以下、本発明に係る実施の形態を図1乃至図3に沿って説明する。なお、本実施の形態において説明する自動変速機2は、例えばFRタイプ(フロントエンジン、リヤドライブ)の車両に搭載して好適な自動変速機であるため、実際の車両搭載状態に基づき、入力側(図1中左方側)を「前方側」、出力側(図1中右方側)を「後方側」として、各部の配置関係を説明する。
[自動変速機の構成]
まず、本発明を適用し得る自動変速機2の概略構成について図1及び図3に沿って説明する。図1に示すように、自動変速機2には、同一軸線上に自動変速機2の入力軸11、変速機構3の入力軸12、出力軸15が、前方側から後方側へ順に並べられている形で備えられている。自動変速機2の入力軸11は、不図示のエンジンに接続し得るようになっており、該入力軸11の軸方向を中心として発進装置5と、変速機構3とが備えられている。
図1に示すように、上記発進装置5は、トルクコンバータ(流体伝動装置)7と、それをロックアップし得るロックアップクラッチ8とを備えている。該トルクコンバータ7は、自動変速機2の入力軸11に接続されたポンプインペラ7aと、作動流体である油を介して該ポンプインペラ7aの回転が伝達されるタービンランナ7bと、それらの間に配置されると共にワンウェイクラッチ7dにより一方向に回転が規制されたステータ7cとを有しており、該タービンランナ7bは、上記入力軸11と同軸上に配設された上記変速機構3の入力軸12に接続されている。
また、図3に示すように、ロックアップクラッチ8は、軸方向に移動自在に配置されたピストン8aと、該ピストン8aの外周部に配設された摩擦材8bとを備えて構成されている。該ピストン8aは、油密状の空間5aと空間5bとを仕切る形に配置されており、それら空間5aと空間5bとの差圧により該ピストン8aが上記フロントカバー5Aに対して接離されるように移動駆動される。即ち、空間5b側の油圧が高くなると、摩擦材8bがフロントカバー5Aの内側面から離れて解放制御され、空間5a側の油圧が高くなると、摩擦材8bがフロントカバー5Aの内側面に押圧されてスリップ制御ないし係合制御され、該ロックアップクラッチ8が係合されるように構成されている。従って、該ロックアップクラッチ8が係合されると、フロントカバー5Aと変速機構3の入力軸12とが直接係合され、つまり上記トルクコンバータ7をロックアップした状態となる。
図1に示すように、上記変速機構3には、入力軸12の軸方向を中心としてケース4に内包されており、前方から順に、第1シングルピニオンプラネタリギヤSP1と、第2及び第3シングルピニオンプラネタリギヤSP2,SP3からなるプラネタリギヤセットPSと、を備えて構成されている。
上記シングルピニオンプラネタリギヤSP1は、第1サンギヤS1と、第1リングギヤR1と、それら第1サンギヤS1及び第1リングギヤR1に噛合する第1ピニオンP1を回転自在に支持する第1キャリヤCR1と、を有して構成されている。
上記第1サンギヤS1は、変速機構3の入力軸12に常時駆動連結されている。また、第1リングギヤR1は、第1ブレーキB−1によりケース4に対して係止(固定)自在となっている。そして、上記第1キャリヤCR1は、後述のシングルピニオンプラネタリギヤSP2の第2リングギヤR2に駆動連結されていると共に、第2ブレーキB−2によりケース4に対して係止(固定)自在となっている。
一方、プラネタリギヤセットPSは、いわゆるシンプソンタイプからなり、第2シングルピニオンプラネタリギヤSP2と、第3シングルピニオンプラネタリギヤSP3とを有して構成されている。該第2シングルピニオンプラネタリギヤSP2は、第2サンギヤS2と、上記第1キャリヤCR1に駆動連結された第2リングギヤR2と、それら第2サンギヤS2及び第2リングギヤR2に噛合する第2ピニオンP2を回転自在に支持する第2キャリヤCR2と、を有して構成されている。
また、該第3シングルピニオンプラネタリギヤSP3は、上記第2サンギヤS2に駆動連結された第3サンギヤS3と、上記第2キャリヤCR2に駆動連結された第3リングギヤR3と、それら第3サンギヤS3及び第3リングギヤR3に噛合する第3ピニオンP3を回転自在に支持する第3キャリヤCR3と、を有して構成されている。
上記プラネタリギヤセットPSにおける第2サンギヤS2及び第3サンギヤS3は、変速機構3の入力軸12との間に介在された第1クラッチC−1に接続されており、つまり第2サンギヤS2及び第3サンギヤS3には、第1クラッチC−1を介して入力軸12の回転が選択的に入力し得るように構成されている。
上記プラネタリギヤセットPSにおける第2キャリヤCR2及び第3リングギヤR3は、変速機構3の入力軸12との間に介在された第2クラッチC−2に接続されていると共に、ケース4に対して回転を係止し得る第4ブレーキ(摩擦係合要素)B−4に接続され、かつケース4に対して回転を一方向に規制するワンウェイクラッチF−3に接続されている。つまり第2キャリヤCR2及び第3リングギヤR3には、第2クラッチC−2を介して入力軸12の回転が選択的に入力し得ると共に、その回転がワンウェイクラッチF−3により不図示のエンジンからの回転方向に対して許容され、かつ逆の回転方向に対して規制(駆動力出力状態で係合)され、更に、その回転が第4ブレーキB−4により係止し得るように構成されている。
上記プラネタリギヤセットPSにおける第2リングギヤR2は、上述した第1キャリヤCR1を介してケース4に対して回転を係止し得る第2ブレーキB−2に接続されており、かつ第1リングギヤR1は、ケース4に対して回転を係止し得る第1ブレーキB−1に接続されており、つまり第2リングギヤR2は、第2ブレーキB−2を解放して第1ブレーキB−1が係止することで、第1キャリヤCR1から減速回転が入力し得ると共に、該第1ブレーキB−1を解放して第2ブレーキB−2が係止されることで、その回転が係止し得るように構成されている。
そして、上記プラネタリギヤセットPSにおける第3キャリヤCR3は、出力軸15に接続されており、第2サンギヤS2及び第3サンギヤS3、第2キャリヤCR2及び第3リングギヤR3、及び第2リングギヤR2の回転状態により定まる回転を、出力軸15を介して不図示の駆動車輪に出力する。
以上のように構成された自動変速機2は、図1のスケルトンに示す各第1及び第2クラッチC−1,C−2、第1、第2、及び第4ブレーキB−1,B−2,B−4、ワンウェイクラッチF−3が、図2の係合表に示す組み合わせで作動されることにより、前進1速段(1st)〜前進6速段(6th)、及び後進段(Rev)が達成される。なお、本実施の形態においては、第4ブレーキB−1が、ニュートラル状態、後進段、前進1速段のエンジンブレーキ時(前進段の所定の状態)に係合される。
[油圧制御装置の構成]
ついで、本自動変速機の油圧制御装置の構成について図3に沿って説明する。なお、図3で示した自動変速機2の油圧制御装置1は、本発明の要部となる部分だけを抜き出して示したものであり、実際には、エンジンに連動して駆動されて油圧を発生させるオイルポンプ、該オイルポンプの発生する油圧をライン圧PLに調圧するプライマリレギュレータバルブ、該プライマリレギュレータバルブの排出圧をセカンダリ圧PSECに調圧すると共に、セカンダリ圧の排出としてのセカンダリ排圧PSEC−Dを調圧(排出)するセカンダリレギュレータバルブ、該ライン圧を所定圧であるモジュレータ圧PMODに調圧するモジュレータバルブ、などの各種の油圧を生成する油圧生成部分を備えている。
上記ライン圧PLは、油路a1,a2,a3,a4,a5に供給されており、油路a2を介してマニュアルバルブ25のライン圧入力ポート25aと、油路a4を介して後述するリニアソレノイドバルブSL4の入力ポートSL4aと、油路a5を介して後述するシーケンスバルブ32の入力ポート32dと、に供給されている。
マニュアルバルブ25は、不図示の運転席に配設されたシフトレバーに機械的或いは電気的に接続されて、シフトレバーにより選択されたシフトレンジ(例えばパーキングレンジ、リバースレンジ(後進レンジ)、ニュートラルレンジ、ドライブレンジ(前進レンジ))に合わせて、そのスプール25pが移動駆動するように構成されており、前進レンジでは、ライン圧入力ポート25aに入力されているライン圧PLを前進レンジ圧出力ポート25bから前進レンジ圧PDとして油路b1,b2,b3,b4,b5,b6等に出力し、後進レンジでは、ライン圧入力ポート25aに入力されているライン圧PLを後進レンジ圧出力ポート25cから油路c1,c2,c3,c4,c5,c6,c7,c8,c9,c10等に後進レンジ圧PRとして出力する。
また、前進レンジ圧出力ポート25bは、前進レンジ以外の状態では、油路b1,b2,b3,b4,b5,b6等の油圧をドレーン(排出)してライン圧PLを非出力にするように構成されており、同様に、後進レンジ圧出力ポート25cは、後進レンジ以外の状態では、油路c1,c2,c3,c4,c5,c6,c7,c8,c9,c10等の油圧をドレーンポートEXよりドレーンしてライン圧PLを非出力にするように構成されている。なお、油路c2と油路c3,c4との間には、チェックバルブ63が介在しており、該チェックバルブ63は、後進レンジ圧出力ポート25cから後進レンジ圧PRを出力する場合のみに開いて油路c2と油路c3,c4との間を連通する。また、油路c5と油路c4,c8との間には、チェックバルブ62が介在しており、該チェックバルブ62は、後進レンジ圧出力ポート25cから後進レンジ圧PRを排出する場合のみに開いて油路c5と油路c4,c8との間を連通する。そして、油路c4にはオリフィス71が介在されており、油路c3,c4を介して油路c5,c1の油圧を後進レンジ圧出力ポート25cから排出する場合には、該オリフィス71によって緩やかに遅くなるように排出され、油路c8を介して油路c5,c1の油圧を後進レンジ圧出力ポート25cから排出する場合には、そのまま油圧を排出し、オリフィス71を通る場合よりも早く排出することになる。
一方、上記セカンダリ圧PSECは、油路f1,f2,f3,f4に供給されており、油路f2を介してロックアップリレーバルブ21の入力ポート21gに、油路f3を介してロックアップリレーバルブ21の入力ポート21fに、油路f4を介してロックアップコントロールバルブ22の入力ポート22eに、それぞれ供給されている。
また、上記ライン圧PLを不図示のモジュレータバルブによって所定圧以下となるように制限されたモジュレータ圧PMODは、油路d1,d2,d3,d4,d5,d6,d7,d8に供給されており、油路d2を介してリニアソレノイドバルブSLUの入力ポートSLUaに、油路d3を介してソレノイドバルブSLの入力ポートSLaに、油路d6を介してクラッチコントロールバルブ31の入力ポート31hに、油路d7を介してシーケンスバルブ32の作動油室32bに、油路d8を介してソレノイドリレーバルブ23の入力ポート23iに、それぞれ供給されている。
また、詳しくは後述するクラッチコントロールバルブ31が右半分で示す位置(以下、「右半位置」という)の際は、油路d6を介して入力ポート31hに入力されたモジュレータ圧PMODが油路d11,d12,d13に出力され、入力ポート31b及びロック油室31cに入力される。また、詳しくは後述するソレノイドリレーバルブ23が左半分で示す位置(以下、「左半位置」という)の際は、油路d8を介して入力ポート23iに入力されたモジュレータ圧PMODが油路d9に出力され、詳しくは後述するロックアップリレーバルブ21のロック油室21bに入力される。さらに、詳しくは後述するソレノイドリレーバルブ23が右半位置の際は、油路d8を介して入力ポート23iに入力されたモジュレータ圧PMODが油路d10に出力され、詳しくは後述するシーケンスバルブ32の作動油室32cに入力される。
リニアソレノイドバルブ(ソレノイドバルブ、ロックアップ制御ソレノイドバルブ)SLUは、ノーマルクローズタイプからなり、上記モジュレータ圧PMODを入力ポートSLUaに入力し、該モジュレータ圧PMODを制御部(不図示)からの指令に基づき自在に調圧して出力ポートSLUbから制御圧PSLUとして出力する。制御圧PSLUは、油路e1,e2,e3,e4に供給され、油路e2を介してロックアップリレーバルブ21の作動油室(第1作動油室)21aと、油路e3を介してロックアップコントロールバルブ22の作動油室22cと、ソレノイドリレーバルブ23の入力ポート23bとに入力される。また、ソレノイドリレーバルブ23が左半位置の場合は、制御圧PSLUは油路e5,e6,e7に供給され、詳しくは後述するB−4コントロールバルブ37の作動油室37aと、詳しくは後述するB1−B4アプライコントロールバルブ35の作動油室35aとに入力される。
ソレノイドバルブSLは、ノーマルクローズタイプからなり、上記モジュレータ圧PMODを入力ポートSLaに入力し、該モジュレータ圧PMODを制御部(不図示)からの指令に基づきオン・オフ制御して、出力ポートSLbから信号圧PSLとして出力し得る。信号圧PSLは、油路k1,k2,k3に供給され、クラッチコントロールバルブ31の作動油室31aと、ソレノイドリレーバルブ23の作動油室23aとに入力される。
リニアソレノイドバルブSL4は、ノーマルクローズタイプからなり、上記ライン圧PLを油路a4を介して入力ポートSL4aに入力し、該ライン圧PLを制御部(不図示)からの指令に基づき自在に制御して、出力ポートSL4bから油路m1に制御圧PSL4として出力し、油路m2を介してフィードバックポートSL4cに入力される制御圧PSL4によってフィードバックされつつ、制御圧PSL4を油路m3に調圧出力する。なお、制御圧PSL4は、詳しくは後述するB1−B4アプライコントロールバルブ35によって、第1ブレーキB−1の油圧サーボ55と第4ブレーキB−4の油圧サーボ56とに振分けられ、第1ブレーキB−1の油圧サーボ55には係合圧PB1として、第4ブレーキB−4の油圧サーボ56には係合圧PB4として出力される。
なお、詳細な図示を省略したが、リニアソレノイドバルブSL1は制御圧PSL1を油路r1,r2,r3に自在に調圧出力し、該制御圧PSL1を油路v1を介して第1クラッチC−1の油圧サーボ51に係合圧PC1として供給し、リニアソレノイドバルブSL2は制御圧PSL2を油路n1,n2,n3に自在に調圧出力し、該制御圧PSL2を油路u1を介して第2クラッチC−2の油圧サーボ52に係合圧PC2として供給する。また、リニアソレノイドバルブSL3は制御圧PSL3を油路o1に自在に調圧出力すると共に、不図示の第2ブレーキB−1の油圧サーボに係合圧PB2として供給する。そして、リニアソレノイドバルブSLTは、不図示の制御部の指令に基づき例えばスロットル開度等に応じたSLT圧PSLTを出力し、不図示のプライマリレギュレータバルブやセカンダリレギュレータバルブを調圧制御すると共に、シーケンスバルブ32の作動油室32aにもSLT圧PSLTを供給する。
ロックアップコントロールバルブ22は、スプール22pと、該スプール22pを一方側(図中下方側)に付勢するスプリング22sと、発進装置5の空間5aの内圧を一方側に付勢する方向(スプリング22sの付勢方向)にロックアップオンポート5d及び油路h1,h2を介してフィードバックするフィードバック油室22bと、上記油路e3を介してリニアソレノイドバルブSLUの制御圧PSLUを一方側に付勢する方向(スプリング22sの付勢方向)に入力する作動油室22cと、上記油路f4を介してセカンダリ圧PSECを入力する入力ポート22eと、該入力ポート22eに入力されたセカンダリ圧PSECを上記作動油室22cの制御圧PSLUに基づきロックアップクラッチ8の係合状態を変更するロックアップ係合圧PL−UPとして調圧出力する出力ポート22dと、後述のロックアップリレーバルブ21が左半位置の場合に、油路g1,g2,g4を介してロックアップ係合圧PL−UPをフィードバック圧として他方側に付勢する方向(スプリング22sの付勢に反する方向)に入力するフィードバック油室22aと、を有して構成されている。
ロックアップリレーバルブ21は、スプール21pと、該スプール21pを一方側(図中上方側の右半位置)に付勢するスプリング21sと、上記油路e2を介してリニアソレノイドバルブSLUの制御圧PSLUを入力し、入力した制御圧PSLUにより該スプール21pを他方側(図中下方側の左半位置)に押圧作用させる作動油室21aと、上記油路d9を介してモジュレータ圧PMODを一方側に付勢する方向(スプリング21sの付勢方向)に入力し得るロック油室21bと、上記セカンダリ排圧PSEC−Dを油路i1を介して入力する入力ポート21cと、左半位置の際に該入力ポート21cに入力したセカンダリ排圧PSEC−Dを油路j1、チェックバルブ61、油路j2を介してオイルクーラ80に出力する出力ポート21dと、発進装置5の空間5aの内圧をロックアップオンポート5d及び油路h1,h3を介して入力する入力ポート21eと、上記セカンダリ圧PSECをそれぞれ油路f3,f2を介して入力する入力ポート21f,21gと、上記ロックアップ係合圧PL−UPを油路g1を介して入力する入力ポート21iと、左半位置の際に、該入力ポート21iに入力されたロックアップ係合圧PL−UPを油路g2,g3、ロックアップオフポート5cを介して発進装置5の空間5bに出力すると共に、油路g4を介して上記ロックアップコントロールバルブ22のフィードバック油室22aに出力する出力ポート21hと、を有して構成されている。なお、オイルクーラ80を通過した油は、不図示の潤滑回路に供給されて変速機構3等を潤滑した後、油圧制御装置1の下方に設置されたオイルパンに戻される。
ソレノイドリレーバルブ23は、スプール23pと、該スプール23pを一方側(図中上方側の左半位置)に付勢するスプリング23sと、上記油路k3を介してソレノイドバルブSLの信号圧PSLを他方側(図中下方側の右半位置)に付勢する方向(スプリング23sの付勢に反する方向)に入力する作動油室23aと、上記油路e4を介してリニアソレノイドバルブSLUの制御圧PSLUを入力する入力ポート23bと、左半位置の際に該入力ポート23bに入力した制御圧PSLUを油路e5,e6,e7に出力する出力ポート23cと、油路x1に連通されて詳しくは後述するように制御圧PSL4(係合圧PB4)を入力し得る入力ポート23dと、油路y3に連通されて詳しくは後述するように後進レンジ圧PRを入力し得る入力ポート23fと、左半位置の際に該入力ポート23dの制御圧PSL4(係合圧PB4)を、右半位置の際に該入力ポート23fの後進レンジ圧PRを、油路t1を介して第4ブレーキB−4の油圧サーボ56に出力し得る出力ポート23eと、リニアソレノイドバルブSL1の制御圧PSL1を油路r1,r2を介して入力する入力ポート23gと、モジュレータ圧PMODを油路d8を介して入力する入力ポート23iと、左半位置の際に該入力ポート23gの制御圧PSL1を、右半位置の際に該入力ポート23iのモジュレータ圧PMODを、油路d10を介してシーケンスバルブ32の作動油室32cに出力し得る出力ポート23hと、左半位置の際に該入力ポート23iのモジュレータ圧PMODを、油路d9を介してロックアップリレーバルブ21のロック油室21bに出力し得る出力ポート23jと、を有して構成されている。つまりソレノイドリレーバルブ23は、作動油室23aに対する信号圧PSLの入力状態に基づき左半位置と右半位置とに切換えられる。
クラッチコントロールバルブ31は、スプール31pと、該スプール31pを一方側(図中上方側の左半位置)に付勢するスプリング31sと、上記油路k2を介してソレノイドバルブSLの信号圧PSLを入力する作動油室31aと、上記油路b5を介して前進レンジ圧PDを入力する入力ポート31eと、上記油路d6を介してモジュレータ圧PMODを入力する入力ポート31hと、右半位置の際に該入力ポート31hに入力したモジュレータ圧PMODを油路d11,d12,d13に出力する出力ポート31gと、該油路d13を介して該出力ポート31gからのモジュレータ圧PMODを入力し、スプール31pを他方側(図中下方側の右半位置)に付勢する入力ポート31bと、該油路d12を介して該出力ポート31gからのモジュレータ圧PMODを入力し、スプール31pを右半位置にロックするロック油室31cと、左半位置の際に該入力ポート31eに入力した前進レンジ圧PDを油路p1を介してシーケンスバルブ32の入力ポート32gに出力する出力ポート31dと、右半位置の際に該入力ポート31eに入力した前進レンジ圧PDを油路q1を介してシーケンスバルブ32の入力ポート32jに出力する出力ポート31fと、を有して構成されている。
シーケンスバルブ32は、スプール32pと、該スプール32pを一方側(図中下方側の右半位置)に付勢するスプリング32sと、リニアソレノイドバルブSLTからのSLT圧PSLTを他方側(図中上方側の左半位置)に付勢する方向(スプリング32sの付勢に反する方向)に入力する作動油室32aと、上記油路d7を介してモジュレータ圧PMODを一方側に付勢する方向(スプリング32sの付勢方向)に入力する作動油室32bと、上記ソレノイドリレーバルブ23が右半位置の際に油路d10を介してモジュレータ圧PMODを一方側に付勢する方向(スプリング32sの付勢方向)に入力する作動油室32cと、上記油路a5を介してライン圧PLを入力する入力ポート32dと、上記油路m3を介してリニアソレノイドバルブSL4の制御圧PSL4を入力する入力ポート32fと、左半位置の際に該入力ポート32dに入力されたライン圧PLを、また右半位置の際に入力ポート32fに入力された制御圧PSL4を、油路w1,w2,w3に出力する出力ポート32eと、上記クラッチコントロールバルブ31が左半位置の際に油路b5,p1を介して前進レンジ圧PDを入力する入力ポート32gと、上記油路r3を介してリニアソレノイドバルブSL1の制御圧PSL1を入力する入力ポート32iと、左半位置の際に該入力ポート32gに入力された前進レンジ圧PDを、また右半位置の際に入力ポート32iに入力された制御圧PSL1を、油路v1を介して第1クラッチC−1の油圧サーボ51に出力する出力ポート32hと、上記クラッチコントロールバルブ31が右半位置の際に油路b5,q1を介して前進レンジ圧PDを入力する入力ポート32jと、上記油路n2を介してリニアソレノイドバルブSL2の制御圧PSL2を入力する入力ポート32lと、左半位置の際に該入力ポート32jに入力された前進レンジ圧PDを、また右半位置の際に入力ポート32lに入力された制御圧PSL2を、油路u1を介して第2クラッチC−2の油圧サーボ52に出力する出力ポート32kと、を有して構成されている。
B−4アプライコントロールバルブ36は、スプール36pと、該スプール36pを一方側(図中上方側の左半位置)に付勢するスプリング36sと、油路n3を介してリニアソレノイドバルブSL2の制御圧PSL2を他方側(図中下方側の右半位置)に付勢する方向(スプリング36sの付勢に反する方向)に入力する作動油室36aと、油路w2を介して上記シーケンスバルブ32からリニアソレノイドバルブSL1の制御圧PSL1(フェール時はライン圧PL)を他方側に付勢する方向(スプリング36sの付勢に反する方向)に入力する作動油室36bと、油路o1を介してリニアソレノイドバルブSL3の制御圧PSL3を他方側に付勢する方向(スプリング36sの付勢に反する方向)に入力する作動油室36cと、油路b4を介して前進レンジ圧PDを入力する入力ポート36dと、左半位置の際に該入力ポート36dに入力した前進レンジ圧PDを油路b6に出力する出力ポート36eと、油路c9を介して後進レンジ圧PRを入力する入力ポート36gと、右半位置の際に該入力ポート36gに入力した後進レンジ圧PRを油路y1,y2,y3に出力し、左半位置の際にドレーンポートEXに連通する出力ポート36fと、を有して構成されている。
B−4コントロールバルブ(切換えバルブ)37は、スプール37pと、該スプール37pを一方側(図中上方側の左半位置)に付勢するスプリング37sと、上記ソレノイドリレーバルブ23が左半位置の際に上記油路e6を介してリニアソレノイドバルブSLUの制御圧PSLUを他方側(図中下方側の右半位置)に付勢する方向(スプリング37sの付勢に反する方向)に入力する作動油室37aと、油路b6を介して上記B−4アプライコントロールバルブ36が左半位置の際にマニュアルバルブ25の前進レンジ圧出力ポート25bに連通し、前進レンジ圧PDを入力する入力ポート(第1ポート)37gと、油路c6を介して後進レンジ圧出力ポート25cに連通し、後進レンジ圧PRを入力する入力ポート(第2ポート)37eと、油路c7を介して該入力ポート37eに連通する連通ポート(第4ポート)37dと、右半位置の際に該入力ポート37gに連通し、また左半位置の際に該入力ポート37eに連通し、油路z1,z2,z3に上記作動油室37aの制御圧PSLUの大きさに基づき、前進レンジ圧PD又は後進レンジ圧PRを第4ブレーキB−4の係合圧PB4として調圧出力し得る出力ポート(第3ポート)37fと、油路z2を介して該出力ポート37fから出力された係合圧PB4をフィードバック圧として入力するフィードバック油室37bと、右半位置から中間位置(右半位置と左半位置との間の位置)まで該連通ポート37dに連通すると共に、油路c10を介して後進レンジ圧出力ポート25cに連通された連通ポート(第5ポート)37cと、を有して構成されている。なお、このB−4コントロールバルブ37においては、中間位置の際に、出力ポート37fと入力ポート37eとが連通し、さらに、該入力ポート37eと連通ポート37dとが連通し、そして、連通ポート37dと連通ポート37cとが連通するように構成されている。
B1−B4アプライコントロールバルブ35は、スプール35pと、該スプール35pを一方側(図中上方側の左半位置)に付勢するスプリング35sと、上記ソレノイドリレーバルブ23が左半位置の際に上記油路e7を介してリニアソレノイドバルブSLUの制御圧PSLUを他方側(図中下方側の右半位置)に付勢する方向(スプリング35sの付勢に反する方向)に入力する作動油室35aと、上記油路z3を介して上記B−4コントロールバルブ37が調圧出力した係合圧PB4を入力する入力ポート35cと、上記油路w3を介して上記シーケンスバルブ32が右半位置の際にリニアソレノイドバルブSL4の制御圧PSL4を入力し、上記シーケンスバルブ32が左半位置の際にライン圧PLを入力する入力ポート35eと、左半位置の際に該入力ポート35cに入力された係合圧PB4を、また右半位置の際に上記入力ポート35eに入力された制御圧PSL4又はライン圧PLを油路x1に出力する出力ポート35dと、上記B−4アプライコントロールバルブ36が右半位置の際に油路y2を介して後進レンジ圧PRを入力し、上記B−4アプライコントロールバルブ36が左半位置の際に油路y2及び該B−4アプライコントロールバルブ36のドレーンポートEXに連通する入力ポート35gと、左半位置の際に該入力ポート35eに連通して制御圧PSL4又はライン圧PLを油路s1を介して第1ブレーキB−1の油圧サーボ55に出力し、右半位置の際に該入力ポート35gに連通して、通常は油路y2を介して該B−4アプライコントロールバルブ36のドレーンポートEXに連通する出力ポート35fと、を有して構成されている。
[前進時の各変速段の作用]
ついで、上記油圧制御装置1の構成に基づいた各状態の作用について説明する。まず、前進時の各変速段(前進1速段〜前進6速段)を達成する際の作用について説明する。なお、前進1速段のエンジンブレーキ時については後述する。
まず、例えばイグニッションスイッチ等の操作によりエンジンが始動されると、不図示のオイルポンプが駆動され、ライン圧PL、セカンダリ圧PSEC、セカンダリ排圧PSEC−D、モジュレータ圧PMODなどが発生される。この際、正常状態(フェール時以外)にあっては、一旦ソレノイドバルブSLがオンされて信号圧PSLが油路k1,k2を介してクラッチコントロールバルブ31の作動油室31aに供給され、スプリング31sの付勢力に抗して該クラッチコントロールバルブ31は右半位置にされる。すると、クラッチコントロールバルブ31は、油路d1,d4,d5,d6を介して入力ポート31hに入力されたモジュレータ圧PMODが入力ポート31bに入力されて信号圧PSLと相俟ってスプール31pを右半位置に移動駆動し、ロック油室31cにもモジュレータ圧PMODが入力され、次にエンジンが停止されるまで右半位置にロックされる。また、シーケンスバルブ32は、油路d1,d4,d5,d7を介してモジュレータ圧PMODが作動油室32bに入力され、スプリング32sの付勢力と相俟って、リニアソレノイドバルブSLTのSLT圧PSLTに打勝って右半位置にされる。
ここで、例えば運転者により前進レンジが選択されると、マニュアルバルブ25のスプール25pが前進レンジ位置に移動駆動され、前進レンジ圧出力ポート25bから前進レンジ圧PDが油路b1〜b6等に出力される共に、リニアソレノイドバルブSL1が前進レンジ圧PDを調圧した制御圧PSL1を第1クラッチC−1の油圧サーボ51に供給する係合圧PC1として出力する。すると、油路r1,r3を介して右半位置のシーケンスバルブ32の入力ポート32i及び出力ポート32hを通り、油路v1を介して第1クラッチC−1の油圧サーボ51に係合圧PC1が供給され、該第1クラッチC−1が係合制御されて、ワンウェイクラッチF−3と相俟って前進1速段を形成する。
次に、リニアソレノイドバルブSL3から不図示の第2ブレーキB−1の油圧サーボに制御圧PSL3が係合圧PB2として供給されると、該第2ブレーキB−1が係合制御され、上記第1クラッチC−1の係合と相俟って前進2速段を形成する。
続いて、リニアソレノイドバルブSL3から係合圧PB2が排出されると共に、リニアソレノイドバルブSL4から制御圧PSL4が係合圧PB1として出力されると、該係合圧PB1は、油路m1,m3、シーケンスバルブ32の入力ポート32f及び出力ポート32e、油路w1,w3を通り、さらにスプリング35sの付勢力により左半位置となっているB1−B4アプライコントロールバルブ35の入力ポート35e及び出力ポート35f、油路s1を通って、第1ブレーキB−1の油圧サーボ55に供給される。これにより、該第1ブレーキB−1が係合制御され、上記第1クラッチC−1の係合と相俟って前進3速段を形成する。
さらに、リニアソレノイドバルブSL4から係合圧PB1が排出されると共に、リニアソレノイドバルブSL2から制御圧PSL2が係合圧PC2として出力されると、該係合圧PC2は、油路n1,n2、右半位置のシーケンスバルブ32の入力ポート32l及び出力ポート32k、油路u1を通って、第2クラッチC−2の油圧サーボ52に供給される。これにより、該第2クラッチC−2が係合制御され、上記第1クラッチC−1の係合と相俟って前進4速段を形成する。
次に、リニアソレノイドバルブSL1から係合圧PC1が排出されると共に、リニアソレノイドバルブSL4から制御圧PSL4が係合圧PB1として出力され、上記前進3速段と同様に油圧サーボ55に供給されると、第1ブレーキB−1が再度係合制御され、上記第2クラッチC−2の係合と相俟って前進5速段を形成する。
そして、リニアソレノイドバルブSL4から係合圧PB1が排出されると共に、リニアソレノイドバルブSL3から制御圧PSL3が係合圧PB2として出力され、上記前進2速段と同様に不図示の油圧サーボに供給されると、第2ブレーキB−1が再度係合制御され、上記第2クラッチC−2の係合と相俟って前進6速段を形成する。
[ロックアップオン時の作用]
上述したような前進走行中にあって、ロックアップクラッチ8をロックアップオンする際は、まず、ソレノイドバルブSLをオンして信号圧PSLを出力する。すると、油路k1,k3を介して信号圧PSLがソレノイドリレーバルブ23の作動油室23aに供給され、スプリング23sの付勢力に打勝って右半位置にされる。これにより、油路d8に供給されているモジュレータ圧PMODは、入力ポート23i及び出力ポート23h、油路d10を通ってシーケンスバルブ32の作動油室32cに供給され、該シーケンスバルブ32の右半位置のロックを強めることになり、例えばリニアソレノイドバルブSLTのSLT圧PSLTがスロットル開度等に基づき上昇されてもシーケンスバルブ32の右半位置のロックが維持される。このように作動油室32cのモジュレータ圧PMODによる右半位置のロックが強まることで、ロックアップオン時におけるリニアソレノイドバルブSLTのSLT圧PSLTの使用領域を高くすることができる。また、油路e4に供給されるリニアソレノイドバルブSLUの制御圧PSLUは、ソレノイドリレーバルブ23の入力ポート23bが遮断されることにより、油路e5,e6,e7に供給されず、つまりリニアソレノイドバルブSLUの制御圧PSLUは、ロックアップリレーバルブ21の作動油室21aとロックアップコントロールバルブ22の作動油室22cとだけに供給され、つまりロックアップクラッチ8の係合制御だけに用いられることになる。なお、クラッチコントロールバルブ31は、上述したようにエンジン始動時に右半位置にロックされており、油路k2から信号圧PSLが作動油室31aに供給されても右半位置のままである。
詳細には、ソレノイドバルブSLが信号圧PSLを出力した状態で、リニアソレノイドバルブSLUから制御圧PSLUが出力されると、油路e1,e2を介してロックアップリレーバルブ21の作動油室21aに該制御圧PSLUが入力され、スプリング21sの付勢力に打勝って該ロックアップリレーバルブ21が左半位置にされる。また、リニアソレノイドバルブSLUから制御圧PSLUが出力されると、油路e1,e3を介してロックアップコントロールバルブ22の作動油室22cに入力され、該ロックアップコントロールバルブ22が右半位置から左半位置に自在に移動駆動される。これにより、油路f1,f4を介して入力ポート22eに供給されているセカンダリ圧PSECは、制御圧PSLUの大きさに基づき、ロックアップコントロールバルブ22により自在にロックアップ係合圧PL−UPとして調圧され、左半位置のロックアップリレーバルブ21の入力ポート21i及び出力ポート21hを通り、油路g2,g3を介してロックアップオフポート5cから空間5bに供給される。
また同時に、セカンダリ圧PSECは、油路f1,f3、左半位置のロックアップリレーバルブ21の入力ポート21f及び入力ポート21eを通り、さらに、油路h3,h1を介してロックアップオンポート5dから空間5aに供給される。これにより、空間5aにおけるセカンダリ圧PSECに対し、空間5bにおけるロックアップコントロールバルブ22により調圧されたロックアップ係合圧PL−UPが小さくされることで、ピストン8aの摩擦材8bがフロントカバー5Aの内側面に押圧されて係合し、フロントカバー5Aとタービンランナ7bとの回転が一体的となって、つまりロックアップクラッチ8が係合制御される。なお、空間5aのセカンダリ圧PSECは、油路h2を介してロックアップコントロールバルブ22のフィードバック油室22bにフィードバックされ、空間5bのロックアップ係合圧PL−UPは、油路g4を介してロックアップコントロールバルブ22のフィードバック油室22aにフィードバックされ、例えばロックアップクラッチ8のスリップ係合中にあって、どちらか一方が大きく変動した際の変動吸収が行われるように構成されている。
[ロックアップオフ時の作用]
上記ロックアップクラッチ8をロックアップオフする際には、まず、リニアソレノイドバルブSLUの制御圧PSLUを制御してロックアップコントロールバルブ22によりロックアップ係合圧PL−UPをセカンダリ圧PSECと略々同圧にし、ピストン8aの摩擦材8bがフロントカバー5Aの内側面から離反可能な状態にしてから、ソレノイドバルブSLをオフして信号圧PSLを非出力状態にする。
すると、ソレノイドリレーバルブ23の作動油室23aに信号圧PSLが供給されず、該ソレノイドリレーバルブ23はスプリング23sの付勢力によって左半位置にされる。これにより、入力ポート23iに入力されているモジュレータ圧PMODが出力ポート23jから出力され、油路d9を介してロックアップリレーバルブ21のロック油室21bに供給される。この際、リニアソレノイドバルブSLUが制御圧PSLUを出力して作動油室21aに供給していたとしても、該制御圧PSLUの元圧がモジュレータ圧PMODであるため、ロック油室21bのモジュレータ圧PMODとスプリング21sの付勢力が作動油室21aの制御圧PSLUを必ず上回り、ロックアップリレーバルブ21は右半位置にされる。これにより、ロックアップコントロールバルブ22が出力するロックアップ係合圧PL−UPは、ロックアップリレーバルブ21の入力ポート21iで遮断され、油路f2から入力ポート21gに入力されているセカンダリ圧PSECが、出力ポート21hから出力され、油路g3を介して上記空間5bに供給されてピストン8aをフロントカバー5Aから離反させ、ロックアップクラッチ8をロックアップオフ状態にすると共に、空間5aを通って油路h1,h3を通り、ロックアップリレーバルブ21の入力ポート21e及び出力ポート21d、油路j1、チェックバルブ61、油路j2を通って、オイルクーラ80に供給される。
このように、ロックアップオフ状態では、ロックアップリレーバルブ21のロック油室21bにモジュレータ圧PMODが入力されると、ロックアップ係合圧PL−UPは遮断され、かつ作動油室21aの制御圧PSLUもロック油室21bのモジュレータ圧PMODとスプリング21sの付勢力とに対して打勝つことがないので、ロックアップリレーバルブ21及びロックアップコントロールバルブ22に対する制御圧PSLUの出力が無効化され、つまりリニアソレノイドバルブSLUの制御圧PSLUは、他の制御に自由に使用できる状態となる。
[前進1速段のエンジンブレーキ時の作用]
続いて、上記ロックアップオフ状態で自由となった制御圧PSLUを用いた、前進1速段のエンジンブレーキ時の油圧制御について説明する。上述したように、ロックアップオフ状態では、ソレノイドバルブSLの信号圧PSLが非出力状態であり、ソレノイドリレーバルブ23は左半位置にされる。すると、リニアソレノイドバルブSLUが出力した制御圧PSLUは、油路e1,e4からソレノイドリレーバルブ23の入力ポート23b及び出力ポート23cを通って、油路e5,e6,e7に出力され、それぞれB1−B4アプライコントロールバルブ35の作動油室35aとB−4コントロールバルブ37の作動油室37aとに供給される。なお、B1−B4アプライコントロールバルブ35のスプリング35sの付勢力は、B−4コントロールバルブ37のスプリング37sの付勢力よりも強く設定されており、制御圧PSLUによってスプリング37sが打ち負けてB−4コントロールバルブ37が右半位置になる以上の油圧となると、制御圧PSLUによってスプリング35sが打ち負けてB1−B4アプライコントロールバルブ35が右半位置になる。従って、前進1速段のエンジンブレーキ時においては、リニアソレノイドバルブSLUは、制御圧PSLUの強さを調整し、B1−B4アプライコントロールバルブ35が左半位置に維持された状態で、B−4コントロールバルブ37が左半位置から右半位置まで自在に移動駆動する。
前進1速段のエンジンブレーキ時においては、マニュアルバルブ25の前進レンジ圧出力ポート25bから前進レンジ圧PDが出力され、油路b1,b3,b4を介してB−4アプライコントロールバルブ36の入力ポート36dに入力され、該B−4アプライコントロールバルブ36は、作動油室36a,36b,36cに油圧が入力されていないので、左半位置となり、入力ポート36dに入力された前進レンジ圧PDが出力ポート36eから油路b6に出力され、B−4コントロールバルブ37の入力ポート37gに入力されている。そして、入力ポート37gの前進レンジ圧PDは、作動油室37aの制御圧PSLUの大きさによって徐々に右半位置にされることで出力ポート37fから大きさが調圧される形で油路z1,z2,z3に出力され、フィードバック油室37bにフィードバック圧として作用しつつ調圧されることで、第4ブレーキB−4の係合圧PB4として調圧される。このように制御圧PSLUの大きさによって調圧された係合圧PB4は、油路z3を介して左半位置のB1−B4アプライコントロールバルブ35の入力ポート35cに入力され、さらに、出力ポート35dから油路x1に出力されて、上述のように左半位置のソレノイドリレーバルブ23の入力ポート23dに入力され、出力ポート23eから油路t1を介して第4ブレーキB−4の油圧サーボ56に供給される。これにより、第4ブレーキB−4が係合され、第1クラッチC−1の係合と相俟って前進1速段のエンジンブレーキ(ワンウェイクラッチF−3の逆転回転防止)が達成される。
[ニュートラル時の作用]
ついで、ニュートラル時の第4ブレーキB−4の係合時(図2参照)の油圧制御について説明する。ニュートラル時には、変速機構3をニュートラル状態にするので、第4ブレーキB−4を係合していなくてもよいが、第1クラッチC−1,C−2などが潤滑油によって僅かに引き摺りを生じた場合などに、変速機構3が自由回転状態であるので、僅かに回転を生じる虞があり、そこで第4ブレーキB−4を係合して、変速機構3の自由回転状態を規制しておくことが望ましい。また、ニュートラルレンジから後進レンジに切換えられる際に、予めニュートラル状態で第4ブレーキB−4を係合しておくことで、後進段の形成における第4ブレーキB−4の係合のレスポンス向上を図ることも可能となる。そのため、本自動変速機2においては、ニュートラル状態で第4ブレーキB−4の油圧サーボ56に係合圧PB4を供給して第4ブレーキB−4を係合する。
ニュートラル状態にあっても、上述したようにロックアップオフ状態であるので、上述のようにリニアソレノイドバルブSLUの制御圧PSLUを自由に用いることができるが、マニュアルバルブ25から前進レンジ圧PDが出力されなくなるので、リニアソレノイドバルブSL4の制御圧PSL4を係合圧PB4として用いる。
詳細には、ニュートラル状態にあってもロックアップオフ状態にされるので、上述したように自由に用いることのできる制御圧PSLUを大きな圧力で出力し、B1−B4アプライコントロールバルブ35とB−4コントロールバルブ37とを共に右半位置に切換える。この際、マニュアルバルブ25はニュートラル位置であり、前進レンジ圧PDや後進レンジ圧PRは出力されていないので、B−4コントロールバルブ37には何れの入力ポート37e,37gにも油圧が入力されてなく、右半位置であっても何ら油圧を出力しないので、つまりB−4コントロールバルブ37が右半位置に切換えられても何も動作に影響がない。
そして、この状態でリニアソレノイドバルブSL4の出力ポートSL4bから制御圧PSL4が第4ブレーキB−4の係合圧PB4として出力される。すると、係合圧PB4は、油路m1,m3、作動油室32bにモジュレータ圧PMODを入力して右半位置となったシーケンスバルブ32の入力ポート32f及び出力ポート32e、油路w1,w3、上述のように制御圧PSLUで右半位置に切換えられたB1−B4アプライコントロールバルブ35の入力ポート35e及び出力ポート35d、油路x1、スプリング23sの付勢力により左半位置に切換えられたソレノイドリレーバルブ23の入力ポート23d及び出力ポート23e、油路t1を通り、第4ブレーキB−4の油圧サーボ56に係合圧PB4が供給されて、該第4ブレーキB−4が係合される。
なお、この際の第4ブレーキB−4の係合は、変速機構3の自由回転状態を停止させるだけの目的を達成できれば十分であるので、リニアソレノイドバルブSL4が出力する係合圧PB4は小さくて足り、特にB−4アプライコントロールバルブ36は、作動油室36bに係合圧PB4が入力されるが、スプリング36sの付勢力に打勝つことはなく、左半位置に維持される。
なお、このニュートラルレンジの状態から前進レンジの状態に例えば運転者によってレンジ切換えが行われた場合には、リニアソレノイドバルブSL4から係合圧PB4をドレーンした後、リニアソレノイドバルブSLUの制御圧PSLUを小さくすることで、上記第4ブレーキB−4の解放を行う。そして、前進1速段の形成は、第1クラッチC−1の係合と共にワンウェイクラッチF−3の自動係合で行われるが(図2参照)、仮に第4ブレーキB−4の解放が遅れたとしても、ワンウェイクラッチF−3の係合状態と同じ状態であるので特に問題は無い。
また、このニュートラルレンジの状態から後進レンジの状態に例えば運転者によってレンジ切換えが行われた場合には、リニアソレノイドバルブSL4から係合圧PB4をドレーンすることなく、詳しくは後述するように後進レンジ圧PRで第4ブレーキB−4の係合を行う。
[後進時の作用]
続いて、後進時(後進レンジ時)の油圧制御について説明する。なお、この後進時にあっても、ロックアップオフ状態であり、ソレノイドバルブSLから信号圧PSLが出力されずにソレノイドリレーバルブ23が左半位置であって油路d9からモジュレータ圧PMODがロックアップリレーバルブ21のロック油室21bに入力されて右半位置にロックされているので、リニアソレノイドバルブSLUの制御圧PSLUは自由に用いることができるが、本実施の形態では、第4ブレーキB−4を後進レンジ圧PRで急速係合しておき、第1ブレーキB−1をリニアソレノイドバルブSL4の制御圧PSL4を係合圧PB1として調圧制御することでショックを緩和した後進段の形成を行うので、リニアソレノイドバルブSLUの制御圧PSLUは用いない。
詳示には、例えば運転者によりニュートラルレンジの状態から後進レンジの状態にレンジ切換えが行われると、マニュアルバルブ25が後進レンジ位置となって、後進レンジ圧出力ポート25cからライン圧PLが後進レンジ圧PRとして出力され、油路c1,c2、チェックバルブ63、油路c3を介してB−4コントロールバルブ37の入力ポート37eに入力される。このB−4コントロールバルブ37は、制御圧PSLUが作動油室37aに入力されていないので、スプリング37sの付勢力に基づき左半位置となっており、連通ポート37dが遮断されて油路c7の後進レンジ圧PRは遮断されていると共に、入力ポート37eの後進レンジ圧PRが出力ポート37fから油路z1,z3に出力される。なお、油路z2を介してフィードバック油室37bにも後進レンジ圧PRが入力されるが、B−4コントロールバルブ37は左半位置のままであるので影響はない。
また、B1−B4アプライコントロールバルブ35も制御圧PSLUが作動油室35aに入力されていないので、スプリング35sの付勢力に基づき左半位置となっており、油路z3から入力ポート35cに入力された後進レンジ圧PRは、出力ポート35dから油路z1、上記のように左半位置のソレノイドリレーバルブ23の入力ポート23d及び出力ポート23e、油路t1を通って、第4ブレーキB−4の油圧サーボ56に供給される。これにより、後進レンジ圧PRは、マニュアルバルブ25から出力されてからオリフィス71を通ることもなく、第4ブレーキB−4は急係合されることになる。
一方、リニアソレノイドバルブSL4からは制御圧PSL4が第1ブレーキB−1の係合圧PB1として調圧出力される。すると、係合圧PB1は、上述のように正常時には右半位置にされたシーケンスバルブ32の入力ポート32f及び出力ポート32e、油路w1,w3、左半位置のB1−B4アプライコントロールバルブ35の入力ポート35e及び出力ポート35f、油路s1を通って、第1ブレーキB−1の油圧サーボ55に供給され、該第1ブレーキB−1が係合される。なお、係合圧PB1は、リニアソレノイドバルブSL4から大きな圧として出力されるので、油路w2を介してB−4アプライコントロールバルブ36の作動油室36bに入力されて、該B−4アプライコントロールバルブ36を右半位置に切換える。
ところで、B1−B4アプライコントロールバルブ35は、上述したニュートラル時で右半位置となって、リニアソレノイドバルブSL4の制御圧PSL4を第4ブレーキB−4の油圧サーボ56に振分け、この後進時で左半位置となって、制御圧PSL4を第1ブレーキB−1の油圧サーボ55に振分ける。そのため、例えばこのB1−B4アプライコントロールバルブ35が右半位置でバルブスティックしてしまうと、リニアソレノイドバルブSL4の制御圧PSL4が第4ブレーキB−4の油圧サーボ56に供給され、第4ブレーキB−4の係合は維持されるが、第1ブレーキB−1が係合できなくなる虞がある。
そこで、本油圧制御装置1では、マニュアルバルブ25の後進レンジ圧出力ポート25cから油路c1,c2,c4,c8,c9を介してB−4アプライコントロールバルブ36の入力ポート36gにも後進レンジ圧PRを入力し、さらに右半位置であるB−4アプライコントロールバルブ36の出力ポート36fから油路y1,y2,y3に後進レンジ圧PRを出力する。これにより、油路y2からB1−B4アプライコントロールバルブ35の入力ポート35gに後進レンジ圧PRが入力されるので、例えばこのB1−B4アプライコントロールバルブ35が右半位置でバルブスティックしても入力ポート35gの後進レンジ圧PRが出力ポート35f、油路s1を介して第1ブレーキB−1の油圧サーボ55に供給され、上記制御圧PSL4の第4ブレーキB−4の油圧サーボ56へ供給と相俟って、第1ブレーキB−1及び第4ブレーキB−4が係合され、つまり後進段の形成が補償される。
また更に、例えばソレノイドリレーバルブ23が右半位置でバルブスティックしたとしても、上述のように油路y3に後進レンジ圧PRが供給されているので、入力ポート23fの後進レンジ圧PRが出力ポート23e、油路t1を介して第4ブレーキB−4の油圧サーボ56に供給され、これによって第4ブレーキB−4の係合も補償される。
[後進段から第4ブレーキB−4の油圧をドレーンする際の作用]
ついで、上述した後進レンジの状態からニュートラルレンジの状態に切換えられた際の油圧制御について図3及び図4に沿って説明する。例えば図4の時点T1において、運転者により後進レンジの状態からニュートラルレンジの状態に切換えられると、リニアソレノイドバルブSL4は、係合圧PB1として出力していた制御圧PSL4が徐々に低くなるように調圧し、時点T2までに第1ブレーキB−1をスリップ制御しつつ解放させることでトルク変動が滑らかとなるように解放する。これにより、入力軸12(タービンランナ7b)の回転数Nt(以下、「タービン回転数」という)は、アイドル回転数であるエンジン回転数Neに比較的緩やかな勾配で滑らかに収束する。
この時点T1から時点2の間に、例えば後進レンジ圧PRで係合されていた第4ブレーキB−4が、先に後進レンジ圧PRが抜けることで急解放してしまうと、第1ブレーキB−1が緩やかに解放されるように調圧制御することが無意味になる。そのため、第4ブレーキB−4の油圧サーボ56に供給されていた後進レンジ圧PRは、第1ブレーキB−1の解放制御が終了する時点T2まで係合状態を維持し、その後、時点T3までに緩やかに抜けるように構成されている。
詳細には、図3に示すように、第4ブレーキB−4の油圧サーボ56の後進レンジ圧PR(油圧)は、油路t1、ソレノイドリレーバルブ23、油路x1、B1−B4アプライコントロールバルブ35、油路z3,z1、B−4コントロールバルブ37、油路c6,c3まで供給経路を逆流する形でマニュアルバルブ25の後進レンジ圧出力ポート25cに向かうが、チェックバルブ63によって逆流が防止されるため、オリフィス71が介在された油路c4、チェックバルブ62、油路c5,c1を通って、ニュートラル位置にされたマニュアルバルブ25の後進レンジ圧出力ポート25cから排出される。このようにオリフィス71を通過して第4ブレーキB−4の油圧サーボ56の後進レンジ圧PRがドレーンされるため、図4に示すように、リニアソレノイドバルブSL4による第1ブレーキB−1の解放制御が終了してから、第4ブレーキB−4が解放され、これによってトルクの急変動(トルク抜け)が発生することなく、後進段からニュートラル状態にされる。
[前進1速段のエンジンブレーキ時から第4ブレーキB−4の油圧をドレーンする際の作用]
次に、上述した前進1速段のエンジンブレーキ時から第4ブレーキB−4の係合圧PB4(油圧)をドレーンする際について、上記後進時の第4ブレーキB−4の後進レンジ圧PR(油圧)のドレーンと比較しつつ、図3乃至図5に沿って説明する。上記後進時における第4ブレーキB−4の後進レンジ圧PR(油圧)のドレーンは、上述のように油路t1、ソレノイドリレーバルブ23、油路x1、B1−B4アプライコントロールバルブ35、油路z3,z1、B−4コントロールバルブ37、油路c6,c3、オリフィス71が介在された油路c4、チェックバルブ62、油路c5,c1を通って、ニュートラル位置にされたマニュアルバルブ25の後進レンジ圧出力ポート25cから排出される。そのため、第4ブレーキB−4の解放は図4に示すように時点T1から時点T3までかけて比較的長時間で行われるが、前進1速段のエンジンブレーキ時から他の変速段への変速(例えば前進2速段への変速)の際に、同じ経路を用いてドレーンを行うと、オリフィス71を経由することになって、第4ブレーキB−4の解放が遅くなり、次の変速段(本実施の形態では前進2速段)の形成が遅れる虞がある。
そこで、本油圧制御装置1においては、前進1速段のエンジンブレーキ時から前進2速段への変速(1−2変速)する際は、油圧サーボ56からB−4コントロールバルブ37までは同じ経路を用いるが、オリフィス71を経由しないで迅速に第4ブレーキB−4の係合圧PB4(油圧)をドレーンする。
詳細には、図3に示すように、前進1速段のエンジンブレーキ時には、油路b6の前進レンジ圧PDをB−4コントロールバルブ37の作動油室37aに供給されるリニアソレノイドバルブSLUの制御圧PSLUによって調圧して出力している状態である。ここで、例えば時点Taにおいて運転者によりマニュアル変速指令される等して前進2速段への変速を判断すると、まず、リニアソレノイドバルブSLUを制御して、制御圧PSLUをスプリング37sの付勢力と釣り合う大きさに制御し、スプール37pを右半位置と左半位置との間の中間位置に調整する。
すると、出力ポート37fと入力ポート37e、入力ポート37eと連通ポート37d、連通ポート37dと連通ポート37c、がそれぞれ連通し、該出力ポート37fまで逆流してきた形の係合圧PB4は、該出力ポート37fから入力ポート37e、油路c6,c7、連通ポート37d、連通ポート37c、油路c10,c8、チェックバルブ62、油路c5,c1を通り、前進レンジ位置であるマニュアルバルブ25の後進レンジ圧出力ポート25cから排出される。これにより、第4ブレーキB−4の係合圧PB4(油圧)は、オリフィス71を経由することなく、図5に示す時点Taから時点Tbまでにおいて、迅速にドレーンされ、時点Tcまでに第2ブレーキB−2の係合圧PB2が上昇されて、タービン回転数Ntの回転変化が終了し、前進1速段のエンジンブレーキの状態から前進2速段へ迅速に変速を行うことが可能となる。
これにより、例えば上述の後進段からの第4ブレーキB−4の係合圧PB4(油圧)をドレーンする場合と同様にオリフィス71を通過するように係合圧PB4(油圧)をドレーンすると、図5に示すように時点Taから第4ブレーキB−4の係合圧PB4’のドレーンが開始されても時点Tdまでかかってしまうので、それに応じて変速が進行するように第2ブレーキB−2の係合圧PB2’の上昇も時点Tdまで長時間かけることになり、タービン回転数Nt’の変化も長時間かかるが、上述のようにオリフィス71を迂回して1−2変速を行うことで、時点Taから時点Tcまでに変速を完了することができ、迅速な変速を可能とすることができる。
なお、本油圧制御装置1では、後述するように後進段の形成を補償するため、図3に示すように、第4ブレーキB−4の係合圧PB4(油圧)をマニュアルバルブ25の後進レンジ圧出力ポート25cから排出しているが、連通ポート37cをそのままドレーンポートとして、そのまま第4ブレーキB−4の係合圧PB4(油圧)をドレーンしてもよい。
[B−4コントロールバルブの中間スティック時の作用]
ところで、上述のようにB−4コントロールバルブ37が右半位置と左半位置との間の中間位置であると、連通ポート37cが、出力ポート37fに連通し、つまり中間位置であると連通ポート37cは第4ブレーキB−4の油圧サーボ56に連通することになる。この際、例えば後進レンジの際に連通ポート37cがドレーンポートであって、B−4コントロールバルブ37が中間位置にバルブスティックすると、油路c1、c2、c3、c6を介して入力ポート37eに入力された後進レンジ圧PRが連通ポート37cからドレーンされて抜けてしまい、第4ブレーキB−4の油圧サーボ56に後進レンジ圧PRが供給できずに第4ブレーキB−4が係合できなくなる虞がある。そのため、本油圧制御装置1では、連通ポート37cとマニュアルバルブ25の後進レンジ圧出力ポート25cとを油路c1,c2,c4,c8,c10を介して接続しておく。これにより、例えばB−4コントロールバルブ37が中間位置にバルブスティックしたとしても、連通ポート37cに後進レンジ圧PRが供給され、入力ポート37eに入力された後進レンジ圧PRが抜けることなく、第4ブレーキB−4が係合でき、つまり後進レンジの際における後進段の形成を補償することができる。
[オールオフフェール時の作用]
ついで、本油圧制御装置1におけるオールオフフェール時の油圧制御について説明する。上述したように、正常時にエンジンが始動されると、一旦ソレノイドバルブSLがオンされて信号圧PSLがクラッチコントロールバルブ31の作動油室31aに供給され、スプリング31sの付勢力に抗して該クラッチコントロールバルブ31は右半位置にされると、油路d1,d4,d5,d6を介して入力ポート31hに入力されたモジュレータ圧PMODが入力ポート31bに入力されて信号圧PSLと相俟ってスプール31pを右半位置に移動駆動し、ロック油室31cにもモジュレータ圧PMODが入力され、次にエンジンが停止されるまで右半位置にロックされる。この状態で、マニュアルバルブ25が前進レンジ位置にされた状態では、前進レンジ圧出力ポート25bから出力された前進レンジ圧PDが油路b1,b3,b5を介して入力ポート31eに供給され、右半位置のクラッチコントロールバルブ31の出力ポート31fから油路q1に出力され、正常時に右半位置のシーケンスバルブ32の入力ポート32jで遮断されている状態となる。
この状態から、例えば全てのソレノイドバルブを非通電にするオールオフフェール状態に移行すると、ノーマルクローズタイプであるソレノイドバルブSLや、ノーマルクローズタイプであるリニアソレノイドバルブSLU,SL1,SL2,SL3,SL4が遮断され、ノーマルオープンタイプであるリニアソレノイドバルブSLTが全開にされる。すると、リニアソレノイドバルブSLTに入力されているモジュレータ圧PMODがSLT圧PSLTとしてシーケンスバルブ32の作動油室32aに入力され、該シーケンスバルブ32は左半位置に切換えられる。なお、ソレノイドバルブSLが遮断されてソレノイドリレーバルブ23が左半位置にされ、該ソレノイドリレーバルブ23からロックアップリレーバルブ21のロック油室21bにモジュレータ圧PMODが供給されるので、オールオフフェール状態ではロックアップオフ状態にロックされ、ロックアップクラッチ8の係合によるエンジンのストップなどが発生することが確実に防止される。
すると、油路a1,a3,a5を介してシーケンスバルブ32の入力ポート32dに入力されていたライン圧PLが出力ポート32eから油路w1,w3に出力され、左半位置であるB1−B4アプライコントロールバルブ35の入力ポート35e及び出力ポート35f、油路s1を介して第1ブレーキB−1の油圧サーボ55にライン圧PLが供給されて、該第1ブレーキB−1が係合状態にされる。
また、上述のようにクラッチコントロールバルブ31から油路q1を介してシーケンスバルブ32の入力ポート32jに入力されていた前進レンジ圧PDは、出力ポート32kから油路u1を介して第2クラッチC−2の油圧サーボ52に供給される。従って、前進レンジで走行中にオールオフフェール状態に移行した場合は、第2クラッチC−2と第1ブレーキB−1とが係合して前進5速段が達成される。
その後、例えば運転者がエンジンを一旦停止すると、モジュレータ圧PMODが発生しなくなるので、クラッチコントロールバルブ31のロック油室31cのモジュレータ圧PMODがドレーンされて、該クラッチコントロールバルブ31はスプリング31sの付勢力によって左半位置に切換えられる。その後、例えば運転者が再度エンジンを始動し、シフトレンジを前進レンジに切換えると、油路b5を介してクラッチコントロールバルブ31の入力ポート31eに入力される前進レンジ圧PDが、出力ポート31dから油路p1に出力され、上述のようにSLT圧PSLTで左半位置にされたシーケンスバルブ32の入力ポート32g及び出力ポート32hを通り、油路v1を介して第1クラッチC−1の油圧サーボ51に供給されて。該第1クラッチC−1が係合される。これにより、上述のようにライン圧PLで係合される第1ブレーキB−1と相俟って、前進3速段を形成し、車両の再発進を可能として、前進の縮退走行の実行を可能とする。
また、例えば運転者がシフトレンジを前進レンジからニュートラルレンジにすると、前進レンジ圧PDが発生しなくなるので、第1クラッチC−1が解放され、自動変速機2はニュートラル状態とされる。更に、例えば運転者がシフトレンジをニュートラルレンジから後進レンジにすると、後進レンジ圧PRが、マニュアルバルブ25から油路c1,c2,c3,c6を介してB−4コントロールバルブ37の入力ポート37eに入力され、出力ポート37fから油路z1,z3、B1−B4アプライコントロールバルブ35の入力ポート35c及び出力ポート35d、油路x1、ソレノイドリレーバルブ23の入力ポート23d及び出力ポート23e、油路t1を介して、第4ブレーキB−4の油圧サーボ56に供給され、該第4ブレーキB−4が係合される。これにより、上述のようにライン圧PLで係合される第1ブレーキB−1と相俟って、後進段を形成し、後進の縮退走行の実行を可能とする。
[本発明のまとめ]
以上説明した本油圧制御装置1によると、B−4コントロールバルブ37が、前進1速段のエンジンブレーキ時にて第4ブレーキB−4を係合する際に、制御圧PSLUによりスプール37pが左半位置と右半位置との中間位置とされ、入力ポート37gと出力ポート37fとが連通し、出力ポート37fと入力ポート37eとが連通し、連通ポート37dと連通ポート37cとが連通し、入力ポート37gからの前進レンジ圧PDの一部を連通ポート37cから排出するように構成されているので、例えばチェックボール機構などを設けずに構造の簡易化を図ることができるものでありながら、後進レンジ圧PRを排出する際にはオリフィス71経由で第4ブレーキB−4の油圧サーボ56の油圧の排出を行い、かつ前進レンジ圧PDを排出する際には迅速に第4ブレーキB−4の油圧サーボ56の油圧を排出することを可能とすることができる。これにより、後進レンジからニュートラルレンジへの移行時には、ショック発生の防止を図ることができるものでありながら、前進レンジにおいて前進1速段のエンジンブレーキ時の状態から他の状態(本実施の形態では、例えば前進2速段)への移行を迅速に行うことができる。
また、連通ポート37cが、後進レンジ圧出力ポート25cに連通されているので、例えば後進レンジにおいてB−4コントロールバルブ37が中間位置にバルブスティックしていたとしても、後進レンジ圧PRが第4ブレーキB−4の油圧サーボ56から抜けてしまうことの防止を図ることができ、つまりバルブスティック時の後進段の形成を保障することができる。
さらに、リニアソレノイドバルブSLUが、ロックアップクラッチ8の係合状態を変更するロックアップ係合圧PL−UPを調圧するための制御圧PSLUを出力するので、B−4コントロールバルブ37を切換えるための専用のソレノイドバルブを設けることを不要とすることができ、コストダウンやコンパクト化を図ることができる。
[他の実施の形態の可能性]
なお、以上説明した本実施の形態においては、前進6速段及び後進段を達成する自動変速機2に油圧制御装置1を適用したものを説明したが、これに限らず、例えば前進8速段及び後進段を達成する自動変速機など、どのような自動変速機であっても本発明を適用し得る。
また、以上説明した本実施の形態においては、ロックアップクラッチ8がトルクコンバータ7をロックアップするものを説明したが、トルクコンバータ7は、フルードカップリングなどの流体伝動装置であってもよく、ロックアップクラッチは流体伝動装置をロックアップするものであれば何でもよい。