JP5994719B2 - ガラス積層体 - Google Patents

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Description

本発明は、薄膜ガラス上に接着剤を介して樹脂層を積層したガラス積層体に関する。
近年、省エネルギー対策への関心が高まり、冷房設備にかかる負荷を減らすなどの観点から、建物や車両の窓ガラスに装着させて、太陽光の熱線の透過を遮断する熱線反射フィルムの要望が高まってきている。
太陽から放射される光は、紫外領域から赤外光領域まで幅広いスペクトルを有している。可視光は、紫色から黄色を経て赤色光に至る波長380〜780nmまでの範囲であり、太陽光の約45%を占めている。赤外光については、可視光に近いものは近赤外線(波長780〜2500nm)と呼ばれ、それ以上を中赤外線と称し、太陽光の約50%を占めている。この領域の光エネルギーは、紫外線と比較するとその強さは約10分の1以下と小さいが、熱的作用は大きく、物質に吸収されると熱として放出され温度上昇をもたらす。このことから熱線とも呼ばれ、これらの光線を遮蔽することにより、室内の温度上昇を抑制することができる。また、寒冷地の冬季の暖房熱を室外に逸散することを抑制することもできる。
例えば、特許文献1では、コレステリック液晶相を示す液晶化合物にキラル剤を添加した重合性液晶組成物をポリエチレンテレフタレート(PET)等の樹脂フィルムに塗布することで、遮熱性能を有する光反射性フィルムを作製している。また、特許文献2では、酸化亜鉛半導体を主成分とし、添加物としてIII族酸化物を含有した赤外光反射組成物をPET等に塗布することで赤外光反射の機能を付与した赤外光反射シートを作製している。
このように、一般的な熱線反射フィルムはPET等の樹脂フィルムに熱線を反射する材料を積層することで作製されている。
特開2012−181359号公報 特開平11−293228号公報
しかしながら、このような熱線反射フィルムを一般的なアクリル系粘着剤で窓ガラスに貼合して使用した場合、温度変化によって樹脂フィルムが伸縮することで、熱線反射フィルムと窓ガラスとの間で剥がれたり気泡が生じたりするという問題がある。したがって、樹脂フィルムとガラスとを接着剤で貼合し、太陽光に晒されるような環境で使用する際には、厳しいヒートショック試験耐性が要求される。
そこで、本発明者らは熱線反射フィルムとして、薄膜ガラス上に接着剤を介して樹脂層を積層したガラス積層体を用いることを考えた。この薄膜ガラス側を窓ガラスに貼合すれば、ガラス同士の貼合なので剥がれるおそれはない。しかしながら、新たに薄膜ガラスと樹脂層との間で剥がれやすくなるという問題が生じる。
本発明の目的は、前記の事情に鑑み、薄膜ガラス上に接着剤を介して樹脂層を積層した構成であっても、熱線反射機能及びヒートショック試験耐性を有するガラス積層体を提供することにある。
本発明の上記目的は以下の構成により達成される。
1.薄膜ガラスと樹脂層とが接着剤で接着されており、
前記接着剤は、反応性金属化合物と水酸基含有高分子化合物との共縮合物を含み、
前記樹脂層の前記薄膜ガラスが積層されている側とは反対側に、熱線反射層が積層されていることを特徴とするガラス積層体。
2.前記熱線反射層は、金属酸化物粒子を含んでいることを特徴とする前記1に記載のガラス積層体。
3.前記熱線反射層は、水溶性高分子を含む塗布液を塗布して形成されることを特徴とする前記1又は2に記載のガラス積層体。
4.前記樹脂層は、JIS Z 0208に準拠して測定される40℃、90%RHにおける透湿度が、100g/m2・24hr以上であることを特徴とする前記1〜3の何れかに記載のガラス積層体。
5.前記樹脂層が、セルロースエステルであることを特徴とする前記1〜4の何れかに記載のガラス積層体。
6.前記薄膜ガラスの膜厚が5〜100μmであることを特徴とする前記1〜5の何れかに記載のガラス積層体。
7.前記薄膜ガラスの前記樹脂層が積層されている側とは反対側に、接着層が設けられていることを特徴とする前記1〜6の何れかに記載のガラス積層体。
反応性金属化合物に含まれる金属成分は、ガラス成分と共有結合することができる。一方、水酸基含有高分子化合物は、水酸基を含んでおり、樹脂との親和性が高い。このため、薄膜ガラスと樹脂層とを接着する接着剤が、反応性金属化合物と水酸基含有高分子化合物との共縮合物であり、反応性金属化合物の特性と水酸基含有高分子化合物の特性とを両方持つことにより、薄膜ガラスと樹脂層との両方に対して良好な接着性を確保することができる。そして、接着剤を介して、薄膜ガラスと樹脂層との密着性を向上させることができる。よって、本発明のガラス積層体はヒートショック試験耐性を有する。
また、本発明のガラス積層体は樹脂層上に熱線反射層を形成しているので、熱線反射機能を有している。
したがって、本発明のガラス積層体は建物や車両の窓ガラスに装着され太陽光に晒されるような環境で使用されても、長期間に亘って問題なく使用することができる。
本発明の一実施形態のガラス積層体の構成を示す断面図である。
本発明の実施の一形態について、図面に基づいて説明すれば以下の通りである。なお、本明細書において、数値範囲をA〜Bと表記した場合、その数値範囲に下限Aおよび上限Bの値は含まれるものとする。
〔ガラス積層体の構成〕
図1に示すように、ガラス積層体10は、薄膜ガラス11の一方の面側に、接着層12(接着剤)、樹脂層13、熱線反射層14をこの順で積層して構成されている。なお、接着層12が明確に層として存在していない場合も本発明の範囲に含まれる。これは接着層に含まれる成分が樹脂層13へ浸透、反応することにより、一体化した状態が想定される。
接着層12は、反応性金属化合物(無機系の化合物)と水酸基含有高分子化合物(有機系の化合物)との共縮合物を含む、有機−無機ハイブリッド型の接着層(HB糊)である。反応性金属化合物と水酸基含有高分子化合物の共縮合物とは、反応性金属化合物から生じた水酸基と水酸基含有高分子化合物中の水酸基が縮合反応した構造を含むことを意味する。反応性金属化合物としては、例えばテトラエトキシシラン(TEOS)やテトラメトキシシラン(TMOS)などのシリコンアルコキシドを用いることができる。また、水酸基含有高分子化合物としては、例えばジアセチルセルロース(DAC)やセルロースアセテートプロピオネート(CAP)を用いることができる。なお、反応性金属化合物および水酸基含有高分子化合物の詳細については後述する。
反応性金属化合物に含まれる金属成分は、共有結合などの化学結合により、ガラスの材料成分と強固に結びつきやすい。また、水酸基含有高分子化合物は水酸基を含んでいるため、樹脂との親和性が高く、接着性を向上させることができる。したがって、上記の有機−無機ハイブリッド型の接着層12を用いることにより、この接着層12を介して薄膜ガラス11と樹脂層13との密着性を向上させることができる。これにより、ヒートショック試験時の環境変動(温度変化)による樹脂層13の寸法変化(樹脂の伸縮)を抑えることができ、その結果、薄膜ガラス11から樹脂層13が剥がれるのを抑えることができる。また、一般的に、有機系の化合物と無機系の化合物とは相溶性に乏しいが、これらの縮合物を構成することで、単層構造で双方の特性を有する接着層12を容易に実現することができる。
また、上記の水酸基含有高分子化合物は、総アシル基置換度が1.0〜2.6のセルロースエステル(例えばDACやCAP)であることが望ましい。このようなセルロースエステルは、水酸基を含有し、樹脂層13との親和性が向上するため、薄膜ガラス11と樹脂層13との接着性を向上させる材料として非常に有効である。
樹脂層13は、熱線反射層14を支持する基材である。樹脂層13の材料としては、例えば、セルロース系樹脂やポリカーボネート樹脂(PC)を含んで構成されるが、耐熱性の観点からは、耐熱性を有するセルロース系樹脂を含んでいることが望ましい。このようなセルロース系樹脂としては、例えばトリアセチルセルロース(TAC)、ジアセチルセルロース(DAC)、セルロースアセテートプロピオネート(CAP)などを用いることができる。
熱線反射層14は、太陽光の熱線の透過を遮断できればその材料や層構成には特に限定はないが、本実施形態では、高屈折率層と低屈折率層とが交互に積層されたものを用いる。高屈折率層および低屈折率層はそれぞれ水溶性高分子を含んでおり、樹脂層13上に水系塗布によって形成される。ここで、樹脂層13は、水系塗布後の乾燥時に水分を速やかに逃がすことができる程度の透湿度を有することが望ましい。例えば、樹脂層13としては、JIS Z 0208に準拠して測定される40℃、90%RHにおける透湿度が、100g/m2・24hr以上である透湿性フィルムを用いることが好ましい。熱線反射層14中に水分が残留しないことにより、環境変動(温度変化)によっても熱線反射層14の膜厚変化が小さく、反射率変化を抑えることができる。
上記したガラス積層体10の構成によれば、熱線反射機能及びヒートショック試験耐性を有するので、建物や車両の窓ガラスに装着され太陽光に晒されるような環境で使用されても、長期間に亘って問題なく使用することができる。
〔各層の詳細について〕
以下、ガラス積層体を構成する各層の詳細について説明する。
(薄膜ガラス)
ガラス積層体を構成する薄膜ガラスとしては、各種成形法によって成形されたものを使用することができる。例えばロールアウト法、リドロー法、ダウンドロー法、フロート法等によって成形された薄膜ガラスを使用できる。
薄膜ガラスの形状については特に限定はなく、チップカット形状であってもよいが、ロール・トゥ・ロールでの生産の適性の観点から、ロール状であることが好ましい。
薄膜ガラスの平均厚さは、5〜200μmであることが好ましく、5〜100μmであることがより好ましい。厚さが5μm未満では、搬送などの取り扱いが難しく、厚さが200μmを超えると、薄膜の価値が薄れてしまうからである。この範囲であれば、自動車の窓などの曲面にも容易に貼ることができる。
薄膜ガラスは、多成分系酸化物ガラスであれば特に限定はない。例えば、無アルカリガラス、硼珪酸ガラス、アルミノシリケートガラス等が薄膜ガラスとして特に好適であり、その中でも無アルカリガラスは最も好ましい。
薄膜ガラスの表面は、適切に洗浄されている事が好ましい。皮脂やほこりなどの有機物が付着していると、接着層との接着性が低下してしまう。洗浄方法は公知のガラス洗浄方法に従うが、例えば、アルカリ洗浄、酸洗浄、洗剤洗浄、溶媒洗浄、液体噴射洗浄、UV洗浄、エキシマー洗浄、プラズマ洗浄、イオン洗浄、スパッター洗浄、加熱洗浄、ドライアイス噴射洗浄等が洗浄方法として好適であり、その中でもアルカリ洗浄、UV洗浄、エキシマー洗浄が好ましい。
また、薄膜ガラスに予め表面処理が施されていてもよい。例えば、TEOSやTMOSなどのシリコンアルコキシドや、シランカップリング剤で処理されていることが好ましい。
(樹脂層)
樹脂層としては、JIS R3106−1998で示される可視光領域の透過率が85%以上であることが好ましく、特に90%以上であることが好ましい。樹脂層が上記透過率以上であることにより、ガラス積層体としたときのJIS R3106−1998で示される可視光領域の透過率を50%以上にするという点で有利であり、好ましい。
また、樹脂層は未延伸フィルムでもよく、延伸フィルムでもよい。強度向上、熱膨張抑制の点から延伸フィルムが好ましい。
また、樹脂層は、製膜過程で片面または両面にインラインで下引層塗布液を塗布することが好ましい。本発明に有用な下引層塗布液に使用する樹脂としては、ポリエステル樹脂、アクリル変性ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、アクリル樹脂、ビニル樹脂、塩化ビニリデン樹脂、ポリエチレンイミンビニリデン樹脂、ポリエチレンイミン樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、変性ポリビニルアルコール樹脂及びゼラチン等が挙げられ、いずれも好ましく用いることができる。これらの下引層には、従来公知の添加剤を加えることもできる。そして、上記の下引層は、ロールコート、グラビアコート、ナイフコート、ディップコート、スプレーコート等の公知の方法によりコーティングすることができる。上記の下引層の塗布量としては、0.01〜2g/m2(乾燥状態)程度が好ましい。
また、樹脂層としては、光学的に透明な樹脂であれば特に限定はなく、例えば、アクリル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、シクロオレフィン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリ乳酸系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂、セルロース系樹脂などを用いることができる。中でも、耐熱性を考慮して、セルロース系樹脂を用いることが好ましい。
また、樹脂層は、熱線反射層形成時の水分を速やかに逃がすことを考慮して、JIS Z 0208に準拠して測定される40℃、90%RHにおける透湿度が、100g/m2・24hr以上であることが好ましい。
また、樹脂層は、熱線反射層を形成時に支持する観点から、その膜厚は5μm以上であることが好ましい。
<セルロース系樹脂>
樹脂層に用いるセルロース系樹脂としては、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、シアノエチルセルロースなどのセルロースエーテル類と、トリアセチルセルロース(TAC)、ジアセチルセルロース(DAC)、セルロースアセテートプロピオネート(CAP)、セルロースアセテートブチレート(CAB)、セルロースアセテートフタレート、セルロースアセテートトリメリテート、硝酸セルロース等のセルロースエステル類が挙げられるが、好ましくはセルロースエステル類である。あるいは、特開2002−179701号公報の段落番号[0010]〜[0027]記載の芳香族カルボン酸エステルが用いられ、特に特開2002−17979号公報の段落番号[0028]〜[0036]のセルロースアシレートが好ましく用いられる。
セルロース系樹脂の原料のセルロースとしては、特に限定はないが、綿花リンター、木材パルプ、ケナフなどを挙げることができる。また、これらから得られたセルロース系樹脂は、それぞれを単独あるいは任意の割合で混合使用することができるが、綿花リンターを50質量%以上使用することが好ましい。
セルロースエステルの分子量が大きいと弾性率が大きくなるが、分子量を上げ過ぎるとセルロースエステルの溶解液の粘度が高くなり過ぎるため生産性が低下する。セルロースエステルの分子量は数平均分子量で70000〜200000のものが好ましく、100000〜200000のものが更に好ましい。本実施形態で用いるセルロースエステルは、重量平均分子量をMwとし、数平均分子量をMnとして、Mw/Mn比が1.4〜3.0であることが好ましく、更に好ましくは1.4〜2.3である。
セルロースエステルの平均分子量及び分子量分布は、高速液体クロマトグラフィーを用いて測定することができるので、これを用いて数平均分子量(Mn)、重量平均分子量(Mw)を算出し、その比を計算することができる。なお、測定条件は以下の通りである。
溶媒: メチレンクロライド
カラム: Shodex K806,K805,K803G(昭和電工(株)製を3本接続して使用した)
カラム温度:25℃
試料濃度: 0.1質量%
検出器: RI Model 504(GLサイエンス社製)
ポンプ: L6000(日立製作所(株)製)
流量: 1.0ml/min
校正曲線: 標準ポリスチレンSTK standard ポリスチレン(東ソー(株)製)Mw=1,000,000〜500迄の13サンプルによる校正曲線を使用した。13サンプルは、ほぼ等間隔に用いることが好ましい。
セルロースエステルの総アシル基置換度は1.0〜2.9のものが好ましく用いられ、更に好ましくは1.5〜2.9である。総アシル基置換度はASTM−D817−96に準じて測定することができる。
〈添加剤〉
本実施形態の樹脂層に用いる樹脂フィルムには、フィルムに加工性・柔軟性・防湿性を付与する可塑剤、紫外線吸収機能を付与する紫外線吸収剤、フィルムに滑り性を付与する微粒子(マット剤)、フィルムの劣化を防止する酸化防止剤等を含有させてもよい。
《可塑剤》
用いられる可塑剤しては特に限定はないが、フィルムにヘイズを発生させたり、フィルムからブリードアウトや揮発が生じないように、接着層と相互作用可能である官能基を有していることが好ましい。
このような官能基としては、水酸基、エーテル基、カルボニル基、エステル基、カルボン酸残基、アミノ基、イミノ基、アミド基、イミド基、シアノ基、ニトロ基、スルホニル基、スルホン酸残基、ホスホニル基、ホスホン酸残基等が挙げられるが、好ましくはカルボニル基、エステル基、ホスホニル基である。
このような可塑剤の例として、リン酸エステル系可塑剤、フタル酸エステル系可塑剤、トリメリット酸エステル系可塑剤、ピロメリット酸系可塑剤、多価アルコールエステル系可塑剤、グリコレート系可塑剤、クエン酸エステル系可塑剤、脂肪酸エステル系可塑剤、カルボン酸エステル系可塑剤、ポリエステル系可塑剤などを好ましく用いることができる。特に好ましくは、多価アルコールエステル系可塑剤、グリコレート系可塑剤、多価カルボン酸エステル系可塑剤等の非リン酸エステル系可塑剤である。
多価アルコールエステルは、2価以上の脂肪族多価アルコールとモノカルボン酸のエステルよりなり、分子内に芳香環またはシクロアルキル環を有することが好ましい。
《紫外線吸収剤》
本実施形態の樹脂層に用いる樹脂フィルムには、紫外線吸収剤を含有させてもよい。なお、樹脂フィルム上に紫外線吸収機能を持つ層を形成してもよい。
紫外線吸収機能のある紫外線吸収剤としては、波長370nm以下の紫外線の吸収能に優れ、波長400nm以上の可視光の吸収が少ないものが好ましく用いられる。好ましく用いられる紫外線吸収剤の具体例としては、例えばトリアジン系化合物、オキシベンゾフェノン系化合物、ベンゾトリアゾール系化合物、サリチル酸エステル系化合物、ベンゾフェノン系化合物、シアノアクリレート系化合物、ニッケル錯塩系化合物などが挙げられるが、これらに限定されない。また、特開平6−148430号公報に記載の高分子紫外線吸収剤も好ましく用いられる。
《マット剤》
本実施形態の樹脂層に用いる樹脂フィルムには、滑り性を付与するためにマット剤等の微粒子を添加することができる。微粒子としては、無機化合物の微粒子または有機化合物の微粒子が挙げられる。
無機化合物の例としては、二酸化ケイ素、二酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、酸化錫等の微粒子が挙げられる。この中では、ケイ素原子を含有する化合物であることが好ましく、特に二酸化ケイ素微粒子が好ましい。二酸化ケイ素微粒子としては、例えばアエロジル(株)製のAEROSIL 200、200V、300、R972、R972V、R974、R202、R812、R805、OX50、TT600などが挙げられる。
有機化合物の例としては、アクリル樹脂、シリコーン樹脂、フッ素化合物樹脂、ウレタン樹脂等が挙げられる。
《酸化防止剤》
酸化防止剤は、劣化防止剤ともいわれる。高湿高温の状態に置かれた場合には、光学フィルムの劣化が起こる場合がある。酸化防止剤は、例えば、光学フィルム中の残留溶媒量のハロゲンやリン酸系可塑剤のリン酸等により光学フィルムが分解するのを遅らせたり、防いだりする役割を有するので、光学フィルム中に含有させるのが好ましい。
このような酸化防止剤としては、ヒンダードフェノール系の化合物が好ましく用いられ、特に、2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール、ペンタエリスリチル−テトラキス〔3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、トリエチレングリコール−ビス〔3−(3−t−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕が好ましい。また、例えば、N,N′−ビス〔3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニル〕ヒドラジン等のヒドラジン系の金属不活性剤やトリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)フォスファイト等のリン系加工安定剤を併用してもよい。
(接着層)
接着層としては、無機系の反応性金属化合物と有機系の水酸基含有高分子化合物との共縮合物が用いられる。接着層中に、薄膜ガラスと共有結合可能な金属性水酸基と、樹脂層中の有機成分と相溶性・親和性の高い有機系水酸基含有高分子化合物を含有することで、薄膜ガラスと樹脂層との接着が可能となる。縮合反応は、一般的に知られている方法を用いることができ、触媒添加による加水分解縮合でもよく、加熱による脱水縮合でもよい。
<加水分解触媒>
無機化合物である加水分解重縮合可能な反応性金属化合物は、加水分解触媒として塩酸・酢酸・クエン酸などの酸を用いることも可能であるが、固体触媒を用いることが好ましい。更に水と必要に応じて他の触媒を加えて加水分解を起こさせて縮合反応を促進してよい。加水分解は、加水分解可能な基が全て加水分解される完全加水分解であってもよいが、特に好ましくは、一部のみが加水分解される部分加水分解である。
加水分解のために添加する水は、反応性金属化合物1モルに対し0.5〜10モルの範囲で用い、前記固体触媒で加水分解することが好ましい。加水分解に使用する水の量が少ないと、アルコキシ基の加水分解が不十分となり、わずかしか水酸基が生成しないといった問題が生じる。好ましくは、使用する水の量は、反応性金属化合物1モルに対し0.5〜4モルである。
また、水としてイオン交換水を用いることも好ましい。イオン交換水は、上記反応性金属化合物の加水分解を行うために好ましく、電気伝導度が1010MΩ以上であるイオン交換水を用いることが好ましい。この電気伝導度よりも低い場合、イオン交換樹脂と加水分解水に含まれているイオンがイオン交換を起こし、加水分解水のpHが大きく変動し、せっかく生成した加水分解重縮合物が安定に存在し得ず、好ましくない。なお、イオン交換水の電気伝導度は1012MΩ以上であることがより好ましく、さらに好ましくは1015MΩ以上である。
また、疎水的な加水分解重縮合可能な反応性金属化合物に水を添加する場合には、加水分解重縮合可能な反応性金属化合物と水が混和し易いように、メタノール、エタノール、アセトニトリルのような親水性の有機溶媒も添加されていることが好ましい。また、水酸基含有高分子化合物(例えばセルロース誘導体)と加水分解重縮合可能な反応性金属化合物とを混合する際に、セルロース誘導体が析出しないよう、セルロース誘導体の良溶媒も添加されていることが好ましい。なお、良溶媒とは、セルロース誘導体に対して良好な溶解性を有する有機溶媒を言う。
加水分解触媒としての固体触媒は、特に限定されるものではなく、以下に挙げるものを使用することができる。
(1)陽イオン交換樹脂:
アンバーライト15、アンバーライト200C、アンバーリスト15(以上、ローム・アンド・ハース社製);ダウエックスMWC−1−H、ダウエックス88、ダウエックスHCR−W2(以上、ダウ・ケミカル社製);レバチットSPC−108、レバチットSPC−118(以上、バイエル社製);ダイヤイオンRCP−150H(三菱化成社製);スミカイオンKC−470、デュオライトC26−C、デュオライトC−433、デュオライト−464(以上、住友化学工業社製);ナフィオン−H(デュポン社製)など。
(2)陰イオン交換樹脂:
アンバーライトIRA−400、アンバーライトIRA−45(以上、ローム・アンド・ハース社製)など。
(3)プロトン酸基を含有する基が表面に結合されている無機固体:
Zr(O3PCH2CH2SO3H)2、Th(O3PCH2CH2COOH)2など。
(4)プロトン酸基を含有するポリオルガノシロキサン:
スルホン酸基を有するポリオルガノシロキサンなど。
(5)ヘテロポリ酸:
コバルトタングステン酸、リンモリブデン酸など。
(6)イソポリ酸:
ニオブ酸、タンタル酸、モリブデン酸など。
(7)単元系金属酸化物:
アルミナ、クロミア、ジルコニア、CaO、MgOなど。
(8)複合系金属酸化物:
シリカ−アルミナ、シリカ−マグネシア、シリカ−ジルコニア、ゼオライト類など。
(9)粘土鉱物:
酸性白土、活性白土、モンモリロナイト、カオリナイトなど。
(10)金属硫酸塩:
LiSO4、MgSO4など。
(11)金属リン酸塩:
リン酸ジルコニア、リン酸ランタンなど。
(12)金属硝酸塩:
LiNO3、Mn(NO32など。
(13)アミノ基を含有する基が表面に結合されている無機固体:
シリカゲル上にアミノプロピルトリエトキシシランを反応させて得られた固体など。
(14)アミノ基を含有するポリオルガノシロキサン:
アミノ変性シリコーン樹脂など。
これらの中で、本実施形態では、特に陽イオン交換樹脂が好ましい。陽イオン交換樹脂の種類としては、まず、骨格はポリスチレン又はジビニルベンゼンの懸濁重合高分子体が好ましい。イオン交換樹脂のタイプは、ゲル型とマクロポーラス型に分かれるが、ゲル型樹脂は空孔を有さず、反応に関与する物質が樹脂内部に進入しにくく、活性点が有効に利用され難い。マクロポーラス型樹脂は大きな空孔を有しており、反応に関与する物質が容易に活性点に到達することができ、活性点が有効に利用される。このため、本実施形態で用いる陽イオン交換樹脂としては、空孔体積が水銀注入法による測定で0.1ml/g以上を示すマクロポーラスであることが好ましい。また、樹脂についている酸性基としてはスルホン基、アクリル基等で、H+型であることが好ましく、スルホン基がより好ましい。これらを満たすイオン交換樹脂の例としては、アンバーリスト15(ローム・アンド・ハーズ社製)、ダイアイオンPK−208H,PK−216H,PK−228H(以上三菱化成製)、ビュロライトCT−175,CT−171,CT−169(以上ビュロライト社製)等を例示することができる。これらの中で、特にビュロライトCT−175(ビュロライト社製)が好ましい。
本実施形態おいては、上記イオン交換樹脂の添加後、撹拌し、上記反応性金属化合物を加水分解させて加水分解物またはその縮合物を得るものであるが、この場合、撹拌時間(反応時間)は3分以上、特に5分以上とすることが好ましい。また、反応温度は0℃以上とすることが好ましい。しかし、反応時間は長過ぎると縮合物の分子量が大きく成り過ぎヘイズ上昇の可能性があるため、3時間以内の反応時間が好ましい。また、反応温度が高い場合においても、同様であり、反応温度としては0〜50℃での実施が好ましい。
本実施形態で用いる陽イオン交換樹脂の粒径としては、特に制限はないが、平均粒径が10〜2000μmの範囲が好ましい。平均粒径が10μm未満の場合は、処理後の樹脂分離の際濾過性や液切れが劣化することがあり、また平均粒径が2000μmを超えると、質量当たりの表面積が低下し、加水分解効率が低いという問題がある。粒径は揃っていたほうが好ましいが、欠けたり割れたりした粒子が一部混入していてもよい。
また、イオン交換樹脂のイオン交換容量は、0.1ミリ等量/ml以上が好ましい。0.1ミリ等量/ml未満では、加水分解効率が低下し、生産性の低下を来たすことがある。
本実施形態において、固体触媒であるイオン交換樹脂の添加量は、加水分解重縮合可能な反応性金属化合物に対して、0.00001〜30質量%であることが好ましく、より好ましくは0.001〜20質量%である。イオン交換樹脂の量が多過ぎると、縮合が優先的に進行してしまい、縮合物の分子量が大きく成り過ぎる。また、イオン交換樹脂の量が少な過ぎると、加水分解に必要な十分な活性が得られず、加水分解物またはその縮合物を十分得ることができない。
本実施形態における固体触媒を用いた加水分解の方法は、予め水とアルコールを混合しておき、ここに反応性金属化合物を添加混合した後、固体触媒を添加して攪拌して加水分解を進めることが好ましい。また、予め水とアルコールを混合し、ここに固体触媒を添加した後、更にここに反応性金属化合物を攪拌しながら添加して加水分解を進めることも好ましい。
<反応性金属化合物>
本実施形態において、金属とは、「周期表の化学」岩波書店 斎藤一夫著 p.71記載の金属、すなわち、半金属性原子を含む金属である。
本実施形態で用いられる加水分解重縮合が可能な反応性金属化合物としては、例えば金属アルコキシド、金属ジケトネート、金属アルキルアセトアセテート、金属イソシアネート、反応性の金属ハロゲン化物が挙げられる。好ましくは、金属種が、Si、Ti、ZrまたはAlのアルコキシドであり、特に好ましくは、Siのアルコキシドである。
このような加水分解重縮合可能な反応性金属化合物は、中心金属をM、その原子数をq、加水分解されない置換基をA、その置換基数をp、加水分解可能な置換基をB、その置換基数をrとすると、理想的には下記の式(1)のように反応が完結し、金属酸化物が得られる。
式(1) Apqr → Apqr/2
加水分解重縮合可能な反応性金属化合物としては、式(1)で示されているApqrにおいて、p=0であるような、全てが加水分解可能な置換基で置換されていることが好ましいが、基材フィルムの透湿度を低減する観点から、加水分解されない置換基によって該金属1原子当たり1つまたは2つ、或いは3つ置換されている化合物が含まれていても良い。このような加水分解されない置換基を有する金属化合物の添加量としては、添加される金属化合物の50モル%以下が好ましい。また、上記添加量の範囲で2種以上の異なる種類の金属アルコキシドを併用しても良い。
このような加水分解されない置換基としては、置換または無置換のアルキル基、または置換または無置換のアリール基が好ましく、該アルキル基またはアリール基の置換基としては、アルキル基(例えばメチル基、エチル基等)、シクロアルキル基(例えばシクロペンチル基、シクロヘキシル基等)、アラルキル基(例えばベンジル基、2−フェネチル基等)、アリール基(例えばフェニル基、ナフチル基等)、複素環基(例えばフラン、チオフェン、ピリジン等)、アルコキシ基(例えばメトキシ基、エトキシ基等)、アリールオキシ基(例えばフェノキシ基等)、アシル基、ハロゲン原子、シアノ基、アミノ基、アルキルチオ基、グリシジル基、ビニル基、フッ素原子含有アルキル基またはフッ素原子含有アリール基等が挙げられる。
本実施形態で用いられる重縮合が可能な反応性金属化合物としては、ケイ素化合物として、例えば、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトライソプロポキシシラン、テトラ−n−ブトキシシラン、テトラ−t−ブトキシシラン、テトラキス(メトキシエトキシ)シラン、テトラキス(メトキシプロポキシ)シラン、テトラクロロシラン、テトライソシアナートシラン等が挙げられる。
また、加水分解されない置換基を有するケイ素化合物として、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、ジメチルジイソプロポキシシラン、ジメチルジブトキシシラン、ジエチルジメトキシシラン、ジエチルジエトキシシラン、ジエチルジイソプロポキシシラン、ジエチルジブトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン、ジフェニルジイソプロポキシシラン、ジフェニルジブトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、ジクロロジメチルシラン、ジクロロジエチルシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、メチルトリイソプロポキシシラン、メチルトリブトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、エチルトリイソプロポキシシラン、エチルトリブトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、フェニルトリイソプロポキシシラン、フェニルトリブトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリイソプロポキシシラン、ビニルトリブトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3−クロロプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、(3−アクリロキシプロピル)トリメトキシシラン、アセトキシトリエトキシシラン、(ヘプタデカフルオロ−1,1,2,2−テトラヒドロデシル)トリメトキシシラン、(3,3,3−トリフルオロプロピル)トリメトキシシラン、メチルトリクロロシラン、エチルトリクロロシラン、フェニルトリクロロシラン、(3,3,3−トリフルオロプロピル)トリエトキシシラン、ペンタフルオロフェニルプロピルトリメトキシシラン、(ヘプタデカフルオロ−1,1,2,2−テトラヒドロデシル)トリエトキシシラン、(3,3,3−トリフルオロプロピル)トリクロロシラン、ペンタフルオロフェニルプロピルトリクロロシラン、(ヘプタデカフルオロ−1,1,2,2−テトラヒドロデシル)トリクロロシラン、メチルトリイソシアナートシラン、フェニルトリイソシアナートシラン、ビニルトリイソシアナートシラン等が挙げられる。また、これらの化合物が部分的に縮合した、多摩化学製シリケート40、シリケート45、シリケート48、Mシリケート51のような、数量体のケイ素化合物でもよい。
また、チタン化合物としては、チタンメトキシド、チタンエトキシド、チタンイソプロポキシド、チタン−n−ブトキシド、テトラクロロチタン、チタンジイソプロポキシド(ビス−2,4−ペンタンジオネート)、チタンジイソプロポキシド(ビス−2,4−エチルアセトアセテート)、チタンジ−n−ブトキシド(ビス−2,4−ペンタンジオネート)、チタンアセチルアセトネート、チタンラクテート、チタントリエタノールアミネート、ブチルチタネートダイマー等が挙げられる。
また、ジルコニウム化合物としては、ジルコニウム−n−プロポキシド、ジルコニウム−n−ブトキシド、ジルコニウムトリ−n−ブトキシドアセチルアセトネート、ジルコニウムジ−n−ブトキシドビスアセチルアセトネート、ジルコニウムアセチルアセトネート、ジルコニウムアセテート、等が挙げられる。
また、アルミニウム化合物としては、アルミニウムエトキシド、アルミニウムイソプロポキシド、アルミニウム−n−ブトキシド、アルミニウム−s−ブトキシド、アルミニウム−ジ−s−ブトキシドエチルアセチルアセトナート、アルミニウム−t−ブトキシド、アルマトラン、アルミニウムフェノキシド、アルミニウムアセチルアセトナート、アルミニウムエチルアセチルアセトナート等が挙げられる。
また、その他の金属からなる化合物としては、例えば、バリウムイソプロポキシド、カルシウムエトキシド、銅エトキシド、マグネシウムエトキシド、マンガンメトキシド、ストロンチウムイソプロポキシド、錫エトキシド、亜鉛メトキシエトキシド、トリメトキシボラン、トリエトキシボラン、アンチモンエトキシド、ヒ素トリエトキシド、ビスマスt−ペントキシド、クロムイソプロポキシド、エルビウムメトキシエトキシド、ガリウムエトキシド、インジウムメトキシエトキシド、鉄エトキシド、ランタンイソプロポキシド、ネオジウムメトキシエトキシド、プラセオジムメトキシエトキシド、サマリウムイソプロポキシド、バナジウムトリイソブトキシドオキシド、イットリウムイソプロポキシド、テトラメトキシゲルマン、テトラエトキシゲルマン、テトライソプロポキシゲルマン、テトラ−n−ブトキシゲルマン、セリウム−t−ブトキシド、ハフニウムエトキシド、ハフニウム−n−ブトキシド、テルルエトキシド、モリブデンエトキシド、ニオブエトキシド、ニオブ−n−ブトキシド、タンタルメトキシド、タンタルエトキシド、タンタル−n−ブトキシド、タングステン(V)エトキシド、タングステン(VI)エトキシド、タングステン(VI)フェノキシド等が挙げられる。
また、本実施形態で用いられる重縮合が可能な反応性金属化合物としては、分子種内に2つの金属原子を持つダブル金属アルコキシドと呼ばれる化合物でも良い。このようなダブル金属アルコキシドとしては、例えば、ゲレスト社製のアルミニウム銅アルコキシド、アルミニウムチタンアルコキシド、アルミニウムイットリウムアルコキシド、アルミニウムジルコニウムアルコキシド、バリウムチタンアルコキシド、バリウムイットリウムアルコキシド、バリウムジルコニウムアルコキシド、インジウム錫アルコキシド、リチウムニッケルアルコキシド、リチウムニオブアルコキシド、リチウムタンタルアルコキシド、マグネシウムアルミニウムアルコキシド、マグネシウムチタンアルコキシド、マグネシウムジルコニウムアルコキシド、ストロンチウムチタンアルコキシド、ストロンチウムジルコニウムアルコキシド等が挙げられるが、少なくとも、ケイ素、アルミニウム、チタニウム、ジルコニウムのいずれかの金属が含まれているものが好ましい。
<水酸基含有高分子化合物>
水酸基含有高分子化合物は、分子内に水酸基を含有していればよく、例えば、ポリビニルアルコール等の合成高分子や、デンプン、セルロース、カルボキシメチルセルロース、アルギン酸ナトリウムなどの多糖類とそれらの誘導体などが挙げられる。これらの水酸基含有高分子化合物は、1種単独で又は2種以上を適宜組み合わせて用いることができる。
合成高分子には、例えば、水酸基を有するビニル系、ポリスチレン系、ポリアクリル系、ポリウレタン系、アルキド系、メラミン系、尿素系、フェノール系、ポリエステル系、ポリグリセリン系高分子化合物、また多分岐形状を有する水酸基を有する高分子化合物を用いることができる。また、水酸基を有する高分子は、水酸基をもつ単量体を導入した重合体であってもよい。この場合、高分子の有する水酸基の量や導入位置が調整可能となる。
水酸基を有する単量体としては、3−ビニルフェノール、ヒドロキシメチルスチレン、4−ビニルベンジル−4−ヒドロキシブチルエーテル、4−(ヒドロキシメチルシリルフェニル)スチレン、などの水酸基を有するスチレン類や、ヒドロキシエチルメタクリレートなどの水酸基を有するアクリル樹脂や、N−(4−(4−ヒドロキシフェニルスルホニル)フェノキシカルボニル)メタクリルアミドなどの水酸基を有するアクリルアミド樹脂などが使用でき、好ましくはビニル系モノマーである。これらの水酸基を有する単量体は、2種類以上を混合して用いてもよい。
多糖類としては、デンプン、ヒドロキシメチルデンプン、ヒドロキシエチルデンプン、ヒドロキシプロピルデンプン、グリコーゲン、イヌリン、リケニン、セルロース、ヘミセルロース、アミロペクチン、ヘパリン、ヘパリチン硫酸、コンドロイチン硫酸、ヒアルロン酸、ケラト硫酸、キチン、キトサン、寒天、カラギーナン、アルギン酸、ファーセレラン、ローカストビーンガム、ガラクトマンナン、グアガム、サイリュウガム、タマリンドガム、アラビアガム、トラガカントガム、カラヤガム、ペクチン、アラビノガラクタン、キサンタンガム、ジェランガム、プルラン、デキストラン、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、エチルセルロース、及びこれらのカチオン化物等が挙げられる。
本実施形態で用いられる水酸基含有高分子化合物としては、セルロース誘導体が好ましく用いられ、中でもジアセチルセルロース(DAC)、セルロースアセテートプロピオネート(CAP)、セルロースアセテートブチレート(CAB)、セルロースアセテートフタレート、セルロースアセテートトリメリテート、硝酸セルロース等のセルロースエステル類が好ましい。更に好ましくは、アシル基置換度が0.5〜2.9であり、より好ましくは、アシル基置換度が1.0〜2.6である。
(熱線反射層)
本実施形態の熱線反射層としては、高屈折率層と低屈折率層とが交互に積層されたものを用いる。
一般に、高屈折率層と低屈折率層との屈折率の差を大きく設計することが、少ない層数で赤外反射率を高くすることができるという観点から好ましい。例えば、高屈折率層及び低屈折率層から構成されるユニットの少なくとも1つにおいて、隣接する高屈折率層と低屈折率層との屈折率差が0.1以上であることが好ましく、より好ましくは0.3以上であり、さらに好ましくは0.35以上であり、特に好ましくは0.4以上である。このユニットを複数有する場合には、全てのユニットにおける高屈折率層と低屈折率層との屈折率差が上記好適な範囲内にあることが好ましい。ただし、最表層や最下層に関しては、上記好適な範囲外の構成であってもよい。高屈折率層の好ましい屈折率は1.80〜2.50であり、より好ましくは1.90〜2.20である。また、低屈折率層の好ましい屈折率は1.10〜1.60であり、より好ましくは1.30〜1.50である。
特定波長領域の反射率は、隣接する2層の屈折率差と積層数で決まり、屈折率の差が大きいほど、少ない層数で同じ反射率を得られる。この屈折率差と必要な層数については、市販の光学設計ソフトを用いて計算することができる。例えば、赤外反射率90%以上を得るためには、屈折率差が0.1より小さいと、200層以上の積層が必要になり、生産性が低下するだけでなく、積層界面での散乱が大きくなり、透明性が低下し、また故障なく製造することも非常に困難になる。反射率の向上と層数を少なくするという観点からは、屈折率差に上限はないが、実質的には1.4程度が限界である。
さらには、本実施形態の熱線反射層の光学特性として、JIS R3106−1998で示される可視光領域の透過率が50%以上、好ましくは75%以上、より好ましくは85%以上であることが好ましく、また、波長900nm〜1400nmの領域に反射率50%を超える領域を有することが好ましい。
本実施形態の熱線反射層は、高屈折率層と低屈折率層とから構成されるユニットを少なくとも1つ含む構成を有するものであればよい。好ましい高屈折率層および低屈折率層の層数としては、上記の観点から、総層数の範囲としては、100層以下、すなわち50ユニット以下であり、より好ましくは40層(20ユニット)以下であり、さらに好ましくは20層(10ユニット)以下である。
低屈折率層の1層あたりの厚みは、20〜800nmであることが好ましく、50〜350nmであることがより好ましい。一方、高屈折率層の1層あたりの厚みは、20〜800nmであることが好ましく、50〜350nmであることがより好ましい。
また、本実施形態における高屈折率層および低屈折率層はそれぞれ水溶性高分子を含んでおり、樹脂層上に水系塗布によって形成される。
<水溶性高分子>
高屈折率層および低屈折率層に適用可能な水溶性高分子としては、合成高分子が挙げられ、例えば、ポリビニルアルコール類、ポリビニルピロリドン類、ポリアクリル酸、アクリル酸−アクリルニトリル共重合体、アクリル酸カリウム−アクリルニトリル共重合体、酢酸ビニル−アクリル酸エステル共重合体、若しくはアクリル酸−アクリル酸エステル共重合体などのアクリル系樹脂、スチレン−アクリル酸共重合体、スチレン−メタクリル酸共重合体、スチレン−メタクリル酸−アクリル酸エステル共重合体、スチレン−α−メチルスチレン−アクリル酸共重合体、若しくはスチレン−α−メチルスチレン−アクリル酸−アクリル酸エステル共重合体などのスチレンアクリル酸樹脂、スチレン−スチレンスルホン酸ナトリウム共重合体、スチレン−2−ヒドロキシエチルアクリレート共重合体、スチレン−2−ヒドロキシエチルアクリレート−スチレンスルホン酸カリウム共重合体、スチレン−マレイン酸共重合体、スチレン−無水マレイン酸共重合体、ビニルナフタレン−アクリル酸共重合体、ビニルナフタレン−マレイン酸共重合体、酢酸ビニル−マレイン酸エステル共重合体、酢酸ビニル−クロトン酸共重合体、酢酸ビニル−アクリル酸共重合体などの酢酸ビニル系共重合体及びそれらの塩が挙げられる。これらの中で、特に好ましい例としては、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン類及びそれを含有する共重合体が挙げられる。
水溶性高分子の重量平均分子量は、1,000以上200,000以下が好ましい。さらには、3,000以上40,000以下がより好ましい。
好ましく用いられるポリビニルアルコールには、ポリ酢酸ビニルを加水分解して得られる通常のポリビニルアルコールの他に、末端をカチオン変性したポリビニルアルコールやアニオン性基を有するアニオン変性ポリビニルアルコール等の変性ポリビニルアルコールも含まれる。
酢酸ビニルを加水分解して得られるポリビニルアルコールとしては、平均重合度が1,000以上のものが好ましく用いられ、特に平均重合度が1,500〜5,000のものが好ましく用いられる。また、ケン化度は、70〜100%のものが好ましく、80〜99.5%のものが特に好ましい。
カチオン変性ポリビニルアルコールとしては、例えば、特開昭61−10483号に記載されているような、第一〜三級アミノ基や第四級アンモニウム基を上記ポリビニルアルコールの主鎖または側鎖中に有するポリビニルアルコールであり、カチオン性基を有するエチレン性不飽和単量体と酢酸ビニルとの共重合体をケン化することにより得られる。
カチオン性基を有するエチレン性不飽和単量体としては、例えば、トリメチル−(2−アクリルアミド−2,2−ジメチルエチル)アンモニウムクロライド、トリメチル−(3−アクリルアミド−3,3−ジメチルプロピル)アンモニウムクロライド、N−ビニルイミダゾール、N−ビニル−2−メチルイミダゾール、N−(3−ジメチルアミノプロピル)メタクリルアミド、ヒドロキシルエチルトリメチルアンモニウムクロライド、トリメチル−(2−メタクリルアミドプロピル)アンモニウムクロライド、N−(1,1−ジメチル−3−ジメチルアミノプロピル)アクリルアミド等が挙げられる。カチオン変性ポリビニルアルコールのカチオン変性基含有単量体の比率は、酢酸ビニルに対して0.1〜10モル%、好ましくは0.2〜5モル%である。
アニオン変性ポリビニルアルコールは、例えば、特開平1−206088号に記載されているようなアニオン性基を有するポリビニルアルコール、特開昭61−237681号および同63−307979号に記載されているような、ビニルアルコールと水溶性基を有するビニル化合物との共重合体及び特開平7−285265号に記載されているような水溶性基を有する変性ポリビニルアルコールが挙げられる。
また、ノニオン変性ポリビニルアルコールとしては、例えば、特開平7−9758号に記載されているようなポリアルキレンオキサイド基をビニルアルコールの一部に付加したポリビニルアルコール誘導体、特開平8−25795号に記載されている疎水性基を有するビニル化合物とビニルアルコールとのブロック共重合体等が挙げられる。ポリビニルアルコールは、重合度や変性の種類違いなど2種以上を併用してもよい。
本実施形態においては、水溶性高分子とともに硬化剤を使用してもよい。水溶性高分子がポリビニルアルコールの場合には、ホウ酸およびその塩やエポキシ系硬化剤が好ましい。
高屈折率層および低屈折率層に含まれる水溶性高分子の含有量は、その層に含まれる金属酸化物粒子(詳細は後述する)100質量%に対して、50〜150質量%であることが好ましく、より好ましくは80〜120質量%である。水溶性高分子の量が少なすぎると膜の強度が落ちる場合があり、多すぎる場合、膜の屈折率が下がる場合がある。なお、高屈折率層および低屈折率層に含まれる水溶性高分子は、互いに同一であってもよいし、異なっていてもよいが、同一であることが好ましい。
《金属酸化物粒子》
本実施形態に用いられうる金属酸化物粒子としては、例えば、二酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化亜鉛、合成非晶質シリカ、コロイダルシリカ、アルミナ、コロイダルアルミナ、チタン酸鉛、鉛丹、黄鉛、亜鉛黄、酸化クロム、酸化第二鉄、鉄黒、酸化銅、酸化マグネシウム、水酸化マグネシウム、チタン酸ストロンチウム、酸化イットリウム、酸化ニオブ、酸化ユーロピウム、酸化ランタン、ジルコン、酸化スズなどが挙げられる。
透明でより屈折率の高い高屈折率層を形成するために、高屈折率層は、チタン、ジルコニア等の高屈折率金属酸化物微粒子、すなわち、酸化チタン微粒子、酸化ジルコニア微粒子を含有させることが好ましい。特に、体積平均粒径が100nm以下のルチル型(正方晶形)酸化チタン粒子を含有することが好ましい。
本実施形態で用いられる酸化チタン粒子または酸化ジルコニア粒子の体積平均粒径は、100nm以下であることが好ましく、4〜50nmであることがより好ましく、4〜40nmであるのがさらに好ましい。体積平均粒径が100nm以下であれば、ヘイズが少なく可視光透過性に優れる観点で好ましい。
ここでいう体積平均粒径とは、媒体中に分散された一次粒子または二次粒子の体積平均粒径であり、レーザー回折/散乱法、動的光散乱法等により測定できる。
各層に存在する粒子の平均径を測定する場合は、具体的には、粒子そのものあるいは屈折率層の断面や表面に現れた粒子を電子顕微鏡で観察し、1,000個の任意の粒子の粒径を測定し、それぞれd1、d2・・・di・・・dkの粒径を持つ粒子がそれぞれn1、n2・・・ni・・・nk個存在する金属酸化物粒子の集団において、粒子1個当りの体積をviとした場合に、体積平均粒径mv={Σ(vi・di)}/{Σ(vi)}で表される体積で重み付けされた平均粒径を算出する。
さらに、本実施形態で用いられる酸化チタン粒子または酸化ジルコニア粒子は、単分散であることが好ましい。ここでいう単分散とは、下記式(2)で求められる単分散度が40%以下であることをいう。この単分散度は、さらに好ましくは30%以下であり、特に好ましくは0.1〜20%である。
式(2) 単分散度=(粒径の標準偏差)/(粒径の平均値)×10
本実施形態で用いられる酸化チタン粒子としては、pHが1.0〜3.0で、かつチタン粒子のゼータ電位が正である水系の酸化チタンゾルの酸化チタン粒子の表面を、疎水化して有機溶剤に分散可能な状態にしたものを用いることが好ましい。
本実施形態で用いることのできる水系の酸化チタンゾルの調製方法としては、たとえば、特開昭63−17221号公報、特開平7−819号公報、特開平9−165218号公報、特開平11−43327号公報、特開昭63−17221号公報、特開平7−819号公報、特開平9−165218号公報、特開平11−43327号公報等に記載された事項を参照にすることができる。
高屈折率層における金属酸化物粒子の含有量としては、高屈折率層の固形分100質量%に対して、15〜70質量%であることが好ましく、20〜65質量%であることがより好ましく、30〜60質量%であることがさらに好ましい。
一方、低屈折率層に含まれる金属酸化物粒子としては、二酸化ケイ素が好ましく、合成非晶質シリカ、コロイダルシリカ等が挙げられる。これらのうち、酸性のコロイダルシリカゾルを用いることがより好ましく、有機溶媒に分散させたコロイダルシリカゾルを用いることがさらに好ましい。また、屈折率をより低減させるためには、金属酸化物微粒子として、粒子の内部に空孔を有する中空微粒子を用いることが特に好ましく、二酸化ケイ素(シリカ)の中空微粒子が最も好ましい。
低屈折率層に含まれる金属酸化物粒子は、その体積平均粒径が3〜100nmであることが好ましく、3〜50nmであるのがより好ましく、3〜30nmであるのがさらに好ましい。
低屈折率層に含まれる金属酸化物微粒子の体積平均粒径は、高屈折層に含まれる金属酸化物粒子の平均粒径の測定と同様の方法により求められる。
本実施形態で用いられるコロイダルシリカは、珪酸ナトリウムの酸等による複分解やイオン交換樹脂層を通過させて得られるシリカゾルを加熱熟成して得られるものであり、たとえば、特開昭57−14091号公報、特開昭60−219083号公報、特開昭60−219084号公報、特開昭61−20792号公報、特開昭61−188183号公報、特開昭63−17807号公報、特開平4−93284号公報、特開平5−278324号公報、特開平6−92011号公報、特開平6−183134号公報、特開平6−297830号公報、特開平7−81214号公報、特開平7−101142号公報、特開平7−179029号公報、特開平7−137431号公報、および国際公開第94/26530号パンフレットなどに記載されているものである。
このようなコロイダルシリカは合成品を用いてもよいし、市販品を用いてもよい。
コロイダルシリカは、その表面をカチオン変性されたものであってもよく、また、Al、Ca、MgまたはBa等で処理されたものであってもよい。
本実施形態で用いられる中空微粒子は、平均粒子空孔径が、3〜70nmであるのが好ましく、5〜50nmがより好ましく、5〜45nmがさらに好ましい。なお、中空微粒子の平均粒子空孔径とは、中空微粒子の内径の平均値である。本発明において、中空微粒子の平均粒子空孔径は、上記範囲であれば、十分に低屈折率層の屈折率が低屈折率化される。平均粒子空孔径は、電子顕微鏡観察で、円形、楕円形または実質的に円形は楕円形として観察できる空孔径を、ランダムに50個以上観察し、各粒子の空孔径を求め、その数平均値を求めることにより得られる。なお、本明細書中、平均粒子空孔径としては、円形、楕円形または実質的に円形もしくは楕円形として観察できる空孔径の外縁を、2本の平行線で挟んだ距離のうち、最小の距離を意味する。
本実施形態で用いられる中空微粒子は、外郭の平均厚さは10nm以下であるのが好ましく、1〜7nmがより好ましく、1〜5nmがさらに好ましい。なお、本明細書中、中空微粒子における空孔の外側部分を外郭と称する。外郭の厚さが10nm以下であれば、ヘイズが少なく、ガラス積層体の光透過率性が優れるため好ましい。外郭の厚さが1nm以上であれば、粒子の機械的強度が増して低屈折率層中でその形状を維持できるため、空孔の形成が容易となる。外郭の平均厚さは、電子顕微鏡観察で、円形、楕円形または実質的に円形は楕円形として観察できる空孔の外郭の平均厚さを、ランダムに50個以上観察し、各粒子の外郭の平均厚さを求め、その数平均値を求めることにより得られる。
このような中空微粒子は、合成品を用いてもよいし、市販品を用いてもよい。ここで、二酸化ケイ素(シリカ)の中空微粒子としては、例えば、アルカリ条件下(例えば、アンモニアを添加)、炭酸カルシウム水分散液に、有機ケイ素化合物(例えば、テトラエトキシシランなどのアルコキシシラン)を加え、撹拌する。その後、50〜80℃に加熱して撹拌し、シリカ被覆炭酸カルシウム分散液を得る。該シリカ被覆炭酸カルシウム分散液を、酸性条件下(たとえば、酢酸を添加)で、炭酸カルシウムを分解し、炭酸ガスを発生させて、炭酸カルシウムを溶出する。得られた分散液に蒸留水を添加した後、添加したのと同量の蒸留水が排出されるまで、分散液に限外ろ過を行う。該限外ろ過を1〜5回行うことで、シリカ中空微粒子を含有する分散液を得ることができる。
低屈折率層における金属酸化物粒子の含有量は、低屈折率層の固形分100質量%に対して、0.1〜50質量%であることが好ましく、0.5〜45質量%であることがより好ましく、1〜40質量%であることがさらに好ましく、5〜30質量%であることが特に好ましい。
《熱ゲル化剤》
本実施形態の熱線反射層は、高屈折率層および低屈折率層の少なくとも1層が熱ゲル化剤を含むことが望ましい。このような構成とすることにより、熱線反射層におけるひび割れ、ムラ、さらに、高屈折率層と低屈折率層との間の粒子の混合が防止される。その結果、柔軟性や透明性、赤外遮蔽性に優れた熱線反射層を高い生産性で製造することができる。
本明細書において、「熱ゲル化剤」とは、水に溶解し、昇温により増粘ゲル化し、冷却によりゾル化する性質を有する物質である。熱ゲル化剤がゲル化する温度について特に制限はないが、好ましくは40℃以上であり、より好ましくは50℃以上であり、さらに好ましくは60℃以上である。上述の定義を満たす限り、本実施形態において用いられる熱ゲル化剤の具体的な形態について制限はない。一例を挙げると、熱ゲル化剤としては、例えば、カードラン、メチルセルロース(MC)、ヒドロキシエチルメチルセルロース(HEMC)、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、ヒドロキシエチルセルロース(HEC)、卵白、大豆グロブリンなどが挙げられる。この際、ヒドロキシプロピルメチルセルロースは、分子量やメトキシ基・プロピル基の含有量などに応じて溶解時の粘度・溶解性が異なることから、好ましい性質のものを適宜選択して用いればよい。なお、製造されたガラス積層体において、熱ゲル化剤は、通常は既にゲル化した状態にある。このような場合についても、「熱ゲル化剤を含む」と解するものとする。このことは、後述する「低温ゲル化剤」についても同様である。
上述したように、本実施形態では高屈折率層および低屈折率層の少なくとも1層が熱ゲル化剤を含めばよいが、高屈折率層の少なくとも1層が熱ゲル化剤を含むことが好ましい。また、すべての高屈折率層が熱ゲル化剤を含むことがより好ましい。さらに他の好ましい形態として、高屈折率層および低屈折率層の双方の少なくとも1層ずつが熱ゲル化剤を含むことが好ましく、すべての高屈折率層およびすべての低屈折率層が熱ゲル化剤を含むことがより好ましい。
各層に含まれる熱ゲル化剤の含有量について特に制限はないが、高屈折率層が熱ゲル化剤を含む場合における高屈折率層における熱ゲル化剤の含有量は、高屈折率層の固形分100質量%に対して、3〜30質量%であることが好ましく、5〜25質量%であることがより好ましく、7〜20質量%であることがさらに好ましい。また、低屈折率層が熱ゲル化剤を含む場合における低屈折率層における熱ゲル化剤の含有量は、低屈折率層の固形分100質量%に対して、3〜30質量%であることが好ましく、5〜25質量%であることがより好ましく、7〜20質量%であることがさらに好ましい。
《低温ゲル化剤》
本実施形態のより好ましい形態では、高屈折率層および低屈折率層の少なくとも1層が低温ゲル化剤を含む。このような構成とすることにより、熱ゲル化剤の採用によって発揮される上記の作用効果の発現をより一層確実なものとすることができるという利点がある。
本明細書において、「低温ゲル化剤」とは、水溶液に溶解し、冷却により増粘ゲル化し、昇温によりゾル化する性質を有する物質である。低温ゲル化剤がゲル化する温度について特に制限はないが、好ましくは10℃以下であり、より好ましくは15℃以下であり、さらに好ましくは20℃以下である。かような定義を満たす限り、本形態において用いられる熱ゲル化剤の具体的な形態について制限はない。一例を挙げると、低温ゲル化剤としては、例えば、ゼラチン、カラギーナン、ジェランガム、ペクチン、アルギン酸ナトリウムなどが開発されている。また、他成分を共存させることで冷却による増粘ゲル化を起こすものも多くあり、例えば、ガラクトキシシクログルカンとアルコールとの組み合わせや、ポリビニルアルコール・ホウ酸・シリカの組み合わせなどが好ましく用いられうる。
低温ゲル化剤についても、高屈折率層および低屈折率層の少なくとも1層が低温ゲル化剤を含む場合、高屈折率層の少なくとも1層が低温ゲル化剤を含むことが好ましい。また、すべての高屈折率層が低温ゲル化剤を含むことがより好ましい。さらに他の好ましい形態として、高屈折率層および低屈折率層の双方の少なくとも1層ずつが低温ゲル化剤を含むことが好ましく、すべての高屈折率層およびすべての低屈折率層が低温ゲル化剤を含むことがより好ましい。
低温ゲル化剤が用いられる場合における、各層に含まれる低温ゲル化剤の含有量についても特に制限はないが、高屈折率層が低温ゲル化剤を含む場合における高屈折率層における低温ゲル化剤の含有量は、高屈折率層の固形分100質量%に対して、3〜30質量%であることが好ましく、5〜25質量%であることがより好ましく、7〜20質量%であることがさらに好ましい。また、低屈折率層が低温ゲル化剤を含む場合における低屈折率層における低温ゲル化剤の含有量は、低屈折率層の固形分100質量%に対して、3〜30質量%であることが好ましく、5〜25質量%であることがより好ましく、7〜20質量%であることがさらに好ましい。
《その他の添加剤》
高屈折率層および低屈折率層には、必要に応じて各種添加剤を用いることができる。その一例を以下に記載する。
[等電点が6.5以下のアミノ酸]
高屈折率層または低屈折率層は、等電点が6.5以下のアミノ酸を含有していてもよい。アミノ酸を含むことにより、高屈折率層または低屈折率層中の金属酸化物粒子の分散性が向上しうる。
ここでアミノ酸とは、同一分子内にアミノ基とカルボキシル基とを有する化合物であり、α−、β−、γ−などいずれのタイプのアミノ酸でもよい。アミノ酸には光学異性体が存在するものもあるが、本発明においては光学異性体による効果の差はなく、いずれの異性体も単独であるいはラセミ体でも使用することができる。
アミノ酸の詳しい解説は、化学大辞典1縮刷版(共立出版;昭和35年発行)268頁〜270頁の記載を参照することができる。
具体的に好ましいアミノ酸として、アスパラギン酸、グルタミン酸、グリシン、セリン、等を挙げることができ、特にグリシン、セリンが好ましい。
アミノ酸の等電点とは、アミノ酸は特定のpHにおいて分子内の正・負電荷が釣り合い、全体としての電荷が0となるので、このpH値をいう。各アミノ酸の等電点については、低イオン強度での等電点電気泳動で求めることができる。
[エマルジョン樹脂]
高屈折率層または低屈折率層は、エマルジョン樹脂をさらに含有していてもよい。エマルジョン樹脂を含むことにより、膜の柔軟性が高くなりガラスへの貼りつけ等の加工性がよくなる。
エマルジョン樹脂とは、水系媒体中に微細な、例えば、平均粒径が0.01〜2.0μm程度の樹脂粒子がエマルジョン状態で分散されている樹脂で、油溶性のモノマーを、水酸基を有する高分子分散剤を用いてエマルジョン重合して得られる。用いる分散剤の種類によって、得られるエマルジョン樹脂のポリマー成分に基本的な違いは見られない。エマルジョンの重合時に使用される分散剤としては、例えば、アルキルスルホン酸塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、ジエチルアミン、エチレンジアミン、4級アンモニウム塩のような低分子の分散剤の他に、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリエキシエチレンラウリル酸エーテル、ヒドロキシエチルセルロース、ポリビニルピロリドンのような高分子分散剤が挙げられる。水酸基を有する高分子分散剤を用いてエマルジョン重合すると、微細な微粒子の少なくとも表面に水酸基の存在が推定され、他の分散剤を用いて重合したエマルジョン樹脂とはエマルジョンの化学的、物理的性質が異なる。
水酸基を含む高分子分散剤とは、重量平均分子量が10000以上の高分子の分散剤で、側鎖または末端に水酸基が置換されたものであり、例えばポリアクリル酸ソーダ、ポリアクリルアミドのようなアクリル系の高分子で2−エチルヘキシルアクリレートが共重合されたもの、ポリエチレングリコールやポリプロピレングリコールのようなポリエーテル、ポリビニルアルコールなどが挙げられ、特にポリビニルアルコールが好ましい。
高分子分散剤として使用されるポリビニルアルコールは、ポリ酢酸ビニルを加水分解して得られる通常のポリビニルアルコールの他に、カチオン変性したポリビニルアルコールやカルボキシル基のようなアニオン性基を有するアニオン変性ポリビニルアルコール、シリル基を有するシリル変性ポリビニルアルコール等の変性ポリビニルアルコールも含まれる。ポリビニルアルコールは、平均重合度は高い方がインク吸収層を形成する際のクラックの発生を抑制する効果が大きいが、平均重合度が5000以内であると、エマルジョン樹脂の粘度が高くなく、製造時に取り扱いやすい。したがって、平均重合度は300〜5000のものが好ましく、1500〜5000のものがより好ましく、3000〜4500のものが特に好ましい。ポリビニルアルコールのケン化度は70〜100モル%のものが好ましく、80〜99.5モル%のものがより好ましい。
上記の高分子分散剤で乳化重合される樹脂としては、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、ビニル系化合物、スチレン系化合物といったエチレン系単量体、ブタジエン、イソプレンといったジエン系化合物の単独重合体または共重合体が挙げられ、例えばアクリル系樹脂、スチレン−ブタジエン系樹脂、エチレン−酢酸ビニル系樹脂等が挙げられる。
[その他の添加剤]
その他にも、高屈折率層または低屈折率層は、例えば、特開昭57−74193号公報、同57−87988号公報及び同62−261476号公報に記載の紫外線吸収剤、特開昭57−74192号公報、同57−87989号公報、同60−72785号公報、同61−146591号公報、特開平1−95091号公報および同3−13376号公報等に記載されている退色防止剤、アニオン、カチオンまたはノニオンの各種界面活性剤、特開昭59−42993号公報、同59−52689号公報、同62−280069号公報、同61−242871号公報および特開平4−219266号公報等に記載されている蛍光増白剤、硫酸、リン酸、酢酸、クエン酸、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸カリウム等のpH調整剤、消泡剤、ジエチレングリコール等の潤滑剤、防腐剤、帯電防止剤、マット剤等の公知の各種添加剤を含有していてもよい。
なお、本実施形態のガラス積層体は、その片面又は両面に、さらなる機能の付加を目的として、導電性層、帯電防止層、ガスバリア層、易接着層(接着層)、防汚層、消臭層、流滴層、易滑層、ハードコート層、耐摩耗性層、反射防止層、電磁波シールド層、紫外線吸収層、赤外線吸収層、印刷層、蛍光発光層、ホログラム層、剥離層、粘着層、接着層、本実施形態の高屈折率層および低屈折率層以外の赤外線カット層(金属層、液晶層)、着色層(可視光線吸収層)、合わせガラスに利用される中間膜層などの機能層の1つ以上を有していてもよい。
〔ガラス積層体の製造方法〕
本実施形態のガラス積層体の製造方法は、第1の水溶性高分子および第1の金属酸化物粒子を含む高屈折率層用塗布液と、第2の水溶性高分子および第2の金属酸化物粒子を含む低屈折率層用塗布液とを塗布する工程(塗布工程)を含む。そして、当該製造方法は、塗布工程の少なくとも1つにおいて、高屈折率層用塗布液または低屈折率層用塗布液が熱ゲル化剤を含み、熱ゲル化剤を含む塗布液の塗膜を加熱して熱ゲル化剤をゲル化させる加熱ゲル化工程をさらに含む。通常は塗布液の塗布は樹脂層上に行われるため、以下、このような形態を例に挙げて、より詳細に説明する。
樹脂層上への各屈折率層の形成手法については特に制限されないが、高屈折率層用塗布液および低屈折率層用塗布液とを交互に塗布、乾燥して積層体を形成することが好ましい。具体的には以下の形態が挙げられる;(1)樹脂層上に、高屈折率層塗布液を塗布し乾燥して高屈折率層を形成した後、低屈折率層塗布液を塗布し乾燥して低屈折率層を形成し、熱線反射層を形成する方法;(2)樹脂層上に、低屈折率層塗布液を塗布し乾燥して低屈折率層を形成した後、高屈折率層塗布液を塗布し乾燥して高屈折率層を形成し、熱線反射層を形成する方法;(3)樹脂層上に、高屈折率層塗布液と、低屈折率層塗布液とを交互に逐次重層塗布した後乾燥して、高屈折率層、および低屈折率層を含む熱線反射層を形成する方法;(4)樹脂層上に、高屈折率層塗布液と、低屈折率層塗布液とを同時重層塗布し、乾燥して、高屈折率層および低屈折率層を含む熱線反射層を形成する方法;などが挙げられる。なかでも、より簡便な製造プロセスとなる上記(4)の方法が好ましい。
塗布方式としては、例えば、ロールコーティング法、ロッドバーコーティング法、エアナイフコーティング法、スプレーコーティング法、カーテン塗布方法、あるいは米国特許第2,761,419号、同第2,761,791号公報に記載のホッパーを使用するスライドビード塗布方法、エクストルージョンコート法等が好ましく用いられる。
高屈折率層塗布液および低屈折率層塗布液を調製するための溶媒は、特に制限されないが、水、有機溶媒、またはその混合溶媒が好ましい。
上記の有機溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール、2−プロパノール、1−ブタノールなどのアルコール類、酢酸エチル、酢酸ブチル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテートなどのエステル類、ジエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテルなどのエーテル類、ジメチルホルムアミド、N−メチルピロリドンなどのアミド類、アセトン、メチルエチルケトン、アセチルアセトン、シクロヘキサノンなどのケトン類などが挙げられる。これら有機溶媒は、単独でもまたは2種以上混合して用いてもよい。環境面、操作の簡便性などから、塗布液の溶媒としては、特に水、または水とメタノール、エタノール、もしくは酢酸エチルとの混合溶媒が好ましく、水がより好ましい。
高屈折率層塗布液中の水溶性高分子の濃度は、1〜10質量%であることが好ましい。また、高屈折率層塗布液中の金属酸化物粒子の濃度は、1〜50質量%であることが好ましい。さらに、高屈折率層用塗布液が熱ゲル化剤を含む場合のその濃度は、好ましくは0.1〜3質量%であり、より好ましくは1〜2質量%である。この濃度が0.1質量%以上であれば、後述する加熱ゲル化工程における加熱によるゲル化が十分に進行しうる。一方、この濃度が3質量%以下であれば、加熱ゲル化工程における加熱によるゲル化が不均一になることに伴うムラの発生が抑制されうる。また、高屈折率層用塗布液が低温ゲル化剤を含む場合のその濃度は、好ましくは0.3〜10質量%であることが好ましく、0.5〜3質量%であることがより好ましく、0.7〜2質量%であることがさらに好ましい。この濃度が0.3質量%以上であれば、粒子の十分な混合が期待でき、一方、この濃度が10質量%以下であれば、塗膜の均一性が十分に確保されうる。
低屈折率層塗布液中の水溶性高分子の濃度は、1〜10質量%であることが好ましい。また、低屈折率層塗布液中の金属酸化物粒子の濃度は、1〜50質量%であることが好ましい。さらに、上述した高屈折率層用塗布液の場合と同様の理由から、低屈折率層用塗布液が熱ゲル化剤を含む場合のその濃度は、好ましくは0.1〜3質量%であり、より好ましくは1〜2質量%である。また、低屈折率層用塗布液が低温ゲル化剤を含む場合のその濃度は、好ましくは0.3〜10質量%であることが好ましく、0.5〜3質量%であることがより好ましく、0.7〜2質量%であることがさらに好ましい。この濃度が0.3質量%以上であれば、粒子の十分な混合が期待でき、一方、この濃度が10質量%以下であれば、塗膜の均一性が十分に確保されうる。
高屈折率層塗布液および低屈折率層塗布液の調製方法は、特に制限されず、例えば、水溶性高分子、金属酸化物粒子、熱ゲル化剤および低温ゲル化剤、並びに必要に応じて添加されるその他の添加剤を添加し、攪拌混合する方法が挙げられる。この際、各成分の添加順も特に制限されず、攪拌しながら各成分を順次添加し混合してもよいし、攪拌しながら一度に添加し混合してもよい。必要に応じて、さらに溶媒を用いて、適当な粘度に調製される。
本実施形態においては、体積平均粒径が100nm以下のルチル型の酸化チタンを添加、分散して調製した水系の高屈折率層塗布液を用いて、高屈折率層を形成することが好ましい。この際、ルチル型の酸化チタンとしては、pHが1.0以上、3.0以下で、かつチタン粒子のゼータ電位が正である水系の酸化チタンゾルとして、高屈折率層塗布液に添加して調製することが好ましい。
上記(4)の同時重層塗布を行う際の高屈折率層塗布液と低屈折率層塗布液の粘度としては、スライドビード塗布方式を用いる場合には、5〜100mPa・sの範囲が好ましく、さらに好ましくは10〜50mPa・sの範囲である。また、カーテン塗布方式を用いる場合には、5〜1200mPa・sの範囲が好ましく、さらに好ましくは25〜500mPa・sの範囲である。
また、塗布液の15℃における粘度としては、100mPa・s以上が好ましく、100〜30,000mPa・sがより好ましく、さらに好ましくは3,000〜30,000mPa・sであり、最も好ましいのは10,000〜30,000mPa・sである。
塗布および乾燥方法としては、任意の手法を用いることができる。塗布液を塗布する際の塗布液の温度は、好ましくは15〜40℃であり、より好ましくは30〜40℃である。そして、例えば同時重層塗布を行った後、低温ゲル化剤を含まない場合には加熱処理を施すことにより熱ゲル化剤をゲル化させて塗布液を増粘させ(加熱ゲル化工程)、さらに必要に応じて温風等により加熱乾燥することで高屈折率層および低屈折率層に含有されている粒子の混合を抑制しつつ熱線反射層を製造することができる。この際、加熱ゲル化工程における加熱条件について、温度は好ましくは60〜150℃であり、加熱時間は好ましくは10〜60秒間である。また、加熱ゲル化工程後の乾燥条件については、50℃以上で乾燥することが好ましく、より好ましくは、乾燥条件として、湿球温度50℃〜150℃、膜面温度50℃〜100℃の範囲の条件で行うことである。また、塗布直後の加熱ゲル化工程における加熱方式としては、形成された塗膜均一性の観点から、水平セット方式で行うことが好ましい。
一方、低温ゲル化剤を併用する場合には、例えば同時重層塗布を行った後、冷却(冷風を用いるなど)により低温ゲル化剤をゲル化させて塗布液を増粘させ(冷却ゲル化工程)、次いで加熱処理を施すことにより熱ゲル化剤をゲル化させて塗布液を増粘させ(加熱ゲル化工程)、さらに必要に応じて温風等により加熱乾燥することで高屈折率層および低屈折率層に含有されている粒子の混合を抑制しつつ熱線反射層を製造することができる。この際、冷却ゲル化工程における冷却時の温度は好ましくは1〜15℃であり、より好ましくは10〜15℃である。また、冷却時間は好ましくは10〜60秒間である。なお、冷却ゲル化工程における冷却方式としては、形成された塗膜均一性の観点から、水平セット方式で行うことが好ましい。そして、冷却ゲル化工程後の加熱ゲル化工程における加熱処理時の温度は好ましくは10℃以上であり、より好ましくは湿球温度5〜58℃、膜面温度10〜80℃の範囲の条件で行うことである。
上述したそれぞれの形態において、熱ゲル化剤をゲル化させるための加熱ゲル化工程における加熱方法としては、温風加熱、赤外線加熱、マイクロウェーブ加熱などいずれの方法も用いられうる。ただし、昇温速度が速く蒸発により熱が奪われない赤外加熱を用いてゲル化温度まで塗布液を昇温し、塗布液のゲル化後に温風乾燥を行うことが生産性およびコストの観点から好ましい。
次に、熱線反射層が積層された樹脂層の樹脂層側と薄膜ガラスとを接着剤(HB糊)を用い、加熱貼合してガラス積層体を得る。
〔赤外遮蔽体〕
本実施形態により提供されるガラス積層体は、幅広い分野に応用することができる。例えば、建物の屋外の窓や自動車窓等長期間太陽光に晒らされる設備に貼り合せ、赤外遮蔽効果を付与する赤外遮蔽フィルム等の窓貼用フィルム、窓枠に吊すカーテン、農業用ビニールハウス用フィルム等として、主として耐候性を高める目的で用いられる。
特に、ガラス積層体が直接または接着剤を介してガラスまたはガラス代替の樹脂などの基体に貼合されている部材に好適である。この基体の具体的な例としては、例えば、ガラス、ポリカーボネート樹脂、ポリスルホン樹脂、アクリル樹脂、ポリオレフィン樹脂、ポリエーテル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリスルフィド樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、フェノール樹脂、ジアリルフタレート樹脂、ポリイミド樹脂、ウレタン樹脂、ポリ酢酸ビニル樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、スチレン樹脂、塩化ビニル樹脂、金属板、セラミック等が挙げられる。樹脂の種類は、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、電離放射線硬化性樹脂のいずれでも良く、これらを2種以上組み合わせて用いても良い。本発明で使用されうる基体は、押出成形、カレンダー成形、射出成形、中空成形、圧縮成形等、公知の方法で製造することができる。基体の厚みは特に制限されないが、通常0.1mm〜5cmである。
ガラス積層体と基体とを貼り合わせる接着層または粘着層は、ガラス積層体を日光(熱線)入射面側に設置することが好ましい。また、ガラス積層体を窓ガラスと基体との間に挟持すると、水分等の周囲のガスから封止でき耐久性に優れるため好ましい。さらに、ガラス積層体を屋外や車の外側(外貼り用)に設置しても環境耐久性があって好ましい。
基体に貼合するのに適用可能な接着剤としては、例えば、光硬化性もしくは熱硬化性の樹脂を主成分とする接着剤を用いることができる。
接着剤は紫外線に対して耐久性を有するものが好ましく、アクリル系粘着剤またはシリコーン系粘着剤が好ましい。更に粘着特性やコストの観点から、アクリル系粘着剤が好ましい。特に剥離強さの制御が容易なことから、アクリル系粘着剤において、溶剤系が好ましい。アクリル溶剤系粘着剤として溶液重合ポリマーを使用する場合、そのモノマーとしては公知のものを使用できる。
また、合わせガラスの中間層として用いられるポリビニルブチラール系樹脂、あるいはエチレン−酢酸ビニル共重合体系樹脂を用いてもよい。具体的には可塑性ポリビニルブチラール(積水化学工業社製、三菱モンサント社製等)、エチレン−酢酸ビニル共重合体(デュポン社製、武田薬品工業社製、デュラミン)、変性エチレン−酢酸ビニル共重合体(東ソー社製、メルセンG)等である。なお、接着層には紫外線吸収剤、抗酸化剤、帯電防止剤、熱安定剤、滑剤、充填剤、着色、接着調整剤等を適宜添加配合してもよい。
なお、本発明のガラス積層体は基体に接着するための接着層を備えた状態で提供してもよい。すなわち、薄膜ガラスの樹脂層が積層されている側とは反対側に、接着層が設けられている構成としてもよい。この構成によると、簡単に窓ガラス等に貼合することができ、使い勝手が良い。
ガラス積層体または赤外遮蔽体の断熱性能、日射熱遮へい性能は、一般的にJIS R 3209(複層ガラス)、JIS R 3106(板ガラス類の透過率・反射率・放射率・日射熱取得率の試験方法)、JIS R 3107(板ガラス類の熱抵抗および建築における熱貫流率の算定方法)に準拠した方法により求めることができる。
日射透過率、日射反射率、放射率、可視光透過率の測定は、(1)波長(300〜2500nm)の分光測光器を用い、各種単板ガラスの分光透過率、分光反射率を測定する。また、波長5.5〜50μmの分光測定器を用いて放射率を測定する。なお、フロート板ガラス、磨き板ガラス、型板ガラス、熱線吸収板ガラスの放射率は既定値を用いる。(2)日射透過率、日射反射率、日射吸収率、修正放射率の算出は、JIS R 3106に従い、日射透過率、日射反射率、日射吸収率、垂直放射率を算出する。修正放射率に関しては、JIS R 3107に示されている係数を、垂直放射率に乗ずることにより求める。断熱性、日射熱遮へい性の算出は、(1)厚さの測定値、修正放射率を用いJIS R 3209に従って複層ガラスの熱抵抗を算出する。ただし中空層が2mmを超える場合はJIS R 3107に従って中空層の気体熱コンダクタンスを求める。(2)断熱性は、複層ガラスの熱抵抗に熱伝達抵抗を加えて熱貫流抵抗で求める。(3)日射熱遮蔽性はJIS R 3106により日射熱取得率を求め、1から差し引いて算出する。
〔実施例〕
以下、本発明の具体例を実施例として説明する。また、本発明との比較のため、比較例についても併せて説明する。なお、本発明は、以下の実施例に限定されるものではない。なお、以下での説明において、「部」あるいは「%」の表示は、特に断りがない限り、「質量部」あるいは「質量%」を表すものとする。
<フィルムAの製造>
〈酸化チタン粒子ゾルの調製〉
二酸化チタン水和物を水に懸濁させた水性懸濁液(TiO2濃度100g/L)10L(リットル)に、水酸化ナトリウム水溶液(濃度10モル/L)を30L撹拌下で添加し、90℃に昇温し、5時間熟成した後、塩酸で中和、濾過、水洗した。なお、上記反応(処理)において、二酸化チタン水和物は公知の手法に従い、硫酸チタン水溶液を熱加水分解して得られたものを用いた。
塩基処理チタン化合物をTiO2濃度20g/Lになるよう純水に懸濁させ、撹拌下クエン酸をTiO2量に対し0.4モル%加え昇温した。液温が95℃になったところで、濃塩酸を塩酸濃度30g/Lになるように加え、液温を維持しつつ3時間撹拌して、酸化チタン粒子が20質量%となるようにして、酸化チタン粒子ゾル溶液を調製した。
得られた酸化チタン粒子ゾル溶液のpHおよびゼータ電位を測定したところ、25℃におけるpHは1.4、ゼータ電位は+40mVであった。さらに、マルバーン社製ゼータサイザーナノにより粒径測定を行ったところ、体積平均粒径は35nm、単分散度は16%であった。また、酸化チタン粒子ゾル溶液を105℃で3時間乾燥させて粒子紛体を得て、日本電子データム社製JDX−3530型)を用いてX線回折の測定を行い、ルチル型酸化チタン粒子であることを確認した。
〈コロイダルシリカゾル〉
日本化学工業製シリカドール20Pを用いた。
〈高屈折率層用塗布液の調製〉
上記で調製した酸化チタン粒子ゾル溶液、ポバール水溶液(クラレ株式会社製、PVA217 5重量%溶液)、熱ゲル化剤水溶液(信越化学工業株式会社製、60SH-50 2重量%溶液)、低温ゲル化剤水溶液(豚皮ゼラチン 5重量%溶液)、および純水を、45℃に保ちつつ適宜配合して、高屈折率層用塗布液を調製した。
〈低屈折率層用塗布液の調製〉
上述したコロイダルシリカゾル溶液、ポバール水溶液(クラレ株式会社製、PVA217 5重量%溶液)、熱ゲル化剤水溶液(信越化学工業株式会社製、60SH-50 2重量%溶液)、低温ゲル化剤水溶液(豚皮ゼラチン 5重量%溶液)、および純水を、45℃に保ちつつ適宜配合して、低屈折率層用塗布液を調製した。
〈樹脂層〉
樹脂層を構成するフィルムとして、コニカミノルタアドバンストレイヤー(株)製のセルロースエステルフィルムであるKC2UAを用意した。
〈製膜〉
上記の高屈折率層用塗布液及び低屈折率層用塗布液を用い、同時重層用スライドコーターによって各層流量を調整し、各層の乾燥時厚みを200nmに設定して高屈折率層および低屈折率層が交互に各7層積層されるように樹脂層上に同時重層塗布を行った(塗布工程)。そして、塗布工程に続いて5℃の冷風による冷却ゾーンを20秒間で通過させて低温ゲル化剤をゲル化させ(冷却ゲル化工程)、次いで50℃の温風による温風乾燥ゾーンを20秒間で通過させて熱ゲル化剤をゲル化させた(加熱ゲル化工程)。これにより、フィルムAを作製した。
<フィルムBの製造>
樹脂層を構成するフィルムとして、セルロースエステルフィルムの代わりに同じ膜厚のPETを用いた以外は、フィルムAと同様にしてフィルムBを作製した。
<接着剤Aの製造>
下記の比率で材料を混合し、室温で攪拌した後、濾過によって固体触媒を分離して反応性金属化合物と水酸基含有高分子化合物との共縮合物を含む接着剤Aを調製した。
アセトン 100質量部
テトラメトキシシラン(TMOS) 10質量部
アンバーリスト15(固体触媒) 2質量部
セルロースエステル(DAC、アセチル基置換度2.45) 10質量部
<接着剤Bの製造>
下記の比率で材料を混合し、室温で攪拌した後、濾過によって固体触媒を分離して反応性金属化合物と水酸基含有高分子化合物との共縮合物を含む接着剤Bを調製した。
アセトン 100質量部
テトラエトキシシラン(TEOS) 10質量部
アンバーリスト15(固体触媒) 2質量部
セルロースエステル(DAC、アセチル基置換度2.45) 10質量部
<実施例1>
日本電気硝子(株)製の厚さ30μmの薄膜ガラスを準備し、その片面に接着剤Aを用いてフィルムAを加熱貼合することで実施例1のガラス積層体を得た。次に、厚さ3mmのガラスを準備し、その片面にアクリル系粘着剤を用いてガラス積層体の薄膜ガラス面を貼合することで実施例1の赤外遮蔽体を得た。
<実施例2>
接着剤Aの代わりに接着剤Bを用いた以外は、実施例1と同様にして実施例2のガラス積層体を得た。そして、このガラス積層体を用い、実施例1と同様にして実施例2の赤外遮蔽体を得た。
<比較例1>
接着剤Aの代わりにアクリル系粘着剤を用いた以外は、実施例1と同様にして比較例1のガラス積層体を得た。そして、このガラス積層体を用い、実施例1と同様にして比較例1の赤外遮蔽体を得た。
<比較例2>
フィルムAの代わりにフィルムBを用い、接着剤Aの代わりにアクリル系粘着剤を用いた以外は、実施例1と同様にして比較例2のガラス積層体を得た。そして、このガラス積層体を用い、実施例1と同様にして比較例1の赤外遮蔽体を得た。
<実施例及び比較例の評価>
実施例及び比較例の赤外遮蔽体について、ヒートショック試験による耐性を評価した結果及び耐熱性試験による耐性を評価した結果を表1に示す。
Figure 0005994719
ヒートショック試験の手法及び評価基準は以下の通りである。エスペック株式会社の冷熱衝撃装置TSE−11にて、各赤外遮蔽体を−30℃で30分保存、次いで80℃で30分保存し、これを1サイクルとして、合計200サイクル(200時間)の処理を行った。そして、試験後の赤外遮蔽体の状態を下記評価基準に従い目視で判断した。
(評価基準)
○:樹脂層と薄膜ガラスとの間に剥がれがない
×:樹脂層と薄膜ガラスとの間に剥がれがある
耐熱性試験の手法及び評価基準は以下の通りである。各赤外遮蔽体を90℃で250時間保存した後、分光光度計(積分球使用、日立製作所社製、U−4000型)を用い、赤外線反射率を測定した。そして、試験前の赤外線反射率からの変化を下記評価基準に従い判断した。
(評価基準)
○:赤外線反射率の変化が5%未満である
×:赤外線反射率の変化が5%以上である
表1より、薄膜ガラスと樹脂層とを接着する接着剤が、アクリル系粘着剤である比較例1、2では、ヒートショック試験で薄膜ガラスと樹脂層との間で剥がれが生じたのに対し、接着剤の原料にTMOS(またはTEOS)とDACとを含む実施例1、2では、ヒートショック試験で薄膜ガラスと樹脂層との間で剥がれが生じなかった。これは、薄膜ガラスと樹脂層とを接着する接着剤が、反応性金属化合物と水酸基含有高分子化合物との共縮合物を含んでいることにより、薄膜ガラスと樹脂層との密着性が向上し、これによってヒートショック試験の環境変動による樹脂層の寸法変化(伸縮)が抑えられているためと考えられる。
また表1より、樹脂層にフィルムBを用いた比較例2では、耐熱試験後の赤外線反射率の変化が5%以上であったのに対し、樹脂層にフィルムAを用いた実施例1、2、比較例1では、耐熱試験後の赤外線反射率の変化が5%未満であった。これは、比較例2で用いたフィルムBの基材がPETであり、透湿度が低いため、フィルム作製時に熱線反射層を水系塗布した際の水分が十分に抜けておらず、耐熱試験中に熱線反射層中に残留していた水分が気化し、熱線反射層の膜厚が変化したため、反射率変化が大きくなったものと考えられる。
一方、実施例1、2、比較例1で用いたフィルムAの基材がセルロースエステルであり、透湿度が高いため、フィルム作製時に熱線反射層を水系塗布した際の水分が十分に抜けており、耐熱試験中に熱線反射層中に水分が残留していないことにより、熱線反射層の膜厚がほとんど変化しなかったため、反射率変化が小さかったものと考えられる。
よって、ガラス積層体の樹脂層としては、熱線反射層の水系塗布後の乾燥時に水分を速やかに逃がすことができる程度の透湿度を有することが好ましい。その目安としては、JIS Z 0208に準拠して測定される40℃、90%RHにおける透湿度が、100g/m2・24hr以上である透湿性フィルムを用いることが好ましい。
以上より、実施例1、2のガラス積層体を用いた場合、建物や車両の窓ガラスに装着され太陽光に晒されるような環境で使用されても、長期間に亘って問題なく使用することができる。
本発明のガラス積層体は、太陽光の熱線の透過を遮断することを目的として、建物や車両の窓ガラスに貼合して使用したり、カーテンのように窓に吊して使用したりすることができる。
10 ガラス積層体
11 薄膜ガラス
12 接着層(接着剤)
13 樹脂層
14 熱線反射層

Claims (7)

  1. 薄膜ガラスと樹脂層とが接着剤で接着されており、
    前記接着剤は、反応性金属化合物と水酸基含有高分子化合物との共縮合物を含み、
    前記樹脂層の前記薄膜ガラスが積層されている側とは反対側に、熱線反射層が積層されていることを特徴とするガラス積層体。
  2. 前記熱線反射層は、金属酸化物粒子を含んでいることを特徴とする請求項1に記載のガラス積層体。
  3. 前記熱線反射層は、水溶性高分子を含む塗布液を塗布して形成されることを特徴とする請求項1又は2に記載のガラス積層体。
  4. 前記樹脂層は、JIS Z 0208に準拠して測定される40℃、90%RHにおける透湿度が、100g/m2・24hr以上であることを特徴とする請求項1〜3の何れかに記載のガラス積層体。
  5. 前記樹脂層が、セルロースエステルであることを特徴とする請求項1〜4の何れかに記載のガラス積層体。
  6. 前記薄膜ガラスの膜厚が5〜100μmであることを特徴とする請求項1〜5の何れかに記載のガラス積層体。
  7. 前記薄膜ガラスの前記樹脂層が積層されている側とは反対側に、接着層が設けられていることを特徴とする請求項1〜6の何れかに記載のガラス積層体。
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