本発明の実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、図中同一又は相当部分には同一符号を付してその説明は繰り返さない。
図1は、この実施の形態に係る内燃機関の制御システムの全体構成を示す図である。図1を参照して、このシステムにおいて制御対象となる内燃機関は、エンジン1である。エンジン1は、走行のための動力源として車両(たとえば、4輪自動車)に搭載される。本実施の形態では、エンジン1がコモンレール式の直列4気筒ディーゼルエンジンであるが、制御対象となるエンジンは、こうしたディーゼルエンジンに限られない。制御対象となるエンジンは、ガソリンエンジンであってもよいし、直列以外の気筒レイアウト(たとえばV型あるいは水平型)のエンジンであってもよい。また、気筒の数も任意に変更できる。
エンジン1は、エンジン本体10と、エアクリーナ20と、インタークーラ25と、吸気絞り弁26と、吸気マニホールド28と、過給機30と、排気マニホールド50と、EGR(Exhaust Gas Recirculation)装置60とを備える。そして、エンジン1は、制御装置200によって制御される。以下、エンジン1において、流路として機能する配管等に関しては、上流側の端を「第1端」、下流側の端を「第2端」と称する。
エンジン本体10は、燃焼エネルギーを運動エネルギーに変換することによって出力軸に動力を出力するように構成される。エンジン本体10の出力軸に出力される動力によって車両の駆動輪が駆動される。エンジン本体10は、燃焼室を有し、燃焼室で燃焼を行なうように構成される。エンジン本体10は、複数の気筒12と、コモンレール14と、複数のインジェクタ16とを含む。各気筒12内には、燃焼室が形成され、さらに、燃焼室で発生した燃焼エネルギーによって駆動されるようにピストン(図示せず)が設けられている。気筒12ごとにインジェクタ16が設けられ、各インジェクタ16はコモンレール14に接続されている。燃料タンク(図示せず)に貯留された燃料は、サプライポンプ(図示せず)により所定圧に加圧されてコモンレール14に供給される。コモンレール14に供給された燃料は、各インジェクタ16から所定のタイミングで燃焼室内に噴射される。
エアクリーナ20は、第1吸気管22の途中に設けられ、第1吸気管22の第1端に設けられる吸気口(図示せず)から吸入される空気に含まれている異物を除去するように構成される。第1吸気管22の第2端は、過給機30のコンプレッサ32の入口に接続され、コンプレッサ32の出口には、第2吸気管24の第1端が接続される。コンプレッサ32は、第1吸気管22を通じて吸入される空気を過給して第2吸気管24に供給する。
第2吸気管24の第2端はインタークーラ25を介して第3吸気管27の第1端に接続されている。インタークーラ25は、第2吸気管24から入力される空気を冷却して第3吸気管27へ出力するように構成される。インタークーラ25は、たとえば空冷式又は水冷式の熱交換器である。第3吸気管27の第2端は吸気マニホールド28に接続されている。第3吸気管27の途中には吸気絞り弁26が設けられており、さらに吸気絞り弁26よりも下流側(吸気マニホールド28側)に位置する接続部C1で、EGR通路62の第2端が第3吸気管27に接続されている。
吸気絞り弁26は、バルブ、モータ、及び開度センサ(スロットルポジションセンサ)を含んで構成される。吸気絞り弁26の開度に応じて吸気マニホールド28へ供給される空気流量(より特定的には、新気量)が変化する。新気は、外部からエアクリーナ20を通じて取り込まれる空気である。吸気絞り弁26の開度は、制御装置200によって制御される。
吸気マニホールド28は、エンジン本体10の各気筒12の吸気ポートに連結されている。一方、排気マニホールド50は、エンジン本体10の各気筒12の排気ポートに連結されている。排気マニホールド50には、第1排気管52の第1端が接続されている。第1排気管52の第2端は、過給機30のタービン36の入口に接続されている。各気筒12の排気ポートから排出される排気ガスは、排気マニホールド50に集められた後、第1排気管52を経由してタービン36に供給される。
タービン36の出口には、第2排気管54の第1端が接続されている。第2排気管54の第2端には、排気浄化装置56の入口が接続されている。排気浄化装置56の例としては、DPF(Diesel Particulate Filter)、NOx触媒、DPNR(Diesel Particlulate-NOx Reduction)が挙げられる。排気浄化装置56の出口には、第3排気管58の第1端が接続されている。排気浄化装置56で浄化された排気ガスは、第3排気管58を通り、図示しないマフラー等を経由して車外に排出される。
過給機30は、エンジン本体10の吸気を過給するように構成される。過給機30は、吸気通路(より特定的には、第1吸気管22と第2吸気管24との間)に設けられたコンプレッサ32と、排気通路(より特定的には、第1排気管52と第2排気管54との間)に設けられたタービン36とを備えるターボチャージャである。この実施の形態では、可変ベーン式ターボチャージャを、過給機30として採用する。
コンプレッサ32のハウジング内にはコンプレッサホイール34が設けられている。タービン36のハウジング内にはタービンホイール38が設けられている。コンプレッサホイール34とタービンホイール38とは、連結軸42により連結されて一体的に回転する。このため、コンプレッサホイール34は、タービンホイール38に供給される排気エネルギーによって回転駆動される。
過給機30は、可変ベーン38aを備える。可変ベーン38aは、開閉動作によってタービン36内の排気ガスの流速を可変とする。可変ベーン38aの開閉動作は、制御装置200によって制御される。可変ベーン38aの駆動方式は任意であるが、この実施の形態では負圧駆動式が採用される。可変ベーン38aは、たとえばVRV(バキュームレギュレーションバルブ)を介してバキュームポンプ(負圧源)と接続される。制御装置200は、VRVを操作することにより可変ベーン38aに対する負圧(可変ベーン38aの駆動力)を調整するとともに、負圧に基づいて可変ベーン38aの開度(以下、「VN開度」とも称する)を制御できる。VN開度に応じて過給圧が変化する。たとえば、制御装置200が可変ベーン38aを閉じ側へ動かすと、コンプレッサ32の駆動力が大きくなり、過給圧が上昇する。また、制御装置200が可変ベーン38aを開き側へ動かすと、コンプレッサ32の駆動力が小さくなり、過給圧が下降する。なお、過給圧を調整する機構は、可変ベーンに限られず任意である。
EGR装置60は、EGR通路62と、EGR通路62に設けられたEGR弁64と、EGRクーラ66と、バイパス通路68とを含む。EGR通路62は、エンジン本体10を経由せずに第3吸気管27と排気マニホールド50とを接続し、排気マニホールド50を流れる排気ガスの一部を第3吸気管27に還流させるように構成される。この実施の形態では、第1吸気管22と第2吸気管24と第3吸気管27と吸気マニホールド28とが吸気通路を構成する。また、排気マニホールド50と第1排気管52と第2排気管54と第3排気管58とが排気通路を構成する。また、EGR通路62とバイパス通路68とが還流路を構成する。EGR装置60は、排気通路を流れる排気ガスの一部を吸気通路に還流させるように構成される。EGRガスは、EGR装置60の作動中に還流する排気ガスである。
EGR弁64は、排気マニホールド50から第3吸気管27へ還流するEGRガス量を調整可能に構成される。EGR弁64は、バルブ(たとえば、バタフライバルブ)と、バルブを駆動するモータ(たとえば、直流モータ)と、バルブ開度を検出するセンサ(たとえば、ホール素子による非接触式バルブ回転角センサ)とを含んで構成される。EGR弁64の開度(EGR開度)は、EGR弁64の全開状態を100%、EGR弁64の全閉状態を0%として、EGR弁64の開度を0~100%で表わしたものである。EGR開度が小さくなるほどEGRガス量は少なくなる。EGR弁64が全閉状態であるときにはEGRガス量が0になる。EGR開度は、制御装置200によって制御される。
EGR通路62の第1端は排気マニホールド50に接続され、EGR通路62の第2端は前述した第3吸気管27の接続部C1に接続されている。また、EGR通路62の途中にはEGR弁64が設けられている。EGR装置60の作動中(すなわち、EGR弁64が全閉状態ではないとき)には、EGRガスがEGR弁64を通過してEGR通路62の第2端(接続部C1)に供給される。第3吸気管27の接続部C1には、吸気絞り弁26によって流量が調整された新気と、EGR弁64によって流量が調整されたEGRガスとが供給される。なお、EGR通路62の第1端は、第1排気管52に接続されてもよい。また、EGR通路62の第2端は、吸気マニホールド28に接続されてもよい。EGR装置60のタイプは、タービン上流の排気通路とコンプレッサ下流の吸気通路とを還流路で連通させるHPL(High Pressure Loop)に限られず、タービン下流の排気通路とコンプレッサ上流の吸気通路とを還流路で連通させるLPL(Low Pressure Loop)であってもよい。
EGR通路62において、EGR弁64よりも上流側(排気マニホールド50側)にはEGRクーラ66が設けられている。EGRクーラ66は、EGRガスを冷却するように構成される。EGRクーラ66は、たとえば水冷式又は空冷式の熱交換器である。バイパス通路68は、EGRクーラ66を経由しない還流路を形成する。バイパス通路68の第1端、第2端はそれぞれ接続部C2、C3でEGR通路62に接続されている。接続部C3は、EGRクーラ66とEGR弁64との間に位置する。EGRガスは、バイパス通路68を通ることで、EGRクーラ66を経由せずにEGR通路62の接続部C3に到達する。接続部C3には、EGRクーラ66によって冷却されたEGRガス(以下、「第1EGRガス」とも称する)と、バイパス通路68を通りEGRクーラ66を経由していないEGRガス(以下、「第2EGRガス」とも称する)とが供給される。第1及び第2EGRガスは接続部C3で合流して混合EGRガスとなって、EGR弁64に供給される。なお、第1及び第2EGRガスが合流する箇所(接続部C3)に、第1EGRガスと第2EGRガスとの混合比率を調整するための弁を設けてもよい。
エンジン1は、エアフローメータ102と、吸気圧センサ106と、回転数センサ108と、水温センサ110と、排気圧センサ118と、アクセルセンサ112と、大気圧センサ114と、外気温センサ116とをさらに備える。
エアフローメータ102は、新気量を検出し、その検出値FIを制御装置200へ出力する。吸気圧センサ106は、過給圧(より特定的には、吸気マニホールド28に供給される吸気ガスの圧力)を検出し、その検出値Pbを制御装置200へ出力する。排気圧センサ118は、エンジン本体10の排気圧力(より特定的には、排気マニホールド50に排出される排気ガスの圧力)を検出し、その検出値P4を制御装置200へ出力する。この実施の形態に係る吸気圧センサ106は、本開示に係る「過給圧センサ」の一例に相当する。
回転数センサ108は、エンジン回転数(より特定的には、エンジン本体10の出力軸の回転速度)を検出し、その検出値NEを制御装置200へ出力する。水温センサ110は、エンジン冷却水温(より特定的には、エンジン本体10の冷却水の温度)を検出し、その検出値TEを制御装置200へ出力する。アクセルセンサ112は、アクセル開度(たとえば、アクセル操作部の操作量)を検出し、その検出値APを制御装置200へ出力する。アクセル開度は、車両のアクセルペダルの踏込量であってもよい。大気圧センサ114は大気圧を検出し、その検出値Paを制御装置200へ出力する。外気温センサ116は外気温を検出し、その検出値Taを制御装置200へ出力する。
制御装置200はコンピュータであってもよい。制御装置200は、CPU(Central Processing Unit)のようなプロセッサ210と、記憶装置220とを含む。記憶装置220は、プロセッサ210によって処理されるデータを一時的に記憶するRAM(Random Access Memory)と、格納された情報を保存可能に構成されるストレージとを含んでもよい。記憶装置220には、たとえば、プロセッサ210によって実行されるプログラム、及びプログラムで使用される情報(たとえば、マップ、数式、及び各種パラメータ)が記憶されている。この実施の形態では、記憶装置220に記憶されているプログラムを制御装置200が実行することで、制御装置200における各種制御が実行される。ただし、制御装置200における各種制御は、ソフトウェアによる実行に限られず、専用のハードウェア(電子回路)で実行することも可能である。
運転者は、アクセル操作部(たとえば、アクセルペダル)を操作してエンジン1を加速させることができる。この実施の形態では、運転者が要求するエンジン1の運転のための燃料噴射量(以下、「要求噴射量」とも称する)を、制御装置200がアクセル開度(AP)に基づいて算出する。そして、制御装置200は、各気筒12のインジェクタ16を制御して、要求噴射量に相当する燃料をエンジン本体10の各燃焼室に噴射する。また、制御装置200は、要求噴射量に基づいて目標過給圧を決定し、過給圧(Pb)が目標過給圧に近づくように過給機30を制御する。
図2は、制御装置200によって実行される過給制御(すなわち、過給機30の制御)を示すフローチャートである。このフローチャートに示される処理は、エンジン1の運転中に所定周期で繰り返し実行される。以下では、フローチャート中の各ステップを、単に「S」と表記する。
図1とともに図2を参照して、制御装置200は、S11においてアクセル開度(AP)を取得する。続けて、制御装置200は、S12において、主にアクセル開度(AP)とエンジン回転数(NE)とに基づいて要求噴射量を算出する。制御装置200は、たとえば、アクセル開度とエンジン回転数との関係を規定するマップを用いて基本噴射量Qmを求め、基本噴射量Qmに加速時補正量Qaを加算することにより、要求噴射量Qr(=Qm+Qa)を求めてもよい。続けて、制御装置200は、S13において、主に要求噴射量に基づいて目標過給圧を決定する。たとえば、要求噴射量が多いほど目標過給圧を高くする。続けて、制御装置200は、S14において過給圧(Pb)を取得し、続くS15において、過給圧(Pb)を目標過給圧に近づけるように過給機30を制御する。
この実施の形態では、エンジン1の運転中に制御装置200がEGR装置60を作動させることによって排気中のNOx量を減少させる。しかし、エンジン1の運転中において、新気量に対してEGRガス量が過剰に多くなると、エンジン本体10における燃焼が不安定になる。一方、新気量に対してEGRガス量が少なすぎると、エンジン運転時の燃焼によるNOxの発生が十分に抑制されなくなる。このため、EGR装置60の作動中においては、エンジン1の運転状態に基づいて適切な目標EGR率(すなわち、NOxの発生を十分抑制できる目標EGR率)が決定され、EGR率が目標EGR率に近づくようにフィードバック制御が行なわれる。
エンジン1におけるEGR率は、所定期間においてエンジン本体10に供給される吸気ガス量中に占めるEGRガス量の割合である。エンジン本体10に供給される吸気ガスは、吸気マニホールド28で各気筒12に分配され各気筒12の燃焼室内に吸入される吸気ガスに相当する。このため、以下では、エンジン本体10に供給される吸気ガスを「筒内吸入ガス」とも称する。筒内吸入ガス量は、各気筒12に吸入される総吸気ガス量に相当する。
図3は、筒内吸入ガスを構成する要素を示す図である。図3を参照して、筒内吸入ガスは、エンジン本体10に供給される新気及びEGRガスから構成される。筒内吸入ガスは、EGR弁64が全閉状態であるときにはインタークーラ25から出力される新気であり、EGR弁64が全閉状態ではないときには新気とEGRガスとの混合ガスである。筒内吸入ガス量は、新気量とEGRガス量との和に相当する。
図4は、制御装置200によって実行されるEGR制御(すなわち、EGR弁64の制御)を示すフローチャートである。このフローチャートに示される処理は、基本的には、エンジン1の運転中に所定周期で繰り返し実行される。図4に示す処理は、図2に示した処理と並行して実行される。ただし、後述する減量フラグがONである期間においては、図4に示す処理は実行されない。
図1とともに図4を参照して、制御装置200は、S21において、エンジン1の運転状態に基づいて目標EGR率を決定する。具体的には、制御装置200は、主に要求噴射量(エンジン負荷)と新気量(FI)とエンジン回転数(NE)とに基づいて目標EGR率を決定する。ただしこれに限られず、制御装置200は、目標EGR率を決定する際に他のパラメータ(たとえば、エンジン冷却水温、大気圧、及び外気温)を考慮してもよい。制御装置200は、エンジン1の運転状態を示す各種パラメータと目標EGR率との関係を示すマップを用いて、目標EGR率を決定してもよい。
続けて、制御装置200は、S22において、現在のEGR率(実EGR率)を推定する。具体的には、制御装置200は、まず、筒内吸入ガス量を推定する。たとえば、制御装置200は、過給圧と筒内吸入ガス量との関係を示すマップを用いて、過給圧(Pb)から筒内吸入ガス量を推定する。続けて、制御装置200は、得られた筒内吸入ガス量の推定値から新気量(FI)を減算することにより、EGRガス量を算出する。そして、制御装置200は、こうして算出されたEGRガス量を上記筒内吸入ガス量の推定値で除算することにより、実EGR率(=EGRガス量/筒内吸入ガス量)を算出する。
続けて、制御装置200は、S23において、現在のEGR開度を取得し、実EGR率を目標EGR率に近づけるための目標EGR開度を決定する。そして、制御装置200は、S24において、EGR弁64の開度を目標EGR開度に近づけるようにEGR弁64を操作する。
制御装置200は、上述した図4に示す処理により、EGR弁64のフィードバック制御を行なう。これにより、実EGR率が、S21で決定される目標EGR率に近づき、EGRによって排気中のNOx量が低減される。
なお、制御装置200は、実EGR率と目標EGR率との偏差であるEGR率偏差を取得し、EGR率偏差に応じてフィードバック制御のゲイン(フィードバックゲイン)を変更してもよい。EGR率偏差が大きいときには、EGR率を目標EGR率に早く近づけるために大きなゲインでフィードバック制御が行なわれてもよい。また、EGR率偏差が小さいときには、オーバーシュートを抑制するために小さなゲインでフィードバック制御が行なわれてもよい。
この実施の形態では、エンジン加速時のスモーク発生及び加速性悪化を抑制するため、エンジン1の加速時に制御装置200がEGR減量を実行する。具体的には、制御装置200は、EGR減量の実行/停止を切り替えるように構成される。EGR減量は、EGRガス量を減らす処理である。EGR減量の実行中は、図4に示した処理に代えて、後述する図6に示す処理によってEGR弁64が制御される。EGR減量の実行中は、図4に示した処理で制御される場合よりも、EGR弁64の開度が小さくなる。この実施の形態では、EGR弁64の開度が所定の開度(たとえば、0%付近の開度)になるまでEGR弁64の開度を小さくする処理を、上記EGR減量とする。制御装置200は、過給圧と目標過給圧との偏差である過給圧偏差を用いて、EGR減量の実行タイミングを決定する。
詳しくは、制御装置200は、過給圧偏差(以下、「pimdlt」と表記する場合がある)と、pimdltの時間微分値(以下、「pimddlt」と表記する場合がある)とを算出する。制御装置200は、pimddltが上昇して所定の第1しきい値(以下、「C1」と表記する)を超えたときに、EGR減量を実行する。また、制御装置200は、EGR減量の実行中にpimdltが下降して所定の第2しきい値(以下、「C2」と表記する)を下回ると、EGR減量を停止する。制御装置200は、実行タイミングになると、EGR減量を開始し、停止タイミングになるまでEGR減量を継続するように構成される。この実施の形態では、pimddltが上昇してC1を超えたタイミングをEGR減量の実行タイミングとする。実行タイミングは、制御装置200がEGR減量を停止から実行に切り替えるタイミングである。また、pimdltが下降してC2を下回ったタイミングをEGR減量の停止タイミングとする。停止タイミングは、制御装置200がEGR減量を実行から停止に切り替えるタイミングである。
吸入空気量が少ない状態(たとえば、アイドリング状態又は低速走行状態)でエンジン1が加速される場合にはpimdlt及びpimddltは高くなる。他方、吸入空気量が多い状態(たとえば、高速走行状態)でエンジン1が加速される場合にはpimdlt及びpimddltの変化は小さい。吸入空気量が多い場合は、燃料噴射量が過多になる可能性は低い。また、pimddltは、エンジン1が加速される場合に上昇するが、エンジン1の加速が緩やかである場合には変化が小さい。エンジン1の加速が緩やかに行なわれる場合には、燃料噴射量の増加も緩やかになるため、燃料噴射量が過多になる可能性は低い。この実施の形態に係る制御装置200は、pimddltが上昇してC1を超えたときに、EGR減量を実行する。このため、吸入空気量が少ない状態でエンジン1が急加速される場合にはEGR減量が実行され、エンジン1の加速が緩やかな場合と吸入空気量が多い状態でエンジン1が加速される場合とにはEGR減量が実行されないようにすることができる。こうした構成によれば、エンジン加速時におけるスモーク発生及び加速性悪化を抑制しながら、不要なEGR減量の実行を抑制してEGR減量の頻度を低くすることができる。そして、EGR減量の頻度を低くすることで、EGRによってNOx排出量を低減しやすくなる。
EGR減量の実行中にエンジン1が加速されて吸入空気量が多くなるとpimdltは小さくなる。この実施の形態に係る制御装置200は、EGR減量の実行中にpimdltが下降してC2を下回ると、EGR減量を停止する。このため、吸入空気量が増加して燃料噴射量が過多になる可能性が低くなったときに直ちにEGR減量を停止することができる。こうした構成では、EGR減量が実行される期間を短くすることができる。そして、EGR減量の実行期間が短くなることで、EGRによってNOx排出量を低減しやすくなる。
この実施の形態では、EGR減量の実行/停止を示す減量フラグが、制御装置200の記憶装置220に記憶されている。初期状態では減量フラグがOFFになっている。そして、前述したEGR減量の実行タイミングになると、制御装置200は減量フラグをOFF(停止)からON(実行)に切り替える。減量フラグがONである間は、制御装置200が継続してEGR減量を実行する。そして、前述したEGR減量の停止タイミングになると、制御装置200は減量フラグをON(実行)からOFF(停止)に切り替える。減量フラグがOFFになると、制御装置200がEGR減量を停止する。
図5は、制御装置200がEGR減量を停止から実行に切り替える処理を示すフローチャートである。このフローチャートに示される処理は、基本的には、エンジン1の運転中に所定周期で繰り返し実行される。図5に示す処理は、図2に示した処理と並行して実行される。ただし、減量フラグがONである期間においては、図5に示す処理は実行されない。
図1とともに図5を参照して、制御装置200は、S31においてpimdltを算出する。制御装置200は、図2に示した処理(S13及びS14参照)において取得される過給圧(Pb)及び目標過給圧を用いて、pimdltを算出してもよい。pimdltは、式「pimdlt=目標過給圧-実過給圧」に従って算出されてもよい。実過給圧は、吸気圧センサ106によって検出される過給圧(Pb)に相当する。
続けて、制御装置200は、S32においてpimddltを算出する。制御装置200は、pimdltを時間微分することにより、pimddlt(pimdltの時間変化量)を取得できる。そして、制御装置200は、S33においてpimddltがC1よりも大きいか否かを判断する。S33においてNOと判断された場合には、処理は最初のステップ(S31)に戻る。
他方、S33においてYESと判断された場合には、制御装置200がS34において減量フラグをONにした後、図5に示す一連の処理は終了する。S33においてYESと判断されることは、pimddltが上昇してC1を超えたことを意味する。なお、減量フラグがONになると、制御装置200は、図4に示した処理を実行しなくなる。
図6は、制御装置200によって実行されるEGR減量に係る処理を示すフローチャートである。このフローチャートに示される処理は、減量フラグがONである状態でのエンジン1の運転中に所定周期で繰り返し実行される。図6に示す処理は、図2に示した処理と並行して実行される。
図1とともに図6を参照して、制御装置200は、S41においてEGR減量を実行する。制御装置200はEGR弁64を閉じ側に動かす。この実施の形態では、制御装置200がEGR弁64の開度を所定の開度(たとえば、5%程度)にする。続けて、制御装置200は、S42においてpimdltを算出する。pimdltの算出方法は、たとえば図5のS31と同じである。そして、制御装置200は、S43においてpimdltがC2よりも小さいか否かを判断する。S43においてNOと判断された場合には、処理は最初のステップ(S41)に戻る。
他方、S43においてYESと判断された場合には、制御装置200がS44において減量フラグをOFFにした後、図6に示す一連の処理は終了する。S43においてYESと判断されることは、pimdltが下降してC2を下回ったことを意味する。減量フラグがOFFになることで、図4及び図5の各々に示した処理が開始される。この際、制御装置200は、pimddltがC1よりも小さくなっていることを確認してから、図5に示す処理を開始してもよい。
以下、図7~図9を用いて、この実施の形態に係るエンジン1の第1動作例を、第1比較例と対比して説明する。第1比較例は、EGR減量が実行されない例である。
図7は、エンジン1の第1動作例と第1比較例との各々について、アクセル開度の推移(上のグラフ)、目標過給圧の推移(真ん中のグラフ)、及び実過給圧の推移(下のグラフ)を示す図である。以下では、タイムチャート中の各タイミングを、単に「t」と表記する。
図7を参照して、実施例(第1動作例)及び第1比較例のいずれにおいても、運転者が車両を急加速させるためにアクセルペダルを強く踏み込むと、アクセル開度が急上昇し、それに伴い、目標過給圧も急上昇する。過給制御(実施例では、図2に示す処理)によって実過給圧も上昇するが、実過給圧が目標過給圧に到達するまでには、ある程度の時間を要する。このため、アクセル操作の直後は、目標過給圧と実過給圧とが大きく乖離する。
実施例では、t1で急加速の要求(アクセルペダルの強い踏込み)が行なわれる。実施例では、t1直後からt2までの期間においてEGR減量が実行されるため、第1比較例よりも実過給圧の上昇が速くなる。EGR減量の実行中は、過給機30(ターボチャージャ)のタービン36が回りやすくなるため、過給機30の過給性能が向上する。これにより、エンジン1が加速しやすくなる。その後、t3で、車両(及び、エンジン1)の加速が完了する。
図8は、エンジン1の第1動作例と第1比較例との各々について、pimddltの推移(上のグラフ)、pimdltの推移(真ん中のグラフ)、及びEGR開度の推移(下のグラフ)を示す図である。図8中のt1~t3は、それぞれ図7中のt1~t3と同じタイミングを示している。
図8を参照して、実施例(第1動作例)では、前述のようにt1直後に目標過給圧と実過給圧とが大きく乖離するため、pimddltが上昇してC1を超える。これにより、EGR減量が実行される。EGR減量の実行中は、EGR弁64の開度が0%付近の開度(たとえば、5%程度)に維持される。そして、エンジン1が加速されて吸入空気量が多くなると(図7に示す実過給圧のグラフ参照)、pimdltが下降してC2を下回る。これにより、EGR減量が停止され、通常のEGR制御(たとえば、図4に示したEGR制御)が開始される。
なお、図7~図9中に実線グラフで示される第1動作例では、急加速の要求(アクセルペダルの強い踏込み)に応じてエンジン1が急加速される。このため、pimddltが上昇してC1を超えて、EGR減量が実行されている。これに対し、アクセルペダルの踏込みが緩やかであり、エンジン1の加速が緩やかに行なわれる場合には、図8中に破線グラフL1で示すように、pimddltの変化は小さくなり、pimddltはC1を超えず、EGR減量は実行されない。一方、pimdltは、図8中に破線グラフL2で示すように、エンジン1の加速が緩やかに行なわれる場合にも、C2を超える程度には上昇する。
図9は、エンジン1の第1動作例と第1比較例との各々について、NOx排出量(瞬時値)の推移(上のグラフ)、NOx排出量(積算値)の推移(真ん中のグラフ)、及び車速の推移(下のグラフ)を示す図である。図9中のt1~t3は、それぞれ図7中のt1~t3と同じタイミングを示している。
図9を参照して、実施例(第1動作例)では、EGR減量が実行されることにより、第1比較例と比べて、車両(及び、エンジン1)の加速開始(t1)から加速完了(t3)までにかかる時間が短縮される。このため、実施例では、EGR減量に起因してNOx排出量が一時的に第1比較例よりも増えるが、加速中に排出されるNOxの総量は第1比較例と変わらない。
上記第1動作例では、吸入空気量が少ない状態でエンジン1が加速されている。このため、pimddltが上昇してC1を超えて、EGR減量が実行されている。これに対し、吸入空気量が多い状態でエンジン1が加速される場合には、pimddltはC1を超えず、EGR減量は実行されない。以下、図10~図12を用いて、この実施の形態に係るエンジン1の第2動作例を、第2比較例と対比して説明する。第2比較例は、アクセル操作速度が所定値以上になると、EGR減量(より特定的には、EGRカット)が実行される例である。
図10は、エンジン1の第2動作例と第2比較例との各々について、アクセル開度の推移(上のグラフ)、目標過給圧の推移(真ん中のグラフ)、及び実過給圧の推移(下のグラフ)を示す図である。
図10を参照して、実施例(第2動作例)及び第2比較例のいずれにおいても、吸入空気量が多い状態で運転者がアクセルペダルを踏み込んでいる。アクセル開度の上昇に伴い、目標過給圧及び実過給圧も上昇している。
図11は、エンジン1の第2動作例と第2比較例との各々について、pimddltの推移(上のグラフ)、pimdltの推移(真ん中のグラフ)、及びEGR開度の推移(下のグラフ)を示す図である。
図11を参照して、第2比較例では、アクセルペダルの踏込みに応じてEGRカット(EGR弁を全閉状態にする処理)が実行されている。一方、実施例(第2動作例)では、pimddltがC1を超えず、EGR減量は実行されない。
図12は、エンジン1の第2動作例と第2比較例との各々について、NOx排出量(瞬時値)の推移(上のグラフ)、NOx排出量(積算値)の推移(真ん中のグラフ)、及び車速の推移(下のグラフ)を示す図である。
図12を参照して、実施例(第2動作例)では、EGR減量が実行されないため、比較例2よりもNOx排出量が少なくなっている。また、ある程度の車速が出ている状態で加速が行なわれているため、EGR減量が実行されなくても、車両(及び、エンジン1)の加速性に大きな影響はない。
以上説明したように、この実施の形態に係る制御装置200は、実過給圧を目標過給圧に近づけるように過給機30を制御するように構成される(図2参照)。制御装置200は、EGRガス量を減らす処理であるEGR減量の実行/停止を切り替えるように構成される(図5及び図6参照)。制御装置200は、pimdlt(実過給圧と目標過給圧との偏差)を用いて、EGR減量の実行タイミングを決定する。より特定的には、制御装置200は、pimddlt(pimdltの時間微分値)に基づいてEGR減量の実行タイミングを決定する(図5参照)。
上記構成では、吸入空気量が多い状態でエンジン1が加速される場合にはEGR減量が実行されない(図10~図12参照)。このため、運転者のアクセル操作に従ってEGR減量を実行する構成(たとえば、第2比較例)と比べて、EGR減量の頻度を低くすることができる。そして、EGR減量の頻度が低くなることで、EGRによってNOx排出量を低減しやすくなる。
上記実施の形態に係る制御装置200は、pimddltを用いて、エンジン急加速を検知し、エンジン急加速が検知されたときにEGR減量を開始している。しかしこれに限られず、制御装置は、pimdltを用いてエンジン加速を検知し、エンジン加速が検知されたときにEGR減量を実行してもよい。たとえば、制御装置は、図5に示した処理に代えて、以下に説明する図13に示す処理を実行してもよい。
図13は、図5に示した処理の変形例を示すフローチャートである。図13に示す処理は、図5のS32が割愛され、図5のS33に代えてS33Aが採用されたこと以外は、図5に示した処理と同じである。以下、S33Aについて説明する。
図1とともに図13を参照して、S33Aでは、pimdltが所定の第3しきい値(以下、「C3」と表記する)よりも大きいか否かを、制御装置が判断する。S33AにおいてNOと判断された場合には、処理は最初のステップ(S31)に戻る。他方、S33AにおいてYESと判断された場合には、制御装置がS34において減量フラグをONにした後、図13に示す一連の処理は終了する。
上記変形例に係る制御装置は、pimdltが上昇してC3を超えたときにEGR減量を実行する。こうした制御装置によっても、吸入空気量が少ない状態でエンジンが加速される場合にはEGR減量が実行され、吸入空気量が多い状態でエンジンが加速される場合にはEGR減量が実行されないようにすることができる。ただし、上記変形例に係る制御装置では、エンジン1の加速が緩やかに行なわれる場合にもEGR減量が行なわれる可能性が高くなる。
上記実施の形態では、EGR減量として、EGR弁64の開度が所定の開度になるまでEGR弁64の開度を小さくする処理を採用している。所定の開度は0%であってもよい。すなわち、図6のS41で実行されるEGR減量はEGRカットであってもよい。また、EGR減量は、EGR弁64の開度をEGR減量の停止中の目標開度よりも小さくする処理であってもよい。たとえば、制御装置は、図6のS41において、以下に説明する図14に示す処理を実行してもよい。
図14は、EGR減量の変形例について説明するためのフローチャートである。図1とともに図14を参照して、S411~S413は、それぞれ図4のS21~S23と同じ処理である。すなわち、S411~S413の処理によって、エンジン運転状態に応じて目標EGR開度が算出される。続くS414では、制御装置が、算出された目標EGR開度を閉じ側に変更する。制御装置は、目標EGR開度を所定割合に減じてもよい。たとえば、制御装置は、S411~S413で算出された目標開度に0超1未満の係数(たとえば、0.3)を乗算することにより、EGR減量の目標EGR開度を求める。そして、制御装置は、続くS415において、EGR減量の目標EGR開度にEGR弁64の開度を近づけるようにEGR弁64を操作する。
上記変形例に係る制御装置は、EGR減量の停止中は、目標開度に近づくようにEGR弁を制御し、EGR減量の実行中は、目標開度よりも小さい開度へEGR弁を制御するように構成される。上記変形例に係る処理(図14)によっても、EGRガス量を減らすことができる。
エンジンの制御装置が適用される車両は、ハイブリッド車両(内燃機関及び電動モータを走行用の動力源とする自動車)であってもよいし、コンベ車(内燃機関のみを走行用の動力源とする自動車)であってもよい。車両は、乗用車に限られず、バスであってもよいし、トラックであってもよい。車両は、自動運転又は遠隔運転によって無人走行可能に構成されてもよい。車輪の数も4輪に限定されず適宜変更可能である。車輪の数は、3輪であってもよいし、5輪以上であってもよい。
エンジンの制御装置が適用される対象は、車両に限られず任意である。適用対象は、他の乗り物(船、飛行機等)であってもよいし、無人の移動体(無人搬送車(AGV)、農業機械等)であってもよい。
今回開示された実施の形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施の形態の説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。