JP6008058B1 - エアバッグ用織物及びエアバッグ - Google Patents

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Abstract

【課題】通気度が低く、柔軟で、織物の機械的強度を維持しつつ、良好な収納性を両立したエアバッグ用織物、及びこの織物を用いたエアバッグを提供する。【解決手段】断面形状が略三角形34であり、異型度が1.3〜2.2である単糸繊維を含み、引裂強力が120N以上であり、且つ、20kPa差圧下での通気度が0.65L/cm2/min以下であるエアバッグ用織物、及びこれを用いたエアバッグ。特定の条件下で測定による、前記織物の折り畳み後の20kPa差圧下での通気度が0.65L/cm2/min以下であるエアバッグ用織物。前記織物の20kPa差圧下での通気度に対する、前記折り畳み後の20kPa差圧下での通気度の変化率が150%以下であるエアバッグ用織物。【選択図】図2

Description

本発明は、エアバッグ用織物及びエアバッグに関する。
近年、車の小型化が進んでいることにより、車内空間の確保、運転席からの各種メーターの視認性や、走行中の燃費効率向上から車体重量の軽量化などが開発ニーズとして存在し、特にエアバッグの軽量化、コンパクト化に対する要求が急速に高まっている。
エアバッグシステムに用いられるエアバッグは、エアバッグ用織物を特定の形状に裁断し、縫製した袋状物を、可能な限り小さなスペースに収納できることが要求される。小さなスペースに収納するためには、剛性が低く、折り畳み易い織物が使用されている。
剛性が低い織物を得るための一般的な手法としては、織物を構成する繊維の繊度を低くしたり、織密度を低くする方法が知られている。しかしながら、これらの方法では、剛性は低下できても、通気度が高くなってしまうため、エアバッグに必要な性能を満たし難いという問題があった。そこで織物の通気度を低くする方法として、異型断面を有する繊維を使用する技術が提案されている。
特許文献1には、断面がY字型、又はT字型で特定異型度を有する繊維を製織したエアバッグ用基布が開示されている。ここでは、基布に加熱加圧、圧縮加工を行うことで、布帛の組織を充填圧密化すると共に、織糸を構成する単糸繊維を変形させて、経糸と緯糸とが互いに噛み合った状態とすることで低通気度を達成した旨記載されている。
特許文献2では、正方形に類似した断面を有する糸がローリングし難く、織物の縦及び横の方向で高い遮蔽効果を発揮する点に着目し、エアバッグ用織物を断面が略正方形状の繊維で製織することで、低通気度を達成する技術が開示されている。
特開平8−199449号公報 特許第4685904号公報
上述の通り、エアバッグ用織物には低通気度であることに加えて、軽量であり、柔らかく、折り畳み形状がコンパクトで、良好な収納性を有することが求められているが、特許文献2では織物の柔軟性や収納性については検討されていない。一方、特許文献1では、織物に加熱加圧、加圧圧縮加工を施すことで低い通気度と共に収納性を達成できる旨記載されているが、加熱加圧、加圧圧縮加工により織物の引裂強力が低下してしまうといった問題があった。
本発明は上記の様な事情に着目してなされたものであって、その目的は、従来技術の問題点を解決し、通気度が低く、柔軟で、織物の機械的強度を損なうことなく、良好な収納性を発揮できるエアバッグ用織物及びエアバッグを提供することにある。
本発明者らは、前記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、織糸に特定の異型度を有する略三角断面の繊維を含むエアバッグ用織物は、通気度が低く、柔軟で、織物の機械的強度を備えながらも、良好な収納性を発揮できることを見出し、本発明を完成した。
本発明は、下記の構成よりなる。
1.断面形状が略三角形であり、異型度が1.3〜2.2である単糸繊維を含み、引裂強力が120N以上であり、且つ、
20kPa差圧下での通気度が0.65L/cm2/min以下であることを特徴とするエアバッグ用織物。
2.下記方法により測定される織物の折り畳み後の20kPa差圧下での通気度が0.65L/cm2/min以下である上記1に記載のエアバッグ用織物。
[織物の折り畳み後の20kPa差圧下での通気度]
織物の幅方向両端部から30cmの範囲を除いた任意の箇所から20cm四方の試験片を切り出し、試験片を繊維軸方向(a)に沿って半分に折り、次いで前記繊維軸方向(a)に直交する繊維軸方向(b)に沿って半分に折り、再び前記繊維軸方向(a)に沿って半分に折り、前記繊維軸方向(a)に直交する繊維軸方向(b)に沿って半分に折って、5cm四方に折り畳む。折り畳まれた試験片の全面に50Nの荷重を1分間付与し、次いで20cm四方に広げた状態で1分間放置する。1回目の折目と2回目の折目の交点を中心とする直径10cmの円を測定部として20kPa差圧下での通気度を測定する。
3.前記織物の20kPa差圧下での通気度に対する、上述の方法により測定される織物の折り畳み後の20kPa差圧下での通気度の変化率が150%以下である上記1又は2に記載のエアバッグ用織物。
4.ASTM D 6478で定義される収納性が1200cm3〜2400cm3であり、ASTM D 4032で定義される剛軟度が経方向、緯方向共に5N〜22Nである上記1〜3のいずれかに記載のエアバッグ用織物。
5.前記織物を構成する繊維の総繊度が200dtex〜500dtexであり、カバーファクターが2300以下である上記1〜4のいずれかに記載のエアバッグ用織物。
6.前記単糸繊維の断面に現れる略三角形の頂点同士を結んだ直線が、当該単糸繊維断面の外周の内側にある上記1〜5のいずれかに記載のエアバッグ用織物。
7.上記1〜6のいずれかに記載の織物を用いたことを特徴とするエアバッグ。
8.上記1〜6のいずれかに記載のエアバッグ用織物の製造方法であって、
マルチフィラメントを製織する工程、
製織した生機を自然乾燥する、もしくは20℃〜190℃で熱処理する工程を含むことを特徴とするエアバッグ用織物の製造方法。
9.上記1〜6のいずれかに記載のエアバッグ用織物の製造方法であって、
マルチフィラメントを製織する工程、
製織した生機を50℃〜100℃の水で精練する工程、及び
精練後の生機を100℃〜150℃で熱処理する工程を含むことを特徴とするエアバッグ用織物の製造方法。
10.上記1〜6のいずれかに記載のエアバッグ用織物の製造方法であって、
マルチフィラメントを製織する工程、
製織した生機を30℃〜90℃の水で精練する工程、及び
精練後の生機を、生機の走行方向のオーバーフィード率を1.5%〜6.0%、前記走行方向に直交する方向のオーバーフィード率を、当該直交方向の長さに対して1.0%〜4.0%とし、110℃〜190℃で熱処理する工程を含むことを特徴とするエアバッグ用織物の製造方法。
本発明のエアバッグ用織物は、織糸に特定の異型度を有する略三角断面繊維を含んでいるため、低い通気度と織物の機械的強度を備えながらも、柔軟で、良好な収納性を発揮することができる。
異型断面を有するノズルと、その異型度の求め方を示す図である。 単糸繊維の好ましい断面形状の一例と、当該単糸繊維の断面の異型度の求め方を示す断面模式図である。 他の単糸繊維の断面形状と、当該単糸繊維の断面の異型度の求め方を示す断面模式図である。 実施例1で得られた単糸繊維の断面を示す走査型電子顕微鏡写真である。 比較例3で得られた単糸繊維の断面を示す走査型電子顕微鏡写真である。 ヤーン拡幅比の測定方法の概略図である。
本発明のエアバッグ用織物とは、断面形状が略三角形であり、異型度が1.3〜2.2である単糸繊維を含み、引裂強力が120N以上であり、且つ、20kPa差圧下での通気度が0.65L/cm2/min以下であるところに特徴を有する。
本発明者等は、従来使用されてきた丸断面や異型断面等の繊維に変えて、特定の異型度を有する略三角断面繊維を使用してエアバッグ用織物を製織することで、通気度が低く、織物の機械的強度を維持しつつも、柔軟で、折り畳むことによりコンパクトになり、良好な収納性を有する織物が得られることを見出し、本発明を完成した。以下、本発明を詳細に説明する。
本発明のエアバッグ用織物を構成する繊維の素材は特に限定されるものではないが、例えばナイロン66、ナイロン6、ナイロン46、ナイロン12等の脂肪族ポリアミド繊維、アラミド繊維のような芳香族ポリアミド繊維、ポリエチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等のポリエステル繊維等が挙げられる。また、全芳香族ポリエステル繊維、超高分子量ポリエチレン繊維、ポリパラフェニレン・ベンゾビス・オキサゾール繊維(PBO繊維)、ポリフェニレンサルファイド繊維、及びポリエーテルケトン繊維等も使用することができる。ただし、経済性を勘案するとポリエステル繊維、ポリアミド繊維が好ましく、高温ガスに対する耐久性の点からは、ポリヘキサメチレンアジパミド繊維からなるナイロン66が好ましい。
エアバッグ用織物の構成繊維としてナイロン66を使用する場合は、硫酸による相対粘度が3.2以上のナイロン66を使用することが好ましい。相対粘度が3.2未満であるとエアバッグ用織物として必要な強力が不足する場合がある。より好ましくは3.3以上であり、さらに好ましくは3.4以上である。しかし相対粘度が高すぎると重合コストが嵩むだけでなく、紡糸操業性が悪化する傾向がある。したがって相対粘度は3.6以下が好ましく、より好ましくは3.5以下である。
織物を構成する繊維はその一部または全部に、プラスチック廃材から再生された原材料より得られた繊維を使用してもよい。また、繊維を構成する材料は、製造工程での工程通過性を向上させるための各種添加剤を含有するものであってもよい。添加剤としては、例えば酸化防止剤、熱安定剤、平滑剤、帯電防止剤、増粘剤、難燃剤等が挙げられる。さらにエアバッグ用織物を構成する繊維は、原着糸や製糸後染色されたものであってもよい。
本発明のエアバッグ用織物では、繊維軸方向に直交する断面形状が略三角形である単糸繊維(以下、単に略三角断面繊維と称する場合がある)を使用することが重要である。
単糸繊維の断面形状が略三角形である繊維を使用することで、折り畳み形状がコンパクトで、良好な収納性を発揮する織物が得られる理由について本発明者等は次のように考えている。織物を折り畳む前の繊維内では、断面形状が略三角形の単糸繊維が隣り合って存在しているものの単糸繊維間にはある程度の空隙が存在しており、この織物を折り畳むことによって、折目部分では、前記空隙を埋める方向に単糸繊維が移動し、繊維が細密な状態で充填されることが良好な収納性を発揮する理由の一つとして考えられる。すなわち、単糸繊維の移動により織物の厚みが薄くなると同時に、織物自体の剛性も低くなるため、当該織物の折り畳み形状がコンパクトになり、良好な収納性が発揮されるものと推察される。また、単糸繊維が移動するにも拘わらず通気度の増大が生じ難いのは、単糸繊維の移動により繊維内の空隙が減少するためと考えられる。
織物の剛軟度を低下させたり、コンパクトな折り畳み形状を達成するには、織物自体の厚みを低減させることが有効であり、このために繊維の繊度や織物の密度を下げることが知られている。しかしながら、上述した特定の異型度を有する略三角断面繊維を使用すれば、繊度や織物の密度を下げなくても、柔軟で、良好な収納性を発揮する織物となる。このことも本発明者等により初めて見出されたことである。通常、織物の折目で折り曲げられる繊維には、繊維軸方向の張力と繊維軸に直交する方向からの圧縮力が加わるため変形が生じる。この点、特定の異型度を有する略三角断面繊維を使用する場合には、上記張力と圧縮力によって、繊維内の空隙を埋めるように単糸繊維が移動すると共に、隣接する単糸繊維が界面でずれることにより織糸が繊維軸に直交する方向に広がるため、折目部分の厚みが低減され、その結果、折り畳み形状がコンパクトになり、エアバッグの収納性が向上するものと推測している。
上述のように外力により単糸繊維が移動する理由としては、単糸繊維の繊維軸方向に直交する断面に現れる形状が略三角形の場合には、断面形状が他の多角形状である繊維に比べて頂点の数が少なく、単糸同士の引っかかりが少ないことが挙げられる。
本発明で使用する単糸繊維は異型度が1.3以上、2.2以下である。異型度は単糸繊維断面の異型形状の指標として用いられている。理論上は断面形状が正三角形のものが好ましいが、実際の原糸ではノズルから溶融されたレジンが押し出される際に広がる現象(ダイ−スウェル現象)が生じるため、単糸繊維の断面形状は各頂点が丸みを帯びた形となる。このため、本発明において最も好ましい異型度は、1.6付近が中心である。異型度は1.35以上、2.0以下であるのが好ましく、より好ましくは1.4以上、1.8以下である。異型度が小さすぎると、単糸繊維間に隙間が生じて織物の通気度が低下すると同時に、単糸繊維の移動が抑制される場合がある。一方、異型度が大きすぎると、繊維表面の凹凸が大きくなって隣接する繊維間で引っかかりが生じ、やはり単糸繊維が移動し難くなる場合がある。
なお、製織前後での異型度の変化は少なく、通常、製織後の単糸繊維は、製織前の単糸繊維(原糸)と同程度の異型度を有している。したがって、織物から取り出した解織糸の異型度も上記範囲であることが好ましい。単糸繊維断面の異型度は実施例に記載の方法により求められる。
本発明に係る単糸繊維は、図2に示すように、その繊維軸方向に直交する断面に現れる略三角形(単糸繊維断面の外周)34の頂点(a,b,c)同士を結んだ直線が、当該単糸繊維断面の外周34の内側又は外周34上にあることが好ましい。また上記略三角形34の頂点a,b,及びcを直線で結んだ三角形33が、単糸繊維断面の外周34の内側にあることも好ましい。この関係は、上記単糸繊維断面の外周34の頂点a,b,cを結んだ線分ab,bc,及びcaの垂直二等分線21と上記単糸繊維断面の外周34との交点22が、上記三角形33の外側に位置することと同義である。本発明に係る単糸繊維としては、繊維軸方向に直交する断面に現れる形状が、正三角形であるものが理想的である。この場合には、上記三角形33と単糸繊維断面の外周34とが一致する。
一方、例えば図3に示す繊維のように、一定の異型度を有していても、繊維軸方向に直交する断面に現れる形状34’と、当該形状34’の頂点(a’,b’,c’)を結んだ直線(例えばa’b’)及び/又は形状(三角形33’)が上述の関係にない場合、すなわち三角形33’が繊維断面の外周34’内にない場合には(実質的には単糸繊維の断面形状がY型に近い形状であることを意味する)、単糸繊維間の空隙量が多くなるため、通気度が高くなるのみならず、繊維(マルチフィラメント)内で単糸繊維が移動し難くなる傾向がある。
外力によりマルチフィラメント内で移動し易い単糸繊維とするためには、繊維の交絡度を低くすることが好ましい。原糸製造段階での交絡数は5〜30個/mが好ましいが、織物から解織した段階での糸の交絡度は経糸と緯糸の平均値で20個/m以下が好ましく、より好ましくは15個/m以下であり、更に好ましくは8個/m以下である。下限は特になく、交絡度は0個/mでも構わない。交絡度が上記範囲内であれば、単糸繊維の移動が阻害され難く、また低通気度と収納性を両立したエアバッグ用織物が得られる。なお、原糸段階での交絡度は8個/m以上がより好ましく、10個/m以上がさらに好ましい。交絡度の上限は、より好ましくは28個/m以下であり、さらに好ましくは25個/m以下である。
上記繊維を構成する単糸繊維の移動のし易さは、エアバッグ用織物を解織して取り出した糸(繊維)の拡幅率からも把握することが出来る。そこで本発明では、糸の拡幅率を、張力等の外力により繊維内で単糸繊維が最密充填されるように移動し、且つ、単糸繊維が、隣接する単糸繊維との界面でずれることにより繊維軸に直交する方向に移動する様子を示す指標として使用する。拡幅率の値が大きいことは外力の影響により単糸繊維が動き易いことを意味する。
エアバッグ用織物を解織して取り出した繊維の拡幅率は、2.4以上、3.5以下であることが好ましい。糸の拡幅率が2.4未満の場合には、単糸繊維が移動し難く、特に折り畳み部分の厚みを低減する効果や、収納性を向上させる効果が小さくなる傾向がある。したがって、糸の拡幅率は2.5以上であるのがより好ましく、さらに好ましくは2.6以上である。糸の拡幅率が3.5より高いと、単糸繊維が移動し易くなりすぎて、単糸繊維間の隙間が密に詰まった状態を維持できなくなり通気度が高くなってしまう虞がある。より好ましくは3.4以下である。糸の拡幅率は後述する測定方法により得られる。
エアバッグ用織物を構成する繊維の機械的特性は、エアバッグに要求される機械的特性を満足する観点からは、切断強度が7.0cN/dtex以上であるのが好ましく、より好ましくは7.5cN/dtex以上である。切断強度は高い方が好ましいが、生産時の歩留まりなどを考慮すると9.5cN/dtex以下が好ましく、より好ましくは9.0cN/dtex以下である。
繊維を構成するフィラメントの単糸繊度は1dtex以上、8dtex以下であることが好ましい。単糸繊度が大きすぎると、製織してエアバッグとしたときに剛性が高くなり、また織物の厚みも増すため、良好な収納性が得られ難くなる場合がある。一方、単糸繊度が小さすぎると、繊維の生産性が低下する場合がある。より好ましくは2dtex以上、7.5dtex以下であり、さらに好ましくは2.5dtex以上、6.5dtex以下である。
繊維を構成するフィラメントの本数は40本以上、200本以下であることが好ましい。フィラメント本数が40本未満の場合には収納性が低下し易くなる傾向がある。一方、フィラメント本数が200本を超えると、繊維の生産性が低下する傾向がある。フィラメントの本数は50本以上であるのがより好ましく、さらに好ましくは60本以上であり、180本以下がより好ましく、さらに好ましくは160本以下である。
繊維の総繊度に特に制限はないが、100dtex以上、600dtex以下であることが好ましく、150dtex以上、500dtex以下であることがより好ましく、200dtex以上、500dtex以下であることがさらに好ましく、235dtex以上、470dtex以下であることが特に好ましい。総繊度が100dtex未満の場合は、エアバッグ用織物としたときに引張強力及び引裂強力が不足する虞がある。一方、600dtexを超える場合には、強度的な問題は生じ難いが、織物の厚みが増し、柔軟性が損なわれ、収納性が低下したり、布帛表面が硬くなることから衝突時に人体の皮膚を傷つけてしまう虞がある。
エアバッグ用織物の組織は特に限定されないが、織物物性の均一さを勘案すると平織りが好ましい。織糸は、経糸、緯糸が同一でなくてもよく、エアバッグとしての性能を満たす強力、通気度等が得られる限り、太さや糸本数、繊維の種類等が異なっていてもよい。なお、低通気度と良好な収納性を両立した織物とする観点からは、エアバッグ用織物を構成する繊維100%中(経糸、緯糸の合計)、上述した断面形状が略三角形であり、特定の異型度を有する単糸繊維を含む繊維(マルチフィラメント)を25%以上使用することが好ましい。より好ましくは50%以上であり、最も好ましくは100%である。
エアバッグ用織物は下記式1で算出されるカバーファクター(CF)が2300以下であることが好ましい。カバーファクターが2300を超えるとコンパクト性が悪化し易くなる傾向がある。また、1800未満ではエアバッグとして必要な低通気度が得られ難くなる虞がある。カバーファクターはより好ましくは1900〜2180である。
CF = (経糸密度[本/2.54cm])×√(経糸繊度[dtex]×0.9)+(緯糸密度[本/2.54cm]×√(緯糸繊度[dtex]×0.9)) (式1)
エアバッグ用織物は、20kPaの差圧下での通気度(高圧通気度)が0.65L/cm2/min以下である。高圧通気度が0.65L/cm2/minを超えるとエアバッグとして必要な内圧を確保し難くなる場合がある。高圧通気度はより好ましくは0.6L/cm2/min以下であり、さらに好ましくは0.5L/cm2/min以下である。
また、エアバッグ用織物は、所定の方法で折り畳んだ後の高圧通気度(20kPaの差圧下での通気度)が0.65L/cm2/min以下であることが好ましい。エアバッグ用織物は、折り畳まれたり、無造作に圧縮された状態で車内の所定箇所に格納されるので、折り畳み後の通気度が高いとエアバッグ展開時に乗員の拘束に必要な内圧を確保し難くなる傾向がある。折り畳み後の高圧通気度は、より好ましくは0.6L/cm2/min以下であり、更に好ましくは0.5L/cm2/min以下である。エアバッグ用織物の折り畳み後の高圧通気度は実施例に記載の方法により求められる。
さらに、エアバッグ用織物は、折り畳み前後の高圧通気度の比で表される通気度変化率(下式2)が150%以下であることが好ましい。通気度変化率が150%を超えると、エアバッグ展開時に乗員の拘束に必要な内圧の確保が困難になる虞がある。より好ましくは130%以下であり、さらに好ましくは120%以下であり、特に好ましくは110%以下である。
通気度変化率(%)= (折り畳み後の高圧通気度)/(折り畳み前の高圧通気度)×100 (式2)
本発明のエアバッグ用織物の厚みは0.3mm以下であるのが好ましい。織物の厚みが薄いほど収納性は向上するため、厚みは0.29mm以下であるのがより好ましく、より一層好ましくは0.28mm以下であり、さらに好ましくは0.27mm以下である。しかしながら織物の厚みが薄すぎると織物としての機械的強度が低下したり、通気度を低く維持し難くなる虞があるため、厚みは0.20mm以上であるのが好ましく、より好ましくは0.22mm以上であり、さらに好ましくは0.23mm以上である。このように織物の厚みを薄くできるのは、特定の異型度を有する略三角断面繊維は、マルチフィラメント内で単糸繊維自体が最密充填するように移動することができ、斯かる繊維から構成される織物は、従来エアバッグに用いられてきた丸断面繊維や異型断面繊維等に比べて厚みが薄くなる特徴を有するためと考えられる。また厚みが薄くなることで織物が柔軟になり、その結果、収納性も良好になるものと推察している。
エアバッグ用織物は、ASTM D 4032で定義される剛軟度が、経方向、緯方向共に5N以上、22N以下であるのが好ましい。剛軟度が小さ過ぎる場合には織物にコシがないため、反発力が小さすぎて収納のためにエアバッグを折り畳む際の作業性が悪くなる傾向がある。一方、剛軟度が大き過ぎると、織物の剛性が高すぎて収納性が低下する場合がある。剛軟度は、より好ましくは6N以上、20N以下であり、さらに好ましくは7N以上、18N以下である。
エアバッグ用織物は、ASTM D 6478で定義される収納性が1200cm3以上、2400cm3以下であるのが好ましい。収納性が1200cm3よりも低い場合、織物に使用される繊維の太さや織密度が十分ではないことを示しており、エアバッグとしての必要な力学特性、低通気度が得られ難くなる傾向がある。また、2400cm3を超えると、収納が困難になる場合がある。より好ましくは、1300cm3以上、2300cm3以下、更に好ましくは、1400cm3以上、1800cm3以下である。
エアバッグ用織物の引裂強力の値は120N以上である。引裂強力が120N以上であれば、エアバッグとしての性能を満たすことが出来る。特に本発明のエアバッグ用織物は、織物を構成する単糸繊維同士の拘束が少ないので、織物の経糸又は緯糸方向に張力を掛けても負荷が特定の箇所に集中し難く、エアバッグ用織物の引裂強力は比較的高い値になる。引裂強力は、好ましくは125N以上であり、より好ましくは130N以上である。引裂強力の上限は特に限定されないが、エアバッグ用織物としては、例えば300N以下であるのが好ましい。
次に、本発明のエアバッグ用織物に用いられる繊維及びエアバッグ用織物の製造方法について説明する。
エアバッグ用織物を構成する繊維は定法に従って製造すればよい。例えば、原料樹脂を単軸或いは2軸などの押出機を用いて溶融押出し、ギアポンプを用いて計量し、適当な金属不織布フィルターを介してノズルへ押出して繊維状溶融物とした後、繊維状溶融物をそのままノズル直下の加熱筒を通過させて冷却風にて冷却し、紡糸油剤を付与し、引取ローラーに巻回してそのまま延伸を行い、次いで交絡処理を施すことでフィラメントとすることが出来る。
本発明のエアバッグ用織物を構成する繊維は、上述の通り、断面形状が略三角形であり、特定の異型度を有することが必要である。斯かる繊維を得るためには、適切な形状を有するノズルを使用して紡糸することが好ましい。例えば、3つの吐出孔を、これを囲む外縁が略三角形状となるように配置したノズルを使用して、ノズルから吐出された直後に溶融樹脂が広がるダイ−スウェル現象で吐出された樹脂を接合させて糸状に形成する方法;吐出孔形状がY型のノズルを使用し、3つの直線状のスリットから溶融樹脂を吐出させる方法;或いは、図1に示されるような、3つの略二等辺三角形を、隣り合う略二等辺三角形が底辺の端部を共有するように配置した吐出孔形状を有するノズルから溶融樹脂を吐出する方法等が挙げられる。
繊維断面の異型度はノズルの異型度により大きく左右されるので、特定の異型度を有する略三角断面形状の繊維を得るためには、図1に示すような吐出孔形状を有するノズルを使用することが好ましい。該形状のノズルを用いることで、繊維断面の異型度の調整が容易になる。
ノズルの異型度は2以上、10以下が好ましく、3以上、8以下がより好ましい。ノズル異型度が小さすぎると、製糸後の繊維断面が丸断面に近い形状になりやすくなる。一方、ノズルの異型度が大きすぎると、製糸後の繊維断面が偏平状やY型に近い形状になり易くなる。
ノズルの異形度は、ノズル孔の外接円と内接円との半径の比(外接円の半径/内接円の半径)で表すことができる。図1を参照しながら具体的に説明すると、外接円11は図1中破線で表されノズルの吐出孔外縁13の頂点A,B,及びCを通る円である。一方、内接円12は図1中一点鎖線で表され、上記吐出孔を上記A,B及びCを頂点とする3つの略二等辺三角形からなる形状と見立てた場合に、隣接する二等辺三角形の等辺の交点D,E,Fを通る円である。
ノズル温度は、使用する樹脂に応じて適宜決定すればよいが、例えばナイロン66等のポリアミド繊維を使用する場合は、ノズルの温度を280℃〜320℃とするのが好ましい。ノズル温度が低すぎるとノズルを通過するときの圧力損失が大きくなり紡糸が困難になる場合がある。一方ノズル温度が高すぎるとポリマーの劣化やゲル化が生じ易くなり、これがフィルターの目詰まりや糸切れなどの原因となるため、生産性を低下させるばかりでなく、繊維の強度を低下させてしまう虞がある。
ノズル面の温度を均一にするため、ノズルから繊維を巻き取る巻取りロールまでの間には、保温筒や加熱筒のような装置を設置してもよい。保温筒又は加熱筒の長さは、例えばノズルから2cm以上、50cm以下の範囲であるのが好ましい。加熱筒の長さが2cm
より短くなると、その後に続く冷却工程の冷却風が入り込み、ノズル面の温度が不均一になり繊維間で繊度斑が発生し易くなる虞がある。一方、保温筒又は加熱筒が50cmより長くなると、いわゆるレゾナンスと呼ばれる周期的な長手方向の糸斑が発生し易くなる傾向がある。
溶融された糸条を冷却するために用いる冷却風の温度は15℃以上、30℃以下の範囲とするのが好ましい。冷却風の温度が15℃より低いと繊維間で異型度、強度などの物性差が大きくなる虞があり、一方、冷却風の温度が30℃より高くなると繊維断面の異型度が小さくなりすぎる虞がある。より好ましくは18℃以上、28℃以下であり、さらに好ましくは20℃以上、25℃以下である。
冷却風の風速は0.1m/sec以上、1m/sec以下の範囲が好ましい。0.1m/sec未満では糸状を十分に冷却し難い場合があり、繊維間に繊度斑が発生し易くなる虞がある。一方、風速が1m/secを超えると冷却風上流と下流側で冷却速度が異なり易くなり、繊維間で繊度斑が発生する虞がある。
また、冷却された糸条を巻き取る際には、以下の式より算出されるドラフト比を100以上、150以下とすることが好ましい。
ドラフト比 = 引き取りローラー速度[m/min]/(単孔体積吐出量[m3/min]/ノズル孔断面積[m2])
ドラフト比が100より小さくなると、糸揺れが大きくなり繊維間での融着や、糸切れを引き起こし易くなる傾向がある。一方、ドラフト比が150より大きくなると、単糸繊維の断面内での分子鎖の配向斑、特に断面中央部と略三角形の頂点近傍での分子鎖の配向差が大きくなり、強度低下などの問題が生じ易くなる傾向がある。
延伸倍率は4.5倍以上、4.9倍以下とするのが好ましい。延伸倍率が4.5倍未満では繊維の強度が低下する虞がある。一方、延伸倍率が4.9倍より高いとフィラメント断面内で分子鎖の配向斑が生じ、フィラメント内にクラックが生じ易くなり、繊維の強度低下や、繊維の製造時に糸切れなどを起こし易くなる虞がある。
延伸時の温度は、後の製織方法にもよるが20℃以上、240℃以下の範囲とすることが好ましい。延伸温度が20℃より低いと必要な延伸倍率に達する前に糸切れが生じる虞がある。一方、延伸温度が240℃を超えると糸が溶断し、延伸が困難になる傾向がある。
本発明のエアバッグ用織物に用いる繊維では、空気圧などの流体処理、いわゆるインターレース処理による交絡は必要最小限にとどめることが好ましい。具体的には原糸段階での繊維の交絡度は5個/m以上、30個/m以下であるのが好ましい。交絡度を上述の範囲内とするためには、延伸処理の終了後、巻き取るまでの間に、インターレース処理を行い、繊維の交絡度を調整することが好ましい。
交絡度が小さすぎると、次工程、すなわち製織工程で毛羽が発生し易くなり、織物に品位の低下が見られる場合がある。一方交絡度が大きすぎると、製織後の織物の状態でも多数の交絡が残存することにより、単糸繊維の移動が阻害される虞がある。したがって原糸段階での交絡度は上述の範囲内にすることが好ましい。
エアバッグ用織物を製織する方法は特に限定されず、従来公知の方法を使用すればよい。例えば製織時の経糸張力は0.1cN/dtex以上、0.5cN/dtex以下が好ましい。より好ましくは0.15cN/dtex以上、0.4cN/dtex以下、さらに好ましくは0.18cN/dtex以上、0.35cN/dtex以下である。経糸張力が0.1cN/dtexより低いと、織密度の調整が難しく、かつ、経糸の交絡度が維持されたままとなり易く、織物としたときにフィラメント間の良好なパッキング性が得られ難くなる場合がある。0.5cN/dtexより高い場合は、経糸にかかる力が大きすぎて毛羽が発生する虞がある。
製織に使用する織機も特に限定されず、ウォータージェットルーム、エアジェットルーム、レピアルーム、又は多相織機などが好ましく用いられる。高速化や広幅化、あるいは機械価格の観点からは、ウォータージェットルームが好ましい。
エアバッグ用織物の製織後の加工方法は特に限定されるものではない。したがって、上述した本発明の特徴、すなわち外力の影響により織物内で単糸繊維が移動するとの特徴が維持できる限り、どのような加工を施してもよい。製織後のエアバッグ用織物の加工方法としては、例えば、精練処理、乾燥、熱セットなどの熱処理が挙げられる。これらは単独で実施してもよく、2つ以上を組み合わせて実施してもよい。
製織後の織物の加工方法の組合せの態様として具体的には、ウォータージェットルームで製織した生機を自然乾燥する、もしくは乾燥のため熱処理工程に供する態様;各種織機で製織された生機を精練工程に供した後、乾燥のため熱処理工程に供する態様;各種織機で製織された生機を精練工程に供した後、熱セットのため熱処理工程に供する態様;等が挙げられる。もちろん、織機上で織り上げたままの織物(生機)を上述のような加工工程に供することなくそのまま裁断、縫製してエアバッグとしてもよい。
まず、ウォータージェットルームで製織した生機を自然乾燥する、もしくは乾燥のため熱処理工程に供する態様について説明する(以下、第1の態様と称する場合がある。)。特定温度での熱処理工程を実施する場合、生機の熱処理温度(乾燥温度)を20℃以上、190℃以下とする。好ましくは40℃以上、160℃以下であり、より好ましくは60℃以上、140℃以下である。また、熱処理時間(乾燥時間)は10秒以上、5分以下とするのが好ましい。より好ましくは20秒以上、3分以下であり、さらに好ましくは30秒以上、2分以下である。熱処理工程では上記温度で生機を熱処理できればよく、その方法は特に限定されない。したがって熱処理工程を実施する装置は特に限定されず、例えば熱風を加熱媒体とする乾燥機(ドライヤー式加熱炉)、熱風や蒸気等を加熱媒体とするシリンダー乾燥機等、織物の乾燥に用いられる装置であればいずれも使用することができる。また、第1の態様では上記熱処理工程に換えて、製織後の生機を自然乾燥して、エアバッグ用織物を完成させてもよい。
各種織機で製織された生機を精練工程に供した後、乾燥のため熱処理工程に供する態様では(以下、第2の態様と称する場合がある。)、製織後、生機を50℃以上、100℃以下の水槽に通す温水処理を施す(精練工程)。温水処理では、紡糸工程や製織工程で付与される油剤やサイジング剤等を織物から取り除きつつ、織物を収縮させる。水の温度が50℃未満である場合には織物を十分に収縮させ難い場合がある。水の温度は60℃以上、98℃以下であるのがより好ましく、さらに好ましくは70℃以上、95℃以下である。温水処理は10秒以上、3分以下実施するのが好ましい。より好ましくは20秒以上、2分以下であり、さらに好ましくは30秒以上、1分以下である。温水処理で使用する水としては、水道水、純水の他、アルキルベンゼンスルホン酸ソーダなどの界面活性剤、ソーダ灰などのアルカリ精練剤、酵素、又は有機溶剤等の1種以上を溶解した水溶液を使用してもよい。
また温水処理は、生機の経糸方向に0.040cN/dtex以下のテンションを掛けながら実施することが好ましい。所定のテンション下で温水処理を実施することによって、織物を十分に収縮させることで生機中の糸条を再配列させることができる。また、ナイロン66等のポリアミド繊維を用いる場合には、水の存在より繊維中の水素結合が切断されやすくなり、これによって、より柔軟性の高い基布が得られやすくなる。経糸方向のテンションが0.040cN/dtexを超えると、温水処理時に織物が自由に収縮し難くなり、また織物自体が緊張状態で熱固定された状態に近くなるため織物の柔軟性が損なわれやすくなる虞がある。
次いで、精練工程(温水処理)を経た織物を熱処理工程に供する。第2の態様に係る熱処理工程では、熱セット加工を施さずに、織物を乾燥させることが好ましい。温水処理と同様の理由から、熱処理(乾燥)工程での経糸方向のテンションも0.040cN/dtex以下とすることが好ましい。
熱処理温度(乾燥温度)はエアバッグ用織物の柔軟性を確保する観点からは、150℃以下であることが好ましい。より好ましくは140℃以下である。乾燥温度は低い方が好ましいが、低すぎると乾燥時間が長くなり、工業的に好ましくない。好ましくは100℃以上、より好ましくは110℃以上である。熱処理時間は10秒以上、5分以下とするのが好ましい。より好ましくは20秒以上、3分以下であり、さらに好ましくは30秒以上、2分以下である。
各種織機で製織された生機を精練工程に供した後、熱セットのため熱処理工程に供する態様では(以下、第3の態様と称する場合がある。)、精練工程で、比較的低温の水、具体的には30℃以上、90℃以下の水を使用する。水の温度は、好ましくは40℃以上、80℃以下であり、より好ましくは50℃以上、70℃以下である。上記温度範囲内であれば、紡糸工程や製織工程で付与される油剤やサイジング剤等を効率よく織物から取り除くことができる。
特定温度の水を使用する限り精練工程に制限は無く、従来公知の精練方法を採用することができる。精練工程で使用する水としては、水道水、純水の他、アルキルベンゼンスルホン酸ソーダなどの界面活性剤、ソーダ灰などのアルカリ精練剤、酵素、及び有機溶剤等の1種以上を溶解した水溶液を使用してもよい。
また、精練工程は、生機の走行方向と、走行方向に直交する方向(幅方向)に張力を与えながら実施してもよい。例えば、生機の走行方向のオーバーフィード率は0%以上、5%以下とするのが好ましく、より好ましくは1%以上、4%以下であり、さらに好ましくは2%以上、3%以下である。一方、生機の幅方向のオーバーフィード率は、0%以上、3%以下とするのが好ましく、より好ましくは0.5%以上、2.5%以下であり、さらに好ましくは1%以上、2%以下である。
精練処理は10秒以上、5分以下実施するのが好ましい。より好ましくは20秒以上、3分以下であり、さらに好ましくは30秒以上、2分以下である。精練処理後の織物(生機)は、一旦脱水や乾燥処理を施した後、熱処理工程に供してもよいが、熱処理工程では織物を110℃以上に加熱するので、乾燥処理等を実施せずに、精練処理後の織物を直接熱処理工程に供してもよい。
次いで、精練処理後の織物を110℃以上、190℃以下で熱処理する(熱処理工程)。熱処理温度は、好ましくは120℃以上であり、より好ましくは130℃以上であり、185℃以下であるのが好ましく、より好ましくは180℃以下であり、さらに好ましくは175℃以下である。熱処理温度が低すぎると、精練処理で濡れた織物を乾燥させるのに長時間必要になる傾向があり、効率的でないばかりか、繊維が本来有している収縮力が十分発揮されず繊維間の目合いが大きくなってしまい、通気度が高くなってしまう虞がある。一方、熱処理温度が高過ぎると、織物を構成する繊維が熱劣化して力学的な強度が低下してしまう虞があるのみならず、熱収縮により織物に強い緊張が与えられ、織物が硬化し、収納性が低下する虞がある。
第3の態様では織物に張力を与えながら熱処理を実施する(熱セット)。より通気度の低い織物を得る観点からは、オーバーフィードとなるように織物を熱処理工程に供給するのが好ましい。織物の走行方向のオーバーフィード率は1.5%以上、6.0%以下であり、好ましくは2.0%以上、5.0%以下であり、より好ましくは2.5%以上、4.5%以下である。一方、織物の走行方向に直交する方向(幅方向)のオーバーフィード率(巾入れ率)は、1.0%以上、4.0%以下であり、好ましくは1.5%以上、3.5%以下であり、より好ましくは2.0%以上、3.0%以下である。
なお、精練工程と熱処理(熱セット)工程の両方で生機をオーバーフィードの状態で供給する場合、熱セット工程では、織物の走行方向のオーバーフィード率を0%以上、5.0%以下とすることが好ましく、より好ましくは1.0%以上、4.0%以下であり、さらに好ましくは1.5%以上、3.0%以下である。一方、織物の走行方向に直交する方向(幅方向)のオーバーフィード率(巾入れ率)は、0%以上、3.0%以下とするのが好ましく、より好ましくは0.5%以上、2.5%以下であり、さらに好ましくは1.0%以上、2.0%以下である。
ここで、織物の走行方向のオーバーフィード率とは下記式により表される値である。熱処理工程の上流側にあり、織物を熱処理工程に供給する送りローラーの速度(V1)を、熱処理工程の下流側にある巻取りローラーの速度(V2)よりも速くすることによりオーバーフィードの状態とすることができる。
走行方向のオーバーフィード率(%)=(V1/V2)×100
[V1:送りローラー速度、V2:巻取りローラー速度]
一方、織物の走行方向に直交する方向(幅)のオーバーフィード率とは、下記式により表される値である。通常、熱処理工程は、織物の幅方向両端を固定した状態で実施するが、固定した一方の端部から他方の端部までの距離を、熱処理工程供給前の織物の幅よりも狭くすることでオーバーフィードの状態とすることができる。
織物の走行方向に直交する方向のオーバーフィード率(%)=(1−L0/L1)×100
[L0:熱処理工程に供給される前織物の幅(m)、L1:熱処理工程に供給された後の織物の幅(m)]
織物の走行方向、及び幅方向のオーバーフィード率が上述の範囲内であれば、織物が外力を受けた際の単糸繊維の移動や、繊維軸直交方向への織糸の拡がりが好適に生じるので好ましい。オーバーフィード率が小さ過ぎると、熱処理で糸が収縮することにより単糸繊維自体にも過剰な張力がかかるため、外力を受けても単糸繊維が移動し難くなったり、繊維軸直交方向に織糸が拡がり難くなって、通気度が増加する虞がある。また、オーバーフィード率が大き過ぎると、繊維の収縮力によりクリンプが大きくなることで、繊維間に隙間が生じて通気度が悪化したり、織物が厚くなって収納性が低下する虞や、織物に過剰な張力がかかることで織物自体が硬くなる虞がある。
熱セットは公知の装置と加熱手段とを併用して実施すればよい。斯かる装置としては、例えば、ピンテンターやクリップテンターと呼ばれる織物を保持する装置が挙げられる。加熱手段としては、例えば、ドライヤー式加熱炉が使用できる。
上述のエアバッグ用織物を、所望の形状となるように裁断、縫製又は溶着することでエアバッグが得られる。
以下、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明はもとより下記実施例によって制限を受けるものではなく、前・後記の趣旨に適合し得る範囲で適当に変更を加えて実施することも勿論可能であり、それらはいずれも本発明の技術的範囲に包含される。
(1)総繊度
JIS L1095 9.4.1に準拠して測定した。
(2)フィラメント数
JIS L1013(1999)の8.4に準拠して算出した。
(3)強度、伸度
JIS L1017 8.5 a) 標準時試験の定義により、20℃、65%RHに温湿度が管理された部屋に24間放置した後、引張試験機(株式会社オリエンテック製「テンシロン万能材料試験機」)により、強度、伸度を得た。
(4)沸水収縮率
JIS L1013(1999)の8.18.1に記載の(a)かせ収縮率(A法)により測定した。
(5)織密度(打ち込み本数)
JIS L1096(1999)の8.6に準拠して測定した。
(6)断面形状、異型度
走査型電子顕微鏡を用いて、任意に選んだ5本の繊維の断面を撮影する(倍率1000〜2000)。市販のソフトウェア(例えばNIS−Elements Documentation)を使用し、得られた繊維の断面写真において目視で繊維の断面に現れる略三角形の頂点3点(a,b,cと称する)を選択し、この3点a,b,cを通り、繊維断面に外接する円を描写する(外接円31)。次いで、上記頂点を結ぶ線分ab、bc、及びacの垂直二等分線21を作図し、この垂直二等分線21と交差する繊維断面の3つの交点22を通り、繊維断面に内接する円を描写する(内接円32)。そして、上記外接円31の半径を内接円32の半径で除した値を異型度とした(図2〜5参照)。異型度は5本のフィラメントの平均値を用いた。ノズル孔の異型度も同様の方法で算出した。
なお、繊維断面形状が略三角形以外の形状である場合は、繊維断面の外縁に接する外接円と内接円とを設定し、これらの半径の比から異型度を求めた。繊維断面内に複数の内接円を描写できる場合は、最小の内接円の半径を用いて異型度を求めた。
(7)ヤーン拡幅比
図6に示すように、繊維(マルチフィラメント)61を周長が20cmになるように結束し1重の輪を作る。この輪部分を水平に設置した直径1cmのテフロン(登録商標)棒62を通し、繊維61を吊るす。このとき、結束点64がテフロン(登録商標)棒62上および最下点に来ないように結束点64の位置を調節する。繊維の総繊度(dtex)に対して1.52倍の荷重63を輪状の繊維61の最下点に吊るす。なお荷重63は、測定に用いた繊維を使用した接合糸67を介して繊維61に吊るす。この状態でテフロン(登録商標)棒62の最上部に位置するマルチフィラメントの繊維幅(a)と、結束点64が無い側の荷重点(繊維61の最下点)から5cm上側に位置する繊維の最も太い繊維幅(b)とを測定し、両者の比(a/b)を算出する。繊維を変えて、上記測定を10回繰り返しその平均値をヤーン拡幅比とした。なお、織物からの解織糸のヤーン拡幅比も同様の方法により測定した。
(8)高圧通気度(20kPa差圧下での通気度)
実施例及び比較例で得られた織物の幅方向両端部から30cmの範囲を除いた部分からランダムに選択した5箇所の測定部位において、高圧通気度測定機(OEMシステム(株)製)を使用して20kPa差圧下での通気度を測定し、その平均値を高圧通気度とした。
(9)折り畳み後の高圧通気度(20kPa差圧下での通気度)
織物の幅方向両端部から30cmの範囲を除いた任意の箇所から20cm四方の試験片を5枚切り取出し、試験片を繊維軸方向(a)に沿って半分に折り、前記繊維軸方向(a)に直交する繊維軸方向(b)に沿って半分に折った後、再び前記繊維軸方向(a)に沿って半分、繊維軸方向(a)に直交する繊維軸方向(b)に沿って半分に折って、5cm四方に折り畳んだ。折り畳まれた試験片の全面に50Nの荷重を1分間付与し、次いで、20cm四方に広げた状態で1分間放置した。1回目の折目と2回目の折目の交点を中心とする直径10cmの円部分を測定部位とし、20kPa差圧下での通気度を高圧通気度測定機(OEMシステム(株)製)を用いて測定した。5枚の試験片の平均値を折り畳み後の高圧通気度とした。
(10)通気度変化率
以下の式2により、折り畳み前後の通気度変化率を求めた。
通気度変化率 (%) = (折り畳み後の高圧通気度)/(折り畳み前の高圧通気度)×100 (式2)
(11)基布厚み
JIS L1096(1999) 8.5(240g/cm2加圧下)に準拠して測定した。
(12)交絡度
原糸、及び解織糸の交絡度は、JIS L1013 8.15に準拠して算出した。
(13) ASTM剛軟度
ASTM D 4032 により測定した。
(14) ASTM収納性
ASTM D 6478 により測定した。
(15) 引裂強力
JIS L1096 8.15.2のA−2法(シングルタング法)により測定した。
結果は中央値を採用した。
実施例1
ポリアミド66レジンを単軸の押出機を用いて溶融押出し、ギアポンプを用いて計量し、金属不織布フィルター(日本精線株式会社製NF−07)を介して図1記載の形状に孔形状を加工したノズル(異型度6)へ押出して繊維状溶融物とした。繊維状溶融物をそのままノズル直下の加熱筒を通過させ、冷却風にて冷却した後に、脂肪酸エステル系の紡糸油剤を付与し、引取ローラーに巻回してそのまま公知の方法で延伸を行い、350dtex、108フィラメントの略三角断面ポリアミド66繊維(略三角断面糸)を得た。この繊維断面の走査型電子顕微鏡写真を図4に示す。
得られた略三角断面糸を経糸、緯糸に使用し、ウォータージェットルームにて製織した。製織後、98℃の温水槽に通し、経糸方向の走行テンションが0.026cN/dtexとなるように加工テンションを調整して温水処理を実施した(精練処理A)。続けて0.026cN/dtexの経糸方向の走行テンション下で乾燥処理を施して、経、緯の織物密度が59本/インチの平織り布を得た。原糸の物性、及び織物の物性を表1に示す。
実施例2
紡糸時に異型度4のノズルを使用したこと以外は実施例1と同様な手法で、異型断面を有する繊維を製造し、これを製織して織物を得た。原糸の物性、及び織物の物性を表1に示す。
実施例3
紡糸時に異型度8のノズルを使用したこと以外は実施例1と同様な手法で、異型断面を有する繊維を製造し、これを製織して織物を得た。原糸の物性、及び織物の物性を表1に示す。
実施例4
紡糸時に異型度10のノズルを使用したこと以外は実施例1と同様な手法で、異型断面を有する繊維を製造し、これを製織して織物を得た。原糸の物性、及び織物の物性を表1に示す。
実施例5
紡糸時に異型度6のノズルを使用して実施例1と同様にして、470dtex、72フィラメントの三角断面ポリアミド66繊維を得た。
得られた三角断面糸を経糸、緯糸に使用し、ウォータージェットルームにて製織した。
製織後、98℃の温水槽に通し、経糸方向の走行テンションが0.026cN/dtexとなるように加工テンションを調整して温水処理を実施した。続けて0.026cN/dtexの経糸方向の走行テンション下で乾燥処理を施して、経、緯の織物密度が54本/インチの平織り布を得た。原糸の物性、及び織物の物性を表1に示す。
比較例1
ポリアミド66レジンを単軸の押出機を用いて溶融押出し、ギアポンプを用いて計量し、金属不織布フィルター(日本精線株式会社製NF−07)を介してノズル(異型度1.0)へ押出して繊維状溶融物とした。繊維状溶融物をそのままノズル直下の加熱筒を通過させ、冷却風にて冷却した後に脂肪酸エステル系の紡糸油剤を付与し、引取ローラーに巻回してそのまま公知の方法で延伸を行い、350dtex、108フィラメントの丸断面ポリアミド66繊維を得た。
得られたポリアミド66繊維を経糸、緯糸に使用しウォータージェットルームにて製織した。製織後、98℃の温水槽を通し、経糸方向の走行テンションが0.026cN/dtexとなるように加工テンションを調整して温水処理を実施した後、続けて走行テンションが0.026cN/dtexのテンション下で乾燥処理を施して、経、緯の織物密度が59本/インチの平織り布を得た。原糸の物性、及び織物の物性を表1に示す。
単糸繊維の断面形状が略三角形の繊維でできた実施例の織物と比べると、比較例1で得られた織物は高圧通気度が高いものであった。
比較例2
比較例1の手順に従って、470dtex、72フィラメントの丸断面ポリアミド66繊維を製造し、これを製織して経、緯の織物密度が54本/インチの平織り布を得た。原糸の物性、及び織物の物性を表1に示す。
比較例2で得られた織物は、これを構成する繊維の総繊度は実施例5と同じであったが、単糸繊維が丸断面であったため、繊維内で単糸繊維が移動する効果が小さく、また織物の厚みが厚く、硬かったため、収納性が低下したものと考えられる。比較例2の織物は高圧通気度も高いものであった。
比較例3
紡糸時に異型度12.0のノズルを使用し、単糸繊維の断面形状を公知の方法でY字形状にした以外は比較例1と同様にしてY字断面ポリアミド66繊維を製造し、これを製織して織物を得た。原糸の物性、及び織物の物性を表1に示す。比較例3で得られた繊維断面の走査型電子顕微鏡写真を図5に示す。
総繊度及びフィラメント数が同じで、三角断面の繊維でできた実施例の織物と比べると、Y字断面の繊維を使用した比較例3の織物は基布厚みが厚く、収納性も劣るものであった。また比較例3の織物の高圧通気度も実施例の織物に比べて高いものであった。
比較例4
使用するノズルの孔形状を変えて、単糸繊維の断面形状を公知の方法で四角形状にしたこと以外は比較例1と同様にして繊維を製造し、これを製織して織物を得た。原糸の物性、及び織物の物性を表1に示す。
総繊度及びフィラメント数が同じで、三角断面の繊維でできた実施例の織物と比べると、四角断面の繊維を使用した比較例4の織物は厚みが厚く、収納性も劣っていた。
比較例5
使用するノズルの孔形状をスリット状にして、繊維軸方向に直交する断面を公知の方法で扁平形状にしたこと以外は比較例1と同様の手順で繊維を製造し、これを製織して織物を得た。原糸の物性、及び織物の物性を表1に示す。
三角断面の繊維でできた実施例の織物に比べて、比較例5の織物は折り畳んだ後の高圧通気度が高いものであった。これは、織物を折り畳んだ際に扁平断面の単糸繊維の積層構造が乱れたためと考えられる。
比較例6
実施例1の手順に従って、略三角断面繊維を製造し、これを製織して織物を得た。製織後、生機を55℃の温水槽に1分間通過させた後、120℃で1分間乾燥を行った(精練処理C)。次いで、ピンテンターを使用し、織物走行方向のオーバーフィード率4.0%、巾入れ率2.5%の条件で、180℃で30秒間の熱処理(熱収縮処理(熱セット))を織物に施した。次いで150℃に加熱した表面がフラットな金属ロールと常温のプラスチックロールとの間で線圧170kg/cm、速度10m/minで片面をプレス圧縮し、加工した。原糸の物性、及び織物の物性を表1に示す。
比較例6の織物は、総繊度及びカバーファクターが同一である実施例1で得られた織物に比べて引裂強力が劣っていた。これは、織物にプレス加工を施したことにより、経糸と緯糸が互いに噛み合った状態になり、この経糸と緯糸との係合部に負荷が集中したため引裂強力が低下したものと考えられる。また、比較例6の織物は実施例の織物に比べて通気度変化率も劣っていた。これはカレンダー加工により繊維が硬く固められ、拡幅率が小さくなったためと考えられる。
実施例6
紡糸時に異型度6.0のノズルを使用して実施例1と同様の方法で、350dtex、108フィラメント、沸水収縮率が5.5%の三角断面ポリアミド66繊維を得た。
得られた略三角断面糸を経糸及び緯糸に使用し、ウォータージェットルームにて製織した。製織後、オープンソーパー型精練機を使用して、アルキルベンゼンスルホン酸ソーダ濃度0.5g/L、ソーダ灰濃度0.5g/Lの水溶液を張った精練槽(温度65℃)に得られた織物を1分間浸漬して精練処理を行った。その後、織物を40℃の温水槽で1分間水洗し、130℃で1分間乾燥した(精練処理B)。
次いで、ピンテンターを使用して、織物の走行方向のオーバーフィード率2.5%、巾入れ率1.5%の条件で、180℃で1分間の熱処理(熱収縮処理(熱セット))を実施して、経、緯の織物密度が59本/インチの平織り布を得た。原糸の物性、及び織物の物性を表2に示す。
実施例7
紡糸時に異型度6.0のノズルを使用して実施例1と同様の方法で、350dtex、108フィラメント、沸水収縮率が9.6%の三角断面ポリアミド66繊維を得た。
得られた略三角断面糸を経糸、及び緯糸に使用し、ウォータージェットルームにて製織した。製織後、生機を55℃の温水槽に1分間通過させた後、120℃で1分間乾燥を行った(精練処理C)。次いで、ピンテンターを使用し、織物走行方向のオーバーフィード率4.5%、巾入れ率3.0%の条件で、160℃で1分間の熱処理(熱収縮処理(熱セット))を織物に施した。得られた織物は平織りで、経、緯の織物密度は59本/インチであった。原糸の物性、及び織物の物性を表2に示す。
実施例8
紡糸時に異型度4.0のノズルを使用して実施例2と同様の方法で、350dtex、108フィラメント、沸水収縮率が9.8%の三角断面ポリアミド66繊維を得た。
得られた略三角断面糸を経糸、及び緯糸に使用し、ウォータージェットルームで製織した。製織後、実施例7と同様の条件で、生機に精練、乾燥及び熱収縮処理(熱セット)を実施した。得られた織物は平織りで、経、緯の織物密度は59本/インチであった。原糸の物性、及び織物の物性を表2に示す。
実施例9
紡糸時に異型度8.0のノズルを使用して実施例3と同様の方法で、350dtex、108フィラメント、沸水収縮率が9.5%の三角断面ポリアミド66繊維を得た。
得られた略三角断面糸を経糸、及び緯糸に使用し、ウォータージェットルームにて製織した。製織後、実施例7と同様の条件で、生機に精練、乾燥及び熱収縮処理(熱セット)を施した。得られた織物は平織りで、経、緯の織物密度は59本/インチであった。原糸の物性、及び織物の物性を表2に示す。
実施例10
紡糸時に異型度10.0のノズルを使用して実施例4と同様の方法で、350dtex、108フィラメント、沸水収縮率が9.2%の三角断面ポリアミド66繊維を得た。
得られた略三角断面糸を経糸及び緯糸に使用し、ウォータージェットルームにて製織した。製織後、実施例7と同様の条件で、生機に精練、乾燥及び熱収縮処理(熱セット)を施した。得られた織物は平織りで、経、緯の織物密度は59本/インチであった。原糸の物性、及び織物の物性を表2に示す。
実施例11
紡糸時に異型度6.0のノズルを使用して実施例1と同様の方法で、350dtex、108フィラメント、沸水収縮率が9.6%の三角断面ポリアミド66繊維を得た。
得られた略三角断面糸を経糸、及び緯糸に使用し、ウォータージェットルームにて製織した。製織後は特に加工を施さず、そのまま自然乾燥させて、織物を仕上げた。得られた織物は平織りで、経、緯の織物密度は57本/インチであった。原糸の物性、及び織物の物性を表2に示す。
実施例12
紡糸時に異型度6.0のノズルを使用して実施例1と同様の方法で、470dtex、72フィラメント、沸水収縮率が6.2%の三角断面ポリアミド66繊維を得た。
得られた略三角断面糸を経糸及び緯糸に使用し、ウォータージェットルームにて製織した。製織後、オープンソーパー型精練機を使用して、アルキルベンゼンスルホン酸ソーダ濃度0.5g/L、及びソーダ灰濃度0.5g/Lの水溶液を張った精練槽(温度65℃)に、得られた生機を1分間浸漬して精練処理を行った後、45℃の温水槽で1分間水洗し、引き続き140℃で1分間乾燥した(精練処理D)。
次いで、ピンテンターを使用し、織物走行方向のオーバーフィード率3.0%、巾入れ率2.0%の条件で、180℃で1分間の熱収縮処理(熱セット)を実施して織物を完成した。織物は平織りで、経、緯の織物密度は54本/インチであった。原糸の物性、及び織物の物性を表2に示す。
実施例13
紡糸時に異型度6.0のノズルを使用して実施例1と同様の方法で、470dtex、72フィラメント、沸水収縮率が9.3%の三角断面ポリアミド66繊維を得た。
得られた略三角断面糸を経糸、及び緯糸に使用し、ウォータージェットルームにて製織した。得られた生機を60℃の温水槽に1分間通過させて精練した後、130℃で1分間乾燥を行った(精練処理E)。
次いで、ピンテンターを使用して、織物走行方向のオーバーフィード率3.0%、巾入れ率2.0%の条件で、160℃で1分間の熱収縮処理(熱セット)を実施して織物を完成した。得られた織物は平織りで、経、緯の織物密度は54本/インチであった。原糸の物性、及び織物の物性を表2に示す。
比較例7
ポリアミド66レジンを単軸の押出機を用いて溶融押出し、ギアポンプを用いて計量し、金属不織布フィルター(日本精線株式会社製NF−07)を介してノズル(異型度1.0)へ押出して繊維状溶融物とした。繊維状溶融物をそのままノズル直下の加熱筒を通過させて冷却風にて冷却した後に脂肪酸エステル系の紡糸油剤を付与し、引取ローラーに巻回してそのまま公知の方法で延伸を行い、350dtex、108フィラメント、沸水収縮率が5.9%の丸断面ポリアミド66繊維を得た。
得られた繊維を経糸及び緯糸に使用し、ウォータージェットルームにて製織した。製織後、実施例6と同様の条件で、生機に精練、乾燥及び熱収縮処理(熱セット)を施して、経、緯の織物密度が59本/インチの平織り布を得た。原糸の物性、及び織物の物性を表3に示す。
単糸繊維の断面形状が略三角形の繊維でできた実施例6の織物と比べると、比較例7の織物は、高圧通気度が高いものであった。
比較例8
比較例1の手順に従って、350dtex、108フィラメント、沸水収縮率9.2%の丸断面ポリアミド66繊維を製造した。
得られた繊維を経糸、及び緯糸に使用し、ウォータージェットルームにて製織した。製織後、実施例7と同様の条件で、生機に精練、乾燥及び熱収縮処理(熱セット)を施して、経、緯の織物密度が59本/インチの平織り布を得た。原糸の物性、及び織物の物性を表3に示す。
単糸繊維の断面形状が略三角形の繊維でできた実施例7の織物と比べると、比較例8の織物は高圧通気度が高いものであった。
比較例9
比較例1の手順に従って、350dtex、108フィラメント、沸水収縮率9.2%の丸断面ポリアミド66繊維を製造した。
得られた繊維を経糸、及び緯糸に使用し、ウォータージェットルームにて製織した。製織後は特に加工を施さず、そのまま自然乾燥をさせて、織物を仕上げた。得られた織物は平織りで、経、緯の織物密度は57本/インチであった。原糸の物性、及び織物の物性を表3に示す。
単糸繊維の断面形状が略三角形の繊維でできた実施例11の織物と比べると、比較例9の織物は高圧通気度が高いものであった。
比較例10
比較例1の手順に従って、470dtex、72フィラメント、沸水収縮率5.8%の丸断面ポリアミド66繊維を製造した。
得られた繊維を経糸及び緯糸に使用し、ウォータージェットルームにて製織した。製織後、実施例12と同様の条件で、生機に精練、乾燥及び熱収縮処理(熱セット)を施して、経、緯の織物密度が54本/インチの平織り布を得た。原糸の物性、及び織物の物性を表3に示す。
比較例10で得られた織物を構成する繊維の総繊度は実施例12と同じであったが、単糸繊維が丸断面であり、繊維内で単糸繊維が移動する効果が小さかったため、織物が厚く、硬かったため、収納性が低下したものと考えられる。また高圧通気度も高いものであった。
比較例11
比較例1の手順に従って、470dtex、72フィラメント、沸水収縮率9.3%の丸断面ポリアミド66繊維を製造した。
得られた繊維を経糸及び緯糸に使用し、ウォータージェットルームにて製織した。製織後、実施例13と同様の条件で、生機に精練、乾燥及び熱収縮処理(熱セット)を施して、経、緯の織物密度が54本/インチの平織り布を得た。原糸の物性、及び織物の物性を表3に示す。
比較例11で得られた織物を構成する繊維の総繊度は実施例13と同じであったが、単糸繊維が丸断面であり、繊維内で単糸が移動する効果が小さかったため、織物が厚く、硬かったため、収納性が低下したものと考えられる。また比較例11で得られた織物は高圧通気度も高いものであった。
本発明によれば、低い通気度と織物の機械的強度を損なうことなく、柔軟で、良好な収納性を発揮するエアバッグ用織物及びエアバッグを提供することができる。
11 ノズルに設けられた吐出孔に外接する円
12 ノズルに設けられた吐出孔に内接する円
13 ノズルに設けられた吐出孔の外縁
21、21’ 単糸繊維の繊維軸方向に直交する断面に現れる形状の頂点同士を結んだ直線の線分の垂直2等分線
22、22’ 垂直2等分線と単糸繊維断面の外周との交点
31、31’ 外接円
32、32’ 内接円
33、33’ 単糸繊維の断面に現れる形状の頂点を結んだ三角形
34、34’ 単糸繊維の断面外周
61 測定サンプル(繊維)
62 直径1cmのテフロン(登録商標)棒
63 荷重
64 結束点
65 一定引張張力を印加したときの、テフロン(登録商標)棒の最上部に位置する繊維の幅(a)の測定点
66 一定引張張力を印加したときの繊維の幅(b)の測定点
67 測定サンプルと同じ糸を用いた、荷重との接合糸

Claims (10)

  1. 断面形状が略三角形であり、異型度が1.3〜2.2である単糸繊維を含み、
    引裂強力が120N以上であり、且つ、
    20kPa差圧下での通気度が0.65L/cm2/min以下であることを特徴とするエアバッグ用織物。
  2. 下記方法により測定される前記織物の折り畳み後の20kPa差圧下での通気度が0.65L/cm2/min以下である請求項1に記載のエアバッグ用織物。
    [織物の折り畳み後の20kPa差圧下での通気度]
    織物の幅方向両端部から30cmの範囲を除いた任意の箇所から20cm四方の試験片を切り出し、試験片を繊維軸方向(a)に沿って半分に折り、次いで前記繊維軸方向(a)に直交する繊維軸方向(b)に沿って半分に折り、再び前記繊維軸方向(a)に沿って半分に折り、前記繊維軸方向(a)に直交する繊維軸方向(b)に沿って半分に折って、5cm四方に折り畳む。折り畳まれた試験片の全面に50Nの荷重を1分間付与し、次いで20cm四方に広げた状態で1分間放置する。1回目の折目と2回目の折目の交点を中心とする直径10cmの円を測定部位として20kPa差圧下での通気度を測定する。
  3. 前記織物の20kPa差圧下での通気度に対する、請求項2に記載の方法により測定される織物の折り畳み後の20kPa差圧下での通気度の変化率が150%以下である請求項1又は2に記載のエアバッグ用織物。
  4. ASTM D 6478で定義される収納性が1200cm3〜2400cm3であり、ASTM D 4032で定義される剛軟度が経方向、緯方向共に5N〜22Nである請求項1〜3のいずれかに記載のエアバッグ用織物。
  5. 前記織物を構成する繊維の総繊度が200dtex〜500dtexであり、カバーファクターが2300以下である請求項1〜4のいずれかに記載のエアバッグ用織物。
  6. 前記単糸繊維の断面に現れる略三角形の頂点同士を結んだ直線が、当該単糸繊維断面の外周の内側にある請求項1〜5のいずれかに記載のエアバッグ用織物。
  7. 請求項1〜6のいずれかに記載の織物を用いたことを特徴とするエアバッグ。
  8. 請求項1〜6のいずれかに記載のエアバッグ用織物の製造方法であって、
    マルチフィラメントを製織する工程、
    製織した生機を自然乾燥する、もしくは20℃〜190℃で熱処理する工程を含むことを特徴とするエアバッグ用織物の製造方法。
  9. 請求項1〜6のいずれかに記載のエアバッグ用織物の製造方法であって、
    マルチフィラメントを製織する工程、
    製織した生機を50℃〜100℃の水で精練する工程、及び
    精練後の生機を100℃〜150℃で熱処理する工程を含むことを特徴とするエアバッグ用織物の製造方法。
  10. 請求項1〜6のいずれかに記載のエアバッグ用織物の製造方法であって、
    マルチフィラメントを製織する工程、
    製織した生機を30℃〜90℃の水で精練する工程、及び
    精練後の生機を、生機の走行方向のオーバーフィード率を1.5%〜6.0%、前記走行方向に直交する方向のオーバーフィード率を、当該直交方向の長さに対して1.0%〜4.0%とし、110℃〜190℃で熱処理する工程を含むことを特徴とするエアバッグ用織物の製造方法。
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