以下、添付図面に従って本発明の好ましい実施の形態について詳説する。
〔インクジェット記録装置の全体構成〕
図1は、本発明の実施形態に係るインクジェットヘッド調整方法が適用されるインクジェット記録装置の全体構成図である。
同図に示すインクジェット記録装置10は、枚葉の用紙Pに水性UVインク(水性媒体を使用したUV(紫外線)硬化型インク)を用いてインクジェット方式で画像を記録するインクジェット記録装置である。
インクジェット記録装置10は、主として、用紙Pを給紙する給紙部12と、給紙部12から給紙された用紙Pの表面に処理液を付与する処理液付与部14と、処理液付与部14で処理液が付与された用紙Pの乾燥処理を行う処理液乾燥処理部16と、処理液乾燥処理部16で乾燥処理が施された用紙Pの表面に水性UVインクを用いてインクジェット方式で画像を記録する画像形成部18と、画像形成部18で画像が記録された用紙Pの乾燥処理を行うインク乾燥処理部20と、インク乾燥処理部20で乾燥処理された用紙PにUV光(活性光線)の照射を行って画像を定着させるUV照射処理部22と、UV照射処理部22でUV照射処理された用紙Pを排紙する排紙部24と、を含んで構成される。
〈給紙部〉
給紙部12は、主として、給紙台30と、サッカー装置32と、給紙ローラ対34と、フィーダボード36と、前当て38と、給紙ドラム40を含んで構成され、給紙台30に積載された用紙Pを1枚ずつ処理液付与部14へ給紙する。
給紙台30の上に積載された用紙Pは、サッカー装置32(サクションフィット32A)によって上から順に1枚ずつ引き上げられて、給紙ローラ対34(上下一対のローラ34A,34Bの間)に給紙される。
給紙ローラ対34に給紙された用紙Pは、上下一対のローラ34A,34Bによって前方に送り出され、フィーダボード36の上に載置される。フィーダボード36の上に載置された用紙Pは、フィーダボード36の搬送面に設けられたテープフィーダ36Aによって搬送される。
そして、その搬送過程でリテーナ36B、ガイドローラ36Cによってフィーダボード36の搬送面に押し付けられ、凹凸が矯正される。フィーダボード36によって搬送された用紙Pは、先端が前当て38に当接されることにより、傾きが矯正され、その後、給紙ドラム40に受け渡される。そして、給紙ドラム40のグリッパ40Aにより先端部を把持されて処理液付与部14へと搬送される。
〈処理液付与部〉
処理液付与部14は、主として、用紙Pを搬送する処理液付与ドラム42と、処理液付与ドラム42によって搬送される用紙Pの表面に所定の処理液を付与する処理液付与ユニット44と、を含んで構成され、用紙Pの表面に処理液を付与(塗布)する。
用紙Pの表面に塗布される処理液は、後段の画像形成部18で用紙Pに打滴される水性UVインク中の色材を凝集させる機能を有する処理液が塗布される。用紙Pの表面に処理液を塗布して水性UVインクを打滴することにより、汎用の印刷用紙を用いても着弾干渉等を起こすことなく、高品位な印刷を行うことができる。
給紙部12の給紙ドラム40から受け渡された用紙Pは、処理液付与ドラム42に受け渡される。処理液付与ドラム42は、用紙Pの先端をグリッパ42Aで把持して(咥えて)回転することにより、用紙Pを周面に巻き掛けて搬送する。
この搬送過程で、処理液皿44Bからアニロックスローラ44Cにより一定量に計量された処理液が付与された塗布ローラ44Aを用紙Pの表面に押圧当接させることで、用紙Pの表面に処理液が塗布される。なお、処理液を塗布する形態はローラ塗布に限定されず、インクジェット方式、ブレードによる塗布など、他の形態を適用することも可能である。
〈処理液乾燥処理部〉
処理液乾燥処理部16は、主として、用紙Pを搬送する処理液乾燥処理ドラム46と、用紙Pの裏面を支持(ガイド)する用紙搬送ガイド48と、処理液乾燥処理ドラム46によって搬送される用紙Pの表面に熱風を吹き当てて乾燥させる処理液乾燥処理ユニット50と、を含んで構成され、表面に処理液が付与された用紙Pに対して乾燥処理を施す。
処理液付与部14の処理液付与ドラム42から処理液乾燥処理ドラム46へ受け渡された用紙Pは、処理液乾燥処理ドラム46に具備されるグリッパ46Aによって先端を把持される。
また、用紙Pは、表面(処理液が塗布された面)を内側に向けた状態で裏面を用紙搬送ガイド48によって支持される。この状態で処理液乾燥処理ドラム46を回転させることにより用紙Pを搬送させる。
処理液乾燥処理ドラム46によって搬送される過程で、処理液乾燥処理ドラム46の内側に設置された処理液乾燥処理ユニット50から熱風が用紙Pの表面に吹き当てられて、用紙Pに乾燥処理が施され、処理液中の溶媒成分が除去されて、用紙Pの表面にインク凝集層が形成される。
〈画像形成部〉
画像形成部18は、主として、用紙Pを搬送する画像形成ドラム52と、画像形成ドラム52によって搬送される用紙Pを押圧して、用紙Pを画像形成ドラム52の周面に密着させる用紙押さえローラ54と、用紙PにC,M,Y,Kの各色のインク液滴を吐出するインクジェットヘッド56C,56M,56Y,56Kと、用紙Pに記録された画像を読み取るインラインセンサ58と、インクミストを捕捉するミストフィルタ60と、ドラム冷却ユニット62と、を含んで構成され、処理液層が形成された用紙Pの表面にC,M,Y,Kの各色のインク(水性UVインク)の液滴を打滴して、用紙Pの表面にカラー画像を描画する。
本例に適用されるインクジェットヘッドには、圧電素子のたわみ変形を利用してインクを吐出させる圧電方式(図6参照)、インクを加熱して膜沸騰現象を発生させてインクを吐出させるサーマル方式、帯電させたインクを静電気力によって記録媒体へ着弾させる静電方式など、様々な吐出方式を適用することができる。
また、本例に適用されるインクジェットヘッドは、用紙Pの全幅(用紙Pの相対移動方向と直交する主走査方向の全長)に対応する長さにわたってノズルが形成されるライン型ヘッドが適用される(図3参照)。
処理液乾燥処理部16の処理液乾燥処理ドラム46から画像形成ドラム52へ受け渡された用紙Pは、画像形成ドラム52に具備されるグリッパ52Aによって先端を把持される。さらに、用紙Pを用紙押さえローラ54の下を通過させることで、用紙Pは画像形成ドラム52の周面に密着する。
画像形成ドラム52の周面に密着させた用紙Pは、画像形成ドラム52の周面に形成された吸着穴に発生させた負圧によって吸着されて、画像形成ドラム52の周面に吸着保持される。
画像形成ドラム52の周面に吸着保持され搬送される用紙Pは、各インクジェットヘッド56C,56M,56Y,56Kの直下のインク打滴領域を通過する際に、各インクジェットヘッド56C,56M,56Y,56KからC,M,Y,Kの各色のインクの液滴が表面に打滴されて、表面にカラー画像が描画される。
用紙Pの表面に打滴されたインクは、用紙Pの表面に形成されたインク凝集層と反応し、フェザリングやブリーディング等を起こすことなく用紙Pの表面に定着し、用紙Pの表面には高品位な画像が形成される。
インクジェットヘッド56C,56M,56Y,56Kによって画像が形成された用紙Pは、インラインセンサ58の読取領域を通過する際に、表面に形成された画像が読み取られる。
インラインセンサ58による画像の読み取りは必要に応じて行われ、画像の読取データから吐出不良、濃度むら等の画像欠陥(画像異常)の検査が行われる。インラインセンサ58の読取領域を通過した用紙Pは、吸着が解除された後、ガイド59の下を通過して、インク乾燥処理部20へと受け渡される。
〈インク乾燥処理部〉
インク乾燥処理部20は、チェーングリッパ64によって搬送される用紙Pに対して乾燥処理を施すインク乾燥処理ユニット68を含んで構成され、画像形成後の用紙Pに対して乾燥処理を施し、用紙Pの表面に残存する液体成分を除去する。
インク乾燥処理ユニット68の構成例として、ハロゲンヒータ、赤外線(IR)ヒータ
等の熱源と、熱源によって熱せられた空気(気体、流体)を用紙Pへ吹き付けるファンと、を具備する態様が挙げられる。
画像形成部18の画像形成ドラム52からチェーングリッパ64へ受け渡された用紙Pは、チェーングリッパ64に具備されるグリッパ64Dによって先端を把持される。
チェーングリッパ64は、第1スプロケット64A及び第2スプロケット64Bに一対の無端状のチェーン64Cが巻き掛けられた構造を有している。
また、用紙Pの後端の裏面は、チェーングリッパ64との間の一定の距離を離して配置されたガイドプレート72の用紙保持面に吸着保持される。
〈UV照射処理部〉
UV照射処理部22(活性光線照射手段)は、UV照射ユニット74を含んで構成され、水性UVインクを用いて記録された画像に紫外線を照射して、用紙Pの表面に画像を定着させる。
UV照射ユニットの構成例として、UV光を発生させる紫外線光源と、UV光を集光する手段、UV光を偏向させる手段等として機能する光学系と、を含む態様が挙げられる。
チェーングリッパ64によって搬送される用紙PがUV照射ユニット74のUV光照射領域に到達すると、チェーングリッパ64の内部に設置されたUV照射ユニット74によりUV照射処理が施される。
すなわち、先端をグリッパによって把持され、後端の裏面を用紙保持面に吸着保持されてチェーングリッパ64によって搬送される用紙Pは、用紙Pの搬送経路において用紙Pの表面と対応する位置に配置されたUV照射ユニット74からUV光が照射される。UV光が照射された画像(インク)は、硬化反応が発現して用紙Pの表面に定着する。
UV照射処理が施された用紙Pは、傾斜搬送経路70Bを経由して排紙部24へ送られる。傾斜搬送経路70Bを通過する用紙Pに対して、冷却処理を施す冷却処理部を備えてもよい。
〈排紙部〉
一連の画像形成処理が行われた用紙Pを回収する排紙部24は、用紙Pを積み重ねて回収する排紙台76を含んで構成される。
チェーングリッパ64(グリッパ64D)は、排紙台76の上で用紙Pを開放し、排紙台76の上に用紙Pをスタックさせる。排紙台76は、チェーングリッパ64から開放された用紙Pを積み重ねて回収する。排紙台76には、用紙Pが整然と積み重ねられるように、不図示の用紙当て(前用紙当て、後用紙当て、横用紙当て等)が備えられる。
また、排紙台76は、図示しない排紙台昇降装置によって昇降可能に設けられる。排紙台昇降装置は、排紙台76にスタックされる用紙Pの増減に連動して、その駆動が制御され、最上位に位置する用紙Pが常に一定の高さに位置するように、排紙台76を昇降させる。
〈制御系の説明〉
図2は、図1に示すインクジェット記録装置10の制御系の概略構成を示すブロック図である。
同図に示すように、インクジェット記録装置10は、システムコントローラ100、通信部102、画像メモリ104、搬送制御部110、給紙制御部112、処理液付与制御部114、処理液乾燥制御部116、画像形成制御部118、インク乾燥制御部120、UV照射制御部122、排紙制御部124、操作部130、表示部132等が備えられる。
システムコントローラ100は、インクジェット記録装置10の各部を統括制御する制御手段として機能し、かつ、各種演算処理を行う演算手段として機能する。このシステムコントローラ100は、CPU(Central Processing Unit)100A及び、ROM(Read Only Memory)100B、RAM(Random Access Memory)100Cを内蔵している。
システムコントローラ100は、ROM100B、RAM100C、画像メモリ104等のメモリへのデータの書き込み、これらのメモリからのデータの読み出しを制御するメモリコントローラとしても機能する。
図2には、システムコントローラ100にROM100B、RAM100C等のメモリを内蔵する態様を例示したが、ROM100B、RAM100C等のメモリは、システムコントローラ100の外部に設けられていてもよい。
通信部102は、所要の通信インターフェースを備え、通信インターフェースと接続されたホストコンピュータとの間でデータの送受信を行う。
画像メモリ104は、画像データを含む各種データの一時記憶手段として機能し、システムコントローラ100を通じてデータの読み書きが行われる。通信部102を介してホストコンピュータから取り込まれた画像データは、一旦画像メモリ104に格納される。
搬送制御部110は、インクジェット記録装置10における用紙Pの搬送系の動作(給紙部12から排紙部24までの用紙Pの搬送)を制御する。搬送系には、図1に図示した給紙部12におけるテープフィーダ36A、前当て38、給紙ドラム40、処理液付与部14における処理液付与ドラム42、処理液乾燥処理部16における処理液乾燥処理ドラム46、画像形成部18における画像形成ドラム52、インク乾燥処理部20、UV照射処理部22及び排紙部24で共通して用いられるチェーングリッパ64が含まれる(図1参照)。
給紙制御部112は、システムコントローラ100からの指令に応じて、給紙ローラ対34の駆動、テープフィーダ36Aの駆動等の給紙部12の各部の動作を制御する。
処理液付与制御部114は、システムコントローラ100からの指令に応じて、処理液付与ユニット44の動作等の処理液付与部14の各部の動作(処理液の付与量、付与タイミング等)を制御する。
処理液乾燥制御部116は、システムコントローラ100からの指令に応じて、処理液乾燥処理部16の各部の動作を制御する。すなわち、処理液乾燥制御部116は、乾燥温度、乾燥気体の流量、乾燥気体の噴射タイミングなど、処理液乾燥処理ユニット50(図1参照)の動作を制御する。
画像形成制御部118は、システムコントローラ100からの指令に応じて、画像形成部18(インクジェットヘッド56C,56M,56Y,56K、図1参照)からのインク打滴(吐出)を制御する。
すなわち、図2の画像形成制御部118は、入力画像データからドットデータを形成する画像処理部と、駆動電圧の波形を生成する波形生成部(不図示)と、駆動電圧の波形を記憶する波形記憶部(図8に符号404を付して図示する。)と、インクジェットヘッド56C,56M,56Y,56Kのそれぞれに対して、ドットデータに応じた駆動波形を有する駆動電圧を供給する駆動回路(図8に符号400を付して図示する。)と、を含んで構成される。
画像処理部では、入力画像データ(0から255のデジタル値で表されるラスターデータ)に対してRGBの各色に分解する色分解(分版)処理、RGBをCMYKに変換する色変換処理、ガンマ補正、むら補正等の補正処理、M値の各色のデータをN値(M>N、Mは3以上の整数、Nは2以上の整数)の各色データに変換するハーフトン処理が施される。
画像処理部による処理を経て生成されたドットデータに基づいて、各画素位置の打滴タイミング、インク打滴量が決められ、各画素位置の打滴タイミング、インク打滴量に応じた駆動電圧、駆動信号(各画素の打滴タイミングを決める制御信号)が生成され、この駆動電圧がインクジェットヘッド56C,56M,56Y,56Kへ供給され、インクジェットヘッド56C,56M,56Y,56Kから打滴されたインク液滴によって各画素位置にドットが形成される。
インク乾燥制御部120は、システムコントローラ100からの指令に応じて、インク乾燥処理部20の動作を制御する。すなわち、インク乾燥制御部120は、乾燥温度、乾燥気体の流量、乾燥気体の噴射タイミングなど、インク乾燥処理ユニット68(図1参照)の動作を制御する。
UV照射制御部122は、システムコントローラ100からの指令に応じて、UV照射処理部22によるUV光の照射光量(UV光の強度(照射量))を制御し、かつ、UV光の照射タイミングを制御する。
排紙制御部124は、システムコントローラ100からの指令に応じて、排紙台76(図1参照)に用紙Pがスタックされるように、排紙部24の動作を制御する。
操作部130は、操作ボタン、キーボード、タッチパネル等の操作部材を備え、その操作部材から入力された操作情報をシステムコントローラ100に送出する。システムコントローラ100は、この操作部130から送出された操作情報に応じて各種処理を実行する。
表示部132は、LCDパネル等の表示装置を備え、システムコントローラ100からの指令に応じて、装置の各種設定情報、異常情報などの情報を表示装置に表示させる。
インラインセンサ58から出力される検出信号(検出データ)は、ノイズ除去、波形整形等の処理が施され、システムコントローラ100を介して予め決められたメモリ(例えば、RAM100C)に記憶される。
調整値算出部134は、ヘッドモジュール間の用紙Pの搬送方向の相対位置ずれの測定結果から、各ヘッドモジュール間の位置ずれをキャンセルするために、打滴タイミングを調整するための調整値を算出し、かつ、ヘッドモジュール交換後の調整値及び調整値の補正値を算出する(詳細後述)。
調整値記憶部136は、調整値算出部134によって算出された調整値、及び調整値算出部134によって算出された補正値又は補正後の調整値が記憶される。画像形成部18(又は画像形成制御部118)は、この調整値又は補正後の調整値に基づいてインクジェットヘッド56の打滴タイミングを調整して、インクジェットヘッド56の打滴を実行させる(詳細後述)。
〔インクジェットヘッドの構造〕
次に、本発明の実施形態に係るインクジェットヘッドの構造について詳細に説明する。
〈全体構造〉
図3は、図1に図示したインクジェットヘッド56C,56M,56Y,56Kの構成図である。CMYKの各色に対応するインクジェットヘッド56C,56M,56Y,56Kには同一の構造が適用されるので、これらを区別する必要がない場合にはインクジェットヘッド56C,56M,56Y,56Kのアルファベットを省略することがある。
図3に示すインクジェットヘッド56は、用紙Pの相対搬送方向(Y方向、第2方向)と直交する用紙Pの幅方向(X方向、第1方向)について複数のヘッドモジュール200がつなぎ合わせられた構造を有している。
ヘッドモジュール200に付した枝番号(「−」(ハイフン)の後ろに付した整数)は、i(1からnの整数)番目のヘッドモジュールであることを表している。
各ヘッドモジュール200のインク吐出面277には、複数のノズル開口(図3中不図示、図5に符号280を付して図示)が配置されている。
すなわち、図3に図示したインクジェットヘッド56は、用紙Pの全幅Lmaxに対応する長さにわたって複数のノズル開口が配置されたフルライン型のインクジェットヘッド(シングルパス・ページワイドヘッド)である。
ここで、「用紙Pの全幅Lmax」とは、用紙Pの相対搬送方向(Y方向)と直交するX方向における用紙Pの全長である。なお、ここでいう「直交」には、90°未満の角度、又は90°を超える角度をなして交差する態様のうち、実質的に90°の角度をなして交差する場合と同様の作用効果を発生させる態様が含まれる。
〈ヘッドモジュールの構造例〉
図4は、ヘッドモジュール200の斜視図(部分断面図を含む図)であり、図5は図4に示したヘッドモジュール200におけるノズル面の平面透視図である。
図4に示すように、ヘッドモジュール200は、ノズル板275のインク吐出面277と反対側(図4において上側)にインク供給室232とインク循環室236等からなるインク供給ユニットを有している。
インク供給室232は、供給管路252を介してインクタンク(不図示)に接続され、インク循環室236は、循環管路256を介して回収タンク(不図示)に接続される。
図5ではノズル数を省略して描いているが、1個のヘッドモジュール200のノズル板275のインク吐出面277には、2次元のノズル配列によって複数のノズル開口280が形成されている。
すなわち、ヘッドモジュール200は、X方向に対して角度βの傾きを有するV方向に沿った長辺側の端面と、Y方向に対して角度αの傾きを持つW方向に沿った短辺側の端面とを有する平行四辺形の平面形状となっており、V方向に沿う行方向、及びW方向に沿う列方向について、複数のノズル開口280が配置されている。
なお、ノズル開口280の配置は、図5に図示した態様に限定されず、X方向に沿う行方向、及びX方向に対して斜めに交差する列方向に沿って複数のノズル開口280を配置してもよい。
図6は、ヘッドモジュール200の内部構造を示す断面図である。符号214はインク供給路、218は圧力室(液室)、216は各圧力室218とインク供給路214とをつなぐ個別供給路、220は圧力室218からノズル開口280につながるノズル連通路、226はノズル連通路220と循環共通流路228とをつなぐ循環個別流路である。
これら流路部(214,216,218,220,226,228)を構成する流路構造体210の上に、振動板266が設けられる。振動板266の上には接着層267を介して、下部電極(共通電極)265、圧電体層231及び上部電極(個別電極)264の積層構造から成る圧電素子230が配設されている。
上部電極264は、各圧力室218の形状に対応してパターニングされた個別電極となっており、圧力室218ごとに、それぞれ圧電素子230が設けられている。
インク供給路214は、図4で説明したインク供給室232につながっており、インク供給路から個別供給路216を介して圧力室218にインクが供給される。描画すべき画像の画像信号に応じて、対応する圧力室218に設けられた圧電素子230の上部電極264に駆動電圧を印加することによって、該圧電素子230及び振動板266が変形して圧力室218の容積が変化し、これに伴う圧力変化によりノズル連通路220を介してノズル開口280からインクが吐出される。
画像情報から生成されるドット配置データに応じて各ノズル開口280に対応した圧電素子230の駆動を制御することにより、ノズル開口280からインク滴を吐出させることができる。用紙P(図3参照)を一定の速度でY方向に搬送しながら、その搬送速度に合わせて各ノズル開口280からのインク吐出タイミングを制御することによって、用紙上に所望の画像を記録することができる。
図示は省略するが、各ノズル開口280に対応して設けられている圧力室218は、その平面形状が概略正方形となっており、対角線上の両隅部の一方にノズル開口280への流出口が設けられ、他方に供給インクの流入口(個別供給路)216が設けられている。
なお、圧力室の形状は、正方形に限定されない。圧力室の平面形状は、四角形(菱形、長方形など)、五角形、六角形その他の多角形、円形、楕円形など、多様な形態があり得る。
ノズル開口280及びノズル連通路220を含むノズル部281には、循環出口(不図示)が形成され、ノズル部281は循環出口を介して循環個別流路226と連通される。
ノズル部281のインクのうち、吐出に使用されないインクは循環個別流路226を介して循環共通流路228へ回収(循環)される。
循環共通流路228は、図5で説明したインク循環室236につながっており、循環個別流路226を通って常時インクが循環共通流路228へ回収されることにより、非吐出(非駆動)時におけるノズル部のインクの増粘が防止される。
〔インクジェットヘッドの駆動回路の説明〕
図7は、インクジェットヘッドと駆動回路基板との配置関係を示す斜視図である。同図に示すインクジェットヘッド56は、用紙Pの全幅Lmaxに対応する長さにわたって11個のヘッドモジュール200が、用紙Pの幅方向(X方向)に沿って一列に並べられたフルライン型ヘッドである。
各ヘッドモジュール200は、用紙Pの相対移動方向(Y方向)の両端部のそれぞれから、フレキシブルフラット基板300A,300Bが取り出されている。フレキシブルフラット基板300A,300Bは、ヘッドモジュール200へ供給される駆動電圧、駆動信号、電源が伝送される配線が形成されている。
フレキシブルフラット基板300A,300Bのヘッドモジュール200と反対側にはコネクタ304が取り付けられる。コネクタ304は、駆動回路基板302A,302Bに搭載された受け側のコネクタ(不図示)へ挿入される。
駆動回路基板は、インクジェットヘッド56(ヘッドモジュール200)へ供給される駆動電圧、駆動信号が生成される駆動回路が搭載される。図7に示す例では、左側の駆動回路基板302Aは、6つのモジュールに対応する駆動回路が搭載され、右側の駆動回路基板は、5つのモジュールに対応する駆動回路が搭載される。
なお、駆動回路基板302A,302Bを同一の構成として、それぞれに6つのモジュールに対応する駆動回路が搭載され、右側の駆動回路基板302Bは、1つのモジュール分の駆動回路を使用しない態様も可能である。
駆動回路基板302A,302Bは、はんだ面側から筐体フレーム306に支持された状態で、用紙Pの相対移動方向の上流側に部品搭載面を向けて、インクジェットヘッド56の上部に起立させて配置される。
図8は、駆動回路基板302A,302B(図7参照)に搭載される駆動回路400の要部ブロック図である。本例に示すインクジェットヘッド56は、モジュールごとに共通の駆動波形を有する駆動電圧が供給され、駆動信号によって各圧電素子230の駆動電圧の印加、非印加を切り換える方式が適用される。
同図に示す駆動回路400は、各圧電素子230の駆動タイミングを決める駆動信号が生成される駆動信号生成部402と、駆動波形が記憶される波形記憶部404と、調整値記憶部136に記憶されている調整値が変換された遅延時間tdを駆動波形に付加する遅延時間付加部407と、デジタル形式の駆動波形をアナログ形式に変換するD/A変換部409と、デジタル形式に変換された駆動波形に対して電力増幅して駆動電圧を生成する増幅部406と、を備えている。
遅延時間tdは、後述する打滴タイミングの調整値(単位:画素)に1画素の一辺の長さを乗算し、この値を用紙Pの搬送速度で除算して求められる。
また、各圧電素子230の上部電極(図6参照)には、オンオフを切り換えるアナログスイッチ416が接続される。アナログスイッチ416は、駆動信号生成部402から送出される駆動信号をトリガー信号としてオンオフが切り換えられる。
アナログスイッチ416は、スイッチIC414として集積化される。すなわち、スイッチIC414は、複数のアナログスイッチ416が1つのパッケージの中に内蔵されたIC(Integrated Circuit)である。
図9は、各ヘッドモジュールの打滴タイミングの説明図である。符号500を付した駆動電圧(駆動波形)は、打滴タイミングが調整される前の電圧(波形)である。一方、符号502を付した駆動電圧は、先に説明した調整値から算出される遅延時間tdが付加された駆動電圧である。
同図に示すように、ヘッドモジュール200ごとに用紙Pの相対搬送方向の位置ずれ量(図10に符号ΔYを付して図示)に対応した調整値が付加された駆動電圧が生成され、調整後の駆動電圧はインクジェットヘッド56(図8参照)へ供給される。
〔インクジェットヘッドの初期調整の説明〕
次に、インクジェットヘッド56の初期調整について説明する。図10(a),(b)は、インクジェットヘッド56の初期調整を模式的に図示した説明図である。以下の説明では、インクジェットヘッド56は、11個のヘッドモジュール200−1から200−11がX方向に沿って一列に並べられた構造を有しているものとする。
なお、図10(a),(b)では、11個のヘッドモジュールのうち、一部のヘッドモジュールの図示が省略されている。
図10(a)は、インクジェットヘッド56が装置に搭載され、X方向についてヘッドモジュール200−1から200−11の位置が機械的に調整された状態が図示されている。この状態において、ヘッドモジュール200−1から200−11には、製造上のばらつき、取り付け上のばらつきに起因するY方向の位置ずれが生じている。
ヘッドモジュール200−2から200−11のY方向の位置ずれ量(単位:画素)は、各ヘッドモジュール200−2から200−11のそれぞれの打滴タイミングを調整してキャンセルされる。
まず、一方の端(左端)に配置される1番目のヘッドモジュール200−1に対する、2番目のヘッドモジュール200−2のY方向の相対位置ずれ量(単位:画素)が測定される。本例では、1番目のヘッドモジュール200−1のY方向の位置を基準として、2番目のヘッドモジュール200−1のY方向の相対位置ずれ量が測定される。
また、2番目のヘッドモジュール200−2のY方向の位置を基準として、3番目のヘッドモジュール200−3のY方向の位置ずれ量が測定される。このようにして、図10(a)の左端から右端へ向かって順に、1つ前の番号が付されたヘッドモジュールを基準として各ヘッドモジュールにおけるY方向の相対位置ずれ量が測定される。
各ヘッドモジュール200−1から200−11のY方向の相対位置ずれ量は、Y方向の中央に配置され、X方向の基準となるヘッドモジュール側の端に配置されるノズル部280(図5参照)を用いて測定される。
すなわち、ヘッドモジュール200−1から200−11のそれぞれについて、テストパターンを形成し、このテストパターンに基づきヘッドモジュール200−1から200−11のそれぞれについて、Y方向の中央に配置され、かつ、Y方向の両端に配置されるノズル開口280の位置が把握される。
そして、隣接するヘッドモジュールについて、基準となる一方のヘッドモジュールのY方向の中央に配置され、X方向の測定対象の他方のヘッドモジュール側の端に配置されるノズル開口280のY方向の位置と、測定対象の他方のヘッドモジュールのY方向の中央に配置され、X方向の一方のモジュール側の端に配置されるノズル開口280のY方向の位置との差として、測定対象のヘッドモジュールのY方向の相対位置ずれ量が測定される。
Y方向の相対位置ずれ量の測定は、測定対象のノズル開口280からの打滴を含むテストパターンを形成し、テストパターンを読み取り、テストパターンの読取結果に基づいて行うことができる。
Y方向の相対位置ずれ量の測定は、ヘッドモジュール200−2から200−11について順に実行され、各ヘッドモジュール200−2から200−11のそれぞれについて、Y方向の相対位置ずれ量(ΔY2からΔY11)が測定される。
なお、ヘッドモジュール200−1は、Y方向の相対位置ずれ量を測定する基準となるヘッドモジュールが存在しないため、Y方向の相対位置ずれ量は測定されない。
測定されたY方向の相対位置ずれ量は、ヘッドモジュール200−1を基準とした絶対位置ずれ量(単位:画素)に換算される。次いで、絶対位置ずれ量の最小値が抽出され、この最小値の絶対値がヘッドモジュール200−2から200−11までの絶対位置ずれ量に付加され(最小値補正)、絶対位置ずれ量の値が最小となるヘッドモジュールが絶対位置ずれ量の基準とされる。
最小値補正をすることで、正の数(値)のみで演算が実行されるので、負の数(値)を考慮した複雑な演算を行う必要がない。
最小値補正後の各ヘッドモジュール200−2から200−11のY方向の絶対位置ずれ量は、各ヘッドモジュール200−2から200−11の打滴タイミングの調整値(単位:画素)として、図8の調整値記憶部136へ記憶される。
なお、「Y方向の絶対位置ずれ量」と「打滴タイミングの調整値」とは、画素数で表される同じ概念として取り扱うことができる。
記憶された打滴タイミングの調整値は、駆動波形の遅延時間(図9のtd)に変換されて駆動波形に付加され、ヘッドモジュール200ごとの打滴タイミングが調整される。
図10(b)は、ヘッドモジュール200−2から200−11のY方向の相対位置ずれ量(ΔY2からΔY11)に対応して、ヘッドモジュール200−2から200−11の打滴タイミングが調整された状態が模式的に図示されている。
同図に示すように、隣接するヘッドモジュール間の打滴タイミングが調整されると、各ヘッドモジュール200の調整値の累積によって、同図中左端のヘッドモジュール200−1と、右端のヘッドモジュール200−11との間の打滴タイミングにずれが生じる。
同図に図示したΔYθZは、ヘッドモジュール200−1とヘッドモジュール200−11との間の打滴タイミングのずれをY方向の距離に換算した値である。
インクジェット記録装置10の初期調整(装置立ち上げ時等の調整)では、このΔYθZは機械的に調整される。すなわち、ΔYθZをキャンセルするようにインクジェットヘッド56とX方向との角度(ΔYθZ)が調整される。
図11は、インクジェットヘッド56のX方向に対する角度調整(ΔYθZ調整)を模式的に図示した説明図である。図11に符号56Aを付して図示した構成は、インクジェットヘッド56を、画像形成ドラム52の外周面と対向するインク吐出面277(図6参照)と平行な面において回転させる際の回転軸である。
図11に示す構成では、インクジェットヘッド56の回転軸56Aは、両端のヘッドモジュール200のうち、1番目のヘッドモジュール200−1側とされる。なお、インクジェットヘッドの回転軸56Aは、ヘッドモジュール200−11側等の任意のヘッドモジュールとすることができる。
同図に一例を示す角度調整機構を用いて、インクジェットヘッド56の両端のヘッドモジュール200−1,200−11の間の打滴タイミングのずれが機械的に調整されると、Y方向における各ヘッドモジュール200−1から200−11のY方向の位置ずれに対する調整が完了する。
また、図示は省略するが、4色のインクジェットヘッド56C,56M,56Y,56K(図1参照)について、Y方向の相対的な距離が調整される。異なるインクジェットヘッド56間のY方向の位置調整は、各インクジェットヘッド56C,56M,56Y,56KのX方向の中央のヘッドモジュール200(図10(a),(b)に示す例では、6番目のヘッドモジュール200−6(不図示))を用いて、機械的に調整される。
このようにして、各インクジェットヘッドにおけるヘッドモジュール200間の調整がされ、各インクジェットヘッド56C,56M,56Y,56K間の調整がされると、インクジェットヘッド56C,56M,56Yは使用可能となる。
〔ヘッドモジュール交換後のインクジェットヘッドの調整の説明〕
次に、1つ又は複数のヘッドモジュール200が交換された後の、インクジェットヘッド56の調整について詳細に説明する。
図12(a)から(c)は、ヘッドモジュール200が交換された後のインクジェットヘッド56の調整における課題の説明図である。先に説明したように、複数のヘッドモジュール200から構成されるインクジェットヘッド56は、ヘッドモジュール200ごとに交換ができる構造を有している。
図12(a)には、5番目のヘッドモジュール200−5が交換され、X方向の位置ずれが機械的に調整された状態が図示されている。交換前後のヘッドモジュール自体の製造ばらつきや、交換後のヘッドモジュール200−5の取り付け誤差に起因して、交換後のヘッドモジュール200−5は、隣接するヘッドモジュール200−4及びヘッドモジュール200−6との間でY方向の位置ずれが生じている。
そうすると、再度、ヘッドモジュール200−5のY方向の相対位置ずれ量ΔY15、及びヘッドモジュール200−6のY方向の相対位置ずれ量ΔY16が測定され、相対位置ずれ量が絶対位置ずれ量に変換される。
Y方向の絶対位置ずれ量は、ヘッドモジュール200−5及びヘッドモジュール200−6の打滴タイミングの再調整値とされる。
ここで、ヘッドモジュール200−5の交換に起因して、ヘッドモジュール200−1から200−4、及びヘッドモジュール200−6から200−11についての打滴タイミングの補正が必要になることがありうる。
そうすると、ヘッドモジュール200−1から200−4までの打滴タイミングの補正の累積、及びヘッドモジュール200−6からヘッドモジュール200−11までの打滴タイミングの補正の累積によって、1番目のヘッドモジュール200−1と11番目のヘッドモジュール200−11との間の打滴タイミングの補正(図12(b)に図示するΔYθZ)が必要になることがありうる。
さらに、4色のインクジェットヘッド56C,56M,56Y,56K(図1参照)のうち、1つのインクジェットヘッド56について打滴タイミングの再調整がされると、他のインクジェットヘッド56とのY方向の相対的な位置(距離)についても、Y方向の相対的な位置の再調整が必要になることがありうる。
そこで、以下に説明するヘッドモジュール交換後のインクジェットヘッド調整方法は、ΔYθZ調整の基準とされる(両端の)ヘッドモジュール200−1,200−11の打滴タイミングの調整値を変更せずに固定して(補正の対象とせずに)、交換されたヘッドモジュール200−5の打滴タイミングの調整値を他のヘッドモジュール200−2から200−4、及びヘッドモジュール200−6から200−10に分散させて、ヘッドモジュール200−2から200−4、及びヘッドモジュール200−6から200−10の打滴タイミングの調整値が補正される(図12(c)参照)。
図13は、インクジェットヘッド調整方法の制御の流れを示すフローチャートである。以下に説明するインクジェットヘッド調整方法は、ヘッドモジュール200−5(図12(a)参照)が交換され、交換がされたヘッドモジュール(交換ヘッドモジュール)200−5の機械的な調整がされた後の処理である。
インクジェットヘッド調整方法が開始されると(ステップS10)、交換がされたヘッドモジュール200−5の打滴タイミングの再調整値が算出される(ステップS12)。この再調整値にマイナス1を乗じた値を、交換がされていないヘッドモジュール(非交換ヘッドモジュール)200−2から200−4、及びヘッドモジュール200−6から200−10の少なくともいずれかに対して均一に又は不均一に分散させ、ヘッドモジュール200−2から200−4、及びヘッドモジュール200−6から200−10の打滴タイミングの補正値(第1補正値)とする(ステップS14)。
交換がされたヘッドモジュール200−5の打滴タイミングの再調整値の算出、ヘッドモジュール200−2から200−4、及びヘッドモジュール200−6から200−10の打滴タイミングの補正値による補正後の打滴タイミングの調整値の算出は、図8の調整値算出部134において実行される。
交換がされたヘッドモジュール200−5の打滴タイミングの再調整値が記憶され、交換がされていないヘッドモジュール200−2から200−4、及びヘッドモジュール200−6から200−10の打滴タイミングの補正値又は補正後の打滴タイミングの調整値が記憶され(ステップS16)、インクジェットヘッドの調整方法は終了される(ステップS18)。
交換がされたヘッドモジュール200−5の打滴タイミングの再調整値、交換がされていないヘッドモジュール200−2から200−4、及びヘッドモジュール200−6から200−10の補正後の打滴タイミングの調整値は、図8の調整値記憶部136に記憶される。
交換がされたヘッドモジュール200−5の打滴タイミングの再調整値を、交換がされていないヘッドモジュール200−2から200−4、及びヘッドモジュール200−6から200−10へ分散させる態様には、交換がされたヘッドモジュール200−5の打滴タイミングの再調整値マイナス1を乗じた値を等分して分散させる態様、傾斜勾配をつけて分散させる態様などを採用することができる。
傾斜勾配をつけて分散させる態様では、交換がされたヘッドモジュール200−5に近いヘッドモジュールの補正値を相対的に大きくしておき、交換がされたヘッドモジュール200−5から離れていくに従って補正値を順に小さくすると、交換がされたヘッドモジュール200−5の近傍では、交換による影響が大きくなるので、この影響を抑制することができ、かつ、交換がされたヘッドモジュール200−5の遠方では、補正の影響を抑制することができる。
例えば、ヘッドモジュール200−2から200−4、及びヘッドモジュール200−6から200−10の打滴タイミングの補正値を比率で表したときに、ヘッドモジュール200−4,200−6,200−7の打滴タイミングの補正値を1、ヘッドモジュール200−3,200−8,200−9の打滴タイミングの補正値を0.5、ヘッドモジュール200−2,200−10の打滴タイミングの補正値を0.25とする態様が挙げられる。
また、隣接するヘッドモジュールにおける打滴タイミングの補正値のしきい値(隣接するヘッドモジュール間の相対的な補正値の差)を0.5画素とすることで、連続する3つのヘッドモジュール間の補正値が1画素以内となり、補正過剰を回避することが可能となる。
このようにして、ヘッドモジュール200の交換がされると、交換がされた交換ヘッドモジュール(図12(a)から(c)の符号200−5を付したヘッドモジュール)の打滴タイミングの再調整値、及び交換がされていないヘッドモジュール(図12(a)から(c)の符号200−5を付したヘッドモジュール以外のヘッドモジュール)の打滴タイミングの調整値の補正値又は補正後の打滴タイミングの調整値が自動的に算出され、記憶される。
図14は、上記したヘッドモジュール交換後のインクジェットヘッド調整方法の効果を示す説明図である。同図の横系列は、ヘッドモジュール200−1からヘッドモジュール200−11のモジュール番号(1から11の整数)であり、縦系列は、打滴タイミングの調整値(単位:画素)である。
なお、図14に示す打滴タイミングの調整値は、5番目のヘッドモジュール200−5が交換され、4番目のヘッドモジュール200−4と5番目のヘッドモジュール200−5との間のY方向の相対位置ずれ量として2画素が算出され、4番目のヘッドモジュール200−4の調整がされた場合の例である。
同図に符号600を付した太実線は、ΔYθZを考慮して打滴タイミングの再調整値、補正値が算出された場合である。
一方、符号602を付した破線は、ΔYθZを考慮せずに打滴タイミングの再調整値、補正値が算出された場合である。また、符号604を付した細実線は、ヘッドモジュール200−5を交換する前の打滴タイミングの調整値である。
なお、図14に符号600を付した太実線及び符号602を付した破線は、最小値補正処理、中心値補正処理(詳細後述)が施されている。
図14に示す例では、5番目のヘッドモジュール200−5が交換された結果、4番目のヘッドモジュール200−4と5番目のヘッドモジュール200−5との間に2画素のずれが生じ、4番目のヘッドモジュール200−4の打滴タイミングを2画素再調整している。
符号602を付した、ΔYθZを考慮せずに打滴タイミングの再調整値、補正値が算出された場合には、交換の前後で1番目のヘッドモジュール200−1に1.3画素程度(1画素以上)のずれが生じている。
これに対して、符号604を付した、ΔYθZを考慮して打滴タイミングの再調整値、補正値が算出された場合は、交換の前後で1番目のヘッドモジュール200−1及び11番目のヘッドモジュール200−11とも、0.3画素程度(0.5画素以下)のずれとなっている。
すなわち、ΔYθZが考慮された場合とΔYθZが考慮されていない場合とを比較すると、ΔYθZが考慮された場合は、打滴タイミングの調整値を交換前の状態により近づけることが可能となる。
交換の前後で1番目のヘッドモジュール200−1及び11番目のヘッドモジュール200−11は、ずれ量が0画素であることが理想であるが、局所的な段差の発生に起因してずれが生じてしまう。交換の前後のずれ量を0.5画素以下に抑えることができれば画質への影響を最小限に抑えることができる。
図14に示す例では、交換の前後で1番目のヘッドモジュール200−1及び11番目のヘッドモジュール200−11のずれ量は0.3画素程度であり、これは許容されるずれ量である。
上記の如く構成されたインクジェットヘッド調整方法では、交換がされたヘッドモジュールの打滴タイミングの再調整値に対応する値が、インクジェットヘッドのY方向に対するX方向の角度調整(ΔYθZ調整:ヘッドモジュールの配列方向をX方向、記録媒体の搬送方向をY方向としたときのX方向及びY方向と直交するZ方向の軸を回転中心とする角度調整)の基準とされるヘッドモジュール以外のヘッドモジュールに対して、打滴タイミングの補正値として付加されるので、ヘッドモジュールの交換により生じた打滴タイミングの再調整が、ΔYθZ調整の基準とされるヘッドモジュールの打滴タイミングの調整値へ波及せず、ヘッドモジュール交換後のΔYθZ調整が不要となり、ヘッドモジュールが交換された後のインクジェットヘッドの自動的な調整が可能となる。
また、交換されていないヘッドモジュール(非交換ヘッドモジュール)の位置ずれ量を測定しておき、交換されたヘッドモジュール(交換ヘッドモジュール)の打滴タイミングの再調整値に対応して算出された打滴タイミングの補正値が適用される。
非交換ヘッドモジュールの位置ずれ量を予め測定しておかないと、ヘッドモジュールが交換され、再調整がされた後の、インクジェットヘッド全体の位置ずれ量を測定し、各ヘッドモジュール間のY方向の位置ずれ量が許容範囲内であるか否かを確認する工程が必要となってしまう。
しかし、予め非交換ヘッドモジュールの位置ずれ量が測定されることで、各ヘッドモジュール間のY方向の位置ずれ量が許容範囲内であるか否かを確認する工程が不要となり、かつ、交換の前後で各ヘッドモジュール間のY方向の位置ずれ量を許容範囲内とすることができる。
本例では、1つのヘッドモジュール200の交換がされた場合について説明したが、複数のヘッドモジュール200の交換がされた場合にも適用可能である。交換がされたヘッドモジュールごとに別々に打滴タイミングの再調整値、及び非交換ヘッドモジュールにおける打滴タイミングの補正値を求めればよい。
また、交換がされたヘッドモジュールを基準として、一方の端側の交換がされていないヘッドモジュールと、他方の端側の交換がされていないヘッドモジュールとに分類して、両者の間で打滴タイミングの補正値を異ならせてもよい。
〔調整可能範囲が考慮されたインクジェットヘッド調整方法の説明〕
次に、先に説明したインクジェットヘッド調整方法において、ヘッドモジュール200が交換された後の打滴タイミングの調整の際に、調整値が調整可能範囲の上限値以上となるヘッドモジュール200がある場合の対応について説明する。
なお、以下の説明は、先の例と同様に、5番目のヘッドモジュール200−5が交換され、その結果、4番目のヘッドモジュール200−4と5番目のヘッドモジュール200−5との間に2画素の位置ずれが生じていることを前提としている。
図15は、調整可能範囲が考慮されたヘッドモジュール交換後のインクジェットヘッド調整方法の制御の流れを示すフローチャートである。処理が開始されると(ステップS100)、ヘッドモジュール200−5の交換がされた後のヘッドモジュール200−2から200−11のY方向の相対位置ずれ量が測定され、ヘッドモジュール200−1を基準とするY方向の絶対位置ずれ量(打滴タイミングの調整値)に換算される。
次に、交換されたヘッドモジュール200−5の打滴タイミングの再調整値が算出される(図13のステップS12参照)。交換されていないヘッドモジュールのうち、両端のヘッドモジュール200−1及びヘッドモジュール200−11を除く、ヘッドモジュール200−2から200−4、及びヘッドモジュール200−6から200−10の補正値が算出される(図13のステップS14参照)。
このようにして、各ヘッドモジュール200の打滴タイミングの調整値の情報が取得される(ステップS102)。すなわち、図15のステップS102(ヘッドモジュール交換後の打滴タイミング調整値算出工程)は、図13のステップS12(交換されたヘッドモジュールも再調整値算出工程)、及び同図のステップS14(基準ヘッドモジュール以外の他のヘッドモジュールの補正値算出工程)が適用される。
なお、ヘッドモジュール200−1は、Y方向の相対位置ずれ量を測定する基準となるヘッドモジュールが存在しないため、Y方向の相対位置ずれ量は測定されない。
次に、ステップS104に進み、ヘッドモジュール200−2から200−11の打滴タイミングの調整値の最小値が抽出され、抽出された最小値の絶対値は、ヘッドモジュール200−2から200−11の打滴タイミングの調整値に対して最小値オフセットパラメータとして付加される(最小値補正処理(最小値補正処理工程))。
このように、打滴タイミングの調整値に対して最小値オフセットパラメータを付加することで、打滴タイミングの調整値となるY方向の絶対位置ずれ量の値に負の値が含まれる場合でも、すべての値が正の値に変換されるので、その後処理において値の負の値を考慮した複雑な演算を実行せずに済む。
次に、ステップS106に進み、ヘッドモジュール200−2から200−11について、最小値オフセット付加後の打滴タイミングの調整値の最大値が抽出され、((打滴タイミングの調整代の最大値)−(最小値オフセット付加後、中心値オフセット付加前の打滴タイミングの調整値の最大値))/2として中心値オフセットパラメータが算出される。
ここで、「打滴タイミングの調整代」は、予め決められている打滴タイミングの調整値が取り得る値の範囲であり、システムの諸条件に応じて決められている。
例えば、打滴タイミングの調整代が0から10画素、最小値オフセット付加後、中心値オフセット付加前の打滴タイミングの調整値の最大値が5画素とする。最小値オフセット付加後の各ヘッドモジュール200−2から200−11の打滴タイミングの調整値の範囲は、0から5画素となる。
そうすると、中心値オフセットは、(5画素)/(2画素)=2.5画素と求められる。
算出された中心値オフセットパラメータは、最小値オフセット付加後のヘッドモジュール200−2から200−11の打滴タイミングの調整値の値に付加される(中心値補正処理(中心値補正工程))。上記の例では、中心値オフセット付加後の打滴タイミングの調整値は、2.5画素(=0画素+2.5画素)から7.5画素(=5画素+2.5画素)の範囲となる。
中心値オフセットパラメータを付加することで、ヘッドモジュール200を交換した後に、打滴タイミングの調整値の最小値が0画素以下になる可能性を低減させている。打滴タイミングの調整値の最小値が0画素以下になるか、打滴タイミングの調整値が調整代を超えると、インクジェットヘッド56(図3参照)の全体の調整値をシフトさせる必要が生じ、かつ、他のインクジェットヘッド56との相対的な距離の調整(カラーレジずれの調整)が必要になることがありうる。
このように、インクジェットヘッド56全体の調整値のシフトや、カラーレジずれの調整の発生は、打滴タイミングの調整後の調整において不利に働いてしまう。
また、カラーレジずれの調整を打滴タイミングの調整値で行う際に、各インクジェットヘッド56における打滴タイミングの調整値の中心値付近の値を使用することで、各インクジェットヘッド56の調整が、正の値及び負の値のいずれの値をも取りやすくなる。
その後、ステップS108に進み、ヘッドモジュール200−2から200−11について、最小値オフセット及び中心値オフセットが付加された打滴タイミングの調整値が、予め決められている調整可能範囲の上限を超えるヘッドモジュールがあるか否かが判断される。
ステップS108において、打滴タイミングの調整値が調整可能範囲の上限値以上のヘッドモジュールがある場合は(Yes判定)、超過分が超過分補正値(第2補正値)として、打滴タイミングの調整値が調整可能範囲の上限値の未満のヘッドモジュールへ割り当てられ(ステップS110)、超過分補正値が割り当てられた(超過分補正値により補正された)打滴タイミングの調整値は記憶される(ステップS112)。
一方、ステップS108において、Y打滴タイミングの調整値が調整可能範囲の上限値以上のヘッドモジュールがない場合は(No判定)、ステップS112に進み、ヘッドモジュール200−2から200−11の打滴タイミングの調整値が、補正後の打滴タイミングの調整値として記憶され(ステップS112)、調整可能範囲が考慮されたヘッドモジュール交換後のインクジェットヘッド調整は終了される(ステップS114)。
上述したように、ヘッドモジュールの交換がされた後の打滴タイミングの調整値が、調整可能範囲の上限値以上となる場合にも、超過分が他のヘッドモジュールへ割り当てられ、調整可能範囲内で打滴タイミングの調整値が自動的に算出される。
図16及び図17は、調整可能範囲が考慮されたヘッドモジュール交換後のインクジェットヘッド調整がされる場合(超過分補正がされる場合)と、整可能範囲が考慮されずにヘッドモジュール交換後のインクジェットヘッド調整がされる場合(超過分補正がされない場合)との比較を示す説明図である。図16は、Y方向の相対位置ずれ量において、超過分の補正がされた場合(符号610)と、超過分の補正がされない場合(符号612)との比較を示している。
図17は、図16に図示したY方向の相対位置ずれ量から求められた打滴タイミングの調整値である。図17に符号620を付して太実線で図示した調整値は超過分補正及び最小値補正がされた場合である。
また、符号622を付して一点破線で図示した調整値は、最小値補正のみがされた場合であり、符号624を付して細実線で図示した調整値は、超過分補正のみがされた場合であり、符号626を付して破線で図示した調整値は、超過分補正及び最小値補正のいずれもされない場合である。
図16及び図17における横系列は、ヘッドモジュール200−1から200−11のモジュール番号(1から11の整数)であり、縦系列はY方向の位置ずれ量を画素で表したものである。なお、画素サイズは21.2マイクロメートルで×21.2マイクロメートルある。また、打滴タイミングの調整値の調整可能範囲は10画素とした。
図17に符号620を付して図示した超過分補正及び最小値補正がされた場合は、すべての調整値が0画素から10画素の範囲となり、すべての調整値は調整代の最小値以上最大値以下であり、かつ、調整代の中心となっている。
図17に符号622を付して図示した最小値補正のみをした場合には、すべての調整値が正の値となるものの、調整可能範囲の10画素を超える調整値が算出されてしまうことがある。図17に示す例では、調整代の最大値である10画素を超える調整値が存在している。
また、図17に符号624を付して図示した超過分補正のみをした場合は、すべての調整値が調整可能範囲である10画素の範囲に収まるものの、負の調整値が算出される場合がある。図17に示す例では、マイナス3画素の調整値が存在している。
したがって、超過分補正及び最小値補正の少なくともいずれかを行うことで、一定の効果を得ることができ、さらに、超過分補正及び最小値補正の両方を行うことで、両者固有の課題を解決することができ、より高い効果を得ることができる。
以上説明した態様によれば、ヘッドモジュールの交換がされた後において、調整可能範囲以上の調整値となるヘッドモジュールが存在しても、調整可能範囲内での自動的な調整が可能となる。
〔用紙搬送方向のカラーレジずれを考慮したインクジェットヘッド調整方法の説明〕
次に、複数色に対応するインクジェットヘッド56C,56M,56Y,56Kを具備する態様において、Y方向のカラーレジずれが考慮された、ヘッドモジュール交換後のインクジェットヘッド調整方法について説明する。
複数色に対応するインクジェットヘッド56C,56M,56Y,56Kを具備する場合に、インクジェットヘッド56C,56M,56Y,56Kは、Y方向について、隣り合うインクジェットヘッドとの距離にばらつきがあり、このまま使用されるとカラーレジずれ(色間のズレ)が生じてしまう。
そこで、初期調整において、インクジェットヘッド56C,56M,56Y,56K間の打滴タイミングが調整され、各インクジェットヘッド間のY方向の距離のばらつきが調整される。
初期調整において、各ヘッドモジュール200、打滴タイミングの調整値を調整代(調整値の最大値と最小値との間)の中心に分布させる。インクジェットヘッド56C,56M,56Y,56K間のY方向の距離が測定され、距離の差分が抽出される。
距離の差分に対応する打滴タイミングの補正値(第3補正値)が算出され、記憶され、この補正値によって各インクジェットヘッド56C,56M,56Y,56Kの打滴タイミングの調整値が調整される。
Y方向のカラーレジずれの調整には、各インクジェットヘッド56C,56M,56Y,56KにおけるX方向の中央のヘッドモジュール200−6(図10(a),(b)参照)が使用される。なお、Y方向のカラーレジずれの調整に他のヘッドモジュール200を使用してもよいし、複数のヘッドモジュール200を使用してもよい。
インクジェットヘッド56C,56M,56Y,56Kのそれぞれについて、カラーレジずれの調整に使用されるヘッドモジュール200は、各インクジェットヘッド56C,56M,56Y,56K間のY方向の距離のばらつきに対応する打滴タイミングの調整値が付加される。
また、初期調整において、各インクジェットヘッド56C,56M,56Y,56Kの打滴タイミングの調整値に対して、各インクジェットヘッド56C,56M,56Y,56Kにおける打滴タイミングの調整値の最大値から最小値を減算し、この値を2で除算した値を中心オフセットとして付加して、各ヘッドモジュール200の打滴タイミングの調整値を調整代(調整値の最大値と調整値の最小値との間)の中心に分布させている。
図18は、用紙搬送方向のカラーレジずれが考慮された、ヘッドモジュール交換後のインクジェットヘッドの調整方法の制御の流れを示すフローチャートである。
先に説明したように、インクジェットヘッド56C,56M,56Y,56Kのいずれかにおいて、1つ又は複数のヘッドモジュール200が交換され、インクジェットヘッドの調整が開始されると(ステップS200)、ヘッドモジュール200の交換がされたインクジェットヘッドにおいて打滴タイミングの調整値の補正値が算出され、記憶される(ステップS202)。
ステップS202では、図13に図示した流れに従って打滴タイミングの調整値の補正値が算出され、記憶される。また、図15に図示した調整範囲を考慮した調整方法を併用してもよい。
次に、ステップS204に進み、各インクジェットヘッド56C,56M,56Y,56K間のY方向の距離のばらつきが算出される。各インクジェットヘッド56C,56M,56Y,56Kのそれぞれの間のY方向の距離のばらつきは、各インクジェットヘッド56C,56M,56Y,56Kのそれぞれについて予め決められた1つ又は複数のヘッドモジュール200から同時に打滴を行い、打滴間の距離を測定して算出される。
複数のヘッドモジュール200を用いてY方向のカラーレジずれが調整される場合は、ヘッドモジュール200ごとに別々に算出されたY方向の距離の平均値が、Y方向の距離のばらつきとされる。
さらに、算出された各インクジェットヘッド56C,56M,56Y,56K間のY方向の距離のばらつきに基づいて、Y方向のカラーレジずれに対応する追加補正値(第3補正値)が算出される。
次に、ステップS206に進み、ステップS204において算出された追加補正値が、ヘッドモジュール200の交換がされていないインクジェットヘッドへ付加される。例えば、C(シアン)に対応するインクジェットヘッド56Cについて、打滴タイミングが平均して1画素分遅くなる追加補正値が算出された場合には、他のインクジェットヘッド56M,56Y,56Kに対して打滴タイミングが1画素分遅くなる追加補正値が付加される。
ヘッドモジュール200の交換がされていないインクジェットヘッド56M,56Y,56Kのうち、調整可能範囲の上限まで調整値又はヘッドモジュール200の交換による補正値として使用されているものについては、追加補正値を付加せずに調整可能範囲内で追加補正値を付加することができるインクジェットヘッドのみに、追加補正値が付加される。
次に、ステップS208に進み、打滴タイミングの調整値に追加補正値が付加されたインクジェットヘッドにおいて、各ヘッドモジュール200へ追加補正値が付加される。そして、ステップS210において、追加補正値が付加された打滴タイミングの調整値が記憶され、当該インクジェットヘッド調整方法は終了される(ステップS212)。
以上説明した態様によれば、ヘッドモジュールの交換がされた後において、カラーレジずれの自動的な調整が可能となる。
以上説明したインクジェットヘッド調整方法は、各工程をコンピュータに実行させるプログラムとして把握することも可能である。また、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、適宜変更、追加、削除をすることが可能である。また、上述した構成例を適宜組み合わせることも可能である。
本明細書では、インクジェットヘッド調整方法が適用される装置構成例としてインクジェット記録装置を例示したが、本発明は、インクジェット記録装置以外の画像形成装置(例えば、電子写真方式の画像形成装置)に対しても広く適用することが可能である。
〔本明細書が開示する発明〕
上記に詳述した発明の実施形態についての記載から把握されるとおり、本明細書は少なくとも以下に示す発明を含む多様な技術思想の開示を含んでいる。
(第1態様):複数のヘッドモジュールが第1方向に沿って並べられた構造を有し、ヘッドモジュールごとに交換可能な構造を有するインクジェットヘッドにおける、ヘッドモジュールの交換がされた後のインクジェットヘッド調整方法において、第1方向と直交する第2方向について、交換がされた交換ヘッドモジュールの第2方向の相対的な位置ずれ量、及び交換がされていない非交換ヘッドモジュールの第2方向の位置ずれ量が測定される位置ずれ量測定工程と、交換ヘッドモジュールの第2方向の位置ずれ量に基づいて、交換ヘッドモジュールの打滴タイミングの再調整値を算出する再調整値算出工程と、交換ヘッドモジュールの打滴タイミングの再調整値から、インクジェットヘッドの第1方向に対する角度調整の基準とされるヘッドモジュール以外の非交換ヘッドモジュールの打滴タイミングの調整値を補正する第1補正値を算出する補正値算出工程と、交換ヘッドモジュールの打滴タイミングの再調整値及び第1補正値、又は交換ヘッドモジュールの打滴タイミングの再調整値及び第1補正値による補正後の非交換ヘッドモジュールの打滴タイミングの調整値を記憶する記憶工程と、を含むインクジェットヘッド調整方法。
第1態様によればヘッドモジュールの交換がされた後の調整において、交換がされたヘッドモジュールの打滴タイミングの再調整がされ、インクジェットヘッドの第1方向との角度調整の基準とされるヘッドモジュール以外の非交換ヘッドモジュールの打滴タイミングの調整値が、交換がされたヘッドモジュールの打滴タイミングの再調整値から算出された第1補正値によって補正がされるので、ヘッドモジュールの交換後の調整において、インクジェットヘッドの第1方向に対する角度調整の基準とされるヘッドモジュールの打滴タイミングがヘッドモジュール交換の前後で補正がされず、インクジェットヘッドの第1方向に対する角度の再調整が不要とすることができ、機械的な調整をすることなく、電気的な調整による自動的な調整が可能となる。
各ヘッドモジュールについて、第1方向の隣接するヘッドモジュールに対して第2方向の相対位置ずれ量を測定する相対位置ずれ量測定工程と、第2方向の相対位置ずれ量を予め決められたヘッドモジュールを基準とする第2方向の絶対位置ずれ量に変換する絶対位置ずれ量変換工程と、を含み、補正値算出工程は、第2方向の絶対位置ずれ量から第1補正値を算出する態様もありうる。
第1方向と直交する第2方向は、第1方向と実質的に直交する方向が含まれていてもよい。
第2方向の位置ずれ量、打滴タイミングの調整値は、単位を「画素」とする値とすることで、両者の値を直接(単位の変換)をせずに取り扱うことができる。なお、打滴タイミングの調整値は、マイクロメートル等の「長さ」の単位としてもよい。
(第2態様):第1態様に記載のインクジェットヘッド調整方法において、補正値算出工程は、ヘッドモジュールの交換がされた後の各ヘッドモジュールの打滴タイミングの調整値が調整可能範囲の上限値以上の場合に、打滴タイミングの調整値が調整可能範囲の上限値以上のヘッドモジュールにおける打滴タイミングの調整値の超過分を算出し、算出された超過分から打滴タイミングの調整値が調整可能範囲の上限値未満のヘッドモジュールの打滴タイミングの調整値へ割り当てられる第2補正値を算出する。
第2態様によれば、ヘッドモジュールの交換がされた後の打滴タイミングの調整値が調整可能範囲の上限値以上となるヘッドモジュールが存在しても、調整可能範囲の超過分を第2補正値として他のヘッドモジュールへ割り当てられるので、調整可能範囲内でヘッドモジュール交換後の調整が可能となる。
(第3態様):第2態様に記載のインクジェットヘッド調整方法において、補正値算出工程は、ヘッドモジュールが交換された後の各ヘッドモジュールの打滴タイミングの調整値の最小値を抽出し、抽出された最小値の絶対値最小値オフセットパラメータとして、をヘッドモジュールが交換された後の各ヘッドモジュールの打滴タイミングの調整値に付加し、第1補正値又は第2補正値を算出する。
第3態様によれば、ヘッドモジュールが交換された後の各ヘッドモジュールの打滴タイミングの調整値の最小値を最小値オフセットとして各ヘッドモジュールの打滴タイミングの調整値に付加することで、第1補正値及び第2補正値が算出される演算において正の値のみを用いることができ、負の値を考慮した演算を適用しなくてもよい。
(第4態様):第3態様に記載のインクジェットヘッド調整方法において、補正値算出工程は、予め決められた打滴タイミングの調整代の最大値からヘッドモジュールが交換された後の各ヘッドモジュールの打滴タイミングの最大値を減算した値の2分の1の値を中心値オフセットパラメータとして、ヘッドモジュールが交換された後の各ヘッドモジュールの打滴タイミングの調整値に付加し、第1補正値又は第2補正値を算出する。
第4態様によれば、第1補正値及び第2補正値を算出するための打滴タイミングの調整値を値域の中心近傍にシフトさせることで、値域の境界近傍の値を使用せずに済む。
(第5態様):第1態様から第4態様のいずれかに記載のインクジェットヘッド調整方法において、補正値算出工程は、隣接するヘッドモジュール間の第1補正値の差を0.5画素以下とする。
第5態様によれば、隣接するヘッドモジュール間の補正値の差が大きくなることによる過剰補正が抑制される。
(第6態様):第1態様から第5態様のいずれかに記載のインクジェットヘッド調整方法において、複数のインクジェットヘッドが具備される場合において、補正値算出工程は、ヘッドモジュールが交換されたインクジェットヘッドの打滴タイミングの調整値から、ヘッドモジュールが交換されていないインクジェットヘッドの打滴タイミングの調整値の補正値である第3補正値を算出する。
第6態様によれば、ヘッドモジュールの交換に起因するヘッドモジュールの交換がされたインクジェットヘッドの打滴タイミングの調整値の補正を、ヘッドモジュールの交換がされていないインクジェットヘッドの打滴タイミングに反映させることで、複数のインクジェットヘッドの打滴におけるY方向の位置ずれの発生を防止しうる。
(第7態様):第6態様に記載のインクジェットヘッド調整方法において、補正値算出工程は、ヘッドモジュールが交換されたインクジェットヘッドに具備されるヘッドモジュールのうち、初期調整に用いられたヘッドモジュールの打滴タイミング調整値から、第3補正値を算出する。
第7態様によれば、初期調整に用いられたヘッドモジュールを用いて、ヘッドモジュールが交換された後のインクジェットヘッド間の第2方向の調整がされるので、初期調整がされた状態を再現しうる。
(第8態様):第6態様又は第7態様に記載のインクジェットヘッド調整方法において、補正値算出工程は、ヘッドモジュールが交換されていないインクジェットヘッドのうち、打滴タイミングの調整値として調整可能範囲の上限値を使用しているヘッドモジュールが含まれるインクジェットヘッドに対して、第3補正値を算出しない。
第8態様によれば、調整可能範囲内で、ヘッドモジュールの交換がされた後のインクジェットヘッドの第2方向の調整がされる。
(第9態様):第1態様から第8態様のいずれかに記載のインクジェットヘッド調整方法において、補正値算出工程は、交換ヘッドモジュールの第2方向の位置ずれ量に対応する値を、複数の非交換ヘッドモジュールへ均等に割り付ける第1補正値を算出する。
第9態様によれば、交換がされたヘッドモジュールの再調整値が、均等に割り付けられることで、交換がされたヘッドモジュールの再調整の影響が局所的に表れることが抑制されうる。
(第10態様):第1態様から第8態様のいずれかに記載のインクジェットヘッド調整方法において、補正値算出工程は、交換ヘッドモジュールの第2方向の位置ずれ量に対応する値を、複数の非交換ヘッドモジュールへ傾斜勾配をつけて割り付ける第1補正値を算出する。
第10態様によれば、交換がされたヘッドモジュールの再調整の影響を、交換がされたヘッドモジュールから遠いヘッドモジュールへの波及が抑制され、インクジェットヘッド全体として、交換がされたヘッドモジュールの再調整の影響が抑制されうる。
(第11態様):第1態様から第10態様のいずれかに記載のインクジェットヘッド調整方法において、補正値算出工程は、複数のヘッドモジュールのうち両端のヘッドモジュールの少なくともいずれか一方をインクジェットヘッドの第1方向に対する角度調整の基準とされるヘッドモジュールとして第1補正値を算出する。
第11態様において、インクジェットヘッドの第1方向に対する角度調整に使用されるヘッドモジュールを基準として、各ヘッドモジュールの第2方向における位置ずれ量を測定する態様がありうる。