JP6000206B2 - 抗アレルギー用経口組成物 - Google Patents
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(I)経口組成物
(I-1)β−ラクトグロブリン及びノビレチンを含有する経口組成物。
(I-2)上記β−ラクトグロブリンが、単離または精製β−ラクトグロブリンであるか、または/及びノビレチンが単離または精製ノビレチンである、(I-1)に記載する経口組成物。
(I-3)β−ラクトグロブリン1重量部に対してノビレチンを0.0004〜20重量部の割合で含有する、(I-1)または(I-2)に記載する経口組成物。
(I-4)アレルギー症状の発生を抑制するか、またはアレルギー症状を緩和するために用いられる、(I-1)〜(I-3)のいずれかに記載する経口組成物。
(I-5)アレルギーがI型アレルギーである(I-4)に記載する経口組成物。
(I-6)アレルギーまたはアレルギー症状が、アトピー性皮膚炎、気管支喘息、アレルギー性鼻炎、花粉症、じんましん、食物アレルギー、アレルギー性結膜炎、及びアレルギー性胃腸炎からなる群から選択される少なくも1つである、(I-1)〜(I-5)のいずれかに記載する経口組成物。
(I-7)医薬組成物、医薬部外品組成物、または飲食品組成物のいずれかである、(I-1)〜(I-6)のいずれかに記載する経口組成物。
(I-8)β−ラクトグロブリン及びノビレチンに加えて、薬学的に許容される担体を含有し、製剤形態を有するものである、(I-1)〜(I-7)のいずれかに記載する経口組成物。
(I-9)液剤(ドリンク剤)、シロップ剤、散剤、錠剤、顆粒剤、丸剤、カプセル剤(軟カプセル剤又は硬カプセル剤)、トローチ、チュアブル錠、及びドライシロップ剤からなる群から選択される製剤形態を有する、(I-1)〜(I-8)のいずれかに記載する経口組成物。
(I-10)アトピー性皮膚炎、気管支喘息、アレルギー性鼻炎、花粉症、じんましん、食物アレルギー、アレルギー性結膜炎、及びアレルギー性胃腸炎からなる群から選択される少なくも1つのアレルギー若しくはアレルギー症状を有するか、過去に当該アレルギー若しくはアレルギー症状を発症した罹患歴があるか、または当該アレルギー若しくはアレルギー症状を発症する可能性のある被験者に対して投与するか、または摂取させるものである、(I-1)〜(I-9)のいずれかに記載する経口組成物。
(II-1)β−ラクトグロブリン、またはβ−ラクトグロブリン及びノビレチンを含有する抗アレルギー剤。
(II-2)上記β−ラクトグロブリンが単離または精製β−ラクトグロブリンであるか、または/及びノビレチンが単離または精製ノビレチンである、(II-1)に記載する抗アレルギー剤。
(II-3)β−ラクトグロブリン1重量部に対してノビレチンを0.0004〜20重量部の割合で含有する、(II-1)または(II-2)に記載する抗アレルギー剤。
(II-4)I型アレルギーに対する抗アレルギー剤である、(II-1)〜(II-3)のいずれかに記載する抗アレルギー剤。
(II-5)アレルギー症状の発生を抑制するか、またはアレルギー症状を緩和するためのものである、(II-1)〜(II-4)のいずれかに記載する抗アレルギー剤。つまり、本発明の抗アレルギー剤は、アレルギー症状発生抑制剤またはアレルギー症状緩和剤と言い換えることができる。
(II-6)対象とするアレルギーまたはアレルギー症状が、アトピー性皮膚炎、気管支喘息、アレルギー性鼻炎、花粉症、じんましん、食物アレルギー、アレルギー性結膜炎、及びアレルギー性胃腸炎からなる群から選択される少なくも1つである、(II-1)〜(II-5)のいずれかに記載する抗アレルギー剤。
(II-7)医薬品、医薬部外品、または飲食品のいずれかである、(II-1)〜(II-6)のいずれかに記載する抗アレルギー剤。
(II-8)β−ラクトグロブリン、またはβ−ラクトグロブリン及びノビレチンに加えて、薬学的に許容される担体を含有し、製剤形態を有するものである、(II-1)〜(II-7)のいずれかに記載する抗アレルギー剤。
(II-9)液剤(ドリンク剤)、シロップ剤、散剤、錠剤、顆粒剤、丸剤、カプセル剤(軟カプセル剤又は硬カプセル剤)、トローチ、チュアブル錠、及びドライシロップ剤からなる群から選択される製剤形態を有する、(II-8)に記載する抗アレルギー剤。
(II-10)アトピー性皮膚炎、気管支喘息、アレルギー性鼻炎、花粉症、じんましん、食物アレルギー、アレルギー性結膜炎、及びアレルギー性胃腸炎からなる群から選択される少なくも1つのアレルギー若しくはアレルギー症状を有するか、過去に当該アレルギー若しくはアレルギー症状を発症した罹患歴があるか、または当該アレルギー若しくはアレルギー症状を発症する可能性のある被験者に対して投与するか、または摂取させるものである、(II-1)〜(II-9)のいずれかに記載する抗アレルギー剤。
(III-1)アレルギー症状の発生を抑制するか、またはアレルギー症状を緩和するための経口組成物または抗アレルギー剤を製造するための、β−ラクトグロブリンまたはβ−ラクトグロブリン及びノビレチンの使用。
(III-2)アレルギーがI型アレルギーである、(III-1)に記載する使用。
(III-3)対象とするアレルギーまたはアレルギー症状が、アトピー性皮膚炎、気管支喘息、アレルギー性鼻炎、花粉症、じんましん、食物アレルギー、アレルギー性結膜炎、及びアレルギー性胃腸炎からなる群から選択される少なくも1つである、(III-1)または(III-2)に記載する使用。
(III-4)経口組成物または抗アレルギー剤が、医薬品、医薬部外品、または飲食品のいずれかである、(III-1)〜(III-3)のいずれかに記載する使用。
(III-5)経口組成物または抗アレルギー剤が、アトピー性皮膚炎、気管支喘息、アレルギー性鼻炎、花粉症、じんましん、食物アレルギー、アレルギー性結膜炎、及びアレルギー性胃腸炎からなる群から選択される少なくも1つのアレルギー若しくはアレルギー症状を有するか、過去に当該アレルギー若しくはアレルギー症状を発症した罹患歴があるか、または当該アレルギー若しくはアレルギー症状を発症する可能性のある被験者に対して投与するか、または摂取させるものである、(III-1)〜(III-4)のいずれかに記載する使用。
(IV-1)I型アレルギーを発症しているか、I型アレルギーの発症罹患歴があるか、またはI型アレルギーを発症する可能性のある被験者に対して、(I-1)〜(I-10)のいずれかに記載する経口組成物、または(II-1)〜(II-10)のいずれかに記載する抗アレルギー剤を投与または摂取させる工程を有する、上記被験者に対する抗アレルギー方法。
(IV-2)対象とするアレルギーまたはアレルギー症状が、アトピー性皮膚炎、気管支喘息、アレルギー性鼻炎、花粉症、じんましん、食物アレルギー、アレルギー性結膜炎、及びアレルギー性胃腸炎からなる群から選択される少なくも1つである、(IV-1)に記載する抗アレルギー方法。
(IV-3)抗アレルギー方法が、I型アレルギーの症状発症を抑制するか、またはI型アレルギーの症状を緩和する方法。
本発明の経口組成物は、β−ラクトグロブリン及びノビレチンを含有することを特徴とする。
β−ラクトグロブリン(本明細書では、「β-LG」と略称する場合がある。)は、162アミノ酸残基からなり、分子量約18.3kDaの球状タンパク質である。β-LGは主として牛乳に含まれており、牛乳タンパク質の7〜12%、乳清タンパク質の50〜60%を占めている。牛乳以外にも、羊、山羊、豚、鹿、馬、及びイルカの乳にも含まれている。
ノビレチンは、前述するように6つのメトキシ基を有する公知のポリメトキシフラボンである。ノビレチンは、シークワーシャー(Citrusdepressa)、タチバナ(C.tachibana)、コウジ(C.leiocarpa)、ギリミカン(C.tardiva)、ジミカン(C.succosa)、シカイカン、キシュウ(C.kinokuni)、コベニミカン(C.erythrosa)、スンキ(C.sunki)、チチュウカイマンダリン(C.deliciosa)、キング(C.nobilis)、ポンカン(C.retuculata)、ダンシータンジェリン(C.tangerina)、ウンシュウミカン(C.unshiu)、カワチバンカン(C.grandis)、グレープフルーツ(C.x paradisi)、イヨカン(C.iyo)、ナツミカン(C.natsudaidai)、ハッサク(C.hassaku)、キヨミ(C. unshiu x sinensis)、カンペイ、セトカ、ブラッドオレンジ(以上、ミカン区に属する柑橘類)、ハナユ(C.hanayu)、及びコウライタチバナ(C.nippokoreana)(以上、ユズ区に属する柑橘類)などの柑橘類の果実、または果皮に含まれることが知られている。
本発明の経口組成物は、前述するβ-LG及びノビレチンをそれぞれ配合することで調製することができる。
本発明の経口組成物を、飲食品とする場合、上述した経口組成物をそのまま飲食品組成物としてもよいし、また飲食品分野において公知の成分や素材を組み合わせるか、または飲食品の分野で許容される担体や添加剤を添加混合して、抗アレルギー作用(I型アレルギーの症状発生を抑制する作用、またはI型アレルギーの症状を緩和する作用)を有する飲食品組成物を調製することができる。なお、本発明でいう飲食品組成物には、ヒトに対する飲食品、及びペット(イヌ、ネコ、ハムスター、ウサギ、トリなど)に対する飲食品(ペットフード)、及び家畜(牛、豚、家禽類)に対する飲食品(飼料)も含まれる。
本発明の経口組成物を、医薬品または医薬部外品とする場合、上述した経口組成物をそのまま医薬品または医薬部外品としてもよいし、また医薬品または医薬部外品分野において許容される担体や添加剤、または他の医薬成分を添加混合して、抗アレルギー作用を有する医薬品または医薬部外品組成物を調製することができる。
本発明の抗アレルギー剤は、脱顆粒抑制作用に基づいて抗アレルギー作用を発揮する有効成分として、β-LGとノビレチンのうち、β-LGだけを含有するか、β-LGとノビレチンを組み合わせて含有することを特徴とする。以下、β-LGを有効成分として含有する抗アレルギー剤、及びβ-LGとノビレチンを有効成分として含有する抗アレルギー剤について、それぞれ説明する。
当該抗アレルギー剤において、有効成分として用いるβ-LGは、(I-1)に記載の通りであり、当該(I-1)で説明する単離β-LG、精製β-LG、または粗精製β-LGのいずれであってもよい。抗アレルギー剤が、医薬品または医薬部外品である場合、配合するβ-LGが単離β-LGまたは精製β-LGであることが好ましい。一方、抗アレルギー剤が、飲食品である場合、単離β-LG、精製β-LG、または粗精製β-LGのいずれであってもよいが、好ましくは粗精製β-LGである。
当該抗アレルギー剤において、有効成分として用いるβ-LG及びノビレチンは、それぞれ(I-1)及び(I-2)に記載の通りであり、β-LGは(I-1)で説明する単離β-LG、精製β-LG、または粗精製β-LGのいずれであってもよく、またノビレチンも(I-2)で説明する単離ノビレチン、精製ノビレチン、または粗精製ノビレチンのいずれであってもよい。
(II-1)及び(II-2)で説明した本発明の抗アレルギー剤は、後述する実施例で示すように、β-LGを単独、またはβ-LGとノビレチンの両方を含むことで、好塩基性細胞の脱顆粒を抑制する作用を有している。このため、アレルギー反応、特にI型アレルギー反応を抑制し、当該アレルギー症状の発症を抑えるか、またはその症状を緩和することが可能である。なお、I型アレルギーまたはその症状としては、アトピー性皮膚炎、気管支喘息、アレルギー性鼻炎、花粉症、じんましん、食物アレルギー、アレルギー性結膜炎、及びアレルギー性胃腸炎を挙げることができる。
本発明の抗アレルギー剤を、飲食品とする場合、β-LGを単独、またはβ-LGとノビレチンの組み合わせ物をそのまま飲食品としてもよいし、また飲食品分野において公知の成分や素材を組み合わせるか、または飲食品の分野で許容される担体や添加剤を添加混合して飲食品としてもよく、斯くして、抗アレルギー作用(I型アレルギーの症状発生を抑制する作用、またはI型アレルギーの症状を緩和する作用)を有する飲食品を調製することができる。
本発明の抗アレルギー剤を、医薬品または医薬部外品とする場合、β-LGを単独、またはβ-LGとノビレチンの組み合わせ物をそのまま医薬品または医薬部外品としてもよいし、または医薬品の分野で薬学的に許容される担体や添加剤を添加混合して医薬品または医薬部外品としてもよく、斯くして、抗アレルギー作用(I型アレルギーの症状発生を抑制する作用、またはI型アレルギーの症状を緩和する作用)を有する医薬品または医薬部外品を調製することができる。
本発明の抗アレルギー剤は、I型アレルギー、具体的には、アトピー性皮膚炎、気管支喘息、アレルギー性鼻炎、花粉症、じんましん、食物アレルギー、アレルギー性結膜炎、及びアレルギー性胃腸炎からなる群から選択される少なくも1つのアレルギー若しくはアレルギー症状を有するか、過去に当該アレルギー若しくはアレルギー症状を発症した罹患歴があるか、または当該アレルギー若しくはアレルギー症状を発症する可能性のある被験者(患者)に対して摂取(服用)させることができる。
(1-1)RBL-2H3細胞(ラット好塩基球細胞株)
RBL-2H3細胞はアメリカン・タイプ・カルチャー・コレクションから入手し、ペニシリン100 U/mL、ストレプトマイシン100μg/mL、および5%のウシ胎仔血清(FBS)を補充したDMEMの中で、37℃、5%CO2を含む湿空気の条件下で培養した。
5週齢の雌BALB/cマウスは日本SLCから購入し、特定病原体が存在しない設備内で飼育した。その環境に順応させた後、リーらの方法(Lee, E., et al.,; Immunology and Cell Biology, 83, 468-474, 2005)、またはその改良法により、6〜8週齢のマウスの大腿骨から骨髄細胞を回収した。骨髄細胞をペニシリン100 U/mL、ストレプトマイシン100μg/mL、10%FBS、および10ng/mLの組換えマウスIL-3(ReproTech)で補充したRPMI-1640培地で、37℃、5%CO2を含有する湿空気下の条件下で7週間培養することで、骨髄マスト細胞(BMMC)への分化を誘導した。培地は週に一度交換し、その結果得られたBMMCsを、下記の脱顆粒評価系実験に使用した。
β-LG(SIGMA社製)を10mMリン酸緩衝液(pH 7.4)に溶解した。
(2-1)脱顆粒評価実験
(a)RBL-2H3細胞を用いた抗原誘導脱顆粒実験
実験は、ワタナベらの方法(Watanabe, J., et al.,;Bioscience, Biotechnology, and Biochemistry, 69, 1-6, 2005)に準じて行った。RBL-2H3細胞は、96穴培養プレートに5.0×104細胞/ウエルの割合で播種し、37℃で一晩培養した。次いで、その細胞に、培地で希釈した抗DNP IgE(50ng/mL)を2時間継続的に感作させた。得られた細胞を、改良Tyrode緩衝液 (20mM HEPES、135mM NaCl、5mM KCl、1.8mM CaCl2、1mM MgCl2、5.6mMグルコースおよび0.05%のBSA、pH 7.4)で洗浄後、改良Tyrode緩衝液で様々濃度に希釈したノビレチンまたはβ-ラクトグロブリン(β-LG)で10分間処理した。次いで、最終濃度が50ng/mLとなるように改良Tyrode緩衝液で希釈したDNP-HSA 10μLを、上記細胞に加え、30分間処理した。その上清を回収した後、細胞を0.1%のTriton X-100を含む改良Tyrode緩衝液130μL中で、氷上で5秒間超音波処理し細胞を溶解した。
BMMCを24穴培養プレートに5.0×105細胞/ウエルの割合で播種し、37℃で一晩培養した。次いで、得られた細胞を、培地で希釈した抗DNP IgE(50ng/mL)で6時間感作した。この細胞を、改良Tyrode緩衝液で洗浄後、同緩衝液で希釈した50μMのノビレチンで60分間処理した。その後、細胞を、改良Tyrode緩衝液で希釈したDNP-HSA(0.625μg/mL)で30分間感作した。インキュベーション後、上清を回収し、残りの細胞を0.1%のTriton X-100を含む改良Tyrode緩衝液500μL中で、氷上で10秒間超音波処理して細胞溶解物を調製した。その後の操作は、上記(a)の記載と同じである。
RBL-2H3細胞は96穴ウエル培養プレートに播種し、抗DNP IgEによる感作を除いて、上述と同様にノビレチンで処理した。
RBL-2H3細胞に対するノビレチン及びβ-LGの細胞毒性は、WST-8分析キットを用いてメーカーの指示に従って測定した。
50mM 炭酸塩緩衝液(50mM NaHCO3、50mM Na2CO3、pH 9.6)で0.25μg/mLになるように希釈した100μL のDNP-HSAを、96穴のマイクロプレートの各ウエルに添加し、4℃で一晩放置した。このプレートを、0.05%のTween 20を含むPBS(PBS-T)で3回洗浄し、300μL の5%スキムミルク-PBSで4℃で一晩処理してブロッキングした。PBS-Tで3回洗浄後、PBSで希釈した種々濃度のノビレチンまたはβ-LGあるいはDMSO(対照)を50μL添加し、37℃で20分間インキュベートした。それから、PBSで希釈した0.5μg/mL のDNP-IgEを、50μL/ウエルの割合で添加し、37℃で1時間インキュベートした。PBS-Tで3回洗浄した後、各ウエルを、5%スキムミルク-PBSで0.5μg/mLになるように希釈したビオチン化ラット抗マウスIgE(BD Pharmingen)100μLで、37℃で1時間処理した。PBS-Tで3回洗浄した後、各ウエルを、1%のBSAを含むPBSで3,000倍に希釈したHRP-ストレプトアビジンコンジュゲート (バイオソース・インターナショナル)で、37℃で1時間処理した。その後、0.03%のH2O2-0.05Mのクエン酸塩緩衝液(pH 4.0)に溶解した2,2-azino-bis(3-ethylbenzothazoline-6-sulphonic acid)の2アンモニウム塩を、100μL/ウエルの割合で添加し、1.5%のシュウ酸100μLを添加して呈色反応を停止させてから、415nmの吸光度をマイクロプレート・リーダ(Bio-Rad社製)で測定した。
[Ca2+]iは、カルシウム・キット-Fluo 3(同仁研究所)をメーカーの指示に従って使用して測定した。
RBL-2H3細胞を、100mmの培養皿に2.5×106細胞の割合で接種し、前述するとおりに抗DNP IgEで感作した。細胞は改良Tyrode緩衝液で洗浄し、同緩衝液で希釈した50μM ノビレチン、5μM ウォルトマンニン、タンパク質濃度1800μg/mLのβ-LG(OKです)、あるいはDMSO(対照)で、10分間処理した。次いで、RBL-2H3細胞を、最終濃度0.625μg/mLのDNP-HSAで2分間刺激した。その後、Ishidaらに記載の方法(Ishida, M., et al; Food Chemistry, 136, 322327,2013)に従って、細胞溶解物を調製し、様々な抗体を用いてイムノブロット分析を行った。
このアッセイは定法(ローレントらの方法)に準じて行なった。
タンパク質濃度はローリー法に従って測定した。具体的には、Bio-Rad社のDCプロテインアッセイ試薬を用いて定量した。
上記の実験で得られたデータは、平均±標準偏差(SD)として示した。コントロールに対する違いが統計的に有意であるか否かを評価するため方法として、TukeyのテストまたはTukey-クレイマー・テストを用いた。*p<0.05、**p<0.01、あるいは***p<0.001は、統計的に有意であると考えられる。
(A)ノビレチンを用いた実験
(A-3-1)ラット好塩基性細胞(RBL-2H3細胞)及び骨髄マスト細胞(BMMC)の抗原抗体反応依存性脱顆粒に対するノビレチンの作用
上記(2-1)に記載する方法で、RBL-2H3細胞及びBMMC(骨髄マスト細胞)の脱顆粒に対するノビレチンの作用を評価した。抗DNP IgEで感作したRBL-2H3細胞及びBMMCをそれぞれノビレチン(0〜70μM)で処理し、抗原(DNP-HSA)で刺激することにより脱顆粒を誘導した。脱顆粒のマーカーとして、β-ヘキソサミニダーゼを使用した。結果を図1(A)及び(B)に示す。図1(A)に示すように、RBL-2H3細胞の脱顆粒はノビレチンにより用量依存的に抑制された。30μM 以上のノビレチンで対照(コントロール)に対する有意差が認められた。また図1(B)に示すように、ノビレチン(50μM)はBMMCの脱顆粒を著しく抑制した。抑制されたβ-ヘキソサミニダーゼ放出率は、対照の約55%であり、この割合は、RBL-2H3細胞の脱顆粒に対する抑制率とよく似ていた(図1(A))。これらの結果は、ノビレチンが好塩基球細胞及びBMMCのIgEを介した脱顆粒反応を抑制することを示している。
上記(2-2)に記載する方法で、ノビレチンの細胞毒性をWST-8法により評価した。図1(C)に示すように、細胞生存率は70μMのノビレチンで減少する傾向があったが、70μMよりも低い濃度では観察されなかった。
上記(2-3)に記載する方法で、ノビレチンが抗原と抗体との結合を阻害するか否かを、ELISAによって調べた。抗原抗体反応は脱顆粒誘導の最初の反応である。
[Ca2+]iの増加が脱顆粒の最も一般的な原因である。A23187およびタプシガルギンを用いて、ノビレチンがRBL-2H3細胞のFcεRI非依存性脱顆粒に関係するかどうか調べた。A23187(カルシウムイオノフォア)は、Ca2+を原形質膜を介して細胞質内に運搬し、脱顆粒を引き起こす。タプシガルギンは、細胞質から小胞体にCa2+をくみ出すCa2+依存性ATPアーゼの特異的阻害剤である。この実験では、A23187及びタプシガルギンによって誘導される脱顆粒を抑制することが報告(Marquardt, D. L., et al.;. The Journal of Immunology, 156, 1942-1945, 1996)されているウォルトマンニン(PI3K阻害剤)をポジティブコントロールとして使用した。
抗原によるRBL-2H3細胞に対するFcεRIの刺激は、後に脱顆粒を伴うCa2+流入に通じる。Ca2+反応に対するノビレチンの詳細な影響を調査するために、細胞内のカルシウム濃度[Ca2+]iをFluo-3 AMを使用してモニターした。結果を図3に示す。
ノビレチンはAktのリン酸化を抑制することが報告されている(Kobayashi, S., & Tanabe, S.,: International Journal of Molecular Medicine, 17, 511-515, 2006)。Aktの上流に位置するPI3Kのリン酸化に対するノビレチンの影響を検討するために、上記(2-5)の記載に従ってイムノブロット分析を行った。図4(A)および(B)に示すように、ウォルトマンニンと同様にノビレチンもPI3KとAktの両方のリン酸化を抑制した。
ノビレチンのin vivoでの抗アレルギー作用を、上記(2-6)に記載する方法で雌のBALB/cマウスを使用して評価した。IgE媒介PCA応答は、抗DNP-IgE抗体および抗原(DNP-HSA)の連続投与によって誘導した。PCA応答は、50mg/kgのノビレチンまたは10mg/kgのウォルトマンニンの経口投与によって著しく抑制された(図5)。この結果は、ノビレチンの経口投与で抗アレルギー作用が生体内で生じることを示す。
(B-3-1)好塩基細胞(RBL-2H3細胞)の抗原抗体反応依存性脱顆粒に対するβ-LGの作用
上記(2-1)に記載する方法で、RBL-2H3細胞の脱顆粒に対するβ-LGの作用を評価した。抗DNP IgE抗体で感作したRBL-2H3細胞をβ-LGで処理し、抗原(DNP-HSA)により脱顆粒を誘導した。脱顆粒のマーカーとしてβ-ヘキソサミニダーゼを使用した。結果を図6に示す。図6に示すように、RBL-2H3細胞の脱顆粒はβ-LGにより用量依存的に抑制された。対照(コントロール)に対する有意差はタンパク質濃度1800μg/mL 以上のβ-LGで認められた。この結果は、β-LGが好塩基球細胞のIgEを介した脱顆粒反応を抑制することを示している。
上記(2-2)に記載する方法で、β-LGの細胞毒性をWST-8法により評価した。図6に示すように、細胞生存率はタンパク質濃度3600μg/mLのβ-LGで減少する傾向があったが、それよりも低い濃度では観察されなかった。
上記(2-3)に記載する方法で、β-LGが抗原と抗体との結合を阻害するか否かを、ELISAによって調べた。β-LGおよび抗DNP IgE抗体を、抗原(DNP-HSA)でコートしたマイクロプレートのウエルに添加し、呈色反応を行った。β-LGが抗原と抗体との結合を阻害すれば、吸光度はβ-LGの存在下で低下する。実験の結果、吸光度の低下は認められず、β-LGは抗原抗体反応を阻害しないことが確認された。
抗原によるRBL-2H3細胞に対するFcεRIの刺激は、後に脱顆粒を伴うCa2+流入に通じる。Ca2+反応に対するβ-LGの詳細な影響を調査するために、細胞内のカルシウム濃度[Ca2+]iをFluo-3 AMを使用してモニターした。結果を図7に示す。
脱顆粒シグナル伝達に及ぼすβ-LGの影響を検討するために、上記(2-5)の記載に従ってイムノブロット分析を行い、脱顆粒に関係するシグナル経路上のタンパク質(Lyn、Syk、PI3K(p55)、PI3K(p85)、PLCγ1、PLCγ2)のリン酸化に対するβ-LGの影響を調べた。図8に示すように、β-LGによって、Lyn の下流に位置するSyk、PI3K(p55)、PI3K(p85)、PLCγ1、及びPLCγ2のリン酸化が抑制されたが、Lynのリン酸化は抑えられなかった。このことから、β-LGはSykのリン酸化を抑制することがわかる。
β-LGのin vivoでの抗アレルギー作用を、上記(2-6)に記載する方法で雌のBALB/cマウスを使用して評価した。IgE媒介PCAは、抗DNP IgE抗体および抗原(DNP-HSA)の連続投与によって誘導した。PCA応答は、30mg/kgのβ-LGの経口投与によって著しく抑制された(図9)。この結果は、β-LGの経口投与により生体内で抗アレルギー作用が生じることを示す。
(C-3-1)ラット好塩基球細胞(RBL-2H3細胞)の脱顆粒に及ぼすβ-LGとノビレチンとの共同作用
上記(2-1)に記載する方法で、RBL-2H3細胞の脱顆粒に対するβ-LGとノビレチンとの共同を評価した。抗DNP IgE抗体で感作したRBL-2H3細胞を、β-LG単独(タンパク質濃度:0〜2148.6μg/mL)、ノビレチン単独(0〜50μM)、またはβ-LGとノビレチンの両方で処理し、抗原(DNP-HSA)により脱顆粒を誘導した。β-ヘキソサミニダーゼの放出を脱顆粒のマーカーとして使用した。結果を図10に示す。図10に示すように、RBL-2H3細胞の脱顆粒はβ-LG単独、及びノビレチン単独よりも、両者を併用することでより一層強く抑制されることが判明した。またその抑制効果は、β-LG及びノビレチンのいずれも用量依存的であった。この結果から、β-LGとノビレチンとを併用することで、好塩基球細胞の脱顆粒によるアレルギー症状がより一層抑制できることを示している。
ヨーグルト(めざましプルーンヨーグルト、四国乳業株式会社製)を遠心分離に供し乳清を回収した。またノビレチンはDMSOに溶解した。斯くして調製したヨーグルト及びノビレチンを使用して、(2-1)に記載する方法に従い、RBL-2H3細胞の脱顆粒に及ぼすヨーグルト又は/及びノビレチンの作用を確認した。具体的には、抗DNP IgE抗体で感作したRBL-2H3細胞を、図11に記載する濃度のヨーグルト乳清(タンパク質濃度2.64〜10.57μg/mL)又は/及びノビレチン(5μM及び10μM)で10分間処理して、次いで抗原(DNP-HSA)で30分間処理して感作した。脱顆粒のマーカーとしてβ-ヘキソサミニダーゼを使用して、RBL-2H3細胞の脱顆粒に対する抑制効果を評価した。
上記(2-6)に記載する方法に従って、β-LG単独、ノビレチン単独、及びβ-LGとノビレチンの両者を組み合わせて、図12に示す割合でそれぞれ雌のBALB/cマウスに経口投与し、in vivoでの抗アレルギー作用を評価した。結果を図12に示す。PCA応答は、30mg/kg体重のノビレチン単独、及び20mg/kg体重のβ-LG単独の経口投与によっても顕著に抑制されたが、さらに両者を併用することでより一層強く抑制された。この結果は、生体内でのアレルギー反応の抑制に、β-LGとノビレチンの両方を経口投与することがより有効であることを示す。
Claims (8)
- 温州みかんの果皮及びポンカンの果皮からなる群から選択される少なくとも1種及びβ−ラクトグロブリンを含有する、製剤形態の抗アレルギー用経口組成物。
- 前記アレルギーが、アトピー性皮膚炎、気管支喘息、アレルギー性鼻炎、花粉症、及びアレルギー性結膜炎からなる群から選択される少なくも1種である、請求項1に記載の経口組成物。
- 上記経口組成物に含まれる果皮が、果皮破砕物及び果皮のペーストからなる群から選択される少なくとも1種である、請求項1又は2に記載の経口組成物。
- 製剤形態の経口組成物を製造するための、温州みかんの果皮及びポンカンの果皮からなる群から選択される少なくとも1種及びβ−ラクトグロブリンの使用。
- 経口組成物が抗アレルギー用である、請求項4に記載の使用。
- 温州みかんの果皮及びポンカンの果皮からなる群から選択される少なくとも1種、及びβ−ラクトグロブリンを含む経口組成物であって、β−ラクトグロブリン1重量部に対してノビレチンを5.03/2148.6〜20.12/537.1重量部の割合で含有し、かつ前記経口組成物に含まれる果皮が、果皮破砕物及び果皮のペーストからなる群から選択される少なくとも1種である、経口組成物。
- 経口組成物が抗アレルギー用である、請求項6に記載の経口組成物。
- 前記アレルギーが、アトピー性皮膚炎、気管支喘息、アレルギー性鼻炎、花粉症、及びアレルギー性結膜炎からなる群から選択される少なくも1種である、請求項7に記載の経口組成物。
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