以下、本発明の実施の形態について、図を参照して詳細に説明する。以下に示す実施の形態においては、血圧情報測定装置として、最高血圧および最低血圧等の血圧値を測定することが可能に構成された上腕式の血圧計を例示して説明を行なう。なお、以下においては、同一のまたは共通する部分について図中同一の符号を付し、その説明は繰り返さない。
(実施の形態1)
図1は、本発明の実施の形態1における血圧計の外観構造を示す斜視図であり、図2は、機能ブロックの構成を示す図である。まず、これら図1および図2を参照して、本実施の形態における血圧計1Aの概略的な構成について説明する。
図1に示すように、本実施の形態における血圧計1Aは、本体10と、カフ40Aと、エア管50とを備えている。このうち、エア管50は、分離されて構成された本体10とカフ40Aとを接続しており、たとえば可撓性を有する樹脂製のチューブにて構成されている。
本体10は、箱状のケーシングを有しており、その上面に表示部21および操作部23を有している。本体10は、測定時においてテーブル等の載置面に載置されて使用されるものである。
カフ40Aは、被装着部位としての上腕に巻き付けが可能な帯状の形状を有しており、外装カバー41によって覆われている。カフ40Aは、測定時において上腕に装着されて使用されるものであり、上腕に巻き付けられた装着状態において環状の形態をとる。カフ40Aの内部には、上腕を圧迫するための流体袋としての空気袋42が設けられている。
図2に示すように、本体10は、上述した表示部21および操作部23に加え、制御部20と、メモリ部22と、電源部24と、圧力センサ31と、ポンプ32と、切替弁33と、発振回路34と、ポンプ駆動回路35と、切替弁駆動回路36とを有している。このうち、ポンプ32および切替弁33は、上述した空気袋42の内部の空間を加減圧するための加減圧機構に相当する。
空気袋42は、上述したエア管50を介して圧力センサ31、ポンプ32および切替弁33のそれぞれに接続されている。これにより、空気袋42は、ポンプ32および切替弁33の駆動が制御されることで、加圧されて膨張したり、その内圧が維持されたり、減圧されて収縮したりすることになり、またその際に、空気袋42の内部の圧力(以下、カフ圧とも称する)が、圧力センサ31によって検出されることになる。
制御部20は、たとえばCPU(Central Processing Unit)にて構成され、血圧計1Aの全体を制御するための手段である。メモリ部22は、たとえばROM(Read-Only Memory)やRAM(Random-Access Memory)にて構成され、後述する事前動作および測定動作のための処理手順を制御部20等に実行させるためのプログラムを記憶したり、測定結果等を記憶したりするための手段である。
表示部21は、たとえばLCD(Liquid Crystal Display)にて構成され、測定結果等を表示するための手段である。操作部23は、被験者等による操作を受付けてこの外部からの命令を制御部20に入力するための手段である。電源部24は、制御部20に電力を供給するための手段である。
制御部20は、ポンプ32および切替弁33を駆動するための制御信号をポンプ駆動回路35および切替弁駆動回路36にそれぞれ入力することでポンプ32および切替弁33の動作を制御したり、測定結果としての血圧値を表示部21やメモリ部22に入力したりする。また、制御部20は、圧力センサ31によって検出された圧力値に基づいて被験者の血圧値を算出する血圧情報算出部としての血圧値算出部(不図示)を含んでおり、この血圧値算出部によって算出された血圧値が、測定結果として上述したメモリ部22や表示部21に入力される。
なお、血圧計1Aは、測定結果としての血圧値を外部の機器(たとえばPC(Personal Computer)やプリンタ等)に出力する出力部を別途有していてもよい。出力部としては、たとえばシリアル通信回線用の通信部や無線通信用の通信部、各種の記録媒体への書き込み装置等が利用可能である。
ポンプ駆動回路35は、制御部20から入力された制御信号に基づいてポンプ32の動作を制御する。ポンプ32は、空気袋42の内部の空間に空気を注入することにより空気袋42を加圧するものであり、その動作が上述したポンプ駆動回路35によって制御される。
切替弁駆動回路36は、制御部20から入力された制御信号に基づいて切替弁33の開閉動作を制御する。切替弁33は、空気袋42の内部の空間を外部に対して開放させた開放状態および空気袋42の内部の空間を外部に対して閉鎖させた閉鎖状態のいずれかとなるように切り替えることにより、空気袋42の内圧を維持したり、空気袋42を減圧したりするものであり、その動作が上述した切替弁駆動回路36によって制御される。なお、切替弁33として流量制御弁を使用した場合には、開放状態において切替弁33の開度を調節することにより、空気袋42から排出される排気量を調整して減圧速度を可変に制御することも可能になる。
圧力センサ31は、空気袋42の内部の空間の圧力を検出する圧力検出部に相当し、カフ圧に応じてその静電容量が変化する静電容量型のセンサにて構成される。発振回路34は、圧力センサ31の静電容量に応じた発振周波数の信号を生成し、生成した信号を制御部20に入力する。
図3は、本実施の形態における血圧計のカフの模式断面図であり、図4は、当該血圧計に具備された空気袋とポンプおよび切替弁との接続態様を示す概略図である。次に、上述した図1と、これら図3および図4とを参照して、本実施の形態における血圧計1Aに具備されたエア系コンポーネントの構成についてより詳細に説明する。
図3に示すように、カフ40Aは、上述した外装カバー41および空気袋42に加え、カーラ44をさらに備えている。空気袋42およびカーラ44は、いずれも外装カバー41の内部の空間に収容されており、装着状態においてカーラ44が空気袋42よりも径方向外側に位置するように積層されて配置されている。
図1および図3に示すように、外装カバー41は、平面視略矩形状の帯状かつ袋状の形状を有しており、装着状態において径方向内側に位置して上腕の表面に接触することとなる内側カバー部41aと、装着状態において径方向外側に位置することとなる外側カバー部41bとを含んでいる。外装カバー41は、内側カバー部41aと外側カバー部41bとが重ね合わされてそれらの周縁が接合(たとえば縫合や溶着等)されることで袋状に形成されている。
外装カバー41のうち、内側カバー部41aとしては、空気袋42の膨張によって上腕に加えられる圧迫力が当該内側カバー部41aによって阻害されないように、十分に伸縮性に富んだ部材が好適に利用される。一方、外装カバー41のうち、外側カバー部41bとしては、空気袋42が径方向外側に向かって膨張することを抑制するために、内側カバー部41aに比して伸縮性に乏しい部材が利用される。このような観点から、外装カバー41としては、伸縮性の大小を比較的容易に調整することができるポリアミド、ポリエステル等の合成繊維からなる布地等が利用される。
図3および図4に示すように、空気袋42は、平面視略矩形状の形状を有しており、その上腕への巻き付け方向である長さ方向がカフ40Aの長手方向(すなわち図中に示すX方向)に沿って配置されることとなるように外装カバー41に内包されている。ここで、空気袋42は、外装カバー41の長手方向の一端部寄りの位置に偏在して配置されている。
空気袋42は、好適には樹脂シートを用いて形成された袋状の部材にて構成されている。空気袋42を構成する樹脂シートの材質としては、伸縮性に富んでおり内部の空間からの漏気がないものであればどのようなものでも利用可能である。このような観点から、樹脂シートの好適な材質としては、エチレン−酢酸ビニル共重合体、軟質塩化ビニル、ポリウレタン、ポリアミド等が挙げられる。
図3に示すように、カーラ44は、展開した状態において平面視略矩形状となる板状の部材にて構成されており、巻き回されることによって径方向に拡縮可能に構成された略円筒状の可撓性部材にて構成されている。カーラ44は、空気袋42の外周面を覆うべく、空気袋42に対応して外装カバー41の長手方向の上記一端部寄りの位置に偏在して配置されている。
カーラ44は、空気袋42の外周面に図示しない両面テープ等の接着部材を介して固定されており、自身の環状形態を維持することによって上腕に沿うように構成されている。このカーラ44は、被験者自身によってカフ40Aを上腕に装着し易くするためのものであるとともに、カフ40Aの上腕への装着状態において空気袋42を上腕側に向けて付勢するためのものである。なお、カーラ44は、十分な弾性力を発現するように、たとえばポリプロピレン等の樹脂部材にて形成される。
図1および図3に示すように、空気袋42が偏在された方の端部である外装カバー41の長手方向の上記一端部寄りの外周面には、面ファスナ46が設けられており、当該一端部とは反対側に位置する外装カバー41の他端部寄りの内周面には、面ファスナ47が設けられている。ここで、面ファスナ46は、たとえばフックファスナからなり、面ファスナ47は、たとえばループファスナからなる。
これら面ファスナ46,47は、外装カバー41が上腕に巻き付けられて当該外装カバー41の上記一端部寄りの部分と上記他端部寄りの部分とが上腕の表面上において重ね合わされることにより係止可能なものである。したがって、カフ40Aを上腕に巻き付けた状態において当該面ファスナ46,47を係止させることにより、装着状態において外装カバー41が上腕に対して固定されることになる。
図1、図3および図4に示すように、装着状態において径方向外側に位置することとなる空気袋42の外周面の所定位置には、単一のポート43が設けられている。ポート43には、上述したエア管50の一端が接続されており、当該エア管50の他端には、上述したように加減圧機構としてのポンプ32および切替弁33が接続されている。
これにより、測定動作時においては、ポンプ32および切替弁33の駆動が制御されることで、エア管50を介して空気袋42の内部の空間に空気が供給されることによって空気袋42が膨張することになるとともに、エア管50を介して空気袋42の内部の空間から空気が排出されることによって空気袋42が収縮することになる。
ここで、図4に示すように、ポート43は、空気袋42を当該空気袋42の厚み方向(図において紙面と直交する方向)に沿って見た場合に、空気袋42の長さ方向(図中に示すX方向)に沿った中央またはその近傍の位置であって、かつ空気袋42の長さ方向と直交する幅方向(図中に示すY方向)に沿った中央またはその近傍の位置(すなわち、空気袋42の中心部またはその近傍)に配設されている。このように構成すれば、加圧時において空気袋42の全域にわたって空気がより短時間で行き渡り易くなることになり、測定時間の短縮と上腕に対する均等な圧迫とが実現できることになる。
図5は、本実施の形態における血圧計の制御部の処理手順を示すフロー図である。次に、この図5を参照して、本実施の形態における血圧計1Aの制御部20の処理手順の概略について説明する。
血圧値を測定するに際しては、カフ40Aが予め被験者の上腕に巻き付けられて装着された状態とされる。この状態において、本体10に設けられた操作部23が操作されて血圧計1Aの電源がオンにされると、制御部20に対して電源部24から電力が供給されて制御部20が駆動する。
図5に示すように、制御部20は、その駆動後において、まず血圧計1Aの初期化を行なう(ステップS1)。初期化においては、制御部20は、切替弁33を制御することで、空気袋42の内部の空間を外部に対して開放させた開放状態とする。
次に、制御部20は、測定開始の指示を待ち、操作部23が操作されて測定開始の指示が入力されると、事前動作に移行する(ステップS2)。当該事前動作は、装着状態において空気袋42に生じている皺や空気袋42を構成する樹脂シート同士の密着を解消するために、空気袋42に空気を注入し、注入した空気を一旦空気袋42から外部に向けて実質的にすべて排出させる動作であるが、その詳細については後述することとする。
次に、事前動作が終了すると、制御部20は、測定動作に移行する(ステップS3)。当該測定動作は、空気袋42に空気を注入することで空気袋42を加圧し、その後、注入した空気を空気袋42から外部に向けて排出させることで空気袋を減圧し、その加圧過程または減圧過程のいずれかにおいてカフ圧を検出することで血圧値を算出する動作であるが、その詳細については後述することとする。
次に、測定動作が終了すると、制御部20は、測定結果としての血圧値を表示部21に表示するとともに、当該血圧値をメモリ部22に記録する(ステップS4)。
その後、制御部20は、電源オフの指令を待ち、操作部23が操作されて電源オフの指示が入力されると、制御部20に対する電源部24からの電力の供給が遮断されて一連の処理手順が終了する。
ここで、本実施の形態における血圧計1Aにおいては、上述した事前動作として、たとえば後述する事前動作1,2の2通りの動作が適用でき、上述した測定動作として、たとえば後述する測定動作1,2の2通りの動作が適用できる。そのため、代表的には、事前動作および測定動作の組み合わせとして合計4通りのものが存在することになるが、それらのいずれの組み合わせを採用することとしても構わない。以下においては、これら組み合わせのうちの幾つかについて例示することとし、その中で事前動作1,2および測定動作1,2の詳細について説明する。
<第1実施例>
本第1実施例は、事前動作1と測定動作1とを組み合わせた場合のものである。図6は、事前動作1における制御部の具体的な処理手順を示すフロー図であり、図7は、測定動作1における制御部の具体的な処理手順を示すフロー図である。また、図8は、図6に示す事前動作1と図7に示す測定動作1とを組み合わせた場合における、経時的なポンプおよび切替弁の動作ならびにカフ圧の変化を示す図である。
図6および図8に示すように、事前動作1においては、まず、制御部20は、ポンプ32および切替弁33の動作を制御することで、事前動作1の開始時点である時刻Tpsにおいて、空気袋42の内部の空間を外部に対して閉鎖させた閉鎖状態に切り替えるとともに、空気袋42の内部の空間への空気の注入を開始する(ステップS211)。これにより、空気袋42が加圧されることになり、カフ圧は、時刻Tpsにおける圧力である大気圧P0よりも高い圧力に向けて上昇し始める。
次に、制御部20は、事前動作1の終了時点である時刻Tpeよりも前の予め定めた第1所定時点である時刻T1に達したか否かを判断する(ステップS212)。ここで、制御部20は、当該時刻T1に達していないと判断した場合(ステップS212においてNOの場合)に、当該時刻T1に達するまで待機する。
次に、制御部20は、当該時刻T1に達したと判断した場合(ステップS212においてYESの場合)に、切替弁33の動作を制御することで、空気袋42の内部の空間を外部に対して開放させた開放状態に切り替える(ステップS213)。これにより、空気袋42が減圧されることになり、カフ圧は、時刻T1における圧力P1よりも低い圧力に向けて下降し始める。
次に、制御部20は、予め定めた事前動作1の終了時点である時刻Tpeに達したか否かを判断する(ステップS214)。ここで、制御部20は、当該時刻Tpeに達していないと判断した場合(ステップS214においてNOの場合)に、当該時刻Tpeに達するまで待機する。
そして、制御部20は、当該時刻Tpeに達したと判断した場合(ステップS214においてYESの場合)に、事前動作1を終了する。当該事前動作1を終了した時刻Tpeにおいては、カフ圧は、大気圧P0に復帰している。
一方、図7および図8に示すように、測定動作1においては、まず、制御部20は、ポンプ32および切替弁33の動作を制御することで、測定動作1の開始時点である時刻Tmsにおいて、空気袋42の内部の空間を外部に対して閉鎖させた閉鎖状態に切り替えるとともに、空気袋42の内部の空間への空気の注入を開始する(ステップS311)。これにより、空気袋42が加圧されることになり、カフ圧は、時刻Tmsにおける圧力である大気圧P0よりも高い圧力に向けて上昇し始める。
この空気袋42を加圧する過程において、制御部20は、公知の手順で最高血圧および最低血圧を算出する(ステップS312)。具体的には、制御部20は、空気袋42のカフ圧を上昇させる過程において発振回路34から得られる発振周波数よりカフ圧を取得し、取得したカフ圧に重畳した脈波情報を抽出する。そして、制御部20は、抽出された脈波情報に基づいて血圧値を算出する。なお、制御部20は、血圧値の算出が完了し、血圧値が決定するまでの間、当該状態を維持する(ステップS313においてNOの場合)。
血圧値の算出が完了し、血圧値が決定した場合(ステップS313においてYESの場合)には、制御部20は、測定動作1の終了時点である時刻Tmeにおいて、ポンプ32および切替弁33の動作を制御することで、空気袋42の内部の空間への空気の注入を停止するとともに、空気袋42の内部の空間を外部に対して開放させた開放状態に切り替える(ステップS314)。これにより、空気袋42が減圧されることになり、カフ圧は、時刻Tmeにおける圧力P2よりも低い圧力に向けて下降し始め、その後、大気圧P0に復帰する。
上記構成を採用することとすれば、上述した事前動作1を実行することにより、上記時刻Tpsから上記時刻T1までの期間における加圧動作によって空気袋42が膨張展開されることになるため、装着状態において空気袋42に生じている皺や空気袋42を構成する樹脂シート同士の密着が概ね解消できることになる。そして、上記時刻T1から上記時刻Tpeまでの期間における減圧動作によって空気袋42の内圧が大気圧P0に復帰することになるため、事前動作1が終了した後の状態においては、カフ40Aが巻き付けられた上腕に対して空気袋42が馴染んだ形状をとることになる。
そのため、測定動作1における空気袋42の加圧に際して、皺が発生することが低減できることになり、皮膚が巻き込まれることが抑制できるとともに、急激な内圧変動が起こることも抑制できる。また、深い皺(すなわち、折れ曲がり等)が発生することもないため、上腕を均等に圧迫することが可能になるとともに、空気袋42の内部において空気の流動が阻害されることもない。さらには、皺が発生すること自体が低減できるため、測定精度にばらつきが生じることも抑制できる。加えて、空気袋42を構成する樹脂シート同士の密着も予め解消されているため、空気袋42が十分にかつスムーズに膨張することになるとともに、上述した樹脂シート同士の密着に伴う急激な内圧変動の発生も抑制できる。
また、上記構成を採用することとすれば、カフ40Aに追加的に何らかの部材を設けることなく装着状態において空気袋42に生じている皺や空気袋42を構成する樹脂シート同士の密着が概ね解消できるため、構造が複雑化したり装置が大型化したりすることもなければ、製造コストが増大することもない。
したがって、上記構成を採用することにより、製造コストを増大させることなく簡素な構成で、血圧値の測定時において空気袋をスムーズに膨張展開させることができる血圧計とすることができる。
なお、事前動作1において上昇させられるカフ圧の最大値である圧力P1は、測定動作1において上昇させられるカフ圧の最大値である圧力P2よりも低くて構わない。しかしながら、圧力P1を極端に低く設定した場合には、十分な皺の解消等が見込まれないため好ましくなく、また圧力P1を極端に高く設定した場合には、事前動作1および測定動作1を含めた全体での処理時間が長くなるため、短時間での測定を可能にする観点からは好ましくない。
そのため、事前動作1において上昇させられるカフ圧の最大値である圧力P1は、これら両者の関係に基づいて適宜その調整がなされていることが好ましい。また、その場合において、カフ圧を実際に圧力P1に調整する手法としては、上述したようにポンプ32を駆動する時間を制御することでこれが調整されるように構成してもよいし、圧力センサ31を用いたカフ圧の実測値に基づいてこれが調整されるように構成してもよい。
<第2実施例>
本第2実施例は、事前動作1と測定動作2とを組み合わせた場合のものである。このうちの事前動作1については、上述した第1実施例と共通するため、ここではその説明を省略する。図9は、測定動作2における制御部の具体的な処理手順を示すフロー図である。また、図10は、図6に示す事前動作1と図9に示す測定動作2とを組み合わせた場合における、経時的なポンプおよび切替弁の動作ならびにカフ圧の変化を示す図である。なお、測定動作2を採用する場合には、切替弁33として流量制御弁を用いることが好ましい。
図9および図10に示すように、測定動作2においては、まず、制御部20は、ポンプ32および切替弁33の動作を制御することで、測定動作1の開始時点である時刻Tmsにおいて、空気袋42の内部の空間を外部に対して閉鎖させた閉鎖状態に切り替えるとともに、空気袋42の内部の空間への空気の注入を開始する(ステップS321)。これにより、空気袋42が加圧されることになり、カフ圧は、時刻Tmsにおける圧力である大気圧P0よりも高い圧力に向けて上昇し始める。
次に、制御部20は、カフ圧が血圧値測定のために必要となる予め定めた所定カフ圧P3に達したか否かを判断する(ステップS322)。ここで、制御部20は、カフ圧が当該所定カフ圧P3に達していないと判断した場合(ステップS322においてNOの場合)に、当該所定カフ圧P3に達するまで待機する。
そして、制御部20は、カフ圧が当該所定カフ圧P3に達したと判断した場合(ステップS322においてYESの場合)に、ポンプ32および切替弁33の動作を制御することで、空気袋42の内部の空間への空気の注入を停止するとともに、空気袋42の内部の空間を外部に対して開放させた開放状態に切り替える(ステップS323)。その際、制御部20によって切替弁33の開度が調節されることにより、空気袋42内に位置する空気が微速排気されて空気袋42が徐々に減圧されることになり、カフ圧は、所定カフ圧P3に達した時刻Tmから徐々に下降し始める。
この空気袋42を減圧する過程において、制御部20は、公知の手順で最高血圧および最低血圧を算出する(ステップS324)。具体的には、制御部20は、空気袋42のカフ圧を下降させる過程において発振回路34から得られる発振周波数よりカフ圧を取得し、取得したカフ圧に重畳した脈波情報を抽出する。そして、制御部20は、抽出された脈波情報に基づいて血圧値を算出する。なお、制御部20は、血圧値の算出が完了し、血圧値が決定するまでの間、当該状態を維持する(ステップS325においてNOの場合)。
血圧値の算出が完了し、血圧値が決定した場合(ステップS325においてYESの場合)には、制御部20は、測定動作2の終了時点である時刻Tmeにおいて、切替弁33の開度を調節することで、空気袋42内に位置する空気の急速排気を行なう(ステップS326)。これにより、カフ圧は、大気圧P0に復帰する。
このように構成した場合にも、上述した第1実施例において説明した効果と同様の効果を得ることができる。
<第3実施例>
本第3実施例は、事前動作2と測定動作1とを組み合わせた場合のものである。このうちの測定動作1については、上述した第1実施例と共通するため、ここではその説明を省略する。図11は、事前動作2における制御部の具体的な処理手順を示すフロー図である。また、図12は、図11に示す事前動作2と図7に示す測定動作1とを組み合わせた場合における、経時的なポンプおよび切替弁の動作ならびにカフ圧の変化を示す図である。
図11および図12に示すように、事前動作2においては、まず、制御部20は、ポンプ32および切替弁33の動作を制御することで、事前動作2の開始時点である時刻Tpsにおいて、空気袋42の内部の空間を外部に対して閉鎖させた閉鎖状態に切り替えるとともに、空気袋42の内部の空間への空気の注入を開始する(ステップS221)。これにより、空気袋42が加圧されることになり、カフ圧は、時刻Tpsにおける圧力である大気圧P0よりも高い圧力に向けて上昇し始める。
次に、制御部20は、事前動作2の終了時点である時刻Tpeよりも前の予め定めた第2所定時点である時刻T2(本第3実施例においては、事前動作2の終了時点である時刻Tpeよりも前の予め定めた第3所定時点である時刻T3についても、当該時刻T2と同じ時刻に設定されている)に達したか否かを判断する(ステップS222)。ここで、制御部20は、当該時刻T2(時刻T3)に達していないと判断した場合(ステップS222においてNOの場合)に、当該時刻T2(時刻T3)に達するまで待機する。
なお、上述した第2所定時点である時刻T2は、事前動作2において、切替弁33の動作を制御することで空気袋42を開放状態に切り替える時刻であり、上述した第3所定時点である時刻T3は、事前動作2において、ポンプ32の動作を制御することで空気袋42への空気の注入を停止する時刻である。
次に、制御部20は、当該時刻T2(時刻T3)に達したと判断した場合(ステップS222においてYESの場合)に、ポンプ32および切替弁33の動作を制御することで、空気袋42の内部の空間への空気の注入を停止するとともに、空気袋42の内部の空間を外部に対して開放させた開放状態に切り替える(ステップS223)。これにより、空気袋42が減圧されることになり、カフ圧は、時刻T2(時刻T3)における圧力P1よりも低い圧力に向けて下降し始める。
次に、制御部20は、予め定めた事前動作2の終了時点である時刻Tpeに達したか否かを判断する(ステップS224)。ここで、制御部20は、当該時刻Tpeに達していないと判断した場合(ステップS224においてNOの場合)に、当該時刻Tpeに達するまで待機する。
そして、制御部20は、当該時刻Tpeに達したと判断した場合(ステップS224においてYESの場合)に、事前動作2を終了する。当該事前動作2を終了した時刻Tpeにおいては、カフ圧は、大気圧P0に復帰している。
このように構成した場合にも、上述した第1実施例において説明した効果と同様の効果を得ることができる。
ここで、測定動作において空気袋42の加圧を開始する時点である時刻Tmsにおいては、カフ圧が大気圧P0に確実に復帰していることが好ましい。これは、空気袋42内に空気が所定量残存している場合に、その後に実施される測定動作において検出される脈波振幅が小さくなってしまう等、血圧値の測定精度に悪影響を及ぼす可能性があるためである。
したがって、本第3実施例のように、事前動作の終了時点である時刻Tpeよりも前の第3所定時点である時刻T3から時刻Tpeまでの期間において、ポンプ32の駆動を停止することで空気袋42への空気の注入を停止することにより、より確実にカフ圧を大気圧P0に復帰させることが可能になるため、当該構成を採用することでさらなる血圧値測定の高精度化が図られることになる。
なお、本第3実施例においては、切替弁33の動作を制御することで空気袋42を開放状態に切り替える第2所定時点である時刻T2と、ポンプ32の動作を制御することで空気袋42への空気の注入を停止する第3所定時点である時刻T3とが、同じ時刻となるように設定した場合を例示したが、これら時刻T2および時刻T3が互いに前後するように設定されていても構わない。
(実施の形態2)
図13は、本発明の実施の形態2における血圧計の機能ブロックの構成を示す図であり、図14は、当該血圧計に具備された空気袋とポンプおよび切替弁との接続態様を示す概略図である。まず、これら図13および図14を参照して、本実施の形態における血圧計1Bの概略的な構成および当該血圧計1Bに具備されたエア系コンポーネントの構成について説明する。
図13および図14に示すように、本実施の形態における血圧計1Bは、カフ40Bに設けられた空気袋42と、本体10に設けられたポンプ32および切替弁33との接続態様において、上述した実施の形態1における血圧計1Aと相違している。
具体的には、図14に示すように、空気袋42には、装着状態において径方向外側に位置することとなるその外周面の所定位置に、一対のポート43a,43bが設けられている。一対のポート43a,43bのうちの一方のポート43aには、エア管50aの一端が接続されており、当該エア管50aの他端には、加減圧機構の一部であるポンプ32が接続されている。また、一対のポート43a,43bのうちの他方のポート43bには、エア管50bの一端が接続されており、当該エア管50bの他端には、加減圧機構の一部である切替弁33が接続されている。なお、図13に示すように、圧力センサ31は、上記エア管50aに接続されている。
これにより、測定動作時においては、ポンプ32および切替弁33の駆動が制御されることで、エア管50aを介して空気袋42の内部の空間に空気が供給されることによって空気袋42が膨張することになるとともに、エア管50bを介して空気袋42の内部の空間から空気が排出されることによって空気袋42が収縮することになる。
ここで、図14に示すように、一対のポート43a,43bは、空気袋42を当該空気袋42の厚み方向(図において紙面と直交する方向)に沿って見た場合に、空気袋42の長さ方向(図中に示すX方向)に沿った両端またはその近傍の位置であって、かつ空気袋42の長さ方向と直交する幅方向(図中に示すY方向)に沿った中央またはその近傍の位置に対応づけて配設されている。このように構成すれば、後述する事前動作の際に空気袋42の全域にわたって空気が行き渡り易くなる。
本実施の形態における血圧計1Bにあっても、上述した実施の形態1における血圧計1Aの場合と同様に、図5において示した制御部20の処理手順と同様の処理手順が実施される。
ここで、本実施の形態における血圧計1Bにおいては、事前動作として、たとえば後述する事前動作3〜6の4通りの動作が適用でき、測定動作として、たとえば上述した実施の形態1において説明した測定動作1,2の2通りの動作が適用できる。そのため、代表的には、事前動作および測定動作の組み合わせとして合計で8通りのものが存在することになるが、それらのいずれの組み合わせを採用することとしても構わない。以下においては、これら組み合わせのうちの幾つかについて例示することとし、その中で事前動作3〜6の詳細について説明する。
<第4実施例>
本第4実施例は、事前動作3と測定動作1とを組み合わせた場合のものである。このうちの測定動作1については、上述した実施の形態1における第1実施例と共通するため、ここではその説明を省略する。図15は、事前動作3における制御部の具体的な処理手順を示すフロー図である。また、図16は、図15に示す事前動作3と図7に示す測定動作1とを組み合わせた場合における、経時的なポンプおよび切替弁の動作ならびにカフ圧の変化を示す図である。
図15および図16に示すように、事前動作3においては、まず、制御部20は、ポンプ32および切替弁33の動作を制御することで、事前動作3の開始時点である時刻Tpsにおいて、空気袋42の内部の空間を外部に対して開放させた開放状態に切り替えるとともに、空気袋42の内部の空間への空気の注入を開始する(ステップS231)。これにより、空気袋42の内部の空間に注入された空気は、空気袋42の内部を通過して外部に排出されることになり、カフ圧は、時刻Tpsにおける圧力である大気圧P0と実質的に合致した圧力に維持される。
次に、制御部20は、予め定めた事前動作3の終了時点である時刻Tpeに達したか否かを判断する(ステップS232)。ここで、制御部20は、当該時刻Tpeに達していないと判断した場合(ステップS232においてNOの場合)に、当該時刻Tpeに達するまで待機する。
そして、制御部20は、当該時刻Tpeに達したと判断した場合(ステップS232においてYESの場合)に、事前動作3を終了する。当該事前動作3を終了した時刻Tpeにおいても、カフ圧は、大気圧P0に維持されている。
上記構成を採用することとすれば、上述した事前動作3を実行することにより、上記時刻Tpsから上記時刻Tpeまでの期間において空気袋42に注入されて排出された空気によって空気袋42が展開されることになるため、装着状態において空気袋42に生じている皺や空気袋42を構成する樹脂シート同士の密着が概ね解消できることになる。そのため、事前動作3が終了した後の状態においては、カフ40Bが巻き付けられた上腕に対して空気袋42が馴染んだ形状をとることになる。
そのため、測定動作1における空気袋42の加圧に際して、皺が発生することが低減できることになり、皮膚が巻き込まれることが抑制できるとともに、急激な内圧変動が起こることも抑制できる。また、深い皺(すなわち、折れ曲がり等)が発生することもないため、上腕を均等に圧迫することが可能になるとともに、空気袋42の内部において空気の流動が阻害されることもない。さらには、皺が発生すること自体が低減できるため、測定精度にばらつきが生じることも抑制できる。加えて、空気袋42を構成する樹脂シート同士の密着も予め解消されているため、空気袋42が十分にかつスムーズに膨張することになるとともに、上述した樹脂シート同士の密着に伴う急激な内圧変動の発生も抑制できる。
また、上記構成を採用することとすれば、カフ40Bに追加的に何らかの部材を設けることなく装着状態において空気袋42に生じている皺や空気袋42を構成する樹脂シート同士の密着が概ね解消できるため、構造が複雑化したり装置が大型化したりすることもなければ、製造コストが増大することもない。
したがって、上記構成を採用することにより、製造コストを増大させることなく簡素な構成で、血圧値の測定時において空気袋をスムーズに膨張展開させることができる血圧計とすることができる。
なお、測定動作3を実施する時間(すなわち、開始時点である時刻Tpsから終了時点である時刻Tpeまでの期間の長さ)としては、これが極端に短くなるように設定した場合には、十分な皺の解消等が見込まれないため好ましくなく、またこれが極端に長くなるように設定した場合には、事前動作3および測定動作1を含めた全体での処理時間が長くなるため、短時間での測定を可能にする観点からは好ましくない。そのため、事前動作3を実施する時間としては、これら両者の関係に基づいて適宜その長さが調整されていることが好ましい。
<第5実施例>
本第5実施例は、事前動作4と測定動作1とを組み合わせた場合のものである。このうちの測定動作1については、上述した実施の形態1における第1実施例と共通するため、ここではその説明を省略する。図17は、事前動作4における制御部の具体的な処理手順を示すフロー図である。また、図18は、図17に示す事前動作4と図7に示す測定動作1とを組み合わせた場合における、経時的なポンプおよび切替弁の動作ならびにカフ圧の変化を示す図である。
図17および図18に示すように、事前動作4においては、まず、制御部20は、ポンプ32および切替弁33の動作を制御することで、事前動作4の開始時点である時刻Tpsにおいて、空気袋42の内部の空間を外部に対して開放させた開放状態に切り替えるとともに、空気袋42の内部の空間への空気の注入を開始する(ステップS241)。これにより、空気袋42の内部の空間に注入された空気は、空気袋42の内部を通過して外部に排出されることになり、カフ圧は、時刻Tpsにおける圧力である大気圧P0と実質的に合致した圧力に維持される。
次に、制御部20は、事前動作4の終了時点である時刻Tpeよりも前の予め定めた第4所定時点である時刻T4に達したか否かを判断する(ステップS242)。ここで、制御部20は、当該時刻T4に達していないと判断した場合(ステップS242においてNOの場合)に、当該時刻T4に達するまで待機する。
次に、制御部20は、当該時刻T4に達したと判断した場合(ステップS242においてYESの場合)に、ポンプ32の動作を制御することで、空気袋42の内部の空間への空気の注入を停止する(ステップS243)。これにより、空気袋42の内部に残存する空気が外部に排出されることになる。なお、当該時刻T4においても、カフ圧は、大気圧P0に実質的に合致した圧力に維持されている。
次に、制御部20は、予め定めた事前動作4の終了時点である時刻Tpeに達したか否かを判断する(ステップS244)。ここで、制御部20は、当該時刻Tpeに達していないと判断した場合(ステップS244においてNOの場合)に、当該時刻Tpeに達するまで待機する。
そして、制御部20は、当該時刻Tpeに達したと判断した場合(ステップS244においてYESの場合)に、事前動作4を終了する。当該事前動作4を終了した時刻Tpeにおいても、カフ圧は、大気圧P0に維持されている。
このように構成した場合にも、上述した第4実施例において説明した効果と同様の効果を得ることができる。
ここで、前述のとおり、測定動作において空気袋42の加圧を開始する時点である時刻Tmsにおいては、カフ圧が大気圧P0に確実に復帰していることが好ましい。したがって、本第5実施例のように、事前動作の終了時点である時刻Tpeよりも前の第4所定時点である時刻T4から時刻Tpeまでの期間において、ポンプ32の駆動を停止することで空気袋42への空気の注入を停止することにより、より確実にカフ圧を大気圧P0に復帰させることが可能になるため、当該構成を採用することでさらなる血圧値測定の高精度化が図られることになる。
<第6実施例>
本第6実施例は、事前動作5と測定動作1とを組み合わせた場合のものである。このうちの測定動作1については、上述した実施の形態1における第1実施例と共通するため、ここではその説明を省略する。図19は、事前動作5における制御部の具体的な処理手順を示すフロー図である。また、図20は、図19に示す事前動作5と図7に示す測定動作1とを組み合わせた場合における、経時的なポンプおよび切替弁の動作ならびにカフ圧の変化を示す図である。
図19および図20に示すように、事前動作5においては、まず、制御部20は、ポンプ32および切替弁33の動作を制御することで、事前動作5の開始時点である時刻Tpsにおいて、空気袋42の内部の空間を外部に対して閉鎖させた閉鎖状態に切り替えるとともに、空気袋42の内部の空間への空気の注入を開始する(ステップS251)。これにより、空気袋42が加圧されることになり、カフ圧は、時刻Tpsにおける圧力である大気圧P0よりも高い圧力に向けて上昇し始める。
次に、制御部20は、事前動作5の終了時点である時刻Tpeよりも前の予め定めた第5所定時点である時刻T5に達したか否かを判断する(ステップS252)。ここで、制御部20は、当該時刻T5に達していないと判断した場合(ステップS252においてNOの場合)に、当該時刻T5に達するまで待機する。
次に、制御部20は、当該時刻T5に達したと判断した場合(ステップS252においてYESの場合)に、切替弁33の動作を制御することで、空気袋42の内部の空間を外部に対して開放させた開放状態に切り替える(ステップS253)。これにより、空気袋42が減圧されることになり、カフ圧は、時刻T5における圧力P1よりも低い圧力に向けて下降し始める。
次に、制御部20は、予め定めた事前動作5の終了時点である時刻Tpeに達したか否かを判断する(ステップS254)。ここで、制御部20は、当該時刻Tpeに達していないと判断した場合(ステップS254においてNOの場合)に、当該時刻Tpeに達するまで待機する。
そして、制御部20は、当該時刻Tpeに達したと判断した場合(ステップS254においてYESの場合)に、事前動作5を終了する。当該事前動作5を終了した時刻Tpeにおいては、カフ圧は、大気圧P0に復帰している。
上記構成を採用することとすれば、上述した事前動作5を実行することにより、上記時刻Tpsから上記時刻T5までの期間における加圧動作によって空気袋42が膨張展開されることになるため、装着状態において空気袋42に生じている皺や空気袋42を構成する樹脂シート同士の密着が概ね解消できることになる。そして、上記時刻T5から上記時刻Tpeまでの期間における減圧動作によって空気袋42の内圧が大気圧P0に復帰することになるため、事前動作5が終了した後の状態においては、カフ40Bが巻き付けられた上腕に対して空気袋42が馴染んだ形状をとることになる。
そのため、測定動作1における空気袋42の加圧に際して、皺が発生することが低減できることになり、皮膚が巻き込まれることが抑制できるとともに、急激な内圧変動が起こることも抑制できる。また、深い皺(すなわち、折れ曲がり等)が発生することもないため、上腕を均等に圧迫することが可能になるとともに、空気袋42の内部において空気の流動が阻害されることもない。さらには、皺が発生すること自体が低減できるため、測定精度にばらつきが生じることも抑制できる。加えて、空気袋42を構成する樹脂シート同士の密着も予め解消されているため、空気袋42が十分にかつスムーズに膨張することになるとともに、上述した樹脂シート同士の密着に伴う急激な内圧変動の発生も抑制できる。
また、上記構成を採用することとすれば、カフ40Bに追加的に何らかの部材を設けることなく装着状態において空気袋42に生じている皺や空気袋42を構成する樹脂シート同士の密着が概ね解消できるため、構造が複雑化したり装置が大型化したりすることもなければ、製造コストが増大することもない。
したがって、上記構成を採用することにより、製造コストを増大させることなく簡素な構成で、血圧値の測定時において空気袋をスムーズに膨張展開させることができる血圧計とすることができる。
なお、事前動作5において上昇させられるカフ圧の最大値である圧力P1は、測定動作1において上昇させられるカフ圧の最大値である圧力P2よりも低くて構わない。しかしながら、圧力P1を極端に低く設定した場合には、十分な皺の解消等が見込まれないため好ましくなく、また圧力P1を極端に高く設定した場合には、事前動作5および測定動作1を含めた全体での処理時間が長くなるため、短時間での測定を可能にする観点からは好ましくない。
そのため、事前動作5において上昇させられるカフ圧の最大値である圧力P1は、これら両者の関係に基づいて適宜その調整がなされていることが好ましい。また、その場合において、カフ圧を実際に圧力P1に調整する手法としては、上述したようにポンプ32を駆動する時間を制御することでこれが調整されるように構成してもよいし、圧力センサ31を用いたカフ圧の実測値に基づいてこれが調整されるように構成してもよい。
<第7実施例>
本第7実施例は、事前動作6と測定動作1とを組み合わせた場合のものである。このうちの測定動作1については、上述した実施の形態1における第1実施例と共通するため、ここではその説明を省略する。図21は、事前動作6における制御部の具体的な処理手順を示すフロー図である。また、図22は、図21に示す事前動作6と図7に示す測定動作1とを組み合わせた場合における、経時的なポンプおよび切替弁の動作ならびにカフ圧の変化を示す図である。
図21および図22に示すように、事前動作6においては、まず、制御部20は、ポンプ32および切替弁33の動作を制御することで、事前動作6の開始時点である時刻Tpsにおいて、空気袋42の内部の空間を外部に対して閉鎖させた閉鎖状態に切り替えるとともに、空気袋42の内部の空間への空気の注入を開始する(ステップS261)。これにより、空気袋42が加圧されることになり、カフ圧は、時刻Tpsにおける圧力である大気圧P0よりも高い圧力に向けて上昇し始める。
次に、制御部20は、事前動作6の終了時点である時刻Tpeよりも前の予め定めた第6所定時点である時刻T6(本第7実施例においては、事前動作6の終了時点である時刻Tpeよりも前の予め定めた第7所定時点である時刻T7についても、当該時刻T6と同じ時刻に設定されている)に達したか否かを判断する(ステップS262)。ここで、制御部20は、当該時刻T6(時刻T7)に達していないと判断した場合(ステップS262においてNOの場合)に、当該時刻T6(時刻T7)に達するまで待機する。
なお、上述した第6所定時点である時刻T6は、事前動作6において、切替弁33の動作を制御することで空気袋42を開放状態に切り替える時刻であり、上述した第7所定時点である時刻T7は、事前動作6において、ポンプ32の動作を制御することで空気袋42への空気の注入を停止する時刻である。
次に、制御部20は、当該時刻T6(時刻T7)に達したと判断した場合(ステップS262においてYESの場合)に、ポンプ32および切替弁33の動作を制御することで、空気袋42の内部の空間への空気の注入を停止するとともに、空気袋42の内部の空間を外部に対して開放させた開放状態に切り替える(ステップS263)。これにより、空気袋42が減圧されることになり、カフ圧は、時刻T6(時刻T7)における圧力P1よりも低い圧力に向けて下降し始める。
次に、制御部20は、予め定めた事前動作6の終了時点である時刻Tpeに達したか否かを判断する(ステップS264)。ここで、制御部20は、当該時刻Tpeに達していないと判断した場合(ステップS264においてNOの場合)に、当該時刻Tpeに達するまで待機する。
そして、制御部20は、当該時刻Tpeに達したと判断した場合(ステップS264においてYESの場合)に、事前動作6を終了する。当該事前動作6を終了した時刻Tpeにおいては、カフ圧は、大気圧P0に復帰している。
このように構成した場合にも、上述した第6実施例において説明した効果と同様の効果を得ることができる。
ここで、前述のとおり、測定動作において空気袋42の加圧を開始する時点である時刻Tmsにおいては、カフ圧が大気圧P0に確実に復帰していることが好ましい。したがって、本第7実施例のように、事前動作の終了時点である時刻Tpeよりも前の第7所定時点である時刻T7から時刻Tpeまでの期間において、ポンプ32の駆動を停止することで空気袋42への空気の注入を停止することにより、より確実にカフ圧を大気圧P0に復帰させることが可能になるため、当該構成を採用することでさらなる血圧値測定の高精度化が図られることになる。
なお、本第7実施例においては、切替弁33の動作を制御することで空気袋42を開放状態に切り替える第6所定時点である時刻T6と、ポンプ32の動作を制御することで空気袋42への空気の注入を停止する第7所定時点である時刻T7とが、同じ時刻となるように設定した場合を例示したが、これら時刻T6および時刻T7が互いに前後するように設定されていても構わない。
以上において説明した本実施の形態においては、図14に示すように、空気袋42の長さ方向(図中に示すX方向)に沿った両端またはその近傍の位置であって、かつ空気袋42の幅方向(図中に示すY方向)に沿った中央またはその近傍の位置に一対のポート43a,43bが対応づけて配設されることにより、事前動作の際に空気袋42の全域にわたって空気が行き渡り易くなるように構成するととした場合を例示したが、これら一対のポート43a,43bの配設位置は、これに限定されるものではない。
図23ないし図25は、本実施の形態に基づいた第1ないし第3変形例に係る血圧計の空気袋とポンプおよび切替弁との接続態様を示す概略図である。
図23に示すように、第1変形例に係る血圧計にあっては、一対のポート43a,43bが、空気袋42を当該空気袋42の厚み方向(図において紙面と直交する方向)に沿って見た場合に、空気袋42の長さ方向(図中に示すX方向)に沿った両端またはその近傍の位置であって、かつ空気袋42の長さ方向と直交する幅方向(図中に示すY方向)に沿った片端またはその近傍の位置に対応づけて配設されている。このように構成した場合にも、事前動作の際に空気袋42の全域にわたって空気が行き渡り易くなる。
図24に示すように、第2変形例に係る血圧計にあっては、一対のポート43a,43bが、空気袋42を当該空気袋42の厚み方向(図において紙面と直交する方向)に沿って見た場合に、空気袋42の長さ方向(図中に示すX方向)に沿った両端またはその近傍の位置であって、かつ空気袋42の長さ方向と直交する幅方向(図中に示すY方向)に沿った両端またはその近傍の位置(すなわち、空気袋42の対角に位置する角部またはその近傍)に対応づけて配設されている。このように構成した場合にも、事前動作の際に空気袋42の全域にわたって空気が行き渡り易くなる。
図25に示すように、第3変形例に係る血圧計にあっては、一対のポート43a,43bが、空気袋42を当該空気袋42の厚み方向(図において紙面と直交する方向)に沿って見た場合に、空気袋42の長さ方向(図中に示すX方向)に沿った中央またはその近傍の位置であって、かつ空気袋42の長さ方向と直交する幅方向(図中に示すY方向)に沿った両端またはその近傍の位置に対応づけて配設されている。このように構成した場合にも、事前動作の際に空気袋42の全域にわたって空気が行き渡り易くなる。
(実施の形態3)
図26は、本発明の実施の形態3における血圧計のカフの模式断面図であり、図27は、当該血圧計に具備されたカーラを展開させた状態において、当該カーラを内周面側から見た場合の平面図である。以下、これら図26および図27を参照して、本実施の形態における血圧計に具備されたカフ40Cの構造について説明する。
図26に示すように、カフ40Cは、上述した実施の形態1における血圧計1Aに具備されたカフ40Aと、その内部に収容されたカーラ44の形状においてのみ相違している。具体的には、カフ40Cに内包されたカーラ44は、空気袋42に対面する内周面に複数の突起部44aを有している。
図26および図27に示すように、複数の突起部44aは、カーラ44の内周面のほぼ全域にわたって設けられており、図示するように行列状に規則的に整列して配置されている。これら複数の突起部44aは、その先端が空気袋42の外周面に当接するものであり、半球状の形状を有している。当該複数の突起部44aは、たとえばカーラ44を樹脂材料を用いて射出成形する際に一体的に形成されるものである。
このような複数の突起部44aをカーラ44の内周面に設けることにより、空気袋42を構成する樹脂シート同士に密着が生じている場合にも、空気袋42の加圧時において、空気袋42が十分にかつスムーズに膨張することになり、結果として当該樹脂シート同士の密着に伴う急激な内圧変動の発生が抑制できることになる。以下、その理由について詳細に説明する。
図28は、図26に示す空気袋に空気を注入する際の空気の流れを示す模式図である。図28に示すように、空気袋42にエア管50を介して空気が注入されると、注入された空気は、空気袋42の内部において広がろうとし、その際、空気袋42を構成する樹脂シート同士が密着している部分の端部に、当該樹脂シート同士を引き離すように圧力が加わる。
その際、空気袋42の外側にカーラ44等に代表される外部の部材が配置されかつ当該外部の部材によって空気袋42の外周面が密着した状態で覆われていると、空気袋42が当該外部の部材と上腕100とによって挟み込まれて保持された状態にあるため、容易には樹脂シート同士の密着が解消せず、空気袋42のスムーズな膨張が阻害されてしまう。
しかしながら、本実施の形態においては、カーラ44の内周面に複数の突起部44aが点在して設けられているため、当該突起部44aが位置する領域R1の周囲に突起部が位置しない空間が存する領域R2が形成されることになり、当該領域R2において、空気袋42がカーラ44と上腕100とによって挟み込まれて保持されていないこととなるため、注入された空気の圧力によって樹脂シート同士の密着が容易に解消されることになる。
ここで、当該領域R2は、空気袋42の外周面上において全体にわたって連続して延びているため、注入された空気が当該領域R2を伝って空気袋42の全体にわたって広がることになる。その際、突起部44aが位置する領域R1においても、その周囲に位置する領域R2において樹脂シート同士が引き離されて空気袋42が膨張することに伴い、樹脂シート同士が引き離されることになり、結果として空気袋42の全体がスムーズに膨張することになる。
したがって、本実施の形態において示した構成を採用することにより、血圧値の測定に際して、空気袋42が十分にかつスムーズに膨張することになり、空気袋42を構成する樹脂シート同士の密着に伴う急激な内圧変動の発生も抑制できることになる。
ここで、よりスムーズな空気袋42の膨張を促すためには、好ましくは、複数の突起部44aの各々の幅W(図27参照)が2mm以上とされ、複数の突起部44aの各々の高さH(図28参照)が、1mm以上5mm以下とされ、隣り合う突起部同士の頂点間の最小距離である配置ピッチD(図27参照)が、10mm以上50mm以下とされる。
なお、上記においては、複数の突起部44aを半球状に構成した場合を例示したが、複数の突起部44aの形状はこれに限られず、半球状以外のドーム状、半楕円体状、立方体状、円錐台状等、様々な形状とすることができる。その場合の突起部の各々の幅や高さ、これらの配置ピッチ等については、突起部を半球状とした上記の例に準じた寸法とすることが好ましい。
また、上記においては、複数の突起部44aが行列状に規則的に整列して配置された場合を例示したが、千鳥状に配置されていてもよく、さらには不規則的に配置されていも構わない。
(実施の形態4)
図29は、本発明の実施の形態4における血圧計のカフの模式断面図である。以下、この図29を参照して、本実施の形態における血圧計に具備されたカフ40Dの構造について説明する。
図29に示すように、カフ40Dは、上述した実施の形態1における血圧計1Aに具備されたカフ40Aと異なり、空気袋42とカーラ44との間にシート状部材45が設けられている。当該シート状部材45は、たとえば軟質の樹脂シートによって構成され、空気袋42に対面する内周面に複数の突起部45aを有している。
ここで、シート状部材45に設けられた複数の突起部45aは、上述した実施の形態3において説明したカーラ44に設けられた複数の突起部44aと同様の機能を発揮するものであり、その形状や大きさ、レイアウト等は、上述した実施の形態3において説明した複数の突起部44aのそれに準じたものとされる。
このように構成した場合にも、上述した実施の形態3の場合と同様に、血圧値の測定に際して、空気袋42が十分にかつスムーズに膨張することになり、空気袋42を構成する樹脂シート同士の密着に伴う急激な内圧変動の発生も抑制できることになる。
(実施の形態5)
図30は、本発明の実施の形態5における血圧計のカフの模式断面図である。以下、この図30を参照して、本実施の形態における血圧計に具備されたカフ40Eの構造について説明する。
図30に示すように、カフ40Eは、上述した実施の形態1における血圧計1Aに具備されたカフ40Aと異なり、カーラ44を具備していない点および外装カバー41に引っ掛け部材としてのリング48が設けられている点において相違している。
リング48は、カフ40Eの上腕への巻き付け固定の際に補助具として機能するものであり、外装カバー41の一端部寄りの部分に取り付けられている。リング48は、外装カバー41のリング48が取付けられていない方の端部である他端部寄りの部分がこのリング48に挿入されて折り返されることにより、カフ40Eの上腕への巻き付けを可能にするものである。なお、カフ40Eの上腕への固定に際しては、上述した実施の形態1の場合と同様に、外装カバー41に設けられた面ファスナ46,47が使用される。
また、上述した実施の形態1における血圧計1Aと異なり、カフ40Eにおいては、外装カバー41を構成する外側カバー部41bの空気袋42に対面する内周面に複数の突起部41b1が設けられている。
ここで、外側カバー部41bに設けられた複数の突起部41b1は、上述した実施の形態3において説明したカーラ44に設けられた複数の突起部44aと同様の機能を発揮するものであり、その形状や大きさ、レイアウト等は、上述した実施の形態3において説明した複数の突起部44aのそれに準じたものとされる。
このように構成した場合にも、上述した実施の形態3の場合と同様に、血圧値の測定に際して、空気袋42が十分にかつスムーズに膨張することになり、空気袋42を構成する樹脂シート同士の密着に伴う急激な内圧変動の発生も抑制できることになる。
なお、上記においては、外装カバー41の外側カバー部41bに複数の突起部41b1を設けるように構成した場合を例示したが、空気袋42と外側カバー部41bとの間に、上述した実施の形態4において説明した如くの複数の突起部45aを有するシート状部材45を配置することとしてもよい。
以上において説明した本発明の実施の形態およびその変形例においては、被装着部位として上腕が採用された上腕式血圧計に本発明を適用した場合を例示して説明を行なったが、本発明は、手首式血圧計や足式血圧計にも当然にその適用が可能である。
さらには、上述した本発明の実施の形態およびその変形例においては、最高血圧および最低血圧が測定可能な血圧計に本発明を適用した場合を例示して説明を行なったが、最高血圧および最低血圧以外の他の血圧情報(たとえば、平均血圧値、脈波、脈拍、AI(Augmentation Index)値等)が測定可能な血圧情報測定装置に本発明を適用することも当然に可能である。
このように、今回開示した上記実施の形態およびその変形例はすべての点で例示であって、制限的なものではない。本発明の技術的範囲は特許請求の範囲によって画定され、また特許請求の範囲の記載と均等の意味および範囲内でのすべての変更を含むものである。