JP5997133B2 - 窒化物被覆を剥離する方法 - Google Patents

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Description

関連出願の説明
本出願は、米国法典第35編119条(e)の下で、2010年4月15日に出願された米国仮特許出願第61/324526号の優先権の恩恵を主張するものである。
本開示は、金属工具の耐用年数を延長するために使用される蒸着されたまたはスパッタリングされた窒化物被覆に関し、より詳しくは、不利な使用条件によって部分酸化されたガラス用の金型などの工具から窒化物離型被覆を剥離する(stripping)方法に関する。
例えば、TiN、TiAlN、CrN、TiAlCrN、TiAlSiN、AlNなどを含む蒸着またはスパッタリングされた窒化物被覆が、金属工具の耐磨耗性を改善するため(「磨耗」被覆)または金属表面の離型特性を改善するため(「離型(release)」被覆)に使用されてきた。そのような被覆に関する特に厳しい用途の1つに、ガラス用金型のための離型被覆としての用途がある。技術用途の高性能ガラスは800℃の範囲の軟化点を示し、そのようなガラスから複雑な形状を成形するには、そのような温度での物理的安定性並びに化学的安定性を示す離型被覆を有するガラス用の耐火金属製金型を使用する必要がある。PVD(物理的気相成長法)により施された、TiAlN被覆などの窒化物被覆は、高温耐酸化性、軟化したガラスからの良好な離型特性、および金型の寿命を向上させ、成形されたガラス表面の品質を維持するための高い耐食性を提供できる。
それにもかかわらず、TiAlN被覆を含む硬質の蒸着されたまたはスパッタリングされた被覆は、高温のガラスと接触する長期間の熱サイクル後に劣化し得る。被覆の亀裂および低下したガラス離型特性は、被覆の劣化の指標である。これらのガラスの成形に使用される高価なガラス用金型の耐用年数を持続させ、伸ばすために、金型から窒化物被覆を剥離する効率的なプロセスが必要である。さらに、使用される剥離プロセスは、金型表面を新たな離型被覆の再施用に適した状態にしなければならない。
窒化物磨耗被覆の剥離のために潜在的な用途がある方法の中には、DCまたはRFプラズマエッチング、過マンガン酸塩や過酸化物などの酸化剤の添加の有無に拘わらない高アルカリ性水溶液を使用した化学的剥離、および電気化学的剥離がある。プラズマエッチングは、遅くて高価であり、典型的に、被覆表面への視野方向(line-of-sight)アクセスを必要とする。化学的剥離も、比較的遅く、一般に、深刻な安全性の問題とプロセスエネルギー要件を伴う高温の腐食性溶液を使用する必要があり、基体表面に損傷を与えずに被覆を完全に除去するためには、組成と温度の異なる数多くの溶液が必要である。
従来の工具の磨耗被覆とは対照的に、ガラス成形用途のための離型被覆として使用される、蒸着されたまたはスパッタリングされた窒化物被覆により、使用環境によって生じる被覆特性の変化のために、独特な剥離の難題が提示される。溶融ガラス物品の加圧成形中の高温への繰り返しの熱サイクルによって、ガラス用成形型の離型被覆の組成並びに形態が相当変化してしまう。観察される変化には、部分酸化した表面層を生成する被覆の表面領域における酸化物相の発生、および離型被覆のベース部分への金型表面からの金属種の移行による金属間相の形成がある。
これらの変化は、被覆材料の塊における結晶化度の変化と共に、剥離挙動が相当ばらつき、それによって、施されたままの窒化物被覆系を除去するのに効果的な処理が、被覆の長期間の熱サイクル後に同じ系の剥離にとって効果的でなくなってしまう。
ここに開示された方法は、金属基体の品質を維持し、それゆえ、繰り返しの再被覆とこれらの高価な金属構成部材の再利用を可能にする手法にしたがって、ガラス用金型などの金属基体からPVDにより施された窒化物磨耗または離型被覆の剥離に関する。開示された方法により、表面酸化材料を予め還元するか、または表面酸化材料を被覆から除去することによって効果的に可能になる、エネルギー効率の良い、低電圧電解剥離手法によって、耐久性TiAlN被覆を含む、熱サイクルが施された金型離型被覆を迅速かつ完全に除去することができる。
特別な実施の形態において、本開示は、金属加工物から部分酸化した窒化物離型被覆を剥離する方法を包含する。この方法は、離型被覆上の表面酸化層を破壊して、被覆の導電率を増加させる最初の工程を含む。その後、加工物、離型被覆および対電極がアルカリ性電解質水溶液中に浸漬されている間に、電流を加工物と離型被覆から対電極へと流す。周囲温度またはほぼ周囲温度で印加される低い電圧が、開示の方法を使用することにより、減少した処理間隔内で完全な電解剥離を行うのに十分である。
従来の化学エッチングによる、蒸着されたまたはスパッタリングされた窒化物被覆の除去には、典型的に、有用な剥離速度を達成するための高温(100〜120℃)の高アルカリ性溶液を使用する必要があり、剥離の残留物または離型被覆の結合層を除去するために、濃縮(30%)過酸化水素または希釈フッ化水素酸または他の酸による後処理がしばしば必要である。そのような使用は、本開示によれば必要ない。さらに、剥離された金型表面がH22またはHFにより損傷を受ける虞を完全に避けつつ、上述した電解剥離を使用して、化学エッチングに典型的な剥離速度より10倍超も速い剥離速度が達成できる。最後に、開示の方法のプロセスエネルギー要件は、化学剥離に必要な要件と比べて大幅に減少する。本発明の使用に伴うさらに他の利点が、以下の発明を実施するための形態から明らかになるであろう。
本開示の方法が、付随の図面を参照して、以下にさらに記載されている。
化学剥離後のニッケル・クロム合金製金型の表面の電子顕微鏡写真 長期間の熱サイクル後のTiAlN離型被覆が設けられたニッケル・クロム合金製ガラス用金型の断面の一部分の電子顕微鏡写真 本開示による窒化物離型被覆を剥離するための装置の説明図 本開示による中間層剥離に有用な電解処理に関する電圧対時間をプロットしたグラフ 本開示による剥離後のニッケル・クロム合金製金型の表面の電子顕微鏡写真 堆積されたままのTiAlN被覆の電圧の関数として電流をプロットしたグラフ(すなわち電流−電圧(C−V)曲線) 異なる種類と濃度の電解質を使用してTiAlN被覆を除去するために必要なエッチング時間をプロットしたグラフ
先の概要および以下の説明から明らかなように、ここに開示された剥離方法は、金属加工物からの多種多様な窒化物磨耗被覆または離型被覆の除去に適用できる。その例には、TiN、TiAlN、CrN、TiAlCrN、TiAlSiNおよびAlNからなる群より選択される1種類以上の窒化物から実質的になる被覆があり、意図する用途に適している場合には、遷移金属ドーパントなどの改質成分を微量、必要に応じて添加することも可能である。しかしながら、本発明の方法は、加工物が、耐火性の耐酸化性ニッケル・クロム合金からなるガラス用金型部材である場合、および被覆が、使用中に遭遇するガラス成形条件の結果として部分酸化を経験した、蒸着されたまたはスパッタリングされたTiAlN離型被覆である場合、特別な利点を提供することが分かった。したがって、以下の説明の実施の形態は、それらの方法の有用性はそれらには限られないが、そのような方法および材料を特に称するであろう。
先に示唆したように、PVD堆積されたTiAlN層からなる離型被覆は、耐火合金製ガラス用金型部材の表面に、優れた高温のガラス剥離特性を与え、長期間の使用中にそのような金型の表面を損傷から保護するために、ガラス成形中に遭遇する温度と酸化還元条件で十分に安定である。先に示したように、例えば、アルカリ性KOH溶液中での従来の化学エッチングを使用して、ガラス用金型からそのような被覆を剥離することも可能であるが、そのような方法は、非実現的なほど遅く、加工エネルギー要件が高い。
金型表面とTiAlN離型被覆との間に、蒸着されたTiAl中間層が配置されている場合、さらに別の難点が生じる。そのような中間層は、金属表面に対する蒸着窒化物被覆の付着力を改善するのに一般に有用であるが、従来の電気化学法によって効果的に剥離されない。H22および/またはHF系の剥離溶液は、そのような中間層を除去できるが、そのような溶液は、ニッケル・クロム合金製金型の表面に損傷を与え、再被覆および再被覆後の成形ガラス表面の品質に関する問題を生じる。
図1は、30%のH22エッチング水溶液に1時間暴露された後のInconel 718ニッケル・クロム合金製ガラス用金型の表面の小さな区画の電子顕微鏡写真からなる。その暴露から生じた合金製金型表面の広範囲に亘る表面孔食が図1から明白であり、そこに見られる損傷のレベルは、同じ金型材料のHF剥離溶液への暴露の際に生じる孔食と実質的に等しい。
図1に示された表面損傷は、図5の電子顕微鏡写真に示された同じ組成の剥離された金型表面の区画と強く対照的である。後者の表面は、本発明の方法にしたがう電解剥離によりTiAlN離型被覆がそこから除去されたInconel 718金型表面である。剥離工程は、5Vの剥離電圧での10MのKOH中の15分間を含んだ。図5に示された表面の突起は、は、剥離プロセスの結果ではなく、むしろ、Inconel 718合金構造に特徴的な硬化したこぶ状生成物である。
アルカリ溶液による電気化学処理は、従来の合金製工具からのTiAlNおよびTiAl被覆の除去のための化学剥離よりも効果的であるが、そのような処理は、金型の使用期間後に合金製ガラス用金型の表面からPVD施用窒化物被覆を除去するのに効果的であるることは分かっていない。ここで、そのような方法の効果のなさは、高軟化点のガラスの成形中に被覆が繰り返し高温に暴露されるときに生じる、被覆の組成と構造の変化のためである。
図2は、離型被覆が施されたInconel 718ニッケル・クロム合金製ガラス用金型の表面部分の断面の電子顕微鏡写真であり、図2の離型被覆は、TiAlN表面被覆20およびTiAl結合中間層30を含む。離型被覆が施されたガラス用金型は、800℃近い成形温度で一連の湾曲したアルミノケイ酸アルカリガラス板の成形中に500回の熱サイクルを経験したものである。
図2に見られるこの熱サイクルの影響の1つは、TiAlN被覆20の表面上の酸化表面層10の形成であり、この表面層は、約169nmの厚さを有し、酸化アルミニウムおよび酸化チタンから主になる。表面層10の低い導電率は、部分酸化した被覆の効果的な電気化学剥離を妨害する要因である。
熱サイクルの追加の影響は、図2に示されるTiAl中間層被覆30の組成の変化である。熱サイクルが施された中間層30の化学分析は、この中間層が、鉄、ニッケルおよびクロムからなる群より選択される1種類以上の拡散金属混入物を含む金属間材料を相当な量含み、それらの混入物が、金型の熱サイクル中に下にある合金製ガラス用金型の表面から中間層に移行したことを示す。これらの組成物の混入された中間層被覆は、電気化学剥離中に表面酸化を経験し得、酸化表面は、重ねて、中間層の除去を妨げたり、遅くしたりする。
本開示により窒化物被覆除去を行う際に使用される工程は、被覆の熱履歴およびそれにより生じる被覆の構造における変化に依存する。被覆がほとんどまたは全く熱サイクルを経験していない場合、例えば、その被覆が従来の鉄鋼製工具上の磨耗被覆として堆積された場合、この被覆は、堆積されたままの組成と構造を維持し、工具表面を損傷せずに、電解剥離のみで除去できる。
他方で、被覆が大々的な熱サイクルに暴露されて、表面が部分酸化された場合、結果として生じた表面の酸化層は非導電性であり、低電圧での電解剥離では、被覆を除去することができない。したがって、後者の場合、部分酸化した被覆の導電率を増加させるのに効果的な程度まで、表面の酸化層を破壊する工程が必要であり、被覆の導電率を必要なだけ増加させるための数多くの様々な手法が効果的であると実証されてきた。
そのような工程を含む方法のある実施の形態において、表面の酸化層は、酸化材料の化学エッチングを行うために、濃縮されたアルカリ金属水酸化物水溶液に暴露される。そのような処理の特別な例は、金型や他の加工物を、100℃で15〜30分間に亘り10Mの水酸化カリウムまたは水酸化ナトリウムの水溶液中に浸漬して、酸化物層を少なくともある程度溶解させることである。金型のサイズに応じて、30〜60分間に亘り120℃での45%のKOH中の浸漬が効果的であり得る。これらの期間の処理は、TiAlN被覆の導電率を、TiAlN材料の効率的な電気化学エッチングを低電圧で確実に行うのに十分なレベルまで増加させるのに通常は十分である。
別の実施の形態において、表面の酸化層を破壊する工程は、酸化層を磨耗して、そこから酸化材料を少なくともある程度除去する工程を含む。使用される磨耗処理は、非導電性の酸化物表面層を破るのに効果的であるが、下にある金型の表面形態に影響を与えるほど強くないものであるべきである。1〜3μmのグリット・サイズを有するSiCサンドペーパー、または0.5〜9μmの粒径範囲のアルミナ粒子の水性懸濁液が、効果的な研磨剤の例である。
さらに別の実施の形態において、表面酸化層の破壊は、金型から残りのTiAlN被覆材料を剥離するのに有用な種類の電解槽中で行われる改良された予備電解工程によって行われる。その手法は、金型または他の加工物がアルカリ性電解質水溶液中に浸漬されている間に、槽を挟んで比較的短期間に亘り高電圧DC電気パルスを印加する工程を含む。一例として、ニッケル・クロム合金製金型上に堆積された部分酸化されたTiAlN離型被覆に亘り、両者が5MのKOH水溶液中に浸漬されている間に、10〜30Vの範囲の電圧降下が1分未満の間に亘り印加される。このパルスは、被覆の導電率を、残りのTiAlN被覆材料の完全な電解剥離を同じ溶液中において5Vの電圧降下で続行できるレベルまで増加させることができる。
先に開示したように、本開示の方法により金属加工物から、蒸着された窒化物磨耗または離型被覆を電解剥離する工程は、陽極、陰極および電解質を含む電解槽に電流を流す工程を含み、被覆された加工物が槽の陽極を構成する。図3は、それらの方法により金型または他の加工物から窒化物離型被覆を剥離するのに適した電解槽50の説明図を示す。
より詳しく図3を参照すると、槽の電解質52は、その中に被覆加工物すなわち陽極54が浸漬されるアルカリ水溶液からなる。槽の陰極は、水性アルカリ媒質中の電子供与体として働くときに、耐食性である金属から適切に形成される1つ以上の対電極56を含む。
この槽の動作において、電流が、加工物54からPCD施用されたTiAlN離型被覆54aと電解質52を通じて陰極の対電極56に向かって流される。この電流は、電源58による陽極と陰極に亘る比較的低電圧、例えば、1〜15ボルトの電圧の印加により生じ、この電源は、図面に示された極性またはバイアスで槽に接続されている。これらの電解槽の陰極(対電極56)は、例えば、白金、チタン、ニオブ、合金鋼およびニッケル・クロム合金から選択される金属から適切に構成されるが、必要な耐アルカリ腐食性を有する他の金属を代わりに使用しても差し支えない。図3の装置において、一対の超音波振動子60が設けられて、電解質溶液にエネルギーを与えているが、その使用は必須ではない。
図6は、熱サイクルを全く経験しなかった堆積されたままのTiAlN被覆の電圧の関数としての電流のプロット(C−V)を示す。図6は、電子移動が約1.6Vから約1.8Vまで開始されないことを示している。この時点で、電流は、約3.5Vまで電圧の増加と共に線形に増加し、約3.5Vの時点で、別の電子移動反応が始まり、電流は電圧の関数として指数関数的に増加する。
これらの槽の特別な実施の形態において、使用されるアルカリ性電解質水溶液は、水酸化カリウムおよび水酸化ナトリウムからなる群より選択される化合物を少なくとも1種類含む。KOHまたはNaOHの濃度が1モル濃度から12モル濃度(1M〜12M)の範囲にあるアルカリ溶液は、上述した槽電圧で急激なエッチングを行うことができる。一例として、電解槽に亘り1Vから5Vの範囲、いくつかの実施の形態においては、約3Vから約5Vの範囲の電流生成電圧を印加することによって、効果的なTiAlN剥離を行うことができる。KOH溶液は、図7に示されように、これらの条件下で、NaOH溶液よりもいくぶん速くTiAlNを溶解させることが分かった。
残念ながら、上述したような熱サイクルの施されたTiAlN離型被覆の除去に極めて効果的な電解質剥離条件は、離型被覆を金属基体に結合するのに用いられるTiAl、Ti、Alなどの下にある中間層を除去するのには効果的ではない。熱サイクル中に金属基体から中間層にニッケル、クロムおよび/または鉄が拡散することによって生じる金属間材料は、図3に示されるような電解槽中で陽極としてバイアスがかけられたときに、酸化する傾向にあり、その酸化は電流を遮断し、それゆえ、中間層の溶解が妨げられる。
この問題を克服するのに効果的な本発明の方法の実施の形態は、離型槽の剥離後に、さらに別の処理工程を含む。その工程は、アルカリ性電解質水溶液中に浸漬されている間に、金型または他の加工物にバアイスまたは極性を反対にする電流パルスを通す工程を含む。この交流パルスにより、中間層の酸化とエッチングが交互に生じ、十分な時間に亘り継続されれば、中間層が実質的に完全に溶解する。
図4は、図3に示されたような装置において被覆金型を処理するときに、ニッケル・クロム合金製ガラス用金型の表面からのニッケル、クロムおよび鉄の群から選択される1種類以上の拡散金属混入物を含有するTiAl中間層を除去するのに効果的な交流パルスを導入するのに適した、印加DC電圧対時間のプロットである。等しい正と負のバイアス時間が図4に示されているが、正と負のバイアスの期間は、特定の場合におけるエッチング効率を改善するために、独立して調節することができる。しかしながら、効率的に中間層を溶解させるために、電解質溶液の組成を変える必要はなく、溶液の加熱も電圧の増加も必要ではないので、この工程を行うためのエネルギー要件は少ない。
先に記載した方法にしたがって、中間層を除去する難点が効果的に対処されるが、ある程度または完全な中間層の除去が必要ない場合がいくつかある。いくつかの場合には、代わりに、中間層の表面を単に再状態調節することによって、適切に蒸着された窒化物離型被覆の再結合を行っても差し支えない。再状態調節は、例えば、1〜3μmのグリットサイズを有するSiCサンドペーパーまたは0.5〜9μmの粒径範囲のアルミナ粒子の水性懸濁液を使用して、離型被覆の除去後に残る中間層の剥離面を研磨する工程によって行っても差し支えない。そのような方法の説明に役立つ例として、残留する中間層を、脱イオン水中の3μmのアルミナ粒子の分散液により接触研磨して、適切に剥離された金型表面品質を達成する。
図3に示された装置は、開示された方法の実施にうまく適しているが、いくつかの場合には、装置の設計における変更により、経済的な利点が提示され得る。一例として、加工物および対電極が2つの別個の区画内にあり、これら2つの区画が塩橋により接続されている二室型電解槽により、対電極上に剥離された被覆材料が再堆積することによる二次汚染を最少にしながら、イオン伝導のために必要な経路を提供することができる。
前述したように、ここに開示した方法は、金属製工具から磨耗または離型被覆を除去するための厳しい化学剥離手法の使用に勝る重大な利点を提示する。より少ない剥離溶液容積が効果的であり、要求される電圧および電流密度が適度であるので、電気化学剥離には、化学剥離よりも相当少ないプロセスエネルギーしか必要ない。また、剥離溶液の加熱はほとんどまたは全く必要ない。その上、プロセスの拡大は、複雑ではなく、大きい設備投資は必要ない。電解質浴の容積および対電極のサイズを適度に増加させることしか必要ない。最後に、開示した電気化学方法では、合金の表面を損傷し得、貯蔵と安全に取り扱うのが難しい、HFおよびH22などの化学物質を使用する必要をなくしつつ、総剥離時間が、例えば、数十時間から数十分まで、著しく減少する。
本開示の方法を、特定の手法、材料、および装置に関して上述してきたが、それらの具体的に開示された実施の形態は、様々な適応および改変の単なる説明であり、それらは、付随の特許請求の範囲内の関連用途の要件を満たすように適応されることが当業者には明白であろう。
50 電解槽
52 電解質
54 加工物
54a TiAlN離型被覆
56 対電極
58 電源
60 超音波振動子

Claims (12)

  1. 金属加工物から部分酸化した窒化物離型被覆を剥離する方法であって、
    前記離型被覆上の表面酸化層を破壊して、該離型被覆の導電率を増加させる工程、および
    前記離型被覆上の表面酸化層を破壊して、前記離型被覆の導電率を増加させる工程に続けて、前記加工物、離型被覆および対電極がアルカリ性電解質水溶液中に浸漬されている間に、該加工物および離型被覆から該対電極に電流を流す工程、
    を有してなる方法。
  2. 前記離型被覆が、TiN、TiAlN、CrN、TiAlCrN、TiAlSiNおよびAlNからなる群より選択される1種類以上の窒化物から実質的になることを特徴とする請求項1記載の方法。
  3. 前記離型被覆が、蒸着またはスパッタリングにより堆積されたTiAlN被覆であり、前記加工物がニッケル・クロム合金からなることを特徴とする請求項1記載の方法。
  4. 前記アルカリ性電解質水溶液が、水酸化カリウムおよび水酸化ナトリウムからなる群より選択される化合物を少なくとも1種類含むことを特徴とする請求項1から3いずれか1項記載の方法。
  5. 前記表面酸化層を破壊する工程が、前記層を少なくともある程度溶解させるのに十分な時間に亘り、前記離型被覆上の前記表面酸化層を、電圧を印加せずに濃縮されたアルカリ金属水酸化物の水溶液に暴露する工程を含むことを特徴とする請求項1から3いずれか1項記載の方法。
  6. 前記濃縮されたアルカリ金属水酸化物の水溶液が、水酸化カリウムおよび水酸化ナトリウムからなる群から選択されることを特徴とする請求項5記載の方法。
  7. 前記表面酸化層を破壊する工程が、前記離型被覆の表面を、電圧を印加せずに研磨して、そこから酸化材料を少なくともある程度除去する工程を含むことを特徴とする請求項1から3いずれか1項記載の方法。
  8. 前記表面酸化層を破壊する工程が、前記金属加工物がアルカリ性電解質水溶液中に浸漬されている間に前記離型被覆を横切って高電圧パルスを印加する工程を含むことを特徴とする請求項1から3いずれか1項記載の方法。
  9. 前記アルカリ性電解質水溶液が、水酸化カリウムおよび水酸化ナトリウムからなる群から選択されることを特徴とする請求項8記載の方法。
  10. 前記加工物が、前記離型被覆と該加工物との間に配置された中間層を含み、前記方法が、前記中間層の少なくとも一部分を除去する工程をさらに含み、前記中間層が、蒸着またはスパッタリングにより堆積されたTiAl、Ti、またはAl中間層であることを特徴とする請求項1から3いずれか1項記載の方法。
  11. 前記中間層が、鉄、ニッケルおよびクロムからなる群より選択される拡散金属混入物を少なくとも1つ含有することを特徴とする請求項10記載の方法。
  12. 前記中間層の少なくとも一部分を除去する工程が、前記中間層を溶解させるのに十分な時間に亘り前記加工物に反対の極性の電流パルスを流すまたは前記中間層を研磨する工程を含むことを特徴とする請求項10記載の方法。
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