JP6011912B2 - インクジェット装置とインク吐出方法、および有機el素子の製造方法 - Google Patents

インクジェット装置とインク吐出方法、および有機el素子の製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、インクジェット装置とインク吐出方法、および有機EL素子の製造方法に関する。
インクジェット装置としては、例えば、ヘッドの吐出孔から液滴(インク)などを吐出させて用紙などの基材に画像を記録する一般的なインクジェットプリンタ、インクジェット方式を用いたファクシミリ装置や複写装置、布などへのプリント装置、あるいはEL基板への塗布装置など民生、産業用と用途は多様である。
ところで、インクジェット装置においては、ヘッドから吐出されたインクの全てが、紙や布やガラス基板などの基材に付着すれば問題を生じないが、実際には吐出されたインクの一部が微小液滴の粒子となって装置内を浮遊するミスト(気中内コロイド)となる現象が発生する。
また、ミストは、装置内を浮遊するだけでなく、装置内で衝突を起こしたり、静電力によりランダムに付着したりすることがある。
このようにミストがヘッドの吐出孔が開設されているヘッドプレート(インクジェット吐出孔プレート)に付着した場合には、インクの吐出方向を曲げてしまったり、インクが吐出できない現象(不吐出)を招いてしまったりすることがある。
上記のようなミストの問題に対して、種々の取り組みがなされている(特許文献1,2,3)。
図17(a)に示すように、特許文献1に開示のインクジェット装置のインクジェットヘッドにおいては、ヘッド本体904のZ軸方向下側にヘッドプレート906が取り付けられている。ヘッドプレート906およびヘッド本体904の一部に対しては電極フィルム902が貼着されており、電極フィルム902には、3列のインク吐出孔列911と各々のインク吐出孔列911を囲繞する複数のミスト吸引孔901が開けられている。また、電極フィルム902には、吸引ジョイント孔909およびパッド931が設けられている。
図17(b)に示すように、吐出素子910は、インク供給口950とミスト吸引連通溝971とを一つのシリコン半導体チップの上に構成したものである。ミスト吸引溝907は、ヘッドプレート906およびヘッド本体904の一部表面に刻設されている。なお、特許文献1に開示の技術では、ミスト吸引孔901が、例えば、マゼンダインク吐出孔列とシアンインク吐出孔列との間などに設けられている。
また、特許文献2には、インクジェット装置において、ヘッドおよびキャレッジユニットの移動方向に隣接するように、左右2箇所に設けられたミスト回収機構により、ミストを吸引する技術が開示されている。
また、特許文献3には、ミストを吸収する材質を使用した払拭部材により、インクジェット装置のヘッドプレートを清掃することという方法が開示されている。
特開2005−111880号公報 特開2011−88103号公報 特開2003−1833号公報
しかしながら、特許文献1に開示の従来技術では、次のような問題がある。
特許文献1に開示の技術では、各インク吐出孔列911を囲繞するようにミスト吸引孔901が設けられているので、ミスト吸引孔901の近傍を浮遊しているミストを吸引することはある程度可能であるが、ヘッドプレート906に付着してしまったミスト、特に、各インク吐出孔列911に属する吐出孔間に付着してしまったミストを回収することは困難である。このヘッドプレートに付着したミスト(以下では、「付着ミスト」と記載する)は、その表面張力とヘッドプレート表面の撥液性との関係により凝集し、ある程度の大きさに達した時点で基材の上に落下することになる。このようにミストが基材に落下した場合には、不良となる。
本発明の一態様は、上記のような問題の解決を図ろうとなされたものであって、ヘッドプレートへの付着ミストを回収することで、高品質なインク塗布が可能なインクジェット装置、インク吐出方法、および有機EL素子の製造方法を提供することを目的とする。
そこで、本発明の一態様に係るインクジェット装置は、ヘッドにおけるインク吐出側のプレートに、インク吐出用の吐出孔が0.282mm以下のピッチで複数設けられてなるインクジェット装置であって、プレートには、複数の吐出孔の各々に対応して、吐出されたインクに由来するミストを吸引するための吸引孔が設けられており、複数の吐出孔の各々と当該吐出孔に対応する吸引孔との間の距離は、複数の吐出孔の内の最近接する吐出孔間の距離よりも小さい、という構成を採用することとした。
本発明の一態様に係るインクジェット装置では、上記構成を採用することにより、作業効率の低下を抑制しながら、浮遊ミストおよびヘッドプレートへの付着ミストの双方を回収することで、高品質なインク塗布が可能である。
本発明の実施の形態1に係るインクジェット装置1の外観構成を示す模式斜視図である。 インクジェット装置1における主要構成を示す模式斜視図である。 インクジェットヘッド18の構成を示す模式斜視図である。 インクジェットヘッド18における一部断面構成を示す模式断面図である。 インクジェットヘッド18におけるピエゾ素子1800の駆動形態を示す模式断面図である。 付着ミスト602とミスト吸引孔181bの配置との関係を示す模式平面図である。 付着ミスト602の界面での表面張力Tと付着ミスト602の自重Gとの関係を示す模式断面図である。 ヘッドプレート181の撥液面181cの接触角θが最大値となるときの、付着ミスト602の直径を計算するための模式断面図である。 (a)は、ヘッドプレート181の撥液面181cの接触角θが115°のときの、付着ミスト602の直径φ2rを示す模式断面図であり、(b)は、そのときのミスト吸引孔181bの配置形態を示す模式平面図である。 (a)は、実施の形態2に係るインクジェット装置の構成の内、インクジェットヘッドにおけるミスト吸引孔181dの形態を示す模式平面図であり、(b)は、実施の形態3に係るインクジェット装置の構成の内、インクジェットヘッドにおけるミスト吸引孔181eの形態を示す模式平面図である。 (a)は、実施の形態4に係るインクジェット装置の構成の内、インクジェットヘッドにおけるミスト吸引孔181fの形態を示す模式平面図であり、(b)は、実施の形態5に係るインクジェット装置の構成の内、インクジェットヘッドにおけるミスト吸引孔181gの形態を示す模式平面図である。 実施の形態6に係るインクジェット装置の構成の内、インクジェットヘッドにおけるインク吐出孔281a1〜281a4とミスト吸引孔281b1〜281b4との配置形態を示す模式平面図である。 (a)は、実施の形態7に係るインクジェット装置の構成の内、インクジェットヘッド38における一部断面構成を示す模式断面図であり、(b)は、インクジェットヘッド38におけるインク吐出孔381aとミスト吸引孔381bとの配置形態を示す模式平面図である。 実施の形態8に係るインクジェット装置の構成の内、インクジェットヘッド48におけるインク吐出孔481aとミスト吸引孔481bとの配置関係を示す模式平面図である。 実施の形態9に係る有機EL素子の製造方法を示す工程図である。 有機EL素子の製造工程の内、発光層の形成工程の一部を示す模式断面図である。 (a)は、従来技術に係るインクジェット装置の構成の内、インクジェットヘッドの構成を示す斜視図であり、(b)は、その展開斜視図である。
[本発明の各態様を推考するに至った経緯]
上記従来技術において言及されることなく、解決されていないミストに関する現実的な問題があった。それは、有機EL(エレクトロルミネッセンス)素子の製造に際して、実際にインクジェット装置を用い基材へ電荷輸送層を形成するためのインクの印刷を実行した際、短絡が発生するという課題である。現状で行っている塗布印刷は、微細なインク(液滴)をバンクにより囲繞された凹部内に塗布する作業を実行するのであるが、塗布・乾燥を経た後に短絡の発生が確認された。
本発明者は、上記のような問題発生に対し、当初、吐出インクに起因する浮遊ミスト(ヘッドと基材との間に浮遊しているミスト)が原因であると考えた。そのため、浮遊ミストを抑制するための種々の方策を実行したが、短絡の発生が減少するには至らなかった。浮遊ミストを抑制する方策の具体例は、例えば、基材へのインク塗布の際に、吐出パルスの波形制御を行ったり、装置内における気流の制御を行ったりした。
ここで、インク塗布後の基材の分析および観察を行った結果、基材に付着したミストの径は、約φ100μm程度であることが判明した。このミスト径は、吐出インク径の約5倍、ヘッドと基材との間に浮遊している浮遊ミスト径の約100倍もある。
このような本発明者による探求の結果に基づき、浮遊ミスト以外に短絡の発生原因がないか否かを、吐出インクの方向位置制度確認のため、インクジェット装置のプレートを常時観察することとした。その結果、インク吐出動作を実行して行くに従って、浮遊していたミストが徐々にプレートの表面に付着し、プレートの表面において隣接するミスト同士が集合して凝集し、あるいは浮遊ミストが付着ミストに合体して、インク塗布の動作時間の経過に伴い付着したミスト(付着ミスト)の径が大きくなることが分かった。そして、吐出孔に付着ミストが掛かると着弾精度が悪くなり混色が発生し、不吐出を起こすこともある。また、付着ミストの径がある寸法まで成長した時点で、最終的に基材に落下することを確認した。
また、付着ミストが吐出孔近傍に存在する場合、インク吐出時に吐出孔のインクと付着ミストとが接し、インク室内のインクをインク室外に流出させるおそれがある。その結果、吐出孔からの正常なインクの吐出を妨げ、さらには、インク室外のインクが付着ミストに流出することで付着ミストは大きくなり、最終的に基材に落下するという問題も生じ得る。
本発明者は、有機EL装置の製造における上記短絡の発生が、凝集などにより成長した付着ミストが最終的に基材に落下することに原因があることを見出した。
上記メカニズムは、プレート表面に付着した付着ミストが、プレート表面に付与されている撥液性よりも接触角が大きくなるために、付着ミストはプレート表面で流動する。そして、近傍に位置するミスト、および既に付着している付着ミストが合体し、表面張力により最小の表面積をとろうとするので、付着ミストが集合体となり大型化する。
また、インク塗布の際のヘッドの移動による慣性力の影響を受けて、付着ミストの集合体もプレート表面を移動し、ミストの集合体同士が合体を繰り返し、さらに付着ミストが大型化する。この付着ミストの凝集を放置すると、吐出孔に掛かり着弾精度が悪くなり混色の問題が発生し、不吐出を起こすこともある。また、ある程度のミスト径にまで成長した時点で、自重により基材に落下したり、また、装置の振動や衝撃などの影響でも基材に落下したりする。
さらに、付着ミストが、プレートの表面と基材の表面との間隔よりも大きく成長したような場合には、落下するまでもなく、基材に成長した付着ミストがそのまま付着してしまうという事態も生じ得る。
[従来技術についての考察]
(1)特許文献1に開示の技術
特許文献1に開示のインクジェット装置では、インクジェットヘッドにおいて、インク吐出孔列911を取り囲むように形成されたミスト吸引孔901でミストの回収を行うため、上述のように、ミスト吸引孔901の近傍に浮遊する浮遊ミストについては、ある程度回収することができるが、ヘッドプレート906に付着してしまったミスト(付着ミスト)については回収が困難である。
また、特許文献1に開示のインクジェット装置では、各インク吐出孔列911に複数のインク吐出孔が設けられているのであるが、これらインク吐出孔同士の間には、ミスト吸引孔が設けられていない。このため、各インク吐出孔列における隣接するインク吐出孔間にミストが付着する可能性が高く、ミストが付着した部分ではヘッドプレート906の表面よりも撥液性が低下するので、インクの吐出方向が不安定となり、混色などの画質劣化を招く。
また、付着ミストによりインク吐出孔からのインクの吐出が阻害される場合も生じ得る。
また、ヘッドプレート906の表面に付着したミストは、隣接する付着ミスト同士が凝集して大きくなり、ある大きさまで成長した段階で、その自重により塗布印刷中の基材に対して落下したり、ヘッドプレート906と基材との間隔よりも大きくなった場合には、成長した付着ミストが基材にそのまま付着してしまったりすることも考えられる。
また、ヘッドプレート906の表面に付着したミストを吸引しようとする場合、インク吐出孔からのミスト吸引孔901までの距離によって吸引可能な付着ミストの径が決まってしまう。この孔間の距離が、凝集により成長できる付着ミストの最大径よりも大きい場合には、ミスト吸引孔901により吸引できず基材に落下する可能性がある。
また、特許文献1に開示のインクジェット装置では、インク吐出孔列911の近傍にミスト吸引溝907を刻設する必要がある。このため、インク吐出孔同士のピッチが狭いインクジェットヘッドの場合においては、十分にミストを吸引できるだけのミスを吸引溝907を形成するためのスペースをとることが困難となる。
さらに、特許文献1に開示のインクジェット装置では、ヘッドプレート906と基材との間に浮遊するミストを、インク吐出孔から離れた位置で吸引することになるため、浮遊ミストを吸引するためには、吐出速度以上に吸引速度を設定することが必要となる。このような速度設定を採用した場合には、インクの吐出方向とは逆向きの気流が発生することになり、吐出インクの着弾位置がずれる可能性が高くなる。
(2)特許文献2に開示の技術
特許文献2に開示のインクジェット装置では、上述のように、インクジェットヘッドと基材との間に浮遊しているミストについては回収機構を用いてある程度は回収できると考えられるが、一度ヘッドプレートの表面に付着してしまったミストについては回収することが困難であると考えられる。
また、特許文献2に開示のインクジェット装置では、ミスト回収機構がインクジェットヘッドの本体から離れた箇所に配されているため、ミストの吸引に関しムラを生じることが考えられる。このため、特許文献2に開示のインクジェット装置では、特にヘッドプレートにおける面中央部分に付着したミストを吸引することが困難である。このようなヘッドプレートにおける面中央部に付着したミストを吸引しようとする場合には、吸引力を強くしなければならず、上記同様に、吸引に伴う気流の影響により基材に対するインクの着弾位置がずれる可能性が高くなる。
(3)特許文献3に開示の技術
特許文献3に開示の技術では、ヘッドプレートに付着したミストを払拭することは可能であるが、インク塗布中におけるヘッドプレートと基材との間に浮遊するミストを回収することはできない。
また、ヘッドプレートの払拭を行う場合には、その度毎に塗布印刷動作を停止し、払拭機構が設けられている位置までインクジェットヘッドを移動させる必要がある。このため、作業効率の低下を招いてしまう。
また、払拭作業は、インク吐出中にはできないため、高精細なインクジェット装置には不可欠な、高速塗布印刷には適さない。
また、払拭作業の際には、ヘッドプレートの表面に対して払拭部材を接触させるため、ヘッドプレート表面の撥液性が低下してしまうことが考えられる。このようにヘッドプレート表面の撥液性が低下してしまうと、吐出インクの着弾位置のずれが生じたり、不吐出となったりするなどの問題を招く。
また、ヘッドプレートの表面に付着したミストは、乾燥により増粘し、それを払拭することにより、インク吐出孔の目詰まりを生じることも考えられる。
また、ヘッドプレートの表面は、高い撥液性が付与されているため、払拭部材で付着ミストの一部を払拭部材に吸収させることはできるが、吸収できなかったミストは、ヘッドプレートから再び飛散して浮遊ミストとなる可能性が高いものと考えられる。
[本発明の各態様]
本発明者は、上記のような従来技術における各問題に鑑み、次のような構成の各態様を創作した。
本発明の一態様に係るインクジェット装置は、ヘッドにおけるインク吐出側のプレートに、インク吐出用の吐出孔が0.282mm以下のピッチで複数設けられてなるインクジェット装置であって、プレートには、複数の吐出孔の各々に対応して、吐出された前記インクに由来するミストを吸引するための吸引孔が設けられており、複数の吐出孔の各々と当該吐出孔に対応する吸引孔との間の距離は、複数の吐出孔の内の最近接する前記吐出孔間の距離よりも小さい。
上記態様では、ヘッドのプレートにおいて、各吐出孔に対応して吸引孔が開けられている。そして、各吐出孔と対応する吸引孔との間の距離が、複数の吐出孔の内の再近接する吐出孔同士の間の距離よりも小さく設定されている。よって、プレート表面に付着したミスト同士が凝集し、基材に対して落下する大きさに成長する前に吸引孔からミストを吸引することができる。
また、上記態様では、ヘッドのプレートにミストの吸引孔を設けているので、吐出孔からインクを吐出する動作を実行しながら、ミストの吸引を実行することができる。このため、上記態様では、プレートの表面に付着したミストを吸引できるとともに、ヘッドと基材との間に浮遊するミストについても吸引できる。また、上記態様では、プレートの表面に付着したミストを吸引するために、インク塗布に係る領域から離れた領域にヘッドを移動させる必要がなく、高い作業効率を実現することができる。
また、上記態様では、ヘッドのプレートに吸引孔を設け、インクの吐出動作を実行しながらミストの吸引を実行できるので、上記特許文献3のように、ミストの清掃作業のために吐出動作を停止する必要がなく、高い生産効率を得ることができる。また、払拭部材でのミスト回収とは異なり、吸引孔からミストを吸引するので、インクの吐出動作中における吐出孔の詰りや、吐出インクへの影響を抑えることができる。よって、上記態様では、高い着弾性能で高い品質でのインク塗布が可能である。
従って、上記態様では、作業効率の低下を抑制しながら、浮遊ミストおよびヘッドプレートへの付着ミストの双方を回収することで、高品質なインク塗布が可能である。
上記態様に係るインクジェット装置では、例えば、次のようなバリエーション態様を採用することもできる。
本発明に係る一態様に係るインクジェット装置は、上記構成において、複数の吐出孔には、同一材料を含むインクを吐出する2以上の吐出孔から構成された吐出孔群が含まれており、吐出孔群を構成する2以上の吐出孔は、列状に配置されており、吸引孔は、吐出孔群を構成する2以上の吐出孔に対して、隣接する吐出孔間の各々に設けられている、という構成を採用することもできる。
上記態様では、隣接する吐出孔間の各々に吸引孔が設けられているので、プレートの表面に付着したミストが凝集により成長し、基材に対して落下する前に吸引孔からミストを吸引することができる。即ち、上記態様に係るインクジェット装置では、吐出孔同士のピッチが0.282mm以下であり、その半分以下の間隔で吸引孔を設けることで、基材に凝集したインクが落下する前に吸引孔からミストを吸引することができる。
本発明の一態様に係るインクジェット装置は、上記構成において、複数の吐出孔から一の吐出孔を取り出して見るとき、当該一の吐出孔を挟んだ状態で少なくとも2つの吸引孔が設けられている。このような態様を採用することで、上記一の吐出孔の周囲に付着した付着ミストが成長した場合にも、基材に落下する前に2つの吸引孔の何れかに吸引されることになる。このため、塗布印刷の高い品質を得ることができる。
本発明の一態様に係るインクジェット装置は、複数の吐出孔の各々と当該吐出孔に対応する吸引孔との間の距離は、0.329mm以下である。このように、複数の吐出孔の各々と当該吐出孔に対応する吸引孔との間の間隔を0.329mm以下とすることにより、付着した付着インクが隣接する吐出孔に掛かることなく、基材に落下する前に吸引孔から吸引することができる。
本発明の一態様に係るインクジェット装置は、上記構成において、プレートの外面とミストとの接触角が115°以下である。インクジェット装置におけるヘッドのプレートにおいては、その撥液性の接触角は50°〜115°が望ましく、また、インクを吐出させるための接触角は90°以上とすることが望ましい。このような知見に基づき、接触角が最大値をとる場合に、付着ミストの直径が最小となるので、接触角が最大値である115°で付着ミストが基材に落下する際の付着ミストの直径を計算すると、異なる接触角のプレートを使用したとしても、必ず付着ミストを含めたミスト回収が可能となる。また、撥液面(プレートの表面)の撥液性が劣化して接触角が変化した場合であっても、ミストを吸引により回収可能である。
本発明の一態様に係るインクジェット装置は、上記構成において、ヘッドは、ブロック状のヘッド本体に対し、その一の外面にプレートが取り付けられた構成を有し、ヘッド本体には、複数の吐出孔の各々に対して連通する複数のインク貯留室が設けられているとともに、隣接するインク貯留室間に、空隙室が各々設けられており、複数の吸引孔は、複数の空隙室の各々に連通している。このように、複数の吸引孔のそれぞれを、複数の空隙室の各々と連通させた構成を採用することにより、吸引孔から吸引されたミストは、吸引経路としての空隙室を経由して排出・回収されることになる。
本発明の一態様に係るインクジェット装置は、上記構成において、ヘッド本体について、複数のインク貯留室の各々は、プレートの取り付け面に対して直交する方向に延伸形成されており、複数のインク貯留室の各々を臨む両側壁は、ピエゾ素子を以って構成されており、複数の空隙室の各々は、隣接するインク貯留室に対応するピエゾ素子同士の間に形成されている。このような、隣接するインク貯留室同士の間の空隙室は、各インク貯留室の側壁を構成するピエゾ素子の圧力を緩衝する圧力緩衝室として設けられている。この圧力緩衝室である空隙室は、ピエゾ方式のインクジェット装置のヘッドには従来からも設けられており、本態様では、その圧力緩衝室である空隙室をミストの回収経路として利用するものである。よって、ヘッドに対して新たにミスト回収用の経路を設ける場合よりも、設計面で容易であり、且つ、ヘッドの機械的剛性を維持するという面でも優位である。特に、ザール方式のインクジェットヘッドの場合には、このような構成を採用することが好適である。
なお、図17(a)、(b)に示す従来技術に係るインクジェット装置のヘッドにおいては、ミスト回収のためにミスト吸引溝907を設ける必要があり、煩雑な設計作業が必要であるとともに、吸引孔の配置によっては、これに接続されるミスト吸引溝の形成により、ヘッドの機械的剛性が低下してしまうおそれもある。これに対して、本態様では、そのような問題を生じない。
本発明の一態様に係るインクジェット装置は、上記構成において、複数の空隙室には、ミストを吸引するための気流を形成する吸引ユニットが連設されている。このように吸引ユニットの吸引力によりミストを吸引する構成とする場合においても、本態様では、同じ材料を含む隣接吐出孔同士の間に吸引孔を設けているので、吐出インクの弾道に影響を及ぼすことがないように小さな吸引力とすることができる。この場合でも、ミストの吸引ができる。
本発明の一態様に係るインクジェット装置は、上記構成において、プレートについては、複数の吸引孔の各開口が、複数の吐出孔の各開口よりもインクの吐出方向に位置しており、プレートの外面は、複数の吐出孔の各開口と、当該吐出孔に対応する吸引孔の各開口との間において、斜面を以って構成されている。この態様の構成は、プレートの表面に付着したミストが表面張力により撥液面であるプレート表面を移動し易いという性質を利用したものである。即ち、プレートにおける吐出孔と対応する吸引孔との間の斜面(テーパー面)を以って構成、換言すると、ヘッドにおけるプレート表面部分の断面形状が、吸引孔を頂点とするピラミッド形状となる構成、を採用することにより、プレート表面に付着した付着ミストは、ヘッドの移動に伴う慣性力や振動などの影響などによって、吸引孔の方へと移動させることができる。これにより、付着ミストの乾燥による増粘や固着を防止することができ、プレート表面の撥液性の低下を防止することができる。
本発明の一態様に係るインク吐出方法は、上記の何れかの態様に係るインクジェット装置を用いインクを吐出する。この態様に係るインク吐出方法によれば、上記何れかの態様に係るインクジェット装置を用いるので、作業効率の低下を抑制しながら、浮遊ミストおよびヘッドプレートへの付着ミストの双方を回収することで、高品質なインク塗布が可能である。
本発明の一態様に係るインク吐出方法は、上記構成において、複数の吐出孔の内の少なくとも1つの吐出孔からインクの吐出を実行する吐出工程と、少なくとも1つの吐出孔から吐出されたインクに由来するミストを、複数の吸引孔の内の少なくとも1つの吸引孔から吸引を実行する吸引工程と、を有し、吸引工程は、吐出工程の実行開始以後、時間的に少なくとも一部が重複するように実行される。このように、吐出工程と吸引工程とが、時間的に少なくとも一部が重複するように実行することとすれば、上記特許文献2,3のように、塗布工程の実行を中断して吸引工程を実行する場合に比べて、高い作業効率を得ることができる。なお、上記「時間的に少なくとも一部が重複するように実行」とは、塗布工程と吸引工程とが完全に並行して実行される場合に限らず、塗布工程に対し、その前半あるいは後半などで間欠的に吸引工程を実行する場合も含む。
本発明の一態様に係る有機EL素子の製造方法は、第1電極を形成する工程と、第1電極上に、少なくとも発光機能を有する機能層を形成する工程と、機能層上に第2電極を形成する工程と、を備え、機能層を形成する工程には、機能性材料を含むインクを塗布し、乾燥させることにより有機機能膜を形成するサブ工程が含まれ、有機機能膜を形成するサブ工程の実行には、インクの塗布に上記の何れかの態様に係るインクジェット装置を用いる。この態様に係る有機EL素子の製造方法によれば、インク塗布に際して上記何れかの態様に係るインクジェット装置を用いるので、作業効率の低下を抑制しながら、浮遊ミストおよびヘッドプレートへの付着ミストの双方を回収することで、高品質なインク塗布が可能である。
また、例えば、電荷輸送層を形成するためのインク塗布において上記態様に係る方法を用いるようにすれば、形成された有機EL素子での短絡の問題を発生し難い。よって、高い品質の有機EL素子を、高い歩留まりを以って製造することができる。
本発明の一態様に係る有機EL素子の製造方法は、上記構成において、有機機能膜を形成するサブ工程中のインクの塗布の実行に際しては、複数の吐出孔の内の少なくとも1つの吐出孔から前記インクを吐出し、少なくとも1つの吐出孔から吐出されたインクに由来するミストを、複数の吸引孔の内の少なくとも1つの吸引孔から吸引するものであって、ミストの吸引を、インクの吐出開始以後、時間的に少なくとも一部が重複するように実行する。
この態様に係る有機EL素子の製造方法においても、上記のように、吐出工程と吸引工程とが、時間的に少なくとも一部が重複するように実行するので、上記特許文献2,3のように、塗布工程の実行を中断して吸引工程を実行する場合に比べて、高い作業効率を得ることができる。また、本態様においても、上記「時間的に少なくとも一部が重複するように実行」とは、塗布工程と吸引工程とが完全に並行して実行される場合に限らず、塗布工程に対し、その前半あるいは後半などで間欠的に吸引工程を実行する場合も含む。
以下では、具体例を用い、本発明に係る態様の特徴、および作用・効果について説明する。なお、本発明は、その本質的な特徴的構成要素を除き、以下の実施の形態に何ら限定を受けるものではない。
[実施の形態1]
1.インクジェット装置1の構成
インクジェット装置1の構成について、図1を用い説明する。
図1に示すように、インクジェット装置1h、装置ベース10を有し、その上(Z軸方向上)の四隅に近い各部分に4本の支柱12a〜12dが立設されている。支柱12aと支柱12dとの間には、Y軸方向に延伸する状態でガイドシャフト13aが渡されており、同様に、支柱12bと支柱12cとの間には、ガイドシャフト13bが渡されている。ガイドシャフト13a,13bには、それぞれリニアモータ14a,14bが取り付けられており、リニアモータ14a,14bには、ガントリー15が接合されている。リニアモータ14a,14bは、互いに同期した状態でガイドシャフト13a,13bに沿ってY軸方向に移動可能となっている。
ガントリー15には、ヘッドベース16が取り付けられており、ヘッドベース16は、ガントリー15の内部に設けられたモータ(図示を省略)により、X軸方向に移動可能となっている。ヘッドベース16には、サーボモータ19が固定されており、サーボモータ19の回転軸には、ヘッドステージ17が取り付けられている。そして、ヘッドステージ17のZ軸方向下側、即ち、基材500に対向する側には、インクジェットヘッド19が取り付けられている。
装置ベース10のZ軸方向上面には、基材ステージ11が載置され、当該基材ステージ11の上にインク塗布の対象である基材500が載置されるようになっている。
図2を用い、インクジェット装置1の要部構成について補足説明をする。
図2に示すように、基材500を載置するための基材ステージ11は、装置ベース10(図1を参照)に対してX軸方向およびY軸方向に移動可能なX−Yステージである。即ち、基材ステージ11は、矢印Axおよび矢印Ayの各方向に自在に移動できるようになっている。
また、インクジェットヘッド18がZ軸方向下側に固定されたヘッドステージ17は、装置ベース10(図1を参照)に対してX軸方向およびY軸方向(矢印Bxの方向および矢印Byの方向)に移動可能であるとともに、Z軸に沿った軸芯L1の周りを回転自在となっている(矢印Bθ)。
図2に示すように、基材500の表面に対してインク塗布を実行する場合には、基材ステージ11およびヘッドステージ17を適宜移動させて、基材500の塗布領域に向けてインク600を吐出する。
2.インクジェットヘッド18の構成
インクジェットヘッド18の構成について、図3および図4を用い説明する。
図3に示すように、インクジェットヘッド18は、ヘッド本体180と、ヘッド本体180のZ軸方向手前側(基材500に対向する側)に接合されたヘッドプレート181とから構成されている。そして、ヘッドプレート181には、X軸方向およびY軸方向に複数のインク吐出孔181aが開設されているとともに、X軸方向あるいはY軸方向に隣り合うインク吐出孔181a同士の間にミスト吸引孔181bが開設されている。
図4は、図3の矢印C部分で指し示す断面構成を示す。
図4に示すように、ヘッドプレート181には、複数のインク吐出孔181aが開設されているが、その各々は、ヘッド本体180に設けられたインク貯留室180aと連通されている。インク貯留室180aは、Z軸方向に延設されており、インク601が貯留されており、図示を省略するインク供給部へと繋がっている。各インク貯留室180aの側壁は、ピエゾ素子1800により構成されており、隣り合うピエゾ素子1800同士の間には、空隙室180bが設けられている。インクジェットヘッド18においては、各インク貯留室180aを臨むピエゾ素子1800の変位に基づき、インク600が吐出される。
空隙室180bは、あるピエゾ素子1800が変位した場合に、隣のインク貯留室180aに影響を与えないようにする圧力緩衝室として設けられている。本実施の形態では、隣り合うインク吐出孔181a同士の間に開けられたミスト吸引孔181bの各々が、各空隙室180bに連通されている。そして、空隙室180bには、ミストを吸引するための気流の流れ(矢印Dの気流の流れ)を形成する吸引ユニット1801が取り付けられている。
なお、図2に示すように、本実施の形態においては、インクジェットヘッド18におけるヘッドプレート181に、複数のインク吐出孔181aが開設されているが、例えば、X軸方向に配列されたインク吐出孔180aは、同じ材料(溶質)を含むインクを吐出でいるようになっており、インク吐出孔列を構成している。そして、本実施の形態においては、各インク吐出孔列に属する複数のインク吐出孔181aに対しても、隣り合うインク吐出孔181a同士の間にミスト吸引孔181bが開設されている。
3.インクの吐出動作とミスト回収
インクジェット装置1におけるインクの吐出動作とミストの回収について、図4および図5を用い説明する。
先ず、図5に示すように、インクを吐出させようとする場合には、該当するインク貯留室180aを臨むピエゾ素子1800に電圧印加し、矢印Eに示すようにピエゾ素子1800が変位することでインク貯留室180aが圧縮され、これにより当該インク貯留室180aに貯留されていたインク601の一部が、インク吐出孔181aから基材500(図1および図2を参照)の塗布対象領域に向けて吐出される。
ここで、インクジェット装置1によるインク塗布動作においては、インクジェットヘッド18から吐出されたインク600の全てが、基材500の塗布対象領域に付着すれば問題を生じないが、実際には吐出されたインク600の一部が微小液滴の粒子となる場合がある。具体的には、図4に示すように、吐出されたインク600の一部は、インクジェットヘッド18と基材500との間の空間に浮遊する浮遊ミスト603(気中内コロイド)となったり、あるいはヘッドプレート181の表面に付着する付着ミスト602となったりすることがある。
このようなミスト602,603に対し、本実施の形態に係るインクジェット装置1では、インクジェットヘッド18におけるヘッドプレート181に、隣り合うインク吐出孔181a同士の間にミスト吸引孔181bが設けられている。このため、吸引ユニット1801が形成する気流Dにより、浮遊ミスト603はもとより、付着ミスト602についてもミスト吸引孔181bから吸引することが可能である。
なお、上記のような作用は、本実施の形態に係るインクジェット装置1においては、インクジェットヘッド18におけるミスト吸引孔181bの形成位置を、対応するインク吐出孔181aとの間の距離が、複数のインク吐出孔181aの内の最近接するインク吐出孔181a間の距離よりも小さいように規定していることに起因する。
また、本実施の形態に係るインクジェット装置1では、インク吐出孔181aからインク600を吐出する動作と、発生したミスト602,603をミスト吸引孔181bから吸引する動作とを時間的に重複した状態で実施可能である。よって、上記特許文献2,3に開示された技術に対して、作業の無駄を排除することができ、生産効率の高いインク塗布を実行可能である。なお、時間的に重複した状態とは、インク塗布動作の際に並行してミスト吸引を持続的に行うこととしてもよいし、インク塗布動作中に間欠的にミスト吸引を行うこととしてもよい、ということを意味する。
また、本実施の形態においては、ミスト吸引孔181bから付着ミスト602および浮遊ミスト603の双方を効果的に吸引することができる。また、上記特許文献3に開示された技術のように、付着ミスト602の除去のために吸着部材をヘッドプレート181の表面に押し当てるものではないので、ヘッドプレート181表面に付与された撥液性の低下が発生し難い。
さらに、本実施の形態では、ミスト吸引孔181bを上記規定に則して設けているので、付着ミスト602が凝集などにより成長した場合にあっても、基材500に落下するよりも前にミスト吸引孔181bから付着ミスト602を吸引することができる。これより、上記特許文献1に開示の技術よりも、塗布印刷に係る品質を高く維持することができる。また、本実施の形態では、ミスト吸引孔181bを対応するインク吐出孔181aの極近くに配置しているので、弱い吸引力でもミスト602,603を吸引することができる。従って、インクジェットヘッド18と基材500との間の空間の気流の乱れを低減でき、基材500へ吐出されるインク600の弾道に影響を及ぼしにくく、基材500へのインク600の着弾精度の向上を図ることができる。
4.インク吐出孔181aに対するミスト吸引孔181bの配置
インク吐出孔181aに対するミスト吸引孔181bの配置について、図6および図7を用い説明する。
図6に示す用尾に、インク吐出孔181aの直径をφDとし、ミスト吸引孔181bの直径をφd、付着ミスト602が凝集により落下する直前の直径をφ2rとする。そして、インク吐出孔181aとミスト吸引孔181bとのセンター間(中心間)の距離をPとする。このような寸法関係にあるときに、本実施の形態においては、図6に示すように、付着ミスト602が落下する寸前の状態まで成長した時には、必ずミスト吸引孔181bが一部重複するように配置されている。これにより、インクジェット装置1では、浮遊ミスト603を吸引できるのはもとより、付着ミスト602をその成長途中で(基材500に落下する前に)ミスト吸引孔181bから吸引することが可能である。
次に、図7に示すように、凝集により成長した付着ミスト602において、ヘッドプレート181の表面での表面張力Tよりも、ミスト602の自重Gの方が大きくなった場合には基材500に落下することになる。このとき、次式の関係が成立する。
Figure 0006011912
また、上記の場合における付着ミスト602の液滴体積をV、付着ミスト602の液滴球体の半径をR、ヘッドプレート181の表面における付着ミスト602の液滴半径をr、付着ミスト602におけるヘッドプレート181の表面での接触角をθとする。また、重力加速度をg、付着ミスト602の密度をρ、付着ミスト602の表面張力をt、補正係数をfとする。このとき、付着ミスト602の液滴体積Vは、次式で表される。
Figure 0006011912
また、付着ミスト602の自重Gについては、次式で表される。
Figure 0006011912
さらに、付着ミスト602におけるヘッドプレート181の表面での表面張力Tは、次式で表される。
Figure 0006011912
よって、付着ミスト602が凝集により成長し、基材500に落下すると仮定した場合の、上記(数1)は、次式に置き換えることができる。
Figure 0006011912
また、付着ミスト602の液滴球体の半径Rと、ヘッドプレート181の表面での液滴半径rとの関係は、次式で表される。
Figure 0006011912
上記(数6)を上記(数5)に代入すると、次式が得られる。
Figure 0006011912
よって、上記(数7)は、次式のようになる。
Figure 0006011912
従って、ヘッドプレート181の表面で凝集により成長した付着ミスト602の直径φ2rは、次式で表される。
Figure 0006011912
上記(数9)の関係にあるとき、付着ミスト602は基材500に落下する。このため、ミスト吸引孔181bを、上記(数9)に示す付着ミスト602の直径φ2rになる前に吸引できる位置に配置すれば、基材500への付着ミスト602の落下を防止することができる。
5.接触角θと付着ミスト602の直径
ヘッドプレート181の撥液面での接触角θが最大値になるときの、付着ミスト602の直径について、図8を用い説明する。
インクジェット装置1におけるヘッドプレート181の撥液面(表面)181cでの接触角θは、50°〜115°である。そして、インク600を吐出させるための接触角θは、90°以上であることが望ましい。
図8に示すように、接触角θが最大値をとる場合には、付着ミスト602の直径が最小となるので、接触角θを最大値である115°より、落下する際の付着ミスト602の直径を計算すれば、異なる接触角θのヘッドプレート181を使用しても、必ずミスト602,603を吸引できるミスト吸引孔181bの配置を規定することができる。
ここで、ミスト602における液滴密度ρは、次式で表される。
Figure 0006011912
また、付着ミスト602の液滴の表面張力tは、次式で表される。
Figure 0006011912
接触角θが最大値である115°の場合、基材500に落下する際の付着ミスト602の直径φ2rは、上記(数9)を用い、次式のようになる。
Figure 0006011912
上記(数12)より、次式の関係を導くことができる。
Figure 0006011912
従って、基材500に落下する際の付着ミスト602の直径φ2rになる前に吸引できるように、インク吐出孔181aに対するミスト吸引孔181bとの間の距離を、0.329mm以下とすれば、基材500に落下する前に付着ミスト602を吸引することができる。
この結論について、具体例を図9(a)および図9(b)を用い補足しておく。
図9(a)に示すように、接触角θが115°のとき、落下する付着ミスト602の直径φ2rは、0.329mmである。
図9(b)に示すように、ヘッド解像度が90dpi(インク吐出孔181a間ピッチ:P=0.282mm)の場合、ミスト吸引孔181bが隣接するインク吐出孔181a間にあれば、基材500に落下する前に付着ミスト602をミスト吸引孔181bから吸引することが可能となる。
なお、上記では、インク吐出孔181a間のピッチP=0.282mmのヘッド解像度90dpiを一例としたが、当該解像度のインクジェットヘッドでミスト吸引が可能であれば、例えば、ヘッド解像度180dpi(P=0.141mm)やヘッド解像度360dpi(P=0.0705mm)などにおいても、付着ミスト602を吸引することができる。
[実施の形態2]
実施の形態2に係るインクジェット装置について、図10(a)を用い説明する。なお、図10(a)では、構成上の特徴部分であるミスト吸引孔181dの周辺部分だけを図示するが、他の構成については、実施の形態1とかわるところはない。
図10(a)に示すように、本実施の形態に係るミスト吸引孔181dは、正方形の開口形状を有する。そして、落下する付着ミスト602の直径φ2rに対して、ミスト吸引孔181dはその一部が重複する位置に配されている。換言すると、インク吐出孔181aに対するミスト吸引孔181dの最短距離g1が、落下する付着ミスト602の直径φ2rよりも小さくなるように、ミスト吸引孔181dが配されている。これらの位置関係については、上記実施の形態1と同様である。
以上の構成により、本実施の形態に係るインクジェット装置においても、作業効率の低下を抑制しながら、浮遊ミスト603およびヘッドプレート181への付着ミスト602の双方を回収することで、高品質なインク塗布が可能である。
[実施の形態3]
実施の形態3に係るインクジェット装置について、図10(b)を用い説明する。なお、図10(b)でも、構成上の特徴部分であるミスト吸引孔181eの周辺部分だけを図示するが、他の構成については、実施の形態1とかわるところはない。
図10(b)に示すように、本実施の形態に係るミスト吸引孔181eは、X軸方向の長さが長い長方形の開口形状を有する。そして、本実施の形態においても、インク吐出孔181aに対するミスト吸引孔181eの最短距離g2が、落下する付着ミスト602の直径φ2rよりも小さくなるように、ミスト吸引孔181eが配されている。これらの位置関係については、上記実施の形態1と同様である。
以上の構成により、本実施の形態に係るインクジェット装置においても、作業効率の低下を抑制しながら、浮遊ミスト603およびヘッドプレート181への付着ミスト602の双方を回収することで、高品質なインク塗布が可能である。
[実施の形態4]
実施の形態4に係るインクジェット装置について、図11(a)を用い説明する。なお、図11(a)でも、構成上の特徴部分であるミスト吸引孔181fの周辺部分だけを図示するが、他の構成については、実施の形態1とかわるところはない。
図11(a)に示すように、本実施の形態に係るミスト吸引孔181fは、X軸およびY軸を基準として平面視するとき、菱形の開口形状を有する。そして、本実施の形態においても、インク吐出孔181aに対するミスト吸引孔181fの最短距離g3が、落下する付着ミスト602の直径φ2rよりも小さくなるように、ミスト吸引孔181fが配されている。これらの位置関係については、上記実施の形態1と同様である。
以上の構成により、本実施の形態に係るインクジェット装置においても、作業効率の低下を抑制しながら、浮遊ミスト603およびヘッドプレート181への付着ミスト602の双方を回収することで、高品質なインク塗布が可能である。
[実施の形態5]
実施の形態5に係るインクジェット装置について、図11(b)を用い説明する。なお、図11(b)でも、構成上の特徴部分であるミスト吸引孔181gの周辺部分だけを図示するが、他の構成については、実施の形態1とかわるところはない。
図11(b)に示すように、本実施の形態に係るミスト吸引孔181gは、X軸方向の径がY軸方向の径に比べて長い楕円形あるいは長円形の開口形状を有する。そして、本実施の形態においても、インク吐出孔181aに対するミスト吸引孔181gの最短距離g4が、落下する付着ミスト602の直径φ2rよりも小さくなるように、ミスト吸引孔181gが配されている。これらの位置関係については、上記実施の形態1と同様である。
以上の構成により、本実施の形態に係るインクジェット装置においても、作業効率の低下を抑制しながら、浮遊ミスト603およびヘッドプレート181への付着ミスト602の双方を回収することで、高品質なインク塗布が可能である。
[実施の形態6]
実施の形態6に係るインクジェット装置について、図12を用い説明する。図12では、インクジェットヘッドにおけるヘッドプレートに設けられたインク吐出孔281a1〜281a4,・・とミスト吸引孔281b1〜281b4,・・を平面視した状態を示している。他の構成については、実施の形態1とかわるところがない。
図12に示すように、ヘッドプレートにおいて、X軸方向およびY軸方向にインク吐出孔281a1〜281a4,・・が開設されている。本実施の形態では、X軸方向およびY軸方向に対して斜めとなる方向において隣り合うことになるインク吐出孔281a1〜281a4,・・同士の間に、ミスト吸引孔281b1〜281b4,・・が開設されている。
具体的には、例えば、インク吐出孔281a1とインク吐出孔281a2との間にミスト吸引孔281b1が設けられ、同様に、インク吐出孔281a1とインク吐出孔281a3との間にミスト吸引孔281b2、インク吐出孔281a2とインク吐出孔281a4との間にミスト吸引孔281b3、インク吐出孔281a3とインク吐出孔281a4との間にミスト吸引孔281b4がそれぞれ開設されている。
このような配置を以ってミスト吸引孔281b1〜281b4,・・を設けた場合においても、上記実施の形態1と同様の寸法関係を以ってミスト吸引孔281b1〜281b4,・・を開設することで、同様の効果を得ることができる。
[実施の形態7]
1.本発明者の得た知見
図を用い本実施の形態の構成を説明する前に、本実施の形態を推考するに当たり、本発明者が得た知見について説明する。
付着ミスト602がヘッドプレート表面に付着した場合、凝縮により成長した付着ミスト602が基材500に落下する径になる前に増粘および固着してしまうことがある。これは、ヘッドプレート表面の撥液性の低下を招き、撥液性の低下がインク吐出孔の近傍周辺で発生した場合に、吐出されたインク600がヘッドプレートにおける撥液性の低下した領域に向けて引き寄せられる。このため、着弾精度の低下を招くこと考えられる。
また、撥液性の低下した領域に向けて吐出されたインク600が引き寄せられるように、インク吐出孔から吐出のインクの漏れも発生することがある。
本発明者は、上記のような知見を得、これに基づき次のような実施の形態を推考した。
2.実施の形態に係るインクジェット装置の構成
実施の形態7に係るインクジェット装置の構成について、図13(a)および図13(b)を用い説明する。なお、図13(a)および図13(b)では、インクジェットヘッド38の構成の一部を図示しているが、他の構成については、上記実施の形態1とかわるところはない。
図13(a)に示すように、本実施の形態に係るインクジェットヘッド38においても、ヘッドプレート381に開設された複数のインク吐出孔381aが、それぞれインク貯留室180aに連通されており、各インク貯留室180aに臨む壁部は、ピエゾ素子1800により構成されている。そして、隣り合うピエゾ素子1800同士の間には、空隙室180bが設けられ、各空隙室180bには、ヘッドプレート381に開設された複数のミスト吸引孔381bが連通されている。図示を省略しているが、本実施の形態においても、各空隙室180bには、吸引ユニットが連結されている。
図13(b)に示すように、ヘッドプレート381におけるインク吐出孔381aとミスト吸引孔381bとは、上記実施の形態1と同様に、配列されている。ただし、図12に示す実施の形態6のような配列とすることもできる。
図13(a)に戻って、本実施の形態では、ヘッドプレート381の表面(撥液面)381cがX軸方向に水平ではなく、インク吐出孔381aの周囲部分からミスト吸引孔381bの周囲部分に向けてZ軸方向下向きに下がる斜面を以って構成されている。
斜面は、例えば、インク吐出孔381aの周辺部分とミスト吸引孔381bの周辺部分との間のギャップhが、0.5mm以下となるように形成されている。
以上のような構成を採用するインクジェットヘッド38を採用する場合には、付着ミスト602が乾燥・固着する前に、インク吐出孔381aの周囲部分からミスト吸引孔381bの方へと移動し、効果的に付着ミスト602をミスト吸引孔381bから吸引させることができる。よって、付着ミスト602の乾燥や増粘によるヘッドプレート381の撥液性の低下を防止することができる。
なお、上記のようなヘッドプレート381の表面381cにおける付着ミスト602の移動は、インクジェットヘッド38の駆動に伴う慣性力や振動などによっても、より促進されることになる。
[実施の形態8]
実施の形態8に係るインクジェット装置について、図14を用い説明する。なお、図14では、インクジェット装置の構成の内、インクジェットヘッド48のヘッドプレートの表面481cの一部だけを図示しており、他の構成については、上記実施の形態7とかわるところはない。
図14に示すように、本実施の形態のインクジェットヘッド48では、ミスト吸引孔481bが正方形の開口形状を有する。そして、インク吐出孔481aとミスト吸引孔481bとの間については、ヘッドプレートの表面481cが、上記実施の形態7と同様に斜面を以って構成されている。斜面となっているヘッドプレート481の表面形状については、図13(a)に示す構成と基本的に同じである。
本実施の形態においても、インク吐出孔481aとミスト吸引孔481bとの間におけるヘッドプレートの表面481cが斜面となっているので、付着ミスト602が乾燥・固着する前に、インク吐出孔481aの周囲部分からミスト吸引孔481bの方へと移動し、効果的に付着ミスト602をミスト吸引孔481bから吸引させることができる。よって、付着ミスト602の乾燥や増粘によるヘッドプレートの表面481cの撥液性の低下を防止することができる。
また、本実施の形態では、ヘッドプレートの表面481cのうち、斜面を以って構成された部分とミスト吸引孔481bの開口縁との間に間隔があいていない、即ち、斜面とミスト吸引孔481bの開口縁との間に水平面の部分がないので、より高効率に付着ミスト602の吸引をさせることができる。
[実施の形態9]
実施の形態9では、上記実施の形態1〜8のインクジェット装置を用いる場面として、一例として有機EL素子の製造方法を採用し、図15および図16を用い説明する。
先ず、有機EL素子の製造においては、TFT基板を準備する(図15におけるステップS1)。TFT基板は、ガラスや樹脂などからなる基板上に、複数のTFT(薄膜トランジスタ)素子を形成したものである。なお、TFT素子については、無機TFT素子を採用することもできるし、有機TFT素子を採用することもできる。特に、有機TFT素子を採用する場合には、半導体層を形成する際のインク塗布に上記実施の形態1〜8のインクジェット装置を用いることができる。
次に、図16に示すように、TFT基板の上に平坦化層700を形成し(図15のステップS2)、各サブピクセルに対応してコンタクトホールCHをあける(図15のステップS3)。
次に、平坦化層700の表面に沿って、アノード701、透明導電膜702、およびホール注入層703を順に積層する(図15のステップS4、S5、S6)。なお、これらについては、サブピクセル単位で独立した状態とされている。
次に、ホール注入層703の一部が底面に露出するように、バンク704を形成する(図15のステップS7)。バンク704については、サブピクセル単位で凹部704aが規定される、所謂、ピクセルバンク構成を採用することもできるし、ライン状に複数列の凹部704aが規定される、所謂、ラインバンク構成を採用することもできる。
次に、バンク704の囲繞により構成された凹部704a内にインク塗布および乾燥を行うことで、ホール輸送層705を形成する(図15のステップ。このインク塗布においても、上記実施の形態1〜8のインクジェット装置を用いることができる。
次に、図16に示すように、インク600を塗布して塗布膜604を形成し、これを乾燥させることにより、発光層を形成する(図15のステップS9)。このインク塗布においても、上記実施の形態1〜8のインクジェット装置を用いることができる。
なお、インク塗布に際しては、インクジェットヘッド18を矢印Fに示すように移動させながら、順次、複数の凹部704aに対して所要量のインクを塗布するのであるが、この際には、インク吐出孔181aについては、列毎に吐出インクの種類が規定されている。即ち、列毎に同じ材料を含むインク600が吐出されるようになっており、インクジェットヘッド18には、複数の発光色に対応するインクが吐出できるように、異なるインクが供給される複数のインク吐出孔列が規定されている。
次に、発光層の上に、電子輸送層を形成する(図15のステップS10)。電子輸送層の形成においても、インク塗布を含む場合には、上記実施の形態1〜8のインクジェット装置を用いることができる。
次に、電子輸送層の上に、カソードおよび封止層を順次積層する(図15のステップS11、S12)。そして、別途、形成しておいたCFパネルを接合し(図15のステップS13)、完成したパネル部に対して駆動制御部を接続し(図15のステップS14)、エージング処理を実行することによって(図15のステップS15)、有機EL素子が完成する。
本実施の形態に係る有機EL素子の製造方法においては、インクの塗布を伴う工程の少なくとも一部において、上記実施の形態1〜8の何れかのインクジェット装置を用いるので、上記同様に、作業効率の低下を抑制しながら、浮遊ミストおよびヘッドプレートへの付着ミストの双方を回収することで、高品質なインク塗布が可能である。そして、完成した有機EL素子においては、上述のような短絡の発生を防止することができる。
一例として、本実施の形態で用いることができる各部位の材料について、説明する。
《基板》
基板は、例えば、無アルカリガラス、ソーダガラス、無蛍光ガラス、燐酸系ガラス、硼酸系ガラス、石英、アクリル系樹脂、スチレン系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、エポキシ系樹脂、ポリエチレン、ポリエステル、シリコーン系樹脂、又はアルミナ等の絶縁性材料をベースとして形成されている。
《平坦化層700》
平坦化層700は、例えば、ポリイミド、ポリアミド、アクリル系樹脂材料などの有機化合物を用い形成されている。
《アノード701》
アノード701は、アルミニウム(Al)若しくは銀(Ag)、またはそれらを含む合金から構成されている。トップエミッション型の有機EL素子の場合には、その表面部が高い光反射性を有することが好ましい。本実施の形態では、一例として、アルミニウム(Al)の合金を用いアノード701が構成されている。
《透明導電膜702》
透明導電膜702は、例えば、ITO(Indium Tin Oxide)若しくはIZO(Indium Zinc Oxide)などを用い形成されている。
《ホール注入層703》
ホール注入層703は、タングステン(W)またはモリブデン(Mo)またはニッケル(Ni)の酸化物からなる層である。上記のように、金属の酸化物からなるホール注入層703を採用する本実施の形態に係る有機EL素子では、ホールを安定的に生成し、またはホールの生成を補助して、発光層に対しホールを注入する機能を有し、大きな仕事関数を有する。
ここで、上記のように、ホール注入層703を遷移金属の酸化物から構成する場合には、複数の酸化数をとるためこれにより複数の準位をとることができ、その結果、ホール注入が容易になり駆動電圧を低減することができる。特に、酸化タングステン(WOx)を用いることが、ホールを安定的に注入し、且つ、ホールの生成を補助するという機能を有するという観点から望ましい。
《隔壁704》
隔壁704は、樹脂等の有機材料を用い形成されており絶縁性を有する。隔壁704の形成に用いる有機材料の例としては、アクリル系樹脂、ポリイミド系樹脂、ノボラック型フェノール樹脂等があげられる。隔壁704は、有機溶剤耐性を有することが好ましい。
さらに、隔壁704は、製造工程中において、エッチング処理、ベーク処理など施されることがあるので、それらの処理に対して過度に変形、変質などをしないような耐性の高い材料で形成されることが好ましい。また、撥液性をもたせるために、形成材料に撥液性の成分を含ませたり、あるいは、表面をフッ素処理したりすることもできる。
なお、隔壁704を親液性の材料を用い形成した場合には、隔壁704の表面と発光層の表面との親液性/撥液性の差異が小さくなり、発光層109を形成するために有機物質を含んだインクを、隔壁704の囲繞により構成される凹部内に選択的に保持させることが困難となってしまうためである。
さらに、隔壁704の構造については、図16に示すような一層構造だけでなく、二層以上の多層構造を採用することもできる。この場合には、層毎に上記材料を組み合わせることもできるし、層毎に無機材料と有機材料とを用いることもできる。
《ホール輸送層705》
ホール輸送層705は、親水基を備えない高分子化合物を用い形成されている。例えば、ポリフルオレンやその誘導体、あるいはポリアリールアミンやその誘導体などの高分子化合物であって、親水基を備えないものなどを用いることができる。
《発光層》
発光層は、ホールと電子とが注入され再結合されることにより励起状態が生成され発光する機能を有する。発光層の形成に用いる材料は、湿式印刷法を用い製膜できる発光性の有機材料を用いることが必要である。
具体的には、例えば、特許公開公報(日本国・特開平5−163488号公報)に記載のオキシノイド化合物、ペリレン化合物、クマリン化合物、アザクマリン化合物、オキサゾール化合物、オキサジアゾール化合物、ペリノン化合物、ピロロピロール化合物、ナフタレン化合物、アントラセン化合物、フルオレン化合物、フルオランテン化合物、テトラセン化合物、ピレン化合物、コロネン化合物、キノロン化合物及びアザキノロン化合物、ピラゾリン誘導体及びピラゾロン誘導体、ローダミン化合物、クリセン化合物、フェナントレン化合物、シクロペンタジエン化合物、スチルベン化合物、ジフェニルキノン化合物、スチリル化合物、ブタジエン化合物、ジシアノメチレンピラン化合物、ジシアノメチレンチオピラン化合物、フルオレセイン化合物、ピリリウム化合物、チアピリリウム化合物、セレナピリリウム化合物、テルロピリリウム化合物、芳香族アルダジエン化合物、オリゴフェニレン化合物、チオキサンテン化合物、アンスラセン化合物、シアニン化合物、アクリジン化合物、8−ヒドロキシキノリン化合物の金属錯体、2−ビピリジン化合物の金属錯体、シッフ塩とIII族金属との錯体、オキシン金属錯体、希土類錯体などの蛍光物質で形成されることが好ましい。
《電子注入層》
電子注入層は、カソードから注入された電子を発光層へ注入・輸送する機能を有し、例えば、オキサジアゾール誘導体(OXD)、トリアゾール誘導体(TAZ)、フェナンスロリン誘導体(BCP、Bphen)などを用い形成されている。
なお、電子注入層として、バリウム(Ba)などのアルカリ金属を用い、蒸着法等のドライプロセスを用いて成膜した層を採用することも可能である。
《カソード》
カソードは、例えば、ITO(Indium Tin Oxide)若しくはIZO(Indium Zinc Oxide)などを用い形成される。本実施の形態のように、トップエミッション型の有機ELパネル10の場合においては、光透過性の材料で形成されることが好ましい。光透過性については、透過率が80[%]以上とすることが好ましい。
《封止層》
封止層は、発光層などの有機膜が水分に晒されたり、空気に晒されたりすることを抑制する機能を有し、例えば、SiN(窒化シリコン)、SiON(酸窒化シリコン)などの材料を用い形成される。また、SiN(窒化シリコン)、SiON(酸窒化シリコン)などの材料を用い形成された層の上に、アクリル樹脂、シリコーン樹脂などの樹脂材料からなる封止樹脂層を設けてもよい。
封止層は、トップエミッション型である有機EL素子の場合においては、光透過性の材料で形成されることが好ましい。
[その他の事項]
上記実施の形態9では、インク塗布工程を備える製造の一例として、有機EL素子の製造方法を適用したが、本発明は、これに限定を受けるものではない。例えば、ヘッドの吐出孔からインクなどを吐出させて用紙などの基材に画像を記録する一般的なインクジェットプリンタ、インクジェット方式を用いたファクシミリ装置や複写装置、布などへのプリント装置、あるいはEL基板への塗布装置などにおいても用いることで、上記効果を得ることができる。
また、上記実施の形態1などでは、ヘッドプレート181に複数のインク吐出孔181aがX軸方向およびY軸方向に沿って形成されてなる構成を採用したが、インク吐出孔の配置については、互いのピッチが同一である必要は必ずしもない。例えば、インク吐出孔列同士の間の間隔が、インク吐出孔列に属するインク吐出孔間の間隔に比べて広い場合、あるいは、逆に狭い場合も採用することができる。このような場合においても、複数のインク吐出孔の各々と当該インク吐出孔に対応するミスト吸引孔との間の距離が、複数のインク吐出孔の内の最近接するインク吐出孔間の距離よりも小さい、という関係を満たせば、上記同様の効果を得ることができる。
また、上記実施の形態1では、図1に示すように、一台のインクジェット装置1に対して一つのインクジェットヘッド18が具備された構成としたが、複数のインクジェットヘッドを具備するインクジェット装置とすることもできる。この場合においても、各インクジェットヘッドにおいて上記同様の構成を採用することとすれば、同様の効果を得ることができる。
また、上記実施の形態9では、Z軸方向下側にアノード701を形成し、Z軸方向上側にカソードを形成する構成としたが、アノード701とカソードの配置関係が逆転した構成を採用することもできる。また、トップエミッション型の構成、およびボトムエミッション型の構成の何れを採用することも可能である。
本発明は、有機EL素子の製造を始め、広範な分野における印刷に適用が可能で、高品質なインク塗布が可能なインクジェット装置を実現するのに有用である。
1.インクジェット装置
10.装置ベース
11.基材ステージ
12a〜12d.支柱
13a,13b.ガイドシャフト
14a,14b.リニアモータ
15.ガントリー
16.ヘッドベース
17.ヘッドステージ
18,38,48.インクジェットヘッド
19.サーボモータ
180.ヘッド本体
180a.インク貯留室
180b.空隙室
181,381.ヘッドプレート
181a,281a1〜281a4,381a,481a.インク吐出孔
181b,181d,181e,181f,181g,281b1〜281b4,381b,481b.ミスト吸引孔
181c,381c,481c.撥液面
500.基材
600,601.インク
602.付着ミスト
603.浮遊ミスト
604.塗布インク
700.平坦化層
701.アノード
702.透明導電膜
703.ホール注入層
704.バンク
704a.凹部
1800.ピエゾ素子
1801.吸引ユニット

Claims (8)

  1. ヘッドにおけるインク吐出側のプレートに、インク吐出用の吐出孔が0.282mm以下のピッチで複数設けられてなるインクジェット装置において、
    前記プレートには、前記複数の吐出孔の各々に対応して、吐出された前記インクに由来するミストを吸引するための吸引孔が設けられており、
    前記複数の吐出孔の各々と当該吐出孔に対応する前記吸引孔との間の距離は、前記複数の吐出孔の内の最近接する前記吐出孔間の距離よりも小さく、
    前記ヘッドは、ブロック状のヘッド本体に対し、その一の外面に前記プレートが取り付けられた構成を有し、
    前記ヘッド本体には、前記複数の吐出孔の各々に対して連通する複数のインク貯留室が設けられているとともに、隣接する前記インク貯留室間に、空隙室が各々設けられており、
    前記複数の吸引孔は、前記複数の空隙室の各々に連通している
    インクジェット装置。
  2. 前記ヘッド本体において、前記複数のインク貯留室の各々は、前記プレートの取り付け面に対して直交する方向に延伸形成されており、
    前記複数のインク貯留室の各々を臨む両側壁は、ピエゾ素子を以って構成されており、
    前記複数の空隙室の各々は、隣接するインク貯留室に対応するピエゾ素子同士の間に形成されている
    請求項に記載のインクジェット装置。
  3. 前記複数の空隙室には、前記ミストを吸引するための気流を形成する吸引ユニットが連設されている
    請求項または請求項に記載のインクジェット装置。
  4. 前記プレートにおいては、前記複数の吸引孔の各開口が、前記複数の吐出孔の各開口よりも前記インクの吐出方向に位置しており、
    前記プレートの外面は、前記複数の吐出孔の各開口と、当該吐出孔に対応する前記吸引
    孔の各開口との間において、斜面を以って構成されている
    請求項1から請求項の何れかに記載のインクジェット装置。
  5. 請求項1から請求項の何れかのインクジェット装置を用い前記インクを吐出する
    インク吐出方法。
  6. 前記複数の吐出孔の内の少なくとも1つの吐出孔から前記インクの吐出を実行する吐出工程と、
    前記少なくとも1つの吐出孔から吐出された前記インクに由来するミストを、前記複数の吸引孔の内の少なくとも1つの吸引孔から吸引を実行する吸引工程と、
    を有し、
    前記吸引工程は、前記吐出工程の実行開始以後、時間的に少なくとも一部が重複するように実行される
    請求項に記載のインク吐出方法。
  7. 第1電極を形成する工程と、
    前記第1電極上に、少なくとも発光機能を有する機能層を形成する工程と、
    前記機能層上に第2電極を形成する工程と、
    を備え、
    前記機能層を形成する工程には、機能性材料を含むインクを塗布し、乾燥させることにより有機機能膜を形成するサブ工程が含まれ、
    前記有機機能膜を形成するサブ工程の実行には、前記インクの塗布に請求項1から請求項の何れかのインクジェット装置を用いる
    有機EL素子の製造方法。
  8. 前記有機機能膜を形成するサブ工程中の前記インクの塗布の実行に際しては、
    前記複数の吐出孔の内の少なくとも1つの吐出孔から前記インクを吐出し、
    前記少なくとも1つの吐出孔から吐出された前記インクに由来するミストを、前記複数の吸引孔の内の少なくとも1つの吸引孔から吸引するものであって、
    前記ミストの吸引を、前記インクの吐出開始以後、時間的に少なくとも一部が重複するように実行する
    請求項に記載の有機EL素子の製造方法。
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