JP6000206B2 - 抗アレルギー用経口組成物 - Google Patents

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本発明は、アレルギー、特にアトピー性皮膚炎、喘息、じんましん及び花粉症などの、マスト細胞または好塩基性細胞からヒスタミン等の生理活性物質が放出(脱顆粒)されることによって引き起こされる「I型アレルギー」の症状発症を抑制し、または当該アレルギー症状を緩和するのに有効な経口組成物に関する。
アトピー性皮膚炎、喘息、じんましん及び花粉症等のアレルギー性疾患の発症は、健康面は勿論のこと、クオリティ・オブ・ライフ(QOL)の面からも重大な問題の一つである。これらの疾病は、マスト細胞または好塩基性細胞の細胞内顆粒中に貯蔵されているヒスタミン、プロテアーゼ、脂質メディエーター、およびサイトカイニン等の生理活性物質が放出されること(脱顆粒)によって引き起こされ、アレルギーの中でも「I型アレルギー」に分類される。マスト細胞または好塩基性細胞の活性化は、各細胞の表面上で高親和性のIgEレセプター(FcεRI)に結合するIgEに、抗原が結合することによって開始される。マスト細胞または好塩基性細胞が活性化することで、原形質膜を備えた細胞顆粒のエキソサイトーシスおよび融合が生じ、次いで顆粒に格納された様々なメディエーターが放出される。
従来から、こうしたアレルギー性疾患に対する食品成分を使用した予防方法が精力的に研究されており、ポリフェノールが有効であることが報告されている(非特許文献1)。
ノビレチンは、6つのメトキシ基を有するフラボノイド(ポリメトキシフラボン)であり、柑橘類の果実や果皮に含まれている成分である (非特許文献2)。従来から、ノビレチンは、抗炎症作用(非特許文献3)、抗腫瘍作用(非特許文献4)、および抗糖尿病作用(非特許文献5)を有することが報告されている。またマンダリンオレンジから単離されたノビレチンに似た構造を有するポリメトキシフラボンは、主としてチロシン・キナーゼSyk、ホスホリパーゼC(PLC)γ、プロテインキナーゼCパスウェイ、およびCa2+流入をダウンレギュレートすることによって脱顆粒を抑制し、アレルギー症状を緩和抑制することが報告されている (非特許文献6)。詳細なメカニズムは不明であるが、ノビレチンについても、Aktのリン酸化をダウンレギュレートすることによってラット好塩基球性白血病RBL-2H3細胞の脱顆粒を抑制することが報告されている(非特許文献7)。
このようにノビレチンに脱顆粒抑制作用に基づいて、アレルギー反応を抑制する作用があることは知られているものの、その作用をさらに増強するための方法は知られていない。また、乳、特に乳清(ホエー)画分に含まれているβ−ラクトグロブリンにアレルギー抑制作用があること、並びにβ−ラクトグロブリンとノビレチンとを併用することで互いのアレルギー抑制作用が増強し合うことは知られていない。
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本発明は、アレルギー、詳細にはアトピー性皮膚炎、喘息、じんましん及び花粉症等のI型アレルギーの症状発生を抑制するか、またはその症状を緩和することができる経口組成物を提供することを目的とする。
本発明者は、上記課題を解決すべき鋭意検討を行っていたところ、乳の、特に乳清(ホエー)画分に含まれているβ−ラクトグロブリンに脱顆粒抑制作用があることを見出し、さらにβ−ラクトグロブリンとノビレチンとを併用することで、お互いの脱顆粒抑制作用が増強されること、つまりβ−ラクトグロブリンの脱顆粒抑制メカニズムはノビレチンのそれとは異なることを見出した。かかる知見から、β−ラクトグロブリンは、それ単独で、アトピー性皮膚炎、喘息、じんましん及び花粉症などのI型アレルギーの症状を有意に抑制または緩和することができるのみならず、ノビレチンと組み合わせることで、より一層増強されたアレルギー症状抑制乃至緩和作用が得られることを確認した。
本発明は、これらの知見に基づいて、さらなる研究のもので完成したものであり、下記の実施態様を包含するものである。
本件発明は、以下の実施形態を備えるものである。
(I)経口組成物
(I-1)β−ラクトグロブリン及びノビレチンを含有する経口組成物。
(I-2)上記β−ラクトグロブリンが、単離または精製β−ラクトグロブリンであるか、または/及びノビレチンが単離または精製ノビレチンである、(I-1)に記載する経口組成物。
(I-3)β−ラクトグロブリン1重量部に対してノビレチンを0.0004〜20重量部の割合で含有する、(I-1)または(I-2)に記載する経口組成物。
(I-4)アレルギー症状の発生を抑制するか、またはアレルギー症状を緩和するために用いられる、(I-1)〜(I-3)のいずれかに記載する経口組成物。
(I-5)アレルギーがI型アレルギーである(I-4)に記載する経口組成物。
(I-6)アレルギーまたはアレルギー症状が、アトピー性皮膚炎、気管支喘息、アレルギー性鼻炎、花粉症、じんましん、食物アレルギー、アレルギー性結膜炎、及びアレルギー性胃腸炎からなる群から選択される少なくも1つである、(I-1)〜(I-5)のいずれかに記載する経口組成物。
(I-7)医薬組成物、医薬部外品組成物、または飲食品組成物のいずれかである、(I-1)〜(I-6)のいずれかに記載する経口組成物。
(I-8)β−ラクトグロブリン及びノビレチンに加えて、薬学的に許容される担体を含有し、製剤形態を有するものである、(I-1)〜(I-7)のいずれかに記載する経口組成物。
(I-9)液剤(ドリンク剤)、シロップ剤、散剤、錠剤、顆粒剤、丸剤、カプセル剤(軟カプセル剤又は硬カプセル剤)、トローチ、チュアブル錠、及びドライシロップ剤からなる群から選択される製剤形態を有する、(I-1)〜(I-8)のいずれかに記載する経口組成物。
(I-10)アトピー性皮膚炎、気管支喘息、アレルギー性鼻炎、花粉症、じんましん、食物アレルギー、アレルギー性結膜炎、及びアレルギー性胃腸炎からなる群から選択される少なくも1つのアレルギー若しくはアレルギー症状を有するか、過去に当該アレルギー若しくはアレルギー症状を発症した罹患歴があるか、または当該アレルギー若しくはアレルギー症状を発症する可能性のある被験者に対して投与するか、または摂取させるものである、(I-1)〜(I-9)のいずれかに記載する経口組成物。
(II)抗アレルギー剤
(II-1)β−ラクトグロブリン、またはβ−ラクトグロブリン及びノビレチンを含有する抗アレルギー剤。
(II-2)上記β−ラクトグロブリンが単離または精製β−ラクトグロブリンであるか、または/及びノビレチンが単離または精製ノビレチンである、(II-1)に記載する抗アレルギー剤。
(II-3)β−ラクトグロブリン1重量部に対してノビレチンを0.0004〜20重量部の割合で含有する、(II-1)または(II-2)に記載する抗アレルギー剤。
(II-4)I型アレルギーに対する抗アレルギー剤である、(II-1)〜(II-3)のいずれかに記載する抗アレルギー剤。
(II-5)アレルギー症状の発生を抑制するか、またはアレルギー症状を緩和するためのものである、(II-1)〜(II-4)のいずれかに記載する抗アレルギー剤。つまり、本発明の抗アレルギー剤は、アレルギー症状発生抑制剤またはアレルギー症状緩和剤と言い換えることができる。
(II-6)対象とするアレルギーまたはアレルギー症状が、アトピー性皮膚炎、気管支喘息、アレルギー性鼻炎、花粉症、じんましん、食物アレルギー、アレルギー性結膜炎、及びアレルギー性胃腸炎からなる群から選択される少なくも1つである、(II-1)〜(II-5)のいずれかに記載する抗アレルギー剤。
(II-7)医薬品、医薬部外品、または飲食品のいずれかである、(II-1)〜(II-6)のいずれかに記載する抗アレルギー剤。
(II-8)β−ラクトグロブリン、またはβ−ラクトグロブリン及びノビレチンに加えて、薬学的に許容される担体を含有し、製剤形態を有するものである、(II-1)〜(II-7)のいずれかに記載する抗アレルギー剤。
(II-9)液剤(ドリンク剤)、シロップ剤、散剤、錠剤、顆粒剤、丸剤、カプセル剤(軟カプセル剤又は硬カプセル剤)、トローチ、チュアブル錠、及びドライシロップ剤からなる群から選択される製剤形態を有する、(II-8)に記載する抗アレルギー剤。
(II-10)アトピー性皮膚炎、気管支喘息、アレルギー性鼻炎、花粉症、じんましん、食物アレルギー、アレルギー性結膜炎、及びアレルギー性胃腸炎からなる群から選択される少なくも1つのアレルギー若しくはアレルギー症状を有するか、過去に当該アレルギー若しくはアレルギー症状を発症した罹患歴があるか、または当該アレルギー若しくはアレルギー症状を発症する可能性のある被験者に対して投与するか、または摂取させるものである、(II-1)〜(II-9)のいずれかに記載する抗アレルギー剤。
(III)β−ラクトグロブリン、またはβ−ラクトグロブリン及びノビレチンの使用
(III-1)アレルギー症状の発生を抑制するか、またはアレルギー症状を緩和するための経口組成物または抗アレルギー剤を製造するための、β−ラクトグロブリンまたはβ−ラクトグロブリン及びノビレチンの使用。
(III-2)アレルギーがI型アレルギーである、(III-1)に記載する使用。
(III-3)対象とするアレルギーまたはアレルギー症状が、アトピー性皮膚炎、気管支喘息、アレルギー性鼻炎、花粉症、じんましん、食物アレルギー、アレルギー性結膜炎、及びアレルギー性胃腸炎からなる群から選択される少なくも1つである、(III-1)または(III-2)に記載する使用。
(III-4)経口組成物または抗アレルギー剤が、医薬品、医薬部外品、または飲食品のいずれかである、(III-1)〜(III-3)のいずれかに記載する使用。
(III-5)経口組成物または抗アレルギー剤が、アトピー性皮膚炎、気管支喘息、アレルギー性鼻炎、花粉症、じんましん、食物アレルギー、アレルギー性結膜炎、及びアレルギー性胃腸炎からなる群から選択される少なくも1つのアレルギー若しくはアレルギー症状を有するか、過去に当該アレルギー若しくはアレルギー症状を発症した罹患歴があるか、または当該アレルギー若しくはアレルギー症状を発症する可能性のある被験者に対して投与するか、または摂取させるものである、(III-1)〜(III-4)のいずれかに記載する使用。
(IV)抗アレルギー方法
(IV-1)I型アレルギーを発症しているか、I型アレルギーの発症罹患歴があるか、またはI型アレルギーを発症する可能性のある被験者に対して、(I-1)〜(I-10)のいずれかに記載する経口組成物、または(II-1)〜(II-10)のいずれかに記載する抗アレルギー剤を投与または摂取させる工程を有する、上記被験者に対する抗アレルギー方法。
(IV-2)対象とするアレルギーまたはアレルギー症状が、アトピー性皮膚炎、気管支喘息、アレルギー性鼻炎、花粉症、じんましん、食物アレルギー、アレルギー性結膜炎、及びアレルギー性胃腸炎からなる群から選択される少なくも1つである、(IV-1)に記載する抗アレルギー方法。
(IV-3)抗アレルギー方法が、I型アレルギーの症状発症を抑制するか、またはI型アレルギーの症状を緩和する方法。
β−ラクトグロブリンを含有する経口組成物または抗アレルギー剤によれば、マスト細胞または好塩基性細胞からのヒスタミン等の放出(脱顆粒)を有意に抑制することができ、その結果、脱顆粒によって生じるアレルギー症状の発症を抑えることができるか、または当該アレルギー症状を緩和することができる。
さらにβ−ラクトグロブリン及びノビレチンを含有する経口組成物または抗アレルギー剤は、β−ラクトグロブリン及びノビレチンをそれぞれ単独で含有する経口組成物または抗アレルギー剤と比較して、強い脱顆粒抑制作用を有する。このため、当該経口組成物または抗アレルギー剤によれば、β−ラクトグロブリン及びノビレチンをそれぞれ単独で含有する経口組成物または抗アレルギー剤よりも少量で脱顆粒によって生じるアレルギー症状の発症を抑え、また当該アレルギー症状を緩和することができる。また、比較的アレルギー症状の重い患者(被験者)に対しても、症状に応じて、投与量(摂取量)を調節することで、有効に本発明の効果(アレルギー症状の発症を抑え、また当該アレルギー症状を緩和する)を発揮させることができる。
(A)ラット好塩基球細胞(RBL-2H3細胞)の脱顆粒に対するノビレチン(5〜70μM)の作用を評価した結果を示す。縦軸は、脱顆粒のマーカーとして使用したβ-ヘキソサミニダーゼの放出率(%)を示す。(B)骨髄由来マスト細胞(BMMC; Bone Marrow Mast Cell)の脱顆粒に対するノビレチン(50μM)の作用を評価した結果を示す。縦軸は、脱顆粒のマーカーとして使用したβ-ヘキソサミニダーゼの放出率(%)を示す。(C)RBL-2H3細胞に対するノビレチン(5〜70μM)の細胞毒性をWST-8法により評価した結果を示す。縦軸は、RBL-2H3細胞の生存率(%)を示す。 カルシウムイオン導入剤による脱顆粒誘導に対するノビレチンの効果を示す図である。具体的には、(A)A23187(カルシウムイオノフォア)、及び(B)タプシガルギンによって誘導されるマスト細胞のFcεRI非依存性脱顆粒に対するノビレチン(10〜50μM)の作用を評価した結果を示す。縦軸は、脱顆粒のマーカーとして使用したβ-ヘキソサミニダーゼの放出率(%)を示す。図中、「N.C.」は、A23187またはタプシガルギンを作用させないネガティブコントロールであり、「W」は、ノビレチンに代えてウォルトマンニン(PI3K阻害による脱顆粒抑制剤)を用いたポジティブコントロールである。 細胞内カルシウムイオン濃度[Ca2+]iに及ぼすノビレチンの影響を示す図である。具体的には、(A)はDNP-HSA(抗原)の刺激による[Ca2+]i増加に対するノビレチンの抑制作用を、(B)はA23187(カルシウムイオノフォア)の刺激による[Ca2+]i増加に対するノビレチンの抑制作用をそれぞれ示す。 細胞内シグナル経路に及ぼすノビレチンの影響を示す図である。具体的には、(A)は、Akt及びその上流に位置するPI3Kのリン酸化に対するノビレチンの影響をイムノブロット分析により評価した結果を、ウォルトマンニンの効果とともに示す。(B)は、(A)の結果から算出した「p-PI3K/PI3K」をグラフにしたものである。(C)は、脱顆粒に関係するシグナル経路上のタンパク質(Lyn、Syk、PLCγ-1、PLCγ-2)のリン酸化に対するノビレチンの影響を、イムノブロット分析により、ウォルトマンニンとともに調べた結果を示す。 受動皮膚アナフィラキシー応答(PCA応答; Passive Cutaneous Anaphylaxis応答)に及ぼすノビレチン(50mg/kg)及びウォルトマンニン(10mg/kg)の影響をそれぞれ示す図である。PCA応答は、50mg/kgのノビレチンまたは10mg/kgのウォルトマンニンの経口投与によって著しく抑制される。 棒グラフ:ラット好塩基球細胞(RBL-2H3細胞)の脱顆粒に対するβ-ラクトグロブリン(タンパク質濃度:450〜3600μg/mL)の作用を評価した結果を示す。左側縦軸は、脱顆粒のマーカーとして使用したβ-ヘキソサミニダーゼの放出率(%)を示す。折れ線グラフ: RBL-2H3細胞に対するβ-ラクトグロブリン(タンパク質濃度:450〜3600μg/mL)の細胞毒性をWST-8法により評価した結果を示す。右側縦軸は、RBL-2H3細胞の生存率(%)を示す。 細胞内カルシウムイオン濃度[Ca2+]iに及ぼすβ-ラクトグロブリンの影響を示す図である。具体的には、DNP-HSA(抗原)の刺激による[Ca2+]i増加に対するβ-ラクトグロブリンの抑制作用を示す。 細胞内の脱顆粒に関係するシグナル伝達に及ぼすβ-ラクトグロブリンの影響を示す図である。具体的には、脱顆粒に関係するシグナル経路上のタンパク質(Lyn、Syk、PI3K(p85)、PI3K(p55)、PLCγ-1、PLCγ-2)のリン酸化に対するβ-ラクトグロブリンの影響を、イムノブロット分析により調べた結果を示す。 受動皮膚アナフィラキシー(PCA)応答に及ぼすβ-ラクトグロブリン(30mg/kg)の影響を示す図である。PCA応答は、30mg/kgのβ-ラクトグロブリンの経口投与によって抑制される。 ラット好塩基球細胞(RBL-2H3細胞)の脱顆粒に対するβ-ラクトグロブリン単独(タンパク質濃度:0〜2148.6μg/mL)、ノビレチン単独(0〜50μM)、及びβ-ラクトグロブリンとノビレチンの併用による作用を評価した結果を示す。左側縦軸は、脱顆粒のマーカーとして使用したβ-ヘキソサミニダーゼの放出率(%)を示す。 ラット好塩基球細胞(RBL-2H3細胞)の脱顆粒に対するノビレチン単独(5μM及び10μM)、及びヨーグルト上清単独(タンパク質濃度:2.64〜10.57μg/mL)、及びノビレチンとヨーグルト上清の併用による作用を評価した結果を示す。左側縦軸は、脱顆粒のマーカーとして使用したβ-ヘキソサミニダーゼの放出率(%)を示す。 受動皮膚アナフィラキシー(PCA)応答に及ぼすノビレチン単独投与(30mg/kg)、β-ラクトグロブリン単独投与(20mg/kg)、及びノビレチンとβ-ラクトグロブリンの併用投与による影響を示す図である。PCA応答は、各単独投与のみならず、併用投与により顕著に抑制されている。
(I)経口組成物
本発明の経口組成物は、β−ラクトグロブリン及びノビレチンを含有することを特徴とする。
(I-1)β−ラクトグロブリン
β−ラクトグロブリン(本明細書では、「β-LG」と略称する場合がある。)は、162アミノ酸残基からなり、分子量約18.3kDaの球状タンパク質である。β-LGは主として牛乳に含まれており、牛乳タンパク質の7〜12%、乳清タンパク質の50〜60%を占めている。牛乳以外にも、羊、山羊、豚、鹿、馬、及びイルカの乳にも含まれている。
牛乳に含まれるウシβ-LGには、2種類のアイソフォーム(アイソフォームA及びB)があることが知られており、そのアミノ酸配列は、例えばNCBIのプロテインデータベースのアクセッション番号1QG5_A(アイソフォームA:配列番号1)、及び山内邦男、横山健吉編、ミルク総合事典、朝倉書店、1992年、34頁(アイソフォームB:配列番号2)に開示されている。
乳清(ホエイ)からβ-LGを分画若しくは単離する方法については、多くの報告〔例えば、桑田有:月刊フードケミカル,2月号,68(1992);米国特許第5,420,249号;特開平07-123927号公報;特開平07-203863号公報等〕があるため、これに従って調製することもできるし、また、市販品として数々上市されているので、商業的に入手することもできる。
例えば、その一例を挙げると、乳清(ホエイ)を限外濾過し、低分子量ホエイタンパク質濃縮物(LWPC)を得た後、ゲル濾過(例えば、Sephacryl S100 やSuperdex 75)に供して、分子量(約18.3kDa)を指標として分離する方法を挙げることができる。
原料として使用する乳清は特に制限されず、例えばチーズ製造時の副産物であるスウィートホエー、酸カゼイン製造時の副産物であるアシッドホエー、またはレンネットカゼイン製造時の副産物であるレンネットホエーなどを制限なく挙げることができる。乳の由来も、β-LGを含む限り、特に制限されず、牛、羊、または山羊等の哺乳類の乳を例示することができる。好ましくは牛由来のもの、すなわち牛乳に由来する乳清である。
本発明の経口組成物で用いるβ-LGは、アイソフォームの別を問わず、アイソフォームAであっても、またアイソフォームBであってもよく、さらにこれらの混合物であってもよい。β-LGはpH依存性のある会合性を示し、pH3以下では単量体、pH5.5〜7.0では2量体、pH3.5〜5.2では2量体が4つ集まって8量体を形成する特性を有する。このため、本発明の経口組成物で用いるβ-LGは単量体であってもよいし、また2量体若しくは8量体であってもよい。2量体(8量体を形成する2量体を含む)は、アイソフォームA同士またはB同士の2量体であってもよいし、またアイソフォームAとBとの組み合わせからなる2量体であってもよい。
本発明の経口組成物において、製造に使用するβ-LGは、乳または乳清から分画・単離されるか或いはβ-LGとして商業的に入手されるいわゆるβ-LGそのもの(本発明において、これらを総称して「単離β-LG」と称する。)であってもよいし、また純度70%以上、好ましくは純度80%以上、より好ましくは90%以上に高純度に精製されたβ-LG(本発明において、これらを総称して「精製β-LG」と称する。)であってもよい。またさらに、粗精製のβ-LGであってもよい。
ここで粗精製β-LGには、乳清タンパク質、乳清タンパク質濃縮物(WPC)、及び乳清タンパク質分離物(WPI)が含まれる。乳清タンパク質中に含まれるβ-LGの割合は、制限はされないが、タンパク質総量100重量%あたり、通常50〜60重量%程度である。乳清タンパク質濃縮物(WPC)は、乳清タンパク質を限外ろ過等の膜処理技術により分離濃縮することでタンパク質含量(総量)を70〜80重量%程度に高めたものであり、乳清タンパク質分離物(WPI)は、乳清タンパク質濃縮物(WPC)をさらにイオン交換カラム等に供することで、タンパク質含量(総量)を90重量%以上に高めたものである。さらに、粗精製のβ-LGには、上記乳清タンパク質、乳清タンパク質濃縮物(WPC)、または乳清タンパク質分離物(WPI)に、単離β-LGまたは精製β-LGを外添したものも含まれる。なお、これらの粗精製β-LGには、β-LGが1〜99重量%の割合で含まれるように調製することが好ましい、好ましくは10〜99重量%、より好ましくは30〜99重量%の割合である。
本発明の経口組成物で用いるβ-LGは、好ましくは、単離β-LG、精製β-LG、WPC、及びWPI、並びに乳清タンパク質に単離β-LGまたは精製β-LGを外添したものであり、より好ましくはWPI、WPCである。
(I-2)ノビレチン
ノビレチンは、前述するように6つのメトキシ基を有する公知のポリメトキシフラボンである。ノビレチンは、シークワーシャー(Citrusdepressa)、タチバナ(C.tachibana)、コウジ(C.leiocarpa)、ギリミカン(C.tardiva)、ジミカン(C.succosa)、シカイカン、キシュウ(C.kinokuni)、コベニミカン(C.erythrosa)、スンキ(C.sunki)、チチュウカイマンダリン(C.deliciosa)、キング(C.nobilis)、ポンカン(C.retuculata)、ダンシータンジェリン(C.tangerina)、ウンシュウミカン(C.unshiu)、カワチバンカン(C.grandis)、グレープフルーツ(C.x paradisi)、イヨカン(C.iyo)、ナツミカン(C.natsudaidai)、ハッサク(C.hassaku)、キヨミ(C. unshiu x sinensis)、カンペイ、セトカ、ブラッドオレンジ(以上、ミカン区に属する柑橘類)、ハナユ(C.hanayu)、及びコウライタチバナ(C.nippokoreana)(以上、ユズ区に属する柑橘類)などの柑橘類の果実、または果皮に含まれることが知られている。
これらの柑橘類からノビレチンを分画若しくは単離する方法については、多くの報告〔例えば、WO2006/049234;特開2001-240539公報等〕があるため、これに従って調製することもできるし、また、市販品として数々上市されているので、商業的に入手することもできる。
例えば、その一例を挙げると、果実にノビレチンを含む柑橘類から調製した5倍濃縮の果汁を、多孔質イオン交換樹脂のカラムを用いてカラムクロマトグラフィーを行い、30%メタノール、50%メタノール、80%メタノール、メタノール、エタノール、および酢酸エチルエステルで順次溶出し、次いで、エタノール、及び酢酸エチルエステル溶出画分についてシリカゲルカラムクロマトグラフィーを行い、ヘキサン−アセトン系、クロロホルム−酢酸エチルエステル系などの溶媒で分離する方法を挙げることができる。
本発明の経口組成物において、製造に使用するノビレチンは、前述する柑橘類から分画・単離されるか或いはノビレチンとして商業的に入手されるいわゆるノビレチンそのもの(本発明では、これらを総称して「単離ノビレチン」と称する場合がある。)であってもよいし、また純度70%以上、好ましくは純度80%以上、より好ましくは90%以上に高純度に精製されたノビレチン(本発明では、これらを総称して「精製ノビレチン」と称する場合がある。)であってもよい。またさらに、粗精製のノビレチンであってもよい。
ここで粗精製ノビレチンには、前述する柑橘類の果実、果皮、及びこれらの加工物が含まれる。果実または果皮の加工物としては、果実搾汁(以下、「果汁」という)、果皮搾汁、果皮抽出物、果皮破砕物及びそのペースト等を挙げることができ、これらは濃縮されたものであっても、また乾燥固化(濃縮乾固、凍結乾燥、噴霧乾燥を含む)したものであってもよい。好ましくは果実または果皮の加工物であり、より好ましくは果皮の加工物である。さらに、粗精製ノビレチンには、上記柑橘類の果実、果皮、及びこれらの加工物に、単離ノビレチンまたは精製ノビレチンを外添したものも含まれる。なお、これらの粗精製ノビレチンには、ノビレチンが、0.005〜98重量%の割合で含まれるように調製することが好ましい、好ましくは0.01〜80重量%、より好ましくは0.015〜50重量%の割合である。
本発明の経口組成物で用いるノビレチンは、好ましくは、単離ノビレチン、精製ノビレチン、柑橘類の果実若しくは果皮の加工物、及びこれらに単離ノビレチン若しくは精製ノビレチンを外添したものであり、より好ましくは果皮の加工物、およびこれらに精製ノビレチンを外添したものである。
(I-3)β-LG及びノビレチンを含む経口組成物
本発明の経口組成物は、前述するβ-LG及びノビレチンをそれぞれ配合することで調製することができる。
各成分の配合量及び配合比は、当該経口組成物を投与または摂取することで、マスト細胞または好塩基性細胞の脱顆粒反応を抑制することができる量または割合であることが好ましい。より好ましくは当該経口組成物を投与または摂取することで、I型アレルギーの症状の発症が抑制されるか又はI型アレルギーの症状が緩和される量または割合である。なお、I型アレルギーの症状の発症が抑制されるか又はI型アレルギーの症状が緩和されるための投与回数(摂取回数)は、1回に限られず、例えば1日に1〜3回程度の投与(摂取)を1日または2日〜数ヶ月程度継続することも含まれる。
本発明の経口組成物に含まれるβ-LGの割合としては、経口組成物100重量%中、乾燥含量で0.01〜10重量%の範囲から選択することができる。好ましくは0.01〜5重量%、より好ましくは0.01〜1重量%である。また本発明の経口組成物に含まれるノビレチンの割合としては、経口組成物100重量%中、乾燥含量で0.02〜10重量%の範囲から選択することができる。好ましくは0.02〜5重量%、より好ましくは0.02〜1重量%である。
さらに、本発明の経口組成物に含まれるβ-LG 1重量部に対するノビレチンの割合としては、0.1〜5重量部の範囲から選択することができ、好ましくは0.5〜3重量部、より好ましくは0.5〜2重量部を挙げることができる。
本発明の経口組成物は、後述する実施例で示すように、β-LGとノビレチンの両方を含むことで、好塩基性細胞の脱顆粒を強く抑制する作用を有している。このため、アレルギー反応、特にI型アレルギー反応を抑制し、当該アレルギー症状の発症を抑えるか、またはその症状を緩和することが可能である。なお、I型アレルギーまたはその症状としては、アトピー性皮膚炎、気管支喘息、アレルギー性鼻炎、花粉症、じんましん、食物アレルギー、アレルギー性結膜炎、及びアレルギー性胃腸炎を挙げることができる。
本発明が対象とする経口組成物には、飲食品組成物、及び経口の医薬品組成物若しくは医薬品部外品組成物が含まれる。
(a)飲食品組成物
本発明の経口組成物を、飲食品とする場合、上述した経口組成物をそのまま飲食品組成物としてもよいし、また飲食品分野において公知の成分や素材を組み合わせるか、または飲食品の分野で許容される担体や添加剤を添加混合して、抗アレルギー作用(I型アレルギーの症状発生を抑制する作用、またはI型アレルギーの症状を緩和する作用)を有する飲食品組成物を調製することができる。なお、本発明でいう飲食品組成物には、ヒトに対する飲食品、及びペット(イヌ、ネコ、ハムスター、ウサギ、トリなど)に対する飲食品(ペットフード)、及び家畜(牛、豚、家禽類)に対する飲食品(飼料)も含まれる。
ヒトに対する飲食品組成物としては、特に制限されることはないが、例えば飲料(例:乳飲料、乳酸菌飲料、果汁入り清涼飲料、炭酸飲料、果汁飲料、野菜飲料、野菜・果実飲料、アルコール飲料、スポーツ飲料、粉末飲料、茶飲料など)、冷菓(例:ゼリー、ババロア、プリンなど)、氷菓(例:アイスクリーム、アイスミルク、ラクトアイス、シャーベット)、菓子類(例:クッキー、ビスケット、おかき、飴類、チョコレート類、ガム類)、パン類、麺類(例:中華麺、パスタ、うどん、蕎麦、素麺)、スープ類(粉末または固形スープを含む)、調味料(例:ドレッシング、ジュレ、ソース、マヨネーズ様ソース、たれ)などを挙げることができる。
また本発明の飲食品組成物は、上記形態を有する飲食品の他に、β-LGとノビレチンの抗アレルギー作用に基づいて、脱顆粒反応によって引き起こされるI型アレルギー疾患やそれに伴うアレルギー症状を抑制または緩和することを目的とする機能性食品(栄養機能食品、特定保健用食品など、サプリメントを含む)、及び病者用食品(要介護者用食品、及び嚥下困難者用食品を含む)などとして調製することができる。本発明の飲食品組成物を、このような機能性食品や病者用食品として調製する場合、継続的な摂取が容易にできるように、例えば、液剤(ドリンク剤)、シロップ剤、ドライシロップ剤、ゼリー製剤(用時調製用のものを含む。以下同じ)、顆粒剤、散剤、丸剤、錠剤、カプセル剤(硬カプセル剤、軟カプセル剤)、トローチ剤、チュアブル剤等の製剤形態に調製することが好ましい。好ましくは、液剤(ドリンク剤)、ゼリー製剤、顆粒剤、錠剤、カプセル剤(硬カプセル剤、軟カプセル剤)であり、より好ましくは液剤(ドリンク剤)、ゼリー製剤である。かかる製剤形態の調製は、各製剤の形態に応じて、後述する医薬品組成物の欄で説明するように、薬学的に許容される担体または添加剤を用いて、製剤製造の定法に従って行うことができる。
なお、特定保健用食品(条件付き特定保健用食品)及び病者用食品は、例えば、I型アレルギー疾患またはそのアレルギー症状に対する当該食品の機能や効果(抗アレルギー効果、詳細にはI型アレルギーに属する各種のアレルギー症状を抑制または緩和する効果)に関する記載を、その包装容器などに表示することが可能な飲食品である。
本発明の飲食品組成物は、β-LGの1日あたりの摂取量が、大人1人あたり(体重60kgの場合)、1〜1000mg/日程度、好ましくは5〜500mg/日程度、より好ましくは10〜50mg/日程度となるように、またノビレチンの1日あたりの摂取量が、大人1人あたり(体重60kgの場合)、1〜1000mg/日程度、好ましくは5〜500mg/日程度、より好ましくは20〜100mg/日程度となるように、摂取することが好ましい。
(b)経口医薬品組成物、医薬部外品組成物
本発明の経口組成物を、医薬品または医薬部外品とする場合、上述した経口組成物をそのまま医薬品または医薬部外品としてもよいし、また医薬品または医薬部外品分野において許容される担体や添加剤、または他の医薬成分を添加混合して、抗アレルギー作用を有する医薬品または医薬部外品組成物を調製することができる。
本発明の医薬品または医薬部外品組成物は、β-LGとノビレチンの抗アレルギー作用に基づいて、脱顆粒反応によって引き起こされるI型アレルギー疾患やそれに伴うアレルギー症状を抑制または緩和するために用いられる。
本発明の医薬品または医薬部外品組成物の剤型は、特に制限されないが、液剤(ドリンク剤)、シロップ剤、ドライシロップ剤、ゼリー製剤(用時調製用のものを含む。以下同じ)、顆粒剤、散剤、丸剤、錠剤、カプセル剤(硬カプセル剤、軟カプセル剤)、トローチ剤、チュアブル剤等が挙げられる。薬効成分(β-LG及びノビレチン)の放出性を制御した製剤形態を有するものであってもよい(例えば、速放性製剤、徐放性製剤)。好ましくは、液剤(ドリンク剤)、顆粒剤、錠剤、カプセル剤(硬カプセル剤、軟カプセル剤)であり、より好ましくは錠剤、液剤(ドリンク剤)である。
このような剤型を有する製剤は、製剤形態に応じて、必要であれば、医薬品または医薬部外品分野において許容される担体を用いて、当業界の慣用法に従って調製することができる。なお、これらの担体は、日本薬局方、または「医薬品添加物事典」(薬事日報社発行)等に詳細に説明されているので、これらを参考に選択することができる。また上記成分のほか、本発明の効果が減殺されない範囲であれば、通常の医薬品の添加物として許容される安定剤、分散剤、流動化剤、緩衝剤、潤滑剤、防腐剤、pH調整剤、溶剤、溶解補助剤などを所望に応じて、任意に添加することもできる。
本発明の医薬品または医薬部外品組成物は、上述する製剤形態(固形、半固形、液状)を有する内服剤として調製され、I型アレルギー、具体的には、アトピー性皮膚炎、気管支喘息、アレルギー性鼻炎、花粉症、じんましん、食物アレルギー、アレルギー性結膜炎、及びアレルギー性胃腸炎からなる群から選択される少なくも1つのアレルギー若しくはアレルギー症状を有するか、過去に当該アレルギー若しくはアレルギー症状を発症した罹患歴があるか、または当該アレルギー若しくはアレルギー症状を発症する可能性のある患者に対して投与することができる。
投与量は、患者の年齢、体重、アレルギー症状の程度、及び製剤形態に応じて、適宜設定することができる。例えば、β-LGの1日あたりの摂取量が、大人1人あたり(体重60kgの場合)、1〜1000mg/日程度、好ましくは5〜500mg/日程度、より好ましくは10〜50mg/日程度となるように、またノビレチンの1日あたりの摂取量が、大人1人あたり(体重60kgの場合)、1〜1000mg/日程度、好ましくは5〜500mg/日程度、より好ましくは20〜100mg/日程度となるように、投与することが好ましい。
(II)抗アレルギー剤
本発明の抗アレルギー剤は、脱顆粒抑制作用に基づいて抗アレルギー作用を発揮する有効成分として、β-LGとノビレチンのうち、β-LGだけを含有するか、β-LGとノビレチンを組み合わせて含有することを特徴とする。以下、β-LGを有効成分として含有する抗アレルギー剤、及びβ-LGとノビレチンを有効成分として含有する抗アレルギー剤について、それぞれ説明する。
(II-1)β-LGを有効成分として含有する抗アレルギー剤
当該抗アレルギー剤において、有効成分として用いるβ-LGは、(I-1)に記載の通りであり、当該(I-1)で説明する単離β-LG、精製β-LG、または粗精製β-LGのいずれであってもよい。抗アレルギー剤が、医薬品または医薬部外品である場合、配合するβ-LGが単離β-LGまたは精製β-LGであることが好ましい。一方、抗アレルギー剤が、飲食品である場合、単離β-LG、精製β-LG、または粗精製β-LGのいずれであってもよいが、好ましくは粗精製β-LGである。
抗アレルギー剤に含まれるβ-LGの割合としては、抗アレルギー剤100重量%仲、乾燥重量で20〜100重量%の範囲から選択することができる。好ましくは30〜70重量%、より好ましくは40〜60重量%である。
当該抗アレルギー剤の投与量(摂取量)は、投与(摂取)対象者の体重、アレルギー症状の程度、及び製剤形態に応じて、適宜設定することができる。例えば、β-LGの1日あたりの摂取量が、大人1人あたり(体重60kgの場合)、1〜1000mg/日程度、好ましくは5〜500mg/日程度、より好ましくは10〜50mg/日程度となるように設定することができる。なお、本発明の抗アレルギー剤の投与(摂取)対象者、及び製剤形態については、(II-3)において説明する。
(II-2)β-LG及びノビレチンを有効成分として含有する抗アレルギー剤
当該抗アレルギー剤において、有効成分として用いるβ-LG及びノビレチンは、それぞれ(I-1)及び(I-2)に記載の通りであり、β-LGは(I-1)で説明する単離β-LG、精製β-LG、または粗精製β-LGのいずれであってもよく、またノビレチンも(I-2)で説明する単離ノビレチン、精製ノビレチン、または粗精製ノビレチンのいずれであってもよい。
抗アレルギー剤が、医薬品または医薬部外品である場合、配合するβ-LG及びノビレチンは、それぞれ単離若しくは精製β-LG、または単離若しくは精製ノビレチンであることが好ましい。一方、抗アレルギー剤が、飲食品である場合は、β-LG及びノビレチンは単離、精製、または粗精製のいずれであってもよいが、好ましくは粗精製β-LG及び/または粗精製ノビレチンである。
抗アレルギー剤に含まれるβ-LGの割合としては、抗アレルギー剤100重量%仲、乾燥重量で20〜80重量%の範囲から選択することができる。好ましくは30〜70重量%、より好ましくは40〜60重量%である。また抗アレルギー剤に含まれるノビレチンの割合としては、抗アレルギー剤100重量%中、乾燥含量で20〜80重量%の範囲から選択することができる。好ましくは30〜70重量%、より好ましくは40〜60重量%である。さらに、本発明の抗アレルギー剤に含まれるβ-LG 1重量部に対するノビレチンの割合としては、0.1〜5重量部の範囲から選択することができ、好ましくは0.5〜3重量部、より好ましくは0.5〜2重量部を挙げることができる。
当該抗アレルギー剤の投与量(摂取量)は、投与(摂取)対象者の体重、アレルギー症状の程度、及び製剤形態に応じて、適宜設定することができる。例えば、β-LGの1日あたりの投与量(摂取量)が、大人1人あたり(体重60kgの場合)、1〜1000mg/日程度、好ましくは5〜500mg/日程度、より好ましくは10〜50mg/日程度となるように、またノビレチンの1日あたりの投与量(摂取量)が、大人1人あたり(体重60kgの場合)、1〜1000mg/日程度、好ましくは5〜500mg/日程度、より好ましくは10〜50mg/日程度となるように、設定することが好ましい。なお、本発明の抗アレルギー剤の投与(摂取)対象者、及び製剤形態についても、(II-3)において説明する。
(II-3)前述する抗アレルギー剤の形態、適用対象など
(II-1)及び(II-2)で説明した本発明の抗アレルギー剤は、後述する実施例で示すように、β-LGを単独、またはβ-LGとノビレチンの両方を含むことで、好塩基性細胞の脱顆粒を抑制する作用を有している。このため、アレルギー反応、特にI型アレルギー反応を抑制し、当該アレルギー症状の発症を抑えるか、またはその症状を緩和することが可能である。なお、I型アレルギーまたはその症状としては、アトピー性皮膚炎、気管支喘息、アレルギー性鼻炎、花粉症、じんましん、食物アレルギー、アレルギー性結膜炎、及びアレルギー性胃腸炎を挙げることができる。
本発明が対象とする抗アレルギー剤(I型アレルギーの症状発症抑制剤、I型アレルギーの症状緩和剤)には、飲食品、及び医薬品若しくは医薬品部外品が含まれる。
(a)飲食品
本発明の抗アレルギー剤を、飲食品とする場合、β-LGを単独、またはβ-LGとノビレチンの組み合わせ物をそのまま飲食品としてもよいし、また飲食品分野において公知の成分や素材を組み合わせるか、または飲食品の分野で許容される担体や添加剤を添加混合して飲食品としてもよく、斯くして、抗アレルギー作用(I型アレルギーの症状発生を抑制する作用、またはI型アレルギーの症状を緩和する作用)を有する飲食品を調製することができる。
ここで対象とする飲食品は、好ましくは、β-LGまたはβ-LGとノビレチンの抗アレルギー作用に基づいて、脱顆粒反応によって引き起こされるI型アレルギー疾患やそれに伴うアレルギー症状を抑制または緩和することを目的とする機能性食品(栄養機能食品、特定保健用食品など、サプリメントを含む)、及び病者用食品である。
かかる機能性食品や病者用食品には、例えば飲料(例:乳飲料、乳酸菌飲料、果汁入り清涼飲料、炭酸飲料、果汁飲料、野菜飲料、野菜・果実飲料、アルコール飲料、スポーツ飲料、粉末飲料、茶飲料など)、冷菓(例:ゼリー、ババロア、プリンなど)、氷菓(例:アイスクリーム、アイスミルク、ラクトアイス、シャーベット)、菓子類(例:クッキー、ビスケット、おかき、飴類、チョコレート類、ガム類)、パン類、スープ類(粉末または固形スープを含む)、麺類(例:中華麺、パスタ、うどん、蕎麦、素麺)、スープ類(粉末または固形スープを含む)、調味料(例:ドレッシング、ジュレ、ソース、マヨネーズ様ソース、たれ)などの通常の飲食品の形態を有するものと、例えば、液剤(ドリンク剤)、シロップ剤、ドライシロップ剤、ゼリー製剤(用時調製用のものを含む。以下同じ)、顆粒剤、散剤、丸剤、錠剤、カプセル剤(硬カプセル剤、軟カプセル剤)、トローチ剤、チュアブル剤等の製剤形態を有するものが含まれる。なお、特定保健用食品(条件付き特定保健用食品)及び病者用食品は、通常の飲食品の形態を有しながらも、例えば、I型アレルギー疾患またはそのアレルギー症状に対する当該食品の機能や効果(抗アレルギー効果、詳細にはI型アレルギーに属する各種のアレルギー症状を抑制または緩和する効果)に関する記載を、その包装容器などに表示することが可能な飲食品である。
制限はされないものの、製剤形態を有するものであり、なかでも好ましくは、液剤(ドリンク剤)、顆粒剤、錠剤、ゼリー製剤、カプセル剤(硬カプセル剤、軟カプセル剤)であり、より好ましくは錠剤、ゼリー製剤、液剤(ドリンク剤)、錠剤である。かかる製剤形態の調製は、各製剤の形態に応じて、(I-3)(b)の経口医薬品組成物の欄で説明するように、薬学的に許容される担体または添加剤を用いて、製剤製造の定法に従って行うことができる。
(b)医薬品、医薬部外品
本発明の抗アレルギー剤を、医薬品または医薬部外品とする場合、β-LGを単独、またはβ-LGとノビレチンの組み合わせ物をそのまま医薬品または医薬部外品としてもよいし、または医薬品の分野で薬学的に許容される担体や添加剤を添加混合して医薬品または医薬部外品としてもよく、斯くして、抗アレルギー作用(I型アレルギーの症状発生を抑制する作用、またはI型アレルギーの症状を緩和する作用)を有する医薬品または医薬部外品を調製することができる。
本発明の医薬品または医薬部外品の剤型は、抗アレルギー作用を発揮する限りにおいて特に制限されないが、投与経路に応じて、液剤(ドリンク剤)、シロップ剤、ドライシロップ剤、ゼリー製剤、顆粒剤、散剤、丸剤、錠剤、カプセル剤(硬カプセル剤、軟カプセル剤)、トローチ剤、チュアブル剤など(以上、経口投与剤);ならびに注射剤(静注剤、皮下注射剤、皮内注射剤、筋肉注射剤)、点滴剤、坐剤、点鼻剤、経肺投与剤など(以上、非経口投与剤)を例示することができる。好ましくは経口投与形態を有する医薬品または医薬部外品である。なお、これらの医薬品または医薬部外品は、薬効成分(β-LGまたはβ-LG及びノビレチン)の放出性を制御した製剤形態を有するものであってもよい(例えば、速放性製剤、徐放性製剤)。好ましくは、液剤(ドリンク剤)、顆粒剤、錠剤、カプセル剤(硬カプセル剤、軟カプセル剤)であり、より好ましくは錠剤である。
このような剤型を有する医薬品または医薬部外品は、製剤形態に応じて、必要であれば、医薬品または医薬部外品分野において許容される担体を用いて、当業界の慣用法に従って調製することができる。なお、これらの担体は、日本薬局方、または「医薬品添加物事典」(薬事日報社発行)等に詳細に説明されているので、これらを参考に選択することができる。また上記成分のほか、本発明の効果が減殺されない範囲であれば、通常の医薬品の添加物として許容される安定剤、分散剤、流動化剤、緩衝剤、潤滑剤、防腐剤、pH調整剤、溶剤、溶解補助剤などを所望に応じて、任意に添加することもできる。
(c)上記飲食品、医薬品及び医薬部外品の適用対象
本発明の抗アレルギー剤は、I型アレルギー、具体的には、アトピー性皮膚炎、気管支喘息、アレルギー性鼻炎、花粉症、じんましん、食物アレルギー、アレルギー性結膜炎、及びアレルギー性胃腸炎からなる群から選択される少なくも1つのアレルギー若しくはアレルギー症状を有するか、過去に当該アレルギー若しくはアレルギー症状を発症した罹患歴があるか、または当該アレルギー若しくはアレルギー症状を発症する可能性のある被験者(患者)に対して摂取(服用)させることができる。
これらの被験者(患者)への摂取量(投与量)は、被験者(患者)の年齢、体重、アレルギー症状の程度、及び製剤形態に応じて、適宜設定することができる。β-LGを有効成分とする抗アレルギー剤については(I-1)に、β-LG及びノビレチンを有効成分とする抗アレルギー剤については(I-2)に、説明した通りである。
以下、実験例を用いて本発明の構成及び効果をより詳細に説明する。但し、本発明はこれらの実験例によって制限されるものではない。なお、ここに記載する動物実験はすべて、愛媛大学の実験動物委員会によって承認されたプロトコルに従って実行した。また、実験に使用したマウスは、愛媛大学の動物実験のガイドラインに従って飼育した。
(1)実験材料
(1-1)RBL-2H3細胞(ラット好塩基球細胞株)
RBL-2H3細胞はアメリカン・タイプ・カルチャー・コレクションから入手し、ペニシリン100 U/mL、ストレプトマイシン100μg/mL、および5%のウシ胎仔血清(FBS)を補充したDMEMの中で、37℃、5%CO2を含む湿空気の条件下で培養した。
(1-2)骨髄細胞由来のマスト細胞(BMMC)の調製
5週齢の雌BALB/cマウスは日本SLCから購入し、特定病原体が存在しない設備内で飼育した。その環境に順応させた後、リーらの方法(Lee, E., et al.,; Immunology and Cell Biology, 83, 468-474, 2005)、またはその改良法により、6〜8週齢のマウスの大腿骨から骨髄細胞を回収した。骨髄細胞をペニシリン100 U/mL、ストレプトマイシン100μg/mL、10%FBS、および10ng/mLの組換えマウスIL-3(ReproTech)で補充したRPMI-1640培地で、37℃、5%CO2を含有する湿空気下の条件下で7週間培養することで、骨髄マスト細胞(BMMC)への分化を誘導した。培地は週に一度交換し、その結果得られたBMMCsを、下記の脱顆粒評価系実験に使用した。
(1-3)牛乳由来β-ラクトグロブリン(β-LG)の調製
β-LG(SIGMA社製)を10mMリン酸緩衝液(pH 7.4)に溶解した。
(2)実験方法
(2-1)脱顆粒評価実験
(a)RBL-2H3細胞を用いた抗原誘導脱顆粒実験
実験は、ワタナベらの方法(Watanabe, J., et al.,;Bioscience, Biotechnology, and Biochemistry, 69, 1-6, 2005)に準じて行った。RBL-2H3細胞は、96穴培養プレートに5.0×104細胞/ウエルの割合で播種し、37℃で一晩培養した。次いで、その細胞に、培地で希釈した抗DNP IgE(50ng/mL)を2時間継続的に感作させた。得られた細胞を、改良Tyrode緩衝液 (20mM HEPES、135mM NaCl、5mM KCl、1.8mM CaCl2、1mM MgCl2、5.6mMグルコースおよび0.05%のBSA、pH 7.4)で洗浄後、改良Tyrode緩衝液で様々濃度に希釈したノビレチンまたはβ-ラクトグロブリン(β-LG)で10分間処理した。次いで、最終濃度が50ng/mLとなるように改良Tyrode緩衝液で希釈したDNP-HSA 10μLを、上記細胞に加え、30分間処理した。その上清を回収した後、細胞を0.1%のTriton X-100を含む改良Tyrode緩衝液130μL中で、氷上で5秒間超音波処理し細胞を溶解した。
上記で回収した上清と上記で得られた細胞溶解物の両方を、新しい96穴(50μL/well)のマイクロプレートの各ウエルに移し、37℃で5分間インキュベートした。その後、0.1Mのクエン酸塩緩衝液(pH 4.5)に溶解した3.3mM 4-ニトロフェニル2-アセトアミド-2-デオキシ-β-D-グルコピラノシド100μLを各ウエルに添加し、さらに37℃で25分間インキュベートした。
酵素反応は、2Mのグリシン緩衝液(pH 10.4)を100μL添加することで停止した。反応液の吸光度を、マイクロプレート・リーダ(SH-8000Lab、コロナ・エレクトリック社)を使用して、波長405nmで測定した。脱顆粒の指標としてβ-ヘキソサミニダーゼ放出率(%)を、下式に従って算出した。
Figure 0006000206
(b)BMMCを用いた抗原誘導脱顆粒実験
BMMCを24穴培養プレートに5.0×105細胞/ウエルの割合で播種し、37℃で一晩培養した。次いで、得られた細胞を、培地で希釈した抗DNP IgE(50ng/mL)で6時間感作した。この細胞を、改良Tyrode緩衝液で洗浄後、同緩衝液で希釈した50μMのノビレチンで60分間処理した。その後、細胞を、改良Tyrode緩衝液で希釈したDNP-HSA(0.625μg/mL)で30分間感作した。インキュベーション後、上清を回収し、残りの細胞を0.1%のTriton X-100を含む改良Tyrode緩衝液500μL中で、氷上で10秒間超音波処理して細胞溶解物を調製した。その後の操作は、上記(a)の記載と同じである。
(c)A23187またはタプシガルギン(thapsigargin)で誘導する脱顆粒実験
RBL-2H3細胞は96穴ウエル培養プレートに播種し、抗DNP IgEによる感作を除いて、上述と同様にノビレチンで処理した。
具体的には、脱顆粒に対するPI3K抑制の影響を評価するために、RBL-2H3細胞を改良Tyrode緩衝液で希釈したウォルトマンニン(wortmannin)で30分間処理した。その後、各ウエルに、最終濃度が3μMまたは1μMになるように改良Tyrode緩衝液で希釈したA23187またはタプシガルギンを10μL添加し、RBL-2H3細胞を30分間37℃で培養した。その後、β-ヘキソサミニダーゼ放出率(%)を前述する方法に従って測定した。
(2-2)細胞の生存率の測定
RBL-2H3細胞に対するノビレチン及びβ-LGの細胞毒性は、WST-8分析キットを用いてメーカーの指示に従って測定した。
具体的には、RBL-2H3細胞を5.0×104細胞/ウエルの割合で96穴培養プレートに播種し、37℃で一晩培養した。抗DNP IgEで感作した後、前述するように、RBL-2H3細胞を種々濃度のノビレチンまたはβ-LGで処理し、DNP-HSAで刺激した。リン酸緩衝生理食塩水(PBS、pH 7.4)で1回洗浄した後、WST-8溶液10μL含有するDMEM100μLを、細胞培養プレートの各ウエルに添加し、37℃で30分間インキュベートした。その後、マイクロプレート・リーダ(Bio-Rad社製)を使用して450nmの吸光度を測定し、細胞の生存率(生細胞率)を算出した。
(2-3)抗原抗体結合アッセイ
50mM 炭酸塩緩衝液(50mM NaHCO3、50mM Na2CO3、pH 9.6)で0.25μg/mLになるように希釈した100μL のDNP-HSAを、96穴のマイクロプレートの各ウエルに添加し、4℃で一晩放置した。このプレートを、0.05%のTween 20を含むPBS(PBS-T)で3回洗浄し、300μL の5%スキムミルク-PBSで4℃で一晩処理してブロッキングした。PBS-Tで3回洗浄後、PBSで希釈した種々濃度のノビレチンまたはβ-LGあるいはDMSO(対照)を50μL添加し、37℃で20分間インキュベートした。それから、PBSで希釈した0.5μg/mL のDNP-IgEを、50μL/ウエルの割合で添加し、37℃で1時間インキュベートした。PBS-Tで3回洗浄した後、各ウエルを、5%スキムミルク-PBSで0.5μg/mLになるように希釈したビオチン化ラット抗マウスIgE(BD Pharmingen)100μLで、37℃で1時間処理した。PBS-Tで3回洗浄した後、各ウエルを、1%のBSAを含むPBSで3,000倍に希釈したHRP-ストレプトアビジンコンジュゲート (バイオソース・インターナショナル)で、37℃で1時間処理した。その後、0.03%のH2O2-0.05Mのクエン酸塩緩衝液(pH 4.0)に溶解した2,2-azino-bis(3-ethylbenzothazoline-6-sulphonic acid)の2アンモニウム塩を、100μL/ウエルの割合で添加し、1.5%のシュウ酸100μLを添加して呈色反応を停止させてから、415nmの吸光度をマイクロプレート・リーダ(Bio-Rad社製)で測定した。
(2-4)細胞内のCa2+濃度([Ca2+]i)の測定
[Ca2+]iは、カルシウム・キット-Fluo 3(同仁研究所)をメーカーの指示に従って使用して測定した。
具体的には、RBL-2H3細胞を白色の96穴培養プレートに播種し、前述するように、抗DNP IgEで感作した。これをPBSで2回洗浄後、IgE感作細胞を100μLのFluo-3 AMとともに1時間処理した。PBSで洗浄後、細胞を50μMノビレチンまたはタンパク質濃度1800μg/mLのβ-LGあるいはDMSO(対照) 120μLで、37℃で10分間処理した。その後、最終濃度が0.625μg/mLあるいは3μMとなるように改良Tyrode緩衝液で希釈した抗原(DNP-HSA)あるいはA23187を10μL添加して、細胞を刺激した。次いで、直ちにマイクロプレート・リーダ(SH-8000Lab、コロナ・エレクトリック社)を使用して、蛍光強度を490nmの励起波長および530nmの蛍光波長でモニターした。
(2-5)イムノブロット分析
RBL-2H3細胞を、100mmの培養皿に2.5×106細胞の割合で接種し、前述するとおりに抗DNP IgEで感作した。細胞は改良Tyrode緩衝液で洗浄し、同緩衝液で希釈した50μM ノビレチン、5μM ウォルトマンニン、タンパク質濃度1800μg/mLのβ-LG(OKです)、あるいはDMSO(対照)で、10分間処理した。次いで、RBL-2H3細胞を、最終濃度0.625μg/mLのDNP-HSAで2分間刺激した。その後、Ishidaらに記載の方法(Ishida, M., et al; Food Chemistry, 136, 322327,2013)に従って、細胞溶解物を調製し、様々な抗体を用いてイムノブロット分析を行った。
(2-6)マウスを用いたIgEによる受動皮膚アナフィラキシー(PCA)応答試験
このアッセイは定法(ローレントらの方法)に準じて行なった。
具体的には5週齢の雌BALB/cマウス(日本SLC)を、特定病原体未感染の設備で飼育し、1週間環境に順応させた後、PBSで希釈した抗DNP IgE抗体(100ng)及びPBS(100ng)を、50μL容量の気密性注射器(ハミルトン)を使用して、それぞれ左耳介及び右耳介に皮内注射をした。24時間後、0.5%エバンブルーを含むPBS 200μLで希釈した抗原(DNP-HSA) 200μgを、0.5mL 容量の気密性注射器(ハミルトン)を使用して、尾静脈注射をした。ノビレチン、ウォルトマンニン及びβ-LGの効果をそれぞれ評価するために、抗DNP IgE抗体の耳介注射から23時間目に、当該マウスに、40μLのミネラルオイルで希釈したノビレチンまたはウォルトマンニンをそれぞれ50mg/kg体重/Dayまたは10mg/kg体重/Dayとなるように、または滅菌水で希釈したβ-LGを30mg/kg体重/Dayとなるように経口投与し、その1時間後に、前述するように抗原(DNP-HSA)含有5%エバンスブルーを尾静脈注射した。投与量は、キムらの方法(Kim, M. -S., et al.,; Trends in Immunology, 29, 493501, 2008)に従って決定した。
DNP-HSAで処理した後、マウスを安楽死させ、耳を切除回収した。次いで、回収した各耳からエバンブルー色素を500μLのホルムアルデヒドを用いて70℃で一晩抽出した。次いで、エバンブルー色素の吸光度を、Ultrospec 3000分光測光器(アマシャム・ファルマシア・バイテク)を使用して、620nmで測定した。
(2-7)タンパク質濃度の測定
タンパク質濃度はローリー法に従って測定した。具体的には、Bio-Rad社のDCプロテインアッセイ試薬を用いて定量した。
(2-8)統計分析
上記の実験で得られたデータは、平均±標準偏差(SD)として示した。コントロールに対する違いが統計的に有意であるか否かを評価するため方法として、TukeyのテストまたはTukey-クレイマー・テストを用いた。*p<0.05、**p<0.01、あるいは***p<0.001は、統計的に有意であると考えられる。
(3)実験結果
(A)ノビレチンを用いた実験
(A-3-1)ラット好塩基性細胞(RBL-2H3細胞)及び骨髄マスト細胞(BMMC)の抗原抗体反応依存性脱顆粒に対するノビレチンの作用
上記(2-1)に記載する方法で、RBL-2H3細胞及びBMMC(骨髄マスト細胞)の脱顆粒に対するノビレチンの作用を評価した。抗DNP IgEで感作したRBL-2H3細胞及びBMMCをそれぞれノビレチン(0〜70μM)で処理し、抗原(DNP-HSA)で刺激することにより脱顆粒を誘導した。脱顆粒のマーカーとして、β-ヘキソサミニダーゼを使用した。結果を図1(A)及び(B)に示す。図1(A)に示すように、RBL-2H3細胞の脱顆粒はノビレチンにより用量依存的に抑制された。30μM 以上のノビレチンで対照(コントロール)に対する有意差が認められた。また図1(B)に示すように、ノビレチン(50μM)はBMMCの脱顆粒を著しく抑制した。抑制されたβ-ヘキソサミニダーゼ放出率は、対照の約55%であり、この割合は、RBL-2H3細胞の脱顆粒に対する抑制率とよく似ていた(図1(A))。これらの結果は、ノビレチンが好塩基球細胞及びBMMCのIgEを介した脱顆粒反応を抑制することを示している。
(A-3-2)ノビレチンの細胞毒性
上記(2-2)に記載する方法で、ノビレチンの細胞毒性をWST-8法により評価した。図1(C)に示すように、細胞生存率は70μMのノビレチンで減少する傾向があったが、70μMよりも低い濃度では観察されなかった。
これらの結果は、抗原(DNP-HSA)での刺激によるRBL-2H3細胞及びBMMCの脱顆粒を、ノビレチンが細胞毒性なく抑制することを示す。
以下の実験は、細胞毒性なく脱顆粒に対して高い阻害作用を有する50μMのノビレチンを使用して行った。
(A-3-3)抗体と抗原との結合に対するノビレチンの影響
上記(2-3)に記載する方法で、ノビレチンが抗原と抗体との結合を阻害するか否かを、ELISAによって調べた。抗原抗体反応は脱顆粒誘導の最初の反応である。
ノビレチンおよび抗DNP IgEを、DNP-HSAでコートしたマイクロプレートのウエルに添加し、呈色反応を行った。ノビレチンが抗原と抗体との結合を阻害すれば、吸光度はノビレチンの存在下で低下する。実験の結果、吸光度の低下は認められず、ノビレチンは抗原抗体反応を阻害しないことが確認された。
(A-3-4)RBL-2H3細胞のFcεRI非依存性脱顆粒に対するノビレチンの影響
[Ca2+]iの増加が脱顆粒の最も一般的な原因である。A23187およびタプシガルギンを用いて、ノビレチンがRBL-2H3細胞のFcεRI非依存性脱顆粒に関係するかどうか調べた。A23187(カルシウムイオノフォア)は、Ca2+を原形質膜を介して細胞質内に運搬し、脱顆粒を引き起こす。タプシガルギンは、細胞質から小胞体にCa2+をくみ出すCa2+依存性ATPアーゼの特異的阻害剤である。この実験では、A23187及びタプシガルギンによって誘導される脱顆粒を抑制することが報告(Marquardt, D. L., et al.;. The Journal of Immunology, 156, 1942-1945, 1996)されているウォルトマンニン(PI3K阻害剤)をポジティブコントロールとして使用した。
結果を図2(A)及び(B)に示す。図2(A)に示すように、ノビレチンは用量依存的にA23187及びタプシガルギンによってそれぞれ誘導されるRBL-2H3細胞の脱顆粒を著しく抑制した。 ウォルトマンニンも報告の通り脱顆粒を抑制した。
これらの結果は、ノビレチンが細胞質へのCa2+流入を抑制することを示す。
(A-3-5) [Ca2+]iに対するノビレチンの影響
抗原によるRBL-2H3細胞に対するFcεRIの刺激は、後に脱顆粒を伴うCa2+流入に通じる。Ca2+反応に対するノビレチンの詳細な影響を調査するために、細胞内のカルシウム濃度[Ca2+]iをFluo-3 AMを使用してモニターした。結果を図3に示す。
図3(A)に示すように、コントロール細胞内の[Ca2+]iはDNP-HSA(抗原)で刺激した後に急速に増加した(図中、「抗原のみ」と表示)。これに対して、ノビレチンで処理した細胞内の[Ca2+]iの増加は、コントロール細胞の増加と比較して、有意に抑制された。
FcεRI非依存性Ca2+反応に対するノビレチンの影響は、A23187を使用して検討した。図3(B)に示すように、A23187で刺激することによって生じる細胞内の[Ca2+]iの増加は、ノビレチンで処理するによって抑制された。しかしながら、A23187誘導脱顆粒の抑制効果(A23187誘導[Ca2+]i増加の抑制効果)は、前述する抗原誘導脱顆粒に対する抑制効果(抗原誘導[Ca2+]i増加の抑制効果)(図3(A)参照)よりも弱かった。これらの結果は、ノビレチンが、FcεRIに依存する経路のみならず、FcεRI非依存性の経路により、細胞内の[Ca2+]iの増加を阻害することを示している。
(A-3-6)FcεRIを介したシグナル経路に対するノビレチンの影響を
ノビレチンはAktのリン酸化を抑制することが報告されている(Kobayashi, S., & Tanabe, S.,: International Journal of Molecular Medicine, 17, 511-515, 2006)。Aktの上流に位置するPI3Kのリン酸化に対するノビレチンの影響を検討するために、上記(2-5)の記載に従ってイムノブロット分析を行った。図4(A)および(B)に示すように、ウォルトマンニンと同様にノビレチンもPI3KとAktの両方のリン酸化を抑制した。
さらに、脱顆粒に関係するシグナル経路上のタンパク質(Lyn、Syk、PLCγ-1、PLCγ-2)のリン酸化に対するノビレチンの影響を調べた。図4(C)に示すように、ノビレチンによってPI3K の下流に位置するPLCγ-1のリン酸化は抑制されたが、Lyn、SykあるいはPLCγ-2のリン酸化は抑えられなかった。
興味深いことには、ノビレチンによるタンパク質のリン酸化の抑制傾向は、ウォルトマンニンと非常によく似ていた。このことから、ノビレチンは、ウォルトマンニンと同様にPI3K阻害剤として作用することが示唆される。
(A-3-7)受動皮膚アナフィラキシー(PCA)モデルマウスに対するノビレチンの影響
ノビレチンのin vivoでの抗アレルギー作用を、上記(2-6)に記載する方法で雌のBALB/cマウスを使用して評価した。IgE媒介PCA応答は、抗DNP-IgE抗体および抗原(DNP-HSA)の連続投与によって誘導した。PCA応答は、50mg/kgのノビレチンまたは10mg/kgのウォルトマンニンの経口投与によって著しく抑制された(図5)。この結果は、ノビレチンの経口投与で抗アレルギー作用が生体内で生じることを示す。
(B)β-ラクトグロブリン(β-LG)を使用した実験
(B-3-1)好塩基細胞(RBL-2H3細胞)の抗原抗体反応依存性脱顆粒に対するβ-LGの作用
上記(2-1)に記載する方法で、RBL-2H3細胞の脱顆粒に対するβ-LGの作用を評価した。抗DNP IgE抗体で感作したRBL-2H3細胞をβ-LGで処理し、抗原(DNP-HSA)により脱顆粒を誘導した。脱顆粒のマーカーとしてβ-ヘキソサミニダーゼを使用した。結果を図6に示す。図6に示すように、RBL-2H3細胞の脱顆粒はβ-LGにより用量依存的に抑制された。対照(コントロール)に対する有意差はタンパク質濃度1800μg/mL 以上のβ-LGで認められた。この結果は、β-LGが好塩基球細胞のIgEを介した脱顆粒反応を抑制することを示している。
(B-3-2)β-LGの細胞毒性
上記(2-2)に記載する方法で、β-LGの細胞毒性をWST-8法により評価した。図6に示すように、細胞生存率はタンパク質濃度3600μg/mLのβ-LGで減少する傾向があったが、それよりも低い濃度では観察されなかった。
上記(B-3-1)及び(B-3-2)の結果は、抗原での刺激による好塩基球細胞の脱顆粒を、β-LGが細胞毒性なく抑制することを示す。以下の実験は、細胞毒性なく脱顆粒に対して高い阻害作用を有するタンパク質濃度1800μg/mLのβ-LGを使用して行った。
(B-3-3)抗体と抗原との結合に対するβ-LGの影響
上記(2-3)に記載する方法で、β-LGが抗原と抗体との結合を阻害するか否かを、ELISAによって調べた。β-LGおよび抗DNP IgE抗体を、抗原(DNP-HSA)でコートしたマイクロプレートのウエルに添加し、呈色反応を行った。β-LGが抗原と抗体との結合を阻害すれば、吸光度はβ-LGの存在下で低下する。実験の結果、吸光度の低下は認められず、β-LGは抗原抗体反応を阻害しないことが確認された。
(B-3-4) 細胞内Ca2+濃度([Ca2+]i)に対するβ-LGの影響
抗原によるRBL-2H3細胞に対するFcεRIの刺激は、後に脱顆粒を伴うCa2+流入に通じる。Ca2+反応に対するβ-LGの詳細な影響を調査するために、細胞内のカルシウム濃度[Ca2+]iをFluo-3 AMを使用してモニターした。結果を図7に示す。
図7に示すように、コントロール細胞内の[Ca2+]iは抗原(DNP-HSA)で刺激した後に急速に増加した(図中、「抗原(+)」と表示)。これに対して、β-LGで処理した細胞内の[Ca2+]iの増加は、コントロール細胞の増加と比較して、有意に抑制された(図中、「抗原(+)+β-LG」と表示)。この結果は、β-LGが、少なくともFcεRIに依存する経路により、細胞内の[Ca2+]iの増加を阻害することを示している。
(B-3-5) FcεRIを介したシグナル経路に対するβ-LGの影響
脱顆粒シグナル伝達に及ぼすβ-LGの影響を検討するために、上記(2-5)の記載に従ってイムノブロット分析を行い、脱顆粒に関係するシグナル経路上のタンパク質(Lyn、Syk、PI3K(p55)、PI3K(p85)、PLCγ1、PLCγ2)のリン酸化に対するβ-LGの影響を調べた。図8に示すように、β-LGによって、Lyn の下流に位置するSyk、PI3K(p55)、PI3K(p85)、PLCγ1、及びPLCγ2のリン酸化が抑制されたが、Lynのリン酸化は抑えられなかった。このことから、β-LGはSykのリン酸化を抑制することがわかる。
(B-3-5)受動皮膚アナフィラキシー(PCA)モデルマウスに対するβ-LGの影響
β-LGのin vivoでの抗アレルギー作用を、上記(2-6)に記載する方法で雌のBALB/cマウスを使用して評価した。IgE媒介PCAは、抗DNP IgE抗体および抗原(DNP-HSA)の連続投与によって誘導した。PCA応答は、30mg/kgのβ-LGの経口投与によって著しく抑制された(図9)。この結果は、β-LGの経口投与により生体内で抗アレルギー作用が生じることを示す。
(C)β-LGとノビレチンを併用した実験
(C-3-1)ラット好塩基球細胞(RBL-2H3細胞)の脱顆粒に及ぼすβ-LGとノビレチンとの共同作用
上記(2-1)に記載する方法で、RBL-2H3細胞の脱顆粒に対するβ-LGとノビレチンとの共同を評価した。抗DNP IgE抗体で感作したRBL-2H3細胞を、β-LG単独(タンパク質濃度:0〜2148.6μg/mL)、ノビレチン単独(0〜50μM)、またはβ-LGとノビレチンの両方で処理し、抗原(DNP-HSA)により脱顆粒を誘導した。β-ヘキソサミニダーゼの放出を脱顆粒のマーカーとして使用した。結果を図10に示す。図10に示すように、RBL-2H3細胞の脱顆粒はβ-LG単独、及びノビレチン単独よりも、両者を併用することでより一層強く抑制されることが判明した。またその抑制効果は、β-LG及びノビレチンのいずれも用量依存的であった。この結果から、β-LGとノビレチンとを併用することで、好塩基球細胞の脱顆粒によるアレルギー症状がより一層抑制できることを示している。
(C-3-2)ラット好塩基球細胞(RBL-2H3細胞)の脱顆粒に及ぼすヨーグルトとノビレチンとの共同作用
ヨーグルト(めざましプルーンヨーグルト、四国乳業株式会社製)を遠心分離に供し乳清を回収した。またノビレチンはDMSOに溶解した。斯くして調製したヨーグルト及びノビレチンを使用して、(2-1)に記載する方法に従い、RBL-2H3細胞の脱顆粒に及ぼすヨーグルト又は/及びノビレチンの作用を確認した。具体的には、抗DNP IgE抗体で感作したRBL-2H3細胞を、図11に記載する濃度のヨーグルト乳清(タンパク質濃度2.64〜10.57μg/mL)又は/及びノビレチン(5μM及び10μM)で10分間処理して、次いで抗原(DNP-HSA)で30分間処理して感作した。脱顆粒のマーカーとしてβ-ヘキソサミニダーゼを使用して、RBL-2H3細胞の脱顆粒に対する抑制効果を評価した。
結果を図11に示す。これからわかるように、ヨーグルト乳清とノビレチンを併用することで、好塩基球細胞(RBL-2H3細胞)の脱顆粒が有意に抑制されることが確認された。この結果は、ヨーグルトとノビレチンを組み合わせることでアレルギー症状を緩和することができることを示している。
(C-3-3)受動皮膚アナフィラキシー(PCA)モデルマウスに対するβ-LGとノビレチンとの共同作用
上記(2-6)に記載する方法に従って、β-LG単独、ノビレチン単独、及びβ-LGとノビレチンの両者を組み合わせて、図12に示す割合でそれぞれ雌のBALB/cマウスに経口投与し、in vivoでの抗アレルギー作用を評価した。結果を図12に示す。PCA応答は、30mg/kg体重のノビレチン単独、及び20mg/kg体重のβ-LG単独の経口投与によっても顕著に抑制されたが、さらに両者を併用することでより一層強く抑制された。この結果は、生体内でのアレルギー反応の抑制に、β-LGとノビレチンの両方を経口投与することがより有効であることを示す。

Claims (8)

  1. 温州みかんの果皮及びポンカンの果皮からなる群から選択される少なくとも1種及びβ−ラクトグロブリンを含有する、製剤形態の抗アレルギー用経口組成物。
  2. 前記アレルギーが、アトピー性皮膚炎、気管支喘息、アレルギー性鼻炎、花粉症、及びアレルギー性結膜炎からなる群から選択される少なくも1種である、請求項1に記載の経口組成物。
  3. 上記経口組成物に含まれる果皮が、果皮破砕物及び果皮のペーストからなる群から選択される少なくとも1種である、請求項1又は2に記載の経口組成物。
  4. 製剤形態の経口組成物を製造するための、温州みかんの果皮及びポンカンの果皮からなる群から選択される少なくとも1種及びβ−ラクトグロブリンの使用。
  5. 経口組成物が抗アレルギー用である、請求項4に記載の使用。
  6. 温州みかんの果皮及びポンカンの果皮からなる群から選択される少なくとも1種、及びβ−ラクトグロブリンを含む経口組成物であって、β−ラクトグロブリン1重量部に対してノビレチンを5.03/2148.6〜20.12/537.1重量部の割合で含有し、かつ前記経口組成物に含まれる果皮が、果皮破砕物及び果皮のペーストからなる群から選択される少なくとも1種である、経口組成物。
  7. 経口組成物が抗アレルギー用である、請求項6に記載の経口組成物。
  8. 前記アレルギーが、アトピー性皮膚炎、気管支喘息、アレルギー性鼻炎、花粉症、及びアレルギー性結膜炎からなる群から選択される少なくも1種である、請求項7に記載の経口組成物。
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