定義
「ポリペプチド」、「ペプチド」及び「蛋白」という用語は、本明細書においては互換的に使用し、いずれかの長さのアミノ酸の重合体の形態を指し、これは遺伝子敵にコードされた、及び非遺伝子的にコードされたアミノ酸、化学的又は生化学的に修飾又は誘導体化されたアミノ酸、及び修飾されたペプチド骨格を有するポリペプチドを包含することができる。用語は融合蛋白、例えば非相同アミノ酸配列を有する融合蛋白、非相同及び相同のリーダー配列を有する融合物であってN末端メチオニン残基を有するか有さないもの;免疫学的にタグ付けされた蛋白等を包含するがこれらに限定されない。
「核酸」及び「ポリヌクレオチド」という用語は本明細書においては互換的に使用し、そして、いずれかの長さのヌクレオチド、デオキシリボヌクレオチド又はリボヌクレオチドのいずれか、又はそれらの類縁体の重合体形態を指す。ポリヌクレオチドの非限定的な例は線状及び環状の核酸、メッセンジャーRNA(mRNA)、cDNA、組み換えポリヌクレオチド、ベクター、プローブ、及びプライマーを包含する。
「作動可能に連結」という用語は所望の昨日を与える分子間の機能的連結を指す。例えば、核酸の文脈における「作動可能に連結」とは、転写、翻訳等のような所望の機能を与える核酸間の機能的連結、例えば核酸発現制御配列(例えばプロモーター、シグナル配列、又は転写因子結合部位のアレイ)と第2のポリヌクレオチドとの間の機能的連結を指し、この場合、発現制御配列は第2のポリヌクレオチドの転写および/または翻訳に影響する。
本明細書において使用する場合、細胞に言及する場合の「単離された」という用語は、細胞が天然に存在する環境とは異なる環境にある細胞を指し、例えば、細胞が天然には多細胞生物中に存在し、そして細胞がその多細胞生物から取り出されている場合に、細胞は「単離された」ものとなる。単離され、遺伝子的に修飾されている宿主細胞は、遺伝子的に修飾された宿主細胞の混合集団中、又は、遺伝子的に修飾された宿主細胞及び遺伝子的に修飾されていない宿主細胞を含む混合集団中に存在することができる。例えば、単離された遺伝子的に修飾された宿主細胞は、インビトロの遺伝子的に修飾された宿主細胞の混合集団中に、又は、遺伝子的に修飾された宿主細胞及び遺伝子的に修飾されていない宿主細胞を含む混合インビトロ集団中に存在できる。
「宿主細胞」とは、本明細書において使用する場合、インビボ又はインビトロの細胞(例えば単細胞実体として培養されている真核生物細胞)を意味し、その真核生物細胞は、核酸(例えば外因性核酸)又は外因性ポリペプチドに対するレシピエントとして使用できるか、又は使用されており、そして外因性ポリペプチドの導入により修飾されているか、核酸により遺伝子的に修飾されている元の細胞の子孫を包含する。単細胞の子孫は天然、偶然、又は故意の突然変異により、形態において、又はゲノム又は全DNA相補物において、元親と完全に同一である必要はないと理解される。
「遺伝子的修飾」という用語は、新しい核酸(即ち細胞にとって外因性の核酸)の導入の後に細胞において誘導される恒久的又は一過性の遺伝子の変化を指す。遺伝子的変化(「修飾」)は宿主細胞のゲノム内への新しい核酸の取り込みにより、又は、染色体外エレメントとしての新しい核酸の一過性又は安定な維持により、達成することができる。細胞が真核生物細胞の場合、恒久的な遺伝子的変化は細胞のゲノム内への核酸の導入により達成できる。遺伝子的修飾の適当な方法は、ウィルス感染、トランスフェクション、コンジュゲーション、プロトプラスト融合、エレクトロポレーション、粒子銃技術、リン酸カルシウム沈降、直接マイクロインジェクション等を包含する。
本明細書において使用する場合、「外因性核酸」という用語は、自然界の細胞の中に通常又は天然に存在および/またはそれにより生産されることのない、および/またはその細胞に導入される(例えばエレクトロポレーション、トランスフェクション、感染、リポフェクション、又は細胞内に核酸を導入するいずれかの他の手段による)核酸を指す。
「個体」、「対象」、「宿主」及び「患者」という用語は、本明細書において互換的に使用され、そして、ネズミ(ラット、マウス)、非ヒト霊長類、ヒト、イヌ、ネコ、有蹄類(例えばウマ、ウシ、ヒツジ、ブタ、ヤギ)等を包含するがこれらに限定されない哺乳類を指す。一部の実施形態においては、個体はヒトである。一部の実施形態においては、個体はネズミである。
「治療有効量」又は「効果のある量」とは、疾患を治療するために哺乳類又は他の対象に投与した場合に、疾患に対するそのような治療を起こすために十分な化合物の量又は細胞の数を意味する。「治療有効量」は化合物又は細胞、疾患及びその重症度、及び治療すべき対象の年齢、体重等により変動することになる。
本発明を更に説明する前に、記載した特定の実施形態はそれ自体が当然ながら変動してよいため、本発明はそれに限定されないと理解しなければならない。更に又、本明細書において使用している用語は特定の実施形態を説明することを目的としており、そして、本発明の範囲は添付請求項によってのみ制限されることになるため、限定的であることを意図していない。
数値のある範囲が示された場合、その範囲の上限と下限の間の別途明示しない限り下限の単位の10分の一までの各介在値、及びその記載された範囲における何れかの他の記載された又は介在する値は、本発明の範囲に包含されると理解される。これらのより小さい範囲の上限及び下限は独立してより小さい範囲に包含されて良く、そして記載された範囲における何れかの特に除外される限度の対象となる本発明の範囲にやはり包含される。記載された範囲が限度の一方又は両方を包含する場合、それらの包含された限度の何れか又は両方を除外した範囲もまた本発明に包含される。
特段の記載が無い限り、本明細書において使用する全ての専門技術用語は本発明が属する技術の通常の当業者により共通して理解される意味と同じ意味を有する。本明細書に記載したものと同様又は等価な何れかの方法及び物質は本発明の実施又は試験においてやはり使用できるが、好ましい方法及び物質は以下に記載するとおりである。本明細書において言及する全ての公開文書はその公開文書が引用されている関連である方法及び/又は物質を開示及び説明するために参照により本明細書に組み込まれる。
本明細書及び添付請求項で使用される場合、特段に明示されない限り、単数標記は複数標記も包含するものとする。即ち、「誘導心筋細胞」と言及する場合、そのような心筋細胞の複数が包含され、そして「生後線維芽細胞」と言及する場合は、1つ以上の生後線維芽細胞及び当業者の知るその等価物等の言及をも包含する。更に請求項は何れかの任意の要素を除外するように作成されている場合がある。その場合、その叙述は、請求項要素の列挙との関連において「単独の」、「唯一の」等の排他的な用語の使用、又は「負の」限定の使用の先行基礎となることを意図している。
本明細書において考察する公開文書は本出願の出願日よりも前のそれらの開示に関してのみ提示している。ここに示すものの何れも、本発明が前の発明によるそのような公開に先行する資格を有さないことを受け入れたと捕らえてはならない。更に又、提示した公開文書の日付は個々に確認すべき必要があるかもしれない実際の公開の日付とは異なる場合がある。
本開示は生後線維芽細胞から心筋細胞を発生させる方法を提供する。本開示は更に、心筋細胞を発生させる場合に使用するための細胞及び組成物を提供する。
心筋細胞を発生させる方法
本開示は生後線維芽細胞から心筋細胞を発生させる方法を提供する。方法は一般的に、リプログラミング因子1つ以上を生後線維芽細胞内に導入することを包含する。一部の場合において、ポリペプチド自体を生後線維芽細胞内に導入する。別の場合においては、生後線維芽細胞はリプログラミング因子をコードするヌクレオチド配列を含む核酸1つ以上で遺伝子的に修飾される。
一部の実施形態においては、方法はGata4、Mef2c、Tbx5、Mesp1、Nkx2−5、Isl−1、Myocd、Smyd1、及びSrfポリペプチドから選択されるリプログラミング因子1つ以上を生後線維芽細胞内に導入することを包含する。一部の場合において、ポリペプチド自体を生後線維芽細胞内に導入する。別の場合においては、生後線維芽細胞はGata4、Mef2c、及びTbx5ポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含む核酸1つ以上により遺伝子的に修飾される。
一部の実施形態においては、方法は3種(そして3種のみ)のリプログラミング因子: Gata4、Mef2c、及びTbx5ポリペプチドを線維芽細胞内に導入することを包含する。一部の場合において、ポリペプチド自体を生後線維芽細胞内に導入する。別の場合においては、生後線維芽細胞はGata4、Mef2c、及びTbx5ポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含む核酸1つ以上により遺伝子的に修飾される。
本発明方法を用いて生後線維芽細胞から直接発生させた心筋細胞を、本明細書においては「誘導心筋細胞」と称する。Gata4、Mef2c、Tbx5、Mesp1、Nkx2−5、Isl−1、Myocd、Smyd1、及びSrfのようなポリペプチドもまた、本明細書においては集合的に「リプログラミング因子」又は「リプログラミング転写因子」と称する。リプログラミング因子1つ以上を導入する生後線維芽細胞は、先ず幹細胞又は先祖細胞となることなく、分化した心筋細胞に直接リプログラミングされる。
上記した通り、一部の例においては、心筋細胞を発生させる本発明方法はGata4、Mef2c、Tbx5、Mesp1、Nkx2−5、Isl−1、Myocd、Smyd1、及びSrfポリペプチドの1つ以上をコードするヌクレオチド配列を含む核酸1つ以上で生後線維芽細胞を遺伝子的に修飾することを包含する。ヌクレオチド配列によりコードされるリプログラミング因子は生後線維芽細胞中で生産され、そして、リプログラミング因子1つ以上の生産の結果として、遺伝子的に修飾された線維芽細胞は分化した心筋細胞に直接リプログラミングされる。遺伝子的に修飾された線維芽細胞は先ず幹細胞又は先祖細胞になることなく、分化した心筋細胞に直接リプログラミングされる。
上記した通り、一部の場合においては、心筋細胞を発生させる本発明方法はGata4、Mef2c、及びTbx5ポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含む核酸1つ以上で生後線維芽細胞を遺伝子的に修飾することを包含する。Gata4、Mef2c、及びTbx5ポリペプチドは生後線維芽細胞中で生産され、そして、Gata4、Mef2c、及びTbx5ポリペプチドの生産の結果として、遺伝子的に修飾された線維芽細胞は分化した心筋細胞に直接リプログラミングされる。遺伝子的に修飾された線維芽細胞は先ず幹細胞又は先祖細胞になることなく、分化した心筋細胞に直接リプログラミングされる。
一部の場合において、生後線維芽細胞は生後線維芽細胞内にGata4、Mef2c、Tbx5、Mesp1、Nkx2−5、Isl−1、Myocd、Smyd1、及びSrfポリペプチドの1つ以上のそれ自体を導入することにより修飾される。Gata4、Mef2c、Tbx5、Mesp1、Nkx2−5、Isl−1、Myocd、Smyd1、及びSrfポリペプチドの1つ以上が導入されている(ポリペプチド自体を導入することによるか、又は、ポリペプチド1つ以上をコードするヌクレオチド配列を含む核酸1つ以上を導入することによる)生後線維芽細胞は「修飾された線維芽細胞」又は「修飾された生後線維芽細胞」と称する。Gata4、Mef2c、Tbx5、Mesp1、Nkx2−5、Isl−1、Myocd、Smyd1、及びSrfポリペプチドの1つ以上をコードするヌクレオチド配列を含む核酸1つ以上が導入されている生後線維芽細胞は「遺伝子的に修飾された線維芽細胞」又は「遺伝子的に修飾された生後線維芽細胞」と称する。
一部の場合において、生後線維芽細胞Gata4、Mef2c、及びTbx5ポリペプチド自体を宿主生後線維芽細胞内に導入することにより修飾される。Gata4、Mef2c、及びTbx5ポリペプチドが導入されている(ポリペプチド自体を導入することによるか、又はGata4、Mef2c、及びTbx5ポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含む核酸1つ以上を導入することによる)生後線維芽細胞は「修飾された線維芽細胞」又は「修飾された生後線維芽細胞」と称する。Gata4、Mef2c、及びTbx5ポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含む核酸1つ以上が導入されている生後線維芽細胞は「遺伝子的に修飾された線維芽細胞」又は「遺伝子的に修飾された生後線維芽細胞」と称する。
上記した通り、本発明方法を用いながら、リプログラミング因子1つ以上(例えばGata4、Mef2c、Tbx5、Mesp1、Nkx2−5、Isl−1、Myocd、Smyd1、及びSrfの1つ以上; 又はGata4、Mef2c、及びTbx5ポリペプチドを含むリプログラミング因子のサブセット)を生後線維芽細胞内に導入(例えばリプログラミング因子ポリペプチド事態を生後線維芽細胞内に導入するか;又は生後線維芽細胞をリプログラミング因子ポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含む核酸1つ以上で遺伝子的に修飾する)し、そしてその結果、修飾された線維芽細胞は先ず幹細胞又は先祖細胞になることなく、分化した心筋細胞に直接リプログラミングされる。即ち、例えば、修飾された、又は遺伝子的に修飾された線維芽細胞は早期の心臓先祖マーカーの検出可能なレベルを生成しない。例えば、修飾された、又は遺伝子的に修飾された線維芽細胞は、検出可能なレベルのIsl1、即ち心臓分化前に一過性に発現される早期心臓先祖マーカーを生産しない。
一部の実施形態においては、生後線維芽細胞はリプログラミング因子1つ以上(例えばGata4、Mef2c、Tbx5、Mesp1、Nkx2−5、Isl−1、Myocd、Smyd1、及びSrfの1つ以上;又はGata4、Mef2c、及びTbx5ポリペプチドを含むリプログラミング因子のサブセット)をコードするヌクレオチド配列を含む核酸1つ以上でインビトロで遺伝子的に修飾されるか;又はリプログラミング因子ポリペプチド自体の1つ以上(例えばGata4、Mef2c、Tbx5、Mesp1、Nkx2−5、Isl−1、Myocd、Smyd1、及びSrfの1つ以上;又はGata4、Mef2c、及びTbx5ポリペプチドを含むリプログラミング因子のサブセット)は生後線維芽細胞内にインビトロで導入され;ここで、修飾された、又は遺伝子的に修飾された線維芽細胞はインビトロで心筋細胞になる。線維芽細胞がインビトロで心筋細胞に直接リプログラミングされ、誘導心筋細胞が発生した後、誘導心筋細胞は個体内に導入できる。
例えば、一部の実施形態においては、本発明方法はa)Gata4、Mef2c、Tbx5、Mesp1、Nkx2−5、Isl−1、Myocd、Smyd1、及びSrfポリペプチドの1つ以上をコードするヌクレオチド配列を含む核酸1つ以上でインビトロで生後線維芽細胞を遺伝子的に修飾すること、ここで遺伝子的に修飾された線維芽細胞中のコードされたポリペプチドの生産はインビトロで心筋細胞内への直接の遺伝子的に修飾された線維芽細胞のリプログラミングをもたらすものであること;及びb)誘導心筋細胞を個体に導入することを包含する。他の実施形態において、本発明方法はa)Gata4、Mef2c、Tbx5、Mesp1、Nkx2−5、Isl−1、Myocd、Smyd1、及びSrfポリペプチドの1つ以上をインビトロで生後線維芽細胞内に導入し、修飾された線維芽細胞を発生させること、ここで修飾された線維芽細胞はGata4、Mef2c、Tbx5、Mesp1、Nkx2−5、Isl−1、Myocd、Smyd1、及びSrfポリペプチドの1つ以上の導入の結果として、インビトロで心筋細胞に直接リプログラミングされ、これにより、誘導心筋細胞を発生させること;及びb)誘導心筋細胞を個体に導入することを包含する。
別の例として、一部の実施形態においては、本発明方法はa)Gata4、Mef2c、及びTbx5ポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含む核酸1つ以上でインビトロで生後線維芽細胞を遺伝子的に修飾すること、ここで遺伝子的に修飾された線維芽細胞中のGata4、Mef2c、及びTbx5ポリペプチドの生産はインビトロで心筋細胞内への直接の遺伝子的に修飾された線維芽細胞のリプログラミングをもたらし、これにより、誘導心筋細胞を発生させること;及びb)誘導心筋細胞を個体に導入することを包含する。他の実施形態において、本発明方法はa)Gata4、Mef2c、及びTbx5ポリペプチドをインビトロ生後線維芽細胞に導入し、修飾された線維芽細胞を生成すること、ここで修飾された線維芽細胞はGata4、Mef2c、及びTbx5ポリペプチドの導入の結果として、インビトロで心筋細胞に直接リプログラミングされ、これにより誘導心筋細胞を発生させること;及びb)誘導心筋細胞を個体に導入することを包含する。
他の実施形態において、生後線維芽細胞はリプログラミング因子1つ以上(例えばGata4、Mef2c、Tbx5、Mesp1、Nkx2−5、Isl−1、Myocd、Smyd1、及びSrfの1つ以上;又はGata4、Mef2c、及びTbx5ポリペプチドを含むリプログラミング因子のサブセット)をコードするヌクレオチド配列を含む核酸1つ以上でインビトロで遺伝子的に修飾されるか; 又はリプログラミング因子ポリペプチド自体の1つ以上(例えばGata4、Mef2c、Tbx5、Mesp1、Nkx2−5、Isl−1、Myocd、Smyd1、及びSrfの1つ以上;又はGata4、Mef2c、及びTbx5ポリペプチドを含むリプログラミング因子のサブセット)は生後腺維芽細胞内にインビトロで導入され;そして修飾された、又は遺伝子的に修飾された腺維芽細胞は個体に導入され、そこで修飾された、又は遺伝子的に修飾された腺維芽細胞はインビボで心筋細胞に直接リプログラミングされる。
即ち、例えば、一部の実施形態においては、本発明方法はa)Gata4、Mef2c、Tbx5、Mesp1、Nkx2−5、Isl−1、Myocd、Smyd1、及びSrfポリペプチドの1つ以上をコードするヌクレオチド配列を含む核酸1つ以上でインビトロで生後線維芽細胞を遺伝子的に修飾すること;及びb)遺伝子的に修飾された線維芽細胞を個体内に導入すること、ここで遺伝子的に修飾された線維芽細胞中のGata4、Mef2c、Tbx5、Mesp1、Nkx2−5、Isl−1、Myocd、Smyd1、及びSrfポリペプチドの1つ以上の生産は、インビボの心筋細胞への直接の遺伝子的に修飾された線維芽細胞のリプログラミングをもたらし、これにより個体において誘導心筋細胞を発生させることを包含する。他の実施形態において、本発明方法はa)インビトロで生後線維芽細胞中にGata4、Mef2c、Tbx5、Mesp1、Nkx2−5、Isl−1、Myocd、Smyd1、及びSrfポリペプチド1つ以上を導入し、修飾された線維芽細胞を発生させること;及びb)個体内に修飾された線維芽細胞を導入すること、ここで修飾された線維芽細胞は Gata4、Mef2c、Tbx5、Mesp1、Nkx2−5、Isl−1、Myocd、Smyd1、及びSrfポリペプチドの1つ以上の導入の結果としてインビボで心筋細胞に直接リプログラミングされ、これにより個体において誘導心筋細胞を発生させることを包含する。
別の例として、一部の実施形態においては、本発明方法はa) Gata4、Mef2c、及びTbx5ポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含む核酸1つ以上でインビトロで生後線維芽細胞を遺伝子的に修飾すること、; and b)個体内に遺伝子的に修飾された線維芽細胞を導入すること、ここで遺伝子的に修飾された線維芽細胞中のGata4、Mef2c、及びTbx5ポリペプチドの生産は インビボの心筋細胞への直接の遺伝子的に修飾された線維芽細胞のリプログラミングをもたらし、これにより個体において誘導心筋細胞を発生させることを包含する。他の実施形態において、本発明方法はa)インビトロで生後線維芽細胞内にGata4、Mef2c、及びTbx5ポリペプチドを導入し、修飾された線維芽細胞を発生させること;及びb)個体内に修飾された線維芽細胞を導入すること、ここで修飾された線維芽細胞は、Gata4、Mef2c、及びTbx5ポリペプチドの導入の結果として、インビボで心筋細胞に直接リプログラミングされ、これにより個体において誘導心筋細胞を発生させることを包含する。
他の実施形態において、生後線維芽細胞はリプログラミング因子1つ以上(例えばGata4、Mef2c、Tbx5、Mesp1、Nkx2−5、Isl−1、Myocd、Smyd1、及びSrf;又はGata4、Mef2c、及びTbx5ポリペプチドを含むリプログラミング因子のサブセット)の1つ以上をコードするヌクレオチド配列を含む核酸1つ以上でインビボで遺伝子的に修飾されるか、又はリプログラミング因子ポリペプチド自体の1つ以上(例えばGata4、Mef2c、Tbx5、Mesp1、Nkx2−5、Isl−1、Myocd、Smyd1、及びSrfの1つ以上;又はGata4、Mef2c、及びTbx5ポリペプチドを含むリプログラミング因子のサブセット)は生後線維芽細胞にインビボで導入され;そして修飾された、又は遺伝子的に修飾された腺維芽細胞はインビボで心筋細胞に直接リプログラミングされる。
リプログラミング因子1つ以上(例えばGata4、Mef2c、Tbx5、Mesp1、Nkx2−5、Isl−1、Myocd、Smyd1、及びSrfの1つ以上;又はGata4、Mef2c、及びTbx5ポリペプチドを含むリプログラミング因子のサブセット)をコードするヌクレオチド配列を含む核酸1つ以上で遺伝子的に修飾された、又はリプログラミング因子ポリペプチド自体の1つ以上(例えばGata4、Mef2c、Tbx5、Mesp1、Nkx2−5、Isl−1、Myocd、Smyd1、及びSrfの1つ以上;又はGata4、Mef2c、及びTbx5ポリペプチドを含むリプログラミング因子のサブセット)で修飾された生後線維芽細胞は、約5日〜約7日、又は約7日〜約14日の期間のうちに分化した心筋細胞にリプログラミングされる。例えば、生後線維芽細胞の集団が上記した通りリプログラミング因子ポリペプチドを導入することにより遺伝子的に修飾されるか、又は修飾される場合、集団の少なくとも約10%、少なくとも約15%、少なくとも約20%、少なくとも約25%、少なくとも約30%、少なくとも約50%、少なくとも約75%、又は75%超(例えば、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約98%、又は98%超)が約5日〜約7日、約7日〜約14日、又は約2週間〜約4週間の期間のうちに分化した心筋細胞(誘導心筋細胞)にリプログラミングされる。
一部の実施形態においては、生後線維芽細胞の集団がリプログラミング因子1つ以上(例えばGata4、Mef2c、Tbx5、Mesp1、Nkx2−5、Isl−1、Myocd、Smyd1、及びSrfの1つ以上;又はGata4、Mef2c、及びTbx5ポリペプチドを含むリプログラミング因子のサブセット)をコードするヌクレオチド配列を含む核酸1つ以上で遺伝子的に修飾される場合、又は生後線維芽細胞の集団が線維芽細胞内にリプログラミング因子事態の1つ以上(例えばGata4、Mef2c、Tbx5、Mesp1、Nkx2−5、Isl−1、Myocd、Smyd1、及びSrfの1つ以上;又はGata4、Mef2c、及びTbx5ポリペプチドを含むリプログラミング因子のサブセット)を導入することにより修飾される場合、集団の少なくとも約10%、少なくとも約15%、少なくとも約20%、少なくとも約25%、少なくとも約30%、少なくとも約50%、少なくとも約75%、又は75%超(例えば、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約98%、又は98%超)が約5日〜約7日、約7日〜約14日、又は約2週〜約4週の期間のうちにcTnT+となる(即ち心トロポニンTを発現する)。
一部の実施形態においては、誘導心筋細胞を発生させる本発明方法はリプログラミング因子1つ以上(例えばGata4、Mef2c、Tbx5、Mesp1、Nkx2−5、Isl−1、Myocd、Smyd1、及びSrfの1つ以上;又はGata4、Mef2c、及びTbx5ポリペプチドを含むリプログラミング因子のサブセット)をコードするヌクレオチド配列を含む核酸1つ以上で宿主生後線維芽細胞(又は宿主生後線維芽細胞の集団)を遺伝子的に修飾すること;遺伝子的に修飾された生後線維芽細胞の集団を発生させること、及び一定時間(例えば、5日〜7日、1週〜2週、又は2週〜4週)の後、遺伝子的に修飾された生後線維芽細胞の集団をソーティングすることにより心筋細胞をリッチ化することを包含する。遺伝子的に修飾された生後線維芽細胞の集団は線維芽細胞特異的マーカーの発現に関してソーティングすることにより残存線維芽細胞がある場合はそれを除去することができる。遺伝子的に修飾された生後線維芽細胞の集団は心筋細胞特異的マーカーの発現に関してソーティングすることができる。
一部の実施形態においては、誘導心筋細胞を発生させる本発明方法は、宿主生後線維芽細胞内にリプログラミング因子ポリペプチド1つ以上(例えばGata4、Mef2c、Tbx5、Mesp1、Nkx2−5、Isl−1、Myocd、Smyd1、及びSrfの1つ以上;又はGata4、Mef2c、及びTbx5ポリペプチドを含むリプログラミング因子のサブセット)を導入することにより宿主生後線維芽細胞(又は宿主生後線維芽細胞の集団)を修飾すること;修飾された生後線維芽細胞の集団を発生させること、及び一定時間(例えば、5日〜7日、1週〜2週、又は2週〜4週)の後、修飾された生後線維芽細胞の集団をソーティングすることにより心筋細胞をリッチ化することを包含する。修飾された生後線維芽細胞の集団は線維芽細胞特異的マーカーの発現に関してソーティングすることにより残存線維芽細胞がある場合はそれを除去することができる。修飾された生後線維芽細胞の集団は心筋細胞特異的マーカーの発現に関してソーティングすることができる。
一部の実施形態においては、宿主生後線維芽細胞はリプログラミング因子1つ以上(例えばGata4、Mef2c、Tbx5、Mesp1、Nkx2−5、Isl−1、Myocd、Smyd1、及びSrfの1つ以上;又はGata4、Mef2c、及びTbx5ポリペプチドを含むリプログラミング因子のサブセット)をコードするヌクレオチド配列を含む核酸1つ以上で遺伝子的に修飾されるか、又はリプログラミング因子ポリペプチド1つ以上(例えばGata4、Mef2c、Tbx5、Mesp1、Nkx2−5、Isl−1、Myocd、Smyd1、及びSrfの1つ以上;又はGata4、Mef2c、及びTbx5ポリペプチドを含むリプログラミング因子のサブセット)を宿主生後線維芽細胞に導入することにより修飾され; そしてまた、検出可能なマーカー(例えば、検出可能なシグナルを直接発生するポリペプチド; 基質に対して作用する際に検出可能なシグナルを発生する酵素)をコードするヌクレオチド配列を含む核酸で遺伝子的に修飾され、その場合、検出可能なマーカーをコードするヌクレオチド配列は心筋細胞特異的プロモーターに作動可能に連結している。直接検出可能なシグナルを与える適当なポリペプチドは蛍光蛋白、例えば緑色蛍光蛋白、黄色蛍光蛋白、青色蛍光蛋白等を包含する。基質に対して作用する際に検出可能なシグナルを発生する適当な酵素は例えばルシフェラーゼ(基質ルシフェリンに対して作用)、アルカリホスファターゼ等を包含する。心筋細胞特異的プロモーターは、例えばα−ミオシン重鎖プロモーター;cTnTプロモーター等を包含する。検出可能なマーカーの発現は誘導心筋細胞の検出を可能にすることができ;そして誘導心筋細胞のソーティングの手段を与えることができる。
上記した様な修飾又は遺伝子的修飾のための宿主細胞として機能する生後線維芽細胞は種々の入手元の何れかに由来することができる。哺乳類の線維芽細胞、例えばヒト線維芽細胞、ネズミ(例えばマウス)線維芽細胞、ラット線維芽細胞、ブタ線維芽細胞等を使用できる。一部の実施形態においては、線維芽細胞はヒト線維芽細胞である。他の実施形態において、線維芽細胞はマウス線維芽細胞である。他の実施形態において、線維芽細胞はラット線維芽細胞である。即ち、「生後線維芽細胞」は生後哺乳類から得られた線維芽細胞、又は生後哺乳類から得られた線維芽細胞の子孫を指す。
生後線維芽細胞は種々の組織入手元の何れかより得ることができる。例えば、心臓線維芽細胞、包皮線維芽細胞、皮膚線維芽細胞、肺線維芽細胞が挙げられる。
線維芽細胞は生存個体から得ることができる。線維芽細胞は生存個体から採取した組織から得ることができる。線維芽細胞は適当な臓器ドナーと見なされる最近死亡した個体から得ることができる。一部の実施形態においては、個体は、例えば個体が適当な線維芽細胞源であるかどうかを調べるために。種々の遺伝子障害、ウィルス感染に関してスクリーニングされ、その場合、個体は1つ以上の遺伝子障害、ウィルス感染等に基づいて除外される場合がある。
適当な線維芽細胞は線維芽細胞に特徴的なマーカーを発現し、その場合、そのようなマーカーは、例えばビメンチン、ポリ1−4−ヒドロキシラーゼ(コラーゲン合成に関与する細胞内酵素)、線維芽細胞特異的蛋白−1(例えばStrutz等、(1995)J.Cell Biol.130:393)参照、線維芽細胞表面抗原、及び1型コラーゲンを包含する。一部の実施形態においては、宿主細胞として使用される線維芽細胞は心線維芽細胞であり、その場合、心線維芽細胞はThy1+、ビメンチン+として特徴付けることができ、そして又、c−kit及びc−kitの等価物に関して陰性である。
一般的に、本発明方法による修飾又は遺伝子的修飾のための宿主細胞として使用するのに適する線維芽細胞は非形質転換の(例えば正常な細胞増殖を示す)ものであり、そして別様には正常である。
修飾又は遺伝子的修飾のための宿主細胞が線維芽細胞の集団である場合、線維芽細胞の集団は単離され、例えば、線維芽細胞の集団は少なくとも約75%の線維芽細胞、少なくとも約80%の線維芽細胞、少なくとも約85%の線維芽細胞、少なくとも約90%の線維芽細胞、少なくとも約95%の線維芽細胞、少なくとも約98%の線維芽細胞、少なくとも約99%の線維芽細胞、又は99%超線維芽細胞よりなる。
生後線維芽細胞は非胚性の対象、新生乳児、小児、又は成人の組織から派生させることができる。生後線維芽細胞は帝王切開を含む出生時から死亡までの期間内に対象から採集した新生仔又は生後の組織から派生させることができる。例えば、誘導心筋細胞を発生させるために使用する生後線維芽細胞は、約10分齢超、約1時間齢超、約1日齢超、約1月齢超、約2月齢超、約6月齢超、約1年齢超、約2年齢超、約5年齢超、約10年齢超、約15年齢超、約18年齢超、約25年齢超、約35年齢超、>45年齢、>55年齢、>65年齢、>80年齢、<80年齢、<70年齢、<60年齢、<50年齢、<40年齢、<30年齢、<20年齢又は<10年齢
である対象に由来するものであることができる。
組織から線維芽細胞を単離する方法は当該分野で知られており、そして何れかの知られた方法を使用できる。非限定的な例として、心線維芽細胞はIeda等、(2009)Dev.Cell,16:233の方法を用いて、又は実施例1に記載する通り、得ることができる。包皮線維芽細胞は男性個体、例えば8〜14日齢の男性個体の包皮組織(即ち陰茎亀頭を被覆している皮膚組織;陰茎包皮)から得ることができる。線維芽細胞は包皮組織を粉砕し、次に組織を単細胞にまで解離させることにより得ることができる。包皮細胞クランプは物理的な脱クランプ処理又は例えばトリプシンを用いた酵素消化を包含する当該分野で知られている何れかの手段により解離させることができる。
上記した通り、生後線維芽細胞はリプログラミング因子1つ以上(例えばGata4、Mef2c、Tbx5、Mesp1、Nkx2−5、Isl−1、Myocd、Smyd1、及びSrfの1つ以上;又はGata4、Mef2c、及びTbx5ポリペプチドを含むリプログラミング因子のサブセット)をコードするヌクレオチド配列を含む核酸1つ以上で遺伝子的に修飾されるか、又は、リプログラミング因子ポリペプチド自体の1つ以上(例えばGata4、Mef2c、Tbx5、Mesp1、Nkx2−5、Isl−1、Myocd、Smyd1、及びSrfの1つ以上;又はGata4、Mef2c、及びTbx5ポリペプチドを含むリプログラミング因子のサブセット)を生後線維芽細胞内に導入することにより修飾される。そのようなリプログラミング因子のアミノ酸配列は当該分野で知られている。リプログラミング因子をコードするヌクレオチド配列は当該分野で知られている。
リプログラミング因子
上記考察した通り、生後線維芽細胞はリプログラミング因子1つ以上(例えばGata4、Mef2c、Tbx5、Mesp1、Nkx2−5、Isl−1、Myocd、Smyd1、及びSrfの1つ以上;又はGata4、Mef2c、及びTbx5ポリペプチドを含むリプログラミング因子のサブセット)をコードするヌクレオチド配列を含む核酸1つ以上で遺伝子的に修飾されるか、又は、生後線維芽細胞はリプログラミング因子ポリペプチド自体の1つ以上(例えばGata4、Mef2c、Tbx5、Mesp1、Nkx2−5、Isl−1、Myocd、Smyd1、及びSrfの1つ以上;又はGata4、Mef2c、及びTbx5ポリペプチドを含むリプログラミング因子のサブセット)を生後線維芽細胞内に導入することにより修飾される。
一部の実施形態においては、リプログラミング因子1つ以上はGata4、Mef2c、Tbx5、Mesp1、Nkx2−5、Isl−1、Myocd、Smyd1、及びSrfを1、2、3、4、5、6、7、8、又は9個包含する。一部の実施形態においては、リプログラミング因子1つ以上はGata4、Mef2c、Tbx5、Mesp1、Nkx2−5、Isl−1、Myocd、Smyd1、及びSrfの全てを包含する。一部の実施形態においては、リプログラミング因子1つ以上はGata4、Mef2c、Tbx5、Mesp1、Nkx2−5、Isl−1、Myocd、Smyd1、及びSrfのサブセットを包含する。例示されるサブセットは下記を包含する。
1)Mef2c、Tbx5、Mesp1、Nkx2−5、Isl−1、Myocd、Smyd1、及びSrf;
2)Gata4、Tbx5、Mesp1、Nkx2−5、Isl−1、Myocd、Smyd1、及びSrf;
3)Gata4、Mef2c、Mesp1、Nkx2−5、Isl−1、Myocd、Smyd1、及びSrf;
4)Gata4、Mef2c、Tbx5、Nkx2−5、Isl−1、Myocd、Smyd1、及びSrf;
5)Gata4、Mef2c、Tbx5、Mesp1、Isl−1、Myocd、Smyd1、及びSrf;
6)Gata4、Mef2c、Tbx5、Mesp1、Nkx2−5、Myocd、Smyd1、及びSrf;
7)Gata4、Mef2c、Tbx5、Mesp1、Nkx2−5、Isl−1、Smyd1、及びSrf;
8)Gata4、Mef2c、Tbx5、Mesp1、Nkx2−5、Isl−1、Myocd、及びSrf;
9)Gata4、Mef2c、Tbx5、Mesp1、Nkx2−5、Isl−1、Myocd、及びSmyd1;
10)Gata4、Mef2c、Mesp1、Myocd、Nkx2−5、及びTbx5;
11)Mef2c、Mesp1、Myocd、Nkx2−5、及びTbx5;
12)Gata4、Mesp1、Myocd、Nkx2−5、及びTbx5;
13)Gata4、Mef2c、Myocd、Nkx2−5、及びTbx5;
14)Gata4、Mef2c、Mesp1、Nkx2−5、及びTbx5;
15)Gata4、Mef2c、Mesp1、Myocd、及びTbx5;
16)Gata4、Mef2c、Mesp1、Myocd、及びNkx2−5;
17)Mef2c、Mesp1、Myocd、及びTbx5;
18)Gata4、Mesp1、Myocd、及びTbx5;
19)Gata4、Mef2c、Myocd、及びTbx5;
20)Gata4、Mef2c、Mesp1、及びTbx5;
21)Gata4、Mef2c、Mesp1、及びMyocd;
22)Mef2c、Mesp1、及びTbx5;
23)Gata4、Mef2c、及びTbx5.
上記した通り、一部の実施形態においては リプログラミング因子のサブセットはGata4、Mef2c、及びTbx5である。
Gata4
Gata4ポリペプチドは多くの遺伝子のプロモーター領域に存在するGATAモチーフを認識して結合する)例えばコンセンサス配列5’−AGATAG−3’を認識して結合する)GATAファミリー亜鉛フィンガー転写因子のメンバーである。例えばHuang等、(1995)Gene155:219を参照できる。種々の種に由来するGata4ポリペプチドに関するアミノ酸配列及びGata4ポリペプチドをコードするヌクレオチド配列が当該分野で知られている。例えば1)ゲンバンクアクセッション番号NP_002043.2(Homo sapiens Gata4アミノ酸配列;及びゲンバンクアクセッション番号NM_002052(Homo sapiens Gata4コードヌクレオチド配列;2)ゲンバンクアクセッション番号NP_0032118(Mus musculus Gata4アミノ酸配列);及びゲンバンクアクセッション番号NM_008092(Mus musculus Gata4コードヌクレオチド配列);3)ゲンバンクアクセッション番号NP_653331(Rattus norvegicus Gata4アミノ酸配列);及びゲンバンクアクセッション番号NM_144730(Rattus norvegicus Gata4コードヌクレオチド配列);4)ゲンバンクアクセッション番号ABI63575(Danio rerio Gata4アミノ酸配列;及びゲンバンクアクセッション番号DQ886664(Danio rerio Gata4コードヌクレオチド配列;及び5)ゲンバンクアクセッション番号AAH71101.1(Xenopus laevis Gata4アミノ酸配列);及びゲンバンクアクセッション番号BC071107(Xenopus laevis Gata4コードヌクレオチド配列)を参照できる。
一部の実施形態においては、適当なGata4核酸は配列番号14に示すヌクレオチド配列の約900ヌクレオチド〜約1000ヌクレオチド(nt)、約1000nt〜約1100nt、約1100nt〜約1200nt、又は約1200nt〜1329ntの連続ストレッチと少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約98%、少なくとも約99%、又は100%のヌクレオチド配列同一性を有するヌクレオチド配列を含む。一部の実施形態においては、適当なGata4核酸は配列番号28に示すヌクレオチド配列の約900ヌクレオチド〜約1000ヌクレオチド(nt)、約1000nt〜約1100nt、約1100nt〜約1200nt、又は約1200nt〜1323ntの連続ストレッチと少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約98%、少なくとも約99%、又は100%のヌクレオチド配列同一性を有するヌクレオチド配列を含む。
適当なGata4核酸はGata4ポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含み、その場合、一部の実施形態においては、適当なGata4ポリペプチドは配列番号13に示すアミノ酸の約350アミノ酸(aa)〜約400aa、又は約400aa〜442aaの連続ストレッチと少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約98%、少なくとも約99%、又は100%のアミノ酸配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。一部の実施形態においては、適当なGata4ポリペプチドは配列番号27に示すアミノ酸配列の約350アミノ酸(aa)〜約400aa、又は約400aa〜442aaの連続ストレッチと少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約98%、少なくとも約99%、又は100%のアミノ酸配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。コードされるGata4ポリペプチドは生物学的に活性であり、例えばプロモーター中に存在するGATAモチーフを認識して結合(例えばコンセンサス配列5’−AGATAG−3’を認識して結合)し;そしてGATAモチーフを含むプロモーターに作動可能に連結している遺伝子の転写を活性化させる。
一部の実施形態においては、Gata4ポリペプチドに機能的に等価なポリペプチド(又はそのような機能的等価物をコードするヌクレオチド配列)を使用する。例えば、一部の実施形態においては、Gata5ポリペプチド(又はGata5ポリペプチドをコードするヌクレオチド配列)を使用する。他の実施形態において、Gata6ポリペプチド(又はGata6ポリペプチドをコードするヌクレオチド配列)を使用する。
Gata5ポリペプチドのアミノ酸配列、及びGata5ポリペプチドをコードするヌクレオチド配列は当該分野で知られている。例えばゲンバンクアクセッション番号:1)NP_536721(Homo sapiensGata5アミノ酸配列)、及びNM_080473(NP_536721アミノ酸配列をコードするヌクレオチド配列);2)NP_032119(Mus musculusGata5アミノ酸配列)、及びNM_008093(NP_032119アミノ酸配列をコードするヌクレオチド配列);及び3)NP_001019487(RattusnorvegicusGata5アミノ酸配列)、及びNM_001024316(NP_001019487アミノ酸配列をコードするヌクレオチド配列)を参照できる。
Gata6ポリペプチドのアミノ酸配列、及びGata6ポリペプチドをコードするヌクレオチド配列は当該分野で知られている。例えばゲンバンクアクセッション番号:1)NP_005248(Homo sapiensGata6アミノ酸配列)、及びNM_005257(NP_005248アミノ酸配列をコードするヌクレオチド配列);2)NP_062058(RattusnorvegicusGata6アミノ酸配列)及びNM_019185(NP_062058アミノ酸配列をコードするヌクレオチド配列);3)NP_034388(Mus musculusGata6アミノ酸配列)、及びNM_010258(NP_034388アミノ酸配列をコードするヌクレオチド配列)を参照できる。
一部の実施形態においては、Gata4ポリペプチドの適当な機能的等価物はGata5ポリペプチド又はGata6ポリペプチドのアミノ酸配列と少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約98%、少なくとも約99%、又は100%のアミノ酸配列同一性を有するポリペプチドである。
一部の実施形態においては、Gata4ポリペプチドの機能的等価物をコードする適当なヌクレオチド配列はGata5ポリペプチド又はGata6ポリペプチドをコードするヌクレオチド配列と少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約98%、少なくとも約99%、又は100%のヌクレオチド配列同一性を有するヌクレオチド配列を含む。
Mef2c
Mef2c(筋細胞特異的エンハンサー因子2c)は多くの筋特異的遺伝子の調節領域に存在するMEF2エレメント(例えばコンセンサス配列:5′−CT(A/t)(a/t)AAATAG−3′)に特異的に結合する転写活性化物質である。例えばAndrs等、(1995)J.Biol.Chem.270:23246を参照できる。Mef2cは1つ以上の翻訳後修飾、例えばSer−59及びSer−396上のホスホリル化;ys−391上のスモイル化;及びLys−4上のアセチル化を包含できる。
種々の種に由来するMef2cポリペプチドのアミノ酸配列及びMef2cポリペプチドをコードするヌクレオチド配列は当該分野で知られている。例えば1)ゲンバンクアクセッション番号XP_001056692(RattusnorvegicusMef2cアミノ酸配列);及びゲンバンクアクセッション番号XM_001056692(RattusnorvegicusMef2cコードヌクレオチド配列);2)ゲンバンクアクセッション番号NP_079558.1(Mus musculusMef2cアイソフォーム2アミノ酸配列);及びゲンバンクアクセッション番号NM_025282(Mus musculusMef2cアイソフォーム2コードヌクレオチド配列);3)ゲンバンクアクセッション番号NP_001164008(Mus musculusMef2cアイソフォーム1アミノ酸配列);及びゲンバンクアクセッション番号NM_001170537(Mus musculusMef2cアイソフォーム1コードヌクレオチド配列);4)ゲンバンクアクセッション番号NP_001124477(Homo sapiensMef2cアイソフォーム2アミノ酸配列);及びゲンバンクアクセッション番号NM_001131005(Homo sapiensMef2cアイソフォーム2コードヌクレオチド配列);5)ゲンバンクアクセッション番号NP_002388(Homo sapiensMef2cアイソフォーム1アミノ酸配列);及びゲンバンクアクセッション番号NM_002397(Homo sapiensMef2cアイソフォーム1コードヌクレオチド配列)を参照できる。
一部の実施形態においては、適当なMef2c核酸は配列番号16に示すヌクレオチド配列の約900ヌクレオチド〜約1000ヌクレオチド(nt)、約1000nt〜約1100nt、約1100nt〜約1200nt、約1200nt〜1300nt、又は約1300nt〜1392ntの連続ストレッチと少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約98%、少なくとも約99%、又は100%のヌクレオチド配列同一性を有するヌクレオチド配列を含む。
一部の実施形態においては、適当なMef2c核酸は配列番号18に示すヌクレオチド配列の約900ヌクレオチド〜約1000ヌクレオチド(nt)、約1000nt〜約1100nt、約1100nt〜約1200nt、約1200nt〜1300nt、又は約1300nt〜1422ntの連続ストレッチと少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約98%、少なくとも約99%、又は100%のヌクレオチド配列同一性を有するヌクレオチド配列を含む。一部の実施形態においては、適当なMef2c核酸は配列番号23に示すヌクレオチド配列の約900ヌクレオチド〜約1000ヌクレオチド(nt)、約1000nt〜約1100nt、約1100nt〜約1200nt、又は約1200nt〜1296ntの連続ストレッチと少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約98%、少なくとも約99%、又は100%のヌクレオチド配列同一性を有するヌクレオチド配列を含む。
適当なMef2c核酸は配列番号15に示すアミノ酸配列の約350アミノ酸(aa)〜約400aa、又は約400aa〜463aaの連続ストレッチと少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約98%、少なくとも約99%、又は100%のアミノ酸配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。コードされるMef2cポリペプチドは生物学的に活性であり、例えば、プロモーター中のMEF2Cエレメントを認識して結合し;そしてプロモーターに作動可能に連結している遺伝子の転写を活性化させる。
一部の実施形態においては、適当なMef2cポリペプチドは配列番号24に示すアミノ酸配列の約350アミノ酸(aa)〜約400aa、又は約400aa〜432aaの連続ストレッチと少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約98%、少なくとも約99%、又は100%のアミノ酸配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。コードされるMef2cポリペプチドは生物学的に活性であり、例えば、プロモーター中のMEF2Cエレメントを認識して結合し;そしてプロモーターに作動可能に連結した遺伝子の転写を活性化させる。
適当なMef2c核酸はMef2cポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含み、ここで、適当なMef2cポリペプチドは配列番号17に示すアミノ酸配列の約350アミノ酸(aa)〜約400aa、又は約400aa〜473aaの連続ストレッチと少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約98%、少なくとも約99%、又は100%のアミノ酸配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。コードされるMef2cポリペプチドは生物学的に活性であり、例えば、プロモーター中のMEF2Cエレメントを認識して結合し;そしてプロモーターに作動可能に連結した遺伝子の転写を活性化させる。
一部の実施形態においては、Mef2cポリペプチドに機能的に等価なポリペプチド(又はそのような機能的等価物をコードするヌクレオチド配列)を使用する。例えば、一部の実施形態においては、Mef2aポリペプチド(又はMef2aポリペプチドをコードするヌクレオチド配列)を使用する。他の実施形態において、Mef2bポリペプチド(又はMef2bポリペプチドをコードするヌクレオチド配列)を使用する。他の実施形態において、Mef2dポリペプチド(又はMef2dポリペプチドをコードするヌクレオチド配列)を使用する。
Mef2a、Me2b、及びMef2dポリペプチドのアミノ酸配列はMef2a、Me2b、及びMef2dポリペプチドをコードするヌクレオチド配列と同様に知られている。例えば、ゲンバンクアクセッション番号:1)NP_005578.2(Homo sapiensMef2aアイソフォーム1アミノ酸配列)、及びNM_005587(NP_005578.2アミノ酸配列をコードするヌクレオチド配列);2)NP_001124398.1(Homo sapiensMef2aアイソフォーム2アミノ酸配列)、及びNM_001130926(NP_001124398.1アミノ酸配列をコードするヌクレオチド配列);3)NP_001124399.1(Homo sapiensMef2aアイソフォーム3アミノ酸配列)、及びNM_001130927(NP_001124399.1アミノ酸配列をコードするヌクレオチド配列);4)NP_001124400.1(Homo sapiensMef2aアイソフォーム4アミノ酸配列)、及びNM_001130928(NP_001124400.1アミノ酸配列をコードするヌクレオチド配列);5)NP_001139257.1(Homo sapiensMef2bアイソフォームaアミノ酸配列)、及びNM_001145785(NP_001139257.1アミノ酸配列をコードするヌクレオチド配列);6)NP_005910.1(Homo sapiensMef2bアイソフォームbアミノ酸配列)、及びNM_005919(NP_005910.1アミノ酸配列をコードするヌクレオチド配列);7)NP_032604.2(Mus musculusMef2bアイソフォーム1アミノ酸配列)、及びNM_008578(NP_032604.2アミノ酸配列をコードするヌクレオチド配列);8)NP_001038949.1(Mus musculusMef2bアイソフォーム2アミノ酸配列)、及びNM_001045484(NP_001038949.1アミノ酸配列をコードするヌクレオチド配列);9)NP_005911.1(Homo sapiensMef2dアミノ酸配列)、及びNM_005920(NP_005911.1アミノ酸配列をコードするヌクレオチド配列);及び10)NP_598426.1(Mus musculusMef2dアミノ酸配列)、及びNM_133665(NP_598426.1アミノ酸配列をコードするヌクレオチド配列)を参照できる。
一部の実施形態においては、Mef2cポリペプチドの適当な機能的等価物はMef2aポリペプチド、Mef2bポリペプチド、又はMef2dポリペプチドのアミノ酸配列と少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約98%、少なくとも約99%、又は100%のアミノ酸配列同一性を有するポリペプチドである。
一部の実施形態においては、Mef2cポリペプチドの機能的等価物をコードする適当なヌクレオチド配列はMef2aポリペプチド、aMef2bポリペプチド、又はaMef2dポリペプチドをコードするヌクレオチド配列と少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約98%、少なくとも約99%、又は100%のヌクレオチド配列同一性を有するヌクレオチド配列を含む。
Tbx5
Tbx5(T−ボックス転写因子5)は一部の遺伝子のプロモーター領域におけるT−ボックス(例えばコンセンサス配列5’−(A/G)GGTGT−3’を有するエレメント)と結合してこれを認識する転写因子であり;そしてそのようなプロモーターに作動可能に連結した遺伝子の転写を活性化する。
種々の種に由来するTbx5ポリペプチドに関するアミノ酸配列、及びTbx5ポリペプチドをコードするヌクレオチド配列は当該分野で知られている。例えば:1)ゲンバンクアクセッション番号CAA70592.1(Homo sapiensTbx5アミノ酸配列);及びゲンバンクアクセッション番号Y09445(Homo sapiensTbx5コードヌクレオチド配列);2)ゲンバンクアクセッション番号NP_000183(Homo sapiensTbx5アミノ酸配列);及びゲンバンクアクセッション番号NM_000192(Homo sapiensTbx5コードヌクレオチド配列);3)ゲンバンクアクセッション番号NP_001009964.1(RattusnorvegicusTbx5アミノ酸配列);及びゲンバンクアクセッション番号NM_001009964(RattusnorvegicusTbx5コードヌクレオチド配列;4)ゲンバンクアクセッション番号NP_035667(Mus musculusTbx5アミノ酸配列);及びNM_011537(Mus musculusTbx5コードヌクレオチド配列);5)ゲンバンクアクセッション番号NP_001079170(Xenopus laevisTbx5アミノ酸配列);及びゲンバンクアクセッション番号NM_001085701(Xenopus laevisTbx5コードヌクレオチド配列)を参照できる。
一部の実施形態においては、適当なTbx5核酸は配列番号20に示すヌクレオチド配列の約900ヌクレオチド〜約1000ヌクレオチド(nt)、約1200nt〜1300nt、約1300nt〜約1400nt、又は約1400nt〜約1500nt、又は約1500nt〜1542ntの連続ストレッチと少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約98%、少なくとも約99%、又は100%のヌクレオチド配列同一性を有するヌクレオチド配列を含む。一部の実施形態においては、適当なTbx5核酸は配列番号25に示すヌクレオチド配列の約900ヌクレオチド〜約1000ヌクレオチド(nt)、約1200nt〜1300nt、約1300nt〜約1400nt、又は約1400nt〜約1500nt、又は約1500nt〜1560ntの連続ストレッチと少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約98%、少なくとも約99%、又は100%のヌクレオチド配列同一性を有するヌクレオチド配列を含む。
一部の実施形態においては、適当なTbx5核酸は配列番号22に示すヌクレオチド配列の約900ヌクレオチド〜約1000ヌクレオチド(nt)、約1200nt〜1300nt、約1300nt〜約1400nt、又は約1400nt〜約1500nt、又は約1500nt〜1557の連続ストレッチと少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約98%、少なくとも約99%、又は100%のヌクレオチド配列同一性を有するヌクレオチド配列を含む。
適当なTbx5核酸はTbx5ポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含む。一部の実施形態においては、適当なTbx5ポリペプチドは配列番号19に示すアミノ酸配列の約350アミノ酸(aa)〜約400aa、約400aa〜約500aa、又は約500aa〜513aaの連続ストレッチと少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約98%、少なくとも約99%、又は100%のアミノ酸配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。一部の実施形態においては、適当なTbx5ポリペプチドは配列番号26に示すアミノ酸配列の約350アミノ酸(aa)〜約400aa、約400aa〜約500aa、又は約500aa〜518aaの連続ストレッチと少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約98%、少なくとも約99%、又は100%のアミノ酸配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。コードされる。 Tbx5ポリペプチドは生物学的に活性であり、例えば、プロモーター中のTbx5結合部位(例えば、コンセンサス配列5’−(A/G)GGTGT−3’を有するエレメント)を認識して結合し;そしてプロモーターに作動可能に連結した遺伝子の転写を活性化させる。
適当なTbx5核酸はTbx5ポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含み、ここで、一部の実施形態においては、適当なTbx5ポリペプチドは配列番号21に示すアミノ酸配列の約350アミノ酸(aa)〜約400aa、約400aa〜約500aa、又は約500aa〜518aaの連続ストレッチと少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約98%、少なくとも約99%、又は100%のアミノ酸配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。コードされるTbx5ポリペプチドは生物学的に活性であり、例えば、プロモーター中のTbx5結合部位(例えばコンセンサス配列5’−(A/G)GGTGT−3’を有するエレメント)を認識して結合し;そしてプロモーターに作動可能に連結した遺伝子の転写を活性化させる。
Mesp1
一部の実施形態においては、適当な中胚葉後蛋白(Mesp1)核酸は配列番号30に示すヌクレオチド配列の約600ヌクレオチド〜約800ヌクレオチド(nt)、又は804ntの連続ストレッチと少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約98%、少なくとも約99%、又は100%のヌクレオチド配列同一性を有するヌクレオチド配列を含む。
適当なMesp1核酸はMesp1ポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含み、ここで、一部の実施形態においては、適当なMesp1ポリペプチドは配列番号29に示すアミノ酸配列の約200アミノ酸(aa)〜約250aa、又は約250aa〜268aaの連続ストレッチと少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約98%、少なくとも約99%、又は100%のアミノ酸配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。コードされるMesp1ポリペプチドは生物学的に活性である。
Nkx2−5
一部の実施形態においては、適当なNkx2−5核酸は配列番号32に示すヌクレオチド配列の約350ヌクレオチド〜約450ヌクレオチド(nt)、又は456ntの連続ストレッチと少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約98%、少なくとも約99%、又は100%のヌクレオチド配列同一性を有するヌクレオチド配列を含む。一部の実施形態においては、適当なNkx2−5核酸は配列番号34に示すヌクレオチド配列の約850ヌクレオチド〜約950ヌクレオチド(nt)、又は975ntの連続ストレッチと少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約98%、少なくとも約99%、又は100%のヌクレオチド配列同一性を有するヌクレオチド配列を含む。一部の実施形態においては、適当なNkx2−5核酸は配列番号36に示すヌクレオチド配列の約230ヌクレオチド〜約330ヌクレオチド(nt)、又は339ntの連続ストレッチと少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約98%、少なくとも約99%、又は100%のヌクレオチド配列同一性を有するヌクレオチド配列を含む。
適当なNkx2−5核酸はNkx2−5ポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含み、ここで、一部の実施形態においては、適当なNkx2−5ポリペプチドは配列番号31に示すアミノ酸配列の約125アミノ酸(aa)〜約150aaの連続ストレッチと少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約98%、少なくとも約99%、又は100%のアミノ酸配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。一部の実施形態においては、適当なNkx2−5ポリペプチドは配列番号33に示すアミノ酸配列の約275アミノ酸(aa)〜約300aa、又は約300aa〜約324aaの連続ストレッチと少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約98%、少なくとも約99%、又は100%のアミノ酸配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。一部の実施形態においては、適当なNkx2−5ポリペプチドは配列番号35に示すアミノ酸配列の約75アミノ酸(aa)〜約100aa、又は約100aa〜約112aaの連続ストレッチと少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約98%、少なくとも約99%、又は100%のアミノ酸配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。コードされるNkx2−5ポリペプチドは生物学的に活性である。
Isl−1
一部の実施形態においては、適当なislet−1(Isl−1)核酸は配列番号38に示すヌクレオチド配列の約900ヌクレオチド〜約1000ヌクレオチド(nt)、又は1050ntの連続ストレッチと少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約98%、少なくとも約99%、又は100%のヌクレオチド配列同一性を有するヌクレオチド配列を含む。
適当なIsl−1核酸はIsl−1ポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含み、ここで、一部の実施形態においては、適当なIsl−1ポリペプチドは配列番号37に示すアミノ酸配列の約300アミノ酸(aa)〜約325aa、又は約325aa〜346aaの連続ストレッチと少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約98%、少なくとも約99%、又は100%のアミノ酸配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。コードされるIsl−1ポリペプチドは生物学的に活性である。
Myocd
一部の実施形態においては、適当なミオカルジン(Myocd)核酸は配列番号40に示すヌクレオチド配列の約1500ヌクレオチド〜約2000ヌクレオチド(nt)、又は2055ntの連続ストレッチと少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約98%、少なくとも約99%、又は100%のヌクレオチド配列同一性を有するヌクレオチド配列を含む。一部の実施形態においては、適当なMyocd核酸は配列番号42に示すヌクレオチド配列の約2500ヌクレオチド〜約2900ヌクレオチド(nt)、又は2961ntの連続ストレッチと少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約98%、少なくとも約99%、又は100%のヌクレオチド配列同一性を有するヌクレオチド配列を含む。一部の実施形態においては、適当なMyocd核酸は配列番号44に示すヌクレオチド配列の約2500ヌクレオチド〜約2800ヌクレオチド(nt)、又は2871ntの連続ストレッチと少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約98%、少なくとも約99%、又は100%のヌクレオチド配列同一性を有するヌクレオチド配列を含む。
適当なMyocd核酸はMyocdポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含み、ここで一部の実施形態においては、適当なMyocdポリペプチドは配列番号39に示すアミノ酸配列の約600アミノ酸(aa)〜約650aa、又は約650aa〜684aaの連続ストレッチと少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約98%、少なくとも約99%、又は100%のアミノ酸配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。一部の実施形態においては、適当なMyocdポリペプチドは配列番号41に示すアミノ酸配列の約900アミノ酸(aa)〜約950aa、又は約950aa〜986aaの連続ストレッチと少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約98%、少なくとも約99%、又は100%のアミノ酸配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。一部の実施形態においては、適当なMyocdポリペプチドは配列番号43に示すアミノ酸配列の約900アミノ酸(aa)〜約925aa、又は約925aa〜938aaの連続ストレッチと少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約98%、少なくとも約99%、又は100%のアミノ酸配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。コードされるMyocdポリペプチドは生物学的に活性である。
Smyd1
一部の実施形態においては、適当なSmyd1核酸は配列番号46に示すヌクレオチド配列の約1400ヌクレオチド〜約1450ヌクレオチド(nt)、又は約1450nt〜1473ntの連続ストレッチと少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約98%、少なくとも約99%、又は100%のヌクレオチド配列同一性を有するヌクレオチド配列を含む。
適当なSmyd1核酸はSmyd1ポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含み、ここで一部の実施形態においては、適当なSmyd1ポリペプチドは配列番号45に示すアミノ酸配列の約400アミノ酸(aa)〜約450aa、又は約450aa〜490aaの連続ストレッチと少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約98%、少なくとも約99%、又は100%のアミノ酸配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。コードされるSmyd1ポリペプチドは生物学的に活性である。
Srf
一部の実施形態においては、適当なSrf核酸は配列番号48に示すヌクレオチド配列の約1450ヌクレオチド〜約1500ヌクレオチド(nt)、又は約1500nt〜1527ntの連続ストレッチと少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約98%、少なくとも約99%、又は100%のヌクレオチド配列同一性を有するヌクレオチド配列を含む。
適当なSrf核酸はSrfポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含み、ここで一部の実施形態においては、適当なSrfポリペプチドは配列番号47に示すアミノ酸配列の約450アミノ酸(aa)〜約500aa、又は約500aa〜508aaの連続ストレッチと少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約98%、少なくとも約99%、又は100%のアミノ酸配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。コードされるSrfポリペプチドは生物学的に活性である。
リプログラミング因子1つ以上(例えばGata4、Mef2c、Tbx5、Mesp1、Nkx2−5、Isl−1、Myocd、Smyd1、及びSrfの1つ以上;又はGata4、Mef2c、及びTbx5ポリペプチドを含むリプログラミング因子のサブセット) をコードするヌクレオチド配列を含む核酸1つ以上の導入は、生後腺維芽細胞を心筋細胞にリプログラミングするために十分であることが解っている。即ち、生後線維芽細胞は線維芽細胞を幹細胞に、又は先祖細胞を生後線維芽細胞にリプログラミングする誘導因子(例えば何れかの他の外因性ポリペプチド;いずれかの他の外因性ポリペプチドをコードする何れかの他の核酸)を導入する必要なく、リプログラミングされて心筋細胞となることができる。例えば本発明方法は外因性Sox2ポリペプチド、外因性Oct−3/4ポリペプチド、外因性c−Mycポリペプチド、外因性Klf4ポリペプチド、外因性Nanogポリペプチド、又は外因性Lin28ポリペプチドの何れかを生後線維芽細胞内に導入することを必要とせず、そしてそれを包含しない。本発明方法は線維芽細胞を幹細胞又は先祖細胞にリプログラミングするSox2、Oct−3/4、c−Myc、Klf4、Nanog、又は何れかの他のポリペプチドの何れかをコードするヌクレオチド配列を含む核酸を生後線維芽細胞に導入することを必要とせず、そしてそれを包含しない。
上記した通り、誘導心筋を発生させるためには、生後線維芽細胞をプログラミング因子1つ以上(例えばGata4、Mef2c、Tbx5、Mesp1、Nkx2−5、Isl−1、Myocd、Smyd1、及びSrfの1つ以上;又はGata4、Mef2c、及びTbx5ポリペプチドを含むリプログラミング因子のサブセット)をコードするヌクレオチド配列を含む核酸1つ以上で遺伝子的に修飾する。誘導心筋は心筋細胞特異的マーカー1つ以上を発現し、ここで心筋細胞特異的マーカーは、心トロポニンI、心トロポニン−C、トロポミオシン、カベオリン−3、ミオシン重鎖、ミオシン軽鎖−2a、ミオシン軽鎖−2v、リアノジン受容体、筋節α−アクチニン、Nkx2.5、コネキシン43、及び心房ナトリウム排泄増加性因子を包含するがこれらに限定されない。誘導心筋細胞は又、筋節構造を呈することができる。誘導心筋細胞は心筋細胞特異的遺伝子Actc1(心α−アクチン)、Myh6(α−ミオシン重鎖)、Ryr2(リアノジン受容体2)、及びGja1(コネキシン43)の増大した発現を呈する。Col1a2(コラーゲン1a2)のような線維芽細胞マーカーの発現はiCMの誘導元である線維芽細胞と比較して誘導心筋細胞においてダウンレギュレートされる。
心筋細胞に特異的な種々のマーカーの発現は従来の生化学的又は免疫化学的な方法(例えば酵素結合免疫吸着試験;免疫組織化学試験等)により検出される。或いは、心筋細胞特異的マーカーをコードする核酸の発現を検査できる。細胞中の心筋細胞特異的マーカーコード核酸の発現は逆転写酵素ポリメラーゼ連鎖反応(RT−PCR)又はハイブリダイゼーション分析、分子生物学的方法により確認することができ、これらは何れかのマーカー蛋白に関してコーディングしているmRNAを増幅、検出及び分析するために過去より一般的に使用されている。心筋細胞に特異的なマーカーに関してコーディングしている核酸配列は知られており、そして、ゲンバンクのような公的データベースを通じて入手可能であり;即ち、プライマー又はプローブとして使用するために必要なマーカー特異的配列は容易に調べられる。
誘導心筋細胞はまた自発的収縮を呈することができる。誘導心筋細胞が自発的収縮を呈するかどうかは、標準的な電気生理学的方法(例えばパッチクランプ)を用いて調べることができ;適当な方法は実施例に記載するとおりである。
誘導心筋細胞は又、自発的Ca2+振動を呈することができる。Ca2+振動は標準的な方法を用いて、例えば種々のカルシウム感受性染料の何れかを用いて検出できる。細胞内Ca2+イオン検出染料はフラ−2、ビス−フラ2、インド−1、キン−2、キン−2AM、ベンゾチアザ−1、ベンゾチアザ−2、インド−5F、フラ−FF、BTC、マグ−フラ−2、マグ−フラ−5、マグ−インド−1、フルオ−3、ロド−2、ロド−3、フラ−4F、フラ−5F、フラ−6F、フルオ−4、フルオ−5F、フルオ−5N、オレゴングリーン488BAPTA、カルシウムグリーン、カルセイン、フラ−C18、カルシウムグリーン−C18、カルシウムオレンジ、カルシウムクリムゾン、カルシウムグリーン−5N、マグネシウムグリーン、オレゴングリーン488BAPTA−1、オレゴングリーン488BAPTA−2、X−ロド−1、フラRed、ロード−5F、ロード−5N、X−ロード−5N、マグ−ロード−2、マグ−X−ロード−1、フルオ−5N、フルオ−5F、フルオ−4FF、マグ−フルオ−4、エクオリン、デキストランコンジュゲート又はこれらの染料の何れかの何れか他の誘導体、及びその他のものを包含するがこれらに限定されない(例えばMolecular Probes、Eugeneのカタログ又はインターネットサイトを参照でき、又、Nuccitelli編、Methods in Cell Biology,Volume 40:A Practical Guide to the Study of Calcium in Living Cells,Academic Press(1994);Lambert編、Calcium Signaling Protocols(Methods in Molecular Biology Volume 114),Humana Press(1999);W.T.Mason編、Fluorescent and Luminescent Probes for Biological Activity.A Practical Guide to Technology for Quantitative Real-Time Analysis,Second Ed,Academic Press(1999);Calcium Signaling Protocols(Methods in Molecular Biology),2005,D.G.Lamber編、Humana Pressも参照できる)。
後線維芽細胞への外因性リプログラミング因子ポリペプチドの導入
一部の実施形態においては、外因性リプログラミング因子ポリペプチド(例えばGata4、Mef2c、Tbx5、Mesp1、Nkx2−5、Isl−1、Myocd、Smyd1、及びSrfの1つ以上;又はGata4、Mef2c、及びTbx5ポリペプチドを含むリプログラミング因子のサブセット)の生後線維芽細胞への導入は外因性リプログラミング因子ポリペプチドに生後線維芽細胞を接触させることにより達成され、その場合、外因性リプログラミング因子ポリペプチドは細胞内に取り込まれる。
一部の実施形態においては、各々の外因性リプログラミング因子ポリペプチドは蛋白形質導入ドメインを含む。非限定的な例として、外因性Gata4ポリペプチド、外因性Mef2Cポリペプチド及びTbx4ポリペプチドは蛋白形質導入ドメインに共有結合的に、又は非共有結合的に連結される。
「蛋白形質導入ドメイン」又はPTDとは、脂質2層、ミセル、細胞膜、小器官膜、又は小胞膜の通過を促進するポリペプチド、ポリヌクレオチド、炭水化物、又は有機又は無機の化合物を指す。別の分子に結合したPTDは分子が膜を通過すること、例えば細胞外空間から細胞内空間に、又はシトゾルから小器官内に進むことを促進する。一部の実施形態においては、PTDはリプログラミング因子ポリペプチド(例えば、Gata4ポリペプチド、Mef2cポリペプチド、又はTbx5ポリペプチド)のアミノ末端に共有結合する。一部の実施形態においては、PTDはリプログラミング因子ポリペプチド(例えば、Gata4ポリペプチド、Mef2cポリペプチド、又はTbx5ポリペプチド)のカルボキシル末端に共有結合する。
例示される蛋白形質導入ドメインは最小ウンデカペプチド蛋白形質導入ドメイン(YGRKKRRQRRRを含むHIV−1TATの残基47〜57に相当;配列番号1);細胞内への直接進入のために十分なアルギニンの数を含むポリアルギニン配列(例えば、3、4、5、6、7、8、9、10、又は10〜50アルギニン);VP22ドメイン(Zender等、Cancer Gene Ther.2002 June;9(6):489-96);Drosophila Antennapedia蛋白形質導入ドメイン(Noguchi等、Diabetes 2003; 52(7):1732-1737);トランケーションされたヒトカルシトニンペプチド(Trehin等、Pharm.Research,21:1248-1256、2004); ポリリジン (Wender等、PNAS,Vol.97:13003-13008);RRQRRTSKLMKR(配列番号2);TransportanGWTLNSAGYLLGKINLKALAALAKKIL(配列番号3);KALAWEAKLAKALAKALAKHLAKALAKALKCEA(配列番号4);及びRQIKIWFQNRRMKWKK(配列番号5)を包含するがこれらに限定されない。例示されるPTDはYGRKKRRQRRR(配列番号1)、RKKRRQRRR(配列番号6);3アルギニン残基〜50アルギニン残基のアルギニンホモポリマーを包含するがこれらに限定されず;例示されるPTDドメインアミノ酸配列は以下の何れか:YGRKKRRQRRR(配列番号1);RKKRRQRR(配列番号6);YARAAARQARA(配列番号7);THRLPRRRRRR(配列番号8);及びGGRRARRRRRR(配列番号9)を包含するがこれらに限定されない。
一部の実施形態においては、外因性リプログラミング因子ポリペプチド(例えばGata4、Mef2c、Tbx5、Mesp1、Nkx2−5、Isl−1、Myocd、Smyd1、及びSrfの1つ以上;又はGata4、Mef2c、及びTbx5ポリペプチドを含むリプログラミング因子のサブセット)は3アルギニン残基〜50アルギニン残基、例えば3〜6アルギニン残基、6〜10アルギニン残基、10〜20アルギニン残基、20〜30アルギニン残基、30〜40アルギニン残基、又は40〜50アルギニン残基のアルギニンホモポリマーを含む。一部の実施形態においては、外因性リプログラミング因子ポリペプチド(例えばGata4、Mef2c、Tbx5、Mesp1、Nkx2−5、Isl−1、Myocd、Smyd1、及びSrfの1つ以上;又はGata4、Mef2c、及びTbx5ポリペプチドを含むリプログラミング因子のサブセット)はリプログラミング因子ポリペプチドのアミノ末端に共有結合した(例えばペプチド結合による)6つのArg残基を含む。一部の実施形態においては、外因性リプログラミング因子ポリペプチドはリプログラミング因子ポリペプチドのカルボキシ末端に共有結合した(例えばペプチド結合による)6つのArg残基を含む。
宿主生後線維芽細胞内に導入された外因性リプログラミング因子ポリペプチドs(例えばGata4、Mef2c、Tbx5、Mesp1、Nkx2−5、Isl−1、Myocd、Smyd1、及びSrfの1つ以上;又はGata4、Mef2c、及びTbx5ポリペプチドを含むリプログラミング因子のサブセット) は例えば少なくとも約75%純粋、少なくとも約80%純粋、少なくとも約85%純粋、少なくとも約90%純粋、少なくとも約95%純粋、少なくとも約98%純粋、少なくとも約99%純粋、又は99%超純粋まで精製でき、例えば、細胞内に導入されるリプログラミング因子以外の蛋白が非含有となり、そして、細胞内に導入されるリプログラミング因子以外の巨大分子が非含有となるまで精製できる。
生後線維芽細胞の遺伝子的修飾
一部の実施形態においては、生後線維芽細胞内への外因性リプログラミング因子ポリペプチド(例えばGata4、Mef2c、Tbx5、Mesp1、Nkx2−5、Isl−1、Myocd、Smyd1、及びSrfの1つ以上;又はGata4、Mef2c、及びTbx5ポリペプチドを含むリプログラミング因子のサブセット)の導入はリプログラミング因子ポリペプチドs(例えばGata4、Mef2c、Tbx5、Mesp1、Nkx2−5、Isl−1、Myocd、Smyd1、及びSrfの1つ以上;又はGata4、Mef2c、及びTbx5ポリペプチドを含むリプログラミング因子のサブセット)をコードするヌクレオチド配列を含む外因性核酸1つ以上による生後線維芽細胞の遺伝子的修飾により達成される。以下の考察においては、Gata4、Mef2c、Tbx5、Mesp1、Nkx2−5、Isl−1、Myocd、Smyd1、及びSrf (又はGata4、Mef2c、及びTbx5ポリペプチドを含むリプログラミング因子のサブセット)の1つ以上をコードするヌクレオチド配列を含む外因性核酸1つ以上は「外因性核酸1つ以上」と包括的に称する。
上記した外因性リプログラミング因子ポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含む外因性核酸1つ以上は組み換え発現ベクターであることができ、その場合、適当なベクターは例えば組み換えレトロウィルス、レンチウィルス、及びアデノウィルス;レトロウィルス発現ベクター、レンチウィルス発現ベクター、核酸発現ベクター、及びプラスミド発現ベクターを包含する。一部の場合において、外因性核酸1つ以上は宿主生後線維芽細胞及びその子孫のゲノム内に組み込まれる。別の場合においては、外因性核酸1つ以上は宿主生後線維芽細胞およびその子孫中エピソーム状態で存続する。一部の場合において、リプログラミング因子コード核酸の内因性の天然のバージョンは細胞内に既に存在してよいが、追加的な「外因性遺伝子」を宿主生後線維芽細胞に与えることによりリプログラミング因子の発現を増大させる。別の場合においては、外因性リプログラミング因子コード核酸は、宿主生後線維芽細胞内の内因性リプログラミング因子コード核酸二位よりコードされるポリペプチドとはアミノ酸1つ以上が異なるアミノ酸配列を有するリプログラミング因子ポリペプチドをコードする。
一部の実施形態においては、生後線維芽細胞はGata4、Mef2c、Tbx5、Mesp1、Nkx2−5、Isl−1、Myocd、Smyd1、及びSrfの1つをコードするヌクレオチド配列を各々が含む、別個の発現コンストラクト(発現ベクター)3つにより遺伝子的に修飾される。一部の実施形態においては、発現コンストラクトはGata4、Mef2c、Tbx5、Mesp1、Nkx2−5、Isl−1、Myocd、Smyd1、及びSrfの2つ以上をコードするヌクレオチド配列を含むことになる。
一部の実施形態においては、生後線維芽細胞はGata4、Mef2c、及びTbx5の1つをコードするヌクレオチド配列を各々が含む、別個の発現コンストラクト(発現ベクター)3つにより遺伝子的に修飾される。一部の実施形態においては、発現コンストラクトはGata4及びMef2cの両方、Gata4及びTbx5の両方、又はMef2c及びTbx5の両方をコードするヌクレオチド配列を含むことになる。一部の実施形態においては、発現コンストラクトはGata4、Mef2c、及びTbx5をコードするヌクレオチド配列を含むことになる。
一部の実施形態においては、Gata4、Mef2c、Tbx5、Mesp1、Nkx2−5、Isl−1、Myocd、Smyd1、及びSrf(又はサブセット、例えばGata4、Mef2c、及びTbx5)ポリペプチドの1つ以上をコードするヌクレオチド配列を含む外因性核酸1つ以上はインビトロで単一の生後線維芽細胞(例えば、単一の生後線維芽細胞宿主細胞)内に導入される。他の実施形態において、Gata4、Mef2c、Tbx5、Mesp1、Nkx2−5、Isl−1、Myocd、Smyd1、及びSrf(又はサブセット、例えばGata4、Mef2c、及びTbx5)ポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含む外因性核酸1つ以上はインビトロで生後線維芽細胞の集団(例えば、宿主生後線維芽細胞の集団)内に導入される。一部の実施形態においては、Gata4、Mef2c、Tbx5、Mesp1、Nkx2−5、Isl−1、Myocd、Smyd1、及びSrf(又はサブセット、例えばGata4、Mef2c、及びTbx5)ポリペプチド1つ以上をコードするヌクレオチド配列を含む外因性核酸1つ以上はインビボで生後線維芽細胞(例えば、単一の生後線維芽細胞又は生後線維芽細胞の集団)内に導入される。
生後線維芽細胞の集団がGata4、Mef2c、Tbx5、Mesp1、Nkx2−5、Isl−1、Myocd、Smyd1、及びSrf(又はサブセット、例えばGata4、Mef2c、及びTbx5)ポリペプチドの1つ以上をコードするヌクレオチド配列を含む外因性核酸1つ以上で遺伝子的に修飾される(インビトロ又はインビボ)場合、外因性核酸1つ以上は生後線維芽細胞の総集団の20%超、例えば25%、30%、35%、40%、44%、50%、57%、62%、70%、74%、75%、80%、90%、又は20%超の他パーセントの細胞内に導入できる。
一部の実施形態においては、Gata4、Mef2c、Tbx5、Mesp1、Nkx2−5、Isl−1、Myocd、Smyd1、及びSrf(又はサブセット、例えばGata4、Mef2c、及びTbx5)ポリペプチドの1つ以上をコードするヌクレオチド配列を含む核酸1つ以上は、遺伝子的に修飾された生後線維芽細胞中のリプログラミング因子ポリペプチド1つ以上の生産を可能にする発現コンストラクトである。一部の実施形態においては、発現コンストラクトはウィルスコンストラクト、例えば組み換えアデノ関連ウィルスコンストラクト(例えば米国特許第7,078,387参照)、組み換えアデノウィルスコンストラクト、組み換えレンチウィルスコンストラクト等である。
適当な発現ベクターは、ウィルスベクター(例えば、ワクシニアウィルス系ウィルスベクター;ポリオウィルス;アデノウィルス(例えばLi等、Invest Opthalmol Vis Sci 35:2543 2549,1994;Borras等、Gene Ther 6:515 524,1999;Li and Davidson,PNAS 92:7700 7704,1995;Sakamoto等、H Gene Ther 5:1088 1097,1999;国際特許出願公開94/12649,国際特許出願公開93/03769;国際特許出願公開93/19191;国際特許出願公開94/28938;国際特許出願公開95/11984及び国際特許出願公開95/00655参照);アデノ関連ウィルス(例えばAli等、Hum Gene Ther 9:81 86,1998,Flannery等、PNAS 94:6916 6921,1997;Bennett等、Invest Opthalmol Vis Sci38:2857-2863,1997;Jomary等、Gene Ther4:683-690,1997,Rolling等、Hum Gene Ther 10:641 648,1999;Ali等、Hum Mol Genet 5:591-594,1996;Srivastava、国際特許出願公開93/09239、Samulski等、J. Vir.(1989)63:3822 3828;Mendelson等、Virol. (1988)166:154 165;及びFlotte等、PNAS(1993)90:10613-10617参照);SV40;単純疱疹ウィルス;ヒト免疫不全ウィルス(例えばMiyoshi等、PNAS94:10319-23,1997;Takahashi等、J Virol73:7812 7816,1999参照);レトロウィルスベクター(例えば、ネズミ白血病ウィルス、脾臓壊死ウィルス、及びレトロウィルスから派生させたベクター、例えばラウス筋節ウィルス、ハーベイ筋節ウィルス、トリ白血病ウィルス、レンチウィルス、ヒト免疫不全ウィルス、骨髄増殖性筋節ウィルス、乳癌ウィルス)等を包含するがこれらに限定されない。
多くの適当な発現ベクターが当該分野で知られており、そして多くのものが商業的に入手可能である。以下のベクターが例示のため提示され、真核生物宿主細胞に関してはpXT1、pSG5(Stratagene)、pSVK3、pBPV、pMSG、及びpSVLSV40(Pharmacia)が挙げられる。しかしながら、何れかの他のベクターも、宿主細胞と適合する限りにおいて使用してよい。
使用する宿主/ベクター系に応じて、多くの適当な転写及び翻訳の制御エレメントの何れか、例えば、構成及び誘導プロモーター、転写エンハンサーエレメント、転写ターミネーター等を発現ベクター中で使用してよい(例えばBitter等、(1987)Methods in Enzymology,153:516-544参照)。
一部の実施形態においては、リプログラミング因子コードヌクレオチド配列(例えば、Gata4コードヌクレオチド配列、Mef2cコードヌクレオチド配列、Tbx5コードヌクレオチド配列)は制御エレメント、例えば転写制御エレメント、例えばプロモーターに作動可能に連結している。転写制御エレメントは真核生物細胞、例えば哺乳類細胞において機能する。適当な転写制御エレメントはプロモーター及びエンハンサーを包含する。一部の実施形態においては、プロモーターは構成的に活性である。他の実施形態において、プロモーターは誘導性である。
適当な真核生物プロモーター(真核生物細胞中で機能するプロモーター)の非限定的な例はCMV最初期、HSVチミジンキナーゼ、初期及び後期SV40、レトロウィルス由来ロングターミナルリピート(LTR)、及びマウスメタロチオネイン−Iを包含する。
一部の実施形態においては、リプログラミング因子コードヌクレオチド配列は心特異的転写制御エレメント(TRE)に作動可能に連結しており、その場合TREはプロモーター及びエンハンサーを包含する。適当なTREは、以下の遺伝子、即ち、ミオシン軽鎖−2、α−ミオシン重鎖、AE3、心トロポニンC、及び心アクチンから派生させたTREを包含するがこれらに限定されない。Franz等、(1997)Cardiovasc.Res.35:560-566;Robbins等、(1995)Ann.N.Y.Acad.Sci.752:492-505;Linn等、(1995)Circ.Res.76:584-591;Parmacek等、(1994)Mol.Cell.Biol.14:1870-1885;Hunter等、(1993)Hypertension 22:608-617;及びSartorelli等、(1992)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 89:4047-4051.
適切なベクター及びプロモーターの選択は当該分野で良く知られている。発現ベクターは又、翻訳開始及び転写開始のためのリボソーム結合部位を含有してよい。発現ベクターは又発現を増幅するための適切な配列を包含してよい。
適当な哺乳類発現ベクター(哺乳類宿主細胞における使用に適する発現ベクター)の例は、組み換えウィルス、核酸ベクター、例えばプラスミド、細菌人工染色体、コウボ人工染色体、ヒト人工染色体、cDNA、cRNA、及びポリメラーゼ連鎖反応(PCR)産物発現カセットを包含するがこれらに限定されない。Gata4−、Mef2c−、又はTbx5コードヌクレオチド配列の発現を駆動するための適当なプロモーターの例はレトロウィルスロングターミナルリピート(LTR)エレメント;構成的プロモーター、例えばCMV、HSV1−TK、SV40、EF−1α、β−アクチン;ホスホグリセロールキナーゼ(PGK)、及び誘導プロモーター、例えばTet−オペレーターエレメントを含有するものを包含するがこれらに限定されない。一部の場合において、哺乳類発現ベクターは外因性Gata4、Mef2c、及びTbx5ポリペプチドのほかに、トランスフェクト又は感染されている細胞の識別又は選択を容易にするマーカー遺伝子をコードする。マーカー遺伝子の例は蛍光蛋白、例えば増強緑色蛍光蛋白、Ds−Red(DsRed:Discosomasp.赤色蛍光蛋白(RFP);Bevis and Glick(2002)Nat. Biotechnol.20:83)、黄色蛍光蛋白、及びシアノ蛍光蛋白をコードする遺伝子;及び選択剤に対する耐性を付与する蛋白をコードする遺伝子、例えばネオマイシン耐性遺伝子、ピューロマイシン耐性遺伝子、ブラスチシジン耐性遺伝子等を包含するがこれらに限定されない。
適当なウィルスベクターの例は、レトロウィルス系のウィルスベクター(レンチウィルスを包含する);アデノウィルス;及びアデノ関連ウィルスを包含するがこれらに限定されない。適当なレトロウィルス系ベクターの例は、ネズミモロニー白血病ウィルス(MMLV)系のベクターであるが;他の組み換えレトロウィルスも使用してよく、例えばトリ白血症ウィルス、ウシ白血病ウィルス、ネズミ白血病ウィルス(MLV)、ミンク細胞フォーカス誘導ウィルス、ネズミ筋節ウィルス、網内皮症ウィルス、テナガザル白血病ウィルス、Mason Pfizerサルウィルス、又はラウス筋節ウィルスが挙げられ、例えば米国特許6,333,195を参照できる。
別の場合においては、レトロウィル系ベクターはレンチウィルス系ベクター(例えば、ヒト免疫不全ウィルス-1 (HIV-1);サル免疫不全ウィルス(SIV);又はネコ免疫不全ウィルス(FIV))であり、例えばJohnston等、(1999),Journal of Virology,73(6):4991-5000 (FIV);Negre D等、(2002),Current Topics in Microbiology and Immunology,261:53-74(SIV); Naldini等、(1996),Science,272:263-267(HIV)を参照できる。
組み換えレトロウィルスは標的細胞内への進入を支援するためにウィルスポリペプチド(例えばレトロウィルスenv)を含んでよい。そのようなウィルスポリペプチドは当該分野で十分樹立されており、例えば米国特許5,449,614を参照できる。ウィルスポリペプチドは両栄養性ウィルスポリペプチド、例えば両栄養性envであってよく、これは、元の宿主種の外にある細胞を包含する多数の種から派生された細胞内への進入を支援する。ウィルスポリペプチドは元の宿主種の外にある細胞内への進入を支援する異種栄養性ウィルスポリペプチドであってよい。一部の実施形態においては、ウィルスポリペプチドはエコトロピックウィルスポリペプチド、例えばエコトロピックenvであり、これは元の宿主種の細胞内への進入を支援する。
細胞内へのレトロウィルスの進入を支援することができるウィルスポリペプチドの例はMMLV両栄養性env、MMLVエコトロピックenv、MMLV異種栄養性env、水痘性口内炎ウィルス−g蛋白(VSV−g)、HIV−1env、テナガザル白血病ウィルス(GALV)env、RD114、FeLV−C、FeLV−B、MLV10A1env遺伝子、及びこれらの変異体、例えばキメラを包含するが、これらに限定されない。例えばYee等、(1994),Methods Cell Biol.,PtA:99-112(VSV-G);米国特許5,449,614を参照できる。一部の場合において、ウィルスポリペプチドは発現又は受容体への増強された結合を促進するために遺伝子的に修飾される。
一般的に、組み換えウィルスはプロデューサー細胞内にウィルスDNA又はRNAコンストラクトを導入することにより生産される。一部の場合において、プロデューサー細胞は外因性遺伝子を発現しない。別の場合においては、プロデューサー細胞は1つ以上の外因性遺伝子、例えば1つ以上のgag、pol、又はenvポリペプチド及び/又は1つ以上のレトロウィルスgag、pol、又はenvポリペプチドをコードする遺伝子を含む「パッケージング細胞」である。レトロウィルスパッケージング細胞はウィルスポリペプチドをコードする遺伝子、例えば標的細胞内への進入を支援するVSV−gを含んでよい。一部の場合において、パッケージング細胞は1つ以上のレンチウィルス蛋白、例えばgag、pol、env、vpr、vpu、vpx、vif、tat、rev、又はnefをコードする遺伝子を含む。一部の場合において、パッケージング細胞はアデノウィルス蛋白、例えばE1A又はE1B又は他のアデノウィルス蛋白をコードする遺伝子を含む。例えば、パッケージング細胞により供給される蛋白は、レトロウィルス派生蛋白、例えばgag、pol、及びenv;レンチウィルス派生蛋白、例えばgag、pol、env、vpr、vpu、vpx、vif、tat、rev、及びnef;及びアデノウィルス派生蛋白、例えばE1A及びE1Bであってよい。多くの例において、パッケージング細胞はウィルスベクターの派生元のウィルスとは異なるウィルスから派生させた蛋白を供給する。
パッケージング細胞系統は何れかの容易にトランスフェクションできる細胞系統を包含するがこれらに限定されない。パッケージング細胞系統は293T細胞、NIH3T3、COS又はHeLa細胞系統に基づくものであることができる。パッケージング細胞は頻繁には、ウィルスパッケージングのために必要な蛋白をコードする遺伝子少なくとも1つにおいて欠失があるウィルスベクタープラスミドをパッケージングするために使用される。そのようなウィルスベクタープラスミドによりコードされる蛋白から欠失している蛋白又はポリペプチドを供給できる何れかの細胞をパッケージング細胞として使用してよい。パッケージング細胞系統の例はPlatinum−E(Plat−E);Platinum−A(Plat−A);BOSC23(ATCCCRL11554);及びBing(ATCC CRL 11270)を包含するがこれらに限定されず、例えばMorita等、(2000),Gene Therapy,7:1063-1066; Onishi等、(1996)、Experimental Hematology,24:324-329;米国特許6,995,009を参照できる。市販されているパッケージング系統も有用であり、例えばAmpho−Pak293細胞系統、Eco−Pak2−293細胞系統、RetroPackPT67細胞系統、及びRetro−XUniversalPackagingSystem(全て入手元はClontech)が挙げられる。
レトロウィルスコンストラクトはある範囲のレトロウィルス、例えばMMLV、HIV−1、SIV、FIV、又は本明細書に記載する他のレトロウィルスから派生させて良い。レトロウィルスコンストラクトは特定のウィルスの複製1サイクル超のために必要な全てのウィルスポリペプチドをコードしてよい。一部の場合において、ウィルス進入の効率は他の因子又は他のウィルスポリペプチドの追加により改善する。別の場合においては、レトロウィルスコンストラクトによりコードされるウィルスポリペプチドは米国特許6,872,528に記載される通り、1サイクルより多い複製を支援しない。そのような状況においては、他の因子又は他のウィルスポリペプチドの追加によりウィルス進入促進を支援できる。例示される実施形態においては、組み換えレトロウィルスはVSV−gポリペプチドを含むがHIV−1envポリペプチドを含まないHIV−1ウィルスである。
レトロウィルスコンストラクトはプロモーター、マルチクローニングサイト、及び/又は耐性遺伝子を含んでよい。プロモーターの例はCMV、SV40、EF1α,β−アクチン;レトロウィルスLTRプロモーター及び誘導プロモーターを包含するがこれらに限定されない。レトロウィルスコンストラクトは又パッケージングシグナル(例えばMFGベクターから派生させたパッケージングシグナル;psiパッケージングシグシグナル)を含んでよい。当該分野で知られている一部のレトロウィルスコンストラクトの例はpMX、pBabeX又はこれらの派生物を包含するがこれらに限定されない。例えばOnishi等、(1996),Experimental Hematology,24:324-329を参照できる。一部の場合において、レトロウィルスコンストラクトは自己不活性化レンチウィルスベクター(SIN)ベクターであり、例えばMiyoshi等、(1998),J.Virol.,72(10):8150-8157を参照できる。一部の場合において、レトロウィルスコンストラクトはLL−CG、LS−CG、CL−CG、CS−CG、CLG又はMFGである。Miyoshi等、(1998),J.Virol.,72(10):8150-8157;Onishi等、(1996),Experimental Hematology,24:324-329;Riviere等、(1995),PNAS,92:6733-6737を参照できる。ウィルスベクタープラスミド(又はコンストラクト)はpMXs、pMxs−IB、pMXs−puro、pMXs−neo(pMXs−IBはpMXs−puroのピューロマイシン耐性遺伝子の代わりにブラスチシジン耐性遺伝子を担持しているベクターである)Kimatura等、(2003),Experimental Hematology,31:1007-1014;MFG Riviere等、(1995),Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.,92:6733-6737;pBabePuro;Morgenstern等、(1990),Nucleic Acids Research,18:3587-3596;LL-CG,CL-CG,CS-CG,CLG Miyoshi等、(1998),Journal of Virology,72:8150-8157等をレトロウィルス系として、そしてpAdex1;Kanegae等、(1995),Nucleic Acids Research,23:3816-3821等をアデノウィルス系として包含する。例示される実施形態においては、レトロウィルスコンストラクトはブラスチシジン(例えば、pMXs−IB)、ピューロマイシン(例えば、pMXs−puro、pBabePuro);又はネオマイシン(例えば、pMXs−neo)を含む。例えばMorgenstern等、(1990),Nucleic Acids Research、8:3587-3596を参照できる。
パッケージングシグ細胞から組み換えウィルスを生産する方法及びそれらの使用は十分確立されており;例えば米国特許5,834,256;6,910,434;5,591,624;5,817,491;7,070,994;及び6,995,009を参照できる。多くの方法がウィルスコンストラクトをパッケージングシグ細胞系統に導入することから開始する。ウィルスコンストラクトは リン酸カルシウム法、リポフェクション法(Felgner等、(1987)Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.84:7413-7417)、エレクトロポレーション法、マイクロインジェクション法、フュージーントランスフェクション等、及び本明細書に記載する何れかの方法を包含するがこれらに限定されない何れかの当該分野で知られている方法により宿主線維芽細胞に導入してよい。
核酸コンストラクトは細胞の非ウィルス系トランスフェクションのような種々の良く知られた手法を用いて宿主細胞内に導入できる。例示される側面において、コンストラクトはベクター内に取り込まれ、そして宿主細胞内に導入される。細胞への導入はエレクトロポレーション、リン酸カルシウム媒介移行、ヌクレオフェクション、ソノポレーション、熱ショック、マグネトフェクション、リポソーム媒介移行、マイクロインジェクション、マイクロプロジェクタイル媒介移行(ナノ粒子)、カチオン重合体媒介移行(DEAEデキストラン、ポリエチレンイミン、ポリエチレングリコール(PEG)等)又は細胞融合を包含するがこれらに限定されない当該分野で知られている何れかの非ウィルス系トランスフェクションにより実施してよい。トランスフェクションの他の方法はトランスフェクション試薬、例えばLipofectamineTM、Dojindo HilymaxTM、FugeneTM、jetPEITM、EffecteneTM、及びDreamFect?を包含する。
追加的ポリペプチド
一部の実施形態においては、本発明方法は外因性Hopxポリペプチド、外因性Nkx2−5ポリペプチド、外因性Hrt2ポリペプチド、外因性Pitx2ポリペプチド、外因性Smyd1ポリペプチド、外因性Myocdポリペプチド、外因性Baf60cポリペプチド、外因性Srfポリペプチド、外因性Isl1ポリペプチド、外因性Hand2ポリペプチド、又は外因性Mesp1ポリペプチドの何れかを生後線維芽細胞に導入することを必要とせず、そしてそれを包含しない。一部の実施形態においては、本発明方法はHopx、Nkx2−5、Hrt2、Pitx2、Smyd1、Myocd、Baf60c、Srf、Isl1、Hand2、又はMesp1の何れかをコードするヌクレオチド配列を含む核酸を生後線維芽細胞に導入することを必要とせず、そしてそれを包含しない。しかしながら、他の実施形態において、本発明方法Gata4、Mef2c、及びTbx5;及び心筋細胞への直接の生後線維芽細胞のリプログラミングに寄与することができる追加的ポリペプチド1つ以上の使用を包含する場合がある。
生後線維芽細胞は上記した通り修飾(ポリペプチドの生後線維芽細胞への導入による)又は遺伝子的に修飾されることができ、その場合、生後線維芽細胞はGata4ポリペプチド、Mef2ポリペプチド、及びTbx5ポリペプチドで修飾されるか、或いはその場合、生後線維芽細胞はGata4ポリペプチド、Mef2ポリペプチド、及びTbx5ポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含む核酸1つ以上で遺伝子的に修飾される。一部の実施形態においては、1つ以上の追加的ポリペプチド(又はそれをコードするヌクレオチド配列を含む核酸)が生後線維芽細胞内に導入され、その場合、1つ以上の追加的ポリペプチドはMesp1、Isl1、Myocd、Smyd1、Srf、Baf60c、Hand2、Hopx、Hrt2、Pitx2c、及びNkx2−5から選択される。
即ち、一部の実施形態においては、生後線維芽細胞はGata4ポリペプチド、Mef2ポリペプチド、及びTbx5ポリペプチド;及び1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、又は11個のMesp1ポリペプチド、Isl1ポリペプチド、Myocdポリペプチド、Smyd1ポリペプチド、Srfポリペプチド、Baf60cポリペプチド、Hand2ポリペプチド、Hopxポリペプチド、Hrt2ポリペプチド、Pitx2cポリペプチド、及びNkx2−5ポリペプチドの生後線維芽細胞内への導入により修飾される。一部の実施形態においては、生後線維芽細胞はGata4ポリペプチド、Mef2ポリペプチド、及びTbx5ポリペプチド;及び1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、又は11個のMesp1ポリペプチド、Isl1ポリペプチド、Myocdポリペプチド、Smyd1ポリペプチド、Srfポリペプチド、Baf60cポリペプチド、Hand2ポリペプチド、Hopxポリペプチド、Hrt2ポリペプチド、Pitx2cポリペプチド、及びNkx2−5ポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含む核酸1つ以上で遺伝子的に修飾される。以下に例示される非限定的な組み合わせを示す。
一部の実施形態においては、生後線維芽細胞はGata4ポリペプチド、Mef2ポリペプチド、Tbx5ポリペプチド、Isl1ポリペプチド、Mesp1ポリペプチド、Myocdポリペプチド、Nkx2.5ポリペプチド、Smyd1ポリペプチド、及びSrfポリペプチドの生後線維芽細胞内への導入により修飾される。一部の実施形態においては、生後線維芽細胞はGata4ポリペプチド、Mef2ポリペプチド、Tbx5ポリペプチド、Isl1ポリペプチド、Mesp1ポリペプチド、Myocdポリペプチド、Nkx2.5ポリペプチド、Smyd1ポリペプチド、及びSrfポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含む核酸1つ以上により遺伝子的に修飾される。
一部の実施形態においては、生後線維芽細胞はGata4ポリペプチド、Mef2ポリペプチド、Tbx5ポリペプチド、Mesp1ポリペプチド、Myocdポリペプチド、及びNkx2.5ポリペプチドの生後線維芽細胞内への導入により修飾される。一部の実施形態においては、生後線維芽細胞はGata4ポリペプチド、Mef2ポリペプチド、Tbx5ポリペプチド、Mesp1ポリペプチド、Myocdポリペプチド、及びNkx2.5ポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含む核酸1つ以上で遺伝子的に修飾される。
一部の実施形態においては、生後線維芽細胞はGata4ポリペプチド、Mef2ポリペプチド、Tbx5ポリペプチド、Mesp1ポリペプチド、及びMyocdポリペプチドの生後線維芽細胞内への導入により修飾される。一部の実施形態においては、生後線維芽細胞はGata4ポリペプチド、Mef2ポリペプチド、Tbx5ポリペプチド、Mesp1ポリペプチド、及びMyocdポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含む核酸1つ以上により遺伝子的に修飾される。
一部の実施形態においては、生後線維芽細胞はGata4ポリペプチド、Mef2ポリペプチド、Tbx5ポリペプチド、及びMesp1ポリペプチドの生後線維芽細胞内への導入により修飾される。一部の実施形態においては、生後線維芽細胞はGata4ポリペプチド、Mef2ポリペプチド、Tbx5ポリペプチド、及びMesp1ポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含む核酸1つ以上で遺伝子的に修飾される。
Mesp1、Isl1、Myocd、Smyd1、Srf、Baf60c、Hand2、Hopx、Hrt2、Pitx2c、及びNkx2−5ポリペプチドのアミノ酸配列はそのポリペプチドをコードするヌクレオチド配列と同様、当該分野で知られている。例えばゲンバンクアクセッション番号:1)AAR88511.1(Homo sapiensBAF60c;アミノ酸配列)、及びAY450431(AAR88511.1アミノ酸配列をコードするヌクレオチド配列);2)AAR88510.1(Homo sapiensBAF60c;アミノ酸配列)、及びAY450430(AAR88510.1アミノ酸配列をコードするヌクレオチド配列);3)NP_068808(Homo sapiensHand2アミノ酸配列)、及びNM_021973(NP_068808アミノ酸配列をコードするヌクレオチド配列);4)NP_115884.4(Homo sapiensHopxアミノ酸配列)、及びNM_032495(NP_115884.4アミノ酸配列をコードするヌクレオチド配列);5)NP_631958.1(Homo sapiensHopxアミノ酸配列)、及びNM_139212(NP_631958.1アミノ酸配列をコードするヌクレオチド配列);6)AAG31157(Homo sapiensHrt2アミノ酸配列)、及びAF311884(AAG31157アミノ酸配列をコードするヌクレオチド配列;7)NP_000316(Homo sapiensPitx2cアミノ酸配列)、及びNM_000325(NP_000316アミノ酸配列をコードするヌクレオチド配列);8)NP_061140.1(Homo sapiensMesp1アミノ酸配列)、及びNM_018670.3(NP_061140.1アミノ酸配列をコードするヌクレオチド配列);9)XP_523151.2(Pan troglodytesMesp1アミノ酸配列)、及びXM_523151(XP_523151.2アミノ酸配列をコードするヌクレオチド配列;10)BAA12041.1(Mus musculusMesp1アミノ酸配列)、及びBAA12041(BAA12041.1アミノ酸配列をコードするヌクレオチド配列);11)NP_001101001.1(Rattus norvegicusMesp1アミノ酸配列)、及びNM_001107531(NP_001101001.1アミノ酸配列をコードするヌクレオチド配列;12)NP_004378.1(Homo sapiensNKX2−5アミノ酸配列)、及びNM_004387(NP_004378.1アミノ酸配列をコードするヌクレオチド配列;13)NP_001159648.1(Homo sapiensNKX2−5アミノ酸配列)、及びNM_001166176(NP_001159648.1アミノ酸配列をコードするヌクレオチド配列;14)NP_001159647.1(Homo sapiensNkx2−5アミノ酸配列)、及びNM_001166175(NP_001159647.1アミノ酸配列をコードするヌクレオチド配列;15)NP_002193.2(Homo sapiensIsl1アミノ酸配列)、及びNM_002202(NP_002193.2アミノ酸配列をコードするヌクレオチド配列);16)NP_059035(Rattus norvegicusIsl1アミノacid)、及びNM_017339(NP_059035アミノ酸配列をコードするヌクレオチド配列);17)BAC41153(Mus musculusIsl1アミノ酸配列)、及びAK090263(BAC41153アミノ酸配列をコードするヌクレオチド配列);18)NP_001139785.1(Homo sapiensMyocdアミノ酸配列)、及びNM_001146313(NP_001139785.1アミノ酸配列をコードするヌクレオチド配列);19)NP_001139784.1(Homo sapiensMyocdアミノ酸配列)、及びNM_001146312(NP_001139784.1アミノ酸配列をコードするヌクレオチド配列);20)NP_705832.1(Homo sapiensMyocdアミノ酸配列)、及びNM_153604(NP_705832.1アミノ酸配列をコードするヌクレオチド配列);21)NP_938015.1(Homo sapiensSmyd1アミノ酸配列)、及びNM_198274(NP_938015.1アミノ酸配列をコードするヌクレオチド配列);22)NP_001100065.1(Rattus norvegicusSmyd1アミノ酸配列)、及びNM_001106595(NP_001100065.1アミノ酸配列をコードするヌクレオチド配列);23)NP_001153599.1(Mus musculusSmyd1アミノ酸配列)、及びNM_001160127(NP_001153599.1アミノ酸配列をコードするヌクレオチド配列);24)NP_003122.1(Homo sapiensSrfアミノ酸配列)、及びNM_003131(NP_003122.1アミノ酸配列をコードするヌクレオチド配列;25)XP_518487.2(Pan troglodytesSrfアミノ酸配列)、及びXM_518487(XP_518487.2アミノ酸配列をコードするヌクレオチド配列;26)NP_001102772.1(Rattus norvegicusSrfアミノ酸配列)、及びNM_001109302(NP_001102772.1アミノ酸配列をコードするヌクレオチド配列)を参照できる。
Mesp1、Isl1、Myocd、Smyd1、Srf、Baf60c、Hand2、Hopx、Hrt2、Pitx2c、及びNkx2−5ポリペプチドの適当なアミノ酸配列は上記したゲンバンクのエントリーの1つにおいて示されるアミノ酸配列と少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約98%、少なくとも約99%、又は100%のアミノ酸配列同一性を有するアミノ酸配列を包含する。
Mesp1、Isl1、Myocd、Smyd1、Srf、Baf60c、Hand2、Hopx、Hrt2、Pitx2c、及びNkx2−5ポリペプチドをコードする適当なヌクレオチド配列は上記したゲンバンクのエントリーの1つにおいて示されるヌクレオチド配列と少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約98%、少なくとも約99%、又は100%のヌクレオチド配列同一性を有するヌクレオチド配列を包含する。
追加的因子
生後線維芽細胞は上記した通り修飾又は遺伝子的に修飾されることができ;そして又、培養系に添加することができる追加的因子1つ以上と接触させることもでき、例えばその追加的因子1つ以上は培養基中の添加剤として包含させることができる。そのような追加的因子の例は、ヒストン脱アセチル化酵素(HDAC)阻害剤、例えばHuangfu等、(2008)Nature Biotechnol.26:795-797;Huangfu等、(2008)Nature Biotechnol.26:1269-1275参照;DNA脱メチル化剤、例えばMikkelson等、(2008)Nature454,49-55参照;ヒストンメチル転移酵素阻害剤、例えばShi等、(2008)Cell Stem Cell2:525-528参照;L型カルシウムチャンネルアゴニスト、例えばShi等、(2008)3:568-574参照;Wnt3a、例えばMarson等、(2008)Cell134:521-533参照;siRNA、例えばZhao等、(2008)Cell Stem Cell3:475-479参照、を包含するがこれらに限定されない。
ヒストン脱アセチル化酵素(HDAC)はヒストン上の[イプシロン]−N−アセチルリジンアミノ酸を除去する酵素のクラスである。例示されるHDACはこれらのクラスIのHDAC:HDAC1、HDAC2、HDAC3、HDAC8;及びクラスIIのHDAC:HDAC4、HDAC5、HDAC6、HDAC7A、HDAC9、HDAC10を包含する。I型哺乳類HDACはHDAC1、HDAC2、HDAC3、HDAC8、及びHDACI1を包含する。II型哺乳類HDACはHDAC4、HDAC5、HDAC6、HDAC7、HDAC9、及びHDAC1を包含する。一部の実施形態においては、HDAC阻害剤はクラスI又はクラスIIのHDACを選択的に阻害する。
HDAC阻害剤の適当な濃度は使用する特定のHDAC阻害剤に応じて約0.001nM〜約10mMの範囲である。HDAC濃度は0.01nM〜1000nMの範囲であることができる。
適当なHDAC阻害剤はヒストンの脱アセチル化においてHDAC酵素活性を阻害する何れかの剤を包含する。適当なHDAC阻害剤はカルボキシレートHDAC阻害剤;ヒドロキサム酸HDAC阻害剤;ペプチド(例えば、環状テトラペプチド)HDAC阻害剤;ベンズアミドHDAC阻害剤;親電子性ケトンHDAC阻害剤;ハイブリッド極性HDAC阻害剤;及び短鎖脂肪酸HDAC阻害剤を包含するがこれらに限定されない。
適当なHDAC阻害剤はトリコスタチンA及びその類縁体、例えばトリコスタチンA(TSA);及びトリコスタチンCを包含する(Koghe等、(1998),Biochem.Pharmacol,56:1359-1364)。
適当なペプチドHDAC阻害剤は例えばオキサムフラチン[(2E)−5−[3−[(フェニルスルホニル)アミノフェニル]−ペンタ−2−エン−4−イノヒドロキサム酸(Kim等、(1999),Oncogene,18:2461-2470);トラポキシンA(シクロ−(L−フェニルアラニル−L−フェニルアラニル−D−ピペコリニル−L−2−アミノ−8−オキソ−9,10−エポキシ−デカノイル)(Kijima等、(1993),J.Biol.Chem.268:22429-22435);FR901228、デシペプチド((1S,4S,7Z,10S,16E,21R)−7−エチリデン−4,21−ジイソプロピル−2−オキサ−12,13−ジチア−5,8,20,23−テトラビシクロ[8.7.6]トリコス−16−エン−3,6,9,19,22−ペントン)(Nakajima等、(1998).Ex.Cell Res.,241:126-133);アピシジン、環状テトラペプチド[シクロ−(N−O−メチル−L−トリプトファニル−L−イソロイシニル−D−ピペコリニル−L−2−アミノ−8−オキソデカノイル)](Darkin-Rattray等、(1996),Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.,93:13143-13147;アピシジンIa、アピジジンIb、アピシジンIc、アピシジンIIa、及びアピシジンIIb(国際特許出願公開97/11366);HC−トキシン、環状テトラペプチド(Bosch等、(1995),Plant Cell,7:1941-1950);及びクラミドシン(Bosch等、上出)を包含する。
適当なHDAC阻害剤はヒドロキサム酸系のハイブリッド極性化合物(HPC)、例えばサリシルヒドロキサム酸(SBHA)(Andrews等、(2000),International J.Parasitology,30:761-8); スベロイルアニリドヒドロキサム酸(SAHA)(Richon等、(1998),Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.,95: 3003-7);アゼライックビスヒドロキサム酸(ABHA)(Andrews等、上出);アゼライック−1−ヒドロキサメート−9−アニリド(AAHA)(Qiu等、(2000),Mol.Biol.Cell,11:2069-83);M−カルボキシケイヒ酸ビスヒドロキサミド(CBHA)(Richon等、上出);6−(3−クロロフェニルウレイド)カプロイックヒドロキサム酸、3−Cl−UCHA)(Richon等、上出); MW2796(Andrews等、上出); MW2996(Andrews等、上出);ヒドロキサム酸誘導体NVP-LAQ-824 (Catley等、(2003)Blood 102:2615;及びAtadja等、(2004)Cancer Res.64:689); 及びCBHA(m−カルシウムボキシケイヒ酸ビスヒドロキサム酸)を包含する。
適当なHDAC阻害剤は短鎖脂肪酸(SCFA)化合物、例えば酪酸ナトリウム(Cousens等、(1979),J.Biol.Chem.,254:1716-23);イソバレレート(McBain等、(1997),Biochem.Pharm.,53:1357-68);バルプロ酸;バレレート(McBain等、上出);4−フェニル酪酸(4−PBA)(Lea and Tulsyan,(1995),Anticancer Research,15:879-3);フェニル酪酸(PB)(Wang等、(1999),Cancer Research 59: 2766-99);プロピネート(McBain等、上出);ブチルアミド(Lea and Tulsyan,上出);イソブチルアミド(Lea and Tulsyan,上出);酢酸フェニル(Lea and Tulsyan,上出);3−ブロモイプロピオネート(Lea and Tulsyan,上出);トリブチリン(Guan等、(2000),Cancer Research,60:749-55);酪酸アルギニン;イソブチルアミド;及びバルプロエートを包含する。
適当なHDAC阻害剤はベンズアミド誘導体、例えばMS−275[N−(2−アミノフェニル)−4−[N−(ピリジン−3−イル−メトキシカルボニル)アミノエチル]ベンズアミド](Saito等、(1999),Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.,96:4592-7);及びMS−275の3’−アミノ誘導体(Saito等、上出);及びCI−994を包含する。
追加的な適当なHDAC阻害剤はBML−210(N−(2−アミノフェニル)−N’−フェニル−オクタンジアミド);デプデシン(例えば、(−)−デプデシン);ヌルスクリプト(4−(1,3−ジオキソ−1H,3H−ベンゾ[デ]イソキノリン−2−イル−N−ヒドロキシブタンアミド);スクリプタイド;スラミンナトリウム;酪酸ピバロイルオキシメチル(ピバネックス、AN−9)、トラポキシン、トラポキシンB;CI−994(即ちN−アセチルジナリン);MGCD0103(N−(2−アミノフェニル)−4−[[(4−ピリジン−3−イルピリミジン−2−イル)アミノ]メチル]ベンズアミド);JNJ16241199(R−306465;例えばArts等、(2007)Br.J.Cancer 97:1344参照);ツバシン;A−161906;プロキサミド;オキサムフラチン;3−C1−UCHA(6−(3−クロロフェニルウレイド)カプロイックヒドロキサム酸);及びAOE(2−アミノ−8−オキソ−9,10−エポキシデカン酸)を包含する。
適当なDNAメチル化阻害剤はDNAメチル転移酵素であり、そして5−デオキシ−アザシチジン(DAC);5−アザシチジン(5−アザ−CR)(ビダザ);5−アザ−2’−デオキシシチジン(5−アザ−CdR;デシタビン);1−[beta]−D−アラビノフラノシル−5−アザシトシン;ジヒドロ−5−アザシチジン;ゼブラリン((1−(β−D−リボフラノシル)−1,2−ジヒドロピリミジン−2−オン);シネフンジン(例えば、InSolutionTMネフンジン)、及び5−フルオロ−2’−デオキシシジジン(FdCyd)を包含するがこれらに限定されない。適当な非ヌクレオシドDNAメチル転移酵素阻害剤の例(例えばプロカイン以外)は(−)−エピガロカテキン−3−ガレート(EGCG);ヒドララジン;プロカインアミド;サマプリンA(N,N’−(ジチオジ−2,1−エタンジイル)ビス[3−ブロモ−4−ヒドロキシ−a−(ヒドロキシイミノ)−ベンゼンプロパンアミド);及びRG108(2−(1,3−ジオキソ−1,3−ジヒドロ−2H−イソインドル−2−イル)−3−(1H−インドル−3−イル)プロピオン酸)を包含する。
適当なヒストンメチル転移酵素(HMT)阻害剤はSC−202651(2−(ヘキサヒドロ−4−メチル−1H−1,4−ジアゼピン−1−イル)−6,7−ジメトキシ−N−(1−(フェニルメチル)−4−ピペリジニル)−4−キナゾリンアミン);カエトシン(Grainer等、(2005)Nature Chem.Biol.1:143);BIX−01294(2−(ヘキサヒドロ−4−メチル−1H−1,4−ジアゼピン−1−イル)−6,7−ジメトキシ−N−[1−(フェニルメチル)−4−ピペリジニル]−4−キナゾリンアミン3塩酸塩);3−デアザネプラノシン(Glazer等、(1986)BBRC135:688)等を包含するがこれらに限定されない。
遺伝子的に修飾された宿主細胞
本開示は単離された遺伝子的に修飾された宿主細胞を包含する遺伝子的に修飾された宿主細胞を提供し、ここで本発明の遺伝子的に修飾された宿主細胞はGata4、Mef2c、Tbx5、Mesp1、Nkx2−5、Isl−1、Myocd、Smyd1、及びSrfポリペプチドの1つ以上をコードするヌクレオチド配列を含む外因性核酸1つ以上を含む(により遺伝子的に修飾されている)。一部の実施形態においては、本発明の遺伝子的に修飾された宿主細胞はインビトロである。一部の実施形態においては、本発明の遺伝子的に修飾された宿主細胞はヒト細胞であるか、又はヒト細胞から派生されている。一部の実施形態においては、本発明の遺伝子的に修飾された宿主細胞はげっ歯類細胞であるか、げっ歯類細胞から派生されている。本開示は更に、本発明の遺伝子的に修飾された宿主細胞の子孫を提供し、この場合、子孫はその派生元である本発明の遺伝子的に修飾された宿主細胞と同じ外因性核酸を含むことができる。本発明は更に本発明の遺伝子的に修飾された宿主細胞を含む組成物を提供する。
本開示は単離された遺伝子的に修飾された宿主細胞を包含する遺伝子的に修飾された宿主細胞を提供し、ここで本発明の遺伝子的に修飾された宿主細胞はGata4、Mef2c、及びTbx5ポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含む外因性核酸1つ以上を含む(により遺伝子的に修飾されている)。一部の実施形態においては、本発明の遺伝子的に修飾された宿主細胞はインビトロである。一部の実施形態においては、本発明の遺伝子的に修飾された宿主細胞はヒト細胞であるか、又はヒト細胞から派生されている。一部の実施形態においては、本発明の遺伝子的に修飾された宿主細胞はげっ歯類細胞であるか、げっ歯類細胞から派生されている。本開示は更に、本発明の遺伝子的に修飾された宿主細胞の子孫を提供し、この場合、子孫はその派生元である本発明の遺伝子的に修飾された宿主細胞と同じ外因性核酸を含むことができる。本発明は更に本発明の遺伝子的に修飾された宿主細胞を含む組成物を提供する。
遺伝子的に修飾された生後線維芽細胞
一部の実施形態においては、本発明の遺伝子的に修飾された宿主細胞は遺伝子的に修飾された生後線維芽細胞である。即ち、本開示はGata4、Mef2c、Tbx5、Mesp1、Nkx2−5、Isl−1、Myocd、Smyd1、及びSrfポリペプチドの1つ以上、又はサブセット(例えば、Gata4、Mef2c、及びTbx5ポリペプチド) をコードするヌクレオチド配列を含む外因性核酸1つ以上を含む(により遺伝子的に修飾されている)遺伝子的に修飾された生後線維芽細胞を提供する。一部の実施形態においては、本発明の遺伝子的に修飾された生後線維芽細胞はインビトロである。一部の実施形態においては、本発明の遺伝子的に修飾された生後線維芽細胞はヒト細胞であるか、又はヒト細胞から派生されている。一部の実施形態においては、本発明の遺伝子的に修飾された生後線維芽細胞はげっ歯類細胞であるか、げっ歯類細胞から派生されている。本開示は更に本発明の尿遺伝子的に修飾された生後線維芽細胞の子孫を提供し、ここで子孫は自身の派生元である本発明の遺伝子的に修飾された生後線維芽細胞と同じ外因性核酸を含むことができる。本開示は更に本発明の遺伝子的に修飾された生後線維芽細胞を含む組成物を提供する。
遺伝子的に修飾された誘導心筋細胞
本開示は更に本発明の遺伝子的に修飾された宿主細胞から派生された心筋細胞(“誘導心筋細胞”)を提供する。本発明の誘導心筋細胞は本発明の遺伝子的に修飾された生後線維芽細胞から派生しているため、本発明の誘導心筋細胞も又遺伝子的に修飾されている。即ち、本開示はGata4、Mef2c、Tbx5、Mesp1、Nkx2−5、Isl−1、Myocd、Smyd1、及びSrfポリペプチドの1つ以上、又はサブセット(例えば、Gata4、Mef2c、及びTbx5ポリペプチド)をコードするヌクレオチド配列を含む外因性核酸1つ以上を含む遺伝子的に修飾された心筋細胞を提供する。一部の実施形態においては、本発明の遺伝子的に修飾された心筋細胞はインビトロである。一部の実施形態においては、本発明の遺伝子的に修飾された心筋細胞はヒト細胞であるか、又はヒト細胞から派生されている。一部の実施形態においては、本発明の遺伝子的に修飾された心筋細胞はげっ歯類細胞であるか、げっ歯類細胞から派生されている。本開示は更に本発明の遺伝子的に修飾された心筋細胞の子孫を提供し、ここで子孫はその派生元である本発明の遺伝子的に修飾された心筋細胞と同じ外因性核酸を含むことができる。本開示は更に本発明の遺伝子的に修飾された心筋細胞を含む組成物を提供する。
組成物
本開示は本発明の遺伝子的に修飾された宿主細胞(例えば、本発明の遺伝子的に修飾された生後線維芽細胞;本発明の遺伝子的に修飾された生後線維芽細胞の子孫; 本発明の誘導心筋細胞;本発明の誘導心筋細胞の子孫)を含む組成物を提供する。本発明の組成物は本発明の遺伝子的に修飾された宿主細胞を含み;そして一部の実施形態においては1つ以上の別の成分を含むことになり、その成分は遺伝子的に修飾された宿主細胞の意図する使用に部分的には基づいて選択されることになる。適当な成分は塩;緩衝剤;安定化剤;プロテアーゼ阻害剤;細胞膜及び/又は細胞壁保存化合物、例えばグリセロール、ジメチルスルホキシド等;細胞に適する栄養培地等を包含するがこれらに限定されない。
一部の実施形態においては、本発明の組成物は本発明の遺伝子的に修飾された宿主細胞及びマトリックス(「本発明の遺伝子的に修飾された細胞/マトリックス組成物」)を含み、ここで本発明の遺伝子的に修飾された宿主細胞はマトリックスに会合している。「マトリックス」という用語は遺伝子的に修飾された細胞が自身を結合させるか、接着することにより細胞コンポジットを形成できる何れかの適当な担体物質を指す。一部の実施形態においては、マトリックス又は担体物質は後の適用のために望まれる3次元形態において既に存在する。例えば、ウシ心膜組織は、コラーゲンに交差結合され、脱細胞され、そして光固定されるマトリックスとして使用される。
例えば、マトリックス(「生体適合性基板」とも称する)は対象への移植に適する物質である。生体適合性基板は対象に移植された後には毒性又は傷害性の作用を誘発しない。1つの実施形態において、生体適合性基板は修復又は交換を要する所望の構造に形状化できる表面を有する重合体である。重合体は又、修復又は交換を必要とする構造の一部に形状化できる。生体適合性基板は細胞が自身に結合でき、そしてその上で生育できるようにする支持性の枠組みを与えることができる。
適当なマトリックス成分は例えばコラーゲン;ゼラチン;フィブリン;フィブリノーゲン;ラミニン;グリコサミノグリカン;エラスチン;ヒアルロン酸;aプロテオグリカン;グリカン;ポリ(乳酸);ポリ(ビニルアルコール);ポリ(ビニルピロリドン);ポリ(エチレンオキシド);セルロース;セルロース誘導体;澱粉;澱粉誘導体;ポリ(カプロラクトン);ポリ(ヒドロキシ酪酸);ムチン等を包含する。一部の実施形態においては、マトリックスはコラーゲン、ゼラチン、フィブリン、フィブリノーゲン、ラミニン、及びエラスチンの1つ以上を含み;そして更に非蛋白性重合体を含み、例えば更にポリ(乳酸)、ポリ(ビニルアルコール)、ポリ(ビニルピロリドン)、ポリ(エチレンオキシド)、ポリ(カプロラクトン)、ポリ(ヒドロキシ酪酸)、セルロース、セルロース誘導体、澱粉、及び澱粉誘導体の1つ以上を含むことができる。一部の実施形態においては、マトリックスはコラーゲン、ゼラチン、フィブリン、フィブリノーゲン、ラミニン、及びエラスチンの1つ以上を含み;そして更にヒアルロン酸、プロテオグリカン、グリコサミノグリカン、又はグリカンを含むことができる。マトリックスがコラーゲンを含む場合、コラーゲンはI型コラーゲン、II型コラーゲン、III型コラーゲン、V型コラーゲン、XI型コラーゲン、及びこれらの組み合わせを含むことができる。
マトリックスはヒドロゲルであることができる。適当なヒドロゲルは2種以上の単量体の重合体、例えば多種の単量体を含むホモポリマー又はへテロポリマーである。適当なヒドロゲル単量体は以下のもの、即ち乳酸、グリコール酸、アクリル酸、1−ヒドロキシメタクリレート(HEMA)、エチルメタクリレート(EMA)、プロピレングリコールメタクリレート(PEMA)、アクリルアミド(AAM)、N−ビニルピロリドン、メチルメタクリレート(MMA)、グリシジルメタクリレート(GDMA)、グリコールメタクリレート(GMA)、エチレングリコール、フマル酸等を包含する。一般的な交差結合材はテトラエチレングリコールジメタクリレート(TEGDMA)及びN,N’−メチレンビスアクリルアミドを包含する。ヒドロゲルはホモポリマーであることができ、或いは、上記重合体の2種以上の共重合体を含むことができる。例示されるヒドロゲルはポリ(エチレンオキシド)(PEO)とポリ(ポリプロピレンオキシド)(PPO)の共重合体;PluronicTMF−127(名目式EO100−PO65−EO100のPEOとPPOの2官能性ブロック共重合体、式中、EOはエチレンオキシドであり、そしてPOはポリプロピレンオキシド);ポロキサマー407(ポリ(エチレングリコール)の2つの親水性ブロックによりフランキングされたポリ(プロピレングリコール)の中央ブロックよりなるトリブロック共重合体);名目分子量12,500ダルトン及びPEO:PPO比2:1のポリ(エチレンオキシド)−ポリ(ポリプロピレンオキシド)−ポリ(エチレンオキシド)共重合体);ポリ(N−イソプロピルアクリルアミド)系ヒドロゲル(PNIPAAm系ヒドロゲル);PNIPAAm−アクリル酸共重合体(PNIPAAm−co−AAc);ポリ(2−ヒドロキシエチルメタクリレート);ポリ(ビニルピロリドン)等を包含するがこれらに限定されない。
本発明の遺伝子的に修飾された細胞/マトリックス組成物は更に追加的成分1つ以上を含むことができ、その場合、適当な追加的成分は例えば、成長因子;抗酸化剤;栄養輸送物質(例えばトランスフェリン);ポリアミン(例えばグルタチオン、スペルミジン等)を包含する。
本発明の遺伝子的に修飾された細胞/マトリックス組成物中の細胞密度は約102個/mm3〜約109個/mm3、例えば約102個/mm3〜約104個/mm3、約104個/mm3〜約106個/mm3、約106個/mm3〜約107個/mm3、約107個/mm3〜約108個/mm3、又は約108個/mm3〜約109個/mm3の範囲であることができる。
マトリックスは種々の形態の何れかをとることができ、又は、相対的に不定形であることができる。例えば、マトリックスはシート、円筒、球等の形態であることができる。
移植可能な装置
本開示はGata4、Mef2c、Tbx5、Mesp1、Nkx2−5、Isl−1、Myocd、Smyd1、及びSrfポリペプチドの1つ以上を含むリプログラミング組成物を含む移植可能な装置(例えば血管内ステント、スカホールド、移植片(例えば大動脈移植片)、人工心臓弁、冠動脈シャント、ペースメーカー電極、心臓内リード等)を提供する。本開示は更にGata4、Mef2c、Tbx5、Mesp1、Nkx2−5、Isl−1、Myocd、Smyd1、及びSrfポリペプチドの1つ以上をコードするヌクレオチド配列を含む核酸1つ以上を含むリプログラミング組成物を含む移植可能な装置を提供する。リプログラミング組成物(Gata4、Mef2c、Tbx5、Mesp1、Nkx2−5、Isl−1、Myocd、Smyd1、及びSrfポリペプチドの1つ以上を含む、又はGata4、Mef2c、Tbx5、Mesp1、Nkx2−5、Isl−1、Myocd、Smyd1、及びSrfポリペプチドの1つ以上をコードするヌクレオチド配列を含む核酸1つ以上を含む)は移植可能な装置の表面上にコーティングすることができ、又は、移植可能な装置中のリザーバ内に含有されることができる。リプログラミング組成物が移植可能な装置内のリザーバ内に含有される場合は、リザーバは装置からリプログラミング組成物が溶出できるような構造を有する。
本開示はGata4ポリペプチド、Mef2cポリペプチド、及びTbx5ポリペプチドを含むリプログラミング組成物を含む移植可能な装置(例えば血管内ステント、スカホールド、移植片(例えば大動脈移植片)、人工心臓弁、冠動脈シャント、ペースメーカー電極、心臓内リード等)を提供する。本開示は更にGata4ポリペプチド、Mef2cポリペプチド、及びTbx5ポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含む核酸1つ以上を含むリプログラミング組成物を含む移植可能な装置を提供する。リプログラミング組成物(Gata4ポリペプチド、Mef2cポリペプチド、及びTbx5ポリペプチドを含む、又はGata4ポリペプチド、Mef2cポリペプチド、及びTbx5ポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含む核酸1つ以上を含む)は移植可能な装置の表面上にコーティングすることができ、又は、移植可能な装置中のリザーバ内に含有されることができる。リプログラミング組成物が移植可能な装置内のリザーバ内に含有される場合は、リザーバは装置からリプログラミング組成物が溶出できるような構造を有する。
移植可能な装置が個体中のある部位にある場合、リプログラミング組成物中の核酸又はポリペプチドは移植可能な装置を離れ、そしてポリペプチド又は核酸は移植可能な装置又はその近傍において線維芽細胞内に進入する。即ち、本発明の移植可能な装置は、個体内に移植されれば、移植の部位又はその近傍において線維芽細胞内へのリプログラミング因子又はそれをコードする核酸の導入を可能にし、そして、これにより心筋細胞への線維芽細胞のリプログラミングを可能にする。例えば、本発明の移植可能な装置がステントである場合、そのステントは冠動脈内に移植することができ、そこでリプログラミング因子、又はそれをコードする核酸がステントから溶出し、冠動脈血管床内の線維芽細胞に進入し、そして線維芽細胞を心筋細胞にリプログラミングする。
本開示はリプログラミング組成物を含むステントを提供する。血管内ステントは例えば、自己膨張可能なステント、バルーン膨張可能なステント、及びステント−グラフトを包含する。
一部の例において、本発明の移植可能な装置は移植可能な装置(例えば、ステント)の表面に固定された第一の重合体物質(第1の層)の内部に取り込まれたリプログラミング組成物;及び 第一の重合体物質に固定された第二の重合体物質(例えば、バリア層)を含み、ここで第二の重合体物質はリプログラミング組成物中に存在するポリペプチド又は核酸の溶出速度を制御する。一例としては、第一の重合体物質はフルオロ重合体を含むことができ;そして第二の重合体物質はアクリル系を含むことができる。
一部の例において、本発明の移植可能な装置は、移植可能な装置(例えば、ステント)の表面にコーティングされた重合体層(第1の層)の中に取り込まれたリプログラミング組成物;及び移植可能な装置からのリプログラミング組成物内部に含有されるポリペプチド又は核酸の放出の速度を低減するための重合体層の少なくとも一部分の上のバリア層を含む。重合体層はポリ(メチルメタクリレート)又はポリ(ブチルメタクリレート)を含むことができ、そしてポリ(エチレン−コ−ビニルアセテート)を更に包含できる。バリアは重合体又は無機物質を含有できる。
第1の層のための適当な重合体物質はポリウレタン、ポリエステルウレタン、シリコーン、フルオロ重合体、エチレン酢酸ビニル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリカーボネート、トリメチレンカーボネート、ポリホスファゼン、ポリヒドロキシブチレート、ポリヒドロキシバレレート、ポリジオキサノン、ポリイミノカーボネート、ポリオルトエステル、エチレンビニルアルコール共重合体、L-ポリラクチド、D,L−ポリラクチド、ポリグリコリド、ポリカプロラクトン、ラクチドとグリコリドの共重合体、ポリメチルメタクリレート、ポリ(n−ブチル)メタクリレート、ポリアクリレート、ポリメタクリレート、エラストマー、及びこれらの混合物を包含するがこれらに限定されない。
代表的なエラストマーは熱可塑性エラストマー物質、ポリエーテル−アミド熱可塑性エラストマー、フルオロエラストマー、フルオロシリコーンエラストマー、スチレン−ブタジエンゴム、ブタジエン−スチレンゴム、ポリイソプレン、ネオプレン(ポリクロロプレン)、エチレン−プロピレンエラストマー、クロロスルホン化ポリエチレンエラストマー、ブチルゴム、ポリスルフィドエラストマー、ポリアクリレートエラストマー、ニトリル、ゴム、ポリエステル、スチレン、エチレン、プロピレン、ブタジエン及びイソプレン、ポリエステル熱可塑性エラストマー、及びこれらの混合物を包含するがこれらに限定されない。
バリア層は生体適合性である(即ちその存在が身体からの有害応答を誘発しない)。バリア層は約50オングストローム〜約20,000オングストロームの範囲の厚みを有することができる。バリアは殆どが無機物質であることができる。しかしながら一部の有機化合物(例えば、ポリアクリロニトリル、ポリ塩化ビニリデン、ナイロン6−6、パーフルオロ重合体、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン2,6−ナフタレンジカルボキシレート、及びポリカーボネート)をバリアに配合してよい。バリア内での使用に適する適当な無機物質は無機元素、例えば純粋な金属、例えばアルミニウム、クロム、金、ハフニウム、イリジウム、ニオブ、パラジウム、白金、タンタル、チタン、タングステン、ジルコニウム、及びこれらの金属の合金、及び無機化合物、例えば無機の珪化物、酸化物、窒化物、及び炭化物を包含するがこれらに限定されない。一般的に、バリアの物質中の薬物の溶解度は重合体担体中の薬剤の溶解度よりも顕著に低い。更に又、一般的に、バリアの物質中の薬物の拡散性も、重合体担体中の薬剤の拡散性よりも顕著に低い。
バリアは生体分解性(即ち身体の作用により無害化合物にまで分解され得る)であってもなくてもよい。非生体分解性バリア物質を使用してよいが、一部の生体分解性物質をバリアとして使用してよい。例えば、リン酸カルシウム、例えばヒドロキシアパタイト、炭酸ヒドロキシアパタイト、リン酸3カルシウム、ベータリン酸3カルシウム、リン酸8カルシウム、不定形リン酸カルシウム、及びオルトリン酸カルシウムを使用してよい。特定のカルシウム塩、例えばリン酸カルシウム(プラスターオブパリ)もまた使用してよい。バリアの生体分解性は伏在する第1の層からの薬物放出を制御するための追加的機序として機能してよい。
移植可能な装置の表面に第1の層を固定する方法、及び、第1の層上にバリア層を固定する方法は当該分野で知られている。例えば米国特許7,695,731及び7,691,401を参照できる。
上記した通り、一部の実施形態においては、本発明の移植可能な装置はリプログラミング組成物を含むリザーバを含む。例えば、一部の実施形態においては、本発明の移植可能な装置は身体組織、臓器又は体液を接触させるための少なくとも1つの表面を有し、その場合、移植可能な装置は接触表面;及び接触表面の少なくとも一部分の上の薬物溶出コーティングを含み、ここでコーティングは重合体に渡って分散しているゼオライトを有する重合体を含み、そしてここで、ゼオライトの多孔性の構造は放出剤及びリプログラミング組成物を含有するリザーバを包含する。放出剤はトリガー条件が満たされるまでリザーバから治療物質が退出することを防止する。トリガー条件は体液との放出剤の接触;放出剤近辺のpHの変化等であることができる。
単独又は組み合わせにおける使用に適する生体分解性重合体はポリ(α-ヒドロキシ酸)、例えば、ポリカプロラクトン(PCL)、ポリ(ラクチド-コ-グリコリド)(PLGA)、ポリラクチド(PLA)、及びポリグリコリド(PGA)、及び放出速度を微調整するための種々異なる比における上記の組み合わせ及びブレンド物、PLGA-PEG (ポリエチレングリコール)、PLA-PEG、PLA-PEG-PLA、ポリ無水物、トリメチレンカーボネート、ポリオルトエステル、ポリアスピリン、ポリホスファゲン、及びチロジンポリカーボネート;天然及び合成のヒドロゲル物質、例えばコラーゲン、澱粉、キトサン、ゼラチン、アルギネート、デキストラン、ビニルピロリドン、ポリビニルアルコール (PVA)、PVA-g-PLGA、PEGT-PBT共重合体(ポリアクティブ)、メタクリレート、ポリ(N-イソプロピルアクリルアミド)、PEO-PPO-PEO (プルロニック)、PEO-PPO-PAA共重合体、及びPLGA-PEO-PLGAを包含するがこれらに限定されない。本発明の実施形態による重合体マトリックスは以下の生体安定性重合体、即ちポリウレタン、ポリメチルメタクリレート共重合体、ポリ酢酸ビニル (PVA)、ポリアミド、及びポリウレタンとシリコーンの共重合体のいずれかを単独又は組み合わせにおいて包含してよい。
リプログラミング組成物
本開示はリプログラミング組成物を提供する。
一部の実施形態においては、本発明のリプログラミング組成物は1)Gata4、Mef2c、Tbx5、Mesp1、Nkx2−5、Isl−1、Myocd、Smyd1、及びSrfポリペプチドの2つ以上の混合物;又は2)Gata4、Mef2c、Tbx5、Mesp1、Nkx2−5、Isl−1、Myocd、Smyd1、及びSrfポリペプチドの2つ以上をコードするヌクレオチド配列を含む核酸1つ以上;のいずれかを含む。リプログラミング組成物はポリペプチド又は核酸に加えて、塩、例えばNaCl、MgCl、KCl、MgSO4等;緩衝剤、例えばトリス緩衝液、N-(2-ヒロドキシエチル)ピペラジン-N'-(2-エタンスルホン酸(HEPES)、2-(N-モルホリノ)エタンスルホン酸(MES)、2-(N−モルホリノ)エタンスルホン酸ナトリウム塩(MES)、3−(N−モルホリノ)プロパンスルホン酸(MOPS)、N−トリス[ヒドロキシメチル]メチル−3−アミノプロパンスルホン酸(TAPS);等、可溶化剤;洗剤、例えばノニオン系洗剤、例えばTween−20;等、プロテアーゼ阻害剤;グリセロール;等の1つ以上を含むことができる。
一部の実施形態においては、本発明のリプログラミング組成物は1)Gata4、Mef2c、及びTbx5ポリペプチドの混合物;又は2)Gata4、Mef2c、及びTbx5ポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含む核酸1つ以上のいずれかを含む。リプログラミング組成物は、ポリペプチド又は核酸に加えて、塩、例えばNaCl、MgCl、KCl、MgSO4;等、緩衝剤、例えばトリス緩衝液、N−(2−ヒロドキシエチル)ピペラジン−N'−(2−エタンスルホン酸)(HEPES)、2−(N−モルホリノ)エタンスルホン酸(MES)、2−(N−モルホリノ)エタンスルホン酸ナトリウム塩(MES)、3−(N−モルホリノ)プロパンスルホン酸(MOPS)、N−トリス[ヒドロキシメチル]メチル−3−アミノプロパンスルホン酸(TAPS);等、可溶化剤;洗剤、例えばノニオン系洗剤、例えばTween−20;等、プロテアーゼ阻害剤;グリセロール;等の1つ以上を含むことができる。
本発明のリプログラミング組成物上記した通り本発明の移植可能な装置中に包含させることができる。本発明のリプログラミング組成物は個体に直接投与することができる。本発明のリプログラミング組成物は心筋細胞中に生後線維芽細胞をリプログラミングするために有用であり、このリプログラミングはインビトロ又はインビボにおいて実施できる。心筋細胞に生後線維芽細胞をリプログラミングすることは、後に記載するとおり、種々の心臓障害を治療するために使用できる。
本発明のリプログラミング組成物は製薬上許容しうる賦形剤を包含できる。適当な賦形剤ベヒクルは例えば、水、食塩水、デキストロース、グリセロール、エタノール等、及びこれらの組み合わせである。更にまた、所望により、ベヒクルは少量の補助的物質、例えば水和剤、又は乳化剤、又は緩衝剤を含有してよい。そのような剤型を調製する実際の方法は知られているか、又は当業者の知る通りである。例えばRemington's Pharmaceutical Sciences、Mack Publishing Company、Easton、Pennsylvania、17th edition、1985を参照できる。投与すべき組成物又は組成物は、何れの場合においても、治療される対象において所望の状態を達成するために十分な本発明の抗体の量を含有することになる。
製薬上許容しうる賦形剤、例えばベヒクル、アジュバント、担体又は希釈剤は市場において容易に入手できる。更にまた、製薬上許容しうる補助的物質、例えばpH調節剤及び緩衝剤、張力調節剤、安定化剤、水和剤等は市場において容易に入手できる。
一部の実施形態においては、本発明のリプログラミング組成物は制御放出製剤として製剤される。持続放出調製品は当該分野で良く知られている方法を用いて調製してよい。持続放出調製品の適当な例は抗体を含む固体疎水性重合体の半透過性マトリックスを包含し、その場合、マトリックスは形状化された物品、例えばフィルム又はマイクロカプセルの形態である。持続放出マトリックスの例は、ポリエステル、L−グルタミン酸とエチル−L−グルタメートの共重合体、非分解性エチレン酢酸ビニル、ヒドロゲル、ポリラクチド、分解性乳酸-グリコール酸共重合体及びポリ−D−(−)−3−ヒドロキシ酪酸を包含する。持続放出調製品中に含まれるポリペプチド又は核酸の活性における考えられる生物学的活性の損失及び考えられる活性の変化は、適切な添加剤の使用により、水分含量の制御により、そして特定の重合体マトリックス組成を開発することにより、防止してよい。
本発明のリプログラミング組成物は更に、治療剤1つ以上を含むことができる。本発明のリプログラミング組成物に包含されることができる治療剤は、例えばジギタリス、スタチン、抗血小板剤、抗凝固剤、カルシウムチャンネルブロッカー、アンジオテンシン変換酵素阻害剤、血管拡張剤、アンジオテンシンII受容体ブロッカー、ベクターブロッカー等を包含できる。
用途
生後線維芽細胞をリプログラミングする本発明方法は誘導心筋細胞の集団を発生させるために有用であり、その誘導心筋細胞は分析アッセイにおいて、人工心臓組織を発生させるために、そして治療法において有用であることができる。
分析アッセイ
本発明方法は分析アッセイのための心筋細胞を発生させるために使用できる。分析アッセイは例えば、疾患(例えば心疾患)の治療における心筋細胞の効果を測定するための疾患の非ヒト動物モデル内への心筋細胞の導入;心臓障害の治療における使用に適する候補剤を識別するためのスクリーニング方法における心筋細胞の使用等を包含する。一部の場合において、本発明方法を用いて発生させた心筋細胞は、試験剤の毒性を検査するため、又は薬物最適化のために使用することができる。
動物モデル
一部の実施形態においては、本発明方法を使用して発生させた心筋細胞は心臓障害の非ヒト動物モデル中に導入することができ、そして障害を緩解することに対する心筋細胞の作用は非ヒト動物モデル(例えばげっ歯類モデル、例えばラットモデル、モルモットモデル、マウスモデル等、非ヒト霊長類モデル;ウサギモデル等)において試験できる。例えば、障害の非ヒト動物モデルにおける心臓障害に対する本発明方法を使用して発生させた心筋細胞の作用は、非ヒト動物モデルにおける疾患心臓組織の中、近傍、又は周囲への心筋細胞の導入により試験することができ;そして、心機能に対する導入心筋細胞の作用がある場合はそれを検査することができる。心機能を検査する方法は当該分野で良く知られており;そしていずれかのそのような方法を使用することができる。
薬物/剤のスクリーニング又は識別
本発明方法を使用して発生させた心筋細胞はそのような細胞および/またはそれらの種々の子孫の特性に影響する薬物又は被験剤(例えば溶媒、小分子薬物、ペプチド、オリゴヌクレオチド)又は環境条件(例えば培養条件又は操作)を求めるスクリーニングにおいて使用してよい。例えば米国特許7425448を参照できる。薬物又は被験剤は選択された個々の小分子(例えば以前の薬物スクリーニングで得られた鉛化合物)であるか、又は一部の場合においては、スクリーニングすべき薬物又は被験剤はコンビナトリアルなライブラリ、例えば多くの化学的「ビルディングブロック」を組み合わせることにより、化学合成又は生合成のいずれかにより発生させた多様な化学物質の収集物に由来するものである。例えば、線状コンビナトリアル化学ライブラリ、例えばポリペプチドライブラリは所定の化合物長(例えばポリペプチド化合物中のアミノ酸数)に関して全ての可能な方法において、一連のアミノ酸を組み合わせることにより形成される。多くの被験剤(例えば化合物)は、化学ビルディングブロックのそのようなコンビナトリアルな混合を介して合成されることができる。実際、理論的には100の互換的化学ビルディングブロックのコンビナトリアルな混合により、1億の4量体化合物又は100億の5量体化合物の合成が可能となる。例えばGallop等、(1994)、J. Med. Chem 37(9)、1233を参照できる。コンビナトリアル化学ライブラリの調製及びスクリーニングは当該分野で良く知られている。コンビナトリアルな化学ライブラリは、例えばHobbs等、(1993)、Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 90、6909に記載のダイバーソマー、例えばヒダントイン、ベンゾジアゼピン、及びジペプチド;Chen等、(1994)、J. Amer. Chem. Soc.116: 2661に記載の小型化合物ライブラリの同様な有機合成;Cho,等、(1993)、Science 261、1303に記載のオリゴカーバメート;Campbell等、(1994)、J. Org. Chem.59: 658に記載のペプチジルホスホネート;及び、例えばチアゾリジノン及びメタチアザノン(米国特許5,549,974)、ピロリジン(米国特許 5,525,735及び5,519,134)、ベンゾジアゼピン(米国特許5,288,514)を含有する小型有機分子ライブラリを包含するがこれらに限定されない。
多くのコンビナトリアルなライブラリが例えばComGenex (Princeton, NJ); Asinex (Moscow, Russia); Tripos, Inc. (St. Louis, MO); ChemStar, Ltd. (Moscow, Russia); 3D Pharmaceuticals (Exton, PA); 及び Martek Biosciences (Columbia, MD)から商業的に入手可能である。
一部の実施形態においては、本発明方法を使用して発生させた心筋細胞を被験剤と接触させ、そして心筋細胞の生物学的活性に対する被験剤の作用がある場合は、それを検査し、その場合、心筋の生物学的活性に対する作用を有する被験剤は心臓の障害又は状態を治療するための候補剤となる。例えば、目的の被験剤は、被験剤の非存在下の生物学的活性と比較して、少なくとも約5%、少なくとも約10%、少なくとも約15%、少なくとも約20%、少なくとも約25%、少なくとも約30%、少なくとも約40%、少なくとも約50%、少なくとも約75%、少なくとも約2倍、少なくとも約2.5倍、少なくとも約5倍、少なくとも約10倍、又は10倍超、心筋細胞の生物学的活性を増大させるものである。目的の被験剤は心臓の障害又は状態を治療するための候補剤となる。一部の実施形態においては、接触はインビトロで実施される。他の実施形態において、接触はインビボ、例えば非ヒト動物において実施される。
「生物学的活性」とはマーカー発現(例えば心筋細胞特異的マーカー発現)、受容体結合、イオンチャンネル活性、収縮活性、及び電気生理学的活性の1つ以上を包含する。
例えば、一部の実施形態においては、心筋細胞マーカーの発現に対する被験剤の作用がある場合は、それを検査する。新規細胞マーカーは、例えば心臓トロポニンI(cTnI)、心臓トロポニンT(cTnT)、筋節性ミオシン重鎖(MHC)、GATA−4、Nkx2.5、N−カドヘリン、β−アドレノセプター(β1−AR)、転写因子のMEF−2ファミリーのメンバー、クレアチンキナーゼMB(CK−MB)、ミオグロビン、及び心房ナトリウム排泄因子(ANF)を包含する。
別の例として心筋細胞の電気生理学的特性に対する被験剤の作用がある場合はそれを検査する。電気生理学的特性は心筋細胞様活動電位に関するパッチクランプ分析により検討することができる。例えばIgelmund等、Pflugers Arch. 437:669, 1999; Wobus等、Ann. N.Y. Acad. Sci. 27:752, 1995;及びDoevendans等、J. Mol. Cell Cardiol. 32:839, 2000を参照できる。
別の例として、一部の実施形態においては、リガンドゲートイオン活性に対する被験剤の作用がある場合はそれを検査する。別の例として、一部の実施形態においては、電圧ゲートイオンチャンネル活性に対する被験剤の作用がある場合はそれを検査する。イオンチャンネル活性に対する被験剤の作用は、標準的なアッセイを使用しながら、例えば細胞内イオン(例えばNa+、Ca2+、K+等)の レベルを計測することにより、容易に検査される。あるイオンの細胞内濃度の変化は、チャンネルにより自身の流入が制御されるイオンに対して適切なインジケーターを用いて検出されえる。例えば、イオンチャンネルがカリウムイオンチャンネルである場合は、カリウム検出染料を使用し;イオンチャンネルがカルシウムイオンであるばあいは、カルシウム検出染料を使用する等してよい。
適当な細胞内K+イオン検出染料はK+結合ベンゾフランイソフタレート等を包含するがこれらに限定されない。適当な細胞内Ca2+イオン検出染料は上記列挙した通りである。
本明細書に記載したアッセイにおける被験剤の作用は、インビトロの細胞培養又はインビボの何れかにおけるマーカー発現、受容体結合、収縮活性、又は電気生理学的特性のような本発明方法を用いて発生させた心筋細胞の表現型又は活性を観察するための何れかの標準的なアッセイを用いながら検査できる。例えば米国特許7425448を参照できる。例えば、医薬品候補は、収縮活性に対するそれらの作用に関して、例えばそれらが収縮の範囲又は頻度を増加又は減少させるかどうかを、当該分野で知られている何れかの方法を用いながら試験される。作用が観察される場合は、化合物の濃度を滴定することにより、メジアンの有効用量(ED50)を求める。
被験剤/薬物の毒性
本発明方法を使用して発生させた心筋細胞は、被験剤、又は薬物、例えば心筋細胞、例えば心筋細胞の対する薬理学的作用を有するように設計された被験剤又は薬物、例えば心筋細胞以外の細胞に対する作用を有するように設計されたが、意図しない結果として心筋細胞に潜在的に影響する被験剤又は薬物の毒性を検査するために使用できる。一部の実施形態においては、本開示は、本発明方法を用いて発生させた心筋細胞1つ以上を薬品、被験剤、又は他の因子のある用量に接触させること、及び、毒性又は心毒性のマーカーに関して接触させた心筋細胞を検査することを含む、ヒト又は非ヒト(例えばネズミ、ウサギ、非ヒト霊長類)対象における薬物、被験剤、又は他の因子の毒性作用を評価するための方法を開示する。
何れかの当該分野で知られている方法を使用することにより、本発明方法を用いて発生させた心筋細胞に対する被験剤又は薬物の毒性又は有害作用を評価してよい。細胞毒性又は心毒性は例えば細胞の生育性、生存性、形態、及び特定のマーカー及び受容体の発現に対する作用により調べることができる。例えば、心筋細胞壊死の生化学的マーカー(例えば心トロポニンT及びI(cTnT、cTnI)を用いることにより本発明方法を用いて発生させた心筋細胞に対する薬物誘導の毒性又は有害反応を検査してよく、その場合、細胞外液体(例えば細胞培地)中のそのようなマーカーの存在が壊死を示すことができる。例えばGaze and Collinson (2005)Expert Opin Drug Metab Toxicol 1(4):715-725を参照できる。別の例においては、ラクテートデヒドロゲナーゼを用いることにより、本発明方法を用いて発生させた心筋細胞における薬物誘導の毒性又は有害反応を検査する。例えばInoue等、(2007)AATEX 14, Special Issue: 457-462を参照できる。別の例においては、染色体DNAに対する薬物の作用をDNAの合成又は修復を計測することにより調べ、そして、本発明方法を用いて発生させた心筋細胞における薬物誘導の毒性又は有害反応を検査するために使用することができる。また別の例においては、[3H]−チミジン又はBrdUの取り込みの速度、程度、及び/又はタイミングを評価することにより、本発明方法を用いて発生させた心筋細胞における薬物誘導の毒性又は有害反応を検査してよい。
更に別の例において、分裂中期の拡張により測定される姉染色分体交換の速度又は性質を評価することにより、本発明方法を用いて発生させた心筋細胞における薬物誘導の毒性又は有害反応を検査することができる。例えばA. Vickers (pp 375-410 in In vitro Methods in Pharmaceutical Research, Academic Press, 1997)を参照できる。更に別の例においては、電気生理学的特性又はイオンゲートチャンネル(例えばカルシウムゲートチャンネル)の活動性を計測するためのアッセイを用いることにより本発明方法を用いて発生させた心筋細胞における薬物誘導の毒性又は有害反応を検査することができる。又別の例において、収縮活性(例えば収縮の頻度)を用いることにより本発明方法を用いて発生させた心筋細胞における薬物誘導の毒性又は有害反応を検査することができる。
一部の実施形態においては、本開示は、薬物、被験剤、又は薬理学的剤のある用量に本発明方法を用いて発生させた心筋細胞1つ以上を接触させること、接触させた1つ以上の分化細胞を毒性に関してアッセイすること、及び、アッセイが接触細胞における毒性に関して陰性であった場合に対象に対して薬理学的剤を処方又は投与すること、を含む、ヒト又はネズミ対象における薬物毒性の危険性を低減させるための方法を提供する。一部の実施形態においては、本開示は薬理学的剤のある用量に本発明方法を用いて発生させた心筋細胞1つ以上を接触させること、接触させた1つ以上の分化細胞を毒性に関してアッセイすること、及び、アッセイが接触細胞における毒性に関して低い危険性又は危険性が無いことを示す場合に、対象に対して薬理学的剤を処方又は投与すること、を含む、ヒト又はネズミ対象における薬物毒性の危険性を低減させるための方法を提供する。
細胞を用いた治療方法
本発明の修飾又は遺伝子的に修飾された線維芽細胞は治療の必要な個体においてそのような治療のために使用できる。同様に、本発明の誘導心筋細胞は治療の必要な個体においてそのような治療のために使用できる。本発明の修飾又は遺伝子的に修飾された線維芽細胞、又は本発明の誘導心筋細胞はレシピエント個体(治療の必要な個体)中に導入することができ、その場合、本発明の修飾又は遺伝子的に修飾された線維芽細胞、又は本発明の誘導心筋細胞のレシピエント個体への導入は個体における状態又は障害を治療する。即ち, 一部の実施形態においては、本発明の治療方法は、それを要する個体に対し、本発明の修飾又は遺伝子的に修飾された線維芽細胞の集団を投与することを包含する。一部の実施形態においては、本発明の治療方法は、それを要する個体に対し、本発明の誘導心筋細胞の集団を投与することを包含する。
一部の実施形態においては、本開示は細胞移植を、それを要するレシピエント個体において実施するための方法を提供し、方法は一般的に、(i)ドナー個体から得られた線維芽細胞から誘導心筋細胞を発生させること、ここでドナー個体はレシピエント個体と免疫適合性であること;及び(ii)誘導心筋細胞1つ以上をレシピエント個体内に移植すること、を含む。一部の実施形態においては、レシピエント及びドナー個体は同じ個体である。一部の実施形態においては、レシピエント及びドナー個体は同じ個体ではない。
一部の実施形態においては、本開示は細胞移植を、それを要するレシピエント個体において実施するための方法を提供し、方法は一般的に、(i)Gata4、Mef2c、及びTbx5ポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含む核酸1つ以上で宿主生後線維芽細胞を遺伝子的に修飾すること、ここで宿主生後線維芽細胞はドナー個体から得られ、そしてドナー個体はレシピエント個体と免疫適合性であること;及び(ii)遺伝子的に修飾された生後線維芽細胞1つ以上をレシピエント個体内に移植すること、を含む。一部の実施形態においては、レシピエント及びドナー個体は同じ個体である。一部の実施形態においては、レシピエント及びドナー個体は同じ個体ではない。
一部の実施形態においては、本開示は細胞移植を、それを要するレシピエント個体において実施するための方法を提供し、方法は一般的に、(i)Gata4、Mef2c、Tbx5、Mesp1、Nkx2−5、Isl−1、Myocd、Smyd1、及びSrfポリペプチドの1つ以上、又はサブセット(例えば、Gata4、Mef2c、及びTbx5ポリペプチド)を宿主生後線維芽細胞内に導入することにより宿主生後線維芽細胞を修飾すること、ここで宿主生後線維芽細胞はドナー個体から得られ、そしてドナー個体はレシピエント個体と免疫適合性であること;及び(ii)修飾された生後線維芽細胞1つ以上をレシピエント個体内に移植すること、を含む。一部の実施形態においては、レシピエント及びドナー個体は同じ個体である。一部の実施形態においては、レシピエント及びドナー個体は同じ個体ではない。
誘導心筋細胞を発生させる本発明方法は、人工心臓組織を、例えばそれを要する哺乳類対象に移植するために発生させるために有用である。一部の実施形態においては、本発明の治療方法は、それを要する個体に、本発明の人工心臓組織を投与することを包含する。
本発明の治療方法は損傷を受けた心臓組織(例えば虚血心臓組織)を交換するために有用である。本発明方法が個体に誘導心筋細胞を導入(移植)することを包含する場合は、同種異系又は自系の移植を実施することができる。
本開示は個体における心臓障害を治療するための方法を提供し、方法は一般的に、それを必要とする個体に対し、a)本発明方法を用いながら調製された誘導心筋細胞の集団; b)本発明方法を用いながら調製された遺伝子的に修飾された生後線維芽細胞の集団;c)本発明方法を用いながら調製された修飾生後線維芽細胞の集団;又はd)本発明方法を用いながら調製された人工心臓組織;の治療有効量を投与することを包含する。
例えば、一部の実施形態においては、本発明方法はi)上記した通りインビトロで誘導心筋細胞を発生させること;及びii)誘導心筋細胞をそれを要する個体中に導入すること、を含む。他の実施形態において、本発明方法はi)Gata4、Mef2c、Tbx5、Mesp1、Nkx2−5、Isl−1、Myocd、Smyd1、及びSrfポリペプチドの1つ以上、又はサブセット(例えば、Gata4、Mef2c、及びTbx5ポリペプチド)をコードするヌクレオチド配列を含む核酸1つ以上で宿主生後線維芽細胞を遺伝子的に修飾すること; 及びii)遺伝子的に修飾された生後線維芽細胞をそれを要する個体中に導入することを含む。
他の実施形態において、本発明方法はi)Gata4、Mef2c、Tbx5、Mesp1、Nkx2−5、Isl−1、Myocd、Smyd1、及びSrfポリペプチドの1つ以上、又はサブセット(例えば、Gata4、Mef2c、及びTbx5ポリペプチド)を宿主生後線維芽細胞中に導入することにより宿主生後線維芽細胞を修飾すること;及びii)修飾された生後線維芽細胞をそれを要する個体中に導入することを含む。
他の実施形態において、本発明方法はi)以下、即ち:a)上記した通り誘導心筋細胞を発生させること;及びb)誘導心筋細胞をマトリックスと会合させることにより人工心臓組織を発生させることにより人工心臓組織を形成すること;及びii)人工心臓組織をそれを要する個体中に導入すること;を包含する。他の実施形態において、要件はi)以下、即ち:a)Gata4、Mef2c、Tbx5、Mesp1、Nkx2−5、Isl−1、Myocd、Smyd1、及びSrfポリペプチドの1つ以上、又はサブセット(例えば、Gata4、Mef2c、及びTbx5ポリペプチド)をコードするヌクレオチド配列を含む核酸1つ以上で宿主生後線維芽細胞を遺伝子的に修飾すること;及びb)遺伝子的に修飾された生後線維芽細胞をマトリックスと会合させることにより人工心臓組織を発生させることにより人工心臓組織を形成すること;及びii)人工心臓組織をそれを要する個体中に導入すること;を含む。他の実施形態において、要件はi)以下、即ち:a)Gata4、Mef2c、Tbx5、Mesp1、Nkx2−5、Isl−1、Myocd、Smyd1、及びSrfポリペプチドの1つ以上、又はサブセット(例えば、Gata4、Mef2c、及びTbx5ポリペプチド)を宿主生後線維芽細胞に導入することにより宿主生後線維芽細胞を修飾すること;及びb)修飾された生後線維芽細胞をマトリックスと会合させることにより人工心臓組織を発生させることにより人工心臓組織を形成すること;及びii)人工心臓組織をそれを要する個体中に導入すること;を含む。人工心臓組織は個体中、既存の心臓組織の中、上、又は周囲に導入できる。
本発明方法を用いた治療を要する個体及び/又はドナー個体は、鬱血性心不全を有する個体;変性筋肉疾患に罹患した個体;虚血性心組織をもたらす状態に罹患している個体、例えば冠動脈疾患を有する個体等を包含するがこれらに限定されない。一部の例においては、本発明方法は変性筋肉の疾患又は状態、例えば家族性心筋症、拡張性心筋症、肥大性心筋症、拘束型心筋症、又は結果として虚血性心筋症をもたらす冠動脈疾患を治療するために有用である。一部の例においては、本発明方法は心臓又は心臓血管の疾患又は障害、例えば心臓血管疾患、動脈瘤、狭心症、不整脈、アテローム性動脈硬化症、脳血管偶発症(卒中)、心臓血管疾患、先天性心疾患、うっ血性心障害、心筋炎、冠状静脈弁疾患、拡張性動脈疾患、拡張期機能不全、心内膜炎、高い血圧(高血圧)、心筋症、肥大性心筋症、拘束型心筋症、結果として虚血性心筋症をもたらす冠動脈疾患、僧帽弁逸脱症、心筋梗塞(心臓発作)、又は静脈血栓塞栓を有する個体を治療するために有用である。
本発明方法による治療に適する個体は虚血性心臓組織をもたらす状態を包含するがこれに限定されない心臓の状態を有する個体(例えば哺乳類対象、例えばヒト;非ヒト霊長類;実験非ヒト哺乳類対象、例えばマウス、ラット等)、例えば冠動脈疾患を有する個体等を包含する。一部の例においては、治療に適する個体は心臓又は心臓血管の疾患又は状態、例えば 心臓血管疾患、動脈瘤、狭心症、不整脈、アテローム性動脈硬化症、脳血管偶発症(卒中)、心臓血管疾患、先天性心疾患、うっ血性心障害、心筋炎、冠状静脈弁疾患、拡張性動脈疾患、拡張期機能不全、心内膜炎、高い血圧(高血圧)、心筋症、肥大性心筋症、拘束型心筋症、結果として虚血性心筋症をもたらす冠動脈疾患、僧帽弁逸脱症、心筋梗塞(心臓発作)、又は静脈血栓塞栓に罹患している。一部の例においては、本発明方法による治療に適する個体は変性筋肉疾患、例えば家族性心筋症、拡張性心筋症、肥大性心筋症、拘束型心筋症、又は結果として虚血性心筋症をもたらす冠動脈疾患を有する個体を包含する。
哺乳類宿主に投与するために、本発明方法を用いて発生させた誘導心筋細胞の集団、又は遺伝子的に修飾された生後線維芽細胞の集団を医薬組成物として製剤することができる。医薬組成物は滅菌された水性又は非水性の溶液、懸濁液又は乳液であることができ、これは更に生理学的に許容される担体(即ち心筋細胞の活動性を妨害しない非毒性の物質)を含む。当該分野で知られている何れかの適当な担体を要件医薬組成物中で使用してよい。担体の選択は、部分的には投与される物質(即ち細胞又は化合物)の性質に依存することになる。代表的な担体は生理食塩水、ゼラチン、水、アルコール、天然又は合成の油脂、糖類溶液、グリコール、注射可能な有機エステル、例えばオレイン酸エチル又はこれらの物質の組み合わせを包含する。場合により、医薬組成物は更に、保存料及び/又は他の添加剤、例えば抗微生物剤、抗酸化剤、キレート形成剤及び/又は不活性ガス、及び/又は他の活性成分を含有してよい。
一部の実施形態においては、誘導心筋細胞集団、修飾された生後線維芽細胞の集団、又は遺伝子的に修飾された生後線維芽細胞の集団はマイクロカプセル化を包含する知られたカプセル化技術に従ってカプセル化される(例えば米国特許4,352,883;4,353,888;及び5,084,350参照)。心筋細胞、修飾された生後線維芽細胞、又は遺伝子的に修飾された生後線維芽細胞をカプセル化する場合、一部の実施形態においては、心筋細胞、修飾された生後線維芽細胞、又は遺伝子的に修飾された生後線維芽細胞は、米国特許5,284,761;5,158,881;4,976,859;4,968,733;5,800,828及び公開PCT特許出願国際特許出願WO95/05452に記載される通りカプセル化によりカプセル化される。
一部の実施形態においては、誘導心筋細胞集団、修飾された生後線維芽細胞の集団、又は遺伝子的に修飾された生後線維芽細胞の集団は後述するとおりマトリックス中に存在する。
誘導心筋細胞集団、修飾された生後線維芽細胞の集団、又は遺伝子的に修飾された生後線維芽細胞の集団の単位剤型は約103個〜約109個、例えば約103個〜約104個、約104個〜約105個、約105個〜約106個、約106個〜約107個、約107個〜約108個、又は約108個〜約109個の細胞を含有できる。
誘導心筋細胞集団、修飾された生後線維芽細胞の集団、又は遺伝子的に修飾された生後線維芽細胞の集団は通常の操作法に従って凍結保存することができる。例えば、凍結保存は適当な増殖培地、10%BSA及び7.5%ジメチルスルホキシドを包含できる「凍結」培地中、約1〜1000万個の細胞に対して実施できる。細胞を遠心分離する。生育培地を吸引し、凍結培地と置き換える。細胞を球状体として再懸濁する。細胞を例えば−80℃のコンテナ中に置くことにより緩徐に凍結する。37℃バス中で振り回して解凍し、新鮮増殖培地に再懸濁し、そして上記した通り生育させる。
人工心臓組織
一部の実施形態においては、本発明方法はa)生後線維芽細胞の集団をインビトロで心筋細胞にリプログラミングすること、例えば生後線維芽細胞がマトリックス中に存在し、そこで誘導心筋細胞の集団を形成させること;及びb)個体の既存の心臓組織の中又は上に誘導心筋細胞の集団を移植すること、含む。即ち、本開示はインビトロで人工心臓組織を発生させ;そしてインビボで人工心臓組織を移植するための方法を提供する。一部の実施形態においては、本発明方法はa)生後線維芽細胞の集団をインビトロで心筋細胞にリプログラミングし、誘導心筋細胞の集団を発生させること; b)誘導心筋細胞をマトリックスと会合させて、人工心臓組織を形成すること;及びc)人工心臓組織を個体の既存の心臓組織の中又は上に移植すること;を含む。
人工心臓組織はそれを要する個体中への同種異系又は自系の移植のために使用できる。人工心臓組織を製造するためには、生後線維芽細胞と接触させるマトリックスを準備することができ、そこで生後線維芽細胞は上記した通り本発明方法を用いて心筋細胞にリプログラミングされる。このことは、このマトリックスを適当な容器に移し、そして細胞含有培養基の層を上面に置く(生後線維芽細胞のリプログラミングの前、又はその間)ことを意味する。「マトリックス」という用語はこの関連においては細胞が自身を結合させるか接着することにより相当する細胞コンポジット、即ち人工組織を形成することができる何れかの適当な担体物質を意味すると理解すべきである。一部の実施形態においては、マトリックス又は単体の物質は、それぞれ、後の適用のために望ましい三次元の形態で既に存在する。例えばウシ心膜組織は、コラーゲンと交差結合し、脱セルロース化され、そして光固定されるマトリックスとして使用される。
例えば、マトリックス)(「生体適合性基板」とも称する)は細胞集団を付着させることができる対象への移植に適するマトリックスである。生体適合性基板は対象に移植された後に毒性又は傷害性の作用を誘発しない。1つの実施形態において、生体適合性基板は修復又は交換を要する所望の構造に形状化できる表面を有する重合体である。重合体は又、修復又は交換を要する構造の一部分に形状化できる。生体適合性基板は細胞が自身に結合し、自身の上で成育できるようにする支持的フレームワークを提供する。培養された細胞集団を次に、生体適合性基板上で生育させることができ、これにより細胞−細胞相互作用のために必要な適切な間質の距離が与えられる。
ポリペプチド又は核酸を用いた治療方法
本開示はインビボで心筋細胞内に線維芽細胞をリプログラミングする方法を提供する。
一部の実施形態においては、方法は一般的にリプログラミング組成物にインビボで線維芽細胞を接触させることを包含する。上記考察した通り、リプログラミング組成物は1)Gata4、Mef2c、Tbx5、Mesp1、Nkx2−5、Isl−1、Myocd、Smyd1、及びSrfポリペプチドの2つ以上;又は2)Gata4、Mef2c、Tbx5、Mesp1、Nkx2−5、Isl−1、Myocd、Smyd1、及びSrfポリペプチドの2つ以上をコードするヌクレオチド配列を含む核酸1つ以上の何れかを含む。上記した通り、本発明のリプログラミング組成物は追加的成分1つ以上を含むことができる。本発明のリプログラミング組成物は治療部位又はその近傍において、例えば心臓の中又は周囲において、個体に投与できる。
一部の実施形態においては、方法は一般的にリプログラミング組成物にインビボで線維芽細胞を接触させることを包含する。上記考察した通り、リプログラミング組成物は1)Gata4、Mef2c、及びTbx5ポリペプチドの混合物:又は2)Gata4、Mef2c、及びTbx5ポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含む核酸1つ以上の何れかを含む。上記した通り、本発明のリプログラミング組成物は追加的成分1つ以上を含むことができる。本発明のリプログラミング組成物は治療部位又はその近傍において、例えば心臓の中又は周囲において、個体に投与できる。
一部の実施形態においては、リプログラミング組成物は移植可能な装置と組み合わせてそれを要する個体中に導入される。即ち、一部の実施形態においては、本開示はインビボで心筋細胞に線維芽細胞をリプログラミングする方法を提供し、方法は一般的に、本発明の移植可能な装置(本発明のリプログラミング組成物を含む)をそれを要する個体中に導入することを包含し、ここで移植可能な装置は治療部位又はその近傍において、例えば心臓の中又は周囲に導入される。
本発明方法を用いた治療を要する個体及び/又はドナー個体は、鬱血性心不全を有する個体;変性筋肉疾患に罹患した個体;虚血性心組織をもたらす状態に罹患している個体、例えば冠動脈疾患を有する個体等を包含するがこれらに限定されない。一部の例においては、本発明方法は変性筋肉の疾患又は状態、例えば家族性心筋症、拡張性心筋症、肥大性心筋症、拘束型心筋症、又は結果として虚血性心筋症をもたらす冠動脈疾患を治療するために有用である。一部の例においては、本発明方法は心臓又は心臓血管の疾患又は障害、例えば心臓血管疾患、動脈瘤、狭心症、不整脈、アテローム性動脈硬化症、脳血管偶発症(卒中)、心臓血管疾患、先天性心疾患、うっ血性心障害、心筋炎、冠状静脈弁疾患、拡張性動脈疾患、拡張期機能不全、心内膜炎、高い血圧(高血圧)、心筋症、肥大性心筋症、拘束型心筋症、結果として虚血性心筋症をもたらす冠動脈疾患、僧帽弁逸脱症、心筋梗塞(心臓発作)、又は静脈血栓塞栓を有する個体を治療するために有用である。
本発明方法による治療に適する個体は虚血性心臓組織をもたらす状態を包含するがこれに限定されない心臓の状態を有する個体(例えば哺乳類対象、例えばヒト;非ヒト霊長類;実験非ヒト哺乳類対象、例えばマウス、ラット等)、例えば冠動脈疾患を有する個体等を包含する。一部の例においては、治療に適する個体は心臓又は心臓血管の疾患又は状態、例えば 心臓血管疾患、動脈瘤、狭心症、不整脈、アテローム性動脈硬化症、脳血管偶発症(卒中)、心臓血管疾患、先天性心疾患、うっ血性心障害、心筋炎、冠状静脈弁疾患、拡張性動脈疾患、拡張期機能不全、心内膜炎、高い血圧(高血圧)、心筋症、肥大性心筋症、拘束型心筋症、結果として虚血性心筋症をもたらす冠動脈疾患、僧帽弁逸脱症、心筋梗塞(心臓発作)、又は静脈血栓塞栓に罹患している。一部の例においては、本発明方法による治療に適する個体は変性筋肉疾患、例えば家族性心筋症、拡張性心筋症、肥大性心筋症、拘束型心筋症、又は結果として虚血性心筋症をもたらす冠動脈疾患を有する個体を包含する。
以下の実施例は本発明をどのように作成し、そして使用するかに関する完全な開示及び説明を当業者に提供するために示しており、本発明者等がその発明と見なすものの範囲を限定する意図は無く、そして以下に記載する実験が実施した実験の全て又はそれのみであることを示す意図も無い。使用した数(例えば量、温度等)に関しては正確を確保する努力を行ったが、一部の実験的誤差及び偏差は考慮しなければならない。特段の記載が無い限り、部は重量部であり、分子量は重量平均分子量であり、温度は摂氏であり、そして圧力は大気圧又はその近傍である。標準的な略記方法、例えばbp、塩基対;kb、キロ塩基;pl、ピコリットル;s又はsec、秒;min、分;h又はhr、時間;aa、アミノ酸;kb、キロ塩基;bp、塩基対;nt、ヌクレオチド;i.m.、筋肉内(に);i.p.、腹腔内(に);s.c.、皮下(に)等を使用してよい。
確定された因子による機能的新規細胞中への心線維芽細胞の直接リプログラミング
材料及び方法
αMHC−GFP及びIsl1−YFPマウスの発生 α−ミオシン重鎖−緑色蛍光蛋白(αMHC−GFP)マウスを発生させるために、増強緑色蛍光蛋白−内部リボゾーム結合部位−ピューロマイシンR(EGFP−IRES−ピューロマイシン)cDNAをα−ミオシン重鎖(α−MHC)プロモーターを含有する発現ベクター中にサブクローニングした(Gulick等、(1991)J Biol Chem 266、9180-9185)。前核マイクロインジェクション及び他の操作法を標準的プロトコルに従って実施した(Ieda等、(2007)Nat Med 13, 604-612)。トランスジーンはポリメラーゼ連鎖反応(PCR)分析により識別した(フォワードプライマー、5’−ATGACAGACAGATCCCTCCT−3’(配列番号11);リバースプライマー、5’−AAGTCGTGCTGCTTCATGTG−3’(配列番号12))。Isl1−黄色蛍光蛋白(Isl1−YFP)マウスはIsl1−CrマウスとR26R−増強黄色蛍光蛋白(R26R−EYFP)マウスを交配することにより得た(Srinivas等、(2001)BMC Dev Biol 1, 4)。
細胞培養
体外移植組織培養のために、単離された新生仔又は成熟のマウス心臓を粉砕して大きさが1mm3未満の小片とした。体外移植組織をゼラチンコーティングディッシュ上にプレーティングし、そして体外移植組織培地(IMDM/20%FBS)中で7日間培養した(Andersen等、(2009)Stem Cells 27, 1571-1581)。遊走した細胞を採取し、そして40−μm細胞ストレーナー(BD)を用いて濾過することにより心臓組織フラグメントの夾雑を回避した。αMHC−GFP−/Thy1+、Isl1−YFP−/Thy1+、αMHC−GFP−/Thy1+/c−kit−又はMHC−GFP−/Thy1+/c−kit+の生細胞(ヨウ化プロピジウム染色が無いことにより画定)を蛍光活性化細胞ソーティング(FACS)Aria2(BD Biosciences)を用いて単離した。新生仔心線維芽細胞の従来の単離のために、心臓を0.1%トリプシンで消化し、そしてプラスチックディッシュ上にプレーティングした(Ieda等、(2009)Dev Cell 16:233)。結合した線維芽細胞を7日間培養し、そしてαMHC−GFP−/Thy1+細胞に関してソーティングした。ソーティングされた細胞を104/cm2の細胞密度において10%ウシ胎児血清(FBS)を含有するDMEM/M199培地中で培養した。細胞は24時間後にレトロウィルスで形質導入された。
心筋細胞の単離
心筋細胞を単離するために、新生仔αMHC−GFP+心室を小片に切断し、II型コラゲナーゼ溶液で消化した(Ieda等、(2009)上出)。単細胞懸濁液は穏やかに磨砕して40μm細胞ストレーナーを通過させることにより得た。αMHC−GFP+生細胞はFACSAria2により単離した。
分子クローニング及びレトロウィルス感染
レトロウィルスは文献記載通りに発生させた(Kitamura等、(2003)Exp. Hematol. 31:1007; Takahashi and Yamanaka, (2006)Cell 126:663)。要すれば、pMXsレトロウィルスベクターを構築するために、候補遺伝子のコーディング領域をポリメラーゼ連鎖反応(PCR)により増幅し、そしてpMXsベクター中にサブクローニングした。Fugene6(Roche)を用いてPlat−E細胞中にpMXsレトロウィルスベクターをトランスフェクトすることによりウィルスを発生させた。ウィルス含有上澄みのプールを形質導入に使用した。24時間後、培地をDMEM/M199培地と交換し、そして2〜3日毎に交換した。候補心線維芽細胞におけるpMXs−DsRedExpressレトロウィルス感染により、>95%のトランスフェクション効率がもたらされた(Hong等、(2009)Nature 460:1132)。
コンストラクト中に使用したMef2c、Tbx5、及びGata4のマウスヌクレオチド配列を配列番号23、25及び27にそれぞれ示す。コードされるMef2c、Tbx5、及びGata4ポリペプチドのアミノ酸配列をそれぞれ配列番号24、26、及び28に示す。
FACS分析及びソーティング
緑色蛍光蛋白(GFP)発現分析のために、細胞を培養ディッシュから採取し、そしてFlowJoソフトウエアを用いながらFACS Calibur(BD Biosciences)上で分析した。αMHC−GFP/cTnT発現のためには、細胞を15分間4%PFAで固定し、サポニンで透過性化し、そして抗cTnT及び抗GFP抗体、その後、Alexa488及び647とコンジュゲートした二次抗体で染色した(Kattman等、(2006)Dev. Cell 11:723)。
αMHC−GFP−/Thy1+及びIsl1−YFP−/Thy1+細胞ソーティングのためには、細胞をPECy7コンジュゲート抗Thy1抗体(eBioscience)と共にインキュベートし、そしてFACSAria2によりソーティングした(Ieda等、(2009)上出)。αMHC−GFP-/Thy1+/c−kit−及びαMHC−GFP−/Thy1+/c−kit+細胞ソーティングのためには、PECy7コンジュゲート抗Thy1及びアロフィコシアニン(APC)コンジュゲート抗c−kit抗体(BD)を使用した。骨髄細胞をc−kit染色の陽性対照として使用した。PECy7はフィコエリスリンとCy7蛍光染料のコンジュゲートである。
細胞移植
腺維芽細胞をレトロウィルス感染後翌日に採取した。非肥満糖尿病重度合併免疫不全(NOD−SCID)マウスにおいて左開胸術を実施し、そして106個の培養細胞を左心室に注射した。1〜2週間後、心臓を切除して免疫組織化学検査に付した。
免疫細胞化学検査
細胞を室温で15分間4%パラホルムアルデヒドで固定し、ブロックし、そして筋節性α−アクチニン(Sigma Aldrich)、ビメンチン(Progen)、GFP(Invitrogen)、Thy−1(BD Biosciences)、心トロポニンT(cTnT)(Thermo Scientific)、Nppa(Chemicon)、RFP(Rockland)、Nkx2.5(Santa Cruz)に対する一次抗体と共にインキュベートし、二次抗体は、Alexa488又は594(Molecular Probes)、及びDAPI(Invitrogen)とコンジュゲートさせた。
組織学的検査
細胞注射心臓における免疫組織化学試験のために、心臓を一夜0.4%パラホルムアルデヒド中に固定し、OTCコンパウンドに包埋し、そして液体窒素中に凍結した(Ieda等、(2007)supra; Ieda等、(2009)上出)。心臓を7μm切片として垂直に切断することにより両方の心室が見えるようにした。切片をアクチニン、赤色蛍光蛋白(RFP)、緑色蛍光蛋白(GFP)に対する一次抗体で染色し、二次抗体はAlexa488又は594、及び4’,6’−ジアミノ−2−フェニルインドール(DAPI)にコンジュゲートした。αMHC−GFP心臓におけるGFP発現パターンを分析するために、心臓を長手方向に切断し、そしてアクチニン、GFP及びビメンチンで染色した。
定量的RT−PCR
全RNAを細胞から単離し、そして定量的逆転写ポリメラーゼ連鎖反応(qRT−PCR)をABI7900HT(AppliedBiosystems)において、TaqManプローブ(AppliedBiosystems):Actc1(Mm01333821_m1)、Col1a2(Mm00483888_m1)、Myh6(Mm00440354_m1)、Ryr2(Mm00465877_m1)、Gja1(Mm00439105_m1)、Tbx5(Mm00803521_m1)を用いながら実施した。mRNAレベルはGapdhのmRNAとの比較により規格化した。
マイクロアレイ分析
マウスのゲノムワイドの遺伝子発現分析をAffymetrixのMouse Gene1.0STArrayを用いながら実施した。αMHC−GFP+心筋細胞はFACSにより採集した。3因子形質導入GFP+細胞及びGFP−細胞を培養4時間の後にFACSにより採集した。心線維芽細胞もまた培養4時間の後に採集した。RNAはPicoPureRNAIsolation(Arcturus)を用いて抽出した。マイクロアレイ分析は標準的なAffymetrixのGenechipのプロトコルに従って独立した生物学的試料から三連で実施した。データはAffymetrixPowerTool(APT、バージョン1.8.5)を用いながら分析した。直線モデルを各遺伝子に関して試料群にフィットさせることにより、R/Bioconductor中のlimmaパッケージ(Smyth,2004)を用いながら推定される群作用及びそれらの関連する有意性を誘導した。調整t統計量及び関連するp値を計算した。p値はBenjamini−Hochberg法により擬似発見率に対してコントロールすることにより多数の試験に対して調節した。遺伝子のアノテーションはAffymetrix(2007年11月12日バージョン)から取り出した。示差的遺伝子発現は統計量/閾値の組み合わせを用いて画定した。
Ca2+画像化
Ca2+画像化は標準的プロトコルに従って実施した。要すれば、細胞を室温で1時間Rhod−3(Invitrogen)で標識し、洗浄し、更に1時間インキュベートすることにより染料の脱エステル化を行った。Rhod−3標識細胞をMiCAM02(SciMedia)を用いながらAxioObserver(Zeiss)により分析した。
電気生理学的検査
3因子で4週間形質導入した後、誘導心筋細胞の電気生理学的活動を細胞外電極を用いて実施し、記録には、Axopatch700B増幅器及びpClamp9.2ソフトウエア(Axon Instruments)を使用した。誘導心筋細胞はGFP発現及び自発的収縮により目視で識別した。2〜4MΩの典型的な抵抗を有するガラスパッチピペットをGFP+単細胞に直接結合し、Tyrodeバス溶液中で細胞外記録を行った。
統計学的分析
群間の差はスチューデントのt検定又はANOVAを用いて統計学的有意性に関して調べた。<0.05のp値を有意と見なした。
結果
心筋細胞誘導因子を得るためのスクリーニング
線維芽細胞からの成熟心筋細胞の誘導をレポーター系蛍光活性化細胞ソーティング(FACS)により定量的に分析できるアッセイ系を開発した(図1A)。これを達成するために、成熟した心筋細胞のみが緑色蛍光蛋白(GFP)を発現できるαMHCプロモーター駆動EGFP−IRES−ピューロマイシントランスジェニックマウス(αMHC−GFP)を発生させた(Gulick等、(1991)上出)。心線維芽細胞を包含する他の細胞型ではない心筋細胞のみがトランスジェニックマウス心臓においてGFPを発現したことが確認された。
FACSスクリーニングのために十分な心線維芽細胞を所有するために、GFP−心線維芽細胞を体外移植組織培養により新生仔αMHC−GFP心臓から取得した。線維芽細胞様細胞は2日後に体外移植組織から遊走し、そして1週間後にはコンフルエントとなった。遊走細胞はGFPを発現し無かったが、心線維芽細胞のマーカーであるThy1及びビメンチンは発現した(図1B)(Hudon-David等、(2007)J. Mol. Cell. Cardiol. 42:991; Ieda等、(2009)上出)。心筋細胞の夾雑を回避するために、細胞ストレーナーで細胞を濾過することにより心臓組織断片を除去し、FACSによりThy1+/GFP−細胞を単離した(図1C)。FACSのためのマーカーとしてのThy1を有する心線維芽細胞の純度は予めわかっている(Ieda等、(2009)上出)。これらの操作法を使用したところ、線維芽細胞培養物中に心筋細胞夾雑は観察されず、そして従来の線維芽細胞単離手法(Ieda等、(2009)上出)よりも2倍超多い数の心線維芽細胞が発生され得た。
潜在的心リプログラミング因子を選択するために、マイクロアレイ分析を用いることにより、胚齢で第12.5日において心線維芽細胞(CF)よりもマウス心筋細胞(CM)において高値の発現を呈していた転写因子及び後成的リモデリング因子を識別した(Ieda等、(2009)上出)。それらのうち、突然変異時に重度の発生性心欠陥および胚致死性を呈した13因子を選択した(表)。
表。マイクロアレイにより心線維芽細胞と比較して胚性心筋細胞においてアップレギュレートされた転写因子をそれらの倍数リッチ化と共に示す(n=3)。Mesp1発現は何れの細胞型においても検出されなかった。
心臓血管中胚葉特異的転写因子Mesp1は、アフリカツメガエルにおけるその心分化転換作用のため、同じく包含させた(David等、(2008)Nat. Cell Biol. 10:338)。心線維芽細胞において各遺伝子を効率的に発現するように個々のレトロウィルスを発生させた。
Thy1+/GFP−新生仔マウス心線維芽細胞を全14因子を発現するレトロウィルスの混合物を用いて、又はDsRedレトロウィルス(陰性対照)を用いて形質導入した(Hong等、(2009)上出)。DsRedレトロウィルス感染後一週間、又は如何なるウィルス感染も行わない培養一週間では心線維芽細胞中にGFP+細胞は観察されなかった。これとは対照的に、14因子全ての線維芽細胞中への形質導入は少数のGFP+細胞(1.7%)の発生をもたらし、一部の細胞における心リッチ化αMHC遺伝子の良好な活性化を示していた(図1D及びE)。
14因子のどれが心遺伝子発現のために重要であるかを調べるため、個々の因子を14のプールから連続して除去した。5因子(Baf60c、Hand2、Hopx、Hrt2、及びPitx2c)を欠いているプールは増大した量のGFP+細胞を生産し、それらが必須ではないことを示唆していた(図1D及びE)。着目すべきは、Gata4の除去によりGFP+細胞のパーセンテージが0.5%まで減少したのに対し、Pitx2cの除去は5%まで増大させた。9、6、及び5因子のプールから単一の因子の撤去を更に3ラウンド行ったところ、4因子(Gata4、Mef2c、Mesp1、及びTbx5)が心線維芽細胞からの効率的なGFP+細胞の誘導のために重要であることがわかった(図1F〜H)。これらの4因子の組み合わせはαMHC−GFPレポーターを20%超活性化させる線維芽細胞の数を劇的に増大させた(図1I)。
図1A〜I。心筋細胞誘導因子を得るためのスクリーニング(A)候補因子を試験するための方策の模式図。(B)αMHC−GFP心臓体外移植組織から遊走する線維芽細胞様細胞の形態及び特性化。位相差(左)、GFP(中央)、およびThy−1免疫染色(右)。差し込み図は高倍率画像。(C)筋細胞を除去するための細胞ストレーナー濾過の後のリプログラミングに関してThy−1+/GFP−細胞を体外移植組織培養からFACSソーティングした。(D)GFP+細胞に関するFACS分析のまとめ。14因子を用いたGFP+細胞誘導に対する作用又は14因子プールからの個々の因子の除去(n=3)。(E)GFP+細胞の分析に関するFACSプロット。GFP+細胞は14因子形質導入後一週間に分析した。14因子からのGata4の除去によりGFP+細胞の数は低減したが、Pitx2cの除去により増大した。(F〜H)9(F)、6(G)、又は5(H)因子のプールからの個々の因子の除去のGFP+細胞誘導に対する作用(各々の場合n=3)。(I)GFP+細胞は4因子Gata4、Mef2c、Mesp1、及びTbx5の組み合わせにより線維芽細胞から誘導された。代表的データを各パネルに示す。全てのデータは平均±SDで示す。PIはプロピジウムヨウ素。相対的対照と比較した場合、*はP<0.01、**はP<0.05。スケールバー、100μm。
Gata4、Mef2c、及びTbx5は心筋細胞誘導のために必要かつ十分である。
次に、分化心筋細胞の特異的筋節マーカーである心トロポニンT(cTnT)(Kattman等、(2006)上で)の発現を調べた。20%のGFP+細胞が4因子形質導入の1週間後にcTnTを発現したことがわかった。再度、形質導入において4因子プールからの個々の因子の除去したところ、cTnT発現にはMesp1は不可欠ではないことが解った(図2A及びB)。これとは対照的に、Mef2c又はTbx5の何れかを除去した場合cTnT+又はGFP+細胞は観察されなかった。Gata4の除去はGFP+細胞の数には有意に影響しなかったが、cTnT発現は完全に消失し、Gata4もまた必要であることが示唆された。2因子Mef2c及びTbx5の組み合わせはGFP発現は誘導したがcTnTは誘導しなかった。2因子の何れの他の組み合わせ及び単一の因子も、心線維芽細胞におけるGFPとcTnTの両方の発現を誘導しなかった(図2C)。これらのデータは、3因子Gata4、Mef2c、及びTbx5の組み合わせが心遺伝子発現の誘導のために必要かつ十分であることを示唆している。スクリーニングの結果を確認するために、心線維芽細胞を3因子(Gata4、Mef2c、及びTbx5)+心形成のためには必須であるが初回スクリーニングで排除されたNkx2−5で形質導入した。意外にも、Nkx2−5を付加すると心線維芽細胞におけるGFP及びcTnTの発現が劇的に阻害され、スクリーニング結果を裏付けていた(図2D)。
次に、免疫細胞化学分析を用いることにより他の心マーカーがGFP+細胞中で発現されたかどうかを調べた。3因子で形質導入された大部分のGFP+細胞は筋節性α−アクチニン(アクチニン)を発現し、そして良好に画定された筋節性構造を有していた(図2E及びF)。GFP+細胞は又、cTnT及びANF(心房ナトリウム排泄因子)も発現しており、GFP+細胞が数種の心筋細胞特異的マーカーを発現したことを示していた(図2F)。
図2A〜F。3転写因子の組み合わせが線維芽細胞における心遺伝子発現を誘導する。(A)α−MHC−GFP及び心トロポニンT(cTnT)の発現に関するFACS分析。GFP+及びcTnT+細胞誘導に対する4因子プールからの個々の因子の除去の作用。Gata4の除去はGFP+には影響しなかったが、cTnT発現は強力に阻害された。(B)(A)におけるGFP+細胞及びcTnT+細胞の定量的データ(n=3)。(C)GFP+及びcTnT+細胞誘導に対する3、2、及び1因子のプールの形質導入の作用(n=3)。(D)Nkx2−5は3(GMT;Gata4、Mef2c及びTbx5)因子で形質導入されたリプログラミングを阻害したことを示すFACSプロット。(E)GFP(緑)、アクチニン(赤)及びDAPI(青)に関する免疫蛍光染色。3因子Gata4、Mef2c及びTbx5の組み合わせは、形質導入後2週間で心線維芽細胞における豊富なGFP発現を誘導した。着目すべきは、GFP+細胞の大部分がアクチニンに関して陽性であった。(F)誘導心筋細胞は免疫細胞化学分析により数種の心マーカーを発現しており、明確な筋節組織化を伴っていた(アクチニン及びNppaは形質導入2週間後;cTnTは形質導入4週間後)。差し込み図は高倍率画像である。全てのデータは平均±SDで示す。*は相対的対照と比較してP<0.01。スケールバー、100μm。
誘導心筋細胞は心線維芽細胞から直接分化される。
次に、心臓をトリプシン消化し、プラスチックディッシュ上にプレーティングするという従来の線維芽細胞単離方法により新生仔心線維芽細胞を単離した(Ieda等、(2009)上出)。80%超の細胞がThy1を発現し、そしてThy1+/GFP−細胞をFACSで単離することにより心筋細胞夾雑を排除した(図3A)。以後GMTと称するGata4/Mef2c/Tbx5で形質導入された線維芽細胞は体外移植組織培養物から単離された線維芽細胞と同じレベルで1週間後にGFP、cTnT及びアクチニンを発現した(図3B及びC)。同様の結果が成熟心線維芽細胞へのGMTの導入時にも得られており、筋節様構造の完全な形成が観察された(図3D及びE)。
誘導心筋細胞が幹様細胞のサブ集団から生じているかどうかを調べるために、c−kit発現(Beltrami等、(2003)Cell 114:763; Wu等、(2006)Cell 127:1137)をThy1+/GFP−細胞において分析した。大部分のc−kit+細胞がThy1を同時発現していたが、15%のThy1+細胞がc−kitを発現した。
GFP−/Thy1+/c−kit+ 細胞及びGFP−/Thy1+/c−kit−細胞をFACSにより単離し、そして細胞の核集団を3因子で形質導入した。結果は、GFP−/Thy1+/c−kit−細胞からのほうがGFP−/Thy1+/c−kit+細胞からよりも心筋細胞が2〜3倍であることを示していた(図3F〜H)。これらの結果は誘導心筋細胞の大部分がc−kit陰性集団を起源とすることを示唆していた。
次に、分化した心筋細胞への心線維芽細胞のリプログラミングが直接の事象であるか、又は、線維芽細胞が更に分化する前に心先祖細胞の消長を経過するかどうかを検討した。これらの2つの可能性の間を区別するために、Isl1−CreマウスとR26R−EYFPマウスを交配する(Srinivas等、(2001)上出)ことにより得られたIsl1−YFPを用いた。Isl1は心分化の前に一過性に発現される早期心先祖マーカーである。線維芽細胞から発生した心筋細胞が心先祖状態を経由するとすれば、それら及 びそれらの子孫はYFPを永久的に発現するはずである(Laugwitz等、(2005)Nature 433:647)。Isl1−YFP−/Thy1+細胞をFACSによりIsl1−YFP心臓体外移植組織から単離し、そして細胞をGata4、Mef2c、及びTbx5で形質導入した。得られたcTnT+細胞はYFPを発現せず、誘導心筋細胞(iCM)は心先祖細胞に先ずリプログラミングされるわけではないことが示唆された。更に又、これらの結果は、iCMは新生仔心臓に存在する可能性がある心先祖細胞の希少な集団を起源としないことを示唆している(図3I及びJ)。
図3A〜J。誘導心筋細胞は分化心線維芽細胞を起源とし、そして直接リプログラミングされる(A)従来の単離方法により単離された心線維芽細胞。大部分の細胞はThy1陽性であり、そしてThy−1+/GFP−細胞を形質導入に関してFACSによりソーティングした。(B)3因子(GMT)による形質導入後1週間の(A)において単離された心線維芽細胞におけるGFP及びcTnT発現に関するFACS分析。(C)(A)を起源とする3因子誘導心筋細胞におけるGFP(緑)、アクチニン(赤)及びDAPI(青)に関する免疫蛍光染色。(D)成熟αMHC−GFP心臓から単離された心線維芽細胞を3因子で形質導入した。(E)(D)で示した成熟心線維芽細胞を起源とする誘導心筋細胞におけるGFP、アクチニン及びDAPIに関する免疫蛍光染色。(F)GFP−/Thy1+/c−kit+細胞及びGFP−/Thy1+/c−kit−細胞をFACSで単離し、そして3因子で形質導入した。(G)GFP−/Thy1+/c−kit−細胞は3因子形質導入によりGFP−/Thy1+/c−kit+細胞よりも多くGFP及びcTnTを発現した。(H)(G)におけるGFP+細胞及びcTnT+細胞の定量的データ(n=3)。(I)Isl1−YFP−/Thy1+細胞Isl1−YFP心体外移植組織からソーティングし、そして3因子で形質導入した。(J)Isl1−YFP−/Thy1+細胞から誘導したcTnT+細胞の殆どがEFP陰性であった。全てのデータは平均±SDで示す。*は相対的対照と比較してP<0.01。スケールバー、100μm。
誘導心筋細胞はグローバル遺伝子発現において新生仔心筋細胞に類似している。
心筋細胞誘導の経時的過程を分析した。GFP+細胞は誘導後3日で検出され、そして第10日の20%まで徐々に数が増大し、そして4週間後もなお存在していた(図4A)。重要な点は、GFP+細胞におけるcTnT+細胞のパーセンテージ及びcTnT発現の強度は経時的に有意に増大した(図4B及びC)。GFP+細胞をGMT形質導入後7、14及び28日目にソーティングし、そして候補遺伝子の発現を心線維芽細胞及び新生仔心筋細胞と比較した。心筋細胞特異的遺伝子Actc1(心α−アクチン)、Myh6(α−ミオシン重鎖)、Ryr2(ライアノジン受容体2)、及びGja1(コネキシン43)はGFP+細胞においては時間依存的態様において有意にアップレギュレートされたが、定量的RT−PCR(qPCR)では心線維芽細胞中に検出されなかった。線維芽細胞のマーカーであるCol1a2(コラーゲン1a2)は心筋細胞と同じレベルにまで第7日培養物に由来するGFP+細胞において劇的にダウンレギュレートされた。3種のトランスダクションされた遺伝子の発現は4週間後まで誘導心筋細胞において強力にアップレギュレートされ、それらがサイレント化されていないことを示唆していた(図4D)。これらのデータは3因子が心線維芽細胞から心筋細胞への直接の変換を急速かつ効率的に誘導したが、完全成熟化は緩徐な過程であったことを示している。
iCM、新生仔心筋細胞及び心線維芽細胞のグローバル遺伝子発現パターンをmRNAマイクロアレイ分析により比較した。GMT形質導入28日後にGFP+細胞及び GFP−細胞をソーティングした。グローバル遺伝子発現パターにおいて、誘導GFP+細胞は新生仔心筋細胞と全く同様であったが、GFP−細胞及び心線維芽細胞とは異なっていた。これらの結果はiCMが新生仔心筋細胞に高度に近似していることを示しており、リプログラミング事象がグローバル遺伝子発現を概して反映していることを示していた。
図4A〜D。誘導心筋細胞の遺伝子発現をグローバルにリプログラミングする(A)プレーティングした細胞の数と比較したGFP+細胞のパーセント(n=3)。GFP+細胞の数は各時点においてFACSソーティングにより計数した。(B)GFP+細胞におけるcTnT発現のFACS分析。着目すべき点として、cTnT+細胞の数及びcTnTの強度は両方とも経時的に増大した(n=3)。(C)(B)におけるcTnT強度の定量的データ(n=4)。(D)
qPCRで測定した場合の心線維芽細胞(CF)、誘導心筋細胞 (GFP+、形質導入後7日、14日、28日)及び新生仔心筋細胞(CM)におけるActc1、Myh6、Ryr2、Gja1、Col1a2及びTbx5mRNA発現(n=3)。
誘導心筋細胞は自発的収縮を呈する。
iCMが心筋細胞に特徴的な機能的特性を保有しているかどうかを調べるために、細胞内Ca2+流入を培養4週間後のiCMにおいて分析した。iCMの約30%が、新生仔心筋細胞の場合と同様の自発的Ca2+振動を示した(図5A)。Ca2+振動の周波数は細胞間で変動していた(図5B)。更に又、自発的Ca2+ 波がiCMにおいても新生仔心筋細胞と同様に観察された(図5C)。
特徴的なCa2+流入のほかに、iCMは培養4〜5週間後に自発的収縮活性を示した。拍動細胞における電気的活性の単細胞細胞外記録によれば、新生仔心筋細胞と同様の軌跡が明らかになった(図5D)(Yeung等、2001)。即ち、心線維芽細胞からiCMへのリプログラミングは遺伝子発現におけるグローバルな変化及び心筋細胞に特徴的な機能的特性を伴っていた。
図5A〜D。誘導心筋細胞は自発的Ca2+流入、電気的活性及び拍動を呈する(A)α−MHC−GFP+細胞は自発的Ca2+振動を示した。擬似色画像は細胞におけるRhod−3蛍光強度を示している。小型四角はCa2+計測領域を示しており、差込図は高倍率画像を示す(左パネル)。Rhod−3強度の軌跡(右パネル)は左パネルに相当する。矢印は左の画像に相当する時点を示す。(B)高周波Ca2+振動が誘導心筋細胞において観察された。矢印は左の画像に相当する時点を示す。(C)誘導心筋細胞において観察された自発的Ca2+波。Ca2+max及びminにおけるGFP及びRhod−3を示す。GFP+細胞は白点で示す。(D)単細胞細胞外電極により計測された電気的活性を自発収縮細胞が有していた。代表的なデータを各パネルに示す(n=10)。
心線維芽細胞はインビボの3因子形質導入により心筋細胞に変換する。
次に、Gata4+Mef2c+Tbx5(GMT)-形質導入心線維芽細胞がインビボで心筋細胞にリプログラミングされ得るかどうかを検討するために、
GFP−/Thy1+心線維芽細胞をウィルス形質導入後第1日に採取し、そしてそれらを非肥満糖尿病重度合併免疫不全(NOD−SCID)マウス心臓中に注射した。GMT感染細胞は形質導入後第1日にGFPを発現し無かった(図4A)。心線維芽細胞を3因子とDsRedレトロウィルスの混合物かDsRedレトロウィルス(陰性対象)の何れかに感染させることにより容易に蛍光で識別できるようにした。DsRedを感染させた心線維芽細胞はアクチニンやGFPを発現せず、心筋細胞変換が陰性対照では起こらなかったことが確認された(図6A及びB)。ウィルス感染後僅か1日で心臓に注射したにも関わらず、3因子(GMT)及びDsRedで形質導入した心線維芽細胞のサブセットは2週間以内にマウス心臓でGFPを発現した(図6B)。GFP+細胞はアクチニンを発現し、そして明確な筋節様構造を有していた(図6C)。これらの結果はGata4、Mef2c、及びTbx5がインビボで2週間以内に心線維芽細胞を心筋細胞に変換するために十分であったことを示唆している。
図6A〜C。心線維芽細胞はインビボで心筋細胞にリプログラミングされることができる。(A)DsRed感染心線維芽細胞(DsRed−細胞)を感染1日後にNOD−SCIDマウス心臓に移植し、そして2週間後に免疫細胞化学分析により心臓切片を分析した。DsRedとマークされた移植線維芽細胞はアクチニン(緑)を発現しなかった。(B)DsRed又はGata4/Mef2c/Tbx5+DsRed(3F/DsRed−細胞)を感染させた心線維芽細胞を感染1日後にNOD−SCIDマウス心臓に移植した。着目すべき点は、3F/DsRed細胞のサブセット(赤)がα−MHC−GFP(緑)を発現したことであった。データは移植後2週間に分析した。(C)Gata4/Mef2c/Tbx5形質導入心線維芽細胞(3F−細胞)をマウス心臓に移植した。誘導GFP+細胞のサブセットがアクチニン(赤)を発現し、そして筋節性構造を有していた 。差し込み図は高倍率画像である(矢印)。データは移植2週間後に分析した。代表的データを各パネルに示す(各群n=4)。スケールバー、100μm。
機能的心筋細胞への心線維芽細胞の直接リプログラミング
本質的に実施例1に記載した方法を用いながら、外因性のGata4、Tbx5、及びMef2cをマウス生後尾部先端線維芽細胞中に導入した。生後尾部先端線維芽細胞の約20〜30%が、Gata4、Tbx5、及びMef2c(ここでGata4、Tbx5、及びMef2cはGMTと総称する)の導入後にミオシン重鎖−GFP+細胞(心筋細胞)にリプログラミングされた。
ネズミ心線維芽細胞から心筋細胞へのインビボのリプログラミング
材料及び方法レトロウィルス発生、濃度及び滴定。レトロウィルスは実施例1に記載する通り発生させた。Gata4、Mef2c、 Tbx5、及びdsRedのコーディング領域を含有している@MXsレトロウィルスベクターをFugene6(Roche)を用いてPlat−E細胞中にトランスフェクトすることによりウィルスを発生させた。超高力価ウィルス(ml当たり>1x1010プラーク形成単位(p.f.u))を標準的超遠心分離により得た。Retro−X qRT−PCR滴定キット(Clontech)を用いてレトロウィルス滴定を実施した。
動物、外科的処置、心エコー検査及び心電図検査。Postn−Cre;R26R−lacZマウスはペリオスチン−Creマウス(Snider等、(2009)Circulation Res.105:934)とRosa26−lacZマウス(Soriano (1999)Nat.Genet.21:70)を交配させることにより得た。Postn−Cre;R26R−EYFPマウスはペリオスチン−CreマウスとRosa26−EYFPマウス(Srinivas等、(2001)上出)を交配させることにより得た。全ての外科的処置及びその後の分析は遺伝子型及び介入に関して盲検としながら実施した。心筋梗塞(MI)を文献記載の通り(Qian等、(2011)J. Exp. Med. 208:549)左前下行動脈(LAD)の永久結紮により誘導した。濃縮ウィルス(GMT(Gata−4、Mef2c、Tbx5);又はGMTR(GMT+DsRed))のプールを混合し、そして冠動脈閉鎖の後、10μlの混合ウィルス+10μlのPBS又は40ng/μlのチモシンβ4を梗塞領域と境界領域(蒼白化した梗塞領域に基づく)の間の境界に沿って注射した。マウス心エコー検査及び表面心電図検査を文献記載の通り実施した(Qian等、(2011)上出)。
免疫組織化学検査及び免疫細胞化学検査。免疫組織化学検査及び免疫細胞化学分析を文献記載の通り実施した(Qian等、(2011)上出)。瘢痕の大きさはMasson−Trichrome染色(Bock-Marquette等、(2004)Nature 432:466; and Qian等、(2011)上出)により測定した。危険面積(AAR)及び心筋梗塞サイズはエバンスブルー/塩化トリフェニルテトラゾリウム標識法により測定した(Kurrelmeyer等、(2000)Proc. Natl. Acad. Sci. USA 97:5456)。
成熟心筋細胞の単離、単細胞パッチクランプ、及び心線維芽細胞遊走アッセイ。成熟心筋細胞の単離は若干の変更を加えながら文献記載のとおり実施した(Xu等、(1999)J. Gen. Physiol. 113:661)。単細胞パッチクランプ記録は文献記載の通り実施した(Knollmann等、(2003)Circulation Res. 92:428; Le Guennec等、(1994)J. Physiol. 478 Pt 3:493; Spencer等、(2003)Am. J. Physiol. Heart Circ. Physiol. 285:H2552)。遊走試験は公開されている体外移植組織培養プロトコル (実施例1; Bock-Marquette等、(2004)上出;及びAndersen等、(2009)上出)に従って実施した。要すれば、単離された成熟マウス心臓を大きさ1mm3未満の小片にまで粉砕した。体外移植組織は、ゼラチンコーティングディッシュ上にプレーティングし、そして線維芽細胞が粉砕組織から遊走するまで体外移植組織培地(IMDM/20%FBS)中で培養した。遊走線維芽細胞を伴って10個の心臓片が観察された日数を記録した。
FACS及び定量的RT−PCR。マウス心臓から解離した心細胞を室温で30分間APCコンジュゲート抗Thy1抗体(eBioscience)で染色した。2回PBSで洗浄した後、染色された細胞をFACSAria2(BD)でソーティングした。RNAはTRizol法(Invitrogen)により抽出した。RT−PCRはSuperscriptIII第1鎖合成システム(Invitrogen)を用いながら実施した。qPCRは製造元のプロトコルに応じて、ABI7900HT(TaqMan,Applied Biosystems)を用いながら実施した。Taqman Gene Expression Arrayの最適化プライマーを使用した。
統計処理。群間の差は不対スチューデントt検定又はANOVAを用いて統計学的有意性に関して調べた。p<0.05を有意と見なした。
結果
実施例1は3つの転写因子Gata4、Mef2c、及びTbx5(GMT)の発現時のインビトロの心筋細胞様細胞中への線維芽細胞の直接リプログラミングを説明している。iPS細胞へのリプログラミングにおいて観察されている通り、インビトロで拍動心筋細胞に完全にリプログラミングされた線維芽細胞のパーセンテージは小さかったが、遥かに多くが部分的にリプログラミングされ、追加的刺激により完全に多能性となる潜在力を有するプレiPS細胞とかなり類似していた。心線維芽細胞はそのネイティブの環境においてより完全にインビボでリプログラミングされる可能性があり、これが生存、成熟及び近隣細胞とのカップリングを促進すると考えられた。それが正しい場合、心線維芽細胞の膨大な内因性プールは再生治療のための新しい心筋細胞の潜在的発生源として機能すると考えられる。
インビボで高レベルのGMTを効率的に送達するために、レトロウィルスシステムを用いることにより、2ヶ月齢の雄性マウスの心臓中にマーカーとしてGMT又はdsRedを発現させた。各転写因子及びdsRed対照を発現する超高力価レトロウィルス(〜1010コピー/ml)10μlを混合物として心筋壁中に注射した。レトロウィルス注射の二日後、注射領域を横断する切片を作成し、dsRed、心筋細胞マーカー、α−アクチン、及び線維芽細胞集団においてリッチ化されるビメンチンに関して同時染色した。心線維芽細胞に対して何れのマーカーも完全に特異的ではないが、線維芽細胞はビメンチン及び表面マーカーThy1及びDDR2の発現により特徴付けられている(Ieda等、(2009)上出)。ベースラインにおいて、dsRedも発現する何れかのα−アクチニン又はビメンチン陽性の細胞を検出することは困難であり、最小限のウィルス取り込みを示唆していた。このことは、レトロウィルスは活動的に分裂している細胞に感染するのみであるという観察結果と合致している(Byun等、(2000)J. Gene Med. 2:2)。
心筋細胞とは異なり胚性の起源を有する線維芽細胞は心筋梗塞(MI)のような心傷害の後に活性化し、そして傷害部位に遊走し、そして増殖する。心傷害は冠動脈結紮及び梗塞領域に接する心筋中への注射dsRedレトロウィルスにより誘導した。dsRedとα−アクチニンを同時発現している細胞はなお検出不能であったが、同様にdsRed陽性である多くのビメンチン陽性細胞が観察された(図7A)。ウィルスを取り込んだ心臓細胞のパーセンテージを定量するために、蛍光活性化細胞ソーティング(FACS)を用いながら傷害後2日に注射心臓の梗塞/境界領域から解離した細胞を分析した。線維芽細胞でリッチ化される表面マーカーであるThy1で染色された細胞は外科処置により増大し、心線維芽細胞の良好な活性化を示唆していた(図7B)。希少なdsRed+Thy1+細胞は擬似処置されたマウスからFACSにより検出されたが;MIを有するマウスの梗塞/境界領域に由来する細胞の4.2%がdsRed+Thy1+であり、傷害字の心線維芽細胞へのウィルスの良好な送達を示唆していた(図7C)。これと合致して、dsRed+Thy1+ソーティング細胞は定量的PCR(qPCR)によればdsRed−Thy1+細胞よりも60倍高値のレベルのGata4、Mef2c、及びTbx5を発現した(図7D)。
非筋細胞プールからの心筋細胞変換がインビボで起こっていたかどうかを調べるために、直系追跡実験を用いることにより推定誘導心筋細胞の起源を追尾した。心線維芽細胞を線維芽細胞リッチ化遺伝子ペリオスチンのプロモーター下にCre−リコンビナーゼを発現するマウス系統で遺伝子標識した(Snider等、(2009)supra; and Snider等、(2008)Circulation Res. 102:752)。
ペリオスチン発現細胞及び全てのそれらの子孫においてβ−ガラクトシダーゼの活性化をもたらすR26R−lacZレポーター系等と異種交配(Soriano等、(1999)上出)した場合(図7E)、報告されている通り心線維芽細胞の大部分及び一部の心膜内及び内皮細胞においてβ−ガラクトシダーゼ活性が観察された(Snider等、(2009)supra; Snider等、(2008)supra; and Takeda等、(2010)J. Clin. Invest. 120:254)。最も重要な点は、β−ガラクトシダーゼ活性は冠動脈結紮による傷害の後であっても如何なる心筋細胞でも検出されず、報告と一致していた(図7F)(Snider等、(2009)supra; Snider等、(2008)supra; and Takeda等、(2010)上出)。しかしながら、MI及びGMTのレトロウィルス送達の4週間後には、α−アクチニン+でもある多くのβ−ガラクトシダーゼ+細胞が心臓の傷害領域で観察され、それらがかつてペリオスチンを発現した細胞の子孫である場合があることを示唆していた(図7G)。これらの細胞は十分形成された筋節であり、そしてβ−ガラクトシダーゼ−筋細胞と同様の形状を有していた(図7G)。
図7A〜G。遺伝子直径追跡は、心筋細胞様細胞への心線維芽細胞のインビボのリプログラミングを明らかにする。a:MI2日後、ビメンチン+細胞(緑)中へのdsRed対照ウィルス(赤)の組み込みはあるが、αアクチニン+細胞(青)へは無いことを示す心臓に対する免疫蛍光染色の共焦点顕微鏡画像。矢印はdsRed+ビメンチン+細胞(黄)を指し、そのうち2つは高倍率下にスキャンされ、そして右の3パネルに示されており、下部ではマージした画像となっている。b:擬似処置又は心筋梗塞(MI)の2日後の心臓から得られたThy−1陽性細胞のFACS分析による定量。n=3、*p<0.05。c:擬似処置又はMIマウスのThy−1+dsRed+細胞のFACS分析、定量(左)及び代表的FACSプロット(右)。n=3、*p<0.05。d:
GMTR(Gata4、Mef2c、Tbx5及びdsRed)をMI後心臓に注射した2日後にソーティングしたThy−1+dsRed−細胞と比較した場合のThy−1+dsRed+細胞におけるGata4、Mef2c及びTbx5のqPCT。技術的4連によるn=3。e: Postn−Cre;R26R−lacZ細胞からリプログラミングされた心筋様細胞を直径追跡するための遺伝子消長マッピング方法を示す模式的ダイアグラム。f:擬似処置又はMIの4週間後のPostn−Cre;R26R−lacZマウス心臓切片に対するαアクチニン(緑)、βGal(赤)、及びDAPI(青)に関する免疫蛍光染色。着目すべきは、MI後であってもαアクチニン+βGal+の二重陽性細胞が存在しない点である。g: MIの4週間後のマウスの境界領域から得られたdsRed−又はGMT注射Postn−Cre;R26R−lacZ心臓切片に対するαアクチニン(緑)、βGal(赤)、及びDAPI(青)に関する免疫蛍光染色。最下部のパネルは中央パネルの囲み領域の拡大図である。
β−ガラクトシダーゼ+α−アクチニン+細胞がリプログラミングされている程度及びスペクトルを求めた。心臓切片の厚みが原因となって重複した細胞から生じる擬陽性シグナルの可能性を回避するために、成熟心筋細胞は、冠動脈結紮及びGMT又はdsRed対照注射の4週間後のペリオスチン−Cre;R26R−lacZ心臓の梗塞/境界領域から単細胞において単離された。
dsRed注射心臓から単離された心筋細胞の何れも、免疫染色によれば、β−ガラクトシダーゼ+ではなく(図8A、n=6動物、4〜6スライド/動物); ペリオスチン−Cre;R26R−EYFPマウスから単離された同様の細胞は可視化した数千の細胞のうちYFP+心筋細胞を示さなかった。これとは対照的に、境界/梗塞領域から得られた心筋細胞のプレパレーション中で単離された細胞の35%はGMT注射後にβ−ガラクトシダーゼ+であった(図8B及び8C)。β−ガラクトシダーゼ+細胞のうち、98%がα−アクチニン+であった。β−ガラクトシダーゼ+細胞が心筋細胞におおてペリオスチン−Creの漏出性の発現又はCreの異所性の活性化を呈する可能性を調べるために、GMTレトロを取り込む非筋細胞に関するマーカーを与えるGMT及びdsRed(GMTR)に関するプールされたレトロウィルスを心臓に同時注射した。β−ガラクトシダーゼ+細胞はdsRedに関しても陽性であることがわかり、それらが非心筋細胞起源であることと合致して、それらがウィルスに感染していることが示された(図8D〜G)。
形態学的には、β−ガラクトシダーゼ+細胞の大部分は棒型形状の外観を伴った大型であり、そして二核化しており、同じ単離から得られたβ−ガラクトシダーゼ陰性である内因性心筋細胞に酷似していた(図8D〜G)。その後の分析により、α−アクチニン(図8H)のほかに、β−ガラクトシダーゼ+細胞は多数の筋節マーカー、例えばトロポミオシン(図8I)、心筋重鎖(MHC)(図8J)及び心トロポニンT(cTnT)(図8K)を発現していたことがわかった。細胞の〜50%に相当する細胞全体に渡ってほぼ正常な筋節構造を示した細胞の例を示す(図8H〜K)。細胞はビメンチン、平滑筋α−アクチン、又はSM22を発現しておらず、細胞がもはや心線維芽細胞ではなく、又、それらは筋線維芽細胞や血管平滑筋とならなかったことが示唆された。簡便のために、 β−ガラクトシダーゼ+α−アクチニン+心筋細胞様細胞は、少なくとも区別可能な形態、遺伝子発現及び筋節構造に基づいて、インビボ誘導心筋細胞(iCM)と称する。
内因性心筋細胞との細胞−細胞連絡に関与する蛋白をiCMが発現したかどうかを調べるために、心筋層中の介在板に位置する細胞表面Ca2+依存性接着分子であるN−カドヘリンの発現のレベル及びパターンを調べた。iCMの90%超がN−カドヘリンを発現し;61%が細胞境界において局在したN−カドヘリンを有し;そして5%が内因性心筋細胞局在化に完全類似していた(図8L)。心室全体に渡って細胞の電気的カップリング及び筋細胞の同調収縮を促進する心臓における主要なギャップジャンクション蛋白であるコネキシン43(Cx43)の発現もまた調べた。iCMの約90%がCx43を発現し、これらの半数が内因性心筋細胞と同様の高いレベル及びパターンにおいてCx43を発現しており、細胞境界局在化を伴っており(図8M);4%においては、Cx43は内因性心筋細胞のものとはほぼ区別できないパターンにおいて局在していた(図8M)。
iCMが成熟心筋細胞の典型的電気生理学的特性を保有しているかどうかを調べるために、細胞内電気記録を標準的なパッチクランプ手法により実施した。GMTで形質導入されたペリオスチン−Cre;R26R−EYFPマウスの境界/梗塞領域に由来する心筋細胞の単細胞懸濁液からの読み取りにより、YFP+細胞(iCM)及びYFP−である内因性心筋細胞の活動電位を比較した(図8N;及び図9)。多くのリプログラミングされた細胞が生理学的休止期膜電位(−70mV以下)を有しており、そして刺激の非存在下では通常は静止性である成熟心室心筋細胞と同様の、電気刺激応答であるが休止期ではない収縮を呈した。変動する活動電位の形態が識別され(図8N;及び図9)、そして一部の自発的収縮細胞が観察されたが、これらは約−50mVの休止期電位を有していた。総括すれば、多くのインビボのリプログラミングされた心筋細胞はGMT導入4週間後には成熟心室心筋細胞に緊密に類似していたが、他のものは概して同様であり、培養物中の単細胞として評価した場合に分極亢進休止期電位を維持するそれらの能力において主に異なっていた。
図8A〜N。インビボの心リプログラミングの単細胞分析。a〜c:dsRed(a)又はGMT(b)注射後4週間のPostn−Cre;R26R−lacZ心臓の梗塞/境界領域に由来する単離された心筋細胞に対するβGal及びDAPIに関する免疫蛍光染色と(c)における定量。d〜g:MI(d)後4週間のGMTR−注射Postn−Cre;R26R−lacZ心臓から単離したCMの明視野像。当然ながら(e)はβGal陽性であり、そして(f、g)はdsRedで同時染色される。h〜k:GMT注射後4週間のPostn−Cre;R26R−lacZ心臓の梗塞/境界領域に由来する単離された心筋細胞に対するβGal及びDAPIにより共標識されたαアクチニン、トロポミオシン、心ミオシン重鎖(MHC)、及び心トロポニンT(cTnT)を包含する心マーカーに関する免疫蛍光染色。図は同じプレパレーションに由来する内因性心筋細部の隣の誘導心筋細胞の代表的例を示し、定量と試料サイズを伴う。箱内領域の高倍率画像は最右端のパネルに示す。l〜m:GMT注射後4週間のPostn−Cre;R26R−lacZ心臓の梗塞/境界領域に由来する単離された心筋細胞に対するβGal及びDAPIにより共標識されたN−カドヘリン又はコネキシン43に関する免疫蛍光染色。左側2パネルは定量及び試料サイズを伴った代表的画像であり;右側2パネルは同じプレパレーションに由来する内因性心筋細部の隣の最も良好にリプログラミングされた誘導心筋細胞の代表的例を示し、定量と試料サイズを伴う。箱内領域の高倍率画像はマージ図の隣に示す。n:MI後4週間のPostn−Cre;R26R−EYFP心臓から単離した多数の心筋細胞の細胞内電流クランプ記録。YFP+であったiCMは同じプレパレーションに由来するYFP−であった内因性心筋細部のものに類似した活動電位を示した。細胞はMI及びウィルス形質導入の8週間後のPostn−Cre;Rosa−EYFPマウスから単離した。
図9.追加的なインビボリプログラミングされたiCMに関する活動電位を示す細胞内記録(MI及びGata4、Mef2c、及びTbx5感染の8週間後のPostn−Cre;Rosa−EYFP心臓から単離したYFP+細胞)。
インビボリプログラミングされたiCMは収縮能力を有しており、そして生存内因性心筋細胞と電気的にカップリングする可能性があるため、内因性心線維芽細胞を筋細胞に変換することは、MI後の心機能の部分的回復と見なされるかどうかを調べた。全試験はレトロウィルス注射を含めて盲検状態としながら実施され、そして計測完了後にデコードされた。GMT又はdsRed単独を注射されたマウスにMIの1日前、及び3日後、及び1、4、8及び12週間後に一連の高解像度心エコー検査を実施した。エバンズブルー/TTC二重染色を用いながら、冠動脈結紮後48時間の危険面積(AAR)、及び心筋の梗塞サイズを検査した。GMT及びdsRed注射マウスはAAR及び梗塞サイズにおいて差が無く(図10A)、MI後初回心傷害の程度はGMT誘導により有意に影響されなかったことを示唆している。全マウスが冠動脈結紮後の左心室機能の低減を示していた(図11;及び図10B)。注射後8及び12週間において、各収縮により左心室から駆出される血液の画分(駆出率)及び左室内径短縮率はdsRedを注射された対照と比較してGMTを注射したマウスにおいて有意に改善していた(図11B;及び図10B〜D)。1回拍出量(各心拍により駆出される血液の容量)及び心拍出量は8週間後に改善し(図10C)、そして12週間後には正常に近づいた(図11A)。
新機能不全の分子リードアウトとして、qPCRを実施することにより、傷害領域におけるGMT注射及び対照の心臓からの心房ナトリウム排泄因子(ANF)、脳ナトリウム排泄ペプチド(BNP)及びテナシンC(Tnc)の発現レベルをモニタリングした。予測された通り、MI後に全てがアップレギュレートされたが、このアップレギュレーションは梗塞心臓におけるGMTの注射により減衰した(図11B)。MIによって増大したコラーゲン遺伝子の発現レベルはGMT注射により部分的に回復したこともわかった(図11C)。心機能の改善と合致して、GMT注射はMI後8週間でより小さい瘢痕サイズをもたらした(図11D)。ECGは対照dsRed注射と比較した場合にGMT注射による不整脈の証拠を示しておらず 、そして突然死したマウスは無かった。
図10A〜D。冠動脈結紮後のdsRed又はGMT注射心臓に関する危険面積(AAR)及び梗塞サイズの測定及び追加的心エコー検査データ。a:心筋梗塞(MI)48時間後のdsRed又はGMT注射心臓の代表的心臓から得た左心室の4点の連続薄片に対するエバンズブルーTCC染色の代表的な図。スケールバー:500μm。ヒストグラムは方法において記載したとおり、危険面積(AAR)及び梗塞サイズの盲検定量である。dsRed及びGMT注射MI心臓の間に統計学的な差は無かった。b〜c:左心室の左室内径短縮率(FS)、駆出率(EF)、1回拍出量(SV)及び心拍出量(CO)を、dsRed又はGMTを注射した心臓に対する高解像度心エコー検査図を用いて示す。MI後3日(b)及び8週間(c)のこれらの3パラメーターの変化を示す。d:心エコー検査の間の心拍数を各時点関して示したものであり、dsRedとGMTコホートの間に差が無いことがわかる。(b、c、d)における全エコーデータは盲検的態様において収集された。dsRedはn=9;GMTはn=10。*p<0.05。
図11A〜D。心リプログラミング因子のインビボ送達は心筋梗塞後の新機能を改善させる。a:左心室の左室内径短縮率(FS)、駆出率(EF)、1回拍出量(SV)、及び心拍出量(CO)を高解像度心エコー検査を用いて計測した。MIの前及び12週間後のこれらのパラメーターの変化を計算した。データは盲検的態様において収集した。dsRedはn=9; GMT(Gata4、Mef2c、Tbx5)はn=10。*p<0.05。b:MI及びdsRed又はGMTの注射の4週間後の境界領域から抽出されたRNAに対するANF(心房ナトリウム排泄因子)、BNP(脳ナトリウム排泄ペプチド)及びTnc(テナシンC)のqPCR。c:MI及びdsRed又はGMTの注射の4週間後の境界領域から抽出されたRNAに対するI型コラーゲンアルファ1(Col1a1)、I型コラーゲンアルファ2(Col1a2)、III型コラーゲンアルファ1(Col3a1)、エラスチン(Eln)のqPCR。(b)及び(c)のデータは、破線で示されたdsRed注射擬似処置マウスとの相対比較において示した。各遺伝子型に対して技術的4連によるn=3。d:
dsRed又はGMTを注射されたMI8週間後の心臓切片のMasson−Trichrome染色。スケールバー:500μm。瘢痕サイズの定量は盲検的態様において各心臓につき4切片中の瘢痕面積の計測により計算した。dsRedはn=8; GMTはn=9。*p<0.05.
GMTの送達はMI後の心臓修復に大きく影響したが、レトロウィルスに感染したThy1+細胞の数を増大させると更に大きい機能改善がもたらされると推定した。43アミノ酸のGアクチン単量体結合蛋白であるチモシンβ4は細胞遊走、心細胞生存を促進し、そして心外膜細胞を活性化することにより増殖性を高め、そして心線維芽細胞及び内皮細胞をより多く生じさせることができる。以前の報告によれば、チモシンβ4はMI後の新機能を改善し、そして瘢痕サイズを減少させる。心線維芽細胞遊走に対するチモシンβ4の作用を試験するために、心体外移植組織遊走アッセイを用いた。線維芽細胞が成人心体外移植組織から遊走するための平均の時間は約3週間であるが;チモシンβ4を用いれば、僅か2週間後に同等の線維芽細胞遊走が観察され、そしてMI後になおいっそう加速された(図12A)。同様に、ビメンチン+細胞の集団はMI後に増大し、そしてホスホヒストンH3で示されるとおり、チモシンβ4により更に増大した(図12B)。チモシンβ4による線維芽細胞の活性化と合致して、MIの状況下レトロウィルスに感染したThy1+(図12C)又はビメンチン+(図13A)細胞のパーセントは、チモシンβ4の心筋内注射時に二倍超となった(図12C)。チモシンβ4によるGMT発現レトロウィルスの向上した送達は、ペリオスチン−Cre;R26R−lacZ心臓の梗塞/境界領域から得られた単細胞心筋細胞培養物中において、全心筋細胞と比較した場合にβGal+iCMのパーセントの上昇をもたらした(51%vs35%、p<0.05)(図12D)。しかしながら、〜12%にとどまったインビボのリプログラミング効率(iCM/全GMTウィルス感染細胞)(図12D)やリプログラミングの程度(図13B)には変化は観察されなかった。
冠動脈結紮直後のチモシンβ4の注射は報告の通り新機能の機能的改善をもたらしている。チモシンβ4とGMTの同時注射は梗塞後8週間の駆出率及び心拍出量において更に機能的改善をもたらしている(図13E;及び図12C及び12D)。これと合致して、チモシンβ4とGMTの同時注射は、チモシンβ4又はGMT注射単独の何れと比較した場合も、両方の群で危険面積及び初期梗塞サイズが同様であった(図13E)にも関わらず、瘢痕サイズのより大きな減少をもたらした(図12F)。
図12A〜F。チモシンβ4は傷害時の心線維芽細胞を活性化させ、そしてインビボリプログラミングを増強する。a:Tβ4注射の存在下又は非存在下における擬似処置又はMI後の心臓に対して実施した心線維芽細胞遊走アッセイに関する定量。10検体の粉砕心臓組織が遊走線維芽細胞(「島」)により包囲される日数を3注射心臓から平均した。b:擬似処置、MI又はMI+Tβ4注射の48時間後の心臓切片に対するホスホヒストンH3(pH3、赤)、ビメンチン(緑)及びDAPI(青)に関する免疫蛍光染色。右側はpH3+ビメンチン+細胞に関する定量。各遺伝子型につきn=3。c:擬似処置、MI又はMI+Tβ4注射の2日後の心臓から得たThy−1+dsRed+細胞のFACS分析と定量(左)及び代表的FACSプロット(右)。n=3。d:上パネルはTβ4の存在下又は非存在下におけるMI及びGMT注射後4週間のPostn−Cre;R26R−lacZ心臓の梗塞/境界領域から得られた単離CMに対するβGal及びDAPIに関する免疫蛍光染色を示す。下パネルは同じ細胞の明視野図である。Tβ4の存在下又は非存在下におけるMI及びGMT注射後4週間の心臓の境界領域から得られた全CM又は全dsRed+細胞(ウィルス感染)と比較した場合のβGal+心筋(CM)様細胞の定量。n=3。e:左心室の駆出率(EF)及び心拍出量(CO)の変化を外科処置後8週間に高解像度心エコー検査を用いて測定した。dsRedはn=9;GMTはn=10;dsRed+Tβ4はn=10;GMT+Tβ4はn=8。f:dsRed(n=8)、GMT(n=9)、dsRed+Tβ4(n=7)又はGMT+Tβ4(n=8)注射の後のMI後8週間の多数の心臓切片から盲検的態様において瘢痕面積を計算した。心臓切片に対する代表的なMasson−Trichrome染色を示す。スケールバー:500μm。瘢痕サイズの定量は盲検的態様において瘢痕面積の計測により計算した。*p<0.05;**p<0.01。
図13A〜E。チモシンβ4は傷害時の心線維芽細胞を活性化し、そしてインビボリプログラミングを増強する。a:心筋梗塞(MI)後のチモシンβ4(Tβ4)注射の存在下又は非存在下の心臓におけるビメンチン+細胞中へのdsRed対照ウィルスの組み込みを示す共焦点顕微鏡画像。矢印はdsRed+ビメンチン+細胞を指す。b:Tβ4及びGMTを注射した心臓からの単細胞単離の後のiCM表現型の定量。c:MI後48時間のチモシンβ4及びdsRed又はGMTを同時注射した心臓の危険面積(AAR)及び梗塞サイズの盲検的定量。d:高解像度心エコー検査を用いた場合のMI後8週間の左心室の左室内径短縮率(FS)及び1回拍出量(SV)の変化。dsRedはn=9;GMTはn=10;dsRed+Tβ4はn=10;GMT+Tβ4はn=8。*p<0.05、**p<0.01。e:心拍数を心エコー検査中に計測したが、4群で差は無かった。(d、e)におけるエコーデータは盲検的態様において収集した。
上記した実験は常在の心線維芽細胞が心傷害時に、レトロウィルス媒介遺伝子転移を用いたGata4、Mef2c、及びTbx5の局所送達により、インビボで心筋細胞様細胞に変換され得ることを示している。インビトロの変換と比較して、インビボの心リプログラミングは同様の初期効率で起こった。リプログラミングされた細胞はより緊密に内因性心筋細胞と類似しており、そしてより完全にリプログラミングされた。
本発明はその特定の実施形態を参照しながら説明してきたが、本発明の真の精神及び範囲を逸脱することなく種々の変化を行ってよく等価物を置き換えてよいことは当業者の知る通りである。また、特定の状況、物質、組成物、プロセス、プロセス工程又は工程を本発明の目的、精神及び範囲に適合させるために多くの変更を行ってよい。全てそのような変更は添付請求項の範囲に含まれることを意図する。