以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。
図1は、本発明の実施形態に係るエンジンの冷却装置1の構成を模式的に示す。本実施形態では、このエンジンは、直列4気筒エンジンであって、車両の前部に、気筒列方向が車幅方向となるように横置き状態で搭載される。このエンジンの本体部(以下、エンジン本体部2という)は、4つの気筒を構成する4つのシリンダ7を有するシリンダブロック3と、このシリンダブロック3の上側に配置されたシリンダヘッド4とで構成されている。尚、上記エンジンは、エンジン本体部2が車両後側に向かって下側に傾斜するように配置されたスラントエンジンである(図2参照)。
シリンダブロック3及びシリンダヘッド4には、冷却液が流通するブロック側及びヘッド側ウォータジャケット8,9(エンジン本体部2のウォータジャケット)がそれぞれ設けられている。ブロック側ウォータジャケット8は、4つのシリンダ7(詳しくは、シリンダボア壁)の周囲を囲んで略一周する流路になっている。ヘッド側ウォータジャケット9は、各気筒の吸排気ポートやプラグホールを包み込むようにしてシリンダヘッド4の気筒列方向に延びている。
上記冷却装置1は、上記エンジンのクランク軸に連動して駆動されるウォータポンプ21から吐出されかつエンジン本体部2のブロック側及びヘッド側ウォータジャケット8,9を流通した後の冷却液を、車両の前端部に配置されたラジエータ22を経由して該ウォータポンプ21に流入させる(戻す)ためのラジエータ経路23と、該冷却液を、該ラジエータ22をバイパスして該ウォータポンプ21に流入させる(戻す)ためのラジエータバイパス経路24とを備えている。
本実施形態では、上記ラジエータバイパス経路24は、ラジエータ22以外の熱交換器が配設された第1バイパス経路25と、熱交換器が配設されていない第2バイパス経路26と、該第1バイパス経路25及び第2バイパス経路26が接続されるとともに、上記ウォータポンプ21に接続されるリターン路27とで構成されている。本実施形態では、上記の、ラジエータ22以外の熱交換器は、上記車両の車室内におけるインストルメントパネル内に配置された空調装置のヒータコア31、及び、上記エンジンのクランク軸に連結された自動変速機の潤滑オイルを温めるATFウォーマー32であり、第1バイパス経路25は、互いに分岐したヒータコア配設路25a及びATFウォーマー配設路25bからなる。上記ラジエータ経路23も上記リターン路27に接続されており、ラジエータ22で外気と熱交換された冷却液がリターン路27を通ってウォータポンプ21に戻される。尚、リターン路27は、ラジエータ経路23の一部と見做すこともできる(ラジエータ経路23とラジエータバイパス経路24とを兼用する)。
上記ウォータポンプ21は、シリンダブロック3の車両後側の面における気筒列方向の一側(本実施形態では、車両右側)の端部に固定されている。このウォータポンプ21からの冷却液は、シリンダブロック3の冷却液導入部3aを介してブロック側ウォータジャケット8に導入される。この冷却液導入部3aは、シリンダブロック3において4つのシリンダ7のうちの最も上記一側(車両右側)に位置するシリンダ7の車両後側の部分に位置する。
シリンダヘッド4の下面(詳細には、ガスケットで構成される)における気筒列方向の上記一側の端部には、ブロック側ウォータジャケット8から冷却液をヘッド側ウォータジャケット9に流入させるための流入口4aが形成されている。また、シリンダヘッド4の気筒列方向の他側の端壁部(本実施形態では、車両左側の端壁部)には、ヘッド側ウォータジャケット9から冷却液が流出する流出口4b(エンジン本体部2の冷却液流出部に相当)が形成されている。
上記冷却液導入部3aからブロック側ウォータジャケット8に導入された冷却液は、ブロック側ウォータジャケット8内を略一周するように流れた後、上記流入口4aよりヘッド側ウォータジャケット9に流入する。尚、ブロック側ウォータジャケット8に導入された冷却液の一部は、シリンダヘッド4の下面における相隣接するシリンダ7間に設けた流入孔(図示せず)からもヘッド側ウォータジャケット9に流入する。
上記ヘッド側ウォータジャケット9に流入した冷却液は、シリンダヘッド4の気筒列方向の上記一側から上記他側へと流れ、上記流出口4bよりシリンダヘッド4の外部に流出する。
図2〜図6に示すように、シリンダヘッド4における上記流出口4bが形成された端壁部(車両左側の端壁部)の該流出口4bの近傍(エンジン本体部2の冷却液流出部の近傍)には、回転弁体51の回転位置の制御によりラジエータ経路23並びにラジエータバイパス経路24の第1バイパス経路25及び第2バイパス経路26への冷却液の流れを制御するロータリ式流量制御弁50が設けられている。
このロータリ式流量制御弁50は、上記回転弁体51を収容する断面円形の凹状の収容部62が設けられたハウジング61を有している。収容部62は、ハウジング61における上記端壁部側の面に開口している。このハウジング61における上記端壁部側の面には、上記流出口4bの周囲に当接して上記端壁部に複数のボルト65を介して固定される固定部61aが形成されている。
回転弁体51は、収容部62の周側壁面に対して僅かに隙間があくような外径を有する筒状をなしている。回転弁体51の中心部には、支持軸52が配設されている。この支持軸52は、収容部62の底壁面に形成された支持部62aと、外周部63aがハウジング61の上記端壁部側の面における収容部62の開口周縁部に溶着固定された支持部材63の中心部63bとによって、回転可能に支持されている。回転弁体51の内周面と支持軸52の外周面とは、周方向に間隔をあけて配置された複数(本実施形態では、3つ)の連結部材53によって連結されている。これにより、回転弁体51及び支持軸52は、支持軸52の中心軸(回転弁体51の中心軸と一致)回りに一体的に回転することになる。収容部62の底壁面を構成する底壁部を挟んで収容部62とは反対側のハウジング61内には、不図示の電動モータ及び減速ギヤが配設される駆動部配設部55が設けられており、これら電動モータ及び減速ギヤによって、回転弁体51及び支持軸52が一体的に回転駆動される。
回転弁体51には、該回転弁体51の内側と外側とを径方向に連通させる複数の開口部51a,51bが形成されている。本実施形態では、回転弁体51の中心軸方向の収容部62開口側に2つの開口部51aが互いに周方向に離れて形成され、収容部62底部側に1つの開口部51bが形成されている。
上記ハウジング61が上記端壁部に固定された状態で、収容部62の開口が上記流出口4bに対向しており、流出口4bから流出した冷却液が回転弁体51の内側に流入するようになっている(図1では、流出口4bと回転弁体51の内側とを一点鎖線で繋いでいる)。上記支持部材63の外周部63aと中心部63bとの間には、流出口4bからの冷却液が通過する複数の開口部63cが形成されており、該開口部63cを通って上記冷却液が回転弁体51の内側に流入するようになっている。尚、支持部材63の開口部63cの径方向外側の端面は、回転弁体51に向かって径方向内側に傾斜していて、回転弁体51における収容部62開口側の端面を覆っている。これにより、開口部63cを通過した冷却液が回転弁体51の上記端面に当接するのを防止するようにしている。すなわち、開口部63cを通過した冷却液が回転弁体51の上記端面に当接すると、その冷却液の一部が回転弁体51の径方向外側に向かい、全ての冷却液が回転弁体51の内側に流入しなくなるので、支持部材63の開口部63cの径方向外側の端面の傾斜により、そのようになるのを防止するようにしている。
ハウジング61内には、回転弁体51の回転位置の制御により、上記流出口4bからの冷却液をラジエータ経路23に流すためのラジエータ経路接続路71と、後述の感温部41に接触する冷却液の温度に応じて開閉するサーモスタット弁40が設けられ、該サーモスタット弁40の開弁時に、上記流出口4bからの冷却液をラジエータ22に流通させるためのサーモスタット弁配設路72とが配設されている。
ラジエータ経路接続路71及びサーモスタット弁配設路72と、後述の第1バイパス経路接続路74及び後述の第2バイパス経路接続路75とは、回転弁体51を径方向に挟むように配設されている。サーモスタット弁配設路72は、上記回転弁体51に対して上記挟む方向の一側(車両前側)においてラジエータ経路接続路71と並設されている。ラジエータ経路接続路71の上流側部分は、回転弁体51の中心軸方向において上記2つの開口部51aと同じ位置に位置し、サーモスタット弁配設路72の上流側部分は、回転弁体51の中心軸方向において上記開口部51bと略同じ位置に位置する(図4〜図6参照)。回転弁体51の中心軸方向から見て、ラジエータ経路接続路71の上流側部分の中心軸L1は、回転弁体51の中心軸Cと交わる(図6参照)。一方、回転弁体51の中心軸方向から見て、サーモスタット弁配設路72の上流側部分の中心軸L2は、回転弁体の中心軸Cとは交わらず(図5参照)、ラジエータ経路接続路71の上流側部分の中心軸L1から外れた位置に位置している。
ラジエータ経路接続路71は、収容部62に連通している。ラジエータ経路接続路71の上流端には、シール部材81が設けられ、このシール部材81が回転弁体51に接触している。回転弁体51の回転位置によって、回転弁体51に形成された開口部51aがラジエータ経路接続路71に面して該ラジエータ経路接続路71に対して連通状態になったり、開口部51aがラジエータ経路接続路71の上流端から外れて該ラジエータ経路接続路71に対して非連通状態になったりして、連通状態になったときには、開口部51aを介して回転弁体51の内側から冷却液がラジエータ経路接続路71に流れることになる。また、ラジエータ経路接続路71に面する開口部51aの面積によって、ラジエータ経路接続路71への冷却液の流量が決まる。ラジエータ経路接続路71の下流端は、後述の合流管部79を介してラジエータ経路23の上流端(ラジエータ経路23を構成する配管の上流端)に接続される。尚、上記シール部材81により、ラジエータ経路接続路71には、開口部51aが該ラジエータ経路接続路71に面して連通状態になったときにしか、冷却液が流れないことになる。
サーモスタット弁配設路72も、収容部62に連通している。しかし、サーモスタット弁配設路72の上流端には、ラジエータ経路接続路71の上流端に設けられているようなシール部材は設けられていない。回転弁体51の回転位置によって、回転弁体51に形成された開口部51bがサーモスタット弁配設路72に対して連通状態になったり非連通状態になったりするが、この連通状態及び非連通状態に関係なく(つまり、回転弁体51の回転位置に関係なく)、サーモスタット弁配設路72の上流端には、上記流出口4bからの冷却液が流れる。すなわち、回転弁体51の外周面と収容部62の周側壁面との間には、上記のように、僅かな隙間があるため、流出口4bから回転弁体51の内側に流入した冷却液が、開口部51a,51bを通して、その隙間に漏出している。この隙間に漏出した冷却液は、シール部材81が設けられたラジエータ経路接続路71には流れない(後述の第1バイパス経路接続路74及び第2バイパス経路接続路75にも同様に流れない)が、シール部材が設けられていないサーモスタット弁配設路72の上流端には流れる。しかし、サーモスタット弁配設路72の上流側部分には、サーモスタット弁40が配設されているので、サーモスタット弁40の閉弁時には、ラジエータ経路接続路71におけるサーモスタット弁40よりも下流側に冷却液が流れるようなことはない。
サーモスタット弁40は、ワックス・ペレット型サーモスタット弁であって、熱膨張体であるワックスが充填された感温部41が、サーモスタット弁配設路72の上流端に位置するように、サーモスタット弁配設路72に沿って配設されている(サーモスタット弁40の中心軸(後述のケース42の中心軸)が、サーモスタット弁配設路72の上流側部分の中心軸L2と一致する)。すなわち、サーモスタット弁40は、サーモスタット弁配設路72に嵌まる筒状のケース42を有し、このケース42におけるサーモスタット弁配設路72上流側の開口から感温部41が突出している。感温部41はケース42に固定されている。ケース42におけるサーモスタット弁配設路72下流側の端面には、中央部に開口部43aが形成された弁座部材43が固定されている。この弁座部材43は、固定プレート39により、フランジ状部43b及び該フランジ状部43bが差し込まれた固定部材38を介してハウジング61に固定され、こうしてケース42もハウジング61に固定される。
上記弁座部材43に対してサーモスタット弁配設路72下流側から弁体44が着座して上記開口部43aが閉塞される。こうしてサーモスタット弁40が閉弁状態になる。弁体44は、感温部41から開口部43aを貫通して延びる連結軸45の先端部に固定されている。この連結軸45は、上記ワックスの膨張及び収縮に連動して、連結軸45の軸方向に移動可能になっている。上記ワックスの膨張時には、連結軸45がサーモスタット弁配設路72下流側に移動し、これにより、弁体44が弁座部材43から離れるようにサーモスタット弁配設路72下流側に移動して開弁する(図5では、サーモスタット弁40の開弁状態を示す)。
一方、上記ワックスの収縮時には、連結軸45がサーモスタット弁配設路72上流側に移動し、これにより、弁体44が弁座部材43に着座して閉弁する。連結軸45には、スプリング支持部材46が固定されており、スプリング支持部材46と弁座部材43との間に圧縮コイルスプリング47が支持されている。この圧縮コイルスプリング47により、弁体44が弁座部材43に押し付けられるため、閉弁状態が確実に維持される。尚、サーモスタット弁40は、感温部41に接触する冷却液の温度が、後述の第2所定温度よりも低いときには閉弁する一方、第2所定温度以上であるときには開弁するように構成されている。
サーモスタット弁配設路72は、ハウジング61内における上記挟む方向の上記一側の端部(車両前側端部)に設けられた合流管部79でラジエータ経路接続路71に接続されていて、サーモスタット弁40の開弁時に、流出口4bからの冷却液を、ラジエータ経路接続路71に流れた冷却液と同様に、ラジエータ22を経由してウォータポンプ21に戻すようになされている。
また、ハウジング61内には、ラジエータバイパス経路24の上流端に接続され、回転弁体51の回転位置の制御により、流出口4bからの冷却液を該ラジエータバイパス経路24に流すためのラジエータバイパス経路接続路73が配設されている。本実施形態では、上記のようにラジエータバイパス経路24が、第1バイパス経路25と第2バイパス経路26とを有しているので、これに対応して、上記ラジエータバイパス経路接続路73は、回転弁体51の回転位置の制御により、流出口4bからの冷却液を第1バイパス経路25に流すための第1バイパス経路接続路74と、回転弁体51の回転位置の制御により、流出口4bからの冷却液を第2バイパス経路26に流すための第2バイパス経路接続路75とで構成されている。
第1バイパス経路接続路74及び第2バイパス経路接続路75は、回転弁体51に対して上記挟む方向の他側(車両後側)において並設されている。第1バイパス経路接続路74の上流側部分は、回転弁体51の中心軸方向において上記2つの開口部51aと同じ位置(つまり、ラジエータ経路接続路71の上流側部分と同じ位置)に位置し、第2バイパス経路接続路75の上流側部分は、回転弁体51の中心軸方向において開口部51bと同じ位置(つまり、サーモスタット弁配設路72と同じ位置)に位置する(図4〜図6参照)。回転弁体51の中心軸方向から見て、第1バイパス経路接続路74の上流側部分の中心軸L3、及び、第2バイパス経路接続路75の上流側部分の中心軸L4は、回転弁体51の中心軸Cと交わる(図5及び図6参照)。
第1バイパス経路接続路74も、収容部62に連通している。第1バイパス経路接続路74の上流端には、ラジエータ経路接続路71の上流端と同様に、シール部材82が設けられ、このシール部材82が回転弁体51に接触している。回転弁体51の回転位置によって、回転弁体51に形成された開口部51aが第1バイパス経路接続路74に面して該第1バイパス経路接続路74に対して連通状態になったり、開口部51aが第1バイパス経路接続路74の上流端から外れて該第1バイパス経路接続路74に対して非連通状態になったりして、連通状態になったときには、開口部51aを介して回転弁体51の内側から冷却液が第1バイパス経路接続路74に流れることになる。また、第1バイパス経路接続路74に面する開口部51aの面積によって、第1バイパス経路接続路74への冷却液の流量が決まる。第1バイパス経路接続路74の下流端は、ハウジング61における上記挟む方向の上記他側の端部に接続固定された、第1バイパス経路25の上流部分を構成する管状部材85の上流端(第1バイパス経路25の上流端)に接続される。この管状部材85は、ヒータコア配設路25aを構成する分岐管85aと、ATFウォーマー配設路25bを構成する分岐管85bとに分岐する。尚、上記シール部材82により、第1バイパス経路接続路74には、開口部51aが該第1バイパス経路接続路74に面して連通状態になったときにしか、冷却液が流れない。つまり、回転弁体51の外周面と収容部62の周側壁面との間の上記隙間に漏出した冷却液が第1バイパス経路接続路74に流れることはない。
第2バイパス経路接続路75も、収容部62に連通している。第2バイパス経路接続路75の上流側部分には、中心部に貫通孔83aが形成された樹脂製のシール部材83が嵌合されており、このシール部材83が圧縮コイルスプリング84により回転弁体51側に付勢されて回転弁体51に当接している。回転弁体51の回転位置によって、回転弁体51に形成された開口部51bが上記貫通孔83aに面して第2バイパス経路接続路75に対して連通状態になったり、開口部51bが貫通孔83aから外れて第2バイパス経路接続路75に対して非連通状態になったりして、連通状態になったときには、開口部51b及び貫通孔83aを介して回転弁体51の内側から冷却液が第2バイパス経路接続路75に流れることになる。また、貫通孔83aに面する開口部51bの面積によって、第2バイパス経路接続路75への冷却液の流量が決まる。第2バイパス経路接続路75の下流端は、上記管状部材85に一体形成された接続管部86に連通しており、この接続管部86が、第2バイパス経路26を構成する配管の上流端(第2バイパス経路26の上流端)に接続される。尚、上記シール部材83により、第2バイパス経路接続路75には、開口部51bが該第2バイパス経路接続路75に面して連通状態になったときにしか、冷却液が流れない。つまり、上記隙間に漏出した冷却液が第2バイパス経路接続路75に流れることはない。
基準の回転位置からの回転弁体71の回転角度と、ラジエータ経路接続路71、第1バイパス経路接続路74及び第2バイパス経路接続路75に面する、該各接続路に対応する開口部51a,51bの面積(つまり、対応する開口部51a,51bよりラジエータ経路接続路71、第1バイパス経路接続路74及び第2バイパス経路接続路75に流れる冷却水の流量)は、図7のように変化する。これにより、上記コントローラは、回転弁体51を、ラジエータ経路23、第1バイパス経路25及び第2バイパス経路26のいずれにも冷却液を流さないような回転位置、第1バイパス経路25及び第2バイパス経路26に冷却液を流すような回転位置、又は、ラジエータ経路23、第1バイパス経路25及び第2バイパス経路26の全てに冷却液を流すような回転位置にすることができる。
さらに、ハウジング61内には、回転弁体51に対して上記挟む方向の上記一側(具体的には、サーモスタット弁配設路72の上流端)から該回転弁体51を超えて上記挟む方向の上記他側へ延びて、第2バイパス経路接続路75に接続される流通路76が配設されている。サーモスタット弁配設路72の上流端には、サーモスタット弁40の感温部41が配設されていることから、上記流通路76には、この感温部41が設けられていることになる。上記の如く、サーモスタット弁配設路72の上流端には、回転弁体51の回転位置に関係なく、流出口4bからの冷却液が流れる。したがって、流通路76にも、回転弁体51の回転位置に関係なく、流出口4bからの冷却液が流れることになる。このように流通路76は、回転弁体51の回転位置に関係なく流出口4bからの冷却液を感温部41へ常時流通させるために配設されたものである。尚、本実施形態では、流通路76は、ハウジング61内において第2バイパス経路接続路75に接続されるが、ハウジング61外で第2バイパス経路26又は上記リターン路27に接続されてもよい。
本実施形態では、流通路76には、上記感温部41に加えて、回転弁体51の回転位置の制御に用いられる冷却液温センサ77(詳細には、冷却液温センサ77の感温部77a)も配設されている。この冷却液温センサ77(感温部77a)により検出される冷却液の温度に応じて、CPUを含む不図示のコントローラが、回転弁体51の回転位置を後述の如く制御して、流出口4bからの冷却液の、ラジエータ経路23、第1バイパス経路25及び第2バイパス経路26への流れを制御する。流通路76には、回転弁体51の回転位置に関係なく冷却液が常時流通するため、流通路76への流れを制御することはできないが、サーモスタット弁40の感温部41及び冷却液温センサ77の感温部77aが冷却液の温度を感知できる程度の少量の冷却液しか流れないようにしているので、ラジエータ経路23、第1バイパス経路25及び第2バイパス経路26への流れの制御に問題を生じさせることはない。
次に、上記コントローラによる上記流れの具体的な制御について説明する。
先ず、エンジンの始動直後の冷間時(暖機運転時)のように、冷却液温センサ77による検出温度が第1所定温度よりも低いときには、上記コントローラは、回転弁体51を、ラジエータ経路23、第1バイパス経路25及び第2バイパス経路26のいずれにも冷却液を流さないような回転位置にする(図8参照)。サーモスタット弁40は、閉弁状態にある。これにより、冷却液をブロック側及びヘッド側ウォータジャケット8,9に閉じ込めてエンジン(エンジン本体部2)の暖気を促進させる。
このとき、流通路76には、ブロック側及びヘッド側ウォータジャケット8,9を流通した直後の冷却液が流れるので、その冷却液が、サーモスタット弁40の感温部41に接触するとともに、その冷却液の温度(つまり、エンジン本体部2の温度に相当する温度)が冷却液温センサ77により検出される。これにより、エンジン本体部2の温度に応じたサーモスタット弁40の適切な開閉が行われるとともに、エンジン本体部2の温度に応じた上記コントローラによる上記流れの適切な制御が行われる。
上記流通路76を流れた冷却液は、第2バイパス経路26及びリターン路27を介してウォータポンプ21に戻される。このウォータポンプ21に戻される冷却液は、ヒータコア31といった熱交換器を通らないので、その冷却液の熱が熱交換器で奪われるようなことはなく、エンジンの暖気を促進させることができる。また、流通路76は、サーモスタット弁40の感温部41及び冷却液温センサ77の感温部77aが冷却液の温度を感知できる程度の少量の冷却液が流れればよいので、出来る限り多くの冷却液をブロック側及びヘッド側ウォータジャケット8,9に閉じ込めてエンジンの暖気を促進することができる。
続いて、冷却液温センサ77による検出温度が上記第1所定温度以上でかつ第2所定温度(第1所定温度よりも高い温度)よりも低いときには、上記コントローラは、回転弁体51を、第1バイパス経路25及び第2バイパス経路26に冷却液を流すような回転位置にする(図9参照)。サーモスタット弁40は、閉弁状態にある。これにより、第2バイパス経路26には、流通路76に加えて第2バイパス経路接続路75からも冷却液が流れて来ることになり、流通路76のみから冷却液が流れて来る場合に比べて多くの冷却液が流れることになる。但し、図7に示すように、第2バイパス経路接続路75を介して第2バイパス経路26を流れる冷却液の最大流量は、第1バイパス経路25を流れる冷却液の最大流量よりもかなり少ない。第2バイパス経路26に流れた冷却液は、リターン路27を介してウォータポンプ21に戻される。一方、第1バイパス経路25に流れた冷却液は、ヒータコア配設路25a及びATFウォーマー配設路25bを通り、ヒータコア31及びATFウォーマー32で、空調空気及び潤滑オイルとそれぞれ熱交換した後に、リターン路27を介してウォータポンプ21に戻される。
次いで、冷却液温センサ77による検出温度が上記第2所定温度以上になったとき(エンジンの温間時)には、サーモスタット弁40が開弁する(図10参照)。上記検出温度が上記第2所定温度以上でかつ第3所定温度(第2所定温度よりも高い温度)よりも低いときには、図10に示すように、上記コントローラは、回転弁体41の回転位置を、上記検出温度が上記第1所定温度以上でかつ上記第2所定温度よりも低いときと同じにする。これにより、ラジエータ経路23、第1バイパス経路25及び第2バイパス経路26に冷却液が流れることになる。但し、ラジエータ経路23へは、サーモスタット弁配設路72のみを介して冷却液が流れる。このように動作するサーモスタット弁40を用いることで、エンジンの温間時においてエンジン本体部2の温度が大きく上昇するような運転がなされない場合には、回転弁体51を駆動する必要がなくなり、その駆動頻度が少なくなって、ロータリ式流量制御弁50(特に上記電動モータ及び減速ギヤ)の耐久性が向上する。
上記検出温度が上記第3所定温度以上になったときには、回転弁体51を、ラジエータ経路23、第1バイパス経路25及び第2バイパス経路26の全てに冷却液を流すような回転位置にする(図11参照)。これにより、ラジエータ経路23へは、ラジエータ経路接続路71及びサーモスタット弁配設路72を介して冷却液が流れる。このとき、上記コントローラは、上記検出温度、エンジン負荷及びエンジン回転数の少なくとも1つに応じて、回転弁体51の回転位置を制御して、ラジエータ経路接続路71を介したラジエータ経路23への冷却液の流量を調整する。すなわち、上記検出温度、エンジン負荷、及び/又はエンジン回転数が高いほど、ラジエータ経路23への冷却液の流量を多くする。
ここで、上記検出温度が上記第3所定温度以上になったときにおいて、仮にロータリ式流量制御弁50が固着していてラジエータ経路接続路71を介してラジエータ経路23へ冷却液を流せなかったとしても、サーモスタット弁40が開弁しているので、サーモスタット弁配設路72を介してラジエータ経路23へ冷却液を流すことができ、これにより、エンジンのオーバーヒートを防止することができる。このようにサーモスタット弁40は、ロータリ式流量制御弁50の耐久性向上に加えて、ロータリ式流量制御弁50の故障によるエンジンのオーバーヒートを防止する役割も有している。
本実施形態では、シリンダヘッド4の端壁部における流出口4bの近傍にロータリ式流量制御弁50が設けられ、このロータリ式流量制御弁50における回転弁体51を収容するハウジング61内に、ラジエータ経路接続路71と、サーモスタット弁40が設けられたサーモスタット弁配設路72と、ラジエータバイパス経路接続路73(第1バイパス経路接続路74及び第2バイパス経路接続路75)と、サーモスタット弁40の感温部41が設けられ、回転弁体51の回転位置に関係なく流出口4bからの冷却液を該感温部41へ常時流通させるための流通路73と、が配設され、ラジエータ経路接続路71及びサーモスタット弁配設路72が、回転弁体51に対して車両前側に配設され、第1バイパス経路接続路74及び第2バイパス経路接続路75が、回転弁体51に対して車両後側に配設されているので、車両前端部に位置するラジエータ22に向かって延びるラジエータ経路23、ヒータコア31等の熱交換機に向かって延びる第1バイパス経路25、及び、ウォータポンプ21に向かって延びる第2バイパス経路26の取り回しが簡単になるとともに、ラジエータ経路接続路71、サーモスタット弁配設路72、第1バイパス経路接続路74及び第2バイパス経路接続路75をコンパクトに配置することができる。
しかも、ロータリ式流量制御弁50が、シリンダヘッド4における流出口4bが形成された端壁部の該流出口4bの近傍に設けられて、そのロータリ式流量制御弁50のハウジング61に配設された流通路76により、回転弁体51の回転位置に関係なく流出口4bからの冷却液がサーモスタット弁40の感温部41及び冷却液温センサ77の感温部77aへ常時流通するようにしたので、ブロック側及びヘッド側ウォータジャケット8,9を流通した直後の冷却液が感温部41に常に接触するとともに、流通路76を流れる冷却液の温度(つまり、エンジン本体部2の温度に相当する温度)が冷却液温センサ77により検出される。この結果、エンジン本体部2の温度に応じたサーモスタット弁40の適切な開閉が行われるとともに、エンジン本体部2の温度に応じた上記コントローラによるラジエータ経路23、第1バイパス経路25及び第2バイパス経路26への流れの適切な制御が行われる。
本発明は、上記実施形態に限られるものではなく、請求の範囲の主旨を逸脱しない範囲で代用が可能である。
上述の実施形態は単なる例示に過ぎず、本発明の範囲を限定的に解釈してはならない。本発明の範囲は請求の範囲によって定義され、請求の範囲の均等範囲に属する変形や変更は、全て本発明の範囲内のものである。