JP6008058B1 - エアバッグ用織物及びエアバッグ - Google Patents
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Abstract
Description
本発明は、下記の構成よりなる。
1.断面形状が略三角形であり、異型度が1.3〜2.2である単糸繊維を含み、引裂強力が120N以上であり、且つ、
20kPa差圧下での通気度が0.65L/cm2/min以下であることを特徴とするエアバッグ用織物。
2.下記方法により測定される織物の折り畳み後の20kPa差圧下での通気度が0.65L/cm2/min以下である上記1に記載のエアバッグ用織物。
[織物の折り畳み後の20kPa差圧下での通気度]
織物の幅方向両端部から30cmの範囲を除いた任意の箇所から20cm四方の試験片を切り出し、試験片を繊維軸方向(a)に沿って半分に折り、次いで前記繊維軸方向(a)に直交する繊維軸方向(b)に沿って半分に折り、再び前記繊維軸方向(a)に沿って半分に折り、前記繊維軸方向(a)に直交する繊維軸方向(b)に沿って半分に折って、5cm四方に折り畳む。折り畳まれた試験片の全面に50Nの荷重を1分間付与し、次いで20cm四方に広げた状態で1分間放置する。1回目の折目と2回目の折目の交点を中心とする直径10cmの円を測定部として20kPa差圧下での通気度を測定する。
4.ASTM D 6478で定義される収納性が1200cm3〜2400cm3であり、ASTM D 4032で定義される剛軟度が経方向、緯方向共に5N〜22Nである上記1〜3のいずれかに記載のエアバッグ用織物。
5.前記織物を構成する繊維の総繊度が200dtex〜500dtexであり、カバーファクターが2300以下である上記1〜4のいずれかに記載のエアバッグ用織物。
6.前記単糸繊維の断面に現れる略三角形の頂点同士を結んだ直線が、当該単糸繊維断面の外周の内側にある上記1〜5のいずれかに記載のエアバッグ用織物。
7.上記1〜6のいずれかに記載の織物を用いたことを特徴とするエアバッグ。
8.上記1〜6のいずれかに記載のエアバッグ用織物の製造方法であって、
マルチフィラメントを製織する工程、
製織した生機を自然乾燥する、もしくは20℃〜190℃で熱処理する工程を含むことを特徴とするエアバッグ用織物の製造方法。
9.上記1〜6のいずれかに記載のエアバッグ用織物の製造方法であって、
マルチフィラメントを製織する工程、
製織した生機を50℃〜100℃の水で精練する工程、及び
精練後の生機を100℃〜150℃で熱処理する工程を含むことを特徴とするエアバッグ用織物の製造方法。
10.上記1〜6のいずれかに記載のエアバッグ用織物の製造方法であって、
マルチフィラメントを製織する工程、
製織した生機を30℃〜90℃の水で精練する工程、及び
精練後の生機を、生機の走行方向のオーバーフィード率を1.5%〜6.0%、前記走行方向に直交する方向のオーバーフィード率を、当該直交方向の長さに対して1.0%〜4.0%とし、110℃〜190℃で熱処理する工程を含むことを特徴とするエアバッグ用織物の製造方法。
本発明者等は、従来使用されてきた丸断面や異型断面等の繊維に変えて、特定の異型度を有する略三角断面繊維を使用してエアバッグ用織物を製織することで、通気度が低く、織物の機械的強度を維持しつつも、柔軟で、折り畳むことによりコンパクトになり、良好な収納性を有する織物が得られることを見出し、本発明を完成した。以下、本発明を詳細に説明する。
単糸繊維の断面形状が略三角形である繊維を使用することで、折り畳み形状がコンパクトで、良好な収納性を発揮する織物が得られる理由について本発明者等は次のように考えている。織物を折り畳む前の繊維内では、断面形状が略三角形の単糸繊維が隣り合って存在しているものの単糸繊維間にはある程度の空隙が存在しており、この織物を折り畳むことによって、折目部分では、前記空隙を埋める方向に単糸繊維が移動し、繊維が細密な状態で充填されることが良好な収納性を発揮する理由の一つとして考えられる。すなわち、単糸繊維の移動により織物の厚みが薄くなると同時に、織物自体の剛性も低くなるため、当該織物の折り畳み形状がコンパクトになり、良好な収納性が発揮されるものと推察される。また、単糸繊維が移動するにも拘わらず通気度の増大が生じ難いのは、単糸繊維の移動により繊維内の空隙が減少するためと考えられる。
なお、製織前後での異型度の変化は少なく、通常、製織後の単糸繊維は、製織前の単糸繊維(原糸)と同程度の異型度を有している。したがって、織物から取り出した解織糸の異型度も上記範囲であることが好ましい。単糸繊維断面の異型度は実施例に記載の方法により求められる。
CF = (経糸密度[本/2.54cm])×√(経糸繊度[dtex]×0.9)+(緯糸密度[本/2.54cm]×√(緯糸繊度[dtex]×0.9)) (式1)
通気度変化率(%)= (折り畳み後の高圧通気度)/(折り畳み前の高圧通気度)×100 (式2)
エアバッグ用織物を構成する繊維は定法に従って製造すればよい。例えば、原料樹脂を単軸或いは2軸などの押出機を用いて溶融押出し、ギアポンプを用いて計量し、適当な金属不織布フィルターを介してノズルへ押出して繊維状溶融物とした後、繊維状溶融物をそのままノズル直下の加熱筒を通過させて冷却風にて冷却し、紡糸油剤を付与し、引取ローラーに巻回してそのまま延伸を行い、次いで交絡処理を施すことでフィラメントとすることが出来る。
ノズルの異型度は2以上、10以下が好ましく、3以上、8以下がより好ましい。ノズル異型度が小さすぎると、製糸後の繊維断面が丸断面に近い形状になりやすくなる。一方、ノズルの異型度が大きすぎると、製糸後の繊維断面が偏平状やY型に近い形状になり易くなる。
より短くなると、その後に続く冷却工程の冷却風が入り込み、ノズル面の温度が不均一になり繊維間で繊度斑が発生し易くなる虞がある。一方、保温筒又は加熱筒が50cmより長くなると、いわゆるレゾナンスと呼ばれる周期的な長手方向の糸斑が発生し易くなる傾向がある。
ドラフト比 = 引き取りローラー速度[m/min]/(単孔体積吐出量[m3/min]/ノズル孔断面積[m2])
ドラフト比が100より小さくなると、糸揺れが大きくなり繊維間での融着や、糸切れを引き起こし易くなる傾向がある。一方、ドラフト比が150より大きくなると、単糸繊維の断面内での分子鎖の配向斑、特に断面中央部と略三角形の頂点近傍での分子鎖の配向差が大きくなり、強度低下などの問題が生じ易くなる傾向がある。
製織後の織物の加工方法の組合せの態様として具体的には、ウォータージェットルームで製織した生機を自然乾燥する、もしくは乾燥のため熱処理工程に供する態様;各種織機で製織された生機を精練工程に供した後、乾燥のため熱処理工程に供する態様;各種織機で製織された生機を精練工程に供した後、熱セットのため熱処理工程に供する態様;等が挙げられる。もちろん、織機上で織り上げたままの織物(生機)を上述のような加工工程に供することなくそのまま裁断、縫製してエアバッグとしてもよい。
熱処理温度(乾燥温度)はエアバッグ用織物の柔軟性を確保する観点からは、150℃以下であることが好ましい。より好ましくは140℃以下である。乾燥温度は低い方が好ましいが、低すぎると乾燥時間が長くなり、工業的に好ましくない。好ましくは100℃以上、より好ましくは110℃以上である。熱処理時間は10秒以上、5分以下とするのが好ましい。より好ましくは20秒以上、3分以下であり、さらに好ましくは30秒以上、2分以下である。
特定温度の水を使用する限り精練工程に制限は無く、従来公知の精練方法を採用することができる。精練工程で使用する水としては、水道水、純水の他、アルキルベンゼンスルホン酸ソーダなどの界面活性剤、ソーダ灰などのアルカリ精練剤、酵素、及び有機溶剤等の1種以上を溶解した水溶液を使用してもよい。
また、精練工程は、生機の走行方向と、走行方向に直交する方向(幅方向)に張力を与えながら実施してもよい。例えば、生機の走行方向のオーバーフィード率は0%以上、5%以下とするのが好ましく、より好ましくは1%以上、4%以下であり、さらに好ましくは2%以上、3%以下である。一方、生機の幅方向のオーバーフィード率は、0%以上、3%以下とするのが好ましく、より好ましくは0.5%以上、2.5%以下であり、さらに好ましくは1%以上、2%以下である。
精練処理は10秒以上、5分以下実施するのが好ましい。より好ましくは20秒以上、3分以下であり、さらに好ましくは30秒以上、2分以下である。精練処理後の織物(生機)は、一旦脱水や乾燥処理を施した後、熱処理工程に供してもよいが、熱処理工程では織物を110℃以上に加熱するので、乾燥処理等を実施せずに、精練処理後の織物を直接熱処理工程に供してもよい。
次いで、精練処理後の織物を110℃以上、190℃以下で熱処理する(熱処理工程)。熱処理温度は、好ましくは120℃以上であり、より好ましくは130℃以上であり、185℃以下であるのが好ましく、より好ましくは180℃以下であり、さらに好ましくは175℃以下である。熱処理温度が低すぎると、精練処理で濡れた織物を乾燥させるのに長時間必要になる傾向があり、効率的でないばかりか、繊維が本来有している収縮力が十分発揮されず繊維間の目合いが大きくなってしまい、通気度が高くなってしまう虞がある。一方、熱処理温度が高過ぎると、織物を構成する繊維が熱劣化して力学的な強度が低下してしまう虞があるのみならず、熱収縮により織物に強い緊張が与えられ、織物が硬化し、収納性が低下する虞がある。
なお、精練工程と熱処理(熱セット)工程の両方で生機をオーバーフィードの状態で供給する場合、熱セット工程では、織物の走行方向のオーバーフィード率を0%以上、5.0%以下とすることが好ましく、より好ましくは1.0%以上、4.0%以下であり、さらに好ましくは1.5%以上、3.0%以下である。一方、織物の走行方向に直交する方向(幅方向)のオーバーフィード率(巾入れ率)は、0%以上、3.0%以下とするのが好ましく、より好ましくは0.5%以上、2.5%以下であり、さらに好ましくは1.0%以上、2.0%以下である。
走行方向のオーバーフィード率(%)=(V1/V2)×100
[V1:送りローラー速度、V2:巻取りローラー速度]
織物の走行方向に直交する方向のオーバーフィード率(%)=(1−L0/L1)×100
[L0:熱処理工程に供給される前織物の幅(m)、L1:熱処理工程に供給された後の織物の幅(m)]
上述のエアバッグ用織物を、所望の形状となるように裁断、縫製又は溶着することでエアバッグが得られる。
JIS L1095 9.4.1に準拠して測定した。
(2)フィラメント数
JIS L1013(1999)の8.4に準拠して算出した。
(3)強度、伸度
JIS L1017 8.5 a) 標準時試験の定義により、20℃、65%RHに温湿度が管理された部屋に24間放置した後、引張試験機(株式会社オリエンテック製「テンシロン万能材料試験機」)により、強度、伸度を得た。
(4)沸水収縮率
JIS L1013(1999)の8.18.1に記載の(a)かせ収縮率(A法)により測定した。
(5)織密度(打ち込み本数)
JIS L1096(1999)の8.6に準拠して測定した。
走査型電子顕微鏡を用いて、任意に選んだ5本の繊維の断面を撮影する(倍率1000〜2000)。市販のソフトウェア(例えばNIS−Elements Documentation)を使用し、得られた繊維の断面写真において目視で繊維の断面に現れる略三角形の頂点3点(a,b,cと称する)を選択し、この3点a,b,cを通り、繊維断面に外接する円を描写する(外接円31)。次いで、上記頂点を結ぶ線分ab、bc、及びacの垂直二等分線21を作図し、この垂直二等分線21と交差する繊維断面の3つの交点22を通り、繊維断面に内接する円を描写する(内接円32)。そして、上記外接円31の半径を内接円32の半径で除した値を異型度とした(図2〜5参照)。異型度は5本のフィラメントの平均値を用いた。ノズル孔の異型度も同様の方法で算出した。
なお、繊維断面形状が略三角形以外の形状である場合は、繊維断面の外縁に接する外接円と内接円とを設定し、これらの半径の比から異型度を求めた。繊維断面内に複数の内接円を描写できる場合は、最小の内接円の半径を用いて異型度を求めた。
図6に示すように、繊維(マルチフィラメント)61を周長が20cmになるように結束し1重の輪を作る。この輪部分を水平に設置した直径1cmのテフロン(登録商標)棒62を通し、繊維61を吊るす。このとき、結束点64がテフロン(登録商標)棒62上および最下点に来ないように結束点64の位置を調節する。繊維の総繊度(dtex)に対して1.52倍の荷重63を輪状の繊維61の最下点に吊るす。なお荷重63は、測定に用いた繊維を使用した接合糸67を介して繊維61に吊るす。この状態でテフロン(登録商標)棒62の最上部に位置するマルチフィラメントの繊維幅(a)と、結束点64が無い側の荷重点(繊維61の最下点)から5cm上側に位置する繊維の最も太い繊維幅(b)とを測定し、両者の比(a/b)を算出する。繊維を変えて、上記測定を10回繰り返しその平均値をヤーン拡幅比とした。なお、織物からの解織糸のヤーン拡幅比も同様の方法により測定した。
実施例及び比較例で得られた織物の幅方向両端部から30cmの範囲を除いた部分からランダムに選択した5箇所の測定部位において、高圧通気度測定機(OEMシステム(株)製)を使用して20kPa差圧下での通気度を測定し、その平均値を高圧通気度とした。
織物の幅方向両端部から30cmの範囲を除いた任意の箇所から20cm四方の試験片を5枚切り取出し、試験片を繊維軸方向(a)に沿って半分に折り、前記繊維軸方向(a)に直交する繊維軸方向(b)に沿って半分に折った後、再び前記繊維軸方向(a)に沿って半分、繊維軸方向(a)に直交する繊維軸方向(b)に沿って半分に折って、5cm四方に折り畳んだ。折り畳まれた試験片の全面に50Nの荷重を1分間付与し、次いで、20cm四方に広げた状態で1分間放置した。1回目の折目と2回目の折目の交点を中心とする直径10cmの円部分を測定部位とし、20kPa差圧下での通気度を高圧通気度測定機(OEMシステム(株)製)を用いて測定した。5枚の試験片の平均値を折り畳み後の高圧通気度とした。
以下の式2により、折り畳み前後の通気度変化率を求めた。
通気度変化率 (%) = (折り畳み後の高圧通気度)/(折り畳み前の高圧通気度)×100 (式2)
(11)基布厚み
JIS L1096(1999) 8.5(240g/cm2加圧下)に準拠して測定した。
(12)交絡度
原糸、及び解織糸の交絡度は、JIS L1013 8.15に準拠して算出した。
(13) ASTM剛軟度
ASTM D 4032 により測定した。
(14) ASTM収納性
ASTM D 6478 により測定した。
(15) 引裂強力
JIS L1096 8.15.2のA−2法(シングルタング法)により測定した。
結果は中央値を採用した。
ポリアミド66レジンを単軸の押出機を用いて溶融押出し、ギアポンプを用いて計量し、金属不織布フィルター(日本精線株式会社製NF−07)を介して図1記載の形状に孔形状を加工したノズル(異型度6)へ押出して繊維状溶融物とした。繊維状溶融物をそのままノズル直下の加熱筒を通過させ、冷却風にて冷却した後に、脂肪酸エステル系の紡糸油剤を付与し、引取ローラーに巻回してそのまま公知の方法で延伸を行い、350dtex、108フィラメントの略三角断面ポリアミド66繊維(略三角断面糸)を得た。この繊維断面の走査型電子顕微鏡写真を図4に示す。
得られた略三角断面糸を経糸、緯糸に使用し、ウォータージェットルームにて製織した。製織後、98℃の温水槽に通し、経糸方向の走行テンションが0.026cN/dtexとなるように加工テンションを調整して温水処理を実施した(精練処理A)。続けて0.026cN/dtexの経糸方向の走行テンション下で乾燥処理を施して、経、緯の織物密度が59本/インチの平織り布を得た。原糸の物性、及び織物の物性を表1に示す。
紡糸時に異型度4のノズルを使用したこと以外は実施例1と同様な手法で、異型断面を有する繊維を製造し、これを製織して織物を得た。原糸の物性、及び織物の物性を表1に示す。
紡糸時に異型度8のノズルを使用したこと以外は実施例1と同様な手法で、異型断面を有する繊維を製造し、これを製織して織物を得た。原糸の物性、及び織物の物性を表1に示す。
紡糸時に異型度10のノズルを使用したこと以外は実施例1と同様な手法で、異型断面を有する繊維を製造し、これを製織して織物を得た。原糸の物性、及び織物の物性を表1に示す。
紡糸時に異型度6のノズルを使用して実施例1と同様にして、470dtex、72フィラメントの三角断面ポリアミド66繊維を得た。
得られた三角断面糸を経糸、緯糸に使用し、ウォータージェットルームにて製織した。
製織後、98℃の温水槽に通し、経糸方向の走行テンションが0.026cN/dtexとなるように加工テンションを調整して温水処理を実施した。続けて0.026cN/dtexの経糸方向の走行テンション下で乾燥処理を施して、経、緯の織物密度が54本/インチの平織り布を得た。原糸の物性、及び織物の物性を表1に示す。
ポリアミド66レジンを単軸の押出機を用いて溶融押出し、ギアポンプを用いて計量し、金属不織布フィルター(日本精線株式会社製NF−07)を介してノズル(異型度1.0)へ押出して繊維状溶融物とした。繊維状溶融物をそのままノズル直下の加熱筒を通過させ、冷却風にて冷却した後に脂肪酸エステル系の紡糸油剤を付与し、引取ローラーに巻回してそのまま公知の方法で延伸を行い、350dtex、108フィラメントの丸断面ポリアミド66繊維を得た。
単糸繊維の断面形状が略三角形の繊維でできた実施例の織物と比べると、比較例1で得られた織物は高圧通気度が高いものであった。
比較例1の手順に従って、470dtex、72フィラメントの丸断面ポリアミド66繊維を製造し、これを製織して経、緯の織物密度が54本/インチの平織り布を得た。原糸の物性、及び織物の物性を表1に示す。
比較例2で得られた織物は、これを構成する繊維の総繊度は実施例5と同じであったが、単糸繊維が丸断面であったため、繊維内で単糸繊維が移動する効果が小さく、また織物の厚みが厚く、硬かったため、収納性が低下したものと考えられる。比較例2の織物は高圧通気度も高いものであった。
紡糸時に異型度12.0のノズルを使用し、単糸繊維の断面形状を公知の方法でY字形状にした以外は比較例1と同様にしてY字断面ポリアミド66繊維を製造し、これを製織して織物を得た。原糸の物性、及び織物の物性を表1に示す。比較例3で得られた繊維断面の走査型電子顕微鏡写真を図5に示す。
総繊度及びフィラメント数が同じで、三角断面の繊維でできた実施例の織物と比べると、Y字断面の繊維を使用した比較例3の織物は基布厚みが厚く、収納性も劣るものであった。また比較例3の織物の高圧通気度も実施例の織物に比べて高いものであった。
使用するノズルの孔形状を変えて、単糸繊維の断面形状を公知の方法で四角形状にしたこと以外は比較例1と同様にして繊維を製造し、これを製織して織物を得た。原糸の物性、及び織物の物性を表1に示す。
総繊度及びフィラメント数が同じで、三角断面の繊維でできた実施例の織物と比べると、四角断面の繊維を使用した比較例4の織物は厚みが厚く、収納性も劣っていた。
使用するノズルの孔形状をスリット状にして、繊維軸方向に直交する断面を公知の方法で扁平形状にしたこと以外は比較例1と同様の手順で繊維を製造し、これを製織して織物を得た。原糸の物性、及び織物の物性を表1に示す。
三角断面の繊維でできた実施例の織物に比べて、比較例5の織物は折り畳んだ後の高圧通気度が高いものであった。これは、織物を折り畳んだ際に扁平断面の単糸繊維の積層構造が乱れたためと考えられる。
実施例1の手順に従って、略三角断面繊維を製造し、これを製織して織物を得た。製織後、生機を55℃の温水槽に1分間通過させた後、120℃で1分間乾燥を行った(精練処理C)。次いで、ピンテンターを使用し、織物走行方向のオーバーフィード率4.0%、巾入れ率2.5%の条件で、180℃で30秒間の熱処理(熱収縮処理(熱セット))を織物に施した。次いで150℃に加熱した表面がフラットな金属ロールと常温のプラスチックロールとの間で線圧170kg/cm、速度10m/minで片面をプレス圧縮し、加工した。原糸の物性、及び織物の物性を表1に示す。
比較例6の織物は、総繊度及びカバーファクターが同一である実施例1で得られた織物に比べて引裂強力が劣っていた。これは、織物にプレス加工を施したことにより、経糸と緯糸が互いに噛み合った状態になり、この経糸と緯糸との係合部に負荷が集中したため引裂強力が低下したものと考えられる。また、比較例6の織物は実施例の織物に比べて通気度変化率も劣っていた。これはカレンダー加工により繊維が硬く固められ、拡幅率が小さくなったためと考えられる。
紡糸時に異型度6.0のノズルを使用して実施例1と同様の方法で、350dtex、108フィラメント、沸水収縮率が5.5%の三角断面ポリアミド66繊維を得た。
得られた略三角断面糸を経糸及び緯糸に使用し、ウォータージェットルームにて製織した。製織後、オープンソーパー型精練機を使用して、アルキルベンゼンスルホン酸ソーダ濃度0.5g/L、ソーダ灰濃度0.5g/Lの水溶液を張った精練槽(温度65℃)に得られた織物を1分間浸漬して精練処理を行った。その後、織物を40℃の温水槽で1分間水洗し、130℃で1分間乾燥した(精練処理B)。
次いで、ピンテンターを使用して、織物の走行方向のオーバーフィード率2.5%、巾入れ率1.5%の条件で、180℃で1分間の熱処理(熱収縮処理(熱セット))を実施して、経、緯の織物密度が59本/インチの平織り布を得た。原糸の物性、及び織物の物性を表2に示す。
紡糸時に異型度6.0のノズルを使用して実施例1と同様の方法で、350dtex、108フィラメント、沸水収縮率が9.6%の三角断面ポリアミド66繊維を得た。
得られた略三角断面糸を経糸、及び緯糸に使用し、ウォータージェットルームにて製織した。製織後、生機を55℃の温水槽に1分間通過させた後、120℃で1分間乾燥を行った(精練処理C)。次いで、ピンテンターを使用し、織物走行方向のオーバーフィード率4.5%、巾入れ率3.0%の条件で、160℃で1分間の熱処理(熱収縮処理(熱セット))を織物に施した。得られた織物は平織りで、経、緯の織物密度は59本/インチであった。原糸の物性、及び織物の物性を表2に示す。
紡糸時に異型度4.0のノズルを使用して実施例2と同様の方法で、350dtex、108フィラメント、沸水収縮率が9.8%の三角断面ポリアミド66繊維を得た。
得られた略三角断面糸を経糸、及び緯糸に使用し、ウォータージェットルームで製織した。製織後、実施例7と同様の条件で、生機に精練、乾燥及び熱収縮処理(熱セット)を実施した。得られた織物は平織りで、経、緯の織物密度は59本/インチであった。原糸の物性、及び織物の物性を表2に示す。
紡糸時に異型度8.0のノズルを使用して実施例3と同様の方法で、350dtex、108フィラメント、沸水収縮率が9.5%の三角断面ポリアミド66繊維を得た。
得られた略三角断面糸を経糸、及び緯糸に使用し、ウォータージェットルームにて製織した。製織後、実施例7と同様の条件で、生機に精練、乾燥及び熱収縮処理(熱セット)を施した。得られた織物は平織りで、経、緯の織物密度は59本/インチであった。原糸の物性、及び織物の物性を表2に示す。
紡糸時に異型度10.0のノズルを使用して実施例4と同様の方法で、350dtex、108フィラメント、沸水収縮率が9.2%の三角断面ポリアミド66繊維を得た。
得られた略三角断面糸を経糸及び緯糸に使用し、ウォータージェットルームにて製織した。製織後、実施例7と同様の条件で、生機に精練、乾燥及び熱収縮処理(熱セット)を施した。得られた織物は平織りで、経、緯の織物密度は59本/インチであった。原糸の物性、及び織物の物性を表2に示す。
紡糸時に異型度6.0のノズルを使用して実施例1と同様の方法で、350dtex、108フィラメント、沸水収縮率が9.6%の三角断面ポリアミド66繊維を得た。
得られた略三角断面糸を経糸、及び緯糸に使用し、ウォータージェットルームにて製織した。製織後は特に加工を施さず、そのまま自然乾燥させて、織物を仕上げた。得られた織物は平織りで、経、緯の織物密度は57本/インチであった。原糸の物性、及び織物の物性を表2に示す。
紡糸時に異型度6.0のノズルを使用して実施例1と同様の方法で、470dtex、72フィラメント、沸水収縮率が6.2%の三角断面ポリアミド66繊維を得た。
得られた略三角断面糸を経糸及び緯糸に使用し、ウォータージェットルームにて製織した。製織後、オープンソーパー型精練機を使用して、アルキルベンゼンスルホン酸ソーダ濃度0.5g/L、及びソーダ灰濃度0.5g/Lの水溶液を張った精練槽(温度65℃)に、得られた生機を1分間浸漬して精練処理を行った後、45℃の温水槽で1分間水洗し、引き続き140℃で1分間乾燥した(精練処理D)。
次いで、ピンテンターを使用し、織物走行方向のオーバーフィード率3.0%、巾入れ率2.0%の条件で、180℃で1分間の熱収縮処理(熱セット)を実施して織物を完成した。織物は平織りで、経、緯の織物密度は54本/インチであった。原糸の物性、及び織物の物性を表2に示す。
紡糸時に異型度6.0のノズルを使用して実施例1と同様の方法で、470dtex、72フィラメント、沸水収縮率が9.3%の三角断面ポリアミド66繊維を得た。
得られた略三角断面糸を経糸、及び緯糸に使用し、ウォータージェットルームにて製織した。得られた生機を60℃の温水槽に1分間通過させて精練した後、130℃で1分間乾燥を行った(精練処理E)。
次いで、ピンテンターを使用して、織物走行方向のオーバーフィード率3.0%、巾入れ率2.0%の条件で、160℃で1分間の熱収縮処理(熱セット)を実施して織物を完成した。得られた織物は平織りで、経、緯の織物密度は54本/インチであった。原糸の物性、及び織物の物性を表2に示す。
ポリアミド66レジンを単軸の押出機を用いて溶融押出し、ギアポンプを用いて計量し、金属不織布フィルター(日本精線株式会社製NF−07)を介してノズル(異型度1.0)へ押出して繊維状溶融物とした。繊維状溶融物をそのままノズル直下の加熱筒を通過させて冷却風にて冷却した後に脂肪酸エステル系の紡糸油剤を付与し、引取ローラーに巻回してそのまま公知の方法で延伸を行い、350dtex、108フィラメント、沸水収縮率が5.9%の丸断面ポリアミド66繊維を得た。
得られた繊維を経糸及び緯糸に使用し、ウォータージェットルームにて製織した。製織後、実施例6と同様の条件で、生機に精練、乾燥及び熱収縮処理(熱セット)を施して、経、緯の織物密度が59本/インチの平織り布を得た。原糸の物性、及び織物の物性を表3に示す。
単糸繊維の断面形状が略三角形の繊維でできた実施例6の織物と比べると、比較例7の織物は、高圧通気度が高いものであった。
比較例1の手順に従って、350dtex、108フィラメント、沸水収縮率9.2%の丸断面ポリアミド66繊維を製造した。
得られた繊維を経糸、及び緯糸に使用し、ウォータージェットルームにて製織した。製織後、実施例7と同様の条件で、生機に精練、乾燥及び熱収縮処理(熱セット)を施して、経、緯の織物密度が59本/インチの平織り布を得た。原糸の物性、及び織物の物性を表3に示す。
単糸繊維の断面形状が略三角形の繊維でできた実施例7の織物と比べると、比較例8の織物は高圧通気度が高いものであった。
比較例1の手順に従って、350dtex、108フィラメント、沸水収縮率9.2%の丸断面ポリアミド66繊維を製造した。
得られた繊維を経糸、及び緯糸に使用し、ウォータージェットルームにて製織した。製織後は特に加工を施さず、そのまま自然乾燥をさせて、織物を仕上げた。得られた織物は平織りで、経、緯の織物密度は57本/インチであった。原糸の物性、及び織物の物性を表3に示す。
単糸繊維の断面形状が略三角形の繊維でできた実施例11の織物と比べると、比較例9の織物は高圧通気度が高いものであった。
比較例1の手順に従って、470dtex、72フィラメント、沸水収縮率5.8%の丸断面ポリアミド66繊維を製造した。
得られた繊維を経糸及び緯糸に使用し、ウォータージェットルームにて製織した。製織後、実施例12と同様の条件で、生機に精練、乾燥及び熱収縮処理(熱セット)を施して、経、緯の織物密度が54本/インチの平織り布を得た。原糸の物性、及び織物の物性を表3に示す。
比較例10で得られた織物を構成する繊維の総繊度は実施例12と同じであったが、単糸繊維が丸断面であり、繊維内で単糸繊維が移動する効果が小さかったため、織物が厚く、硬かったため、収納性が低下したものと考えられる。また高圧通気度も高いものであった。
比較例1の手順に従って、470dtex、72フィラメント、沸水収縮率9.3%の丸断面ポリアミド66繊維を製造した。
得られた繊維を経糸及び緯糸に使用し、ウォータージェットルームにて製織した。製織後、実施例13と同様の条件で、生機に精練、乾燥及び熱収縮処理(熱セット)を施して、経、緯の織物密度が54本/インチの平織り布を得た。原糸の物性、及び織物の物性を表3に示す。
比較例11で得られた織物を構成する繊維の総繊度は実施例13と同じであったが、単糸繊維が丸断面であり、繊維内で単糸が移動する効果が小さかったため、織物が厚く、硬かったため、収納性が低下したものと考えられる。また比較例11で得られた織物は高圧通気度も高いものであった。
12 ノズルに設けられた吐出孔に内接する円
13 ノズルに設けられた吐出孔の外縁
21、21’ 単糸繊維の繊維軸方向に直交する断面に現れる形状の頂点同士を結んだ直線の線分の垂直2等分線
22、22’ 垂直2等分線と単糸繊維断面の外周との交点
31、31’ 外接円
32、32’ 内接円
33、33’ 単糸繊維の断面に現れる形状の頂点を結んだ三角形
34、34’ 単糸繊維の断面外周
61 測定サンプル(繊維)
62 直径1cmのテフロン(登録商標)棒
63 荷重
64 結束点
65 一定引張張力を印加したときの、テフロン(登録商標)棒の最上部に位置する繊維の幅(a)の測定点
66 一定引張張力を印加したときの繊維の幅(b)の測定点
67 測定サンプルと同じ糸を用いた、荷重との接合糸
Claims (10)
- 断面形状が略三角形であり、異型度が1.3〜2.2である単糸繊維を含み、
引裂強力が120N以上であり、且つ、
20kPa差圧下での通気度が0.65L/cm2/min以下であることを特徴とするエアバッグ用織物。 - 下記方法により測定される前記織物の折り畳み後の20kPa差圧下での通気度が0.65L/cm2/min以下である請求項1に記載のエアバッグ用織物。
[織物の折り畳み後の20kPa差圧下での通気度]
織物の幅方向両端部から30cmの範囲を除いた任意の箇所から20cm四方の試験片を切り出し、試験片を繊維軸方向(a)に沿って半分に折り、次いで前記繊維軸方向(a)に直交する繊維軸方向(b)に沿って半分に折り、再び前記繊維軸方向(a)に沿って半分に折り、前記繊維軸方向(a)に直交する繊維軸方向(b)に沿って半分に折って、5cm四方に折り畳む。折り畳まれた試験片の全面に50Nの荷重を1分間付与し、次いで20cm四方に広げた状態で1分間放置する。1回目の折目と2回目の折目の交点を中心とする直径10cmの円を測定部位として20kPa差圧下での通気度を測定する。 - 前記織物の20kPa差圧下での通気度に対する、請求項2に記載の方法により測定される織物の折り畳み後の20kPa差圧下での通気度の変化率が150%以下である請求項1又は2に記載のエアバッグ用織物。
- ASTM D 6478で定義される収納性が1200cm3〜2400cm3であり、ASTM D 4032で定義される剛軟度が経方向、緯方向共に5N〜22Nである請求項1〜3のいずれかに記載のエアバッグ用織物。
- 前記織物を構成する繊維の総繊度が200dtex〜500dtexであり、カバーファクターが2300以下である請求項1〜4のいずれかに記載のエアバッグ用織物。
- 前記単糸繊維の断面に現れる略三角形の頂点同士を結んだ直線が、当該単糸繊維断面の外周の内側にある請求項1〜5のいずれかに記載のエアバッグ用織物。
- 請求項1〜6のいずれかに記載の織物を用いたことを特徴とするエアバッグ。
- 請求項1〜6のいずれかに記載のエアバッグ用織物の製造方法であって、
マルチフィラメントを製織する工程、
製織した生機を自然乾燥する、もしくは20℃〜190℃で熱処理する工程を含むことを特徴とするエアバッグ用織物の製造方法。 - 請求項1〜6のいずれかに記載のエアバッグ用織物の製造方法であって、
マルチフィラメントを製織する工程、
製織した生機を50℃〜100℃の水で精練する工程、及び
精練後の生機を100℃〜150℃で熱処理する工程を含むことを特徴とするエアバッグ用織物の製造方法。 - 請求項1〜6のいずれかに記載のエアバッグ用織物の製造方法であって、
マルチフィラメントを製織する工程、
製織した生機を30℃〜90℃の水で精練する工程、及び
精練後の生機を、生機の走行方向のオーバーフィード率を1.5%〜6.0%、前記走行方向に直交する方向のオーバーフィード率を、当該直交方向の長さに対して1.0%〜4.0%とし、110℃〜190℃で熱処理する工程を含むことを特徴とするエアバッグ用織物の製造方法。
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