JP6005462B2 - セラミック部品およびその製造方法 - Google Patents
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したがって、セラミック部品において実装面となる側面(矩形状のセラミック部品の外縁を構成する側辺)を、凹凸のない平坦な面にして、セラミック部品において半導体チップを搭載するキャビティ面と、実装面である側面との関係をできるだけ垂直にする必要があった。
まず、焼成後に矩形状のセラミック部品となるセラミック部品パーツが格子状に複数個配置されてなるセラミック部品パーツ領域と、このセラミック部品パーツ領域を囲うように形成されるダミー領域とからなるセラミックグリーンシートを作成し、このセラミックグリーンシートにその上下層を電気的に導通させるためのビア導体用貫通孔や、半導体チップを収容するキャビティとなる貫通孔を穿設してから、導体ペーストを印刷塗布して配線導体、ビア導体、及び、めっき導通用パターンを形成する。
次に、上述のように導体ペーストが印刷塗布されたセラミックグリーンシートを積層してセラミックグリーンシート積層体とし、このセラミックグリーンシート積層体にブレードを用いて、個々の焼成前セラミック部品の境界となる位置に個片分割用の分割溝を形成する。
そして、個片分割用の分割溝が形成されたセラミックグリーンシート積層体を焼成して多層セラミック焼成体とする。
さらに、この多層セラミック焼成体におけるめっき導通用パターンを、上記ダミー領域の外縁に形成される端子部にまで延設しておき、この端子部にめっき用電源を接続することで、格子状に配置される個々のセラミック部品の配線導体の露出部分に電解めっきを行うことができる。
そして、上述のような電解めっきによるメッキ処理を完了した多層セラミック焼成体を、分割溝に沿って破断して個片化したものがセラミック部品である。
そして、この破断面は、多層セラミック焼成体を構成する個々のセラミック層が分断されて形成されるため、通常は凸凹状である。このため、セラミック部品の破断面を回路基板に当接させてセラミック部品を立設して実装する場合、セラミック部品を回路基板上の実装面に、垂直に立設できないという課題があった。
上述のような課題に対処することを目的とした発明がいくつか開示されている。
特許文献1に開示される積層セラミック電子部品の製造方法は、有機バインダを含むセラミックグリーンシートを積層してなる積層体を、ダイシングブレードを用いて湿式工法により切断して個々の素子に切断する切断工程と、切断された個々の素子を、水分含有率が0.15重量%以下になるように予備乾燥する予備乾燥工程と、予備乾燥された個々の素子を本乾燥させる本乾燥工程と、本乾燥された個々の素子を、所定の条件で熱処理して焼成する焼成工程とを具備することを特徴とするものである。
上記構成の特許文献1に開示される発明によれば、形状不良や寸法不良などの発生を抑制、防止することが可能になり、効率よく積層セラミック電子部品を製造できる。
特許文献2に係る出願は本願と同一の出願人によるものであり、開示される発明は、文献中に記載される符号をそのまま用いて説明すると、セラミック基体11に電子部品12を搭載して収納する電子部品収納用セラミックパッケージ10において、セラミック基体11の四角形状の1側面にセラミック基体11の表面に対して直角に、厚み方向の全体にわたって設けられた切削面15と、セラミック基体11の1側面を除く他の3側面にセラミック基体11の表面から厚み方向の途中までに設けられた分割溝16と、分割溝16と隣接する破断面17を有することを特徴とするものである。
特許文献2に開示される発明によれば、セラミック基体の1側面が平坦性に優れた切削面であるため、実装用配線基板に安定して立設させて容易に実装できると共に、セラミック基体の3側面を、容易に形成できる分割溝を破断させてなる破断面とすることで安価なパッケージとしてパッケージを実装したモジュールのコストアップを防止できる。
特許文献3に開示される回路基板は、文献中に記載される符号をそのまま用いて説明すると、複数の絶縁層10a〜h間に内部導体層21が形成されてなる積層基板10と、前記積層基板の表面に形成され且つ前記内部導体層と電気的に接続された表面導体層22と、前記積層基板の前記絶縁層の少なくとも1層を選択的に除去して形成されたキャビティとを有し、前記絶縁層のうちの少なくとも2層が、前記積層基板の積層方向に垂直な面上に突出し、空間部を介して相対向する脚部を形成しており、前記表面導体層が、前記絶縁層の突出端面に到達するように伸張し、外部接続用端子部23を構成することを特徴とするものである。
上記構成の特許文献3に開示される発明によれば、垂直実装の実装面が、積層基板の積層面全体ではなく、空間を介して突出する少なくとも2層の絶縁層からなる脚部の側面であるため、面を水平にそろえるのが容易であり、実装面を揃えた、高精度の垂直実装が可能となり、キャビティ内に実装する素子の方向を高精度に制御することができる。また、側面を切断面とした場合、一部を中空にした状態で切断することになるため、切断する厚さが薄くてすみ、高速切断と切断刃の長寿命化をはかることができる。
しかしながら、引用文献1に開示される発明の場合は、セラミックグリーンシート積層体を個片化してから焼成する技術であるため、焼成後の多層セラミック焼成体に電解めっきを施す必要がない部品、例えば、積層セラミックコンデンサなどの製造には適している。
その一方で、セラミック部品に電解めっきを行なう必要がある場合は、焼成前にセラミックグリーンシート積層体を切断して個片化してしまうので、焼成後のセラミック部品にめっき用電極を接続することができず、この結果、電解めっきができないという課題があった。
しかしながら、焼成済みの多層セラミック焼成体は、セラミックグリーンシート積層体に比べてはるかに硬く、その切削切断には時間がかかるため、その生産性を向上し難かった。
また、特許文献2に開示される発明の場合は、焼成済みの多層セラミック焼成体が堅いので、スライス刃の破損や消耗が起きやすく、加工のためのコストが嵩んで、製品を廉価に提供できないという課題があった。
さらに、引用文献2中の請求項3及び段落0027には、セラミック部品を立設して実装する際に実装面となる側面を、セラミックグリーンシート積層体を焼成前に切り刃により切断して形成するという技術内容が開示されている。
この場合、焼成済みの多層セラミック焼成体を分割溝に沿って破断して破断面を形成する場合に比べて、切り刃による切断面の平坦性を、破断面の平坦性よりも格段に高くできるものの、セラミックグリーンシート積層体の切断が、その上下面側からの切り刃の押し込みにより行なわれるため、その切断面は、厳密には平坦にならず、僅かではあるが凸状になってしまう。
また、セラミックグリーンシート積層体に切り刃を押し込む際に、押し込まれた切り刃の周囲に、セラミックグリーンシートを押し出すような力が働き、切り刃による切断面の周囲のセラミックグリーンシートの立体形状が微妙に変形してしまうので、この点からも、出来あがったセラミック部品における半導体チップの搭載面と、切り刃による切断面とを垂直にできないという課題があった。
加えて、引用文献2に開示される発明では、セラミックグリーンシート積層体を焼成する前に切断するという技術内容が開示されてはいるものの、焼成後に多層セラミック焼成体を電解めっきすることについては何ら触れられていない。このため、引用文献2に開示される発明をそのまま実施すると、切り刃による切断面の形成方向によっては、焼成後の多層セラミック焼成体に電解めっきを行なうことができなくなってしまう場合があるという課題があった。
しかしながら、セラミックグリーンシートを積層する際には、セラミックグリーンシートを加熱しながら押圧する必要がある。この時、小キャビティ領域12の上下に配置される単層のセラミックグリーンシートは十分な剛性を有さないので、軟化してダレが生じて変形する恐れがある。また、焼成時にも、小キャビティ領域12の上下に配置される単層のセラミックグリーンシート部分は、他の領域よりも熱の伝達が良く、このためにその周囲の領域と焼成収縮のスピードが一致せず変形が生じる可能性が高い。
そして、最終的に、電子部品を立設する際の脚部として使用する際に、この脚部自体が変形していると、製品が不良品化してしまうという課題があった。
さらに、上記目的に加えて、焼成後の多層セラミック焼成体に対して電解メッキ処理を支障なく行うことのできるセラミック部品及びその製造方法を提供することにある。
上記構成の発明において、第1の工程は、セラミック部品パーツが格子状に複数個配置されてなるセラミック部品パーツ領域を有するセラミックグリーンシートを複数枚積層してセラミックグリーンシート積層体を形成するという作用を有する。
次の第2の工程は、このセラミックグリーンシート積層体をダイシングにより切断することで、短冊状の焼成前セラミック部品集合体を構成する個々の焼成前セラミック部品のそれぞれに対して、セラミックグリーンシートの平面方向(積層面)に対して垂直(略垂直の概念も含む)な切断面を形成させるという作用を有する。また、この第2の工程において、焼成前セラミック部品が複数個連結されたものを備えてなる短冊状の焼成前セラミック部品集合体を作製することで、次の第3の工程において焼成する際の寸法変形のリスクを低減するという作用を有する。加えて、この第2の工程において形成される短冊状の焼成前セラミック部品集合体が隣接するセラミック部品の配線導体間を接続するめっき導通用パターンを備え、かつ、このめっき導通用パターンが、後の第4の工程において電流が切断面の伸長方向に流れるように形成されていることで、焼成後の短冊状のセラミック部品集合体に対して、電解めっきを行なうことを可能にするという作用を有する。これにより、焼成後の配線導体の露出面上にめっき層を備えたセラミック部品の製造を可能にするという作用を有する。
なお、後の第4の工程(めっき工程)において電解めっきを行なう際に、めっき導通用パターンにめっき用電極を接続する必要がある。このため、めっき導通用パターンはめっき用電極と接続するための端子部に電気的に接続されている必要がある。従って、請求項1記載の発明において、第2の工程により形成される「焼成前セラミック部品が複数個連結されたものを備えてなる短冊状の焼成前セラミック部品集合体」とは、具体的には、焼成前セラミック部品が複数個連結された平板体の長手方向両端に、めっき導通用パターンおよびそれに接続される端子部を具備したダミー領域が延設されているものを指し示している。
続く第3の工程では、上述の通り個々のセラミック部品集合体の寸法変形のリスクを低減しながら焼成するという作用を有する。
この後の第4の工程では、短冊状のセラミック部品集合体に電解めっき処理を行うことで焼成後の配線導体の露出面上にめっき層を形成させるという作用を有する。
さらに、第5の工程は、第3の工程において焼成されてなるセラミック部品集合体をセラミック部品の境界に沿って分割して個片化するという作用を有する。
上述のような請求項1記載の発明によれば、セラミックの積層面に対して垂直(略垂直の概念も含む)な切断面を有するセラミック部品の製造を可能にするとともに、焼成前の柔らかいセラミックグリーンシート積層体をダイシングにより切断することで、ダイシングソーの破損や消耗を抑えて、製造時の加工コストの上昇を抑制するという作用を有する。
加えて、セラミックグリーンシート積層体をダイシングにより切断して、焼成前セラミック部品が複数個連結されたものを備えてなる短冊状の焼成前セラミック部品集合体を作製することで、その後の工程においてめっき処理(電解めっき)を行なうことを可能にしつつ、焼成時の変形や寸法精度不良の発生を抑制するという作用を有する。
上記構成の請求項3記載の発明は、請求項1記載のセラミック部品の製造方法により製造されたセラミック部品を物の発明として捉えたものである。
請求項3記載の発明によれば、セラミックの積層面に対して垂直(略垂直の概念も含む)な切断面を有するセラミック部品を提供するという作用を有する。特に、焼成前の柔らかいセラミックグリーンシート積層体をダイシングして切断面を形成することで、ダイシングソーの破損や消耗を抑えて、製造時の加工コストの上昇を抑制するという作用を有する。
加えて、セラミックグリーンシート積層体をダイシングにより切断して、焼成時の形態を短冊状の平板体にすることで、個片化した状態よりは大きく、シート状のものよりは小さい状態で焼成することが可能になる。
通常、焼成時のセラミックグリーンシート積層体の平面形状が大きいほど、変形による不良や、寸法精度不良が生じ易い。従って、請求項3記載の発明によれば、セラミック部品の生産効率を高めつつ、焼成後のセラミック部品の不良品化率を小さくするという作用を有する。
なお、焼成前のセラミックグリーンシート積層体をダイシングして形成される切断面と、焼成後の多層セラミック焼成体をダイシングして形成される切削面とは明確に区別することができる。前者の場合は、セラミックグリーンシートを構成するセラミック原料粒子がダイシングソーにより切断されるものの、その後に焼成されることで、切断面には焼成により形成される自然な丸みを帯びた粒界が平面状に敷き詰められたような状態で存在することになる。これに対して、後者の場合は、焼成により形成される粒界がダイシングソーにより切断されるため、その切断面の様子は、粒界の切削面が敷き詰められて平面を形成しているような状態となる。
従って、両者は明確に区別することができる。
上記構成の請求項4記載の発明は、請求項3記載の発明における切断面の様態をより明確に記載したものであり、その作用は請求項3記載の発明と同じである。
上記構成の請求項5記載の発明は、上述の請求項3又は請求項4記載の発明と同じ作用に加えて、セラミック部品の切断面に形成される凹部が、個片化されたセラミック部品を、被実装対象である回路基板の実装パッドに接続するための外部電極としてはたらく。
よって、請求項5記載の発明は、切断面が垂直(略垂直の概念も含む)に形成され、かつ、この切断面に外部電極となる凹部を備えたセラミック部品を提供するという作用を有する。
また、上記切断面を形成するために、第2の工程においてセラミックグリーンシート積層体をダイシングすることにより短冊状に切断し、さらに、この短冊状のセラミックグリーンシート積層体を続く第3の工程において焼成することで、セラミックグリーンシート積層体を個片化させた状態で焼成する場合に比べて、セラミック部品の生産効率を向上しつつ、大判のシート状のセラミックグリーンシート積層体を焼成する場合に比べて、最終製品であるセラミック部品の、変形や寸法精度不良の発生を抑制して、製品の不良品化を防止することができる。
この結果、回路基板に対して垂直(略垂直の概念も含む)に実装するのに適し、かつ、不良品化し難いセラミック部品を、効率よく生産しつつ、その製造コストを廉価にできるという効果を有する。
加えて、請求項1記載の発明によれば、切断面を形成する際にダイシングソーによるめっき導通用パターンの分断を防止できる。これにより、第2の工程においてダイシングによる切断を行なったセラミックグリーンシート積層体を焼成して成る短冊状のセラミック部品集合体に対してめっき処理を行うことができる。
この結果、配線導体の露出部分(破断面を除く)に電解めっき層を備えたセラミック部品を製造して提供することができるという効果を有する。
また、その際に、ダイシングによる切断面の形成は、焼成前のセラミックグリーンシート積層体に対して行なうことができるので、ダイシングソーの破損や消耗を抑制することができる。この場合、焼成後の多層セラミック焼成体を切断して切断面を形成する場合に比べて、加工時間を大幅に短縮するとともに、加工用設備の維持管理にかかるコストを大幅に削減することができる。
また、焼成前にセラミックグリーンシート積層体の切断が行なわれるため、焼成時のセラミックグリーンシート積層体の平面形状は短冊状となる。この場合、個片化された状態のセラミックグリーンシート積層体を焼成する場合に比べてセラミック部品の生産性を向上しつつ、大判のシート状のセラミックグリーンシート積層体を焼成する場合に比べて、変形や寸法精度不良の少ないセラミック部品を製造することができる。
従って、請求項3,4記載の発明によれば、ジャイロセンサなど、XYZ軸の特性を得るような半導体チップを搭載するのに適したセラミック部品を、効率よくかつ精密に生産することができる。
この場合、より高機能で、高付加価値であるセラミック部品を提供できるという効果が発揮される。
図1(a)は本発明の実施例1に係るセラミック部品の斜視図であり、(b)は図1(a)中のA−A矢視断面図であり、(c)は図1(a)中のB−B矢視断面図である。
実施例1に係るセラミック部品1Aは、図1(a)に示すように、例えば、アルミナ(Al2O3)や、窒化アルミニウム(AlN)等のセラミックからなるセラミック板2aが積層されてなる多層セラミック焼成体2の中央に、凹状のキャビティ16が形成されて、このキャビティ16に、例えば、半導体素子や、発光素子や、水晶振動子等の電子部品5を搭載して収納するものである。なお、必要に応じて、キャビティ16に蓋6を覆設することにより、キャビティ16内に電子部品5を気密状態を維持しながら封止することができる。
そして、実施例1に係るセラミック部品1Aは、電子部品5を搭載した状態で、回路基板等に対して垂直(略垂直の概念も含む)に立設して実装するのに適した構成を備えている。
具体的には、実施例1に係るセラミック部品1Aは、矩形状の多層セラミック焼成体2であり、その外縁をなす4つの側面3のうちの互いに平行に配設される一対の側面3,3の全域は、焼成前のセラミックグリーンシート積層体を、図1(b)に破線で示すようなダイシングソー14によりダイシングして形成されてなる切断面3aであり、かつ、セラミック部品1Aの外縁をなす残りの2つの側面3,3は、図1(c)に破線で示すように、分割溝4に沿って多層セラミック焼成体2を破断してなる破断面3bであるものである。
なお、分割溝4は、焼成前のセラミックグリーンシート積層体7a(後述の図3を参照)における個々の焼成前セラミック部品8a(後述の図2,3を参照)の境界26上にブレードを用いて断面クサビ形に形成されたものである。
上述のような実施例1に係るセラミック部品1Aにおいて、切断面3aは、焼成前の柔らかいセラミックグリーンシート積層体をダイシングすることによって形成されるので、焼成済みの多層セラミック焼成体2をダイシングソー14により切断する場合に比べて、切断にかかる時間を短くできる。また、この場合、ダイシングソー14への負担が大幅に小さいので、ダイシングソー14の破損や磨耗を抑制でき、ダイシングソー14を長寿命化できる。これにより、実施例1に係るセラミック部品1Aを個片化する際の加工コストを削減できる。
さらに、切断面3aを形成するために、セラミックグリーンシート積層体をダイシングする場合は、高速回転するダイシングソー14を被切断面に押し当てて、ダイシングソー14との接触部分を削り取ってゆくという方法であるため、特許文献2に開示される発明のように切り刃を押し当てて切断する場合とは異なり、セラミックグリーンシートの切断面を平坦でかつ垂直(略垂直の概念も含む)にできるとともに、ダイシングソー14と接触する部分のセラミックグリーンシートが変形するのを防止できる。
従って、この点からも、実施例1に係るセラミック部品1Aに、回路基板等に垂直(略垂直の概念も含む)に実装する際の、接合面としての使用に特に適した切断面3aを形成することができる。
この点については、本明細書の最後段において電子顕微鏡写真を参照しながら詳細に説明する。
すなわち、実施例1に係るセラミック部品1Aの場合は、その焼成時に、複数個の焼成前セラミック部品が直列に連結してなる短冊状の焼成前セラミック部品集合体にしておくことができることを意味している。
さらには、この短冊状の焼成前セラミック部品集合体に、めっき用電極の接続を可能にするための端子部を備えたダミー領域を一体に延設しておくことで、焼成済みのセラミック部品集合体を電解めっきすることが可能になる。
よって、実施例1に係るセラミック部品1Aによれば、電解めっきが施された製品として提供することもできる。
従って、このめっき導通用パターン11aは、実施例1に係るセラミック部品1Aにおいて、切断面3aと交差することがないように形成されている必要がある。この点については、以下に示す実施例2において詳細に説明する。
この外部電極21は、切断面3aの一部を切欠いて形成される凹部24の表面に導体層22を備えたものである。
この外部電極21は、後段において詳細に説明するが、セラミック部品1Aの製造時に、セラミックグリーンシート積層体7a(後述の図2,3を参照)を貫通して形成され、その内壁にビア導体層25(焼成後の導体層22)を備えてなるビア23(後述の図2,3を参照)が、その中心軸方向に切断されることで形成されるものである。
さらに、特に図示しないが、この外部電極21は、セラミック部品1Aを回路基板に実装する際に、回路基板上の実装パッドに接続されて、電気信号の出入力に用いられるものである。
切断面3aに上述のような外部電極21を形成しておくことで、実施例1に係るセラミック部品1Aをより高性能でかつ付加価値の高い製品にすることができる。
図2(a)は本発明の実施例2に係るセラミック部品の製造工程を示す平面図であり、(b)はセラミックグリーンシート積層体に形成されるビアの部分拡大図である。さらに、図3乃至図5はいずれも本発明の実施例2に係るセラミック部品の製造工程を示す平面図である。なお、図1に記載されたものと同一部分については同一符号を付し、その構成についての説明は省略する。
まず、図2(a)に示すようなセラミックグリーンシート積層体7aの製造工程の一例について簡単に説明する。
図2(a)に示すセラミックグリーンシート積層体7aを構成するセラミックグリーンシートは、例えば、セラミック板2aがアルミナからなる場合は、アルミナ粉末にマグネシア、シリカ、カルシア等の焼結助剤を適当量加えた粉末を準備し、この粉末に、ジオクチルフタレート等の可塑剤と、アクリル樹脂等のバインダー、及び、トルエン、キシレン、アルコール類等の溶剤を加えて十分に混練した後、脱泡して粘度2000〜40000cpsのスラリーとする。そして、このスラリーを、例えば、ドクターブレード法等により、例えば、厚さ0.25mmのシート状に形成し、更に、適当な大きさにカットしたものである。
さらに、上述のような様々な目的に応じて貫通孔が形成されたセラミックグリーンシートに、必要に応じて、タングステン(W)や、モリブデン(Mo)等の高融点金属からなる導体ペーストをスクリーン印刷することにより、ビア導体,導体配線パターン,あるいは、めっき導通用等の導体印刷パターンを形成することができる。
このような導体印刷パターンが形成されたセラミックグリーンシートにおけるセラミック部品パーツ領域9aをその積層方向において一致させながら、複数枚重ね合わせて、熱と圧力をかけて一体に貼り合わせてなるものが図2(a)に示すセラミックグリーンシート積層体7aである(セラミックグリーンシート積層体7aの作製工程)。
なお、実施例2に係るセラミック部品の製造方法では、めっき導通用パターンの形成方向が特に重要であるため、それぞれの製造工程を示す平面図である図2乃至図5中に、めっき導通用パターン11aおよびそれに延設される端子部15を記載している。
なお、図2ではセラミック部品パーツ領域9aの全周を囲むようにダミー領域10aを設ける場合を例に挙げて説明しているが、端子部15が形成されない側辺におけるダミー領域10aの形成を省略してもよい。
次に、分割溝4を形成したセラミックグリーンシート積層体7aにおいて、めっき導通用パターン11aと平行に形成される焼成前セラミック部品8aの境界26上を、高速回転するダイシングソー14(図1(b)を参照)により切断して、この境界26上に切断面3aを形成しつつ、セラミックグリーンシート積層体7aを切り分けて、図4に示すような短冊状の焼成前セラミック部品集合体12aを作製する(切断工程)。なお、図3,4において、ダイシングソー14により形成される切断面3aは、一点鎖線により示している。
すなわち、実施例2に係るセラミック部品の製造方法においては、図3,4の記載からも明らかなように、セラミックグリーンシート積層体7aに形成されるめっき導通用パターン11aと切断面3aとが交差しないようにこれらを配設する必要がある。
より具体的には、その後の工程において電解めっきを行なう際に、電流が切断面3aの伸長方向に沿って流れるように、セラミックグリーンシート積層体7aにめっき導通用パターン11aを形成しておくことで、切断面3aの形成に伴うめっき導通用パターン11aの分断を防止できる。
この短冊状の焼成前セラミック部品集合体12aは、複数の焼成前セラミック部品8aが直列状に連結されてなり、さらに、その長手方向両端に、端子部15を備えたダミー領域10aが一体に延設されたものである。
さらに、この短冊状の焼成前セラミック部品集合体12aにおいて、個々の焼成前セラミック部品8aに形成されるめっき導通用パターン11aは、全てつながっており、その両端はダミー領域10aに延設される端子部15,15に接続されている。
このように、短冊状の焼成前セラミック部品集合体12aに形成される切断面3aにより、めっき導通用パターン11aが分断されることがないようめっき導通用パターン11aを配設することで、その後の工程において、この短冊状の焼成前セラミック部品集合体12aを焼成して成る短冊状のセラミック部品集合体13aを電解めっきすることが可能になる。
この短冊状のセラミック部品集合体13aは、その長手方向両端に延設されるダミー領域10aに端子部15,15を備えているので、この端子部15にめっき用電極を接続して電解めっきを行なうことで、セラミック部品1Aにおける配線導体の露出部分の表面にめっき層(図示せず)を形成することができる。
なお、セラミック部品1Aにめっき層を形成する必要がない場合は、必ずしも電解めっきを行なう必要はない。
このようにセラミックグリーンシート積層体7aを短冊状の焼成前セラミック部品集合体12aにしてから焼成した場合、上述のようにその後の工程において電解めっきを確実に行えるという効果に加えて、セラミックグリーンシート積層体7aを切断することなく大判のシート状のまま焼成する場合に比べて、焼成時に、セラミックグリーンシート積層体が変形したり、寸法精度不良が起こるリスクを低減できる。
この場合、図5の紙面右側に示すように、短冊状のセラミック部品集合体13aを分割溝4に沿って破断させて個片化されてなるセラミック部品1Aが、変形や寸法精度不良により不良品化するリスクを低減することができる。
なお、本実施例では、セラミックグリーンシート積層体7aに予め分割溝4を形成しておき、焼成後の短冊状のセラミック部品集合体13aを分割溝4に沿って破断させてセラミック部品1Aを個片化する場合を例に挙げて説明しているが、セラミック部品1Aを個片化させる手段として、上述の方法以外にもレーザーカットや、ダイシングを採用することもできる。この場合、分割溝4を利用してセラミック部品1Aを破断させて個片化する場合に比べて、設備の磨耗が起こりやすいので、製造コストが高くなるものの、寸法精度が高く外観の美しい製品を提供することが可能になる。
実施例2に係るセラミック部品の製造方法により製造されるセラミック部品1Aは、その外縁を形成する側面3のうちの2つに切断面3aが形成されているが、セラミック部品の使用目的によっては、切断面3aが一箇所にのみ形成されていればよい場合もある。また、ダイシングソー14による切断箇所が多いほど、加工設備の維持費や加工時間がかかり、これらは全て製造コストに反映されてしまうため、ダイシングソー14による切断箇所は少ない方が好ましい。
このような事情に鑑み、セラミック部品1Aの外縁を構成する4つの側面3のうちの1つのみを切断面3aとし、残りの3つの側面3を破断面3bとするセラミック部品の製造方法として開発されたのが、以下に詳細に示す、実施例2の変形例に係るセラミック部品の製造方法である。
実施例2の変形例に係るセラミック部品の製造方法は、上述の実施例2に係るセラミック部品の製造方法と実質的には同じであるため、ここでは実施例2に係るセラミック部品の製造方法との相違点のみを説明する。
図6乃至図9はいずれも実施例2の変形例に係るセラミック部品の製造工程を示す平面図である。なお、図1乃至図5に記載されたものと同一部分については同一符号を付し、その構成についての説明は省略する。
実施例2の変形例に係るセラミック部品の製造方法において使用されるセラミックグリーンシート積層体7bでは、図6に示すように、セラミック部品パーツ領域9bにおいて、紙面上下方向に配設される2列のめっき導通用パターン11bがダミー領域10bにおいて合流されて、その両端部に一対の端子部15が接続されている。
また、セラミックグリーンシート積層体7bを切り分けてなる短冊状の焼成前セラミック部品集合体12bは、図8に示すように、紙面上下方向に直列に配設される焼成前セラミック部品8bを2列備えた平板体であり、その長手方向両端に、端子部15を備えたダミー領域10bを一体に備えたものである。
さらに、図8に示すような短冊状の焼成前セラミック部品集合体12bを焼成して多層セラミック焼成体2としたものを図9に示した(焼成工程)。
図9の紙面左側に示される短冊状のセラミック部品集合体13bの長手方向両端部にそれぞれ形成される端子部15,15にめっき用電極を接続して電解めっきを行なうことで、配線導体の露出部分の表面にめっき層を形成することができる(めっき処理工程)。
そして、必要に応じて電解めっき処理された短冊状のセラミック部品集合体13bを、図9の紙面右側に示すように、分割溝4に沿って破断して個片化させてなるものがセラミック部品1Bである(破断・個片化工程)。
このセラミック部品1Bは、その外縁を形成する4つの側面3のうちの1つのみが切断面3aであり、残りの3つの側面3は分割溝4を破断させてなる破断面3bである。
また、実施例2に係るセラミック部品の製造方法と同様に、短冊状の焼成前セラミック部品集合体12bとしてから焼成するので、焼成時の変形や寸法精度不良の発生を抑制して、セラミック部品1Bが不良品化するリスクを低減できる。
よって、高品質なセラミック部品1Bを廉価にかつ効率よく生産することができる。
図10(a)は本発明の実施例1に係るセラミック部品の試作品の切断面の電子顕微鏡写真であり、(b)はその切断面を側面側から見たイメージ図である。また、図11(a)は本発明の実施例1に係るセラミック部品の試作品の破断面の電子顕微鏡写真であり、(b)はその破断面を側面側から見たイメージ図である。さらに、図12(a)は、比較対象としての焼成後の多層セラミック焼成体をダイシングソーにより切断してなる切断面の電子顕微鏡写真であり、(b)はその切断面を側面側から見たイメージ図である。なお、図10(b),図11(b),図12(b)のそれぞれには、平坦な状態の目安として破線を書き込んだ。
通常、多層セラミック焼成体2を構成するセラミック板2aは、粉体原料である、例えば、アルミナ粉と、焼結助剤として添加されるガラス質成分とからなる粒界17と、その空隙18とからなっている。
そして、実施例1に係るセラミック部品1Aの切断面3aでは、上述の通り、焼成前の柔らかいセラミックグリーンシート積層体7aの状態でダイシングソー14による切断が行なわれ、この後に焼成されて多層セラミック焼成体2が形成されるので、図10(a),(b)に示されるように、セラミック部品1Aの切断面3aは、丸みを帯びた粒界17が敷き詰められたような状態となる。
その一方で、実施例1に係るセラミック部品1Aの破断面3bは、焼成済みの多層セラミック焼成体2が分割溝4に沿って破断されて形成されるので、破断面3bの状態は、図11(a),(b)に示されるように、粒界17が引きちぎられて形成される断面19が不規則につながった状態となる
さらに、焼成後の多層セラミック焼成体2をダイシングソー14により切断してなる切削面の状態は、図12(a),(b)に示されるように、粒界17が切断されてなる切削面20が敷き詰められて平面が構成されたような状態となる。
従って、実施例1に係るセラミック部品1Aの切断面3aと、破断面3bと、焼成後の多層セラミック焼成体2をダイシングソー14により切断してなる切削面とは、電子顕微鏡を用いて観察することにより容易に区別することができる。
Claims (5)
- 焼成後に矩形状のセラミック部品となるセラミック部品パーツが格子状に複数個配置されてなるセラミック部品パーツ領域を有するセラミックグリーンシートを複数枚積層してセラミックグリーンシート積層体を形成する第1の工程と、
前記セラミックグリーンシート積層体における焼成前セラミック部品の境界の一部をダイシングして切断面を形成することで、前記焼成前セラミック部品が複数個連結され、かつ、隣接する前記焼成前セラミック部品の配線導体間を接続するめっき導通用パターンを備えてなる短冊状の焼成前セラミック部品集合体を形成する第2の工程と、
この焼成前セラミック部品集合体を焼成して多層セラミック焼成体からなるセラミック部品集合体を形成する第3の工程と、
短冊状の前記セラミック部品集合体に電解めっき処理を行う第4の工程と、
前記セラミック部品集合体を前記セラミック部品の境界に沿って分割して個片化して前記セラミック部品とする第5の工程とを有し、
前記めっき導通用パターンは、前記第4の工程において電流が前記切断面の伸長方向に流れるように形成され、
前記セラミック部品は、前記切断面からなり、前記セラミックグリーンシートの平面方向に対して垂直な側面を備えていることを特徴とするセラミック部品の製造方法。 - 前記第1の工程において、前記焼成前セラミック部品の境界で、かつ、前記セラミック部品を回路基板に実装する際の接合面となる前記切断面の形成予定位置に、前記セラミックグリーンシート積層体を貫通するビアを形成し、さらに、このビアの内壁にビア導体層を形成する、ことを特徴とする請求項1に記載のセラミック部品の製造方法。
- 多層セラミック焼成体からなり、矩形状のセラミック部品が複数個配置されたものを備えてなる短冊状のセラミック部品集合体を個片化して作成されるセラミック部品であって、
前記セラミック部品は、その1の側面、又は、互いに平行に配設される一対の前記側面、の全域をなす切断面と、前記切断面以外の前記側面をなす破断面と、前記セラミック部品の前記破断面を除く配線導体の露出部分の表面に形成される電解めっき層とを有し、
前記切断面は、焼成前のセラミックグリーンシート積層体をダイシングすることにより形成され、かつ、前記多層セラミック焼成体を構成するセラミック板の平面方向に対して垂直であることを特徴とするセラミック部品。 - 前記切断面には、セラミック焼成体を形成する粒界の切削面が存在しないことを特徴とする請求項3記載のセラミック部品。
- 前記セラミック部品を回路基板に実装する際の接合面となる前記切断面は、ビアが分割されてなる凹部を備え、
前記凹部はその内壁に導体膜を具備することを特徴とする請求項3又は請求項4に記載のセラミック部品。
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