JP6002727B2 - 末梢循環への骨髄由来多能性幹細胞動員薬 - Google Patents

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Description

本発明は、末梢循環への骨髄由来多能性幹細胞動員薬に関する。
近年、損傷組織の修復過程に種々の幹細胞が寄与していることが明らかとなり、損傷部位に幹細胞を多数動員することにより機能的組織再生を誘導する新たな再生医療の開発が進められつつある。この新しい再生医療を実現するためには、1)損傷部位に動員可能な幹細胞が生体内に豊富に存在すること、2)幹細胞を損傷部位に動員する因子が単離・同定されていることが必要である。
損傷部位に動員可能な幹細胞は、損傷部あるいはその近傍組織に存在する組織幹細胞と、末梢血中に存在する骨髄由来幹細胞がある。近年骨髄由来細胞が多くの損傷組織再生に寄与していることが報告されつつあるが、損傷組織への骨髄由来細胞動員機構については不明である。ここでいう骨髄由来細胞は血液細胞(白血球、赤血球)への分化能をもつ造血系幹細胞と区別され、これまで骨髄間葉系幹細胞と呼ばれている細胞に代表される幹細胞もしくは骨髄中に存在する組織前駆細胞集団を含む。骨髄間葉系幹細胞は骨芽細胞、脂肪細胞、軟骨細胞への分化能をもつ未分化幹細胞で、さらに線維芽細胞、筋肉細胞、ストローマ細胞、腱細胞等、その他の間葉系の細胞に分化することが可能とされている。近年では骨髄間葉系幹細胞が神経細胞、さらには上皮系細胞(皮膚ケラチノサイト等)や血管内皮細胞に分化することが証明されている(非特許文献9)。組織前駆細胞は、血液系以外の特定組織細胞への一方向性分化能を持つ未分化細胞と定義され、上述した間葉系組織、上皮系組織、神経組織、実質臓器、血管内皮への分化能を有する未分化細胞を含む。
HMGB1(High mobility group box 1:高移動性グループ1蛋白質)は生体内殆どすべての細胞に存在する分子量約25,000の蛋白質で、過去の報告によれば、1)細胞内でDNAと結合し、クロマチン構造を制御することにより遺伝子発現を調節している(非特許文献1)、2)炎症性サイトカインTNF-αやIL-1、LPSの作用により炎症組織に存在する単球やマクロファージから分泌され、細胞外においてRAGE(糖化最終産物受容体)に結合し(非特許文献2)強力な炎症反応を誘導する(非特許文献3)、3)疎血により壊死に陥った細胞から周囲の組織へと放出される(非特許文献4)、4)重症感染症である敗血症患者における炎症の進展に関与している(非特許文献5)、5)心筋梗塞モデルにおいて、梗塞部に投与することにより心筋内に存在する幹細胞の分裂・増殖を促進して心筋の再生・機能回復を促進する(特許文献1)、6)疎血肝臓モデル動物において、疎血状態作製前に前投与することにより、肝障害の程度を軽減する(非特許文献6)、7)筋肉損傷モデルにおいて、損傷部位に投与したHMGB1は同時に投与した血管前駆細胞を損傷部位に誘導し、筋組織再生を促進する(非特許文献7)、8)神経細胞において、神経突起の形成を誘導する(非特許文献8)、などの機能が知られている。しかし、骨髄由来幹細胞、特に骨芽細胞、軟骨細胞、脂肪細胞、などに分化可能な、いわゆる間葉系幹細胞を損傷組織に動員するという報告は過去にない。
従来、脳や脊髄の中枢神経細胞は一度障害を受けると、再生はおこらないとされてきた。しかし、近年神経幹細胞の存在およびこの誘導が可能になった。また、正常神経系での神経幹細胞ニッチも同定されてきた。このため、もはや不可能とされていた損傷中枢神経系細胞の回復も期待できるようになった。現在、脳脊髄損傷、変性疾患などに対する神経再生に関する研究が展開されている。
脳組織(細胞)損傷の原因としては、外傷による脳挫傷、脳虚血性疾患が主要なものである。他の原因として、脳腫瘍摘出手術をはじめとした脳外科的手術に起因するものがあげられる。とくに、脳実質細胞から発生するような、神経膠腫の全摘出は困難であり、運動や言語機能障害を避けるためには、姑息的摘出にとどまらざるを得えない。また、悪性神経膠腫は生命予後も悪く、化学療法や放射線療法をはじめ、近年研究が盛んに行われている免疫・遺伝子治療も十分な効果を示すまでには至っていない。よって、可及的に多くの腫瘍細胞の摘出を行い、その結果生じる脳機能損傷を回復させるような治療があれば理想的である。
特表2005-537253
Bustinら、 Mol Cell Biol、19:5237-5246、1999年 Horiら、J. Biol. Chem.、270、25752-25761、1995年 Wangら、Science、 285:248-251、1999年 Mullerら、EMBO J、20:4337-4340、2001年 Wangら、Science、 285:248-251、1999年 Germaniら、J Leukoc Biol. Jan;81(1):41-5、2007年 Palumboら、J. Cell Biol.、164:441-449、2004年 Merenmiesら、J. Biol. Chem.、266:16722-16729、1991年 Wu Yら、Stem cells、25:2648-2659、2007年
骨髄中の幹細胞には骨組織、軟骨組織、脂肪組織に分化可能な間葉系幹細胞の存在が知られている。近年、上皮系細胞や神経系の細胞に分化する多能性幹細胞が存在することも明らかとなった。
また、難治性皮膚潰瘍の治療法として植皮による治療がある。発明者らの研究により、潰瘍治療後の植皮片は、表皮、真皮、あるいは毛包(毛を構成する組織)などが骨髄由来の細胞によって再構築され、皮膚が再生されていることがあきらかになった。そこで、骨髄中の以上のような組織修復能を有する細胞群を簡便かつ効率的に回収する方法が期待されるが、現在そのような方法は開発されていないのが現状である。
したがって、本発明は、骨髄由来の多能性幹細胞を大量に末梢血中に動員する方法を提供することを課題とする。
本発明は、移植皮膚片が生体組織に生着する過程で、骨髄由来細胞が皮膚外組織から移植皮膚片に動員され、皮膚組織再生に関与している可能性を有することから、このような多能性を有する骨髄由来細胞を末梢血中に動員する機構があることを想定し、皮膚組織抽出液や骨髄由来多能性幹細胞誘導剤を静脈内から投与することで、骨髄由来の多能性幹細胞を大量に末梢血中に動員することを可能にした。具体的には、1)遊離皮膚片から抽出される組織抽出液を静脈内に投与することで、末梢血中に骨髄由来多能性組織幹細胞を誘導し、2)さらに遊離皮膚片中の骨髄由来多能性組織幹細胞を末梢血中に動員する物質はHMGB1であること、3)骨髄由来多能性幹細胞を末梢血中に動員する活性を有するHMGB1は培養細胞から簡便に精製できることを世界で初めて明らかにした。
本願は、この知見に基づき、以下の発明を提供するものである。
〔1〕以下の(a)から(i)のいずれかに記載の成分を含有し、血管または筋肉に投与される、骨髄細胞を骨髄から末梢血に動員するために用いる薬剤;
(a)HMGB1タンパク質
(b)HMGB1タンパク質を分泌する細胞
(c)HMGB1タンパク質をコードするDNAが挿入されたベクター
(d)HMGB2タンパク質
(e)HMGB2タンパク質を分泌する細胞
(f)HMGB2タンパク質をコードするDNAが挿入されたベクター
(g)HMGB3タンパク質
(h)HMGB3タンパク質を分泌する細胞
(i)HMGB3タンパク質をコードするDNAが挿入されたベクター。
〔2〕細胞又は組織を溶媒に浸す工程を含む方法で製造される細胞又は組織の抽出液を含有し、血管または筋肉に投与される、骨髄細胞を骨髄から末梢血に動員するために用いる薬剤。
〔3〕以下の工程を含む方法で製造されるヘパリン結合画分を含有し、血管または筋肉に投与される、骨髄細胞を骨髄から末梢血に動員するために用いる薬剤;
(a)細胞又は組織を溶媒に浸す工程、
(b)工程(a)で得られる抽出液を固定化ヘパリンに接触させる工程、および
(c)固定化ヘパリンからヘパリン結合画分を溶出する工程。
〔4〕以下の工程を含む、細胞又は組織の抽出液に骨髄細胞を骨髄から末梢血に動員する因子が含まれるか否かを評価する方法であって、工程(b)における骨髄細胞の骨髄から末梢血への動員活性が、対照と比較して高い場合に、細胞又は組織の抽出液に骨髄細胞を骨髄から末梢血に動員する因子が含まれると判定される方法;
(a)細胞又は組織の抽出液を調製する工程、および
(b)工程(a)で調製された抽出液による骨髄細胞の骨髄から末梢血への動員活性を測定する工程。
〔5〕以下の工程を含む、骨髄細胞を骨髄から末梢血に動員する因子が含まれる細胞又は組織の抽出液をスクリーニングする方法;
(a)複数の抽出液について、〔4〕に記載の方法で、該抽出液に骨髄細胞を骨髄から末梢血に動員する因子が含まれるか否かを評価する工程、および
(b)工程(a)で骨髄細胞を骨髄から末梢血に動員する因子が含まれると評価された抽出液を選択する工程。
〔6〕〔4〕または〔5〕に記載の方法によって、骨髄細胞を骨髄から末梢血に動員する因子を含むと判定された抽出液から、骨髄細胞の骨髄から末梢血への動員活性を指標に、骨髄細胞を骨髄から末梢血に動員する因子を精製する工程を含む、骨髄細胞を骨髄から末梢血に動員する因子の同定方法。
〔7〕血管または筋肉に投与される、以下の(a)から(i)のいずれかに記載の物質を含有する組成物を含む、骨髄細胞を骨髄から末梢血に動員するためのキット;
(a)HMGB1タンパク質
(b)HMGB1タンパク質を分泌する細胞
(c)HMGB1タンパク質をコードするDNAが挿入されたベクター
(d)HMGB2タンパク質
(e)HMGB2タンパク質を分泌する細胞
(f)HMGB2タンパク質をコードするDNAが挿入されたベクター
(g)HMGB3タンパク質
(h)HMGB3タンパク質を分泌する細胞
(i)HMGB3タンパク質をコードするDNAが挿入されたベクター。
〔8〕血管または筋肉に投与される、細胞又は組織を溶媒に浸す工程を含む方法で製造される細胞又は組織の抽出液を含む、骨髄細胞を骨髄から末梢血に動員するためのキット。
〔9〕血管または筋肉に投与される、以下の工程を含む方法で製造されるヘパリン結合画分を含む、骨髄細胞を骨髄から末梢血に動員するためのキット;
(a)細胞又は組織を溶媒に浸す工程、
(b)工程(a)で得られる抽出液を固定化ヘパリンに接触させる工程、および
(c)固定化ヘパリンからヘパリン結合画分を溶出する工程。
〔10〕以下の(a)から(i)のいずれかに記載の物質を血管または筋肉に投与する工程を含む、骨髄細胞を骨髄から末梢血に動員する方法;
(a)HMGB1タンパク質
(b)HMGB1タンパク質を分泌する細胞
(c)HMGB1タンパク質をコードするDNAが挿入されたベクター
(d)HMGB2タンパク質
(e)HMGB2タンパク質を分泌する細胞
(f)HMGB2タンパク質をコードするDNAが挿入されたベクター
(g)HMGB3タンパク質
(h)HMGB3タンパク質を分泌する細胞
(i)HMGB3タンパク質をコードするDNAが挿入されたベクター。
〔11〕細胞又は組織を溶媒に浸す工程を含む方法で製造される細胞又は組織の抽出液を血管または筋肉に投与する工程を含む、骨髄細胞を骨髄から末梢血に動員する方法。
〔12〕以下の工程を含む方法で製造されるヘパリン結合画分を血管または筋肉に投与する工程を含む、骨髄細胞を骨髄から末梢血に動員する方法;
(a)細胞又は組織を溶媒に浸す工程、
(b)工程(a)で得られる抽出液を固定化ヘパリンに接触させる工程、および
(c)固定化ヘパリンからヘパリン結合画分を溶出する工程。
〔13〕血管または筋肉に投与される、骨髄細胞を骨髄から末梢血に動員するために用いる薬剤の製造における、以下の(a)から(i)のいずれかに記載の物質の使用;
(a)HMGB1タンパク質
(b)HMGB1タンパク質を分泌する細胞
(c)HMGB1タンパク質をコードするDNAが挿入されたベクター
(d)HMGB2タンパク質
(e)HMGB2タンパク質を分泌する細胞
(f)HMGB2タンパク質をコードするDNAが挿入されたベクター
(g)HMGB3タンパク質
(h)HMGB3タンパク質を分泌する細胞
(i)HMGB3タンパク質をコードするDNAが挿入されたベクター。
〔14〕血管または筋肉に投与される、骨髄細胞を骨髄から末梢血に動員するために用いる薬剤の製造における、細胞又は組織を溶媒に浸す工程を含む方法で製造される細胞又は組織の抽出液の使用。
〔15〕血管または筋肉に投与される、骨髄細胞を骨髄から末梢血に動員するために用いる薬剤の製造における、以下の工程を含む方法で製造されるヘパリン結合画分の使用;
(a)細胞又は組織を溶媒に浸す工程、
(b)工程(a)で得られる抽出液を固定化ヘパリンに接触させる工程、および
(c)固定化ヘパリンからヘパリン結合画分を溶出する工程。
〔16〕血管または筋肉に投与される、骨髄細胞を骨髄から末梢血に動員する方法に使用するための、以下の(a)から(i)のいずれかに記載の物質;
(a)HMGB1タンパク質
(b)HMGB1タンパク質を分泌する細胞
(c)HMGB1タンパク質をコードするDNAが挿入されたベクター
(d)HMGB2タンパク質
(e)HMGB2タンパク質を分泌する細胞
(f)HMGB2タンパク質をコードするDNAが挿入されたベクター
(g)HMGB3タンパク質
(h)HMGB3タンパク質を分泌する細胞
(i)HMGB3タンパク質をコードするDNAが挿入されたベクター。
〔17〕血管または筋肉に投与される、骨髄細胞を骨髄から末梢血に動員する方法に使用するための、細胞又は組織を溶媒に浸す工程を含む方法で製造される細胞又は組織の抽出液。
〔18〕血管または筋肉に投与される、骨髄細胞を骨髄から末梢血に動員する方法に使用するための、以下の工程を含む方法で製造されるヘパリン結合画分;
(a)細胞又は組織を溶媒に浸す工程、
(b)工程(a)で得られる抽出液を固定化ヘパリンに接触させる工程、および
(c)固定化ヘパリンからヘパリン結合画分を溶出する工程。
HMGB1発現ベクターの図である。 マウス尾静脈から、皮膚抽出液(SE)を投与し、末梢血を採取する図である。 皮膚抽出液(SE)を投与後12時間後のマウス末梢血単核球画分を抗マウスPDGFRα抗体、抗マウスCD44抗体で蛍光標識し、フローサイトメトリーで分画した図である。上段3つは陰性コントロールのPBS投与群(n=3)、下段3つは皮膚抽出液(SE)投与群(n=3)である。縦軸はCD44の発現量を横軸はPDGFRαの発現量を示している。青腺で囲んだ部分がCD44陽性かつPDGFRα陽性細胞群を示し、皮膚抽出液投与群(SE)でPBS群に比して増加している。 マウス尾静脈から、HMGB1を投与し、末梢血を採取する図である。 HMGB1を投与後12時間のマウス末梢血単核球画分を抗マウスPDGFRα抗体、抗マウスCD44抗体で蛍光標識し、フローサイトメトリーで分画した図である。左は陰性コントロールのPBS投与マウス、右はHMGB1投与マウスの図である。縦軸はCD44の発現量を横軸はPDGFRαの発現量を示している。青線で囲んだ部分がCD44陽性かつPDGFRα陽性細胞群を示し、HMGB1投与マウスでPBS投与マウスに比して増加している。 新生マウス皮膚抽出液中のHMGBファミリーをWestern blot 法を用いて検出した写真である。 HEK293細胞に発現させた精製リコンビナントFlag tag-HMGBファミリー融合タンパク質のWestern blotの結果を示す写真である。 ボイデン・チャンバーを用いたリコンビナントHMGB1・HMGB2・HMGB3の骨髄間葉系幹細胞遊走活性を示す図である。いずれのリコンビナントタンパク質もコントロール群に比べ遊走活性を示した。 マウスの皮膚潰瘍治療モデルにおけるHMGB ファミリーによる治療結果を示す図である。HMGB1・HMGB2・HMGB3いずれもコントロール群に比べ有意に潰瘍面積の縮小効果を示した。 ヒトHMGB1及びヒト皮膚抽出液がヒト骨髄由来間葉系幹細胞を遊走する活性をボイデン・チャンバーを用いて確認した写真である。 マウス心臓、マウス脳及びマウス皮膚抽出液中の骨髄間葉系幹細胞誘導活性物質をヘパリンカラムで精製し、ボイデン・チャンバーを用いて、活性を確認した写真である。 培養細胞株HEK293およびHeLa抽出液のヒト骨髄間葉系幹細胞遊走活性をボイデン・チャンバー法を用いて確認した写真である。いずれの培養細胞株もヒト骨髄間葉系幹細胞遊走活性を示した。 Aはマウスを脳定位固定装置に固定し、メスにて頭部に正中切開しドリルを用いて穿頭を施した写真である。Bは脳にシリンジを用いて、陰圧をかけ、脳組織を一部吸引した写真である。Cはフィブリン糊製剤(フィブリノゲン)に溶解した皮膚抽出液ヘパリンカラム精製画分を5μl注入し、次にフィブリン糊製剤(トロンビン)を5μl注入した後の写真である。DおよびEは脳損傷モデル治療後2週間後の写真である。コントロールのDに比べ皮膚抽出液ヘパリンカラム精製画分による治療群のEでGFP陽性細胞の集積が認められた。FおよびGは脳損傷モデル治療後6週間後の写真である。コントロールのFに比べ皮膚抽出液ヘパリンカラム精製画分による治療群のGでGFP陽性細胞の集積が認められた。 AはCD44およびPDGFRαをもつ細胞の存在頻度を表したフローサイトメトリーの結果を示す図である。末梢血中のPDGFRα陽性かつCD44陽性細胞およびPDGFRα陽性かつCD44陰性細胞いずれの細胞群もHMGB1投与によって増加している。BはPDGFRα陽性かつCD44陽性細胞、CはPDGFRα陽性かつCD44陰性細胞についてそれぞれPBS投与群とHMGB1投与群で末梢血中の出現頻度を比較した結果を示す図である。いずれの細胞群においても、HMGB1投与群において統計的有意に増加している。
本発明は、以下の(a)から(i)のいずれかに記載の成分を含有し、血管または筋肉に投与される、骨髄細胞を骨髄から末梢血に動員するために用いる薬剤を提供する。
(a)HMGB1タンパク質
(b)HMGB1タンパク質を分泌する細胞
(c)HMGB1タンパク質をコードするDNAが挿入されたベクター
(d)HMGB2タンパク質
(e)HMGB2タンパク質を分泌する細胞
(f)HMGB2タンパク質をコードするDNAが挿入されたベクター
(g)HMGB3タンパク質
(h)HMGB3タンパク質を分泌する細胞
(i)HMGB3タンパク質をコードするDNAが挿入されたベクター
上記薬剤を血管または筋肉に投与することにより、末梢循環中に骨髄組織幹細胞が動員され、損傷組織の再生を促進することができる。また、上記薬剤には、機能的組織再生誘導・促進剤としての用途のみならず、組織幹細胞の減少による組織・臓器機能の低下を予防する、いわゆる予防医薬としての用途、あるいは加齢性変化の進行を遅延させる、抗加齢医薬としての用途が期待できる。
また上記薬剤を投与し、末梢血中に動員した多能性幹細胞を体外へ回収後、濃縮して損傷部位に投与して治療することも可能である。従来の骨髄間葉系幹細胞治療では体内深部にある骨髄から細胞を回収するため生体に対して侵襲があるが、本発明の薬剤を用いれば、低侵襲に骨髄間葉系幹細胞を末梢血から回収し、骨髄間葉系幹細胞移植等に利用できる。
本発明は、細胞又は組織を溶媒に浸す工程を含む方法で製造される細胞又は組織の抽出液を含有し、血管または筋肉に投与される、骨髄細胞を骨髄から末梢血に動員するために用いる薬剤に関する。
溶媒に浸される細胞又は組織としては、特に制限はないが、組織由来細胞、組織由来細胞から樹立された株化細胞(例えば、HeLa、HEK293が例示できるが、これらに制限されない)、単離された細胞、単離されていない細胞(例えば単離された組織中に存在する細胞)、HMGB1、HMGB2、またはHMGB3タンパク質をコードするDNAが導入された細胞などが例示できる。上記組織としては、どのような組織でもよく、例えば、生体皮膚組織、体内生検(手術)組織(脳、肺、心臓、肝臓、胃、小腸、大腸、膵臓、腎臓、膀胱、脾臓、子宮、精巣や血液など)が例示できるが、これらに制限されるものではない。
上記溶媒としては生理食塩水、PBS(Phosphate-buffered saline)、TBS(Tris-buffered saline)が例示できるが、これらに制限されない。また、細胞や組織を溶媒に浸す時間としては、細胞壊死が誘導されるために必要・十分な時間、すなわち1時間から48時間(例えば6時間から48時間)、好ましくは12から24時間であるが、この時間に限定されるものではない。よって、「細胞を溶媒に浸す工程」は「壊死が誘導されるために必要・十分な時間、細胞を溶媒に浸す工程」や「細胞を壊死させる工程」と言い換えることができる。また、細胞や組織を溶媒に浸す温度として4℃から25℃(例えば4℃から8℃)、好ましくは4℃が例示できるが、これに制限されない。また、細胞や組織を溶媒に浸すpHとしてはpH7から8、好ましくはpH7.5が例示できるが、これに制限されない。また、緩衝液の成分として、10 mM〜50 mM、好ましくは10〜20 mMの濃度のリン酸緩衝液が挙げられるが、これに制限されない。
また、本発明においては、細胞や組織を溶媒に浸した後に、細胞や組織を含む溶媒から該細胞や該組織を取り除くこともできる。溶媒から細胞や組織を取り除く方法は当業者に周知な方法であれば、特に制限されない。例えば、4℃〜25℃(例えば4℃)、また重力加速度10G〜10万G(例えば440G)で遠心し、上清を分取することにより、溶媒から細胞や組織を取り除くことができるが、これに制限されない。該上清を細胞や組織の抽出液として利用できる。
本発明で用いられる細胞又は組織を溶媒に浸す工程を含む方法で製造される細胞又は組織の抽出液としては、例えば、皮膚抽出液や末梢血単核球抽出液(末梢血抽出液)が挙げられるが、これらに制限されない。
末梢血抽出液の調整方法は、注射器などを用いて採血した後、冷凍庫や液体窒素、ドライアイスなどで細胞を凍結し、その後0℃以上の温度下で再融解する。さらに、細胞の不溶成分を取り除くために、例えば、4℃〜25℃(例えば4℃)、また重力加速度10G〜100000G(例えば440G)で遠心し、上清を分取することにより、溶媒から細胞の不溶成分を取り除くことができるが、これに制限されない。該上清を細胞や組織の抽出液として利用できる。細胞の不溶成分を除去するためには、遠心操作の代わりに、0.45μmの微少の孔をもつニトロセルロースフィルターなどを通過させることで、不溶成分を取り除くことができる。また、採血した末梢血を3時間から48時間4℃の状態に置くことで、細胞の壊死を誘発し、末梢血中の細胞から細胞内成分を分泌させることができる。この後重力加速度10G〜100000G(例えば440G)で遠心し、上清を分取することにより、溶媒から細胞の不溶成分を取り除くことができるが、これに制限されない。該上清を細胞や組織の抽出液として利用できる。細胞の不溶成分を除去するためには、遠心操作の代わりに、0.45μmの微少の孔をもつニトロセルロースフィルターなどを通過させることで、不溶成分を取り除くことができる。
また末梢血単核球から細胞抽出液を調整する方法は、注射器などを用いて末梢血全血を採取した後PBSにて全量を4mLに希釈し、遠心管にFicoll-Paque Plus(GE)液を3mL 挿入後その上に希釈血液を重層する。400G (18℃)で40分間遠心し、単核球を含む中間層を新しい遠心管に回収し、45 mL のPBSを加え800G(18℃)5分で遠心し上清を除去する。さらにもう一度45 mL のPBSを加え800G(18℃)5分で遠心し上清を除去する。沈殿した細胞に200μLのPBSを加え懸濁する。細胞懸濁液は-80℃の冷凍庫内において30分間凍結し、冷凍庫から氷上で融解する。この凍結融解の操作を3回繰り返す。さらに800G(4℃)15分で遠心して上清を回収する。細胞を凍結する代わりに、4℃の冷蔵庫に3時間から48時間置くことで細胞の壊死を誘発し細胞内成分を分泌させることができる。また、氷上で冷却しながら、超音波処理を行うことで細胞を破壊し細胞内成分を細胞外へ出すことができる。いずれの場合も細胞内成分を細胞外へ出した後、重力加速度440Gから1000000G好ましくは100000Gから20000Gで遠心操作をおこないその上清を回収して細胞抽出液とする。また、遠心操作の代わりに、0.45μmの微少の孔をもつニトロセルロースフィルターもしくはセルロースアセテートなどを通過させることで、不溶成分を取り除き細胞抽出液とすることができる。
さらに、本発明は、以下の工程を含む方法で製造されるヘパリン結合画分を含有し、血管または筋肉に投与される、骨髄細胞を骨髄から末梢血に動員するために用いる薬剤に関する。
(a)細胞又は組織を溶媒に浸す工程
(b)工程(a)で得られる抽出液を固定化ヘパリンに接触させる工程、および
(c)固定化ヘパリンからヘパリン結合画分(ヘパリン精製画分、ヘパリンカラム精製画分とも表現しうる)を溶出する工程。
固定化ヘパリンとは、ヘパリンを不溶性担体に共有結合させたものである。上記不溶性担体としては、Sepharose beads(Sepharose 4B,Sepharose 6B等:GE Healthcare)が例示されるが、これに制限されるものではない。本発明においては、市販の固定化ヘパリン(Hitrap Hepalin HP column: GE Healthcare)を用いてもよい。
細胞や組織の抽出液と固定化ヘパリンの接触条件としては、pH 7〜8程度(好ましくはpH 7.5)、塩濃度は0〜200 mM、好ましくは100〜200 mM程度が例示されるが、これらに制限されない。抽出液と固定化ヘパリンとが接触している時間は特に限定されないが、ヘパリン結合画分を固定化ヘパリンに十分吸着させるという観点では5分以上保持されることが好ましい。また、温度としては、4〜8℃、好ましくは4℃が挙げられるが、これらに制限されない。さらに、固定化ヘパリンに吸着したヘパリン結合画分の溶出条件としては、pH 7〜8程度、塩濃度200〜1000 mM(好ましくは1000 mM程度)が例示されるが、これらに制限されるものではない。
上記抽出液もしくは上記画分を含有する薬剤を血管または筋肉に投与することにより、末梢循環中に骨髄組織幹細胞が動員され、損傷組織の再生を促進することができる。また、上記薬剤には、機能的組織再生誘導・促進剤としての用途のみならず、組織幹細胞の減少による組織・臓器機能の低下を予防する、いわゆる予防医薬としての用途、あるいは加齢性変化の進行を遅延させる、抗加齢医薬としての用途が期待できる。
また上記薬剤を投与し、末梢血中に動員した多能性幹細胞を体外へ回収後、濃縮して損傷部位に投与して治療することも可能である。従来の骨髄間葉系幹細胞治療では体内深部にある骨髄から細胞を回収するため生体に対して侵襲があるが、本発明の薬剤を用いれば、低侵襲に骨髄間葉系幹細胞を末梢血から回収し、骨髄間葉系幹細胞移植等に利用できる。
本発明はまた、血管または筋肉に投与される、以下の(a)から(i)のいずれかに記載の物質を含有する組成物を含む、骨髄細胞を骨髄から末梢血に動員するためのキットを提供する。
(a)HMGB1タンパク質
(b)HMGB1タンパク質を分泌する細胞
(c)HMGB1タンパク質をコードするDNAが挿入されたベクター
(d)HMGB2タンパク質
(e)HMGB2タンパク質を分泌する細胞
(f)HMGB2タンパク質をコードするDNAが挿入されたベクター
(g)HMGB3タンパク質
(h)HMGB3タンパク質を分泌する細胞
(i)HMGB3タンパク質をコードするDNAが挿入されたベクター
本発明はまた、血管または筋肉に投与される、細胞又は組織を溶媒に浸す工程を含む方法で製造される細胞又は組織の抽出液を含む、骨髄細胞を骨髄から末梢血に動員するためのキットを提供する。
本発明はまた、血管または筋肉に投与される、以下の工程を含む方法で製造されるヘパリン結合画分を含む、骨髄細胞を骨髄から末梢血に動員するためのキットを提供する。
(a)細胞又は組織を溶媒に浸す工程、
(b)工程(a)で得られる抽出液を固定化ヘパリンに接触させる工程、および
(c)固定化ヘパリンからヘパリン結合画分を溶出する工程。
上記の末梢血への骨髄細胞動員用キットは、血管または筋肉に投与されることで、末梢循環中に骨髄組織幹細胞を動員することを特徴とする。
上記キットとしては、(1)フィブリノゲンに溶解した上記抽出液もしくは上記画分等、および(2)トロンビンを含む組織再生促進用キット、または、(1)上記抽出液もしくは上記画分等、(2)フィブリノゲン、および(3)トロンビンを含む組織再生促進用キットが例示できる。本発明においては、市販のフィブリノゲンやトロンビンを使用することができる。例えば、フィブリノゲンHT-Wf(ベネシスー三菱ウェルファーマー)、ベリプラスト(ZLBベーリング)、ティシール(バクスター)、ボルヒール(化血研)、タココンブ(ZLBベーリング)が挙げられるが、これらに制限されるものではない。
損傷組織に動員された骨髄由来細胞は、種々の細胞に分化し、損傷組織の機能的再生および機能維持、機能強化に寄与する。本発明において、損傷組織としては、虚血、疎血・低酸素状態をきたす種々の病態、外傷、熱傷、炎症、自己免疫、遺伝子異常などによって損傷した組織が挙げられるが、これら原因に限定されるものではない。また、損傷組織には、壊死組織も含まれる。
本発明における組織としては、骨髄由来細胞が分化可能な組織である限り、特に制限はないが、例えば皮膚組織、骨組織、軟骨組織、筋組織、脂肪組織、心筋組織、神経系組織、肺組織、消化管組織、肝・胆・膵組織、泌尿・生殖器など、生体内のすべての組織が例示できる。また、上記組織再生促進剤を用いることで、難治性皮膚潰瘍、皮膚創傷、水疱症、脱毛症などの皮膚疾患はもとより、脳梗塞、心筋梗塞、骨折、肺梗塞、胃潰瘍、腸炎、などの組織損傷において、機能的組織再生を誘導する治療が可能となる。上記組織再生促進剤が投与される動物種としては、ヒト又は非ヒト動物が挙げられ、例えば、ヒト、マウス、ラット、サル、ブタ、イヌ、ウサギ、ハムスター、モルモットなどが例示できるが、これらに限定されるものではない。
本発明の骨髄細胞は、造血系幹細胞及びこれに由来する白血球、赤血球、血小板以外の細胞であり、これまで骨髄間葉系幹細胞あるいは骨髄間質多能性幹細胞あるいは骨髄多能性幹細胞と呼ばれている細胞に代表される幹細胞もしくは骨髄中に存在する組織前駆細胞集団を含む。本発明の骨髄細胞としては、骨髄採取(骨髄細胞採取)、あるいは末梢血採血により単離することができる細胞である。造血系幹細胞は非付着細胞であり、本発明の骨髄細胞は、骨髄採取(骨髄細胞採取)、末梢血採血により得られた血液中の単核球分画細胞培養により付着細胞として得られる。また、本発明の骨髄細胞は間葉系幹細胞を含み、骨芽細胞(分化を誘導するとカルシウムの沈着を認めることで特定可能)、軟骨細胞(アルシアンブルー染色陽性、サフラニン-O染色陽性などで特定可能)、脂肪細胞(ズダンIII染色陽性で特定可能)、さらには線維芽細胞、平滑筋細胞、ストローマ細胞、腱細胞、などの間葉系細胞、さらには神経細胞、上皮細胞(たとえば表皮角化細胞、腸管上皮細胞はサイトケラチンファミリーを発現する)、血管内皮細胞への分化能力を有することが好ましいが、分化後の細胞は上記細胞に限定されるものではなく、肝臓、腎臓、膵臓などの実質臓器細胞への分化能も含む。
本発明において、骨髄由来間葉系幹細胞あるいは骨髄間質多能性細胞あるいは骨髄多能性幹細胞とは、骨髄内に存在する細胞であって、骨髄から直接あるいはその他の組織(血液や皮膚、脂肪、その他の組織)から間接的に採取され、(プラスチックあるいはガラス製)培養皿への付着細胞として培養・増殖可能であり、骨、軟骨、脂肪などの間葉系組織(間葉系幹細胞)、あるいは骨格筋、心筋、さらには神経組織、上皮組織(多能性幹細胞)への分化能を有するという特徴を持つ細胞であり、骨髄血採血、末梢血採血、さらには脂肪など間葉組織、皮膚などの上皮組織、脳などの神経組織からの採取によって取得することができる。また骨髄由来間葉系幹細胞あるいは骨髄由来多能性幹細胞あるいは骨髄多能性幹細胞は一度培養皿へ付着させた細胞を生体の損傷部に投与することにより、例えば皮膚を構成するケラチノサイトなどの上皮系組織、脳を構成する神経系の組織への分化能も有するという特徴も持つ。
本発明の骨髄間葉系幹細胞あるいは骨髄間質多能性幹細胞あるいは骨髄多能性幹細胞は、骨芽細胞(分化を誘導するとカルシウムの沈着を認めること等で特定可能)、軟骨細胞(アルシアンブルー染色陽性、サフラニン-O染色陽性等で特定可能)、脂肪細胞(ズダンIII染色陽性等で特定可能)の他に、例えば線維芽細胞、平滑筋細胞、骨格筋細胞、ストローマ細胞、腱細胞などの間葉系細胞、神経細胞、色素細胞、表皮細胞、毛包細胞(サイトケラチンファミリー、ヘアケラチンファミリー等を発現する)、上皮系細胞(たとえば表皮角化細胞、腸管上皮細胞はサイトケラチンファミリー等を発現する)、内皮細胞、さらに肝臓、腎臓、膵臓等の実質臓器細胞に分化する能力を有することが好ましいが、分化後の細胞は上記細胞に限定されるものではない。
また、ヒト骨髄間葉系幹細胞あるいは骨髄間質多能性幹細胞あるいは骨髄多能性幹細胞は骨髄採取(骨髄細胞採取)、末梢血採血、脂肪採取し、直接あるいは単核球分画を分離後に培養して付着細胞として取得することができる細胞が例示できるが、これに制限されるものではない。ヒト骨髄間葉系幹細胞あるいは骨髄間質多能性幹細胞あるいは骨髄多能性幹細胞のマーカーとしては、Lin陰性、CD45陰性、CD44陽性、の全部または一部が例示できるが、これらに制限されるものではない。
また、マウス骨髄間葉系幹細胞あるいは骨髄間質多能性幹細胞あるいは骨髄多能性幹細胞は、例えば、実施例に記載の方法によって取得できる細胞が例示できるが、これに制限されるものではない。マウス骨髄間葉系幹細胞あるいは骨髄間質多能性幹細胞あるいは骨髄多能性幹細胞のマーカーとしては、CD44陽性、PDGFRα陽性、PDGFRβ陽性、CD45陰性、Lin陰性、Sca-1陽性、c-kit陰性、の全部または一部が例示できるが、これらに制限されるものではない。
組織前駆細胞は、血液系以外の特定組織細胞への一方向性分化能を持つ未分化細胞と定義され、上述した間葉系組織、上皮系組織、神経組織、実質臓器、血管内皮への分化能を有する未分化細胞を含む。
本発明の薬剤において、上記抽出液、上記ヘパリン結合画分または、上記(a)から(i)に記載の成分のうち少なくとも1つの成分以外の成分としては、骨髄細胞の動員や組織再生促進を阻害しない限り、特に制限はない。例えば、本発明の薬剤には、上記抽出液、上記ヘパリン結合画分または、上記(a)から(i)に記載の成分のうちの少なくとも1つの成分に加え、HMGB1、HMGB2、またはHMGB3の機能的組織再生誘導機能を強化する関連分子(群)、HMGB1、HMGB2、またはHMGB3の期待される効果以外の作用を抑制する分子(群)、骨髄細胞の増殖や分化を制御する因子、これら因子あるいは細胞の機能を強化・維持するその他の因子を含むことが可能である。
本発明の薬剤における抽出液、ヘパリン結合画分、HMGB1、HMGB2、またはHMGB3タンパク質の起源となる動物種としては、ヒト又は非ヒト動物が挙げられ、例えば、ヒト、マウス、ラット、サル、ブタ、イヌ、ウサギ、ハムスター、モルモットなどが例示できるが、上記抽出液等が投与される動物種と同じ動物種であることが好ましい。
本発明の薬剤におけるHMGB1タンパク質としては、配列番号:1、3または5に記載のアミノ酸配列を含むタンパク質が例示できるが、これらに限定されるものではない。本発明のHMGB1タンパク質には、配列番号:1、3または5に記載のアミノ酸配列を含むタンパク質と機能的に同等なタンパク質も含まれる。そのようなタンパク質としては、例えば、1)配列番号:1、3または5に記載のアミノ酸配列において1若しくは複数のアミノ酸が置換、欠失、挿入、および/または付加したアミノ酸配列からなり、配列番号:1、3または5に記載のアミノ酸配列を含むタンパク質と機能的に同等な単離されたタンパク質、および、2)配列番号:2、4または6に記載の塩基配列を含むDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズするDNAによりコードされるタンパク質であって、配列番号:1、3または5に記載のアミノ酸配列を含むタンパク質と機能的に同等な単離されたタンパク質が挙げられる。
本発明の薬剤におけるHMGB2タンパク質としては、配列番号:7、9または11に記載のアミノ酸配列を含むタンパク質が例示できるが、これらに限定されるものではない。本発明のHMGB2タンパク質には、配列番号:7、9または11に記載のアミノ酸配列を含むタンパク質と機能的に同等なタンパク質も含まれる。そのようなタンパク質としては、例えば、1)配列番号:7、9または11に記載のアミノ酸配列において1若しくは複数のアミノ酸が置換、欠失、挿入、および/または付加したアミノ酸配列からなり、配列番号:7、9または11に記載のアミノ酸配列を含むタンパク質と機能的に同等な単離されたタンパク質、および、2)配列番号:8、10または12に記載の塩基配列を含むDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズするDNAによりコードされるタンパク質であって、配列番号:7、9または11に記載のアミノ酸配列を含むタンパク質と機能的に同等な単離されたタンパク質が挙げられる。
本発明の薬剤におけるHMGB3タンパク質としては、配列番号:13または15に記載のアミノ酸配列を含むタンパク質が例示できるが、これらに限定されるものではない。本発明のHMGB3タンパク質には、配列番号:13または15に記載のアミノ酸配列を含むタンパク質と機能的に同等なタンパク質も含まれる。そのようなタンパク質としては、例えば、1)配列番号:13または15に記載のアミノ酸配列において1若しくは複数のアミノ酸が置換、欠失、挿入、および/または付加したアミノ酸配列からなり、配列番号:13または15に記載のアミノ酸配列を含むタンパク質と機能的に同等な単離されたタンパク質、および、2)配列番号:14または16に記載の塩基配列を含むDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズするDNAによりコードされるタンパク質であって、配列番号:13または15に記載のアミノ酸配列を含むタンパク質と機能的に同等な単離されたタンパク質が挙げられる。
配列番号:1、3、5、7、9、11、13または15に記載のアミノ酸配列を含むタンパク質と機能的に同等な単離されたタンパク質は、配列番号:1、3、5、7、9、11、13または15に記載のアミノ酸配列を含むタンパク質のホモログあるいはパラログでありうる。配列番号:1、3、5、7、9、11、13または15に記載のアミノ酸配列を含むタンパク質と機能的に同等なタンパク質は、当業者によって公知の方法(実験医学別冊・遺伝子工学ハンドブック, pp246-251、羊土社、1991年発行)で単離することができる。
配列番号:1、3、5、7、9、11、13または15に記載のアミノ酸配列を含むタンパク質と機能的に同等なタンパク質としては、骨髄由来細胞の誘導活性を有するタンパク質が挙げられる。
配列番号:1、3、5、7、9、11、13または15に記載のアミノ酸配列において1若しくは複数のアミノ酸が置換、欠失、挿入、および/または付加したアミノ酸配列からなり、配列番号:1、3、5、7、9、11、13または15に記載のアミノ酸配列を含むタンパク質と機能的に同等なタンパク質は、天然に存在するタンパク質を含む。一般に真核生物の遺伝子は、インターフェロン遺伝子等で知られているように、多型現象(polymorphism)を有する。この多型現象によって生じた塩基配列の変化によって、1または複数個のアミノ酸が、置換、欠失、挿入、および/または付加される場合がある。このように自然に存在するタンパク質であって、かつ配列番号:1、3、5、7、9、11、13または15に記載のアミノ酸配列において1若しくは複数のアミノ酸が、置換、欠失、挿入、および/または付加したアミノ酸配列を有し、配列番号:1、3、5、7、9、11、13または15に記載のアミノ酸配列からなるタンパク質と機能的に同等なタンパク質は、本発明のHMGB1、HMGB2、またはHMGB3タンパク質に含まれる。
また、配列番号:1、3、5、7、9、11、13または15に記載のアミノ酸配列からなるタンパク質と機能的に同等なタンパク質である限り、人為的に作製された変異タンパク質も本発明に含まれる。与えられた塩基配列に対してランダムに変異を加える方法としては、たとえばDNAの亜硝酸処理による塩基対の置換が知られている(Hirose, S. et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA., 79:7258-7260, 1982)。この方法では、変異を導入したいセグメントを亜硝酸処理することにより、特定のセグメント内にランダムに塩基対の置換を導入することができる。あるいはまた、目的とする変異を任意の場所にもたらす技術としてはgapped duplex法等がある(Kramer W. and Fritz HJ., Methods in Enzymol., 154:350-367, 1987)。変異を導入すべき遺伝子をクローニングした環状2本鎖のベクターを1本鎖とし、目的とする部位に変異を持つ合成オリゴヌクレオチドをハイブリダイズさせる。制限酵素により切断して線状化させたベクター由来の相補1本鎖DNAを、前記環状1本鎖ベクターにアニールさせ、前記合成ヌクレオチドとの間のギャップをDNAポリメラーゼで充填し、更にライゲーションすることにより完全な2本鎖環状ベクターとする。
改変されるアミノ酸の数は、典型的には50アミノ酸以内であり、好ましくは30アミノ酸以内であり、さらに好ましくは5アミノ酸以内(例えば、1アミノ酸)であると考えられる。
アミノ酸を人為的に置換する場合、性質の似たアミノ酸に置換すれば、もとのタンパク質の活性が維持されやすいと考えられる。本発明のタンパク質には、上記アミノ酸置換において保存的置換が加えられたタンパク質であって、配列番号:1、3、5、7、9、11、13または15に記載のアミノ酸配列を含むタンパク質と機能的に同等なタンパク質が含まれる。保存的置換は、タンパク質の活性に重要なドメインのアミノ酸を置換する場合などにおいて重要であると考えられる。このようなアミノ酸の保存的置換は、当業者にはよく知られている。
保存的置換に相当するアミノ酸のグループとしては、例えば、塩基性アミノ酸(例えばリジン、アルギニン、ヒスチジン)、酸性アミノ酸 (例えばアスパラギン酸、グルタミン酸)、非荷電極性アミノ酸 (例えばグリシン、アスパラギン、グルタミン、セリン、スレオニン、チロシン、システイン)、非極性アミノ酸 (例えばアラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、プロリン、フェニルアラニン、メチオニン、トリプトファン)、β分岐アミノ酸 (例えばスレオニン、バリン、イソロイシン)、および芳香族アミノ酸 (例えばチロシン、フェニルアラニン、トリプトファン、ヒスチジン)などが挙げられる。
また、非保存的置換によりタンパク質の活性などをより上昇(例えば恒常的活性化型タンパク質などを含む)させることも考えられる。
この他、配列番号:1、3、5、7、9、11、13または15に記載のアミノ酸配列を含むタンパク質と機能的に同等なタンパク質を得る方法として、ハイブリダイゼーションを利用する方法を挙げることができる。すなわち、配列番号:2、4、6、8、10、12、14または16に示すような本発明によるHMGB1、HMGB2、またはHMGB3タンパク質をコードするDNA、あるいはその断片をプローブとし、これとハイブリダイズすることができるDNAを単離する。ハイブリダイゼーションをストリンジェントな条件下で実施すれば、塩基配列としては相同性の高いDNAが選択され、その結果として単離されるタンパク質にはHMGB1、HMGB2、またはHMGB3タンパク質と機能的に同等なタンパク質が含まれる可能性が高まる。相同性の高い塩基配列とは、たとえば70%以上、望ましくは90%以上の同一性を示すことができる。
なおストリンジェントな条件とは、具体的には例えば 6×SSC、40%ホルムアミド、25℃でのハイブリダイゼーションと、1×SSC、55℃での洗浄といった条件を示すことができる。ストリンジェンシーは、塩濃度、ホルムアミドの濃度、あるいは温度といった条件に左右されるが、当業者であればこれらの条件を必要なストリンジェンシーを得られるように設定することは自明である。
ハイブリダイゼーションを利用することによって、たとえば配列番号:1、3、5、7、9、11、13または15に記載のアミノ酸配列を含むタンパク質以外のHMGB1、HMGB2、またはHMGB3タンパク質のホモログをコードするDNAの単離が可能である。
配列番号:1、3、5、7、9、11、13または15に記載のアミノ酸配列を含むタンパク質と機能的に同等なタンパク質は、通常、配列番号:1、3、5、7、9、11、13または15に記載のアミノ酸配列と高い相同性を有する。高い相同性とは、少なくとも30%以上、好ましくは50%以上、さらに好ましくは80%以上(例えば、95%以上)の配列の同一性を指す。塩基配列やアミノ酸配列の同一性は、インターネットを利用したホモロジー検索サイトを利用して行うことができる[例えば日本DNAデータバンク(DDBJ)において、FASTA、BLAST、PSI-BLAST、および SSEARCH 等の相同性検索が利用できる[例えば日本DNAデータバンク(DDBJ)のウェブサイトの相同性検索(Search and Analysis)のページ ; http://www.ddbj.nig.ac.jp/E-mail/homology-j.html]。また、National Center for Biotechnology Information (NCBI) において、BLASTを用いた検索を行うことができる(例えばNCBIのホームページのウェブサイトのBLASTのページ; http://www.ncbi.nlm.nih.gov/BLAST/; Altschul, S.F. et al., J. Mol. Biol., 1990, 215(3):403-10; Altschul, S.F. & Gish, W., Meth. Enzymol., 1996, 266:460-480; Altschul, S.F. et al., Nucleic Acids Res., 1997, 25:3389-3402)]。
例えば Advanced BLAST 2.1におけるアミノ酸配列の同一性の算出は、プログラムにblastpを用い、Expect値を10、Filterは全てOFFにして、MatrixにBLOSUM62を用い、Gap existence cost、Per residue gap cost、および Lambda ratioをそれぞれ 11、1、0.85(デフォルト値)に設定して検索を行い、同一性(identity)の値(%)を得ることができる(Karlin, S. and S. F. Altschul (1990) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 87:2264-68; Karlin, S. and S. F. Altschul (1993) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 90:5873-7)。
本発明によるタンパク質、またはその機能的に同等なタンパク質は、糖鎖等の生理的な修飾、蛍光や放射性物質のような標識、あるいは他のタンパク質との融合といった各種の修飾を加えたタンパク質であることができる。ことに後に述べる遺伝子組換え体においては、発現させる宿主によって糖鎖による修飾に差異が生じる可能性がある。しかしたとえ糖鎖の修飾に違いを持っていても、本明細書中に開示されたHMGB1、HMGB2、またはHMGB3タンパク質と同様の性状を示すものであれば、いずれも本発明によるHMGB1、HMGB2、またはHMGB3タンパク質、または機能的に同等なタンパク質である。
HMGB1、HMGB2、またはHMGB3タンパク質は、生体材料のみならず、これをコードする遺伝子を適当な発現系に組み込んで遺伝子組換え体(recombinant)として得ることもできる。HMGB1、HMGB2、またはHMGB3タンパク質を遺伝子工学的な手法によって得るためには、先に述べたHMGB1、HMGB2、またはHMGB3タンパク質をコードするDNAを適当な発現系に組み込んで発現させれば良い。本発明に応用可能なホスト/ベクター系としては、例えば、発現ベクターpGEXと大腸菌を示すことができる。pGEXは外来遺伝子をグルタチオン S-トランスフェラーゼ(GST)との融合タンパク質として発現させることができる(Gene, 67:31-40, 1988)ので、HMGB1、HMGB2、またはHMGB3タンパク質をコードする遺伝子を組み込んだpGEXをヒートショックでBL21のような大腸菌株に導入し、適当な培養時間の後に isopropylthio-β-D-galactoside(IPTG)を添加してGST融合HMGB1、GST融合HMGB2、またはGST融合HMGB3タンパク質の発現を誘導する。本発明によるGSTはグルタチオンセファロース4Bに吸着するため、発現生成物はアフィニティークロマトグラフィーによって容易に分離・精製することが可能である。
HMGB1、HMGB2、またはHMGB3タンパク質の recombinant を得るためのホスト/ベクター系としては、この他にも次のようなものを応用することができる。まず細菌をホストに利用する場合には、ヒスチジンタグ、HAタグ、FLAGタグ等を利用した融合タンパク質の発現用ベクターが市販されている。酵母では、Pichia属酵母が糖鎖を備えたタンパク質の発現に有効なことが公知である。糖鎖の付加という点では、昆虫細胞をホストとするバキュロウイルスベクターを利用した発現系も有用である(Bio/Technology, 6:47-55, 1988)。更に、哺乳動物の細胞を利用して、CMV、RSV、あるいはSV40等のプロモーターを利用したベクターのトランスフェクションが行われており、これらのホスト/ベクター系は、いずれもHMGB1、HMGB2、またはHMGB3タンパク質の発現系として利用することができる。また、レトロウイルスベクター、アデノウイルスベクター、アデノ随伴ウイルスベクター等のウイルスベクターを利用して遺伝子を導入することもできる。
得られた本発明のタンパク質は、宿主細胞内または細胞外(培地など)から単離し、実質的に純粋で均一なタンパク質として精製することができる。タンパク質の分離、精製は、通常のタンパク質の精製で使用されている分離、精製方法を使用すればよく、何ら限定されるものではない。例えば、クロマトグラフィーカラム、フィルター、限外濾過、塩析、溶媒沈殿、溶媒抽出、蒸留、免疫沈降、SDS-ポリアクリルアミドゲル電気泳動、等電点電気泳動法、透析、再結晶等を適宜選択、組み合わせればタンパク質を分離、精製することができる。
クロマトグラフィーとしては、例えばアフィニティークロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィー、疎水性クロマトグラフィー、ゲル濾過、逆相クロマトグラフィー、吸着クロマトグラフィー等が挙げられる(Marshak et al., Strategies for Protein Purification and Characterization: A Laboratory Course Manual. Ed Daniel R. Cold Spring Harbor Laboratory Press, 1996)。これらのクロマトグラフィーは、液相クロマトグラフィー、例えばHPLC、FPLC等の液相クロマトグラフィーを用いて行うことができる。
また、本発明のタンパク質は、実質的に精製されたタンパク質であることが好ましい。ここで「実質的に精製された」とは、本発明のタンパク質の精製度(タンパク質成分全体における本発明のタンパク質の割合)が、50%以上、60%以上、70%以上、80%以上、90%以上、95%以上、100%若しくは100%に近いことを意味する。100%に近い上限は当業者の精製技術や分析技術に依存するが、例えば、99.999%、99.99%、99.9%、99%などである。
また、上記の精製度を有するものであれば、如何なる精製方法によって精製されたものでも、実質的に精製されたタンパク質に含まれる。例えば、上述のクロマトグラフィーカラム、フィルター、限外濾過、塩析、溶媒沈殿、溶媒抽出、蒸留、免疫沈降、SDS-ポリアクリルアミドゲル電気泳動、等電点電気泳動法、透析、再結晶等を適宜選択、または組み合わせることにより、実質的に精製されたタンパク質を例示できるが、これらに限定されるものではない。
本発明の薬剤におけるHMGB1、HMGB2、またはHMGB3タンパク質を放出または分泌する細胞としては、基本的に生体内のすべての組織由来細胞が該当する。採取および培養が容易な細胞としては、線維芽細胞(例えば正常皮膚線維芽細胞およびそれに由来する株化細胞)が例示できるが、これに限定されるものではない。また、HMGB1、HMGB2、またはHMGB3タンパク質を分泌する細胞は、HMGB1、HMGB2、またはHMGB3タンパク質をコードするDNA、あるいは、HMGB1、HMGB2、またはHMGB3タンパク質をコードするDNAに分泌シグナルをコードするDNA(ATG CAG ACA GAC ACA CTC CTG CTA TGG GTA CTG CTG CTG TGG GTT CCA GGT TCC ACT GGT GAC;配列番号:17)を結合させたDNAを、公知の発現ベクターや遺伝子治療用ベクターに挿入することで作製されたベクターを、線維芽細胞(例えば正常皮膚線維芽細胞およびそれに由来する株化細胞)などの哺乳類細胞や昆虫細胞、その他の細胞に導入することによっても作製することができる。分泌シグナルをコードするDNAとしては上述の配列を有するDNAが例示されるが、これに限定されない。また、これら細胞が由来する動物種に特に制限はないが、組織再生が行われる対象動物種の細胞、対象自身の細胞、あるいは組織再生が行われる対象の血縁にあたる者に由来する細胞を使用することが好ましい。
本発明の薬剤におけるHMGB1、HMGB2、またはHMGB3タンパク質をコードするDNAは、HMGB1、HMGB2、またはHMGB3タンパク質をコードする限り、cDNAであっても、ゲノムDNAであってもよく、また、天然のDNAであっても、人工的に合成されたDNAであってもよい。HMGB1、HMGB2、またはHMGB3タンパク質をコードするDNAは、通常、ベクター(例えば遺伝子治療用ベクター)に挿入された状態で、本発明の薬剤に含有される。
本発明における遺伝子治療用ベクターとしては、プラスミドベクター、レトロウイルスベクター、レンチウイルスベクター、アデノウイルスベクター、アデノアソシエートウイルスベクター、センダイウイルスベクター、センダイウイルスエンベロープベクター、パピローマウイルスベクター、などが例示できるが、これらに限定されるものではない。該遺伝子治療用ベクターには、遺伝子発現を効果的に誘導するプロモーターDNA配列や、遺伝子発現を制御する因子、DNAの安定性を維持するために必要な分子が含まれてもよい。
なお、本発明の薬剤においては、HMGB1、HMGB2、またはHMGB3タンパク質の部分ペプチドであって骨髄細胞の骨髄から末梢血への動員活性を有するペプチド、該部分ペプチドを分泌する細胞、または、該部分ペプチドをコードするDNAが挿入されたベクターを含有することもできる。
本発明の薬剤の投与方法は、血管または筋肉への非経口投与である。係る投与方法としては具体的には、注射投与が挙げられる。例えば、血管内注射(動脈内注射、静脈内注射等)、筋肉内注射などによって本発明の薬剤を血管または筋肉に投与できる。
また、患者の年齢、症状により適宜投与方法を選択することができる。HMGB1、HMGB2、またはHMGB3タンパク質を投与する場合、例えば、一回の投与につき、体重1 kgあたり0.0000001 mgから1000 mgの範囲で投与量が選択できる。あるいは、例えば、患者あたり0.00001から100000 mg/bodyの範囲で投与量が選択できる。HMGB1、HMGB2、またはHMGB3タンパク質を分泌する細胞やHMGB1、HMGB2、またはHMGB3タンパク質をコードするDNAが挿入された遺伝子治療用ベクターを投与する場合も、HMGB1、HMGB2、またはHMGB3タンパク質の量が上記範囲内となるように投与することができる。しかしながら、本発明の薬剤はこれらの投与量に制限されるものではない。
本発明の薬剤は、常法に従って製剤化することができ(例えば、Remington's Pharmaceutical Science, latest edition, Mark Publishing Company, Easton, U.S.A)、医薬的に許容される担体や添加物を共に含むものであってもよい。例えば界面活性剤、賦形剤、着色料、着香料、保存料、安定剤、緩衝剤、懸濁剤、等張化剤、結合剤、崩壊剤、滑沢剤、流動性促進剤、矯味剤等が挙げられるが、これらに制限されず、その他常用の担体が適宜使用できる。具体的には、軽質無水ケイ酸、乳糖、結晶セルロース、マンニトール、デンプン、カルメロースカルシウム、カルメロースナトリウム、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポリビニルアセタールジエチルアミノアセテート、ポリビニルピロリドン、ゼラチン、中鎖脂肪酸トリグリセライド、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油60、白糖、カルボキシメチルセルロース、コーンスターチ、無機塩類等を挙げることができる。
また、上述した細胞又は組織の抽出液、ヘパリン結合画分、HMGB1、HMGB2、またはHMGB3タンパク質、HMGB1、HMGB2、またはHMGB3タンパク質を分泌する細胞、HMGB1、HMGB2、またはHMGB3タンパク質をコードするDNAが挿入されたベクター、HMGB1、HMGB2、またはHMGB3タンパク質の部分ペプチド、該部分ペプチドを分泌する細胞、または該部分ペプチドをコードするDNAが挿入されたベクターの用途は、以下(1)〜(3)のように表現することもできる。
(1)細胞又は組織の抽出液、ヘパリン結合画分、HMGB1、HMGB2、HMGB3タンパク質、該タンパク質を分泌する細胞、該タンパク質をコードするDNAが挿入されたベクター、該タンパク質の部分ペプチド、該部分ペプチドを分泌する細胞、または該部分ペプチドをコードするDNAが挿入されたベクターを、血管または筋肉に投与する工程を含む、骨髄細胞を骨髄から末梢血に動員する方法、
(2)血管または筋肉に投与される、骨髄細胞を骨髄から末梢血に動員するために用いる薬剤の製造における、細胞又は組織の抽出液、ヘパリン結合画分、HMGB1、HMGB2、HMGB3タンパク質、該タンパク質を分泌する細胞、該タンパク質をコードするDNAが挿入されたベクター、該タンパク質の部分ペプチド、該部分ペプチドを分泌する細胞、または該部分ペプチドをコードするDNAが挿入されたベクターの使用、
(3)血管または筋肉に投与される、骨髄細胞を骨髄から末梢血に動員する方法に使用するための、細胞又は組織の抽出液、ヘパリン結合画分、HMGB1、HMGB2、HMGB3タンパク質、該タンパク質を分泌する細胞、該タンパク質をコードするDNAが挿入されたベクター、該タンパク質の部分ペプチド、該部分ペプチドを分泌する細胞、または該部分ペプチドをコードするDNAが挿入されたベクター。
また、本発明は、以下の工程を含む、細胞又は組織の抽出液に骨髄細胞を骨髄から末梢血に動員する因子が含まれるか否かを評価する方法であって、工程(b)における骨髄細胞の骨髄から末梢血への動員活性が、対照と比較して高い場合に、細胞又は組織の抽出液に骨髄細胞を骨髄から末梢血に動員する因子が含まれると判定される方法を提供する。
(a)細胞又は組織の抽出液を調製する工程、および
(b)工程(a)で調製された抽出液による骨髄細胞の骨髄から末梢血への動員活性を測定する工程
上記方法では、まず細胞又は組織を溶媒に浸す。上記細胞としては、特に制限はないが、組織由来細胞、組織由来細胞から樹立された株化細胞(例えば、HeLa、HEK293が例示できるが、これらに制限されない)、単離された細胞、単離されていない細胞(例えば単離された組織中に存在する細胞)、HMGB1、HMGB2、またはHMGB3タンパク質をコードするDNAが導入された細胞などが例示できる。上記組織としては、どのような組織でもよく、例えば、生体皮膚組織、体内生検(手術)組織(脳、肺、心臓、肝臓、胃、小腸、大腸、膵臓、腎臓、膀胱、脾臓、子宮、精巣や血液など)、損傷組織が例示できる。また、該溶媒としては、生理食塩水、PBS、TBSが例示できるが、これらに制限されない。また、細胞又は組織を溶媒に浸す時間としては、細胞壊死が誘導されるために必要・十分な時間(通常24時間以上)であることが好ましいが、この時間に限定されるものではない。また、本発明においては、細胞又は組織を溶媒に浸した後に、細胞又は組織を含む溶媒から該細胞や該組織を取り除くこともできる。溶媒から細胞又は組織を取り除く方法は当業者に周知な方法であれば、特に制限されない。
次いで、得られた細胞又は組織の抽出液による骨髄細胞の骨髄から末梢血への骨髄細胞動員活性を測定する。対照としては、細胞又は組織を浸す前の溶媒が例示できる。骨髄細胞の骨髄細胞動員活性は、例えば実施例の記載の方法で測定することができるが、これに限定されない。
骨髄から末梢循環への骨髄細胞の動員活性は、得られた細胞又は組織の抽出液を経静脈、経皮、筋肉内、腹腔内投与した後、1分から4週間経過後、好ましくは1時間から24時間経過後、更に好ましくは12時間経過後、末梢血を回収しその単核球細胞群に対してフローサイトメトリー法を利用してPDGFRα陽性細胞かつCD44陽性細胞、もしくはPDGFRβ細胞かつCD44陽性細胞の細胞数をカウントすることで測定することが出来るが、これに限定されない。
また、本発明は、以下の工程を含む、骨髄細胞を骨髄から末梢血に動員する因子が含まれる細胞又は組織の抽出液をスクリーニングする方法を提供する。
(a)複数の抽出液について、上述の方法で、該抽出液に骨髄細胞を骨髄から末梢血に動員する因子が含まれるか否かを評価する工程、および
(b)工程(a)で骨髄細胞を骨髄から末梢血に動員する因子が含まれると評価された抽出液を選択する工程
さらに、本発明は、上記の評価方法やスクリーニング方法によって、骨髄細胞を骨髄から末梢血に動員する因子を含むと判定された抽出液から、骨髄細胞の動員活性を指標に、骨髄細胞を骨髄から末梢血に動員する因子を精製する工程を含む、骨髄細胞を骨髄から末梢血に動員する因子の同定方法を提供する。骨髄細胞を骨髄から末梢血に動員する因子の精製には、通常のタンパク質の精製で使用されている分離、精製方法を使用すればよく、何ら限定されるものではない。例えば、クロマトグラフィーカラム、フィルター、限外濾過、塩析、溶媒沈殿、溶媒抽出、蒸留、免疫沈降、SDS-ポリアクリルアミドゲル電気泳動、等電点電気泳動法、透析、再結晶等を適宜選択、組み合わせればタンパク質を分離、精製することができる。精製された因子は、例えば質量分析等の当業者に周知の方法によって、同定することができる。同定された因子を使用することで、骨髄細胞を骨髄から末梢血に動員することができる。また、該因子は、骨髄細胞を骨髄から末梢血に動員する候補や骨髄細胞の骨髄から末梢血への動員に寄与する候補と表現することもできる。
なお本明細書において引用されたすべての先行技術文献は、参照として本明細書に組み入れられる。
以下、本発明を実施例によりさらに具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に制限されるものではない。
〔実施例1〕
目的:皮膚組織抽出液内に存在する骨髄由来組織幹細胞誘導因子による骨髄組織幹細胞の末梢血への動員
方法:上記の目的に対して以下の方法により研究を行った。
1)骨髄由来組織幹細胞誘導剤の調製:新生マウス(2日齢)25匹から得た遊離皮膚片を生理的リン酸緩衝液pH 7.4(PBS)25 mlに浸し、4℃で24時間インキュベーションした後、組織を取り除くために、4℃の条件下で10分間、440 Gで遠心し上清を回収して皮膚抽出液(SE)を作製した。
また、C57/Bl6新生マウス皮膚からTrizol (invitrogen) を用いてRNA を抽出し更にSuperScript III cDNA synthesis kit(Invitrogen) を用いてcDNA を合成した。このcDNA をテンプレートとしてHMGB1のcDNAをPCR (ポリメラーゼ連鎖反応)法を用いて増幅し、アミノ酸配列のN末端にFlag tagの配列(Asp-Tyr-Lys-Asp-Asp-Asp-Lys;配列番号:18)を付加したタンパク質を発現するように、哺乳類細胞でタンパク質を発現させるプラスミドベクターpCAGGSに挿入した(図1)。これらのプラスミドベクターをHEK293 (ヒト胎児腎細胞由来培養細胞株)に遺伝子導入し48時間培養しタンパク質を発現させた。HMGB1タンパク質をそれぞれ発現させた細胞及び培養上清は4℃で16時間インキュベートした後、4400 g・5分間遠心し上清を回収した。この上清50 mL あたり100μLのAnti Flag 抗体Gel(Sigma)を混合し4℃で16時間インキュベートした。遠心しGelを回収した後PBSを用いて、5回洗浄した。更に 3X Flag peptide(final 100μg/ml)を用いて溶出した。溶出したタンパク質はHMGB1 ELISA kit (シノテスト)を用いて濃度を確認し、凍結乾燥後PBSを用いて200μg/mLに調整した。
2)8週齢雄マウス(C57/Bl6)の尾静脈から前述の皮膚抽出液(SE)500μLもしくは陰性コントロール群としてPBS500μLを30G1/2の注射針を装着したシリンジを用い投与した(図2)。投与6/12/24/48時間後、イソフルランによる吸入麻酔下、マウスの心臓からヘパリンコートした1 mLのシリンジを用いて末梢血1 mLを採血し、3 mLのPBSと混合した後、3 mLのFicol(GE healthcare)の上に静かに重層した。遠心機を用い、25℃で400 g、40分間遠心した。中間層の白濁した層の細胞を単核球画分として回収した。回収した細胞に1 mLの溶血剤であるHLB solution(免疫生物研究所)を加え室温で5分インキュベートした。この溶血操作を2回繰り返した。10 mLのPBSを加え、25℃で440 g、5分間遠心し上清を除去して細胞を回収した。この細胞1,000,000個に抗マウスPE標識PDGFRα抗体(e-Bioscience)、PE標識抗マウスPDGFRβ抗体(e-Bioscience)、PerCy5標識抗マウスCD44抗体(BD biosciences)それぞれをPBSで100倍希釈し20分間室温でインキュベートした。その後この細胞を25℃、440 g、5分間遠心し上清を除去した。1%パラホルムアルデヒド含PBSを400μL加え、フローサイトメトリー解析のサンプルとした。
8週齢雄マウス(C57/Bl6)の尾静脈からマウスHMGB1を250μL(1μg/μL)もしくは陰性コントロール群としてPBS250μLを30G1/2の注射針を装着したシリンジを用い投与した(図4)。投与12時間後、イソフルランによる吸入麻酔下、マウスの心臓からヘパリンコートした1 mLのシリンジを用いて末梢血1 mLを採血し、3 mLのPBSと混合した後、3 mLのFicol(GE healthcare)の上に静かに重層した。遠心機を用い、25℃で400 g、40分間遠心した。中間層の白濁した層の細胞を単核球画分として回収した。回収した細胞に1 mLの溶血剤であるHLB solution(免疫生物研究所)を加え室温で5分インキュベートした。この溶血操作を2回繰り返した。10 mLのPBSを加え、25℃で440 g、5分間遠心し上清を除去して細胞を回収した。この細胞1,000,000個に抗マウスPE標識PDGFRα抗体(e-Bioscience)、PerCy5標識抗マウスCD44抗体(BD biosciences)それぞれをPBSで100倍希釈し20分間室温でインキュベートした。その後この細胞を25℃、440 g、5分間遠心し上清を除去した。1%パラホルムアルデヒド含PBSを400μL加え、フローサイトメトリー解析のサンプルとした。
結果:皮膚抽出液(SE)を注射12時間後の末梢血において、有意にPDGFRα陽性、CD44陽性細胞が動員されていることが確認された(図3)。HMGB1を注射12時間後の末梢血において、有意にPDGFRα陽性、CD44陽性細胞が動員されていることが確認された(図5)。
〔実施例2〕
目的:組み換えHMGB1蛋白の静脈内投与によって、間葉系幹細胞が末梢血中へ動員されるかを確認した。
方法:C57BL6マウス(8〜10週齢、オス)尾静脈より組み換えHMGB1蛋白/生理食塩水(100 μg/ml)を400μl (40μg HMGB1)あるいは生理食塩水400μl投与した。12時間後にマウス末梢血を採取してPBSを加え全量を4mLに希釈した。遠心管にFicoll-Paque Plus(GE)液を3mL 挿入後その上に希釈血液を重層した。400G (18℃)で40分間遠心し、単核球を含む中間層を新しい遠心管に回収し、45 mL のPBSを加え800G(18℃)5分で遠心し上清を除去した。さらにもう一度45 mL のPBSを加え800G(18℃)5分で遠心し上清を除去した。得られた単核球をPhycoerythrobilin(PE)標識抗マウスPDGFRα抗体およびFluorescein isothiocyanate(FITC)標識抗マウスCD44抗体で反応させた後、フローサイトメトリー(Facscan ; Becton, Dickinson and Company)により単核球分画内のPDGFRα陽性/CD44陽性細胞の存在頻度を評価した。
結果:HMGB1投与12時間後に、末梢血単核球分画内のPDGFRα陽性かつCD44陽性細胞およびPDGFRα陽性かつCD44陰性細胞が有意に増加していることが明らかとなった(図14)。即ち、HMGB1は骨髄内から末梢血中に、間葉系幹細胞のマーカーとして知られているPDGFRα陽性細胞を動員する活性があることが示された。
考察:PDGFRαおよびCD44は骨髄由来の多能性幹細胞を代表する骨髄間葉系幹細胞の表面マーカーとして知られている。骨髄間葉系幹細胞は骨細胞、軟骨細胞、脂肪細胞に分化可能な多能性幹細胞であり、さらに神経細胞や上皮細胞などにも分化可能とされている。また、本実験で使用した皮膚片は、阻血状態であるため、徐々に組織が壊死状態となり、細胞の表面のタンパク質から核などの細胞内のタンパク質が周囲に放出される。また、HMGB1は皮膚抽出液に含有されるタンパク質である。植皮などではこれらのタンパク質が、シグナルとなって植皮片に骨髄由来の組織幹細胞を動員し、植皮片内で骨髄細胞由来表皮、皮下組織、毛包組織などを再構築し、機能的皮膚を再生していると考えられる。本実験は、このような皮膚抽出液もしくはHMGB1を静脈内に投与することで、末梢循環中に骨髄由来組織幹細胞を動員することに成功した初めての発見である。本発見によって、骨髄由来多能性幹細胞を末梢血中に動員し、脳梗塞や心筋梗塞、骨折、皮膚潰瘍、などの組織損傷を伴う難治性疾患に対する新規治療法が可能になる。また、末梢血中に動員した細胞は通常の採血と同様に採取が可能であり、これまで脳梗塞治療のために骨髄から採取してきた従来の方法にくらべ、簡便で安全な骨髄由来組織幹細胞の採取方法が可能になった。
〔参考例1〕
目的:皮膚抽出液中HMGB1ファミリーの同定と骨髄間葉系幹細胞誘導活性の検討
方法:新生マウス皮膚抽出液中に含まれるHMGB蛋白ファミリーの有無をWestern blot 法を用いて確認した。サンプルとして、新生マウス400匹から得た遊離皮膚片を生理的リン酸緩衝液pH 7.4(PBS)400 ml内に浸し、4℃で24時間インキュベーションした後、組織を取り除くために、4℃の条件下で10分間、440 Gで遠心し上清を回収して得られた皮膚抽出液を10μl をSDS-PAGE法を用いて電気泳動し、ゲル中で分離した蛋白をブロッティング装置(ATTO)を用いPVDF膜にトランスファーした。3%スキムミルク0.1% Tween 20 含PBS(S-T-PBS)にて、室温で1時間インキュベートした後、S-T-PBSで1000倍に希釈したラビット抗マウスHMGB1 抗体、ラビット抗マウスHMGB2抗体、ラビット抗マウスHMGB3抗体をそれぞれ4℃で16時間反応させた。反応後、同PVDF膜をS-T-PBSにて5分間5回洗浄後、S-T-PBSで2000倍希釈したペルオキシダーゼ標識ヤギ抗ラビットIgG抗体(GE Healthcare)にて同PVDF膜を25℃で1時間インキュベートした。さらにS-T-PBSにて5分間5回洗浄後ECL Western Blotting Detection System (GE Healthcare)を同PVDF膜と反応させ、ECL film を感光させた後現像してHMGB1、HMGB2、HMGB3タンパク質の存在を検出した。
新生マウス皮膚からTrizol (invitrogen) を用いてRNA を抽出し更にSuperScript III cDNA synthesis kit(Invitrogen) を用いてcDNA を合成した。このcDNA をテンプレートとしてHMGB1、HMGB2、及びHMGB3 のcDNAをPCR (ポリメラーゼ連鎖反応)法を用いて増幅し、アミノ酸配列のN末端にFlag tagの配列(Asp-Tyr-Lys-Asp-Asp-Asp-Lys;配列番号:18)を付加したタンパク質を発現するように、哺乳類細胞でタンパク質を発現させるプラスミドベクターpCAGGSに挿入した。これらのプラスミドベクターをHEK293(ヒト胎児腎細胞由来培養細胞株)に遺伝子導入し48時間培養しタンパク質を発現させた。HMGB1、HMGB2、及びHMGB3タンパク質をそれぞれ発現させた細胞及び培養上清は4℃で16時間インキュベートした後、4400 g・5分間遠心し上清を回収した。この上清50 mL あたり100μLのAnti Flag 抗体Gel(Sigma)を混合し4℃で16時間インキュベートした。 遠心しGelを回収した後PBSを用いて、5回洗浄した。更に 3X Flag peptide(final 100μg/ml)を用いて溶出した。リコンビナントタンパク質の発現をS-T-PBS で1000倍希釈したマウス抗Flag 抗体、及びS-T-PBS で2000倍希釈したペルオキシダーゼ標識抗マウスIgG抗体(GE Healthcare) を用いたWestern blot 法にて確認した。これらの精製リコンビナントタンパク質のマウス骨髄間葉系幹細胞の遊走活性をボイデン・チャンバーを用いて評価した。また、HMGBファミリーのin vivoでの薬効を観察するために、8週齢C57BL/6マウスの背部皮膚を直径8μmの円形に切除し皮膚潰瘍モデルを作製し、そこに精製したHMGB1・HMGB2・HMGB3それぞれ(100 ng/μL)を、1 g/100 mL PBSの濃度のヒアルロン酸溶液と等量ずつ混合しそのうち100 μLを潰瘍面に投与した。潰瘍面は乾燥しないように、粘着性透明創傷被覆・保護材Tegaderm (スリーエムヘルスケア)で覆い、経時的に創傷面積を計測し治癒効果を測定した。
さらにヒト骨髄間葉系幹細胞を、ヒト皮膚抽出液およびヒト精製HMGB1が遊走する活性があるかを調べるために、ボイデン・チャンバーを用いて評価した。面積1cm2のヒト皮膚を1mlのPBSに浸し、4℃の条件下で16時間インキュベーションした後、4℃の条件下で10分間440Gで遠心した。上清のみを回収し、ヒト皮膚抽出液として使用した。また、ボイデン・チャンバーの上部に入れる細胞はヒト骨髄間葉系幹細胞(Cambrex社)を用いた。(本細胞はフローサイトメトリーによる細胞表面抗原の分析の結果、CD105陽性、CD166陽性、CD29陽性、CD44陽性、CD34陰性、CD45陰性とされている。さらに分化誘導試験によって脂肪細胞、軟骨細胞、骨細胞への分化が陽性である。)また、チャンバー下部には、ヒトHMGB1を100 ng /well (R &D社)及びPBSにて10倍希釈したヒト皮膚抽出液を入れ、コントロールとしてPBSを用いた。
結果:Western blotの結果、HMGB1のバンドの他にHMGB2やHMGB3のバンドが検出された。よって新生マウス皮膚抽出液の中には、HMGB1の他にファミリータンパク質であるHMGB2およびHMGB3が含有されていることが確認された(図6)。それぞれのタンパク質のN末端にFlag tagを付加したHMGB1・HMGB2・HMGB3の発現ベクターを作製した(図1)。HEK293細胞に発現ベクターを遺伝子導入し、発現したタンパク質をFlag tag を用いて精製した後、Western blot 法を用いてタンパク質を確認した(図7)。これらの精製タンパク質を用いたマウス骨髄間葉系幹細胞の遊走活性を測定したところ、いずれのタンパク質においても活性が確認された(図8)。マウスの背部に作製した潰瘍面積を7日毎に計測したところ、非治療群に比べHMGB1,2および3による治療群の方が有意に潰瘍面積の縮小効果を確認できた(図9)。マウスの場合と同様に、ヒトHMGB1及びヒト皮膚抽出液はヒト骨髄間葉系幹細胞を遊走する活性があることが明らかとなった(図10)。
考察:HMGB1と相同性が高いタンパク質としてHMGB2及びHMGB3が知られている。これらのタンパク質もHMGB1と同様の性質を有することが期待される。そこで、遊離皮膚片抽出液からHMGB1のファミリーであるHMGB2およびHMGB3も産生されることを確認した。さらに HMGB1・HMGB2・HMGB3のリコンビナントタンパク質を作製し、in vitroでの骨髄間葉系幹細胞遊走活性を確認し、in vivoにおける皮膚潰瘍治療効果も確認した。新生マウス遊離皮膚片中のHMGBファミリー(HMGB1・HMGB2・HMGB3)およびリコンビナントHMGBファミリーには骨髄間葉系幹細胞誘導活性や骨髄由来の上皮系に分化可能な幹細胞を局所に誘導する活性があり、さらにこれらの誘導された骨髄由来の細胞群が損傷組織において表皮ケラチノサイトや毛包や線維芽細胞のようなさまざまな細胞に分化して損傷組織の治癒を促進する効果があることが明らかになった。また骨髄間葉系幹細胞は多能性幹細胞であるので、他の組織損傷状態、例えば、脳損傷、心筋梗塞、骨折などの組織損傷の治療にHMGBファミリーを全身投与もしくは局所投与することで同様に治療効果が期待できると確信する。
また、ヒトとマウスのHMGB1はそれぞれを構成するアミノ酸配列で98%(213/215)の相同性があり、HMGB2はそれぞれを構成するアミノ酸配列で96%(202/210)の相同性があり、HMGB3はそれぞれを構成するアミノ酸配列で97%(195/200)の相同性があることがわかっている。そこで、ヒトのHMGBがマウスのHMGBと同様の活性を有することが考えられるが、本結果から、ヒトの皮膚抽出液やHMGB1がマウスの皮膚抽出液や、HMGB1と同様に骨髄間葉系幹細胞を誘導する活性があることが明らかになった。
〔参考例2〕
目的:骨髄間葉系幹細胞誘導因子組織抽出液の作製方法の確立
方法:6週齢C57BL6一匹分の脳、心臓、腸、腎臓、肝臓及び新生マウス皮膚一匹分を生理的リン酸緩衝液pH 7.4(PBS)1 ml内に浸し、4℃で24時間インキュベーションした後、組織を取り除くために、4℃の条件下で10分間、440 Gで遠心し上清を回収して組織抽出液とした。得られた抽出液の中に骨髄間葉系幹細胞誘導活性が存在することを確認するため、ボイデン・チャンバーを用い、骨髄由来間葉系幹細胞に対する遊走活性を検討した。また、同じサンプル中に含まれるHMGB1の濃度をHMGB1 ELISA kit(シノテスト)を用いて計測した。更に脳、心臓および皮膚の組織抽出液をヘパリンアフィニティーカラムに結合させ、結合画分のタンパク質の骨髄間葉系幹細胞誘導活性をボイデン・チャンバーを用いて確認した。
結果:マウス脳抽出液には新生マウス皮膚抽出液と同等のHMGB1が含有されていた。さらに、骨髄間葉系幹細胞の誘導活性はマウス脳でも皮膚と同様に認められた。マウス腸抽出液とマウス心臓抽出液中にHMGB1はほとんど含まれなかったが、骨髄間葉系幹細胞の誘導活性は認められた。また、マウス脳、マウス心臓のヘパリンカラム結合画分はマウス皮膚のヘパリンカラム結合画分と同様に骨髄間葉系幹細胞を誘導する活性があった(図11)。表1は、マウス各組織抽出液のHMGB1濃度と骨髄間葉系幹細胞の誘導活性を測定した結果を示す。
Figure 0006002727
考察:皮膚のみならず脳でも臓器を生理的緩衝液に浸すだけという簡便な方法でHMGB1を簡便に抽出する方法を開発した。この方法は、他の臓器例えば、肝臓や腎臓でも同様である。また心臓や腸からの抽出液にはHMGB1をほとんど含有しないにもかかわらず骨髄間葉系幹細胞誘導活性を認めた。このことは抽出液中にHMGB1と異なる、他の骨髄間葉系幹細胞誘導物質が含まれていることが考えられる。これらの抽出液に含まれる物質は、もともとそれぞれの組織に存在するものであり、生理的には組織損傷時に骨髄間葉系幹細胞を損傷組織に誘導していると考えられる。本発明によってHMGB1を含む複数の骨髄間葉系幹細胞誘導物質を各種臓器から機能的にかつ簡便に抽出する新規の方法を開発できた。さらに、組織抽出液から骨髄間葉系幹細胞誘導物質を精製するためにヘパリンカラムに結合させる方法を開発した。また、これらの骨髄間葉系幹細胞誘導活性を有する成分は皮膚と同様の方法で脳や心臓からもヘパリンカラムを用いて精製することが可能である。
〔参考例3〕
目的:培養細胞から間葉系幹細胞遊走活性物質を抽出する方法を確立する。
方法:ヒト胎児腎由来培養細胞株HEK293及びヒト子宮頸癌細胞株HeLaはそれぞれ10%胎仔牛血清含D-MEM(nacalai 社製)で培養した。それぞれの細胞をPBSで洗浄後、細胞107個を4℃の5 mlのPBS(nacalai社製)に16時間浸した。重力加速度440 Gで4℃で5分間遠心し上清を回収した。ボイデン・チャンバーの上層にヒト骨髄間葉系幹細胞をいれ、下層にDMEMで5倍希釈した細胞抽出液をいれ、ヒト骨髄間葉系幹細胞遊走活性を確認した。
結果:HEK293抽出液もHeLa抽出液も同様に骨髄間葉系幹細胞を遊走する活性を示した(図12)。
考察:培養細胞をPBSに浸すという簡便な方法で骨髄間葉系幹細胞を遊走する活性物質を抽出することに成功した。
〔参考例4〕
目的:マウス脳欠損モデルを作成し、局所損傷部位に皮膚抽出液ヘパリンカラム精製画分を徐放化して投与することで、自己の骨髄系に含まれる幹細胞を局所損傷部位に遊走させ、神経系細胞の再生を誘導できないか検討する。
方法:
(1) 皮膚抽出液ヘパリンカラム精製画分の作製
切除した新生マウス皮膚からPBS(一匹/ml)中に4℃で16時間インキュベーションし抽出した皮膚抽出液を4℃の9倍容20 mM リン酸バッファー pH 7.5を用い 10倍に希釈した。あらかじめ、20 mM リン酸バッファー pH 7.5(30 ml)をHiTrap Hepalin HP column(カラム容量: 5 ml、GE Healthcare)の中に流しカラムを平衡化した。さらに、希釈液をカラムに結合させた。その後20 mM リン酸バッファー pH 7.5, 100 mM NaCl(30 ml)でカラムを洗浄した。吸着したタンパク質を溶出するため20 mM リン酸バッファー pH 7.5, 1000 mM NaClをカラム内に流入し、溶出液をチューブに分画した。吸着画分をそれぞれ、マウス骨髄由来細胞株の遊走活性をボイデン・チャンバー法を用いて評価し遊走能を有する画分を集めた。この活性を有する溶液を皮膚抽出液ヘパリン精製画分として以下の参考例に使用した。
(2)骨髄抑制マウスの作成
マウスに10GyのX線単回照射を行い、骨髄抑制マウスを作成した。
(3)骨髄抑制マウスへのGFPマウス骨髄移植
GFPマウスの両側大腿骨および下腿骨より骨髄細胞を採取した。これを照射後24時間経過した骨髄抑制マウスの尾静脈より投与した。なお、投与はイソフルランによる吸入麻酔下に施行した。
(4)マウス脳損傷(脳組織欠損)モデルの作成
GFPマウスの骨髄細胞を移植した骨髄抑制マウスにイソフルランにて吸入麻酔を行い、ペントバルビタール(45 mg/kg)を腹腔内に注入した。マウスを脳定位固定装置に固定し、メスにて頭部に正中切開を加えた。ブレグマから右外側2.5 mm、前方1 mmにドリルを用いて穿頭を施した(図13A)。この部位から深さ3 mmの位置を先端にして、20Gサーフロー針の外筒を挿入して固定した。ここでシリンジを用いて、陰圧をかけ、脳組織を一部吸引した(図13B)。
(5)皮膚抽出液ヘパリンカラム精製画分の脳組織欠損部への投与
前述の位置に、ハミルトンシリンジと26Gシリンジを用いて、フィブリン糊製剤(フィブリノゲン)(ボルヒール(化血研))に溶解した皮膚抽出液ヘパリンカラム精製画分を5μl注入し、次にフィブリン糊製剤(トロンビン)(ボルヒール(化血研))を5μl注入した(図13C)。この操作によって、皮膚抽出液ヘパリンカラム精製画分の徐放剤としての効果を狙った。
(6)脳組織欠損部における神経系細胞再生効果の評価
コントロール群と治療群のマウスとを用いて評価した。適切な経過設定を決め(経時的に)、マウスを4%パラホルムアルデヒドにて灌流固定後、脳の切り出しを行った。さらに、4%パラホルムアルデヒドを外固定した。15%と30%の勾配をつけたショ糖にて脱水後、凍結切片を作成した。
DAPI(4',6-Diamidino-2-phenylindole, dihydrochloride)solusionにて核染色を行い、退光防止剤を用いて封入した。共焦点レーザー顕微鏡にて損傷部位(脳組織欠損部)でのGFP陽性細胞の集積を評価した。
結果:投与後、2週間および6週間後のGFP陽性細胞集積を定性的に示す。2週間後(コントロール;図13D, 皮膚抽出液ヘパリンカラム精製画分;図13E)および6週間後(コントロール;図13F 皮膚抽出液ヘパリンカラム精製画分;図13G)ともに、コントロール群に比して治療群の損傷部位にGFP陽性細胞の集積が高い傾向にあった。
考察:皮膚抽出液ヘパリンカラム精製画分投与により、骨髄由来細胞が脳組織欠損部位に集積し神経細胞の形態を示した。骨髄由来間葉系幹細胞は神経細胞にも分化することが知れており、本結果から、皮膚抽出液ヘパリンカラム精製画分によって脳損傷部位における神経系細胞再生の誘導できることが明らかになった。また、これは、脳虚血性疾患や脳挫傷における脳組織障害部位での神経再生にも応用可能である。
本発明は、脳梗塞や心筋梗塞、骨折、皮膚潰瘍などの組織損傷を伴う難治性疾患に対する新規治療法を提供するものである。また、末梢血中に動員した細胞は通常の採血と同様に採取が可能であるため、本発明は、これまで脳梗塞治療のために骨髄から採取してきた従来の方法と比較して簡便で安全な骨髄由来組織幹細胞の採取方法を可能にするものである。

Claims (1)

  1. 以下の(a)から(i)のいずれかに記載の成分を含有し、筋肉に投与され、末梢血から骨髄間葉系幹細胞を回収するために用いる薬剤;
    (a)HMGB1タンパク質
    (b)HMGB1タンパク質を分泌する細胞
    (c)HMGB1タンパク質をコードするDNAが挿入されたベクター
    (d)HMGB2タンパク質
    (e)HMGB2タンパク質を分泌する細胞
    (f)HMGB2タンパク質をコードするDNAが挿入されたベクター
    (g)HMGB3タンパク質
    (h)HMGB3タンパク質を分泌する細胞
    (i)HMGB3タンパク質をコードするDNAが挿入されたベクター。
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