JP6009652B2 - インク組成物、インクセット、及び画像形成方法 - Google Patents
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Description
インクジェット方式は、印刷時に版を必要とせず、必要とされる画像部のみにインク組成物を吐出して記録媒体上に直接画像形成を行うため、インク組成物を効率良く使用でき、ランニングコストが安い。更に、インクジェット方式は印刷装置も安価であり、騒音も少ない。このように、インクジェット方式は他の画像記録方式に比べて種々の利点を兼ね備えている。
インクジェット方式に用いるインク組成物として、放射線硬化性のインク組成物が知られている。この放射線硬化性インク組成物は、紫外線などの放射線の照射によりインク組成物中の重合性成分が重合して硬化するため、放射線非硬化性のインク組成物(溶剤系インク組成物)を用いた場合に比べて画像がにじみにくい等の利点がある。
また、本発明は、上記インク組成物と、上記の特定の条件を作り出すための処理剤とから構成されるインクセットを提供することを課題とする。
また、本発明は、上記インク組成物またはインクセットを用いた画像形成方法を提供することを課題とする。
<1>下記(A)〜(D)を含有するインク組成物:
(A)エチレン性不飽和基を有する重合性化合物、
(B)ビイミダゾール構造を有する光重合開始剤を除く、光重合開始剤、
(C)水、および
(D)下記一般式(1)で表される連鎖移動剤前駆体。
<2>前記(A)エチレン性不飽和基を有する重合性化合物が、2以上の(メタ)アクリルアミド基を有する(メタ)アクリルアミド化合物である、<1>に記載のインク組成物。
<3>前記(B)光重合開始剤が芳香族ケトン化合物である、<1>または<2>に記載のインク組成物。
<4>(E)着色剤を含有する、<1>〜<3>のいずれか1項に記載のインク組成物。
<5>(F)トリアルキルアミンを含有する、<1>〜<4>のいずれか1項に記載のインク組成物。
<6>前記R 1 〜R 4 のすべてが水素原子であるか、または、R 1 〜R 4 のいずれか1つが電子吸引性基で残りが水素原子である、<1>〜<5>のいずれか1つに記載のインク組成物。
<7>前記電子吸引性基が、ハロゲン原子、シアノ基、アシル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、カルバモイル基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、スルファモイル基、アルコキシ基およびアリールオキシ基から選ばれる基である、<6>に記載のインク組成物。
<8><1>〜<7>のいずれか1つに記載のインク組成物と、酸性化合物を含有する酸処理剤とからなるインクセット。
<9>前記酸性化合物が、分子量50以上200以下で、かつ25℃の水中におけるpKa1以上5以下の酸である、<8>に記載のインクセット。
<10>記録媒体上に、酸性化合物を含有する酸処理剤を付与する酸処理工程と、
酸処理工程後の該記録媒体上に<1>〜<7>のいずれか1つに記載のインク組成物を付与して画像を形成するインク付与工程と、
活性エネルギー線を照射することより、画像中の重合性化合物を重合させる光重合工程とを含む、画像形成方法。
本明細書において、特に断りがない限り、特定の符号で表示された置換基や連結基、配位子等(以下、置換基等という)が複数あるとき、あるいは複数の置換基等を同時もしくは択一的に規定するときには、それぞれの置換基等は互いに同一でも異なっていてもよい。このことは、置換基等の数の規定についても同様である。
本明細書において、各置換基の例として説明される各基の「基」は無置換の形態及び置換基を有する形態のいずれも包含する意味に用いる。例えば、「アルキル基」は置換基を有してもよいアルキル基を意味する。
本明細書において、「化合物」という語を末尾に付して呼ぶとき、あるいは化合物を特定の名称または化学式で示すときには、特に断りのない限り、当該化合物そのものに加え、その塩、錯体、そのイオンを含む意味に用いる。
本明細書において、「固形成分の総量」とは、組成物の全組成から溶剤成分を除いた成分の総質量、すなわち、不揮発成分の総質量をいう。
本発明のインクセットは、インク組成物と、酸性条件を作り出す処理剤とから構成され、当該インクセットを用いることで、より堅牢で精度の高い画像形成が可能となる。
本発明の画像形成方法によれば、堅牢で、より精度の高い画像を形成することができる。
本発明のインク組成物(以下、単に「インク」とも言う。)は、(A)エチレン性不飽和基を有する重合性化合物、(B)特定の光重合開始剤、(C)水、および(D)特定の連鎖移動剤前駆体を少なくとも含有する。
すなわち、本発明のインク組成物は、上記成分(A)〜(D)の各々を1種または2種以上含有する。
また、本発明のインク組成物は、1種又は2種以上の(E)着色剤を含有しうる。インク組成物が着色剤を含有しない場合は、クリアインクとして使用することができ、着色剤を含有する場合はカラー画像形成用途に用いることができる。
また、本発明に用いるインク組成物は、1種又は2種以上の(F)トリアルキルアミンを含有してもよい。インク組成物がトリアルキルアミンを含有することで、重合性化合物の光重合効率をより向上させることができる。
本発明に用いるインク組成物は、インクジェット方式を用いた画像形成のためのインクとして好適に用いることができる。
本発明のインク組成物は、上記各成分を組合せて含有することにより、酸性条件下における重合感度に優れる。当該インク組成物を用いて記録媒体上に画像を形成し、酸性条件下でUV等の活性エネルギー線を照射することで、耐ブロッキング性に優れた画像を形成することができる。
エチレン性不飽和基を有する重合性化合物(以下、単に「重合性化合物」ともいう。)は、分子内にラジカル重合可能なエチレン性不飽和結合を少なくとも1つ有する化合物であり、光重合開始剤によって重合反応を開始しうる化合物であれば特に限定されない。重合性化合物は、モノマー、オリゴマー、ポリマー等のいずれであってもよい。
本発明においては、重合性化合物は、膜質向上と溶解性の両立の観点から、分子量は50〜2000が好ましく、80〜1500がより好ましく、100〜800がさらに好ましい。
ここで、ビニル基を有する構造としては、−O−CH=CH2、>N−CH=CH2、−S−CH=CH2、−O−CH2CH=CH2、スチレンの−CH=CH2などが挙げられ、(メタ)アクリロイル基を有する構造としては、(メタ)アクリロイル基、(メタ)アクリロイルオキシ基、(メタ)アクリロイルアミド基などが挙げられる。
本発明に用いる重合性化合物は、分子中の末端に炭素−炭素二重結合を有する化合物もしくは、分子中にマレイミド環基を有する化合物が好ましい。
本発明のインク組成物には、上記重合性化合物を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。2種以上を併用する場合は、(メタ)アクリルアミド化合物、(メタ)アクリレート化合物、ビニル化合物、マレイミド化合物、ビニルスルホン化合物、及びN−ビニルアミド化合物から選択される2種以上を混合して用いることが好ましく、その内、少なくとも1種が(メタ)アクリルアミド化合物であることがより好ましい。
また、上記重合性化合物は、水溶性向上の観点から、分子内にポリ(エチレンオキシ)鎖、ポリ(プロピレンオキシ)鎖、イオン性基(例えばカルボキシル基、スルホ基など)、水酸基等を有していてもよい。
以下に、本発明に用いうる単官能(メタ)アクリルアミド化合物及び多官能(メタ)アクリルアミド化合物の具体例を示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。
以下に、本発明に用いうる単官能(メタ)アクリレート化合物及び多官能(メタ)アクリレート化合物の具体例を示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。
本発明のインク組成物は、少なくとも1種の光重合開始剤を含有する。但し、本発明のインク組成物には、ビイミダゾール構造を有する光重合開始剤は含まれない。
本発明に用いる光重合開始剤は、ビイミダゾール構造を有さなければ特に制限されず、例えば、芳香族ケトン化合物及びチオ化合物から選ばれる少なくとも1種を用いることができる。インク中における経時安定性と反応性の観点からは、芳香族ケトン化合物を用いることが好ましい。
また、本発明のインク組成物では、重合性化合物100質量部に対して、光重合開始剤を0.1〜30質量部用いることが好ましく、1〜20質量部用いることがより好ましく、5〜15質量部用いることがさらに好ましい。
本発明のインク組成物は水を含有する。水はインク組成物の媒体として機能する。本発明のインク組成物に用いる水は、イオン交換水、蒸留水などのイオン性不純物を含まない水が好ましい。
本発明のインク組成物は、下記一般式(1)で表される連鎖移動剤前駆体(以下、単に「連鎖移動剤前駆体」ということがある。)を含有する。
本発明のインク組成物には、必要に応じて他の成分、例えば、着色剤、トリアルキルアミン、媒体、および分散剤から選ばれる1種又は2種以上を含有してもよい。
本発明のインク組成物に用いる着色剤は、単色画像の形成のみならず、多色画像(例えばフルカラー画像)の形成にも用いることができ、所望の1色または2色以上を選択して画像を形成することができる。フルカラー画像を形成する場合、インク組成物を、例えば、マゼンタ色調インク、シアン色調インクおよびイエロー色調インクとして用いることができる。また、更にブラック色調インクとして用いてもよい。
上記の各色調のインク組成物は、着色剤(例えば顔料)の色相を所望により変更することにより調製できる。
有機顔料としては、例えば、アゾ顔料、多環式顔料、染料キレート、ニトロ顔料、ニトロソ顔料、アニリンブラックなどが挙げられる。これらの中でも、アゾ顔料、多環式顔料などがより好ましい。アゾ顔料としては、例えば、アゾレーキ、不溶性アゾ顔料、縮合アゾ顔料、キレートアゾ顔料などが挙げられる。多環式顔料としては、例えば、フタロシアニン顔料、ぺリレン顔料、ぺリノン顔料、アントラキノン顔料、キナクリドン顔料、ジオキサジン顔料、インジゴ顔料、チオインジゴ顔料、イソインドリノン顔料、キノフタロン顔料などが挙げられる。染料キレートとしては、例えば、塩基性染料型キレート、酸性染料型キレートなどが挙げられる。
染料を保持した担体(着色剤)はそのまま、あるいは必要に応じて分散剤を併用して用いることができる。分散剤としては後述する分散剤を好適に用いることができる。
本発明のインク組成物中の着色剤の含有量は、色濃度、粒状性、インク安定性、吐出信頼性の観点から、1〜25質量%が好ましく、5〜20質量%がより好ましい。また、本発明のインク組成物は、インク組成物中の着色剤含有量が比較的高い、6質量%〜25質量%の場合でも、十分な硬化性を得ることが出来る。
本発明に用いるインク組成物に(F)トリアルキルアミンを含有させることで、光重合効率をより高めることができる。そのメカニズムはまだ定かではないが、以下のように推定される。
重合性化合物の重合反応は、重合開始過程あるいは連鎖過程で生じたフリーラジカルにより引き起こされる。しかし、酸素分子が存在すると、このフリーラジカルは重合性化合物に対し不活性な過酸化ラジカルへと変化し、重合反応が進行しにくくなる。一方、重合反応系にトリアルキルアミンを添加した場合には、上記過酸化ラジカルによりトリアルキルアミンの水素が引き抜かれ、重合性化合物に対して活性なアミノラジカルが生成し、重合反応が進行すると考えられる。
N(Rta)3 ・・・(TA)
式(TA)中、Rtaは置換または無置換のアルキル基を示す。当該アルキル基の炭素数は1〜10であることが好ましく、1〜5であることがより好ましく、1〜3であることがさらに好ましい。Rtaが有しうる置換基に特に制限はないが、例えば、水酸基、アルコキシ基、カルボキシル基、アミド基、アミノ基が挙げられ、より好ましくは水酸基である。
本発明のインク組成物は上記成分(C)の水以外にも、媒体(溶剤)成分を含有しうる。このような媒体として、例えば水溶性有機溶剤が挙げられる。
本発明のインク組成物が水系であり、着色剤が顔料である場合、分散剤によって水系溶媒に分散された着色粒子(以下、単に「着色粒子」という)を含有するインク組成物とすることができる。
分散剤としては、ポリマー分散剤でも低分子の界面活性剤型分散剤でもよい。また、ポリマー分散剤としては水溶性ポリマー分散剤でも水不溶性ポリマー分散剤の何れでもよい。本発明においては、分散安定性とインクジェット方式に適用した場合の吐出性の観点から、水不溶性ポリマー分散剤であることが好ましい。
また、親水性の構成単位を構成するモノマーとしては、親水性基を含むモノマーであれば特に制限はない。この親水性基としては、ノニオン性基、カルボキシル基、スルホン酸基、リン酸基等を挙げることができる。なお、ノニオン性基は、水酸基、(窒素原子が無置換の)アミド基、アルキレンオキシド重合体(例えば、ポリエチレンオキシド、ポリプロピレンオキシド等)に由来する基、糖アルコールに由来する基等が挙げられる。
上記親水性構成単位は、分散安定性の観点から、少なくともカルボキシル基を含むことが好ましく、ノニオン性基とカルボキシル基を共に含む形態であることもまた好ましい。
着色粒子中の分散剤の含有量が、上記範囲であることにより、顔料が適量の分散剤で被覆され、粒径が小さく経時安定に優れた着色粒子を得やすい傾向となり好ましい。
本発明のインク組成物において、上記着色粒子は、1種単独または2種以上を組み合わせて使用してもよい。
また、着色剤(または着色粒子)の粒径分布に関しては、特に制限はなく、広い粒径分布または単分散性の粒径分布のいずれであってもよい。また、単分散性の粒径分布を持つ着色剤を、2種以上混合して使用してもよい。
なお、着色剤(または着色粒子)の体積平均粒径および粒径分布は、例えば、光散乱法を用いて測定することができる。
本発明のインク組成物の表面張力(25℃)は、20mN/m以上60mN/m以下であることが好ましい。より好ましくは、20mN以上45mN/m以下であり、さらに好ましくは、25mN/m以上40mN/m以下である。
表面張力は、Automatic Surface Tensiometer CBVP-Z(協和界面科学株式会社製)を用い、インク組成物を25℃の条件下で測定される。
粘度は、VISCOMETER TV−22(TOKI SANGYO CO.LTD製)を用い、インク組成物を25℃の条件下で測定される。
本発明のインクセットは、少なくとも、上述したインク組成物のパーツと、このインク組成物と接触して凝集体を形成可能な酸処理剤とからなる。
インク組成物と、酸処理剤とを用いて画像を形成することにより、良好な画像品質で、硬化感度が高く、耐ブロッキング性に優れた画像が形成できる。
以下、インクセットを構成する酸処理剤について説明する。
インクセットを構成する酸処理剤は、少なくとも1種の酸性化合物を少なくとも含み、必要に応じてその他の成分を含んで構成される。当該その他の成分としては、例えば、前述の水溶性有機溶剤やカチオン性ポリマーが挙げられる。
本発明に用いる酸処理剤は通常は水溶液である。
酸処理剤に用いる酸性化合物は、記録媒体上においてインク組成物と接触することにより、インク組成物を凝集(固定化)することができ、固定化剤として機能する。例えば、酸処理剤を記録媒体(好ましくは、塗工紙)に付与した状態で、この記録媒体にインク組成物を着滴すれば、インク組成物中の成分を凝集させることができ、インク組成物を記録媒体上に固定化することができる。
また、酸処理剤を記録媒体に付与しておくことで、その上に着滴させたインク組成物の重合効率を向上させることができる。
本発明において、酸性化合物は、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
本発明の画像形成方法において、本発明のインク組成物を酸性条件下で紫外線等の活性エネルギー線を照射することで、インク組成物中の重合性化合物を効率的に光重合させることができる。この光重合により、より堅牢で精度の高いインク画像の形成が可能となる。光重合に際しては、後述の活性エネルギー線照射工程が好ましく適用される。
酸性条件下とは、少なくとも1種の酸が溶液中に存在する酸性状態の反応系を意味する。反応系中の酸の含有量としては、重合性化合物の重合反応が進行する量であれば特に制限はないが、インク組成物を凝集させて固定化し易くする観点も考慮すると、インク組成物の固形成分の総量100質量部に対して、0.1〜1000質量部であることが好ましく、1〜500質量部であることがより好ましく、10〜300質量部であることがさらに好ましい。反応系が水溶液の場合、上記酸性条件は、pH1以上7未満が好ましく、pH2以上7未満がより好ましく、pH3以上7未満がさらに好ましい。上記酸としては、前述の「酸性化合物」として例示したものを挙げることができる。
上記の光重合反応を利用して行う画像形成は好ましくは、前記インクセットのパーツである酸処理剤を記録媒体上に付与する酸処理工程(酸処理剤付与工程)と、該記録媒体上の所定部に前記インク組成物を付与して画像部を形成するインク付与工程と、活性エネルギー線を照射することにより、形成された画像部中の重合性化合物を重合させる光重合工程(活性エネルギー線照射工程)とを少なくとも含む。
本発明の画像形成方法に用いる記録媒体に特に制限はないが、一般のオフセット印刷などに用いられる、いわゆる上質紙、コート紙、アート紙などのセルロースを主体とする一般印刷用紙を用いることができる。セルロースを主体とする一般印刷用紙は、水性インクを用いた一般のインクジェット法による画像記録においては比較的インクの吸収、および乾燥が遅く、打滴後に色材移動が起こりやすく、画像品質が低下しやすい。しかし、上記インク組成物またはインクセットを用いる場合には、色材移動を抑制して色濃度、および色相に優れた高品位の画像の記録が可能である。
酸処理剤付与工程では、酸性化合物を含有する酸処理剤が記録媒体上に付与される。酸処理剤(水溶液)の記録媒体への付与は、公知の液体付与方法を特に制限なく用いることができ、スプレー塗布、塗布ローラー等の塗布、インクジェット方式による付与、浸漬などの任意の方法を選択することができる。
インク付与工程では、前記インクセットに含まれるインク組成物が記録媒体上に付与される。インク組成物の付与方法としては、所望の画像様にインク組成物を付与可能な方法であれば、特に制限はなく公知のインク付与方法を用いることができる。例えば、インクジェット方式、謄写方式、捺転方式等の手段により、記録媒体上にインク組成物を付与する方法を挙げることができる。中でも、記録装置のコンパクト化と高速記録性の観点から、インク組成物をインクジェット方式によって付与する工程であることが好ましい。
また、インクジェット方式で用いるインクジェットヘッドは、オンデマンド方式でもコンティニュアス方式でも構わない。さらに前記インクジェット方式により記録を行う際に使用するインクノズル等についても特に制限はなく、目的に応じて、適宜選択することができる。
なお、インクジェット方式には、フォトインクと称する濃度の低いインクを小さい体積で多数射出する方式、実質的に同じ色相で濃度の異なる複数のインクを用いて画質を改良する方式や無色透明のインクを用いる方式が含まれる。
画像形成においては、記録媒体上に付与されたインク組成物に活性エネルギー線を照射する光重合工程を含むことが好ましい。活性エネルギー線を照射することでインク組成物に含まれる重合性化合物が重合して、着色剤を含む硬化膜を形成する。これにより画像の耐擦性、耐ブロッキング性がより効果的に向上する。
活性エネルギー線の出力は、5000mJ/cm2以下が好ましく、10〜4000mJ/cm2がより好ましく、20〜3000mJ/cm2がさらに好ましい。
画像形成においては、必要に応じて、記録媒体上に付与されたインク組成物中の溶媒(例えば、水、水溶性有機溶媒など)を乾燥除去するインク乾燥工程を備えていてもよい。インク乾燥工程は、インク溶媒の少なくとも一部を除去できれば特に制限はなく、通常用いられる方法を適用することができる。
攪拌機を備えた1L容の三口フラスコに、4,7,10−トリオキサ−1,13−トリデカンジアミン40.0g(182mmol)、炭酸水素ナトリウム37.8g(450mmol)、水100g、テトラヒドロフラン200gを加えて、氷浴下、そこへアクリル酸クロリド35.2g(389mmol)を20分かけて滴下した。滴下後の溶液を、室温で5時間攪拌した後、得られた反応混合物から減圧下でテトラヒドロフランを留去した。次に水層を酢酸エチル200mlで4回抽出し、得られた有機層を硫酸マグネシウムで乾燥後、ろ過を行い、減圧下溶媒留去することにより目的の重合性化合物M−1の固体を35.0g(107mmol、収率59%)得た。
下記スキームに従って、重合性化合物M−2を合成した。
スターラーバーを備えた1L容の三口フラスコに、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタンM−2(A)(東京化成工業社製)121g(1当量)、50%水酸化カリウム水溶液84ml、トルエン423mlを加えて攪拌し、水浴下、反応系中を20〜25℃で維持しながら、そこへアクリロニトリル397.5g(7.5当量)を2時間かけて滴下した。滴下後の溶液を、1.5時間攪拌した後、トルエン540mlを反応系中に追加し、その反応混合物を分液漏斗へ移し水層を除いた。残った有機層を硫酸マグネシウムで乾燥後、セライトろ過を行い、減圧下溶媒留去することにより中間体M−2(B):アクリロニトリル付加体を得た。得られた物質の1H−NMR、MSによる分析結果は既知物と良い一致を示したため、さらに精製することなく次の還元反応に用いた。
1L容オートクレーブに、先に得られた中間体M−2(B)を24g、Ni触媒48g(ラネーニッケル2400、W.R.Grace&Co.社製)、25%アンモニア水:メタノール=1:1溶液600mlを入れ、懸濁させ反応容器を密閉した。反応容器に10MPaの水素を導入し、反応温度25℃下で16時間反応させた。
原料の消失を1H−NMRにて確認し、反応混合物をセライト濾過し、セライトをメタノールで数回洗浄した。濾液を減圧下溶媒留去することにより中間体M−2(C):アミン体を得た。得られた物質はさらに精製することなく次の還元反応に用いた。
攪拌機を備えた2L容の三口フラスコに、先に得られた中間体M−2(C)30g、NaHCO3 120g(14当量)、ジクロロメタン1L、水50mlを加えて、氷浴下、アクリル酸クロリド92.8g(10当量)を3時間かけて滴下し、その後、室温で3時間攪拌した。原料の消失を1H−NMRにて確認した後、反応混合物を減圧下溶媒留去し、硫酸マグネシウムで反応混合物を乾燥させ、セライトろ過を行い、ジクロロメタン100mLでかけ洗いを行い、ろ液を減圧下溶媒留去した。最後に、カラムクロマトグラフィー(酢酸エチル/メタノール=4:1)にて精製することで、常温で黄色の液体(収率40%)を得た。
下記の光重合開始剤I−1〜I−4を用意した。
光重合開始剤I−1は、BASF・ジャパン社より購入した。光重合開始剤I−2は、公知の方法(米国特許第4861916号に記載の方法)に従って合成した。光重合開始剤I−3は、公知の方法(特開昭58−79991号公報に記載の方法)を参考に合成した。光重合開始剤I−4は、公知の方法(Chemistry of Materials 1998,Vol 10, p.3429-3433に記載の方法)を参考に合成した。
下記の連鎖移動剤前駆体A−1〜A−4を用意した。
連鎖移動剤前駆体A−1〜A−4は、いずれも東京化成工業社より購入したメルカプト体を出発原料として、水中で等モルの水酸化ナトリウム、あるいは水酸化カリウムを反応させ合成した。
以下のように、インクセットを作製し、インクジェット方式により画像を形成し、硬化性試験を行った。
攪拌機、冷却管を備えた1000ml容の三口フラスコに、メチルエチルケトン88gを加えて窒素雰囲気下で72℃に加熱し、ここへ、ジメチル2,2’−アゾビスイソブチレート0.85g、ベンジルメタクリレート60g、メタクリル酸10g、及びメチルメタクリレート30gをメチルエチルケトン50gに溶解した溶液を3時間かけて滴下した。滴下終了後、さらに1時間反応した後、ジメチル2,2’−アゾビスイソブチレート0.42gをメチルエチルケトン2gに溶解した溶液を加え、78℃に昇温して4時間加熱した。得られた反応溶液は大過剰量のヘキサンに2回再沈殿し、析出した樹脂を乾燥し、ポリマー分散剤P−1を96g得た。
得られた樹脂の組成は、1H−NMRで確認し、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)により求めた重量平均分子量(Mw)は44,600であった。さらに、JIS規格(JISK0070:1992)に記載の方法により酸価を求めたところ、65.2mgKOH/gであった。
−樹脂被覆マゼンタ顔料分散物−
Chromophthal Jet Magenta DMQ(ピグメント・レッド122、BASF・ジャパン社製)10質量部、上記ポリマー分散剤P−1を5質量部、メチルエチルケトン42質量部、1mol/L NaOH水溶液5.5質量部およびイオン交換水87.2質量部を混合し、ビーズミルにより0.1mmφジルコニアビーズを用いて2〜6時間分散し、分散物を得た。
得られた分散物を減圧下、55℃でメチルエチルケトンを除去し、更に一部の水を除去することにより、顔料濃度が40質量%の樹脂被覆マゼンタ顔料の分散物(着色粒子)を得た。
以下のようにして、下記インク処方1〜17によりマゼンタインク1〜17を調製した。また、下記処方により酸処理剤1を調製した。マゼンタインク1〜17と酸処理剤1との組合せからなるインクセット1〜17を得た。
上記の樹脂被覆マゼンタ顔料分散物を用い、下記インク処方1〜17となるように、樹脂被覆マゼンタ顔料分散物、イオン交換水、光重合開始剤、重合性化合物および界面活性剤を混合し、その後、5μmメンブレンフィルタでろ過してマゼンタインク1〜17を調製した。
−インク処方1−
・樹脂被覆マゼンタ顔料分散物 ・・・ 15質量%
・光重合開始剤I−1 ・・・ 1.5質量%
・連鎖移動剤前駆体A−1 ・・・ 1.5質量%
・重合性化合物M−1 ・・・ 15質量%
・オルフィンE1010 ・・・ 1質量%
(日信化学社製;界面活性剤)
・イオン交換水 ・・・ 全体で100質量%となるように添加。
インク処方2〜4は、インク処方1における光重合開始剤I−1を、それぞれ光重合開始剤I−2〜I−4に変更したこと以外は、インク処方1と同様とした。
インク処方5〜7は、インク処方1における連鎖移動剤前駆体A−1を、それぞれ連鎖移動剤前駆体A−2〜A−4に変更したこと以外は、インク処方1と同様とした。
インク処方8は、インク処方1における重合性化合物M−1を、重合性化合物M−2に変更したこと以外は、インク処方1と同様とした。
・樹脂被覆マゼンタ顔料分散物 ・・・ 15質量%
・光重合開始剤I−2 ・・・ 1.5質量%
・連鎖移動剤前駆体A−1 ・・・ 1.5質量%
・トリイソプロパノールアミン ・・・ 1・5質量%
・重合性化合物M−1 ・・・ 15質量%
・オルフィンE1010 ・・・ 1質量%
(日信化学社製;界面活性剤)
・イオン交換水 ・・・ 全体で100質量%となるように添加。
インク処方10は、インク処方9におけるトリイソプロパノールアミンを、トリエタノールアミンに変更したこと以外は、インク処方9と同様とした。
インク処方11は、インク処方9におけるトリイソプロパノールアミンを、N−メチルジエタノールアミンに変更したこと以外は、インク処方9と同様とした。
インク処方12〜15は、インク処方1〜4における連鎖移動剤前駆体A−1〜A−4を添加しないこと以外は、インク処方1〜4と同様とした。
インク処方16、17は、インク処方1及び5における連鎖移動剤前駆体A−1及びA−2を、それぞれ2−メルカプトベンゾチアゾール(和光純薬工業株式会社製)及び2−メルカプト−5−メトキシベンゾチアゾール(東京化成株式会社製)に変更したこと以外は、インク処方1及び5と同様とした。しかし、顔料がインク調製直後に凝集し、硬化試験の評価をすることができなかった。
以下の材料を混合して、酸処理剤1を調製した。上記pHメータで、酸処理剤1のpH(25℃)を測定したところ、1.0であった。
・マロン酸 25.0質量%
・トリプロピレングリコールモノメチルエーテル(水溶性有機溶媒)
5.0質量%
・イオン交換水 70.0質量%
前記酸処理剤1を組み合わせないで、前記マゼンタインク1のみをインクセット18とした。
記録媒体(塗工紙)として、特菱アート両面N(三菱製紙製)(坪量104.7g/m2)を用意して、以下に示すようにして画像を形成し、形成された画像について以下の評価を行なった。
このとき、ライン画像は、1200dpiの1ドット幅のライン、2ドット幅のライン、4ドット幅のラインをシングルパスで主走査方向に吐出することによりライン画像を形成した。
またベタ画像は、A5サイズにカットした記録媒体(サンプル)の全面にインク組成物を吐出することによりベタ画像を形成した。なお、画像形成する際の諸条件は下記の通りである。
ここで、下記の(1)および(2)はインクセット1〜15のみ行う工程である。
インクセット1〜15において、記録媒体の全面に、アニロックスローラー(線数100〜300/インチ)で塗布量が制御されたロールコーターにて付与量が、1.4g/m2となるように酸処理剤1を塗布した。
次いで、酸処理剤が塗布された記録媒体について、下記条件にて乾燥処理および浸透処理を施した。
・風速:10m/s
・温度:記録媒体の記録面側の表面温度が60℃となるように、記録媒体の記録面の反対側(背面側)から接触型平面ヒーターで加熱した。
インクセット1〜15においては、記録媒体の酸処理剤が塗布された面(記録面側)に、インクセット18では、記録媒体の記録面に、下記条件にてインクをインクジェット方式で吐出し、ライン画像、ベタ画像をそれぞれ形成した。
・ヘッド:1,200dpi/20inch幅のピエゾフルラインヘッドを4色分配置
・吐出液滴量:2.0pL
・駆動周波数:30kHz
インクが付与された記録媒体を下記条件で乾燥した。
・乾燥方法:送風乾燥
・風速:15m/s
・温度:記録媒体の記録面側の表面温度が60℃となるように、記録媒体の記録面の反対側(背面側)から接触型平面ヒーターで加熱した。
次に、メタルハライドランプを用いて、記録画像に800mJ/cm2のエネルギー条件で、活性エネルギー線として紫外線を照射し、画像サンプルを得た。
得られた各画像サンプルを、以下のようにしてインクの硬化性試験に付し、硬化性を評価した。
未印字の特菱アート両面N(三菱製紙製)を文鎮(質量470g、サイズ15mm×30mm×120mm)に巻きつけ(未印字の特菱アート両面Nと評価サンプルが接触する面積は150mm2)、上記印画サンプルを3往復擦った(荷重260kg/m2に相当)。擦った後の画像を目視により観察し、下記の評価基準に従って評価した。
AA… 印字面に画像(色材)部のはがれが視認できなかった。
A … 印字面に画像(色材)部のはがれが僅かに認められた(実用上問題にならないレベル)。
B … 印字面に部分的に画像(色材)部のはがれが視認できた(実用上好ましくないレベル)。
C … 殆ど硬化しておらず、印字面に広範囲にわたって画像(色材)部のはがれが視認できた。
これに対し、本発明のインクセット1〜11を用いて形成した画像はいずれも硬化性に優れ、堅牢であった。さらに、トリアルキルアミンを配合した場合には、硬化性(堅牢性)がより向上することがわかった(インクセット9〜11)。
Claims (10)
- 下記(A)〜(D)を含有するインク組成物:
(A)エチレン性不飽和基を有する重合性化合物、
(B)ビイミダゾール構造を有する光重合開始剤を除く、光重合開始剤、
(C)水、および
(D)下記一般式(1)で表される連鎖移動剤前駆体。
- 前記(A)エチレン性不飽和基を有する重合性化合物が、2以上の(メタ)アクリルアミド基を有する(メタ)アクリルアミド化合物である、請求項1に記載のインク組成物。
- 前記(B)光重合開始剤が芳香族ケトン化合物である、請求項1または2に記載のインク組成物。
- (E)着色剤を含有する、請求項1〜3のいずれか1項に記載のインク組成物。
- (F)トリアルキルアミンを含有する、請求項1〜4のいずれか1項に記載のインク組成物。
- 前記R 1 〜R 4 のすべてが水素原子であるか、または、R 1 〜R 4 のいずれか1つが電子吸引性基で残りが水素原子である、請求項1〜5のいずれか1項に記載のインク組成物。
- 前記電子吸引性基が、ハロゲン原子、シアノ基、アシル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、カルバモイル基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、スルファモイル基、アルコキシ基およびアリールオキシ基から選ばれる基である、請求項6に記載のインク組成物。
- 請求項1〜7のいずれか1項に記載のインク組成物と、酸性化合物を含有する酸処理剤とからなるインクセット。
- 前記酸性化合物が、分子量50以上200以下で、かつ25℃の水中におけるpKa1以上5以下の酸である、請求項8に記載のインクセット。
- 記録媒体上に、酸性化合物を含有する酸処理剤を付与する酸処理工程と、
前記酸処理工程後の該記録媒体上に請求項1〜7のいずれか1項に記載のインク組成物を付与して画像を形成するインク付与工程と、
活性エネルギー線を照射することより、前記画像中の重合性化合物を重合させる光重合工程とを含む、画像形成方法。
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