以下、本発明を実施するための形態について詳細に説明する。
本発明者は、上記課題に鑑み鋭意検討を行った結果、基材上に導電性組成物を被覆した帯電防止基材であって、該帯電防止基材の少なくとも一方の面上に高屈折率層と低屈折率層から構成される交互積層ユニットを有する近赤外線反射フィルムが、大面積で製造が可能でかつ低コストで製造が可能であることを見出した。本発明の近赤外線反射フィルムは、光学特性、特にゴミ付着が少なく、膜剥がれ等の膜物性に優れた性能を実現できた。
すなわち、帯電防止層を基材に付与することで静電気によるゴミ付着性を改良することができた。また、本発明に係る導電性組成物を被覆した層である帯電防止層は、イオン性基を含んでいる。帯電防止層の上に金属酸化物が主体の赤外反射層を塗布すると、驚くべきことに導電性組成物中の親水性のイオン性基と高屈折率層或いは低屈折率層中の親水性の金属酸化物の濡れ性が向上し、帯電防止層と赤外反射層の密着性が向上し、高湿度下での膜付剥がれが改良できた。
以下、本発明の近赤外線反射フィルムの構成要素、及び本発明を実施するための形態等について詳細な説明をする。
《近赤外線反射フィルム》
本発明の近赤外線反射フィルムは、基材上に導電性組成物を被覆した帯電防止基材に、高屈折率層と低屈折率層から構成される交互積層ユニットを有する近赤外遮断フィルムである。
帯電防止基材は、導電性組成物被覆面の25℃、15%RHにおける表面抵抗値が105〜1012Ω/□であることが好ましい。
本発明の近赤外線反射フィルムの基本光学特性としては、JIS R3106−1998で示される可視光領域の透過率としては50%以上で、かつ、波長900nm〜1400nmの領域に反射率50%を超える領域を有し、かつ波長900nm〜1400nmの領域の透過率が10%以下であることが好ましい。
また、本発明において帯電防止基材は、帯電防止層を有する基材をいう。
また、本発明において被覆とは、面上の80%以上を覆うことが好ましく、さらに好ましくは90%以上を覆うことであり、より好ましくは、100%覆うことである。
《基材》
本発明の基材(支持体ともいう。)としては、透明の有機材料で形成されたものであれば特に限定されるものではない。
例えば、メタクリル酸エステル、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリカーボネート(PC)、ポリアリレート、ポリスチレン(PS)、芳香族ポリアミド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリイミド、ポリエーテルイミド等の各樹脂フィルム、更には前記樹脂を2層以上積層して成る樹脂フィルム等を挙げることができる。コストや入手の容易性の点では、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリカーボネート(PC)などが好ましく用いられる。
支持体の厚さは5〜200μm程度が好ましく、更に好ましくは15〜150μmである。
また本発明に係る支持体はJIS R3106−1998で示される可視光領域の透過率としては85%以上で、特に90%以上であることが好ましい。支持体が上記透過率以上であることにより、近赤外線反射フィルムとしたときのJIS R3106−1998で示される可視光領域の透過率が50%以上にすることに有利であり、好ましい。
また、上記に挙げた樹脂等を用いた支持体は、未延伸フィルムでもよく、延伸フィルムでもよい。強度向上、熱膨張抑制の点から延伸フィルムが好ましい。
本発明に用いられる支持体は、従来公知の一般的な方法により製造することが可能である。例えば、材料となる樹脂を押し出し機により溶融し、環状ダイやTダイにより押し出して急冷することにより、実質的に無定形で配向していない未延伸の支持体を製造することができる。また、未延伸の支持体を一軸延伸、テンター式逐次二軸延伸、テンター式同時二軸延伸、チューブラー式同時二軸延伸などの公知の方法により、支持体の流れ(縦軸)方向、又は支持体の流れ方向と直角(横軸)方向に延伸することにより延伸支持体を製造することができる。この場合の延伸倍率は、支持体の原料となる樹脂に合わせて適宜選択することできるが、縦軸方向及び横軸方向にそれぞれ2〜10倍が好ましい。
また本発明に用いられる支持体は、寸法安定性の点で弛緩処理、オフライン熱処理を行ってもよい。弛緩処理は前記ポリエステルフィルムの延伸製膜工程中の熱固定した後、横延伸のテンター内、またはテンターを出た後の巻き取りまでの工程で行われるのが好ましい。弛緩処理は処理温度が80〜200℃で行われることが好ましく、より好ましくは処理温度が100〜180℃である。また長手方向、幅手方向ともに、弛緩率が0.1〜10%の範囲で行われることが好ましく、より好ましくは弛緩率が2〜6%で処理されることである。弛緩処理された支持体は、下記のオフライン熱処理を施すことにより耐熱性が向上し、更に寸法安定性が良好になる。
本発明の支持体は、製膜過程で片面または両面にインラインで下引層塗布液を塗布することが好ましい。本発明において、製膜工程中での下引塗布をインライン下引という。本発明に有用な下引層塗布液に使用する樹脂としては、ポリエステル樹脂、アクリル変性ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、アクリル樹脂、ビニル樹脂、塩化ビニリデン樹脂、ポリエチレンイミンビニリデン樹脂、ポリエチレンイミン樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、変性ポリビニルアルコール樹脂及びゼラチン等を挙げることが出来、何れも好ましく用いることが出来る。これらの下引層には、従来公知の添加剤を加えることもできる。そして、上記の下引層は、ロールコート、グラビアコート、ナイフコート、ディップコート、スプレーコート等の公知の方法によりコーティングすることができる。上記の下引層の塗布量としては、0.01〜2g/m2(乾燥状態)程度が好ましい。
《導電性組成物》
本発明における導電性組成物は水又は有機溶媒に可溶ならば本発明に適用可能である。本発明における導電性組成物の1種であるπ電子系の導電性組成物としては、例えばポリアニリン及びその誘導体、好ましくは水溶性のスルホン化ポリアニリン、有機溶媒可溶性ポリピロール、すなわち長鎖アルキル基置換基結合ポリピロール、ポリチオフェン及びその誘導体などが挙げられる。
また、ポリアニリン又はその共重合体の分散系にプロトン酸、例えば無機酸やスルホン酸基含有化合物をドープして得たポリアニリンまたはポリアニリン共重合体溶液が挙げられる。このときの無機酸としては塩酸、過塩素酸、硫酸、硝酸などが、スルホン酸基含有化合物としてはベンゼンスルホン酸、ナフタレンスルホン酸、ポリスチレンスルホン酸などが挙げられる。なかでも、スルホン化ポリアニリンが水に対する溶解性が良好なため、本発明には好適である。
スルホン化ポリアニリンはベンゼン環にスルホン酸基を所定量結合したポリアニリンまたはポリアニリン共重合体で、その製法は特に限定しないが、ポリアニリン骨格をもつ重合体を濃硫酸等でスルホン化したものやアミノアニソールスルホン酸を主成分とするスルホン化ポリアニリンが好適である。アミノアニソールスルホン酸類の具体例として、2−アミノアニソール−3−スルホン酸、2−アミノアニソール−4−スルホン酸、2−アミノアニソール−5−スルホン酸、2−アミノアニソール−6−スルホン酸、3−アミノアニソール−2−スルホン酸、3−アミノアニソール−4−スルホン酸、3−アミノアニソール−5−スルホン酸、3−アミノアニソール−6−スルホン酸、4−アミノアニソール−2−スルホン酸、4−アミノアニソール−3−スルホン酸等を挙げることができる。
アニソールのメトキシ基がエトキシ基、イソ−プロポキシ基等のアルコキシ基に置換された化合物を用いることも可能である。しかし、2−アミノアニソール−3−スルホン酸、2−アミノアニソール−4−スルホン酸、2−アミノアニソール−5−スルホン酸、2−アミノアニソール−6−スルホン酸、3−アミノアニソール−2−スルホン酸、3−アミノアニソール−4−スルホン酸、3−アミノアニソール−6−スルホン酸が好ましく用いられる。
スルホン化ポリアニリンはスルホン酸基が芳香環に対して70%以上であることが好ましい。さらに好ましくは80%以上の共重合体、より好ましくは100%のホモ重合体である。また、前記共重合体においてスルホン酸基を含む芳香環とスルホン酸基を含まない芳香環が混在したり、交互に並んだりしても、本発明の目的に支障はない。
スルホン化ポリアニリン重合体のスルホン酸基含有率が70%以上であると該重合体の水、アルコールまたはそれらの混合溶媒系等への溶解性または分散性が十分となるため、その結果基材への塗布性及び延展性が良好になり、得られる塗布膜の導電性が良くなる傾向になる。本発明に用いられるスルホン化ポリアニリン重合体の数平均分子量は特に限定しないが、通常300〜500000であり、1000以上が前記溶媒への溶解性及び塗布膜の強度の点で好ましい。
これらπ電子系の導電性組成物の固型分付量は1m2当たり0.05〜2g、特に0.1〜1gが好ましい。
また本発明の導電性組成物としては、金属酸化物も用いることが好ましい。金属酸化物の例としては、ZnO、TiO2、SnO2、Al2O3、In2O3、SiO2、MgO、BaO、MoO2、V2O5等あるいはこれらの複合酸化物が好ましく、特にバインダーとの混和性、導電性、透明性等の点から、SnO2(酸化スズ)が好ましい。異元素を含む例としては、SnO2に対してはSb、Nb、ハロゲン元素等を添加することができる。これらの異元素の添加量は0.01〜25mol%の範囲が好ましいが、0.1〜15mol%の範囲が特に好ましい。
酸化スズは非晶性ゾルまたは結晶性粒子の形態が好ましい。水系塗布の場合は非晶性ゾルが好ましく、溶剤系塗布の場合は結晶性粒子の形態が好ましい。特に環境上、作業の取り扱い性の点で水系塗布の非晶性ゾルの形態が好ましい。
本発明に用いることのできる非晶性SnO2ゾルの製造方法に関しては、SnO2微粒子を適当な溶媒に分散して製造する方法、もしくは溶媒に可溶なSn化合物の溶媒中における分解反応から製造する方法等、いずれの方法でもよい。
溶媒に可溶なSn化合物の溶媒中における分解反応から製造する方法に関して以下に述べる。溶媒に可溶なSn化合物とは、K2SnO3・3H2Oのようなオキソ陰イオンを含む化合物、SnCl4のような水溶性ハロゲン化物、R’2SnR2、R3SnX、R2SnX2の構造を有する、例えば、(CH3)3SnCl・(ピリジン)、(C4H9)2Sn(O2CC2H5)2など有機金属化合物、Sn(SO4)2・2H2O等のオキソ塩を挙げることができる。これらの溶媒に可溶なSn化合物を溶媒に溶解後、加熱、加圧などの物理的方法、酸化、還元、加水分解などの化学的方法などにより、SnO2ゾルを製造するか、もしくは中間体を経由後、SnO2ゾルを製造する方法などである。
例として、特公昭35−6616号公報に記載されたSnO2ゾルの製造方法を述べる。先ずSnCl4を100倍容量の蒸留水に溶解して、中間体としてSn(OH)4の沈澱をつくる。これにアンモニア水を加え微アルカリ性となし、次いでアンモニア臭のなくなるまで加温するとコロイド状SnO2ゾルが得られる。なお、例では、溶媒として水を用いたが、メタノール、エタノール、イソプロパノールなどのアルコール溶媒、テトラヒドロフラン、ジオキサン、ジエチルエーテル等のエーテル溶媒、ヘキサン、ヘプタンなどの脂肪族有機溶媒、ベンゼン、ピリジンなどの芳香族有機溶媒などSn化合物に応じて様々な溶媒を用いることが可能であり、好ましくは水、アルコール類の溶媒が選ばれる。
一方、結晶性粒子は、特開昭56−143430号公報、同60−258541号公報に詳細に記載されている。これら導電性金属酸化物の作製法としては、第一に金属酸化物を焼成により作製し、導電性を向上させるために異種原子の存在下で熱処理する方法、第二に焼成により金属酸化物作製時に異種原子を共存させる方法、第三に焼成時に酸素濃度を下げて酸素欠陥を導入する方法等の単独及び組み合わせが用いられる。
本発明に用いられる金属酸化物の一次粒子の体積平均粒径は、0.001〜0.5μmであることが好ましく、特に0.001〜0.2μmが好ましい。金属酸化物の固型分付量は1m2当たり0.05〜2g、特に0.1〜1gが好ましい。また、本発明における帯電防止層における金属酸化物の体積分率は、8〜40vol%、好ましくは10〜35vol%がよい。上記範囲は金属酸化物の色、形態、組成等により変化するが、透明性及び導電性の点から上記範囲が最も好ましい。
また本発明の導電性組成物としては、イオン導電性ポリマーを含有する樹脂が好ましい。以下、水溶性のイオン導電性ポリマーの具体的化合物例を挙げる。
水溶性のイオン導電性ポリマーは、特開平4−80744号に記載された水溶性のイオン導電性ポリマーをいい、スルホン酸基、硫酸エステル基、4級アンモニウム塩、3級アンモニウム塩、カルボキシル基、ポリエチレンオキシド基から選ばれる少なくとも一つの導電性基を有するモノマー単位を含有するポリマーが挙げられる。これらの基のうちスルホン酸基、硫酸エステル基、4級アンモニウム塩基が好ましい。導電性基を有するモノマー単位はポリマー1分子あたり5質量%以上を必要とする。
なお、具体的化合物例としては特開平4−80744号記載のP−9〜P−37を挙げることができる。以下に示す。
尚、上記P−1〜P−37において、x,y,zはそれぞれの単量体成分のモル%を、又Mは平均分子量(本明細書中、平均分子量とは数平均分子量を指す)を表す。
本発明の帯電防止層に含まれる好ましい水溶性のイオン導電性ポリマーは、スルホン酸基又はスルホン酸基の塩を芳香族環又は複素環基上に直接、あるいは2価の連結基を介して、結合した分子量が好ましくは100〜1000万、特に好ましくは1000〜50万の化合物である。該ポリマーは市販又は常法により得られるモノマーを重合することにより容易に合成することができる。
本発明の帯電防止層に含有される水溶性のイオン導電性ポリマーの固型分付量は1m2当たり0.001g〜10gであるのが好ましく、より好ましくは0.01g〜5gである。
水溶性のイオン導電性ポリマーを用いたとき、イオン導電性ポリマーによる帯電防止層は接触角が50度以下と低く、水系の赤外反射層の濡れ性が向上するので、大面積を作成する(大型化する)上に有利である。また、イオン性の導電性基を有するために高屈折率層や低屈折率層が金属酸化物及び水溶性高分子を含有するとき、これらとの親和性が高いので、高屈折率層や低屈折率層とこの面でも膜付きがよく非常に密着性がよいほか、帯電防止膜としての膜形成性がよく柔軟な膜を形成するため得られる層が柔軟で折り曲げに強く耐久性に富むため好ましい。
《帯電防止層》
本発明の帯電防止層は、前記導電性組成物とバインダーを有し、前記基材上に前記導電性組成物を付与することにより形成される層である。バインダーについて説明すると、ポリエステル樹脂、アクリル変性ポリエステル樹脂、ポリウレタン、アクリル樹脂、ビニル樹脂、塩化ビニリデン樹脂、ポリエチレンイミンビニリデン樹脂、ポリエチレンイミン、ポリビニルアルコール、変性ポリビニルアルコール、セルロースエステル樹脂及びゼラチン等が好ましい。特に、酸化スズの分散性や導電性の点から、ポリエステル樹脂、アクリル変性ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、セルロースエステル樹脂が好ましい。
ポリエステル樹脂としては、多塩基酸またはそのエステルとポリオールまたはそのエステルとを重縮合反応して得られる実質的に線状のポリエステルである。
更に水性で用いる場合、親水性基を有する成分、例えば、スルホン酸塩を有する成分、ジエチレングリコール成分、ポリアルキレンエーテルグリコール成分、ポリエーテルジカルボン酸成分等をポリエステル中に共重合成分として導入されたポリエステルをいう。親水性基を有する成分としては、スルホン酸塩を有するジカルボン酸(以下、ジカルボン酸を多塩基酸ともいう)を用いるのが好ましい。
ポリエステルの多塩基酸成分としては、例えば、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、無水フタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、アジピン酸、セバシン酸、トリメリット酸、ピロメリット酸、ダイマー酸、マレイン酸、フマール酸、イタコン酸、p−ヒドロキシ安息香酸、p−(β−ヒドロキシエトキシ)安息香酸等を用いることができる。また、上記スルホン酸塩を有するジカルボン酸としては、スルホン酸アルカリ金属塩の基を有するものが特に好ましく、例えば、4−スルホイソフタル酸、5−スルホイソフタル酸、スルホテレフタル酸、4−スルホフタル酸、4−スルホナフタレン−2,7−ジカルボン酸、5−(4−スルホフェノキシ)イソフタル酸などのアルカリ金属塩を挙げることができるが、その中でも5−スルホイソフタル酸ナトリウム塩が特に好ましい。これらのスルホン酸塩を有するジカルボン酸は、水溶性及び耐水性の点から全ジカルボン酸成分に対し5〜15モル%の範囲内、特に6〜10モル%の範囲内で用いることが好ましい。
水性ポリエステルとしては、主たるジカルボン酸成分としてテレフタル酸とイソフタル酸を有するものが好ましく、更に用いるテレフタル酸とイソフタル酸との割合は、モル比で30/70〜70/30であることがポリエステル支持体への塗布性及び水に対する溶解性の点で特に好ましい。また、これらテレフタル酸成分及びイソフタル酸成分を全ジカルボン酸成分に対し50〜80モル%含むことが好ましく、更に共重合成分として脂環式ジカルボン酸を用いるのが好ましい。
これら脂環式ジカルボン酸としては、例えば、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、1,3−シクロヘキサンジカルボン酸、1,2−シクロヘキサンジカルボン酸、1,3−シクロペンタンジカルボン酸、4,4′−ビシクロヘキシルジカルボン酸を挙げることができる。更に、主たるジカルボン酸成分としてテレフタル酸とイソフタル酸を用いた水性ポリエステルには、上記以外のジカルボン酸を共重合成分として用いることができる。これらジカルボン酸としては、例えば、芳香族ジカルボン酸、直鎖状脂肪族ジカルボン酸が挙げられる。芳香族ジカルボン酸は、全ジカルボン酸成分の30モル%以下の範囲内で用いることが好ましい。
これら芳香族ジカルボン酸成分としては、例えば、フタル酸、2,5−ジメチルテレフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、1,4−ナフタレンジカルボン酸、ビフェニルジカルボン酸が挙げられる。また、直鎖状脂肪族ジカルボン酸は全ジカルボン酸成分の15モル%以下の範囲内で用いることが好ましい。これら直鎖状脂肪族ジカルボン酸成分としては、例えば、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸が挙げられる。
また、ポリオール成分としては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、ジプロピレングリコール、1,6−ヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、キシリレングリコール、トリメチロールプロパン、ポリ(エチレンオキシド)グリコール、ポリ(テトラメチレンオキシド)グリコールを用いることができる。水性ポリエステルのグリコール成分としては、エチレングリコールを全グリコール成分の50モル%以上有するものを使用することが好ましい。
ポリエステルは、出発原料としてジカルボン酸またはそのエステル及びグリコールまたはそのエステルを用いて合成することができる。合成には種々の方法を用いることができ、例えば、エステル交換法あるいは直接エステル化法でジカルボン酸とグリコールとの初期縮合物を形成し、これを溶融重合するという公知のポリエステルの製造法によって得ることができる。更に具体的に述べれば、例えば、ジカルボン酸のエステル、例えばジカルボン酸のジメチルエステルとグリコールとでエステル交換反応を行い、メタノールを留出せしめた後、徐々に減圧し、高真空下、重縮合を行う方法、ジカルボン酸とグリコールのエステル化反応を行い、生成した水を留出せしめた後、徐々に減圧し、高真空下、重縮合を行う方法、ジカルボン酸のエステルとグリコールとでエステル交換反応を行い、更にジカルボン酸を加えてエステル化反応を行った後、高真空下、重縮合を行う方法が挙げられる。エステル交換触媒及び重縮合触媒としては公知のものを使用することができ、エステル交換触媒としては、酢酸マンガン、酢酸カルシウム、酢酸亜鉛等を、重縮合触媒としては三酸化アンチモン、酸化ゲルマニウム、ジブチル錫オキシド、チタンテトラブトキシド等を用いることができる。しかし、重合方法、触媒等の種々条件は上述の例に限定されるものではない。
本発明ではアクリルで変性された水性ポリエステルを用いることができる。アクリルで変性された水性ポリエステルとは、水性ポリエステルの存在する水溶液中でアクリル樹脂を分散重合させたものであり、分散液は、例えば、水性ポリエステルを熱水中に溶解し、得られた水性ポリエステルの水溶液にアクリル樹脂を分散させ、乳化重合あるいは懸濁重合させることにより得ることができる。重合は乳化重合によることが好ましい。
用いることができる重合開始剤としては、例えば、過硫酸アンモニウム、過硫酸カリウム、過硫酸ナトリウム、過酸化ベンゾイルが挙げられる。この中で好ましいものは過硫酸アンモニウムである。重合は界面活性剤を使用することなく行うことができるが、重合安定性を改良する目的で、界面活性剤を乳化剤として用いることも可能である。この場合、一般のノニオン型、アニオン型いずれの界面活性剤も使用することができる。
アクリル樹脂としては、アクリル系モノマー、例えば、アルキルアクリレート、アルキルメタクリレート(アルキル基としてはメチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基、2−エチルヘキシル基、シクロヘキシル基、フェニル基、ベンジル基、フェニルエチル基等);2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルメタクリレート等のヒドロキシ基含有モノマー;アクリルアミド、メタクリルアミド、N−メチルメタクリルアミド、N−メチルアクリルアミド、N−メチロールアクリルアミド、N−メチロールメタクリルアミド、N,N−ジメチロールアクリルアミド、N−メトキシメチルアクリルアミド、N−メトキシメチルメタクリルアミド、N−フェニルアクリルアミド等のアミド基含有モノマー;N,N−ジエチルアミノエチルアクリレート、N,N−ジエチルアミノエチルメタクリレート等のアミノ基含有モノマー;グリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレート等のエポキシ基含有モノマー;アクリル酸、メタクリル酸及びそれらの塩(ナトリウム塩、カリウム塩、アンモニウム塩等)等のカルボキシル基またはその塩を含むモノマー等が挙げられる。
また、アクリル系モノマー以外のモノマーとしては、例えば、アリルグリシジルエーテル等のエポキシ基含有モノマー;スチレンスルホン酸、ビニルスルホン酸及びそれらの塩(ナトリウム塩、カリウム塩、アンモニウム塩等)等のスルホン酸基またはその塩を含有するモノマー;クロトン酸、イタコン酸、マレイン酸、フマール酸及びそれらの塩(ナトリウム塩、カリウム塩、アンモニウム塩等)等のカルボキシル基またはその塩を含有するモノマー;無水マレイン酸、無水イタコン酸等の酸無水物を含有するモノマー;ビニルイソシアネート;アリルイソシアネート;スチレン;ビニルトリスアルコキシシラン;アルキルマレイン酸モノエステル;アルキルフマール酸モノエステル;アクリロニトリル;メタクリロニトリル;アルキルイタコン酸モノエステル;塩化ビニリデン;酢酸ビニル;塩化ビニル等が挙げられる。ビニル系単量体としては、塗膜強度の点からグリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレート等のエポキシ基含有モノマーを用いることが好ましい。
アクリル樹脂の使用量は(水性ポリマー)/(アクリル樹脂を)が質量比で99/1〜5/95の範囲にあるのが好ましく、97/3〜50/50の範囲にあるのが更に好ましく、95/5〜80/20の範囲にあるのが特に好ましい。
本発明におけるアクリル樹脂は、ポリマーラテックスの形態であることが環境上好ましい。ポリマーラテックスは、水不溶な疎水性ポリマーが微細な粒子として水または水溶性の分散媒中に分散したものにおいてポリマー成分を指す。分散状態としてはポリマーが分散媒中に乳化されているもの、乳化重合されたもの、ミセル分散されたもの、或いはポリマー分子中に部分的に親水的な構造を持ち分子鎖自身が分子状分散したものなどいずれでもよい。なお、ポリマーラテックスについては「合成樹脂エマルジョン(奥田平、稲垣寛編集、高分子刊行会発行(1978))」、「合成ラテックスの応用(杉村孝明、片岡靖男、鈴木聡一、笠原啓司編集、高分子刊行会発行(1993))」、「合成ラテックスの化学(室井宗一著、高分子刊行会発行(1970))」などに記載されている。
ポリマーラテックスの分散粒子の平均粒径は1〜50,000nm、より好ましくは5〜1000nm程度の範囲が好ましい。分散粒子の粒径分布に関しては広い粒径分布を持つものでも単分散の粒径分布を持つものでもよい。
本発明に係るアクリル樹脂系ポリマーラテックスとしては、通常の均一構造のポリマーラテックス以外、いわゆるコア/シェル型のポリマーラテックスでもよい。この場合、コアとシェルはガラス転移温度を変えると好ましい場合がある。
アクリル樹脂系ポリマーラテックスの最低造膜温度(MFT)は−30〜90℃、より好ましくは0〜70℃程度が好ましい。最低造膜温度をコントロールする為に造膜助剤を添加してもよい。造膜助剤は可塑剤とも呼ばれ、ポリマーラテックスの最低造膜温度を低下させる有機化合物(通常有機溶剤)で、例えば、前述の「合成ラテックスの化学(室井宗一著、高分子刊行会発行(1970))」に記載されている。
セルロースエステル樹脂は公知のセルロースエステル、例えば、セルロースナイトレート、セルロースアセテート、セルロースアセテートプロピオネート、セルロースアセテートブチレート、セルロースプロピオネート、セルロースブチレート等が使用可能であるが、セルロースアセテートブチレート及びセルロースアセテートプロピオネートが好ましい。ヒドロキシル基含有量が4〜20質量%のセルロースエステルは、他の種類の樹脂と併用した場合でも相溶性に優れ、各層間の接着性を向上させることができる。アセチル基の含有量は好ましくは0.2〜50質量%、ブチリル基の含有量は好ましくは5〜60質量%、プロピオニル基の含有量は好ましくは5〜60質量%である。
上記のこれら樹脂は1種または2種以上の混合物として用いられる。また、これら樹脂と共にアミノ樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、ポリイソシアネート等の架橋性樹脂や他の樹脂を併用することができる。
本発明の帯電防止層には、以下のような無機粒子を用いることができる。シリカ、アルミナ、硫酸バリウム、炭酸カルシウム、チタニア、酸化スズ、酸化インジウム、タルクのような無機物が挙げられる。これらの微粒子の形状は特に制限がなく、針状でも、球形でも、板状でも破砕状でも用いることができる。好ましい大きさは0.1〜15μm、より好ましくは0.2〜10μm、更に好ましくは0.3〜7μmである。粒子の添加量は片面1m2あたり0.1〜50mg、より好ましくは0.2〜30mg、更に好ましくは0.3〜20mgである。
本発明の帯電防止層は透明性や塗布ムラ(干渉ムラ)の点から、厚さは0.30〜0.70μmが好ましく、より好ましくは0.35〜0.55μmである。帯電防止層の厚さが当該範囲にあると、導電性及び透明性の向上が期待することができるため好ましい。
本発明の帯電防止層を設けるときの乾燥条件は、寸法性能を確保する点から、基材樹脂のTg+15℃未満であることが好ましい。
本発明においては、帯電防止層を設ける前に、下引き層を設けてもよい。特に結晶配向化が完了する前のポリエステルフィルムの片面または両面に塗布液を塗布することは、帯電防止層を塗布する際に塗布性を向上させる点で好ましい。
本発明の帯電防止層の塗布方法としては、公知の任意の塗工法が適用できる。例えば、キスコート法、リバースコート法、ダイコート法、リバースキスコート法、オフセットグラビアコート法、マイヤーバーコート法、ロールブラッシュ法、スプレーコート法、エアーナイフコート法、含浸法、カーテンコート法などを単独または組み合わせて適用するとよい。
《高屈折率層と低屈折率層から構成される交互積層ユニットの構成》
本発明において、高屈折率層と低屈折率層の近赤外反射ユニットを交互に有することを特徴とする交互積層ユニットについて説明する。
本発明における「高屈折率層」と「低屈折率層」とは、屈折率が相互に異なる二層以上の層のうち、相対的に屈折率が高い層を「高屈折率層」と呼び、相対的に屈折率が低い層を「低屈折率層」と呼ぶ。
近赤外線反射フィルムの反射タイプにおいては、高屈折率層と低屈折率層の屈折率の差は大きいほど、少ない層数で赤外反射率を高くすることができる観点で好ましいが、本発明では、高屈折率層と低屈折率層から構成される交互積層ユニットにおいて、隣接する該高屈折率層と低屈折率層との屈折率差が0.1以上であることが好ましい。特に好ましくは0.3以上であり、更に好ましくは0.4以上である。
ユニット数としては、高屈折率層と低屈折率層との屈折率差によるが、好ましくは40ユニット以下、より好ましくは20ユニット以下であり、さらに好ましくは10ユニット)以下である。
ちなみに本発明において、高屈折率層、低屈折率層の屈折率は、下記の方法に従って求めることができる。
基材上に屈折率を測定する各屈折率層を単層で塗設したサンプルを作製し、このサンプルを10cm×10cmに断裁した後、下記の方法に従って屈折率を求める。分光光度計として、U−4000型(日立製作所社製)を用いて、各サンプルの測定側の裏面を粗面化処理した後、黒色のスプレーで光吸収処理を行って裏面での光の反射を防止して、5度正反射の条件にて可視光領域(400nm〜700nm)の反射率を25点測定して平均値を求め、その測定結果より平均屈折率を求める。
本発明における高屈折率層の好ましい屈折率としては1.80〜2.50であり、より好ましくは1.90〜2.20である。また、低屈折率層の好ましい屈折率としては1.10〜1.60であり、より好ましくは1.30〜1.50である。
本発明の近赤外線反射フィルムにおいては、基材に隣接する層が、酸化珪素を含む低屈折率層で、最表層も酸化珪素を含む低屈折率層である層構成が好ましい。
本発明における高屈折層及び低屈折率層は、いずれも金属酸化物と水溶性樹脂を含有することが好ましい態様である。
また、交互積層ユニットは、帯電防止層側でもよく、反対側でもよいが、好ましくは、帯電防止側である。交互積層ユニットの膜厚は。0.01μm以上1μm以下が好ましい。
〔金属酸化物〕
本発明に係る金属酸化物としては、例えば、二酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化亜鉛、合成非晶質シリカ、コロイダルシリカ、アルミナ、コロイダルアルミナ、チタン酸鉛、鉛丹、黄鉛、亜鉛黄、酸化クロム、酸化第二鉄、鉄黒、酸化銅、酸化マグネシウム、水酸化マグネシウム、チタン酸ストロンチウム、酸化イットリウム、酸化ニオブ、酸化ユーロピウム、酸化ランタン、ジルコン、酸化スズを挙げることができる。
金属酸化物の含有量は、50質量%以上、95質量%以下が好ましく、60質量%以上90質量%以下がより好ましい。金属酸化物の含有量を50質量%以上とすることにより、高屈折率層と低屈折率層の屈折率差を大きくすることが容易となり、金属酸化物の含有量を95質量%以下とすることにより、膜の柔軟性が得られ、近赤外線反射フィルムを形成することの容易となる。
また、各屈折率層において、金属酸化物(F)と各層を構成するバインダーである水溶性高分子(B)との質量比(F/B)としては、0.5〜20の範囲であることが好ましく、より好ましくは1.0〜10である。
本発明に係る高屈折率層で用いる金属酸化物としては、TiO2、ZnO、ZrO2が好ましく、高屈折率層を形成するための後述の金属酸化物含有組成物の安定性の観点ではTiO2(二酸化チタンゾル)がより好ましい。また、TiO2の中でもルチル型が、触媒活性が低いために高屈折率層や隣接した層の耐候性が高くなり、さらに屈折率が高いことから好ましい。
本発明で用いることのできる二酸化チタンゾルの調製方法としては、例えば、特開昭63−17221号公報、特開平7−819号公報、特開平9−165218号公報、特開平11−43327号公報等参照にすることができる。
また、その他の二酸化チタンゾルの調製方法としては、例えば、特開昭63−17221号公報、特開平7−819号公報、特開平9−165218号公報、特開平11−43327号公報等参照にすることができる。
二酸化チタン微粒子の好ましい一次粒子径は、4nm〜50nmであり、より好ましくは4nm〜30nmである。
本発明に係る低屈折率層においては、金属酸化物としては、二酸化ケイ素粒子を用いることが好ましく、酸性のコロイダルシリカゾルを用いることが特に好ましい。
本発明に係る二酸化ケイ素粒子は、その体積平均粒径が100nm以下であることが好ましい。一次粒子の状態で分散された二酸化ケイ素の一次粒子の体積平均粒径(塗設前の分散液状態での粒径)は、20nm以下のものが好ましく、より好ましくは10nm以下である。また二次粒子の平均粒径としては、30nm以下であることが、ヘイズが少なく可視光透過性に優れる観点で好ましい。
本発明に係る体積平均粒径の測定方法は、粒子そのものをレーザー回折散乱法、動的光散乱法、あるいは電子顕微鏡を用いて観察する方法や、屈折率層の断面や表面に現れた粒子像を電子顕微鏡で観察する方法により、1,000個の任意の粒子の粒径を測定し、それぞれd1、d2・・・di・・・dkの粒径を持つ粒子がそれぞれn1、n2・・・ni・・・nk個存在する金属酸化物粒子の集団において、粒子1個当りの体積をviとした場合に、体積平均粒径mv={Σ(vi・di)}/{Σ(vi)}で表される体積で重み付けされた平均粒径である。
〔水溶性高分子〕
本発明における水溶性高分子としては、特に反応性官能基を有するポリマー、無機ポリマー、増粘多糖類及びゼラチンから選ばれる少なくとも1種であることが好ましい。
本発明に係る水溶性高分子でいう水溶性とは、水媒体に対し30質量%以上溶解する高分子化合物であり、好ましくは40質量%以上である。
本発明に係る高屈折層形成用塗布液及び低屈折率層形成用塗布液における水溶性高分子の濃度としては、0.3〜3.0質量%であることが好ましく、0.35〜2.0質量%の範囲であることがより好ましい。
以下、各水溶性高分子の詳細について説明する。
(反応性官能基を有するポリマー)
本発明に係る水溶性高分子の1つとしては、反応性官能基を有するポリマーを用いることが好ましい。
本発明に適用可能な水溶性高分子としては反応性官能基を有するポリマーが挙げられ、例えば、ポリビニルアルコール類、ポリビニルピロリドン類、ポリアクリル酸、アクリル酸−アクリルニトリル共重合体、アクリル酸カリウム−アクリルニトリル共重合体、酢酸ビニル−アクリル酸エステル共重合体、若しくはアクリル酸−アクリル酸エステル共重合体などのアクリル系樹脂、スチレン−アクリル酸共重合体、スチレン−メタクリル酸共重合体、スチレン−メタクリル酸−アクリル酸エステル共重合体、スチレン−α−メチルスチレン−アクリル酸共重合体、若しくはスチレン−α−メチルスチレン−アクリル酸−アクリル酸エステル共重合体などのスチレンアクリル酸樹脂、スチレン−スチレンスルホン酸ナトリウム共重合体、スチレン−2−ヒドロキシエチルアクリレート共重合体、スチレン−2−ヒドロキシエチルアクリレート−スチレンスルホン酸カリウム共重合体、スチレン−マレイン酸共重合体、スチレン−無水マレイン酸共重合体、ビニルナフタレン−アクリル酸共重合体、ビニルナフタレン−マレイン酸共重合体、酢酸ビニル−マレイン酸エステル共重合体、酢酸ビニル−クロトン酸共重合体、酢酸ビニル−アクリル酸共重合体などの酢酸ビニル系共重合体及びそれらの塩が挙げられる。これらの中で、特に好ましい例としては、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン類及びそれを含有する共重合体が挙げられる。
水溶性高分子の重量平均分子量は、1,000以上200,000以下が好ましい。更には、3,000以上40,000以下がより好ましい。
本発明で好ましく用いられるポリビニルアルコールには、ポリ酢酸ビニルを加水分解して得られる通常のポリビニルアルコールの他に、末端をカチオン変性したポリビニルアルコールやアニオン性基を有するアニオン変性ポリビニルアルコール等の変性ポリビニルアルコールも含まれる。
酢酸ビニルを加水分解して得られるポリビニルアルコールは、平均重合度が1,000以上のものが好ましく用いられ、特に平均重合度が1,500〜5,000のものが好ましく用いられる。また、ケン化度は、70〜100%のものが好ましく、80〜99.5%のものが特に好ましい。
カチオン変性ポリビニルアルコールとしては、例えば、特開昭61−10483号に記載されているような、第一〜三級アミノ基や第四級アンモニウム基を上記ポリビニルアルコールの主鎖または側鎖中に有するポリビニルアルコールであり、カチオン性基を有するエチレン性不飽和単量体と酢酸ビニルとの共重合体をケン化することにより得られる。
カチオン性基を有するエチレン性不飽和単量体としては、例えば、トリメチル−(2−アクリルアミド−2,2−ジメチルエチル)アンモニウムクロライド、トリメチル−(3−アクリルアミド−3,3−ジメチルプロピル)アンモニウムクロライド、N−ビニルイミダゾール、N−ビニル−2−メチルイミダゾール、N−(3−ジメチルアミノプロピル)メタクリルアミド、ヒドロキシルエチルトリメチルアンモニウムクロライド、トリメチル−(2−メタクリルアミドプロピル)アンモニウムクロライド、N−(1,1−ジメチル−3−ジメチルアミノプロピル)アクリルアミド等が挙げられる。カチオン変性ポリビニルアルコールのカチオン変性基含有単量体の比率は、酢酸ビニルに対して0.1〜10モル%、好ましくは0.2〜5モル%である。
アニオン変性ポリビニルアルコールは、例えば、特開平1−206088号に記載されているようなアニオン性基を有するポリビニルアルコール、特開昭61−237681号および同63−307979号に記載されているような、ビニルアルコールと水溶性基を有するビニル化合物との共重合体及び特開平7−285265号に記載されているような水溶性基を有する変性ポリビニルアルコールが挙げられる。
また、ノニオン変性ポリビニルアルコールとしては、例えば、特開平7−9758号に記載されているようなポリアルキレンオキサイド基をビニルアルコールの一部に付加したポリビニルアルコール誘導体、特開平8−25795号に記載されている疎水性基を有するビニル化合物とビニルアルコールとのブロック共重合体等が挙げられる。ポリビニルアルコールは、重合度や変性の種類違いなど二種類以上を併用することもできる。
本発明においては、反応性官能基を有するポリマーを使用する場合には、硬化剤を使用してもよい。反応性官能基を有するポリマーがポリビニルアルコールの場合には、後述するホウ酸及びその塩やエポキシ系硬化剤が好ましい。
(無機ポリマー)
本発明に係る水溶性高分子の1つとしては、ジルコニウム原子含有化合物あるいはアルミニウム原子含有化合物等の無機ポリマーを用いることが好ましい。
本発明に適用可能なジルコニウム原子を含む化合物は、酸化ジルコニウムを除くものであるが、その具体例としては、二フッ化ジルコニウム、三フッ化ジルコニウム、四フッ化ジルコニウム、ヘキサフルオロジルコニウム酸塩(例えば、カリウム塩)、ヘプタフルオロジルコニウム酸塩(例えば、ナトリウム塩、カリウム塩やアンモニウム塩)、オクタフルオロジルコニウム酸塩(例えば、リチウム塩)、フッ化酸化ジルコニウム、二塩化ジルコニウム、三塩化ジルコニウム、四塩化ジルコニウム、ヘキサクロロジルコニウム酸塩(例えば、ナトリウム塩やカリウム塩)、酸塩化ジルコニウム(塩化ジルコニル)、二臭化ジルコニウム、三臭化ジルコニウム、四臭化ジルコニウム、臭化酸化ジルコニウム、三ヨウ化ジルコニウム、四ヨウ化ジルコニウム、過酸化ジルコニウム、水酸化ジルコニウム、硫化ジルコニウム、硫酸ジルコニウム、p−トルエンスルホン酸ジルコニウム、硫酸ジルコニル、硫酸ジルコニルナトリウム、酸性硫酸ジルコニル三水和物、硫酸ジルコニウムカリウム、セレン酸ジルコニウム、硝酸ジルコニウム、硝酸ジルコニル、リン酸ジルコニウム、炭酸ジルコニル、炭酸ジルコニルアンモニウム、酢酸ジルコニウム、酢酸ジルコニル、酢酸ジルコニルアンモニウム、乳酸ジルコニル、クエン酸ジルコニル、ステアリン酸ジルコニル、リン酸ジルコニル、シュウ酸ジルコニウム、ジルコニウムイソプロピレート、ジルコニウムブチレート、ジルコニウムアセチルアセトネート、アセチルアセトンジルコニウムブチレート、ステアリン酸ジルコニウムブチレート、ジルコニウムアセテート、ビス(アセチルアセトナト)ジクロロジルコニウム、トリス(アセチルアセトナト)クロロジルコニウム等が挙げられる。
これらの化合物の中でも、塩化ジルコニル、硫酸ジルコニル、硫酸ジルコニルナトリウム、酸性硫酸ジルコニル三水和物、硝酸ジルコニル、炭酸ジルコニル、炭酸ジルコニルアンモニウム、酢酸ジルコニル、酢酸ジルコニルアンモニウム、ステアリン酸ジルコニルが好ましく、更に好ましくは、炭酸ジルコニル、炭酸ジルコニルアンモニウム、酢酸ジルコニル、硝酸ジルコニル、塩化ジルコニルであり、特に好ましくは、炭酸ジルコニルアンモニウム、塩化ジルコニル、酢酸ジルコニルである。上記化合物の具体的商品名としては、第一稀元素化学工業製のジルコゾールZA−20(酢酸ジルコニル)、第一稀元素化学工業製のジルコゾールZC−2(塩化ジルコニル)、第一稀元素化学工業製のジルコゾールZN(硝酸ジルコニル)等が挙げられる。
ジルコニウム原子を含む化合物は、単独で用いても良いし、異なる二種類以上の化合物を併用してもよい。
また、本発明で用いることのできる分子内にアルミニウム原子を含む化合物には、酸化アルミニウムは含まず、その具体例としては、フッ化アルミニウム、ヘキサフルオロアルミン酸(例えば、カリウム塩)、塩化アルミニウム、塩基性塩化アルミニウム(例えば、ポリ塩化アルミニウム)、テトラクロロアルミン酸塩(例えば、ナトリウム塩)、臭化アルミニウム、テトラブロモアルミン酸塩(例えば、カリウム塩)、ヨウ化アルミニウム、アルミン酸塩(例えば、ナトリウム塩、カリウム塩、カルシウム塩)、塩素酸アルミニウム、過塩素酸アルミニウム、チオシアン酸アルミニウム、硫酸アルミニウム、塩基性硫酸アルミニウム、硫酸アルミニウムカリウム(ミョウバン)、硫酸アンモニウムアルミニウム(アンモニウムミョウバン)、硫酸ナトリウムアルミニウム、燐酸アルミニウム、硝酸アルミニウム、燐酸水素アルミニウム、炭酸アルミニウム、ポリ硫酸珪酸アルミニウム、ギ酸アルミニウム、酢酸アルミニウム、乳酸アルミニウム、蓚酸アルミニウム、アルミニウムイソプロピレート、アルミニウムブチレート、エチルアセテートアルミニウムジイソプロピレート、アルミニウムトリス(アセチルアセトネート)、アルミニウムトリス(エチルアセトアセテート)、アルミニウムモノアセチルアセトネートビス(エチルアセトアセトネート)等を挙げることができる。
これらの中でも、塩化アルミニウム、塩基性塩化アルミニウム、硫酸アルミニウム、塩基性硫酸アルミニウム、塩基性硫酸珪酸アルミニウムが好ましく、塩基性塩化アルミニウム、塩基性硫酸アルミニウムが最も好ましい。上記化合物の具体的商品名としては、多木化学製のポリ塩化アルミニウム(PAC)であるタキバイン#1500、浅田化学(株)製のポリ水酸化アルミニウム(Paho)、(株)理研グリーン製のピュラケムWTが挙げられ、各種グレードのものが入手することができる。
前記無機ポリマーの添加量は、無機酸化物粒子100質量部に対して1〜100質量部が好ましく、2〜50質量部が更に好ましい。
(増粘多糖類)
本発明においては、水溶性高分子として、増粘多糖類を用いることが好ましい。
本発明で用いることのできる増粘多糖類としては、特に制限はなく、例えば、一般に知られている天然単純多糖類、天然複合多糖類、合成単純多糖類及び合成複合多糖類に挙げることができ、これら多糖類の詳細については、「生化学事典(第2版),東京化学同人出版」、「食品工業」第31巻(1988)21頁等を参照することができる。
本発明でいう増粘多糖類とは、糖類の重合体であり、低温時の粘度と高温時との粘度差を助長する特性を備えている。さらに、本発明に係る増粘多糖類を、金属酸化物を含む塗布液に添加することにより、粘度上昇を起こすものであり、その粘度上昇幅は、添加により15℃における粘度が1.0mPa・s以上の上昇を生じる多糖類であり、好ましくは5.0mPa・s以上であり、更に好ましくは10.0mPa・s以上の粘度上昇能を備えた多糖類である。
本発明に適用可能な増粘多糖類としては、例えば、β1−4グルカン(例えば、カルボキシメチルセルロース、カルボキシエチルセルロース等)、ガラクタン(例えば、アガロース、アガロペクチン等)、ガラクトマンノグリカン(例えば、ローカストビーンガム、グアラン等)、キシログルカン(例えば、タマリンドガム等)、グルコマンノグリカン(例えば、蒟蒻マンナン、木材由来グルコマンナン、キサンタンガム等)、ガラクトグルコマンノグリカン(例えば、針葉樹材由来グリカン)、アラビノガラクトグリカン(例えば、大豆由来グリカン、微生物由来グリカン等)、グルコラムノグリカン(例えば、ジェランガム等)、グリコサミノグリカン(例えば、ヒアルロン酸、ケラタン硫酸等)、アルギン酸及びアルギン酸塩、寒天、κ−カラギーナン、λ−カラギーナン、ι−カラギーナン、ファーセレラン等の紅藻類に由来する天然高分子多糖類等が挙げられ、塗布液中に共存する金属酸化微粒子の分散安定性を低下させない観点から、好ましくは、その構成単位がカルボン酸基やスルホン酸基を有しないものが好ましい。その様な多糖類としては、例えば、L−アラビトース、D−リボース、2−デオキシリボース、D−キシロースなどのペントース、D−グルコース、D−フルクトース、D−マンノース、D−ガラクトースなどのヘキソースのみからなる多糖類であることが好ましい。具体的には、主鎖がグルコースであり、側鎖もグルコースであるキシログルカンとして知られるタマリンドシードガムや、主鎖がマンノースで側鎖がグルコースであるガラクトマンナンとして知られるグアーガム、カチオン化グアーガム、ヒドロキシプロピルグアーガム、ローカストビーンガム、タラガムや、主鎖がガラクトースで側鎖がアラビノースであるアラビノガラクタンを好ましく使用することができる。本発明においては、特には、タマリンド、グアーガム、カチオン化グアーガム、ヒドロキシプロピルグアーガムが好ましい。
本発明においては、更には、二種類以上の増粘多糖類を併用することが好ましい。
増粘多糖類の含有量としては、5質量%以上、50質量%以下が好ましく、10質量%以上、40質量%以下がより好ましい。但し、その他の水溶性高分子やエマルジョン樹脂等と併用する場合には、3質量%以上含有すればよい。増粘多糖類が少ないと塗膜乾燥時に膜面が乱れて透明性が劣化する傾向が大きくなる。一方、含有量が50質量%以下であれば、相対的な金属酸化物の含有量が適切となり、高屈折率層と低屈折率層の屈折率差を大きくすることが容易になる。
〈ゼラチン〉
本発明に係る各屈折率層においては、ゼラチンを含有することもできる。
本発明に係るゼラチンとしては、酸処理ゼラチン、アルカリ処理ゼラチンの他に、ゼラチンの製造過程で酵素処理をする酵素処理ゼラチン及びゼラチン誘導体、すなわち分子中に官能基としてのアミノ基、イミノ基、ヒドロキシル基、カルボキシル基を持ち、それと反応して得る基を持った試薬で処理し改質したものでもよい。ゼラチンの一般的製造法に関しては良く知られており、例えばT.H.James:The Theory of Photographic Process 4th.ed.1977(Macmillan)55項、科学写真便覧(上)72〜75項(丸善)、写真工学の基礎−銀塩写真編119〜124(コロナ社)等の記載を参考にすることができる。
(硬化剤)
本発明においては、バインダーである水溶性高分子を硬化させるため、硬化剤を使用することが好ましい。
本発明に適用可能なる硬化剤としては、水溶性高分子と硬化反応を起こすものであれば特に制限はないが、水溶性高分子がポリビニルアルコールである場合には、ホウ酸及びその塩が好ましいが、その他にも公知のものが使用でき、一般的には水溶性高分子と反応し得る基を有する化合物あるいは水溶性高分子が有する異なる基同士の反応を促進するような化合物であり、水溶性高分子の種類に応じて適宜選択して用いられる。硬化剤の具体例としては、例えば、エポキシ系硬化剤(ジグリシジルエチルエーテル、エチレングリコールジグリシジルエーテル、1,4−ブタンジオールジグリシジルエーテル、1,6−ジグリシジルシクロヘキサン、N,N−ジグリシジル−4−グリシジルオキシアニリン、ソルビトールポリグリシジルエーテル、グリセロールポリグリシジルエーテル等)、アルデヒド系硬化剤(ホルムアルデヒド、グリオキザール等)、活性ハロゲン系硬化剤(2,4−ジクロロ−4−ヒドロキシ−1,3,5−s−トリアジン等)、活性ビニル系化合物(1,3,5−トリスアクリロイル−ヘキサヒドロ−s−トリアジン、ビスビニルスルホニルメチルエーテル等)、アルミニウム明礬等が挙げられる。
ホウ酸またはその塩とは、硼素原子を中心原子とする酸素酸およびその塩のことをいい、具体的には、オルトホウ酸、二ホウ酸、メタホウ酸、四ホウ酸、五ホウ酸および八ホウ酸およびそれらの塩が挙げられる。
硬化剤としてのホウ素原子を有するホウ酸およびその塩は、単独の水溶液でも、また、二種以上を混合して使用しても良い。特に好ましいのはホウ酸とホウ砂の混合水溶液である。
ホウ酸とホウ砂の水溶液は、それぞれ比較的希薄水溶液でしか添加することが出来ないが両者を混合することで濃厚な水溶液にすることが出来、塗布液を濃縮化することができる。また、添加する水溶液のpHを比較的自由にコントロールすることができる利点がある。
上記硬化剤の総使用量は、上記水溶性高分子1g当たり1〜600mgが好ましい。
〔界面活性剤〕
本発明の高屈折層及び低屈折率層の少なくとも1層が、界面活性剤を添加しても良い。活性剤種としてはアニオン系、カチオン系、ノニオン系のいずれの種類を使用することができる。特にアセチレングリコール系ノニオン性界面活性剤、4級アンモニウム塩系カチオン性界面活性剤及びフッ素系カチオン性界面活性剤が好ましい。
また本発明に係る界面活性剤の添加量としては、それぞれの塗布液を100質量%としたとき、固形分として0.005〜0.30質量%の範囲であることが好ましく、更には0.01〜0.10質量%であることが好ましい。
〔その他の添加剤〕
次いで、各屈折率層に適用可能なその他の添加剤について説明する。
(アミノ酸)
本発明においては、更に、アミノ酸を添加することができる。
本発明でいうアミノ酸とは、同一分子内にアミノ基とカルボキシル基を有する化合物であり、α−、β−、γ−などいずれのタイプのアミノ酸でもよいが、等電点が6.5以下のアミノ酸であることが好ましい。アミノ酸には光学異性体が存在するものもあるが、本発明においては光学異性体による効果の差はなく、等電点が6.5以下のいずれの異性体も単独であるいはラセミ体で使用することができる。
本発明に適用可能なアミノ酸に関する詳しい解説は、化学大辞典1 縮刷版(共立出版;昭和35年発行)268頁〜270頁の記載を参照することができる。
本発明において、好ましいアミノ酸として、グリシン、アラニン、バリン、α−アミノ酪酸、γ−アミノ酪酸、β−アラニン、セリン、ε−アミノ−n−カプロン酸、ロイシン、ノルロイシン、フェニルアラニン、トレオニン、アスパラギン、アスパラギン酸、ヒスチジン、リジン、グルタミン、システイン、メチオニン、プロリン、ヒドロキシプロリン等を挙げることができ、水溶液として使用するためには、等電点における溶解度が、水100に対し、3g以上が好ましく、たとえば、グリシン、アラニン、セリン、ヒスチジン、リジン、グルタミン、システイン、メチオニン、プロリン、ヒドロキシプロリンなどが好ましく用いられ、金属酸化物が、バインダーと緩やかな水素結合を有する観点から、水酸基を有する、セリン、ヒドロキシプロリンを用いることがさらに好ましい。
〔リチウム化合物〕
本発明においては、高屈折率層及び低屈折率層の少なくとも1層が、金属酸化物及び水溶性高分子と共に、リチウム化合物を含有することができる。
本発明に適用可能なリチウム化合物としては、特に制限はなく、例えば、炭酸リチウム、硫酸リチウム、硝酸リチウム、酢酸リチウム、オロト酸リチウム、クエン酸リチウム、モリブデン酸リチウム、塩化リチウム、水素化リチウム、水酸化リチウム、臭化リチウム、フッ化リチウム、ヨウ化リチウム、ステアリン酸リチウム、リン酸リチウム、ヘキサフルオロリン酸リチウム、水素化アルミニウムリチウム、水素化トリエチルホウ酸リチウム、水素化トリエトキシアルミニウムリチウム、タンタル酸リチウム、次亜塩素酸リチウム、酸化リチウム、炭化リチウム、窒化リチウム、ニオブ酸リチウム、硫化リチウム、ホウ酸リチウム、LiBF4、LiClO4、LiPF4、LiCF3SO3等が挙げられ、その中でも水酸化リチウムが、本願発明の効果を十分に発揮できる観点から好ましい。
本発明において、リチウム化合物の添加量としては、屈折率層に存在する金属酸化物1g当たり、0.005〜0.05gの範囲が好ましく、より好ましくは0.01〜0.03gである。
(エマルジョン樹脂)
本発明においては、本発明に係る高屈折率層または低屈折率層には、エマルジョン樹脂を含有することができる。
本発明でいうエマルジョン樹脂とは、油溶性のモノマーを、分散剤を含む水溶液中でエマルジョン状態に保ち、重合開始剤を用いて乳化重合させた樹脂微粒子である。
エマルジョンの重合時に使用される分散剤としては、一般的には、アルキルスルホン酸塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、ジエチルアミン、エチレンジアミン、4級アンモニウム塩のような低分子の分散剤の他に、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリエキシエチレンラウリル酸エーテル、ヒドロキシエチルセルロース、ポリビニルピロリドンのような高分子分散剤が挙げられる。
本発明に係るエマルジョン樹脂とは、水系媒体中に微細な(体積平均粒径0.01〜2μm)樹脂粒子がエマルジョン状態で分散されている樹脂で、油溶性のモノマーを、水酸基を有する高分子分散剤を用いてエマルジョン重合して得られる。用いる分散剤の種類によって、得られるエマルジョン樹脂のポリマー成分に基本的な違いは見られないが、水酸基を有する高分子分散剤を用いてエマルジョン重合すると、微細な微粒子の少なくとも表面に水酸基の存在が推定され、他の分散剤を用いて重合したエマルジョン樹脂とはエマルジョンの化学的、物理的性質が異なる。
水酸基を含む高分子分散剤とは、重量平均分子量が10000以上の高分子の分散剤で、側鎖または末端に水酸基が置換されたものであり、例えばポリアクリル酸ソーダ、ポリアクリルアミドのようなアクリル系の高分子で2−エチルヘキシルアクリレートが共重合されたもの、ポリエチレングリコールやポリプロピレングリコールのようなポリエーテル、ポリビニルアルコールなどが挙げられ、特にポリビニルアルコールが好ましい。
高分子分散剤として使用されるポリビニルアルコールは、ポリ酢酸ビニルを加水分解して得られる通常のポリビニルアルコールの他に、カチオン変性したポリビニルアルコールやカルボキシル基のようなアニオン性基を有するアニオン変性ポリビニルアルコール、シリル基を有するシリル変性ポリビニルアルコール等の変性ポリビニルアルコールも含まれる。ポリビニルアルコールは、平均重合度は高い方がインク吸収層を形成する際のクラックの発生を抑制する効果が大きいが、平均重合度が5000以内であると、エマルジョン樹脂の粘度が高くなく、製造時に取り扱いやすい。したがって、平均重合度は300〜5000のものが好ましく、1500〜5000のものがより好ましく、3000〜4500のものが特に好ましい。ポリビニルアルコールのケン化度は70〜100モル%のものが好ましく、80〜99.5モル%のものがより好ましい。
上記の高分子分散剤で乳化重合される樹脂としては、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、ビニル系化合物、スチレン系化合物といったエチレン系単量体、ブタジエン、イソプレンといったジエン系化合物の単独重合体または共重合体が挙げられ、例えばアクリル系樹脂、スチレン−ブタジエン系樹脂、エチレン−酢酸ビニル系樹脂等が挙げられる。
(屈折率層のその他の添加剤)
本発明に係る高屈折率層と低屈折率層に適用可能な各種の添加剤を以下に列挙する。例えば、特開昭57−74193号公報、同57−87988号公報及び同62−261476号公報に記載の紫外線吸収剤、特開昭57−74192号、同57−87989号公報、同60−72785号公報、同61−146591号公報、特開平1−95091号公報及び同3−13376号公報等に記載されている退色防止剤、アニオン、カチオンまたはノニオンの各種界面活性剤、特開昭59−42993号公報、同59−52689号公報、同62−280069号公報、同61−242871号公報および特開平4−219266号公報等に記載されている蛍光増白剤、硫酸、リン酸、酢酸、クエン酸、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸カリウム等のpH調整剤、消泡剤、ジエチレングリコール等の潤滑剤、防腐剤、帯電防止剤、マット剤等の公知の各種添加剤を含有させることもできる。
〔近赤外線反射フィルムの製造方法〕
本発明の近赤外線反射フィルムは、基材上に高屈折率層と低屈折率層から構成される交互積層ユニットを有するが、具体的には水系の高屈折率層塗布液と低屈折率層塗布液とを交互に湿式塗布、蒸着、スパッタリング法で塗布、乾燥して積層体を形成することが好ましい。特に湿式塗布が好ましい。
塗布方式としては、例えば、ロールコーティング法、ロッドバーコーティング法、エアナイフコーティング法、スプレーコーティング法、カーテン塗布方法、あるいは米国特許第2,761,419号、同第2,761,791号公報に記載のホッパーを使用するスライドビード塗布方法、エクストルージョンコート法等が好ましく用いられる。
同時重層塗布を行う際の高屈折率層塗布液と低屈折率層塗布液の粘度としては、スライドビード塗布方式を用いる場合には、5〜100mPa・sの範囲が好ましく、さらに好ましくは10〜50mPa・sの範囲である。また、カーテン塗布方式を用いる場合には、5〜1200mPa・sの範囲が好ましく、さらに好ましくは25〜500mPa・sの範囲である。
また、塗布液の15℃における粘度としては、100mPa・s以上が好ましく、100〜30,000mPa・sがより好ましく、さらに好ましくは3,000〜30,000mPa・sであり、最も好ましいのは10,000〜30,000mPa・sである。
塗布および乾燥方法としては、水系の高屈折率層塗布液と低屈折率層塗布液を30℃以上に加温して、塗布を行った後、形成した塗膜の温度を1〜15℃に一旦冷却し、10℃以上で乾燥することが好ましく、より好ましくは、乾燥条件として、湿球温度5〜50℃、膜面温度10〜50℃の範囲の条件で行うことである。また、塗布直後の冷却方式としては、形成された塗膜均一性の観点から、水平セット方式で行うことが好ましい。
紫外線照射する方法としては、超高圧水銀灯、高圧水銀灯、低圧水銀灯、カーボンアーク、メタルハライドランプなどから発せられる100〜400nm、好ましくは200〜400nmの波長領域の紫外線を照射する、又は走査型やカーテン型の電子線加速器から発せられる100nm以下の波長領域の電子線を照射することにより行うことができる。
UVカット性層の形成では、上述の樹脂に、必要に応じて、酸化防止剤、可塑剤、マット剤、熱可塑性樹脂等の添加剤を加えることができる。また樹脂を溶媒に溶解又は分散させた塗布液を用いて平滑層を形成する際に使用する溶媒としては、公知のものを使用することができる。
〔近赤外線反射フィルムの応用〕
本発明の近赤外線反射フィルムは、幅広い分野に応用することができる。例えば、建物の屋外の窓や自動車窓等長期間太陽光に晒らされる設備に貼り合せ、熱線反射効果を付与する熱線反射フィルム等の窓貼用フィルム、農業用ビニールハウス用フィルム等として、主として耐候性を高める目的で用いられる。
特に、本発明に係る近赤外線反射フィルムが直接もしくは接着剤を介してガラスもしくはガラス代替樹脂基材に貼合されている部材には好適である。
接着剤は、窓ガラスなどに貼り合わせたとき、近赤外線反射フィルムが日光(熱線)入射面側にあるように設置する。また近赤外線反射フィルムを窓ガラスと基材との間に挟持すると、水分等周囲ガスから封止でき耐久性に好ましい。本発明の近赤外線反射フィルムを屋外や車の外側(外貼り用)に設置しても環境耐久性があって好ましい。
本発明に適用可能な接着剤としては、光硬化性もしくは熱硬化性の樹脂を主成分とする接着剤を用いることができる。
接着剤は紫外線に対して耐久性を有するものが好ましく、アクリル系粘着剤またはシリコーン系粘着剤が好ましい。更に粘着特性やコストの観点から、アクリル系粘着剤が好ましい。特に剥離強さの制御が容易なことから、アクリル系粘着剤において、溶剤系及びエマルジョン系の中で溶剤系が好ましい。アクリル溶剤系粘着剤として溶液重合ポリマーを使用する場合、そのモノマーとしては公知のものを使用できる。
また、合わせガラスの中間層として用いられるポリビニルブチラール系樹脂、あるいはエチレン−酢酸ビニル共重合体系樹脂を用いてもよい。具体的には可塑性ポリビニルブチラール(積水化学工業社製、三菱モンサント社製等)、エチレン−酢酸ビニル共重合体(デュポン社製、武田薬品工業社製、デュラミン)、変性エチレン−酢酸ビニル共重合体(東ソー社製、メルセンG)等である。なお、接着層には紫外線吸収剤、抗酸化剤、帯電防止剤、熱安定剤、滑剤、充填剤、着色、接着調整剤等を適宜添加配合してもよい。
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれにより限定されるものではない。
(PET樹脂)
テレフタル酸ジメチル100質量部、エチレングリコール65質量部にエステル交換触媒として酢酸マグネシウム水和物0.05質量部を添加し、常法に従ってエステル交換を行った。得られた生成物に三酸化アンチモン0.05質量部、リン酸トリメチルエステル0.03質量部を添加した。次いで、徐々に昇温、減圧にし、280℃、6.67×10−2kPaで重合を行い、固有粘度0.70のポリエチレンテレフタレート(PET)樹脂を得た。
(基材フィルム)
固有粘度0.70のポリエチレンテレフタレート樹脂を2軸スクリュー押出機に投入し、T−ダイスから290℃で溶融押出しし、冷却回転金属ロール上で静電印加を付与しながら密着固化させ、未延伸シートを得た。
次いで、該未延伸シートをロール延伸機で90℃に加熱して、3.5倍で縦延伸を行った後、縦延伸フィルム上に下記塗布液Aを乾燥後の塗布量が0.5g/m2となるように両面に塗布し、風速10m/秒、120℃の熱風下で20秒通過させて、中間塗布層を形成させた。さらに、テンターで140℃に加熱して3.7倍横延伸したあと、235℃で幅(横)方向に5%緩和させながら熱処理してフィルムを得た。得られた中間塗布層を有する二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムは、厚みが50μm、全光線透過率が90.2%で、ヘイズが0.5%であった。得られた透明基材フィルムを基材−Aとした。
(中間塗布層用塗布液Aの組成)
イオン交換水 50.0質量%
イソプロピルアルコール 28.9質量%
アクリルーメラミン樹脂(日本カーバイト製、A−08、固形分濃度:46質量%)
10.0質量%
ポリエステル系樹脂(東洋紡績製、MD−1250、固形分濃度:30質量%)
10.0質量%
有機粒子(日本触媒製、エポスターMA1001) 1.0質量%
界面活性剤(ダウコーニング株式会社製、ペインタッド32) 0.1質量%
(帯電防止層の積層)
下記の塗布液Bを上記の透明基材フィルム基材−Aの片面上に乾燥後の塗布量が0.1g/m2になるようにマイクログラビア方式で塗布し、100℃で10m/秒の熱風下を10秒間通過させて、帯電防止層を積層した。表面抵抗は、2.1×107Ω/□であった。
(帯電防止層用の塗布液B)
水 10.0質量%
イソプロピルアルコール 80.0質量%
チオフェン系樹脂(ナガセケミテックス製、デナトロンP−502RG)
10.0質量%
得られた帯電防止基材を帯電防止基材−Bとした。
上記帯電防止層の積層方法と同様の方法で下記の塗布液Cを塗布したものを帯電防止基材−Cとした。表面抵抗は、3.5×107Ω/□であった。
(帯電防止層用の塗布液C)
アクリル樹脂(St:Ba:GMA=20:40:40) 80.0質量%
結晶性酸化スズ(SnO2/SbO(9/1)質量比、平均粒径0.038μm、
17質量%分散物) 20.0質量%
上記帯電防止層の積層方法と同様の方法で下記の塗布液Dを塗布したものを帯電防止基材−Dとした。表面抵抗は、1.0×107Ω/□であった。
(帯電防止層用の塗布液D)
ラテックス組成(n−ブチルアクリレート(10質量%),
t−ブチルアクリレート(35質量%),スチレン(27質量%),
ヒドロキシエチルメタクリレート(28質量%):Tg=60℃) 60.0質量%
ヘキサメチレン−1,6−ビス(エチレンウレア) 5.0質量%
導電性ポリマー(前記P−5) 35.0質量%
(高屈折率層用塗布液1の調製)
純水の10.3質量部に、増粘多糖類として1.0質量%の酸処理ゼラチン(等電点:9.5、平均分子量:2万)を140.3質量部、14.8質量%のピコリン酸水溶液を17.3質量部と、ホウ酸の5.5質量%水溶液の2.58質量部とを、それぞれ添加、混合した後、下記酸化チタン分散液1の38.2質量部を添加、混合して、更にフッ素系カチオン性界面活性剤として、サーフロンS221(AGCセイミケミカル社製)を0.067質量部添加し、最後に純水で223質量部に仕上げて、高屈折率層用塗布液1を調製した。なお、高屈折率層用塗布液1における界面活性剤であるサーフロンS221の含有量は、0.03質量%である。
〈酸化チタン分散液1の調製〉
体積平均粒径が35nmのルチル型酸化チタン微粒子を含む20.0質量%酸化チタンゾルの28.9質量部と、14.8質量%のピコリン酸水溶液を5.41質量部と、水酸化リチウムの2.1質量%水溶液の3.92質量部とを、混合、分散して酸化チタン分散液を調製した。
(低屈折率層用塗布液1の調製)
ポリ塩化アルミニウム(多木化学製、タキバイン#1500、表1にはPACと略記)の23.5質量%水溶液を9.18質量部と、コロイダルシリカ(日産化学社製、スノーテックスOS)の10質量%水溶液を510質量部と、ホウ酸の5.5質量%水溶液の103.4質量部と、水酸化リチウムの2.1質量%水溶液の4.75質量部とを、混合、分散し、純水で1000質量部に仕上げて、酸化ケイ素分散液1を調製した。
次いで、17.6質量部の純水に、1.0質量%のタマリンドシードガム水溶液の26.2質量部と、ポリビニルアルコール(PVA217、クラレ社製)の5.0質量%溶液の3.43質量部と、2.1質量%のピコリン酸(例示化合物LI−22)水溶液を0.06質量部とを添加、混合した後、上記酸化ケイ素分散液1の96.5質量部を添加、混合し、更にフッ素系カチオン性界面活性剤として、サーフロンS221(AGCセイミケミカル社製)を0.045質量部添加し、最後に純水で150質量部に仕上げて、低屈折率層用塗布液1を調製した。なお、低屈折率層用塗布液1における界面活性剤であるサーフロンS221の含有量は、0.03質量%である。
(近赤外反射積層体の形成方法)
14層同時塗布可能なスライドホッパー塗布装置を用い、層構成として上記調製した低屈折率層用塗布液1及び高屈折率層用塗布液1をそれぞれ交互に7層ずつ計14層を45℃に保温しながら、45℃に加温した表.1記載の基材上に、同時重層塗布を行った後、膜面が15℃以下となる条件で冷風を1分間吹き付けてセットさせた後、80℃の温風を吹き付けて乾燥させて、14層からなる近赤外反射積層体フィルム1〜8を作製した。
高屈折率層の乾燥厚みは130nm、又低屈折率層の乾燥厚みが170nmになるようにそれぞれ重層塗布した。
(近赤外反射積層体9,10の形成)
(帯電防止層の積層)
透明基材フィルムを基材−Aに帯電防止層用の塗布液Dにかえて帯電防止層用の塗布液Dの導電性ポリマーのみを導電性ポリマー(前記P−9)にかえたほかは同様の帯電防止層用の塗布液Eを用いて透明基材フィルム基材−Aの片面上に乾燥後の塗布量が0.1g/m2になるようにマイクログラビア方式で塗布し、100℃で10m/秒の熱風下を10秒間通過させて、帯電防止層を積層した(帯電防止基材−E)。表面抵抗は、2.1×107Ω/□であった。
〈近赤外反射積層体9,10の形成〉
14層同時塗布可能なスライドホッパー塗布装置を用い、層構成として上記調製した低屈折率層用塗布液1及び高屈折率層用塗布液1をそれぞれ交互に7層ずつ計14層を45℃に保温しながら、45℃に加温した表.1記載の基材上に、同時重層塗布を行った後、膜面が15℃以下となる条件で冷風を1分間吹き付けてセットさせた後、80℃の温風を吹き付けて乾燥させて、14層からなる近赤外反射積層体フィルム9,10を作製した。
高屈折率層の乾燥厚みは130nm、又低屈折率層の乾燥厚みが170nmとした。
(近赤外反射積層体11,12の形成)
また、低屈折率層及び高屈折率層をそれぞれ順次スパッタリングで計14層積層した近赤外反射積層体フィルム11,12を作製した。
即ち、特開2007−148330号公報実施例1に記載のスパッタ成膜装置を用いる方法により二酸化チタン(TiO2)膜(厚さ105nm)を高屈折率層として、また、二酸化ケイ素(SiO2)膜(厚さ175nm)を低屈折率層として順次作製し、交互に7層ずつ計14層積層し、近赤外反射積層体フィルム11,12を作製した。
(近赤外吸収体13,14の形成)
(近赤外線吸収層の積層)
下記の塗布液E(固形分濃度が16質量%、粘度が28cps)を、前記スライドホッパー塗布装置を用いて、表1記載の基材に塗布した後、膜面が15℃以下となる条件で冷風を1分間吹き付けてセットさせた後、80℃の温風を吹き付けて乾燥させて、近赤外遮蔽フィルム13、14を作製した。近赤外透過率が表1の値となるように塗布した。
(近赤外線吸収層用の塗布液E)
下記の質量比で混合し、30分以上攪拌して色素を溶解させた。次いで、公称ろ過精度1μmのフィルターで未溶解物を除去して塗布液を作成した。
トルエン 23.054質量%
メチルエチルケトン 23.054質量%
アクリル系樹脂(綜研化学製GS−1030、固形分濃度:30質量%、
Tg:110℃) 52.695質量%
ジインモニウム塩化合物(日本カーリット製、CIR−RL) 0.731質量%
フタロシアニン系色素(日本触媒製、IR−10A) 0.407質量%
界面活性剤(ダウコーニング製ペインタッド57、HLB:6.7)0.059質量%
《近赤外線反射フィルムの評価》
上記作製した各近赤外線反射フィルムについて、下記の特性値の測定及び性能評価を行った。
(表面比抵抗の評価)
作製した近赤外反射積層体フィルムを、23℃、20%RHで2時間調湿し、帯電防止層側の表面比抵抗(Ω)を測定した。測定に使用した装置は、(株)川口電機製作所製の抵抗測定器R−503及び電極P−616である。
表面比抵抗σ(Ω)は次式により計算で求めた。
σ=(P/g)Rs
Rs:表面抵抗の測定値(Ω)
g :電極間距離(m)
P :主電極の有効長(m)
表面比抵抗(σ)は、表1にlog(Ω)で示した。
(ゴミ付着性)
タバコの灰にフィルムの帯電防止層面側を10秒間、高さ1cmまで近づけ、ゴミの付着を観察した。
○:ゴミ付着は全く見られなかった
△:ゴミ付着は少し認められた
×:ゴミ付着が著しく認められた
(熱割れの評価)
巾200mm、長さ300mm、厚さ1.5mmのガラス板の上に実施例及び比較例で得られた近赤外線反射フィルムをアクリル接着剤で貼り付けて、熱割れ評価用試料を得た。そして、厚み30mmの発泡ポリスチレンで作製した上面、底面が開口した箱(高さ150mm、巾240mm、長さ340mm)を準備し、各箱の開口部に、これらの試料を載置し、箱内部のガラス試料表面(フィルム表面側)の温度を熱電対で測定しつつ、8月の晴天の日に太陽光に暴露した。その後、試料表面の温度を観測し、MAX温度をそれぞれ測定した。同様にしてガラス板のみのときの表面温度も測定し、試料の表面温度との差を熱割れ性の目安とした。温度差が小さいほど熱割れ性が優れている。判定は次の基準に従った。△までは実害性がなく許容されるレベルである。
○:0.5℃未満
△:0.5以上〜1.0℃未満
×:1.0℃以上
(近赤外反射率の測定)
上記分光光度計(積分球使用、日立製作所社製、U−4000型)を用い、各近赤外線反射フィルムの800nm〜1400nmの領域における反射率を測定し、その平均値を求め、これを近赤外反射率とした。
(近赤外透過率の測定)
上記分光光度計(積分球使用、日立製作所社製、U−4000型)を用い、各近赤外線反射線反射フィルムの800nm〜1400nmの領域における透過率を測定し、その平均値を求め、これを近赤外透過率とした。
〈密着性〉
碁盤目密着性の評価は、JIS K 5600の5.6(2004年度版)の記載に準じ、積層体の片側からカッターナイフで、紫外線吸収カット層を貫通し基材に達する1mm角の100個の碁盤目状の切り傷を1mm間隔のカッターガイドを用いて付け、セロハン粘着テープ(ニチバン社製「CT405AP−18」;18mm幅)を切り傷面に貼り付け、消しゴムで上からこすって完全にテープを付着させた後、垂直方向に引き剥がして、紫外線吸収層が基材表面にどのくらい残存しているかを目視で確認して行った。
100個中の剥離数を調べ、下記の基準で評価した。
◎:碁盤目試験にて剥離数が5個以下
○:碁盤目試験にて剥離数が6〜10個
△:碁盤目試験にて剥離数が11〜20個
×:碁盤目試験にて剥離数が21個以上
また、強制劣化試験として作製した近赤外反射積層体フィルムを、23℃、80%RHで3日間調湿した後、同じ密着性評価を行った。
本発明の導電性組成物を被覆した帯電防止基材に形成した近赤外線反射フィルムは熱割れもなく反射性能に優れ、また耐久性も向上している。さらに注目すべきことにゴミ付着が少なく膜剥がれ等の膜物性にも優れていることがわかる。