図1〜図4は本発明の具体的な第1の実施の形態として車両の油圧パワーステアリング装置に適用される可変容量型ベーンポンプを示す図であって、図1はその断面図、図2は図1のA−A線に沿った断面図である。また、図3は図2の可変容量型ベーンポンプの油圧経路の概略を示していて、図4は図2のB−B線に沿った断面図を示している。
図1〜3に示すように、可変容量型ベーンポンプ1は、フロントボディ2とリアボディ3を突き合わせてなるポンプボディ4内の収容空間5にポンプ要素6を収容し、収容空間5を挿通する駆動軸7によってポンプ要素6を回転駆動することでポンプ作動を行うようになっている。そして、上記ポンプ作動によってポンプ要素6から吐出される作動油は、第2吐出通路30に導入されるとともに、この第2吐出通路30の途中に設けられたチャンバー室45を介して、ポンプボディ4内に設けられたコントロールバルブ32(圧力制御手段)や、ポンプボディ4外の例えばパワーステアリング装置44のような油圧利用機器に供給されることとなる。
ポンプ要素6は、駆動軸7に連結され、その駆動軸7によって回転駆動されるロータ8と、そのロータ8の外周側に、当該ロータ8に対する偏心量が変化する方向で揺動自在に設けられた略円環状のカムリング9と、そのカムリング9を内周側に収容し、収容空間5の外周円筒面に嵌着された略円環状のアダプタリング10と、収容空間5のうちフロントボディ2の内底面2aに配置された略円盤状のプレッシャプレート11とから主として構成されている。
アダプタリング10及びプレッシャプレート11は、位置決めピン12によってポンプボディ4に対して回転方向でそれぞれ位置決めされている。また、位置決めピン12の図2中反時計回り方向側、すなわち後述する第1流体圧室15側には、カムリング9の揺動支点として機能するとともに、カムリング9とアダプタリング10との間をシールするシール部材としても機能する板部材13が設けられている。
さらに、アダプタリング10の内周面のうち径方向で板部材13と対向する位置に当該アダプタリング10とカムリング9との間をシールするシール部材14が設けられていて、このシール部材14と板部材13とをもってカムリング9とアダプタリング10との間に一対の流体圧室15,16が隔成されている。つまり、カムリング9の径方向両側に第1流体圧室15及び第2流体圧室16がそれぞれ形成され、それら両流体圧室15,16間の圧力差によってカムリング9が揺動することで、カムリング9のロータ8に対する偏心量が増減するようになっている。なお、カムリング9は、リターンスプリング17によってロータ8との偏心量が最大となる方向に常時付勢されている。
ロータ8の外周部には、径方向に沿って切欠形成されたスロット18が周方向で等ピッチに複数設けられている。各スロット18には、略平板状のベーン19がロータ8の径方向で出没自在にそれぞれ収容され、これら各ベーン19をもってカムリング9とロータ8との間の環状の空間を周方向で仕切ることにより、複数のポンプ室20が形成されている。そして、ロータ8を駆動軸7によって図2中反時計回り方向に回転駆動することにより、各ポンプ室20がその容積を増減変化させながらそれぞれ周回移動してポンプ作動が行われることとなる。なお、各ベーン19は、各スロット18の内周側に形成された背圧室21に導入される作動油の圧力により、カムリング9の内周面に押し付けられるようになっている。
リアボディ3のうち収容空間5に臨む内側面3aには、ロータ8の回転に伴い各ポンプ室20の容積が漸次拡大する吸入領域に該当する部分に、周方向に沿う正面視略三日月状の第1吸入ポート22が切欠形成されている。そして、この第1吸入ポート22は、リアボディ3に穿設された吸入通路23に連通している。これにより、図示外のリザーバタンクに接続される吸入パイプ24を介して吸入通路23内に導入された作動油が、上記吸入領域におけるポンプ吸入作用によって各ポンプ室20に吸入されるようになっている。
また、プレッシャプレート11のうちロータ8と対向する面には、第1吸入ポート22と対向する位置に、その第1吸入ポート22と略同形状の第2吸入ポート25が切欠形成されている。そして、この第2吸入ポート25は、フロントボディ2に形成された還流通路26に連通している。この還流通路26は、フロントボディ2のうち駆動軸7との間をシールするシールリングが収容された凹部に連通していて、上記シールリングの余剰油が、上記吸入領域におけるポンプ吸入作用によって各ポンプ室20へ供給されることにより、上記余剰油の外部への漏出が防止されるようになっている。
さらに、プレッシャプレート11のうちロータ8と対向する面には、ロータ8の回転に伴って各ポンプ室20の容積が漸次縮小する吐出領域に該当する部分に、周方向に沿う正面視略三日月状の第1吐出ポート27が切欠形成されていて、この第1吐出ポート27は、フロントボディ2のうちプレッシャプレート11に対向する内底面2aに凹設された圧力室28を介して第1吐出通路29と第2吐出通路30とに連通している。なお、プレッシャプレート11は、圧力室28内の圧力をもってロータ8側へ押圧されている。また、リアボディ3の内側面3aのうち第1吐出ポート27と対向する位置に、その第1吐出ポート27と略同形状の第2吐出ポート31が切欠形成されている。このように第1,第2吸入ポート22,25及び第1,第2吐出ポート27,31をそれぞれ各ポンプ室20を挟んで軸方向に対称となるように設けることで、上記各ポンプ室20の軸方向両側の圧力バランスが保たれている。
コントロールバルブ32はフロントボディ2のうち上端側の内部であって、駆動軸7と直交する方向(図2の左右方向)に設けられている。このコントロールバルブ32は、フロントボディ2に図2中左側から右側に向けて穿設され、図2中左側の開口部をプラグ33によって閉塞した弁孔34と、その弁孔34内に軸方向で摺動自在に収容された略有底円筒状のスプール35と、そのスプール35をプラグ33側に向けて付勢するコントロールバルブスプリング36と、を備えた、いわゆるスプール弁である。
弁孔34内には、プラグ33とスプール35との間に形成されるとともに、第1吐出通路29と連通して、メータリングオリフィス37の上流側の圧力、すなわち圧力室28の圧力が導入される高圧室38と、コントロールバルブスプリング36を収容するとともに、第2吐出通路30と連通して、メータリングオリフィス37の下流側の圧力が導入される中圧室39と、スプール35の外周側に形成され、低圧通路40を介して吸入通路23からポンプ吸入圧が導入される低圧室41と、がそれぞれスプール35によって隔成されている。そして、中圧室39と高圧室38の圧力差に基づいてスプール35が軸方向に移動することになる。
具体的には、中圧室39と高圧室38との圧力差が比較的小さく、スプール35がプラグ33側に位置するときには、第1流体圧室15と弁孔34とを連通する連通路42が低圧室41に開口し、その低圧室41の比較的低い油圧が第1流体圧室15に導入される。一方で、中圧室39と高圧室38との圧力差が増大し、スプール35がコントロールバルブスプリング36の付勢力に打ち勝って軸方向に移動すると、低圧室41と第1流体圧室15との連通が漸次遮断され、高圧室38が連通路42を介して第1流体圧室15に連通することになる。これにより、高圧室38の比較的高い油圧が第1流体圧室15に導入される。つまり、第1流体圧室15には、低圧室41または高圧室38の油圧が選択的に導入されるようになっている。
そして、第2流体圧室16にはポンプ吸入圧が常時導入されるようになっていて、第1流体圧室15に低圧室41の油圧が導入されているときには、リターンスプリング17の付勢力をもってロータ8との偏心量が最大となる位置(図2中左側の位置)にカムリング9が位置し、ポンプ吐出量が最大となる。一方、第1流体圧室15に高圧室38の油圧が導入されると、その第1流体圧室15の圧力により、カムリング9がリターンスプリング17の付勢力に打ち勝って第2流体圧室16の容積を狭めるように揺動し、当該カムリング9とロータ8との偏心量が減少してポンプ吐出量が減少することとなる。
なお、スプール35の内部にはリリーフバルブ43が形成されている。このリリーフバルブ43は、中圧室39の圧力が所定以上になったとき、つまりパワーステアリング装置44側(負荷側)の圧力が所定以上になったときに開弁し、低圧室41及び低圧通路40を介して吸入通路23に作動油を還流させるようになっている。換言すれば、第2吐出通路30と吸入通路23との間の油圧経路をリリーフバルブ43によって開閉するようになっている。
ここで、先に述べたように第2吐出通路30の途中には、拡張室たるチャンバー室45が形成されていて、上記コントロールバルブ32の中圧室39やパワーステアリング装置44には、このチャンバー室45の下流圧が供給される。
以下、チャンバー室45の詳細について説明する。
図1〜4に示すように、チャンバー室45はフロントボディ2のうち反リアボディ3側の内部の縦方向(図1の上下方向)に設けられた第1チャンバー室46と、フロントボディ2とリアボディ3とに跨るかたちで、ポンプボディ4のうち上端側の内部の横方向(図1の左右方向)に設けられた第2チャンバー室47とから構成されていて、これら第1,第2チャンバー室46,47の流路断面積は共に上記第2吐出通路30のそれよりも大きく設定されている。また、先に述べたメータリングオリフィス37はこのチャンバー室45の上流側直前に形成されていて、当然のことながらその流路断面積は、第2吐出通路30のそれよりも小さく設定されている。
第1チャンバー室46は図1,4に示すように、略円柱状の空間であって、下端側からメータリングオリフィス37を介して第1吐出ポート27から吐出される作動油が導入される一方で、上端側から導入通路48を介して第2チャンバー室47に作動液を吐出する。また、この第1チャンバー室46は図1,3に示すように、胴部から連通路50及びこの連通路50に形成されたチョーク状の絞り部49を介してコントロールバルブ32の中圧室39に作動油を吐出する。このように、第2チャンバー室47及びコントロールバルブ32の中圧室39にはチャンバー室45のうち、第1チャンバー室46の下流圧が吐出されることとなる。
第2チャンバー室47は、駆動軸7方向に長い略U字形状の空間であって、先に述べたように、第1チャンバー室46から吐出される作動油を導入通路48を介して導入する一方で、排出口65に連通する排出通路51を介して図3に示す外部(パワーステアリング装置44)に作動油を吐出する。なお、排出口65には図示しないコネクタホースが接続されて、パワーステアリング装置44には排出口65から上記コネクタホースを介して作動油が供給される。
そして、これら導入通路48の第2チャンバー室47側の開口部48a及び排出通路51の第2チャンバー室47側の開口部51aは共にフロントボディ2の上端部のうち当該第2チャンバー室47の長手方向一方側(反リアボディ3側)に開口形成されていて、さらに、これら開口部48a,51a同士の間にはフロントボディ2の一部である隔壁52が介在している。
また、この第2チャンバー室47は、この隔壁52の長手方向の端面52aとそれに対向する第2チャンバー室47の内壁面とによって形成されたチャンバー室内連通路53の流路断面積がチョーク状に小さくなっているために、導入通路48側の第1室47aと排出通路51側の第2室47bとに区画されていて、当該第2チャンバー室47において、このチャンバー室内連通路53は絞り部(拡張室内絞り部)としての機能を有している。なお、図3,4から明らかなように導入通路48と排出通路51は共に第1チャンバー室46及び第2チャンバー室47よりも流路断面積が小さい。そのため、これら導入通路48と排出通路51も実質的に絞り部としての機能を有している。
さらに、図1,4に示すように、第2チャンバー室47のうちチャンバー室内連通路53を含むリアボディ3側の部位が吸入通路23の上端近傍部位とリアボディ3の一部である壁54を隔てて近接している。
ここで、この壁54は第2チャンバー室47側に凸となるように円弧状に湾曲していて、上記吸入通路23の上端近傍部位の周方向の一部を包囲するかたちになっている。
これは、第2チャンバー室47内、特にチョーク状のチャンバー室内連通路53の手前で高圧となり、チャンバー室内連通路53の内部で高速となる作動油によって壁54に発生する応力を壁54全体に分散させて、壁54の変形あるいは破損を防止するためである。
このように構成された可変容量型ベーンポンプ1によれば、先に述べたように、上記各ポンプ室20がその容積を増減変化させながらそれぞれ周回移動することでポンプ作動をするため、第2吐出通路に導入される作動油には不可避的に脈圧変動が伴うが、第2吐出通路30に拡張室たるチャンバー室45を形成していて、さらに、このチャンバー室45の上流側に絞り部たるメータリングオリフィス37を形成しているために、その脈圧変動を効果的に減衰させることができる。
つまり、第2吐出通路30に導入された作動油は、当然のことながらメータリングオリフィス37の手前で高圧となり、メータリングオリフィス37の通過後に低圧となることでその脈圧変動の変動幅は相対的に低減される。そして、メータリングオリフィス37を通過した作動油は、チャンバー室45における第1チャンバー室46の室内に広がって流れて、図3の矢印S1で示すように、それぞれの流れが第1チャンバー室46の内壁面と衝突し、不規則に指向方向を変えて互いに干渉・衝突を繰り返すことで上記脈圧変動を打ち消しながら第1チャンバー室46の全体に行き渡り、やがては導入通路48で合流することとなる。
このように、当該第1の実施の形態に係る可変容量型ベーンポンプ1によれば、脈圧変動を効果的に減衰させることができる。
この場合において、メータリングオリフィス37は第1チャンバー室46の直前に形成してあるために、メータリングオリフィス37の内部を高速で流れる作動油は、その勢いを維持したまま第1チャンバー室46の室内に噴出することとなる。これにより、上記作動油の流れS1同士の干渉・衝突が助長されて、脈圧変動の打ち消しによる減衰効果が一段と向上されている。
また、この可変容量型ベーンポンプ1の第2吐出通路30においては、第1チャンバー室46の下流側に第2チャンバー室47を設けてある。そして、この第2チャンバー室47は、先に述べたように隔壁52によって導入通路48側の第1室47aと、排出通路51側の第2室47bとに区画され、且つ、フロントボディ2とリアボディ3に跨って形成されたU字形状のものとなっている。
このように、第2チャンバー室47に導入される作動油の経路は、第2チャンバー室47b内で隔壁52によって強制的にUターンさせられるかたちになり、当該経路の長さはポンプボディ4の限られたスペースで可及的に長くなっている。そのため、当該第2チャンバー室47に導入されることとなる作動油の流れ同士の上記干渉・衝突がより多く繰り返されて、上記脈圧変動の打ち消しによる減衰効果がより一段と向上されている。
さらに、この第2チャンバー室47において、上記第1室47aと第2室47bとに連通するチャンバー室内連通路53及び、第1チャンバー室46と第1室47aとに連通する導入通路48は、実質的に絞り部として機能することから、先に述べたメータリングオリフィス37と同様に、脈圧変動の変動幅の低減効果と、図1,4に示す作動油の流れS2同士及びS3同士の干渉・衝突の助長効果を発揮している。これによってもまた、上記脈圧変動の打ち消しによる減衰効果が一段と向上されている。
このように、第2吐出通路30の途中には複数の拡張室として機能する部屋(第1チャンバー室46,第1室47a,第2室47b)が形成されていて、その上流側、且つ、直前にそれぞれ絞り部として機能する部位(メータリングオリフィス37,導入通路49,排出通路51)を設けたかたちになっているために、上記拡張室として機能する部屋それぞれに作動油が高速で噴出して、当該拡張室として機能する部屋が有する上記脈圧変動の打ち消し機能を最大限発揮させている。
なお、第2チャンバー室47の下流側に位置する排出通路51も絞り部としての機能を有しているため、第1,第2チャンバー室46,47を通過した作動油に対しても、上記脈圧変動の変動幅の低減効果の発揮が期待できる。
したがって、このように構成された可変容量型ベーンポンプ1によれば、上記作動油の脈圧変動を効果的に減衰させることができるため、外部の例えば、パワーステアリング装置44のような油圧利用機器に脈圧変動が抑えられた作動油を供給することができ、これらの油圧利用機器における作動油の脈圧変動に起因した異音の発生を抑止できる。
また、第1チャンバー室46で脈圧変動が減衰された作動油をこの第1チャンバー室46の下流側の中圧室39に供給することができることから、コントロールバルブ32において、中圧室39と高圧室38の圧力差に基づいて軸方向に移動するスプール35の挙動を安定させることができ、コントロールバルブ32の制御安定性を向上させることができる。
図5〜9は、本発明に係る可変容量型ベーンポンプの第2の実施の形態を示し、図5はその斜視図、図6は図5の背面図である。また、図7,8は図5の可変容量型ベーンポンプの油圧経路の概略を正面図及び右側面図にてそれぞれ示していて、図9は図5の外付けチャンバー62の断面図を示し、第1の実施の形態と共通する部分には同一符号を付してある。
この第2の実施の形態の可変容量型ベーンポンプ61は、ポンプボディ4の内部に空間を形成し、その空間をチャンバー室45(拡張室)とした第1の実施の形態の可変容量型ベーンポンプ1に対して、有底円筒状の容器をボディとする別部材(以下、外付けチャンバー62と称する。)をポンプボディ4の上部に設けて、その内部空間をチャンバー室63a(拡張室)として構成したものである。そのため、当該第2の実施の形態においても、チャンバー室45を除くポンプ要素6等ポンプボディ4の内部構造は第1の実施の形態と同一であり、第1の実施の形態と同一の構成には同一の符号を付して説明するものとする。
以下、この第2の実施の形態における油圧経路の概略と、外付けチャンバー62の詳細を図5〜9を用いて説明する。
図7,8に示す当該第2の実施の形態における第2吐出通路60は、第1の実施の形態と同様に、図1,3の第1吐出ポート27に連通していて、先に述べたポンプ作動によって作動油の吐出圧が図7〜9中の矢印S4に示すように、第2吐出通路60の下流側に接続される外付けチャンバー62に設けられた導入通路69を通じてチャンバー室63aに導入されることとなる。そして、チャンバー室63a内に導入された作動油は、外付けチャンバー62に設けられた排出通路70を通じて、再びポンプボディ4内へと戻され、フロントボディ2に形成された排出口65を介して図3に示した外部(パワーステアリング装置44)に吐出されることとなる。なお、外付けチャンバー62より還流された作動油の一部は第1の実施の形態と同様に図2,3に示したコントロールバルブ32の中圧室39に供給される。
図5〜9に示すように、外付けチャンバー62はフロントボディ2の上部に当該フロントボディ2と一体に形成された取付部66を介して、フロントボディ2のうち上端側の外部であって、駆動軸7と平行する方向(図8の左右方向)に設けられている。この外付けチャンバー62は、内部空間がチャンバー室63aとして機能することによってチャンバー室本体を構成する有底円筒状の本体部材63と、この本体部材63の開口部を一端側(図9の左側)の凸部64aにて閉塞するとともに、他端側(図9の右側)の凸部が上記取付部66の凹部と嵌合する中間部材64と、を備えている。そして、本体部材63に設けられたフランジ部と、中間部材64に設けられたフランジ部とがボルト67によって取付部66に共締め固定されている。また、中間部材64の一端側の凸部64aには周溝状の凹部68が形成されていて、この凹部68にはシールリングが嵌め込まれることにより本体部材63と中間部材64との間がシールされている。
その一方で、中間部材64は、その内部に第2吐出通路60のうちチャンバー室63aの上流側の通路に連通してチャンバー室63a内に作動液を導入する導入通路69と、第2吐出通路60のうちチャンバー室63aの下流側の通路に連通して作動液を当該チャンバー室63から排出する排出通路70とが穿設されていて、これら導入通路69の開口部69aと排出通路70の開口部70aとが共にチャンバー室63aの反底部63b側に位置する長手方向一方側に開口形成されるかたちになっている。
さらに、導入通路69側の開口部69aは、図9に示すように、第2吐出通路60における導入通路69の他の部位よりもその流路断面積が小さい絞り部となっている。なお、この絞り部としての開口部69aはその上流側と下流側の差圧を測定するメータリングオリフィスでもある。
したがって、当該第2の実施の形態においても先に述べた第1の実施の形態と同様に、第2吐出通路60の途中にチャンバー室63aが形成されていて、このチャンバー室63aの上流側直前に絞り部たる開口部69aが形成された構成となっている。そのため、この第2の実施の形態においても、第1の実施の形態と同様の作用効果を奏せられ、脈圧変動を効果的に減衰させることができる。
この場合において、先に述べたように、内部にチャンバー室63aを備える外付けチャンバー62の本体部材62は有底円筒形状であって、作動液を当該チャンバー室63aに導入する導入通路69の開口部69aと、作動液を当該チャンバー室63aから排出する排出通路70の開口部70aとが共にこの外付けチャンバー62の本体部材63の反底部63b側に位置する長手方向一方側に開口形成されていることから、このチャンバー室63aに導入される作動油は、チャンバー室63a内に広がって流れて、それぞれの流れがチャンバー室63aの内周面に衝突し、不規則に指向方向を変えて互いに干渉や衝突を繰り返しながらも、全体としては図9中の矢印S5で示すようにチャンバー室63a内をUターンするかたちとなる。
このように、このチャンバー室63a内においても作動油の流路がチャンバー室63aの長手方向の長さよりも長くなることから、当該第2チャンバー室47に導入される作動油の流れ同士の干渉・衝突がより多く繰り返されて、脈圧変動の打ち消しによる減衰効果がより一段と向上されることとなる。
なお、このチャンバー室63aにおいても、第一の実施の形態における隔壁52(図4参照)のような仕切りを設けることによって上記流路を強制的にUターンさせるかたちにする構成としてもよい。
また、チャンバー室63aの内周面や底面に作動油が衝突することによってこの外付けチャンバー62の本体部材63には不規則に応力が発生することとなるが、当該本体部材63は有底円筒形状に形成され、上記応力を分散させやすい構造となっていることから、その耐久性の向上が図れる。
なお、この第2の実施の形態における可変容量型ベーンポンプ61によれば、チャンバー室63aがポンプボディ4とは別体の外付けチャンバー62内に形成されているために、例えば既存の可変容量型ベーンポンプに加工を施すことでチャンバー室63aを事後的に形成することや、チャンバー室63aを車両の要求に応じたレイアウトや大きさにすることもできることから、コストの面や省スペース化の面で第一の実施の形態のものよりも有利である。
ここで、上記各実施の形態から把握される技術的思想であって、特許請求の範囲に記載していないものを、その効果とともに以下に記載する。
(1)上記拡張室は、有底円筒形状の容器の内部空間であって、上記導入通路の開口部と上記排出通路の開口部とが共に上記有底円筒形状の容器の反底部側に開口形成されていることを特徴とする請求項2に記載の可変容量型ベーンポンプ。
このような技術的思想では、上記拡張室を備える容器は、容器の内壁と衝突しながら当該容器内を高速で流れることとなる作動油によって発生する応力に対して円筒形状に基づく耐性を備えることから、その破損が防止される。
(2)上記拡張室は、上記吐出領域から吐出される油を当該拡張室に導入する導入通路側の開口部と、当該拡張室に導入される油を排出する排出通路側の開口部とが、共に当該拡張室の長手方向一方側に開口形成されていて、さらに、上記拡張室は、上記導入通路側の開口部から導入されて、上記排出通路側の開口部までに至るまでの作動油の流路を当該拡張室内で強制的にUターンさせる隔壁を備えていることを特徴とする請求項1または3に記載の可変容量型ベーンポンプ。
このような技術的思想では、上記導入通路側の開口部から導入されて上記排出通路側の開口部から排出されるまでの作動油の流路を当該拡張室内でUターンさせるため、上記作動油の上記拡張室内での流路を長くすることができ、上記拡張室内に導入される作動油の流れ同士の干渉・衝突がより多く繰り返されることから、上記脈圧変動をより効果的に打ち消して、これによってもまた上記脈圧変動を効果的に減衰することができる。
(3)上記拡張室は、上記隔壁により上記導入通路側の第1室と上記排出通路側の第2室とに区画され、さらに、上記拡張室は、上記第1室と上記第2室との間に上記隔壁の長手方向の端部によって形成された拡張室内絞り部を有することを特徴とする上記(2)に記載の可変容量型ベーンポンプ。
このような技術的思想では、上記拡張室は、上記第1室と上記第2室との間に上記隔壁の長手方向の端部によって形成された拡張室内絞り部を有するため、少なくとも、上記第2室内に導入されることとなる作動油は高速で当該第2室内に噴出して、上記第2室内における作動油の流れ同士の干渉・衝突を助長することから、上記脈圧変動をより効果的に打ち消して、これによってもまた一段と上記脈圧変動を効果的に減衰することができる。
(4)上記圧力制御手段は、上記吐出領域から吐出される作動油の圧力によって作動するスプール弁によって構成されると共に、上記拡張室を通過した作動油が導入されて上記スプール弁を制御することを特徴とする請求項1または3に記載の可変容量型ベーンポンプ。
このような技術的思想では、圧力制御手段としてスプール弁を採用した場合には、上記拡張室を通過することにより脈圧変動が減衰した作動油が上記スプール弁を制御することとなるため、上記スプール弁の挙動が安定して、上記スプール弁による圧力制御の安定性が向上する。
(5)上記拡張室は、上記ポンプボディ内のうち、上記吸入通路と壁を隔てて近接形成されていて、この壁は、上記吸入通路の周方向の一部を包囲するように形成されていることを特徴とする請求項1または3に記載の可変容量型ベーンポンプ。
このような技術的思想では、上記拡張室をポンプボディ内であって上記吸入通路と壁を隔てて近接形成した場合であっても、上記壁が上記吸入通路の周方向の一部を包囲しているため、上記拡張室内を作動油が流れることによって発生する応力が上記壁の一部に集中することを防止でき、上記壁の変形あるいは破損を防止できる。
(6)上記拡張室よりも下流側に絞り部を更に設けたことを特徴とする請求項1または3に記載の可変容量型ベーンポンプ。
このような技術的思想では、上記拡張室を通過した作動油は、当該絞り部を通過することで更に低圧となるために、上記脈圧変動の変動幅の更なる低減効果が期待できる。