な回生制動トルクの最大値である。また、基本目標回生制動トルクは、車速に応じて予め設定されたその車速で得られる最大回生制動トルクである車速制限値の範囲内で、ドライバ要求総制動トルクに応じて決定される回生制動トルクである。
ここで、予圧開始車速線について説明する。
予圧開始車速線は、図7(a)において点線により示すように、基準すり替え車速線に対し、高車速側にある幅を持って設定する。すなわち、本実施の形態1では、基準すり替え開始車速線に対し、回生制動トルクの制限値が大きい側ほど、基準すり替え車速線との幅を広く設定している。
なお、予圧開始車速線は、図7(b)に示すように、基準すり替え開始車速線と略平行になるように設定をしてもよい。
ステップS407では、現在の実行回生制動トルクTRBが予圧開始回生制動トルクTPREを越えているか否か判定する。そして、現在の実行回生制動トルクTRBが予圧開始回生制動トルクTPREを越えている場合は、予圧回生制動トルク減少処理を行う必要があるとして、ステップS408に進み、予圧回生制限トルクTRATEを演算する。
なお、予圧回生制限トルクTRATEは、予圧回生制動トルク減少処理の実行時の回生制動トルクである。
TRATE=TRB−Tstep ・・・・(2)
ステップS409では、基準回生制限トルクTDECを、現在の車体速Vrefと基準すり替え車速線との交点より設定し、ステップS410に進む。
ステップS410では、低速域回生制限トルクTVELを決定した後、ステップS411に進む。この低速域回生制限トルクTVELは、車両停止間際の低車速域において車速に応じて、制動トルクを、回生制動トルクから液圧制動トルク(摩擦制動トルク)にすり替えるためのものである。具体的には、この低速域回生制限トルクTVELは、予圧回生制限トルクTRATEと基準回生制限トルクTDECとのセレクトローにより決定する。したがって、予圧回生制動トルク減少処理の実行時には、低速域回生制限トルクTVEL=予圧回生制限トルクTRATEに設定され、予圧回生制動トルク減少処理の非実行時には、低速域回生制限トルクTVEL=基準回生制限トルクTDECに設定される。
<比較例>
ここで、本実施の形態1の作用と比較するために、本願発明を適用しない従来技術の場合の動作の一例を図9に示し説明する。
その後、ペダルストローク量がSAとなった時点(t02)から、回生制動装置Bにより、回生制動が開始されている。また、回生制動トルクの立ち上がりにより、液圧制動トルク(マスタシリンダ圧Pmc)は、この回生制動トルクの立ち上げた分だけ、減少される。このため、マスタシリンダ圧Pmc(液圧制動トルク)は、t02の時点のPMaから低下され、t03の時点のマスタシリンダ圧Pmc=PMb(≒0MPa)に低下され、この状態は、回生制動トルクが、予め設定された制限値に達するt04の時点まで継続されている。そして、この回生制動トルクが、制限値に達するt04の時点以降は、再び、マスタシリンダ圧Pmc(液圧制動トルク)が、目標制動トルクの増加に応じて上昇し、ペダルストローク量が一定に保持されるt05の時点以降は、マスタシリンダ圧Pmcも、一定圧(PMd)に保持される。
この反力の変化が、ドライバに違和感を与え、ペダルフィールの悪化を招いていた。
次に、実施の形態1の作用を図10、図11により説明する。
実施の形態1では、t1の時点で制動操作を開始し、マスタシリンダ圧Pmc(液圧制動トルク)が立ち上がる。
このとき、t2の時点で、回生制動トルクが立ち上がるのは、比較例と同様である。しかしながら、実施の形態1では、回生制動トルクの立ち上がり方が比較例と異なる。すなわち、実施の形態1では、このようにt1〜t5までの間、ブレーキペダルBPを時間経過と共に深く踏み込んでいるペダル操作中の場合、今回回生指令値は、回生指令前回値に目標制動トルク変化量(Δ目標制動トルク)を加算した値とする(ステップS4〜S6)。この場合、図11に拡大して示すように、回生制動トルクの立ち上がり時点から、t5の時点までの間、目標制動トルクに平行な増加勾配(可変増加勾配)となる。すなわち、回生制動トルクは、目標制動トルクに対して1よりも小さな値を乗算した値に設定される。
したがって、t5の時点以降は、回生制動トルクの増加勾配は、緩やかになる。そして、ブレーキペダルBPの踏込変化が無くなり、踏込量が一定の状態に維持されると、回生制動トルクは、回生制動トルク制限値Tlim(上限値)に制御される。
なお、図10および図11において、点線は前述した比較例の場合の値を示している。
よって、本実施の形態1では、ペダルフィールの悪化を抑制できる。
よって、図11に示すように、インプットシャフト13に作用する反力(ペダル反力)は、略一定に保たれ、点線に示す比較例のように変動することが無い。よって、比較例のように、ペダル反力が変化してペダルフィールが悪化するのを抑制し、ペダルフィールを改善できる。
(1)実施の形態1の車両用制動制御装置は、
車両の車輪WHに加えられる回生制動トルクを制御する回生制動装置Bと、
車両におけるドライバの制動操作の実行に伴って液圧制動トルクを発生させるマスタシリンダ圧Pmcを形成するとともに、アクチュエータとしての駆動モータ21の駆動によりマスタシリンダ圧Pmcを増減可能なブレーキ装置10と、
制動操作時に、目標制動トルクを検出する目標制動トルク検出部としてのストロークセンサ14およびステップS301の処理を実行する部分と、
回生制動装置Bとブレーキ装置10との駆動を制御し、回生制動トルクと液圧制動トルクとにより目標制動トルクを発生させる回生協調制動制御を行う制動トルク制御部としてのブレーキコントロールユニット2、モータコントロールユニット4、統合制御装置5と、
を備えた車両用制動制御装置であって、
制動トルク制御部は、回生協調制御時に、目標制動トルクの増加に応じて回生制動トルクを増加させる際の増加勾配を設定する回生制動トルク増加勾配設定部(図5のステップS302〜S306の処理を実行する部分)を備え、
この回生制動トルク増加勾配設定部は、目標制動トルクの変化量に応じ、変化量が予め設定された変化量設定値(操作中判定値)未満の場合には、増加勾配を予め設定された設定増加勾配に設定し(ステップS303)、変化量が変化量設定値(操作中判定値)以上の場合には、増加勾配を、変化量の変化率(Δ目標制動力)以下の可変増加勾配に設定することを特徴とする。
制動時に、回生制動トルク増加勾配設定部は、目標制動トルクの変化量に応じ、その変化量が変化量設定値以上の場合は、回生制動トルクの増加勾配を、変化量の変化率以下の可変増加勾配に設定する。
このため、目標制動トルクの増加に伴って回生制動トルクを増加させた際に、図10および図11に示したように、液圧制動トルク(マスタシリンダ圧Pmc)が、低下しないようにすることができる。
よって、図10,図11において、点線により示すように、液圧制動トルク(マスタシリンダ圧Pmc)が、t2の時点以降で低下するものと比較して、ペダル反力変化を抑えることができ、ペダルフィールを改善できる。
一方、目標制動トルクの変化量が変化量設定値未満の場合は、t5の時点以降に示すように、回生制動トルクの増加勾配を予め設定された設定増加勾配に設定する。このため、変化量が設定値未満(ステップS302においてYES判定)の場合も可変増加勾配として細かに回生制動トルクの増加勾配を制御すると、マスタシリンダ圧Pmcが細かに変化して違和感を与えるおそれがあるが、設定増加勾配に制御することにより、この違和感の発生を抑制し、良好なペダルフィールを確保できる。
ブレーキ装置10は、ブレーキペダルBPの操作により進退移動する入力部材としてのインプットシャフト13と、このインプットシャフト13に相対移動可能に配置されたアシスト部材としてのプライマリピストン15と、このプライマリピストン15を進退移動させる駆動モータ21と、インプットシャフト13とプライマリピストン15との間に設けられ、プライマリピストン15に対してインプットシャフト13を両者の相対変位の中立位置に向けて付勢する付勢手段としてのバネ19a,19bと、を備え、ブレーキペダルBPによるインプットシャフト13の移動に応じてプライマリピストン15に付与されるアシスト推力によりマスタシリンダMC内に倍力されたブレーキ液圧(マスタシリンダ圧Pmc)を発生させる電動倍力装置20を備えていることを特徴とする。
このような電動倍力装置20を用いて、回生協調制御を実施した場合、駆動モータ21の駆動によりマスタシリンダ圧Pmcを増減させた場合、インプットシャフト13に作用するバネ19a,19bおよびマスタシリンダ圧Pmcによる反力が変化し、ブレーキペダルBPの反力が変化する。
そこで、回生制動トルク増加勾配設定手段が、増加勾配を上述のように目標制動トルクの変化量に応じて設定増加勾配および可変増加勾配に設定することにより、ブレーキペダル反力の変化を抑えて、ペダルフィールを改善することができる。
回生制動トルク増加勾配設定部は、増加勾配を、変化量の変化率(Δ目標制動力)以下の可変増加勾配に設定するのにあたり、変化量の変化率に設定するようにしたことを特徴とする。
したがって、可変増加勾配に設定したt2の時点以降は、マスタシリンダ圧Pmcが保持状態となり、マスタシリンダ圧Pmcが低下するものと比較して、ペダル反力変化を抑えてペダルフィールを改善できる。また、マスタシリンダ圧Pmcが増加するものと比較して、良好な回生効率を確保できる。
次に、他の実施の形態の車両制動制御装置について説明する。
なお、他の実施の形態は、実施の形態1の変形例であるため、実施の形態1と共通する構成には実施の形態1と同じ符号を付して説明を省略し、実施の形態1との相違点のみ説明する。
実施の形態2の車両制動制御装置について説明する。
この実施の形態2は、回生制動トルク増加勾配設定部としての、実施の形態1で示した可変増加勾配の設定の処理が実施の形態1と異なる。
すなわち、実施の形態2では、回生制動トルク増加勾配設定部に相当する構成が実施の形態1とは異なるもので、図5におけるステップS304およびS305の処理に代えて、図12に示す処理を実行する。
図14は、実施の形態2の動作例を示すタイムチャートである。
図14では、一点鎖線が目標制動トルクを示している。すなわち、この動作例では、t21の時点からブレーキペダルBPを踏み込み、t23の時点以降、一旦、踏込量を一定とし、その後、t25の時点から、さらに僅かに踏込量を増し、t27の時点以降、踏込量を一定とする制動操作を行っている。
このように回生制動トルクと目標制動トルクとが一致している状態から、目標制動トルクが上昇した場合、目標制動トルクと実行回生制動トルクとの差分ΔFは、相対的に小さな値となり、比率αも相対的に小さな値に設定される。
その後、ブレーキペダルBPの踏み増しが停止された時点(t27の時点)以降は、回生制動トルクの増加勾配として設定増加勾配が用いられ、回生制動トルクは目標制動トルクに収束する。
4)実施の形態2の車両用制動制御装置は、
回生制動トルク増加勾配設定部(ステップS2−1〜S2−3の処理を実行する部分)は、可変増加勾配の設定時に、回生制動トルクの減少が予測される場合には、可変増加勾配を設定するのにあたり、可変増加勾配を、予測が成されない場合よりも緩やかに設定することを特徴とする。
制動操作によるブレーキペダルBPの保持状態から再度ブレーキペダルBPの踏み込みを行った場合、下記のペダルフィール悪化を招くおそれがある。
すなわち、ブレーキペダルBPを踏み込んで保持状態とした場合、回生制動トルクが目標制動トルクの100%あるいはそれに近い状態となる。この状態から、ブレーキペダルBPを踏み込んだ場合、例えば、比率αに基づく可変増加勾配により回生制動トルクを増加させると、マスタシリンダ圧Pmcは、0MPa付近に制御され、その反力が不足し、ドライバに違和感を与えるおそれがある。
それに対し、本実施の形態2では、上記のようなブレーキペダルBPの再踏込時に、目標制動トルクと実行回生制動トルクTRBとの差分ΔFに応じ、差分ΔFが小さいほど、比率αを小さく制御することにより、回生制動トルクの増加を抑える。
これにより、液圧制動トルクを増加させ、マスタシリンダ圧Pmcを確実に増加させることにより、ペダル反力変化を抑え、ペダルフィールの改善を図ることができる。
実施の形態3の車両制動制御装置について説明する。
実施の形態3は、実施の形態1において説明したすり替え制御に移行する前に回生制動トルクを減少させる制御を追加し、ペダルフィールをさらに改善可能とした例である。
ステップS501では、現在の車速Vが予め設定された減少用判定値V0以上であるか否か判定し、減少用判定値V0以上の場合はステップS502に進み、減少用判定値V0未満の場合はステップS503に進む。なお、この減少用判定値V0は、予め設定された低速走行を示す値であって、すり替え制御に移行する前の時点であることを判定できる値である。
車速Vが減少用判定値V0以上の場合に進むステップS502では、回生制動トルク制限値Tlimを、最大値TMAXに設定した後、リターンに進む。なお、この最大値TMAXは、ステップS306において、最終今回回生指令値として回生制動トルク制限値Tlimが選択されることがないことを示しており、ステップS305などにより得られた今回回生指令値に置き換えてよい。
ΔTlim=max(0,ΔTDRQ)/M1 ・・・(3−1)
ここで、ΔTDRQは、目標制動トルクの前回値から目標制動トルクの今回値を差し引いた目標制動トルク変化量である。また、max(0,ΔTDRQ)は、目標制動トルク変化量ΔTDRQと0とのセレクトハイを意味する。さらに、M1は、本実施の形態3では、1に設定されている。なお、加算値ΔTlimの演算に使用する、後述するM2,M3との関係は、M1=1<M2<M3の関係にある。
ΔTlim=max(0,ΔTDRQ)/M2 ・・・(3−2)
ステップS505にてNOと判定されて進むステップS507では、現在の車速Vが第3設定車速V3以上であるか否か判定し、第3設定車速V3以上の場合は、ステップS508に進み、第3設定車速V3未満の場合はステップS509に進む。ステップS508では、加算値ΔTlimを、下記の式(3−3)により演算する。この演算において分母として使用する値M3が前述したステップS504,S506で使用するM1,M2よりも大きいことにより、加算値ΔTlimは相対的に小さな値に設定される。
ΔTlim=max(0,ΔTDRQ)/M3 ・・・(3−3)
なお、ステップS507においてNOと判定された場合に進むステップS509では、加算値ΔTlim=0に設定した後、ステップS510に進む。
そして、ステップS510では、前述したように、実行回生制動トルクTRBに加算値ΔTlimを加算して回生制動トルク制限値を設定する。
すなわち、制動操作により車速Vが基準すり替え車速線に近付くに連れ、回生制動トルク制限値は、実行回生制動トルクTRBに対する加算値が小さくなり、つまり、増加勾配が緩やかになるように設定される。
以下に、実施の形態3の動作例を図16のタイムチャートに基づいて説明する。
このタイムチャートでは、t31の時点で制動操作を開始している。これに伴い、t31の時点からマスタシリンダ圧Pmc(液圧制動トルク)が立ち上がっている。そして、t32の時点で回生制動トルクが立ち上げられ、その分、その時点からマスタシリンダ圧Pmc(液圧制動トルク)の増加が抑えられている。この場合、実施の形態1と同様に、目標制動トルクの上昇分は、回生制動トルクにより形成されるため、マスタシリンダ圧Pmcは、ほぼ横ばい状態となる。これにより、マスタシリンダ圧Pmcが低下した場合と比べて、インプットシャフト13に対する反力が確保され、ペダルフィールの悪化を抑制できるのは、実施の形態1,2と同様である。
すなわち、車速Vが、すり替え制御を実行する基準すり替え車速Vbに近付く第1段階である、減少用判定値V0未満、かつ、第1設定車速V1以上の範囲となったt33の時点では、ステップS504およびS510により、回生制動トルク制限値Tlimが演算される。
この場合、回生制動トルク制限値Tlimは、目標制動トルク変化量ΔTDRQと0とのセレクトハイにより設定される。したがって、車速Vが減少用判定値V0よりも低下し、かつ、第1設定車速V1以上の範囲では、回生制動トルクは、目標制動トルク変化量ΔTDRQに維持、すなわち、目標制動トルクに一致するように制御される。
さらに、すり替え制御の実行により、回生制動トルクが減少される時点でも、その前の段階から、回生制動トルクの増加勾配を、目標制動トルクの上昇傾きよりも緩やかに制御するため、回生制動トルクの増加から減少へ転じる際の勾配変化を緩やかにできる。これにより、マスタシリンダ圧Pmcの変化を抑え、このように、回生制動トルクの減少前に、増加勾配を緩やかにしないものと比較して、マスタシリンダ圧Pmcの変化によるペダルフィール悪化を抑制できる。
5)実施の形態3の車両用制動制御装置では、
回生制動トルク増加勾配設定部(図15のフローを実行する部分)は、可変増加勾配の設定時に、回生制動トルクの減少が予測される場合には、可変増加勾配を設定するのにあたり、可変増加勾配を、前記予測が成されない場合よりも緩やかに設定することを特徴とする。
したがって、回生制動トルクの減少が予測される場合には、前もって増加勾配を緩やかにし、回生制動トルクが増加から減少に転じた際に伴うマスタシリンダ圧の変化を小さく抑え、この変化に伴うペダルフィールの悪化を抑制できる。
なお、回生制動トルク増加勾配設定部(図15のフローを実行する部分)は、可変増加勾配の設定時に、回生制動トルクの減少が予測される場合には、可変増加勾配を設定するのにあたり、変化量に乗算する比率αを、予測が成されない場合よりも小さく設定してもよい。
回生制動トルク増加勾配設定部(図15のフローを実行する部分)は、可変増加勾配を設定するのにあたり、回生制動トルクの減少が予測されるタイミングに近付くほど、可変増加勾配を緩やかに設定することを特徴とする。具体的には、回生制動トルク制限値Tlimを演算するために実行回生制動トルクTRBに加算する加算値ΔTlimは、すり替え制御の開始タイミングに近付くに連れて、小さな値に設定することにより、可変増加勾配を緩やかに設定するようにした。すなわち、実施の形態3では、車速Vの変化に応じ、回生制動トルクの減少が予測されるタイミングに近付くに連れて、4段階で増加勾配を緩やかに設定するようにした。
したがって、回生制動トルクの減少予測時に、1段階だけ、あるいは3段階未満で増加勾配を緩やかに設定するものと比較して、回生制動トルクが増加から減少へ転じることに伴うマスタシリンダ圧の変化を、より小さく抑え、ペダルフィール悪化をいっそう抑制可能となる。
なお、回生制動トルク増加勾配設定部は、可変増加勾配を設定するのにあたり、回生制動トルクの減少が予測されるタイミングに近付くほど、変化量に乗算する比率αを、小さく設定するようにしてもよい。
4 モータコントロールユニット(制動トルク制御部)
5 統合制御装置(制動トルク制御部)
10 ブレーキ装置
13 インプットシャフト(入力部材)
14 ストロークセンサ(目標制動トルク検出部)
15 プライマリピストン(アシスト部材)
20 電動倍力装置
21 駆動モータ(アクチュエータ)
A 液圧制動装置
B 回生制動装置
BP ブレーキペダル
MC マスタシリンダ
Pmc マスタシリンダ圧
TRB 実行回生制動トルク
Treq ドライバ要求総制動トルク(目標制動トルク)
V 車速
Claims (5)
- 車両の車輪に加えられる回生制動トルクを制御する回生制動装置と、
前記車両におけるドライバの制動操作の実行に伴って液圧制動トルクを発生させるマスタシリンダ圧を形成するとともに、アクチュエータの駆動により前記マスタシリンダ圧を増減可能なブレーキ装置と、
前記制動操作時に、目標制動トルクを検出する目標制動トルク検出部と、
前記回生制動装置と前記ブレーキ装置との駆動を制御し、前記回生制動トルクと前記液圧制動トルクとにより前記目標制動トルクを発生させる回生協調制動制御を行う制動トルク制御部と、
を備えた車両用制動制御装置であって、
前記制動トルク制御部は、前記回生協調制御時に、前記目標制動トルクの増加に応じて前記回生制動トルクを増加させる際の増加勾配を設定する回生制動トルク増加勾配設定部を備え、
この回生制動トルク増加勾配設定部は、前記目標制動トルクの変化量に応じ、前記変化量が予め設定された変化量設定値未満の場合には、前記増加勾配を予め設定された設定増加勾配に設定し、前記変化量が前記変化量設定値以上の場合には、前記増加勾配を、前記変化量の変化率以下の可変増加勾配に設定することを特徴とする車両用制動制御装置。 - 請求項1に記載の車両用制動制御装置において、
前記回生制動トルク増加勾配設定部は、前記目標制動トルクと実際に生じている回生制動トルクである実行回生制動トルクとを比較する比較部を備え、かつ、前記可変増加勾配の設定時に、前記目標制動トルクと前記実行回生制動トルクとの差が小さいほど、前記可変増加勾配を緩やかに設定することを特徴とする車両用制動制御装置。 - 請求項1に記載の車両用制動制御装置において、
前記回生制動トルク増加勾配設定部は、前記可変増加勾配の設定時に、前記回生制動トルクの減少が予測される場合には、前記可変増加勾配を設定するのにあたり、前記可変増加勾配を、前記予測が成されない場合よりも緩やかに設定することを特徴とする車両用制動制御装置。 - 請求項3に記載の車両用制動制御装置において、
前記回生制動トルク増加勾配設定部は、前記可変増加勾配を設定するのにあたり、前記回生制動トルクの減少が予測されるタイミングに近付くほど、前記可変増加勾配を緩やかに設定することを特徴とする車両用制動制御装置。 - 請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載の車両用制動制御装置において、
前記ブレーキ装置は、ブレーキペダルの操作により進退移動する入力部材と、この入力部材に相対移動可能に配置されたアシスト部材と、このアシスト部材を進退移動させる前記アクチュエータと、前記入力部材と前記アシスト部材との間に設けられ、前記アシスト部材に対して前記入力部材を両者の相対変位の中立位置に向けて付勢する付勢手段と、を備え、前記ブレーキペダルによる前記入力部材の移動に応じて前記アシスト部材に付与されるアシスト推力によりマスタシリンダ内に倍力されたブレーキ液圧を発生させる電動倍力装置を備えていることを特徴とする車両用制動制御装置。
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