次に、実施形態を挙げ、本発明をより詳しく説明する。本実施形態では、本発明に係る電力変換装置を、車両に搭載されたバッテリから負荷に電力を供給する電力変換装置に適用した例を示す。
(第1実施形態)
まず、図1を参照して第1実施形態の電力変換装置の構成について説明する。
図1に示す電力変換装置1は、バッテリB1(直流電源)から供給される直流を所定電圧の直流に変換して負荷S1に供給する装置である。ここで、バッテリB1は、主に車両駆動用モータに電力を供給するための高電圧のバッテリである。負荷S1は、車両に搭載された排気ガス処理装置の触媒を加熱する、印加される電圧によって温度が変化するヒータである。電力変換装置1は、フィルタ回路10と、電力変換回路11と、フィルタ回路12と、電圧検出回路13、14と、電流センサ15と、制御回路16とを備えている。
フィルタ回路10は、バッテリB1から入力される直流に含まれる高周波成分を除去する回路である。フィルタ回路10の入力端はバッテリB1の正極端及び負極端に、出力端は電力変換回路11にそれぞれ接続されている。
電力変換回路11は、制御回路16によって制御され、リアクトル及びIGBTを有し、IGBTをスイッチングすることでリアクトルに流れる電流を制御し、バッテリB1から入力される直流を所定電圧の直流に変換して負荷S1に出力する回路である。具体的には、バッテリB1から入力される直流を降圧又は昇圧して負荷S1に供給する回路である。電力変換回路11は、スイッチング回路110と、トランスと111と、スイッチング回路112とを備えている。
スイッチング回路110は、IGBT110a〜110d(スイッチング素子)と、ダイオード110e〜110hとを備えている。
IGBT110a、110b及びIGBT110c、110dは、それぞれ直列接続されている。具体的には、IGBT110a、110cのエミッタが、IGBT110b、110dのコレクタにそれぞれ接続されている。直列接続されたIGBT110a、110b及び直列接続されたIGBT110c、110dは、並列接続されている。具体的には、IGBT110a、110cのコレクタ及びIGBT110b、110dのエミッタがそれぞれ共通接続されている。つまり、IGBT110a〜110dはブリッジ接続されている。共通接続されたIGBT110a、110cのコレクタ及び共通接続されたIGBT110b、110dのエミッタは、フィルタ回路10の出力端にそれぞれ接続されている。また、IGBT110a、110bの直列接続点及びIGBT110c、110dの直列接続点は、トランス111にそれぞれ接続されている。さらに、IGBT110a〜110dのゲートは、制御回路16にそれぞれ接続されている。
ダイオード110e〜110hのアノードはIGBT110a〜110dのエミッタに、カソードはIGBT110a〜110dのコレクタにそれぞれ接続されている。つまり、ダイオード110e〜110hは、IGBT110a〜110dに逆並列接続されている。
トランス111は、1次巻線111aと、2次巻線111bとを有している。また、漏れインダクタンスによって構成されるリアクトル111cを備えている。1次巻線111aの一端はリアクトル111cを介してIGBT110a、110bの直列接続点に、他端はIGBT110c、110dの直列接続点にそれぞれ接続されている。また、2次巻線111bの一端及び他端は、スイッチング回路112にそれぞれ接続されている。
スイッチング回路112は、IGBT112a〜112d(スイッチング素子)と、ダイオード112e〜112hとを備えている。
IGBT112a、112b及びIGBT112c、112dは、それぞれ直列接続されている。具体的には、IGBT112a、112cのエミッタが、IGBT112b、112dのコレクタにそれぞれ接続されている。直列接続されたIGBT112a、112b及び直列接続されたIGBT112c、112dは、並列接続されている。具体的には、IGBT112a、112cのコレクタ及びIGBT112b、112dのエミッタがそれぞれ共通接続されている。つまり、IGBT112a〜112dはブリッジ接続されている。IGBT112a、112bの直列接続点は2次巻線111bの一端に、IGBT112c、112dの直列接続点は2次巻線111bの他端にそれぞれ接続されている。また、共通接続されたIGBT112a、112cのコレクタ及び共通接続されたIGBT112b、112dのエミッタは、フィルタ回路10の入力端にそれぞれ接続されている。さらに、IGBT112a〜112dのゲートは、制御回路16にそれぞれ接続されている。
ダイオード112e〜112hのアノードはIGBT112a〜112dのエミッタに、カソードはIGBT112a〜112dのコレクタにそれぞれ接続されている。つまり、ダイオード112e〜112hは、IGBT112a〜112dに逆並列接続されている。
フィルタ回路12は、スイッチング回路112から入力される直流に含まれる高周波成分を除去する回路である。フィルタ回路12の入力端は、共通接続されたIGBT112a、112cのコレクタ及び共通接続されたIGBT112b、112dのエミッタに、出力端は負荷の正極端及び負極端にそれぞれ接続されている。
電圧検出回路13は、フィルタ回路10を介して電力変換回路11に入力される電圧を検出し、検出結果を出力する回路である。電圧検出回路13は、フィルタ回路10の入力端にそれぞれ接続されている。また、検出結果を出力する出力端は、制御回路16に接続されている。
電圧検出回路14は、フィルタ回路12を介して電力変換回路11から出力される電圧を検出し、検出結果を出力する回路である。電圧検出回路14は、フィルタ回路12の出力端にそれぞれ接続されている。また、検出結果を出力する出力端は、制御回路16に接続されている。
電流センサ15は、フィルタ回路12を介して電力変換回路11から出力される電流を検出し、検出結果を出力する素子である。電流センサ15は、フィルタ回路12の出力端と負荷S1の負極端を接続する配線に設けられている。また、検出結果を出力する出力端は、制御回路16に接続されている。
制御回路16は、外部から入力される電力変換装置1の出力電圧指令、電圧検出回路13、14及び電流センサ15の検出結果に基づいて、電力変換回路11を制御する回路である。具体的には、出力電圧指令、電圧検出回路13、14及び電流センサ15の検出結果に基づいてPWM信号(駆動信号)を生成し、生成したPWM信号に基づいてIGBT110a〜110d、112a〜112dのスイッチングを制御する回路である。制御回路16は、電圧検出回路13、14及び電流センサ15の出力端にそれぞれ接続されている。また、IGBT110a〜110d、112a〜112dのゲートにそれぞれ接続されている。制御回路16は、マイクロコンピュータを有し、図2に示すように、偏差演算部160と、PI演算部161と、偏差演算部162と、PI演算部163と、乗算部164と、選択部165と、加算部166と、乗算部167と、選択部168と、加算部169とを備えている。偏差演算部160、PI演算部161、偏差演算部162、PI演算部163、乗算部164、選択部165、加算部166、乗算部167、選択部168及び加算部169は、マイクロコンピュータ及びソフトウェアによって構成されている。
偏差演算部160は、外部から入力される電力変換回路11の出力電圧指令Vout*と、電圧検出回路14の検出結果から求めた電力変換回路11の出力電圧Voutの偏差を演算し、偏差ΔVoutとして出力するブロックである。
PI演算部161は、偏差演算部160の出力する偏差ΔVoutを比例、積分演算し、電力変換回路11の出力電流指令Iout*として出力するブロックである。
偏差演算部162は、PI演算部161の出力する電力変換回路11の出力電流指令Iout*と、電流センサ15の検出結果から求めた電力変換回路11の出力電流Ioutの偏差を演算し、偏差ΔIoutとして出力するブロックである。
PI演算部163は、偏差演算部162の出力する偏差ΔIoutを比例、積分演算し、電力変換回路11のリアクトル電圧指令VL*として出力するブロックである。
乗算部164は、PI演算部163の出力するリアクトル電圧指令VL*に、電圧検出回路13の検出結果から求めた電力変換回路11の入力電圧Vinの逆数1/Vinを乗算し、降圧時におけるフィードバック項のデューティ比D_duty_fbとして出力するブロックである。
選択部165は、降圧時連続モード用フィードフォワード項(以下、降圧時CCMFF項と記載する)のデューティ比D_duty_ff_ccm、及び、降圧時不連続モード用フィードフォワード項(以下、降圧時DCMFF項と記載する)のデューティ比D_duty_ff_dcmのうち、最も値の小さいものを選択し、降圧時におけるフィードフォワード項のデューティ比D_duty_ffとして出力するブロックである。ここで、降圧時CCMFF項のデューティ比D_duty_ff_ccmは、リアクトル111cに連続的に電流が流れる連続モードで電力変換回路11が降圧動作していると仮定した場合におけるフィードフォワード項のデューティ比である。降圧時DCMFF項のデューティ比D_duty_ff_dcmは、リアクトル111cに断続的に電流が流れる不連続モードで電力変換回路11が降圧動作していると仮定した場合におけるフィードフォワード項のデューティ比である。
降圧時CCMFF項のデューティ比D_duty_ff_ccmは、数1に示すように、電圧検出回路13、14の検出結果から求めた電力変換回路11の入出力電圧Vin、Voutに基づいて算出される。
また、降圧時DCMFF項のデューティ比D_duty_ff_dcmは、数2に示すように、予め設定されているリアクトル111cのインダクタンスL、スイッチング回路110のスイッチング周波数f、1次巻線111aに対する2次巻線111bの巻数比n、電圧検出回路13、14及び電流センサ15の検出結果から求めた電力変換回路11の入出力電圧Vin、Vout、出力電流Ioutに基づいて算出される。
加算部166は、乗算部164の出力する降圧時におけるフィードバック項のデューティ比D_duty_fbに、選択部165の出力する降圧時におけるフィードフォワード項のデューティ比D_duty_ffを加算し、降圧時におけるデューティ比D_dutyとして出力するブロックである。
乗算部167は、PI演算部163の出力するリアクトル電圧指令VL*に、電圧検出回路14の検出結果から求めた電力変換回路11の出力電圧Voutの逆数1/Voutを乗算し、昇圧時におけるフィードバック項のデューティ比U_duty_fbとして出力するブロックである。
選択部168は、昇圧時連続モード用フィードフォワード項(以下、昇圧時CCMFF項と記載する)のデューティ比U_duty_ff_ccm、及び、昇圧時不連続モード用フィードフォワード項(以下、昇圧時DCMFF項と記載する)のデューティ比U_duty_ff_dcmのうち、最も値の小さいものを選択して、昇圧時におけるフィードフォワード項のデューティ比U_duty_ffとして出力するブロックである。ここで、昇圧時CCMFF項のデューティ比U_duty_ff_ccmは、リアクトル111cに連続的に電流が流れる連続モードで電力変換回路11が昇圧動作していると仮定した場合におけるフィードフォワード項のデューティ比である。昇圧時DCMFF項のデューティ比U_duty_ff_dcmは、リアクトル111cに断続的に電流が流れる不連続モードで電力変換回路11が昇圧動作していると仮定した場合におけるフィードフォワード項のデューティ比である。
昇圧時CCMFF項のデューティ比U_duty_ff_ccmは、数3に示すように、電圧検出回路13、14の検出結果から求めた電力変換回路11の入出力電圧Vin、Voutに基づいて算出される。
また、昇圧時DCMFF項のデューティ比U_duty_ff_dcmは、数4に示すように、予め設定されているリアクトル111cのインダクタンスL、スイッチング回路110のスイッチング周波数f、1次巻線111aに対する2次巻線111bの巻数比n、電圧検出回路13、14及び電流センサ15の検出結果から求めた電力変換回路11の入出力電圧Vin、Vout、出力電流Ioutに基づいて算出される。
加算部169は、乗算部167の出力するフィードバック項のデューティ比U_duty_fbに、選択部168の出力するフィードフォワード項のデューティ比U_duty_ffを加算し、昇圧時におけるデューティ比U_dutyとして出力するブロックである。
次に、図1〜図5を参照して第1実施形態の電力変換装置の動作について説明する。
図1に示す電圧検出回路13、14は、電力変換回路11の入出力電圧を検出し、検出結果を出力する。電流センサ15は、電力変換回路11の出力電流を検出し、検出結果を出力する。
制御回路16は、電圧検出回路13、14及び電流センサ15の検出結果から電力変換回路11の入出力電圧Vin、Vout、出力電流Ioutを求める。 そして、入出力電圧Vin、Vout及び数1から、降圧時CCMFF項のデューティ比D_duty_ff_ccmを算出する。予め設定されているリアクトル111cのインダクタンスL、スイッチング回路110のスイッチング周波数f、1次巻線111aに対する2次巻線111bの巻数比n、求めた入出力電圧Vin、Vout、出力電流Iout、及び、数2から、降圧時DCMFF項のデューティ比D_duty_ff_dcmを算出する。
また、入出力電圧Vin、Vout及び数3から、昇圧時CCMFF項のデューティ比U_duty_ff_ccmを算出する。予め設定されているインダクタンスL、スイッチング周波数f、巻数比n、求めた入出力電圧Vin、Vout、出力電流Iout、及び、数4から、昇圧時不連続モード用フィードフォワード項のデューティ比U_duty_ff_dcmを算出する。
図2に示す偏差演算部160は、外部から入力される出力電圧指令Vout*と出力電圧Voutの偏差を演算し、偏差ΔVoutとして出力する。PI演算部161は、偏差ΔVoutを比例、積分演算し、出力電流指令Iout*として出力する。偏差演算部162は、出力電流指令Iout*と出力電流Ioutの偏差を演算し、偏差ΔIoutとして出力する。PI演算部163は、偏差ΔIoutを比例、積分演算し、リアクトル電圧指令VL*として出力する。
乗算部164は、リアクトル電圧指令VL*に入力電圧Vinの逆数1/Vinを乗算し、降圧時におけるフィードバック項のデューティ比D_duty_fbとして出力する。
ところで、入力電圧及び出力電力が一定の場合、図3に示すように、降圧時CCMFF項のデューティ比D_duty_ff_ccmは、出力電圧Voutに対して直線的に変化する。一方、降圧時DCMFF項のデューティ比D_duty_ff_dcmは、出力電圧Voutに対して曲線的に変化する。出力電圧VoutがV1より小さい領域では、降圧時CCMFF項のデューティ比D_duty_ff_ccmの方が、降圧時DCMFF項のデューティ比D_duty_ff_dcmより小さくなる。出力電圧VoutがV1になると、降圧時CCMFF項のデューティ比D_duty_ff_ccmと降圧時DCMFF項のデューティ比D_duty_ff_dcmが、同一の値になる。出力電圧VoutがV1より大きくV2より小さい領域では、降圧時DCMFF項のデューティ比D_duty_ff_dcmの方が、降圧時CCMFF項のデューティ比D_duty_ff_ccmより小さくなる。出力電圧VoutがV2になると、降圧時CCMFF項のデューティ比D_duty_ff_ccmと降圧時DCMFF項のデューティ比D_duty_ff_dcmが、同一の値になる。出力電圧VoutがV2より大きく入力電圧Vin以下の領域では、降圧時CCMFF項のデューティ比D_duty_ff_ccmの方が、降圧時DCMFF項のデューティ比D_duty_ff_dcmより小さくなる。出力電圧Voutが入力電圧Vinと同一の値のときには、降圧時CCMFF項のデューティ比D_duty_ff_ccmが1になる。
図2に示す選択部165は、降圧時CCMFF項のデューティ比D_duty_ff_ccm、及び、降圧時DCMFF項のデューティ比D_duty_ff_dcmのうち、最も値の小さいものを選択して、降圧時におけるフィードフォワード項のデューティ比D_duty_ffとして出力する。具体的には、図4に示すように、出力電圧VoutがV1以下の領域では、降圧時CCMFF項のデューティ比D_duty_ff_ccmを出力する。出力電圧VoutがV1より大きくV2以下の領域では、降圧時DCMFF項のデューティ比D_duty_ff_dcmを出力する。出力電圧VoutがV2より大きくVin以下の領域では、降圧時CCMFF項のデューティ比D_duty_ff_ccmを出力する。その結果、出力電圧Voutが入力電圧Vin以下であり、降圧動作が必要となる状態において、フィードフォワード項のデューティ比D_duty_ffが、出力電圧Voutに対して連続的に変化するようになる。
図2に示す加算部166は、フィードバック項のデューティ比D_duty_fbに、フィードフォワード項のデューティ比D_duty_ffを加算し、降圧時におけるデューティ比D_dutyとして出力する。
一方、乗算部167は、リアクトル電圧指令VL*に出力電圧Voutの逆数1/Voutを乗算し、昇圧時におけるフィードバック項のデューティ比U_duty_fbとして出力する。
ところで、入力電圧及び出力電力が一定の場合、図3に示すように、昇圧時CCMFF項のデューティ比U_duty_ff_ccmは、出力電圧Voutに対して直線的に変化する。一方、昇圧時DCMFF項のデューティ比U_duty_ff_dcmは、出力電圧Voutに対して曲線的に変化する。出力電圧Voutが入力電圧Vinと同一の値のときには、昇圧時CCMFF項のデューティ比U_duty_ff_ccmは0になる。出力電圧Voutが入力電圧Vin以上でV3より小さい領域では、昇圧時CCMFF項のデューティ比U_duty_ff_ccmの方が、昇圧時DCMFF項のデューティ比U_duty_ff_dcmより小さくなる。出力電圧VoutがV3になると、昇圧時CCMFF項のデューティ比U_duty_ff_ccmと昇圧時DCMFF項のデューティ比U_duty_ff_dcmが、同一の値になる。出力電圧VoutがV3より大きい領域では、昇圧時DCMFF項のデューティ比U_duty_ff_dcmの方が、昇圧時CCMFF項のデューティ比U_duty_ff_ccmより小さくなる。
図2示す選択部168は、昇圧時CCMFF項のデューティ比U_duty_ff_ccm、及び、昇圧時DCMFF項のデューティ比U_duty_ff_dcmのうち、最も値の小さいものを選択して、昇圧時におけるフィードフォワード項のデューティ比U_duty_ffとして出力する。具体的には、図4に示すように、出力電圧VoutがVinより大きくV3以下の領域では、昇圧時CCMFF項のデューティ比U_duty_ff_ccmを出力する。出力電圧VoutがV3より大きい領域では、昇圧時DCMFF項のデューティ比U_duty_ff_dcmを出力する。その結果、出力電圧Voutが入力電圧Vinより大きく、昇圧動作が必要となる状態において、フィードフォワード項のデューティ比U_duty_ffが出力電圧Voutに対して連続的に変化するようになる。
図2に示す加算部169は、フィードバック項のデューティ比U_duty_fbに、フィードフォワード項のデューティ比U_duty_ffを加算し、昇圧時におけるデューティ比U_dutyとして出力する。
制御回路16は、出力電圧指令Vout*が入力電圧Vin以下であり、降圧動作が必要なときには、加算部166の出力する降圧時におけるデューティ比D_dutyに基づいて、スイッチング周波数fのPWM信号を生成する。そして、生成したPWM信号に基づいてIGBT110a〜110dのスイッチングを制御する。図1に示すスイッチング回路110は、バッテリB1から入力される直流を交流に変換してトランス111に供給する。スイッチング回路112は、ダイオード112e〜112hによってトランス111から供給される交流を整流して直流に変換し負荷S1に供給する。
その結果、入力電圧Vin及び出力電流指令Iout*が一定の場合、図5に示すように、出力電圧VoutがV1以下の領域では、連続モードで動作し、バッテリB1の電圧が降圧され、負荷S1に供給される。出力電圧VoutがV1より大きくV2以下の領域では、不連続モードで動作し、バッテリB1の電圧が降圧され、負荷S1に供給される。出力電圧VoutがV2より大きくVin以下の領域では、連続モードで動作し、バッテリB1の電圧が降圧され、負荷S1に供給される。連続モードから不連続モードの切替わっても、不連続モードから連続モードに切替わっても、出力電流Ioutは出力電流指令Iout*とほぼ一致しており、歪みは発生していない。
一方、図1に示す制御回路16は、出力電圧指令Vout*が入力電圧Vinより大きく、昇圧動作が必要なときには、スイッチング周波数fのPWM信号を生成し、生成したPWM信号に基づいてIGBT110a〜110dのスイッチングを制御する。さらに、図2に示す加算部169の出力する昇圧時におけるデューティ比U_dutyに基づいてスイッチング周波数fのPWM信号を生成する。そして、生成したPWM信号に基づいてIGBT112a〜112dのスイッチングを制御する。
その結果、入力電圧Vin及び出力電流指令Iout*が一定の場合、図5に示すように、出力電圧VoutがVinより大きくV3以下の領域では、連続モードで動作し、バッテリB1の電圧が昇圧され、負荷S1に供給される。出力電圧VoutがV3より大きい領域では、不連続モードで動作し、バッテリB1の電圧が昇圧され、負荷S1に供給される。連続モードから不連続モードの切替わっても、不連続モードから連続モードに切替わっても、出力電流Ioutは出力電流指令Iout*とほぼ一致しており、歪みは発生していない。また、降圧動作から昇圧動作に切替わっても、昇圧動作から降圧動作に切替わっても、出力電流Ioutは出力電電流指令Iout*とほぼ一致しており、歪みは発生していない。
次に、第1実施形態の効果について説明する。
従来方式の場合、連続モードと不連続モードの切替わり時に、フィードフォワード項のデューティ比が突然変化することがある。この場合、図6に示すように、連続モードと不連続モードの切替わりに伴って、出力電流Ioutが出力電流指令Iout*からずれてしまう。つまり、出力電流Ioutが歪んでしまう。
しかし、第1実施形態によれば、制御回路16は、連続モード用フィードフォワード項のデューティ比と、不連続モード用フィードフォワード項のデューティ比を算出する。そして、PWM信号を生成するためのフィードフォワード項のデューティ比が電力変換回路11の出力電圧に対して連続的に変化するように、連続モード用フィードフォワード項のデューティ比及び不連続モード用フィードフォワード項のデューティ比のうち1つを選択し、PWM信号を生成するためのフィードフォワード項のデューティ比として出力する。そのため、PWM信号を生成するためのフィードフォワード項のデューティ比が連続的に変化する。連続モードと不連続モードの切替わり時に、突然、掛け離れた値に変化するようなことがない。そのため、図5に示すように、連続モードと不連続モードの切替わりに伴って発生する出力電流の歪みを抑えることができる。
第1実施形態によれば、制御回路16は、連続モード用フィードフォワード項のデューティ比及び不連続モード用フィードフォワード項のデューティ比のうち、最も値の小さいもの選択して、PWM信号を生成するためのフィードフォワード項のデューティ比として出力する。そのため、PWM信号を生成するためのフィードフォワード項のデューティ比を、確実に、連続的に変化させることができる。
直流を降圧又は昇圧する電力変換装置において、従来方式の場合、図6に示すように、連続モードと不連続モードの切替わり時に、出力電流Ioutが歪んでしまう。また、降圧動作と昇圧動作の切替わり時にも出力電流Ioutが歪んでしまう。
しかし、第1実施形態によれば、制御回路16は、降圧時CCMFF項のデューティ比、降圧時DCMFF項のデューティ比、昇圧時CCMFF項のデューティ比、及び、昇圧時DCMFF項のデューティ比を算出する。そして、PWM信号を生成するためのフィードフォワード項のデューティ比が連続的に変化するように、降圧時CCMFF項のデューティ比及び降圧時不連続モード用フィードフォワード項のデューティ比のうちのいずれか1つ、昇圧時CCMFF項のデューティ比及び昇圧時DCMFF項のデューティ比のうちいずれか1つを選択し、PWM信号を生成するためのフィードフォワード項のデューティ比として出力する。図4に示すように、降圧動作と昇圧動作の切替わり時に、デューティ比が1から0、又は、0から1に変化することになるが、デューティ比は0〜1の範囲内で変化するものであり、1から0、又は、0から1への変化は連続的な変化に相当する。つまり、連続モードと不連続モードの切替わり時だけでなく、降圧動作と昇圧動作の切替わり時にも、PWM信号を生成するためのフィードフォワード項のデューティ比が連続的に変化する。そのため、直流を降圧又は昇圧する電力変換装置1において、図5に示すように、連続モードと不連続モードの切替わりに伴って発生する出力電流の歪みを抑えることができる。また、降圧動作と昇圧動作の切替わりに伴って発生する出力電流の歪みも抑えることができる。
第1実施形態によれば、制御回路16は、降圧時CCMFF項のデューティ比及び降圧時不連続モード用フィードフォワード項のデューティ比のうち、最も値の小さいものを、昇圧時CCMFF項のデューティ比及び昇圧時DCMFF項のデューティ比のうち、最も値の小さいものを選択して、PWM信号を生成するためのフィードフォワード項のデューティ比として出力する。そのため、PWM信号を生成するためのフィードフォワード項のデューティ比を、確実に、連続的に変化させることができる。
(第2実施形態)
次に、第2実施形態の電力変換装置について説明する。第2実施形態の電力変換装置は、第1実施形態の電力変換装置に対して、連続モードと不連続モードの切替わり点を含む所定範囲内において、PWM信号を生成するためのフィードフォワード項を補正するようにしたものである。
第2実施形態の電力変換装置は、制御回路内におけるPWM信号を生成するためのフィードフォワード項のデューティ比の補正を除いて、第1実施形態の電力変換装置と同一構成及び同一動作である。そのため、構成及び動作についての説明は省略する。
図1及び図7を参照して、制御回路内におけるPWM信号を生成するためのフィードフォワード項のデューティ比の補正について説明する。
図1示す制御回路16は、第1実施形態と同様に、降圧時CCMFF項のデューティ比D_duty_ff_ccm、及び、降圧時DCMFF項のデューティ比D_duty_ff_dcmのうち、最も値の小さいものを選択して、降圧時におけるフィードフォワード項のデューティ比D_duty_ffとして出力する。
その際、第1実施形態とは異なり、図7に示すように、降圧時CCMFF項のデューティ比D_duty_ff_ccmと降圧時DCMFF項のデューティ比D_duty_ff_dcmの切替わり点を含む所定範囲内において、降圧時におけるフィードフォワード項のデューティ比D_duty_ffを補正する。そして、補正したデューティ比を、降圧時におけるフィードフォワード項とデューティ比D_duty_ffとして出力する。
具体的には、降圧時CCMFF項のデューティ比D_duty_ff_ccm及び降圧時DCMFF項のデューティ比D_duty_ff_dcmを所定割合ずつ加算することで、電力変換回路11の出力電圧Voutに対するデューティ比の変化が所定範囲内となるようにし、降圧時におけるフィードフォワード項のデューティ比D_duty_ffとして出力する。しかも、降圧時CCMFF項のデューティ比D_duty_ff_ccmと降圧時DCMFF項のデューティ比D_duty_ff_dcmを加算する際の所定割合を、電力変換回路11の動作状態に応じて変更する。
昇圧時におけるフィードフォワード項のデューティ比U_duty_ffを出力する際も、同様の補正を行う。
次に、第2実施形態の電力変換装置の効果について説明する。
第2実施形態によれば、制御回路16は、図7に示すように、連続モード用フィードフォワード項のデューティ比と不連続モード用フィードフォワード項のデューティ比の切替わり点を含む所定範囲内において、PWM信号を生成するためのフィードフォワード項のデューティ比を補正する。そのため、フィードフォワード項のデューティ比の変化が大きくなりやすい、連続モード用フィードフォワード項のデューティ比と不連続モード用フィードフォワード項のデューティ比の切替わり点を含む所定範囲内において、フィードフォワード項のデューティ比を滑らかに変化させることができる。従って、連続モードと不連続モードの切替わりに伴って発生する出力電流の歪みをより抑えることができる。
第2実施形態によれば、制御回路16は、連続モード用フィードフォワード項のデューティ比及び不連続モード用フィードフォワード項のデューティ比を所定割合ずつ加算することでPWM信号を生成するためのフィードフォワード項のデューティ比を補正する。そのため、フィードフォワード項のデューティ比を確実に滑らかに変化させることができる。
第2実施形態によれば、制御回路16は、連続モード用フィードフォワード項のデューティ比と不連続モード用フィードフォワード項のデューティ比を加算する際の所定割合を、電力変換回路11の動作状態に応じて変更する。そのため、電力変換回路11の動作状態が変化しても、フィードフォワード項のデューティ比を確実に滑らかに変化させることができる。
なお、第1及び第2実施形態では、制御回路16が、連続モードと不連続モードの切替わりに関係なく、所定の演算によってフィードバック項のデューティ比を算出する例を挙げているが、これに限られるものではない。連続モードと不連続モードの切替わりに伴って、フィードバック項のデューティ比を算出する際のゲインを変更するようにしてもよい。例えば、連続モードと不連続モードの切替わりに伴って、PI演算部161、163におけるゲインを変更するようにしてもよい。これにより、追従性を向上させることができる。
また、第1及び第2実施形態では、1種類の連続モード用フィードフォワード項のデューティ比と、1種類の不連続モード用フィードフォワード項のデューティ比からPWM信号を生成するためのフィードフォワード項のデューティ比を選択する例を挙げているが、これに限られるものではない。複数種類の連続モード用フィードフォワード項のデューティ比と、複数種類の不連続モード用フィードフォワード項のデューティ比からPWM信号を生成するためのフィードフォワード項のデューティ比を選択するようにしてもよい。具体的には、複数種類の連続モード用フィードフォワード項のデューティ比、及び、複数種類の不連続モード用フィードフォワード項のデューティ比のうち、最も値の小さいものを選択して、PWM信号を生成するためのフィードフォワード項のデューティ比としてもよい。
さらに、第1及び第2実施形態では、電流センサ15が、電力変換回路11の出力電流を検出している例を挙げているが、これに限られるものではない。電流センサ15が、電力変換回路11の入力電流を検出するようにしてもよい。例えば、フィルタ回路10の入力端とバッテリB1の負極端を接続する配線に設けられていてもよい。電流センサ15の検出結果、及び、1次巻線111aに対する2次巻線111bの巻数比nに基づいて電力変換回路11の出力電流を求めればよい。