JP6002727B2 - 末梢循環への骨髄由来多能性幹細胞動員薬 - Google Patents
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Description
脳組織(細胞)損傷の原因としては、外傷による脳挫傷、脳虚血性疾患が主要なものである。他の原因として、脳腫瘍摘出手術をはじめとした脳外科的手術に起因するものがあげられる。とくに、脳実質細胞から発生するような、神経膠腫の全摘出は困難であり、運動や言語機能障害を避けるためには、姑息的摘出にとどまらざるを得えない。また、悪性神経膠腫は生命予後も悪く、化学療法や放射線療法をはじめ、近年研究が盛んに行われている免疫・遺伝子治療も十分な効果を示すまでには至っていない。よって、可及的に多くの腫瘍細胞の摘出を行い、その結果生じる脳機能損傷を回復させるような治療があれば理想的である。
したがって、本発明は、骨髄由来の多能性幹細胞を大量に末梢血中に動員する方法を提供することを課題とする。
本願は、この知見に基づき、以下の発明を提供するものである。
〔1〕以下の(a)から(i)のいずれかに記載の成分を含有し、血管または筋肉に投与される、骨髄細胞を骨髄から末梢血に動員するために用いる薬剤;
(a)HMGB1タンパク質
(b)HMGB1タンパク質を分泌する細胞
(c)HMGB1タンパク質をコードするDNAが挿入されたベクター
(d)HMGB2タンパク質
(e)HMGB2タンパク質を分泌する細胞
(f)HMGB2タンパク質をコードするDNAが挿入されたベクター
(g)HMGB3タンパク質
(h)HMGB3タンパク質を分泌する細胞
(i)HMGB3タンパク質をコードするDNAが挿入されたベクター。
〔2〕細胞又は組織を溶媒に浸す工程を含む方法で製造される細胞又は組織の抽出液を含有し、血管または筋肉に投与される、骨髄細胞を骨髄から末梢血に動員するために用いる薬剤。
〔3〕以下の工程を含む方法で製造されるヘパリン結合画分を含有し、血管または筋肉に投与される、骨髄細胞を骨髄から末梢血に動員するために用いる薬剤;
(a)細胞又は組織を溶媒に浸す工程、
(b)工程(a)で得られる抽出液を固定化ヘパリンに接触させる工程、および
(c)固定化ヘパリンからヘパリン結合画分を溶出する工程。
〔4〕以下の工程を含む、細胞又は組織の抽出液に骨髄細胞を骨髄から末梢血に動員する因子が含まれるか否かを評価する方法であって、工程(b)における骨髄細胞の骨髄から末梢血への動員活性が、対照と比較して高い場合に、細胞又は組織の抽出液に骨髄細胞を骨髄から末梢血に動員する因子が含まれると判定される方法;
(a)細胞又は組織の抽出液を調製する工程、および
(b)工程(a)で調製された抽出液による骨髄細胞の骨髄から末梢血への動員活性を測定する工程。
〔5〕以下の工程を含む、骨髄細胞を骨髄から末梢血に動員する因子が含まれる細胞又は組織の抽出液をスクリーニングする方法;
(a)複数の抽出液について、〔4〕に記載の方法で、該抽出液に骨髄細胞を骨髄から末梢血に動員する因子が含まれるか否かを評価する工程、および
(b)工程(a)で骨髄細胞を骨髄から末梢血に動員する因子が含まれると評価された抽出液を選択する工程。
〔6〕〔4〕または〔5〕に記載の方法によって、骨髄細胞を骨髄から末梢血に動員する因子を含むと判定された抽出液から、骨髄細胞の骨髄から末梢血への動員活性を指標に、骨髄細胞を骨髄から末梢血に動員する因子を精製する工程を含む、骨髄細胞を骨髄から末梢血に動員する因子の同定方法。
〔7〕血管または筋肉に投与される、以下の(a)から(i)のいずれかに記載の物質を含有する組成物を含む、骨髄細胞を骨髄から末梢血に動員するためのキット;
(a)HMGB1タンパク質
(b)HMGB1タンパク質を分泌する細胞
(c)HMGB1タンパク質をコードするDNAが挿入されたベクター
(d)HMGB2タンパク質
(e)HMGB2タンパク質を分泌する細胞
(f)HMGB2タンパク質をコードするDNAが挿入されたベクター
(g)HMGB3タンパク質
(h)HMGB3タンパク質を分泌する細胞
(i)HMGB3タンパク質をコードするDNAが挿入されたベクター。
〔8〕血管または筋肉に投与される、細胞又は組織を溶媒に浸す工程を含む方法で製造される細胞又は組織の抽出液を含む、骨髄細胞を骨髄から末梢血に動員するためのキット。
〔9〕血管または筋肉に投与される、以下の工程を含む方法で製造されるヘパリン結合画分を含む、骨髄細胞を骨髄から末梢血に動員するためのキット;
(a)細胞又は組織を溶媒に浸す工程、
(b)工程(a)で得られる抽出液を固定化ヘパリンに接触させる工程、および
(c)固定化ヘパリンからヘパリン結合画分を溶出する工程。
〔10〕以下の(a)から(i)のいずれかに記載の物質を血管または筋肉に投与する工程を含む、骨髄細胞を骨髄から末梢血に動員する方法;
(a)HMGB1タンパク質
(b)HMGB1タンパク質を分泌する細胞
(c)HMGB1タンパク質をコードするDNAが挿入されたベクター
(d)HMGB2タンパク質
(e)HMGB2タンパク質を分泌する細胞
(f)HMGB2タンパク質をコードするDNAが挿入されたベクター
(g)HMGB3タンパク質
(h)HMGB3タンパク質を分泌する細胞
(i)HMGB3タンパク質をコードするDNAが挿入されたベクター。
〔11〕細胞又は組織を溶媒に浸す工程を含む方法で製造される細胞又は組織の抽出液を血管または筋肉に投与する工程を含む、骨髄細胞を骨髄から末梢血に動員する方法。
〔12〕以下の工程を含む方法で製造されるヘパリン結合画分を血管または筋肉に投与する工程を含む、骨髄細胞を骨髄から末梢血に動員する方法;
(a)細胞又は組織を溶媒に浸す工程、
(b)工程(a)で得られる抽出液を固定化ヘパリンに接触させる工程、および
(c)固定化ヘパリンからヘパリン結合画分を溶出する工程。
〔13〕血管または筋肉に投与される、骨髄細胞を骨髄から末梢血に動員するために用いる薬剤の製造における、以下の(a)から(i)のいずれかに記載の物質の使用;
(a)HMGB1タンパク質
(b)HMGB1タンパク質を分泌する細胞
(c)HMGB1タンパク質をコードするDNAが挿入されたベクター
(d)HMGB2タンパク質
(e)HMGB2タンパク質を分泌する細胞
(f)HMGB2タンパク質をコードするDNAが挿入されたベクター
(g)HMGB3タンパク質
(h)HMGB3タンパク質を分泌する細胞
(i)HMGB3タンパク質をコードするDNAが挿入されたベクター。
〔14〕血管または筋肉に投与される、骨髄細胞を骨髄から末梢血に動員するために用いる薬剤の製造における、細胞又は組織を溶媒に浸す工程を含む方法で製造される細胞又は組織の抽出液の使用。
〔15〕血管または筋肉に投与される、骨髄細胞を骨髄から末梢血に動員するために用いる薬剤の製造における、以下の工程を含む方法で製造されるヘパリン結合画分の使用;
(a)細胞又は組織を溶媒に浸す工程、
(b)工程(a)で得られる抽出液を固定化ヘパリンに接触させる工程、および
(c)固定化ヘパリンからヘパリン結合画分を溶出する工程。
〔16〕血管または筋肉に投与される、骨髄細胞を骨髄から末梢血に動員する方法に使用するための、以下の(a)から(i)のいずれかに記載の物質;
(a)HMGB1タンパク質
(b)HMGB1タンパク質を分泌する細胞
(c)HMGB1タンパク質をコードするDNAが挿入されたベクター
(d)HMGB2タンパク質
(e)HMGB2タンパク質を分泌する細胞
(f)HMGB2タンパク質をコードするDNAが挿入されたベクター
(g)HMGB3タンパク質
(h)HMGB3タンパク質を分泌する細胞
(i)HMGB3タンパク質をコードするDNAが挿入されたベクター。
〔17〕血管または筋肉に投与される、骨髄細胞を骨髄から末梢血に動員する方法に使用するための、細胞又は組織を溶媒に浸す工程を含む方法で製造される細胞又は組織の抽出液。
〔18〕血管または筋肉に投与される、骨髄細胞を骨髄から末梢血に動員する方法に使用するための、以下の工程を含む方法で製造されるヘパリン結合画分;
(a)細胞又は組織を溶媒に浸す工程、
(b)工程(a)で得られる抽出液を固定化ヘパリンに接触させる工程、および
(c)固定化ヘパリンからヘパリン結合画分を溶出する工程。
(a)HMGB1タンパク質
(b)HMGB1タンパク質を分泌する細胞
(c)HMGB1タンパク質をコードするDNAが挿入されたベクター
(d)HMGB2タンパク質
(e)HMGB2タンパク質を分泌する細胞
(f)HMGB2タンパク質をコードするDNAが挿入されたベクター
(g)HMGB3タンパク質
(h)HMGB3タンパク質を分泌する細胞
(i)HMGB3タンパク質をコードするDNAが挿入されたベクター
上記薬剤を血管または筋肉に投与することにより、末梢循環中に骨髄組織幹細胞が動員され、損傷組織の再生を促進することができる。また、上記薬剤には、機能的組織再生誘導・促進剤としての用途のみならず、組織幹細胞の減少による組織・臓器機能の低下を予防する、いわゆる予防医薬としての用途、あるいは加齢性変化の進行を遅延させる、抗加齢医薬としての用途が期待できる。
また上記薬剤を投与し、末梢血中に動員した多能性幹細胞を体外へ回収後、濃縮して損傷部位に投与して治療することも可能である。従来の骨髄間葉系幹細胞治療では体内深部にある骨髄から細胞を回収するため生体に対して侵襲があるが、本発明の薬剤を用いれば、低侵襲に骨髄間葉系幹細胞を末梢血から回収し、骨髄間葉系幹細胞移植等に利用できる。
溶媒に浸される細胞又は組織としては、特に制限はないが、組織由来細胞、組織由来細胞から樹立された株化細胞(例えば、HeLa、HEK293が例示できるが、これらに制限されない)、単離された細胞、単離されていない細胞(例えば単離された組織中に存在する細胞)、HMGB1、HMGB2、またはHMGB3タンパク質をコードするDNAが導入された細胞などが例示できる。上記組織としては、どのような組織でもよく、例えば、生体皮膚組織、体内生検(手術)組織(脳、肺、心臓、肝臓、胃、小腸、大腸、膵臓、腎臓、膀胱、脾臓、子宮、精巣や血液など)が例示できるが、これらに制限されるものではない。
上記溶媒としては生理食塩水、PBS(Phosphate-buffered saline)、TBS(Tris-buffered saline)が例示できるが、これらに制限されない。また、細胞や組織を溶媒に浸す時間としては、細胞壊死が誘導されるために必要・十分な時間、すなわち1時間から48時間(例えば6時間から48時間)、好ましくは12から24時間であるが、この時間に限定されるものではない。よって、「細胞を溶媒に浸す工程」は「壊死が誘導されるために必要・十分な時間、細胞を溶媒に浸す工程」や「細胞を壊死させる工程」と言い換えることができる。また、細胞や組織を溶媒に浸す温度として4℃から25℃(例えば4℃から8℃)、好ましくは4℃が例示できるが、これに制限されない。また、細胞や組織を溶媒に浸すpHとしてはpH7から8、好ましくはpH7.5が例示できるが、これに制限されない。また、緩衝液の成分として、10 mM〜50 mM、好ましくは10〜20 mMの濃度のリン酸緩衝液が挙げられるが、これに制限されない。
また、本発明においては、細胞や組織を溶媒に浸した後に、細胞や組織を含む溶媒から該細胞や該組織を取り除くこともできる。溶媒から細胞や組織を取り除く方法は当業者に周知な方法であれば、特に制限されない。例えば、4℃〜25℃(例えば4℃)、また重力加速度10G〜10万G(例えば440G)で遠心し、上清を分取することにより、溶媒から細胞や組織を取り除くことができるが、これに制限されない。該上清を細胞や組織の抽出液として利用できる。
本発明で用いられる細胞又は組織を溶媒に浸す工程を含む方法で製造される細胞又は組織の抽出液としては、例えば、皮膚抽出液や末梢血単核球抽出液(末梢血抽出液)が挙げられるが、これらに制限されない。
末梢血抽出液の調整方法は、注射器などを用いて採血した後、冷凍庫や液体窒素、ドライアイスなどで細胞を凍結し、その後0℃以上の温度下で再融解する。さらに、細胞の不溶成分を取り除くために、例えば、4℃〜25℃(例えば4℃)、また重力加速度10G〜100000G(例えば440G)で遠心し、上清を分取することにより、溶媒から細胞の不溶成分を取り除くことができるが、これに制限されない。該上清を細胞や組織の抽出液として利用できる。細胞の不溶成分を除去するためには、遠心操作の代わりに、0.45μmの微少の孔をもつニトロセルロースフィルターなどを通過させることで、不溶成分を取り除くことができる。また、採血した末梢血を3時間から48時間4℃の状態に置くことで、細胞の壊死を誘発し、末梢血中の細胞から細胞内成分を分泌させることができる。この後重力加速度10G〜100000G(例えば440G)で遠心し、上清を分取することにより、溶媒から細胞の不溶成分を取り除くことができるが、これに制限されない。該上清を細胞や組織の抽出液として利用できる。細胞の不溶成分を除去するためには、遠心操作の代わりに、0.45μmの微少の孔をもつニトロセルロースフィルターなどを通過させることで、不溶成分を取り除くことができる。
また末梢血単核球から細胞抽出液を調整する方法は、注射器などを用いて末梢血全血を採取した後PBSにて全量を4mLに希釈し、遠心管にFicoll-Paque Plus(GE)液を3mL 挿入後その上に希釈血液を重層する。400G (18℃)で40分間遠心し、単核球を含む中間層を新しい遠心管に回収し、45 mL のPBSを加え800G(18℃)5分で遠心し上清を除去する。さらにもう一度45 mL のPBSを加え800G(18℃)5分で遠心し上清を除去する。沈殿した細胞に200μLのPBSを加え懸濁する。細胞懸濁液は-80℃の冷凍庫内において30分間凍結し、冷凍庫から氷上で融解する。この凍結融解の操作を3回繰り返す。さらに800G(4℃)15分で遠心して上清を回収する。細胞を凍結する代わりに、4℃の冷蔵庫に3時間から48時間置くことで細胞の壊死を誘発し細胞内成分を分泌させることができる。また、氷上で冷却しながら、超音波処理を行うことで細胞を破壊し細胞内成分を細胞外へ出すことができる。いずれの場合も細胞内成分を細胞外へ出した後、重力加速度440Gから1000000G好ましくは100000Gから20000Gで遠心操作をおこないその上清を回収して細胞抽出液とする。また、遠心操作の代わりに、0.45μmの微少の孔をもつニトロセルロースフィルターもしくはセルロースアセテートなどを通過させることで、不溶成分を取り除き細胞抽出液とすることができる。
(a)細胞又は組織を溶媒に浸す工程
(b)工程(a)で得られる抽出液を固定化ヘパリンに接触させる工程、および
(c)固定化ヘパリンからヘパリン結合画分(ヘパリン精製画分、ヘパリンカラム精製画分とも表現しうる)を溶出する工程。
固定化ヘパリンとは、ヘパリンを不溶性担体に共有結合させたものである。上記不溶性担体としては、Sepharose beads(Sepharose 4B,Sepharose 6B等:GE Healthcare)が例示されるが、これに制限されるものではない。本発明においては、市販の固定化ヘパリン(Hitrap Hepalin HP column: GE Healthcare)を用いてもよい。
細胞や組織の抽出液と固定化ヘパリンの接触条件としては、pH 7〜8程度(好ましくはpH 7.5)、塩濃度は0〜200 mM、好ましくは100〜200 mM程度が例示されるが、これらに制限されない。抽出液と固定化ヘパリンとが接触している時間は特に限定されないが、ヘパリン結合画分を固定化ヘパリンに十分吸着させるという観点では5分以上保持されることが好ましい。また、温度としては、4〜8℃、好ましくは4℃が挙げられるが、これらに制限されない。さらに、固定化ヘパリンに吸着したヘパリン結合画分の溶出条件としては、pH 7〜8程度、塩濃度200〜1000 mM(好ましくは1000 mM程度)が例示されるが、これらに制限されるものではない。
また上記薬剤を投与し、末梢血中に動員した多能性幹細胞を体外へ回収後、濃縮して損傷部位に投与して治療することも可能である。従来の骨髄間葉系幹細胞治療では体内深部にある骨髄から細胞を回収するため生体に対して侵襲があるが、本発明の薬剤を用いれば、低侵襲に骨髄間葉系幹細胞を末梢血から回収し、骨髄間葉系幹細胞移植等に利用できる。
(a)HMGB1タンパク質
(b)HMGB1タンパク質を分泌する細胞
(c)HMGB1タンパク質をコードするDNAが挿入されたベクター
(d)HMGB2タンパク質
(e)HMGB2タンパク質を分泌する細胞
(f)HMGB2タンパク質をコードするDNAが挿入されたベクター
(g)HMGB3タンパク質
(h)HMGB3タンパク質を分泌する細胞
(i)HMGB3タンパク質をコードするDNAが挿入されたベクター
本発明はまた、血管または筋肉に投与される、細胞又は組織を溶媒に浸す工程を含む方法で製造される細胞又は組織の抽出液を含む、骨髄細胞を骨髄から末梢血に動員するためのキットを提供する。
本発明はまた、血管または筋肉に投与される、以下の工程を含む方法で製造されるヘパリン結合画分を含む、骨髄細胞を骨髄から末梢血に動員するためのキットを提供する。
(a)細胞又は組織を溶媒に浸す工程、
(b)工程(a)で得られる抽出液を固定化ヘパリンに接触させる工程、および
(c)固定化ヘパリンからヘパリン結合画分を溶出する工程。
上記キットとしては、(1)フィブリノゲンに溶解した上記抽出液もしくは上記画分等、および(2)トロンビンを含む組織再生促進用キット、または、(1)上記抽出液もしくは上記画分等、(2)フィブリノゲン、および(3)トロンビンを含む組織再生促進用キットが例示できる。本発明においては、市販のフィブリノゲンやトロンビンを使用することができる。例えば、フィブリノゲンHT-Wf(ベネシスー三菱ウェルファーマー)、ベリプラスト(ZLBベーリング)、ティシール(バクスター)、ボルヒール(化血研)、タココンブ(ZLBベーリング)が挙げられるが、これらに制限されるものではない。
本発明において、骨髄由来間葉系幹細胞あるいは骨髄間質多能性細胞あるいは骨髄多能性幹細胞とは、骨髄内に存在する細胞であって、骨髄から直接あるいはその他の組織(血液や皮膚、脂肪、その他の組織)から間接的に採取され、(プラスチックあるいはガラス製)培養皿への付着細胞として培養・増殖可能であり、骨、軟骨、脂肪などの間葉系組織(間葉系幹細胞)、あるいは骨格筋、心筋、さらには神経組織、上皮組織(多能性幹細胞)への分化能を有するという特徴を持つ細胞であり、骨髄血採血、末梢血採血、さらには脂肪など間葉組織、皮膚などの上皮組織、脳などの神経組織からの採取によって取得することができる。また骨髄由来間葉系幹細胞あるいは骨髄由来多能性幹細胞あるいは骨髄多能性幹細胞は一度培養皿へ付着させた細胞を生体の損傷部に投与することにより、例えば皮膚を構成するケラチノサイトなどの上皮系組織、脳を構成する神経系の組織への分化能も有するという特徴も持つ。
また、ヒト骨髄間葉系幹細胞あるいは骨髄間質多能性幹細胞あるいは骨髄多能性幹細胞は骨髄採取(骨髄細胞採取)、末梢血採血、脂肪採取し、直接あるいは単核球分画を分離後に培養して付着細胞として取得することができる細胞が例示できるが、これに制限されるものではない。ヒト骨髄間葉系幹細胞あるいは骨髄間質多能性幹細胞あるいは骨髄多能性幹細胞のマーカーとしては、Lin陰性、CD45陰性、CD44陽性、の全部または一部が例示できるが、これらに制限されるものではない。
また、マウス骨髄間葉系幹細胞あるいは骨髄間質多能性幹細胞あるいは骨髄多能性幹細胞は、例えば、実施例に記載の方法によって取得できる細胞が例示できるが、これに制限されるものではない。マウス骨髄間葉系幹細胞あるいは骨髄間質多能性幹細胞あるいは骨髄多能性幹細胞のマーカーとしては、CD44陽性、PDGFRα陽性、PDGFRβ陽性、CD45陰性、Lin陰性、Sca-1陽性、c-kit陰性、の全部または一部が例示できるが、これらに制限されるものではない。
組織前駆細胞は、血液系以外の特定組織細胞への一方向性分化能を持つ未分化細胞と定義され、上述した間葉系組織、上皮系組織、神経組織、実質臓器、血管内皮への分化能を有する未分化細胞を含む。
本発明の薬剤における抽出液、ヘパリン結合画分、HMGB1、HMGB2、またはHMGB3タンパク質の起源となる動物種としては、ヒト又は非ヒト動物が挙げられ、例えば、ヒト、マウス、ラット、サル、ブタ、イヌ、ウサギ、ハムスター、モルモットなどが例示できるが、上記抽出液等が投与される動物種と同じ動物種であることが好ましい。
本発明の薬剤におけるHMGB2タンパク質としては、配列番号:7、9または11に記載のアミノ酸配列を含むタンパク質が例示できるが、これらに限定されるものではない。本発明のHMGB2タンパク質には、配列番号:7、9または11に記載のアミノ酸配列を含むタンパク質と機能的に同等なタンパク質も含まれる。そのようなタンパク質としては、例えば、1)配列番号:7、9または11に記載のアミノ酸配列において1若しくは複数のアミノ酸が置換、欠失、挿入、および/または付加したアミノ酸配列からなり、配列番号:7、9または11に記載のアミノ酸配列を含むタンパク質と機能的に同等な単離されたタンパク質、および、2)配列番号:8、10または12に記載の塩基配列を含むDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズするDNAによりコードされるタンパク質であって、配列番号:7、9または11に記載のアミノ酸配列を含むタンパク質と機能的に同等な単離されたタンパク質が挙げられる。
本発明の薬剤におけるHMGB3タンパク質としては、配列番号:13または15に記載のアミノ酸配列を含むタンパク質が例示できるが、これらに限定されるものではない。本発明のHMGB3タンパク質には、配列番号:13または15に記載のアミノ酸配列を含むタンパク質と機能的に同等なタンパク質も含まれる。そのようなタンパク質としては、例えば、1)配列番号:13または15に記載のアミノ酸配列において1若しくは複数のアミノ酸が置換、欠失、挿入、および/または付加したアミノ酸配列からなり、配列番号:13または15に記載のアミノ酸配列を含むタンパク質と機能的に同等な単離されたタンパク質、および、2)配列番号:14または16に記載の塩基配列を含むDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズするDNAによりコードされるタンパク質であって、配列番号:13または15に記載のアミノ酸配列を含むタンパク質と機能的に同等な単離されたタンパク質が挙げられる。
配列番号:1、3、5、7、9、11、13または15に記載のアミノ酸配列を含むタンパク質と機能的に同等な単離されたタンパク質は、配列番号:1、3、5、7、9、11、13または15に記載のアミノ酸配列を含むタンパク質のホモログあるいはパラログでありうる。配列番号:1、3、5、7、9、11、13または15に記載のアミノ酸配列を含むタンパク質と機能的に同等なタンパク質は、当業者によって公知の方法(実験医学別冊・遺伝子工学ハンドブック, pp246-251、羊土社、1991年発行)で単離することができる。
配列番号:1、3、5、7、9、11、13または15に記載のアミノ酸配列を含むタンパク質と機能的に同等なタンパク質としては、骨髄由来細胞の誘導活性を有するタンパク質が挙げられる。
改変されるアミノ酸の数は、典型的には50アミノ酸以内であり、好ましくは30アミノ酸以内であり、さらに好ましくは5アミノ酸以内(例えば、1アミノ酸)であると考えられる。
また、非保存的置換によりタンパク質の活性などをより上昇(例えば恒常的活性化型タンパク質などを含む)させることも考えられる。
ハイブリダイゼーションを利用することによって、たとえば配列番号:1、3、5、7、9、11、13または15に記載のアミノ酸配列を含むタンパク質以外のHMGB1、HMGB2、またはHMGB3タンパク質のホモログをコードするDNAの単離が可能である。
(1)細胞又は組織の抽出液、ヘパリン結合画分、HMGB1、HMGB2、HMGB3タンパク質、該タンパク質を分泌する細胞、該タンパク質をコードするDNAが挿入されたベクター、該タンパク質の部分ペプチド、該部分ペプチドを分泌する細胞、または該部分ペプチドをコードするDNAが挿入されたベクターを、血管または筋肉に投与する工程を含む、骨髄細胞を骨髄から末梢血に動員する方法、
(2)血管または筋肉に投与される、骨髄細胞を骨髄から末梢血に動員するために用いる薬剤の製造における、細胞又は組織の抽出液、ヘパリン結合画分、HMGB1、HMGB2、HMGB3タンパク質、該タンパク質を分泌する細胞、該タンパク質をコードするDNAが挿入されたベクター、該タンパク質の部分ペプチド、該部分ペプチドを分泌する細胞、または該部分ペプチドをコードするDNAが挿入されたベクターの使用、
(3)血管または筋肉に投与される、骨髄細胞を骨髄から末梢血に動員する方法に使用するための、細胞又は組織の抽出液、ヘパリン結合画分、HMGB1、HMGB2、HMGB3タンパク質、該タンパク質を分泌する細胞、該タンパク質をコードするDNAが挿入されたベクター、該タンパク質の部分ペプチド、該部分ペプチドを分泌する細胞、または該部分ペプチドをコードするDNAが挿入されたベクター。
(a)細胞又は組織の抽出液を調製する工程、および
(b)工程(a)で調製された抽出液による骨髄細胞の骨髄から末梢血への動員活性を測定する工程
(a)複数の抽出液について、上述の方法で、該抽出液に骨髄細胞を骨髄から末梢血に動員する因子が含まれるか否かを評価する工程、および
(b)工程(a)で骨髄細胞を骨髄から末梢血に動員する因子が含まれると評価された抽出液を選択する工程
なお本明細書において引用されたすべての先行技術文献は、参照として本明細書に組み入れられる。
〔実施例1〕
目的:皮膚組織抽出液内に存在する骨髄由来組織幹細胞誘導因子による骨髄組織幹細胞の末梢血への動員
方法:上記の目的に対して以下の方法により研究を行った。
1)骨髄由来組織幹細胞誘導剤の調製:新生マウス(2日齢)25匹から得た遊離皮膚片を生理的リン酸緩衝液pH 7.4(PBS)25 mlに浸し、4℃で24時間インキュベーションした後、組織を取り除くために、4℃の条件下で10分間、440 Gで遠心し上清を回収して皮膚抽出液(SE)を作製した。
また、C57/Bl6新生マウス皮膚からTrizol (invitrogen) を用いてRNA を抽出し更にSuperScript III cDNA synthesis kit(Invitrogen) を用いてcDNA を合成した。このcDNA をテンプレートとしてHMGB1のcDNAをPCR (ポリメラーゼ連鎖反応)法を用いて増幅し、アミノ酸配列のN末端にFlag tagの配列(Asp-Tyr-Lys-Asp-Asp-Asp-Lys;配列番号:18)を付加したタンパク質を発現するように、哺乳類細胞でタンパク質を発現させるプラスミドベクターpCAGGSに挿入した(図1)。これらのプラスミドベクターをHEK293 (ヒト胎児腎細胞由来培養細胞株)に遺伝子導入し48時間培養しタンパク質を発現させた。HMGB1タンパク質をそれぞれ発現させた細胞及び培養上清は4℃で16時間インキュベートした後、4400 g・5分間遠心し上清を回収した。この上清50 mL あたり100μLのAnti Flag 抗体Gel(Sigma)を混合し4℃で16時間インキュベートした。遠心しGelを回収した後PBSを用いて、5回洗浄した。更に 3X Flag peptide(final 100μg/ml)を用いて溶出した。溶出したタンパク質はHMGB1 ELISA kit (シノテスト)を用いて濃度を確認し、凍結乾燥後PBSを用いて200μg/mLに調整した。
8週齢雄マウス(C57/Bl6)の尾静脈からマウスHMGB1を250μL(1μg/μL)もしくは陰性コントロール群としてPBS250μLを30G1/2の注射針を装着したシリンジを用い投与した(図4)。投与12時間後、イソフルランによる吸入麻酔下、マウスの心臓からヘパリンコートした1 mLのシリンジを用いて末梢血1 mLを採血し、3 mLのPBSと混合した後、3 mLのFicol(GE healthcare)の上に静かに重層した。遠心機を用い、25℃で400 g、40分間遠心した。中間層の白濁した層の細胞を単核球画分として回収した。回収した細胞に1 mLの溶血剤であるHLB solution(免疫生物研究所)を加え室温で5分インキュベートした。この溶血操作を2回繰り返した。10 mLのPBSを加え、25℃で440 g、5分間遠心し上清を除去して細胞を回収した。この細胞1,000,000個に抗マウスPE標識PDGFRα抗体(e-Bioscience)、PerCy5標識抗マウスCD44抗体(BD biosciences)それぞれをPBSで100倍希釈し20分間室温でインキュベートした。その後この細胞を25℃、440 g、5分間遠心し上清を除去した。1%パラホルムアルデヒド含PBSを400μL加え、フローサイトメトリー解析のサンプルとした。
目的:組み換えHMGB1蛋白の静脈内投与によって、間葉系幹細胞が末梢血中へ動員されるかを確認した。
方法:C57BL6マウス(8〜10週齢、オス)尾静脈より組み換えHMGB1蛋白/生理食塩水(100 μg/ml)を400μl (40μg HMGB1)あるいは生理食塩水400μl投与した。12時間後にマウス末梢血を採取してPBSを加え全量を4mLに希釈した。遠心管にFicoll-Paque Plus(GE)液を3mL 挿入後その上に希釈血液を重層した。400G (18℃)で40分間遠心し、単核球を含む中間層を新しい遠心管に回収し、45 mL のPBSを加え800G(18℃)5分で遠心し上清を除去した。さらにもう一度45 mL のPBSを加え800G(18℃)5分で遠心し上清を除去した。得られた単核球をPhycoerythrobilin(PE)標識抗マウスPDGFRα抗体およびFluorescein isothiocyanate(FITC)標識抗マウスCD44抗体で反応させた後、フローサイトメトリー(Facscan ; Becton, Dickinson and Company)により単核球分画内のPDGFRα陽性/CD44陽性細胞の存在頻度を評価した。
目的:皮膚抽出液中HMGB1ファミリーの同定と骨髄間葉系幹細胞誘導活性の検討
方法:新生マウス皮膚抽出液中に含まれるHMGB蛋白ファミリーの有無をWestern blot 法を用いて確認した。サンプルとして、新生マウス400匹から得た遊離皮膚片を生理的リン酸緩衝液pH 7.4(PBS)400 ml内に浸し、4℃で24時間インキュベーションした後、組織を取り除くために、4℃の条件下で10分間、440 Gで遠心し上清を回収して得られた皮膚抽出液を10μl をSDS-PAGE法を用いて電気泳動し、ゲル中で分離した蛋白をブロッティング装置(ATTO)を用いPVDF膜にトランスファーした。3%スキムミルク0.1% Tween 20 含PBS(S-T-PBS)にて、室温で1時間インキュベートした後、S-T-PBSで1000倍に希釈したラビット抗マウスHMGB1 抗体、ラビット抗マウスHMGB2抗体、ラビット抗マウスHMGB3抗体をそれぞれ4℃で16時間反応させた。反応後、同PVDF膜をS-T-PBSにて5分間5回洗浄後、S-T-PBSで2000倍希釈したペルオキシダーゼ標識ヤギ抗ラビットIgG抗体(GE Healthcare)にて同PVDF膜を25℃で1時間インキュベートした。さらにS-T-PBSにて5分間5回洗浄後ECL Western Blotting Detection System (GE Healthcare)を同PVDF膜と反応させ、ECL film を感光させた後現像してHMGB1、HMGB2、HMGB3タンパク質の存在を検出した。
目的:骨髄間葉系幹細胞誘導因子組織抽出液の作製方法の確立
方法:6週齢C57BL6一匹分の脳、心臓、腸、腎臓、肝臓及び新生マウス皮膚一匹分を生理的リン酸緩衝液pH 7.4(PBS)1 ml内に浸し、4℃で24時間インキュベーションした後、組織を取り除くために、4℃の条件下で10分間、440 Gで遠心し上清を回収して組織抽出液とした。得られた抽出液の中に骨髄間葉系幹細胞誘導活性が存在することを確認するため、ボイデン・チャンバーを用い、骨髄由来間葉系幹細胞に対する遊走活性を検討した。また、同じサンプル中に含まれるHMGB1の濃度をHMGB1 ELISA kit(シノテスト)を用いて計測した。更に脳、心臓および皮膚の組織抽出液をヘパリンアフィニティーカラムに結合させ、結合画分のタンパク質の骨髄間葉系幹細胞誘導活性をボイデン・チャンバーを用いて確認した。
目的:培養細胞から間葉系幹細胞遊走活性物質を抽出する方法を確立する。
方法:ヒト胎児腎由来培養細胞株HEK293及びヒト子宮頸癌細胞株HeLaはそれぞれ10%胎仔牛血清含D-MEM(nacalai 社製)で培養した。それぞれの細胞をPBSで洗浄後、細胞107個を4℃の5 mlのPBS(nacalai社製)に16時間浸した。重力加速度440 Gで4℃で5分間遠心し上清を回収した。ボイデン・チャンバーの上層にヒト骨髄間葉系幹細胞をいれ、下層にDMEMで5倍希釈した細胞抽出液をいれ、ヒト骨髄間葉系幹細胞遊走活性を確認した。
結果:HEK293抽出液もHeLa抽出液も同様に骨髄間葉系幹細胞を遊走する活性を示した(図12)。
考察:培養細胞をPBSに浸すという簡便な方法で骨髄間葉系幹細胞を遊走する活性物質を抽出することに成功した。
目的:マウス脳欠損モデルを作成し、局所損傷部位に皮膚抽出液ヘパリンカラム精製画分を徐放化して投与することで、自己の骨髄系に含まれる幹細胞を局所損傷部位に遊走させ、神経系細胞の再生を誘導できないか検討する。
方法:
(1) 皮膚抽出液ヘパリンカラム精製画分の作製
切除した新生マウス皮膚からPBS(一匹/ml)中に4℃で16時間インキュベーションし抽出した皮膚抽出液を4℃の9倍容20 mM リン酸バッファー pH 7.5を用い 10倍に希釈した。あらかじめ、20 mM リン酸バッファー pH 7.5(30 ml)をHiTrap Hepalin HP column(カラム容量: 5 ml、GE Healthcare)の中に流しカラムを平衡化した。さらに、希釈液をカラムに結合させた。その後20 mM リン酸バッファー pH 7.5, 100 mM NaCl(30 ml)でカラムを洗浄した。吸着したタンパク質を溶出するため20 mM リン酸バッファー pH 7.5, 1000 mM NaClをカラム内に流入し、溶出液をチューブに分画した。吸着画分をそれぞれ、マウス骨髄由来細胞株の遊走活性をボイデン・チャンバー法を用いて評価し遊走能を有する画分を集めた。この活性を有する溶液を皮膚抽出液ヘパリン精製画分として以下の参考例に使用した。
マウスに10GyのX線単回照射を行い、骨髄抑制マウスを作成した。
GFPマウスの両側大腿骨および下腿骨より骨髄細胞を採取した。これを照射後24時間経過した骨髄抑制マウスの尾静脈より投与した。なお、投与はイソフルランによる吸入麻酔下に施行した。
GFPマウスの骨髄細胞を移植した骨髄抑制マウスにイソフルランにて吸入麻酔を行い、ペントバルビタール(45 mg/kg)を腹腔内に注入した。マウスを脳定位固定装置に固定し、メスにて頭部に正中切開を加えた。ブレグマから右外側2.5 mm、前方1 mmにドリルを用いて穿頭を施した(図13A)。この部位から深さ3 mmの位置を先端にして、20Gサーフロー針の外筒を挿入して固定した。ここでシリンジを用いて、陰圧をかけ、脳組織を一部吸引した(図13B)。
前述の位置に、ハミルトンシリンジと26Gシリンジを用いて、フィブリン糊製剤(フィブリノゲン)(ボルヒール(化血研))に溶解した皮膚抽出液ヘパリンカラム精製画分を5μl注入し、次にフィブリン糊製剤(トロンビン)(ボルヒール(化血研))を5μl注入した(図13C)。この操作によって、皮膚抽出液ヘパリンカラム精製画分の徐放剤としての効果を狙った。
コントロール群と治療群のマウスとを用いて評価した。適切な経過設定を決め(経時的に)、マウスを4%パラホルムアルデヒドにて灌流固定後、脳の切り出しを行った。さらに、4%パラホルムアルデヒドを外固定した。15%と30%の勾配をつけたショ糖にて脱水後、凍結切片を作成した。
DAPI(4',6-Diamidino-2-phenylindole, dihydrochloride)solusionにて核染色を行い、退光防止剤を用いて封入した。共焦点レーザー顕微鏡にて損傷部位(脳組織欠損部)でのGFP陽性細胞の集積を評価した。
結果:投与後、2週間および6週間後のGFP陽性細胞集積を定性的に示す。2週間後(コントロール;図13D, 皮膚抽出液ヘパリンカラム精製画分;図13E)および6週間後(コントロール;図13F 皮膚抽出液ヘパリンカラム精製画分;図13G)ともに、コントロール群に比して治療群の損傷部位にGFP陽性細胞の集積が高い傾向にあった。
考察:皮膚抽出液ヘパリンカラム精製画分投与により、骨髄由来細胞が脳組織欠損部位に集積し神経細胞の形態を示した。骨髄由来間葉系幹細胞は神経細胞にも分化することが知れており、本結果から、皮膚抽出液ヘパリンカラム精製画分によって脳損傷部位における神経系細胞再生の誘導できることが明らかになった。また、これは、脳虚血性疾患や脳挫傷における脳組織障害部位での神経再生にも応用可能である。
Claims (1)
- 以下の(a)から(i)のいずれかに記載の成分を含有し、筋肉に投与され、末梢血から骨髄間葉系幹細胞を回収するために用いる薬剤;
(a)HMGB1タンパク質
(b)HMGB1タンパク質を分泌する細胞
(c)HMGB1タンパク質をコードするDNAが挿入されたベクター
(d)HMGB2タンパク質
(e)HMGB2タンパク質を分泌する細胞
(f)HMGB2タンパク質をコードするDNAが挿入されたベクター
(g)HMGB3タンパク質
(h)HMGB3タンパク質を分泌する細胞
(i)HMGB3タンパク質をコードするDNAが挿入されたベクター。
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