以下、添付図面に従って本発明の実施形態について詳細に説明する。
<インク着弾位置(記録位置)のずれに関する課題について>
まず、ノズル列の傾きに起因するインク着弾位置のずれについて簡単に説明する。ここでは、シングルパス方式で記録媒体に記録を行うインクジェット記録ヘッドを例示する。説明を簡単にするために、複数個のノズル(インク吐出口)が一定の間隔で1列に(直線上に)に配列されたノズル列を検討する。
図1では12個のノズル10-j(j=1,2,3・・・12)が1列に並んだノズル列20を示した。記録媒体(不図示)は、図1の下から上に向かって搬送されるものとする。図1(a)は記録ヘッドの設置位置が正確である場合(設計上の理想状態)を示している。この場合、記録媒体の搬送方向(Y方向)に対して垂直方向(X方向)に複数個のノズル10-j(j=1,2,3・・・12)が等間隔で一列に配列された状態となる。
これら同一直線上に並ぶ複数個のノズル10-j(j=1,2,3・・・12)から同時にインクを吐出させることにより、記録媒体上でX方向に一列にならぶ着弾ドット列を形成することが可能である。
図1(b)は記録ヘッドの設置位置が設計上の理想的位置からずれて、XY面内で僅かに回転し、X方向に対してある角度θ(≠0)を有して斜めに設置された状態を示している。この場合、ノズル列20は記録媒体の搬送方向(Y方向)に対して、一定の角度φを持つ。角度φは、図1(b)から明らかなように、φ=90°−θ[deg]の関係を有する。
図1(b)のようにノズル列20がXY面内で傾き、X方向と非平行に、斜め方向に傾斜している場合には、記録媒体の搬送方向(Y方向)に対し、ノズル列20の傾きによって生じる記録媒体へのインク着弾位置のずれが生じてしまう。また、ノズル列20の傾きにより各ノズルのX方向位置がずれることによって、搬送方向に対して垂直方向(X方向)にインク着弾位置のずれが生じる。2次元のノズル配列においては、例えば、図20で説明したような状態となる。
搬送方向(Y方向)に対するインク着弾位置のずれは、ノズルからインクを吐出するタイミング(記録タイミング)を補正して対応する。また、搬送方向と直交する用紙幅方向(X方向)に対するインク着弾位置のずれは、吐出させるノズルの選択で対応する。
ノズル列20の傾きによって生じるX方向着弾位置ずれについては、特許文献1、2で述べられているようなノズル(記録素子)を選択する信号を生成して対応するため、その選択データの効率的な転送方法としては従来の技術を採用し得る。すなわち、駆動する記録素子を時分割選択し、所定の吐出タイミングで対応可能である。
その一方、搬送方向に対するインク着弾位置のずれ(Y方向着弾位置ずれ)に対しては、インクを吐出するタイミングをノズル毎に設定する必要があり、記録素子の駆動信号を時分割で送ることができないという問題がある。
記録ヘッドの各記録素子に外部からそれぞれの吐出タイミング信号、或いはタイミングデータを転送するには、転送量や端子数、回路数が膨大となり、また、転送時間も要する。
これらの課題を解決するために、本発明の実施形態による記録ヘッドは、次のような原理で各記録素子の駆動タイミング(ここでは、各ノズルからの吐出タイミングに相当)を補正するための補正データを定める。
<補正の原理>
図2は、記録ヘッド(又は長尺ヘッドを構成するヘッドモジュール)の設置位置ずれにより傾斜したノズル列の各ノズルから同時に吐出を行った際の記録媒体上における着弾位置を模式的に示した図である。図2の破線円で示した位置は、設置位置ずれのない本来のノズル列によって打滴される理想的な着弾位置を示している。ノズル列が斜めに傾いていると、図2の実線円で示したように、各ノズルの配置位置に対応した着弾位置にドットが形成される。
このような斜めに並ぶノズル配置に起因する搬送方向の位置ずれを是正するために、本実施形態では、1列に配列された各ノズルに対応する記録素子を、その並び順に連続する所定個数でグループ分けする。図2に示した例では、各ノズルに対応する記録素子4つを1ブロックとした。すなわち、12個のノズルを4個ずつグループ分けし、3つのブロック(グループ)を形成したものとなっている。ノズル10-1〜10-4は第1ブロック、ノズル10-5〜10-8は第2ブロック、ノズル10-9〜10-12は第3ブロックに属する。
なお仮に、1列を256ノズルとした場合には、4ノズルを1ブロックとすると、64ブロック形成されることになる。1ノズル列内のノズル数、並びに、1ブロック内に含まれるノズル数については、本例に限定されず、適宜設計可能である。
記録ヘッドが本来の設置位置に対して斜めに取り付けられ、ノズル配列に「斜めずれ」が発生した場合、当該記録ヘッドのノズル配列は記録媒体の搬送方向(Y方向)に対し、一定の角度を有している。したがって、ノズル列内における隣接ブロック間の搬送方向の相対的な位置ずれ量は、どの隣接ブロック間についても同じ(等量の)位置ずれ量となる。また、各ブロック内における各ノズル間の相対的な位置ずれ量は、どのブロック内でも同じ位置ずれ量となる。よって、それぞれのブロック内における各ノズルの吐出タイミングの補正値は、ブロック間で共通に使用できる。図2を用いて更に詳細に説明する。記録媒体は図2の下から上に向かって搬送されるものとする。
図2における各実線円は記録ヘッドにおける各ノズルの位置に対応している。図2で図1(b)に倣って各ノズルの着弾位置をノズルの符号によって示した。このノズル列において、記録媒体の搬送方向(Y方向)に対して最上流に位置するノズル10-12(記録媒体の給入側に向かってノズル列の一番先端に位置するノズル(以下、「列内基準ノズル」という。)に対応した記録素子の駆動タイミングが、当該ノズル列の基準起動信号となる。同ノズル列内の各ノズルに対応した記録素子の吐出タイミングを補正するための補正値は、基準起動信号の信号タイミングからクロック(CLK)信号のカウント値で定義される。
列内基準ノズル10-12の吐出位置(Y方向の位置)を基準ラインSLとすると、当該ノズル列内で搬送方向の最下流に位置するノズル10-1の位置ずれ量が最大となる。
各ノズルの吐出タイミングを補正する補正値は、ブロック別の補正値であるノズルブロック補正カウント値LBr(r=1,2,3)と、ブロック内の個別ノズルの補正値である個別ノズル補正カウント値L1s(s=0,1,2,3)との結合によって表される。「r」は注目するノズルが属するブロックを区別する番号、「s」はブロック内における注目ノズルの相対的な位置を特定する番号を意味している。つまり、ノズル列内における各ノズルの位置は、rとsによって一意に特定される。ブロック内のノズル個数をn(図2の場合n=4)とすると、ノズル番号j=n×(r−1)+(s+1)で表される。ただし、sは0≦s≦n−1を満たす整数である。
<<ノズルブロック補正カウント値について>>
図2において、搬送方向の最下流に位置するノズル10-1が含まれる第1ブロック(r=1)は基準ラインに対してY方向に相対的な位置ずれ量ΔB1を有する。第2ブロック(r=2)は基準ラインに対してY方向に相対的な位置ずれ量ΔB2を有する。各ブロックのY方向位置は、そのブロック内で搬送方向の最上流に位置するノズル(以下、「ブロック内基準ノズル」という。)の位置とした。すなわち、第1ブロックのブロック内基準ノズルはノズル10-4であり、第2ブロックのブロック内基準ノズルは10-8、第3ブロック(r=3)のブロック内基準ノズルはノズル10-12である。
隣接する第1ブロックと第2ブロックの間のY方向に対する相対的な位置ずれ量はΔB1-ΔB2である。第2ブロックと第3ブロックの間のY方向に対する相対的な位置ずれ量はΔB2である。これら隣接ブロック間の位置ずれ量は等しく、ΔB1=2×ΔB2の関係を満たす。
ブロックの数が増えた場合も同様であり、M個のブロックが形成された場合、搬送方向の最上流に位置する列内基準ノズルが属するM番目のブロックのY方向位置を基準ラインとし、隣接ブロック間のY方向に対する相対的な位置ずれ量をΔBとすれば、第J番目のブロックの基準ラインに対するY方向の相対的な位置ずれ量ΔBJは、ΔBJ=(M−J)×ΔBで表される(ただし、Jは1≦J≦Mを満たす整数)。なお、最上流の列内基準ノズルの位置と基準ラインの位置と一致させない場合には、基準ラインの位置と列内基準ノズルの位置とのY方向相対位置ずれ量ΔCが定数項として加わり、ΔBJ=(M−J)×ΔB+ΔCと表される。
搬送方向に対する物理的な位置ずれ量に対し、これを補正するための吐出タイミングの補正値は、位置ずれ量を記録媒体の搬送速度Vで除算して得られる時間差となる。こうして、ブロック別の吐出タイミングの補正値を表すカウント値(ブロック別補正値)が定められる。
<<個別ノズル補正カウント値について>>
1つのブロック内(例えば、第1ブロック)に注目すると、ブロック内における個々のノズルは、ブロック内基準ノズルとの間で搬送方向に対し相対的な位置ずれ量ΔL1sを有する。例えば、第1ブロックに注目すると、当該ブロック内で最も位置ずれ量の大きいノズル10-1は、ブロック内基準ノズル10-4との間でY方向に相対的な位置ずれ量ΔL10を有する。ノズル10-2は、ブロック内基準ノズル10-4との間でY方向に相対的な位置ずれ量ΔL11を有する。ノズル10-3は、ブロック内基準ノズル10-4との間でY方向に相対的な位置ずれ量ΔL12を有する。
同一ブロック内で隣接するノズル間のY方向に対する相対的な位置ずれ量は等しい。この隣接ノズル間のY方向に対する相対的な位置ずれ量をΔDとすれば、ΔL10=3×ΔD、ΔL11=2×ΔD、ΔL12=ΔDと表すことができる。1ブロック内におけるs番のノズルのブロック内基準ノズルに対するY方向の相対的な位置ずれ量ΔL1s=(k−s−1)×ΔDである。
ブロック内に属する各記録素子の相対的位置関係は、各ブロックにおいて共通であり、同一ノズル列内の全てのブロックについて共通の関係が成り立つ。したがって、第1ブロック、第2ブロック及びそれ以降に続く他のブロックも同様に、各ブロック内の個々の記録素子に対する吐出タイミングを補正する値(個別ノズル補正カウント値)は、同一ノズル列内の全てのブロックについて共通となる。
<吐出タイミングの補正量の説明>
図3は、同一ノズル列内に属する各ノズルの吐出タイミングを補正するときの補正量の概念図である。図示のように、各ノズルの吐出タイミングは、基準起動信号のタイミングを基準にして、個別カウンタ回路のカウント値(L1s)と、ブロックカウンタ回路のカウント値(LBr)とを加算した値によって補正される。
個別カウンタ回路には、ブロック内のノズル位置に応じた個別カウント値L10、L11、L12、L13が設定される。ブロックカウンタ回路には、ブロック単位でブロックカウント値LB1、LB2、LB3が設定される。つまり、同じブロック内の記録素子に対しては、同じブロックカウント値が適用される。ブロック内の個別カウント値(L10,L11,L12,L13)は、これらを1組として、全てのブロックに共通に適用される。
なお、記録ヘッドにおけるノズル列の傾き角度に応じて、グループ分けの際の記録素子数を適応的に変更してもよい。
<記録ヘッドの具体的な構成例>
図4は、本発明の実施形態に係る記録ヘッドの構成図である。本実施形態の記録ヘッド40は、シフトレジスタ回路42、デコーダ回路44、ラッチ回路46、個別カウンタ回路48、ブロックカウンタ回路50、アンプ52、スイッチ素子54、記録素子56を含んで構成される。ここで示した記録素子56には、インク吐出口(ノズル)からインクを吐出するための吐出エネルギーを発生する吐出エネルギー発生素子(発熱抵抗素子、圧電素子、静電アクチュエータなど)が含まれる。
また、記録ヘッド40は、外部からシリアルデータを受け入れる端子60(「シリアルデータ受信部」に相当)と、その信号線61、クロック信号を受け入れる端子63とその信号線64、吐出基準信号(「基準起動信号」に相当)を受け入れる端子66とその信号線67を有する。その他、カウンタ回路のリセット信号(RST)、記録を行う記録素子56を選択するためのセレクト信号(SEL)を受け入れる端子とその信号線などを備えている。シフトレジスタ回路42、デコーダ回路44及びラッチ回路46の組み合わせによってデータ分配回路70が構成される。
本例の記録ヘッド40は、記録媒体の搬送方向に対し垂直方向に同列に(直線上に)配列されたノズルに対応した記録素子56を、所定の個数(n個)でグループ分けし、グループ単位で位置補正を行うグループ別の吐出タイミング補正値(ブロック別補正値に相当)をカウントするブロックカウンタ回路50と、同グループ内に属する各記録素子56間の相対的な位置補正を行う個別の吐出タイミング補正値(個別補正値に相当)をカウントする個別カウンタ回路48と、を備える。記録素子56のグループ分けは、X方向に一定間隔で並んだノズルの並び順に、連続する所定の個数(ただし、個数nは2以上の整数)のノズルを1つのグループ(ブロック)とする。ブロックカウンタ回路50には、ブロック単位でカウント値が設定される。図中破線の矩形によってブロックのまとまりを示した。
個別カウンタ回路48には、1ブロック内における各ノズルの相対的な位置に対応した個別のカウント値が設定される。各カウンタ回路48,50のカウント値は記録ヘッド40の外部よりシリアルデータで受信し、データ分配回路70にてデータを展開して、各ブロックカウンタ回路50と各個別カウンタ回路48へ転送する。これにより、各カウンタ回路48,50にそれぞれのカウント値がセットされる。図4では、各個別カウンタ回路48にカウント値(L10、L11、・・・L1n)がセットされ、各ブロック内の各ブロックカウンタ回路50に対して、ブロック単位で共通のカウント値(LB1、LB2、・・・LBn)がセットされる。
各個別カウンタ回路48は、基準起動信号の入力によりカウントが開始され、セットされたカウント値のカウント終了時に個別補正タイミング信号(C10、C11、・・・C1n)を出力する。各ブロックカウンタ回路50は、それぞれ対応する個別カウンタ回路48からの個別補正タイミング信号の入力によりカウントが開始され、セットされたカウント値のカウント終了時に信号(個別補正値とブロック補正値とが組み合わされた補正タイミング信号)を出力する。この出力信号が記録素子56の駆動タイミングを規定する信号(補正タイミング信号)となり、記録素子56に対応したアンプ52に入力される。
つまり、基準起動信号を基準にして、個別カウンタ回路48のカウント値とブロックカウンタ回路50のカウント値とを合算したカウント値(補正値)により、各記録素子56の補正タイミング信号が生成される。この補正タイミング信号に従って各記録素子56が駆動され、インク滴の吐出(ドットの記録)が行われる。
図4の例では、各記録素子56に対応して記録素子56と同数のブロックカウンタ回路50を備えるとともに、1ブロック内のノズル数(記録素子56の個数)と同数の個別カウンタ回路48を備え、個別カウンタ回路48の出力信号(C10、C11、・・・C1n)を、各ブロック内のブロックカウンタ回路50に供給する構成を示した。
ただし、本発明の実施に際しては、図4に例示した「個別カウンタ回路48」→「ブロックカウンタ回路50」の順にカウント値をカウントする形態に限らず、カウント順序を逆にしてもよい。すなわち、「ブロックカウンタ回路」→「個別カウンタ回路」の順でカウント値をカウントしてもよい。この場合、先にカウントするブロックカウンタ回路に対して基準起動信号が入力され、ブロックカウンタ回路のカウントが開始される。ブロックカウンタ回路にセットされたカウント値のカウント終了時にブロックカウンタ回路から信号が出力され、この信号を受けて個別カウンタ回路のカウントが開始される。かかる形態は、図4に示した個別カウンタ回路48とブロックカウンタ回路50の構成に代えて、グループ分けされたブロック数と同数のブロックカウンタ回路と、記録素子56と同数の個別カウンタ回路と、によって構成することができる。
また、基準起動信号は、少なくとも先にカウントを開始するカウンタ回路に入力すれば足りるが、後段のカウンタ回路に対してもタイミング調整用などのために基準起動信号を与える構成を採用することができる。いずれの場合も、最終的に基準起動信号を基準にして補正したタイミング信号がえられればよい。
複数のノズル列(記録素子列)が平行に配置された記録ヘッドにおいては、記録媒体の搬送方向に対して、第1列目となる記録素子列(最上流に位置するノズル列)の基準起動信号を、他の列にも共通に用いることができる。
図5は、個別カウンタ回路48及びブロックカウンタ回路50にそれぞれカウント値をロード(セット)するときのデータの流れを模式的に示した図である。ヘッド外部(例えば、ヘッド制御回路を搭載した駆動基板など)から入力されたシリアルデータは、データ分配回路70によって展開され、個別カウンタ回路のカウント値(L10〜L13)及びブロックカウンタ回路のカウント値(LB1〜LBn)がそれぞれのカウンタ回路にロード(セット)される。
<同じ配列密度のノズル列を複数列備える記録ヘッドの場合>
同じ配列密度のノズル列を複数列備え、これらが平行に配置されている記録ヘッドの場合、各列に対応したブロックカウンタ回路及び個別カウンタ回路に設定するブロック別補正値及び個別補正値のデータは、同じ転送データを共用することができる。
<異なる配列密度のノズル列を複数列備える記録ヘッドの構成について>
次に、複数のノズル列を有する記録ヘッドにおいて、列によってノズルサイズと、横に隣接するノズル間隔が異なる場合(異なる配列密度のノズル列を複数列有する場合)について説明する。
図6に示すように、ノズルサイズと隣接ノズル間隔がそれぞれ列間で互いに異なる2列のノズル列を例に説明する。図6において上段のノズル列を第1列、下段のノズル列を第2列とする。第1列のノズルサイズは第2列のノズルサイズよりも大きく、第1列の隣接ノズル間隔(ノズルピッチ)は、第2列の隣接ノズル間隔よりも大きい。列内における隣接ノズル間隔が小さいほど、配列密度は高い。
図6では、第1列のノズル列と第2列のノズル列をそれぞれ同じ記録素子数(ここでは4つ)でグループ分けした様子が示されている。第1列のノズル列に比べて、小ノズルで、且つ配列密度の高い第2列のノズル列について、第1列と同じ記録素子数でグループ分けすると、単純に、ブロックカウンタ回路の数がノズル密度の割合で増加することになる。 また、第2列に対応する個別カウンタ回路のカウント値は、第1列とは別に改めてデータ転送することになる。なお、ノズルサイズと、横に隣接するノズル間隔が同じノズル列に対しては、カウント値を共用できる。
<異なる配列密度のノズル列を複数備える記録ヘッドの他の構成例1>
記録素子のグループ分けの方法に関する他の形態例を説明する。図7に示すように、平行に配置された複数のノズル列81、82のうち相対的に配列密度が低い列(ここでは符号81で示した第1列)について所定個数(4個を例示)でグループ分けし、そのグループ内における両端のノズルの位置に合わせて、配列密度が相対的に高い列(ここでは符号82で示した第2列)のノズルをグループ分けする。つまり、第1列をグループ分けして得られる各ブロックのノズル範囲BPに対応した第2列におけるノズル領域を更に細かく等分割することにより、第2列のグループ分けが行われる。図7では、第1列の各ブロックのノズル範囲BPに対応した第2列のノズル領域(8個のノズルが並んだノズル範囲)を、2等分して4個ずつのグループ(ブロック)に分けている。
このようなグループ分けにより、第1列における各ブロックの位置と、第2列における各ブロックの位置との対応関係(ブロック単位の位置関係)が維持される。
なお、図7では、第2列の配列密度が第1列の配列密度の2倍であるため、第2列のグループ分けに際して、第1列の1ブロック範囲を2等分したが、配列密度の割合に応じて分割数(ブロック数)を変えることができる。また、第1列の各ブロック内に含まれるノズル数(記録素子数)と、第2列の各ブロック内に含まれるノズル数(記録素子数)は、等しいことが好ましいが、必ずしも一致している必要はない。
このような構成を採用することにより、各列のブロックカウンタ回路のカウント値を第1列と第2列とで共用することができ、データ転送量を削減できる。
<異なる配列密度のノズル列を複数備える記録ヘッドの他の構成例2>
図8は、他の形態例の説明図である。配列密度が異なる複数のノズル列が互いに平行に配置されている場合、ノズル列の傾斜による搬送方向の着弾位置ずれ量は、ノズルの位置に応じた比例関係で表される。吐出タイミングの補正量は、クロック信号のカウント値で表されるため、クロック周期×カウント値によって補正時間が得られる。よって、カウント値を共通にして、クロック周期(周波数の逆数)を変更しても補正量を調整できる。
図8に示すように、記録ヘッド内で最も配列密度の高いノズル列(ここでは符号84で示した第2列)の個別カウンタ回路及びブロックカウンタ回路に与えるクロック信号の周波数を基準とし、他のノズル列(ここでは符号85で示した第1列)の個別カウンタ回路及びブロックカウンタ回路に与えるクロック信号の周波数を、両列の配列密度の割合に応じて変更する。図8の第1列の配列密度は、第2列の配列密度の1/2であることから、第1列のクロック周波数は第2列のクロック周波数の1/2倍とする。一般に、配列密度がk倍であればクロック周波数をk倍とする(ただし、kは0よりも大きい実数)。このように、配列密度の割合に応じて該当ノズル列のカウンタ回路におけるクロック周波数を変えることで、配列密度の高いノズル列を全ノズル列の共通のカウント値としてデータ転送するだけでよい。
なお、この場合、各ノズル列の基準起動信号は、そのノズル列の調整用として個別に用意してもよい。また、各ノズル列のカウンタ回路に与えるクロック信号は、ヘッド外部から受信してもよいし、記録ヘッド内部にクロック発生回路を設け、ヘッド外部からの入力する信号に同期させて記録ヘッド内で各種のクロック信号を生成してもよい。
<データ分配回路の説明>
次に、データ分配回路について説明する。図9はデータ分配回路70の構成図である。各ブロックカウンタ回路と各個別カウンタ回路の補正タイミング信号を生成するカウント値のデータはシリアルデータの形式で予め記録ヘッドに送られる。このシリアルデータは、記録装置の記録ヘッド初期化時に転送されてくる。
データ分配回路70は、各カウンタ回路のカウント値をシリアルデータで受信し、このシリアルデータ内のデータアドレス値によって各カウンタ回路へデータを展開する。データ分配回路70は、シリアルデータからシフトレジスタ回路42を介して各ノズルのカウントデータを展開するデコーダ回路44と、そのデコーダ回路44によってカウントデータを保持するラッチ回路46にて構成される。なお、デコーダ回路44は、ストローブ信号(STB)によってデコード動作の可能/不可能が制御される。
図10は、データ分配回路70で受信されるノズル1列分のシリアルデータの例である。ここでは、1列のノズル列が256ノズルで構成されているものとし、1ブロックが4ノズルで構成され、合計64ブロックにグループ分けされている例を示した。図示のように、シリアルデータには、1ブロック内における相対的なノズルの位置を特定するためのブロック内ノズルアドレスと、そのアドレスに対応した個別カウント値のデータのペア(組)が4ノズル分(ブロック内ノズル数分)含まれ、更に、列内における各ブロックの相対的な位置を特定するためのブロックアドレスと、そのアドレスに対応したブロックカウント値のデータのペア(組)が64ブロック分(列内ブロック数分)含まれている。
ブロック内の個別カウント値は64ブロックの各ブロックに対して共通に利用できるため、1列のノズル列あたり4ノズル分を1組とした1セットのみを転送すれば足りる。
このような転送方法を採用することにより、256ノズルの各吐出タイミングの補正に必要なデータとして、64個のブロック補正値のカウント値と4個の個別補正値のカウント値のデータを転送すればよく、ノズル毎の補正値のデータを個々に転送する場合と比較して、データ転送量を削減することができる。
シリアルデータは、データ転送量を少なくするために補正に必要なノズルデータ、或いは補正値修正(例えば、補正値が適切でなかった場合に一部修正など)の必要なノズルデータのみを転送してもよい。
また、異なるノズル配列密度を有する複数のノズル列を備える記録ヘッドの同じ配列密度のノズル列に対し、共通にタイミング補正を行う場合は、データ分配回路70に転送されるシリアルデータにおいて、配列密度に応じたコードデータをアドレスの上位ビットに付加し、そのコードデータに従ってデータ分配回路70にてデータ分配してもよい。図11にその例を示す。
図11に示すように、アドレスバイトの上位ビットに配列密度を示すコードデータが付与される。ここでは、配列密度の違いに対応して高密度(ノズルサイズ小)、中密度(ノズルサイズ中)、低密度(ノズルサイズ大)の3種類のノズル列を備えた記録ヘッドにおいて、各配列密度に対応したノズル列を指定するためのコード「01」、「10」、「11」と、全ノズル列に対して適用する場合のコード「00」の4種類のコードデータが定義される例を示した。デコーダ回路によって、コードデータが読み取られ、該当するノズル列のカウンタ回路にカウント値が転送される。
また、ノズル配列密度に関係なくノズル列毎にタイミング補正を行う場合はシリアルデータのヘッダーにノズル列を識別するコードデータを付加してもよい。このコードデータはカウントデータと同様の方法で展開し、該当ノズル列のカウントデータ出力をON/OFFする。
<インクジェット記録装置の構成>
図12は、本実施形態による記録ヘッド40とその制御装置90とを組み合わせたインクジェット記録装置95(「液体吐出装置」に相当)の構成を示したブロック図である。図12において、図4で説明した構成と同一又は対応する要素には同一の符号を付し、その説明は省略する。
制御装置90は、記録ヘッド40の記録動作を制御する制御回路を含む装置であり、記録ヘッド40に対し、吐出タイミングの補正に必要な補正値のシリアルデータ、クロック信号、基準起動信号を提供するとともに、記録データ、ノズル選択信号など、各種の信号を提供する。なお、印字に関わる記録素子56の選択、すなわち画像データによるスイッチ信号がスイッチ素子54に加わる。
図12では記録ヘッド40内にクロック生成回路65を具備した例を示したが、これを省略して、制御装置90内に備えたクロック発生回路の信号をカウンタ回路(48,50)に供給してもよい。
本発明の実施形態によれば、その構成により、以下の作用効果を奏する。
(1)ヘッド内部の1列に配列された各ノズルからインクを吐出するタイミングを生成するカウンタ回路(48,50)を有し、そのカウントデータは所定のノズル数でグループ分けしたグループ単位の値(ブロック別補正値)と、各グループ共通でグループ内の個々のノズルに対応した値(個別補正値)をシリアルデータで転送する。このような構成により、補正データの転送量を削減することができる。
(2)また、ブロック(グループ)単位で転送するカウント値(ブロック別補正値)は、ブロックの並び順でブロック毎に一定の率(割合)で増加させることができる。
(3)同じノズル列内、或いはノズル列間でカウント値を共用できるため、データ展開する回路数を少なくできる。
(4)異なる配列密度のノズル列を備える構成において、ノズル列に対応したカウントデータを転送する場合、適用するノズル列の配列密度に応じてグルーピングするノズル数を決定し、全ノズル列のブロックカウント値を共通化することも可能である。
これにより、補正データの転送量を削減できる。また、データ展開する回路数を少なくできる。
(5)シリアルデータは、補正の必要なノズルデータ、或いは、補正値修正の必要なノズルデータ(修正用のデータ)のみを転送し、補正不要なノズル、修正不要なノズルに関するデータの転送を省略することにより、補正或いは転送データ修正の時間を短くすることができる。
(6)本発明の適用により、各記録素子の駆動タイミングを補正する吐出データを吐出周期内に効率よく転送することができる。
<インクジェット記録装置の具体的な構成例>
図13は、本発明の実施形態に係るインクジェット記録装置100の構成例を示す図である。インクジェット記録装置100は、主として、給紙部112、処理液付与部1214、描画部116、乾燥部118、定着部120、及び排紙部122を備えて構成される。このインクジェット記録装置100は、描画部116の圧胴(描画ドラム170)に保持された記録媒体124(便宜上「用紙」と呼ぶ場合がある。)にインクジェットヘッド(「記録ヘッド」に相当)172M,172K,172C,172Yから複数色のインクを打滴して所望のカラー画像を形成するオンデマンドドロップ方式の画像形成装置である。
(給紙部)
給紙部112には、枚葉紙である記録媒体124が積層されている。給紙部112の給紙トレイ150から記録媒体124が一枚ずつ処理液付与部114に給紙される。本例では、記録媒体124として、枚葉紙(カット紙)を用いるが、連続用紙(ロール紙)から必要なサイズに切断して給紙する構成も可能である。
(処理液付与部)
処理液付与部114は、記録媒体124の記録面に処理液を付与する機構である。処理液は、描画部116で付与されるインク中の色材(本例では顔料)を凝集させる色材凝集剤を含んでおり、この処理液とインクとが接触することによって、インクは色材と溶媒との分離が促進される。
処理液付与部114は、給紙胴152、処理液ドラム154、及び処理液塗布装置156を備えている。処理液ドラム154は、その外周面に爪形状の保持手段(グリッパー)155を備え、この保持手段155の爪と処理液ドラム154の周面の間に記録媒体124を挟み込むことによって記録媒体124の先端を保持できるようになっている。処理液ドラム154は、その外周面に吸引孔を設けるとともに、吸引孔から吸引を行う吸引手段を接続してもよい。これにより記録媒体124を処理液ドラム154の周面に密着保持することができる。
処理液ドラム154の外側には、その周面に対向して処理液塗布装置156が設けられる。処理液塗布装置156は、処理液が貯留された処理液容器と、この処理液容器の処理液に一部が浸漬されたアニックスローラと、アニックスローラと処理液ドラム154上の記録媒体124に圧接されて計量後の処理液を記録媒体124に転移するゴムローラとで構成される。本実施形態では、ローラによる塗布方式を適用した構成を例示したが、これに限定されず、例えば、スプレー方式、インクジェット方式などの各種方式を適用することも可能である。
処理液付与部114で処理液が付与された記録媒体124は、処理液ドラム154から中間搬送部126を介して描画部116の描画ドラム170へ受け渡される。
(描画部)
描画部116は、描画ドラム170、用紙抑えローラ174、及びインクジェットヘッド172M,172K,172C,172Yを備えている。描画ドラム170は、処理液ドラム154と同様に、その外周面に爪形状の保持手段(グリッパー)171を備える。本例の描画ドラム170では、回転方向について180度の間隔で周面の2箇所にグリッパー171が設けられ、1回転で2枚の記録媒体124が搬送できるように構成されている。
描画ドラム170の周面には、図示しない吸着穴が所定のパターンで多数形成されており、この吸着穴からエアが吸引されることにより、記録媒体124が描画ドラム170の周面に吸着保持される。なお、負圧吸引によって記録媒体124を吸引吸着する構成に限らず、例えば、静電吸着により、記録媒体124を吸着保持する構成とすることもできる。
インクジェットヘッド172M,172K,172C,172Yはそれぞれ、記録媒体124における画像形成領域の最大幅に対応する長さを有するフルライン型のインクジェット方式の記録ヘッドであり、そのインク吐出面には、画像形成領域の全幅にわたってインク吐出用のノズルが複数配列されたノズル列が形成されている。各インクジェットヘッド172M,172K,172C,172Yは、記録媒体124の搬送方向(描画ドラム170の回転方向)と直交する方向に延在するように設置される。
描画ドラム170上に密着保持された記録媒体124の記録面に向かって各インクジェットヘッド172M,172K,172C,172Yから、対応する色インクの液滴が吐出されることにより、処理液付与部114で予め記録面に付与された処理液にインクが接触し、インク中に分散する色材(顔料)が凝集され、色材凝集体が形成される。これにより、記録媒体124上での色材流れなどが防止され、記録媒体124の記録面に画像が形成される。
描画ドラム170によって記録媒体124を一定の速度で搬送し、この搬送方向について、記録媒体124と各インクジェットヘッド172M,172K,172C,172Yを相対的に移動させる動作を1回行うだけで(即ち1回の副走査で)、記録媒体124の画像形成領域に画像を記録することができる。かかるフルライン型(ページワイド)ヘッドによるシングルパス方式の画像形成は、記録媒体の搬送方向(副走査方向)と直交する方向(主走査方向)に往復動作するシリアル(シャトル)型ヘッドによるマルチパス方式を適用する場合に比べて高速印字が可能であり、プリント生産性を向上させることができる。
なお、本例では、CMYKの標準色(4色)の構成を例示したが、インク色や色数の組み合わせについては本実施形態に限定されず、必要に応じて淡インク、濃インク、特別色インクを追加してもよい。例えば、ライトシアン、ライトマゼンタなどのライト系インクを吐出するインクジェットヘッドを追加する構成も可能であり、各色ヘッドの配置順序も特に限定はない。
描画部116で画像が形成された記録媒体124は、描画ドラム170から中間搬送部128を介して乾燥部118の乾燥ドラム176へ受け渡される。
(乾燥部)
乾燥部118は、色材凝集作用により分離された溶媒に含まれる水分を乾燥させる機構であり、乾燥ドラム176、及び溶媒乾燥装置178を備えている。乾燥ドラム176は、処理液ドラム154と同様に、その外周面に爪形状の保持手段(グリッパー)177を備える。溶媒乾燥装置178は、乾燥ドラム176の外周面に対向する位置に配置され、複数のハロゲンヒータ180と、各ハロゲンヒータ180の間にそれぞれ配置された温風噴出しノズル182とで構成される。乾燥部118で乾燥処理が行われた記録媒体124は、乾燥ドラム176から中間搬送部130を介して定着部120の定着ドラム184へ受け渡される。
(定着部)
定着部120は、定着ドラム184、ハロゲンヒータ186、定着ローラ188、及びインラインセンサ190を含んで構成される。定着ドラム184は、処理液ドラム154と同様に、その外周面に爪形状の保持手段(グリッパー)185を備える。
定着ドラム184の回転により、記録媒体124は記録面が外側を向くようにして搬送され、この記録面に対して、ハロゲンヒータ186による予備加熱と、定着ローラ188による定着処理と、インラインセンサ190による検査が行われる。
定着ローラ188は、乾燥させたインクを加熱加圧することによってインク中の自己分散性ポリマー微粒子を溶着し、インクを被膜化させるためのローラ部材であり、記録媒体124を加熱加圧するように構成される。具体的には、定着ローラ188は、定着ドラム184に対して圧接するように配置されており、定着ドラム184との間でニップローラを構成するようになっている。これにより、記録媒体124は、定着ローラ188と定着ドラム184との間に挟まれ、所定のニップ圧(例えば、0.15MPa)でニップされ、定着処理が行われる。
また、定着ローラ188は、熱伝導性の良いアルミなどの金属パイプ内にハロゲンランプを組み込んだ加熱ローラによって構成され、所定の温度(例えば60〜80℃)に制御される。この加熱ローラで記録媒体124を加熱することによって、インクに含まれるラテックスのTg温度(ガラス転移点温度)以上の熱エネルギーが付与され、ラテックス粒子が溶融される。これにより、記録媒体124の凹凸に押し込み定着が行われるとともに、画像表面の凹凸がレベリングされ、光沢性が得られる。
一方、インラインセンサ190は、記録媒体124に形成された画像(不吐出検出用のテストパターンや濃度補正用のテストパターン、印刷画像なども含む)について、吐出不良チェックパターンや画像の濃度、画像の欠陥などを計測するための計測手段であり、CCDラインセンサなどが適用される。
なお、高沸点溶媒及びポリマー微粒子(熱可塑性樹脂粒子)を含んだインクに代えて、UV露光にて重合硬化可能なモノマー成分を含有していてもよい。この場合、インクジェット記録装置100は、ヒートローラによる熱圧定着部(定着ローラ188)の代わりに、記録媒体124上のインクにUV光を露光するUV露光部を備える。このように、UV硬化性樹脂などの活性光線硬化性樹脂を含んだインクを用いる場合には、加熱定着の定着ローラ188に代えて、UVランプや紫外線LD(レーザダイオード)アレイなど、活性光線を照射する手段が設けられる。
(排紙部)
定着部120に続いて排紙部122が設けられている。排紙部122は、排出トレイ192を備えており、この排出トレイ192と定着部120の定着ドラム184との間に、これらに対接するように渡し胴194、搬送ベルト196、張架ローラ198が設けられている。記録媒体124は、渡し胴194により搬送ベルト296に送られ、排出トレイ192に排出される。搬送ベルト196による用紙搬送機構の詳細は図示しないが、印刷後の記録媒体124は無端状の搬送ベルト196間に渡されたバー(不図示)のグリッパーによって用紙先端部が保持され、搬送ベルト196の回転によって排出トレイ192の上方に運ばれてくる。
また、図13には示されていないが、本例のインクジェット記録装置100には、上記構成の他、各インクジェットヘッド172M,172K,172C,172Yにインクを供給するインク貯蔵/装填部、処理液付与部114に対して処理液を供給する手段を備えるとともに、各インクジェットヘッド172M,172K,172C,172Yのクリーニング(ノズル面のワイピング、パージ、ノズル吸引、ノズル洗浄等)を行うヘッドメンテナンス部や、用紙搬送路上における記録媒体124の位置を検出する位置検出センサ、装置各部の温度を検出する温度センサなどを備えている。
<インクジェットヘッドの構成例>
次に、ヘッドの構造について説明する。各ヘッド172M、172K、172C、172Yの構造は共通しているので、以下、これらを代表して符号250によってヘッドを示すものとする。図14(a) はヘッド250の構造例を示す平面透視図であり、図14(b) はその一部の拡大図である。また、図15はヘッド250の他の構造例を示す平面透視図、図16は記録素子単位となる1チャンネル分の液滴吐出素子(1つのノズル251に対応したインク室ユニット)の立体的構成を示す断面図(図14中のA−A線に沿う断面図)である。
図14に示したように、本例のヘッド250は、インク吐出口であるノズル251と、各ノズル251に対応する圧力室252等からなる複数のインク室ユニット(液滴吐出素子)253をマトリクス状に2次元配置させた構造を有し、これにより、ヘッド長手方向(紙送り方向と直交する方向)に沿って並ぶように投影(正射影)される実質的なノズル間隔(投影ノズルピッチ)の高密度化を達成している。
記録媒体124の送り方向(矢印S方向;副走査方向)と略直交する方向(矢印M方向;主走査方向)に記録媒体124の描画領域の全幅Wmに対応する長さ以上のノズル列を構成する形態は本例に限定されない。例えば、図14(a) の構成に代えて、図15(a)に示すように、複数のノズル251が2次元に配列された短尺のヘッドモジュール250’を千鳥状に配列して繋ぎ合わせることで記録媒体124の全幅に対応する長さのノズル列を有するラインヘッドを構成する態様や、図15(b)に示すように、ヘッドモジュール250”を一列に並べて繋ぎ合わせる態様もある。
なお、一つのヘッドモジュール250’、250”を本発明の「記録ヘッド」と解釈してもよいし、ヘッドモジュールを繋ぎ合わせた長尺ヘッドを「記録ヘッド」と解釈してもよい。
各ノズル251に対応して設けられている圧力室252は、その平面形状が概略正方形となっており(図14(a)、(b) 参照)、対角線上の両隅部の一方にノズル251への流出口が設けられ、他方に供給インクの流入口(供給口)254が設けられている。なお、圧力室252の形状は、本例に限定されず、平面形状が四角形(菱形、長方形など)、五角形、六角形その他の多角形、円形、楕円形など、多様な形態があり得る。
図16に示すように、ヘッド250は、ノズル251が形成されたノズルプレート251Aと、圧力室252や共通流路255等の流路が形成された流路板252P等を積層接合した構造から成る。ノズルプレート251Aは、ヘッド250のノズル面(インク吐出面)250Aを構成し、各圧力室252にそれぞれ連通する複数のノズル251が2次元的に形成されている。
流路板252Pは、圧力室252の側壁部を構成するとともに、共通流路255から圧力室252にインクを導く個別供給路の絞り部(最狭窄部)としての供給口254を形成する流路形成部材である。なお、説明の便宜上、図16では簡略的に図示しているが、流路板252Pは一枚又は複数の基板を積層した構造である。
ノズルプレート251A及び流路板252Pは、シリコンを材料として半導体製造プロセスによって所要の形状に加工することが可能である。
共通流路255はインク供給源たるインクタンク(不図示)と連通しており、インクタンクから供給されるインクは共通流路255を介して各圧力室252に供給される。
圧力室252の一部の面(図16において天面)を構成する振動板256には、個別電極257を備えた圧電アクチュエータ258が接合されている。本例の振動板256は、圧電アクチュエータ258の下部電極に相当する共通電極259として機能するニッケル(Ni)導電層付きのシリコン(Si)から成り、各圧力室252に対応して配置される圧電アクチュエータ258の共通電極を兼ねる。なお、樹脂などの非導電性材料によって振動板を形成する態様も可能であり、この場合は、振動板部材の表面に金属などの導電材料による共通電極層が形成される。また、ステンレス鋼(SUS)など、金属(導電性材料)によって共通電極を兼ねる振動板を構成してもよい。
個別電極257に駆動電圧を印加することによって圧電アクチュエータ258が変形して圧力室252の容積が変化し、これに伴う圧力変化によりノズル251からインクが吐出される。インク吐出後、圧電アクチュエータ258が元の状態に戻る際、共通流路255から供給口254を通って新しいインクが圧力室252に再充填される。
かかる構造を有するインク室ユニット253を図14(b)に示す如く、主走査方向に沿う行方向及び主走査方向に対して直交しない一定の角度θを有する斜めの列方向に沿って一定の配列パターンで格子状に多数配列させることにより、本例の高密度ノズルヘッドが実現されている。かかるマトリクス配列において、副走査方向の隣接ノズル間隔をLsとするとき、主走査方向については実質的に各ノズル251が一定のピッチP=Ls/tanθで直線状に配列されたものと等価的に取り扱うことができる。
また、本発明の実施に際してヘッド250におけるノズル251の配列形態は図示の例に限定されず、様々なノズル配置構造を適用できる。例えば、図14で説明したマトリクス配列に代えて、一列の直線配列、V字状のノズル配列、V字状配列を繰り返し単位とするジグザク状(W字状など)のような折れ線状のノズル配列なども可能である。
なお、インクジェットヘッドにおける各ノズルから液滴を吐出させるための吐出用の圧力(吐出エネルギー)を発生させる手段は、圧電アクチュエータ(圧電素子)に限らず、サーマル方式(ヒータの加熱による膜沸騰の圧力を利用してインクを吐出させる方式)におけるヒータ(加熱素子)や他の方式による各種アクチュエータなど様々な圧力発生素子(エネルギー発生素子)を適用し得る。ヘッドの吐出方式に応じて、相応のエネルギー発生素子が流路構造体に設けられる。
<制御系の説明>
図17は、インクジェット記録装置100のシステム構成を示す要部ブロック図である。インクジェット記録装置100は、通信インターフェース270、システムコントローラ272、メモリ274、モータドライバ276、ヒータドライバ278、プリント制御部280、画像バッファメモリ282、ヘッドドライバ284等を備えている。
通信インターフェース270は、ホストコンピュータ286から送られてくる画像データを受信するインターフェース部である。通信インターフェース270にはCAN(Controller Area Network)、USB(Universal Serial Bus)、IEEE1394、イーサネット(登録商標)、無線ネットワーク等のシリアルインターフェースやセントロニクスなどのパラレルインターフェースを適用することができる。この部分には、通信を高速化するためのバッファメモリ(不図示)を搭載してもよい。ホストコンピュータ286から送出された画像データは通信インターフェース270を介してインクジェット記録装置100に取り込まれ、一旦メモリ274に記憶される。
メモリ274は、通信インターフェース270を介して入力された画像を一旦格納する記憶手段であり、システムコントローラ272を通じてデータの読み書きが行われる。メモリ274は、半導体素子からなるメモリに限らず、ハードディスクなど磁気媒体を用いてもよい。
システムコントローラ272は、中央演算処理装置(CPU)及びその周辺回路等から構成され、所定のプログラムに従ってインクジェット記録装置100の全体を制御する制御装置として機能するとともに、各種演算を行う演算装置として機能する。即ち、システムコントローラ272は、通信インターフェース270、メモリ274、モータドライバ276、ヒータドライバ278等の各部を制御し、ホストコンピュータ286との間の通信制御、メモリ274の読み書き制御等を行うとともに、搬送系のモータ288やヒータ289を制御する制御信号を生成する。
ROM290には各種制御プログラムや各種のパラメータ等が格納されており、システムコントローラ272の指令に応じて、制御プログラムが読み出され、実行される。
メモリ274は、画像データの一時記憶領域として利用されるとともに、プログラムの展開領域及びCPUの演算作業領域としても利用される。
モータドライバ276は、システムコントローラ272からの指示に従ってモータ288を駆動するドライバである。図15では、装置内の各部に配置される様々なモータを代表して符号288で図示している。
ヒータドライバ278は、システムコントローラ272からの指示に従って、ヒータ289を駆動するドライバである。図15では、装置内の各部に配置される様々なヒータを代表して符号289で図示している。
プリント制御部280は、システムコントローラ272の制御に従い、メモリ274内の画像データから印字制御用の信号を生成するための各種加工、補正などの処理を行う信号処理機能を有し、生成した印字データ(ドット画像データ)をヘッドドライバ284に供給する制御部である。
ドット画像データは、一般に多階調の画像データに対して色変換処理、ハーフトーン処理を行って生成される。色変換処理は、sRGBなどで表現された画像データ(例えば、RGB各色について8ビットの画像データ)をインクジェット記録装置100で使用するインクの各色の色データ(本例では、MKCYの色データ)に変換する処理である。
ハーフトーン処理は、色変換処理により生成された各色の色データに対して誤差拡散法や閾値マトリクス等の処理で各色のドットデータ(本例では、MKCYのドットデータ)に変換する処理である。
プリント制御部280において所要の信号処理が施され、得られたドットデータに基づいて、ヘッドドライバ284を介してヘッド250のインク液滴の吐出量や吐出タイミングの制御が行われる。これにより、所望のドットサイズやドット配置が実現される。
プリント制御部280には画像バッファメモリ282が備えられており、プリント制御部280における画像データ処理時に画像データやパラメータなどのデータが画像バッファメモリ282に一時的に格納される。また、プリント制御部280とシステムコントローラ272とを統合して1つのプロセッサで構成する態様も可能である。
ヘッドドライバ284には、ヘッド250の駆動条件を一定に保つためのフィードバック制御系を含んでいてもよい。
本例に示すインクジェット記録装置100は、ヘッド250の各圧電アクチュエータ258に対して、共通の駆動波形信号を印加し、各ノズルの吐出タイミングに応じて各圧電アクチュエータ258の個別電極に接続されたスイッチ素子(不図示)のオンオフを切り換えることで、各圧電アクチュエータ258に対応するノズル251からインクを吐出させる駆動方式が採用されている。
エンコーダ277は、描画ドラム170の回転速度を検出するものであり、例えば光電方式のロータリエンコーダが用いられる。システムコントローラ272は、エンコーダ277からの信号に基づいて描画ドラム170の回転速度を算出し、算出した回転速度に基づいて各色のインクジェットヘッド172M,172K,172C,172Yのノズル251の吐出タイミング信号を生成し、プリント制御部280へ供給する。
プリント制御部280とシステムコントローラ272の組み合わせが図で説明した「制御装置90」に相当している。なお、図15で説明したシステムコントローラ272が担う処理機能の全て又は一部をホストコンピュータ286側に搭載する態様も可能である。
<記録媒体について>
「記録媒体」は、記録素子によってドットが記録される媒体の総称であり、印字媒体、被記録媒体、被画像形成媒体、受像媒体、被吐出媒体など様々な用語で呼ばれるものが含まれる。本発明の実施に際して、記録媒体の材質や形状等は、特に限定されず、連続用紙、カット紙、シール用紙、OHPシート等の樹脂シート、フィルム、布、不織布、配線パターン等が形成されるプリント基板、ゴムシート、その他材質や形状を問わず、様々な媒体に適用できる。
<ヘッドと用紙を相対移動させる手段について>
上述の実施形態では、停止したヘッドに対して記録媒体を搬送する構成を例示したが、本発明の実施に際しては、停止した記録媒体に対してヘッドを移動させる構成も可能である。なお、シングルパス方式のフルライン型の描画ヘッドは、通常、記録媒体の送り方向(搬送方向)と直交する方向に沿って配置されるが、搬送方向と直交する方向に対して、ある所定の角度を持たせた斜め方向に沿ってヘッドを配置する態様もあり得る。
<ヘッド構成の変形例について>
上記実施形態では、記録媒体の全幅に対応する長さのノズル列を有するページワイドのフルライン型ヘッドを用いたインクジェット記録装置を説明したが、本発明の適用範囲はこれに限定されず、シリアル型(シャトルスキャン型)ヘッドなど、短尺の描画ヘッドを移動させながら、複数回のヘッド走査により画像記録を行うインクジェット記録装置についても本発明を適用可能である。
<本発明の応用例について>
上記の実施形態では、グラフィック印刷用のインクジェット記録装置への適用を例に説明したが、本発明の適用範囲はこの例に限定されない。例えば、電子回路の配線パターンを描画する配線記録装置、各種デバイスの製造装置、吐出用の機能性液体として樹脂液を用いるレジスト印刷装置、カラーフィルター製造装置、マテリアルデポジション用の材料を用いて微細構造物を形成する微細構造物形成装置など、液状機能性材料を用いて様々な形状やパターンを描画するインクジェットシステム(「液体吐出装置」に相当)に広く適用できる。
<インクジェット方式以外の記録ヘッドの利用形態について>
上述の説明では、記録ヘッドを用いる画像形成装置の一例としてインクジェット記録装置を例示したが、本発明の適用範囲はこれに限定されない。インクジェット方式以外では、サーマル素子を記録素子とする記録ヘッドを備えた熱転写記録装置、LED素子を記録素子とする記録ヘッドを備えたLED電子写真プリンタ、LEDライン露光ヘッドを有する銀塩写真方式プリンタなど、ドット記録を行う各種方式の画像形成装置についても本発明を適用することが可能である。
<付記>
上記に詳述した発明の実施形態についての記載から把握されるとおり、本明細書は少なくとも以下に示す発明を含む多様な技術思想の開示を含んでいる。
(発明1):複数の記録素子が直線上に配列された記録素子列と、前記記録素子列を構成する前記複数の記録素子を所定個数でグループ分けし、各グループに属する記録素子の記録タイミングをグループ単位で補正するためのブロック別補正値をカウントするブロックカウンタ回路と、同じグループ内に属する各記録素子の相対的な位置に応じて当該グループ内の各記録素子の記録タイミングを記録素子単位で補正するための個別補正値をカウントする個別カウンタ回路と、前記ブロックカウンタ回路に設定すべきブロック別補正値と前記個別カウンタ回路に設定すべき個別補正値とを含んだシリアルデータを受信し、当該シリアルデータを展開して前記ブロックカウンタ回路に前記ブロック別補正値を供給するとともに前記個別カウンタ回路に前記個別補正値を供給するデータ分配回路と、前記記録素子列に属する記録素子の記録タイミングの基準となる基準タイミングを示す基準起動信号を受信する基準起動信号受信部と、を備え、前記基準起動信号を基準に前記ブロックカウンタ回路及び前記個別カウンタ回路のうち少なくとも一方のカウントが開始され、前記ブロックカウンタ回路及び前記個別カウンタ回路を組み合わせたカウンタ回路によって前記ブロック別補正値と前記個別補正値とを結合させた補正量により補正タイミング信号が生成され、前記補正タイミング信号に従い前記記録素子による記録が行われることを特徴とする記録ヘッド。
本発明によれば、個別カウンタ回路にセットする個別補正値を各グループに共通化できるため、データ転送量を削減することができ、記録タイミングを補正するデータを効率良くデータ転送することができる。また、この発明によれば、記録素子列が斜めに配置されることによる記録位置のずれを効果的に補正するためのデータを効率良く転送することができる。
(発明2):発明1において、前記個別カウンタ回路に設定される前記個別補正値は、前記グループ分けされた各グループに対して共通であることを特徴とする記録ヘッド。
(発明3):発明1又は2において、前記記録素子列を複数列備え、これら複数列の記録素子列は互いに平行に配置されていることを特徴とする記録ヘッド。
かかる態様によれば、異なる記録素子列間で補正値の一部又は全部を共用することが可能である。
(発明4):発明3において、前記複数列の記録素子列のうち、記録素子の配列密度が等しいものについて、それぞれの記録素子列に対応した前記ブロックカウンタ回路及び個別カウンタ回路に設定する前記ブロック別補正値及び前記個別補正値のデータは、同じ転送データが共用されることを特徴とする記録ヘッド。
かかる態様によれば、データ転送量を一層の削減することができる。
(発明5):発明3において、配列密度が異なる複数列の前記記録素子列を備え、各記録素子列の記録素子を同じ個数でグループ分けし、各記録素子列に対応した前記個別カウンタ回路に対し、記録素子列毎に前記配列密度に応じた個別補正値が設定されることを特徴とする記録ヘッド。
かかる態様によれば、異なる記録素子列間でブロック別補正値の一部又は全部を共通化することができる。
(発明6):発明3において、配列密度が異なる複数列の前記記録素子列を備え、これら複数列のうち配列密度が相対的に低い列のグループ内における両端の記録素子の位置に合わせて、配列密度が相対的に高い列の記録素子がグループ分けされ、各列のブロックカウンタ回路のブロック別補正値が共用されることを特徴とする記録ヘッド。
かかる態様によれば、異なる記録素子列間でブロック別補正値の一部又は全部を共通化することができ、データ転送量を削減できる。
(発明7):発明3において、配列密度が異なる複数列の前記記録素子列を備え、これら複数列のうち基準となる配列密度に対する各列の配列密度の割合に応じて、当該記録素子列の前記ブロックカウンタ回路及び前記個別カウンタ回路に与えるクロック信号のクロック周波数が変更され、各列に共通の前記ブロック別補正値及び前記個別補正値が前記シリアルデータで受信されることを特徴とする記録ヘッド。
かかる態様によれば、異なる記録素子列に対するブロック別補正値及び個別補正値を共通化することができるため、データ転送量を削減できる。
(発明8):発明3から7のいずれか1項において、前記複数列の記録素子列のうち、当該記録ヘッドに対する記録媒体の相対的な移動方向に対して、最上流に位置する記録素子列の基準起動信号を各記録素子列共通の基準起動信号として用いることを特徴とする記録ヘッド。
停止した記録ヘッドに対して記録媒体を搬送する形態の場合には、記録媒体の搬送方向に対して、第1列目となる記録素子列の基準起動信号を、他の列にも共通に用いることができる。
(発明9):発明1から8のいずれか1項において、前記データ分配回路は、前記基準起動信号の受信に先立ち、予め転送されてくる各ブロックカウンタ回路のブロック別補正値と各個別カウンタ回路の個別補正値をシリアルデータで受信し、当該シリアルデータ内のデータアドレス値によって各カウンタ回路へデータを分配することを特徴とする記録ヘッド。
補正値を示すデータは、記録ヘッドの初期化時など、予め記録ヘッドに転送され、各カウンタ回路にセットすることができる。
(発明10):発明9において、前記データ分配回路は、シフトレジスタ回路と、前記シリアルデータから前記シフトレジスタ回路を介して各記録素子のブロック別補正値及び個別補正値に対応するカウントデータを展開するデコーダ回路と、前記展開されたカウントデータを保持するラッチ回路と、から構成されていることを特徴とする記録ヘッド。
(発明11):発明1から10のいずれか1項において、前記シリアルデータとして、前記記録ヘッドに含まれる複数の記録素子のうち、記録タイミングの補正が必要な記録素子の補正用データ、或いは、補正値の修正が必要な記録素子の修正用データのみが前記記録ヘッドに転送されることを特徴とする記録ヘッド。
かかる態様によれば、データ転送量の一層の削減が可能である。
(発明12):発明1から11のいずれか1項において、配列密度が異なる複数列の前記記録素子列を備え、前記データ分配回路へ転送される前記シリアルデータは、同じ配列密度の記録素子列に対して共通に記録タイミングを補正する場合において、記録素子列の配列密度に応じたコードデータがアドレスの上位ビットに付加されることを特徴とする記録ヘッド。
(発明13):発明1から12のいずれか1項において、前記記録素子列を複数列備え、前記データ分配回路へ転送される前記シリアルデータは、各記録素子列毎に記録タイミングを補正する場合において、前記シリアルデータのヘッダーの記録素子列を識別するコードデータが付加されることを特徴とする記録ヘッド。
この場合、記録素子列を識別するコードデータは、記録タイミングの補正用のカウントデータと同様の方法で展開され、該当する記録素子列のカウントデータ出力のON/OFFに利用される。
(発明14):発明1から13のいずれか1項において、前記記録素子は、ノズルから液滴を吐出して、その吐出液滴により記録媒体上にドットを記録する液滴吐出素子であることを特徴とする記録ヘッド。
記録ヘットとして、インクジェットヘッド(液体吐出ヘッド)を用いることができる。この場合、ノズル列におけるノズルのグループ分けは、実質的には、ノズルに対応した吐出エネルギー発生素子をグループ分けすることに相当する。
(発明15):発明1から14のいずれか1項に記載の記録ヘッドと、前記記録ヘッドに対して前記シリアルデータを送信する制御装置と、を備えたことを特徴とする画像形成装置。
制御装置から記録ヘッドにシリアルデータを転送する際に、データ転送量を削減することが可能である。
(発明16):発明14に記載の記録ヘッドと、前記記録ヘッドに対して前記シリアルデータを送信する制御装置と、を備えたことを特徴とする液体吐出装置。
記録ヘッドとして液体吐出ヘッドを採用した形態においては、当該液体吐出ヘッドと制御装置とを組み合わせることで液体吐出装置が実現される。