現在、内燃機関を使用する自動車用や産業用の内燃機関(エンジン)に対する排気ガス規制は年々厳しくなっている。これに加えて近年は世界的な地球温暖化対策の一つとして、厳しい燃費規制の導入も検討されている。各自動車メーカはこれらの規制に対応すべく、排ガス性能や燃費等のエンジン性能を改善するための様々なデバイスに関する研究及び開発を進めてきている。
内燃機関には、使用する燃料の違いにより、大まかにいうとガソリンエンジンとディーゼルエンジンに分かれる。ガソリンエンジンはディーゼルエンジンに対し、熱効率が低く燃費が悪いので、これを改善するために熱効率向上の研究及び開発がなされ、吸気排気バルブ機構や各補助装置の可変化によるエンジンフリクションの低減等の様々なデバイスの開発が急速に進んできている。
一方、ディーゼルエンジンでは、近年、高圧噴射や高過給などのデバイスの研究及び開発が急速に進んできたが、燃費改善の面ではガソリンエンジンに比べ研究が遅れている。更に、ガソリンエンジンとの燃費差は縮まる一方であり、また厳しい排ガス規制に加えて燃費規制も導入されることからも、ディーゼルエンジンの燃費を改善する研究及び開発が重要となっている。
ディーゼルエンジンの燃費を改善する方法として、大きく二種類の方法がある。一つはエンジン筒内の燃焼を改善して熱効率を向上することで燃費を低減する方法である。この方法は、ディーゼルエンジンの熱効率はガソリンエンジンに比べて既に非常に高いレベルにあるため、仮に熱効率が向上できたとしても燃費での改善量は多くを望めない領域にあり、更に熱効率を高めることは非常に困難な状況にある。
もう一つの方法は、ガソリンエンジンで既に積極的に行われておりエンジン本体及びエンジン補機のフリクションを低減する方法であり、ディーゼルエンジンでもこの方法に関する同様なデバイスの開発が進んでいる。このフリクションには様々なものがあるが、中でも半分近くを占めているのがエンジンのポンピング損失である。
このエンジンのポンピング損失について説明すると。エンジンの図示仕事は一般的に、エンジン筒内の圧力を、エンジン筒内容積(cm3:横軸)とエンジン筒内圧力(MPa:縦軸)とする「P−V線図」で示される。エンジンのポンピング損失は、この「P−V線図」の下側にある領域のことであり、この領域の面積が損失仕事量となる。つまり、エンジン燃焼後にピストンが上昇して排気バルブが開き、筒内の排気ガスを押し出す排気行程と、ピストンが下降し吸気バルブを開いて筒内に新しい空気を導入する吸気行程中に、エンジンが発生するフリクションがポンピング損失(ポンピングロス)である。
このポンピング損失はガソリンエンジンでもディーゼルエンジンでも同様に発生するが、ガソリンエンジンの場合には、ディーゼルエンジンとは異なり燃料と空気量の混合比を一定にさせる必要がある。このため、ガソリンエンジンでは吸気ラインに吸気スロットルバルブを設ける必要性があり、この影響でディーゼルエンジンに比べてポンピング損失が大きくなっている。しかし、近年のガソリンエンジンには吸気バルブの作動量を変化させることで燃料と空気量の混合比を調整させ、この吸気スロットルを取り外す傾向が見られる。これにより近年ではガソリンエンジンとディーゼルエンジンのポンピング損失は近づいている。
更に、ガソリンエンジンの一部の車両には、ポンピング損失の低減により燃費を改善する減筒運転システムが既に採用されている。この減筒運転システムでは、エンジンの運転状態によって一部の吸気排気バルブを停止させて運転する気筒数を減少させて、気筒全体としてのポンピング損失を低減させることにより燃費の改善を図る。この減筒運転システムでは、吸気排気バルブを停止させることで、上記の「P−V線図」上で線は略一本線となり、ポンピング損失の面積は略ゼロとなる。そのため、エンジンの燃費を大きく改善することが可能となる。
この吸気排気バルブの停止方法には、電磁バルブを使用する例や、ロッカーアームを二分割し連結しているピンを油圧などでスライドさせバルブロストモーションをさせる構造などなど、既に様々な提案が考案され、ガソリンエンジンの一部では既に量産採用されている。
しかしながら、ディーゼルエンジンで、これらの量産採用例は見られない。理由は過給量の落ち込みである。ディーゼルエンジンはガソリンエンジンと異なり、エンジンに投入した燃料が必要とする理論空気量に対し、大幅な空気過剰率を確保しないとエンジンの燃焼は悪化する。このため、今日のディーゼルエンジンでは排気ガスの排気エネルギーを利用して作動するターボ式過給器で空気を圧縮して過給するターボ過給を行うのが一般となっている。そのため、ディーゼルエンジンに減筒運転システムを採用した場合には、ポンピング損失は大幅に低減するが、逆に、排気ガスの流量の大幅な減少によりターボ式過給器の作動点がずれ、このターボ式過給器の作動領域が大幅に変わってしまい、その結果ターボ式過給器が十分な仕事をすることができずにエンジンの過給量が落ち込んでしまう。その結果、エンジンの燃焼が悪化し、燃費が悪化するので、総合的な燃費性能を悪化してしまう場合も生じることになる。
過給量の大幅な落ち込みについてより詳細に説明すると、この減筒運転システムにおける停止気筒はエンジン減筒時の振動増加の影響から、通常4気筒の場合は2気筒を休止、6気筒の場合は3気筒を休止するのが一般的である。例えば、ターボ式過給器が十分に作動していない軽負荷で半分の気筒を停止すると、エンジンの排ガス流量も約半分となり、ターボマップ上大きく左へシフトする。これをガス流量(横軸)とターボ入口出口の圧力比(縦軸)で示されたターボコンプレッサーマップ上で考えると、一番下で且つ左端の位置でターボ式過給器として作動しない領域に突入する。従って、この状態から少し燃料を増加し、エンジン負荷を上げても、ターボ式過給器による十分な過給が得られないのでエンジンの燃費改善を図ることができない。
これに関連して、ターボ過給エンジンで減筒運転を実施してもターボチャージャに支障をきたすことなく排気再循環を継続し得るように、低圧EGRループと高圧EGRループとを備えて、減筒運転時に、排気ガスの全量がターボチャージャを通過するように低圧EGRループを選択して排気ガスを再循環し、減筒運転を行わない通常運転時には高圧EGRループ又は高圧EGRループと低圧EGRループを選択して排気ガスを再循環するターボ過給エンジンの排気再循環方法及び装置が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
しかしながら、この方法及び装置では、減筒運転時に高圧EGRを用いるより低圧EGRを使用して過給量を高く保持することで、EGRによるターボ過給の過給量低下は防止できるが、ベース全気筒で作動している通常時の過給量には及ばず、また、EGRを使用しない状態でも減筒運転状態で過給量が低下するので、ターボ作動点が低下しエンジン燃費を悪化するため、減筒運転によるターボ過給の過給量低下は防止できないという問題がある。更に、低圧EGRでは排気ガスをターボチャージャやインタークーラーを通すため、それら通路部品において酸化など腐食の問題が発生するため、システムとして成立させることが非常に難しいという問題がある。
また、減筒システムの採用により稼動する気筒の過給量不足を改善するため、ベースのターボチャージャに対して小型のターボチャージャを採用して、ターボチャージャを複数取り付けるエンジンが提案されている(例えば、特許文献2参照)。
しかしながら、このエンジンには、減筒運転以外の例えば、全負荷運転領域におけるエンジン性能、特に燃費が悪化するという問題がある。つまり、大型ディーゼルエンジンが小型ディーゼルエンジンより一般に燃費が良いのはターボ効率の差による影響が大きいためであり、このターボ効率は、一般的に、大型のターボチャージャの方が小型のターボチャージャより非常に高く、更にその領域も大きい。従って、このエンジンでは、減筒運転時において発生する過給量不足を改善できるが、その一方で、全負荷の全気筒運転時ではベースとするエンジン性能に対し、小型ターボを取り付けたことによりエンジン性能、特に燃費を悪化させてしまうことになる。
図7に一段過給方式のノーマルエンジンのシステムをイメージした「エンジン回転数とエンジン出力」のグラフと「コンプレッサーマップ(空気流量と圧力比)」のグラフを示す。また、図8に特許文献2の減筒運転を行うエンジンと2台の小型ターボチャージャのシステムをイメージした「エンジン回転数とエンジン出力」のグラフと「コンプレッサーマップ(空気流量と圧力比)」のグラフを示す。
この特許文献2のシステムの場合には、減筒用小型ターボチャージャを使用した場合には、例えばA点で示すような負荷の低い領域では確かにコンプレッサー効率(数字60や70等で表示した等高楕円で示す)も有る程度上昇し過給効率を改善できる。しかしながら、減筒運転領域を超えたB点で示すような負荷が高い領域では効率が図7のノーマルエンジンよりも逆に低下してしまう。
無論、ターボチャージャは仕様の選定やマッチングで使用する領域も変えることができるが、上記したように、小型のターボチャージャを採用することのメリットである効率の良い領域は狭く、また、小型のターボチャージャの効率は大型のターボチャージャよりも低いので、負荷が高い領域では効率を高くすることはできない。そのため、商用車(CV車)等において使用頻度の多い高負荷の領域で燃費が悪くなるので採用が難しい。
上記の問題を解決するために、「減筒+小型複数ターボ+低圧段大型ターボ」のシステムが考えられる。しかしながら、このシステムを成立させるためには、減筒運転時に運転する一方の小型ターボチャージャが、減筒運転時に停止する他方の小型ターボチャージャへ、過給空気を循環して加圧することができないという、エンジンの性能向上を得る上で阻害要因となる問題を解決することが重要な課題となる。
この課題を改善するものとして、複数の排気通路にそれぞれ高圧段ターボチャージャを配置し、これらの高圧段ターボチャージャから流出する排気を低圧段ターボチャージャに導入するようにした二段過給システムを備えると共に、両方の高圧段ターボチャージャから吸気通路が合流する部分に三方弁を取り付けた内燃機関が提案されている(例えば、特許文献3参照)。
しかしながら、この内燃機関には、三方弁の構造上の問題と取り付け位置によるターボ耐久性の悪化という二つの問題がある。
三方弁の構造上の問題に関しては、上記の内燃機関で使用する三方弁については詳細な記載がなく、特許文献3の図1から負圧により自動で開閉する仕組みと推測されるが、この三方弁のエンジン入口側(インタークーラー)には高圧段ターボチャージャのそれぞれの面積の合計面積より大きい開口面積が必要であり、これより小さいと、エンジン全負荷運転時に圧力損失が発生してエンジンの性能が悪化を招くという問題が生じる。この大きな開口面積を確保しようとすると、三方弁が大きくなるため、システムが非常に大きくなり、車載スペースの確保が困難となり実用的ではなくなるという問題がある。
特許文献3の図1では三方弁のバルブが半分開いているが、このバルブ部の開口面積は非常に狭い。この三方弁では減筒運転からベースの全気筒運転への復帰時、又は、それぞれのエンジン燃焼やターボ性能のバラツキ時に発生する圧力差により三方弁のバルブが片方へ閉じる作用が働くので、結果として圧力の小さいグループのエンジン気筒の排気圧力の上昇によりエンジンポンピング損失が悪化するので、排ガス性能や燃費性能等のエンジン性能を悪化する。そのため、結果としてシステムとしての性能を向上できない。
また、取り付け位置によるターボ耐久性の悪化の問題に関しては、三方弁の取り付け場所が高圧段ターボ出口であることに問題がある。つまり、例えば、エンジンが全負荷で運転中に高圧段ターボチャージャがそれぞれ最高回転近くで運転している最中に、急に減筒運転領域に突入した場合に、一方の気筒群に対しては燃料を停止し、吸気排気バルブも同時に停止し、他方の気筒群が減筒運転側するが、この減筒運転側の高圧段ターボチャージャが得る排気エネルギーが減少するため、圧縮空気の圧力が減少しこれにより三方弁が急激に閉じることになる。
しかし、このときはまだ高圧段ターボチャージャは高速で回転しているため、過給を行っているが流量は出ない状態が発生する。この状態を図9に示すコンプレッサーマップ上にプロットすると、圧力比は非常に高く、流量がゼロに近い状態である。つまり、図9のC点からD点に移行する場合に、減筒運転時に休止する気筒用のターボチャージャのコンプレッサマップに示すように、休止気筒用の高圧段ターボチャージャは圧力差により急に出口を塞がれるので空気流量はゼロになる。しかしながら、この高圧段ターボチャージャはまだ回転しているので、閉じた瞬間に必ずサージラインに突入する状態になる。そのため、特別な工夫をしない限り、ターボチャージャは破損することになる。
従って、上記の三方弁を備えた「減筒+小型複数ターボ+低圧段大型ターボ」のシステムも燃費改善効果を得るための問題点を根本的にあるいは本質的に改善したものとは言えず、量産は難しい。
つまり、上記したように、内燃機関のディーゼルエンジンに一つ又は複数のターボ式過給器を有する過給システムと、バルブ休止機構を持った減筒運転システムを組み合わせた場合、過給量の低下により、エンジン性能のエンジン排ガスを悪化させ、更に狙いであるエンジン燃費改善の効果も充分に得られないという問題が発生する。具体的には燃費改善が得られる領域が非常に少ない、軽負荷運転状態のみとなる。一方、ガソリンエンジンでは既に量産化が図られており、減筒運転システム導入によるエンジンポンピングの低下により得られるその燃費改善の効果は明らかであるが、空気過剰率が重要なディーゼルエンジンにおいては上記の問題の影響が大きい。
以下、本発明に係る実施の形態のディーゼルエンジンとその運転方法について、図面を参照しながら説明する。ここでは、内燃機関が車両搭載のディーゼルエンジンである場合について説明しているが、本発明は、車両搭載のディーゼルエンジンのみならず、産業用や発電用のディーゼルエンジン全般において適用できる。
図1及び図2に示す本発明に係る実施の形態のディーゼルエンジン(以下エンジンという)1は、減筒用バルブ休止機構21により作動を継続(又は休止)する第1気筒群と、減筒用バルブ休止機構21により作動を休止(又は継続)する第2気筒群とを区分して構成される。そして、エンジン本体11では、吸気マニホールドは第1気筒群のための第1吸気マニホールド11Aaと第2気筒群のための第2吸気マニホールド11Baで形成され、排気マニホールドも第1気筒群のための第1排気マニホールド11Abと第2気筒群のための第2排気マニホールド11Bbで形成される。
また、吸気通路12aをエアクリーナー15と低圧段過給器26の低圧段コンプレッサー26aの下流で、第1気筒群への第1吸気通路12Aaと第2気筒群への第2吸気通路12Baに分岐すると共に、排気通路13を第1気筒群からの第1排気通路13Aと第2気筒群からの第2排気通路13Bに分岐し、低圧段過給器26の低圧段タービン26bの上流で排気通路13に合流させる。
この構成により、第1吸気通路12Aaと第2吸気通路12Baとの分岐部位の上流側となる吸気通路12aと、第1排気通路13Aと第2排気通路13Bとの合流部位の下流側となる排気通路13に、第3ターボ式過給器となる低圧段過給器26が配置されることになる。この構成により、エンジン過給性能が向上する。
それと共に、第1吸気通路12Aaと第1排気通路13Aに第1ターボ式過給器16Aを、第2吸気通路12Baと第2排気通路13Bに第2ターボ式過給器16Bをそれぞれ設ける。つまり、第1吸気通路12Aaに第1ターボ式過給器16Aの第1コンプレッサー16Aaを設け、第1排気通路13Aに第1ターボ式過給器16Aの第1タービン16Abを設けると共に、第2吸気通路12Baに第2ターボ式過給器16Bの第2コンプレッサー16Baを設け、第2排気通路13Bに第2ターボ式過給器16Bの第2タービン16Bbを設ける。
この構成により、第1ターボ式過給器16Aと低圧段過給器26により、又は、第2ターボ式過給器16Bと低圧段過給器26により、二段式のターボ式過給システムを形成する。なお、この第1及び第2ターボ式過給器16A、16Bには、タービン16Ab、16Bbに可変翼を持ったVGTターボを採用するのが好ましい。
更に、第1ターボ式過給器16Aの下流側の第1吸気通路12Aaと第2ターボ式過給器16Bの下流側の第2吸気通路12Baを合流させて、合流後の吸気通路12bにインタークーラー17を設け、このインタークーラー17の下流側で吸気通路12bを更に第3吸気通路12Abと第4吸気通路12Bbに分岐して、第1気筒群の第1吸気マニホールド11Aaと、第2気筒群の第2吸気マニホールド11Baにそれぞれ接続する。
また、第1排気通路13Aと第3吸気通路12Abを連結する第1EGR通路14Aと、第2排気通路13Bと第4吸気通路12Bbを連結する第2EGR通路14Bとをそれぞれ設けると共に、第1EGR通路14Aは第1EGRクーラー18Aと第1EGR弁19Aと第1EGR逆止弁20Aを、第2EGR通路14Bは第2EGRクーラー18Bと第2EGR弁19Bと第2EGR逆止弁20Bとをそれぞれ設ける。
また、減筒運転が可能なように、エンジン本体11には、エンジン1の各気筒に、例えば油圧で作動する減筒用バルブ休止機構21を設け、更に、この減筒用バルブ休止機構21を作動させるために、減筒制御用油圧電磁バルブ22を備える。この減筒用バルブ休止機構21により、エンジン1の吸気排気バルブ(図示しない)の開閉弁動作を休止して、エンジン1の幾つかの気筒を任意に休止できるように構成する。つまり、減筒運転システムを備えて構成する。
この減筒運転システムでは、エンジン1の運転状態(エンジン回転数、エンジン負荷(若しくは燃料噴射量、若しくはエンジン出力))に応じて、吸気排気バルブの開閉動作を停止させて、予め選択された幾つかの気筒を休止させる。この減筒気筒は設定するエンジンによってベース気筒(運転気筒)及び停止気筒(減筒気筒)も様々な場合が設定できるが、図5に、6気筒のエンジン全負荷線に対して3気筒停止させた場合のエンジン出力(トルク)線図を参考例として示す。3気筒停止によって残りの運転している気筒に噴射される燃料流量は約2倍となる。
従って、図5の参考例で示すと通常の全負荷線に対し約半分の3気筒減筒出力線のエンジン出力(トルク)カーブとなる。しかし、減筒する気筒数も、また、エンジンに要求する出力も、車両走行状態により、様々な状態が考えられる。そのため、事前にエンジンテストベンチにおいて、エンジン性能及びエンジン振動などを計測し、最適なエンジン制御マップを評価及び完成させて、「基本マップによる減筒作動領域」を決定する必要がある。
この減筒運転により、エンジン1の吸気排気のポンピング損失を低減させると同時に、運転している気筒の燃料噴射量が増加し負荷が増加し、これにより、運転気筒の平均有効圧力(PME)が増加し、熱損失の低下により熱効率が上昇し、結果としてエンジン1の燃費の改善が可能となる。
また、減筒用バルブ休止機構21により作動を休止する第1気筒群又は第2気筒群に接続する第1ターボ式過給器16A又は第2ターボ式過給器16B(図1及び図2では第2ターボ式過給器16B)への空気の供給を停止する分岐通路用吸気弁27を第1吸気通路12Aa又は第2吸気通路12Ba(図1及び図2では第2吸気通路12Ba)に設ける。
この分岐通路用吸気弁27は、減筒用バルブ休止機構21により作動を休止する気筒群が一方に固定されている場合は、この一方の気筒群に接続されるターボ式過給器(図1及び図2では第2ターボ式過給器16b)のある分岐された吸気通路(図1及び図2では第2吸気通路12Ba)のみに設ければよいが、減筒用バルブ休止機構21により作動を休止する気筒群が交互に入れ替わる場合等では、それぞれに分岐通路用吸気弁27を設ける必要がある。
この分岐通路用吸気弁27は、減筒用バルブ休止機構21により気筒群の一部(図1及び図2では第2気筒群)の作動を休止する間、即ち減筒運転の間は閉弁し、その他の場合、即ち、全筒運転の場合には、開弁するように制御される。
そして、エンジン1の運転全般を制御するECU(エンジンコントロールユニット)と呼ばれる制御装置30が設けられている。この制御装置30は、エンジン1の吸気空気Aの流量を計測する吸気量センサ(MAFセンサ)31、エンジン吸気圧力を計測するブースト圧センサ32、エンジン回転数を計測するエンジン回転数センサ33、燃料のフィードバック制御用に実噴射量を計測する機能を備えた燃料噴射ノズル34等の各センサからの計測値のデータを入力し、エンジン1の吸気排気バルブ(図示しない)、第1ターボ式過給器16Aの第1タービン16Aa、第2ターボ式過給器16Bの第2タービン16Ba、低圧段過給器26の低圧段タービン26a、第1EGR弁19A、第2EGR弁19B、燃料噴射弁(図示しない)、減筒用バルブ休止機構21、分岐通路用吸気弁27等を制御するための制御信号を出力している。
つまり、このエンジン1では、多くのセンサ31〜34によって計測されたデータを基に、例えば、横軸にエンジン回転数(rpm)、縦軸に燃料噴射量(mm3/st)とするような、様々な基本エンジンマップを所有し、エンジン運転中におけるこれらの各センサ32〜34の検出値をこの基本エンジンマップ(例えば、図6のブースト圧マップ(具体的な数値は省略)等)と比較して、この基本エンジンマップから得られる各種の制御量を算出し、この制御量に基づいてエンジン1に備えられた各アクチュエータを作動させることで、例えば、EGRやターボVGT、噴射タイミング等を制御して、最適なエンジン状態になるように制御している。
次に、上記の構成のエンジン1における運転方法について説明する。このエンジン1の制御装置30は、通常運転時においては、エンジン回転数とエンジン負荷に応じて、減筒用バルブ休止機構21の作動を操作する減筒制御用油圧電磁バルブ22を制御し、アイドル運転時の場合、減速運転時の場合、及び気筒へ供給する全体燃料の流量がゼロの場合には、減筒用バルブ休止機構21を作動させた減筒運転中であっても、作動を休止している気筒群の休止を停止して全気筒を作動させる制御を行う。
この制御は、図3に示すような制御フローに従った制御で行うことができる。エンジン1の運転が開始されると共に、この図3の制御フローも上位の制御フローから呼ばれてスタートし、ステップS11で、エンジン回転数センサ33で計測されたエンジン回転数の入力と、アクセルセンサ(図示しない)などで検出されるエンジン負荷の入力と、燃料噴射量の算出を行う。なお、この燃料噴射量の算出は実噴射量を計測する機能を備えた燃料噴射ノズル34で計測された燃料噴射量で代用してもよい。次のステップS12では、EGR制御を行うために、EGR基本マップを参照してEGR弁19A、19Bを制御する制御信号を出力する。
そして、ステップS13では、過給に関して、全気筒運転用の高圧段ターボマップ(例えば、図5)を参照して、このエンジン回転数とエンジン出力(又は負荷又は燃料噴射量)のエンジン運転状態に対応する領域を求めて、ステップS14で、この領域が減筒運転領域内にあるか否かを判定する。
このステップS14の判定で、減筒運転領域内に無い(NO)場合には、ステップS30に行き、減筒用バルブ休止機構21を作動させずに全気筒運転を予め設定された所定の時間(ステップS14やステップS16の判定のインターバルに関係する時間)の間行う。つまり、現在の運転状態が全気筒運転の場合はそのまま継続し、現在の運転状態が減筒用バルブ休止機構21を作動させた減筒運転の場合は、休止している気筒群の休止を停止して全気筒を作動させる。
また、ステップS14の判定で、減筒運転領域内にある(YES)場合には、ステップS15に行き、減筒運転用の高圧段ターボマップ(例えば、図5の下側)を参照して、このエンジン回転数とエンジン出力(又は負荷又は燃料噴射量)のエンジン運転状態に対応する領域を求めて、ステップS16で、この領域が減筒運転非作動領域内、つまり、アイドル時非作動領域内や減速時非作動領域内や燃料噴射量がゼロの領域内にあるか否かを判定する。
このステップS16の判定で、減筒運転非作動領域内にある(YES)場合には、ステップS30に行き、全気筒運転を行う。つまり、現在の運転状態が全気筒運転である場合にはそのまま継続し、現在の運転状態が減筒用バルブ休止機構21を作動させた減筒運転中である場合は、その場合であっても休止している気筒群の休止を停止して全気筒を作動させる。
このステップS16の判定で、減筒運転非作動領域内に無い(NO)場合には、ステップS20に行き、減筒運転を予め設定された所定の時間(ステップS14やステップS16の判定のインターバルに関係する時間)の間行う。つまり、現在の運転状態が減筒運転の場合にはそのまま継続し、現在の運転状態が全気筒運転の場合には、減筒用バルブ休止機構21を作動させて一部の気筒群を休止して減筒運転を行う。
そして、ステップS20の減筒運転又はステップS30の全気筒運転が行われて予め設定された所定の時間を経過すると、リターンに行き、上位の制御フローに戻り、また、この上位の制御フローにより再び図3の制御フローが呼ばれて、図3の制御フローをエンジン1の運転停止まで繰り返して実行される。なお、エンジン1の運転停止の信号が入ると、図3の制御フローの途中であっても、上位の制御フローに戻り、上位の制御フローと共に図3の制御フローも終了する。
なお、図5では、アイドル時非作動領域を左下の「0(ゼロ)」近辺に示している。本発明では、近年燃費低減のためにアイドルストップを採用する例も多くみられるが、また、振動も多いため、減筒運転領域としていない。
また、図5の下段の出力「0(ゼロ)」近辺に減速時非作動領域を示している。これにより、減筒運転システムでの懸念事項としてよくある、ブレーキ補助としてのエンジンブレーキ力の低下に関して、本発明ではエンジン1に取り付けた燃料噴射量計測によりエンジン減速状態を把握して、エンジン1が減筒運転状態から全気筒作動状態に切り替わるようにしている。
次に、減筒運転における過給について、つまり、減筒運転時に運転している第1気筒群(又は第2気筒群)側の第1ターボ式過給器16A(又は第2ターボ式過給器16B)の運転制御について、説明する。
図4の制御フローに示すように、減筒運転時の過給制御は、高圧段過給器(高圧段ターボ)の制御では、ステップS21で減筒運転用の高圧段ターボマップを参照して、ステップS22でエンジン回転数とエンジン負荷に対応した高圧段ターボ式過給器の制御値を設定する。次に、ステップS23で吸気量センサ31で計測される吸入空気量の入力を行い、ステップS24でブースト圧センサ32で計測されるブースト圧の入力を行う。
そして、ステップS25で入力されたブースト圧が過給用の基本マップから算出される目標圧力になっているか否かを判定し、目標圧力になっていない(NO)場合は、ステップS28で高圧段ターボ式過給器の制御値を変更して、ステップS23に戻る。ステップS25の判定で入力されたブースト圧が目標圧力になっている(YES)場合は、ステップS26に行く。
そして、ステップS23で入力された吸入空気量が過給用又はエンジン運転用の基本マップから算出される目標空気量になっているか否かをステップS26で判定し、目標空気量になっていない(NO)場合は、ステップS28で高圧段ターボ式過給器の制御値を変更して、ステップS23に戻る。ステップS26の判定で入力された吸入空気量が目標空気量になっている(YES)場合は、ステップS27に行き、高圧段過給制御を行う。
なお、図6にこれらの制御に使用する基本マップの一例(具体的な数値は省略)を示す。横軸にエンジン回転数、縦軸に燃料噴射センサ付き燃料噴射弁34などで計測する燃料噴射量で、中央の値はその時の目標ブースト圧力(kPa)である。エンジン低排ガスと低燃費の目標を達成するために、事前にエンジンテストベンチで各エンジン回転数及び各エンジン出力の状態で最適なキャリブレーションを図っている。制御は無数であり、具体的にはEGRバルブ開度、ターボ可変翼、エンジン噴射タイミング、等の制御がある。なお、これらに加えて減筒運転システムでも基本マップやフィードバック制御を行っている。
これらの過給制御は、可変翼(VGT)を備えたターボ式過給器16A、16Bの制御となるが、エンジン1の運転状態に合わせて可変翼を制御することになる。本発明では、この過給制御も減筒運転システムと共に連動して、最適化される。従って、この可変翼の制御では、通常運転時(全気筒運転時)の作動と減筒運転時の作動に対して、それぞれ基本マップを備えている。
更に、最近のエンジンでは厳しい排気ガス規制に対応するためにEGRを高いEGR率まで使用することが行われており、この高いEGR率により過給量も大幅に低減してしまうため、このEGRマップ制御も複雑に絡んでくる。エンジン低排ガスと低燃費の目標を到達させるために、事前にエンジンテストベンチで各エンジン回転数及び各エンジン出力の状態で最適なキャリブレーションを図っている。制御は無数であり、具体的にはEGRバルブ開度、ターボ可変翼、エンジン噴射タイミング、等の制御がある。なお、これらに加えて減筒運転システムの作動時は過給システムでも基本マップやフィードバック制御を行って、エンジンの最適化を図っている。
このエンジン1では、エンジン1の排気ガス中に含まれるNOxを効率よく低減してエンジン燃費向上を同時に達成させるために、高圧EGRシステムと吸気量センサ31を配置して、吸気量の計測値に対してフィードバック制御を行っている。エンジン1の過渡運転中に計測した吸気量(エンジン空気量)と計測したブースト圧力がそれぞれのエンジン基本目標マップから算出した目標値に対して不足している場合は、ターボ式過給器16A(又は16B)に取り付けられた可変翼を絞り吸気量を確保し、更に、吸気量やブースト圧力が不足する場合は、EGRバルブ開度を小さくして、エンジン性能の悪化を防止する。
そして、このエンジン1においては、二段過給が実施可能に構成されているので、エンジン1の運転状況に応じて、高圧段の第1ターボ式過給器16A(又は第2ターボ式過給器16B)と低圧段の第3ターボ式過給器が選択され、状況に応じて高圧段の第1ターボ式過給器16A(又は第2ターボ式過給器16B)と低圧段の第3ターボ式過給器の両方の制御が行われたり、低圧段の第3ターボ式過給器のみの制御が行われたりする。なお、図1及び図2では、第1ターボ式過給器16A及び第2ターボ式過給器16Bを迂回する通路は図の簡略化のために図示していない。
この運転方法によれば、減筒運転システムにより、エンジン1の吸気・排気バルブを停止して、エンジン1のポンピングフリクションの低減を行い、燃費改善を図ることができる。この減筒運転システムはエンジン負荷に応じてエンジン1の吸気排気バルブを停止させ、幾つかの気筒を休止させるので、これにより、エンジン1の吸気排気ポンピング損失を低減させると同時に、運転している気筒の燃料噴射量が増加して負荷が増加し、運転気筒の平均有効圧力(PME)が増加して熱損失の低下により熱効率が上昇するので、結果としてエンジン1の燃費を改善できる。
なお、より詳細には、エンジン出力を上げ高PME(平均有効圧力)で熱損失が低下し燃費向上するわけではなく、以下の3点により燃費が向上する。第1には、高PMEにより、エンジン出力に対するエンジンフリクションの割合が低下して機械効率が向上することによりエンジン燃費が改善する。第2には、高PMEによりターボ効率が作動点の高い領域に入り向上してエンジン燃費が改善する。第3には、高PMEにより投入燃料が増加するので排気エネルギーも増加し、ターボ仕事量が増加し、その結果として過給圧(ブースト圧)が増加するのでエンジン筒内圧力が増加する。これによってエンジン燃焼効率が向上しエンジン燃費も改善する。これは一般に教科書で記載されている圧縮比を上げて熱効率改善が得られる現象である。つまり、「高PMEで熱損失が低減する」との表現は、上記の最初と最後の事象を並べて表現したもので、実際は上記の過程が入っている。
つまり、減筒してもベースである稼動している気筒のエンジン熱効率をしっかり改善するには、設定するターボ及びシステムの最適化による効果が必要で、単純にある気筒を停止し、残りの気筒の負荷を上げても、その狙いの一部である燃費改善効果を得ることはできない。減筒効果の基本はあくまで停止した気筒のポンピング(PMEP)の低減(ほぼゼロ化)である。
上記の構成のエンジン1によれば、減筒時に運転している気筒の排ガス流量に最適化させたターボ式過給器16A、16B、26を選定して過給することが可能になり、減筒運転システムに最適化させたターボ式過給器16A、16B、26を配設できる。その結果、ターボ式過給器16A、16B、26を効率が非常に良い作動ライン上で作動させてエンジン燃費向上に貢献させることができる。それと共に、運転気筒に多量の過給を行うことができるので運転気筒では高い燃焼効率を達成することができ、最終的にエンジン性能の燃費改善を図ることができる。
つまり、減筒気筒と運転気筒にそれぞれ最適な過給器を選定し、過給システムを最適化させたことで、減筒時の運転気筒の過給量を十分に確保でき、これにより、運転気筒の過給量を増加しエンジン筒内圧力の増加が可能で、更に停止している減筒気筒燃料を運転気筒に噴射し、当該エンジン気筒の負荷が平均有効圧力(PME)が増加することでエンジン1の熱損失の低下、燃焼効率の上昇により、結果としてエンジン1の燃費低減が可能となる。
更に、運転気筒の排気流量にターボを最適化させたことで、取り付けたターボ式過給器16A、16B、26はターボ性能曲線上において非常に効率の良い領域で作動し、それらが相乗効果となってエンジン排ガス及びエンジン燃費の改善効果を有効に得ることができる。また、減筒運転時の減筒気筒は吸気排気バルブの停止より当該気筒のピストン上下運転で発生するポンピングをほぼゼロに低減させることで、エンジンフリクションを大幅に低減し、エンジン燃費の低減効果を得ることができる。従って、減筒時の運転気筒の燃費改善と合わせて高いエンジン燃費改善効果を得ることが可能となる。
言い換えれば、減筒運転により、排気流量が大幅に減少してターボ式過給器16A(又は16B)、26の作動点がずれて、その結果、ターボ式過給器16A(又は16B)、26が十分な仕事ができなくなって、エンジン1の過給量が落ち込んで、エンジン1の燃焼が悪化して燃費が悪化し、総合的な燃費性能が悪化するのを防止できる。つまり、減筒運転時でも、ターボ式過給器16A(又は16B)、26がターボ作動点を良好に維持して十分に仕事するようにして、エンジン1の過給量を維持し、エンジン1の燃焼を良好に維持して燃費の悪化を抑制できる。
その上、減筒用バルブ休止機構21により作動を休止する第1気筒群又は第2気筒群に接続する第1ターボ式過給器16A又は第2ターボ式過給器16B(図1及び図2では、第2ターボ式過給器16B)への空気Aの供給を停止する分岐通路用吸気弁27を設けており、この分岐通路用吸気弁27は開閉弁で構成できるので、第1吸気通路12Aaと第2吸気通路12Baの合流点に設ける三方弁が不要になるため、システム全体をコンパクトにすることができ、また、三方弁を設けたことによるターボ式過給器のサージラインへの突入を防止できる。更に、インタークーラー17が1個になるので、システム性能上、車両に搭載する際のレイアウト上、及び、コスト面上で、更なる改善をすることができる。
なお、減筒運転では、いくつかの気筒が休止することで排ガス流量を低減し、運転気筒の燃料を増加し、運転気筒の負荷を上げることでエンジン排気温度を上昇させることができる。現在、エンジンの排気ガスを浄化する後処理装置を取り付けるのが一般的になっているが、この浄化率は通過させる排気ガス温度に大きく左右される。また、昨近、エンジンの低燃費化に取り組むことでこの排気ガス温度が大幅に低下し、後処理装置の浄化率が著しく低下する問題が発生している。本発明のエンジン1では減筒エンジンの過給量を改善させた内容であるが、任意に設定した気筒は休止させており、過給器の最適な選定によってこのエンジン排気温度上昇、後処理浄化率の向上、エンジン排ガスの低減が可能である。
また、このエンジン1の運転方法では、ターボ式過給器16A、16B、26で過給し、エンジン1の運転状態に応じて減筒用バルブ休止機構21により排気弁及び吸気弁の開閉を休止するディーゼルエンジン1の運転方法において、通常運転時においては、エンジン回転数とエンジン負荷に応じて、減筒用バルブ休止機構21を作動させた時に作動する第1気筒群に対しての過給を行う第1ターボ式過給器16Aと、減筒用バルブ休止機構21を作動させた時に作動を停止する第2気筒群に対しての過給を行う第2ターボ式過給器16Bと、第1ターボ式過給器16Aと第2ターボ式過給器16Bの両方に対して過給を行う第3ターボ式過給器26とを制御し、アイドル運転時の場合、減速運転時の場合、及び気筒へ供給する全体燃料の流量がゼロの場合には、減筒用バルブ休止機構21を作動させたときに作動を停止する第2気筒群の休止を停止して全気筒を作動させる。
なお、上記では、減筒用バルブ休止機構21を作動させた時に第1気筒群を作動させ、第2気筒群を休止させるとして説明したが、逆に、第1気筒群を停止させ、第2気筒群を作動させてもよい。この場合は、分岐通路用吸気弁27を第1吸気通路12Aaに設ける必要がある。
この方法によれば、減筒運転システムにより、エンジン1の吸気排気ポンピング損失を低減させると同時に、運転気筒の熱効率を上昇できるのでエンジン1の燃費を改善できる。更に、通常運転時では、エンジン回転数、エンジン負荷(若しくは燃料量若しくはエンジン出力)に応じて、減筒用バルブ休止機構21を基本マップ(例えば、図5に示すような高圧段ターボマップ)やフィードバック制御により制御するので、エンジン1の運転の最適化を図ることができる。また、アイドル運転時の場合には全気筒を作動させてエンジン1の振動を低減でき、減速運転時の場合及び燃料量がゼロの場合には全気筒を作動させて通常のエンジンブレーキ力を確保でき、減筒運転システムの採用によって問題となるエンジンブレーキ力の低下を防止できる。
また、第1気筒群に対するEGRを第1EGR通路14A経由で、第2気筒群に対するEGRを第2EGR通路14B経由でそれぞれ行うと、減筒運転に対応して、作動している気筒群に対応したEGRクーラー18A(又は18B)によりEGRガスGeを効率的に冷却することができる。
従って、上記のディーゼルエンジン1によれば、本システムによって、ターボ式過給システムに加えて吸気排気バルブを一時的に停止させるバルブ休止機構21を備えた減筒運転システムを、初めてディーゼルエンジンに用いることができ、燃費改善効果を得ることが可能となる。
なお、上記の実施の形態のエンジン1の説明では、それぞれの気筒群のターボ式過給器16A、16Bの後方に低圧段過給器26を一台を取り付けた例で説明しているが、この低圧段過給器26の台数が増加したシステムでも同様の効果がある。
また、上記のエンジン1では、EGRシステムを設けた構成で説明したが、EGRシステムが無い場合でも、減筒運転の過給システムとして成立する。なお、このEGRシステムは大きく二種類あり、上記の説明では、高圧EGR(HP−EGR)システムで説明した。現在、この高圧EGRが一般的であるが、昨今報告がある車両のテールパイプアウトからEGRガスを導入するとか、一段目のターボ式過給器又は複数のターボ式過給器の最下流からEGRガスを導入するなどの、低圧EGR(LP−EGR)システムでも本発明の効果は同様である。むしろ、減筒運転システムを導入する場合、ターボ式過給器の選定にもよるが、エンジン排気圧力が低下する傾向があり、今回説明した高圧EGRでは充分なEGR率を確保できずに、低圧EGRシステムの方が有効なケースもある。