以下、添付図面に従って本発明の好ましい実施の形態について詳説する。
〔インクジェット記録装置の全体構成〕
図1は、本発明の実施形態に係るインクジェット記録装置の全体構成図である。
同図に示すインクジェット記録装置10は、記録媒体である枚葉の用紙Sに水性インクを用いてインクジェット方式により画像を記録するインクジェット記録装置である。同図に示すインクジェット記録装置10は、記録素子を用いて画像記録を実行する画像記録装置として機能する。
インクジェット記録装置10は、主として、用紙Sを給紙する給紙部12と、給紙部12から給紙された用紙Sの画像記録面(図12に符号370を付して図示)に処理液を付与する処理液付与部14と、処理液付与部14において処理液が付与された用紙Sの乾燥処理を行う処理液乾燥処理部16と、処理液乾燥処理部16において乾燥処理が施された用紙Sの画像記録に水性インクを用いてインクジェット方式により画像を記録する画像記録部18と、画像記録部18において画像が記録された用紙Sの乾燥処理を行うインク乾燥処理部20と、インク乾燥処理部20において乾燥処理が施された用紙Sを排紙する排紙部24と、を含んで構成される。
〈給紙部〉
給紙部12は、主として、給紙台30と、サッカー装置32と、給紙ローラ対34と、フィーダボード36と、前当て38と、給紙ドラム40を含んで構成され、給紙台30に積載された用紙Sを1枚ずつ処理液付与部14へ給紙する。
給紙台30の上に積載された用紙Sは、サッカー装置32に具備されるサクションフィット32Aによって上から順に1枚ずつ引き上げられて、給紙ローラ対34(上下一対のローラ34A,34Bの間)に給紙される。
給紙ローラ対34に給紙された用紙Sは、上下一対のローラ34A,34Bによって前方に送り出され、フィーダボード36の上に載置される。フィーダボード36の上に載置された用紙Sは、フィーダボード36の搬送面に設けられたテープフィーダ36Aによって搬送される。
そして、その搬送過程でリテーナ36B、ガイドローラ36Cによってフィーダボード36の搬送面に押し付けられ、凹凸が矯正される。フィーダボード36によって搬送された用紙Sは、先端が前当て38に当接されることにより、傾きが矯正され、その後、給紙ドラム40に受け渡される。そして、給紙ドラム40のグリッパ40Aにより先端部を把持されて処理液付与部14へと搬送される。
〈処理液付与部〉
処理液付与部14は、主として、用紙Sを搬送する処理液付与ドラム42と、処理液付与ドラム42によって搬送される用紙Sの画像記録面に所定の処理液を付与する処理液付与ユニット44と、を含んで構成され、用紙Sの画像記録面に処理液を付与(塗布)する。
用紙Sの画像記録面に塗布される処理液は、後段の画像記録部18において用紙Sに打滴される水性インク中の色材を凝集させる機能を有する処理液が塗布される。用紙Sの画像記録面に処理液を塗布して水性インクを打滴することにより、汎用の用紙を用いても着弾干渉等を起こすことなく、高品位な印刷を行える。
なお、本明細書における「打滴」の用語は、「吐出」、「記録」と読み替えることが可能である。
給紙部12の給紙ドラム40から受け渡された用紙Sは、処理液付与ドラム42に受け渡される。処理液付与ドラム42は、用紙Sの先端をグリッパ42Aによって把持して(咥えて)回転することにより、用紙Sを周面に巻き掛けて搬送する。
この搬送過程で、処理液皿44Bから計量ローラ44Cにより一定量に計量された処理液が付与された塗布ローラ44Aを用紙Sの画像記録面に押圧当接させることにより、用紙Sの画像記録面に処理液が塗布される。なお、処理液を塗布する形態はローラ塗布に限定されず、インクジェット方式、ブレードによる塗布など、他の形態を適用することも可能である。
〈処理液乾燥処理部〉
処理液乾燥処理部16は、主として、用紙Sを搬送する処理液乾燥処理ドラム46と、用紙Sの支持面を支持(ガイド)する用紙搬送ガイド48と、処理液乾燥処理ドラム46によって搬送される用紙Sの画像記録面に熱風を吹き当てて乾燥させる処理液乾燥処理ユニット50と、を含んで構成され、画像記録面に処理液が付与された用紙Sに対して乾燥処理を施す。
処理液付与部14の処理液付与ドラム42から処理液乾燥処理ドラム46へ受け渡された用紙Sは、処理液乾燥処理ドラム46に具備されるグリッパ46Aによって先端を把持される。
また、用紙Sは、処理液が塗布された画像記録面を内側に向けた状態で、支持面を用紙搬送ガイド48によって支持される。この状態で処理液乾燥処理ドラム46を回転させることにより用紙Sを搬送させる。
処理液乾燥処理ドラム46によって搬送される過程で、処理液乾燥処理ドラム46の内側に設置された処理液乾燥処理ユニット50から熱風が用紙Sの画像記録面に吹き当てられて、用紙Sに乾燥処理が施され、処理液中の溶媒成分が除去されて、用紙Sの画像記録面にインク凝集層が形成される。
〈画像記録部〉
画像記録部18は、主として、用紙Sを搬送する画像記録ドラム52と、画像記録ドラム52によって搬送される用紙Sを押圧して、用紙Sを画像記録ドラム52の周面に密着させる用紙押さえローラ54と、用紙SにC,M,Y,及びKの各色のインク液滴を打滴するヘッドユニット56C,56M,56Y,及び56Kと、用紙Sに記録された画像を読み取るインラインセンサ58と、インクミストを捕捉するミストフィルタ60と、ドラム冷却ユニット62と、を含んで構成され、処理液層が形成された用紙Sの画像記録面にC,M,Y,及びKの各色のインクの液滴を打滴して、用紙Sの画像記録面にカラー画像を描画する。
本例に適用されるインクジェットヘッドには、圧電素子のたわみ変形を利用してインクを打滴する圧電方式、インクを加熱して膜沸騰現象を発生させてインクを打滴するサーマル方式(不図示)など、様々な方式を適用することができる。
また、本例に適用されるインクジェットヘッドは、図3に符号Lmaxにより図示した用紙Sの全幅に対応する長さにわたってノズルが配置されるフルライン型ヘッドが適用される。
処理液乾燥処理部16の処理液乾燥処理ドラム46から画像記録ドラム52へ受け渡された用紙Sは、画像記録ドラム52に具備されるグリッパ52Aによって先端を把持される。さらに、用紙Sを用紙押さえローラ54の下を通過させることにより、用紙Sは画像記録ドラム52の周面に密着する。
画像記録ドラム52の周面に密着させた用紙Sは、画像記録ドラム52の周面に形成された吸着穴に発生させた負圧によって吸着されて、画像記録ドラム52の周面に吸着保持される。
画像記録ドラム52の周面に吸着保持され搬送される用紙Sは、各ヘッドユニット56C,56M,56Y,及び56Kの直下のインク打滴領域を通過する際に、各ヘッドユニット56C,56M,56Y,及び56KからC,M,Y,及びKの各色のインクの液滴が画像記録面に打滴されて、画像記録面にカラー画像が描画される。
用紙Sの画像記録面に打滴されたインクは、用紙Sの画像記録面に形成されたインク凝集層と反応し、フェザリングやブリーディング等を起こすことなく用紙Sの画像記録面に定着し、用紙Sの画像記録面には高品位な画像が記録される。
ヘッドユニット56C,56M,56Y,及び56Kによって画像が記録された用紙Sは、インラインセンサ58の読取領域を通過する際に、画像記録面に記録された画像(テストパターン、図13に符号380を付して図示)が読み取られる。
インラインセンサ58による画像の読み取りは必要に応じて行われ、画像の読取データからノズル部の異常、濃度ムラ等の画像欠陥(画像異常)の検査が行われる。また、インラインセンサ58から得られた読取データは、ヘッドユニット56C,56M,及び56Y,56Kに具備されるノズル部(図6に符号281を付して図示)の不吐化処理の際に使用される(詳細後述)。
インラインセンサ58の読取領域を通過した用紙Sは、吸着が解除された後、ガイド59の下を通過して、インク乾燥処理部20へと受け渡される。
〈インク乾燥処理部〉
インク乾燥処理部20は、チェーングリッパ64によって搬送される用紙Sに対して乾燥処理を施すインク乾燥処理ユニット68を含んで構成され、画像記録後の用紙Sに対して乾燥処理を施し、用紙Sの画像記録面に残存する液体成分を除去する。
インク乾燥処理ユニット68の構成例として、ハロゲンヒータ、赤外線(IR)ヒータ等の熱源と、熱源によって熱せられた空気(気体、流体)を用紙Sへ吹き付けるファンと、を具備する態様が挙げられる。
画像記録部18の画像記録ドラム52からチェーングリッパ64へ受け渡された用紙Sは、チェーングリッパ64に具備されるグリッパ64Dによって先端を把持される。
チェーングリッパ64は、第1スプロケット64A及び第2スプロケット64Bに一対の無端状のチェーン64Cが巻き掛けられた構造を有している。
また、用紙Sの支持面の後端部分は、チェーングリッパ64との間の一定の距離を離して配置されたガイドプレート72の用紙保持面に吸着保持される。
乾燥処理が施された用紙Sは、傾斜搬送経路70を経由して排紙部24へ送られる。傾斜搬送経路70を通過する用紙Sに対して、冷却処理を施す冷却処理部を備えてもよい。
〈排紙部〉
一連の画像記録が行われた用紙Sを回収する排紙部24は、用紙Sを積み重ねて回収する排紙台76を含んで構成される。
チェーングリッパ64(グリッパ64D)は、排紙台76の上において用紙Sを開放し、排紙台76の上に用紙Sをスタックさせる。排紙台76は、チェーングリッパ64から開放された用紙Sを積み重ねて回収する。排紙台76には、用紙Sが整然と積み重ねられるように、不図示の用紙当て(前用紙当て、後用紙当て、横用紙当て等)が備えられる。
また、排紙台76は、図示しない排紙台昇降装置によって昇降可能に設けられる。排紙台昇降装置は、排紙台76にスタックされる用紙Sの増減に連動して、その駆動が制御され、最上位に位置する用紙Sが常に一定の高さに位置するように、排紙台76を昇降させる。
〈制御系の説明〉
図2は、図1に示すインクジェット記録装置10の制御系の概略構成を示すブロック図である。
同図に示すように、インクジェット記録装置10は、システムコントローラ100、通信部102、画像メモリ104、搬送制御部110、給紙制御部112、処理液付与制御部114、処理液乾燥制御部116、画像記録制御部118、インク乾燥制御部120、排紙制御部124、操作部130、表示部132等が備えられる。
システムコントローラ100は、インクジェット記録装置10の各部を統括制御する全体制御部として機能し、かつ、各種演算処理を行う演算部として機能する。このシステムコントローラ100は、CPU(Central Processing Unit)100A及び、ROM(Read Only Memory)100B、RAM(Random Access Memory)100Cを内蔵している。
システムコントローラ100は、ROM100B、RAM100C、画像メモリ104等のメモリへのデータの書き込み、これらのメモリからのデータの読み出しを制御するメモリコントローラとしても機能する。
図2には、システムコントローラ100にROM100B、RAM100C等のメモリを内蔵する態様を例示したが、ROM100B、RAM100C等のメモリは、システムコントローラ100の外部に設けられていてもよい。
通信部102は、所要の通信インターフェースを備え、通信インターフェースと接続されたホストコンピュータ103との間でデータの送受信を行う。
画像メモリ104は、画像データを含む各種データの一時記憶部として機能し、システムコントローラ100を通じてデータの読み書きが行われる。通信部102を介してホストコンピュータ103から取り込まれた画像データは、一旦画像メモリ104に格納される。
搬送制御部110は、インクジェット記録装置10における用紙Sの搬送系11の動作(給紙部12から排紙部24までの用紙Sの搬送)を制御する。搬送系11には、図1に図示した処理液付与部14における処理液付与ドラム42、処理液乾燥処理部16における処理液乾燥処理ドラム46、画像記録部18における画像記録ドラム52、インク乾燥処理部20、及び排紙部24において共通して用いられるチェーングリッパ64が含まれる。
給紙制御部112は、システムコントローラ100からの指令に応じて、図1に図示した給紙ローラ対34の駆動、テープフィーダ36Aの駆動等の給紙部12の各部の動作を制御する。
処理液付与制御部114は、システムコントローラ100からの指令に応じて、図1に図示した処理液付与ユニット44の動作等の処理液付与部14の各部の動作(処理液の付与量、付与タイミング等)を制御する。
処理液乾燥制御部116は、システムコントローラ100からの指令に応じて、図1に図示した処理液乾燥処理部16の各部の動作を制御する。すなわち、処理液乾燥制御部116は、乾燥温度、乾燥気体の流量、乾燥気体の噴射タイミングなど、処理液乾燥処理ユニット50の動作を制御する。
画像記録制御部118は、システムコントローラ100からの指令に応じて、図1に図示した画像記録部18の動作(ヘッドユニット56C,56M,56Y,及び56Kからのインク打滴)を制御する記録制御部として機能している。
すなわち、図2の画像記録制御部118は、入力画像データからドットデータを形成する画像処理部(不図示)と、駆動電圧の波形を生成する波形生成部(不図示)と、駆動電圧の波形を記憶する波形記憶部(不図示)と、ヘッドユニット56C,56M,56Y,及び56Kのそれぞれに対して、ドットデータに応じた駆動波形を有する駆動電圧を供給する駆動回路(不図示)と、を含んで構成される。
画像処理部では、入力画像データ(0から255のデジタル値で表されるラスターデータ)に対してRGBの各色に分解する色分解(分版)処理、RGBをCMYKに変換する色変換処理、ガンマ補正、ムラ補正等の補正処理、各色のデータを元の階調値未満の階調値に変換するハーフトーン処理が施される。
画像処理部による処理を経て生成されたドットデータに基づいて、各画素位置(目標とされる記録位置)の打滴タイミング、インク打滴量が決められる。そして各画素位置の打滴タイミング、インク打滴量に応じた駆動電圧、駆動信号(各画素の打滴タイミングを決める制御信号)が生成され、この駆動電圧がヘッドユニット56C,56M,56Y,及び56Kへ供給されることにより、ヘッドユニット56C,56M,56Y,及び56Kから打滴されたインク液滴によって記録位置にドットが記録される。
インク乾燥制御部120は、システムコントローラ100からの指令に応じて、図1に図示したインク乾燥処理部20の動作を制御する。すなわち、インク乾燥制御部120は、乾燥温度、乾燥気体の流量、乾燥気体の噴射タイミングなど、インク乾燥処理ユニット68の動作を制御する。
排紙制御部124は、システムコントローラ100からの指令に応じて、排紙部24の動作を制御して、図1に図示した排紙台76に用紙Sを積載させる。
操作部130は、操作ボタン、キーボード、タッチパネル等の操作部材を備え、その操作部材から入力された操作情報をシステムコントローラ100に送出する。システムコントローラ100は、この操作部130から送出された操作情報に応じて各種処理を実行する。
表示部132は、液晶パネル等の表示装置を備え、システムコントローラ100からの指令に応じて、装置の各種設定情報、異常情報などの情報を表示装置に表示させる。
インラインセンサ58から出力される読取データ(読取信号)は、ノイズ除去、波形整形等の処理が施され、システムコントローラ100を介して予め決められたメモリ(例えば、RAM100C)に記憶される。
パラメータ記憶部134は、インクジェット記録装置10に使用される各種パラメータが記憶される。パラメータ記憶部134に記憶されている各種パラメータは、システムコントローラ100を介して読み出され、装置各部に設定される。
プログラム格納部136は、インクジェット記録装置10の各部に使用されるプログラムが格納される。プログラム格納部136に格納されている各種プログラムは、システムコントローラ100を介して読み出され、装置各部において実行される。
予測情報提供装置138は、ジョブ実行中の予測情報を提供する。「予測情報」は、記録素子の一部として機能するノズル部(図6に符号281を付して図示)ごとの目標とされる記録位置と実際の記録位置とのずれ量(図8に符号xiを付して図示)が予め決められたしきい値(図9に符号xthを付して図示した不吐化しきい値)となる用紙Sの記録枚数が含まれる。
「ジョブ」とは、記録枚数、画像データ、用紙Sの種類等の条件を特定して行われる一連の画像記録である。「画像データ」は、ポスターの記録などに適用される用紙Sの一枚分の画像データでもよいし、複数のページを含む冊子を記録する際などに適用される、用紙Sの複数枚分の異なる画像データを組み合わせたものでもよい。
記録特性情報生成部140は、予測情報提供装置138から提供された予測情報に基づいて、ノズル部ごとの記録特性情報を生成する。「記録特性情報」は、不吐化処理がされているノズル部であるか否かの情報が含まれる。
記録特性情報記憶部142は、記録特性情報生成部140において生成された記録特性情報が記憶される。すなわち、記録特性情報記憶部142は、ノズル部ごとの、不吐化処理されているか否かの情報が記憶されている。
画像記録制御部118は、記録特性情報生成部140に記憶されているノズル部281ごとの記録特性である、不吐化処理がされているノズル部281であるか否かの情報を参照し、画像記録部18の動作を制御して画像記録部18に画像記録を実行させる。なお、詳細は後述する。
カウンター部144は、画像記録部18によって画像記録がされた用紙Sの記録枚数を計測する記録枚数計測部として機能する。カウンター部144によって計測された用紙Sの記録枚数は、ノズル部ごとの記録位置の測定である記録位置履歴情報の取得、ノズル部281の不吐化処理等に使用される。
解析部146は、インラインセンサ58から出力された読取データを解析して、ノズル部ごとの記録位置の情報を生成する。解析部146によって生成された記録位置の情報は、システムコントローラ100を介して予測情報提供装置138へ送られる。
インラインセンサ58、インラインセンサの読取データを記憶するメモリ、及び解析部は、記録位置測定部として機能する。
〔インクジェットヘッドユニットの構造〕
次に、ヘッドユニットの構造について詳細に説明する。以下に説明するヘッドユニットは、「記録ヘッド」として機能している。
〈全体構造〉
図3は、図1に図示したヘッドユニット56C,56M,56Y,及び56Kの構成図であり、インク液滴が打滴されるインク打滴面の透視平面図である。CMYKの各色に対応するヘッドユニット56C,56M,56Y,及び56Kには同一の構造が適用される。ヘッドユニット56C,56M,56Y,及び56Kを区別する必要がない場合にはヘッドユニット56C,56M,56Y,及び56Kのアルファベットを省略し、「ヘッドユニット56」と記載することがある。
図3に示すヘッドユニット56は、用紙Sの搬送方向であるY方向と直交する用紙Sの幅方向であるX方向について複数のインクジェットヘッド200がつなぎ合わせられた構造を有している。
本明細書における「直交」という用語には、90°未満の角度、又は90°を超える角度をなして交差する態様のうち、実質的に90°の角度をなして交差する場合と同様の作用効果を発生させる態様が含まれる。
ヘッドユニット56を構成する複数のインクジェットヘッド200は同一の構造を適用することができる。また、インクジェットヘッド200は、単体で「記録ヘッド」として機能させることができる。
図3に図示したヘッドユニット56は、複数のインクジェットヘッド200をX方向に沿って一列に配置させた構造を有し、X方向における用紙Sの全幅Lmaxに対応する長さにわたって、複数のノズル部(図3中不図示、図6に符号281を付して図示)が配置されたフルライン型のインクジェットヘッドである。
ここで、「X方向における用紙Sの全幅Lmax」とは、X方向と平行方向の用紙Sの幅方向における用紙Sの全長である。なお、複数のサイズの用紙Sが使用される場合には、用紙ごとの全幅の最大値が「用紙Sの全幅Lmax」である。
本明細書における「平行」という用語には、対象とされる2方向が交差しているものの、平行と同様の作用効果を発生させる「実質的な平行」が含まれる。例えば、X方向と用紙の幅方向とは、実質的に平行とみなせる程度に交差していてもよい。
ヘッドユニット56を構成するインクジェットヘッド200のインク打滴面277には、複数のノズル開口(図3中不図示、図5に符号280を付して図示)が配置されている。複数のノズル部、及び複数のノズル開口の配置の詳細は後述する。
本例では、複数のインクジェットヘッド200をX方向に沿って一列に配置させた構造を有するヘッドユニット56を例示したが、複数のインクジェットヘッド200をX方向について千鳥状に配置させてもよいし、複数のインクジェットヘッド200を一体構造としてもよい。
本例では、フルライン型のヘッドユニット56を例示したが、用紙Sの幅に満たない短尺のシリアル型インクジェットヘッドを用紙の幅方向に走査させて同方向の一回分の画像記録を行い、同方向の一回分の画像記録が終わると、用紙Sの搬送方向に用紙Sを一定量搬送させ、次の領域について用紙Sの幅方向への画像記録を行い、この動作を繰り返して用紙の全面に画像記録を行うシリアル方式にも適用可能である。
〈インクジェットヘッドの構造例〉
図4は、インクジェットヘッド200の斜視図であり部分断面図を含む図である。図5は、図4に示したインクジェットヘッド200におけるインク打滴面277の平面透視図である。
図4に示すように、インクジェットヘッド200は、ノズル板275のインク打滴面277と反対側である、図4において上側にインク供給室232とインク循環室236等からなるインク供給ユニットを有している。
インク供給室232は、供給管路252を介してインクタンク(不図示)に接続され、インク循環室236は、循環管路256を介して回収タンク(不図示)に接続される。
図5ではノズル開口280の数を省略して描いているが、1個のインクジェットヘッド200のノズル板275のインク打滴面277には、2次元配置によって複数のノズル開口280が配置されている。
すなわち、インクジェットヘッド200は、X方向に対して角度βの傾きを有するV方向に沿った長辺側の端面と、Y方向に対して角度αの傾きを持つW方向に沿った短辺側の端面とを有する平行四辺形の平面形状となっており、V方向に沿う行方向、及びW方向に沿う列方向について、複数のノズル開口280及びノズル部がマトリクス配置されている。
なお、ノズル開口280の配置は、図5に図示した態様に限定されず、X方向に沿う行方向、及びX方向に対して斜めに交差する列方向に沿って複数のノズル開口280を配置してもよい。
すなわち、ノズル開口280、ノズル部281のマトリクス配置とは、複数のノズル開口280をX方向に投影させて、複数のノズル開口280をX方向に沿って配置させたX方向の投影ノズル列(図示省略)において、ノズル開口280の配置間隔、ノズル間距離が均一となるノズル開口280、ノズル部281の配置である。
X方向の投影ノズル列において、隣接するインクジェットヘッド200同士のつなぎ部分(つなぎ領域)においては、一方のインクジェットヘッド200に属するノズル開口280と、他方のインクジェットヘッド200に属するノズル開口280が混在している。
各インクジェットヘッド200に取り付け位置の誤差が存在しない場合、つなぎ領域における一方のインクジェットヘッド200に属するノズル開口280と他方のインクジェットヘッド200に属するノズル開口280とは同じ位置に配置されるので、つなぎ領域においてもノズル開口280の配置は均一である。
以下の説明では、ヘッドユニット56を構成するインクジェットヘッド200は取り付け位置の誤差がなく取り付けられていることとする。
図6は、インクジェットヘッド200の内部構造を示す断面図である。符号214はインク供給路、符号218は圧力室、符号216は各圧力室218とインク供給路214とをつなぐ個別供給路、符号220は圧力室218からノズル開口280につながるノズル連通路、符号226はノズル連通路220と循環共通流路228とをつなぐ循環個別流路である。圧力室218は、液室と呼ばれることがある。
これら流路部214,216,218,220,226,228を構成する流路構造体210の上に、振動板266が設けられる。振動板266の上には接着層267を介して、下部電極265、圧電体層231及び上部電極264の積層構造から成る圧電素子230が配設されている。下部電極265は共通電極と呼ばれることがあり、上部電極264は個別電極と呼ばれることがある。
上部電極264は、各圧力室218の形状に対応してパターニングされた個別電極となっており、圧力室218ごとに、それぞれ圧電素子230が設けられている。
インク供給路214は、図4で説明したインク供給室232につながっており、インク供給路214から個別供給路216を介して圧力室218にインクが供給される。記録すべき画像の画像データに応じて、対応する圧力室218に設けられた圧電素子230の上部電極264に駆動電圧を印加することによって、該圧電素子230及び振動板266が変形して圧力室218の容積が変化し、これに伴う圧力変化によりノズル連通路220を介してノズル開口280からインクが打滴される。
画像データから生成されるドット配置データに応じて各ノズル開口280に対応した圧電素子230の駆動を制御することにより、ノズル開口280からインク液滴を打滴させることができる。
用紙Sを一定の速度でY方向に搬送しながら、その搬送速度に合わせて各ノズル開口280からのインク打滴タイミングを制御することによって、用紙Sの上に所望の画像を記録することができる。
図示は省略するが、各ノズル開口280に対応して設けられている圧力室218は、その平面形状が概略正方形となっており、対角線上の両隅部の一方にノズル開口280への流出口が設けられ、他方に供給インクの流入口である個別供給路216が設けられている。
なお、圧力室の形状は、正方形に限定されない。圧力室の平面形状は、菱形、長方形などの四角形、五角形、六角形その他の多角形、円形、楕円形など、多様な形態があり得る。
ノズル開口280及びノズル連通路220を含むノズル部281には、循環出口(不図示)が形成され、ノズル部281は循環出口を介して循環個別流路226と連通される。
ノズル部281のインクのうち、打滴に使用されないインクは循環個別流路226を介して循環共通流路228へ回収される。
循環共通流路228は、図5で説明したインク循環室236につながっており、循環個別流路226を通って常時インクが循環共通流路228へ回収されることにより、非打滴時におけるノズル部のインクの増粘が防止される。
なお、本発明の適用範囲は、図4から図6に図示した構造に限定されない。ノズル開口280、ノズル部281の配置は、用紙Sの幅方向について一列に配置してもよいし、二列の千鳥配置でもよい。
以上説明したヘッドユニット56の例として、X方向に沿って17個のインクジェットヘッド200を一列に並べた構成が挙げられる。また、インクジェットヘッド200の例として、2048個の記録素子を具備する構成が挙げられる。
「記録素子」とは、インクを打滴する構成の最小単位であり、一つのノズル部281、及び当該ノズル部281に連通される圧力室218などの流路、当該ノズル部281に対応する圧電素子230が含まれる。
圧電素子の例として、図6の各ノズル部281に対応して個別に分離した構造を有する圧電素子230が挙げられる。もちろん、複数のノズル部281に対して一体に圧電体層231が形成され、各ノズル部281に対応して個別電極が形成され、ノズル部281ごとに活性領域が形成される構造を適用してもよい。
圧電素子に代わり圧力発生素子として圧力室218の内部にヒータを備え、当該ヒータに駆動電圧を供給して発熱させ、膜沸騰現象を利用して圧力室218内のインクをノズル開口280から打滴するサーマル方式を適用してもよい。
〔不吐化処理の説明〕
インクジェット記録装置10では、正常な打滴を行うことができない異常ノズル部を対象として、異常のノズル部を記録に使用しないノズル部としてマスクする不吐化処理が施される。
正常な打滴を行うことができない異常ノズル部の例として、圧電素子を動作させるとインク液滴が打滴されるものの、用紙Sにおける記録位置のずれ量が予め決められた不吐化しきい値以上であるノズル部、圧電素子を動作させてもインク液滴が打滴されないノズル部、圧電素子を動作させるとインク液滴が打滴されるものの、インク液滴の打滴量が過剰又は過少となるノズル部などが挙げられる。
不吐化処理がされた異常ノズル部が担う画像記録は、異常ノズル部の周囲に配置された正常なノズル部によって行われる。「異常ノズル部の周囲に配置された正常なノズル部」は、異常ノズル部が担う記録位置に記録されるべきドットによって被覆される領域の、少なくとも一部を被覆しうるドットを記録することができる正常なノズル部である。一例として、マトリクス配置されたノズル部のX方向の投影ノズル列において、異常ノズル部の両隣に配置された正常なノズル部が挙げられる。
インクジェット記録装置10は、予測情報提供装置138から提供された、ノズル部ごとの予測情報を用いて不吐化処理の対象とされるノズル部を抽出し、不吐化処理の対象とされたノズル部に対して不吐化処理を施す。
ジョブの進行とともに正常なノズル部が異常になることがある。インクジェット記録装置10は、ジョブ実行中に定期的にノズル部ごとの予測情報を取得して、ジョブ実行中に異常となるノズル部が、何枚目の画像記録で異常となるかを予測し、異常となる記録枚数の画像記録が実行される前に、異常となるノズル部に対して不吐化処理が施される。
将来的に異常になると予測されるノズル部に対して、異常となる前に不吐化処理が施されることにより、ジョブ実行中に正常なノズル部が異常となった場合でも、異常ノズル部に起因する記録画像における白すじの発生を未然に防ぐことが可能となる。
不吐化処理を実施するタイミングは、不吐化処理の対象とされる記録素子が異常となる前であればよい。例えば、不吐化処理自体の処理期間、画像記録の速度、画像記録の内容、画像データの内容等に応じて適宜決められる。
以下に、異常となるノズル部が、何枚目の画像記録で正常から異常に変化するかを予測する構成について説明する。
〔予測情報提供装置の説明〕
図7は、図2に示す予測情報提供装置138の構成を示すブロック図である。図7に示す予測情報提供装置138は、記録位置履歴情報取得部300と、記録位置履歴情報記憶部302と、予測情報生成部304と、予測情報記憶部306と、予測情報出力部308と、制御部310と、を備えている。
記録位置履歴情報取得部300は、記録位置履歴情報を取得する。「記録位置履歴情報」は、ジョブ実行中にM枚の用紙Sの画像記録ごとの測定によって得られたノズル部281ごとの記録位置の情報であり、三回以上の測定によって得られた三つ以上のノズル部281ごとの記録位置の情報が含まれる。
記録位置履歴情報の取得は、一回の測定分の記録位置の情報を一回で取得してもよいし、複数回の測定分の記録位置の情報をまとめて一回で取得してもよい。また、一回の測定で複数の測定値を測定してもよい。以下の説明では、一回の測定分の記録位置の情報を一回で取得することとする。
ノズル部281ごとの記録位置の測定は、一枚の画像記録がされるごとに行われてもよし、複数枚の画像記録ごとに行われてもよい。
例えば、1000枚の画像記録を行うジョブの場合に、5枚目の画像記録時において最初のノズル部281ごとの記録位置が測定される。その後、15枚目、25枚目、35枚目、といったように10枚の画像記録時に一回、ノズル部281ごとの記録位置が測定され、記録位置の情報が生成される。
用紙Sの記録枚数である、最初に記録位置が測定された枚数+M×記録位置の測定回数をパラメータとする、三つ以上のノズル部281ごとの記録位置の情報は、ノズルごとの記録位置の変化である記録位置のずれ量の変化を表す記録位置履歴情報として取り扱われる。
記録位置履歴情報記憶部302は、記録位置履歴情報取得部300によって取得された記録位置履歴情報が記憶される。
予測情報生成部304は、記録位置履歴情報を用いて予測情報を生成する。例えば、各ノズル部281について、三回の測定分の記録位置の情報を含む記録位置履歴情報が取得されると、ノズル部281ごとの記録位置履歴情報に基づいて、ノズル部281ごとに記録枚数をパラメータとするジョブ実行中の記録位置の変化が予測される。
そして、各ノズル部281について、記録位置のずれ量が予め決められた不吐化しきい値(図9に符号xthを付して図示)となる用紙Sの記録枚数目(図9に符号Mmaskを付して図示)が、予測情報生成部304によって予測情報として生成される。
予測情報記憶部306は、予測情報生成部304によって生成された、ノズル部281ごとの予測情報が記憶される。
予測情報出力部308は、予測情報生成部304によって生成され、予測情報記憶部306に記憶されたノズル部281ごとの予測情報を出力する。
図2に図示した構成において、図7の予測情報出力部308から出力された予測情報は、図2のシステムコントローラ100を介して、記録特性情報生成部140へ提供され、不吐化処理に利用される。
制御部310は、予測情報提供装置138の各部を統括して制御する。すなわち、制御部310は、記録位置履歴情報取得部300、予測情報生成部304、予測情報出力部308に対して指令信号を送出する。また、制御部310は、記録位置履歴情報記憶部302、予測情報記憶部306への情報の書き込み、記録位置履歴情報記憶部302、予測情報記憶部306からの情報の読み出しを制御するメモリコントローラとして機能する。制御部310は、図2のシステムコントローラ100と一部又は全部を兼用してもよい。
〔予測情報生成の説明〕
〈記録位置のずれ量の説明〉
図8は、用紙Sにおける記録位置のずれ量の説明図であり、ヘッドユニット56に具備されるノズル部281i−1,280i,280i+1から打滴したインク液滴320i−1,320i,320i+1が、用紙Sに着弾した状態が模式的に図示されている。
図8において、ノズル部281に付した添え字iは、ノズル部281の識別番号であるノズル番号を表している。図8には、i番目のノズル部281i、i−1番目のノズル部281i−1、i+1番目のノズル部281i+1が図示されており、i番目のノズル部281iによって記録されたドットを形成するインク液滴320iの用紙Sにおける位置であるi番目のノズル部281iの用紙Sにおける記録位置が、i−1番目のノズル部281i−1の方へxiだけずれている。
一方、ノズル部281i−1から打滴され用紙Sに着弾したインク液滴320i−1、及びノズル部281i+1から打滴され用紙Sに着弾したインク液滴320i+1は記録位置のずれがなく、目標とされる記録位置に着弾している。
図8に図示した「xi」は、i番目のノズル部281iの用紙Sにおける記録位置のずれ量である。「記録位置のずれ量xi」は、目標とされる記録位置321Aと実際にドットが配置された現実の記録位置321BとのX方向における距離である。
ノズル部281iの実際の記録位置321Bの測定は、予め決められた記録枚数目の画像記録がされた用紙を用いて行われる。測定された記録位置321Bの情報と、目標とされる記録位置321Aの情報から、ノズル部281iの記録位置のずれ量xiが導出される。なお、ノズル部281iの記録位置のずれ量xiを絶対値|xi|として取り扱うことにより、ずれる方向を考慮せずに演算に使用することができる。本例では、ノズル部281iの記録位置のずれ量xiの数値は絶対値|xi|として取り扱う。
〈予測情報生成の第1実施形態の説明〉
図9は、予測情報生成の第1実施形態の説明図であり、ノズル部281iにおける記録枚数に対する記録位置のずれ量xiの変化を表している。図9の横系列は用紙Sの記録枚数であり、縦系列はノズル部281iの用紙Sにおける記録位置のずれ量xiであり、符号xthは不吐化しきい値である。
図9には、M0枚目の画像記録において測定された記録位置のずれ量330、M1(=M0+M)枚目の画像記録における記録位置のずれ量332、M2(=M1+M)枚目の画像記録における記録位置のずれ量334が図示されている。
三つ以上の記録位置のずれ量xiを含む記録位置予測情報が取得されると、予測演算の一態様である線形予測演算を用いて、ノズル部281iにおける将来の記録位置のずれ量xiがどのように変化するかが予測される。図9に符号336を付して破線を用いて図示した直線は、ノズル部281iの記録位置のずれ量がどのように変化するのかを表す予測結果である。
予測結果336を用いて、ノズル部281iの記録位置のずれ量xiが不吐化しきい値xthとなる用紙Sの記録枚数目Mmaskが、ノズル部281iの予測情報として生成される。
予測情報は、ノズル部281iに対して不吐化処理を施すか否かの指標となり、かつ、ノズル部281iに対して不吐化処理を施す場合に、何枚目の用紙Sの画像記録までに不吐化処理を施すかの指標となる。
図9には、線形予測演算を用いてノズル部281iの将来の記録位置のずれ量xiを予測する態様を例示したが、線形予測演算以外の予測演算、予測処理を用いて、ノズル部281iの将来の記録位置のずれ量xiを予測してもよい。
図9に示す例では、ノズル部281iの将来の記録位置のずれ量xiを予測する際に線形予測演算が適用されるために、三つ以上の記録位置の情報を取得したが、二つ以上の記録位置の情報を用いた予測演算、予測処理が適用される場合には、取得される記録位置の情報は二つ以上でよい。
図10は、ノズル部281iの予測情報の生成に適用されるパラメータの説明図であり、用紙Sに記録された二つのドット350i、350i+1が図示されている。ドット350iはノズル部281iから打滴したインク液滴によって記録されたドットであり、ドット350i+1はノズル部281i+1から打滴したインク液滴によって記録されたドットである。
符号350A,350Bは、それぞれドット350i,350i+1の中心を示している。図10に示す「ドットの中心」は、ドットの平面形状を円と仮定した場合の円の中心である。
符号Lは、X方向の投影ノズル列における、ドット350i,350i+1を形成した隣接するノズル部同士であるノズル部281i,281i+1の中心間距離である。以降の説明では、隣接するノズル部間の中心間距離を「X方向のノズル部間距離」と記載することがある。
符号rは、ドット350i,350i+1の形状を円と仮定した場合のドット350i,350i+1の半径である。
本例では、不吐化しきい値xthとして、隣接するドット350i,350i+1の重なる領域355のX方向における最大値が適用される。隣接するドットが重なる記録条件であるL<2×rにおいて、不吐化しきい値xthはxth=2×r−Lと表される。図10では、符号355が示す領域は斜線ハッチを付して図示されている。
すなわち、不吐化しきい値xthは、隣接して記録されるドットがどのくらい離れると、視認されうる白すじが発生するかを表す指標であり、記録解像度、使用されるドットの半径、画像の内容などの条件を考慮して決められる。
不吐化しきい値xthは、ヘッドユニット56ごとの固定値としてもよいし、ジョブごとに設定される可変値としてもよい。
不吐化しきい値xthは、X方向の投影ノズル列における、ドットの半径rの2倍の値を「1画素」と定義して、1画素未満の値を適用することができる。1未満の任意の定数をkとすると、不吐化しきい値xthはxth=L×kと表される。定数kは0.5以下が好ましく、0.3以下がより好ましい。
第1実施形態に係る予測情報生成によれば、ノズル部281ごとの記録位置であるノズル部281iの記録位置のずれ量xiが不吐化しきい値xthとなる記録枚数目Mmaskまで、記録位置の情報を取得するごとに記録位置のずれ量xiを導出しなくても、記録位置のずれ量xiが不吐化しきい値xth2となる記録枚数目Mmaskを予め予測することができる。
したがって、記録位置のずれ量xiが不吐化しきい値xth以上となる前に、記録位置のずれ量xiが不吐化しきい値xth以上となるノズル部281に対して不吐化処理を施すことにより、記録画像における白すじの発生が防止される。
〈予測情報生成の第2実施形態の説明〉
次に、図8から図10を適宜参照して、予測情報生成の第2実施形態について説明する。第2実施形態に係る予測情報生成では、第1実施形態に係る予測情報生成における、ノズル部281iの記録位置のずれ量xiに代わり、予測情報生成対象のノズル部281iと、予測情報生成対象のノズル部281iに隣接するノズル部281i+1、又はノズル部281i−1との相対的な記録位置のずれ量を記録位置履歴情報として取得する。
「隣接するノズル部との相対的な記録位置のずれ量」は、図8におけるノズル部281iに隣接するノズル部281i+1の記録位置のずれ量xi+1(不図示)から、ノズル部281iの記録位置のずれ量xiを減算した値の絶対値|xi+1−xi|として求められる。
隣接するノズル部との相対的な記録位置のずれ量|xi+1−xi|が、予め決められた不吐化しきい値xth2となる用紙Sの記録枚数目Mmask2が、予測情報として生成される。隣接する二つのノズル部281i,281i+1のうち、記録位置のずれ量が大きいノズル部が不吐化処理の対象とされる。
第2実施形態における不吐化しきい値xth2は、第1実施形態における不吐化しきい値xthと同一の値を適用することができる。
第2実施形態に係る予測情報生成によれば、第1実施形態と同様に、ノズル部281ごとの隣接するノズル部281との相対的な記録位置のずれ量|xi+1−xi|が不吐化しきい値xth2となる記録枚数目Mmask2まで、記録位置の情報を取得するごとに記録位置のずれ量を測定しなくても、隣接するノズル部281との相対的な記録位置のずれ量|xi+1−xi|が不吐化しきい値xth2となる記録枚数目Mmask2を予測することができる。
したがって、隣接するノズル部281との相対的な記録位置のずれ量|xi+1−xi|が不吐化しきい値xth2以上となる前に、隣接するノズル部281との相対的な記録位置のずれ量|xi+1−xi|が不吐化しきい値xth2以上となるノズル部281に対して不吐化処理を施すことができ、記録画像における白すじの発生が防止される。
また、隣接するノズル部281i,281i+1、又は281i−1の間で、記録位置のずれる方向が反対方向となる場合に、ノズル部281i,281i+1のそれぞれの記録位置のずれ量xi,xi+1が不吐化しきい値xth2以上とならなくても、ノズル部281iによって記録されるドットを形成するインク液滴320iと、ノズル部281i+1によって記録されるドットを形成するインク液滴320i+1との相対的な距離が大きくなり、記録画像に白すじが発生することがありうる。
隣接するノズル部281i,281i+1、又は281i−1の間で、記録位置のずれる方向が反対方向となる場合とは、ノズル部281iによって記録されるドットと、ノズル部281i+1によって記録されるドットが離れる方向である。
このような場合でも、記録画像に白すじが発生する前に、隣接するノズル部281i,281i+1のうち記録位置のずれ量が相対的に大きいノズル部に対して不吐化処理を施すことにより、記録画像における白すじの発生が防止される。
本例では、第1記録素子であるノズル部281i+1と、ノズル部281i+1の隣接位置に配置される第2記録素子であるノズル部281iとの相対的な記録位置のずれ量|xi+1−xi|を用いて予測情報が生成される態様を例示したが、第1記録素子であるノズル部と第2記録素子であるノズル部とは近接位置に配置されていればよい。
近接位置に配置された二つのノズル部は、記録位置の変化が影響する範囲に配置されていればよい。
〈予測情報生成の第3実施形態の説明〉
次に、図8から図10を適宜参照して、予測情報生成の第3実施形態について説明する。第3実施形態に係る予測情報生成では、ノズル部281iの記録位置の変化を表す指標として、記録位置のずれ量xiに記録位置のずれ量xiの標準偏差σtiを加算又は減算した値の絶対値|xi±σti|が記録位置履歴情報とされる。
そして、記録位置履歴情報である|xi±σti|が不吐化しきい値xth3となる用紙Sの記録枚数目Mmask3が予測情報として生成される。
第3実施形態における不吐化しきい値xth3は、第1実施形態における不吐化しきい値xthの二分の一の値であるxth/2を適用することができる。
第3実施形態に係る予測情報生成によれば、ノズル部281iの記録位置履歴情報として、記録位置のずれ量xiに記録位置のずれ量xiの標準偏差σtiを加算又は減算した値の絶対値|xi±σti|が適用される。
第1、第2実施形態と同様に、ノズル部281ごとの記録位置のずれ量xiが、不吐化しきい値xth3以上となるか否かを予測することができ、不吐化しきい値xth3となる記録枚数目Mmask3を予測することができる。
したがって、記録位置のずれ量xiが不吐化しきい値xth3以上となる前に、記録位置のずれ量xiが不吐化しきい値xth3以上となるノズル部281に不吐化処理を施すことにより、記録画像における白すじの発生が防止される。
不吐化しきい値xth3は、第1実施形態の不吐化しきい値xth、第2実施形態の不吐化しきい値xth2を適用することができる。
〔予測情報を用いた不吐化処理のフローチャート〕
図11は、最初に説明した第1実施形態の予測情報の生成流れ、及び生成された予測情報を用いた不吐化処理の流れを示すフローチャートである。
ステップS10においてジョブが開始されると、ステップS12に示す設定工程において、ノズル部281ごとの記録位置の測定周期M枚、記録位置の測定がされる記録枚数目M0、M1、M2、…、が設定される。
記録位置の測定は、図3に図示したヘッドユニット56ごとに実行されてもよいし、同図に図示したインクジェットヘッド200ごとに実行されてもよい。ここでは、ヘッドユニット56ごとに記録位置の測定がされる例について説明する。
すなわち、設定工程では、ヘッドユニット56ごとに記録位置の測定周期M、記録位置の測定がされる記録枚数目M0、M1、M2、…、が設定される。
例えば、記録位置の測定周期Mが10枚、一回目の測定がされる記録枚数目M0が5枚目の場合、二回目以降測定対象の記録枚数目M1は15枚目、M2は25枚目とされる。ステップS14からステップS26までの各工程は、測定対象の記録枚数目M0、M1、M2、…、ノズル部の番号iでループ処理がされる。
ステップS14の記録枚数計測工程では、用紙Sの記録枚数が計測される。用紙Sの記録枚数が記録位置の測定対象の記録枚数目でない場合には(No判定)、用紙Sの記録枚数の計測が継続される。
一方、ステップS16の記録位置情報測定工程、記録位置情報記憶工程において、用紙Sの記録枚数が記録位置の測定対象の記録枚数目である場合には(Yes判定)、ノズル部281ごとの記録位置が測定され、記憶される。
そして、ステップS18のデータ数更新工程において、記録位置のデータ数が更新され、ステップS20のデータ数判断工程において、記録位置のデータ数が3以上であるか否かが判断される。
ステップS20において、記録位置のデータ数が3未満の場合には(No判定)、ステップS14に戻り、ステップS14からステップS20の工程が繰り返し実行される。
ステップS20において、記録位置のデータ数が3以上の場合には(Yes判定)、ステップS21の記録位置履歴情報取得工程に進む。
すなわち、ステップS12からステップS20の工程は、記録位置履歴情報を生成する記録位置履歴情報生成工程として機能する。ステップS21の記録位置履歴情報取得工程において記録位置履歴情報が取得されると、ステップS22の予測情報生成工程に進む。
ステップS22の予測情報生成工程では、ステップS21の記録位置取得工程において取得された記録位置履歴情報に対して線形予測演算を施して、不吐化しきい値xthとなる用紙Sの記録枚数目Mmaskが予測情報として生成される。ステップS24の予測情報出力工程、予測情報記憶工程において、生成された予測情報は出力され、記憶される。
出力された予測情報に基づいて、ステップS26の不吐化処理工程では、図8に図示した記録位置のずれ量xiが、図9に図示した不吐化しきい値xthとなる用紙Sの記録枚数目Mmask未満のうちに、該当するノズル部281に対して不吐化処理が施される。
ステップS10において開始されたジョブの実行中は、ステップS14からステップS24の処理が繰り返し実行される。また、ステップS24において出力された予測情報に基づく不吐化処理、及び不吐化処理対象のノズル部281の更新が適宜実行される。
ステップS10において開始されたジョブは、ステップS28のジョブ終了工程において、画像記録の完了等のジョブの終了条件を満たすと終了される。
第2実施形態に係る予測情報生成が適用される場合には、ステップS22の予測情報生成工程において、ノズル部281ごとの記録位置のずれ量xiに代わり、隣接するノズル部281i,281i+1間の相対的な記録位置のずれ量|xi+1−xi|を用いて予測情報を生成すればよい。
第3実施形態に係る予測情報生成が適用される場合には、ステップS22の予測情報生成工程において、ノズル部281ごとの記録位置のずれ量xiに代わり、ノズル部281ごとの記録位置のずれ量xiに、ノズル部281ごとの記録位置のずれ量xiの標準偏差σtiを加算又は減算した値の絶対値|xi±σti|を用いて予測情報を生成すればよい。
図11に図示したフローチャートにおいて、ステップS26の不吐化処理工程を省略して、図7に図示した予測情報提供装置138に対応する、ノズル部281ごとの予測情報を提供する予測情報提供方法を構成することも可能である。
また、図11に図示した不吐化処理方法によって不吐化処理されたノズル部281の情報を、画像記録の制御に適用した記録制御方法を構成することも可能である。
図7に図示した予測情報提供装置138の各部の機能を実現するためのプログラムを構成することも可能である。例えば、コンピュータに、記録位置履歴情報を取得する記録位置履歴情報取得部300の記録位置履歴情報取得機能、記録位置履歴情報を記憶する記録位置履歴情報記憶部302の記録位置履歴情報記憶機能、予測情報を生成する予測情報生成部304の予測情報生成機能、予測情報を出力する予測情報出力部308の予測情報出力機能を実現させる予測情報提供プログラムを構成することができる。
図1、図2に図示したインクジェット記録装置10は、記録制御装置として機能する構成が含まれる。記録制御装置の構成例として、図2のシステムコントローラ100、画像記録制御部118、予測情報提供装置138、記録特性情報生成部140、記録特性情報記憶部142を含む構成が挙げられる。
また、図11に図示したフローチャートから、上記した記録制御装置に対応する記録制御方法を構成することが可能である。例えば、記録に使用されない記録素子とされた記録素子である不吐化処理されたノズル部を除外して画像記録を行う、記憶素子ごとの記録特性に基づいて記録素子ごとの条件を変更して画像記録を行う記録制御工程を含む記録制御方法が挙げられる。
さらに、上記した記録制御装置に対応して、コンピュータに、予測情報を提供する予測情報提供装機能、予測情報に基づき、ノズル部ごとの記録特性情報(不吐化ノズルであるか否かの情報)を生成する記録特性情報生成機能、ノズル部ごとの記録特性に基づいてノズル部ごとの条件を変更して画像記録部18を動作させる画像記録制御機能、を実現させる記録制御プログラムを構成することが可能である。
上記の如く構成された予測情報提供装置、方法、プログラム、及び記録制御装置、方法、プログラムによれば、ジョブ実行中のノズル部ごとの記録位置の測定によって得られた複数の記録位置の情報を含む記録位置履歴情報を取得し、取得された記録位置履歴情報に線形予測演算を施して記録位置のずれ量が不吐化しきい値となる記録枚数目を表す予測情報が生成されるので、記録位置のずれ量が不吐化しきい値となるまで記録位置のずれ量を導出しなくても、記録位置のずれ量が不吐化しきい値以上となるか否かをノズル部ごとに判断することができ、記録位置のずれ量が不吐化しきい値となる記録枚数目を把握しうる。
また、記録位置履歴情報の分散を導出し、記録位置履歴情報の分散に基づき記録位置のずれ量が不吐化しきい値となる記録枚数目を表す生成されるので、記録位置のずれ量が不吐化しきい値以上となるか否かをノズル部ごとに判断することができ、記録位置のずれ量が不吐化しきい値となる記録枚数目を把握しうる。
記録位置のずれ量が不吐化しきい値以上となるノズル部に対して、記録位置のずれ量が不吐化しきい値になる前に不吐化処理を施すことができるので、ジョブ実行中にノズル部ごとの記録特性が変化したとしても、記録画像における白すじの発生を防止することができる。
また、不吐化処理がされたノズル部は、画像記録における管理の対象から除外することができるので、記憶容量の削減、演算処理の負荷低減に寄与する。
本例では、記録位置のずれ量の情報が三つ取得されると、予測情報が生成される態様を例示したが、四つ目以降の記録位置のずれ量の情報が取得されると、予測情報を新たに生成して、更新してもよい。
〔記録位置の測定の説明〕
次に、ノズル部281ごとの記録位置の測定ついて説明する。以下に、インラインセンサ58を用いて、テストパターンの記録からテストパターンの読み取りまでについて、用紙Sを搬送経路から離脱させることなくインラインでノズル部281ごとの記録位置を測定する態様について説明する。
なお、ノズル部281ごとの記録位置を測定する手法は、以下に説明する例に限定されず、予め決められた測定精度(例えば、0.05画素以下)を確保することができればよい。
まず、測定対象のノズル部281を具備するヘッドユニット56を用いて、用紙Sの余白領域にテストパターンを記録し、読取装置として機能するインラインセンサ58を用いて用紙Sに記録されたテストパターンが読み取られ、インラインセンサ58から得られた読取データを解析することにより、ノズル部281ごとの記録位置の情報が取得される。読取データの解析は、図2の解析部146において実行される。
〈テストパターンの記録の説明〉
図12は、用紙Sにおけるテストパターンが記録される領域の説明図である。同図に示す用紙Sの画像記録面370には、Y方向における用紙Sの先端部分に先端側テストパターン記録領域372が設けられる。また、Y方向における用紙Sの後端部分に後端側テストパターン記録領域374が設けられる。Y方向における先端側テストパターン記録領域372と後端側テストパターン記録領域374との間に、画像記録領域376が設けられる。
先端側テストパターン記録領域372、及び後端側テストパターン記録領域374は、X方向について、ヘッドユニット56の全長に対応する長さを有しているので、一ヘッドユニット分のテストパターンを記録することが可能である。
記録位置の測定対象の記録枚数目の用紙Sは、画像記録領域376に記録画像が記録され、先端側テストパターン記録領域372及び後端側テストパターン記録領域374の少なくともいずれか一方に、ヘッドユニット56を用いてテストパターン(図13に符号380を付して図示)が記録される。
図1に図示した四つのヘッドユニット56C,56M,56Y,56Kを備えるインクジェット記録装置10では、ヘッドユニット56Cのテストパターンを先端側テストパターン記録領域372に記録し、ヘッドユニット56Mのテストパターンを後端側テストパターン記録領域374に記録し、次の用紙Sの先端側テストパターン記録領域372にヘッドユニット56Yのテストパターンを記録し、後端側テストパターン記録領域374にヘッドユニット56Kのテストパターンを記録して、二枚の用紙Sを用いて四ヘッド分のテストパターンを記録することができる。
また、複数のインクジェットヘッド200を組み合わせた構造を有するヘッドユニット56では、インクジェットヘッド200ごとにテストパターンを記録する用紙Sを変えてもよい。
さらに、インクジェットヘッド200に具備されるノズル部281を複数のグループに分けて、グルーブごとにテストパターンを記録する用紙Sを変えてもよい。
記録位置の測定周期は、ヘッドユニット56の使用頻度、インクごとの白すじの視認性に違い(Yインクは他の色のインクと比較して白すじが視認されにくいなど)等を考慮して、適宜設定することができ、記録位置の測定回数、頻度は、記録位置のずれ量の計算期間、予測情報の導出期間、不吐化処理の処理期間、画像記録速度などの諸条件に応じて決められる。
テストパターン記録領域の配置、数、大きさは、図12の例に限定されず、記録位置測定の諸条件、画像記録の諸条件に応じて、適宜決めることができる。
図13は、テストパターンの一例を示す説明図である。同図に示すテストパターン380は、「1オンNオフパターン」を含むテストパターンである。
「1オンNオフパターン」パターンの記録は、以下の順序で行われる。まず、先に説明したX方向の投影ノズル列において、Nノズルおきに選択されたノズル部281からインク液滴を打滴して、一段目のパターン382が記録される。
次に、Y方向に用紙Sを移動させ、ノズル部281の選択を変更して、二段目のパターン384を記録する。この動作を複数回繰り返して、すべてのノズル部281を用いてN+1段分のパターンが記録される。符号386はN+1段目である最終段のパターンを表している。なお、図13では、一部のパターンを省略してテストパターン380が図示されている。
各段のパターンを構成するドット群388は、Y方向に複数ドット分の長さを有している。図13に図示したテストパターン380は、一つのヘッドユニット56に対して一つ記録される。
テストパターン380における記録解像度である、テストパターン380を構成するドット群388のX方向における配置間隔は、テストパターン380を読み取る読取装置の読取解像度に対応して適宜決められる。
また、テストパターン380を構成するドット群388のY方向における長さは、撮像素子の撮像速度に対応して適宜決められる。撮像速度はスキャン速度を含む概念である。
〈テストパターンの読み取りの説明〉
テストパターン380を読み取る読取装置として機能するインラインセンサ58は、読取素子として、CCD(Charge Coupled Device)イメージセンサを備え、複数のCCDイメージセンサがX方向に沿って配置されるライン型である。
ライン型に代わり、Y方向に沿って複数のCCDイメージセンサが配置され、複数のCCDイメージセンサをX方向に沿って走査させる構成を適用してもよい。
インラインセンサ58を用いて用紙Sに記録されたテストパターン380を読み取ることにより、テストパターン380が記録された後に、直ちにテストパターン380を読み取ることができ、テストパターン380の記録からノズル部281ごとの記録位置の測定までの期間の短縮化に寄与する。
本例では、用紙Sの搬送路上に配置されたインラインセンサ58を用いたインライン測定を例示したが、装置外部に読取装置であるスキャナ装置を備え、テストパターン380が記録された用紙Sを装置外部の読取装置を用いて読み取り、読取結果を取得してもよい。
図13に図示したテストパターン380の読み取りを行う場合、読取装置の読取解像度は一段分の記録解像度に対応していればよい。すなわち、テストパターン380を構成するドット群388の一つ一つを読取データにおいて識別できればよい。
テストパターン380の読取データを解析して、ノズル部281の記録位置を導出する手法には、公知の技術を適用することができる。例えば、読取データとして得られたパルス信号の波形を解析して、ノズル部281ごとの記録位置を導出する手法が挙げられる。
ノズル部281ごとの記録位置を測定する用紙Sの記録枚数は、ノズル部281ごと、インクジェットヘッド200ごとに異なる態様も可能である。例えば、ノズル部281iの総数が40000ノズルの場合に、i=1からi=10000のノズル部281iまでは1枚目、i=10001からi=20000までのノズル部281iは2枚目、i=20001からi=30000までのノズル部281iは3枚目、i=30001からi=
40000までのノズル部281iは4枚目、といったように、ノズル部281を複数のグループにグループ化し、ノズル部281ごとの記録位置の測定をグループごとに周期的に行う態様も可能である。
また、ヘッドユニット56ごとにノズル部281ごとの記録位置の測定タイミングである記録位置を測定する用紙Sの記録枚数目、測定周期である一回前の測定からの用紙Sの記録枚数を変えてもよい。
例えば、色ごとにヘッドユニット56を備える場合、ヘッドユニット56ごとの使用頻度に応じて、相対的に使用頻度が高いヘッドユニット56は頻繁に測定を行い、相対的に使用頻度が低いヘッドユニット56は測定頻度を低くする。黒色インクを打滴するヘッドユニット56Kは2枚ごと、シアンインクを打滴するヘッドユニット56C、及びマゼンタインクを打滴するヘッドユニット56Mは4枚ごと、イエローインクを打滴するヘッドユニット56Yは8枚ごと、といったように、色ごとの使用頻度に応じて測定周期を変えてもよい。
〔その他の構成例〕
本例では、インクジェット方式の画像記録への適用例を示したが、電子写真方式など、記録素子を用いた他の方式の画像記録装置、画像記録方法にも適用可能である。
以上説明した予測情報提供装置、方法、プログラム、及び記録制御装置、方法、プログラムは、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、適宜変更、追加、削除をすることが可能である。また、上述した各実施形態を適宜組み合わせることも可能である。
〔本明細書が開示する発明〕
上記に詳述した発明の実施形態についての記載から把握されるとおり、本明細書は少なくとも以下に示す発明を含む多様な技術思想の開示を含んでいる。
(第1態様):ジョブ実行中に記録素子ごとの記録媒体における記録位置が複数測定されることにより得られる、一つの記録素子について複数の記録位置の情報を含む記録位置履歴情報を取得する記録位置履歴情報取得部と、取得された記録位置履歴情報に予測処理を施すことにより、記録素子ごとに記録位置のずれ量が予め決められたしきい値となる記録媒体の記録枚数目の情報を含む予測情報を生成する予測情報生成部と、生成された予測情報を出力する予測情報出力部と、を備えた予測情報提供装置。
第1態様によれば、ジョブ実行中の複数回の測定によって得られた、一つの記録素子について複数の記録位置の情報を含む記録位置履歴情報に対して予測処理を施して、記録素子ごとの記録位置のずれ量が予め決められたしきい値となる記録媒体の記録枚数目が予測情報として生成される。そのため、ジョブ実行中に記録素子ごとの記録特性が変動し、記録位置のずれ量がしきい値以上となる場合でも、事前に記録位置のずれ量がしきい値以上となる記録媒体の記録枚数目を把握することができる。
記録素子は、インクジェットヘッドに具備されるノズル部、電子写真方式の記録ヘッドに具備されるLED(Light Emitting Diode)素子など、画像記録の最小単位となる素子である。
ジョブは、1枚又は複数枚の記録媒体に対して実行される一連の画像記録であり、同一内容の画像を記録してもよいし、複数の異なる画像を記録してもよい。ジョブ実行中は、任意ジョブの開始から終了までである。
記録位置履歴情報を構成する複数の記録位置情報は、記録素子を用いて画像を記録し、記録された画像を読み取り、読み取られた画像の読取データを解析する記録位置測定によって得ることができる。
(第2態様):第1態様に記載の予測情報提供装置において、記録位置履歴情報取得部は、記録素子の実際の記録位置から目標とする記録位置を減算した記録位置のずれ量を三つ以上含む記録位置履歴情報を取得し、予測情報生成部は、記録位置履歴情報取得部によって取得された三つ以上の記録位置のずれ量を用いて、線形予測演算により予測情報を生成する。
第2態様によれば、記録素子ごとの記録位置のずれ量を用いて予測情報が生成されるので、記録素子自体の記録特性の変化が反映された予測情報を得ることができる。
(第3態様):第1態様に記載の予測情報提供装置において、記録位置履歴情報取得部は、第1記録素子の実際の記録位置から、第1記録素子の配置位置の近接位置に配置された第2記録素子の実際の記録位置を減算した相対記録位置のずれ量を三つ以上含む記録位置履歴情報を取得し、予測情報生成部は、記録位置履歴情報取得部によって取得された三つ以上の相対記録位置のずれ量を用いて、線形予測演算により予測情報を生成する。
第3態様によれば、近接位置に配置された2つの記録素子間の相対的な記録位置のずれ量を用いて予測情報が生成されるので、近接位置に配置された2つの記録素子における相対的な記録特性の変化が反映された予測情報を得ることができる。
近接位置に配置された二つの記録素子には、隣接位置に配置された二つの記録素子が含まれる。近接位置とは、記録特性の変動が相互に影響し合う範囲である。
(第4態様):第1態様から第3態様のいずれかに記載の予測情報提供装置において、予測情報生成部は、記録素子によって記録されるドットの半径をr、隣接配置された二つの記録素子間の距離をLとした場合に、次式xth=2×r−Lと表されるしきい値xthをしきい値として用いて予測情報を生成する。
第4態様によれば、画像記録の記録条件を考慮して予測情報を生成する際のしきい値が決められる。
(第5態様):第1態様から第3態様のいずれかに記載の予測情報提供装置において、予測情報生成部は、隣接配置された二つの記録素子間の距離をL、0を超え1未満の係数をkとした場合に、次式xth=k×Lと表されるしきい値xthをしきい値として用いて予測情報を生成する。
第5態様によれば、画像記録の記録解像度を考慮して予測情報を生成する際のしきい値が決められる。
(第6態様):第1態様に記載の予測情報提供装置において、記録位置履歴情報取得部は、記録素子の実際の記録位置から目標とする記録位置を減算した記録位置のずれ量から記録位置のずれ量の分散を加算又は減算した値の絶対値を三つ以上含む記録位置履歴情報を取得し、予測情報生成部は、記録位置履歴情報取得部によって取得された三つ以上の記録位置のずれ量から記録位置のずれ量の分散を加算又は減算した値の絶対値を用いて、線形予測演算により予測情報を生成する。
第6態様によれば、記録位置のずれ量の分散を用いて予測情報が生成されるので、記録位置のずれ量の分散が考慮された予測情報を得ることができる。
(第7態様):第6態様に記載の予測情報提供装置において、予測情報生成部は、記録素子によって記録されるドットの直径をr、ドット間距離をLとした場合に、次式xth3=r−L/2と表されるしきい値xth3をしきい値として用いて予測情報を生成する。
第7態様によれば、画像記録の記録条件を考慮して予測情報を生成する際のしきい値が決められる。
(第8態様):第6態様に記載の予測情報提供装置において、予測情報生成部は、記録素子によって形成されるドットのドット間距離をL、0を超え1未満の係数をkとした場合に、次式xth3=k×L/2と表されるしきい値xth3をしきい値として用いて予測情報を生成する。
第8態様によれば、画像記録の記録解像度を考慮して予測情報を生成する際のしきい値が決められる。
(第9態様):ジョブ実行中に記録素子ごとの記録媒体における記録位置が複数回測定されることで得られる、一つの記録素子について複数の記録位置の情報を含む記録位置履歴情報を取得する記録位置履歴情報取得工程と、取得された記録位置履歴情報に予測処理を施して、記録素子ごとに記録位置のずれ量が予め決められたしきい値となる記録媒体の記録枚数目の情報を含む予測情報を生成する予測情報生成工程と、生成された予測情報を出力する予測情報出力工程と、を含む予測情報提供方法。
第9態様において、記録位置履歴情報取得工程は、記録素子の実際の記録位置から目標とする記録位置を減算した記録位置のずれ量を三つ以上含む記録位置履歴情報を取得し予測情報生成工程は、記録位置履歴情報取得工程によって取得された三つ以上の記録位置のずれ量を用いて、線形予測演算により予測情報を生成する態様が好ましい。
また、記録位置履歴情報取得工程は、第1記録素子の実際の記録位置から、第1記録素子の配置位置の近接位置に配置された第2記録素子の実際の記録位置を減算した相対記録位置のずれ量を三つ以上含む記録位置履歴情報を取得し、予測情報生成工程は、記録位置履歴情報取得工程によって取得された三つ以上の相対記録位置のずれ量を用いて、線形予測演算により予測情報を生成する態様が好ましい。
また、予測情報生成工程は、記録素子によって記録されるドットの半径をr、隣接配置された二つの記録素子間の距離をLとした場合に、次式xth=2×r−Lと表されるしきい値xthをしきい値として用いて予測情報を生成する態様、隣接配置された二つの記録素子間の距離をL、0を超え1未満の係数をkとした場合に、次式xth=k×Lと表されるしきい値xthをしきい値として用いて予測情報を生成する態様が好ましい。
また、記録位置履歴情報取得工程は、記録素子の実際の記録位置から目標とする記録位置を減算した記録位置のずれ量から記録位置のずれ量の分散を加算又は減算した値の絶対値を三つ以上含む記録位置履歴情報を取得し、予測情報生成工程は、記録位置履歴情報取得工程によって取得された三つ以上の記録位置のずれ量から記録位置のずれ量の分散を加算又は減算した値の絶対値を用いて、線形予測演算により予測情報を生成する態様が好ましい。
また、予測情報生成工程は、記録素子によって記録されるドットの直径をr、ドット間距離をLとした場合に、次式xth3=r−L/2と表されるしきい値xth3をしきい値として用いて予測情報を生成する態様、記録素子によって形成されるドットのドット間距離をL、0を超え1未満の係数をkとした場合に、次式xth3=k×L/2と表されるしきい値xth3をしきい値として用いて予測情報を生成する態様が好ましい。
(第10態様):コンピュータに、ジョブ実行中に記録素子ごとの記録媒体における記録位置が複数回測定されることにより得られる、一つの記録素子について複数の記録位置の情報を含む記録位置履歴情報を取得する記録位置履歴情報取得機能、取得された記録位置履歴情報に予測処理を施すことにより、記録素子ごとに記録位置のずれ量が予め決められたしきい値となる記録媒体の記録枚数目の情報を含む予測情報を生成する予測情報生成機能、生成された予測情報を出力する予測情報出力機能、を実行させる予測情報提供プログラム。
(第11態様):ジョブ実行中に記録素子ごとの記録媒体における記録位置が複数回測定されることにより得られる、一つの記録素子について複数の記録位置の情報を含む記録位置履歴情報を取得する記録位置履歴情報取得部と、取得された記録位置履歴情報に予測処理を施すことにより、記録素子ごとに記録位置のずれ量が予め決められたしきい値となる記録媒体の記録枚数目の情報を含む予測情報を生成する予測情報生成部と、生成された予測情報を出力する予測情報出力部と、出力された予測情報に基づいて、記録素子ごとの記録特性情報を生成する記録特性情報生成部と、生成された記録特性情報に基づいて記録素子ごと条件を変更して、画像記録を制御する記録制御部と、を備えた記録制御装置。
第11態様によれば、ジョブ実行中に記録位置のずれ量が予め決められたしきい値以上となる記録素子を予測することができる。そして、記録位置のずれ量が予め決められたしきい値となる前に、記録位置のずれ量が予め決められたしきい値以上となる記録素子の条件を変更することができるので、記録素子ごとの記録特性の変化が考慮された好ましい記録制御が実現される。
(第12態様):第11態様に記載の記録制御装置において、記録特性情報生成部は、ジョブ実行中に記録媒体の記録枚数が予測情報に含まれる記録媒体の記録枚数目となる記録素子を、予測情報に含まれる記録媒体の記録枚数目となる前に、記録に使用しない記録素子に変更する。
第12態様によれば、記録位置のずれ量が予め決められたしきい値以上となる記録素子が、記録位置のずれ量が予め決められたしきい値になる前に記録に使用しない記録素子とされるので、記録素子ごとの記録特性の変化に起因する記録画像の白すじの発生が防止される。
(第13態様):ジョブ実行中に記録素子ごとの記録媒体における記録位置が測定されることにより得られる記録素子ごとの複数の記録位置の情報を含む記録位置履歴情報を取得する記録位置履歴情報取得工程と、取得された記録位置履歴情報に予測処理を施すことにより、記録素子ごとに記録位置のずれ量が予め決められたしきい値となる記録媒体の記録枚数目の情報を含む予測情報を生成する予測情報生成工程と、生成された予測情報を出力する予測情報出力工程と、出力された予測情報に基づいて、記録素子ごとの記録特性情報を生成する記録特性情報生成工程と、生成された記録特性情報に基づいて記録素子ごと条件を変更して、画像記録を制御する記録制御工程と、を含む記録制御方法。
(第14態様):コンピュータに、ジョブ実行中に記録素子ごとの記録媒体における記録位置が複数回測定されることにより得られる、一つの記録素子について複数の記録位置の情報を含む記録位置履歴情報を取得する記録位置履歴情報取得機能、取得された記録位置履歴情報に予測処理を施すことにより、記録素子ごとに記録位置のずれ量が予め決められたしきい値となる記録媒体の記録枚数目の情報を含む予測情報を生成する予測情報生成機能、生成された予測情報を出力する予測情報出力機能、出力された予測情報に基づいて、記録素子ごとの記録特性情報を生成する記録特性情報生成機能、生成された記録特性情報に基づいて記録素子ごと条件を変更して、画像記録を制御する記録制御機能、を実行させる記録制御プログラム。